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技術 TGFβシグナル伝達非依存性ナイーブ型誘導多能性幹細胞の作製方法及び使用

出願人 ホングァンリミテッドペキンユニバーシティベイジンバイタルスターバイオテクノロジーカンパニーリミテッド
発明者 デェン,フンクィファン,リグォリュウ,カンヤン,ウェイフォン
出願日 2015年9月18日 (2年4ヶ月経過) 出願番号 2017-535951
公開日 2017年10月12日 (3ヶ月経過) 公開番号 2017-529876
状態 未査定
技術分野 微生物、その培養処理 動物の育種及び生殖細胞操作による繁殖 医療用材料 動物,微生物物質含有医薬 化合物または医薬の治療活性 酵素・酵素の調製
主要キーワード 二重制御 布メッシュ 透水構造 合成スポンジ スピニングディスク 無機構造 ヒドロゲル混合物 圧縮成形技術

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図面 (20)

課題・解決手段

非ナイーブ多能性幹細胞をTGFβシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型誘導多能性幹細胞(iPSC)へと変換再プログラミングするための因子カクテルを提供する。再プログラムする細胞を有効量の化合物と、細胞をTSIナイーブ型iPSCへと再プログラムするのに十分な期間接触することにより、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型iPSCへと再プログラミングするための方法も提供する。

概要

背景

多能性幹細胞(PSC)が2つの異なる安定な多能性状態であるナイーブ型及びプライム型多能性状態に分類できることがげっ歯類における研究により示めされている(Nicholsら、Cell Stem Cell、4:487〜492(2009))。ナイーブ型状態は、着床前のマウス胚胞胚内部細胞塊(ICM)由来マウス胚性幹細胞(mESC)によって表され(Evansら、Nature、292:154〜156(1981);Brookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:5709〜5712(1997))、一方プライム型状態は着床後のマウスエピブラストから確立したマウスエピブラスト幹細胞(mEpiSC)に相当する(Tesarら、Nature、448:196〜199(2007);Bronsら、Nature、448:191〜195 2007)。さらに、ナイーブ型及びプライム型多能性幹細胞は、異なる遺伝子発現プロファイル及び異なるシグナル伝達経路を有し、それらの自己複製を支持する。例えば、mESCはLIFシグナル伝達又は細胞外調節タンパク質キナーゼERK)及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK3)の組合せの阻害を必要とし、一方mEpiSCは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及びトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)シグナル伝達に依存する(Tesarら、Nature、448:196〜199(2007);Yingら、Nature、453:519〜523(2008))。さらに、雌のmESCは活性X染色体状態を保持するが、雌のmEpiESCはX−不活性状態のままである。さらに、プライム型PSCは増殖速度が遅い扁平なコロニーを形成し、単一細胞継代には不応であるが、ナイーブ型PSCは急速に成長し、単一細胞継代により増殖することができる(Nichols、Cell Stem Cell、4:487〜49(2009))。最も重要なことには、プライム型多能性幹細胞と対照的に、ナイーブ型PSCはin vitroで明らかな分化系列コミットメントバイアスを保持せず、in vivoで高度なキメラ化を伴う初期胚盤胞のICMへと再配置し(Bradleyら、Nature、309:255〜256(1984);Nichols、Cell Stem Cell、4:487〜49(2009))、キメラ動物モデルを作製するために重要なナイーブ型PSCを作出し、哺乳動物遺伝子機能及び初期の発生を研究することができる。

異なるナイーブ型及びプライム型多能性状態はげ歯類においてよく確立されているが、ヒト及びサルのESCなど従来の霊長類のPSC及び誘導多能性幹細胞(iPSC)は、遺伝子発現プロファイル、増殖に必要なシグナル伝達経路、及び単一細胞継代への不耐性に関して、着床後のマウスEpiSCにより密接に類似している(Thomsonら、Proc.Natl.Acad.Sci、92:7844〜7848(1995);Thomsonら、Science、282:1145〜1147(1998);Takahashiら、Cell、131:861〜872(2007);Yuら、Science、318:1917〜1920(2007);Liuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008))。したがって、霊長類のナイーブ型多能性状態を確立することができるかどうか及びどのように確立できるかは重要な課題のままである。近年の研究は、LRH−1及びRARgの異所性発現又は小分子の使用など、プライム型PSCの変換によって、又は体細胞の直接的な再プログラミングによって、in vitroでナイーブ型ヒトPSCを誘導することを報告した(Smaggheら、PLoS One、8:e58601(2013);Liら、Cell Stem Cell、4:16〜19(2009);Bueckerら、Cell Stem Cell、6:535〜546(2010);Hannaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、107:9222〜9227(2010);Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、108:18283〜18288(2011))。それにもかかわらず、げっ歯類のナイーブ型PSCの特徴の完全なセット不在であることは、霊長類の安定なナイーブ型多能性状態の必要性を示している。最近、いくつかの報告が、in vitroで異なる安定な細胞外遺伝子非依存性トナイーブ型多能性状態を確立した(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Chanら、Cell Stem Cell、13:663〜675(2013);Wareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、111:4484〜4489(2014);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014))。さらに、いくつかの研究は、TGFβなど高価な成長因子を含む細胞培養で維持することができる多能性幹細胞を同定した。ヒトナイーブ型PSCの誘導はマウスと異なるシグナル伝達経路が必要なため、in vitroで非ヒト霊長類、例えばアカゲザル由来のナイーブ型PSCを生成する方法又はいくつかの成長因子の必要性を排除する方法を使用するナイーブ型PSCの必要性が依然としてある。

概要

非ナイーブ型多能性幹細胞をTGFβシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型誘導多能性幹細胞(iPSC)へと変換/再プログラミングするための因子カクテルを提供する。再プログラムする細胞を有効量の化合物と、細胞をTSIナイーブ型iPSCへと再プログラムするのに十分な期間接触することにより、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型iPSCへと再プログラミングするための方法も提供する。 なし

目的

本発明の目的は、トランスフォーミング成長因子シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型誘導多能性幹細胞を提供する

効果

実績

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請求項1

単離した多能性細胞分化能を伸ばす細胞培養培地組成物であって、以下の群、(1)サイトカイン、(2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK阻害剤、(3)細胞外シグナル調節キナーゼERK)1/2阻害剤、(4)c−JunN末端キナーゼ(JNK)阻害剤、(5)塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び(6)p38マイトジェン活性タンパク質キナーゼMAPK)阻害剤のそれぞれ由来のナイーブ多能性CINP)の化学誘発因子を、非ナイーブ型細胞のTGFβシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型誘導多能性幹細胞(PSC)への再プログラムに有効な量で、含む組成物。

請求項2

サイトカインが、ヒト白血病抑制因子(LIF、“L”)、インターロイキンIL)−6、IL−11、IL−27、IL−31、白血病抑制因子オンコスタチンMカルジオトロフィン−1、ニューロポイエチン、及びカルジオトロフィン様サイトカイン因子1からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。

請求項3

GSK阻害剤がGSK3阻害剤である、請求項1に記載の組成物。

請求項4

ERK1/2阻害剤が、PD0325901(N−[(2R)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ]−ベンズアミド);PD198306(N−(シクロプロピルメトキシ)−3,4,5−トリフルオロ−2−[(4−ヨード−2−メチルフェニル)アミノ]−ベンズアミド);SL327(α−[アミノ[(4−アミノフェニルチオメチレン]−2−(トリフルオロメチルベンゼンアセトニトリル);及びU0126(1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス[2−アミノフェニルチオブタジエン)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。

請求項5

GSK阻害剤が、CHIR99021[6−[[2−[[4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(5−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−2−ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]−3−ピリジンカルボニトリル];BIO−アセトキシム;GSK3I阻害剤XV;SB−216763;CHIR99021トリヒドロクロリド;GSK−3阻害剤IX[((2Z,3E)−6’−ブロモ−3−(ヒドロキシイミノ)−[2,3’−ビインドリニリデン]−2’−オン];GSK3IX[6−ブロモインジルビン−3’−オキシム];GSK−3β阻害剤XII[3−[[6−(3−アミノフェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]オキシフェノール];GSK−3阻害剤XVI[6−(2−(4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−ピリミジン−2−イルアミノ)エチル−アミノ)−ニコチノニトリル];SB−415286[3−[(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ]−4−(2−ニトロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン];及びBio[(2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−オキシム]からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。

請求項6

JNK阻害剤が、SP600125(アントラ[1−9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン);BI78D3(4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−2,4−ジヒドロ−5−[(5−ニトロ−2−チアゾリル)チオ]−3H−1,2,4−トリアゾル−3−オン);CEP1347((9S,10R,12R)−5−16−ビス[(エチルチオ)メチル]−2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−ヒドロキシ−9−メチル−1−オキソ−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−10−カルボン酸メチルエステル);及びSU3327(−[(5−ニトロ−2−チアゾリル)チオ]−1,3,4チアジアゾール−2−アミン)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。

請求項7

p38MAPK阻害剤が、SB203580塩酸塩(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルフォニルフェニル]−1H−イミダゾール−4−イル]ピリジン塩酸塩);SB202190(4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(4−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]フェノール);DBM1285二塩酸塩(N−シクロプロピル−4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ピペリジニル)−5−チアゾリル]−2−ピリミジンアミン二塩酸塩);SB239063(トランス−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イル]シクロヘキサノール);SKF86002二塩酸塩(6−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロ−5−(4−ピリジニル)イミダゾ[2,1−b]チアゾール二塩酸塩)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。

請求項8

CHIR99021;PD0325901;bFGF;SP600125;SB203580及びSP600125を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。

請求項9

細胞培養培地を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。

請求項10

分子量化合物相対量で存在し、分化した細胞のナイーブ型多能性を誘導するための細胞培養培地へ入れキットの、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。

請求項11

ドナー細胞を、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型PSCへと再プログラムするのに有効な期間、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物と共に培養するステップを含む、TSIナイーブ型PSCを産生する方法

請求項12

ドナー細胞が、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、多能性幹細胞、血液起源の細胞、起源の細胞、皮膚由来細胞線維芽細胞脂肪細胞上皮細胞内皮細胞間葉細胞実質細胞、神経系の細胞、及び結合組織細胞からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。

請求項13

ドナー細胞が、マウス胚性幹細胞ヒト胚性幹細胞、及び誘導多能性幹細胞からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。

請求項14

ドナー細胞が4〜14日の範囲の期間培養される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。

請求項15

TSIナイーブ型PSCを単離するステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。

請求項16

TSIナイーブ型PSCが、単一細胞として播種され、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物を含む細胞培養培地で細胞を培養するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。

請求項17

請求項11〜16に記載のいずれか1つの方法によって得られる、単離したTSIナイーブ型PSC。

請求項18

単離したTSIナイーブ型PSC。

請求項19

PRDM14、KLF5、ZFP42(REX1)、LIFR、TBX3、及びNANOGからなる群から選択される少なくとも1つのマーカー発現が、ドナー細胞として同じ生物から単離された未処置相当する細胞と比較した場合上方制御される、請求項17又は18に記載の細胞。

請求項20

TRA−1−60、TRA−1−81、及びSSEA−4からなる群から選択される少なくとも1つのマーカーの発現が、ドナー細胞として同じ生物から単離された未処置の相当する細胞と比較した場合上方制御される、請求項17又は18に記載の細胞。

請求項21

SSEA−1の発現が、ドナー細胞として相当する生物から単離された未処置の相当する細胞と比較した場合下方制御される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の細胞。

請求項22

TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照と比較したTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合、少なくとも5日間TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照の培養後、細胞が多能性を維持する、請求項17〜21のいずれか一項に記載の細胞。

請求項23

請求項20〜26のいずれか一項に記載の単離した細胞の少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%を含む、TSIナイーブ型PSCの単離した集団

請求項24

注射、人工器官又は組織工学マトリックス移植によって個体に投与するために製剤化された請求項20〜22のいずれか一項に記載のTSIナイーブ型PSCを含む治療用組成物

請求項25

請求項20又は21に記載の単離したTSIナイーブ型PSC、並びに(1)サイトカイン、(2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)阻害剤、(3)細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)1/2阻害剤、(4)c−JunN末端キナーゼ(JNK)阻害剤、(5)塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、及び(6)p38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)阻害剤を含む培養培地を含む細胞培養

請求項26

前記培養培地が、TSIナイーブ型PSCを、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10回の継代の間、未分化及びナイーブ型多能性状態に効果的に維持する、請求項25に記載の細胞培養。

請求項27

前記TSIナイーブ型PSCが、最大8ヵ月の培養後、培養で正常な核型を維持する、請求項25に記載の細胞培養。

請求項28

a)ドナー哺乳動物由来のTSIナイーブ型PSCを調製するステップ;b)前記TSIナイーブ型PSCをレシピエント哺乳動物胚盤胞段階受精卵へと移植するステップ;c)非ヒト代理哺乳動物子宮で受精卵を発生し同産仔を得るステップ;及びd)同産仔から標的臓器を得るステップを含む、発生段階で標的臓器の発生の欠如と関連する異常を有するレシピエント非ヒト哺乳動物臓器を産生する方法。

請求項29

産生される臓器が、膵臓腎臓胸腺、及び毛髪からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。

請求項30

レシピエント哺乳動物が、Shall1ノックアウトマウス、Pdx1−Hes1トランスジェニックマウス、Pdx1ノックアウト、及びヌードマウスからなる群から選択されるマウスである、請求項28に記載の方法。

請求項31

請求項28の方法に従って産生した非ヒト哺乳動物。

技術分野

0001

本発明は、一般にはTGF−βシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ誘導多能性幹細胞に関する。

背景技術

0002

多能性幹細胞(PSC)が2つの異なる安定な多能性状態であるナイーブ型及びプライム型多能性状態に分類できることがげっ歯類における研究により示めされている(Nicholsら、Cell Stem Cell、4:487〜492(2009))。ナイーブ型状態は、着床前のマウス胚胞胚内部細胞塊(ICM)由来マウス胚性幹細胞(mESC)によって表され(Evansら、Nature、292:154〜156(1981);Brookら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、94:5709〜5712(1997))、一方プライム型状態は着床後のマウスエピブラストから確立したマウスエピブラスト幹細胞(mEpiSC)に相当する(Tesarら、Nature、448:196〜199(2007);Bronsら、Nature、448:191〜195 2007)。さらに、ナイーブ型及びプライム型多能性幹細胞は、異なる遺伝子発現プロファイル及び異なるシグナル伝達経路を有し、それらの自己複製を支持する。例えば、mESCはLIFシグナル伝達又は細胞外調節タンパク質キナーゼERK)及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK3)の組合せの阻害を必要とし、一方mEpiSCは塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)及びトランスフォーミング成長因子−β(TGF−β)シグナル伝達に依存する(Tesarら、Nature、448:196〜199(2007);Yingら、Nature、453:519〜523(2008))。さらに、雌のmESCは活性X染色体状態を保持するが、雌のmEpiESCはX−不活性状態のままである。さらに、プライム型PSCは増殖速度が遅い扁平なコロニーを形成し、単一細胞継代には不応であるが、ナイーブ型PSCは急速に成長し、単一細胞継代により増殖することができる(Nichols、Cell Stem Cell、4:487〜49(2009))。最も重要なことには、プライム型多能性幹細胞と対照的に、ナイーブ型PSCはin vitroで明らかな分化系列コミットメントバイアスを保持せず、in vivoで高度なキメラ化を伴う初期胚盤胞のICMへと再配置し(Bradleyら、Nature、309:255〜256(1984);Nichols、Cell Stem Cell、4:487〜49(2009))、キメラ動物モデルを作製するために重要なナイーブ型PSCを作出し、哺乳動物遺伝子機能及び初期の発生を研究することができる。

0003

異なるナイーブ型及びプライム型多能性状態はげ歯類においてよく確立されているが、ヒト及びサルのESCなど従来の霊長類のPSC及び誘導多能性幹細胞(iPSC)は、遺伝子発現プロファイル、増殖に必要なシグナル伝達経路、及び単一細胞継代への不耐性に関して、着床後のマウスEpiSCにより密接に類似している(Thomsonら、Proc.Natl.Acad.Sci、92:7844〜7848(1995);Thomsonら、Science、282:1145〜1147(1998);Takahashiら、Cell、131:861〜872(2007);Yuら、Science、318:1917〜1920(2007);Liuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008))。したがって、霊長類のナイーブ型多能性状態を確立することができるかどうか及びどのように確立できるかは重要な課題のままである。近年の研究は、LRH−1及びRARgの異所性発現又は小分子の使用など、プライム型PSCの変換によって、又は体細胞の直接的な再プログラミングによって、in vitroでナイーブ型ヒトPSCを誘導することを報告した(Smaggheら、PLoS One、8:e58601(2013);Liら、Cell Stem Cell、4:16〜19(2009);Bueckerら、Cell Stem Cell、6:535〜546(2010);Hannaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、107:9222〜9227(2010);Wangら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、108:18283〜18288(2011))。それにもかかわらず、げっ歯類のナイーブ型PSCの特徴の完全なセット不在であることは、霊長類の安定なナイーブ型多能性状態の必要性を示している。最近、いくつかの報告が、in vitroで異なる安定な細胞外遺伝子非依存性ヒトナイーブ型多能性状態を確立した(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Chanら、Cell Stem Cell、13:663〜675(2013);Wareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、111:4484〜4489(2014);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014))。さらに、いくつかの研究は、TGFβなど高価な成長因子を含む細胞培養で維持することができる多能性幹細胞を同定した。ヒトナイーブ型PSCの誘導はマウスと異なるシグナル伝達経路が必要なため、in vitroで非ヒト霊長類、例えばアカゲザル由来のナイーブ型PSCを生成する方法又はいくつかの成長因子の必要性を排除する方法を使用するナイーブ型PSCの必要性が依然としてある。

発明が解決しようとする課題

0004

したがって、本発明の目的は、トランスフォーミング成長因子シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型誘導多能性幹細胞を提供することである。

0005

また、本発明の目的は、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型誘導多能性幹細胞に変換する方法を提供することである。

0006

さらに、本発明の目的は、ナイーブ型状態において、TSIナイーブ型誘導多能性幹細胞を維持する方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0007

非ナイーブ型多能性幹細胞をナイーブ型多能性幹細胞へと変換/再プログラムするために使用することができる因子化合物カクテルが同定され、以降カクテルと呼ぶ。カクテルは、ナイーブ型状態に化学的に誘導される、TGF−βシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型多能性幹細胞(すなわち、TSIナイーブ型PSC)を生成するために使用され、ナイーブ型状態に生成されたように細胞を維持する。化合物のカクテルは、本明細書において以下の化合物((ナイーブ型多能性の化学誘発因子CINP))を有効量で、組み合わせて含み、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型PSCへと再プログラムする:(1)サイトカイン;(2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)阻害剤;(3)ERK1/2阻害剤;(4)c−JunN末端キナーゼ/ストレス活性タンパク質キナーゼ(JNK/MAPK)阻害剤(5)塩基性線維芽細胞成長因子及び(6)p38マイトジェン活性タンパク質キナーゼ阻害剤。好ましい実施形態では、サイトカインは白血病抑制因子(LIF)(“L”)であり;GSK阻害剤アミノピリミジン、化学名[6−[[2−[[4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(5−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)−2−ピリミジニルアミノエチル]アミノ]−3−ピリジンカルボニトリル]を有するCHIR99021(“C”)であり;ERK1/2阻害剤はPD0325901であり;JNK阻害剤はSP600125(アントラ[1−9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン)であり;及びp38阻害剤はSB203580(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルフォニルフェニル]−1H−イミダゾール−4−イル]ピリジン)である。この有効量の化合物のカクテルは非ナイーブ型多能性幹細胞をTSIナイーブ型PSCへと再プログラムするために使用することができる。

0008

本明細書に開示する化合物のカクテルを使用してドナー細胞を再プログラミングすることによって非ナイーブ型PSCをナイーブ型PSCへと誘導/再プログラミングする方法もまた提供する。再プログラムされる細胞(すなわち、ドナー細胞)は、細胞をTSIナイーブ型PSCへと再プログラムするのに十分な期間カクテルと接触させる。いくつかの実施形態では、ドナー細胞は多能性幹細胞ではなく、ドナー細胞はまずプライム型誘導多能性幹細胞(iPSC)へと変換される。この実施形態では、プライム型iPSCは、最初は本明細書に開示の化合物のカクテルで、4〜14日間の間、好ましくは7〜10日間の間の期間培養する。好ましい実施形態では、細胞培養培地PKC阻害剤ROCK阻害剤、TGFβ、NOTCH阻害剤、TGFR阻害剤又はFGFR阻害剤を含まない。化合物のカクテルはTGFβを含まないことがより好ましい。TSIナイーブ型PSCを単離しそれらを生成するために使用する同じ化合物のカクテルを補った多能性幹細胞培養培地においてナイーブ型状態を維持する。

0009

TSIナイーブ型PSCもまた提供する。TSIナイーブ型PSCは、少なくともTGFβ1シグナル伝達非依存的な多能性を維持する能力のため同定される。本明細書に開示のように化合物のカクテルと接触する非ナイーブ型再プログラムPSC細胞は:(i)形態(培養中のドーム形状のコロニーの形成に基づく)、(ii)以下の特徴:(a)TGFβ1非依存性の多能性の維持(TGFβ1受容体阻害剤存在下で対照と比較したTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合);(b)3つの胚葉組織へと分化する細胞の能力;(c)PRDM14、KLF5、ZFP42(REX1)、LIFR、TBX3、及びNANOGなどのうちの1つ又は複数のナイーブ型状態関連転写産物発現上方制御、(d)TRA−1−60、TRA−1−81、及びSSEA−4などのうちの1つ又は複数の多能性マーカーの発現の上方制御;(e)SSEA−1などのうちの1つ又は複数の多能性マーカーの下方制御;(f)in vivoで種間キメラを形成する能力に基づく機能性、を含む特性に基づくTSIナイーブ型PSCとして同定される。TSIナイーブ型PSCは、本明細書に開示のカクテルに曝露されていない細胞とは異なり、未処置細胞と比較した場合、少なくとも1つ、好ましくは2つ、3つ、4つ又はこれらの特性全てを保持する。上方制御又は下方制御は、TSIナイーブ型PSCが得られた対応する細胞において測定した因子のレベルを比較することにより決定される。

0010

本明細書に開示のTSIナイーブ型PSCは、少なくともそれらを生成するために使用される方法によって、すなわちそれらの起源によって、ヒト又はマウスESC又はiPSCと区別できる。TSIナイーブ型PSCが、本明細書に記載のように、小分子の組合せにより非ナイーブ型PSCを処置することによって得られる場合、ESCが自然発生の細胞であり、例えば他方では、TSIナイーブ型PSCは自然発生ではない(対応する自然発生のESCには見出されない特徴の保持によって証明されるように)。

0011

TSIナイーブ型PSCは、培養又は所望の型の細胞へと分化を誘導することができる。TSIナイーブ型PSC及びそれらの子孫は、細胞療法動物モデル及び組織工学を含むがこれに限定されない多くの適用に使用できる。

図面の簡単な説明

0012

図1Aは、プレート後8日間の試験したシグナル伝達モジュレーター基礎的な変換条件下で増えるナイーブ型iPSCのコロニー数を示す棒グラフである。多能性の維持は、全コロニー中のTBX3及びTRA−1−81のダブルポジティブコロニーの割合によって測定した。陰性対照:2i/LIF(白血病抑制因子)+bFGF(n=3ウェル)。全ての値は、3ウェルの反復からの平均±SEMである。
図1Bは、プレート後5日間の試験したシグナル伝達モジュレーターと基礎的な変換条件下で増えるアカゲザルのナイーブ型iPSCのコロニー数を示す棒グラフである。多能性の維持は、全コロニー中のTBX3又はTRA−1−81のシングルポジティブコロニーの割合によって測定した。陰性対照:2i/LIF+bFGF。全ての値は、3ウェルの反復からの平均±s.e.mである。
図1Cは、プレート後5日間の試験したシグナル伝達モジュレーターと基礎的な変換条件下で増えるアカゲザルのナイーブ型iPSCのコロニー数を示す棒グラフである。多能性の維持は、全コロニー中のTBX3又はTRA−1−81のシングルポジティブコロニーの割合によって測定した。陰性対照:2i/LIF+bFGF。全ての値は、3ウェルの反復からの平均±s.e.mである。
図2Aは、確立された、プライム型iPSC株のゲノムへと挿入したエピソームベクター喪失の定量的RTPCR分析を示す図である。Fibro−D6:6日間のエピソームベクター感染後の線維芽細胞EViPS−1、2;エピソームベクター系によって確立された2つのプライム型iPSC株。全ての値は、3回の独立した実験の平均±s.e.mである。
図2Bは、ナイーブ型iPSC(DRN−1、DRN−2、DRN−3)、雌のナイーブ型iPSC(FN−1、FN−2、FN−3)及びエピソーム誘導ナイーブ型iPSC(EVN−1、EVN−2、EVN−3)へと直接変換される、アカゲザルにおける多能性マーカー遺伝子発現のRT−PCR分析を示す図である。(ES−7.5:アカゲザルES株)
図2Cは、プライム型iPSC及びナイーブ型iPSCの単一細胞継代後のコロニー再形成を示す図である。多能性の維持は、継代後5日のTRA−1−81−陽性コロニーの数によって測定された(n=3ウェル)。P<0.0001(スチューデントt検定)。全ての値は、3ウェルの複製からの平均±SEMである。
図2Dは、ナイーブ型iPSCにおける多能性の遺伝子発現のRT−PCR分析を示す図である(N1、N2、N3:3つの独立に確立されたナイーブ型iPSC株;ES−7.5:アカゲザルESC株)。
最適化した変換条件下で増えるナイーブ型iPSCの、TRA−1−81+ドーム型コロニーの倍数変化を示す図である(図3A)。プライム型iPSCは、hESC培地で増やした(図3B)。試験したシグナル伝達モジュレーターは、1mM JAK阻害剤、10mM SB431542(TGFβR阻害剤)、2ng/ml TGF−b1、及び2mM SU5402(FGFR阻害剤)である。多能性の維持は、対照(ナイーブ型iPSCの最適化した変換条件)と比較したTRA−1−81−陽性ドーム形状コロニー又は対照(プライム型iPSCのhESC培地)と比較したTRA−1−81−陽性コロニーの割合の倍数変化によって測定した。異なるカラムは個々の細胞株を表す(n=3の異なるウェル)。N1、N2、N3:3つのナイーブ型iPSC株;P1、P2、P3:3つのプライム型iPSC株。全ての値は、3ウェルの複製からの平均±SEMである。
最適化した変換条件下で増えるナイーブ型iPSCの、TRA−1−81+ドーム型コロニーの倍数変化を示す図である(図3A)。プライム型iPSCは、hESC培地で増やした(図3B)。試験したシグナル伝達モジュレーターは、1mM JAK阻害剤、10mM SB431542(TGFβR阻害剤)、2ng/ml TGF−b1、及び2mM SU5402(FGFR阻害剤)である。多能性の維持は、対照(ナイーブ型iPSCの最適化した変換条件)と比較したTRA−1−81−陽性ドーム形状コロニー又は対照(プライム型iPSCのhESC培地)と比較したTRA−1−81−陽性コロニーの割合の倍数変化によって測定した。異なるカラムは個々の細胞株を表す(n=3の異なるウェル)。N1、N2、N3:3つのナイーブ型iPSC株;P1、P2、P3:3つのプライム型iPSC株。全ての値は、3ウェルの複製からの平均±SEMである。
図3Cは、最適化した変換条件下(2i/LIF+bFGF+SP600125+SB203580)で増えるアカゲザルのナイーブ型iPSCのTRA−1−81+コロニー数の倍数変化を示す図である。異なる濃度のLy294002を5日間示したように試験した。多能性の維持を、TRA−1−81陽性ドーム形状コロニーの数によって測定した。全ての値は、3ウェルの複製からの平均±s.e.mである。
図3Dは、最適化した変換条件下(2i/LIF+bFGF+SP600125+SB203580)で増えるアカゲザルのナイーブ型iPSCのTRA−1−81+ドーム型コロニー数の倍数変化を示す図である。さらに、2ng/ml TGFβ1単独及び2ng/ml TGFβ1と10μM SB431542(TGF−βR阻害剤)を試験した。多能性の維持は、対照(2i/LIF+bFGF+SP600125+SB203580)と比較したTRA−1−81陽性ドーム形状コロニーの倍数変化によって測定した。全ての値は、3ウェルの複製からの平均±s.e.mである。
図3Eは、XIST発現のqPCR及びRT−PCR分析を示す図である(FN−1及びFN−2:雌のナイーブ型iPSC株;FP−1及びFP−2:雌のプライム型iPSC株;FF−1及びFF−2;雌の線維芽細胞株;N1:雄のナイーブ型iPSC株;MF:雄の線維芽細胞株)。RT−PCRの結果は、プライム型iPSCにおけるXISTの平均発現レベルと比較して示す(雌♯1及び♯2:2つの雌の細胞源;N:ナイーブ型;P:プライム型;F:線維芽細胞)。全ての値は、3つの独立した実験からの平均±SEMである。
図3Fは、階層的クラスタリングを使用してプライム型(P1、P2)及びナイーブ型iPSC(N1、N2、FN−1、FN−2)の全ゲノム発現プロファイル(RNA−seq)において実施したクラスタリングを示す図である。
図3Gは、サルのナイーブ型とプライム型iPSC間の上方及び下方制御されたシグナル伝達経路関連遺伝子カテゴリーを示すジーンオントロジー(GO)分析を示す図である。
図3Hは、ナイーブ型及びプライム型iPSCの典型的な多能性及び系列特異的マーカー遺伝子発現の定量的PCRバリデーションを示す図である。全ての値は、3つの独立した実験からの平均±SDである。P<0.0001(スチューデントのt検定)。
図3Iは、ナイーブ型及びプライム型iPSCの典型的な多能性及び系列特異的マーカー遺伝子発現の定量的PCRバリデーションを示す図である。全ての値は、3つの独立した実験からの平均±SDである。P<0.0001(スチューデントのt検定)。
図3Jは、ナイーブ型及びプライム型iPSCの典型的な多能性及び系列特異的マーカー遺伝子発現の定量的PCRバリデーションを示す図である。全ての値は、3つの独立した実験からの平均±SDである。P<0.0001(スチューデントのt検定)。
図4Aは、レトロウイルス誘導(OK−1、OK−2、OK−3)及びエピソームベクター誘導(EV−1、EV−2、EV−3)アカゲザルプライム型iPSCにおける多能性マーカー遺伝子発現のRT−PCR分析を示す図である。「Endo」は、内在性遺伝子発現を示す。
図4Bは、レトロウイルス誘導(OK−1、OK−2、OK−3)及びエピソームベクター誘導(EV−1、EV−2、EV−3)アカゲザルプライム型iPSCにおける多能性マーカー遺伝子発現のRT−PCR分析を示す図である。「Endo」は、内在性遺伝子発現を示す。
図4Cは、全ての外因性転写因子遺伝子の発現の定量的RT−PCR分析を示す棒グラフである。全ての値は、3つの独立した実験からの平均±s.e.mである。

0013

I.定義
本明細書で使用する場合、用語「化学的に誘導した多能性幹細胞」(ciPSC)は、多能性ではない細胞、つまり、1つ又は複数の形質導入遺伝子の発現によってではなく、化合物と非多能性細胞を接触させることによる、多能性又は分化した細胞由来多能性細胞を指す。

0014

本明細書で使用する場合、「2i」は、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3及びマイトジェン活性化タンパク質キナーゼシグナル伝達を二重阻害するESC培養培地、例えば2iを補ったESC培養培地を指す(CHIR99021及びPD0325901)。

0015

本明細書で使用する場合、用語「誘導多能性幹細胞」(iPSC)は、人工的に非多能性細胞に由来する多能性幹細胞の型である。CiPSCはiPSCであるが、それらは、多能性を付与するために遺伝子操作されていないという点で、いくつかのiPSCとは異なる。

0016

TSIナイーブ型PSCを指す場合、用語「単離した」又は「精製した」は、少なくとも10%、20%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%ナイーブ型多能性細胞ではない細胞型を夾雑しない化学的にナイーブ型誘導したナイーブ型多能性幹細胞を意味する。単離したTSIナイーブ型PSCはまた、可溶性の、自然発生の分子を実質的に含まない場合がある。

0017

本明細書で使用する場合、「培地」及び「培養培地」は、細胞培養環境を指す。培地は典型的には等張液であり、液体ゼラチン状、又は半固体であってよく、例えば細胞接着又は支持のためのマトリックスを提供する。本明細書で使用する場合、培地は、細胞を培養するために必要な栄養学的な、化学的な、及び構造的な支持のための成分を含むことができる。

0018

本明細書で使用する場合、用語「多能性(pluripotency)」(又は多能性(pluripotent))は、3つの胚葉である内胚葉(例えば、胃内部の膜、胃腸管)、中胚葉(例えば、筋肉、骨、血液、泌尿生殖器)、又は外胚葉(例えば、表皮組織及び神経系)の任意に分化する能力を有する幹細胞を指す。多能性幹細胞は、可塑性でなく、より分化し、与えた臓器内の細胞のいくつかの型の1つになり得る。例えば、多能性血液幹細胞赤血球前駆細胞白血球又は血小板産生細胞に発生することができる。生体幹細胞は多能性幹細胞である。脂肪由来幹細胞は多能性である。

0019

「多能性細胞」は、本明細書において「多能性幹細胞」と交換可能に使用される。

0020

用語「小分子」は、2000ダルトンより小さい、より好ましくは1500ダルトンより小さい、最も好ましくは1000ダルトンより小さい分子量を有する、有機又は有機金属化合物などの分子を指す。

0021

本明細書で使用する場合、用語「TGFβ−シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSC」は、「ナイーブ型」PSCである特徴が人工的に付与されるPSC、本明細書に開示の化合物のカクテルで非ナイーブ型PSC細胞を培養することによる非ナイーブ型PSC(ドナー細胞)を指し、ナイーブ型PSCへの変換/再プログラミングがTGFβシグナル伝達非依存的である。ドナー細胞は非PSC及びPSCを含み、多能性を維持する能力はTGFβシグナル伝達非依存性である。TGFβシグナル伝達非依存性は、少なくとも5日間、TGFβ1非依存的に培養した場合、ナイーブ型PSCの多能性を維持する能力によって決定される(TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照に対するTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合)。ナイーブ型PSCのTGFβシグナル伝達非依存性を決定する例は、以下に更に記載するように「細胞培養」で提供される。

0022

II.組成物
非ナイーブ型多能性幹細胞をTGF−βシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSCへと変換するための化合物のカクテルは、非ナイーブ型PSCをTGFβシグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSCへと変換/再プログラムするため、及び培養中ナイーブ型状態に細胞を維持するために有効量の本明細書に開示の化合物を含む。化合物のカクテルは、好ましくはPKC阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ、NOTCH阻害剤、TGFR阻害剤、又はFGFR阻害剤を含まない。化合物のカクテルはTGFβを含まないことがより好ましい。

0023

本明細書に開示の組成物は、単離したTGF−β−シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSCも含む。
A.非ナイーブ型PSCをTGF−β−シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSCへと再プログラミングするための化合物のカクテル

0024

化合物のカクテルは、サイトカイン、小分子及び塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などのタンパク質因子を含む。最も好ましいカクテルは、4ng/ml bFGF、10ng/ml ヒトLIF、CHIR99021(3μM)及びPD0325901(0.5μM)、及びSP600125(10μM)、及びSB203580(10μM)を含む。

0025

1.サイトカイン
好ましいサイトカインは、ヒト白血病抑制因子(LIF)(“L)、インターロイキンクラスサイトカインであり、1〜100ng/ml、好ましくは1〜50、及びさらにより好ましくは1〜30ng/mlの範囲の濃度で使用される。lL−6は、ニューロポイエチンの創立メンバーであり、構造的に関連するサイトカインのグループである、プロトタイプの4ヘリックスバンドルサイトカインであり、IL−6、IL−11、IL−27、IL−31、白血病抑制因子、オンコスタチンMカルジオトロフィン−1、ニューロポイエチン、及びカルジオトロフィン様サイトカイン因子1(新しいニューロトロフィン1及びB細胞刺激因子−3としても公知)、及びIL−6の2つのウイルス類似体を含む。サイトカインのインターロイキン6ファミリーのこれらのメンバーは、LIFについて開示したのと同等の濃度で本明細書に開示の組成物に使用することができる。

0026

2.小分子
本明細書に開示の化学カクテルは、単独で又はタンパク質と組み合わせて2000ダルトンより小さい、より好ましくは1500ダルトンより小さい、最も好ましくは1000ダルトンより小さい分子量を有する、有効量の小分子を含む。小分子は、900ダルトンより小さい又は等しい、若しくは500ダルトンより小さい又は等しい分子量を有し得る。より大きな分子は、化学的に誘導する再プログラミング、好ましくは本明細書で同定した小分子と同じ経路の標的化において使用することができる。

0027

(i)ERK1/2阻害剤
好ましいERK1/2阻害剤は、0.1〜5μM、好ましくは0.5と3の間、さらにより好ましくは1.5と1μMの間の濃度範囲のPD0325901(N−[(2R)−2,3−ジヒドロキシプロポキシ]−3,4−ジフルオロ−2−[(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)アミノ]−ベンズアミド)である。例えば、カクテルは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5μMの濃度でPD0325901を含むことができる。しかし、他の有用な阻害剤は、限定されないが、PD198306(N−(シクロプロピルメトキシ)−3,4,5−トリフルオロ−2−[(4−ヨード−2−メチルフェニル)アミノ]−ベンズアミド);SL327(α−[アミノ[(4−アミノフェニルチオメチレン]−2−(トリフルオロメチルベンゼンアセトニトリル);及びU0126(1,4−ジアミノ−2,3−ジシアノ−1,4−ビス[2−アミノフェニルチオブタジエン)を含む。

0028

(ii)GSK阻害剤
GSK阻害剤は好ましくはGSK3を阻害し、好ましくはGSK3に選択的である。好適なGSK阻害剤は、アミノピリミジン、グリコーゲン合成酵素キナーゼ3阻害剤であるCHIR99021である。CINP組成物は、0.01〜20μM、好ましくは1と3μMの間、さらにより好ましくは1.5と3μMの間の濃度範囲でCHIR99021を含む。例えば、CINPは、0.01、0.05、0.1、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、10、20μMの濃度でCHIR99021を含み得る。当業者が必要な有効量に容易に合わせることができるように、これらの数値の間にある濃度を熟慮した。

0029

しかし、他のGSK阻害剤が市販されており、本明細書に開示の組成物に使用することができる。例としては、限定されないが、BIO−アセトキシム;GSK3I阻害剤XV;SB−216763;CHIR99021のヒドロクロリド塩であるCHIR99021トリヒドロクロリド;GSK−3阻害剤IX[((2Z,3E)−6’−ブロモ−3−(ヒドロキシイミノ)−[2,3’−ビインドリニリデン]−2’−オン];GSK 3IX[6−ブロモインジルビン−3’−オキシム];GSK−3β阻害剤XII[3−[[6−(3−アミノフェニル)−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−4−イル]オキシフェノール];GSK−3阻害剤XVI[6−(2−(4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−メチル−1H−イミダゾール−2−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)エチル−アミノ)−ニコチノニトリル];SB−415286[3−[(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ]−4−(2−ニトロフェニル)−1H−ピロール−2,5−ジオン];及びBio[(2’Z,3’E)−6−ブロモインジルビン−3’−オキシム]が挙げられる。

0030

非ナイーブ型細胞をTSIナイーブ型PSCへと再プログラミングするためのカクテルに含むことができる有用な化合物の非限定的なリストを、それらの構造を含む表1に提供する。

0031

(iii)JNK阻害剤
好ましいJNK阻害剤は、1と100μMの間、好ましくは1〜50μM、及びさらにより好ましくは1〜30μMの濃度範囲のSP600125(アントラ[1−9−cd]ピラゾール−6(2H)−オン)である。例えば、組成物のカクテルは、5、10、15、20、25、又は30μMのSP600125を含み得る。当業者が必要な有効量に容易に合わせることができるように、これらの数値の間にある濃度を熟慮した。

0032

他の有用なJNK阻害剤は、限定されないが、BI 78D3(4−(2,3−ジヒドロ−1,4−ベンゾジオキシン−6−イル)−2,4−ジヒドロ−5−[(5−ニトロ−2−チアゾリル)チオ]−3H−1,2,4−トリアゾル−3−オン);CEP 1347((9S,10R,12R)−5−16−ビス[(エチルチオ)メチル]−2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−ヒドロキシ−9−メチル−1−オキソ−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−10−カルボン酸メチルエステル);及びSU 3327(−[(5−ニトロ−2−チアゾリル)チオ]−1,3,4チアジアゾール−2−アミン);AEG3482(6−フェニルイミダゾ[2,1−b]−1,3,4−チアジアゾール−2−スルホンアミド)を含む。

0033

(iv)p38MAPK阻害剤
好ましいp38 MAPK阻害剤は、1と100μMの間、好ましくは1〜50μM、及びさらにより好ましくは1〜30μMの濃度範囲で使用されるSB203580(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル]ピリジン)である。例えば、組成物のカクテルは5、10、15、20、25、又は30μMのSB203580を含み得る。他の有用なp38 MAPK阻害剤は、限定されないが、SB 203580塩酸塩(4−[5−(4−フルオロフェニル)−2−[4−(メチルスルフォニル)フェニル]−1H−イミダゾール−4−イル]ピリジン塩酸塩);SB202190(4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(4−ピリジニル)−1H−イミダゾール−2−イル]フェノール);DBM 1285二塩酸塩(N−シクロプロピル−4−[4−(4−フルオロフェニル)−2−(4−ピペリジニル)−5−チアゾリル]−2−ピリミジンアミン二塩酸塩);SB 239063(トランス−4−[4−(4−フルオロフェニル)−5−(2−メトキシ−4−ピリミジニル)−1H−イミダゾール−1−イル]シクロヘキサノール);SKF 86002二塩酸塩(6−(4−フルオロフェニル)−2,3−ジヒドロ−5−(4−ピリジニル)イミダゾ[2,1−b]チアゾール二塩酸塩)を含む。

0034

3.タンパク質因子
組換え塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)などのタンパク質因子は、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型PSCに変換するためのプロトコールにおいて有効であることが実証されている。bFGFは、10ng/mL〜200ng/mLの濃度範囲、好ましくは10ng/mLの濃度で使用することができる。使用することができる他の因子はFGF1〜18を含む。

0035

B.誘導される細胞(ドナー細胞)
TSIナイーブ型PSCは、サルなど、例えば、アカゲザル、チンパンジーゴリラヒヒなどの非ヒト霊長類から、いくつかの実施形態において得た多能性細胞、又は部分的に若しくは完全に分化した細胞を誘導/再プログラミングすることによって得た。他の実施形態では、しかしながら、誘導/再プログラムされた細胞はヒトから得られる。供給源骨髄、線維芽細胞、胎児組織(例えば、胎児肝臓組織)、末梢血臍帯血膵臓、皮膚又は任意の臓器若しくは組織を含む。

0036

好ましい実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、多能性細胞、例えば胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞(iPSC)から得られる。iPSC誘導細胞は、遺伝子工学及び/又は純粋な化学的再プログラミングによって得られる。他の実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、胚盤胞から得られる。

0037

iPSCは化学的に誘導した線維芽細胞、組織脂肪幹細胞神経幹細胞又は腸上皮由来の細胞から得られることが好ましい。いくつかの実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、化学的に誘導した新生児(例えば包皮)又は成人線維芽細胞から得られる。しかしながら、iPSCは、限定されないが、多能性幹細胞、血液起源の細胞、起源の細胞、皮膚由来細胞、線維芽細胞、脂肪細胞上皮細胞内皮細胞間葉細胞実質細胞、神経系の細胞、及び結合組織細胞を含む、他の細胞型から得ることができる。

0038

本明細書に開示の方法において使用することができる多能性細胞は、当技術分野で公知であり、記載されており、培養細胞を維持する方法を含む。

0039

ドナー細胞は、適当な臓器又は組織を脱凝集することにより単離でき、当業者に公知の技術を使用する細胞源として寄与する。例えば、組織又は臓器は、機械的に脱凝集及び/又は消化酵素及び/又は隣接する細胞間の結合を弱めるキレート剤で処置することができ、組織は明らかな細胞破砕なく個々の細胞の懸濁液を形成するために分散することができる。酵素解離は、組織を刻むステップ及び刻んだ組織をトリプシンキモトリプシンコラゲナーゼエラスターゼ、及び/又はヒアルロニダーゼ、DNase、プロナーゼディスパーゼなどのうちの1つ又は複数の酵素で処置するステップによって達成することができる。機械的な破壊も、限定されないが、粉砕機ブレンダー、ふるい、ホモジナイザー圧力セル、又はインネーター(insonator)の使用を含む、多くの方法によって達成することができる。

0040

C.TGF−β−シグナル伝達非依存性(TSI)ナイーブ型PSC
TSIナイーブ型PSCは、(i)形態学的に、(ii)機能的に、特徴:(a)TGFβ1非依存性の多能性の維持(TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照と比較したTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合);(b)3つの胚葉の組織へと分化する細胞の能力;(c)PRDM14、KLF5、ZFP42(REX1)、LIFR、TBX3、及びNANOGなどのうちの1つ又は複数のナイーブ型状態関連転写産物の発現の上方制御、(d)TRA−1−60、TRA−1−81、及びSSEA−4などのうちの1つ又は複数の多能性マーカーの発現の上方制御;(e)SSEA−1などのうちの1つ又は複数の多能性マーカーの発現の下方制御;(f)in vivoで種間キメラを形成する能力に基づいて同定することができる。

0041

TSIナイーブ型PSCはドーム形状コロニーを形成する。したがって、ドーム形状コロニーの形成は、TSIナイーブ型PSCを同定し、続いて本明細書に例示するように細胞培養することができる。TSIナイーブ型PSCは、当技術分野で公知の方法を使用して3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、及び内胚葉のそれぞれから1つ又は複数の細胞/組織へと分化する能力を有する。

0042

外胚葉は胚の外側の層を生成し、胚のエピブラストから形成する。外胚葉は表面の外胚葉、神経冠、及び神経管へと発生する。表面の外胚葉は、表皮毛髪、爪、目のレンズ皮脂腺角膜、歯のエナメル、口及び上皮を発生する。外胚葉の神経冠は、末梢神経系、副腎髄質メラニン形成細胞、顔の軟骨組織へと発生する。外胚葉の神経管は、脳、脊髄下垂体後葉運動神経、及び網膜へと発生する。

0043

内胚葉はまず、扁平な細胞からなり、次いで円柱状になる。内胚葉は、口及び咽頭の一部並び直腸末端部分を除く消化管全体の上皮内層を形成する(外胚葉の退行によって裏打ちされる)。内胚葉はまた、肝臓及び膵臓のもの;耳管及び鼓膜の上皮;気管気管支、及び肺の気室膀胱及び尿道の部分;並びに甲状腺及び胸腺濾胞内膜を含む消化管へ開く全ての表層細胞も形成する。内胚葉は:結腸、肝臓、膵臓、膀胱、気管の上皮部分、肺、咽頭、甲状腺、副甲状腺、及び腸を形成する。

0044

中胚葉は、結合組織、筋肉(平滑及び横紋)、リンパ系、骨、漿膜、軟骨組織、脂肪組織循環系、真皮泌尿生殖器系、及び脊索を形成する。

0045

TSIナイーブ型PSCは、未処置の相当するin vitroでの培養細胞又は他のPSCとは、TGFβ1非依存性の多能性を維持する能力(TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照と比較したTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合)において、さらに区別することができる。例えば、他のPSCとは対照的に、TSIナイーブ型PSCはTGFβ1受容体阻害剤の存在下で少なくとも5日間培養後、多能性を維持することができる。ナイーブ型PSCのTGFβシグナル伝達非依存性を決定する例は、「細胞培養」で提供される。簡潔に言うと、TSIナイーブ型PSCは、最適化した変換培地でのアカゲザルのナイーブ型iPSC培養に関して本明細書に開示のように培養される。最適化した変換培地は、補充培地にTGFβ1受容体阻害剤、及びTSIナイーブ型PSCを捕い、実施例に記載のようにTRA−1−81−陽性細胞を同定し、TGFβ1受容体阻害剤を捕わずに同様に培養したTSIナイーブ型PSCと比較することができる。ナイーブ型細胞は、このアッセイにおいて対照と比較した場合、すなわち、TRA−1−81−陽性細胞が2倍より多く減少し、ナイーブ型PSCが本明細書に定義したようにTSIナイーブ型PSCとして特徴づけられない場合、50%より少ない、好ましくは40%、30%、20%、10%、5%若しくはそれ以下より少ないTRA−1−81−陽性細胞の減少に基づいてTSIナイーブ型PSCとして特徴づけられる。或いは、又はさらに、TSIナイーブ型PSCは、明白な分化及び未処置対照と比較した場合の処置した細胞から得られたコロニーにおけるTRA−1−81発現の減少によって測定したように、Rho−関連の選択的阻害剤コイルドコイル含有タンパク質キナーゼ(ROCK)、例えばY27632[(+)−(R)−トランス−4−(1−アミノエチル)−N−(4−ピリジルシクロヘキサンカルボキサミド+++二塩酸塩)](10μM)及びタンパク質キナーゼC(PKC)阻害剤、例えばGO6983[3−[1−[3−(ジメチルアミノプロピル]−5−メトキシ−1H−インドール−3−イル]−4−(1H−インドール−3−イル)−1H−ピロール−2,5−ジオン](5μM)の存在下で多能性を維持することができない点で他のPSCとは区別することができる。

0046

III.作製方法
A.非PSCのTSIナイーブ型PSCへの再プログラミング
TSIナイーブ型PSCは、誘導/再プログラムされる細胞(本明細書ではドナー細胞)を本明細書に開示の化合物のカクテルを含有する培養培地に、細胞のTSIナイーブ型PSCへの再プログラミングをもたらすのに十分な期間接触させることにより産生される。

0047

ドナー細胞は、細胞のTSIナイーブ型PSCへの再プログラミングを誘導及び/又は増強するのに有効な量で本明細書に開示のカクテルと接触する。当業者は、以下の例に概説した方法、又は当業者に公知の他の方法を使用することによって、完全な再プログラミングを提供するのに必要な本明細書に開示の化合物の濃度を容易に決定できる。好ましい実施形態では、ドナーは多能性幹細胞、例えば胚性幹細胞又は誘導多能性幹細胞(iPSC)である。iPSCは、遺伝子工学及び/又は純粋な化学的再プログラミングによって得られる細胞を含む。他の実施形態では、TSIナイーブ型PSCは胚盤胞(blactocyt)から得られる。

0048

ドナー細胞が線維芽細胞などの多能性幹細胞ではない実施形態では、ドナー細胞はTSIナイーブ型PSCへの再プログラミングの前に、プライム型誘導多能性幹細胞(iPSC)へと変換することができる。或いは、細胞は直接TSIナイーブ型PSCへと変換することができる。非多能性幹細胞を誘導多能性幹細胞へと変換する方法は、当技術分野で公知であり、例えば、Liuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008);Zhaoら、Cell Stem Cell、3:475〜479(2008)、Okitaら、Nat.Methods、8:409〜412(2011))に記載されている。iPSCは、TSIナイーブ型PSCへの再プログラミング前20〜40日の間、好ましくは25〜35日の間の期間、iPSC用の培養培地で維持され(先に記載したように)、多能性の誘導へと続く(Liuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008);Zhaoら、Cell Stem Cell、3:475〜479(2008)、Okitaら、Nat.Methods、8:409〜412(2011))。例えば、Liuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008)に記載のように、レトロウイルス因子含有再プログラミング因子OCT4、KL4)での線維芽細胞への形質導入後、そのように生成されたiPSCは実施例に記載のように、小分子を捕った幹細胞培養培地で、培地を2日ごとに交換しながら培養する。iPSCコロニーは、TSIナイーブ型PSCへの再プログラミングのためおよそ20〜40日、好ましくはおよそ25〜35日で選択し、iPS用の培養条件下でフィーダー細胞上で維持する。iPSCをTSIナイーブ型PSCへと再プログラムするため、プライム型iPSCを4と14日の間、好ましくは7〜10日の間の期間、最初は本明細書に開示の化合物のカクテルで培養する。

0049

非多能性幹細胞上で直接変換、例えば、線維芽細胞をTSIナイーブ型PSCへ変換するため、細胞に、例えばLiuら、Cell Stem Cell、3:587〜590(2008)に記載のように再プログラミング因子を含有するレトロウイルスベクターを感染させ、15〜35日、好ましくは15と20日の間、より好ましくは20日間の範囲の期間、基礎培地DF12、20%KSR、塩基性線維芽細胞成長因子)で維持する。次いで、細胞培養培地を、7〜10日の期間、非ナイーブ型PSCをTSIナイーブ型PSCへと再プログラミングするための因子のカクテルを含有する細胞培養培地に交換する。

0050

好ましい実施形態では、細胞をTSIナイーブ型PSCへと再プログラミングするための細胞培養培地は、PKC阻害剤、ROCK阻害剤、TGFβ、NOTCH阻害剤、TGFR阻害剤又はFGFR阻害剤を含まない。化合物のカクテルはTGFβを含まないことがより好ましい。TSIナイーブ型PSCを単離し、それらの生成に使用する同じ化合物のカクテルを含む好適な幹細胞培養培地でナイーブ型状態に維持する。

0051

生じた細胞は、(i)形態学的に、(ii)機能的に、特徴:(a)例えば、本明細書に開示のように測定したTGFβ1非依存性の多能性の維持(TGFβ1受容体阻害剤の存在下で対照と比較したTRA−1−81−陽性細胞の割合の倍数変化によって測定した場合);(b)3つの胚葉の組織へと分化する細胞の能力;(c)PRDM14、KLF5、ZFP42(REX1)、LIFR、TBX3、及びNANOGなどのうちの1つ又は複数のナイーブ型状態関連転写産物の発現の上方制御、(d)TRA−1−60、TRA−1−81、及びSSEA−4などのうちの1つ又は複数の多能性マーカーの発現の上方制御;(e)SSEA−1など1つ又は複数の多能性マーカーの下方制御;(f)in vivoで種間キメラを形成する能力に基づいて、TSIナイーブ型PSCとして同定される。

0052

B.TSIナイーブ型PSCの単離
TSIナイーブ型PSCの実質的に精製した集団は、例えば培養供給源からの抽出(例えば、密度勾配遠心及び/又はフローサイトメトリーを介して)により得ることができる。純度は任意の適切な方法によって測定できる。多能性細胞は、例えばフローサイトメトリー(例えばFACS分析)により、99%〜100%精製できる。TSIナイーブ型PSCは、例えば誘導多能性幹細胞のマーカー又はマーカーの組合せと結合する分子(例えば抗体、抗体誘導体リガンド又はFc−ペプチド融合分子)を使用し、それにより分子を結合する細胞をポジティブに選択すること(すなわち、ポジティブ選択)により単離できる。ポジティブ選択の方法の他の例は、所望の及び所望ではない細胞型の混合集合において所望の細胞型の成長を優先的に促進する方法を含む。或いは、所望の細胞型に存在しないが、所望ではない細胞型には存在するマーカーに結合する分子を使用することにより、そのようなマーカーを含有する所望ではない細胞は所望の細胞から除去することができる(すなわち、ネガティブ選択)。他のネガティブ選択の方法は、所望の及び所望ではない細胞型の混合集団において、所望ではない細胞型を優先的に死滅させ又は成長を阻害することを含む。したがって、ネガティブ選択、ポジティブ選択、又はそれらの組合せを使用することにより、幹細胞の濃縮集団を作製できる。

0053

分離手順は、抗体でコートした磁気ビーズアフィニティークロマトグラフィーモノクローナル抗体に結合した細胞毒性剤、若しくはモノクローナル抗体と併せて使用したそのような薬剤、例えば補体及び細胞毒、並びに固体マトリックス(例えばプレート)に結合した抗体による「パニング」、又は他の便利な技術を使用する磁気分離を含み得る。精密な分離を提供する技術は、洗練の様々な程度、例えば、複数のカラーチャンネル、低角及び鈍角光散乱検出チャンネル(low angle and obtuse light scattering detecting channel)、及びインピーダンスチャンネルを有し得る蛍光活性細胞ソーターを含む。抗体は、直接分離を可能にする磁気ビーズ、支持体に結合するアビジン又はストレプトアビジンにより除去することができるビオチン、又は蛍光活性化細胞ソーターで使用することができる蛍光色素など、マーカーと結合し、特定の細胞型の分離を容易にし得る。誘導多能性幹細胞の生存能力過度に有害ではない任意の技術が用いられ得る。一実施形態では、細胞は、マーカーに対する抗体(例えば、TRA−1−81抗体)とインキュベートし、マーカーに対してポジティブに染色された細胞を手動で選択し、継代培養した。

0054

濃縮方法の組合せは、精製若しくは濃縮の時間又は効率を改善するために使用され得る。例えば、対象の細胞型を示さないマーカーを有する細胞を除去する濃縮工程後、細胞は、蛍光活性化細胞ソーター(FACS)若しくは高い特異性を有する他の方法論によりさらに分離又は濃縮し得る。マルチカラー分析はFACSと用いられ得る。細胞は、特定の抗原又はその欠損に関する染色のレベルに基づいて分離され得る。蛍光色素は、特定の抗原に特異的な抗体を標識するために使用され得る。そのような蛍光色素は、フィコビリンタンパク質、例えば、フィコエリスリン及びアロフィコシアニンフルオレセイン、及びテキサスレッドを含む。

0055

C.TSIナイーブ型PSC(及びそれらの子孫)の培養及び保存
TSIナイーブ型PSCは、培養で増やし、後の回復及び使用のために保存することができる。細胞の培養又は幹細胞の混合培養が確立されると、組織の形成あり又はなしで、細胞増殖を招く条件下で細胞密度を示すように新しい培地に継代することにより、細胞の集団はin vitroで有糸分裂的に増える。そのような培養方法は、例えば、分化を誘導する特定の成長因子(例えば、IGF、EGF、FGF、VEGF及び/又は他の成長因子)を欠く培養培地で細胞を継代することを含むことができる。培養細胞は、十分な細胞密度に達した場合、新しい培地に移すことができる。

0056

好ましい実施形態では、TSIナイーブ型PSCを維持するための細胞培養培地は、例えば、ナイーブ型多能性の誘導に使用する、つまり本明細書に開示の化合物のカクテルを、非ナイーブ型多能性細胞をTSIナイーブ型PSCへと再プログラムし、細胞をナイーブ型状態に維持するのに使用するのと同じ濃度の、本明細書に開示の化合物のカクテルを捕ったN2B27培地である。例えば、TSIナイーブ型PSCを維持するための細胞培養培地は、N2B27培地(BSAなし)、5%KSR(ノックアウト血清代替物)を捕ったN2B27培地(BSAなし)であり得る。他の基本培地、例えば、20%KSRを捕ったDF12培地を使用することもできる。これらの基本培地は、上記のように化合物のカクテルを捕う。本発明のいくつかの実施形態に従って、本明細書に開示の有効量の化合物のカクテルを含む細胞培養培地は、培養の2〜100回を超える継代にわたりTSIナイーブ型PSCを未分化及びナイーブ型状態に維持することができる。例えば、カクテルは、培養の2回の継代、3、4、5、6、7、8、9、又は10回の継代、好ましくは10回より多い継代、例えば培養の約20回の継代、例えば、培養中少なくとも約25回、約30回、約35回、約40回、約45回、約50回、約55回、約60回、約65回、約70回、約75回、及び約80回の継代の間、TSIナイーブ型PSCを未分化及びナイーブ型状態に維持することができる。好ましい実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、2、3、4、5、6、7、8、9、10回、10回より多く、例えば培養の約20回の継代、例えば、培養中少なくとも約25回、約30回、約35回、約40回、約45回、約50回、約55回、約60回、約65回、約70回、約75回、及び約80回の継代の間、正常な核型を維持する。本明細書で例示するように、開示する化合物のカクテルは、単一細胞を継代した正常な核型のTSIナイーブ型PSCを培養で少なくとも8ヵ月間維持できる。

0057

細胞は、Doyleら、(eds.)、1995、Cell&Tissue Culture:Laboratory Procedures、John Wiley&Sons、Chichesterに記載されるものなど、公知の方法に従って、保管のため凍結保存することができる。例えば、細胞は、15〜20%ウシ胎仔血清(FBS)及び10%ジメチルスルホキシド(DMSO)、(5〜10%グリセロールあり又はなし)を含有する培養培地など、「凍結培地」に、例えば約4〜10×106個の細胞/mlの密度で懸濁することができる。細胞をガラス又はプラスチックバイアル分注し、次いでそれを密封し、プラグラム制御できる又は受動的冷凍機凍結チャンバーに移した。凍結の最適な速さは、経験的に決定し得る。例えば、融解熱による−1℃/分の温度変化を与える凍結プログラムを使用し得る。細胞を含有するバイアルが−80℃に達すると、それらは液体窒素保管場所に移される。凍結保存細胞は1年間保存できる。

0058

IV.使用方法
所望の細胞型又は形態を生じることができる容易に入手可能な幹細胞源の同定は、治療処置、組織工学及び研究に重要である。幹細胞の入手可能性は、移植、組織工学、血管新生の制御、脈管形成、臓器再生、動物モデル、細胞置換、又は細胞治療、並びに疾患の予防などに非常に有用である。そのような幹細胞は、遺伝子治療レジメンの一部として対象に遺伝子を導入するために使用することもできる。

0059

A.分化した体細胞の提供(再分化した細胞)
いったん確立されると、幹細胞の培養は、子孫細胞、例えば、新しい組織を産生することができる線維芽細胞を産生するのに使用され得る。TSIナイーブ型PSCは、例えば、上皮細胞、角化細胞、メラニン形成細胞、脂肪細胞を含む皮膚及び毛髪細胞、例えば筋細胞軟骨細胞骨細胞胚胞細胞などの骨、筋肉及び結合組織を形成する細胞、例えば肝細胞腎臓細胞、副腎細胞、及び島細胞などの実質細胞、血液細胞網膜細胞(及び、の毛髪細胞、又は味覚突起を形成するものなど感覚認知に含まれる他の細胞)並びに神経を含む神経組織など、3つの胚葉のいずれかの細胞へと分化誘導され得る。

0060

一実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、「外胚葉分化」培地に細胞を曝露することにより、外胚葉起源の細胞へと分化誘導される。別の実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、「中胚葉分化培地」に細胞を曝露することにより、中胚葉起源の細胞へと分化誘導される。さらに別の実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、「内胚葉培地」に細胞を曝露することにより、内胚葉起源の細胞へと分化誘導される。「内胚葉」、「中胚葉」、及び「外胚葉」培地の成分は、当業者に公知である。公知の細胞表面マーカーは、細胞が、細胞培養培地と一致する系列の細胞へと確かに分化することを確認するために使用できる。3つの胚葉の分化を確かめる最も一般的な許容されるマーカーは、内胚葉細胞に関してはアルファ胎児性タンパク質、中胚葉に関してはアルファ平滑筋アクチン、外胚葉に関してはベータ−IIIチューブリンの発現であり、これら全ては、これらの組織の発生の非常に初期に通常発現する。

0061

幹細胞の線維芽細胞又は他の細胞型への分化、続いてそれらからの組織の産生は、特定の細胞外成長因子によって、又は幹細胞培養の培養条件(例えば、密度)の変更によって引き起こされ得る。所望の細胞型の細胞へと細胞の分化を誘導するための方法は、当技術分野で公知である。例えば、TSIナイーブ型PSCは、細胞の環境物質(例えば、成長因子、酵素、ホルモン又は他のシグナル分子)を添加することにより分化誘導され得る。分化の誘導に使用され得る因子の例としては、エリスロポエチンコロニー刺激因子、例えばGMCSF、G−CSF、又はM−CSF、インターロイキン、例えばIL−1、−2、−3、−4、−5、−6、−7、−8、白血病抑制因子(LIF)、又は造血幹細胞因子(Stl)が挙げられ、組織コミット細胞又は他の系列コミット細胞型との共培養は、幹細胞を特定の系列にコミットするように誘導する。

0062

再分化した細胞は、培養で増やし、後に回復及び使用するために保管することができる。

0063

B.細胞治療
TSIナイーブ型PSCの治療用途は、誘導多能性幹細胞、幹細胞集団、又はそれらの子孫を個体に移植し、がん、傷、腫瘍傷害ウイルス感染糖尿病などから生じる疾患及び障害を含む様々な病理を処置することを含む。処置は、現在当技術分野で公知の任意の方法に従って、新しい組織を産生する細胞の使用、及びそのように産生された組織の使用を必要とすることがある。細胞は、移植、注入、又はそうでなければ組織損傷部位に直接投与することができ、それによりin vivoで新しい組織が産生される。一実施形態では、投与は、遺伝的に改変したTSIナイーブ型PSC又はそれらの子孫の投与を含む。

0064

好ましい実施形態では、TSIナイーブ型PSCは自家細胞から得られ、すなわちドナー細胞は自家性である。しかし、細胞は異種細胞から得ることができる。一実施形態では、ドナー細胞は、レシピエントに遺伝的に関連するドナーから得られる。別の実施形態では、ドナー細胞はレシピエントに遺伝的に関連しないドナーから得られる。

0065

TSIナイーブ型PSCが、レシピエント対象と比較して異種の(非自家性/同種)供給源に由来する場合、例えば免疫抑制剤シクロスポリン又はFK506の投与など付随する免疫抑制療法が典型的には与えられる。しかし、ヒト誘導多能性幹細胞の未熟な状態により、そのような免疫抑制療法が必要ではない場合がある。したがって、一実施形態では、ヒト誘導多能性幹細胞は、免疫調節(例えば免疫抑制)療法の不在下でレシピエントに投与することができる。或いは、細胞は膜にカプセル化することができ、液体の交換を可能にするが、細胞/細胞接触を防ぐ。マイクロカプセル化細胞の移植は当技術分野で公知である。例えばBalladurら、Surgery、117:189〜94、1995;及びDixitら、Cell Transplantation、1:275〜79(1992)。

0066

(i)糖尿病
糖尿病(DM)は、膵臓が十分なインシュリンを産生しないため又は細胞が産生されるインシュリンに応答しないためのいずれかで、患者高血糖である代謝疾患のグループである。インシュリン治療の有望な代替え案は、インシュリンが必要な患者への島細胞の供給である。Shapiroら、N Engl J Med.、343(4):230〜8(2000)は、ベータ細胞/島の移植は、糖尿病を有する患者に治療を提供することを実証した。多くのインシュリン型が市販されているが、これらの製剤は注射可能なように提供される。ヒト誘導多能性幹細胞は、糖尿病を予防又は治療するための島細胞の代替供給源を提供する。例えば、誘導多能性幹細胞は、単離され、膵臓細胞型へと分化し、対象に送達することができる。或いは、誘導多能性幹細胞は、対象の膵臓へと送達され、in vivoで島細胞へと分化することができる。したがって、細胞は、糖尿病の発症を予防又は治療するための移植に有用である。膵臓の島細胞の生存能力及び効能に影響を及ぼすことなくサイトカイン曝露後に炎症を減少する方法は、例えば、Naziruddinらの米国特許第8637494号に開示される。

0067

(ii)神経変性疾患
神経変性疾患は、外傷性又は虚血性脊髄損傷又は脳損傷など、疾患、遺伝性疾患又は損傷の結果として神経細胞変性を含む状態により特徴づけられる。神経変性状態は、神経細胞の損傷又は変性を含む、任意の疾患又は障害又は症状又はそれらの原因若しくは効果を含む。神経変性状態は、限定されないが、アレキサンダー病、アルパース病、アルツハイマー病、筋委縮性側索硬化症毛細血管拡張性運動失調症カナバン病、コカイン症候群皮質基底核変性症クロイツフェルトヤコブ病ハンチントン病、ケネディ病、クラッベ病レビー小体病、マシャド・ジョセフ病、多発性硬化症パーキンソン病ペリツェウスメルツバッヘル病、ニーマンピック病原発性側索硬化症レフサム病サンドホフ病、シルダー病スティール・リチャードソンオルゼウスキー症候群、脊髄癆、又は損傷した神経細胞と関連する任意の他の状態を含み得る。他の神経変性状態は、外傷性脊髄損傷、虚血性脊髄損傷、脳卒中、外傷性脳損傷、及び遺伝性疾患を含む又はそれによって引き起こされ得る。

0068

特に、開示する方法は、細胞が神経変性状態を改善できるようにin vitroで増やしたNSC、神経前駆細胞、又は神経前駆体を、それを必要とする対象に移植することを含む。増やした神経幹細胞の移植は、痙攣硬直発作麻痺、又は任意の他の筋肉の運動亢進の症状を伴う様々な形態の脊髄症を患う対象において、歩行機能を改善するために使用することができる。異なる神経変性状態の治療のために神経細胞及び神経子孫細胞を増やす並びに移植する方法が、例えばJoheらの米国特許第8236299号に開示されている。

0069

(iv)がん治療
TSIナイーブ型PSC及びそれらの子孫の治療用途は、誘導多能性幹細胞、幹細胞集団、又それらの子孫を個体へと移植し、がんに関連する症状を処置及び/又は改善することを含む。例えば、一実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、患者の細胞を死滅、減少、又は損傷する化学療法を受けたがん患者に投与することができる。がんの典型的な幹細胞移植では、しばしば放射線療法と共に、非常に高用量の化学療法が使用され、全てのがん細胞を破壊することを試みる。この治療はまた、骨髄の幹細胞も死滅させる。治療後すぐに、幹細胞を与え、破壊されたものと置換する。

0070

別の実施形態では、TSIナイーブ型PSCは、少なくとも1つのさらなる治療因子で形質導入又は形質転換することができる(脱分化因子に加えて)。例えば、いったんTSIナイーブ型PSCが単離されると、細胞は、治療用ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドで形質転換され、次いで対象に移植又は投与することができ、又は所望の細胞型に分化し、対象に移植及び送達することができる。そのような条件下で、ポリヌクレオチドはポリペプチド産物の送達のため対象内で発現される。

0071

(v)組織工学
TSIナイーブ型PSC及びそれらの子孫は、当技術分野で公知の方法を使用して、組織工学構築物を作製するために使用され得る。組織工学構築物は、損傷した臓器又は組織の修復又は置換のための人工器官として含む様々な目的のために使用され得る。それらは、構築物の細胞によって分泌されるタンパク質若しくは他の分子のin vivo送達系又は一般の薬物送達系としても機能し得る。組織工学構築物は、組織機能のin vitroモデルとして又は様々な治療若しくは医薬の効果を試験するためのモデルとしての用途も見出される。最も一般的に使用される幹細胞の移植のための生体材料足場は、Willerth,S.M.及びSakiyama−Elbert,S.E.、Combining stem cells and biomaterial scaffoldsfor constructing tissues and cell delivery(July 09、2008)、StemBook,ed.The Stem Cell Research Community、StemBookで概説されている。組織工学技術はしばしば、組織の成長を維持及び促進する適切な培養基質の選択を含む。一般に、これらの基質は三次元であり、対象の組織の所望の形状の足場を形成するために加工可能である。

0072

米国特許第6962814号は、一般に組織工学構築物及び操作した天然の組織を産生するための方法を開示する。特定の例に関して、Vacantiらの米国特許第7914579号は、組織工学の靭帯及びを開示する。米国特許第5716404号は、重合体マトリックスと組み合わせて移植した解離した筋肉細胞を使用する胸部組織再構築又は増加のための方法及び組成物を開示する。米国特許第8728495号は、自家皮膚線維芽細胞を使用する軟骨組織の修復を開示する。Duailibiらによる米国特許出願公開第20090029322号は、歯の代替物の作製に使用するための歯組織を形成するための幹細胞の使用を開示する。米国特許出願公開第2006/0019326号は、頭蓋内動脈瘤の治療のための細胞シード組工学ポリマーを開示する。Atalaによる米国特許出願公開第2007/0059293号は、損傷した臓器、例えば腎臓、心臓、肝臓、脾臓、膵臓、膀胱、尿管、及び尿道と置換するために使用することができる組織工学構築物(及びそのような構築物を作製する方法)を開示する。

0073

(vi)TSIナイーブ型PSCから産生される細胞(子孫)
TSIナイーブ型PSCは、例えば上皮細胞、角化細胞、メラニン形成細胞、脂肪細胞を含む皮膚及び毛髪細胞、例えば筋細胞、軟骨細胞、骨細胞、胚胞細胞などの骨、筋肉及び結合組織を形成する細胞、例えば幹細胞、腎臓細胞、副腎細胞、及び島細胞(例えば、アルファ細胞、デルタ細胞、PP細胞、及びベータ細胞)などの実質細胞、血液細胞(例えば、白血球、赤血球マクロファージ、及びリンパ球)、網膜細胞(及び、耳の毛髪細胞又は舌の味覚突起を形成するものなど感覚認知に含まれる他の細胞)並びに神経を含む神経組織など、3つの胚葉のいずれかの細胞へと分化誘導され得る。

0074

(vii)治療用組成物
TSIナイーブ型PSCは、投与、送達、又は対象、組織若しくは細胞と接触するために製剤化し、in vivo又はin vitro/ex vivoで脱分化を促進することができる。さらなる因子、例えば成長因子、分化若しくは脱分化を誘導する他の因子、分泌産物、免疫調節剤抗炎症剤、退行因子(regression factor)、神経支配、血管新生を促進する生物学的に活性な化合物又はリンパ性ネットワークの増強、及び薬物を組込むことができる。

0075

誘導多能性細胞は、TSIナイーブ型PSCの集団若しくはTSIナイーブ型PSC子孫単独で、又は担体若しくは支持体構造上又は内に含む組成物の方法で患者に投与することができる。多くの実施形態では、担体は必要ない。細胞は、細胞が必要な部位上又は内に注射により投与することができる。これらの場合、細胞は、典型的には細胞培養培地を除去するために洗浄され、生理的緩衝液に懸濁される。

0076

他の実施形態では、細胞は支持体構造と提供される、又は支持体上若しくは内に組込まれる。支持体構造は、メッシュ固体支持体、足場、管、多孔質構造、及び/又はヒドロゲルであってよい。支持体構造は、全体又は部分的に生分解性又は非生分解性であってよい。支持体は、天然若しくは合成ポリマーチタニウムなどの金属、骨若しくはヒドロキシアパタイト、又はセラミックから形成され得る。天然ポリマーは、コラーゲンヒアルロン酸多糖類、及びグリコサミノグリカンを含む。合成ポリマーは、ポリ乳酸ポリグリコール酸、及びそれらのコポリマーなどのポリヒドロキシ酸ポリヒドロキシ酪酸ポリオルトエステルポリ酸無水物ポリウレタンポリカルボン酸、及びポリエステルなどのポリヒドロキシアルカン酸を含む。これらは、移植片、管、メッシュ、又はヒドロゲルの形態であってよい。

0077

固体支持体
支持体構造は目の粗い織布又は不織布メッシュであってよく、細胞はメッシュ内及びメッシュ上に播種される。構造は固体構造支持体を含み得る。支持体は管、例えば神経軸索再成長のための神経管であってよい。支持体は、ステント又はバルブであってよい。支持体は、若しくは、又はその部分などの人工関節であってよく、多孔質構造への細胞の内殖及び/又は細胞の播種を可能にする有孔界面を有する。支持体構造の多くの他の型も可能である。例えば、支持体構造はスポンジ、泡、サンゴ、又は内部細孔を有する生体適合性無機構造、又は織り合わせたポリマー繊維メッシュシートから形成することができる。これらの支持体構造は、公知の方法を使用して調製できる。

0078

支持体構造は、ヒドロゲル−細胞混合物を形成及び支持する細孔状腔又は間隙を有する透水構造であってよい。例えば、支持体構造は、多孔質ポリマーメッシュ、天然若しくは合成スポンジ、又は金属又は骨若しくはヒドロキシアパタイトなどの材料から形成される支持体構造であってよい。支持体構造の多孔性は、栄養分が構造中に拡散でき、それにより効果的に内部の細胞に達し、細胞によって産生される老廃物は構造の外へ拡散できる。

0079

支持体構造は、新しい組織が所望される空間に適合するように形成することができる。例えば、支持体構造は火傷した皮膚の領域の形状又は欠損した軟骨組織若しくは骨の部分に適合するように形成することができる。作製する材料に依存して、支持体構造は、切断、成形鋳造、又は所望の形状を産生する任意の他の方法によって形成することができる。支持体は、以下に記載するように、支持体構造に細胞が播種され、又は支持体構造がヒドロゲル−細胞混合物で満たされる前若しくは後のいずれかに形成することができる。

0080

好適なポリマーの例は、グリコリド及びラクチドの90:10コポリマーであるポリグラクチンであり、VICRYL(商標)組み製の吸収性縫合糸(Ethicon Co.、Somerville、N.J.)として製造される。ポリマー繊維(VICRYL(商標)など)は、フェルト状ポリマーシートへと編む又は圧縮することができ、次いで任意の所望の形状に切断できる。或いは、ポリマー繊維は鋳型一緒に圧縮し、支持体構造に望ましい形状へとそれらを鋳造することができる。いくつかの場合、修正又は繊維メッシュにさらなる構造を付与するために成形されるように、さらなるポリマーをポリマー繊維へと添加することができる。例えば、ポリ乳酸溶液ポリグリコール酸繊維メッシュのこのシートに添加することができ、その組合せが一緒に成形され、多孔質支持体構造を形成することができる。ポリ乳酸はポリグリコール酸繊維の架橋に結合し、それによりこれらの個々の繊維をコーティング及び成形した繊維の形状を固定する。ポリ乳酸はまた、繊維間の空間も満たす。したがって、多孔性は支持体に導入されるポリ乳酸の量によって変わり得る。繊維メッシュを所望の形状に成形するのに必要な圧力は中程度であってよい。必要なのは、繊維が、ポリ乳酸の結合及びコーティング作用が効果を生じるのに十分長く決まった場所に固定されることだけである。

0081

或いは、又はさらに、支持体構造は、当技術分野で公知の技術によって産生されるポリマー繊維若しくはポリマー構造の他の型を含むことができる。例えば、薄いポリマーフィルムポリマー溶液から溶媒蒸発させることによって得ることができる。これらのフィルムは、ポリマー溶液が所望の形状のレリーフパターンを有する鋳型から蒸発する場合、所望の形状へと鋳造することができる。ポリマーゲルは当技術分野で公知の圧縮成形技術を使用して、薄い、透水ポリマー構造も成形することができる。
ヒドロゲル

0082

別の実施形態では、細胞をヒドロゲルと混合し、細胞−ヒドロゲル混合物を形成する。ヒドロゲルは、注射若しくはカテーテルによって、又は他の支持体構造の移植時に投与され得る。投与前、中、後に架橋が生じ得る。

0083

D.動物モデル及び臓器再生
単離したTSIナイーブ型PSCは、TSIナイーブ型PSCを所望の種(ドナー)から同じ又は異なる種の第二の動物(レシピエント)へと組込む動物モデルを生成するために使用できる。ドナー動物は、ヒト、マウス、ラットブタウシヒツジヤギウマイヌ、チンパンジー、ゴリラ、オラウータン、サル、マーモセットなどの哺乳動物であってよい。いくつかの好ましい実施形態では、動物モデルを提供するために使用するドナー哺乳動物はヒトであり、レシピエント哺乳動物はヒトではない。他の実施形態では、ドナー及びレシピエント動物サイズが一致する。レシピエントは、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オラウータン、サル、マーモセット及びボノボなど、ヒト以外の任意の動物であってよい。TSIナイーブ型PSCは、ヒトではない哺乳動物における臓器再生に使用することができ;TSIナイーブ型PSCは、発生段階の臓器の発生の欠如と関連する異常を有する哺乳動物において所望の臓器を産生するために使用することができる。

0084

方法は、TSIナイーブ型PSCをレシピエント非ヒト哺乳動物胚盤胞段階受精卵へと移植するステップ;当技術分野で公知の方法を使用して、同産仔を得るため非ヒト代理親哺乳動物の子宮で受精卵を発生するステップ及び同産仔から臓器を得るステップを含む。産生することができる臓器の例は、限定されないが、腎臓、心臓、膵臓、小脳、肺、甲状腺、毛髪、及び胸腺など、固定した形状を有する固体臓器を含む。レシピエント胚は、ブタ、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、チンパンジー、ゴリラ、オラウータン、サル、マーモセットなど、ヒト以外の任意の動物由来であってよい。

0085

ヒト化マウスモデルを生成するための方法は、当技術分野で公知であり(米国特許出願公開第20110258715号)、例えばItoら、Cellular&Molecular Immunology、9:208〜214(2012)に概説されている。対象の臓器の発生と関連する異常を有し、臓器を再生するために使用することができるレシピエント胚の例は、発生段階における腎臓の発生の欠如と関連する異常を有するShall1ノックアウト動物(Nishinakamuraら、Development、128:3105〜3115(2001);発生段階における膵臓の発生の欠如と関連する異常を有するPdx1ノックアウト動物(Offieldら、Development、122:983〜995(1996);発生段階における小脳の発生の欠如と関連する異常を有するWnt−1(int−1)ノックアウト動物(McMahonら、Cell、62:1073〜1085、(1990);発生段階における肺及び甲状腺の発生の欠如と関連する異常を有するT/ebpノックアウト動物(Kimuraら、Genes and Development、10:60〜69、1996)を含み;又は線維芽細胞成長因子(FGF)受容体(FGFR)の細胞内ドメインの欠損を過剰発現し、腎臓及び肺などの複数の臓器の欠損を引き起こすドミナントネガティブトランスジェニック変異体動物モデル(Celliら、EMBO J.、17:1642〜655、(1998))を使用できる。或いは、毛髪又は胸腺の産生にヌードマウスが使用できる。米国特許出願公開第20110258715号に記載の「ファウンダー」動物も使用され得る。

0086

V.キット
本明細書に開示の化学カクテルを含むキットを提供する。化学カクテルは上記の通りである。これらは、細胞培養培地への添加を促進する定義した濃度を有する形態であってよく、所望の濃度を生じる。キットは、所望の濃度範囲及びドナー細胞型に基づく投与時間を提供する指示書を含み得る。キットはまた、ナイーブ型多能性を誘導するため、ドナー細胞の培養用の化学カクテルと予備混合する細胞培養培地も含み得る。

0087

本発明は以下の非限定的な例を参照してさらに理解される。

0088

実験手順
プライム型iPSCからのアカゲザルナイーブ型iPSCの生成
本研究に使用する成体のアカゲザル(アカゲザル(Macaca mulatta)、♯9、♯2、♯11、及び♯12)は個々のケージ飼育した。全ての動物の手順は、中国医学会の実験動物センターによって承認され、アカゲザルの体細胞の使用は京大治験審査委員会によって認可された。線維芽細胞は、アカゲザルの耳の端から単離し、再プログラミン因子OCT4及びKLF4を含有するレトロウイルスベクターを感染させた。小分子を捕った培地は2日ごとに交換した。プライム型iPSCコロニーを、ウイルスの形質導入後およそ25〜35日で選択し、ヒトESC培地で増やした(D/F12+20%ノックアウト血清置換[KSR]+4ng/ml bEGF)。ナイーブ型状態の変換のため、プライム型iPSCコロニーをアクターゼによって解離し、フィーダー細胞上に再播種した。4ng/ml bEGF、10ng/ml ヒトLIF、CHIR99021(3μM)及びPD0325901(0.5μM)、及びSP600125(10μM)及びSB203580(10μM)を含む最適化した変換培地は毎日交換した。およそ7〜10日で、ドーム形状のコロニーを選択し、次いで多能性及び分化の特徴のさらなる分析のため新鮮なフィーダー細胞上に移した。

0089

(a)レトロウイルス感染及びアカゲザルプライム型iPSC生成
再プログラミング因子(OCT4、KLF4)を含有するレトロウイルスベクターは、先の報告に記載された(Liu Hら、2008)。レトロウイルスの産生、回収、及び感染も、記載されたように実施した(Liu Hら、2008及びZhao,Yら、2008)。小分子VPA(0.5mM;Sigma)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、616452(1μM;Calbiochem)及びトラニルシプロミン(5μM;Tocris)を捕った培地は2日ごとに交換した。アカゲザルプライム型iPSCコロニーを、ウイルスの形質導入後およそ25日目〜30日目に選択し、アカゲザルプライム型iPSC用の培養条件下でフィーダー細胞上で維持した。

0090

(b)プライム型iPSCからのアカゲザルナイーブ型iPSCの生成
アカゲザルプライム型iPSCを、アクターゼによって単一細胞に解離し、フィーダー細胞上に再播種した。4ng/ml bFGF(R&D Systems)、10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)及びPD0325901(0.5μM;Stemgent)を含む変換培地は、毎日交換した。およそ7日〜10日目に、ドーム形状のコロニーを選択し、新鮮なフィーダー細胞上に移した。伝統的な2i/LIF条件−10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)及びPD0325901(0.5μM;Stemgent)も試験し、陰性対照として提供した。

0091

(c)アカゲザルナイーブ型iPSCのための変換条件の最適化
アカゲザルプライム型iPSCを、アクターゼによって単一細胞に解離し、フィーダー細胞上に再播種した。4ng/ml bFGF(R&D Systems)、10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)及びPD0325901(0.5μM;Stemgent)を含む基本培養培地は、毎日交換した。培養条件の最適化のために試験した小分子は、SB203580(10μM;Tocris)、SP600125(10μM;Tocris)、Y27632(10μM;Tocris)及びGO6983(5μM;Tocris)である。8日間の処置後、細胞を固定し、TRA−1−81を免疫染色した。

0092

アカゲザル線維芽細胞からのナイーブ型iPSCの直接変換
再プログラミング因子(OCT4、SOX2、及びKLF4)を含有するレトロウイルスベクターは、記載された通りである(Liuら、2008)。基本培地(KO−DMEM、15%KSR)は、感染後2日ごとに交換した。およそ20日で、培地を、別の7〜10日間、4ng/ml bFGF(R&D Systems)、10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、PD0325901(0.5μM;Stemgent)、SB203580(10μM;Tocris)及びSP600125(10μM;Tocris)を含有する最適化した変換培地に交換した。次いで、ドーム形状のコロニーを選択し、新鮮なフィーダー細胞上に移した。

0093

細胞培養
初代アカゲザル皮膚線維芽細胞を、2のアカゲザルの耳の端から単離した。線維芽細胞及び293T細胞は、10%ウシ胎仔血清(Invitrogen)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;Hyclone)で培養した。Thomsonらによって確立された(Thomson J Aら、1995)アカゲザル胚性(ES)細胞(ES−7.5)、及びアカゲザルプライム型iPSCを培養し、先に記載したように継代した(Liu Hら、2008)。アカゲザルナイーブ型iPSCは、4ng/ml bFGF(R&D systems)、10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、PD0325901(0.5μM;Stemgent)、SB203580(10μM;Tocris)及びSP600125(10μM;Tocris)と85%ノックアウトDMEM(KO−DMEM、Invitrogen)、15%ノックアウト血清置換(KSR、Invitrogen)、N2サプリメント(100X、Invitrogen)、1mM L−グルタミン、0.1mM NEAA、0.1mM 2−MEを含む最適化した変換培地で培養した。アカゲザルナイーブ型iPSCは、フィーダー細胞上でアクターゼ(Millipore)を使用して4日ごとに単一細胞継代した。TSIナイーブ型PSCは、5%CO2、20%O2下、37℃で、最適化した変換培地で培養し、培地は毎日交換した。

0094

アカゲザルプライム型iPSC及びナイーブ型iPSCのシグナル伝達分析
アカゲザルプライム型iPSCは記載したように維持した(Liu Hら、2008)。アカゲザルナイーブ型iPSCは、4ng/ml bFGF(R&D Systems)、10ng/ml ヒトLIF(Millipore)、CHIR99021(3μM;Stemgent)、PD0325901(0.5μM;Stemgent)、SB203580(10μM;Tocris)及びSP600125(10μM;Tocris)で最適化した培地で維持した。試験したシグナル伝達モジュレーターは、SU5402(2μM;Tocris)、SB431542(10μM;Tocris)、Stattic(1μM;Tocris)及びTGF−β1(2ng/ml、Peprotech)である。5日間の処置後、細胞を固定し、TRA−1−81を免疫染色した。

0095

アルカリフォスファターゼ(ALP検出及び免疫蛍光法
LP活性を検出するため、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で3回洗浄し、BCIP/NBT(Promega)で15分間染色した。免疫蛍光法のため、一次抗体は、SSEA−1(1:50、Chemicon)、SSEA−4(1:20、Santa Cruz Biotechnology)、TRA−1−60(1:50、Santa Cruz Biotechnology)、TRA−1−81(1:50、Santa Cruz Biotechnology)、NANOG(1:100、R&D Systems)、TBX3(1:200、Abcam)、H3K27me3(1:200、Millipore)、GATA4(1:200、Santa Cruz Biotechnology)、OCT4(1:200、Abcam)及びSOX2(1:200、Santa Cruz Biotechnology)に対するものを含む。二次抗体は、ローダミン標識ロバ抗マウスIgG(1:100、Santa Cruz Biotechnology)、ローダミン標識ロバ抗ウサギIgG(1:100、Santa Cruz Biotechnology)、ローダミン標識ヤギ抗マウスIgM(1:100、Santa Cruz Biotechnology)、及びローダミン標識ロバ抗ヤギIgG(1:100、Santa Cruz Biotechnology)である。DAPI(Roche Applied Science)は核染色のために使用した。

0096

RT−PCR及びゲノムPCR
全RNAを、TRIzol(Invitrogen)を使用して細胞から単離し、製造業者指示に従って、EasyScript逆転写酵素(TransGen Biotech)を使用して逆転写した。異なる遺伝子のPCR増幅は、2×EasyTaq SuperMix(TransGen Biotech)を使用して実施した。ゲノムPCRに関しては、ゲノムDNAはDNeasy Blood&Tissue Kit(QIAGEN)で抽出した。使用したプライマーは表2に列挙する。

0097

リアルタイムPCR
RNeasy Plus Mini Kit(QIAGEN)を使用して、培養細胞のウェル全体から全RNAを単離した。TransScript First−StrandcDNASynthesis SuperMix(TransGen Biotech)を使用して、RNAをcDNAに変換した。PCRは、ABIPrism 7300 Sequence Detection SystemでPower SYBR(登録商標) Green PCR Master Mix(Applied Biosystems)を使用して実施した。データはデルタデルタCt法を使用して分析した。リアルタイムPCRに使用したプライマーは、表2に列挙する。

0098

奇形種形成
アカゲザルナイーブ型及びプライム型iPSCを回収し、DF12培地に再懸濁した。コンフルエントな60mmディッシュからの細胞を、非肥満糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウス(中国)へと皮下注射した。アカゲザルプライム型iPSCでは6〜8週間後、ナイーブ型iPSCでは4〜5週間後に奇形種を形成した。奇形種は、次いでパラフィン包埋し、ヘマトキシリン及びエオシン染色のために加工した。

0099

核型分析
Gバンド染色体分析は、北京大学遺伝医学センターで実施した。
マウス胚顕微操作、全組織標本染色、及び画像
ナイーブ型及びプライム型iPSC注入のため、細胞をトリプシン処理し、8細胞期の胚又はICR二倍体のマウス胚のE3.5胚盤胞(1胚あたり6〜10細胞)に微量注入した。およそ15個の注入した胚を、交尾後2.5日の偽妊娠雌の各子宮角へと移した。Abcamの全組織標本染色手順に従って、抗ヒト核抗体クローン235〜1、1:200、Millipore)での全組織標本染色のため、E10〜E11発生段階で胚を切開した。全胚の薄切片標本画像化のため、胚をE16発生段階で切開し、続いて包埋し、凍結し、薄片にし(10mmの薄い切片)、次いで抗ヒト核抗体とGATA4(1:200、Santa Cruz Biotechnology)、又はOCT4(1:200、Abcam)とNANOG(1:200、R&D Systems)で共染色した。共焦点分析のため、マウントした胚及び薄切片標本をUltraVIEW VoXシステム(PerkinElmer)、Andor’s Revolution WDスピニングディスク共焦点顕微鏡システム(Andor)、又はImageXpress Microハイコンテンツスクリーニングシステム(MolDev)によって画像化した。
アカゲザルナイーブ型iPSCの生成

0100

初期の実験では、OCT4及びKLF4の過剰発現並びにマウスにおいてOct4過剰発現のみで再プログラミングを促進することが報告されている(Liら、Cell Res.、21:196〜204(2011))小分子の組合せの存在下で細胞を培養することにより、アカゲザルプライム型iPSC株をまず確立した。生じたプライム型iPSC株は、ヒトESC培地でin vitro及びin vivoで多能性を伴って維持することができ(図4A図4C及びデータは示さない)、それらはマウスのナイーブ型多能性を維持する2i/LIF条件(2i/LIF)へと移した場合急速に分化し、多能性を失い(図1A)、したがってげっ歯類のナイーブ型多能性を支持する信頼のある条件がサルでのナイーブ型多能性状態を確立するのに十分ではないことを示している。

0101

2i/LIFの存在下でプライム型iPSCをナイーブ型状態へと変換するため、いくつかの経路モジュレーターを試験した。ドーム形状のコロニーは、bEGFを2i/LIF条件に添加した場合にのみ出現するマウスESCと形態学的に類似している。多能性マーカーTRA−1−81及びOCT4のアルカリフォスファターゼ(ALP)染色及び免疫染色は、TRA−1−81陽性ドーム形状コロニーが、2i/LIF条件での培養の5日後、bEGFの存在下で保持されたことを示した(データは示さない)。注目すべきことに、これらの細胞コロニーは、ナイーブ型多能性の典型的なマーカー遺伝子であるTBX3(データは示さない)も発現する(Dunnら、Science、344:1156〜1160(2014);Niwaら、Nature、460:118〜122(2009))。これらの結果は、サルのプライム型iPSCをナイーブ型状態へと変換する文脈内で、2i/LIF条件へのbEGF添加の重要性を示しているが、変換効率は低い(全コロニーの8%〜10%がTRA−1−81/TBX3ダブルポジティブ及びドーム形状である)(図1A及びデータは示さない)。これらの変換したTRA−1−81/TBX3ダブルポジティブiPSCは、ナイーブ型iPSCと同様に同定した。
アカゲザルナイーブ型iPSCの変換条件の最適化

0102

どのようにbFGFが作用し、アカゲザルナイーブ型iPSCを生成するかを理解するため、bFGFの下流の主要な経路、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)シグナル伝達経路を調べた。哺乳動物細胞において、少なくとも3つの特徴づけられたMAPKファミリーがある:古典的なMAPK(ERK)、c−JunN末端キナーゼ/ストレス活性化タンパク質キナーゼ(JNK/MAPK)、及びp38キナーゼ(Zhangら、Cell Res、12:9〜18(2002))。これらのどれが主な役割を有するか同定するため、ERK、JNK、p38に特異的なアンタゴニストを先の変換条件下でそれぞれ又は組み合わせて試験した。PD0325901、古典的なMAPK/ERKの阻害剤及び2i/LIF条件の不可欠な成分は、TBX3/TRA−1−81ダブルポジティブなドーム形状のコロニーの変換及び維持に必須であった(データは示さない)。さらに、2つの他の分子、JNKiのSP600125及びp38iのSB203580は、それぞれ、これらの変換条件下でのナイーブ型PSCの変換効率を大きく改善することができる(図1A、1B、1C)。これらの2つの阻害剤の組合せは、全コロニーの75%まで、変換効率をさらに増強する(図1A及びデータは示さない)。さらに、これらのコロニーを採取し、単一細胞を継代した場合、マウス胚性線維芽細胞フィーダー細胞において、典型的なALP陽性のドーム形状のコロニーが培養3日後に現れる。免疫染色によるさらなる同定により、これらのコロニーはTRA−1−81陽性であることが示され、それらが多能性なままであることを示している(データは示さない)。

0103

変換条件を最適化するため、ヒトナイーブ型ESC/iPSCの生存及び維持に有益であると開示されているY27632(ROCK阻害剤)及びGO6983(PKC阻害剤)もまた試験した(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013))。しかし、本発明者らは、これら2つの化合物が、コロニーにおいて明白な分化を誘導し、TRA−1−81発現を減少することを見出し(データは示さない)、ヒト及びサルにおいてナイーブ型多能性を確立するためのシグナル伝達制御の異なる要求を意味している。

0104

最後に、bFGF及び2i/LIFの存在下でのSP600125及びSB203580の組合せを使用して、安定なTRA−1−81/TBX3ダブルポジティブなドーム形状のナイーブ型iPSCが、プライム型iPSCから高効率で(2i/hLIF+bFGFのみより10倍より高い)成功裏に確立された(図1A)。注目すべきことに、この最適化した培養条件で、アカゲザル線維芽細胞は直接OCT4、SOX2、及びKLF4の過剰発現により、TRA−1−81陽性のドーム形状のコロニーへと再プログラムされた(データは示さない)。この最適化した培養条件は、先に記載したように、エピソームベクターに基づく非ウイルス性の組込み法を使用するナイーブ型iPSCを確立するためにも使用され(Okitaら、Nat.Methods、8:409〜412(2011))(図2A図2B、及びデータは示さない)、ヒトナイーブ型誘導多能性幹細胞を確立した(データは示さない)。確立したナイーブ型iPSCは、アクターゼを使用して4〜5日ごとに単一細胞継代することができ、早い成長速度を表す(図2C及びデータは示さない)。

0105

アカゲザルナイーブ型iPSCの多能性の特徴
これらのナイーブ型iPSCが確かに多能性であるかどうかの疑問には、RT−PCRを使用して取り組んだ。RT−PCR分析により、ナイーブ型iPSCが、OCT4、SOX2、SALL4、及びNANOGを含む内在性の多能性マーカー遺伝子を発現したことを示した(図2B及び2D)。ナイーブ型iPSCの多能性の特徴を、免疫染色によりさらに調べた。特に、これらの細胞は、TRA−1−60、TRA−1−81、及びSSEA−4を含むが、SSEA−1を含まない、多能性特異的な表面マーカーに陽性に染色された(データは示さない)。さらに、ナイーブ型iPSCは、MIXL1、CDX2、ZIC1、HAND1、EOMES、SOX1、PAX6、DLL1、及びZNF521の下方制御を示した(データは示さない)。一方、これらの細胞は正常な核型(雄について42、XY及び雌について42、XX)を有し、ドーム形状の形態及び8ヵ月に渡る単一細胞継代のALP活性を維持する(データは示さない)。最後に、ナイーブ型iPSCの分化能を分析するため、3つの胚葉へと分化するそれらの能力を試験した。ナイーブ型iPSCは、レシピエントマウスへの注入の4〜5週間後にin vivoで検出された3つの胚葉全ての組織で奇形腫を形成した(データは示さない)。したがって、これらの結果は、アカゲザルナイーブ型iPSCは多能性の特徴及び分化能を保持することを示している。

0106

アカゲザルナイーブ型iPSCはプライム型iPSCとは異なる特性を保持する
プライム型とナイーブ型iPSCの間の違いをさらに調べるため、研究は、異なるシグナル伝達刺激又は阻害剤へのプライム型及びナイーブ型iPSCの明白な応答パターンに注目した(Greberら、Cell Stem Cell、6:215〜226(2010);Niwaら、Nature、460:118〜122(2009);Vallierら、Dev.、136:1339〜1349(2009))。データは、マウス及びヒトナイーブ型iPSCと同様に、ナイーブ型iPSCの自己複製がLIFシグナル伝達に依存することを示した。JAK/STAT3阻害剤に曝露した場合、TRA−1−81の発現が著しく減少してナイーブ型iPSCは容易に分化したが、プライム型iPSCはそれらの多能性の特性を維持した(図3A及び3B)。重要なことに、ヒト細胞のように、bFGFシグナル伝達がアカゲザルプライム型とナイーブ型iPSC両方の自己複製に必要であった。FGFR阻害剤SU5402の存在下で、TRA−1−81陽性コロニーは、プライム型又はナイーブ型iPSCのいずれかによってほとんど形成されず、霊長類の多能性の制御におけるこの経路の役割を示している(図3A及び図3B)。典型的なフォスファチジルイノシトール3−キナーゼ(PI3K)阻害剤であるLy294002は、濃度依存的な方法でナイーブ型変換過程を厳密に遮断することができ、ナイーブ型状態の確立において、FGF下流のPI3Kシグナル伝達の役割を示している(図3C)。興味深いことに、特異的及び選択的TGFβ−R1阻害剤SB431542の培養培地への添加は、アカゲザルナイーブ型iPSCには効果を示さないが、プライム型iPSC自己複製には効果的であることを示し、アカゲザルプライム型iPSC及び報告されたヒトナイーブ型iPSCとは違い(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014))、TGF−βシグナル伝達はサルのナイーブ型iPSC自己複製に必ずしも必要ではないことを示している。さらに、TGF−βの培養培地への添加は、ナイーブ型iPSCの自己複製に効果的であったが、プライム型iPSCには効果的でなかった(図3A図3B、及び図3D)。

0107

雌のナイーブ型iPSCにおけるX染色体活性化状態を次に分析した。最適化条件によって誘導された雌のナイーブ型iPSCは、核のH3K27me3フォーカスの欠損及びXIST発現レベルの劇的な下方制御によって示されるように、X染色体再活性化状態を保持した(図3E及びデータは示さない)。対照的に、雌のプライム型iPSCは、体細胞のようにH3K27me3フォーカスの明らかな存在及びXISTの高い発現レベルを有する、X染色体の不活性化状態を維持する(図3E及びデータは示さない)。したがって、これらの結果は、異なる種間のナイーブ型PSCにおいてX−活性化状態の保存を示している。

0108

次に、ナイーブ型とプライム型iPSC間の全体的な遺伝子発現パターンを、RNAシークエンシング(RNA−seq)分析によって比較した。ゲノム全体での遺伝子発現クラスタリングは、異なる遺伝子発現パターンによりナイーブ型iPSCがプライム型iPSCとは別にクラスター化されることを示した(図3F及びデータは示さない)。ジーンオントロジー(GO)ターム解析により、ナイーブ型とプライム型iPSC間の主な発生のシグナル伝達及び代謝に関連する遺伝子発現パターンの変化を明らかにした(図3G)。重要なことに、プライム型iPSCと比較して、複数のナイーブ型状態関連転写産物、例えばPRDM14、KLF5、ZFP42(REX1)、LIFR、TBX3、及びNANOGは、ナイーブ型iPSCにおいて上方制御された(図3F図3G、及び図S3E)。一方、ナイーブ型iPSCは、HOXA2、MEIS1、及びDLL1を含む、系列特異的遺伝子の発現においても減少を示し、低レベルで発現するが、プライム型iPSCではかなりのレベルで発現した(図3H図3I図3J)。まとめると、これらのデータは、アカゲザルにおいて、ナイーブ型iPSCの遺伝子発現パターンがプライム型iPSCとは異なることを示し、マウス及びヒトにおける先の研究と類似している(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Chanら、Cell Stem Cell、13:663〜675(2013);Wareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、111:4484〜4489(2014);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014))。

0109

最後に、in vivoでの種間キメラの生成におけるアカゲザルナイーブ型iPSCの能力を試験するため、ナイーブ型及びプライム型iPSCを、8細胞期の胚又はICRマウスの胎生期3.5(E3.5)胚盤胞に微量注入し、E10〜E11発生段階まで発生させた(表3)。

0110

サルの細胞の核を特異的にマークできる抗ヒト核抗体(hNA)の全組織標本免疫染色(データは示さない)をin vivoでアカゲザルiPSC由来細胞の存在を検出するために使用した。とりわけ、プライム型iPSCと対照的に、ナイーブ型iPSCとのキメラ胚が得られた(データは示さない)。特に、3つのナイーブ型iPSC株から生成された6つのキメラ胚のうち3つは、ナイーブ型iPSC由来細胞の広範な組込みを示した(データは示さない)。これらのナイーブ型iPSC由来細胞がキメラ胚の胚発生に寄与することができるかどうかさらに調べるため、E16発生段階でのキメラ胚におけるナイーブ型iPSC由来細胞の分布を分析した。2つの独立したナイーブ型細胞株からの2つのE16キメラ胚をさらに分析した。ナイーブ型iPSC由来細胞は、レシピエントマウスの多くの組織及び臓器、例えば腸、肝臓、心臓、及び脳へと組込まれた。OCT4及びNANOGを含む多能性マーカーの発現は、キメラ胚のhNA+細胞において検出できず(データは示さない)、ナイーブ型iPSC由来細胞の多能性の欠損を示している。興味深いことに、心臓領域におけるナイーブ型iPSC由来細胞の高度な組込みも観察された(データは示さない)。さらに、心臓特異的マーカーGATA4(ヒトとマウス両方のGATA4と反応するGATA4抗体で染色することによって検出した)はこの段階の心臓でほとんどのhHA+細胞において発現し(データは示さない)(Kuoら、Genes Dev.、11:1048〜1060(1997))、これらのナイーブ型iPSC由来細胞は、発生中の心臓へと組込まれた場合、心臓の運命に向かってさらに分化し得ることを意味している。合わせて、これらのデータは、アカゲザルナイーブ型iPSC由来細胞は種間キメラ胚を生成し、さらなる分化を伴うマウス初期胚へと再配置(repopulate)することができた。

0111

考察
本研究は、アカゲザルナイーブ型iPSCがプライム型iPSCからの変換により又はサイトカインと小分子阻害剤の簡単な組合せによる線維芽細胞の転写因子駆動再プログラミングにより成功裏に生成できることの証明を提供する。さらに、この変換条件はまた、ナイーブ型iPSCの自己複製回路の長期間安定な維持も可能にする。重要なことに、本明細書に開示の発見は、マウス胚への種間キメラ能を有するナイーブ型多能性が非ヒト霊長類に由来することができることを示す(データは示さない)。

0112

生成したアカゲザルナイーブ型iPSCは、それらをプライム型iPSC及び従来の霊長類のESCと区別する多くの細胞の特徴を保持する。アカゲザルナイーブ型iPSCは単一細胞継代に耐え、安定なドーム形状の形態及び正常な核型で長期間繁殖することができる。これらの細胞はbFGFシグナル伝達非依存的にLIF及びMAPKに応答して、多能性の特徴を伴い自己複製する。H3K27me3核内フォーカスの欠損及びXIST転写の下方制御は、ナイーブ型iPSCの前X不活性化状態を示した。さらに、これらの研究において確立されたサルのナイーブ型iPSCはまた、マウスとヒト両方のナイーブ型多能性幹細胞と発現特性共有する。例えば、NANOG及びPRDM14を含むナイーブ型状態関連遺伝子の上方制御が観察され、これがマウスのナイーブ型多能性状態を保護し、シグナル伝達経路及び細胞内のエピジェネティクス二重制御により分化系列コミットメントを抑えるように働く(Silvaら、Cell、138:722〜737(2009);Yamajiら、Cell Stem Cell、12:368〜382(2013);Graboleら、EMBO Rep.、14:629〜637(2013))。この発見は、DLL1及びMEIS1などの系列特異的遺伝子の発現の減少と一致し(van Esら、Nat Cell.Biol.、14:1099〜1104(2012);Hisaら、EMBO J.、23:450〜459(2004))、アカゲザルナイーブ型iPSCのより未熟な状態を示している(図3H〜J)。したがって、サルの2つの多能性状態の完全に異なる表現型は、優れたモデルシステムを提供し、霊長類の多能性ネットワーク制御メカニズムを調べることができる。

0113

本研究の別の重要な発見は、サルのナイーブ型iPSCが、マウス胚に注入された場合、種間キメラを生成することができることである。このアッセイを使用し、ヒトナイーブ型PSCを評価したが、これらの細胞がそれらの多能性遺伝子発現を欠損する及びさらに分化しin vivoでの組織に寄与できるかどうかはっきりしないままである(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014))。ここで、全組織標本染色、全胚の薄切片、及び画像化を使用して、キメラサル−マウス胚においてアカゲザルナイーブ型iPSC由来細胞の分布の概要を得た。抗ヒト核抗体の組織特異的マーカーとの共染色、及び全胚薄切片標本の多能性特異的マーカーの不在は、キメラ胚におけるナイーブ型iPSC由来細胞がさらに分化し、胚発生に寄与し得ることをさらに例示した。したがって、全胚分析は代替戦略を与え、ナイーブ型多能性のより厳密な証拠を提供する。

0114

これらの発見はまた、マウス、サル、及びヒト細胞のナイーブ型多能性状態を達成するための条件における、進化的な保存及びバリエーションも示す。まず、データはLIF/STAT3シグナル伝達が、サルだけでなく他の2種でもナイーブ型状態を支持することを示し、ナイーブ型多能性ネットワークの確立においてLIF/STAT3シグナル伝達の基本的な効果をしている、第二に、MAPK、ERK、JNK、及びp38の3つの中心成分拮抗作用(Zhang及びLiu、Cell Res、12:9〜18(2002))は、これらの種のナイーブ型多能性状態を達成するために重要である。アカゲザルナイーブ型iPSCはbFGFシグナル伝達に依拠し、自己複製を持続する。この発見は、ヒト細胞がナイーブ型多能性状態を獲得することに関してbFGFシグナル伝達の重要性及び緊要性を示す近年の報告と一致し(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Chanら、Cell Stem Cell、13:663〜675(2013);Wareら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、111:4484〜4489(2014))、bFGFシグナル伝達が、ヒトとサル両方の細胞のナイーブ型状態の維持に役割を果たすことを示している。対照的に、bFGFシグナル伝達はマウスのナイーブ型多能性の維持にネガティブな効果を有し、これは異なる種の異なる遺伝的背景による可能性があり、これは以前の報告によって示唆されている(Hannaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、107:9222〜9227(2010))。MAPKのように、bFGFの下流は霊長類のナイーブ型PSCで抑制される必要があり、PI3KなどのbFGFの下流の他のシグナル伝達経路は、霊長類のナイーブ型多能性にポジティブな効果を発揮し得る(図3C及びデータは示さない)。さらに、変換過程の間にTGF−βシグナル伝達非依存性が明らかになった。これは、TGF−βシグナル伝達の存在に依存するヒトナイーブ型PSCの他の報告とは対照的である(Gafniら、Nature、504:282〜286(2013);Theunissenら、Cell Stem Cell、15(4):471〜87(2014);米国特許出願公開第2014/0315301号)。

0115

全体として、アカゲザルナイーブ型iPSCの生成は、2つの異なる多能性状態(ナイーブ型及びプライム型)が種を超えて保存されていることを示す。最も重要なことには、ナイーブ型多能性幹細胞の誘導におけるマウス、サル、及びヒト種間の類似性及び違いの発見は、ナイーブ型多能性のを明らかにすることを助け、他の種の確かなナイーブ型PSCを得るために有用であり得る。一方、アカゲザルナイーブ型iPSCの誘導は前臨床研究及び疾患モデルへの適用のための役立つ細胞源も提供する。

実施例

0116

上記明細書において、本発明はそれらの特定の実施形態に関連して記載されているが、多くの詳細が例示の目的で述べられており、本発明のさらなる実施形態が可能であり、本明細書に記載の特定の詳細が本発明の基本原理から逸脱することなくかなり変化し得ることは当業者には明らかである。

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