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図面 (20)

課題・解決手段

薬剤コート層を有する拡張可能部材を備えた医療器具であって、薬剤コート層が医療器具の表面上に規則的に配置され均一なサイズをもつ水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する医療器具を用意することと、医療器具を末梢血管に挿入することと、拡張可能部材を拡張することと、複数の結晶の少なくとも一部が血管壁移行するように薬剤コート層を血管壁に押付けることと、高薬剤濃度期間においては平滑筋細胞の増殖が抑制され、かつ、その後の低薬剤濃度期間においては内皮細胞の増殖が抑制されないように血管中薬剤濃度が保たれる薬物動態プロファイルがもたらされるように、拡張可能部材を縮小させることによる、下肢末梢動脈疾患の治療方法

概要

背景

近年、バルーンカテーテル薬剤をコートした薬剤溶出バルーン(DEB:Drug Eluting Balloon)の開発が活発に行われており、再狭窄治療および予防に効果的であると報告されている。バルーンは、薬剤および賦形剤を含むコート層でコートされており、血管を拡張した際にバルーンを血管壁押付け、薬剤を標的組織送達する。

近年、バルーン表面にコートされる薬剤の結晶形態型が、病変患部におけるバルーン表面からの薬剤の放出特性および組織移行性に影響を及ぼすことが見出されており、薬剤の結晶形または非結晶形の制御が重要であることが知られている。

従来のコート層を有する薬剤溶出バルーンは、血管の狭窄部を治療する際に低い毒性及び高い狭窄抑制率の効果を十分に示すとは言えないので、毒性がさらに低く狭窄抑制効果が高い医療機器要望される。

DEBは金属ステント(BMS:Bare Metal Stent)や薬剤溶出ステント(DES:Drug−Eluting Stent)と違って血管内にいかなる異物も残さないので、DEBは使用上の優利点を有する。特に、下肢の治療にはステントの使用は推奨されておらず、DEBが必要とされている。一方で、DEBの使用の際には、微小粒子によって生じる下流末梢血管の塞栓形成の危険性が懸念される。末梢血管の塞栓形成は壊死による下肢切断の危険性をもたらす可能性があるので、末梢血管の塞栓形成の軽減は臨床的に重要である。下腿BTK:Below−The−Knee)部の血管は末梢に位置しており、その血管径は小さい。したがって、塞栓形成の危険性が注目され、DEBは塞栓形成の危険性が低いことが求められる。このことは、微小粒子の数のみならず、微小粒子のサイズにも関連があると推定される。サイズが大きいほど、下流末梢血管に隣接する筋肉に微小粒子が分散されやすくなる。これによって塞栓形成の危険性が増すと考えられるので、微小粒子のサイズは小さいことが期待される。

DEBの十分な治療効果を得るためには、血管組織の病変部に移行する薬剤の濃度および薬剤濃度経時変化を維持することが重要である。また、平滑筋細胞の増殖を抑制すべき初期においては、血管組織内に比較的高い薬剤濃度が必要であるが、内皮細胞の増殖を抑制すべきでない終期においては、組織から薬剤が迅速に消え去ることが求められる。薬剤濃度の変化において、DEBによってこれら2つの点が達成されれば、DEBは効能及び安全性の両方において非常に優れた治療効果をもたらすことができる。

概要

薬剤コート層を有する拡張可能部材を備えた医療器具であって、薬剤コート層が医療器具の表面上に規則的に配置され均一なサイズをもつ水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する医療器具を用意することと、医療器具を末梢血管に挿入することと、拡張可能部材を拡張することと、複数の結晶の少なくとも一部が血管壁に移行するように薬剤コート層を血管壁に押付けることと、高薬剤濃度期間においては平滑筋細胞の増殖が抑制され、かつ、その後の低薬剤濃度期間においては内皮細胞の増殖が抑制されないように血管中薬剤濃度が保たれる薬物動態プロファイルがもたらされるように、拡張可能部材を縮小させることによる、下肢末梢動脈疾患の治療方法。なし

目的

本発明は、薬剤をコートした医療機器を体内に送達する際、病変患部における血管内狭窄抑制効果が高い水不溶性薬剤の形態型を有する薬剤コート層、およびそれを用いた医療機器を提供する

効果

実績

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請求項1

血管内膜肥厚を抑制するのに使用するための水不溶性薬剤であって、前記水不溶性薬剤は結晶形態型を有するとともに、拡張可能部材を有する医療機器の表面の薬剤コート層の中に複数の結晶粒子規則的に配置され均一なサイズをもち、治療された狭窄病変部全体において血管内膜肥厚が均一に抑制されて前記病変部が均一に開存状態とされる、水不溶性薬剤。

請求項2

前記治療が前記医療機器を末梢血管に挿入することと、前記拡張可能部材を拡張することと、前記複数の結晶粒子の少なくとも一部が血管壁移行するように前記薬剤コート層を前記血管壁に押付けることと、前記拡張可能部材を収縮させることを含む、請求項1に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項3

前記複数の結晶粒子の各々が、長軸を備えた長尺体を有し、前記長軸はほぼ直線状の形状であって前記長尺体の長軸が交わる前記拡張可能部材の表面に対して所定範囲内の角度をなす、請求項1または2に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項4

前記拡張可能部材の表面に対する前記所定範囲は、前記長尺体の長軸が交わる前記拡張可能部材の表面に対して45度〜135度の範囲内である、請求項3に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項5

前記長尺体の少なくとも先端近傍中空である、請求項2、3または4に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項6

前記長尺体の長軸に垂直な断面形状は多角形である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項7

前記薬剤コート層は針状晶癖を有する複数の高アスペクト比パクリタキセル結晶を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項8

水不溶性薬剤の前記複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する薬剤コート層は、前記結晶粒子の間に不規則に配置された賦形剤からなる賦形剤粒子を含み、好ましくは、前記賦形剤の分子量は前記水不溶性薬剤の分子量未満であり、基材所定面積あたりに前記賦形剤粒子が占める割合は前記結晶粒子の占める割合未満であり、前記賦形剤粒子はマトリクスを形成していない、請求項1〜7のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項9

前記水不溶性薬剤はパクリタキセル、ラパマイシンドセタキセル、およびエベロリムスからなる群から選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項10

低レベルの前記結晶粒子が下流末梢血管に隣接する筋肉中に分散される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項11

前記拡張可能部材の先端は前記拡張可能部材の表面から離脱する薬剤コート層を有する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項12

前記拡張可能部材の先端は他の医療機器と滑るように構成される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

請求項13

前記拡張可能部材の先端は血管内膜肥厚の抑制効果を示す薬剤コート層を有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の用途のための水不溶性薬剤。

技術分野

0001

水不溶性薬剤薬剤コート層、および前記水不溶性薬剤の特定の結晶形態型を示す薬剤コート層、ならびに下肢末梢動脈疾患の治療方法を開示する。

背景技術

0002

近年、バルーンカテーテルに薬剤をコートした薬剤溶出バルーン(DEB:Drug Eluting Balloon)の開発が活発に行われており、再狭窄治療および予防に効果的であると報告されている。バルーンは、薬剤および賦形剤を含むコート層でコートされており、血管を拡張した際にバルーンを血管壁押付け、薬剤を標的組織送達する。

0003

近年、バルーン表面にコートされる薬剤の結晶形態型が、病変患部におけるバルーン表面からの薬剤の放出特性および組織移行性に影響を及ぼすことが見出されており、薬剤の結晶形または非結晶形の制御が重要であることが知られている。

0004

従来のコート層を有する薬剤溶出バルーンは、血管の狭窄部を治療する際に低い毒性及び高い狭窄抑制率の効果を十分に示すとは言えないので、毒性がさらに低く狭窄抑制効果が高い医療機器要望される。

0005

DEBは金属ステント(BMS:Bare Metal Stent)や薬剤溶出ステント(DES:Drug−Eluting Stent)と違って血管内にいかなる異物も残さないので、DEBは使用上の優利点を有する。特に、下肢の治療にはステントの使用は推奨されておらず、DEBが必要とされている。一方で、DEBの使用の際には、微小粒子によって生じる下流末梢血管の塞栓形成の危険性が懸念される。末梢血管の塞栓形成は壊死による下肢切断の危険性をもたらす可能性があるので、末梢血管の塞栓形成の軽減は臨床的に重要である。下腿BTK:Below−The−Knee)部の血管は末梢に位置しており、その血管径は小さい。したがって、塞栓形成の危険性が注目され、DEBは塞栓形成の危険性が低いことが求められる。このことは、微小粒子の数のみならず、微小粒子のサイズにも関連があると推定される。サイズが大きいほど、下流末梢血管に隣接する筋肉に微小粒子が分散されやすくなる。これによって塞栓形成の危険性が増すと考えられるので、微小粒子のサイズは小さいことが期待される。

0006

DEBの十分な治療効果を得るためには、血管組織の病変部に移行する薬剤の濃度および薬剤濃度経時変化を維持することが重要である。また、平滑筋細胞の増殖を抑制すべき初期においては、血管組織内に比較的高い薬剤濃度が必要であるが、内皮細胞の増殖を抑制すべきでない終期においては、組織から薬剤が迅速に消え去ることが求められる。薬剤濃度の変化において、DEBによってこれら2つの点が達成されれば、DEBは効能及び安全性の両方において非常に優れた治療効果をもたらすことができる。

発明が解決しようとする課題

0007

DEBの特徴のひとつは、バルーンの拡張後、2、3分で迅速に薬剤を放出し、十分な量の薬剤を血管組織に移行させることである。もしも薬剤が被治療病変部全体に均一に移行しなければ、治療中の病変部に均一な抑制効果を付与することは期待できない。特に、下肢の血管における病変部の長さは冠動脈におけるそれよりも長いため、下肢において均一な効能を得るのは困難である。

課題を解決するための手段

0008

本発明は、薬剤をコートした医療機器を体内に送達する際、病変患部における血管内狭窄抑制効果が高い水不溶性薬剤の形態型を有する薬剤コート層、およびそれを用いた医療機器を提供することである。

0009

本発明は、病変患部において高い血管内狭窄抑制効果を有する水不溶性薬剤の特定の結晶形態型を有する薬剤コート層によって、取り組まれる。

0010

以下のように、種々の態様を開示する。

0011

(1)水不溶性薬剤の各結晶が独立して持つ長軸を備えた複数の長尺体を含む形態型を有する、基材表面上の薬剤コート層であって、前記長尺体の長軸はほぼ直線状であり、前記長尺体の長軸は前記長尺体の長軸が交わる基材平面に対して所定の範囲内の角度、好ましくは45度〜135度の範囲内の角度をなす、薬剤コート層。

0012

(2)前記長尺体の少なくとも先端部付近中空である、(1)に記載の薬剤コート層。

0013

(3)前記長軸に垂直な面上の前記長尺体の断面形状が多角形である、(1)または(2)に記載の薬剤コート層。

0014

(4)前記水不溶性薬剤の結晶の平たく細長い髪の毛状の結晶が前記基材表面上に不規則に積層されており、前記結晶のいくつかの前記長軸は曲線状に湾曲した部分を有し、他の形状の結晶が同一結晶面には混在しない薬剤コート層である、前記薬剤コート層。

0015

(5)前記水不溶性薬剤の結晶の表面が非晶質膜で覆われている、(4)に記載の薬剤コート層。

0016

(6)水不溶性薬剤の結晶形態型を含み、前記水不溶性薬剤の結晶粒子が前記基材表面上に規則性をもって配置され、賦形剤からなる賦形剤粒子が前記結晶粒子の間に不規則に配置された前記薬剤コート層であって、前記賦形剤の分子量は前記水不溶性薬剤の分子量未満であり、前記基材の面積あたりに占める前記賦形剤粒子の割合は前記結晶粒子の割合未満であり、前記賦形剤粒子はマトリックスを形成していない、薬剤コート層。

0017

(7)前記水不溶性薬剤はラパマイシンパクリタキセルドセタキセル、またはエベロリムスである、(1)〜(6)のいずれかに記載の薬剤コート層。

0018

(8)その表面上に(1)〜(7)のいずれかに記載の薬剤コート層を有する医療機器であって、体内に送達する際には縮径して送達され、患部においては拡径して前記薬剤コート層から薬剤を放出する、医療機器。

0019

(9)(8)に記載の医療機器を管腔に送達するステップと、前記医療機器に備えられた拡張可能部を径方向に拡張するステップと、前記拡張可能部を有する前記薬剤コート層を前記管腔に作用させるステップとを含む、薬剤送達方法。

発明の効果

0020

病変患部における血管内狭窄抑制効果が高く、および/または毒性が低い薬剤溶出性医療機器のための薬剤コート層を提供することができる。

0021

その表面上に均一のサイズにて規則的に配置された水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する薬剤コート層を有する拡張可能部材を有する医療機器を用意することと、前記医療機器を末梢血管に挿入することと、前記拡張可能部材を拡張することと、前記複数の結晶粒子のうちの少なくとも一部が血管壁に移行するように前記薬剤コート層を前記血管壁に押付けることと、末梢血管の塞栓形成を生じさせる様なサイズの微小粒子の発生が抑制されるように前記拡張可能部材を収縮させることを含む、末梢血管の塞栓形成の危険性を減少させる方法が提供される。

0022

その表面上に均一なサイズにて規則的に配置された水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する拡張可能部材を有する医療機器を用意することと、前記医療器具を末梢血管に挿入することと、前記拡張可能部材を拡張することと、前記複数の結晶の少なくとも一部が血管壁に移行するように前記薬剤コート層を前記血管壁に押付けることと、高薬剤濃度期間においては平滑筋細胞の増殖が抑制され、かつ、その後の低薬剤濃度期間においては内皮細胞の増殖が抑制されないように血管中薬剤濃度が保たれる薬物動態プロファイルがもたらされるように、前記拡張可能部材を収縮させることを含む、下肢末梢動脈疾患の治療方法が提供される。

0023

その表面上に均一のサイズにて規則的に配置された水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する薬剤コート層を有する拡張可能部材を有する医療機器を用意することと、前記医療機器を末梢血管に挿入することと、前記拡張可能部材を拡張することと、前記複数の結晶粒子のうちの少なくとも一部が血管壁に移行するように前記薬剤コート層を前記血管壁に押付けることと、狭窄の被治療病変部の全体(長い病変部全体)において血管内膜肥厚が抑制されて病変部が均一に開存状態になるように前記拡張可能部材を収縮させることを含む、血管内膜肥厚の抑制方法が提供される。
以下、本明細書中、「μm(micro m)」はマイクロメートルミクロン)を意味する。

図面の簡単な説明

0024

図1A図1Dは、実施例1で作製した薬剤コート層の表面の走査型電子顕微鏡(以下SEMという:Scanning Electron Microscope)像を示す図面である。図1Aは、実施例1で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像である。
図1Bは実施例1で作製した基材表面の他の部分に観察される結晶の1000倍のSEM像である。
図1Cは、実施例1で作製した基材表面の他の部分に観察される結晶の400倍のSEM像である。
図1Dは、実施例1で作製した薬剤コート層の基材表面に垂直な横断面で観察される結晶の4000倍のSEM像である。
図2は、実施例2で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図3Aは、実施例3で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図3Bは、実施例3で作製した薬剤コート層の基材表面に垂直な横断面で観察される結晶の4000倍のSEM像である。
図4は、実施例4で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図5は、実施例5で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図6Aは、実施例6で作製した薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図6Bは、実施例6で作製した薬剤コート層の基材表面の他の部分に観察される結晶の400倍のSEM像を示す図である。
図7は、比較例1でINVAtec JAPAN社製の市販薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))の薬剤コート層の基材表面に観察される結晶の2000倍のSEM像を示す図である。
図8は、ブタ冠動脈内の血管内狭窄に対する抑制効果を示す血管内狭窄率(%)のグラフである。
図9Aは、実施例7及び比較例3の粒度10μm〜25μmの粒子率を示すグラフである。
図9Bは、実施例7および比較例3の粒度100μm〜900μmの粒子率を示すグラフである。
図10は、実施例9および比較例C6〜C9における、ブタ大腿動脈組織内移行に対する0.02日後〜0.04日後(0.5時間〜1時間後)から7日後までの薬剤濃度の曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)を示すグラフである。
図11は、実施例9および比較例C6〜比較例C9における、ブタ大腿動脈組織内移行に対する27±1日後までの薬物動態プロファイルを示すグラフである。
図12は、実施例10および比較例C6−b〜比較例C8−b、比較例C10および比較例C11における、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果に対する28日後の面積狭窄百分率を示すグラフである。
図13は、実施例10および比較例C6−b〜比較例C11における、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果に対する28日後の面積狭窄率(%)の均一性を示すグラフである。
図14は、実施例10の走査型電子顕微鏡像であって、均一なパクリタキセル微結晶を示す。
図15は、比較例6−b(C6−b)の走査型電子顕微鏡像であって、不均一な薬剤コート層を示す。
図16は、実施例9、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)における、ブタ大腿動脈組織内移行に対する薬物動態プロファイルを示すグラフである。
図17は、実施例9、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)における、ブタ大腿動脈組織内移行に対する薬剤濃度のAUCを示すグラフである。

0025

薬剤をコートした医療機器を体内に送達するに際して、病変患部における毒性が低く、高い血管内狭窄抑制効果を有する薬剤コート層が、水不溶性薬剤の特定の結晶形態を持たせることで提供できることが結論付けられた。

0026

以下の結晶形態が好適に例示される。

0027

(1)中空長尺体の結晶形態型を含む層

0028

中空長尺体結晶を含む形態型を有する層は、水不溶性薬剤の結晶で形成される長軸を有する複数の長尺体が基材表面上にブラシ状に存在する薬剤コート層である。複数の長尺体は、基材表面上にブラシ状で周方向に配列されている。各々の前記長尺体は、独立して存在し、ある長さを持ち、長尺体の一端(基端)が基材表面に固定されている。前記長尺体は、隣接する長尺体と複合的な構造を形成せず、また、互いに結合していない。前記結晶の長軸は、形状がほぼ直線状である。前記長尺体は、その長軸が交わる基材平面に対して所定の角度をなす。所定の角度とは、45度〜135度の範囲内である。所定の角度として、70度〜110度の範囲内であることが好ましく、80度〜100度の範囲であることがより好ましい。前記長尺体の長軸が基材平面に対してほぼ90度の角度をなすことがより好ましい。前記長尺体は、少なくともその先端付近が中空である。前記長尺体の横断面は、長尺体の長軸に垂直な面において中空である。長軸に垂直な面における長尺体の中空横断面は、多角形である。該多角形としては、四角形五角形六角形等が挙げられる。したがって、長尺体は先端(または先端面)および基端(または基端面)を有し、先端(または先端面)および基端(または基端面)の間の側面は複数の平面で構成される長尺多面体として形成される。結晶形態型は、基材表面において、ある平面の全体または少なくとも一部を構成する。例えば、中空長尺体結晶形態型を含む層は、図1〜図5のSEM像に示される結晶形態型を有する層である。

0029

例えば、中空長尺体結晶を含む形態型を有する層の特徴は、以下のとおりである。

0030

1)独立した長軸を有する複数の長尺体(棒状体)であって、長尺体は中空である。

0031

2)長尺体は棒である。

0032

3)長軸を有する長尺体であり、多くの場合、長軸に垂直な面における長尺体の断面が多角形の多面体である。前記長尺体結晶の50体積%以上は長尺多面体である。多面体の側面は主として四面体である。場合によっては、前記長尺多面体は、頂点が長軸方向に延びる凹角で形成された複数の面(溝)を有する。ここで言う、凹角とは、長軸に垂直な面における長尺体の断面の多角形の内角の少なくとも一つが180度より大きい角度であることを意味する。

0033

4)多くの場合、長軸を有する長尺体は長尺多面体である。長軸に垂直な横断面で見たときに、その断面は多角形であり、四角形、五角形、または六角形として観察される。

0034

5)独立した長軸を有する複数の長尺体は、基材表面に対して所定範囲の角度、好ましくは45度〜135度の範囲で、並び立つ。すなわち、独立した長軸を有する複数の長尺体は、基材表面においてほぼ均一に林立する。長尺体が林立した領域は、基材表面上において周方向および軸方向にほぼ均一に形成されている。各独立長尺体の基材表面に対する各角度は、前記所定範囲内で異なっていてもよく、同一でもよい。

0035

6)独立した長軸を有する各長尺体の一端(基端)は基材表面に固定されている。

0036

7)場合によっては、基材表面に近い部分に、粒子状、短い棒状、または短い曲線状の結晶が積層されている。基材表面に直接的もしくは間接的に長軸を有する長尺体が存在する。したがって、前記積層の上に長軸を有する長尺体が林立する場合もある。

0037

8)長軸を有する長尺体の軸方向の長さは、好ましくは5μm〜20μmであり、より好ましくは9μm〜11μmであり、さらに好ましくは約10μmである。長軸を有する長尺体の直径は、好ましくは0.01μm〜5μmであり、より好ましくは0.05μm〜4μmであり、さらに好ましくは0.1μm〜3μmである。

0038

9)中空長尺体の結晶形態型を含む層の表面には、他の形態型(例えば、アモルファスの板状の形態型)は混在せず、長尺中空物の結晶形態型として50体積%以上、より好ましくは70体積%以上が、1)〜7)の結晶形態型として存在している。より好ましくは、中空長尺体のほとんど全てが7)の結晶形態型である。

0039

10)中空長尺体の結晶形態型において、結晶を構成する水不溶性薬剤を含む薬剤コート層に他の化合物が存在することが可能である。この場合、化合物は、バルーン基材表面上に林立する複数の水不溶性薬剤の結晶(長尺体)の間の空間に分配された状態で存在する。薬剤コート層を構成する物質の割合においては、この場合水不溶性薬剤の結晶の方が、他の化合物よりもはるかに大きな体積を占める。

0040

11)中空長尺体の結晶形態型においては、結晶を構成する水不溶性薬剤は、バルーン基材表面上に存在する。結晶を構成する水不溶性薬剤を有するバルーン基材表面上の薬剤コート層に、賦形剤によるマトリクスは形成されない。したがって、結晶を構成する水不溶性薬剤はマトリクス物質中に付着していない。結晶を構成する水不溶性薬剤は、また、マトリクス物質中に埋め込まれてもいない。

0041

12)中空長尺体の結晶形態型においては、薬剤コート層は基材表面上に規則性をもって配置された水不溶性薬剤の結晶粒子および前記結晶粒子の間に不規則に配置された賦形剤からなる賦形剤粒子を含んでもよい。この場合、前記賦形剤の分子量は水不溶性薬剤の分子量よりも小さい。したがって、基材の所定の面積あたりの賦形剤粒子が占める割合は、前記結晶粒子が占める割合よりも小さく、前記賦形剤粒子はマトリクスを形成しない。ここで、水不溶性薬剤の結晶粒子は前記長尺体の一つであってよく、また、賦形剤粒子は水不溶性薬剤の結晶粒子よりもはるかに小さい状態で存在し、しかも、水不溶性薬剤の結晶粒子の間に分散しているので、賦形剤粒子がSEM像で観察されない場合もある。

0042

(2)平坦毛状結晶形態型を含む層

0043

下記に述べる平坦毛状結晶形態型は、薬剤コート層(非晶質形を含む)の少なくとも一部、または50体積%以上、または80体積%以上、(結晶形として50体積%以上、より好ましくは70体積%以上)、さらに好ましくはほぼ100体積%を占める。ほぼ100体積%を占める場合は、複数の結晶形態型が混在することはなく、単一の結晶形態型のみが存在する。

0044

平坦毛状結晶形態型を含む層は、水不溶性薬剤の結晶の平坦長尺毛状結晶が基材表面上に不規則に積層される薬剤コート層であって、前記結晶のいくつかは湾曲形状部を有し、同一の結晶面内に他の形態型の結晶が混在することはない。アモルファス層および結晶層が存在する場合には、「同一結晶面でない」はアモルファス膜が結晶層の上に存在することを意味する。例えば、平坦毛状結晶形態型を含む層は、図6Aに示す実施例6の結晶形態を有する層である。

0045

例えば、平坦毛状結晶形態型を含む層の特徴は以下のとおりである。

0046

1)長軸を有する毛状結晶が、複数の幅方向平ら接合した形状で、中空ではなく、先細り形状である。

0047

2)毛状結晶の接合形状が基材表面上に不規則に積層されている。長軸が基材表面に沿って寝た状態で存在する。

0048

3)前記結晶のいくつかは、湾曲形状部を有する。

0049

4)毛状結晶の長軸方向の長さは、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは約20μmであり、上記の中空長尺結晶形態型よりも長いものが多い。

0050

(3)平坦毛状結晶の表面上にアモルファス膜が存在する形態型を含む層

0051

この層は、平坦毛状結晶の表面がアモルファス膜で覆われている薬剤コート層である。平坦毛状結晶の表面にアモルファス膜が存在する形態型を含む層は、平坦毛状結晶の上にアモルファス膜の層が存在しており、結晶層とアモルファス層の2層になっている。例えば、平坦毛状結晶の表面にアモルファス膜が存在する形態型を含む層は、図6Bに示す実施例6の結晶形を有する層である。

0052

具体的には、ある面(結晶/アモルファス膜が存在する面)には、ある結晶の形態が少なくとも一部または、50体積%以上、または80体積%以上、(結晶形態として50体積%以上、より好ましくは70体積%以上)、さらに好ましくは、複数の結晶形態が混在しない、さらにある面の外側にアモルファス膜が存在してもよい。

0053

前記中空長尺体の形態型、平坦毛状結晶の形態型、および平坦毛状結晶の表面にアモルファス膜が存在する形態型のそれぞれの結晶層は、基材表面に薬剤をコートした医療機器を薬剤コート層として体内に送達する際に、毒性が低く、血管内狭窄抑制効果が高い。その理由としては、限定するわけではないが、ある結晶形態を有する薬剤を組織内に移行させた後の溶解性および組織内滞留性が影響していると考えられる。例えば、アモルファスの場合は溶解性が高いので、薬剤が組織内に移行しても、すぐに血流の中に流れ込む。したがって、組織内滞留性は低いので、優れた狭窄抑制効果が得られない。一方、前記特定の結晶形を有する水不溶性薬剤は、該薬剤が組織に移行する際に結晶の一つの単位が小さくなるために、組織への浸透性およびその溶解性が優れているので、有効に作用して狭窄を抑制する。また、組織に大きな塊として残る薬剤の量が少ないために、毒性が低くなると考えられる。

0054

特に、中空長尺体の結晶形態型を含む層は、複数の長軸を有するほぼ均一な長尺体であり、かつ基材表面に規則性をもって均一に一列に配列した形態型である。したがって、組織内に移行する結晶は約10μmという小さなサイズ(長軸方向の長さ)を有する。このため、前記薬剤は病変患部に均一に作用し、組織浸透性が増大する。さらにた、移行する結晶のサイズが小さいため、過剰量の薬剤が病変患部に過剰な時間残存することがないため、毒性が発現することはなく、高い狭窄抑制効果を示すことが可能であると考えられる。

0055

前述の例示された結晶形(1)〜(3)などの前記結晶形態のいずれについても、医療機器の表面に規則的に配置され均一なサイズをもつ水不溶性薬剤の複数の結晶粒子は、基材に対してある角度、好ましくは少なくとも20度〜90度の角度で基材から突出する複数の高アスペクト比パクリタキセル結晶を含んでもよい。薬剤結晶は、中空晶癖または針状晶癖を有する複数の高アスペクト比パクリタキセル結晶であってよい。薬剤結晶は、中空針状晶癖を有する複数の高アスペクト比パクリタキセル結晶であってよい。「高アスペクト比」癖は、長寸法長さと短寸法長さを有し、長寸法長さが短寸法長さより実質的に長い、例えば短寸法長さの少なくとも約4倍の長さの、晶癖である。
<水不溶性薬剤>

0056

水不溶性薬剤とは、水に不溶性または難溶性の薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度がpH5〜pH8で5mg/mL未満である。この溶解度は1mg/mL未満でもよく、さらに0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は、脂溶性薬剤を含む。

0057

好適な水不溶性薬剤としては、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類等の免疫抑制剤、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤抗生物質抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻痺剤、拮抗剤ニューロンブロック剤抗コリン作動剤およびコリン作動剤、抗ムスカリン剤およびムスカリン剤、抗アドレナリン作用剤抗不整脈剤抗高血圧剤ホルモン剤ならびに栄養剤が挙げられる。

0058

水不溶性薬剤としては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびエベロリムスからなる群から選択される少なくとも一つが好ましい。本明細書においては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、およびエベロリムスとは、同様の薬効を有する限り、それらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルはドセタキセルの類似体である。ラパマイシンはエベロリムスの類似体である。これらのうちでは、パクリタキセルがより好ましい。

0059

水不溶性薬剤は、さらに賦形剤を含んでもよい。賦形剤は、医薬として許容されるものであれば限定されないが、例えば、水溶性ポリマー、糖、造影剤クエン酸エステルアミノ酸エステル短鎖モノカルボン酸グリセロールエステル、医薬として許容される塩類、および界面活性剤等が挙げられる。賦形剤と水不溶性薬剤との比率は限定されないが、具体的には、賦形剤/水不溶性薬剤の比率は0.5〜4.0(mol/mol)の範囲内、より好ましくは1.0〜3.2(mol/mol)の範囲内である。賦形剤はアミノ酸エステル、好ましくはセリンエチルエステルでもよく、水不溶性薬剤はパクリタキセルである。
<結晶層の製造方法>

0060

水不溶性薬剤を溶媒に溶解してコーティング溶液を調製する。コーティング溶液を、拡張したバルーン上にコーティング溶液の溶媒がゆっくり揮発するようにコートする。その後、コーティングが乾燥してからバルーンを収縮させることで、結晶層を含む薬剤コート層を作製する。

0061

使用する溶媒としては特に限定されないが、例えば、テトラヒドロフランエタノールグリセリングリセロールまたはプロパン−1,2,3−トリオールともいう)、アセトンメタノールジクロロメタンヘキサン酢酸エチル、および水が挙げられる。これらのうちでは、テトラヒドロフラン、エタノール、アセトン、および水のうちのいくつかを混合した混合溶媒が好ましい。

0062

コーティング装置を用いてコーティング溶液を医療機器(例えば、バルーンカテーテル等の医療機器等)の表面にコートする。コーティング装置は、モータプラットホーム、およびディスペンシングチューブを含む。モータは、医療機器の基端に固定した回転部材に連結されている。医療機器は回転部材上に載置され、その長手方向軸の回りを回転するように構成される。医療機器は、プラットホーム上で回転し得るようにプラットホーム上に支持されている。コーティング溶液は、ディスペンシングチューブを用いて医療機器の表面にコートされる。ディスペンシングチューブは中空管状構造を有し、先端に開口部を有する。ディスペンシングチューブの先端部の側部は医療機器の表面に接触するように配置され、コーティング溶液は先端開口部から医療機器の表面上に吐出される。医療機器は、長手方向軸の回りに、コーティング溶液の吐出とは反対の方向(逆方向)に回転される。ディスペンシングチューブは医療機器の長手方向軸に沿って平行移動して、コーティング溶液を医療機器に塗布する。医療機器の表面に塗布されたコーティング溶液を乾燥してコート層を形成する。医療機器(バルーンカテーテル)の回転は、10rpm〜200rpm、好ましくは30rpm〜180rpm、より好ましくは50rpm〜150rpmで行われる。平行移動は0.01mm/秒〜2mm/秒、好ましくは0.03mm/秒〜1.5mm/秒、より好ましくは0.05mm/秒〜1.0mm/秒で行われる。医療機器(バルーンカテーテル)のうちコート層が形成される部分は断面が円形または環状であり、その直径は1mm〜10mm、好ましくは2mm〜7mmである。医療機器表面へのコーティング溶液の吐出は0.01μL/秒〜1.5μL/秒、好ましくは0.01μL/秒〜1.0μL/秒、より好ましくは0.03μL/秒〜0.8μL/秒で行われる。
<医療機器>

0063

医療機器は、医療機器の表面に直接またはプライマー層等の前処理層を介して塗布した薬剤コート層を有することができる。薬剤コート層は、薬剤を0.1μg/mm2〜10μg/mm2の密度、好ましくは0.5μg/mm2〜5μg/mm2の密度、より好ましくは0.5μg/mm2〜3.5μg/mm2の密度、さらに好ましくは1.0μg/mm2〜3.0μg/mm2の密度で含むが、これに特に限定されない。

0064

基材の形状および材料は特に限定されない。金属類および樹脂類が材料として使用できる。材料は膜、板、ワイヤ、棒、および不規則形状の材料のいずれでもよく、また微粒子でもよい。

0065

使用する医療機器は限定されない。埋込または挿入が可能な医療機器ならいかなるものでも使用できる。長尺で、縮径した非拡張状態で血管等の体腔内に送達され、血管や組織等の部分で周方向に拡径されて薬剤コート層から薬剤を放出する医療機器が好ましい。したがって、縮径されて送達され、拡径されて患部に当てられる医療器具は、拡張部を有する医療機器である。前記薬剤コート層は、拡張部の表面の少なくとも一部の上に設けられる。すなわち、薬剤は、少なくとも、拡張部の外表面にコートされる。

0066

医療機器の拡張部の材料は、ある程度の柔軟性と、血管または組織に医療機器が到達した際に拡張されてその表面に有する薬剤コート層から薬剤を放出できるようにある程度の硬度を有することが好ましい。具体的には、医療器具は金属または樹脂を用いて構成されるが、薬剤コート層が設けられる拡張部の表面は樹脂で構成されるのが好ましい。拡張部の表面を構成する樹脂は特に限定されないが、好ましい例としてはポリアミド類が挙げられる。すなわち、医療機器の拡張部の表面のうち、少なくとも薬剤がコートされる部分は、ポリアミドである。ポリアミドとしては、アミド結合を有する重合体であれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプロラクタムナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミドナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカラクタムナイロン11)、ポリドデカノラクタム(ナイロン12)等の単独重合体カプロラクタムラウリルラクタム共重合体(ナイロン6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアンモニウムアジペート共重合体(ナイロン6/66)等の共重合体、アジピン酸メタキシレンジアミンとの共重合体、またはヘキサメチレンジアミンとm,p−フタル酸との共重合体等の芳香族ポリアミドなどが挙げられる。さらに、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などをハードセグメントとし、ポリアルキレングリコールポリエーテル、または脂肪族ポリエステルなどをソフトセグメントとするブロック共重合体であるポリアミドエラストマーも、医療器具の基材として用いることができる。上記ポリアミド類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。

0067

具体的には、拡張部を有する医療機器としては、拡張部(ステント)または拡張部(バルーン)を有する長尺カテーテルが例示される(バルーンカテーテル)。

0068

一実施態様のバルーンにおいては、好ましくは、拡張時に表面上に薬剤コート層が形成され、バルーンがラッピングされ(折りたたまれ)、血管、体腔などに挿入され、組織または患部に送達され、患部で拡径され、そして薬剤が放出される。
<下肢末梢動脈疾患の治療方法>

0069

前述のとおり、医療機器を、医療機器の表面上に規則的に配置され均一なサイズをもつ水不溶性薬剤の複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する薬剤コート層を有する拡張可能部材(例えば、バルーン)を有するDEBとして用意する。医療機器を、動脈に設けたアクセス点切開部を通して、末梢血管内に挿入する。アクセス点は橈骨動脈または大腿動脈に設けることができ、それぞれ上腕アプローチまたは下肢アプローチと呼ばれる。医療機器を、ガイドワイヤガイディングカテーテルなどの他の医療機器を用いて、動脈からアクセス点を介して下肢の治療すべき末梢動脈疾患の病変部へと挿入する。医療機器を病変部の直近位置付けたら、拡張可能部材を流体で広げて拡張する。拡張可能部材の表面の薬剤コート層を、血管壁に接触させて押付ける。薬剤は拡張可能部材の表面から直ちに放出され、複数の結晶粒子の少なくとも一部が血管の血管組織に移行する。拡張可能部材を収縮させ、医療機器を血管から抜去する。

0070

本明細書中に記載する医療機器を用いて、下肢の末梢動脈疾患を治療する方法が提供される。末梢動脈疾患の病変部は、下肢の血管(動脈)における老化、感染、糖尿病などによって/とともに発生する動脈硬化症によって形成される。本明細書中に記載するように、病変部に生じる微小粒子のサイズは十分に小さく、末梢血管の塞栓形成を生じる可能性のあるサイズの比較的大きな微小粒子の発生は抑制されることが示された。これは、バルーン表面上の薬剤コート層中に均一に配置され一様なサイズを持つパクリタキセルの結晶粒子によるものと考えられる。本明細書中に記載するDEBが、他社製のDEBと比較して、下流末梢血管に隣接する筋肉中に分散される微小粒子が少ないために、末梢塞栓形成の危険性を減少させ得ることが立証された。このことは、ブタ下肢を使った、下流末梢血管に隣接する筋肉に対する微小粒子の影響を見る実験において示された。

0071

本明細書中に記載するとおり、DEBを用いて薬物動態プロファイル(PK:Pharmacokineticプロファイル)を用意する。このPKプロファイルは、ミクロサイズの均一なパクリタキセル結晶粒子によって達成される。バルーン拡張の7日後までの高い組織中薬剤濃度が、平滑筋細胞の増殖に影響する。その後は、組織から迅速に消え去るため、内皮細胞の増殖が抑制されることはない。このDEBは、効能と安全性の両方において優れた成果をもたらす。すなわち、本明細書中で開示するDEBは、血管リモデリングに何らの影響を与える可能性がないので、遅発性血栓症の危険性は減少する。狭窄を強く抑制するが、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT:Dual Anti−Platelet Therapy)は4週間、薬剤無塗布バルーンの場合と同程度に限定されると思われる。PKプロファイルは、バルーン拡張の0.04日後(60分後)から7日後までの薬剤の血中濃度時間曲線下面積(AUC:Area Under the blood concentration−time Curve)が少なくとも200ng day/mg組織、7日後の組織中薬剤濃度が5ng/mg組織〜40ng/mg組織、好ましくは9ng/mg組織〜40ng/mg組織、28日後の組織中薬剤濃度が0.5ng/mg組織〜3ng/mg組織、0.04日後から1日後までの薬剤減少率が多くとも50%であった。

0072

本明細書中に記載するとおり、DEBは被治療病変部全体(長尺病変部全体)で血管内膜肥厚の均一な抑制効果をもたらすことが示された。長尺病変部は、例えば、4cm〜20cmの範囲の長手方向長さを有するバルーンカテーテルで治療される。これは、バルーン表面の薬剤コート層内の均一に配置され一様なサイズをもつパクリタキセルの微細結晶によって達成される。また、パクリタキセルの微細結晶は、被治療病変部への送達過程でバルーン表面から離脱することなく、送達される。DEBは、拡張の時点まで薬剤コート層の均一性(複数の結晶粒子の規則的な配置および一様なサイズ)を維持しながら、被治療病変部において拡張することができる。このようにして、パクリタキセルなどの薬剤を病変部全体へ均一に送達することができる。均一に配置されるパクリタキセル結晶のサイズは特に限定されない。結晶サイズは、例えば、0.5μm〜5μmの範囲および5μm〜30μmの範囲のいずれの範囲内とすることもできる。

0073

1.血管内膜の肥厚を抑制するのに使用するための水不溶性薬剤であって、前記水不溶性薬剤は結晶形態型を有するとともに、拡張可能部材を有する医療機器の表面の薬剤コート層の中に複数の結晶粒子が規則的に配置され均一なサイズをもち、
治療された狭窄病変部全体において血管内膜肥厚が均一に抑制されて前記病変部が均一に開存状態とされる、水不溶性薬剤。
2.前記治療が
前記医療機器を末梢血管に挿入することと、
前記拡張可能部材を拡張することと、
前記複数の結晶粒子の少なくとも一部が血管壁に移行するように前記薬剤コート層を前記血管壁に押付けることと、
前記拡張可能部材を収縮させること
を含む、1に記載の用途のための水不溶性薬剤。
3.前記複数の結晶粒子の各々が、長軸を備えた長尺体を有し、前記長軸はほぼ直線状の形状であって前記長尺体の長軸が交わる前記拡張可能部材の表面に対して所定範囲内の角度をなす、1または2に記載の用途のための水不溶性薬剤。
4.前記拡張可能部材の表面に対する前記所定範囲は、前記長尺体の長軸が交わる前記拡張可能部材の表面に対して45度〜135度の範囲内である、3に記載の用途のための水不溶性薬剤。
5.前記長尺体の少なくとも先端近傍は中空である、2、3または4に記載の用途のための水不溶性薬剤。
6.前記長尺体の長軸に垂直な断面形状は多角形である、2〜5のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。

0074

7.前記薬剤コート層は針状晶癖を有する複数の高アスペクト比パクリタキセル結晶を含む、1〜6のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
8.水不溶性薬剤の前記複数の結晶粒子を含む結晶形態型を有する薬剤コート層は、前記結晶粒子の間に不規則に配置された賦形剤からなる賦形剤粒子を含み、好ましくは、前記賦形剤の分子量は前記水不溶性薬剤の分子量未満であり、基材の所定面積あたりに前記賦形剤粒子が占める割合は前記結晶粒子の占める割合未満であり、前記賦形剤粒子はマトリクスを形成していない、1〜7のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
9.前記水不溶性薬剤はパクリタキセル、ラパマイシン、ドセタキセル、およびエベロリムスからなる群から選択される、1〜8のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
10.低レベルの前記結晶粒子が下流末梢血管に隣接する筋肉中に分散される、1〜9のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
11.前記拡張可能部材の先端は前記拡張可能部材の表面から離脱する薬剤コート層を有する、1〜10のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
12.前記拡張可能部材の先端は他の医療機器と滑るように構成される、1〜11のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。
13.前記拡張可能部材の先端は血管内膜肥厚の抑制効果を示す薬剤コート層を有する、1〜12のいずれかに記載の用途のための水不溶性薬剤。

0075

次に、実施例および比較例を説明するが、実施態様は実施例に限定されるものではない。
[A.薬剤溶出バルーンの作成または準備、あるいは薬剤無塗布バルーンの準備]
<実施例1>
(1)コーティング溶液1の調製

0076

L−セリンエチルエステル塩酸塩(CAS No.26348−61−8)(56mg)およびパクリタキセル(CAS No.33069−62−4)(134.4mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.2mL)、テトラヒドロフラン(1.6mL)、および逆浸透(RO:ReverseOsmosis)膜処理水(以下、RO水とする)(0.4mL)をそれぞれ加えて溶解して、コーティング溶液1を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0077

拡張時サイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材ナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液1を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。すなわち、最先端に開口部を有するディスペンシングチューブを横断方向に水平に移動させ、バルーンの表面上に配置した。ディスペンシングチューブの側方側の少なくとも一部を、バルーンの表面に沿って接触配置した。ディスペンシングチューブの側方側の少なくとも一部をバルーンの表面に接触させたまま、コーティング溶液をディスペンシングチューブの最先端の開口部から吐出した。この状態で、先端開口部からのコーティング溶液の吐出方向に対して反対方向(逆方向)に、バルーンを長手方向軸の回りに回転させた。長手方向軸に沿うディスペンシングチューブの平行移動とバルーンの回転移動を調整し、回転開始とともに、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.053μL/秒で吐出して、バルーンのコーティングを行った。

0078

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<実施例2>
(1)コーティング溶液2の調製

0079

L−セリンエチルエステル塩酸塩(70mg)およびパクリタキセル(180mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.5mL)、アセトン(2.0mL)、テトラヒドロフラン(0.5mL)、およびRO水(1mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液2を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0080

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0081

すなわち、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.088μL/秒で吐出した以外は、実施例1のようにしてコーティングを行った。

0082

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<実施例3>
(1)コーティング溶液3の調製

0083

L−セリンエチルエステル塩酸塩(70mg)およびパクリタキセル(168mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.5mL)、テトラヒドロフラン(1.5mL)、およびRO水(1mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液3を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0084

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液3を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0085

すなわち、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.101μL/秒で吐出した以外は、実施例1のようにしてコーティングを行った。

0086

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<実施例4>
(1)コーティング溶液4の調製

0087

L−セリンエチルエステル塩酸塩(70mg)およびパクリタキセル(180mg)を量りとった。これに無水エタノール(1.75mL)、テトラヒドロフラン(1.5mL)、およびRO水(0.75mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液4を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0088

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液4を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0089

すなわち、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.092μL/秒で吐出した以外は、実施例1のようにしてコーティングを行った。

0090

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<実施例5>
(1)コーティング溶液5の調製

0091

L−アスパラギン酸ジメチルエステル塩酸塩(CAS No.32213−95−9)(37.8mg)およびパクリタキセル(81mg)を量りとった。これに無水エタノール(0.75mL)、テトラヒドロフラン(0.96mL)、およびRO水(0.27mL)をそれぞれ加えて溶解して、コーティング溶液5を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0092

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液5を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0093

すなわち、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.055μL/秒で吐出した以外は、実施例1のようにしてコーティングを行った。

0094

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<実施例6>
(1)コーティング溶液6の調製

0095

L−セリンエチルエステル塩酸塩(56mg)およびパクリタキセル(134.4mg)を量りとった。これに無水エタノール(0.4mL)、テトラヒドロフラン(2.4mL)、およびRO水(0.4mL)をそれぞれ加えて溶解し、コーティング溶液6を調製した。
(2)バルーンへの薬剤コーティング

0096

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。コーティング溶液6を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0097

すなわち、コーティング溶液をバルーンの表面上に0.053μL/秒で吐出した以外は、実施例1のようにしてコーティングを行った。

0098

その後、コーティングを乾燥させて、薬剤溶出バルーンを作製した。
<比較例1>

0099

パクリタキセルおよび尿素の賦形剤を含む市販の薬剤溶出バルーンカテーテルであるIN.PACT(登録商標)(INVAtec JAPAN社製、Interventional Cardiology,58(11),2011,1105−1109)を準備した。比較例1のバルーンは表面にパクリタキセルをコートした薬剤溶出バルーンである。
<比較例2>

0100

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。比較例2のバルーンは表面に薬剤をコートしていない薬剤無塗布バルーンである。
[B.バルーンにコートしたパクリタキセル量の測定]

0101

実施例1〜実施例6の薬剤溶出バルーンについて、バルーン上にコートしたパクリタキセルの量を以下の手順にしたがって測定した。
1.方法

0102

調製した薬剤溶出バルーンをメタノール溶液に浸漬した後、振とう機で10分間振とうし、次いでバルーン上にコートしたパクリタキセルを抽出した。パクリタキセルを抽出したメタノール溶液の227nmにおける吸光度を、紫外可視分光光度計を用いた高速液体クロマトグラフィーで測定し、バルーンあたりのパクリタキセル量([μg/バルーン])を求めた。また、得られたパクリタキセルの量とバルーン表面積から、バルーン単位面積あたりのパクリタキセル量([μg/mm2])を算出した。
2.結果

0103

表1に得られた結果を示す。また、表1中、「バルーン表面積」はバルーン拡張時の表面積(単位:mm2)を、「バルーン上のPTX量」における「バルーンあたり」はバルーン1個あたりのパクリタキセルの量(単位:μg/バルーン)を、そして「バルーン上のPTX量」における「単位面積あたり」はバルーンの表面積1mm2あたりのパクリタキセルの量(単位:μg/mm2)をそれぞれ示す。

0104

表1に示すように、実施例1〜実施例6の全てにおいて、バルーン上にコートしたパクリタキセルの量は約3μg/mm2であり、バルーン表面上に目標量のパクリタキセルをコートすることが可能であった。



[C.薬剤溶出バルーンの薬剤コート層の走査電子顕微鏡(SEM)による観察]
1.方法

0105

実施例1〜実施例5および実施例6の薬剤溶出バルーンを乾燥し、それら乾燥した薬剤溶出バルーンを適当なサイズに切断した後、それらを支持台に載せ、その上に白金蒸着した。また、同様に、比較例1のINVAtec JAPAN社製の市販の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))も適当なサイズに切断した後、支持台に載せ、その上に白金を蒸着した。白金蒸着した試料の薬剤コート層の表面および内部を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
2.結果

0106

実施例の薬剤コート層の中には、中空長尺体の形態型、平坦毛状の形態型、および平坦毛状結晶の表面にアモルファス膜が存在する形態型を有する結晶層が観察された。

0107

図1〜図6に示すSEM像が得られた。実施例1〜実施例5のSEM像である図1〜図5は、中空長尺体の形態型を含む層を示しており、約10μmの長さを有する中空長尺体の均一なパクリタキセル結晶がバルーン表面上に均一に形成されることが明らかとなった。これら中空長尺体のパクリタキセル結晶は長軸を有し、長軸を有する長尺体(約10μm)はバルーン表面に対してほぼ垂直な方向となるように形成された。長尺体の直径は約2μmであった。また、長軸に対して垂直な表面における長尺体の断面は多角形であった。この多角形は、例えば、四角形の多角形であった。さらに、これらパクリタキセルのほぼ均一な中空長尺体は、同一の形態型(構造および形状)でバルーン表面全体に均一かつ濃密に(同一密度で)形成されていた。

0108

一方、実施例6の図6Aおよび図6BのSEM像は、平坦毛状の形態型および平坦毛状結晶の表面上にアモルファス膜が存在する形態型を含む層を示しており、この平坦毛状結晶は平坦長尺毛状のパクリタキセル結晶であった。これら結晶の多くは20μm以上の比較的大きなサイズを有し、長軸はバルーン表面に沿って横たわった状態で存在している(図6A)。また、図6Bに示すように、平坦毛状の形態型を含む層の上部がアモルファス膜で覆われた領域が存在した。この領域では、アモルファス膜の層が平坦結晶構造の上に存在する形態型を含む層、すなわち2つの層が結晶およびアモルファス膜から構成され、非晶質皮膜は平坦毛状結晶の表面上に存在している。

0109

比較例1の図7は、INVAtec JAPAN社製の市販の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))の薬剤コート層のSEM像である。これにおいて、アモルファスおよび結晶が同一平面内に混在していた。それらのほとんどはほぼアモルファスであり、針状結晶が同一平面内に部分的に混在する様子が観察された。
[D.ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果、および血管リモデリングに対する影響]

0110

実施例1〜実施例6、比較例1(C1:市販のバルーン)、および比較例2(C2:薬剤無塗布バルーン)について、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果および血管リモデリングに対する影響を、以下の手順にしたがって評価した。
1.方法

0111

(1)ガイドワイヤを備えたガイディングカテーテルを8Frシースによって挿入し、X線透視下で左右の冠動脈開口部に遊動した。

0112

(2)各冠動脈の血管造影を行い(冠動脈:左冠動脈前下行枝(LAD:Left Anterior Descending coronary artery)、右冠動脈RCA:Right Coronary Artery)、および左冠動脈回旋枝(LCX:LeftCircumfleX coronary artery))、血管造影で得られた冠動脈の直径をQCA(Qualitative Coronary Angiography)ソフトウェアで測定した。

0113

(3)血管の直径に対してステントの直径が1.2倍、薬剤溶出バルーンの直径が1.3倍である部位を選択し、ステント留置以降の作業を行った。

0114

(4)選択した冠動脈における金属ステント(BMS)(ステント直径3mm×長さ15mm)が1.2倍となるように30秒間伸長した後、ステント留置用バルーンカテーテルを除去した。ステント留置部位において、実施例1および実施例6ならびに比較例1および比較例2で準備した薬剤コート層を有する薬剤溶出バルーン(バルーン直径3mm×長さ20mm)を血管の直径に対して1.3倍となるように1分間拡張した後、バルーンカテーテルを除去した。

0115

(5)薬剤溶出バルーンを拡張した後、ガイディングカテーテルおよびシースを除去した。頸動脈の中央側を結紮した後、頸部切開開口部の筋肉の間隙縫合糸縫合し、皮膚を外科用縫合ステープラーによって縫合した。

0116

(6)バルーン拡張の28日後、剖検を行った。
<血管内狭窄率の算出方法

0117

血管内狭窄率を以下の手順に従って算出した。

0118

ライカ顕微鏡および病理画像ステムによって血管像撮像した。これらの像を用いて、外弾性板領域の内面積、内弾性板領域、管腔の内面積、ステントの内面積を測定した。

0119

「面積狭窄率=(新生内膜領域/内弾性板領域)×100」から、面積狭窄率(%)を算出した。

0120

フィブリン沈着度の算出方法、Fibrin Content Score>

0121

フィブリン沈着度の評価は、鈴木らの方法(Suzuki Y.,et al. Stent−based delivery of sirolimus reduces neointimal formation in a porcine coronary model,Circulation 2001;1188−93)に従って、血管の全周において行った。

0122

Fibrin Content Scoreのスコアの内容は以下のとおりである。

0123

スコア1:血管内に局在化したフィブリンが観察されたか、または、ステントの支柱付近の観察可能な血管の全周の25%未満の領域にフィブリンが中程度に堆積している。

0124

スコア2:観察可能な血管の全周の25%超の領域にフィブリンが中程度に堆積していたか、または、支柱の間および支柱近傍の観察可能な血管の全周の25%未満の領域にフィブリンが著しく堆積している。

0125

スコア点3:観察可能な血管の全周の25%超の領域にフィブリンが多量に堆積している。

0126

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位の3つの位置、すなわち基端位置、中間位置、および先端位置の平均値として算出された。
内皮スコア算出方法、Endothelialization Score>

0127

Endothelialization Scoreの内容は以下のとおりである。

0128

スコア1:観察可能な血管管腔の全周の25%以下が内皮細胞に覆われている。

0129

スコア2:観察可能な血管管腔の全周の25%〜75%が内皮細胞に覆われている。

0130

スコア3:観察可能な血管管腔の全周の75%以上が内皮細胞に覆われている。

0131

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位の3つの位置、すなわち基端位置、中間位置、および先端位置の平均値として算出された。
2.ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果についての結果

0132

血管内狭窄率は、前記の手順に従って算出した。表2に得られた結果を示す。表2中、実施例/比較例の欄の1および6は実施例であり、C1およびC2は比較例である。

0133

また、図8は、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果についての実施例1および実施例6ならびに比較例C1および比較例C2の血管狭窄率を示すグラフである。図8中、横軸は実施例または比較例を表し、数字1および6は実施例1および実施例6を、アルファベット付き数字、すなわちC1およびC2は比較例1(C1)および比較例2(C2)をそれぞれ意味する。また、縦軸は血管の面積狭窄率(単位:%)を表す。

0134

比較例2(C2)においては、薬剤無処置対照としての薬剤無塗布バルーンで治療した血管の面積狭窄率は38.9%であった。実施例6の薬剤溶出バルーンで治療した血管の面積狭窄率は20.6%であり、薬剤無処置対照と比較してかなりの狭窄抑制効果が確認された。一方、比較例1の市販の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))で治療した血管の面積狭窄率は30.4%であり、薬剤無塗布バルーンと比較して面積狭窄率が減少する傾向のあることが分かった。しかし、この効果を改善する十分な余地があると推定された。

0135

これに対して、実施例1による薬剤溶出バルーンで治療した血管の面積狭窄率は16.8%であり、薬剤無処置対照および比較例1(C1)のIN.PACT(登録商標)と比較してかなりの狭窄抑制効果が観察された。また、これは実施例6におけるよりも強い効果を示しており、最も優れた狭窄抑制効果が得られた。

0136

以上のことから、実施例1および実施例6によるパクリタキセル結晶形態型を有する薬剤コート層の薬剤溶出バルーンは、市販の薬剤溶出バルーンと比較してかなり強い狭窄抑制効果を示すことが明らかとなった。



3.ブタ冠動脈におけるステント留置後の血管リモデリングについての結果(毒性)

0137

ブタ冠動脈におけるステント留置後の血管リモデリングに対する影響(毒性)として、Fibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreを観察した。結果を表3に示す。また、Fibrin Content Scoreの数字が大きいほど、フィブリン沈着度は大きく、それは好ましくないことである。一方、Endothelialization Scoreの数字が小さいほど、血管が内皮細胞に覆われることが少なく、それは好ましくないことである。表3中、実施例/比較例の欄の1および6は実施例であり、C1およびC6は比較例である。

0138

比較例2(C2)において薬剤無処置対照としての薬剤無塗布バルーンで治療した血管のFibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreは、薬剤による影響(毒性)が無いので、血管再造形には影響せず、それらスコアはそれぞれ1.00±0.00および3.00±0.00であった。

0139

比較例1(C1)におけるFibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreはそれぞれ1.27±0.15および2.80±0.11であり、それらスコアは薬剤無塗布バルーンの場合とほぼ同じであった。薬剤による狭窄抑制効果が小さいため血管再造形に対する影響(毒性)も小さいものと推定される。

0140

一方、実施例6による薬剤溶出バルーンで治療した血管のFibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreは、それぞれ2.61±0.16および1.78±0.17であり、血管リモデリングに対する影響は比較例1(C1)および比較例2(C2)の場合と比較して大きいことが示唆された。これは、狭窄抑制効果が比較例1(C1)および比較例2(C2)の場合よりも強いためであると考えられる。

0141

これに対して、実施例1による薬剤溶出バルーンで治療した血管のFibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreは、それぞれ1.53±0.17および2.87±0.09であり、血管リモデリングに対する影響(毒性)は比較例1(C1)における市販品の場合と同じであり、高い狭窄抑制効果が得られるにもかかわらず毒性が非常に低いことが明らかとなった。

0142

以上のことから、実施例6によるパクリタキセル結晶形態型を有する薬剤コート層の薬剤溶出バルーンは、かなり強い狭窄抑制効果を有する。また、実施例1によるパクリタキセル結晶形態型を有する薬剤コート層の薬剤溶出バルーンは、かなり強い狭窄抑制効果を有しながら、血管リモデリングに対してほとんど影響(毒性)を示さず、したがって、有効性副作用(毒性)との面で優れた薬剤溶出バルーンであることが明らかとなった。



[E.薬剤溶出バルーンから生じる粒度]

0143

実施例7および比較例3(C3)の薬剤溶出バルーンについて、模擬末梢血管モデルの中を薬剤溶出バルーンを通過させて微粒子を発生させて懸濁液として回収した。
<実施例7>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0144

拡張時のサイズが直径7.0mm×長さ200mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0145

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0146

すなわち、実施例2のようにしてコーティングを行った。
<比較例3>

0147

拡張時のサイズが直径7.0mm×120mm(拡張部)の市販のバルーンカテーテルIN.PACT(登録商標)(INVAtec/Medtronic社製、上記比較例1で述べたものと同じ)を準備した。比較例3のバルーンは、表面にパクリタキセルをコートした薬剤溶出バルーンである。
1.方法

0148

以下の手順にしたがって微粒子を発生させた。ガイディングシースに生理食塩水を満たし、約45度の角度となるように配置した。次いで、ガイドワイヤをガイディングシースの内腔に通した。この試験の間、ガイディングシース内の生理食塩水を37度に保持した。薬剤溶出バルーンを、バルーンがモデル(ガイディングシース)を出てガイディングシースを入れたシリコーンゴム管でできた模倣血管に入るまで、1分間、ガイドワイヤの上をたどらせた。バルーンを11気圧まで拡張し、1分間保持し、収縮させ、モデル内を後退させた。ガイディングシース内を生理的食塩水置換した。模倣血管内を生理食塩水で置換した。置換用溶液は全てガラスバイアル貯留した。微粒子の数およびサイズの測定は、液体粒子カウンターHIAC8000A(Hach社)および顕微鏡VH−5500(KEYENCE社)によって行った。
2.結果

0149

シリコーンゴム模倣血管内でバルーン拡張を行うようにして模擬末梢血管モデルの中を薬剤溶出バルーンを通過させて発生させた微粒子(バルーンカテーテルあたりの平均総数)を測定した。結果を図9Aおよび図9Bに示す。図9Aおよび図9B中、7は実施例であり、C3は比較例3である。

0150

実施例7の薬剤溶出バルーンは、直径10μm〜25μmの微粒子(微細な微粒子)を、バルーンカテーテルあたり、比較例C3の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))のおよそ10倍の数だけ発生させることが示された。さらに、また、実施例7の薬剤溶出バルーンは、100μm〜900μmの大きな微粒子を、比較例C3のIN.PACT(登録商標)よりも少なく発生させた。この実施態様において、図9Aおよび図9Bに示すように、実施例7の薬剤溶出バルーンから発生した微粒子総体の90%超は直径が10μm〜25μmであり、残り(10%以下)の微粒子は直径が100μm〜900μmであった。
[F.下流の血管および骨格筋組織学的評価]

0151

実施例7および比較例4(C4)の薬剤溶出バルーンについて、(下肢の末梢動脈における)下流の血管および骨格筋の組織学的評価を、以下の手順にしたがって行った。

0152

<比較例4(C4)>
表4中の比較例4(C4)は、文献(Catheterization and Cardiovascular Interventions 83, 2014,132−140)を参照すべきものであって、パクリタキセルならびにポリソルベートおよびソルビトールからなる担体を含む、Bard社製の市販の薬剤溶出バルーン(Lutonix(登録商標))のデータである。
1.方法

0153

実施例7のようにして模擬末梢血管モデルを用いて微粒子懸濁を発生させた。5匹のブタを下流の血管および骨格筋の組織学的評価に指定した。薬剤溶出バルーン治療手技を終えた後、ブタを回収し、所定の29±1日生存時点に達するようにした。1匹のブタについて、1×臨床的ドーズ(3μg/mm2パクリタキセル)ないしは3×ドーズ(9μg/mm2パクリタキセルに相当)微粒子懸濁液または対照懸濁液を左右の腸骨大腿動脈に動脈内注射投与した。各注射おいて、ガイディングカテーテルを大腿浅動脈および大腿深動脈分岐遠位端に位置付け、パクリタキセル粒子懸濁液または対照懸濁液を約5秒間かけて注射した。注射の後すぐに、カテーテル内に約20mLの生理食塩水を流して、懸濁液全体の目標部位への到達を確実にした。血管の開存を査定するために血管造影を行った。半腱様筋半膜様筋大腿二頭筋、大腿腓腹筋ヒラメ筋深指屈筋、および浅指屈筋を1cm〜2cm間隔の平行切傷で切開することによって、29±1日後に、下肢筋肉中の塞栓子の存在を評価した。ミクロトームを用いて3〜4ミクロンで組織学的切片を作成し、ヘマトキシリンエオジン(H&E:Hematoxylin and Eosin)で染色した。組織学的切片を抗フォンヴィルブランド因子抗体(Abcam)で免疫染色して、内皮細胞を検出した。組織学的切片を検査して、塞栓性微粒子および関連する虚血性壊死/炎症領域を確認および定量した。所見を伴う小動脈の数を、組織学的切片の小動脈の総数の百分率で表した。

0154

下流骨格筋の組織学的分析を行って、下流塞栓による虚血証拠があるかどうか調べた。
2.結果

0155

塞栓や壊死などの何らかの下流の病理学的所見を伴う小動脈の百分率を評価した。表4に得られた結果を示す。表4中、実施例/比較例の欄の「7」は実施例を示し、「C4」は比較例を示す。

0156

実施例7においては、3×ドーズで治療した動脈のうち何らかの下流の病理学的所見を伴う小動脈の百分率は、最大28日で0.012%であった。骨格筋における変化は概して非常に低いことが示された。また、実施例7で観察された下流の塞栓および/または壊死の百分率は、比較例4(C4)によるLutonix(登録商標)(Catheterization and Cardiovascular Interventions,83,2014,132−140)よりも小さかった。実施例7は良好な下流安全性を示した。本明細書中に記述する薬剤溶出バルーンは末梢動脈における壊死のレベルが低くなるという効果をもつことが示された。



[G.下流筋肉中の薬剤濃度]

0157

実施例8および比較例5(C5)の薬剤溶出バルーンについて、下流筋肉中に分散されるパクリタキセルの濃度を、以下の手順にしたがって評価した。
<実施例8>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0158

拡張時のサイズが直径6.0mm×長さ40mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0159

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0160

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<比較例5(C5)>

0161

表5中、「C5」はIN.PACT(登録商標)のデータによるが、実施例8の投与量に対して正規化したものである。IN.PACT(登録商標)のデータは、科学博士R.J.MelderによってLINC2013(IN.PACT DEB technology and Pre−clinical Science)に発表された。
1.方法

0162

下流筋肉(下肢の末梢動脈における)に分散されるパクリタキセルの量を評価するため、3匹のブタを指定した。治療手技において、血管造影を利用して腸骨大腿動脈および大腿浅動脈内の目標治療部位を確認した。ブタごとに、一つの薬剤溶出バルーンによる治療を行った。薬剤溶出バルーン治療手技を終えた後、ブタを回収し、所定の1日(24±0.5時間)生存時点に達するようにした。(拡張したセグメント被治療部位]の直下および下流の)筋肉を、薬剤溶出バルーンでの治療の1日(24±0.5時間)後に周囲の組織から注意深く剥離した。筋肉中のパクリタキセル濃度の測定は、液体クロマトグラフィータンデム質量分析法(LC−MS/MS:Liquid Chromatography−tandem Mass Spectrometry)分析によって行った。
2.結果

0163

薬剤暴露の結果に相関する、下流筋肉中へ分散されたパクリタキセルの量を評価した。表5に、下流筋肉中のパクリタキセル濃度を示す。表5中、実施例/比較例の欄の「8」は実施例を示し、「C5」は比較例を示す。

0164

実施例8で観察された下流筋肉中のパクリタキセル濃度は、比較例5(C5)のIN.PACT(登録商標)よりも低かった。

0165

以上のことから、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、他社製の薬剤溶出バルーンと比較して、下流筋肉中への(大きな)微小粒子の分散が少ないため、末梢塞栓形成の危険性を減少させることができることが明らかとなった。



[H.ブタ腸骨大腿動脈における薬物動態

0166

実施例9ならびに比較例6−a(C6−a)〜比較例8−a(C8−a)および比較例9(C9)の薬剤溶出バルーンについて、ブタ腸骨大腿動脈における薬物動態を、以下の手順によって評価した。
<実施例9>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0167

拡張時のサイズが直径6.0mm×長さ40mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0168

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0169

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<比較例6−a(C6−a)>

0170

図10および図11中の比較例6−a(C6−a)はIN.PACT(登録商標)のデータによる。IN.PACT(登録商標)のデータは科学博士R.J.MelderによってLINC2013にて発表されたものである(IN.PACT DEB technology and Pre−clinical Science)。
<比較例7−a(C7−a)>

0171

図10および図11中の比較例7−a(C7−a)はLutonix(登録商標)のデータによる。Lutonix(登録商標)のデータは医学博士R.VirmaniによってLINC2014にて発表されたものである(Pre−clinical safety data and technology review)。
<比較例8−a(C8−a)>

0172

図10および図11中の比較例8−a(C8−a)はCotavance(登録商標)のデータによる。Cotavance(登録商標)のデータは文献(Cardiovascular Interventions,6,8,2013,883−890)を参照したものであり、医学博士R.Virmaniによって発表されたものである(Pros and Cons of Different Technologies in Peripheral Arteries: Insights from A Pathologist)。
<比較例9(C9)>

0173

図10および図11中の比較例9(C9)はFreeway(登録商標)のデータによる。Freeway(登録商標)のデータはR.P.StrandmannによってeuroPCR2013にて発表されたものである(Effect of drug−coated balloon on porcine peripheral arteries: physiologic vascular function, safety and efficacy experiments)。
1.方法

0174

24匹のブタを薬物動態の検討に指定した。治療手技において、血管造影を利用して腸骨大腿動脈および大腿浅動脈内の目標治療部位を確認した。

0175

この検討においては、各ブタの2つの動脈(左右の腸骨大腿動脈)を使用した。血管造影は治療の前、最中および後に行って、治療および血流を評価した。薬剤溶出バルーン治療手技を終えた後、ブタを回収し、所定の1時間ならびに1日、7日および28日生存時点に達するようにした。頸動脈切開を行い、血管への接近のためシースを配置した。薬剤溶出バルーンを用いた治療の1時間後ならびに1日後、7日後および28日後に、目標組織を周囲の組織から注意深く剥離した。組織中のパクリタキセル濃度の測定は、LC−MS/MS分析によって行った。
2.結果

0176

ブタ大腿動脈における薬物動態を評価した。図10は、ブタ大腿動脈組織における移行について実施例9および比較例C6〜比較例C9の0.02日後〜0.04日後(0.5時間〜1時間)〜7日後の薬剤の曲線下面積(AUC:Area Under the Curve)を示すグラフである。図10中、横軸は実施例または比較例を表し、数字「9」は実施例9を意味し、アルファベット付き数字、すなわち「C6−a」〜「C9」は比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)、比較例8−a(C8−a)および比較例9(C9)を意味する。また、縦軸は目標動脈組織中の0.04日後〜7日後の薬剤のAUC(ng day/mg)を表す。

0177

実施例9で観察されたバルーン拡張の0.04日後(1時間後)から7日後までの目標動脈組織中の薬剤のAUCは254ng day/mgであったが、それは比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)、比較例8−a(C8−a)および比較例9(C9)よりも高い。また、図11はブタ大腿動脈組織における移行についての実施例9および比較例C6〜C9の27±1日後までの薬物動態プロファイルを示すグラフである。図11中、9は実施例であり、C6〜C9は比較例である。横軸は薬剤溶出バルーンの拡張後の日数を表す。また、縦軸は目標動脈組織中の薬剤濃度を表す。

0178

実施例9で得られた0.04日後から7日後までの薬剤のAUCは文献を参照すべき他社製の薬剤溶出バルーンと比較して最も高く、また、0.04日後(1時間後)から1日後までの薬剤の減少率は多くとも50%であった。7日後以降、組織中薬剤濃度は28日後までに2ng/mg組織まで減少した。

0179

実施例9において観察された薬物動態プロファイルは、バルーン拡張の7日後まで高い組織中薬剤濃度を示したが、それ以後、速やかに消え去り、28日後まで低い濃度を維持した。7日後までの高い組織中薬剤濃度は平滑筋細胞増殖に影響し、それ以後は、速やかに組織から消え去るため内皮細胞の増殖を抑制することはない。したがって、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは効能と安全性の両方において優れた成果をもたらす。
[I.ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果]

0180

実施例10ならびに比較例6−b(C6−b)〜比較例8−b(C8−b)および比較例10(C10)〜比較例11(C11)の薬剤溶出バルーンについて、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果を以下の手順にしたがって評価した。
<実施例10>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0181

拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。
コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0182

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<比較例6−b(C6−b)>

0183

図12の比較例6−b(C6−b)の薬剤溶出バルーンとして、IN.PACT(登録商標)(INVAtec/Medtronic社製)を準備した。拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテルを準備した。
<比較例7−b(C7−b)>

0184

図12中の比較例7−b(C7−b)はLutonix(登録商標)のデータによる。Lutonix(登録商標)のデータは医学博士R.Virmaniによって発表されたものである(Pro and Cons of Different Technologies in Peripheral Arteries: Insights from A Pathologist)。
<比較例8−b(C8−b)>

0185

図12中の比較例8−b(C8−b)はSeQuent Please(登録商標)のデータによる。SeQuent Please(登録商標)のデータは文献を参照したものである(Thrombosis and Haemostasis,105,5,2011,864−872)。
<比較例10(C10)>

0186

図12中の比較例10(C10)はPantera Lux(登録商標)のデータによる。Pantera Lux(登録商標)のデータは文献を参照したものである(Thrombosis and Haemostasis,105,5,2011,864−872)。
<比較例11(C11)>

0187

図12中の比較例11(C11)は表面に薬剤をコートしていない薬剤無塗布バルーンである。拡張時のサイズが直径3.0mm×長さ20mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。
1.方法

0188

(1)ガイドワイヤを備えたガイディングカテーテルを8Frシースによって挿入し、X線透視法のもとで左右の冠動脈開口部に案内した。

0189

(2)各冠動脈の血管造影を行い(冠動脈:左冠動脈前下行枝(LAD)、右冠動脈(RCA)、および左冠動脈回旋枝(LCX))、血管造影で得られた冠動脈の直径をQCAソフトウェアで測定した。

0190

(3)血管の直径に対してステントの直径が1.2倍、薬剤溶出バルーンの直径が1.3倍である部位を選択し、ステント留置後の作業を行った。

0191

(4)直径3mm、長さ15mmの金属ステント(BMS)を選択した冠動脈内で30秒間拡張(ステントの直径を元の値の1.2倍にするためである)した後、ステント留置用バルーンカテーテルを除去した。ステント留置部位において、実施例10および比較例6−b(C6−b)で準備した薬剤コート層を有する薬剤溶出バルーン(バルーン直径3mm×長さ20mm)ならびに比較例11(C11)の薬剤無塗布バルーンを血管の直径に対して1.3倍となるように1分間拡張した後、バルーンカテーテルを除去した。

0192

(5)薬剤溶出バルーンを拡張した後、ガイディングカテーテルおよびシースを除去した。頸動脈の中央側を結紮した後、頸部の切開開口部の筋肉の間隙を縫合糸で縫合し、皮膚を外科用ステープラーによって縫合した。

0193

(6)バルーン拡張の28日後、剖検を行った。
<血管内狭窄率の算出方法>

0194

血管内狭窄率を以下の手順にしたがって算出した。

0195

ライカ顕微鏡および病理学撮像装置によって血管像を撮像した。これらの像を用いて、外弾性板領域の内面積、内弾性板領域、管腔の内面積、ステントの内面積を測定した。
≪面積狭窄率(%)算出方法≫

0196

「面積狭窄率=(新生内膜領域/内弾性板領域)×100」から、面積狭窄率(%)を算出した。
2.結果

0197

図12は、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果についての実施例10ならびに比較例C6−b〜比較例C8−b、比較例10および比較例11の28日後の面積狭窄百分率を示すグラフである。図12中、横軸は、実施例または比較例を表し、数字「10」は実施例10を意味し、アルファベット付き数字、すなわち「C6−b」〜「C8−b」、「C10」および「C11」は比較例6−b(C6−b)、比較例7−b(C7−b)、比較例8−b(C8−b)、比較例10(C10)および比較例11(C11)を意味する。また、縦軸は28日後の面積狭窄百分率を表す。

0198

比較例11(C11)において、薬剤無処置対照としての薬剤無塗布バルーンで治療した血管の面積狭窄率は38.4%であった。実施例10の薬剤溶出バルーンで治療した血管の面積狭窄率は16.8%であり、薬剤無処置対照と比較してかなりの狭窄抑制効果が観察された。一方、比較例6−b(C6−b)における市販の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))で治療した血管の面積狭窄率は30%であった。すなわち、実施例10による薬剤溶出バルーンで治療した血管の面積狭窄率は、比較例6−b(C6−b)のIN.PACT(登録商標)および文献を参照した他のいかなる薬剤溶出バルーンよりも強い効果を示しており、最も優れた狭窄抑制効果が得られた。
[J.ブタ冠動脈における形態評価局所毒性の評価)]

0199

実施例10の薬剤溶出バルーンおよび比較例11(C11)の薬剤無塗布バルーンについて、ブタ冠動脈における被治療切片の形態分析を、血管についての局所毒性の評価のように、以下の手順にしたがって行った。
1.方法

0200

(1)ガイドワイヤを備えたガイディングカテーテルを8Frシースによって挿入し、X線透視法のもとで左右の冠動脈開口部に案内した。

0201

(2)各冠動脈の血管造影を行い(冠動脈:左冠動脈前下行枝(LAD)、右冠動脈(RCA)、および左冠動脈回旋枝(LCX))、血管造影で得られた冠動脈の直径をQCAソフトウェアで測定した。

0202

(3)血管の直径に対して薬剤溶出バルーンの直径が1.3倍である部位を選択し、手技を行った。

0203

(4)実施例10で作成した薬剤コート層を有する薬剤溶出バルーン(バルーン直径3mm×長さ20mm)および比較例11(C11)の薬剤無塗布バルーンを血管の直径に対して1.3倍となるように1分間拡張した後、バルーンカテーテルを除去した。

0204

(5)薬剤溶出バルーンを拡張した後、ガイディングカテーテルおよびシースを除去した。頸動脈の中央側を結紮した後、頸部の切開開口部の筋肉の間隙を縫合糸で縫合し、皮膚を外科用ステープラーによって縫合した。

0205

(6)バルーン拡張の28日後、剖検を行った。
≪Injuly Score算出方法、Injuly Score≫

0206

血管の全周におけるInjuly Scoreの評価を、Schwartz RS.らの方法(Schwartz RS.,et al. Restenosis and the proportional neointimal response to coronary artery injury: results in a porcine model.J Am Coll Cardiol.1992,267−74)にしたがって行った。

0207

Injuly Scoreの内容は以下のとおりである。

0208

スコア0:内弾性板は無傷、内皮は典型的にはがれている、中膜圧縮されているが裂けてはいない。

0209

スコア1:内弾性板が裂けている、中膜は典型的に圧縮されているが裂けてはいない。

0210

スコア2:内弾性板が裂けている、中膜が目に見えて裂けている、外弾性板は無傷だが圧縮されている。

0211

スコア3:外弾性板が裂けている、中膜の典型的に大きな裂傷が外弾性板を通って延びている、コイルワイヤ外膜中に存在することがある。

0212

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位の3つの位置、すなわち基端位置、中間位置、および先端位置の平均値を算出することによって得られた。
≪Inflammatory Score算出方法、Inflammatory Score≫

0213

血管の全周におけるInflammatory Scoreの評価を、Kornowski R.らの方法(Kornowski R., et al. In−stent restenosis: contributions of inflammatory responses and arterial injury to neointimal hyperplasia.J Am Coll Cardiol.1998,224−230)にしたがって行った。

0214

Inflammatory Scoreの内容は以下のとおりである。

0215

スコア0:支柱の周り炎症細胞無し。

0216

スコア1:支柱の周りに軽く非円周状にリンパ組織球性浸潤あり。

0217

スコア2:支柱の周りに局在化した中程度から密な細胞凝集が非円周状に存在。

0218

スコア3:支柱の周囲を囲むような密なリンパ組織球性細胞浸潤。

0219

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位の3つの位置、すなわち基端位置(基端部)、中間位置(中間部)、および先端位置(先端部)の平均値を算出することによって得られた。
≪Fibrin Content Score算出方法、Fibrin Content Score評点

0220

血管の全周におけるFibrin Content Scoreの評価をRadke,P.W.らの方法(Radke,P.W. et al. Vascular effects of paclitaxel followig drug−eluting balloon angioplasty in a porcine coronary model: the importance of excipients. Euro Intervention,2011:7,730−737)にしたがって行った。

0221

Fibrin Content Scoreのスコアの内容は以下のとおりである。

0222

スコア0:血管内に局在化されたフィブリンは観察されなかった。

0223

スコア1:血管内に局在化されたフィブリンが観察されたか、または、ステントの支柱付近で観察可能な血管全周の25%未満の領域にフィブリンが中程度に堆積していた。

0224

スコア2:観察可能な血管全周の25%超の領域にフィブリンが中程度に堆積していたか、または、支柱の間および支柱近傍で観察可能な血管全周の25%未満の領域にフィブリンが多量に堆積していた。

0225

スコア3:観察可能な血管全周の25%超の領域にフィブリンが著しく堆積していた。

0226

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位の3つの位置、すなわち基端位置、中間位置、および先端位置の平均値を算出することによって得られた。
≪Endothelialization Score算出方法、Endothelialization Score≫

0227

Endothelialization Scoreの内容は以下のとおりである。

0228

スコア1:観察可能な血管内腔の全周の25%以下が内皮細胞で覆われている。

0229

スコア2:観察可能な血管内腔の全周の25%〜75%が内皮細胞で覆われている。

0230

スコア3:観察可能な血管内腔の全周の75%以上が内皮細胞で覆われている。

0231

また、スコアはいずれも、各血管についてステント留置部位に対する3つの位置、すなわち基端位置、中間位置、および先端位置の平均値として算出した。
2.結果

0232

ブタ冠動脈における被治療切片の局所的毒性、Injuly Score、Inflammatory Score、Fibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreを観察した。結果を表6に示す。また、Injuly Scoreの数字が大きいほど、損傷が大きく、それは好ましくない。Inflammatory Scoreの数字が大きいほど、炎症が大きく、それは好ましくない。Fibrin Content Scoreの数字が大きいほど、フィブリン含有量が大きく、それは好ましくない。一方、Endothelialization Scoreの数字が小さいほど、血管が内皮細胞で覆われることが少なく、それは好ましくない。表6中、実施例/比較例の欄の10は実施例であり、C11は比較例である。

0233

比較例11(C11)における薬剤無処置対照としての薬剤無塗布バルーンで治療した血管のInjuly Score、Inflammatory Score、Fibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreは、薬剤による影響(毒性)が無いため血管再造形に対して影響が無く、それらのスコアはそれぞれ0.00±0.00、0.00±0.00、1.00±0.00、3.00±0.00であった。

0234

実施例10による薬剤溶出バルーンで治療した血管のInjuly Score、Inflammatory Score、Fibrin Content ScoreおよびEndothelialization Scoreは、それぞれ0.22±0.43、0.29±0.48、0.23±0.24および2.89±0.28であり、被治療切片の局所的毒性は比較例11(C11)の薬剤無塗布バルーンの場合と同じであることが明らかとなった。すなわち、高い狭窄抑制効果が得られたにもかかわらず、局所的毒性は非常に低かった。これらの結果は、実施例10によるDEBが血管再造形に対して影響が無く、したがって遅発性血栓症の危険性を減少させることを示した。狭窄を強く抑制するが、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は4週間、薬剤無塗布バルーンの場合と同程度に限定されると思われる。



[K.ブタ冠動脈における均一な狭窄抑制効果]

0235

実施例10、比較例6−b(C6−b)および比較例11(C11)の薬剤溶出バルーンについて、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果の均一性を以下の手順にしたがって評価した。
1.方法

0236

ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果の評価を、実施例1の評価のようにして行った。全てのセグメントを3つの片、すなわち基端部、中間部および先端部に横切し、セグメントごとの面積狭窄率(%)を組織形態計測的分析によって算出した。
2.結果

0237

図13は、ブタ冠動脈における血管内狭窄抑制効果について、実施例10、比較例C6−bおよび比較例C11の28日後の面積狭窄率(%)の均一性を示すグラフである。図13中、横軸は実施例または比較例を表し、数字「10」は実施例10を意味し、アルファベット付き数字、すなわち「C6−b」および「C11」は比較例6−b(C6−b)および比較例11(C11)を意味する。また、縦軸は28日後のセグメントごとの面積狭窄百分率(%)を表す。

0238

実施例10による薬剤溶出バルーンは、被治療病変部における血管内膜肥厚に対する均一な抑制効果をもたらした。一方、比較例6−b(C6−b)による市販の薬剤溶出バルーン(IN.PACT(登録商標))で治療した病変部におけるセグメントごとの効果は、均一ではなかった。
[L.バルーン表面上の薬剤コート層の均一性]

0239

実施例10〜実施例13ならびに比較例6−b(C6−b)および比較例12(C12)の薬剤溶出バルーンについて、バルーン表面上の薬剤コート層の均一性を以下の手順にしたがって算出した。
<実施例11>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0240

拡張時のサイズが直径6.0mm×長さ100mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0241

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0242

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<実施例12>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0243

拡張時のサイズが直径6.0mm×長さ200mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0244

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0245

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<実施例13>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0246

拡張時のサイズが直径7.0mm×長さ200mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0247

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0248

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
<比較例12(C12)>

0249

IN.PACT(登録商標)(INVAtec/Medtronic社製)を準備した。拡張時のサイズが直径7.0mm×長さ120mm(拡張部)のバルーンを準備した。
1.方法

0250

長さ100mm〜200mmのサイズの、実施例11〜実施例13および比較例12(C12)の薬剤溶出バルーンについて、20mmのセグメントに切断して、バルーン表面上の薬剤コート層の均一性分析を行った。一方、長さ20mmのサイズの、実施例10および比較例6−b(C6−b)の薬剤溶出バルーンを6mmまたは7mmのセグメントに切断した。バルーン表面上のセグメントごとのパクリタキセル含有量を、高速液体クロマトグラフィーで測定した。
2.結果

0251

薬剤コート層の均一な評価として、バルーン表面上のセグメントごとのパクリタキセル含有量を分析した。結果を表7に示す。表7中、実施例/比較例の欄の「10」〜「13」は実施例であり、「C6−b」および「C12」は比較例である。

0252

実施例10の長さ20mmのサイズの薬剤溶出バルーンを6mmまたは7mmのセグメントに切断したところ、セグメントごとのパクリタキセル含有量の相対標準偏差(RSD%)が13.0%であることが示された。一方、比較例6−b(C6−b)の長さ20mmのサイズの薬剤溶出バルーンを同様に6mmまたは7mmのセグメントに切断したところ、パクリタキセル含有量の相対標準偏差(RSD%)が22.8%であることが示された。すなわち、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、比較例C6−bのものよりも均一な薬剤コート層を有する。

0253

また、実施例11〜実施例13の長さ100mm〜200mmのサイズの薬剤溶出バルーンを20mmのセグメントに切断したところ、セグメントごとのパクリタキセル含有量の相対標準偏差(RSD%)は1.0%〜3.4%であった。一方、比較例12(C12)の長さ120mmのサイズの薬剤溶出バルーンを同様に20mmのセグメントに切断したところ、パクリタキセル含有量の相対標準偏差(RSD%)は25.3%であった。すなわち、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、バルーンの長さにかかわらず均一な薬剤コート層を有することが示された。また、その薬剤コート層はIN.PACT(登録商標)と比較してかなり均一であることが示された。



[M.薬剤溶出バルーンの薬剤コート層均一性の走査電子顕微鏡(SEM)による観察]

0254

実施例10および比較例6−b(C6−b)の薬剤溶出バルーンの薬剤コート層均一性について、薬剤コート層のパクリタキセル結晶を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。
1.方法

0255

薬剤溶出バルーンの薬剤コート層均一性の走査電子顕微鏡(SEM)による観察は、実施例1〜実施例6(図1〜図6)における薬剤溶出バルーンのSEM像のように行った。
2.結果

0256

薬剤コート層の均一性として、薬剤コート層のパクリタキセル結晶を観察した。図14および図15に示すSEM像が得られた。図14は実施例10のSEM像であり、図15は比較例6−b(C6−b)のSEM像である。

0257

実施例10のSEM像である図14は、均一なパクリタキセル微小結晶を示した。また、パクリタキセル微小結晶がバルーン表面上に均一に配置され一様なサイズであることが示された。一方、比較例6−b(C6−b)のSEM像である図15は、均一でない薬剤コート層を示した。また、比較例6−b(C6−b)のIN.PACT(登録商標)である図15のSEM像は、薬剤コート層が結晶およびアモルファスで構成されていることを示した。
[N.バルーン表面上の薬剤コート層の耐久性の評価]

0258

実施例13および実施例14ならびに比較例12(C12)の薬剤溶出バルーンについて、バルーン表面上の薬剤コート層の耐久性を以下の手順にしたがって評価した。
<実施例14>
<薬剤溶出バルーンの準備>

0259

拡張時のサイズが直径6.0mm×長さ40mm(拡張部)のバルーンカテーテル(テルモ社製、バルーン(拡張部)の素材はナイロンエラストマー)を準備した。

0260

コーティング溶液2を調製した。コーティング溶液2を拡張したバルーンに、コーティング溶液の溶媒がゆっくりと揮発してパクリタキセル量が約3μg/mm2となるように、コートした。

0261

すなわち、実施例2のようにコーティングを行った。
1.方法

0262

被治療病変部へ送達される過程での薬剤コート層の耐久性を測定するため、模擬末梢血管モデルを用いて試験を行った。ガイディングシースに生理食塩水を満たし、約45度の角度となるように配置した。次いで、ガイドワイヤをガイディングシースの中に通した。この試験の間、ガイディングシース内の生理食塩水を37度に保持した。薬剤溶出バルーンを、バルーンが出るまで、1分間、ガイドワイヤの上をたどらせた。その後、バルーン表面上の残存パクリタキセル含有量を、高速液体クロマトグラフィーで測定した。
2.結果

0263

薬剤コート層の耐久性評価として、模擬末梢血管モデルの中を通過後のバルーン表面上の残存パクリタキセル含有量を測定した。結果を表8に示す。表8中、実施例/比較例の欄の「13」および「14」は実施例であり、「C12」は比較例である。

0264

湿潤血管モデル内での模擬使用の後、実施例14の長さ40mmのサイズの薬剤溶出バルーンのバルーン表面上の残存パクリタキセル含有量は、84%(拡張前)であった。さらに、実施例13の長さ200mmのサイズの薬剤溶出バルーンのバルーン表面上の残存パクリタキセル含有量は、84%であった。一方、比較例12(C12)の長さ120mmのサイズのIN.PACT(登録商標)の残存パクリタキセル含有量は、63%であった。本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、被治療病変部全体へ均一な微小結晶を付与しながらパクリタキセルを送達することができることが示された。また、長さの長い薬剤溶出バルーンは、目標病変部への送達の間、均一な微結晶薬剤を保持することもできる。言い換えれば、薬剤溶出バルーンの先端部、中間部、および基端部は、被治療病変部への送達の後、バルーン上の複数の規則的に配置された結晶の均一構造を、周囲を囲むように保持することができた。特に、拡張可能部材(バルーン)の先端(先端部)はカテーテルなどの医療機器の内腔を含む他の表面に対して摺動することが多く、バルーン上の均一な結晶粒子の構造は脱落しやすい。したがって、本明細書中に記載する拡張可能部材の先端は、血管内膜肥厚抑制効果を示す薬剤コート層を有する。

0265

以上のことから、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、被治療病変部への送達の過程でバルーン表面から脱落(離脱または落下)することなしに、均一なパクリタキセル微小結晶を送達することができることが明らかとなった。すなわち、本明細書中に記載する薬剤溶出バルーンは、拡張時まで薬剤コート層の均一性を保ちつつ、被治療病変部において拡張することができる。



[O.ブタ腸骨大腿動脈における薬物動態2]

0266

実施例9、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)の薬剤溶出バルーンについて、ブタ腸骨大腿動脈における薬物動態を、以下の手順にしたがって評価した。
<比較例13(C13)>

0267

図16および図17における比較例13(C13)は、パクリタキセル塗布バルーンカテーテルRanger(登録商標)(Boston Scientific社製)である。Ranger(登録商標)の結果はBoston Scientific社によってウェブサイトに開示されたものである。
1.方法

0268

薬物動態を、「H」の方法のようにして行った。

0269

薬剤溶出バルーンでの治療の後、目標組織を周囲の組織から注意深く剥離した。組織中のパクリタキセル濃度測定は、LC−MS/MS分析によって行った。
2.結果

0270

ブタ大腿動脈における薬物動態を評価した。図16は、ブタ大腿動脈組織における移行について、実施例9、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C−13)の薬物動態プロファイルを示すグラフである。横軸は薬剤溶出バルーンの拡張後の日数を表す。また、縦軸は目標動脈組織における薬剤濃度を表す。図17中、横軸は実施例または比較例を表し、数字「9」は実施例9を意味し、アルファベット付き数字、すなわち「C6−a」、「C7−a」、および「C13」は比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)をそれぞれ意味する。また、縦軸は目標動脈組織における0.02日後〜7日後の薬剤のAUC(ng day/mg)を表す。

0271

図16に示すように、実施例9で観察された目標動脈組織における薬剤濃度は、0.04日後、1日後、7日後、21日後、および28日後でそれぞれ69.8ng/mgtissue、53.4ng/mgtissue、11.7ng/mgtissue、4.0ng/mgtissue、および2.3ng/mgtissueであった。一方、比較例6−a(C6−a)で観察された目標動脈組織における薬剤濃度は、0.02日後、1日後、2日後、7日後、および26日後でそれぞれ35ng/mgtissue、7.7ng/mgtissue、5.3ng/mgtissue、11.1ng/mgtissue、および1.5ng/mgtissueであった。比較例7−a(C7−a)で観察された目標動脈組織における薬剤濃度は、0.02日後、1日後、7日後、および28日後でそれぞれ58.9ng/mgtissue、4.4ng/mgtissue、2.2ng/mgtissue、および1.6ng/mgtissueであった。比較例13(C13)で観察された目標動脈組織における薬剤濃度は、0.02日後、1日後、7日後、および21日後でそれぞれ48.8ng/mgtissue、19.8ng/mgtissue、5.3ng/mgtissue、1.9ng/mgtissue、および0.4ng/mgtissueであった。すなわち、実施例9についての0.04日後(1時間後)から1日後までの薬剤減少率は多くとも50%であった。一方、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)についての0.02日後〜0.04日後(0.5〜1時間後)から1日後までの薬剤減少率は50%超であった。

0272

図17はブタ大腿動脈組織における移行について、実施例9、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)の0.02〜0.04日後(0.5〜1時間後)から7日後までの薬剤のAUCを示すグラフである。また、縦軸は目標動脈組織における0.02〜0.04日後から7日後までの薬剤のAUC(ng day/mg)を表す。

0273

実施例9で観察されたバルーン拡張の0.04日後(1時間後)から7日後までの目標動脈組織における薬剤のAUCは254ng day/mgであった。一方、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)で観察されたバルーン拡張の0.02〜0.04日後(0.5〜1時間後)から7日後までの目標動脈組織における薬剤のAUCは、それぞれ69ng day/mg、51ng day/mg、および109ng day/mgであった。すなわち、実施例9で得られたAUCは200ng day/mgよりも高かった。一方、比較例6−a(C6−a)、比較例7−a(C7−a)および比較例13(C13)で得られたAUCは200ng day/mgよりも低かった。実施例9で得られたAUCは最も高い。

0274

本明細書中に記載したように、バルーン拡張の7日後までの高い組織中薬剤濃度は、平滑筋細胞の増殖に影響がある。その後は、組織から素早く消え去るため、内皮細胞の増殖を抑制することはない。

実施例

0275

以上の詳細な説明は、一例として開示される薬剤コート層を説明するものである。しかしながら、本発明は説明した正確な実施態様や変更に限定されるものではない。当業者は、添付の請求の範囲で規定する本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更、修正および同等物を用いることができる。請求の範囲内のそのような変更、修正および同等物は全て請求の範囲に包含されることは、はっきりと意図される。

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