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技術 免疫グロブリンG(IgG)を調製するための改良された方法

出願人 バイオプロダクツラボラトリーリミテッド
発明者 モア、ジョンドラン、タラ
出願日 2015年7月24日 (6年1ヶ月経過) 出願番号 2017-504035
公開日 2017年8月31日 (4年0ヶ月経過) 公開番号 2017-524701
状態 特許登録済
技術分野 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード 製品プロファイル 最低基準 エタノール含有水溶液 電気的処理 成分物質 資本コスト 分析プラットフォーム 冷凍貯蔵
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図面 (5)

課題・解決手段

本発明は、通常の血漿分画プロセスにおいて生成された未使用の廃棄沈殿物から、別の分画プロセスを介して、IgGを抽出する方法に関するものであり、これにより、血漿からのIgGの全収量を向上させる。

概要

背景

免疫グロブリンGIgG)は、ヒトに多く存在する抗体アイソタイプである。IgGは、ウイルス、細菌および菌類等の多様な病原体に結合して、その感染から体を保護する。従って、IgGは、免疫系が機能する上で重要な役割を果たしている。ヒトには4つのIgGサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4がある。IgG1およびIgG2は、全てのIgGの90%近くを占めている、最も一般的な種類のIgGである。参照しやすいように、本明細書では、IgGに言及する場合、4種類の全てに加えて、これらの任意の組み合わせも含むものとする。「IgG」という用語には、さらにIVIG(静注免疫グロブリン)、SCIG(皮下注用免疫グロブリン)およびIMIG(筋注用免疫グロブリン)が含まれるものとする。

上記のように、IgGは、免疫系の機能において重要な役割を果たしている。免疫疾患および自己免疫疾患患者は、IgGによる治療の恩恵を受けられることが分かっている。IgGで治療され得る症状としては、重症複合型免疫不全症(SCID)および分類不能型免疫不全症CVID)を含む原発性免疫不全症(PID)、ならびに慢性リンパ性白血病多発性骨髄腫もしくは小児エイズ等の他の疾患またはその後の骨髄移植が原因となる続発性免疫不全症(SID)が挙げられる。他にも治療され得る症状としては、特発性血小板減少性紫斑病ITP)、川崎病全身性紅斑性狼瘡SLE)、重症筋無力症慢性炎症脱髄性多発性神経炎(CIDP)および多巣性運動ニューロパチー(MMN)が挙げられる。また、IgGは、非常に多くの他のリウマチ疾患血液疾患および皮膚疾患の治療にも用いられる。

通常、IgGは、従来の分画法を用いて、プールされたヒト血漿から単離される。ヒトの血液からアルブミンを精製するために、1940年代初頭に、Cohnによって低温エタノール分画法が開発された(非特許文献1参照)。これは、「Cohn法6」としても知られている。

この方法は、pH、エタノール濃度、温度、イオン強度およびタンパク質濃度による所望のタンパク質溶解度差に基づくものである。Cohn法では、分画の過程を通じて、エタノール濃度は40%まで増加し、pHは中性から4.8に減少し、温度は室温から−5℃に低下する。処理中に条件が変化するにつれて、異なる血漿タンパク質が順次沈殿するとともに、他のタンパク質はそのまま溶液に留まる。対象となる特定の(複数の)タンパク質によっては、各分画工程で得られた沈殿物および上清の一方または両方をさらに処理してもよい。5つの主なCohn沈殿画分として画分I〜Vがあり、それぞれの画分は、主成分として異なるタンパク質を含んでいる。例えば、アルブミンは画分Vから得られるが、IgGは画分II+IIIから得ることができる。後に、Cohn画分II+III(Cohn法6の中間体)を画分II(より精製されたIgG沈殿画分)にさらにサブ分画(sub-fractionation)する方法が開発され、「Oncley法9」と称された(非特許文献2参照)。

Cohn法には、Gerlough法、Hink法およびMulford法等の多くの変形がある。Kistler-Nitschmann法は、Cohn法の周知の別の変形である(非特許文献3参照)。この方法では、Cohn画分II+III、IIIおよびVの代わりに、それぞれ沈殿物A〜Cが用いられる。Kistler-Nitschmann法は、Cohn法よりも全体として工程が少ないため、処理が速くなり、エタノールの使用量が削減されるという利点があることから、広く受け入れられている。

他のIgG精製方法には、イオン交換クロマトグラフィーおよびポリエチレングリコール沈殿により、血漿またはCohn法6の血漿中間体II+IIIからIgGを直接単離するものがある。この処理による収量は比較的高いとされる。これらの方法のいくつかは、純度、とりわけ肝炎およびHIV等の血液感染性ウイルス伝染が懸念される中で中止されている。しかし、特定のウイルス不活性化工程が導入されると、近年、クロマトグラフィー処理にかなりの投資が行われるようになった。とはいえ、その複雑さ、高い資本コストおよび高度な水/廃棄物処理の必要性のため、このような選択肢は、最大で最も資金力のある血漿分画業者にほとんど限定されている。

Cohn法(およびその変形)により、実質的に単量体IgGが生成される。これは、IgG生成物(IgG product)の大部分は単量体であり、二量体およびより大きな凝集体の形を取るIgGは20%に満たないことを意味している。一般に、IgG凝集体の存在は、患者における血漿由来IgGの投与による不要な免疫応答と関連付けられているので、望ましくない。従って、あらゆる精製方法で得られたIgG生成物は、できるだけ多くの単量体を含むことが好ましい。

1998年から2006年の間に、IgGの需要は2倍以上になり、なお増加し続けている。2008年には、血漿画分の世界市場は120億USドル見積もられたが、その半分近くがIgGであった。現在、供給は、ヒトドナーから採取された血漿からでなければならない。血漿の供給には限界があるため、当該技術において、収量を向上させたIgGの単離方法を改良する必要がある。しかし、全ての臨床応用にとって重要なのは、例えば、他のプロテアーゼもしくは凝固因子の存在、または血液感染性ウイルス等の他の汚染成分に起因する望ましくない副作用を最小限にするために、高純度のIgGを得ることである。

非特許文献4および非特許文献5には、市販IgG製剤の様々な調製方法が記載されている。使用許可されたIgG生成物のほとんどは、低温エタノール分画(すなわち、Cohn/Oncley法またはその変形)によって生成され、次にイオン交換クロマトグラフィーによって精製される。イオン交換クロマトグラフィーの出発原料として、画分I+II+III(または、画分Iにおいてフィブリノゲンが先に沈殿する場合は、画分II+III)を用いることにより、IgG損失が最小限に抑えられる。なぜなら、IgGの主な損失は、Cohn/Oncley(Kistler-Nitschmann)分画法における、この後の画分III(沈殿物B)段階で生じるからである。

どんなタンパク質精製スキームでも、本質的なことは、不要なタンパク質および当該処理に不必要とみなされたその他の不要な物質から標的タンパク質を分離することである。このような他の物質には、目的とする生成物にとって望ましくない有害物質または病原物質を含む他の化学的部分が含まれている場合がある。従って、タンパク質精製方法により、一般に、対象となる(複数の)タンパク質と、いわゆる「廃棄物」画分または「副」画分とを含む「生成物画分」が得られる。しかし、そうした否定的な分類は、誤解を招きかねない。このいわゆる「廃棄物画分」にも、他のタンパク質または成分物質原料としての価値が存在し得るからである。

血漿タンパク質の分野において、この誤解を招くような呼び方の証拠は特許文献1に見出される。特許文献1には、アフィニティークロマトグラフィーによる特定の免疫グロブリンの精製のための供給材料として、「廃棄物画分」を用いることが記載されている。同様に、特許文献2には、勾配電気泳動による免疫グロブリンの精製のための供給材料として、廃棄物画分を用いることが記載されている。特許文献3には、IgG分画から廃棄された画分に存在する凝集免疫グロブリンを精製するための、IgG分画から廃棄された画分の使用が記載されている。

特許文献4には、C型肝炎病原体のマーカーによる汚染のため「廃棄物」として除かれた(rejected)血漿献血に適用される通常の血漿分画法が説明されており、これによって「廃棄物画分」という用語の別の使い方が示されている。

Cohn/Oncley法およびその変形(以下、主要な処理の流れ(main process stream)とする)におけるIgG収量は、血漿中の総IgG量よりも少ないという未解決の問題が残されている。これは、製造工程でのタンパク質の何らかの変性を反映しているのかもしれない。それに加えて、またはそうでなければ、残留する少量の高品質の免疫グロブリン(すなわち、凝集がなく、主として単量体IgGである)が、多量体および凝集IgG等の他の成分も含む「廃棄物」画分の分離および除去に伴い、それらに捕捉されることで主要な製造分画経路から外れている可能性がある。これにより、不足している血漿出発原料から有用な免疫グロブリンが効率的に回収されなくなり、その結果、患者のための治療薬利用可能性に影響を与えることになる。

本願において、「廃棄物画分」とは、所望の「主要な生成物画分」から分離された画分として規定される。通常、生成物画分は、所望の標的タンパク質を高純度で含んでいる。いわゆる廃棄物画分には、標的タンパク質の品質、効果または安全性を損なう恐れのある他の成分も存在するとはいえ、いくつかの標的タンパク質が含まれている。実際に、廃棄物画分は、標的タンパク質以外のタンパク質源としての価値があると考えられる。本願における標的タンパク質は、免疫グロブリンIgGである。

従って、IgGを抽出する血漿の精製において、主要な処理の流れは、IgG生成物に至るものである。主要な処理がCohn分画法である場合、主要な生成物画分(product fraction)はCohn画分IIである。IgGを生成するCohn分画法では、上清A+Iは、さほど多くのIgGを含まないため、「廃棄物」とみなされていた。しかし、図1に示されているように、このような廃棄物でも、さらに精製すれば他の標的タンパク質を生成することができる。例えば、上清A+Iをさらに処理すると、アルブミンを含有するCohn画分Vを生成することができる。従って、血漿分画プロセスの対象となる主要なタンパク質がアルブミン以外の場合のみ、上清A+Iは「廃棄物画分」となるのである。

Cohn/Oncley法(およびその変形)によって生成される廃棄物画分は、かなりの量のIgGを含み得ることが判明している。また、廃棄物画分には、出発血漿中の総IgG量のうち30%ものIgGが含まれる可能性があることも示されている。

ゆえに、複雑で費用のかかるクロマトグラフィー工程をさらに必要とせずに、現在利用可能な方法よりも収量が高く、同時に高レベルの純度および安全性を維持することができるIgGを生成するための改良された方法を提供することは有用であるといえる。

概要

本発明は、通常の血漿分画プロセスにおいて生成された未使用の廃棄沈殿物から、別の分画プロセスを介して、IgGを抽出する方法に関するものであり、これにより、血漿からのIgGの全収量を向上させる。なし

目的

どんなタンパク質精製スキームでも、本質的なことは、不要なタンパク質および当該処理に不必要とみなされたその他の不要な物質から標的タンパク質を分離することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

血漿分画中において生成され、主要なIgG製造プロセスの流れから分離された廃棄沈殿画分からIgGを抽出する方法であって、前記廃棄沈殿画分と適切な溶媒とを接触させることにより、前記沈殿物からIgGを抽出することを含む、方法。

請求項2

IgGを生成する血漿分画中におけるIgGの収量を向上させる方法であって、血漿分画中において生成され、主要なIgG製造プロセスの流れから分離された廃棄沈殿画分から、適切な溶媒を用いて、IgGを抽出することを含む、方法。

請求項3

血漿または血漿画分からIgGを分離する方法であって、a)前記血漿または血漿画分に存在するIgGの大部分を含有する液体画分と、さらなるIgGを含有する廃棄沈殿画分とを生成するために、前記血漿または血漿画分を分画する、工程と、b)前記廃棄沈殿画分から、適切な溶媒を用いて、前記さらなるIgGの少なくとも一部を抽出する工程とを含む、方法。

請求項4

前記廃棄沈殿画分は、IgGを含有する液体画分(上清)を生成する分画工程中に生成される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項5

前記液体画分は、Cohn上清IIIもしくはI+III、Kistler-Nitschmann 上清BもしくはB+I、または改変されたKistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである、請求項3または4に記載の方法。

請求項6

前記廃棄沈殿画分は、Cohn画分IIIもしくはI+III、Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+I、または改変されたKistler-Nitschmann 沈殿物BもしくはB+Iである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項7

前記溶媒は緩衝水性エタノールである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項8

前記溶媒は、約13vol%〜約17vol%のエタノールを含有する水性緩衝液である、請求項7に記載の方法。

請求項9

前記溶媒は、リン酸および/または酢酸緩衝液を用いて緩衝化されている、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項10

前記溶媒に対する前記廃棄沈殿画分の比は、約1:2〜約1:10である、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項11

抽出されたIgGを含有する前記溶媒は、あらゆる残った廃棄沈殿固形物から分離される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項12

前記抽出されたIgGを含有する前記溶媒は、濾過または遠心分離によって残った廃棄沈殿固形物から分離される、請求項11に記載の方法。

請求項13

前記抽出されたIgGは、前記主要なIgG製造プロセスの流れから得られたIgGと組み合わされる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項14

前記廃棄沈殿画分からIgGを抽出する前記方法は、いかなるクロマトグラフィー工程を含まない、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項15

前記廃棄沈殿物から得られる前記抽出されたIgGは、IgG製剤を製造するためにさらに処理が行われる、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項16

IgG製剤を製造するための前記さらなる処理は、前記溶媒から前記抽出されたIgGを沈殿させることを含む、請求項15に記載の方法。

請求項17

前記沈殿は、エタノール濃度、温度およびpHの1つ以上を調整することによって行われる、請求項16に記載の方法。

請求項18

前記沈殿により、画分IIが得られる、請求項16または17に記載の方法。

請求項19

前記得られた沈殿物は、前記主要なIgG製造プロセスの流れで得られたIgGに富む画分と組み合わされる、請求項16〜18のいずれかに記載の方法。

請求項20

IgGの調製方法であって、a)改変されたKistler-Nitschmann B+I分画プロセスから沈殿物および上清を回収する工程と、b)前記工程a)で得られた前記沈殿物を均質化し、17vol%エタノール含有水性酢酸リン酸緩衝液と0℃で1〜3時間混合することにより、IgGを抽出する工程と、その後、c)残った沈殿物から、抽出されたIgGを含有する前記緩衝液を分離する工程とを含む、方法。

請求項21

d)前記工程c)で得られた前記抽出されたIgGを含有する前記緩衝液と、前記工程a)で得られた前記改変されたKistler-Nitschmann B+I上清とを組み合わせる工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。

請求項22

前記工程c)は濾過により行われ、前記方法は、e)改変されたKistler-Nitschmann画分II沈殿の条件に従って、水性エタノール中で前記抽出されたIgGをインキュベートする工程と、f)得られたIgG富化画分II沈殿物を回収する工程とをさらに含む、請求項20に記載の方法。

請求項23

前記抽出されたIgG生成物は、85wt%以上の単量体および二量体、ならびに10wt%以下の重合体および/または凝集体を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

請求項24

前記抽出されたIgG生成物は、純度90%以上のガンマグロブリンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、免疫グロブリンGIgG)を調製するための改良された方法に関する。

背景技術

0002

免疫グロブリンG(IgG)は、ヒトに多く存在する抗体アイソタイプである。IgGは、ウイルス、細菌および菌類等の多様な病原体に結合して、その感染から体を保護する。従って、IgGは、免疫系が機能する上で重要な役割を果たしている。ヒトには4つのIgGサブクラス、すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4がある。IgG1およびIgG2は、全てのIgGの90%近くを占めている、最も一般的な種類のIgGである。参照しやすいように、本明細書では、IgGに言及する場合、4種類の全てに加えて、これらの任意の組み合わせも含むものとする。「IgG」という用語には、さらにIVIG(静注免疫グロブリン)、SCIG(皮下注用免疫グロブリン)およびIMIG(筋注用免疫グロブリン)が含まれるものとする。

0003

上記のように、IgGは、免疫系の機能において重要な役割を果たしている。免疫疾患および自己免疫疾患患者は、IgGによる治療の恩恵を受けられることが分かっている。IgGで治療され得る症状としては、重症複合型免疫不全症(SCID)および分類不能型免疫不全症CVID)を含む原発性免疫不全症(PID)、ならびに慢性リンパ性白血病多発性骨髄腫もしくは小児エイズ等の他の疾患またはその後の骨髄移植が原因となる続発性免疫不全症(SID)が挙げられる。他にも治療され得る症状としては、特発性血小板減少性紫斑病ITP)、川崎病全身性紅斑性狼瘡SLE)、重症筋無力症慢性炎症脱髄性多発性神経炎(CIDP)および多巣性運動ニューロパチー(MMN)が挙げられる。また、IgGは、非常に多くの他のリウマチ疾患血液疾患および皮膚疾患の治療にも用いられる。

0004

通常、IgGは、従来の分画法を用いて、プールされたヒト血漿から単離される。ヒトの血液からアルブミンを精製するために、1940年代初頭に、Cohnによって低温エタノール分画法が開発された(非特許文献1参照)。これは、「Cohn法6」としても知られている。

0005

この方法は、pH、エタノール濃度、温度、イオン強度およびタンパク質濃度による所望のタンパク質溶解度差に基づくものである。Cohn法では、分画の過程を通じて、エタノール濃度は40%まで増加し、pHは中性から4.8に減少し、温度は室温から−5℃に低下する。処理中に条件が変化するにつれて、異なる血漿タンパク質が順次沈殿するとともに、他のタンパク質はそのまま溶液に留まる。対象となる特定の(複数の)タンパク質によっては、各分画工程で得られた沈殿物および上清の一方または両方をさらに処理してもよい。5つの主なCohn沈殿画分として画分I〜Vがあり、それぞれの画分は、主成分として異なるタンパク質を含んでいる。例えば、アルブミンは画分Vから得られるが、IgGは画分II+IIIから得ることができる。後に、Cohn画分II+III(Cohn法6の中間体)を画分II(より精製されたIgG沈殿画分)にさらにサブ分画(sub-fractionation)する方法が開発され、「Oncley法9」と称された(非特許文献2参照)。

0006

Cohn法には、Gerlough法、Hink法およびMulford法等の多くの変形がある。Kistler-Nitschmann法は、Cohn法の周知の別の変形である(非特許文献3参照)。この方法では、Cohn画分II+III、IIIおよびVの代わりに、それぞれ沈殿物A〜Cが用いられる。Kistler-Nitschmann法は、Cohn法よりも全体として工程が少ないため、処理が速くなり、エタノールの使用量が削減されるという利点があることから、広く受け入れられている。

0007

他のIgG精製方法には、イオン交換クロマトグラフィーおよびポリエチレングリコール沈殿により、血漿またはCohn法6の血漿中間体II+IIIからIgGを直接単離するものがある。この処理による収量は比較的高いとされる。これらの方法のいくつかは、純度、とりわけ肝炎およびHIV等の血液感染性ウイルス伝染が懸念される中で中止されている。しかし、特定のウイルス不活性化工程が導入されると、近年、クロマトグラフィー処理にかなりの投資が行われるようになった。とはいえ、その複雑さ、高い資本コストおよび高度な水/廃棄物処理の必要性のため、このような選択肢は、最大で最も資金力のある血漿分画業者にほとんど限定されている。

0008

Cohn法(およびその変形)により、実質的に単量体IgGが生成される。これは、IgG生成物(IgG product)の大部分は単量体であり、二量体およびより大きな凝集体の形を取るIgGは20%に満たないことを意味している。一般に、IgG凝集体の存在は、患者における血漿由来IgGの投与による不要な免疫応答と関連付けられているので、望ましくない。従って、あらゆる精製方法で得られたIgG生成物は、できるだけ多くの単量体を含むことが好ましい。

0009

1998年から2006年の間に、IgGの需要は2倍以上になり、なお増加し続けている。2008年には、血漿画分の世界市場は120億USドル見積もられたが、その半分近くがIgGであった。現在、供給は、ヒトドナーから採取された血漿からでなければならない。血漿の供給には限界があるため、当該技術において、収量を向上させたIgGの単離方法を改良する必要がある。しかし、全ての臨床応用にとって重要なのは、例えば、他のプロテアーゼもしくは凝固因子の存在、または血液感染性ウイルス等の他の汚染成分に起因する望ましくない副作用を最小限にするために、高純度のIgGを得ることである。

0010

非特許文献4および非特許文献5には、市販IgG製剤の様々な調製方法が記載されている。使用許可されたIgG生成物のほとんどは、低温エタノール分画(すなわち、Cohn/Oncley法またはその変形)によって生成され、次にイオン交換クロマトグラフィーによって精製される。イオン交換クロマトグラフィーの出発原料として、画分I+II+III(または、画分Iにおいてフィブリノゲンが先に沈殿する場合は、画分II+III)を用いることにより、IgG損失が最小限に抑えられる。なぜなら、IgGの主な損失は、Cohn/Oncley(Kistler-Nitschmann)分画法における、この後の画分III(沈殿物B)段階で生じるからである。

0011

どんなタンパク質精製スキームでも、本質的なことは、不要なタンパク質および当該処理に不必要とみなされたその他の不要な物質から標的タンパク質を分離することである。このような他の物質には、目的とする生成物にとって望ましくない有害物質または病原物質を含む他の化学的部分が含まれている場合がある。従って、タンパク質精製方法により、一般に、対象となる(複数の)タンパク質と、いわゆる「廃棄物」画分または「副」画分とを含む「生成物画分」が得られる。しかし、そうした否定的な分類は、誤解を招きかねない。このいわゆる「廃棄物画分」にも、他のタンパク質または成分物質原料としての価値が存在し得るからである。

0012

血漿タンパク質の分野において、この誤解を招くような呼び方の証拠は特許文献1に見出される。特許文献1には、アフィニティークロマトグラフィーによる特定の免疫グロブリンの精製のための供給材料として、「廃棄物画分」を用いることが記載されている。同様に、特許文献2には、勾配電気泳動による免疫グロブリンの精製のための供給材料として、廃棄物画分を用いることが記載されている。特許文献3には、IgG分画から廃棄された画分に存在する凝集免疫グロブリンを精製するための、IgG分画から廃棄された画分の使用が記載されている。

0013

特許文献4には、C型肝炎病原体のマーカーによる汚染のため「廃棄物」として除かれた(rejected)血漿献血に適用される通常の血漿分画法が説明されており、これによって「廃棄物画分」という用語の別の使い方が示されている。

0014

Cohn/Oncley法およびその変形(以下、主要な処理の流れ(main process stream)とする)におけるIgG収量は、血漿中の総IgG量よりも少ないという未解決の問題が残されている。これは、製造工程でのタンパク質の何らかの変性を反映しているのかもしれない。それに加えて、またはそうでなければ、残留する少量の高品質の免疫グロブリン(すなわち、凝集がなく、主として単量体IgGである)が、多量体および凝集IgG等の他の成分も含む「廃棄物」画分の分離および除去に伴い、それらに捕捉されることで主要な製造分画経路から外れている可能性がある。これにより、不足している血漿出発原料から有用な免疫グロブリンが効率的に回収されなくなり、その結果、患者のための治療薬利用可能性に影響を与えることになる。

0015

本願において、「廃棄物画分」とは、所望の「主要な生成物画分」から分離された画分として規定される。通常、生成物画分は、所望の標的タンパク質を高純度で含んでいる。いわゆる廃棄物画分には、標的タンパク質の品質、効果または安全性を損なう恐れのある他の成分も存在するとはいえ、いくつかの標的タンパク質が含まれている。実際に、廃棄物画分は、標的タンパク質以外のタンパク質源としての価値があると考えられる。本願における標的タンパク質は、免疫グロブリンIgGである。

0016

従って、IgGを抽出する血漿の精製において、主要な処理の流れは、IgG生成物に至るものである。主要な処理がCohn分画法である場合、主要な生成物画分(product fraction)はCohn画分IIである。IgGを生成するCohn分画法では、上清A+Iは、さほど多くのIgGを含まないため、「廃棄物」とみなされていた。しかし、図1に示されているように、このような廃棄物でも、さらに精製すれば他の標的タンパク質を生成することができる。例えば、上清A+Iをさらに処理すると、アルブミンを含有するCohn画分Vを生成することができる。従って、血漿分画プロセスの対象となる主要なタンパク質がアルブミン以外の場合のみ、上清A+Iは「廃棄物画分」となるのである。

0017

Cohn/Oncley法(およびその変形)によって生成される廃棄物画分は、かなりの量のIgGを含み得ることが判明している。また、廃棄物画分には、出発血漿中の総IgG量のうち30%ものIgGが含まれる可能性があることも示されている。

0018

ゆえに、複雑で費用のかかるクロマトグラフィー工程をさらに必要とせずに、現在利用可能な方法よりも収量が高く、同時に高レベルの純度および安全性を維持することができるIgGを生成するための改良された方法を提供することは有用であるといえる。

0019

オーストラリア特許第715427号
特開昭60−1134号公報
国際公開第2010/132686号
クライナ実用新案第45557号公報

先行技術

0020

Cohn, E. J. et al., J. Am. Chem. Soc., 68: 459-475, (1946)
Oncley, J. L. et al., J. Am. Chem. Soc., 71, 541-550, (1949)
P. Kistler and Hs. Nitschmann, Vox Sang. 7: 414-424 (1962)
J. A. Hooper, Immunol. Allergy Clin. N. Am. 28 (2008) 765-778
Andrea Buchacher and Waltrud Kaar, Chapter 13 of Production of Plasma Proteins for Therapeutic Use (John Wiley & Sons, Inc., 2013, Editors Joseph Bertolini, Neil Goss and John Curling)

0021

今回、驚くべきことに、IgGを生成する血漿分画法において、従来は「廃棄物」画分とみなされていた沈殿画分から、クロマトグラフィー工程、特にアフィニティークロマトグラフィー工程または陰イオン交換クロマトグラフィー工程を必要とせずに、高純度のIgG(例えば、85wt%以上の単量体および二量体、ならびに10wt%以下の重合体および/または凝集体を含有する正常免疫グロブリンについての欧州薬局方モノグラフ0338に準拠している)が比較的容易に得ることができた。このような廃棄物画分からIgGを抽出することにより、その後のさらなる精製工程を必要とすることなく、IgGの総収量を著しく向上することができる。

0022

従って、本発明は、IgG供給源として、血漿分画中において生成された廃棄沈殿画分の使用を提供する。廃棄沈殿画分は、IgGを含有する液体画分(上清)を生成する分画工程中に生成されることが好ましい。

0023

より具体的には、本発明は、血漿分画中において生成され、主要なIgG製造プロセスの流れから分離された廃棄沈殿画分からIgGを抽出する方法であって、前記廃棄沈殿物と適切な溶媒とを接触させることにより、前記廃棄沈殿物からIgGを抽出することを含む方法を提供する。廃棄沈殿画分は、IgGを含有する液体画分(上清)を生成する分画工程中に生成されることが好ましい。特に、本発明の方法は、血漿分画中において生成された廃棄沈殿画分からIgGを分離するために、アフィニティークロマトグラフィーまたは陰イオン交換クロマトグラフィー等のクロマトグラフィー工程も、電気泳動等の電気的処理も必要としない。

0024

別の態様において、本発明は、IgGを生成するための血漿分画中におけるIgGの収量を向上させる方法であって、血漿分画中において生成され、主要なIgG製造プロセスの流れから分離された廃棄沈殿画分から、適切な溶媒を用いて、IgGを抽出することを含む方法を提供する。廃棄沈殿画分は、IgGを含有する液体画分(上清)を生成する分画工程中に生成されることが好ましい。

0025

別の態様において、本発明は、血漿または血漿画分からIgGを分離する方法であって、
a)前記血漿または血漿画分に存在するIgGの大部分を含有する液体画分と、さらなるIgGを含有する廃棄沈殿画分とを生成するために、前記血漿または血漿画分を分画する工程と、
b)前記廃棄沈殿画分から、適切な溶媒を用いて、前記さらなるIgGの少なくとも一部を抽出する工程とを含む方法を提供する。

0026

好ましい態様において、本発明は、IgGの調製方法であって、
a)改変されたKistler-Nitschmann B+I分画プロセスから沈殿物および上清を回収する工程と、
b)前記工程a)で得られた前記沈殿物を均質化し、17vol%エタノール含有水性酢酸リン酸緩衝液と0℃で1〜3時間混合することにより、前記沈殿物からIgGを抽出する工程と、その後、
c)あらゆる残った沈殿物(any remaining precipate)から、抽出されたIgGを含有する前記緩衝液を分離する工程とを含む方法を提供する。

0027

より好ましくは、本発明の方法は、前記工程c)で得られた前記抽出されたIgGを含有する前記緩衝液と、前記工程a)で得られた前記改変されたKistler-Nitschmann B+I上清とを組み合わせる工程をさらに含む。あるいは、本発明の方法において、前記工程c)は濾過により行われるものであり、本発明の方法は、Kistler-Nitschmann画分II沈殿の条件に従って、水性エタノール中で前記抽出されたIgGをインキュベートする工程と、得られたIgG富化画分II沈殿物を回収する工程とをさらに含む。

0028

本発明の全ての態様において、廃棄沈殿画分は、Cohn画分IIIと実質的に同等であることが好ましい。より好ましくは、廃棄沈殿画分は、Cohn画分IIIもしくはI+III、Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+I、または改変されたKistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである。

0029

本発明の全ての態様において、液体画分は、Cohn上清IIIと実質的に同等であることが好ましい。より好ましくは、液体画分は、Cohn上清IIIもしくはI+III、Kistler-Nitschmann 上清BもしくはB+I、または改変されたKistler-Nitschmann 上清BもしくはB+Iである。最も好ましくは、液体画分は、主流のCohn上清IIIもしくはI+IIIまたは改変されたKistler-Nitschmann 上清BもしくはB+Iに再投入されて、IgGの下流処理に進むことができる。また、液体画分は、別のサブ画分として処理を進めて、画分IIにおいて主流処理に再投入されてもよく、またはそれに続く適切な段階でのさらなる下流処理の後に再投入されてもよい。あるいは、液体画分は、精製ヒトIgG生成物に至るまで、完全に独立して処理することもできる。

0030

本明細書では、改変されたKistler-Nitschmann法に言及する場合、いずれもロバーツら(Roberts et. al., Biologicals, Vol. 43(2), March 2015, p123-129)に記載されたような方法を意味する。

図面の簡単な説明

0031

図1は、ヒトIgGおよびアルブミンの製造に用いることができる、改変されたKistler-Nitschmann低温エタノール分画プロセスの模式図である。
図2は、本発明の方法を、改変されたKistler-Nitschmann低温エタノール分画プロセスにどのように組み込むことができるかを示す模式図である。
図3は、IgGを生成するための改変されたKistler-Nitschmann低温エタノール分画プロセスを示す模式図である。
図4は、図3の改変されたKistler-Nitschmann低温エタノール分画法を示す模式図であって、本発明の付加的な画分B+I洗浄工程が、さらに回収されたIgGを処理の流れに再投入する別の段階とともに、組み込まれている。
図5は、Cohn/Oncley分画法を示す模式図であって、本発明の付加的な画分III/I+III洗浄工程が、さらに回収されたIgGを処理の流れに再投入する別の段階とともに、組み込まれている。

実施例

0032

以下の説明において、「液体画分」および「上清」は同義語であり、「沈殿物」および「画分」も同義語である。

0033

本明細書に記載されている方法で得られたIgG生成物(IgG product)は、純度が高く、最小限の凝集IgGしか含まないため、欧州薬局方モノグラフ0338(2015年1月)に示された最低基準を満たしている。従って、本明細書に記載されている方法で直接得られたIgG生成物は、少なくとも90%のガンマグロブリンを含む(電気泳動によって測定)。また、上記方法で得られた生成物は、少なくとも85wt%の単量体および二量体のIgG、ならびに10wt%未満の重合体および凝集体のIgGを含む(サイズ排除クロマトグラフィーによって測定)。高速液体クロマトグラフィーHPLC)を用いて、凝集体の含有量分析してもよい。これは、本明細書に記載されている分画プロセスで得られた生成物が欧州薬局方基準を満たすのに十分な純度および品質を有することから、製剤を作成するためのさらなる精製を必ずしも必要としないことを意味する。勿論、本明細書に記載されている分画プロセスで得られたIgGは、より品質の高いIgG生成物を得るために、または他の製薬用途等のための異なる製品プロファイルを得るために、適切な手段によってさらに処理されてもよい。このようなさらなる処理方法は、当業者に公知であり、特に1つ以上のウイルス不活性化工程を含む場合がある。

0034

低温エタノール分画は、血漿からIgGを単離するために最も広く用いられている方法の一つである。通常、複数のドナーから集めたプール血漿から、クリオプレシピテーションにより、クリオプレシピテートとして第VIII因子等の凝固因子を取り出す。次に、1つ以上の低温エタノール分画工程でクリオプレシピテートの上清を処理することで、主としてIgGを含有する沈殿画分が最終的に生成される。代表的なCohn/Oncley法およびKistler-Nitschmann法では、このIgG富化画分は、画分IIまたは沈殿物IIと呼ばれる。その後、上記沈殿物は、さらに精製工程およびウイルス不活性化工程を経て、静注用、皮下注用または筋注用の製薬上許容されるIgG最終生成物が得られる。

0035

本明細書に記載されている低温エタノール分画法では、「正常血漿」、「高度免疫血漿」(高度免疫抗D血漿、抗破傷風血漿または抗B型肝炎血漿等)またはこれらと同等の血漿を用いることができる。

0036

Cohn分画法において、第1の分画工程により、主としてフィブリノゲンおよびフィブロネクチンを含有する画分Iが生成される。この工程で得られる上清をさらに処理して、画分II+IIIを沈殿させ、その後、画分IIIおよび画分IIを沈殿させる。一般に、画分II+IIIは、フィブリノゲン、IgMおよびIgA等の不純物とともに、約60%のIgGを含有する。次に、これらの不純物のほとんどは、廃棄物画分とみなされて通常は処分される画分IIIで取り除かれる。その後、上清を処理することにより、主要なIgG含有画分である画分IIを沈殿させる。画分IIは、90%を超えるIgGを含有し得る。上記パーセント値は、IgGの純度をパーセントで表したものである。純度は、ゲル電気泳動等の当該技術において公知の任意の方法によって測定することができる。

0037

Kistler-Nitschmann法において、画分IはCohn法の画分Iと同等である。次の沈殿物/画分は、沈殿物A(画分A)と呼ばれる。この沈殿物は、Cohn画分II+IIIと概ね同等だが、同一ではない。次に、沈殿物を再溶解し、条件を調整して、Cohn画分IIIと同等である沈殿物B(画分B)を沈殿させる。この場合も、沈殿物Bは廃棄物画分とみなされて通常は処分される。その後、沈殿物Bの上清をさらに処理することにより、Cohn画分IIに相当する沈殿物IIが生成される。

0038

図1に示されているKistler-Nitschmann法の改変では、最初の2つの分画工程を組み合わせて、画分Iを回収せずに、第1の沈殿物(A+Iと称される)がフィブリノゲンおよびフィブロネクチンを含むようにすることができる。この沈殿物を再懸濁して、さらなる沈殿工程を経ると、形成された沈殿物(B+Iと称されることがある)は、フィブリノゲンおよびフィブロネクチンに加えて、IgMおよびIgA等の他の不純物を含む。次に、この沈殿工程で得られる上清をさらに処理して、IgG富化画分である画分IIが生成される。この処理における沈殿物B+Iも、IgG処理の流れを考慮すると、廃棄物画分とみなされる。

0039

原則として、本発明の方法は、画分IIの生成に先立ち、低温エタノール分画中において生成された沈殿画分、すなわち、Cohn画分IIIおよびI+III、ならびにKistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iのいずれかに適用してもよい。本発明の方法は、分画法において、通常は廃棄物画分とみなされる、画分IIの直前の沈殿画分に適用されることが好ましい。また、廃棄沈殿画分は、Cohn画分IIIもしくはI+III、Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+I、改変されたKistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+I、またはこれらと実質的に同等の画分であることが好ましい。

0040

上記廃棄沈殿画分は、出発血漿プールからのかなりの量のIgG、場合によっては25〜30%ものIgGを含有し得ることが判明している。これは、一つには、沈殿画分中に捕集されている上清によるものであり、また、一つには、IgGとIgMおよびIgA等の不純物との共沈によるものであると仮定される。

0041

驚くべきことに、廃棄物画分に簡単な洗浄(抽出)処理を施すことにより、比較的純粋な形(pure form)で、商業的にかなりの割合の「失われた」IgGを回収できることが判明した。この結果は予期せぬものである。なぜなら、当業者ならば、沈殿物に含まれる比較的高いレベルの他のタンパク質を考慮すると、廃棄沈殿物からのIgGの抽出は困難であり、抽出できたとしても(例えば、凝集および他の不要なタンパク質種またはタンパク質分解活性の観点から)IgGの純度が低いことを予想したからである。

0042

重要なことは、本発明の方法は、廃棄物画分からさらなるIgGを抽出するために、クロマトグラフィー工程を何も必要としないことである。従って、本発明の方法によれば、クロマトグラフィーを用いなくても、廃棄物画分から比較的純粋なIgG生成物が得られる。

0043

洗浄処理用の適切な溶媒を選択することにより、IgGの精製に関する限り、不純物とみなされている沈殿物中のいかなるその他のタンパク質を大量に抽出せずに、廃棄沈殿物からIgGを抽出できることが判明している。従って、沈殿物から不要な不純物を同時に取り除くのではなく、IgGの分離のために特別に用いられるような溶媒を選択すべきである。

0044

廃棄沈殿画分は、生成された直後に洗浄処理を施すことができる。あるいは、廃棄物画分は、後の処理のために冷凍状態保管されてもよい。洗浄する前に、沈殿物は、必要に応じて、洗浄処理が行われる温度に平衡させるべきである。一般に、このような平衡化は静的なもの、すなわち、沈殿物の攪拌を伴わないものである。

0045

洗浄処理に用いられる溶媒の種類および量は、回収されるIgGの純度を過度に損なわずに、IgGの回収が最大化されるように選択しなければならない。廃棄沈殿物からの不純物の抽出を最小限に抑えながらIgGの回収を最適化するには、洗浄/抽出に用いられる溶媒は、当該廃棄沈殿物が得られた分画工程で用いられた溶媒と同一であることが好ましい。

0046

廃棄物画分が(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+I、またはCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、好適な溶媒は、エタノール水溶液である。より好ましくは、このようなエタノール溶液緩衝化されている。沈殿物から抽出されたIgGが溶液中に留まるように、エタノール濃度、温度およびpHを制御する必要がある。

0047

好ましいエタノールの濃度は約10vol%〜約20vol%の範囲である。より好ましくは約11vol%〜約19vol%の濃度範囲であり、さらにより好ましくは約12vol%〜約19vol%の濃度範囲であり、最も好ましくは約13vol%〜約17vol%の濃度範囲である。濃度は、約13vol%および約17vol%が最も好ましい。「約13vol%」とは、好ましくは13±2vol%であり、「約17vol%」とは、好ましくは17±2vol%である。

0048

洗浄処理が行われる温度も、回収されるIgGの量および純度に影響を及ぼす。理想的には、洗浄処理の間の温度は、当該廃棄沈殿物が得られた分画工程で用いられた温度と同じ温度で維持される。従って、最適な温度範囲は、当該の画分および分画プロセスによって決まる。一般に、好ましい温度は約−3℃〜約−8℃の範囲であり、約−3℃〜約−7℃の範囲を含む。例えば、廃棄物画分が(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、洗浄抽出の間の温度は−5℃±2.0℃が好ましい。廃棄物画分がCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、通常、好ましい温度はわずかに低くなり、−6℃±2.0℃が好ましい。

0049

一般に、好ましい温度は約+3℃〜約−8℃の範囲であり、約−3℃〜約−7℃の範囲を含む。例えば、廃棄物画分が改変されたKistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、洗浄抽出の間の温度は−2℃±5℃が好ましい。廃棄物画分がCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、通常、好ましい温度はわずかに低くなり、−3℃±5.0℃が好ましい。

0050

最適なpH範囲も、画分によって決まる。一般に、好ましいpHは約4.8〜約5.3の範囲であり、より好ましくは約5.1〜約5.3の範囲である。例えば、廃棄物画分が(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、pH範囲は5.1±0.05が好ましい。廃棄物画分がCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、pHはわずかに高くなってもよく、5.2±0.05が好ましい。

0051

特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、溶媒は17±2vol%の水性エタノールであり、温度は−5℃±2.0℃であり、pH範囲は5.1±0.05である。

0052

特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、溶媒は17±2vol%の水性エタノールであり、温度は−2℃±5℃であり、pH範囲は5.1±0.05である。

0053

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分がCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、溶媒は17±2vol%の水性エタノールであり、温度は−6℃±2.0℃であり、pH範囲は5.2±0.05である。

0054

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分がCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、溶媒は17±2vol%の水性エタノールであり、温度は−3℃±5℃であり、pH範囲は5.2±0.05である。

0055

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が高度免疫血漿またはそれと同等の血漿から調製された、(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、溶媒は13±2vol%の水性エタノールであり、温度は−5℃±2.0℃であり、pH範囲は5.1±0.05である。

0056

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が高度免疫血漿またはそれと同等の血漿から調製された、(改変された)Kistler-Nitschmann沈殿物BもしくはB+Iである場合、溶媒は13±2vol%の水性エタノールであり、温度は−2℃±5℃であり、pH範囲は5.1±0.05である。

0057

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が高度免疫血漿またはそれと同等の血漿から調製されたCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、溶媒は13±2vol%の水性エタノールであり、温度は−6℃±2.0℃であり、pH範囲は5.2±0.05である。

0058

別の特に好ましい実施形態において、廃棄物画分が高度免疫血漿またはそれと同等の血漿から調製されたCohn画分IIIもしくはI+IIIである場合、溶媒は13±2vol%の水性エタノールであり、温度は−3℃±5℃であり、pH範囲は5.2±0.05である。

0059

リン酸および酢酸を含む、公知の緩衝液を用いて溶媒を緩衝化してもよい。

0060

一般に、洗浄工程には、溶媒中の廃棄物画分の懸濁が含まれる。懸濁液は、理想的には、均質になるまで混合した後、十分な時間放置してIgGを溶媒中に抽出させる。これは、図2図4および図5に示されている「抽出」工程および「順化(condition)」工程に該当する。この懸濁/順化/抽出工程の制限時間に具体的な上限値はない。実際には、工程にかかる時間は、処理効率等の外的要因によって制限される。このため、抽出時間は1時間〜24時間が好ましく、例えば、約2時間〜約10時間である。また、約2時間(例えば、90〜150分)も適している。

0061

好ましい態様において、本発明は、IgGの調製方法であって、
a)改変されたKistler-Nitschmann B+I分画プロセスから沈殿物および上清を回収する工程と、
b)前記工程a)で得られた前記沈殿物を均質化し、17vol%水性エタノール含有酢酸/リン酸緩衝液と0℃で1〜3時間混合することにより、前記沈殿物からIgGを抽出する工程と、その後、
c)あらゆる残った沈殿物から、抽出されたIgGを含有する前記緩衝液を分離する工程とを含む方法を提供する。

0062

より好ましくは、本発明の方法は、前記工程c)で得られた前記抽出されたIgGを含有する前記緩衝液と、前記工程a)で得られた前記改変されたKistler-Nitschmann B+I上清とを組み合わせる工程をさらに含む。あるいは、本発明の方法において、前記工程c)は濾過により行われるものであり、本発明の方法は、改変されたKistler-Nitschmann画分II沈殿の条件に従って、水性エタノール中で前記抽出されたIgGをインキュベートする工程と、得られたIgG富化画分II沈殿物を回収する工程とをさらに含む。

0063

洗浄/抽出工程で生成されたIgGを多く含む溶液は、設定されたIgG標的タンパク質製造の流れから、廃棄物画分が沈殿および/または分離されたときに生成される主要なIgG含有上清と、IgGの純度が同じか、または類似していることが好ましい。

0064

IgGの商業的および治療的価値を考慮すると、出発血漿からのIgGの収量を向上させるのならば、どのようなことでも潜在的重要性が認められる。ゆえに、廃棄物画分からのIgGの回収率(%)が比較的低くても、極めて有用となり得るのである。

0065

生成されたIgGを多く含む溶液は、当該技術において公知の標準的な方法で回収されてもよく、例えば、遠心分離または濾過によって残りの沈殿物から分離されてもよい。遠心分離の場合、上清にIgGが多く含まれることになる(すなわち、抽出されたIgGが含まれることになる)ため、沈殿物は、廃棄されてもよく、本発明によって再処理されてIgGをさらに抽出してもよく、および/または他のタンパク質の抽出に用いられてもよい。濾過の場合、濾液にIgGが多く含まれることになるため、得られた濾過ケーキは、廃棄されてもよく、混入した残留IgGを回収するためにさらに洗浄されてもよく、本発明によって再処理されてIgGをさらに抽出してもよく、および/または他のタンパク質の抽出に用いられてもよい。好適な濾過材は、当該技術において公知である。濾過を促進するために、キースラガー等のケイ酸塩濾過助剤(例えば、セライト(Celite)(登録商標)またはセルピュア(Celpure)(登録商標))を添加してもよい。

0066

洗浄処理において、溶媒の量は任意に設定できる場合もあるが、理想的には、利用可能な処理装置に合わせて最適化すべきである。溶媒の量が非常に少ないと、得られる懸濁液の粘性が高すぎて、容易に処理できない可能性がある。一方、溶媒の量が非常に多いと、処理が非効率になる恐れがある。従って、処理効率の理由から、一般に、溶媒の量は比較的少なく抑えることが好ましい。例えば、溶媒に対する廃棄物画分の重量は、通常、約1:2〜約1:10の範囲になる。好ましくは、溶媒の重量は、廃棄物画分の重量のほぼ4倍、すなわち、廃棄物画分と溶媒との重量比は約1:4であればよい。

0067

本発明の処理を用いて生成されたIgGを多く含む溶液は、当該技術において公知の方法でさらに処理されることにより、米国および欧州の両方の薬局方基準に沿った、製薬上許容されるIgG生成物を得ることができる。好ましくは、標準条件を用いて、溶液から画分IIを沈殿させた後、これをさらに精製して、静注用免疫グロブリン(IVIG)または皮下注用免疫グロブリン(SCIG)等の製剤を得る。

0068

さらなる精製は、IVIGまたはSCIGのウイルス安全性を確保するための適切な工程と組み合わせた陰イオンおよび/または陽イオン交換クロマトグラフィーの形をとってもよい(Roberts et. al., Biologicals, Vol. 43(2), March 2015, p123-129参照)。

0069

廃棄物画分から抽出されたIgGを多く含む溶液は、同じ廃棄物画分の他の溶媒抽出および/または他のバッチからの廃棄物画分の溶媒抽出と組み合わせて、別途処理することもできる。しかし、一般に、これらの溶液と、主要な標的タンパク質の下流処理におけるバルクIgGプロセス中間体(bulk IgG process intermediate)とを組み合わせる方がより効率的である。例えば、「廃棄物画分」の溶媒抽出によるIgGと、当該廃棄沈殿物を形成した分画工程で得られるIgGに富む上清とを組み合わせてもよい。これは、同じ分画のバッチからの上清でも、異なるバッチからの上清でもよい。

0070

あるいは、廃棄物画分から抽出されたIgGは、下流処理段階でバルクIgG中間体と組み合わされる前に、主要なIgGプロセスにおけるのと同じような1つ以上の下流製造工程を経てもよい。例えば、沈殿物B+Iから洗浄/抽出によって生成されたIgGを多く含む溶液と上清B+Iとを組み合わせた後、これをさらに処理して最終生成物としてもよい。あるいは、沈殿物B+Iから洗浄/抽出によって生成されたIgGを多く含む溶液は、上清B+Iから処理された主要なIgG画分II中間体と組み合わされて、最終生成物に処理される前に、画分IIを沈殿させるエタノール沈殿等の下流処理工程で処理されてもよい。製造装置および関連する物流の利用可能な規模次第では、いずれの選択肢も好ましい。抽出に使用される最適な溶媒は、対象とする次の(複数の)処理工程によって幾分異なることもある。

0071

図4および図5には、抽出されたIgGが主要なIgG処理の流れに再び合流する際の様々な他の合流点が示されている。

0072

本発明の好ましい特徴は、いかなる方法で組み合わせてもよい。従って、本明細書では、明確にするために、別々の実施形態の中で説明されている特徴があるが、それらはどのように組み合わせてもよい。逆に、簡潔にするために、単一の好ましい特徴という文脈で説明されている様々な特徴があるが、それらは単独でも、部分的に組み合わせて示されてもよい。さらに、範囲のある数値を参照する場合、その範囲内のあらゆる数値が含まれる。

0073

上記概要に記載された作用の全てが必要とは限らず、特定の作用の一部が必要でない場合もあれば、記載された作用に加えて、1つ以上のさらなる作用が行われる場合もある。また、作用が記載された順序は、必ずしもそれらが行われる順序ではない。

0074

(実施例)
以下の限定されない実施例により、本発明をさらに説明する。

0075

以下の実施例/表において、濁度分析プラットフォームである「SpaPlus」自動分析器バインディング・サイト(Binding Site)社、バーミンガム、英国)を用いて、タンパク質含有量について沈殿物および上清を分析した。アッセイプロ(AssayPro)ELISAキット供給元ユニバーサルバイオロジカルズ(Universal Biologicals)社、ケンブリッジ、英国)を用いて、凝固VII因子、第IX因子、第XI因子および第XII因子を分析した。また、ハイフン・バイオフェン(Hyphen BioPhen)色素分析キット(供給元:クアドテックダイアグスティックス(Quadratech Diagnostics)社、エプソム、英国)を用いて、第XIa因子を測定した。

0076

下記表1に、Kistler-Nitschmann低温エタノール分画で生成された廃棄物画分(Cohn/Oncley画分IIIと同等)である、B+I沈殿物の典型的な組成を示す。

0077

0078

以下に記載される実験の出発原料は、表1に示されている組成と同様の組成を有するIgG含有沈殿物B+Iとした。

0079

以下の実施例において、17vol%エタノール水性緩衝液は、以下のように作成される。
リン酸水素二ナトリウム水和物7.1mM(1.27g/L)
氷酢酸12.8mM(0.77g/L)
17vol%エタノール含有リン酸/酢酸緩衝液:96%エタノール141.6gをリン酸/酢酸緩衝液858.4gに添加する(最終pHは〜5.0−5.1)

0080

(実施例1)
第1の実験において、ホモジナイザーを用いて、pH4.8〜5.2、約−3℃〜−7℃の温度範囲で、17vol%エタノール水性緩衝液1000gに、沈殿物B+I97gを迅速に再懸濁させた。これにより、緩衝液に対する沈殿物の比は1:10であった。緩衝液は、適切なpHに調整されたリン酸塩および酢酸塩を含有する17vol%エタノール水溶液(「エタノール緩衝液」)からなる。

0081

第2の実験において、上記と同じ方法により、約−3℃〜−7℃の温度範囲で、17vol%エタノール含有水溶液(すなわち、エタノール非緩衝液)1000gに、同じ沈殿物B+I99gを再懸濁させた。次に、どちらの再懸濁液も適度な撹拌によって連続的に混合することで、一定の条件下で、24時間にわたって沈殿物を順化(熟成)した。緩衝再懸濁液および非緩衝再懸濁液の試料をそれぞれ遠心分離して、IgG富化液を回収した。また、IgGおよび対象となる他のいくつかのタンパク質の存在を確かめるために、予め遠心分離した懸濁液およびその上清を分析した(表2)。

0082

0083

表2から明らかなように、リン酸/酢酸緩衝17vol%エタノール水溶液(「エタノール緩衝液」)および非緩衝エタノール溶液での再懸濁により、いずれもIgGを抽出することに成功した。非緩衝エタノール上清抽出物には、緩衝上清よりも高い濃度のIgGが含まれていたが、緩衝エタノール上清抽出物には、IgAおよびIgMの割合がはるかに低く、より質の高いIgGが含まれていた。プロテアーゼ活性、第XI/XIa因子および第XII因子についても、緩衝エタノール上清抽出物の方が低かった。血栓塞栓性の副作用率が高いことは、IVIG製剤における第XI因子および第XIa因子と関係があるとされているため、上清画分中にこれらを再抽出させないことが非常に望ましい。エタノール/水抽出物と異なり、エタノール/緩衝液抽出物は、(画分IIへと進む)上清B+I画分と組成が似ているので、これらの2つの画分を混合することにより、高収量のIgGを含有する同等の純度の単一画分IIを生成することが可能になる。

0084

リン酸/酢酸緩衝水性エタノール上清からのIgGの収量は、血漿1リットルあたり0.55gのIgGに相当した。これは、血漿IgGの収量が〜10%にまで増加したことを意味する。つまり、IgG最終生成物の収量がさらに10〜20%増加すると言い換えることができる。

0085

(実施例2)
実施例2の一連の実験において、総体積を減少させるために、再懸濁比を低減する効果を調査した。1つの実験として、緩衝エタノール水溶液1000gに、B+I沈殿物500gを再懸濁させた(緩衝液2部に対して沈殿物1部)。別の実験として、エタノール緩衝液1000gに、同じB+I沈殿物250gを再懸濁させた(緩衝液4部に対して沈殿物1部)。分析のため、熟成の間、間隔をおいて試料を採取した(表3)。

0086

0087

表3のデータによれば、再懸濁比が1:2および1:4の場合、沈殿物からIgGを抽出させることができた。また、1:4の比の方が、抽出されたIgGの収量および特性は向上した。例えば、1:4の上清の濁度(物質の品質の全体的な指標)は、対応する1:2の再懸濁上清より2桁低かった。さらに、IgM、IgAおよび第XIa因子等の汚染物質の濃度は、1:2の上清と比較して、1:4の上清において著しく低下した。上記双方の実験から得られたデータは、約2時間以上の熟成時間を用いることで、IgGの特性および収量が維持できることを示している。2時間熟成後のIgGの収量は、1:4の上清および1:2の上清において、それぞれ血漿1リットルあたり0.47gおよび0.42gであった。

0088

(実施例3)
実施例2の結果を確認するために、1:4の比で数回の再懸濁を行った。6回の再懸濁において、異なるバッチの出発原料を用いた。いずれの場合にも、上記のように、水性エタノール緩衝液1000gに、B+I沈殿物250gを再懸濁させた。最低2時間混合しながら、−5℃で沈殿懸濁液を順化した。順化の最後に、再懸濁液を遠心分離した。再懸濁液および上清の両方を分析した。それぞれの上清のIgG濃度およびIgG収量(血漿相当量)を算出した(表4)。

0089

0090

IgGの平均収量は、血漿1リットルあたり0.57gであった。分画プロセスの主要な流れに加えることにより、この収量は、著しい収量の増加につながり、処理された血漿1リットルごとに得られるIgGがさらに0.57g増加することを意味する。

0091

(実施例4)
17vol%エタノール緩衝液1335gに、B+I沈殿物334gを再懸濁させて、−5℃で2時間混合した。次に、遠心分離により、固相から液相(「第1の抽出物」)を分離した。

0092

17vol%エタノール緩衝液1096gに、固相沈殿物274gを再懸濁させて、−5℃で2時間混合した。次に、遠心分離により、固相から液相(「第2の抽出物」)を分離した。

0093

IgGおよび対象となる他のいくつかのタンパク質の存在を確かめるために、処理ごとに予め遠心分離した懸濁液およびその上清を分析した(表5)。その結果、B+I沈殿物を順次繰り返して抽出することにより、溶媒上清相(solvent supernatant phase)でIgGが生成されて、それに相当する他のタンパク質は減少したことが確認された。

0094

0095

(実施例5)
沈殿物1部と17vol%エタノール緩衝液4部とを−5℃で2時間混合することにより、B+I沈殿物の抽出物を調製した。次に、遠心分離により、残余の沈殿物からこの抽出物を分離した。

0096

その後、B+I沈殿物の抽出物とB+I上清とを体積比1:10で組み合わせた。B+I上清の組成と、組み合わされたB+I上清およびB+I沈殿抽出物の組成とを比較した(表6)。その結果、上清と沈殿抽出物とを組み合わせると、許容されるIgG純度プロファイルを保持しながら、IgG濃度が増加することが確認された。

0097

0098

(実施例6)
改変されたKistler-Nitschmann法によって分画された血漿からのB+I沈殿物250kgを0℃±2℃で順化し、さらに0℃±2℃で1時間均質化することにより、17vol%エタノール緩衝液1000kgに再懸濁させた。次に、混合物を0℃±2℃で2時間熟成した。その後、pHは5.14であり、伝導率は0.6mS/cmであった。濾過または遠心分離により、沈殿物から上清抽出物を分離した。この抽出方法および濾過または遠心分離のいずれかによる回収の結果、B+I沈殿物から高純度のIgGを抽出することに成功した(表7)。

0099

0100

(実施例7)
実施例6における上清抽出物の濾液313kgを調整して、イオン強度を3.9mS/cmとし、エタノール濃度を25vol%に増加し、さらに1M水酸化ナトリウム滴定してpHを6.9とした。次に、この濾液を−6.5℃で6時間インキュベートすることにより、画分II沈殿物2.4kgを生成し、続いて遠心分離によってこれを収集した。画分II(FrII)沈殿物を水に溶解した(FrII:水=1:2)。分析の結果、B+I沈殿物の上清抽出物は、さらなる下流の精製に適合することにより、凝集レベルの低いIgGを生成することが示された。

0101

0102

(実施例8)
−30℃未満で冷凍貯蔵されていたB+I沈殿物100gを、0℃に制御された容器オプション(a))または0℃に制御された17vol%エタノール緩衝液を含む容器(オプション(b))のいずれかに入れて、撹拌することなく温度を0℃に上げた。温度は、冷凍前の沈殿物に設置されていたプローブで測定された。沈殿物の温度が0℃±1℃に達すると、オプション(a)の沈殿物に17vol%エタノール緩衝液を添加した。さらに、どちらの沈殿物も、溶媒緩衝液中にIgGを抽出する前に、2時間以上撹拌することによって均質化した(熟成/順化)。次に、残った沈殿物から上清を分離し、分析した。沈殿物を0℃に順化した場合、緩衝液の有無にかかわらず、IgGの抽出は同じであった(表9)。

0103

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