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技術 NADPH依存性アセトールレダクターゼおよび改善されたNADPH供給に基づく1,2−プロパンジオールの製造のための新規な微生物および方法

出願人 メタボリックエクスプローラー
発明者 パスカル、アリプランディエミリー、ナバロセリーヌ、レイノーグウェネル、ベステル、コルフィリップ、スカイユ
出願日 2015年5月12日 (6年6ヶ月経過) 出願番号 2016-567532
公開日 2017年6月15日 (4年5ヶ月経過) 公開番号 2017-515481
状態 特許登録済
技術分野 微生物による化合物の製造 突然変異または遺伝子工学 微生物、その培養処理 ペプチド又は蛋白質
主要キーワード ブロッキー リファクタリング タンパク質触媒 コリネバクテリア科 指示語 不凍剤 乾燥重 アセトール
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課題・解決手段

本発明は、1,2−プロパンジオールの製造に有用な組換え微生物および1,2−プロパンジオールの製造方法に関する。本発明の微生物は、NADP依存性HA活性を増強することにより1,2−プロパンジオールの製造が改善されるように改変されている。

概要

背景

式C3H8O2またはHO−CH2−CHOH−CH3を有するC3ジアルコールである1,2−プロパンジオールまたはプロピレングリコールは、広く用いられている化学物質である。そのCAS番号は57−55−6である。これは、無色、ほぼ無臭、透明で、かすか甘みがあり、吸湿性で、水、アセトン、およびクロロホルム混和性粘稠液体である。これは不飽和ポリエステル樹脂液体洗剤冷却剤不凍剤および航空機の徐液の成分である。プロピレングリコールは、プロピレン誘導体より有毒であると認識されているエチレン誘導体代替として1993〜1994年以来、使用が増えてきた。

1,2−プロパンジオールは現在、大量の水を消費し、毒性の高い物質を使用し、tert−ブタノールおよび1−フェニルエタノールなどの副生成物を生じる、プロピレンオキシド水和法を用いた化学的手段により製造されている。

1,2−プロパンジオールの製造のための化学的方法の欠点は、生物学的合成を魅力ある代替法とする。微生物による糖からの1,2−プロパンジオールの発酵製造のために2つの経路特徴付けられている。

第1の経路では、6−デオキシ糖(例えば、L−ラムノースまたはL−フコース)がリン酸ジヒドロキシアセトンと(S)−ラクトアルデヒド開裂される、これを(S)−1,2−プロパンジオールへとさらに還元することができる(Badia et al., 1985)。この経路は大腸菌(E. coli)で機能的であるが、デオキシヘキソースコストの高騰のために経済的に実現可能な方法とはなり得ない。

第2の経路は、解糖経路、次いで、メチルグリオキサール経路を介した汎用糖(例えば、グルコースまたはキシロース)の代謝である。リン酸ジヒドロキシアセトンはメチルグリオキサールへ変換され、これがラクトアルデヒドまたはヒドロキシアセトン(アセトール)のいずれかに還元され得る。これら2つの化合物は次に1,2−プロパンジオールに変換される。この経路はクロストリジウムスフノイデス(Clostridium sphenoides)およびサーモアナエロバクターサーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacter thermosaccharolyticum)などの(R)−1,2−プロパンジオールの天然生産株によって使用されている。しかしながら、これらの生物で得られる性能の改善は、利用可能な遺伝的ツールが無いためにおそらく限られていると思われる。

従来技術
メチルグリオキサール経路は大腸菌または他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)で機能的であり、単純炭素源を用いて1,2−プロパンジオール生産株を得るための大腸菌の遺伝的改変に関するいくつかの検討が先導されている(WO98/37204; Cameron et al., 1998; Altaras and Cameron, 1999; Huang et al., 1999; Altaras and Cameron, 2000; Berrios-Rivera et al., 2003; Jarboe, 2011)。合理的設計と進化組合せにより得られた改良型の1,2−プロパンジオール生産大腸菌株が特許出願WO2005/073364、WO2008/116848、WO2008/116852、WO2008/116853、WO2010/051849、WO2011/012693、WO2011/012697およびWO2011/012702に記載されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。

大腸菌1,2−プロパンジオール生産株では、ヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの還元は、補因子としてNADHを用いるグリセロールデヒドロゲナーゼGlyDHにより行われ、好気性条件下での細胞内部酸化還元状態のために完全ではない。好気的には、NADHの主要な役割は、酸化的リン酸化を介した呼吸ATPの生成であり、この結果として、NADH/NAD+比は著しくNAD+に有利となる。これに対して、化学的に極めて類似するNADPHは、同化的還元を駆動し、NADPH/NADP+比が高くなる(Fuhrer and Sauer、2009)。

従って、本発明の目的は、NADPH依存性アセトールレダクターゼ活性を増強すること、およびNADPH供給を改善することにより1,2−プロパンジオールの製造を改善することである。

好熱性細菌バチルスステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のGlyDHの三次元構造確立され、NAD+結合部位が完全に同定された(Ruzheinikov et al., 2001)。NADPHを産生できるB.ステアロサーモフィルス変異型グリセルアルデヒド−3−リン酸構築および特性決定されている(Clermont et al.,1993)。

クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)由来のNADPH依存性第2級アルコールデヒドロゲナーゼ(Sadh)は、アセトンのイソプロパノールへの還元を天然に触媒する(Ismaiel et al., 1993)。Mitsui Chemicals Inc.からの特許出願EP2546331では、イソプロピルアルコールがクロストリジウム・ベイジェリンキ由来のsadh遺伝子を発現する大腸菌株で生産される。

この酵素ならびにサーモアナエロバクター・ブロッキー(Thermoanaerobacter brockii)由来のそのホモログは、ヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの還元を触媒することが示されており、炭素源として非炭水化物CO2から1,2−プロパンジオールを生産するために偏性光合成自己栄養性シアノ細菌シネココッカスエロンガツス(Synechococcus elongatus)で過剰発現された(Li and Liao, 2013)。

予期しないことに、発明者らは、sadh遺伝子を単独でまたはNADPH供給を改善するための他の手段と組み合わせて過剰発現させることで炭素源としての炭水化物からの1,2−プロパンジオール製造が有意に改善されることを見出した。

概要

本発明は、1,2−プロパンジオールの製造に有用な組換え微生物および1,2−プロパンジオールの製造方法に関する。本発明の微生物は、NADPH依存性HAR活性を増強することにより1,2−プロパンジオールの製造が改善されるように改変されている。

目的

本発明の目的は、NADPH依存性アセトールレダクターゼ活性を増強すること、およびNADPH供給を改善することにより1,2−プロパンジオールの製造を改善することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

発酵プロセスにおける1,2−プロパンジオールの製造方法であって、・1,2−プロパンジオールの製造のために遺伝的に改変された微生物炭素供給源として炭水化物を含んでなる適当な培養培地中で培養すること、および・前記培養培地から1,2−プロパンジオールを回収することを含んでなり、前記遺伝的に改変された微生物において、NADP依存性アセトールレダクターゼをコードする少なくとも1つの遺伝子またはNADPH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする変異型gldA*遺伝子が過剰発現しており、前記NADPH依存性アセトールレダクターゼは、クロストリジウムベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)由来のadh遺伝子またはサーモアナエロバクターブロッキー(Thermoanaerobacter brockii)由来のadh遺伝子または赤痢アメーバー(Entamoeba histolytica)由来のadh1遺伝子またはグルコノバクターオキシダンス(Gluconobacter oxydans)由来のGOX1615遺伝子またはヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)由来のgld2遺伝子または枯草菌(Bacillus subtilis)由来のyhdN遺伝子によりコードされているタンパク質と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有する、方法。

請求項2

以下の遺伝的改変:・ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードするpntAB遺伝子オペロンが過剰発現している、かつ/または・ホスホグルコースイソメラーゼをコードするpgi遺伝子が減弱している、かつ/または・ホスホフルクトキナーゼをコードするpfkA遺伝子が減弱している、かつ/または・グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするzwf遺伝子が過剰発現している、かつ/または・ADP依存性デヒドラターゼをコードするyjeF遺伝子が過剰発現している、かつ/または・NADP依存性グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするgapN遺伝子が過剰発現している、かつ/または・NADP依存性リポアミドデヒドロゲナーゼをコードする変異型lpd*遺伝子が過剰発現しているのうち少なくとも1つによって、前記微生物においてNADPH利用度が増大している、請求項1に記載の方法。

請求項3

NADH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードするgldA遺伝子が前記微生物において欠失している、請求項1または2に記載の方法。

請求項4

前記微生物がメチルグリオキサールレダクターゼをコードするyqhD遺伝子の欠失をさらに含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。

請求項5

前記微生物が腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、バチルス科(Bacillaceae)、クロストリジウム科(Clostridiaceae)、ストレプトミセス科(Streptomycetaceae)および酵母からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。

請求項6

前記微生物が大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、サーモアナエロバクター・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、クロストリジウム・スフノイデス(Clostridium sphenoides)およびサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)からなる群から選択される、請求項5に記載の方法。

請求項7

前記微生物が大腸菌である、請求項6に記載の方法。

請求項8

炭素の供給源としての炭水化物からの1,2−プロパンジオールの製造のために遺伝的に改変された微生物であって、前記微生物において、NADPH依存性アセトールレダクターゼをコードする少なくとも1つの遺伝子またはNADPH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする変異型gldA*遺伝子が過剰発現しており、前記NADPH依存性アセトールレダクターゼが、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadh遺伝子またはサーモアナエロバクター・ブロッキー由来のadh遺伝子または赤痢アメーバー由来のadh1遺伝子またはグルコノバクター・オキシダンス由来のGOX1615遺伝子またはヒポクレア・ジェコリナ由来のgld2遺伝子または枯草菌由来のyhdN遺伝子によりコードされているタンパク質と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有する、微生物。

請求項9

以下の遺伝的改変:・NADH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードするgldA遺伝子の欠失、および/または・アルデヒドレダクターゼをコードするyqhD遺伝子の欠失、および/または・ホスホグルコースイソメラーゼをコードするpgic遺伝子の欠失、および/または・ホスホフルクトキナーゼをコードするpfkA遺伝子の欠失、および/または・ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードするpntAB遺伝子の過剰発現、および/または・グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするzwf遺伝子の過剰発現、および/または・ADP依存性デヒドラターゼをコードするyjeF遺伝子の過剰発現、および/または・NADP依存性グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするgapN遺伝子の過剰発現、および/または・NADP依存性リポアミドデヒドロゲナーゼをコードする変異型lpd*遺伝子の過剰発現のうち少なくとも1つをさらに含んでなる、請求項8に記載の微生物。

請求項10

腸内細菌科、バチルス科、クロストリジウム科、ストレプトミセス科、コリネバクテリア科および酵母からなる群から選択される、請求項8または9に記載の微生物。

請求項11

大腸菌、肺炎桿菌、サーモアナエロバクター・サーモサッカロリチカム、クロストリジウム・スフェノイデスおよびサッカロミセス・セレビシエからなる群から選択される、請求項10に記載の微生物。

技術分野

0001

本発明は、1,2−プロパンジオールの製造に有用な組換え微生物および1,2−プロパンジオールの製造方法に関する。本発明の微生物は、NADP依存性アセトールレダクターゼ(acetol reductase)を増強することにより1,2−プロパンジオールの製造が改善されるように改変されている。

背景技術

0002

式C3H8O2またはHO−CH2−CHOH−CH3を有するC3ジアルコールである1,2−プロパンジオールまたはプロピレングリコールは、広く用いられている化学物質である。そのCAS番号は57−55−6である。これは、無色、ほぼ無臭、透明で、かすか甘みがあり、吸湿性で、水、アセトン、およびクロロホルム混和性粘稠液体である。これは不飽和ポリエステル樹脂液体洗剤冷却剤不凍剤および航空機の徐液の成分である。プロピレングリコールは、プロピレン誘導体より有毒であると認識されているエチレン誘導体代替として1993〜1994年以来、使用が増えてきた。

0003

1,2−プロパンジオールは現在、大量の水を消費し、毒性の高い物質を使用し、tert−ブタノールおよび1−フェニルエタノールなどの副生成物を生じる、プロピレンオキシド水和法を用いた化学的手段により製造されている。

0004

1,2−プロパンジオールの製造のための化学的方法の欠点は、生物学的合成を魅力ある代替法とする。微生物による糖からの1,2−プロパンジオールの発酵製造のために2つの経路特徴付けられている。

0005

第1の経路では、6−デオキシ糖(例えば、L−ラムノースまたはL−フコース)がリン酸ジヒドロキシアセトンと(S)−ラクトアルデヒド開裂される、これを(S)−1,2−プロパンジオールへとさらに還元することができる(Badia et al., 1985)。この経路は大腸菌(E. coli)で機能的であるが、デオキシヘキソースコストの高騰のために経済的に実現可能な方法とはなり得ない。

0006

第2の経路は、解糖経路、次いで、メチルグリオキサール経路を介した汎用糖(例えば、グルコースまたはキシロース)の代謝である。リン酸ジヒドロキシアセトンはメチルグリオキサールへ変換され、これがラクトアルデヒドまたはヒドロキシアセトン(アセトール)のいずれかに還元され得る。これら2つの化合物は次に1,2−プロパンジオールに変換される。この経路はクロストリジウムスフノイデス(Clostridium sphenoides)およびサーモアナエロバクターサーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacter thermosaccharolyticum)などの(R)−1,2−プロパンジオールの天然生産株によって使用されている。しかしながら、これらの生物で得られる性能の改善は、利用可能な遺伝的ツールが無いためにおそらく限られていると思われる。

0007

従来技術
メチルグリオキサール経路は大腸菌または他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)で機能的であり、単純炭素源を用いて1,2−プロパンジオール生産株を得るための大腸菌の遺伝的改変に関するいくつかの検討が先導されている(WO98/37204; Cameron et al., 1998; Altaras and Cameron, 1999; Huang et al., 1999; Altaras and Cameron, 2000; Berrios-Rivera et al., 2003; Jarboe, 2011)。合理的設計と進化組合せにより得られた改良型の1,2−プロパンジオール生産大腸菌株が特許出願WO2005/073364、WO2008/116848、WO2008/116852、WO2008/116853、WO2010/051849、WO2011/012693、WO2011/012697およびWO2011/012702に記載されており、これらは引用することにより本明細書の一部とされる。

0008

大腸菌1,2−プロパンジオール生産株では、ヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの還元は、補因子としてNADHを用いるグリセロールデヒドロゲナーゼGlyDHにより行われ、好気性条件下での細胞内部酸化還元状態のために完全ではない。好気的には、NADHの主要な役割は、酸化的リン酸化を介した呼吸ATPの生成であり、この結果として、NADH/NAD+比は著しくNAD+に有利となる。これに対して、化学的に極めて類似するNADPHは、同化的還元を駆動し、NADPH/NADP+比が高くなる(Fuhrer and Sauer、2009)。

0009

従って、本発明の目的は、NADPH依存性アセトールレダクターゼ活性を増強すること、およびNADPH供給を改善することにより1,2−プロパンジオールの製造を改善することである。

0010

好熱性細菌バチルスステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)由来のGlyDHの三次元構造確立され、NAD+結合部位が完全に同定された(Ruzheinikov et al., 2001)。NADPHを産生できるB.ステアロサーモフィルス変異型グリセルアルデヒド−3−リン酸構築および特性決定されている(Clermont et al.,1993)。

0011

クロストリジウム・ベイジェリンキ(Clostridium beijerinckii)由来のNADPH依存性第2級アルコールデヒドロゲナーゼ(Sadh)は、アセトンのイソプロパノールへの還元を天然に触媒する(Ismaiel et al., 1993)。Mitsui Chemicals Inc.からの特許出願EP2546331では、イソプロピルアルコールがクロストリジウム・ベイジェリンキ由来のsadh遺伝子を発現する大腸菌株で生産される。

0012

この酵素ならびにサーモアナエロバクター・ブロッキー(Thermoanaerobacter brockii)由来のそのホモログは、ヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの還元を触媒することが示されており、炭素源として非炭水化物CO2から1,2−プロパンジオールを生産するために偏性光合成自己栄養性シアノ細菌シネココッカスエロンガツス(Synechococcus elongatus)で過剰発現された(Li and Liao, 2013)。

0013

予期しないことに、発明者らは、sadh遺伝子を単独でまたはNADPH供給を改善するための他の手段と組み合わせて過剰発現させることで炭素源としての炭水化物からの1,2−プロパンジオール製造が有意に改善されることを見出した。

0014

本発明は、1,2−プロパンジオールの製造を最適化するための組換え微生物および前記微生物を使用する方法に関し、前記微生物において、NADPH依存性アセトールレダクターゼ(HAR)活性が増強されている。より詳しくは、前記組換え微生物では、NADPH依存性アセトールレダクターゼ活性をコードする少なくとも1つの遺伝子またはNADPH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする変異型遺伝子gldA*が過剰発現しており、前記NADPH依存性アセトールレダクターゼは、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadh遺伝子またはサーモアナエロバクター・ブロッキー由来のadh遺伝子または赤痢アメーバー(Entamoeba histolytica)由来のadh1遺伝子またはグルコノバクターオキシダンス(Gluconobacter oxydans)由来のGOX1615遺伝子またはヒポクレア・ジェコリナ(Hypocrea jecorina)由来のgld2遺伝子または枯草菌(Bacillus subtilis)由来のyhdN遺伝子によりコードされているタンパク質と少なくとも60%のアミノ酸同一性を有する。

0015

本発明で使用される組換え微生物はまた、
・NADH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードするgldA遺伝子の発現の減弱
アルデヒドレダクターゼをコードするyqhD遺伝子の発現の減弱、
ニコチンアミドヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼをコードするpntAB遺伝子オペロンの発現の増強、
ホスホグルコースイソメラーゼをコードするpgi遺伝子の発現の減弱、
ホスホフルクトキナーゼをコードするpfkA遺伝子の発現の減弱、
・グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするzwf遺伝子の発現の増強、
ADP依存性デヒドラターゼをコードするyjeF遺伝子の発現の増強、
・NADP依存性グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするgapN遺伝子の発現の増強、
・NADP依存性リポアミドデヒドロゲナーゼをコードするlpd*変異型遺伝子の発現の増強
などの他の遺伝的改変も含んでなり得る。

0016

好ましくは、前記微生物は、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、クロストリジウム・スフェノイデス(Clostridium sphenoides)またはサッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。

発明の具体的説明

0017

本発明を詳細に記載する前に、本発明は特に例示される方法に限定されず、当然のことながら変更可能であると理解されるべきである。また、本明細書で使用する用語は単に本発明の特定の実施態様を記載するためのものであり、限定することを意図せず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されると理解されるべきである。

0018

以上のものであれ以下のものであれ、本明細書に引用されている総ての刊行物、特許および特許出願は、引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。

0019

さらに、本発明の実施は、特に断りのない限り、当業者の技術の範囲内の従来の微生物学的技術および分子生物学的技術を採用する。このような技術は当業者に周知であり、文献で十分説明されている。

0020

本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないことを示さない限り、複数形の指示語を含むことに留意しなければならない。従って、例えば、「微生物」という場合には複数のこのような微生物を含み、「内因性遺伝子」という場合には1以上の内因性の遺伝子を示すなどである。そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の熟練者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価のいずれの材料および方法も本発明を実施または試験するために使用可能であり、以下、好ましい材料および方法を記載する。

0021

下記の特許請求の範囲および本発明の続いての記載において、言語の表現または必要な改良のために文脈がそれ以外のことを必要とする場合を除き、「含んでなる(comprise)」、「含有する(contain)」、「含む(involve)」もしくは「包含する(include)」または「含んでなる(comprises)」、「含んでなる(comprising)」、「含む(involved)」、「包含する(includes)」、「包含する(including)」などの変形は包含の意味で、すなわち、示された特徴の存在を明示し、本発明の種々の実施態様においてさらなる特徴の存在または付加を排除しないことを意図して使用される。

0022

本発明は、発酵プロセスにおける1,2−プロパンジオールの製造方法であって、1,2−プロパンジオールの製造のために遺伝的に改変された微生物を炭素供給源として炭水化物を含んでなる適当な培養培地中で培養する工程、および前記培養培地から1,2−プロパンジオール回収する工程を含んでなり、前記遺伝的に改変された微生物ではNADPH依存性HAR活性が増強されている方法に関する。本発明の特に好ましい実施態様をさらに以下に記載する。

0023

用語「アセトールレダクターゼ」および「ヒドロキシアセトンレダクターゼ」または「HAR」は互換的に使用され、アセトール(またはヒドロキシアセトン)の1,2−プロパンジオールへの還元の酵素活性を表す。この活性はNADPH依存性またはNADH依存性であり得る。

0024

用語「微生物」は、本明細書で使用する場合、人工的に改変されていない細菌、酵母または真菌を意味する。優先的には、微生物は、腸内細菌科、バチルス科、クロストリジウム科、ストレプトミセス科、および酵母から選択される。より優先的には、微生物は、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、サーモアナエロバクテリウム属(Thermoanaerobacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)またはサッカロミセス属(Saccharomyces)の種である。いっそうより優先的には、微生物は、大腸菌、肺炎桿菌、サーモアナエロバクテリウム・サーモサッカロリチカム、クロストリジウム・スフェノイデスまたはサッカロミセス・セレビシエから選択される。優先的には、微生物は、従属栄養性微生物、すなわち、大気中の炭素を固定することができず、代わりにその成長有機炭素源を用いる。いっそうより好ましくは、本発明の従属栄養性微生物は大腸菌である。

0025

用語「組換え微生物」または「遺伝的に改変された微生物」は、本明細書で使用する場合、自然界には見られず、自然界に見られるその等価物とは遺伝的に異なる細菌、酵母または真菌を意味する。この用語は、それが遺伝要素の導入または欠失または改変のいずれかにより改変されていることを意味する。この用語は定方向突然変異誘発と特定の選択圧下での進化を組み合わせることにより新たな代謝経路発達および進化を促すことと言い換えることもできる(例えば、WO2005/073364またはWO2008/116852参照)。

0026

微生物は、外因性遺伝子宿主微生物内でのそれらの発現を可能とする総ての要素とともに微生物に導入される場合には、これらの遺伝子を発現するように改変され得る。外因性DNAを用いた微生物の改変または「形質転換」は、当業者には慣例の作業である。

0027

微生物は、内因性遺伝子の発現レベルを調節するように改変してもよい。

0028

用語「内因性遺伝子」は、その遺伝子が遺伝的改変前に微生物に存在していたことを意味する。内因性遺伝子は、内因性調節要素に加えてもしくは替え異種配列を導入することにより、または染色体またはプラスミドにその遺伝子の1以上の補助コピーを導入することにより過剰発現させうる。内因性遺伝子はまた、それらの発現および/または活性を調節するように改変されてもよい。例えば、遺伝子産物を改変するためにコード配列突然変異を導入してもよく、または内因性調節要素に加えてもしくは替えて異種配列を導入してもよい。内因性遺伝子の調節は、その遺伝子産物の活性のアップレギュレーションおよび/または増強をもたらし得るか、あるいはまた、内因性の遺伝子産物の活性をダウンレギュレートおよび/または低下させ得る。

0029

それらの発現を調節するための別法は、内因性遺伝子の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートするために遺伝子の内因性プロモーター(例えば、野生型プロモーター)をより強いまたは弱いプロモーターと交換することである。これらのプロモーターは相同であっても異種であってもよい。適当なプロモーターを選択することは十分に当業者の能力の範囲内である。

0030

これに対して、「外因性遺伝子」は、この遺伝子はその微生物には天然には存在しないが、当業者に周知の手段によってその遺伝子が微生物に導入されたことを意味する。外因性遺伝子は、宿主染色体に組み込まれてもよく、またはプラスミドまたはベクターにより染色体外で発現されてもよい。複製起点および細胞内でのコピー数が異なる多様なプラスミドが当技術分野で周知である。これらの遺伝子は相同であり得る。「過剰発現」または「過剰発現する」も、それらの微生物内での外因性遺伝子の発現を示すために使用される。

0031

本発明に関して、用語「相同遺伝子」は、理論上共通の遺伝的祖先を有する遺伝子を示すことに限定されず、遺伝的に無関連であるが、それにもかかわらず類似の機能を遂行するおよび/または類似の構造を有するタンパク質をコードするように進化を遂げた遺伝子も含む。従って、用語「機能的ホモログ」は、本発明の目的で、特定の酵素活性は、定義されたアミノ酸配列の特定のタンパク質によるだけでなく、他の(無)関連の微生物由来の類似の配列のタンパク質によっても提供され得るという事実に関する。

0032

既知タンパク質に関してはUniprotまたは既知遺伝子に関してはGenbankで与えられる参照を用い、当業者ならば、タンパク質配列および/または遺伝子配列入手し、他の生物、細菌株、酵母、真菌、哺乳動物、植物などにおける等価遺伝子を決定することができる。この通常の作業は、有利には、他の微生物に由来する遺伝子との配列アラインメントを行い、別の生物における対応する遺伝子をクローニングするための縮重プローブを設計することにより決定可能コンセンサス配列を用いて実行される。これらの分子生物学の慣例法は当業者に周知である。

0033

本発明によれば、用語「発酵プロセス」、「発酵」または「培養」は、微生物の成長を表すために互換的に使用される。この成長は一般に、使用する微生物に適合された適当な増殖培地を含む発酵槽で行われる。

0034

「適当な培養培地」は、炭素源または炭素基質窒素源、例えば、ペプトン酵母抽出物食肉抽出物麦芽抽出物尿素硫酸アンモニウム塩化アンモニウム硝酸アンモニウムおよびリン酸アンモニウムリン源、例えば、リン酸一カリウムまたはリン酸二カリウム微量要素(例えば、金属塩)、例えば、マグネシウム塩コバルト塩および/またはマンガン塩;ならびにアミノ酸およびビタミンなどの増殖因子などの細胞の維持および/または成長に必須のまたは有益な栄養素を含んでなる培地(例えば、無菌液体培地)を表す。

0035

本発明に従った用語「炭素の供給源」、「炭素源」または「炭素基質」は、微生物により代謝可能であり、基質が少なくとも1個の炭素原子を含有するいずれの炭素源も意味する。

0036

用語「炭水化物」は、微生物により代謝可能で、かつ、少なくとも1個の炭素原子、2個の水素原子および1個の酸素原子を含有するいずれの炭素源も意味する。CO2は水素を含有しないので炭水化物ではない。

0037

炭水化物は、グルコース、フルクトースマンノース、キシロース、アラビノース、およびガラクトースなどの単糖類スクロースセロビオース、およびマルトースラクトースなどの二糖類ラフィノーススタキオース(stacchyose)、およびマルトデキストリンなどのオリゴ糖類セルロースヘミセルロース、およびデンプンなどの多糖類メタノールホルムアルデヒドおよびグリセロールからなる群から選択される。特に好ましい炭素源は、アラビノース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、ラクトース、マルトース、スクロース、キシロースまたはそれらの混合物である。より好ましくは、炭素源はスクロースである。

0038

本発明の特定の実施態様では、炭素源は再生可能原料に由来する。再生可能な原料は、短い遅延でかつその目的生成物への変換を許容するのに十分な量で再生できる特定の工業工程に必要な原料と定義される。処理済みまたは未処理の植物バイオマスは注目される再生可能な炭素源である。

0039

当業者ならば、本発明による微生物のための培養条件を定義することができる。特に、細菌は、大腸菌では20℃〜55℃、優先的には25℃〜40℃の間、より具体的には、約30℃〜37℃の間の温度で発酵される。

0040

このプロセスはバッチ法、フェドバッチ法または連続法のいずれかで行うことができる。発酵は、好気性微好気性または嫌気性条件下で行うことができる。

0041

「好気性条件下」とは、液相に気体を溶解させることにより培養物酸素を供給することを意味する。これは、(1)酸素含有気体(例えば、空気)を液相に散布するか、または(2)ヘッドスペースに含まれる酸素を液相に移行させるために培養培地を含む容器振盪することにより得ることができる。好気性条件下での発酵の主な利点は、電子受容体としての酸素の存在がその株の、細胞プロセスのためにより多くのエネルギーをATPの形態で製造する能力を高めるということである。従って、この株はその一般代謝が改善されている。

0042

微好気性条件は、低パーセンテージの酸素(例えば、0.1〜10%の間の酸素を含有し、窒素で100%とした混合物を使用)を液相に溶解させる培養条件として定義される。

0043

嫌気性条件は、酸素が培養培地に供給されない培養条件として定義される。厳密には、嫌気性条件は、微量の他の気体を除去するために培養培地に窒素などの不活性ガスを散布することにより得られる。株によるATP生産を高め、その代謝を高めるために電子受容体として硝酸塩が使用できる。

0044

「培養培地から1,2−プロパンジオールを回収すること」というは、製造された1,2−プロパンジオールを当業者に既知の方法を用いて精製するプロセスを表す。このような方法は特に特許出願WO2011/076690およびWO2012/130316に開示される。

0045

用語「1,2−プロパンジオールの製造のために遺伝的に改変された微生物」は、遺伝的要素の導入または欠失のいずれかによって、または特許出願WO2005/073364に記載の進化工程(step of evolution)によって改変された微生物を意味する。特に、遺伝的改変の無い対応する野生型微生物の固有の製造に比べて1,2−プロパンジオール製造の改善を示す遺伝的に改変された微生物を意味する。このような微生物は、例えば、引用することにより本明細書の一部とされる特許出願WO2008/116848、WO2008/116853、WO2011/012693、WO2011/012697、WO2011/012702またはEP2532751に記載されている。好ましい遺伝的改変は、下記である:
メチルグリオキサールシンターゼをコードするmgsA遺伝子、メチルグリオキサールレダクターゼをコードするyqhD、yafB、ycdW、yqhE、yeaE、yghZ、yajO、tas、ydjGまたはydbC遺伝子、グリセロールデヒドロゲナーゼをコードするgldA遺伝子およびラクトアルデヒドレダクターゼをコードするfucO遺伝子から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現の増強;
ホスホグルコン酸デヒドラターゼ(phosphphogluconate dehydratase)をコードするedd遺伝子または2−ケト−3−デオキシグルコン酸6−リン酸アルドラーゼをコードするeda遺伝子のいずれかまたは両方の欠失;
・メチルグリオキサール(グリオキサラーゼIをコードするgloA遺伝子、アルデヒドデヒドロゲナーゼAをコードするaldA遺伝子、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするaldB遺伝子など)、ピルビン酸乳酸デヒドロゲナーゼをコードするldhA遺伝子)、ギ酸(ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードするpflA遺伝子、ピルビン酸ギ酸リアーゼをコードするpflB遺伝子)、エタノール(アルデヒド−アルコールデヒドロゲナーゼをコードするadhE遺伝子)および酢酸酢酸キナーゼをコードするackA遺伝子、リン酸アセチルトランスフェラーゼをコードするpta遺伝子、ピルビン酸オキシダーゼをコードするpoxB遺伝子)からの乳酸の合成に関与する酵素をコードする遺伝子の欠失による望ましくない副生成物の合成の減弱;
ピルビン酸キナーゼ(pykAおよびpykF遺伝子によりコードされている)などのPEPを消費する経路の排除および/または例えばPEPシンターゼをコードするppsA遺伝子を過剰発現させることによるPEP合成の促進;
・リポアミドデヒドロゲナーゼをコードするlpd遺伝子における特定の突然変異;
・ArcA転写二重レギュレーターをコードするarcA遺伝子およびNADHをコードするndh遺伝子:ユビキノンオキシドレダクターゼIIを欠失させることができる;
グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするgapA遺伝子は温度誘導プロモーターの制御下にある;
・スクロースの移入(importation)および代謝に関与する遺伝子(スクロース透過酵素をコードするcscB遺伝子、スクロースヒドロラーゼをコードするcscA遺伝子、フルクトキナーゼをコードするcscK遺伝子、ホスホエノールピルビン酸依存性ホスホトランスフェラーゼ系の酵素IIをコードするscrA遺伝子、ATP依存性フルクトキナーゼをコードするscrK遺伝子、スクロース6−リン酸ヒドロラーゼインベルターゼ)をコードするscrB遺伝子、スクロースポリンをコードするscrY遺伝子)が付加されるか、またはそれらの発現が増強される。

0046

好ましい遺伝的改変は、遺伝子yqhD*(G149E)の発現の増強により得られるメチルグリオキサールレダクターゼ活性の改善である。

0047

別の好ましい遺伝的改変は、遺伝子mgsA*(H21Q)の発現の増強により得られるメチルグリオキサールシンターゼ活性の改変である。

0048

別の好ましい遺伝子的改変は、遺伝子gldA*(A160T)の発現の増強により得られるヒドロキシアセトンレダクターゼ活性の改善である。このHAR変異型は、以下に開示されるHAR変異型NADPH依存性とは異なり、NADH依存性である。

0049

ヒドロキシアセトンレダクターゼ(HAR)は、1,2−プロパンジオールの製造に関与する最後の酵素である。HARは、以下の反応を触媒する:
ヒドロキシアセトン+NAD(P)H→1,2−プロパンジオール+NAD(P)+

0050

gldA遺伝子が欠失された1,2−プロパンジオール生産株は、もはや1,2−プロパンジオールを生産できず、ヒドロキシアセトンを蓄積する(WO2008/116851)。GldAタンパク質は均質となるまで精製され、補因子としてNADHを使用する(Kelley and Dekker, 1984)。好気性条件で、ヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの変換は、細胞の内部酸化還元状態のために完全ではなく、このような条件下で、NADHの主要な役割は酸化的リン酸化を介した呼吸的ATPの生成であり、この結果として、NADH/NAD+比は著しくNAD+に有利となる。これに対して、化学的に極めて類似するNADPHは、同化的還元を駆動し、NADPH/NADP+比が高くなる(Fuhrer and Sauer, 2009)。

0051

この所見に従えば、本発明の目的は、NADPH依存性ヒドロキシアセトンレダクターゼ活性を増強することにより1,2−プロパンジオールの製造を改善することである。

0052

活性の増強は、タンパク質触媒効率を改善すること、またはタンパク質の代謝回転(turnover)を低下させること、またはメッセンジャーRNAmRNA)の代謝回転を低下させること、または遺伝子の転写を増大させること、またはmRNAの翻訳を増大させることによって得ることができる。

0053

タンパク質触媒効率の改善は、所与の基質および/または所与の補因子に関するkcatを増大させることおよび/またはKmを低下させること、および/または所与の阻害剤に関するKiを増大させることを意味する。kcat、KmおよびKiは、当業者が決定することができるミカエリスメンテン定数である(Segel, 1993)。タンパク質代謝回転を低下させることは、タンパク質を安定化させることを意味する。タンパク質触媒効率を改善し、かつ/またはタンパク質代謝回転を低下させるための方法は当業者に周知である。それらは、配列および/もしくは構造分析と定方向突然変異誘発を伴う合理的操作、ならびにランダム突然変異誘発およびスクリーニングを含む。突然変異は、ポリメラーゼ連鎖反応PCR)などの通常の方法による部位特異的突然変異誘発、または突然変異誘発物質紫外線もしくはニトロソグアニジンNTG)もしくはエチルメタンスルホネートEMS)などの化学薬剤)の使用またはPCR技術(DNAシャッフリングまたはエラープローンPCR)の使用といったランダム突然変異誘発技術により導入することができる。タンパク質の安定化はまた、タンパク質のN末端またはC末端のいずれかに「タグ」と呼ばれるペプチド配列を付加することによって達成できる。タグは当業者に周知である。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)を用いてタンパク質を安定化させることができる。

0054

mRNA代謝回転の低下は、5’−非翻訳領域(5’−UTR)および/またはコード領域、および/または3’−UTRの遺伝子配列を改変することよって達成することができる(Carry and Keasling, 1999)。

0055

遺伝子の転写の増大は、遺伝子のコピー数を増やすことおよび/またはより高レベル遺伝子発現をもたらすプロモーターを使用することによって達成することができる。「過剰発現」または「過剰発現する」はまた、微生物における遺伝子の転写の増大を表すためにも使用される。

0056

微生物における遺伝子のコピー数の増大のために、その遺伝子は染色体にまたは染色体外にコードされる。遺伝子が染色体に存在する場合、当業者に公知の組換えの方法(遺伝子置換を含む)により染色体に数コピーの遺伝子を導入することができる。遺伝子が染色体外に位置する場合、それはそれらの複製起点および従って細胞におけるそれらのコピー数が異なる種々のタイプのプラスミドにより運ばれ得る。これらのプラスミドはプラスミドの性質によって1〜5コピー、または約20コピー、または最大500コピー、すなわち、厳格な複製の低コピー数プラスミド(例えば、大腸菌の場合、pSC101、RK2)、低コピー数プラスミド(例えば、大腸菌の場合、pACYC、pRSF1010)または高コピー数プラスミド(例えば、大腸菌の場合、pSKbluescript II)で微生物に存在する。

0057

高レベルの遺伝子発現をもたらすプロモーターに使用に関して、当業者にはどのプロモーターは最も便利かが分かり、例えば、プロモーターPtrc、Ptac、Plac、またはλプロモーターcIが広く使用される。これらのプロモーターは、特定の化合物によりまたは温度もしくは光などの特定の外部条件により「誘導」され得る。これらのプロモーターは、同種であっても異種であってもよい。

0058

mRNAの翻訳の増大は、リボソーム結合部位(RBS)を改変することにより達成することができる。RBSは、タンパク質翻訳を誘導する場合にリボソームが結合するmRNA上の配列である。RBSは、真核生物のmRNAの5’キャップ原核生物開始コドンAUGの6〜7ヌクレオチド上流の領域(シャインダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と呼ばれる)、またはウイルスの内部リボソーム進入部位(IRES)のいずれかであり得る。この配列を改変することにより、タンパク質翻訳開始速度を変化させ、比例的にその生産速度を変化させ、細胞内でのその活性を制御することができる。同じRBS配列でもmRNAの性質によって同じ影響を有するわけではない。ソフトウエアRBSCALCULATOR(Salis, 2011)を使用することにより目的の翻訳開始速度を達成するためにRBS配列の強度を最適化することができる。

0059

本発明の第1の面において、1,2−プロパンジオールの製造は、改変された微生物におけるNADPH依存性アセトールレダクターゼ(NADPHHAR)活性を増強することにより改善される。

0060

本発明の第1の実施態様では、NADPHHAR活性は、改変微生物内でNADPH HARをコードする遺伝子(NADPH HAR遺伝子)を過剰発現させることによって増強される。

0061

クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のAdhは、自然状態でアセトンのイソプロパノールへの還元を触媒する(Ismaiel et al., 1993)。この酵素ならびにサーモアナエロバクター・ブロッキー由来のそのホモログはヒドロキシアセトンの1,2−プロパンジオールへの還元を触媒することが示されており、偏性光合成自己栄養性シアノ細菌シネココッカス・エロンガツス(Synechococcus elongatus)において炭素源としてのCO2から1,2−プロパンジオールを製造するために過剰発現された(Li and Liao, 2013)。

0062

いくつかの候補相同酵素およびそのような酵素をコードする遺伝子を決定するためにデーターマイニングおよび配列分析が使用されてきた。これらの候補を下表1に開示する。

0063

相同配列およびそれらの相同性パーセンテージを特定する手段は当業者に周知であり、特に、BLASTプログラムを含む。次に、得られた配列を、例えば、プログラムCLUSTALWまたはMULTALINを用いて活用する(例えば、アラインする)ことができる。タンパク質ホモログを同定する別法としては、当業者に周知のバイオインフォマテクスプログラムを用いた系統樹の構築によるものがある。

0064

0065

本発明のこの実施態様では、組換え微生物において過剰発現されるNADPHHARをコードする遺伝子は、上記に挙げたタンパク質の中から選択されるNADPH依存性アセトールレダクターゼをコードする。Uniprot番号から、当業者は対応する遺伝子の番号および配列を得ることができる。優先的には、本発明の微生物は、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadhまたはサーモアナエロバクター・ブロッキー由来のadhまたは赤痢アメーバー由来のadh1またはグルコノバクター・オキシダンス由来のGOX1615またはヒポクレア・ジェコリナ由来のgld2または枯草菌由来のyhdN遺伝子によりコードされている完全なタンパク質と少なくとも60%、好ましくは、少なくとも70%、より好ましくは、少なくとも85%、いっそうより好ましくは、少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するNADPH依存性アセトールレダクターゼ(NADPH HAR遺伝子)をコードする少なくとも1つの遺伝子を発現する。より優先的には、本発明の微生物は、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadhまたはサーモアナエロバクター・ブロッキー由来のadhまたは赤痢アメーバー由来のadh1またはグルコノバクター・オキシダンス由来のGOX1615またはヒポクレア・ジェコリナ由来のgld2または枯草菌由来のyhdN(すなわち、前記遺伝子によりコードされているタンパク質配列と100%のアミノ酸配列同一性)から選択される遺伝子を発現する。いっそうより優先的には、NADPH依存性アセトールレダクターゼは、クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadh遺伝子によりコードされている。

0066

アミノ酸配列間の配列同一性は、比較の目的でアラインされ得る配列のそれぞれの位置を比較することにより決定することができる。比較配列の位置が同じアミノ酸で占められていれば、それらの配列はその位置において同一である。タンパク質間の配列同一性の程度は、前記タンパク質の配列により共有される位置の同一のアミノ酸残基の数の関数である。

0067

2つのアミノ酸配列間の同一性パーセンテージを決定するためには、これらの配列を最適な比較のためにアラインする。例えば、第2のアミノ酸配列との最適なアライメントのために第1のアミノ酸配列の配列にギャップを導入することができる。次に、対応するアミノ酸位置のアミノ酸残基を比較する。第1の配列のある位置が第2の配列の対応する位置と同じアミノ酸残基で占められている場合、それらの分子はその位置で同一である。

0068

2配列間の同一性パーセンテージは、それらの配列により共有される同一の位置の数の関数である。従って、同一性%=同一の位置の数/重なる位置の総数×100である。

0069

配列の最適なアラインメントは、Needleman and Wunsch (1970)のグローバルホモロジーアラインメントアルゴリズムにより、このアルゴリズムのコンピューター実装形態により、または目視検査により実行され得る。種々の方法により生成された最良のアラインメント(すなわち、比較配列間で最高の同一性パーセンテージとなる)が選択される。

0070

言い換えれば、配列同一性パーセンテージは、最適にアラインされた2配列を比較すること、両配列で同一のタンパク質が見られる位置の数を求めて一致する位置の数を得ること、一致する位置の数を位置の総数で割ること、およびその商に100をかけて配列同一性パーセンテージを得ることによって算出される。

0071

本発明の別の好ましい実施態様では、NADPHHAR活性は、上記のようにNADPH依存性HAR活性を増強することにより、かつ/またはNADH依存性HAR活性を低下させることにより増強される。

0072

酵素の活性を低下させることは、アミノ酸配列を変化させるために遺伝子を変異させることによりその特定の触媒活性を低下させること、および/またはヌクレオチド配列の突然変異もしくは遺伝子のコード領域の欠失により細胞中のタンパク質の濃度を低下させることのいずれかを意味する。

0073

本発明では、NADH依存性HAR活性の低下は、gldA遺伝子を欠失させることにより、またはGldA酵素上での補因子操作を行うことにより実行され、これはNADH依存性HAR 活性の低下とNADPH依存性HAR活性の増強の両方をもたらした。

0074

従って、本発明の微生物は好ましくは、NADPH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする変異型gldA*遺伝子を過剰発現し、かつ、/または内因性gldA遺伝子が欠失している。

0075

補因子操作は、GldAタンパク質のいくつかの特定のアミノ酸残基を置換することにより酵素の補因子特異性を変化させることを意味する。これらの結果として得られる突然変異体(GldA*NADPH)はNADPH依存性であり、NADH依存性であると上記に開示されたGldA*変異型(GldA* A160T)とは異なる。「ロスマフォールド(Ro ssman fold)」として知られる補因子結合ポケット内で補因子特異性を支配する残基が詳細に研究されており(Scrutton et al., 1990; Clermont et al., 1993; Corbier et al., 1990; Wu et al., 2012)、当業者ならば、補因子特異性を変化させるためにどのアミノ酸残基を改変するかを定義することができる。補因子操作は最近、補因子としてNADPHの代わりにNADHを選ぶようの酵素を変化させることに成功した。一例が、低いNADPH依存性と高いNADH親和性を有するように定方向突然変異誘発により改変されたサッカロミセス・セレビシエに見られるNADPH指向性デヒドロゲナーゼである酵素Gre2pである(Katzberg et al., 2010)。

0076

本発明において、大腸菌由来のGldAの三次元構造モデルが、バチルス・ステアロサーモフィルス由来の酵素の三次元構造から構築された(Ruzheinikov et al., 2001)。当業者ならば、例えば、Discovary Studio(Accelrys)などのソフトウエアを用いて、三次元ホモロジーモデルをどのように構築するかを知っている。このようなモデルは、補因子特異性に所望の変化を達成するためにどのアミノ酸残基を変異させるかを決定するために有用である。本発明者らは、大腸菌由来のGldAの三次元構造から、いくつかの位置における種々のアミノ酸残基:
・D37
・F39
・V40
・F43
・T116
・P161
・L164
で置換されるべきアミノ酸残基を特定した。

0077

本発明によれば、GldA補因子特異性の変化は、位置D37における少なくとも1つの突然変異により媒介される。好ましい実施態様では、位置D37におけるアミノ酸残基が、グリシン(D37G)、アラニン(D37A)またはバリン(D37V)で置換される。最も好ましい実施態様では、位置D37のアミノ酸残基が、グリシン(D37G)で置換される。

0078

好ましい実施態様では、GldA補因子特異性の変化は、位置D37における突然変異と位置P161における少なくとも1つの突然変異を組み合わせることによって改善される。優先的には、位置P161のアミノ酸残基がセリン(P161S)またはトレオニン(P161T)で置換される。より優先的には、位置P161のアミノ酸残基がセリンで置換される(P161S)。

0079

最も好ましい実施態様では、GldA補因子特異性の変化は、位置D37およびP161の突然変異と位置L164の少なくとも1つの突然変異を組み合わせることによって改善される。優先的には、位置L164のアミノ酸残基がアラニン(L164A)、グリシン(L164G)またはバリン(L164V)で置換される。より優先的には、位置L164のアミノ酸残基がアラニンで置換される(L164A)。

0080

特定の実施態様では、本発明の微生物は、少なくとも以下の突然変異:D37G、P161SおよびL164Aを含有するGldA*突然変異体をコードする変異型gldA*を過剰発現する。

0081

本発明の好ましい実施態様では、これらの突然変異は、従前に構築され、突然変異A160Tを含有するGldA*突然変異体に導入できる。

0082

大腸菌(K12株)により発現されるグリセロールデヒドロゲナーゼのアミノ酸配列は、UniprotKBデータベースで参照番号P0A9S5として公開されている。

0083

従って、NADPHHAR依存性活性を増強するために、本発明の微生物は、好ましくは、上記のようなNADPH依存性アセトールレダクターゼ(NADPH HAR)をコードする少なくとも1つの遺伝子または上記のようなNADPH依存性グリセロールデヒドロゲナーゼをコードする変異型gldA*遺伝子を過剰発現する。

0084

本発明の他の特定の実施態様では、本発明の改変微生物は、
・少なくとも1つのNADPHHAR遺伝子を過剰発現することが可能であり、gldA遺伝子に欠失を有してもよい、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子とgldA*NADPH突然変異体を過剰発現することが可能である、または
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子とgldA*NADPH突然変異体を過剰発現することが可能であり、gldA遺伝子に欠失を有してもよい。

0085

本発明の別の面では、1,2−プロパンジオールの製造は、上記のようなNADPH依存性HAR活性の増強と細胞のNADPH利用度の増大を組み合わせることによりさらに改善される。

0086

細胞のNADPH利用度の増大のための戦略は、当業者に周知である(Lee et al., 2013で総説)。本発明において、細胞のNADPH利用度は、
膜結合トランスヒドロゲナーゼをコードするpntABオペロンを過剰発現させること(WO2012/055798A1)、および/または
・ホスホグルコースイソメラーゼをコードするpgi遺伝子を減弱すること、および/または
・pfkA遺伝子によりコードされているホスホフルクトキナーゼの活性を低下させること(WO2005/047498)およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼをコードするzwf遺伝子を過剰発現させること(Shin et al., 2002)によりペントースリン酸経路を介する流量を増大させること、および/または
・NADPH生成グリセルアルデヒド−3−リン酸をコードする生成するストレプトコッカスミュータンス(Streptococcus mutans)由来のgapN遺伝子を過剰発現させること(Centeno-Leija et al., 2013)、および/または
・NADPHを生成できるリポアミドデヒドロゲナーゼをコードする変異型lpd*遺伝子を過剰発現させること(Bocanegra et al., 1993)、および/または
・酵素または熱依存性水和により産生されたNADH(X)およびNADPH(X)を再活性化するADP依存性デヒドラターゼをコードするyjeF遺伝子を過剰発現させること(Marbaix et al., 2011).
により増大される。

0087

本発明のさらなる面において、本発明の微生物がNADPHHAR遺伝子を過剰発現する場合、メチルグリオキサールレダクターゼ(MGR)をコードするyqhD遺伝子が欠失されている。このような条件下で、HARタンパク質は、NADPH依存性HAR酵素としてだけでなく、NADPH依存性MGR酵素としても働き、メチルグリオキサールの1,2−プロパンジオールへの二段階NADPH依存性還元を遂行する。このような活性は、上記に挙げられたNADPH依存性HAR酵素候補のいずれかによって行われ得る。

0088

本発明のより好ましい実施態様では、上記の改変のいずれかに従ってNADPH依存性アセトールレダクターゼ活性が増強された組換え微生物による、炭素源としての炭水化物からの発酵プロセスにおける1,2−プロパンジオールの製造は、前記微生物における上記で述べた改変の組合せによって達成され得る、例えば
・少なくとも1つのNADPHHAR遺伝子およびpntAB遺伝子の発現が増強している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子が増強しており、かつ、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびpntABの発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびyjeFの発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子の発現が増強しており、かつ、pgiの発現が減弱しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびzwfの発現が増強しており、gldA遺伝子およびpfkA遺伝子が減弱している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびgapNの発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびlpd*変異型の発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・変異型GldA* NADPHコード遺伝子の発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・変異型GldA* NADPHコード遺伝子およびpntAB遺伝子の発現が増強している、
・変異型GldA* NADPHコード遺伝子およびpntAB遺伝子の発現が増強しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子の発現が増強しており、yqhD遺伝子が減弱しており、gldA遺伝子が欠失している、
・少なくとも1つのNADPH HAR遺伝子およびpntAB遺伝子の発現が増強しており、yqhD遺伝子およびgldA遺伝子が欠失している。

0089

実施例1:方法
以下に示される実施例では、複製ベクターおよび/または種々の染色体欠失、および大腸菌に関してDatsenko & Wanner, (2000)により十分に記載されている相同組換えを用いた置換を含有する大腸菌株を構築するために当技術分野で周知の方法を使用した。同様に、組換え微生物内で1または複数の遺伝子を発現または過剰発現するためのプラスミドまたはベクターの使用も当業者に周知である。好適な大腸菌発現ベクターの例としては、pTrc、pACYC184npBR322、pUC18、pUC19、pKC30、pRep4、pHS1、pHS2、pPLc236などが含まれる。

0090

いくつかのプロトコールが以下の例で使用された。本発明で使用されたプロトコール1(相同組換えによる染色体の改変、組換えの選択)、プロトコール2(ファージP1の形質導入)およびプロトコール3(抗生物質カセット切り出し、必要があれば耐性遺伝子が除去された)は、特許出願EP2532751に十分に記載されている。染色体改変は、当業者が設計できる適当なオリゴヌクレオチドを用いたPCR分析により確認できる。

0091

プロトコール4:組換えプラスミドの構築
組換えDNA技術は当技術分野で十分に記載されている。DNA断片および選択されたプラスミドを適合する制限酵素(当業者が定義可能)で消化した後、連結させ、コンピテント細胞に形質転換した。形質転換体を分析し、対象とする組換えプラスミドをDNAシーケンシングにより確認した。

0092

0093

プロトコール5:1,2−プロパンジオール生産株の評価
1,2−プロパンジオール生産株を、20g/Lグルコースまたはスクロースおよび40g/L MOPSを使用したこと以外は特許出願EP2532751に記載の通りにフラスコ培養で培養した。必要であれば、100μMIPTGを培地に加えた。1,2−プロパンジオール(PG)およびヒドロキシアセトン(HA)をHPLCにより定量した。PGの生産(gPG/L)およびHAのPGへの変換率(gPG/L/(gHA/L+gPG/L))を、1,2−プロパンジオール生産の株性能の評価値とする。

0094

プロトコール6:組換えタンパク質の生産のためのフラスコ培養
組換えタンパク質の生産のためのフラスコ培養は、LB培養液に5,0g/Lグルコースを添加したこと以外は特許出願WO2010/076324に記載の通りに行った。

0095

実施例2:株1、2、3および4の構築物
株1の構築
frdABCDオペロンによりコードされているフマル酸レダクターゼフラタンパク質複合体およびptsG遺伝子によりコードされているグルコースホスホトランスフェラーゼ酵素IIBC(Glc)を不活化するために、相同組換え法を用いた(プロトコール1および3に従う)。DfrdABCD:配列番号1および2(表2に列挙)、およびDptsG:配列番号3および4(表2に列挙)のオリゴヌクレオチドを用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 DfrdABCD::CmおよびMG1655 DptsG::Kmと呼称した。最後に、このDfrdABCD::Cm欠失およびDptsG::Km欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により、特許出願WO2008/116852に記載されている進化した株MG1655 lpd* DtpiA DpflAB DadhE DldhA DgloA DaldA DaldB Dedd DarcA Dndhに導入し、株1を得た。

0096

株2の構築
gldA*(A160T)遺伝子を特許出願EP2532751に記載の通りにpME101VB06プラスミドにクローニングした。pPG0078と呼称するこのプラスミドを株1に形質転換し、株2を得た。

0097

株3の構築
tpiA遺伝子によりコードされているトリオースリン酸イソメラーゼを発現させ、gapA遺伝子によりコードされているグリセルアルデヒドリン酸デヒドロゲナーゼの発現を調節するために、相同組換え法を使用した(プロトコール1および3に従う)。tpiA遺伝子を特許WO2008/116852に記載の通りに、進化した株MG1655 lpd* DtpiA DpflAB DadhE DldhA DgloA DaldA DaldB Dedd DarcA Dndh DfrdABCDに導入した。次に、 gapA発現を調節するためのゲノム改変「CI857−PR01/RBS11−gapA」を、特許EP2532751に記載の通りに従前の株に導入し、株3を得た。

0098

株4の構築
スクロースでの大腸菌の成長を可能とするため、プラスミドpUR400(Schmid et al., 1982)由来の遺伝子scrK、scrYABおよびscrRを、プラスミドpBBR1MCS3上のそれらの天然プロモーター下にクローニングした。このプラスミドをpPG0231と呼称した。プラスミドpPG0078およびpPG0231を株3に形質転換し、株4を得た。

0099

実施例3:1,2−プロパンジオールの生産はクロストリジウム・ベイジェリンキ由来の第2級アルコールデヒドロゲナーゼadhを過剰発現する株で改善される
株5の構築
クロストリジウム・ベイジェリンキ(Hanai et al., 2007)由来のadh遺伝子を特許出願WO2008/116853に記載のpME101VB01プラスミドにクローニングした。pPG0468と呼称するこのプラスミドを株1に形質転換し、株5を得た。

0100

株6の構築
gldA遺伝子を不活化するために、相同組換え法を使用した(プロトコール1および3に従う)。DgldAのオリゴヌクレオチド:配列番号5および6(表2に列挙)を用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 DgldA::Cmと呼称した。このDgldA::Cm欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株5に導入し、株6を得た。

0101

株7の構築
プラスミドpPG0468およびpPG0231を株3に形質転換し、株7を得た。

0102

株8の構築
gldA遺伝子を不活化するために、従前に記載したDgldA::Cm欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株7に導入し、株8を得た。

0103

プロトコール5に記載のように評価されたクロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadhを発現する株5、6、7および8は、それらの各対照株2および4に比べてより多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産し、より良好な変換率および収量を有していた(表3)。

0104

0105

実施例4:1,2−プロパンジオールの生産はクロストリジウム・ベイジェリンキ由来の第2級アルコールデヒドロゲナーゼadhを過剰発現する株においてをピリジンヌクレオチドトランスヒドロゲナーゼpntAB過剰発現させることにより改善される
株9の構築
相同組換え法(プロトコール1および3に従う)を用い、pntABの天然プロモーター領域を、誘導型trcプロモーター(プラスミドpTRC99A由来、Amersham Pharmacia)および確定(define)リボソーム結合部位RBS120(RBS Calculator softwareから)(表2に列挙した配列番号7)で置換した。染色体組込みのために、どちらも標的組込み遺伝子座pntABと相同なDNA配列が隣接した人工プロモーター領域および耐性マーカーを有する断片を、オーバーラッピングPCR技術(オーバーラッピングオリゴヌクレオチド)によりPCR増幅した。pntABへの組換えための配列を配列番号8および9と呼称した(表2に列挙)。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションにより株MG1655に導入した(pKD46)。保持された株をMG1655 Ptrc01/OP01/RBS120−pntAB::Cmと呼称した。次に、このPtrc01/OP01/RBS120−pntAB::Cm改変をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株6に導入し、株9を得た。

0106

株10の構築
従前に記載したPtrc01/OP01/RBS120−pntAB::Cm改変をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株8に導入し、株10を得た。

0107

プロトコール5に記載のように評価されたpntABを過剰発現する株9および10は、それぞれ株6および8に比べてより多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産し、より良好な変換率および収量を有していた(表4)。

0108

0109

実施例5:クロストリジウム・ベイジェリンキ由来の第2級アルコールデヒドロゲナーゼadhを過剰発現する株において1,2−プロパンジオール生産を改善するためのpntABの過剰発現の別法
株11の構築
大腸菌由来のyjeF遺伝子を、実施例3に記載のpPG0468プラスミドの確定リボソーム結合部位RBS121(RBS Calculator softwareから)(表2に列挙した配列番号10)下、オペロン内にadhとともにクローニングした。このプラスミドをpPG0518と呼称した。最後に、プラスミドpPG0518およびpPG0231を中間株8(プラスミド不含)に形質転換し、株11を得た。

0110

株12の構築
pgi遺伝子を不活化するために、相同組換え法を使用した(プロトコール1および3に従う)。Dpgiのオリゴヌクレオチド:配列番号11および12(表2に列挙)を用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 Dpgi::Cmと呼称した。このDpgi::Cm欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株8の導入し、株12を得た。

0111

株13の構築
相同組換え法(プロトコール1および3に従う)を用い、天然pfkA遺伝子を変異型pfkA*(L98Q)遺伝子で置換した。まず、耐性カセットのPCR増幅を行うため、オリゴヌクレオチド配列番号13および14(表2に列挙)を用いてpfkA遺伝子を欠失させた。保持された株をMG1655 DpfkA::Kmと呼称した。次に、染色体組込みのため、どちらも標的組込み遺伝子座pfkAと相同なDNA配列が隣接した変異型pfkA*(L98Q)領域および耐性マーカーを有する断片を、オーバーラッピングPCR技術(オーバーラッピングオリゴヌクレオチド)によりPCR増幅した。pfkAへの組換えのための配列を配列番号15および16(表2に列挙)と呼称した。得られたPCR産物を次にエレクトロポレーションにより株MG1655 DpfkA::Kmに導入した(pKD46)。保持された株をMG1655 pfkA*(L98Q)::Cmと呼称した。このpfkA*(L98Q)::Cm改変を、P1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により中間株8(プラスミド不含株)に導入した。大腸菌由来のzwf遺伝子を、実施例3に記載のpPG0468プラスミドの確定リボソーム結合部位RBS113(RBS Calculator softwareから)(表2に列挙した配列番号17)下、オペロン内にadhとともにクローニングした。このプラスミドをpPG0532と呼称した。最後に、プラスミドpPG0532およびpPG0231を従前の株に形質転換し、株12を得た。

0112

株14の構築
gldA遺伝子を不活化するために、従前に記載したDgldA::Cm欠失を、P1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により中間進化株(intermediate evolved strain)3(gapA調節無し)に導入した。gapN遺伝子によりコードされているストレプトコッカス・ミュータンス由来のNADP+依存性グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼを発現させるために、相同組換え法を使用した(プロトコール1および3に従う)。大腸菌由来のgapA遺伝子を、Centeno-Leija et al. (2013)に記載されているようにストレプトコッカス・ミュータンス由来のgapN遺伝子で置換した。得られたPCR産物をエレクトロポレーションにより株MG1655に導入した(pKD46)。保持された株をMG1655 gapN::Cmと呼称した。このgapN::Cm改変をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により従前の株に導入した。遺伝子scrK、scrYABおよびscrRを染色体で発現させるために、Datsenko & Wanner, 2000に記載の相同組換え法(プロトコール1および3に従う)を使用した。染色体組込みのため、耐性マーカーに連結された、それらの天然プロモーター下で発現された遺伝子scrK、scrYABおよびscrRを有する断片(どちらも標的組込み遺伝子座ykiAと相同なDNA配列が隣接している)を、オーバーラッピングPCR技術(オーバーラッピングオリゴヌクレオチド)によりPCR増幅した。ykiAへの組換えのための配列を配列番号18および19(表2に列挙)と呼称する。得られたPCR産物「DykiA::scrKYABR」を次に、エレクトロポレーションにより株MG1655に導入した(pKD46)。保持された株をMG1655 DykiA::scrKYABR::Cmと呼称した。このDykiA::scrKYABR::Cm改変を、P1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により、従前の株に導入した。ストレプトコッカス・ミュータンス由来のNADP+依存性グリセルアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼの過剰生産を可能とするため、Centeno-Leija et al. (2013)により記載されているように、gapN遺伝子をpACYC184プラスミドにクローニングした。このプラスミドをpPG0548と呼称した。最後に、これらのプラスミドpPG0468およびpPG0548を従前の株に形質転換し、株13を得た。

0113

株15の構築
lpd遺伝子によりコードされているNAD+依存性リポアミドデヒドロゲナーゼを不活化するために、相同組換え法(プロトコール1および3に従う)を使用した。従って、Dlpdのオリゴヌクレオチド:配列番号20および21(表2に列挙)を用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 Dlpd::Cmと呼称した。最後に、このDlpd::Cm欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により中間株8(プラスミド不含株)に導入した。大腸菌由来の変異型lpd*(A55V/G185A/G189A/E203V/M204R/F205K/D206H/P210R)遺伝子をオーバーラッピングPCR技術(オーバーラッピングオリゴヌクレオチド)によりPCR増幅し、実施例3に記載のpPG0468プラスミドの確定リボソーム結合部位RBS131(RBS Calculator softwareから)(配列番号22 表2に列挙)下、オペロン内にadhとともにクローニングした。このプラスミドをpPG0523と呼称した。最後に、これらのプラスミドpPG0231およびpPG0523を従前の株に形質転換し、株14を得た。

0114

プロトコール5に記載の通りに評価された株11、12、13、14および15は、株8に比べてより多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産し、より良好な変換率を有していた(表5)。

0115

0116

実施例6:クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のadhの代替
相同配列の同定および系統樹の構築
配列セットからの系統樹の構築はウェブサイトhttp://www.phylogeny.fr/で利用可能なバイオインフォマティクスプログラムを用いて行い、ソフトウエアはDereeper et al. (2008)およびDereeper et al. (2010)に記載されている。

0117

工程1:相同配列の同定
BLASTソフトウエアを用い、以下のパラメーター:データベース(Swissprot/UNIPROT)、e値=0.01および低複雑性列用フィルターを設定することにより、第2級アルコールデヒドロゲナーゼファミリーおよびアルデヒド/ケトンレダクターゼファミリーから類似配列の同定を行った。

0118

工程2:系統樹の構築
MUSCLEソフトウエアを用いて配列をアラインし、Gblocksプログラムを用いて不明瞭な領域を除去した。次に、PhyMLプログラムに実装されている最大尤度法を用いて系統樹を再構築した。系統樹のグラフ表示および編集はTreeDynを用いて行った。

0119

0120

クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のAdhは、サーモアナエロバクテリウム・ブロッキー、赤痢アメーバーおよび肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)酵素に最も近縁であった。次に良好な一致は、真核生物に見られるアルコールデヒドロゲナーゼとのものであった。グルコノバクター・オキシダンス、ヒポクレア・ジェコリナ、赤痢アメーバーおよび枯草菌由来の酵素をクローニングし、精製し、NADPH依存性ヒドロキシアセトンレダクターゼ活性に関してアッセイした。

0121

株16の構築
gldA遺伝子を不活化するために、相同組換え法を使用した(プロトコール1および3に従う)。DgldAのオリゴヌクレオチド:配列番号5および6(表2に列挙)を用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 DgldA::Kmと呼称した。最後に、このDgldA::Km欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株BL21(DE3)スターに導入した。グルコノバクター・オキシダンス由来のグリセロールデヒドロゲナーゼを同定するために、大腸菌に対して最適化した合成遺伝子gld(表2に列挙した配列番号23)を発現プラスミドpPAL7(Biorad(商標))にクローニングした。このプラスミドをpPG0381と呼称し、株BL21(DE3)スターDgldA::Kmに形質転換し、株16を得た。

0122

株17の構築
ヒポクレア・ジェコリナ由来のグリセロールデヒドロゲナーゼを同定するために、大腸菌に対して最適化した合成遺伝子gld2(表2に列挙した配列番号24)を発現プラスミドpPAL7(Biorad(商標))にクローニングした。このプラスミドをpPG0418と呼称し、従前に記載した株BL21(DE3)スターDgldA::Kmに形質転換し、株17を得た。

0123

株18の構築
赤痢アメーバー由来のアルコールデヒドロゲナーゼを同定するために、大腸菌に対して最適化した合成遺伝子adh1(表2に列挙した配列番号25)を発現プラスミドpPAL7(Biorad(商標))にクローニングした。このプラスミドをpPG0539と呼称し、株BL21(DE3)コドンラスに形質転換し、株18を得た。

0124

株19の構築
枯草菌由来のアルドケトレダクターゼ(aldo keto reductase)を同定するために、枯草菌由来の遺伝子yhdNを発現プラスミドpPAL7(Biorad(商標))にクローニングした。このプラスミドをpPG0357と呼称し、株BL21(DE3)に形質転換し、株19を得た。

0125

組換えタンパク質の精製
株16、17、18および19はプロトコール6に記載の通りに培養した。細胞(乾燥重量350〜500mg)プロテアーゼ阻害剤カクテルとともに抽出バッファー(60〜90ml)に再懸濁させた。懸濁細胞を氷上で30秒6回の音波処理サイクル(Branson超音波発生装置、70W)により破砕した後、室温で1時間、1mM MgCl2および2UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。細胞残渣を4℃、12000gで30分の遠心分離により除去した。上清を粗細胞抽出液として維持した。組換えタンパク質をこの粗抽出液から、スブチリシン(subtilisine)アフィニティークロマトグラフィー(PROfinity EXactカートリッジ5ml、BIORAD)を製造者説明書に従って使用することにより精製した。前記タンパク質を含有する画分をプールし、濃縮し、ゲル濾過カラム(Superdex 200 10/300 GLカラム、GE Healthcare)にロードした。タンパク質濃度は、ブラッドフォードアッセイを用いて決定した。

0126

精製酵素のNADPH依存性ヒドロキシアセトンレダクターゼ(HAR NADPH)
HAR NADPH活性は、分光光度計(ε340nm=6290M−1cm−1)にて340nm、30℃で、NADPHの消費を測定することにより決定した。アッセイバッファー0.2mM NADPHおよび精製タンパク質を含有する反応混合物(1mL)を30℃で5分間インキュベートした。次に、30mMのヒドロキシアセトンを加えて反応を開始させた。1単位の酵素活性は、1分当たり1μmolのNADPHを触媒する酵素の量と定義した。特異的酵素活性をタンパク質1mg当たりの酵素活性の単位として表した。ヒドロキシアセトン無しで測定された活性値を差し引いた。

0127

0128

株20の構築
赤痢アメーバー由来の最適化されたadh1遺伝子を特許出願WO2008/116853に記載されているpME101VB01プラスミドにクローニングした。このプラスミドをpPG0544と呼称した。プラスミドpPG0544およびpPG0231を実施例2に記載の株3に形質転換した後、gldA遺伝子を実施例3に記載の通りに不活化し、pntABオペロンを実施例4に記載の通りに過剰発現させ、株19を得た。

0129

プロトコール5に記載の通りに評価された株20は、株4に比べてより多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産し、より良好な変換率を有してした(表8)。

0130

0131

実施例7:GldA*(A160T)の補因子リファクタリング(refactoring)
酵素設計および構造解析
GldA*(A160T)の相同モデルを、バチルス・ステアロサーモフィルスのグリセロールデヒドロゲナーゼのX線構造から構築した。これらのモデルを、Discovery Studio software(Accelrys)を使用することにより計算した。これらのモデルを少なくとも30%の同一性を有し、その構造が知られているNADおよびNADP依存性酵素の構造と比較した。

0132

補因子の特異性に関与するアミノ酸を、GldA*(A160T)の配列と数種のNADおよびNADP依存性デヒドロゲナーゼの間の配列アラインメント、GldA*(A160T)の相同モデルとRCSBタンパク質データバンクに存在するグリセロールデヒドロゲナーゼの間の重畳、およびClermont et al. (1993), Ruzheinikov et al. (2001), Corbier et al. (1990)およびWu et al. (2012)に見られるデータとの比較によって同定した。

0133

配列解析および構造解析からD37GおよびD37G/P161S/L164Aの2つの突然変異体が定義された。

0134

株21の構築
大腸菌由来の変異型1,2−プロパンジオール:NAD+オキシドレダクターゼを同定するために、まず、遺伝子gldAを発現プラスミドpET101/D−TOPO(Lifetechnologies(商標))にクローニングした。このプラスミドをpPG0029と呼称した。変異型gldA*(A160T)遺伝子を過剰発現させるために、pPG0029での部位特異的突然変異誘発を用いた。このプラスミドをpPG0394と呼称し、株BL21(DE3)スターDgldA::Kmに形質転換し、株21を得た。

0135

株22の構築
変異型gldA*(A160T/D37G)遺伝子を過剰発現させるために、pETTOPO−gldA*(A160T)に対する部位特異的突然変異誘発を使用した。このプラスミドをpPG0425と呼称し、株BL21(DE3)スターDgldA::Kmに形質転換し、株22を得た。

0136

株23の構築
変異型gldA*(A160T/D37G/P161S/L164A)遺伝子を過剰発現させるために、pPG0425に対する部位特異的突然変異誘発を使用した。このプラスミドをpPG0438と呼称し、株BL21(DE3)スターDgldA::Kmに形質転換し、株23を得た。

0137

GldA*(A160T)、GldA*(A160T/D37G)およびGldA*(A160T/D37G/P161S/L164A)の精製
株21、22および23をプロトコール6に記載の通りに培養した。細胞(乾燥重量500mg)を90mLの抽出バッファー(100mMリン酸カリウムpH7.6、20mMイミダゾールおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル)に再懸濁させた。懸濁細胞を氷上で30秒8回の音波処理サイクル(Branson超音波発生装置、70W)により破砕した後、室温で45分間、5mM MgCl2および2UI/mlのDNアーゼIとともにインキュベートした。細胞残渣を4℃、12000gで30分の遠心分離により除去した。上清を粗細胞抽出液として維持した。酵素をこの粗抽出液から、ニッケルアフィニティークロマトグラフィー(HisTrapFF 1mL、GE Healthcare)を製造者の説明書に従って使用することにより精製した。酵素を、100mMリン酸カリウム(pH7.6)中イミダゾール(20から500mMへ)の直線勾配を用いて溶出させた100mM MES−KOH(pH6.5)で平衡化したゲル濾過(Superdex200 10/300 GL column、GE Healthcare)による脱塩工程の後に、タンパク質濃度をブラッドフォードアッセイを用いて決定した。

0138

GldA*(A160T)、GldA*(A160T/D37G)およびGldA*(A160T/D37G/P161S/L164A)の同定
NADPH依存性ヒドロキシアセトンレダクターゼ活性(HAR NADPH)を、分光光度計(□340nm=6290M−1cm−1)にて340nm、30℃で、NADPHの消費を測定することにより決定した。100mM MES−KOH(pH6.5)、0.1mM FeSO4、30mM硫酸アンモニウム、0.05〜0.4mM NADPHおよび精製酵素を含有する反応混合物(1mL)を30℃で5分間インキュベートした。次に、0.1〜10mMヒドロキシアセトンを加えて反応を開始させた。NADH依存性ヒドロキシアセトンレダクターゼ(HAR NADH)アッセイは、反応混合物においてNADPHをNADHに置き換えたこと以外はHAR NADPHと同じ条件下で行い、NADHの消費を340nmで測定することにより活性を決定した。動態パラメーターは、Sigmaplotを用いてミカエリス・メンテンの式に当てはめることにより決定した。

0139

GldA*(A160T/D37G)およびGldA*(A160T/D37G/P161S/L164A)酵素は、GldA*(A160T)に比べて、NAD触媒効率の上昇を、NADHの場合には触媒効率の低下を示した(表9)。

0140

0141

株24の構築
変異型gldA*(A160T/D37G/P161S/L164A)遺伝子を、特許出願EP2532751でpME101VB06−gldA*(A160T)の構築に関して記載されているように、pME101由来プラスミドにクローニングした。このプラスミドをpPG0467と呼称した。最後に、プラスミドpPG0467およびpPG0231を実施例2に記載の中間株8(プラスミド不含株)に形質転換し、株24を得た。

0142

プロトコール5に記載の通りに評価された株24は、株4に比べてより多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産し、より良好な変換率を有していた(表10)。

0143

0144

実施例8:クロストリジウム・ベイジェリンキ由来のAdhによるMG=>PG活性
株25の構築
クロストリジウム・ベイジェリンキ由来の最適化されたadh遺伝子(Hanai, Atsumi and Liaso, 2007)を発現プラスミドpET28aにクローニングした。このプラスミドをpPG0445と呼称し、株BL21(DE3)に形質転換し、株25を得た。

0145

クロストリジウム・ベイジェリンキ由来Adhの精製
株25をプロトコール6に記載の通りに培養した。細胞(乾燥重量315mg)を50mLの抽出バッファー(20mM Tris−HCl pH7.3、0.1mM DTT、0.1mMベンズアミジン、10%グリセロール、0.02%アジ化ナトリウムおよびプロテアーゼ阻害剤カクテル)に再懸濁させた。懸濁細胞を氷上で30秒8回の音波処理サイクル(Branson超音波発生装置、70W)により破砕した。細胞残渣を4℃、12000gで30分間の遠心分離により除去した。上清を加熱し(65℃5分間)、次いで、4℃、12000gで30分間、再び遠心分離した。タンパク質を、ニッケルアフィニティークロマトグラフィー(HisTrapFF 1mL、GE Healthcare)を製造者の説明書に従って使用することにより精製した。タンパク質を、50mM Tris−HCl(pH7.4)中、イミダゾール(20から500mMへ)の直線勾配を使用することにより溶出させた。前記タンパク質を含有する画分をプールし、濃縮し、50mM Tris−HCl(pH7)に対して透析した。タンパク質濃度は、ブラッドフォードアッセイを用いて決定した。

0146

メチルグリオキサールから生産された1,2−プロパンジオールの定量
5〜10μgの精製酵素を30℃で30分間、50mM Tris−HCl(pH7.5)、10mMメチルグリオキサールおよび5mMNADPH中でインキュベートした。メチルグリオキサールからAdhにより生産された1,2−プロパンジオールの量を直接GC−MS(Agilent Technologies)により測定した。

0147

このような条件下で4.6mMの1,2−プロパンジオールが生産されたが、メチルグリオキサールまたは酵素を除いた場合には1,2−プロパンジオールは生産されなかった。

0148

株26、27および28の構築
gldA遺伝子を不活化するために、従前に記載したDgldA::Km欠失およびtpiA遺伝子を、P1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により、特許出願WO2008/116852に記載されている株MG1655 lpd* DtpiA DpflAB DadhE DldhA DgloA DaldA DaldB Deddに共導入した。gapA発現を調節するためのゲノム改変「CI857−PR01/RBS11−gapA」を特許EP2532751に記載の通りに従前の株に導入した。yqhD遺伝子によりコードされているアルデヒドレダクターゼおよびyqhE遺伝子によりコードされているグリオキサールレダクターゼを不活化するために、相同組換え法(プロトコール1および3に従う)を使用した。DyqhDEのオリゴヌクレオチド:配列番号26および27(表2に列挙)を用いて耐性カセットのPCR増幅を行った。保持された株をMG1655 DyqhDE::Bsと呼称した。このDyqhDE::Bs欠失をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により従前の株に導入し、株26を得た。次に、プラスミドpPG0468をこの株に形質転換し、株27を得た。最後に、従前に記載したPtrc01/OP01/RBS120−pntAB::Cm改変をP1ファージ形質導入(プロトコール2に従う)により株27に導入し、株28を得た。

0149

プロトコール5に記載の通りに評価したところ、株27および28は株26よりも多くの1,2−プロパンジオール(PG)を生産した。

0150

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