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技術 (S)−乳酸産生好熱性細菌の遺伝子改変

出願人 ピュラックバイオケムビー.ブイ.
発明者 ファンクラネンバーグ,リチャードバーホフ,アンナマキエルセン,マリナスペトリュス
出願日 2015年7月13日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2017-502623
公開日 2017年8月3日 (2年6ヶ月経過) 公開番号 2017-521081
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 残留物流 フロテーション 理事会 炭素含有供給原料 高電圧放電 酢酸産生 マグネシウム塩基 ホモ乳酸発酵
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課題・解決手段

本発明は、通性嫌気性でありかつ(S)−乳酸を産生する、遺伝子操作された好熱細菌細胞であって、内在性メチルグリオキサールシンターゼ遺伝子mgsAの不活化または欠損を含む細胞に関する。

概要

背景

乳酸およびその塩(ラクテートとして知られている)は、医薬生物分解性ポリマーおよび食品加工を含む種々の分野において有用な、商業的に採算の取れる産物である。通性嫌気性である好熱性細菌、例えばGeobacillusは、乳酸の工業生産にとって理想的な生物であると思われる。それらは、37〜75℃の温度で増殖することができ、最適温度は55〜65℃であり(Nazinaら、2001、Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446)、50℃を超える温度で嫌気性の工業的発酵許す。この高い温度は、工業規模で発酵させる場合に、いくつかの利点を有する。すなわち、感染のリスクがより低く、したがってエナンチオマー純度がより高い、反応がより速い、冷却コストがより低い等である。Geobacillus属の通性嫌気性は、嫌気性条件下での、または少なくとも低酸素分圧下での発酵を可能にし、このことは、工業的規模にとって望ましい。なぜなら、比較的安価な装置および加工を可能にするからである。さらに、これらの細菌の栄養要求量は、これもまた比較的安価な工業プロセスを可能にする乳酸菌、例えばLactobacillus属の種の栄養要求量よりも少ない。

通性嫌気性であるGeobacillus属の種は、嫌気性条件下で、または少なくとも低酸素分圧下で増殖される場合に乳酸を産生することが知られている。例として、G. caldotenax、G. caldoxylosilyticus、G. debilis、G. kaustophilus、G. pallidus、G. stearothermophilus、G. tepidimans、G. thermodenitrificans、G. thermoglucosidans、G. thermoleovorans、G. toebii、G. tropicalisが挙げられる。

G. thermoglucosidansは、キシロースアラビノースグルコースフルクトーススクロースおよびセロビオースから乳酸を産生することができる(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)。工業用途にとって、スクロース、グルコース、キシロースもしくはアラビノース、またはそれらの混合物を含有する供給原料が最も関係する。グルコースおよびキシロースを同時に利用する能力(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)は、リグノセルロース系供給原料に由来する発酵性の糖を用いる場合に、G. thermoglucosidansの重要な利点である。

通性嫌気性である公知のGeobacillus属の種の1の不利な点は、それらが混合酸発酵を行って、乳酸、エタノール酢酸およびギ酸を主な発酵産物として産生するという事実である。本願において、有機酸の用語はまた、その対応する塩をも含むことが意味される。

別の不利な点は、ほとんどの種が、エナンチオピュアな乳酸を産生しないことである。キラル純度は、ポリ乳酸ポリマーの製造に関して重要な局面である。従って、商業的用途のためにエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生することは必須である。しかし、今日までに、Geobacillus属の種によって産生された乳酸のエナンチオ純度に関して限られた情報のみが利用できる。(S)−乳酸のための他の用語が、L−乳酸またはL(+)−乳酸であると理解されるべきである。本願において、これらの用語は互換的に用いられる。同様に、用語(R)−乳酸、D−乳酸およびD(−)−乳酸が互換的に用いられる。

Payton & Hartleyは、G. stearothermophilus PSIIが、pH制御されていない振とうフラスコ条件においてグルコース上で増殖されるときに、(S)−乳酸、酢酸およびエタノールを産生する混合酸発酵プロファイルを有することを示している (Payton & Hartley, 1985, FEMS Microbiol. Lett. 26:333-336)。キラル純度は、言及されていない。後の研究で、PSIIおよびその誘導体は、G. stearothermophilusにとって典型的でなく、G. caldotenaxにより密接に関係しているように見えることが示されている(Amarteyら、1991、Biotechnol. Lett. 13:621-626; Greenら、2001、国際公開第01/49865号)。低い収率が、この菌株工業的用途に適しないものにしている。

Dannerらは、スクロースおよびグルコースから、G. stearothermophilus IFA6およびIFA9により(S)−乳酸を産生することを示している(Dannerら、1998、Appl. Biochem. Biotechnol. 70-72:895-903)。菌株IFA6は、グルコースから有意な量のエタノール、酢酸およびギ酸副産物を産生し、一方、菌株IFA9は産生しない。キラル純度は、グルコース上で増殖されるときに、IFA6については99.22〜99.85%であり、IFA9については99.4%であることが報告された(Dannerら、1998、Appl. Biochem. Biotechnol. 70-72:895-903)。培養条件は、酵母抽出物およびカゼインペプトンを含む富栄養培地の使用に基づいたが、これは、工業生産のためには望ましくない。菌株IFA6と比較して、菌株IFA9は、より高い産物濃度で低下された生産性を有し、このことが、工業生産にあまり適しないものにしている。さらに、菌株IFA6は、収率が低く、このことがまた、工業生産に適しないものにしている。

Rao & Satyanarayanaは、G. thermoleovoransを用いた乳酸産生を示しているが、収率およびキラル純度について言及していない(Rao & Satyanarayana, 2009, Appl. Biochem. Biotechnol. 159:464-477)。

Greenらは、pH制御されていない振とうフラスコ条件で、99.2%のキラル純度および0.7g/gの収率を伴って、G. thermoglucosidans LN-9を用いて(S)−乳酸を産生したことを示している(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)。上記の低い収率が、工業的用途に適しないものにしている。

Atkinsonらは、G. thermoglucosidansNCIMB 11955を用いてキシロースまたはグルコースから、有意な量のエタノール、酢酸およびギ酸副産物を伴って乳酸を産生したことを示している(Atkinsonら、2006、国際公開第2006/117536号)。グルコース上での収率は0.64 g/gであり、これは、工業的用途には低すぎる。キラル純度は開示されていない。

Tangらは、G. thermoglucosidans M10EXGを用いた乳酸産生を示している。微好気性条件下では、乳酸が主要産物であり、有意な副産物として、酢酸、エタノールおよびギ酸を伴った。嫌気性条件下では、ギ酸が主要産物であり、主要な副産物として、乳酸、酢酸およびエタノールを伴った。記載された収率は、工業的用途には低すぎる。(S)−乳酸のキラル純度は、>99%と報告された (Tangら、2009、Biotechnol. Lett. 102:1377-1386)。

G. thermoglucosidansは、好熱性のBacillus属の種として記載されている(Suzukiら、1983、Syst. Appl. Microbiol. 4:487-495;Nazinaら、2001、Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446;Coorevitsら、2012、Int. Syst. Evol. Microbiol. 62:14770-1485)。G. thermoglucosidansは以前、Bacillus thermoglucosidasiusとして知られており(Suzukiら、1983、Syst. Appl.Microbiol. 4:487-495)、2001年にNazinaらによってG. thermoglucosidasiusに改名され(Nazinaら、2001、Int. J.Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446)、後にCoorevitsらによってG. thermoglucosidansに改名された(Coorevitsら、2012、Int.Syst. Evol. Microbiol. 62:14770-1485)。基準株は、土壌から単離された(Suzukiら、1976、Appl. Environ. Microbiol. 31:807-812)。当初は絶対好気性と報告されていたが、後の研究が通性嫌気性増殖および(S)−乳酸産生を報告している(Greenら、2003、国際公開第03/008601号;Fongら、2006、Extremophiles 10:363-372)。温度範囲は42〜69℃であり、最適温度は62℃である(Suzukiら、1983、Syst. Appl. Microbiol. 4:487-495)。エタノール産生のためのG. thermoglucosidans株の遺伝的改変が報告されている(Greenら、2001、国際公開第01/49865号;Atkinsonら、2008、国際公開第08/038019号)。これは、G. thermoglucosidans DSM2542Tのための遺伝的ツール、およびL−乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)遺伝子を破壊する方法の記載を含む(Atkinsonら、2006、国際公開第2006/117536号、および2008、国際公開第2008/038019号)。キシロースおよびグルコース上で増殖された細胞についての代謝経路および流量が、G. thermoglucosidans M10EXGについて報告されている(Tangら、2009、Biotechnol. Lett. 102: 1377-1386)。

本発明者らは、G. thermoglucosidans DSM2542によって産生された酸のキラル純度が、培地組成および/または糖の源に依存して変わり得ることを見出した。本発明者らは、(S)−乳酸のキラル純度が89〜>99%であることを見出した。しかし、基質の選択および培地の組成における融通性のために、工業的に関係するあらゆる条件下でエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生する誘導体への要求がある。

上記から、公知のGeobacillus株は混合酸発酵を生じ、ホモ乳酸型のエナンチオピュアな乳酸産生を示さないと結論付けられ得る。

工業用途にとって魅力的な特性、例えば低い栄養要求、広い糖の消費能力、炭水化物加水分解(carbohydrolytic)酵素を産生する能力、高い増殖速度、高い生産性、浸透圧ストレスに対する耐性および遺伝的アクセシビリティを有する細菌株(例えばGeobacillus株)を、ホモ乳酸型の、エナンチオピュアな乳酸の産生に用いることができることが、明らかに必要とされている。

概要

本発明は、通性嫌気性でありかつ(S)−乳酸を産生する、遺伝子操作された好熱細菌細胞であって、内在性メチルグリオキサールシンターゼ遺伝子mgsAの不活化または欠損を含む細胞に関する。なし

目的

本発明の目的の1つは、通性嫌気性であり、かつホモ乳酸発酵によって(S)−乳酸を産生する好熱細菌株を作出することである

効果

実績

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請求項1

通性嫌気性でありかつ(S)−乳酸を産生する、遺伝子操作された好熱細菌細胞であって、内在性メチルグリオキサールシンターゼ遺伝子mgsAの不活化または欠損を含む細胞

請求項2

さらに、内在性のピルビン酸ギ酸リアーゼAおよび/またはB遺伝子が不活化されまたは欠損している、請求項1に記載の細胞。

請求項3

内在性の胞子形成遺伝子の不活化または欠損故の胞子形成欠損誘導体である、請求項1または2に記載の細胞。

請求項4

前記胞子形成遺伝子がsigFである、請求項3に記載の細胞。

請求項5

前記内在性のピルビン酸ギ酸リアーゼAおよび/またはB遺伝子が、ピルビン酸ギ酸リアーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子座pflBA−adhEの不活化または欠損によって不活化されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞。

請求項6

少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、99.5%、99.8%または99.9%のエナンチオマー純度を有する(S)−乳酸を産生する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞。

請求項7

さらに、内在性のホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta)が不活化されまたは欠損している、請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞。

請求項8

前記遺伝子が、相同組換えによって不活化されまたは欠損している、請求項1〜7のいずれか1項に記載の細菌細胞。

請求項9

グラム陽性細菌細胞である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞。

請求項10

Geobacillus属に属する、請求項9に記載の細胞。

請求項11

前記Geobacillus属の種がGeobacillus thermoglucosidansである、請求項10に記載の細胞。

請求項12

エナンチオマー的に純粋な(S)−乳酸の産生方法であって、適切な発酵性炭素含有供給原料を用いて、請求項1〜11のいずれか1項に記載の好熱細菌細胞を培養すること、そして(S)−乳酸を単離することを含む方法。

請求項13

前記炭素含有供給原料が、キシロースグルコースまたはスクロースを含む、請求項12に記載の方法。

請求項14

前記培養が、50℃〜70℃の温度で行われる、請求項12または13に記載の方法。

請求項15

産生された乳酸の総重量に対する副産物の総重量に基づいて、15重量%以下、特に10重量%以下、または5重量%、4重量%、3重量%もしくは2重量%以下の副産物が形成される、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。

請求項16

形成されたギ酸、エタノールおよび酢酸の少なくとも1つの量が、産生された乳酸の総重量に対するギ酸、エタノールまたは酢酸の総重量に基づいて、10重量%以下、特に6重量%、1重量%、0.25重量%または0.1重量%以下である、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、ホモ乳酸型の、エナンチオピュアな(S)−乳酸の産生のための好熱細菌細胞改変遺伝子改変された細胞、およびエナンチオピュアな(S)−乳酸の産生方法に関する。

背景技術

0002

乳酸およびその塩(ラクテートとして知られている)は、医薬生物分解性ポリマーおよび食品加工を含む種々の分野において有用な、商業的に採算の取れる産物である。通性嫌気性である好熱性細菌、例えばGeobacillusは、乳酸の工業生産にとって理想的な生物であると思われる。それらは、37〜75℃の温度で増殖することができ、最適温度は55〜65℃であり(Nazinaら、2001、Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446)、50℃を超える温度で嫌気性の工業的発酵許す。この高い温度は、工業規模で発酵させる場合に、いくつかの利点を有する。すなわち、感染のリスクがより低く、したがってエナンチオマー純度がより高い、反応がより速い、冷却コストがより低い等である。Geobacillus属の通性嫌気性は、嫌気性条件下での、または少なくとも低酸素分圧下での発酵を可能にし、このことは、工業的規模にとって望ましい。なぜなら、比較的安価な装置および加工を可能にするからである。さらに、これらの細菌の栄養要求量は、これもまた比較的安価な工業プロセスを可能にする乳酸菌、例えばLactobacillus属の種の栄養要求量よりも少ない。

0003

通性嫌気性であるGeobacillus属の種は、嫌気性条件下で、または少なくとも低酸素分圧下で増殖される場合に乳酸を産生することが知られている。例として、G. caldotenax、G. caldoxylosilyticus、G. debilis、G. kaustophilus、G. pallidus、G. stearothermophilus、G. tepidimans、G. thermodenitrificans、G. thermoglucosidans、G. thermoleovorans、G. toebii、G. tropicalisが挙げられる。

0004

G. thermoglucosidansは、キシロースアラビノースグルコースフルクトーススクロースおよびセロビオースから乳酸を産生することができる(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)。工業用途にとって、スクロース、グルコース、キシロースもしくはアラビノース、またはそれらの混合物を含有する供給原料が最も関係する。グルコースおよびキシロースを同時に利用する能力(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)は、リグノセルロース系供給原料に由来する発酵性の糖を用いる場合に、G. thermoglucosidansの重要な利点である。

0005

通性嫌気性である公知のGeobacillus属の種の1の不利な点は、それらが混合酸発酵を行って、乳酸、エタノール酢酸およびギ酸を主な発酵産物として産生するという事実である。本願において、有機酸の用語はまた、その対応する塩をも含むことが意味される。

0006

別の不利な点は、ほとんどの種が、エナンチオピュアな乳酸を産生しないことである。キラル純度は、ポリ乳酸ポリマーの製造に関して重要な局面である。従って、商業的用途のためにエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生することは必須である。しかし、今日までに、Geobacillus属の種によって産生された乳酸のエナンチオ純度に関して限られた情報のみが利用できる。(S)−乳酸のための他の用語が、L−乳酸またはL(+)−乳酸であると理解されるべきである。本願において、これらの用語は互換的に用いられる。同様に、用語(R)−乳酸、D−乳酸およびD(−)−乳酸が互換的に用いられる。

0007

Payton & Hartleyは、G. stearothermophilus PSIIが、pH制御されていない振とうフラスコ条件においてグルコース上で増殖されるときに、(S)−乳酸、酢酸およびエタノールを産生する混合酸発酵プロファイルを有することを示している (Payton & Hartley, 1985, FEMS Microbiol. Lett. 26:333-336)。キラル純度は、言及されていない。後の研究で、PSIIおよびその誘導体は、G. stearothermophilusにとって典型的でなく、G. caldotenaxにより密接に関係しているように見えることが示されている(Amarteyら、1991、Biotechnol. Lett. 13:621-626; Greenら、2001、国際公開第01/49865号)。低い収率が、この菌株工業的用途に適しないものにしている。

0008

Dannerらは、スクロースおよびグルコースから、G. stearothermophilus IFA6およびIFA9により(S)−乳酸を産生することを示している(Dannerら、1998、Appl. Biochem. Biotechnol. 70-72:895-903)。菌株IFA6は、グルコースから有意な量のエタノール、酢酸およびギ酸副産物を産生し、一方、菌株IFA9は産生しない。キラル純度は、グルコース上で増殖されるときに、IFA6については99.22〜99.85%であり、IFA9については99.4%であることが報告された(Dannerら、1998、Appl. Biochem. Biotechnol. 70-72:895-903)。培養条件は、酵母抽出物およびカゼインペプトンを含む富栄養培地の使用に基づいたが、これは、工業生産のためには望ましくない。菌株IFA6と比較して、菌株IFA9は、より高い産物濃度で低下された生産性を有し、このことが、工業生産にあまり適しないものにしている。さらに、菌株IFA6は、収率が低く、このことがまた、工業生産に適しないものにしている。

0009

Rao & Satyanarayanaは、G. thermoleovoransを用いた乳酸産生を示しているが、収率およびキラル純度について言及していない(Rao & Satyanarayana, 2009, Appl. Biochem. Biotechnol. 159:464-477)。

0010

Greenらは、pH制御されていない振とうフラスコ条件で、99.2%のキラル純度および0.7g/gの収率を伴って、G. thermoglucosidans LN-9を用いて(S)−乳酸を産生したことを示している(Greenら、2003、国際公開第03/008601号)。上記の低い収率が、工業的用途に適しないものにしている。

0011

Atkinsonらは、G. thermoglucosidansNCIMB 11955を用いてキシロースまたはグルコースから、有意な量のエタノール、酢酸およびギ酸副産物を伴って乳酸を産生したことを示している(Atkinsonら、2006、国際公開第2006/117536号)。グルコース上での収率は0.64 g/gであり、これは、工業的用途には低すぎる。キラル純度は開示されていない。

0012

Tangらは、G. thermoglucosidans M10EXGを用いた乳酸産生を示している。微好気性条件下では、乳酸が主要産物であり、有意な副産物として、酢酸、エタノールおよびギ酸を伴った。嫌気性条件下では、ギ酸が主要産物であり、主要な副産物として、乳酸、酢酸およびエタノールを伴った。記載された収率は、工業的用途には低すぎる。(S)−乳酸のキラル純度は、>99%と報告された (Tangら、2009、Biotechnol. Lett. 102:1377-1386)。

0013

G. thermoglucosidansは、好熱性のBacillus属の種として記載されている(Suzukiら、1983、Syst. Appl. Microbiol. 4:487-495;Nazinaら、2001、Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446;Coorevitsら、2012、Int. Syst. Evol. Microbiol. 62:14770-1485)。G. thermoglucosidansは以前、Bacillus thermoglucosidasiusとして知られており(Suzukiら、1983、Syst. Appl.Microbiol. 4:487-495)、2001年にNazinaらによってG. thermoglucosidasiusに改名され(Nazinaら、2001、Int. J.Syst. Evol. Microbiol. 51:433-446)、後にCoorevitsらによってG. thermoglucosidansに改名された(Coorevitsら、2012、Int.Syst. Evol. Microbiol. 62:14770-1485)。基準株は、土壌から単離された(Suzukiら、1976、Appl. Environ. Microbiol. 31:807-812)。当初は絶対好気性と報告されていたが、後の研究が通性嫌気性増殖および(S)−乳酸産生を報告している(Greenら、2003、国際公開第03/008601号;Fongら、2006、Extremophiles 10:363-372)。温度範囲は42〜69℃であり、最適温度は62℃である(Suzukiら、1983、Syst. Appl. Microbiol. 4:487-495)。エタノール産生のためのG. thermoglucosidans株の遺伝的改変が報告されている(Greenら、2001、国際公開第01/49865号;Atkinsonら、2008、国際公開第08/038019号)。これは、G. thermoglucosidans DSM2542Tのための遺伝的ツール、およびL−乳酸デヒドロゲナーゼ(ldh)遺伝子を破壊する方法の記載を含む(Atkinsonら、2006、国際公開第2006/117536号、および2008、国際公開第2008/038019号)。キシロースおよびグルコース上で増殖された細胞についての代謝経路および流量が、G. thermoglucosidans M10EXGについて報告されている(Tangら、2009、Biotechnol. Lett. 102: 1377-1386)。

0014

本発明者らは、G. thermoglucosidans DSM2542によって産生された酸のキラル純度が、培地組成および/または糖の源に依存して変わり得ることを見出した。本発明者らは、(S)−乳酸のキラル純度が89〜>99%であることを見出した。しかし、基質の選択および培地の組成における融通性のために、工業的に関係するあらゆる条件下でエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生する誘導体への要求がある。

0015

上記から、公知のGeobacillus株は混合酸発酵を生じ、ホモ乳酸型のエナンチオピュアな乳酸産生を示さないと結論付けられ得る。

0016

工業用途にとって魅力的な特性、例えば低い栄養要求、広い糖の消費能力、炭水化物加水分解(carbohydrolytic)酵素を産生する能力、高い増殖速度、高い生産性、浸透圧ストレスに対する耐性および遺伝的アクセシビリティを有する細菌株(例えばGeobacillus株)を、ホモ乳酸型の、エナンチオピュアな乳酸の産生に用いることができることが、明らかに必要とされている。

発明が解決しようとする課題

0017

本発明の目的の1つは、通性嫌気性であり、かつホモ乳酸発酵によって(S)−乳酸を産生する好熱細菌株を作出することである。

0018

本発明の別の目的は、通性嫌気性であり、かつエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生する好熱細菌株を作出することである。

0019

通性嫌気性であるGeobacillus属の種を用いる乳酸産生における(S)−乳酸の収率およびキラル純度は、菌株および培養条件に依存して変わり得る。したがって、キラル的に純粋な(S)−乳酸をホモ乳酸型のやり方で産生するために改変された改善されたGeobacillusのための要求がある。

0020

文献に記載されたキラル不純度をもたらし得るいくつかのオプションがある。(R)−乳酸は、D−乳酸デヒドロゲナーゼ活性によってピルビン酸から形成されることができ、乳酸ラセマーゼの活性によって(S)−乳酸から形成されることができ、またはメチルグリオキサール経路を介して形成されることができる。

0021

メチルグリオキサールシンターゼ(E.C. 4.2.99.11)は、メチルグリオキサール経路の最初の工程におけるジヒドロキシアセトンリン酸のメチルグリオキサールおよびオルトリン酸への転化触媒する。次に、メチルグリオキサールは、2つの異なる経路を介して(S)−乳酸または(R)−乳酸に転化され得る。したがって、メチルグリオキサール経路は、(S)−乳酸および(R)−乳酸双方の産生に関してキラル不純物の源であり得る。Escherichia coliでは、メチルグリオキサールシンターゼをコードするmgsA遺伝子の破壊が、(S)−乳酸および(R)−乳酸双方の産生に関してキラル純度を向上させた(Grabarら、2006、Biotechnol. Lett. 28:1527-1535)。グラム陽性菌では、メチルグリオキサール経路の活性に関してはほとんど知られていない。中温性のBacillus subtilisでは、mgsA遺伝子が、バシリチオール生合成における最初の2つの酵素をコードする遺伝子と一緒オペロン中にコードされている(Gaballaら、2010、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 107:6482-6486;Helmann、2011、Antioxidants & Redox signaling 15:123-133)。最近、Chandrangsuらは、バシリチオールがメチルグリオキサールの無毒化関与していることを実証した(Chandrangsuら、2014、Mol. Microbiol. 91:706-715)。バシリチオール依存性メチルグリオキサール経路は、グリオキサラーゼI(GlxA)およびグリオキサラーゼII(FlxB)を利用して、メチルグリオキサールを(R)−乳酸に転化する(Chandrangsuら、2014)。また、メチルグリオキサールは、グリオキサラーゼIIIの予測される相同物であるYdeA、YraAおよびYfkMの活性によって、(R)−乳酸に転化されることができる(Chandrangsuら、2014、Mol. Microbiol. 91:706-715)。

0022

G. thermoglucosidansのゲノム配列から、本発明者らは、予測されたD−乳酸デヒドロゲナーゼ遺伝子回収し得たが、明白な乳酸ラセマーゼ遺伝子を回収できなかった。メチルグリオキサールを(R)−乳酸へ転化するための両方の経路に関して、B. subtilisにおいて解析されたように(Chandrangsu et al., 2014, Mol. Microbiol. 91:706-715)、G. thermoglucosidansにおける最も接近した相同物は、非常に低いアミノ酸配列同一性を有する(YwbCに関して46%;YurTに関して34%;YdeAに関しては相同物は見出されなかった;YraAに関して30%;およびYfkM に関して35%)。これに対して、B. subtilis MgsAは、72%のアミノ酸配列同一性を有するG. thermoglucosidans相同物を有する。上記ゲノム情報に基づくと、上記(R)−乳酸産生は、D−乳酸デヒドロゲナーゼ活性によって引き起こされ、乳酸ラセマーゼによってでもメチルグリオキサール経路によってでもないと予測されるだろう。驚いたことに、本発明者らは、メチルグリオキサールシンターゼをコードすると予測されるmgsA遺伝子を破壊することにより、(R)−乳酸産生を排除することができた。

0023

通性嫌気性であるGeobacillus属の種は、主な産物としての乳酸、エタノール、酢酸およびギ酸を伴う混合酸発酵を示す。副産物の産生における必須酵素をコードする遺伝子の破壊が、所望の産物の産生を向上させる一般的なアプローチである。しかしながら、特定の遺伝子の破壊の影響は、宿主の代謝全体に応じて、様々な副作用を有し得る。ピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素をコードするEscherichia coli pflA、および二機能性アセトアルデヒドCoAアルコールデヒドロゲナーゼ複合体をコードするadhEにおける単一突然変異が、改善された乳酸産生を、増加されたピルビン酸副産物形成、残留酢酸およびエタノール産生、ならびに非常に低下されたバイオマス収率と共に結果し(pflA−)、または主な発酵産物としての酢酸を伴う改善された乳酸産生を結果する(adhE−)(Zhu & Shimizu, 2005, Metab. Eng. 7:104-115)。いくつかのE. coli株では、focA−pflAB遺伝子座が破壊されて、ギ酸の産生を排除している(Zhouら、2003、Appl. Environ. Microbiol. 69:2237-2244;Liuら、2011、Appl. Biochem. Biotechnol. 164:162-169)。培地中での乳酸蓄積における、ギ酸チャネルタンパク質をコードするfocAの重要性が、最近示されたので(Beyerら、2013、J. Bacteriol. 195:1428-1435)、それは、focA−pflAB欠損を有するE. coli株の表現型に寄与しているだろう。緑藻類Chlamydomonas reinhardtiiでは、ピルビン酸ギ酸リアーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子のノックアウトが、乳酸発酵を向上させたが、細胞外グリセリンおよび酢酸の濃度をも増大させた(Catalanottiら、2012、Plant Cell 24:692-707)。

0024

G. thermoglucosidansにおいて、pflBA遺伝子は集中的にadhE遺伝子に向けられている。実際的な理由のために、本発明者らは、一改変において、pflBAとadhEの一部とを欠損させることによって、pflA、pflBおよびadhEを破壊することに決めた。驚くべきことに、本発明者らは、他の副産物に影響を与えることなく、そして乳酸発酵性能に影響を与えることなく、エタノール、酢酸およびギ酸副産物の形成をほぼ排除することができた。例えば、本願において、副産物形成がほぼ排除されるとは、本明細書中に記載されているように遺伝子操作された細胞を発酵させることによって、産生された乳酸の総量に対する副産物(例えばエタノール、酢酸およびギ酸)の重量が、10重量%以下、特に5重量%、4重量%、3重量%または2重量%以下であることを意味する。乳酸および副産物の量は、当該技術分野において公知の方法によって、例えば気液クロマトグラフィー(GLC)または高速液体クロマトグラフィーHPLC)による誘導体化および分析によって決定され得る。

0025

胞子形成の欠損が、Bacillus属の種の工業用途に所望される特性である。遺伝子改変された微生物の封じ込め使用に関する2009年5月6日の欧州議会および理事会指令2009/41/ECによれば、遺伝子改変された微生物の封じ込め使用は、上記微生物がヒトの健康および環境に対して呈するリスクに関して分類されるべきである。Bacillus属の種が胞子形成欠損表現型を有することは、環境中に広がるリスクを最小にする手段と考えられる。胞子形成欠損表現型を得るための様々な方法が知られており、例えば、自然発生的な胞子形成欠損誘導体を選択すること(Greenら、2001、国際公開第01/49865号)、または、例えばspo0A(Gonzy-Treboulら、1992、J. Mol. Biol. 244:967-979;Atkinsonら、2010、国際公開第2010/052499号)もしくはsigF(Flemingら、1995、Appl. Environ. Microbiol. 61:3775-3780;Wangら、2005、J. Appl. Microbiol. 98:761-767;Kovacsら、2010、Appl. Environ. Microbiol. 76:4085-4088)を破壊することにより胞子形成経路の破壊に向けることが挙げられる。

0026

すなわち、本発明は、第1の局面において、通性嫌気性でありかつ(S)−乳酸を産生する、遺伝子操作された好熱細菌細胞であって、内在性メチルグリオキサールシンターゼ遺伝子mgsAの不活化または欠損を含む細胞を開示する。

0027

内在性遺伝子は、微生物中に存在する遺伝子である。言うまでもなく、遺伝子が不活化されまたは欠損しているところの、本明細書中に記載された細菌は、上記遺伝子が上記細菌中に本来は存在することを必要とする。反対の指摘が無ければ、本願において、遺伝子へのあらゆる言及は、内在性遺伝子を意味する。微生物中に導入される遺伝子は、内在性遺伝子でない。

0028

別の局面では、通性嫌気性であり、ホモ乳酸型でありかつ(S)−乳酸をエナンチオピュアな形態で産生する、遺伝子操作された好熱細菌細胞が提供される。

0029

本発明において、ホモ乳酸発酵とは、炭化水素源から乳酸を、15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%、4重量%、3重量%または2重量%以下の副産物、例えばギ酸、酢酸およびエタノールの形成を伴って産生することと定義される。このパーセンテージは、乳酸((S)−乳酸および存在しうる(R)−乳酸を含む)の総重量に対する副産物の総重量に関する。乳酸と、エタノール、酢酸およびギ酸の量は、当該技術分野において公知の方法によって、例えば気液クロマトグラフィー(GLC)または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による誘導体化および分析によって決定され得る。

0030

いくつかの実施形態では、形成されたギ酸、エタノールおよび酢酸の少なくとも1つの量が、産生された乳酸の総重量に対するギ酸、エタノールまたは酢酸の総重量に基づいて、10重量%以下、特に6重量%、1重量%、0.25重量%または0.1重量%以下である。言い換えると、ホモ乳酸発酵において形成されギ酸の重量は、乳酸の総重量に対して、例えば、10重量%以下、より特に6重量%、1重量%、0.25重量%または0.1重量%以下でありうる。同様に、エタノールの重量は、10重量%、6重量%、1重量%、0.25重量%または0.1重量%以下であり得、また、酢酸の量は、10重量%、6重量%、1重量%、0.25重量%または0.1重量%以下でありうる。

0031

本明細書において、mgsAは、メチルグリオキサールシンターゼ遺伝子を指し、その配列は、Geobacillus thermoglucosidansについて、配列番号23で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号24で提供される。mgsAに隣接するヌクレオチド領域は、配列番号11、12、15および16のPCRプライマーによって同定され得る。

0032

本発明は、別の局面において、遺伝子操作された好熱細菌細胞に関し、ここで、mgsA遺伝子の他に、内在性のピルビン酸ギ酸リアーゼAおよび/またはB遺伝子がまた、不活化されまたは欠損している。

0033

好ましい実施形態では、ピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子が、ピルビン酸ギ酸リアーゼ/アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子座pflBA−adhEの不活化または欠損によって不活化される。あるいは、ピルビン酸リアーゼAおよび/またはB遺伝子とアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子adhEが、別々の工程で不活化または欠損され得る。pflBA−adhEに隣接するヌクレオチド領域は、配列番号19〜21のPCRプライマーによって同定されることができる。

0034

本明細書において、pflBAは、ピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素およびピルビン酸ギ酸リアーゼをそれぞれコードするピルビン酸ギ酸リアーゼ遺伝子AおよびBを意味する。

0035

plfAは、ピルビン酸ギ酸リアーゼA遺伝子(ピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素をコードする)を指し、その配列は、Geobacillus thermoglucosidansについて、配列番号27で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号28で提供される。plfBは、ピルビン酸ギ酸リアーゼB遺伝子(ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードする)を指し、その配列は、配列番号25で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号26で提供される。本発明において、adhEは、二機能性アセトアルデヒド−CoA/アルコールデヒドロゲナーゼ複合体をコードするアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子Eを指し、その配列は、Geobacillus thermoglucosidansについて、配列番号29で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号30で提供される。

0036

本発明に従うさらに別の実施形態では、遺伝子操作された細胞において、内在性ホスホトランスアセチラーゼ遺伝子(pta)もまた、不活化されまたは欠損している。ptaのヌクレオチド配列は、Geobacillus thermoglucosidansについて、配列番号31で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号32で提供される。pta(ホスホトランスアセチラーゼをコードする)の不活化または欠損はさらに、内在性pta活性に関連するレムナント(remnant)酢酸産生を最小にする。得られた株(ptaが不活化されまたは欠損している)は、酢酸について栄養要求性である。したがって、この遺伝子操作された細胞を発酵させる場合には、酢酸が増殖培地に補われなければならない。

0037

本発明に従うさらに別の実施形態では、遺伝子操作された好熱細菌細胞がまた、内在性胞子形成遺伝子の不活化または欠損によって、胞子形成欠損型にされている。

0038

別の実施形態では、不活化または欠損された胞子形成遺伝子が、sigFである。

0039

sigFは、胞子形成遺伝子を指し、そのヌクレオチド配列は、Geobacillus thermoglucosidansについて、配列番号33で提供される。コードされるアミノ酸配列は、配列番号34で提供される。sigFに隣接するヌクレオチド配列は、配列番号3〜6のPCRプライマーによって同定されることができる。

0040

本発明に従う別の実施形態では、本発明に従う細胞において、(S)−乳酸が、少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、99.5%、99.8%または99.9%のエナンチオマー純度を伴って産生される。

0041

本発明のさらに別の実施形態では、上記細胞において、遺伝子mgsA、pflBA−adhEまたはsigFの1以上が、相同組換えによって不活化されまたは欠損している。

0042

さらに別の実施形態では、本発明に従う遺伝子操作された好熱細菌細胞が、グラム陽性細菌細胞である。好ましくは、上記細胞が、Bacillus属に属する。

0043

さらに別の実施形態では、本発明に従う遺伝子操作された好熱細菌細胞が、グラム陽性細菌細胞である。好ましくは、上記細胞が、Geobacillus属に属する。

0044

また別の実施形態では、本発明に従う遺伝子操作された好熱細菌細胞が、Geobacillus thermoglucosidansである。

0045

本発明の目的の1つは、通性嫌気性であり、かつ、ホモ乳酸発酵によって(S)−乳酸を産生するGeobacillus株を作出することである。

0046

キラル純度は、ポリ乳酸ポリマーの製造にとって重要な局面である。したがって、商業的な用途のためにエナンチオピュアな(S)−乳酸を産生することが不可欠である。

0047

すなわち、本発明は、一局面において、通性嫌気性かつホモ乳酸型である中程度に好熱性のGeobacillus属の種を遺伝子工学によって遺伝子改変する方法を開示する。

0048

別の局面において、本発明は、エナンチオピュアな乳酸を産生する方法を提供する。該方法は、適切な発酵性炭素含有供給原料を用いて本発明に従う好熱細菌細胞を培養する工程と、(S)−乳酸を単離する工程とを含む。

0049

別の局面では、本発明は、エナンチオピュアな乳酸の産生方法であって、炭素含有供給原料がキシロース、グルコースまたはスクロースを含むところの方法を提供する。

0050

培養の温度は好ましくは、50℃〜70℃、より好ましくは55〜65℃の温度で実行される。

0051

本発明の文脈において、遺伝子の不活化または欠損は、上記細胞によって産生され得る所望のポリペプチドをコードする遺伝子、および/または上記細胞による一次代謝物もしくは二次代謝物の産生に関与するポリペプチドをコードする遺伝子の改変でありうる。原則として、これは、コードされるタンパク質の細胞レベル引き下げることによってなされることができる。細胞レベルの引下げは、例えば、関心のある酵素をコードする遺伝子の標的不活化によって達成され得る。遺伝子は、その全体が除去されることができる。しかしながら、代替案として、遺伝子の一部の欠損もまた、コードされるタンパク質の活性の低減をもたらしうる。代わりに、または追加的に、遺伝子の調節または発現の原因となるヌクレオチド配列、例えばプロモーターエンハンサーおよび翻訳開始部位などが改変または除去されることができる。関心のあるタンパク質の活性に影響を与える別の方法が、必要であるならば、輸送シグナルの改変、またはアンチセンスRNAの導入でありうる。

0052

染色体改変は、子孫細胞にわたって遺伝子の機能性の安定した分布を確実にするので、好ましい。染色体における所望の機能性の欠損は、非相同組換えによってならびに相同組換えによってなされることができる。相同組換えは、機能性を導入するための、除去するための、または同時に導入かつ除去するための機会を開いているので、好ましい。

0053

相同組換えが意図される場合には、形質転換DNAはさらに、操作される特定の細胞のゲノム標的配列に相同であるDNA配列を含有する。当業者であれば、相同組換えを得るのに100%の同一性は必要とされないことを理解するであろう。80%、好ましくは90%、より好ましくは95%、98%または99%の同一性も十分であろう。通常、相同組換えによって染色体中に挿入され得る関心のあるDNA配列は、相同組換えを可能にするのに十分な長さを有する相同配列によって隣接される。そのような長さは、少なくとも約200bp、例えば約200〜約1500bp、好ましくは約500〜約1000bpでありうる。

0054

本発明の目的のために、2つのアミノ酸配列間の同一性は、上記2つの配列間で同じであるアミノ酸のパーセンテージを指す。同一性は、BLASTアルゴリズムを用いて決定され、これは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410(1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアが、National Center for Biotechnology Informationを通じて一般に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。Blastpアルゴリズムパラメーターのデフォルト設定は、Expect thresholdが10、Word sizeが3、Max matches in a query rangeが0であり、MatrixがBLOSUM62であり、Gap Costsが11のExistenceおよび1のExtensionであり、Compositional adjustmentsがConditional compositional score matrix adjustmentである。

0055

本発明の目的のために、2つのヌクレオチド配列間の同一性は、上記2つの配列間で同じであるヌクレオチドのパーセンテージを指す。同一性は、BLASTアルゴリズムを用いて決定され、これは、Altschulら、J. Mol. Biol. 215:403-410(1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアが、National Center for Biotechnology Informationを通じて一般に利用可能である(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)。Blastnアルゴリズムパラメーターのデフォルト設定は、Expect thresholdが10、Word sizeが28、Max matches in a query rangeが0、Match/Mismatch Scoresが1、−2、Gap CostsがLinearである。

0056

上述したように、Geobacillus thermoglucosidansにおける上記遺伝子を同定する配列はいずれも、関心のある遺伝子を遺伝子工学によって改変するのに100%同じである必要はない。さらに、他の種に由来する関連する好熱細菌細胞において、遺伝子はこれらの配列から逸脱しうる。しかしながら、Geobacillus thermoglucosidans遺伝子を使用することにより、これらの遺伝子と相同でありかつ同じ機能性を有する配列が当業者によって容易に同定されることができ、そして相同組換えをこれらの菌株において実行するための対応するプライマーが作製され得る。したがって、たとえ上記同定された遺伝子の配列からの逸脱が、ある特定の菌株に存在しても、相同遺伝子は容易に同定されることができる。そのヌクレオチド配列は、当該技術分野において公知の技術を用いて決定されることができ、そして必要ならば、隣接する遺伝子配列と同じであるまたは相補的である新しいプライマーセットが定義されることができる。

0057

本発明に従う細胞は、当該技術分野において公知の技術を用いて作製され得る。特に、エレクトロポレーションによる好熱細菌中へのDNA導入方法が、Van Kranenburgら、2007、国際公開第2007/085433号、およびCrippsら、2009、Metab. Eng. 11:398-408に記載されている。

0058

エレクトロポレーションによるこれらBacillus属の種の形質転換は、通性嫌気性かつホモ乳酸型である中程度に好熱性のBacillus属の種と、所望の機能性および/または特定のBacilliのゲノム配列に相同であるDNA配列を含む適切な形質転換DNAとを含有する懸濁物を通る高電圧放電によって達成されることができる。

0059

(S)−乳酸は、本明細書に記載された遺伝子操作された好熱細菌細胞を、炭水化物源(例えばグルコースおよび/またはキシロース)の存在下で、当該技術分野において公知の方法によって発酵させることによって得られることができる。発酵の間に、微生物によって分泌された乳酸は通常、塩基、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基性塩、例えばナトリウムカリウムマグネシウムおよび/またはカルシウム水酸化物炭酸塩および/または炭酸水素塩を用いて中和される。マグネシウム塩基、例えば水酸化マグネシウム炭酸マグネシウムおよび/または炭酸水素マグネシウムが通常好ましい。したがって、いくつかの局面では、本発明は特に、エナンチオピュアな(S)−乳酸の産生方法に関し、上記方法は、本明細書に記載された好熱細菌細胞を、マグネシウム塩基(例えば、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムおよび炭酸水素マグネシウムの少なくとも1つから選択される)の存在下で、適切な発酵性炭素含有供給原料を用いて培養すること、そして(S)−乳酸を単離することを含む。

0060

発酵後、(S)−乳酸(またはその塩)は、乳酸および/またはラクテートを水性溶液から分離するために知られている多くの従来技術のいずれかによって発酵ブロスから分離される。分離効率を高めるために、分離前に、基質または微生物(バイオマス)の粒子が除去され得る。上記分離は、遠心分離濾過フロキュレーション(flocculation)、フロテーション(flotation)または膜濾過によって行われうる。これは、例えば、発酵による乳酸の調製のための連続方法が記載されている国際公開第01/38283号から知られている。本明細書における発酵の検討は通常、バッチ法を指すが、方法全体の一部または全てが連続的に実行されうる。

0061

発酵ブロスからの(S)−乳酸(またはその塩)の分離後、上記産物は、1つまたは複数の精製工程、例えば抽出、蒸留結晶化、電気透析、濾過、活性炭による処理、イオン交換等にかけられうる。種々の残留物流は、任意的に処理された後に、発酵容器へまたは先に実行された任意の精製工程へリサイクルされうる。

0062

材料および方法
菌株およびプラスミド
本研究において用いられた菌株およびプラスミドが、表1に記載される。

0063

Escherichia coliが、好気的条件下で37℃にてLBブロス(Sambrook & Russell, 2001, Molecular Cloning, a laboratory manual. 3rd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)中でルーチン的に培養された。適切な場合には、クロラムフェニコールおよび/またはアンピシリンが、それぞれ20mg/Lおよび100mg/Lの濃度で用いられた。

0064

G. thermoglucosidansが、特に明記されない限り、好気的条件下で52℃、55℃または60℃にて、TGP培地中でルーチン的に増殖された。TGP培地(Taylorら、2008、Plasmid 60:45-52)は、17g/Lのトリプトン、3g/Lのダイズペプトン、5g/LのNaCl、2.5g/LのK2HPO4をpH7.0にて含有し、そしてオートクレーブ後に4ml/Lのグリセリンおよび4g/Lのピルビン酸Naが添加された。TGPプレートについて、10g/Lのアガーが用いられた。適切な場合には、培地がクロラムフェニコール(8μg/mL)で補充された。

0065

0066

DNA操作技術
標準的なDNA操作技術が、SambrookおよびRussell(Sambrook & Russell, 2001, Molecular Cloning, a laboratory manual. 3rd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)によって記載されているように実行された。

0067

pNW33N誘導体の構築が、E. coliにおいて実行された。

0068

100mL培養物からの大規模E. coliプラスミドDNA単離が、Jetstar 2.0 Plasmid Maxiprep Kit(登録商標)(Genomed)を用いて、メーカー説明書に従って実行された。1mL培養物からの小規模E. coliプラスミドDNA単離が、Nucleospin Plasmid Quick Pure(登録商標)(Macherey−Nagel)キットを用いて、メーカーの説明書に従って実行された。

0069

E. coliコンピテントセルが、SambrookおよびRussell(Sambrook & Russell, 2001, Molecular Cloning, a laboratory manual. 3rd edition. Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)によって記載されているように、塩化カルシウムを用いて作製され、そしてヒートショックによって形質転換された。

0070

クローニング目的のPCR反応が、ハイフィデリティPwoポリメラーゼ(Roche)を用いて、メーカーの説明書に従って実行された。

0071

コロニーPCR分析のために、コロニーが爪楊枝採集され、そして少量の細胞物質がPCR反応チューブに移された。細胞が、電子レンジにおける1000Wでの1分間のインキュベーションによって破壊された。rTaqポリメラーゼ(Amersham Biosciendes)を有する50μLまたは25μLのPCR反応混合物が、メーカーによって推奨されるように調製され、そして破壊された細胞を有する上記反応チューブに加えられた。

0072

G. thermoglucosidansのエレクトロポレーション
G. thermoglucosidansが、Crippsら(Crippsら、2009、Metab. Eng. 11:398-408)によって記載されたプロトコルに基づいて、エレクトロポレーションによって形質転換された。G.thermoglucosidansは、55℃で一晩増殖され、そして1mLが、バッフルを備えた250ml三角フラスコ中の予め温められた50mlのTGP培地に接種するために用いられた。OD600が約1.0となるまで、細胞が60℃(180rpm)にてインキュベートされた。フラスコは10分間上で冷却され、そして細胞が遠心分離(4℃)によってペレット化された。次に、細胞が、氷冷されたエレクトロポレーションバッファー(0.5Mソルビトール、0.5Mマンニトール、10%(v/v)グリセリン)で4回洗浄された。洗浄工程の容量は、50ml、25ml、10mlおよび10mlであった。最終ペレットは、1.3mlの氷冷されたエレクトロポレーションバッファー中に再懸濁され、そしてエレクトロコンピテントセルの60μlのアリコートが−80℃にて貯蔵され、またはエレクトロポレーションに直接用いられた。

0073

エレクトロコンピテントセルの60μlのアリコート(解凍済み)が、1〜2μgのプラスミドDNAと混合され、次いで、冷却されたエレクトロポレーションキュベットギャップ幅0.1cm)に移された。Bio−Rad遺伝子パルサーエレクトロポレーターを用いたエレクトロポレーション条件は、2.5kV、10μFおよび600Ωであった。エレクトロポレーション後に、細胞は、50mlプラスチックチューブ中の1mlの予め温められた(52℃)TGPに移され、そして52℃で180rpmにて2時間、回収された。回収された細胞懸濁物はペレット化され、そして150μlを除く全ての上清破棄された。ペレットは、残りの上清中に再懸濁された。1/10および9/10の容量が、8μg/Lのクロラムフェニコールを含有するTGPプレート上にプレーティングされた。プレートは、52℃で24〜48時間インキュベートされた。プレート上に現れたコロニーは、8μg/Lのクロラムフェニコールを含有する新鮮なTGPプレートに移され、そして55℃にて一晩インキュベートされた。増殖したものが、プライマー1およびプライマー2(表2)を用いたコロニーPCRによって、プラスミドの存在について試験された。

0074

組込み
Geobacillus-E. coliシャトルベクターpNW33nが、先に記載されたように(Crippsら、2009、Metab. Eng. 11:398-408)、G. thermoglucosidansにおける組込みベクターとして用いられた。8μg/mLのクロラムフェニコールを含有する20mLのTGPに、グリセリンストックからの形質転換された菌株が接種された。55℃、180rpmにて一晩の増殖後、適切な希釈物が、8μg/mLのクロラムフェニコールを含有するTGPプレート上にプレーティングされた。その後、これらのプレートは、68℃にて24時間インキュベートされた。シングルコロニーが、新鮮なプレート(52℃でインキュベートされた)に画線され、これらのコロニーにおいてコロニーPCRが行われて、シングルクロスオーバーを有するコロニーを同定した。適切なプライマー組合せが、上流断片または下流断片を介したシングルクロスオーバーを同定するのに用いられた(表2;それぞれ、pRM3の組込みのための655−170および656−571のプライマー組合せ、pJS43の組込みのための754−170および991−571のプライマー組合せ,pRM12の組込みのための744−170および808−571のプライマー組合せ)。次に、陽性コロニーの染色体DNAが、Masterpure Gram Positive DNA Purification Kit(Epicentre Biotechnologies)を用いて単離され、そして、コロニーPCRの結果を確かめるために、上記PCRが、単離された染色体DNAに関して繰り返された。上流隣接領域を介したシングルクロスオーバーおよび下流隣接領域を介したシングルクロスオーバーが、第2の組換え工程のために選択された。

0075

ダブルクロスオーバーを得るために、一次組込み体が、クロラムフェニコールを有しないTGP中で複数回継代培養された。適切な希釈物(10−4、10−5、10−6)がTGPプレート上にプレーティングされた。単離されたコロニーが、8μg/mLのクロラムフェニコールを有するTGPプレートおよび有しないTGPプレートに移された。ダブルクロスオーバー突然変異体は、クロラムフェニコール感受性である。適切なプライマー組合せ(表2;ΔsigFのための655−656、ΔmgsAのための754−991およびΔpflBA−ΔadhEのための744−808のプライマー組合せ)を用いたPCR分析を使用して、野生型を欠損突然変異体から識別し、そしてプラスミドの不在を確認した。全ての改変が、PCR産物配列決定によって確かめられた。

0076

0077

発酵
TMM培地は、Fongら(Fongら、2006)から改変され、そして1Lにつき、60g/Lのグルコース;30g/Lのキシロース;8.37gのMOPS、0.23gのK2HPO4;0.51gのNH4Cl;0.50gのNaCl;1.47gのNa2SO4;0.08gのNaHCO3;0.25gのKCl;1.87gのMgCl2・6H2O;0.41gのCaCl2・2H2O;16.0mgのMnCl2・4H2O;1.0mgのZnSO4・7H2O;2.0mgのH3BO3;0.1mgのCuSO4・5H2O;0.1mgのNa2MoO4・2H2O;1.0mgのCoCl2・6H2O;7.0mgのFeSO4・7H2O;0.1mgのチアミン;0.1mgのリボフラビン;0.5mgのニコチン酸;0.1mgのパントテン酸;0.5mgのピリドキサミンHCl;0.5mgのピリドキサールHCl;0.1mgのD−ビオチン;0.1mgの葉酸;0.1mgのp−アミノ安息香酸;0.1mgのコバラミンを含んでいた。pHはpH7.2に調整された。グルコース、キシロース、金属およびビタミンは、フィルター滅菌された。培地はオートクレーブ処理された。TMM1、TMM2.5およびTMM5はそれぞれ、1g/L、2.5g/Lおよび5g/Lの酵母抽出物(Oxoid)で補充されていた。

0078

STMM培地は、K2HPO4(1.00g/L)、NH4Cl(2.50g/L)、NaCl(5.00g/L)およびCaCl2・2H2O(50mg/L)の濃度がTMM培地と異なり、そしてD,L−メチオニン(68.5mg/L)およびベタイン(0.14g/L)で補充された。

0079

TMM5またはSTMM5中の100mLの前培養物が、コンデンサー(おおよそ15℃の水道水を流すことにより冷却される)を装備した0.75LのMultifors発酵装置(Infors)において、(10v/v%)400mLのTMM1、TMM2.5またはSTMM5に接種するために用いられた。pHは、滅菌した2.5MのKOH、滅菌した75g/LのMg(OH)2または滅菌した75g/LのCa(OH)2の添加によって、pH7.2に調整された。温度は60℃であった。撹拌速度は300rpmであった。

0080

サンプルが、(R)−乳酸および(S)−乳酸ならびに生じうる副産物の測定のために、上記発酵物から抜き出された。サンプルは遠心分離され、そして残渣が、Millex GP 0.22μmフィルター(登録商標)(Millipore)を用いた濾過によって除去された。濾液が、さらなる分析まで−21℃にて貯蔵された。

0081

糖が、Thermo CarboPac SA−10カラム(Dionex)を用いたHPLCによって測定された。有機酸(乳酸、酢酸、ギ酸、コハク酸フマル酸、ピルビン酸)およびエタノールが、誘導体化および気液クロマトグラフィー(GLC)を用いて測定された。(R)−ラクテートおよび(S)−ラクテートが乳酸メチルメチル化され、そしてキラルカラム上でのヘッドスペース分析によって測定された。

0082

実施例1
G. thermoglucosidansによるエナンチオピュアな乳酸の産生
G. thermoglucosidans中のsigF遺伝子を欠損させるために、組込みプラスミドpRM3が構築された。sigF遺伝子の上流および下流隣接領域は、鋳型としてのDSM2542のゲノムDNA、ならびに上流断片を得るための653と654のプライマー組合せ(表2)および下流断片を得るための651と652のプライマー組合せ(表2)を用いたPCRによって生成された。最初に、下流断片が、KpnI−SalI断片として、同じ酵素で切断されたpNW33n中にクローニングされた。次に、上流断片が、SalI−HindIII断片として、同じ酵素で切断されたこの構築物中にクローニングされて、プラスミドpRM3を結果した。pRM3の構築は、E. coli TG90においてなされた。pRM3配列の完全性(integrity)は、DNA配列決定によって確かめられた。

0083

プラスミドpRM3が、G. thermoglucosidans DSM2542にエレクトロポレーションされた。シングルクロスオーバー突然変異体を得るために、材料および方法に記載されたように、シングル形質転換体コロニーが選択され、そして用いられた。2つのコロニーが、さらなる研究のために選択された。一方が、上流隣接領域を介したシングルクロスオーバーを有し、他方が、下流隣接領域を介したシングルクロスオーバーを有した。

0084

ダブルクロスオーバー突然変異体が、材料および方法に記載された手順に従って得られた。クロラムフェニコールを有しないTGP中でのシングルクロスオーバー組込み体の継代培養後に得られた60のコロニーが、クロラムフェニコールを有するTGPプレートおよび有しないTGPプレートに移された。15のコロニーが、クロラムフェニコールに感受性であった。12のコロニーが所望の改変を有し、3のコロニーが野生型に戻っていた。1のコロニーが選択され、そしてG. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigFと命名された。欠損が、配列決定によって確かめられた。

0085

0086

G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigFが、TMM1およびTMM2.5を用いたpH制御された(KOH)発酵において評価された。発酵物が分析された。結果が表3に要約されている。G. thermoglucosidans DSM 2542 ΔsigFは、キシロースおよびグルコースを同時に消費した。産生された(S)−乳酸のキラル純度は、キラル的に純粋な乳酸のためのスペックよりかなり下である。

0087

G. thermoglucosidans中のmgsA遺伝子(423bp)の267bpを欠損させるためにプラスミドpJS43が構築された。mgsA遺伝子の上流および下流隣接領域は、鋳型としてのDSM2542のゲノムDNA、ならびに、mgsA下流断片を得るための750と999のプライマー組合せおよび上流mgsA断片を獲得するための1000と753のプライマー組合せを用いたPCRによって生成された。得られた2つのPCR産物は次いで、これらを一緒に融合するために、750と753のプライマー組合せを用いたオーバーラップPCRにおいて鋳型として用いられた。産物は、BamHI−PstI断片として、BamHIおよびPstIで切断されたプラスミドpNW33n中にクローニングされて、プラスミドpJS43を結果した。pJS43の構築は、E. coli TG90においてなされた。pJS43ヌクレオチド配列の完全性は、配列決定によって確かめられた。

0088

プラスミドpJS43が、G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigFにエレクトロポレーションされた。材料および方法に記載されたように、シングル形質転換体コロニーが選択され、そして用いられて、シングルクロスオーバー突然変異体を得た。1つのシングルクロスオーバー組込み体が、さらなる研究のために選択された。

0089

ダブルクロスオーバー突然変異体が、材料および方法に記載された手順に従って得られた。クロラムフェニコールを有しないTGP中でのシングルクロスオーバー組込み体の継代培養後に得られた60のコロニーが、クロラムフェニコールを有するTGPプレートおよび有しないTGPプレートに移された。全てのコロニーがクロラムフェニコールに感受性であるように見えた。25のコロニーが分析された。4のコロニーが所望の改変を有し、21のコロニーが野生型に戻っていた。1のコロニーが選択され、そしてG. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsAと命名された。欠損は、配列決定によって確かめられた。

0090

G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsAが、STMM2.5を用いた、pH制御された(Mg(OH)2)発酵において評価された。発酵物が分析された。結果が表4に要約されている。G. thermoglucosidans DSM 2542 ΔsigF,ΔmgsAは、キシロースおよびグルコースを同時に消費した。産生された(S)−乳酸のキラル純度は99.6%であり、これはキラル的に純粋であると考えられる。これらのデータは明らかに、G. thermoglucosidansにおけるメチルグリオキサール経路の明らかな不完全性にも拘らず、mgsAの破壊が、キラル的に純粋な(S)−乳酸を産生する能力を結果することを示す。

0091

0092

実施例2
G. thermoglucosidansによるエナンチオピュアなホモ乳酸の産生
G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsAはなおも、有意な量のギ酸およびエタノールを産生し、酢酸は少量の副産物であった(表4)。plfAおよび/またはpflB、ならびにadhEの突然変異は、多くの細菌においてギ酸およびエタノールの産生に影響を及ぼすことが知られているが、これらの遺伝子を破壊することによる副作用は予測できない。

0093

G. thermoglucosidansにおける遺伝子pflB、pflAおよびadhEを(部分的に)欠損させるために、プラスミドpRM12が構築された。pflBAの上流隣接領域、および収束的に向きを定められるadhEの上流隣接領域が、鋳型としてのDSM2542のゲノムDNA、ならびに上流pflBA断片を得るための739と805のプライマー組合せおよび上流adhE断片を獲得するための806と807のプライマー組合せを用いたPCRによって生成された。続いて、得られた2つのPCR産物は、これらを一緒に融合するために、739と807のプライマー組合せを用いたオーバーラップPCRにおいて、鋳型として用いられた。産物は、BamHI−PstI断片として、BamHIおよびPstIで切断されたプラスミドpNW33n中にクローニングされて、プラスミドpRM12を結果した。pRM12の構築は、E. coli DH5αにおいてなされた。pRM12ヌクレオチド配列の完全性は、配列決定によって確かめられた。

0094

プラスミドpRM12が、G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsAにエレクトロポレーションされた。材料および方法に記載されたように、シングル形質転換体コロニーが選択され、そして用いられて、シングルクロスオーバー突然変異体を得た。2つのコロニーが、さらなる研究のために選択された。一方が、上流pflBA隣接領域を介したシングルクロスオーバーを有し、他方が、上流adhE隣接領域を介したシングルクロスオーバーを有した。

0095

ダブルクロスオーバー突然変異体が、材料および方法に記載された手順に従って得られた。クロラムフェニコールを有しないTGP中でのシングルクロスオーバー組込み体の継代培養後に得られた120のコロニーが、クロラムフェニコールを有するTGPプレートおよび有しないTGPプレートに移された。2のコロニーがクロラムフェニコールに感受性であった。一方が所望の改変を有し、他方は野生型に戻っていた。上記一方のコロニーがG. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsA,ΔpflBA−ΔadhEと命名された。欠損は、配列決定によって確かめられた。

0096

0097

G. thermoglucosidans DSM2542 ΔsigF,ΔmgsA,ΔpflBA−ΔadhEが、5.0g/Lの酵母抽出物、60g/Lのグルコースおよび30g/Lのキシロースを含有するSTMM培地を用いた、pH制御された(Ca(OH)2)発酵において評価された。発酵物が3の時点で分析された。結果を表5にまとめる。G. thermoglucosidans DSM 2542 ΔsigF,ΔmgsA,ΔpflBA−ΔadhEは、キシロースおよびグルコースを同時に消費した。G. thermoglucosidans DSM 2542 ΔsigF,ΔmgsA,ΔpflBA−ΔadhEによって産生された(S)-乳酸のキラル純度は、99.7%以上であった。酢酸およびギ酸の産生は、乳酸1gにつき6.7mgであった。エタノール産生は、検出され得なかった。これらのデータは明らかに、ピルビン酸ギ酸リアーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼ複合体遺伝子の破壊が、エタノール、ギ酸および酢酸の産生を有意に低下させて、ホモ乳酸型の、キラル的に純粋な(S)−乳酸発酵を結果することを示す。

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