図面 (/)

技術 拡張機能障害を診断するためのIGFBP7

出願人 エフ.ホフマン-ラロシュアーゲー
発明者 カール,ヨハンヴィーンヒューズ-テレン,ウルスラ-ヘンリケブロック,ディルクツァウグ,クリスティアンブルンナー,ハンス-ペータージャヌッツィ,ジェームズツィーグラー,アンドレブラズ,ジュリアンディーターレ,トーマスカイザー,エーデルガルト
出願日 2015年3月25日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2016-557240
公開日 2017年5月25日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2017-512988
状態 不明
技術分野
  • -
主要キーワード 強度信号値 容積状態 拡張初期 連続変量 適合直線 最良適合線 全誤差 追加特徴
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年5月25日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (10)

課題・解決手段

本発明は、拡張機能障害、または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための方法に関する。この方法は、心不全罹患している患者において、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベル、ならびに場合により少なくとも1つのさらなるマーカーのレベルを測定し、そしてそのレベルを基準レベルと比較することを含む。さらに、心不全に罹患している患者において拡張機能モニターするための方法を考慮する。本発明は、本発明の方法を実施するために適合させたキットおよびデバイス包含する。

概要

背景

心不全(HF)を伴なう患者ケアのためのバイオマーカーの使用は著しく拡大した。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびそれのアミノ末端開裂均等物(NT−proBNP)を含めたナトリウム利尿ペプチド(NP)は、罹患している患者の診断、予後および管理のために現在広く用いられている(Yancy et al., 2013ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure: A report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines,Circulation, 2013; 128:e240-319)。BNPおよびNT−proBNPに続いて、広範な新規バイオマーカーが調べられており、それぞれHFの複雑な病態生理を伴なう患者の追加評価のために有望な可能性をもつ。これに関して、心臓バイオマーカーの濃度とそれらが放出される潜在的な心血管病態生理学的プロセスとの機構関連性をより良く理解するかなりの努力がなされてきた。

ナトリウム利尿ペプチドは左室(LV)の拡張および収縮両機能を含めて心血管の構造および機能の広範囲の異常と関連をもつことが見出された(Tschope et al., The role ofNT-proBNP in the diagnostics of isolated diastolic dysfunction: Correlation with echocardiographic and invasive measurements, Eur Heart J. 2005;26:2277-2284, Weiner et al., Improvement in structural and functional echocardiographic parameters during chronic heart failure therapy guided bynatriuretic peptides: Mechanistic insights from the proBNP outpatient tailored chronic heart failure (protect) study, Eur J Heart Fail. 2013;15:342-351, Yu et al., Diastolic dysfunction and natriuretic peptides in systolic heart failure. Higher ANP and BNP levels are associated with the restrictive filling pattern, Eur Heart J. 1996;17:1694-1702)。後者に関連して、異常な拡張機能の同定および重症度グレーディングは複雑であり、この試みで幾つかの心エコー検査査定された(Nagueh et al., Recommendations for the evaluation of left ventricular diastolic function by echocardiography, J Am Soc Echocardiogr. 2009;22:107-133)。HFでは拡張機能障害のためナトリウム利尿ペプチドが増加するが、それらはこれに関連して全く非特異的であり(Daniels et al., Natriuretic peptides, J Am Coll Cardiol. 2007;50:2357-2368)、よってそれらの適用性は制限される。したがって、異常な拡張機能の診断およびグレーディングを支援するのに主として有用なバイオマーカー(単数または複数)があれば、臨床実務においてきわめて価値があるであろう。

インスリン様増殖因子軸はHFにおける転帰予測子であることが以前に見出された(Watanabe et al., Insulin-like growth factor axis (insulin-like growth factor-i/insulin-like growth factor-binding protein-3) as a prognostic predictor of heart failure: Association with adiponectin, Eur J Heart Fail. 2010;12:1214-1222)。インスリン様増殖因子結合タンパク質7(insulin-like growth factor-binding protein 7)(IGFBP7)は特に、心肥大動物モデルおよび心不全のヒト組織プロテオーム研究および情報科学研究によって有望な新規HFマーカーとして最近同定された(Chugh et al., Pilot study identifying myosin heavy chain 7, desmin, insulin-like growth factor 7, and annexin a2 as circulating biomarkers of human heart failure, Proteomics, 2013;13:2324-2334)。IGFBP7は主に心肥大と関連し、HFにおいて高レベル発現したが、正常血清には発現しなかった。IGFBP7は脈管系にも発現するように思われ、おそらく血管形成を調節しているのであろう(van Breevoort et al., Proteomic screen identifies IGFBP7 as a novel component of endothelial cell-specific weibel-palade bodies, J Proteome Res. 2012;11:2925-2936)。

心筋拡張機能障害は、心筋収縮機能障害と対比して異なるタイプの心不全である。心不全(HF)患者を拡張機能障害の処置のために個別かつ具体的に層別化する必要がある。拡張機能障害の処置のために幾つかの新規薬物が開発中である:LCZ696(Novartis 第III相)、シルデナフィル(Sildenafil)、スピロノラクトン(Spironolactone)、アナキンラ(Anakinra)、HISDN

拡張機能障害の診断には時間およびコストがかかる。イメージング手段による機能および構造の分類が必要である。
最近の刊行物バイオマーカーレベルの増大と拡張機能障害の関連性を扱っている(Circulating biomarkers in patients with heart failure and preserved ejection fraction. O’Meara et al., Curr Heart Fail Rep 10, 350-358, 2013)。

Dinhらは、正常な駆出分画(ejection fraction)を伴なうHF患者においてIGFBP−7を分析している(Abstract P1288: Serum insulin like growth factor-i and its binding protein-7: novel promising biomarker in heart failure with preserved ejection fraction. Clinical Research in Cardiology; 101, 2012(Supplement 1))。

Motiwalaらは、左室収縮機能障害を伴なう患者においてIGFBP7の連続測定を予測子として使用できることを開示している(JACC, 2013, 61(10), E565; Motiwala et al. J. of Cardiovasc. Trans. Res. (2014) 7:250-261も参照されたい)。

US2010/0285491には、心不全の査定におけるIGFBP−7の使用が開示されている。さらにそれには、HFに罹患している患者のための治療計画の選択にマーカーIGFBP−7を使用できることが開示されている
WO 2012/025355には、初期心不全を伴なう患者におけるIGFBP7の決定が開示されている。

WO 2014/040759には、正常な左室駆出分画を伴なう患者における予測子としてIGFB7を使用できることが開示されている。
WO 2009/047283には、BNP、cTnT、および少なくとも1つの炎症マーカーオステオポンチン(OPN)、GDF−15、CRPを測定することにより心筋梗塞後の対象のリモデリングプロセスにどの処置または組合わせ処置を適用すべきか診断する方法が記載されている。それには、≧500pg/mlのレベルのオステオポンチンがACE阻害薬アンギオテンシン受容体アンタゴニストおよびアルドステロンアンタゴニストについての指標として記載されている。

WO 2010/124821には、心不全を査定するためにエンドスタチンを測定できることが開示されている。
増殖分化因子15(growth-differentiation factor-15)(GDF−15)は、トランスフォーミング増殖因子−βサイトカインスーパーファミリーメンバーである。GDF−15は心血管事象の強力な予測子および心血管合併症の指標として記載されている(Brown, D. A. et al., 2002 The Lancet, 359: 2159-2163; US2003/0232385; Kempf, 2006,Circ Res 98: 351-360)。Kempfらは、慢性心不全を伴なう患者においてGDF−15の循環レベルがCHFの重症度と関連があり、死亡リスク予測することを示した(Clinical Chemistry 53:2; 284-291 (2007); Am Coll Cardiol, 2007; 50:1054-1060)。

WO 2012/025355には、アルドステロンアンタゴニスト、たとえばスピロノラクトンの投与を受けている心不全患者における、療法モニタリングおよび療法適合のためのトロポニンおよびGDF−15の検出をベースとする方法が開示されている。

WO 2010/0070411には、GDF−15、NT−proANP、NT−proBNPおよび心筋トロポニンの検出をベースとする、心不全に罹患している見掛け上安定な対象をモニタリングする方法が開示されている。

Kubo et al. 2011 (Circulation J, 75, 919-926)には、肥大性心筋症に罹患している患者における臨床悪化に関するBNPおよびトロポニンをベースとする検出ベースのリスク予測が開示されている。査定した患者の多くは心不全に罹患していた。

Fonarow et al. 2008 (Am J Cardiol, 101, 231-237)には、心不全に罹患している患者におけるBNPおよびトロポニンの検出をベースとする死亡リスク予測が開示されている。

WO 2011/012268には、心不全を査定するための個体から得られた体液試料におけるミーメカンの使用が開示されている。それはさらに、HFに罹患している患者のための治療計画の選択における、マーカーであるミーメカンの使用に関する。

概要

本発明は、拡張機能障害、または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための方法に関する。この方法は、心不全に罹患している患者において、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベル、ならびに場合により少なくとも1つのさらなるマーカーのレベルを測定し、そしてそのレベルを基準レベルと比較することを含む。さらに、心不全に罹患している患者において拡張機能をモニターするための方法を考慮する。本発明は、本発明の方法を実施するために適合させたキットおよびデバイス包含する。なし

目的

本発明の基礎となる技術的課題は、前記のニーズに応じる手段および方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
- 件
牽制数
- 件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

該当するデータがありません

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

心不全罹患している患者において拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する心臓の少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための方法であって、a)心不全に罹患しており左室駆出分画(LVEF)が低減している患者からの試料におけるIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベルを測定する;そしてb)a)において測定したIGFBP7のレベルを基準レベルと比較する工程を含む方法。

請求項2

患者が、ACCAH分類に従った心不全CもしくはD期、および/またはNYHA分類に従った心不全NYHAクラスIIIもしくはIVに罹患している、請求項1に記載の方法。

請求項3

患者が50%未満のLVEFを有し、特に患者が40%未満のLVEFを有する、請求項1または2に記載の方法。

請求項4

患者が左室肥大を伴ない、特に患者が126g/m2より大きい左室重量指数を伴なう、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。

請求項5

患者が左室収縮機能障害による心不全に罹患している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

請求項6

拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を診断し、その際、a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベルは、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/またはb)基準レベル未満のIGFBP7のレベルは、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していないことを指示する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

請求項7

拡張機能障害、または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常をグレーディングし、その際、a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベルは、その患者が重症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する重症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/またはb)基準レベル未満のIGFBP7のレベルは、その患者が軽症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する軽症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。

請求項8

拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常または機能異常が、E’/A’比の増大、左房サイズの増大、左房容積指数の増大、Eピーク速度の増大、Aピーク速度の低減、経僧帽弁E/A比の増大、E/E’比の増大、肺静脈収縮期ピーク速度の低減、肺静脈拡張期ピーク速度の増大、肺静脈収縮拡張比の低減、右室面積の増大、右室収縮期圧RVSP)の増大、右室拡張の増大、右房サイズの増大、軽度を超える僧帽弁逆流、および軽度を超える三尖弁逆流からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。

請求項9

試料が血液、血清または血漿試料であり、および/または患者がヒトである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。

請求項10

方法がさらに、a1)患者からの試料におけるオステオポンチン心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定する工程、ならびにb1)そのレベルを基準レベルと比較する工程を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

請求項11

拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターモニターするための方法であって、a)心不全に罹患しており左室駆出分画(LVEF)が低減している患者からの第1および第2試料におけるバイオマーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、ならびに場合により、オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定し、その際、第2試料は第1試料の後に得られたものである、そしてb)第2試料において測定したバイオマーカーIGFBP7のレベルおよび場合によりその少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを第1試料におけるレベルと比較する工程を含む方法。

請求項12

患者からの第1試料と比較した第2試料におけるIGFBP7および場合により少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルの低下は拡張機能の改善および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの改善の指標となり、および/または患者からの第1試料と比較した第2試料におけるIGFBP7および場合により少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルの増大は拡張機能の劣化および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの劣化の指標となる、請求項11に記載の方法。

請求項13

i)バイオマーカーIGFBP7、および/またはii)IGFBPのレベルを測定できる作用剤、および場合によりiii)オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカー;またはiv)その少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定できる少なくとも1つの作用剤の使用であって、心不全に罹患しており左室駆出分画が低減している患者からの試料において、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する心臓の少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための使用、あるいは心不全に罹患しており左室駆出分画が低減している患者からの第1および第2試料において、拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターをモニターするための使用。

請求項14

a)バイオマーカーIGFBP7に特異的に結合する作用剤、ならびに場合によりオステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定できる作用剤(単数または複数)を含む分析ユニットであって、心不全に罹患している患者であって左室駆出分画が低減している対象からの試料においてバイオマーカー(単数または複数)のレベルを測定するために適合させたユニット;b)測定したレベル(単数または複数)を基準レベル(単数または複数)と比較し、それにより拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断またはグレーディングするための分析ユニット(または評価ユニット)であって、基準レベル(単数または複数)を備えたデータベースおよび比較を実施するためのアルゴリズムを含むユニットを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実施するためのデバイス

請求項15

作用剤がバイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項13に記載の使用または請求項14に記載のデバイス。

技術分野

0001

本発明は、拡張機能障害、または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための方法に関する。この方法は、心不全罹患している患者において、IGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベル、ならびに場合により少なくとも1つのさらなるマーカーのレベルを測定し、そのレベルを基準レベルと比較することを含む。さらに、心不全に罹患している患者において拡張機能モニターするための方法を考慮する。本発明は、本発明の方法を実施するために適合させたキットおよびデバイス包含する。

背景技術

0002

心不全(HF)を伴なう患者のケアのためのバイオマーカーの使用は著しく拡大した。B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびそれのアミノ末端開裂均等物(NT−proBNP)を含めたナトリウム利尿ペプチド(NP)は、罹患している患者の診断、予後および管理のために現在広く用いられている(Yancy et al., 2013ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure: A report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines,Circulation, 2013; 128:e240-319)。BNPおよびNT−proBNPに続いて、広範な新規バイオマーカーが調べられており、それぞれHFの複雑な病態生理を伴なう患者の追加評価のために有望な可能性をもつ。これに関して、心臓バイオマーカーの濃度とそれらが放出される潜在的な心血管病態生理学的プロセスとの機構関連性をより良く理解するかなりの努力がなされてきた。

0003

ナトリウム利尿ペプチドは左室(LV)の拡張および収縮両機能を含めて心血管の構造および機能の広範囲の異常と関連をもつことが見出された(Tschope et al., The role ofNT-proBNP in the diagnostics of isolated diastolic dysfunction: Correlation with echocardiographic and invasive measurements, Eur Heart J. 2005;26:2277-2284, Weiner et al., Improvement in structural and functional echocardiographic parameters during chronic heart failure therapy guided bynatriuretic peptides: Mechanistic insights from the proBNP outpatient tailored chronic heart failure (protect) study, Eur J Heart Fail. 2013;15:342-351, Yu et al., Diastolic dysfunction and natriuretic peptides in systolic heart failure. Higher ANP and BNP levels are associated with the restrictive filling pattern, Eur Heart J. 1996;17:1694-1702)。後者に関連して、異常な拡張機能の同定および重症度グレーディングは複雑であり、この試みで幾つかの心エコー検査査定された(Nagueh et al., Recommendations for the evaluation of left ventricular diastolic function by echocardiography, J Am Soc Echocardiogr. 2009;22:107-133)。HFでは拡張機能障害のためナトリウム利尿ペプチドが増加するが、それらはこれに関連して全く非特異的であり(Daniels et al., Natriuretic peptides, J Am Coll Cardiol. 2007;50:2357-2368)、よってそれらの適用性は制限される。したがって、異常な拡張機能の診断およびグレーディングを支援するのに主として有用なバイオマーカー(単数または複数)があれば、臨床実務においてきわめて価値があるであろう。

0004

インスリン様増殖因子軸はHFにおける転帰予測子であることが以前に見出された(Watanabe et al., Insulin-like growth factor axis (insulin-like growth factor-i/insulin-like growth factor-binding protein-3) as a prognostic predictor of heart failure: Association with adiponectin, Eur J Heart Fail. 2010;12:1214-1222)。インスリン様増殖因子結合タンパク質7(insulin-like growth factor-binding protein 7)(IGFBP7)は特に、心肥大動物モデルおよび心不全のヒト組織プロテオーム研究および情報科学研究によって有望な新規HFマーカーとして最近同定された(Chugh et al., Pilot study identifying myosin heavy chain 7, desmin, insulin-like growth factor 7, and annexin a2 as circulating biomarkers of human heart failure, Proteomics, 2013;13:2324-2334)。IGFBP7は主に心肥大と関連し、HFにおいて高レベル発現したが、正常血清には発現しなかった。IGFBP7は脈管系にも発現するように思われ、おそらく血管形成を調節しているのであろう(van Breevoort et al., Proteomic screen identifies IGFBP7 as a novel component of endothelial cell-specific weibel-palade bodies, J Proteome Res. 2012;11:2925-2936)。

0005

心筋拡張機能障害は、心筋収縮機能障害と対比して異なるタイプの心不全である。心不全(HF)患者を拡張機能障害の処置のために個別かつ具体的に層別化する必要がある。拡張機能障害の処置のために幾つかの新規薬物が開発中である:LCZ696(Novartis 第III相)、シルデナフィル(Sildenafil)、スピロノラクトン(Spironolactone)、アナキンラ(Anakinra)、HISDN

0006

拡張機能障害の診断には時間およびコストがかかる。イメージング手段による機能および構造の分類が必要である。
最近の刊行物バイオマーカーレベルの増大と拡張機能障害の関連性を扱っている(Circulating biomarkers in patients with heart failure and preserved ejection fraction. O’Meara et al., Curr Heart Fail Rep 10, 350-358, 2013)。

0007

Dinhらは、正常な駆出分画(ejection fraction)を伴なうHF患者においてIGFBP−7を分析している(Abstract P1288: Serum insulin like growth factor-i and its binding protein-7: novel promising biomarker in heart failure with preserved ejection fraction. Clinical Research in Cardiology; 101, 2012(Supplement 1))。

0008

Motiwalaらは、左室収縮機能障害を伴なう患者においてIGFBP7の連続測定を予測子として使用できることを開示している(JACC, 2013, 61(10), E565; Motiwala et al. J. of Cardiovasc. Trans. Res. (2014) 7:250-261も参照されたい)。

0009

US2010/0285491には、心不全の査定におけるIGFBP−7の使用が開示されている。さらにそれには、HFに罹患している患者のための治療計画の選択にマーカーIGFBP−7を使用できることが開示されている
WO 2012/025355には、初期心不全を伴なう患者におけるIGFBP7の決定が開示されている。

0010

WO 2014/040759には、正常な左室駆出分画を伴なう患者における予測子としてIGFB7を使用できることが開示されている。
WO 2009/047283には、BNP、cTnT、および少なくとも1つの炎症マーカーオステオポンチン(OPN)、GDF−15、CRPを測定することにより心筋梗塞後の対象のリモデリングプロセスにどの処置または組合わせ処置を適用すべきか診断する方法が記載されている。それには、≧500pg/mlのレベルのオステオポンチンがACE阻害薬アンギオテンシン受容体アンタゴニストおよびアルドステロンアンタゴニストについての指標として記載されている。

0011

WO 2010/124821には、心不全を査定するためにエンドスタチンを測定できることが開示されている。
増殖分化因子15(growth-differentiation factor-15)(GDF−15)は、トランスフォーミング増殖因子−βサイトカインスーパーファミリーメンバーである。GDF−15は心血管事象の強力な予測子および心血管合併症の指標として記載されている(Brown, D. A. et al., 2002 The Lancet, 359: 2159-2163; US2003/0232385; Kempf, 2006,Circ Res 98: 351-360)。Kempfらは、慢性心不全を伴なう患者においてGDF−15の循環レベルがCHFの重症度と関連があり、死亡リスク予測することを示した(Clinical Chemistry 53:2; 284-291 (2007); Am Coll Cardiol, 2007; 50:1054-1060)。

0012

WO 2012/025355には、アルドステロンアンタゴニスト、たとえばスピロノラクトンの投与を受けている心不全患者における、療法モニタリングおよび療法適合のためのトロポニンおよびGDF−15の検出をベースとする方法が開示されている。

0013

WO 2010/0070411には、GDF−15、NT−proANP、NT−proBNPおよび心筋トロポニンの検出をベースとする、心不全に罹患している見掛け上安定な対象をモニタリングする方法が開示されている。

0014

Kubo et al. 2011 (Circulation J, 75, 919-926)には、肥大性心筋症に罹患している患者における臨床悪化に関するBNPおよびトロポニンをベースとする検出ベースのリスク予測が開示されている。査定した患者の多くは心不全に罹患していた。

0015

Fonarow et al. 2008 (Am J Cardiol, 101, 231-237)には、心不全に罹患している患者におけるBNPおよびトロポニンの検出をベースとする死亡リスク予測が開示されている。

0016

WO 2011/012268には、心不全を査定するための個体から得られた体液試料におけるミーメカンの使用が開示されている。それはさらに、HFに罹患している患者のための治療計画の選択における、マーカーであるミーメカンの使用に関する。

0017

US2010/0285491
WO 2012/025355
WO 2014/040759
WO 2009/047283
WO 2010/124821
US2003/0232385
WO 2010/0070411
WO 2011/012268

先行技術

0018

Yancy et al., 2013ACCF/AHA Guideline for the Management of Heart Failure: A report of the American College of Cardiology Foundation/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines,Circulation, 2013; 128:e240-319
Tschope et al., The role ofNT-proBNP in the diagnostics of isolated diastolic dysfunction: Correlation with echocardiographic and invasive measurements, Eur Heart J. 2005;26:2277-2284
Weiner et al., Improvement in structural and functional echocardiographic parameters during chronic heart failure therapy guided bynatriuretic peptides: Mechanistic insights from the proBNP outpatient tailored chronic heart failure (protect) study, Eur J Heart Fail. 2013;15:342-351
Yu et al., Diastolic dysfunction and natriuretic peptides in systolic heart failure. Higher ANP and BNP levels are associated with the restrictive filling pattern, Eur Heart J. 1996;17:1694-1702
Nagueh et al., Recommendations for the evaluation of left ventricular diastolic function by echocardiography, J Am Soc Echocardiogr. 2009;22:107-133
Daniels et al., Natriuretic peptides, J Am Coll Cardiol. 2007;50:2357-2368
Watanabe et al., Insulin-like growth factor axis (insulin-like growth factor-i/insulin-like growth factor-binding protein-3) as a prognostic predictor of heart failure: Association with adiponectin, Eur J Heart Fail. 2010;12:1214-1222
Chugh et al., Pilot study identifying myosin heavy chain 7, desmin, insulin-like growth factor 7, and annexin a2 as circulating biomarkers of human heart failure, Proteomics, 2013;13:2324-2334
van Breevoort et al., Proteomic screen identifies IGFBP7 as a novel component of endothelial cell-specific weibel-palade bodies, J Proteome Res. 2012;11:2925-2936
Circulating biomarkers in patients with heart failure and preserved ejection fraction. O’Meara et al., Curr Heart Fail Rep 10, 350-358, 2013
Dinh et al. (Abstract P1288: Serum insulin like growth factor-i and its binding protein-7: novel promising biomarker in heart failure with preserved ejection fraction. Clinical Research in Cardiology; 101, 2012(Supplement 1))
Motiwala et al. JACC, 2013, 61(10), E565
Motiwala et al. J. of Cardiovasc. Trans. Res. (2014) 7:250-261
Brown, D. A. et al., 2002 The Lancet, 359: 2159-2163
Kempf, 2006, Circ Res 98: 351-360
Kempf, Clinical Chemistry 53:2; 284-291 (2007)
Kempf, Am Coll Cardiol, 2007; 50:1054-1060
Kubo et al. 2011 (Circulation J, 75, 919-926)
Fonarow et al. 2008 (Am J Cardiol, 101, 231-237)

発明が解決しようとする課題

0019

前記のように、拡張機能障害の査定は高価な機器特殊化されたイメージング法、ならびにイメージ記録および解釈の専門的技術を必要とする。拡張機能障害のための心エコー検査スクリーニングの広範な適用はコスト−対−利益の考慮によって制限されてきた。したがって、信頼性をもって拡張機能障害を査定するために使用できるバイオマーカーが大いに必要とされている。

0020

本発明の基礎となる技術的課題は、前記のニーズに応じる手段および方法を提供することであるとみることができる。

課題を解決するための手段

0021

この技術的課題は特許請求の範囲および以下に説明する態様により解決される。
本発明の基礎となる研究に関連して、IGFBP7は拡張機能障害を査定するための信頼できるバイオマーカーであることが見出された。

0022

したがって、本発明は心不全に罹患している患者において拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を、診断および/またはグレーディングするための方法であって、
a)心不全に罹患している患者からの試料におけるIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベルを測定する;そして
b)a)において測定したIGFBP7のレベルを基準レベルと比較する
工程を含む方法に関する。

0023

本発明の方法は、好ましくは ex vivo 法または in vitro 法である。さらに、それは前記に明白に述べた工程に加えた工程を含むことができる。たとえば、さらなる工程は試料の前処理または本方法により得られた結果の評価に関するものであってもよい。本方法は手動で、または自動操作により支援して、実施することができる。好ましくは、工程(a)および/または(b)を全体としてまたは部分的に自動操作により支援できる;たとえば工程(a)における測定に適したロボット装置およびセンサー装置、あるいは工程(b)におけるコンピューター実装した比較および/またはその比較に基づく査定による。

0024

拡張機能障害および/または少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常は、本発明の方法の工程b)における比較を実施することにより診断/グレーディングされる。したがって、本方法はさらに、工程b)の結果に基づいて拡張機能障害および/または心臓の少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を診断および/またはグレーディングする工程c)を含むことができる。あるいは、本方法はさらに、工程b)の結果に基づいて拡張機能障害に関連する心臓の少なくとも1つの構造異常または機能異常を診断および/またはグレーディングを提供する工程c)を含むことができる。

0025

本発明のある態様において、試料をIGFBP7に特異的に結合する作用剤(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーに特異的に結合するさらなる作用剤(単数または複数))と接触させ、それによりその作用剤とIGFBP7の複合体(および場合により、さらなる作用剤と少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの複合体)を形成させ、形成された複合体(単数または複数)の量を検出し、それによりIGFBP7のレベル(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル)を測定することにより、バイオマーカーIGFBP7(および場合により、以下に記載する少なくとも1つのさらなるバイオマーカー)を測定する。

0026

本発明によれば、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する心臓の少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常が、グレーディングおよび/または診断されるはずである。

図面の簡単な説明

0027

図1:IGFBP7の三分位数(tertile)において示した拡張期パラメーター;A)経僧帽弁ドップラー流(Transmitral Doppler flow)、B)E/E’>15、C)左房容積指数>28mL/m2、およびD)E<8cm/秒。E’<8cm/秒を除くすべてがIGFBP7濃度とより重篤なパラメーターの間に実質的な関連性を示した。
図1:IGFBP7の三分位数(tertile)において示した拡張期パラメーター;A)経僧帽弁ドップラー流(Transmitral Doppler flow)、B)E/E’>15、C)左房容積指数>28mL/m2、およびD)E<8cm/秒。E’<8cm/秒を除くすべてがIGFBP7濃度とより重篤なパラメーターの間に実質的な関連性を示した。
図1:IGFBP7の三分位数(tertile)において示した拡張期パラメーター;A)経僧帽弁ドップラー流(Transmitral Doppler flow)、B)E/E’>15、C)左房容積指数>28mL/m2、およびD)E<8cm/秒。E’<8cm/秒を除くすべてがIGFBP7濃度とより重篤なパラメーターの間に実質的な関連性を示した。
図1:IGFBP7の三分位数(tertile)において示した拡張期パラメーター;A)経僧帽弁ドップラー流(Transmitral Doppler flow)、B)E/E’>15、C)左房容積指数>28mL/m2、およびD)E<8cm/秒。E’<8cm/秒を除くすべてがIGFBP7濃度とより重篤なパラメーターの間に実質的な関連性を示した。
図2:IGFBP7濃度<117.8ng/mLの状態で過ごした期間の関数としての、平均追跡10か月にわたる拡張期パラメーターの変化。117.8ng/mL未満の状態で過ごした期間は、増悪したE/A比、RVSPおよびLAViを発現している者において最低であった(すべてについてP<0.05)。
図3:IGFBP7と拡張期パラメーターの相関性を、適合直線および95パーセント信頼区間を含む散乱プロットとして詳細に示したもの;A)経僧帽弁ドップラー流、B)E/E’、C)肺静脈S/D比、D)左房容積指数(left atrial volume index)(LAVi)、およびE)右室収縮期圧(RVSP)を示す。
図3:IGFBP7と拡張期パラメーターの相関性を、適合直線および95パーセント信頼区間を含む散乱プロットとして詳細に示したもの;A)経僧帽弁ドップラー流、B)E/E’、C)肺静脈S/D比、D)左房容積指数(left atrial volume index)(LAVi)、およびE)右室収縮期圧(RVSP)を示す。
図3:IGFBP7と拡張期パラメーターの相関性を、適合直線および95パーセント信頼区間を含む散乱プロットとして詳細に示したもの;A)経僧帽弁ドップラー流、B)E/E’、C)肺静脈S/D比、D)左房容積指数(left atrial volume index)(LAVi)、およびE)右室収縮期圧(RVSP)を示す。
図3:IGFBP7と拡張期パラメーターの相関性を、適合直線および95パーセント信頼区間を含む散乱プロットとして詳細に示したもの;A)経僧帽弁ドップラー流、B)E/E’、C)肺静脈S/D比、D)左房容積指数(left atrial volume index)(LAVi)、およびE)右室収縮期圧(RVSP)を示す。
図3:IGFBP7と拡張期パラメーターの相関性を、適合直線および95パーセント信頼区間を含む散乱プロットとして詳細に示したもの;A)経僧帽弁ドップラー流、B)E/E’、C)肺静脈S/D比、D)左房容積指数(left atrial volume index)(LAVi)、およびE)右室収縮期圧(RVSP)を示す。

0028

用語“拡張機能障害(diastolic dysfunction)”は当技術分野で周知である。好ましくは、この用語は心室充満障害のため心臓のポンプ機能が低下していることを表わす。よって、この用語は、好ましくは、拡張期における一方または両方の心室の性能低下を表わす。一般的手段で拡張機能障害を診断する方法は当技術分野で周知である(参照:実施例のセクション、またはたとえばShuai et al., Eur J Heart Fail, 2011; 13: 737-745;もしくはSchaefer and Dieterle, Therapeutische Umschau 2011; 68 (2): 81 - 87, もしくはPaulus et al., Eur Heart J (2007) 28 (20): 2539-2550;これらのすべてをそれらの開示内容全体に関して本明細書に援用する)。

0029

拡張期充満パターンによれば、拡張機能障害は下記のようにグレーディングできる(Nishimura et al. Journal of the American College of Cardiology, 1997;30:8-18も参照):
グレード1=正常な充満圧を伴なう弛緩障害パターン
・ 1a=充満圧増大を伴なう弛緩障害パターン
・グレード2=正常パターン
・グレード3=可逆性拘束性パターン
・グレード4=不可逆性拘束性パターン
明細書中で用いる用語“拡張機能障害”には拡張機能障害グレード1、1a、2、3および4が含まれ、特にこの用語には拡張機能障害グレード3および/または4が含まれる(特にNishimuraに定義されるもの;それをその開示内容全体に関して本明細書に援用する)。好ましくは、そのパターンは不可逆性である。

0030

“拡張機能障害に関連する構造異常または機能異常”は当業者に周知である。その異常は拡張機能障害に関連する心臓の異常であることを理解すべきである。好ましくは、異常は実施例のセクション(参照:特に、実施例1、実施例2、または実施例1の表2)におけるIGFBP7レベルの増大(または、ある場合には低減)を伴なう患者におけるパラメーターの増大(または、ある場合にはパラメーターの低減)である。より好ましくは、拡張機能障害に関連する心臓の少なくとも1つの構造異常または機能異常は、実施例のセクションの表2(参照:第1縦列)、特にその表のパートC(“拡張機能およ充満圧推定値”)、または表4に挙げた、パラメーターの増大(または、ある場合には低減)である。よりいっそう好ましくは、異常はそれについての表2のp−値が0.01未満、特に0.005未満である、パラメーターの増大(または低減)である。最も好ましくは、拡張機能障害に関連する構造異常または機能異常は下記のものからなる群から選択される少なくとも1つの異常である:左房サイズの増大(好ましくは、左房上下径の増大)、左房容積指数の増大、Eピーク速度(すなわち、経僧帽弁ドップラーE波速度)の増大、Aピーク速度の低減(すなわち、より低い経僧帽弁ドップラーA波速度)、経僧帽弁(transmitral)E/A比の増大、僧帽弁流入E速度−対−組織ドップラーE’速度比の増大(すなわち、E/E’比の増大)、E’/A’比の増大、肺静脈収縮期ピーク速度の低減、肺静脈拡張期ピーク速度の増大、肺静脈収縮/拡張比の低減、右室面積の増大、右室収縮期圧(RVSP)の増大、右室拡張の増大、右房サイズの増大(好ましくは、右房上下径の増大)、軽度を超える僧帽弁逆流、および軽度を超える三尖弁逆流。パラメーターの説明およびその決定については、実施例のセクション(心エコー検査プロトコル)も参照されたい。さらなる好ましい異常はMcMurray et al. (European Heart Journal (2012) 33, 1787-1847)、またはSpencer et al. (J Am Soc Echocardiogr 2013;26:567-81.)に開示されており、それらを両方ともそれらの開示内容全体に関して本明細書に援用する)。

0031

パラメーター“左房サイズ”および“左房容積指数”は、それぞれ左房(LA)のサイズおよび容積に関するパラメーターである。
好ましくは、LAサイズが約58mmより大きければ、特に約60または約62mmより大きければ、左房サイズ、特に左房径が増大している。実施例2においては、左房サイズをLA径と呼ぶ。

0032

好ましくは、、左房容積指数(LAVi)は、LAViが約28ml/m2より大きければ、特に約32ml/m2より大きければ、または約36ml/ml2より大きければ増大している。実施例2においては、LAViをLA平方(LA square)とも呼ぶ。

0033

パラメーター“Eピーク速度”、“Aピーク速度”、“経僧帽弁E/A比”、“E/E’比”、“E’/A’比”、“肺静脈収縮期ピーク速度”、“肺静脈拡張期ピーク速度”、“肺静脈収縮/拡張比”は、拡張機能についてのパラメーターであり、充満圧の推定値である。E’/A’比は、好ましくは拡張初期後期充満速度比である。

0034

好ましくは、Eピーク速度は、それが約79ミリ秒より大きければ、特に約98または約120ミリ秒より大きければ、増大している。
好ましくは、Aピーク速度は、それが約54ミリ秒より小さければ、特に約44または約36ミリ秒より小さければ、低減している。

0035

好ましくは、経僧帽弁E/A比は、それが約1.8より大きければ、特に約2.25または約3.2より大きければ、増大している。実施例2においては、経僧帽弁E/A比をE/Aと呼ぶ。

0036

好ましくは、E/E’比は、それが約10.8より大きければ、特に約15または約20.2より大きければ、増大している。
好ましくは、E’/A’比は、それが約1.3より大きければ、特に約1.45または約2.54より大きければ、増大している。

0037

好ましくは、肺静脈収縮期ピーク速度は、それが約36ミリ秒より小さければ、特に約32または約26ミリ秒より小さければ、低減している。
好ましくは、肺静脈拡張期ピーク速度は、それが約54ミリ秒より大きければ、特に約60または約76ミリ秒より大きければ、増大している。

0038

好ましくは、肺静脈収縮/拡張比は、それが約1より小さければ、特に約0.49または約0.38より小さければ、低減している。
好ましくは、RVSPは、それが約43mmHgより大きければ、特に約53または約60mmHgより大きければ、増大している。

0039

パラメーター“右房サイズ”は右房パラメーターである。このパラメーターは、それが約48mmより大きければ、特に約54または約60mmより大きければ、増大している。

0040

異常/パラメーターは当技術分野で周知であり、当業者がさらなる労苦なしに査定できる。異常/パラメーターは、たとえば実施例のセクションの記載に従って決定できる。前記に述べた“拡張機能障害”および異常/パラメーターは、Wan et al. JACCVol. 63, No. 5, 2014: 407-16により概説されており、それをその開示内容全体も本明細書に援用する。さらに、本明細書に述べた拡張機能障害および異常はMcMurray et al. および Spencer et al. (前記の引用文献を参照)により記載されている。

0041

本明細書中で用いる用語“少なくとも1つ”は、1または1より多い、たとえば2、3、4などを意味する。よって、1または1より多い異常を診断/グレーディングすることを想定する。ある態様において、用語“少なくとも1つ”は“a”を意味する。

0042

本明細書中で用いる用語“診断する”は、本明細書に述べる患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患しているか否かを査定することを意味する。この用語は、本発明による方法が患者を拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を伴なうとして、あるいはそれらの機能障害または異常を伴なわないとして分類することを示すために用いられる。基準レベルを超えるIGFBP7の(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルを、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常の診断を提供するために使用する。

0043

本明細書中で用いる用語“拡張機能障害をグレーディングする”および/または“拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常または機能異常をグレーディングする”は、好ましくは、その機能障害および/または異常の重症度を査定することに関する。ある態様において、それは軽症型と重症型のその機能障害および/または異常に分類される。

0044

当業者に理解されるように、前記の査定、すなわちグレーディングまたは診断は、通常は診断/グレーディングすべき患者のすべて(すなわち、100%)について正確であることを意図しない。ただし、この用語は統計的に有意部分の患者(たとえば、コホート研究におけるコホート)を同定できることを要求する。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p−値の決定、スチューデントt検定(Student's t-test)、マンホイットニー検定(Mann-Whitney test)などを用いて、当業者がさらなる労苦なしに決定できる。詳細はDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983にみられる。好ましい信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p−値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。より好ましくは、本発明の方法によりある集団の患者のうち少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%を適正に診断/グレーディングすることができる。

0045

本明細書に述べる疾患および/または異常あるいは軽症型または重症型のそれらの疾患および/または異常に“患者が罹患していることを指示する”という句は、そのバイオマーカーのレベルがきわめて価値があるけれども誤りなしの診断ではないことを説明するために用いられる。当業者が認識しているように、多くの疾患において、100%の特異度と同時に100%の感度をもつ生化学的マーカーはない。そのような場合、たとえば疾患/異常におけるIGFBP7の(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカー)のレベルに関する査定は、特定の尤度で、たとえば特定レベルの特異度または特定レベルの感度で行なわれる。当業者は特異度、感度、陽性予測値陰性予測値、基準値または全誤差を計算するために用いる数学的/統計的方法を十分に承知している。

0046

本明細書中で用いる句“診断/査定/グレーディング/モニタリングを提供する”は、患者の試料におけるIGFBP7(および場合により、後記に述べる少なくとも1つのさらなるマーカーの)のレベルに関して得られた情報またはデータを、本明細書中で述べる患者における拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常または機能異常を診断/査定/グレーディング/モニターするために使用することを表わす。情報またはデータは書面、口頭または電子によるものなど、いずれの形態であってもよい。ある態様において、得られた情報またはデータの使用には、通信提示報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配すること(communicating, presenting, reporting, storing, sending, transferring, supplying, transmitting, dispensing)、またはその組合わせが含まれる。ある態様において、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配すること、またはその組合わせは、コンピューティングデバイス分析ユニット、またはその組合わせにより行なわれる。あるさらなる態様において、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配すること、またはその組合わせは、実験または医療専門家により行なわれる。ある態様において、情報またはデータは基準レベルに対するIGFBP7の(および場合により、以下に記載する少なくとも1つのさらなるマーカーの)レベルの比較を含む。ある態様において、情報またはデータは、その患者が本明細書中に述べる疾患/異常について診断/査定/グレーディングされる指標を含む。

0047

本明細書中で述べる“対象”または“患者”は、好ましくは、哺乳動物である。哺乳動物には家畜(たとえば、ウシヒツジネコイヌ、およびウマ)、霊長類(たとえば、ヒトおよび非ヒト霊長類、たとえばサル)、ウサギ、およびげっ歯類(たとえば、マウスおよびラット)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、患者はヒト患者である。用語“対象”、“患者”および“個体”は、本明細書中で互換性をもって使用できる。

0048

本発明によれば、検査すべき患者は心不全に罹患しているはずである。用語“心不全”は当技術分野で周知である。本明細書中で用いるこの用語は、好ましくは、当業者に知られている心不全の症状を随伴する心臓の機能障害に関する。したがって、患者は好ましくは症候性心不全に罹患している。したがって、患者は進行性心不全に罹患しているであろう。本明細書中で用いる用語“心不全”は、特にACC/AHA分類のC期および/またはD期あるいはNYHA分類のクラスIIIおよび/またはIVを表わすものとする。これらの病期において、患者は心不全の典型的な症状を示し、すなわち患者は明らかに健康ではない。心不全を伴ない、C期またはD期に分類された患者は、その心筋に永続的な不可逆性の構造変化および/または機能変化を生じており、これらの変化の結果、完全な健康回復は不可能である。

0049

ACC/AHA分類は、American College of Cardiologyとthe American Heart Associationが開発した心不全分類である(参照: J. Am. Coll. Cardiol. 2001;38;2101-2113, updated in 2005, 参照:J. Am. Coll. Cardiol. 2005;46;e1-e82)。4つの期A、B、CおよびDが規定される。AおよびB期はHF(心不全)ではないが、“実際に”HFを発症する前に早期に患者を同定するのに役立つと考えられる。AおよびB期の患者はHF発症のリスク因子をもつ者と定義するのが最良である。たとえば、冠動脈疾患高血圧症または糖尿病を伴ない、まだ左室(LV)機能障害、肥大または幾何学的房室ひずみを呈していない患者はA期とみなされ、これに対し無症候性であるけれどもLV肥大(LVH,心室の壁が肥厚する現象)および/またはLV機能障害を呈している患者はB期と表示されるであろう。次いでC期は、現在または過去の潜在的な構造性心疾患に関連するHFの症状を伴なう患者(HFを伴なう患者の大部分)を表わし、D期は真に難治性のHFを伴なう患者を表わす。

0050

前記に述べたように、検査すべき患者は、好ましくはACC/AHA分類による心不全CもしくはD期(前記の引用文献を参照)、および/またはNYHA分類による心不全NYHAクラスIIIもしくはIVに罹患しているであろう。よって、患者はより進行した形態の心不全に罹患しているであろう。同様に好ましくは、本発明に従って検査すべき患者は、約800pg/mlより大きい、より好ましくは約1000pg/mlより大きい、最も好ましくは約1200pg/mlより大きい血清または血漿NT−proBNPレベルをもつ。

0051

本明細書中で述べる心不全は、いかなる原因の心不全であってもよい。ある態様において、心不全は左室収縮機能障害によるもの(特に、左室収縮機能障害により引き起こされるもの)である。したがって、心不全に罹患している患者は収縮機能障害、特に左室収縮機能障害にも罹患している。用語“収縮機能障害”は当技術分野で周知である。本明細書中で用いるこの用語は、好ましくは心室の収縮性低下による心臓のポンプ機能低下を表わす。

0052

本明細書中で述べる心不全に罹患している患者は、特に、左室駆出分画(LVEF)が低減しているであろう。用語“左室駆出分画”は当技術分野で周知である。LVEFが低減している患者は、好ましくは50%未満、より好ましくは45%未満、最も好ましくは40%未満のLVEFをもつ。さらに、患者は30%未満のLVEFをもつことが想定される。

0053

しかし、本発明のある態様において、患者は保存されたLVEF(たとえば、50%より大きい)をもつ可能性がある。患者が保存されたLVEFをもつ場合、患者は好ましくはACC/AHA分類による心不全A、BもしくはC期および/またはNYHA分類による心不全NYHAクラスI、IIもしくはIIIに罹患している。保存されたLVEFをもつ患者は、好ましくは50%より大きい、より好ましくは55%より大きい、または最も好ましくは60%より大きいLVEFをもつ。患者が保存されたLVEFをもつ場合、たとえば実施例2に述べるパラメーターを診断またはグレーディングすることが想定される。

0054

LVEFを査定する方法は当技術分野で周知である。ある態様において、LVEFはガイドラインの記載に従って決定できる;前記の引用文献を参照されたい(McMurray, たとえば1800頁以下を参照)。

0055

ある態様において、患者には電気除細動器(cardioverter-defibrillator)が埋め込まれている。
拡張機能障害をグレーディングする場合、または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常または機能異常をグレーディングする場合、検査すべき患者は拡張機能障害または拡張機能障害に関連する少なくとも1つの構造異常または機能異常に罹患しているであろう。

0056

好ましくは、本発明の方法、使用、キットおよびデバイスによる患者は左室肥大を伴なう(すなわち、それに罹患している)であろう。よって、患者は増大した左室重量をもつであろう。

0057

用語“左室肥大”は当技術分野で周知である。左室肥大についての詳細な総説は、たとえば標準的なテキストブック中に見ることができる(参照: Swamy Curr Cardiol Rep (2010) 12:277-282)。LVHは心電図検査、心エコー検査、または心臓の磁気共鳴イメージングMRI)により検出できる。好ましくは、LVHは心エコー検査により検出される。さらに、LVHの診断のための基準は当技術分野で周知である(Mancia et al., European Heart J. 2007, 28: 1462, Die Innere Medizin: Referenzwerk fur den Facharzt - Wolfgang Gerok - 2007, page 293., Swamy Curr Cardiol Rep (2010) 12:277-282)。

0058

LVHの診断には、好ましくは隔壁径、左室後壁厚および拡張終期径の測定が含まれ、当技術分野で既知公式に従って左室重量を計算する。LVHの診断および左室重量指数の決定のための特に好ましい基準は、たとえばガイドライン(Mancia et al., European Heart J. 2007, 28: 1462)に開示されている。

0059

好ましくは、コーネル電位基準(Cornell voltage criteria)、コーネル積基準(Cornell product criteria)、ソコロー−リオン電位基準(Sokolow-Lyon voltage criteria)、ロムヒルト−エススポインスコアステム(Romhilt-Estes point score system)を用いる(Mancia et al., European Heart J. 2007, 28: 1462)。

0060

本明細書中で用いる用語“左室肥大(left ventricular hypertrophy)”(略号“LVH”)は、好ましくは心室壁の肥厚に関する。LVHは、好ましくは、心臓に対する仕事量慢性的な増大に対する応答である。LVHは動脈性高血圧症に罹患している患者にみられ、処置を必要とする疾患である。

0061

好ましくは、男性患者は、体表面積に対する左室重量の比が112g/m2より大きければ、あるいはより好ましくはその比が125g/m2より大きければ、LVHに罹患している。好ましくは、女性患者は、体表面積に対する左室重量の比が89g/m2より大きければ、あるいはより好ましくはその比が110g/m2より大きければ、LVHに罹患している。(参照:たとえば、DraznerMH, Dries DL, Peshock RM, Cooper RS, Klassen C, Kazi F, Willett D, Victor RG. Left ventricular hypertrophy is more prevalent in blacks than whites in the general population: the Dallas Heart Study. Hypertension. 2005;46:124 -129)。

0062

本発明のある態様において、LVHに罹患している患者は126g/m2より大きい左室重量指数をもつ。本発明の他の態様において、患者は150g/m2より大きい左室重量指数をもつ。

0063

ある態様において、本発明の状況における患者は腎機能障害をもたない。好ましくは、患者は腎不全に罹患しているべきではなく、特に患者は急性慢性および/または末期の腎不全に罹患しているべきではない。さらに、患者は、好ましくは腎性高血圧症に罹患しているべきではない。患者が腎機能障害を示すかどうかを査定する方法は当技術分野で周知である。腎障害は既知の適切であると思われるいずれかの手段により診断できる。特に、腎機能糸球体濾過速度(glomerular filtration rate)(GFR)により査定できる。たとえば、GFRはコックグロフト・ゴールト(Cockgroft-Gault)式またはMDRD式(Levey 1999, Annals of Internal Medicine, 461-470)により計算できる。GFRは、単位時間当たり腎糸球体毛細血管からボーマン嚢内へ濾過される流体体積である。臨床的に、これは腎機能を判定するためにしばしば用いられる。GFRは最初は、イヌリンを血漿に注入することにより推定された(GFRは決して決定できず、すべての計算値はコックグロフト・ゴールト式またはMDRD式から誘導されたものであって推定値を与えるにすぎず、“真の”GFRではない)。イヌリンは糸球体濾過後に腎臓により再吸収されないので、それの排出速度は糸球体フィルターを通る水および溶質濾過速度正比例する。しかし、臨床実務においてはGFRを測定するためにクレアチニンクリアランスが用いられる。クレアチニン体内で合成される内因性分子であり、それは糸球体によって容易に濾過される(ただし、ごく少量が尿細管により分泌もされる)。したがって、クレアチニンクリアランス(CrCl)はGFRの近似値である。GFRは一般にミリリットル/分(mL/分)で記録される。男性についてのGFRの正常範囲は97〜137mL/分であり、女性についてのGFRの正常範囲は88〜128ml/分である。よって、腎機能障害を示さない患者のGFRは特にこの範囲内にあるものとする。さらに、その患者は好ましくは0.9mg、/dl未満、より好ましくは1.1mg、/dl未満、最も好ましくは1.3mg、/dl未満の血中クレアチニンレベル(特に、血清クレアチニンレベル)をもつ。

0064

用語“試料”は、体液の試料、分離細胞の試料、または組織もしくは臓器由来する試料を表わす。体液の試料は周知の手法により得ることができ、血液、血漿、尿、リンパ液喀痰腹水、もしくは他のいずれかの身体分泌液、またはその派生物を含む。組織または臓器の試料は、いずれかの組織または臓器から、たとえば生検により得ることができる。分離細胞は体液または組織もしくは臓器から、遠心分離またはセルソーティングなどの分離法により得ることができる。たとえば、細胞、組織または臓器の試料は、バイオマーカーを発現または産生する細胞、組織または臓器から得ることができる。試料は凍結したもの、新鮮なもの、固定したもの(たとえば、ホルマリン固定したもの)、遠心したもの、および/または包埋したもの(たとえば、パラフィン包埋したもの)などであってもよい。細胞試料には、もちろん、試料におけるマーカーのレベルを査定する前に多様な周知の採集調製法および貯蔵法(たとえば、核酸および/またはタンパク質の抽出、固定、貯蔵、凍結、限外濾過濃縮蒸発、遠心分離など)を施すことができる。同様に、生検試料に採集後調製法および貯蔵法、たとえば固定を施すこともできる。

0065

好ましい態様において、試料は血液、血漿または血清の試料である。
バイオマーカーであるインスリン様増殖因子結合タンパク質7(IGFBP7)は当技術分野で周知である。このバイオマーカーは、細胞の増殖および分化に際して重要な役割を果たすインスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP)系に属する。この系は、2種類のリガンドIGF−IおよびIGF−II、2種類の受容体1型および2型IGF受容体、ならびに1995年以後は6種類のIGF結合タンパク質(IGFBP) IGFBP−1〜−6を含む(Jones, J.I., et al., Endocr. Rev. 16 (1995) 3-34)。最近、IGFBPファミリーは、IGFBPとの有意の構造類似性をもつIGFBP−関連タンパク質(IGFBP-related protein)(IGFBP−rP)を含むように拡大された(Hwa, V., et al., Endocr. Rev 20 (1999) 761-787)。よって、IGFBPスーパーファミリーには、IGFに対して高い親和性をもつ6種類の一般的IGFBP、ならびにIGFBPの保存されたアミノ末端ドメイン共有するだけでなくIGFおよびインスリンに対してある程度の親和性をも示す少なくとも10種類のIGFBP−rPが含まれる。IGFBP−rPは、多様な細胞機能、たとえば細胞増殖、細胞の接着および移動、ならびに細胞外マトリックスの合成を制御する一群システインリッチタンパク質である。さらに、これらのタンパク質は、組織の増殖および分化、生殖、血管形成、創傷修復、炎症、繊維形成、ならびに腫瘍形成のような生物学的プロセス関与している可能性がある(Hwa, V., et al., Endocr. Rev 20 (1999)761-787)。

0066

IGF結合タンパク質7(=IGFBP7)は、内皮細胞血管平滑筋細胞線維芽細胞、および上皮細胞により分泌されることが知られている30−kDaのモジュール糖タンパク質である(Ono, Y., et al., Biochem Biophys Res Comm 202 (1994) 1490-1496)。その文献中で、この分子はFSTL2;IBP 7;IGF結合タンパク質関連タンパク質I;IGFBP 7;IGFBP 7v;IGFBP rPl;IGFBP7;IGFBPRP1;インスリン様増殖因子結合タンパク質7;インスリン様増殖因子結合タンパク質7前駆体;MAC25;MAC25タンパク質;PGI2刺激因子;およびPSFまたはプロスタサイクリン刺激因子とも呼ばれている。ノーザンブロット試験によりこの遺伝子は、心臓、脳、胎盤肝臓骨格筋、および膵臓を含めたヒト組織に広く発現していることが明らかになった(Oh, Y., et al., J. Biol. Chem. 271 (1996) 30322-30325)。

0067

IGFBP7は最初に、正常な軟髄膜細胞および哺乳動物上皮細胞にそれらの対応する腫瘍細胞と比較して差示的発現する遺伝子として同定され、髄膜腫関連cDNA(meningioma-associated cDNA)(MAC25)と命名された(Burger, A.M., et al., Oncogene 16 (1998) 2459-2467)。発現したタンパク質は、腫瘍由来接着因子(のちにアンギオモジュリンと再命名)として(Sprenger, C.C., et al., Cancer Res 59 (1999) 2370-2375)、またプロスタサイクリン刺激因子として(Akaogi, K., et al., Proc Natl Acad Sci USA 93 (1996) 8384-8389)、独立して精製された。それはさらに、T1Al2、すなわち乳癌においてダウンレギュレートされる遺伝子として報告された(StCroix, B., et al., Science 289 (2000) 1197-1202)。

0068

好ましくは、用語“IGFBP7”は、ヒトIGFBP7を表わす。そのタンパク質の配列は当技術分野で周知であり、たとえばGenBank(NP_001240764.1)を介して入手できる。本発明に用いるIGFBP7は、好ましくは特定のIGFBP7ポリペプチドバリアントをも包含する。

0069

本明細書中で述べるバイオマーカー、特にポリペプチドのレベルを“測定する”という用語は、本明細書のいずれかの箇所に記載する適宜な検出方法を用いてバイオマーカーを定量して、試料におけるバイオマーカーのレベルを決定することを表わす。用語“測定する”と“決定する”は本明細書中で互換性をもって使用できる。同じことが用語“レベル”と“量”にも適用される。

0070

ある態様において、バイオマーカーのレベルは、試料を各マーカーに特異的に結合する検出剤と接触させ、それにより検出剤とそのマーカーの間に複合体を形成させ、複合体のレベルを検出し、それによりそのマーカーのレベルを測定することにより測定される。

0071

本明細書中に述べるバイオマーカーは、当技術分野で一般に知られている方法を用いて検出できる。検出方法には、一般に試料におけるバイオマーカーのレベルを定量するための方法(定量法)が含まれる。好ましくは、バイオマーカーはポリペプチドである。下記の方法のいずれがバイオマーカーの定性検出および/または定量検出に適切であるかは当業者に一般に知られている。市販のウェスタン法、およびイムノアッセイ、たとえばELISARIA蛍光ベースのイムノアッセイを用いて、試料をたとえばタンパク質について簡便にアッセイすることができる。バイオマーカーを検出するためのさらなる適切な方法には、そのペプチドまたはポリペプチドに特異的な物理的または化学的特性、たとえばそれの厳密な分子質量またはNMRスペクトルを測定することが含まれる。それらの方法には、たとえばバイオセンサー、イムノアッセイに連携した光学デバイスバイオチップ分析デバイス、たとえば質量分析計NMR分析計、またはクロマトグラフィーデバイスが含まれる。さらに、方法にはマイクロプレートELISAベースの方法、全自動またはロボット式イムノアッセイ(たとえばElecsys(商標分析器で実施できる)、CBA(酵素コバルト結合アッセイ(Cobalt Binding Assay),たとえばRoche−Hitachi(商標) 分析器で実施できる)、およびラテックス凝集アッセイ(たとえばRoche−Hitachi(商標) 分析器で実施できる)が含まれる。

0072

本明細書中で述べるバイオマーカータンパク質の検出には、そのようなアッセイフォーマットを用いる広範囲のイムノアッセイ法を利用できる;たとえば、U.S. Pat. No.4,016,043、4,424,279、および4,018,653を参照。これらには、非競合タイプの単一サイト(single-site)および2サイト(two-site)または“サンドイッチ”アッセイ、ならびに伝統的な競合結合アッセイが含まれる。これらのアッセイには、ターゲットバイオマーカーへの標識抗体直接結合も含まれる。

0073

サンドイッチアッセイは最も有用な慣用されるイムノアッセイのひとつである。
電気化学発光現象を測定するための方法は周知である。そのような方法は特殊な金属錯体酸化によって励起状態になり、そこから基底状態減衰して電気化学発光を放出する能力を利用する。総説については、Richter, M.M., Chem. Rev. 104 (2004) 3003-3036を参照されたい。

0074

バイオマーカーは、下記を含めた一般に知られている方法により検出することもできる:磁気共鳴分光法(NMR分光法)、ガスクロマトグラフィー質量分析GC−MS)、液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)、高速および超高速HPLCなどのHPLC、たとえば逆相HPLC、たとえば二重UV波長検出を備えたイオン対HPLC、レーザー誘導蛍光検出を備えたキャピラリー電気泳動アニオン交換クロマトグラフィー、および蛍光検出、薄層クロマトグラフィー

0075

好ましくは、本明細書中で述べるバイオマーカーのレベルの測定は、下記の工程を含む:(a)その強度がペプチドまたはポリペプチドのレベルの指標となる細胞応答を誘発できる細胞を、そのペプチドまたはポリペプチドと、適宜な期間接触させる、(b)その細胞応答を測定する。細胞応答を測定するために、試料または処理済み試料を、好ましくは細胞培養物に添加し、内部または外部細胞応答を測定する。細胞応答には、測定可能レポーター遺伝子発現、または物質、たとえばペプチド、ポリペプチドもしくは小分子の分泌を含めることができる。その発現または物質は、そのペプチドまたはポリペプチドのレベルに相関する強度信号を発生すべきである。

0076

同様に好ましくは、ペプチドまたはポリペプチドのレベルの測定は、試料中のペプチドまたはポリペプチドから得られる特異的な強度信号を測定する工程を含む。前記のように、そのような信号は、質量スペクトルにおいて観察されるそのペプチドもしくはポリペプチドに特異的なm/z変量で観察される信号強度、またはそのペプチドもしくはポリペプチドに特異的なNMRスペクトルであってもよい。

0077

ペプチドまたはポリペプチドのレベルの測定は、好ましくは下記の工程を含むことができる:(a)ペプチドを特異的な結合剤と接触させる、(b)(場合により)結合していない結合剤を除去する、(c)結合した結合剤、すなわち工程(a)で形成された、結合剤の複合体のレベルを測定する。好ましい態様によれば、それらの接触、除去および測定の工程は、本明細書に開示するシステムの分析ユニットにより実施できる。ある態様によれば、それらの工程は、そのシステムの単一分析ユニットにより、あるいは互いに作動可能な状態で連絡した1より多い分析ユニットにより実施できる。たとえば、特定の態様によれば、本明細書に開示するそのシステムは、接触と除去の工程を実施するための第1分析ユニット、および輸送ユニット(たとえば、ロボットアーム)により第1分析ユニットに作動可能な状態で連絡した、測定工程を実施する第2分析ユニットを含むことができる。

0078

結合した結合剤、すなわち結合剤、または結合剤/ペプチド複合体は、強度信号を発生するであろう。本発明による結合には、共有結合非共有結合の両方が含まれる。本発明による結合剤は、本明細書に記載するペプチドまたはポリペプチドに結合するいずれかの化合物、たとえばペプチド、ポリペプチド、核酸または小分子であってもよい。好ましい結合剤には、抗体、核酸、ペプチドまたはポリペプチド、たとえば前記ペプチドまたはポリペプチドに対する受容体または結合パートナー、およびそのフラグメントであって前記ペプチドに対する結合ドメインを含むもの、ならびにアプタマー、たとえば核酸アプタマーまたはペプチドアプタマーが含まれる。そのような結合剤を調製する方法は当技術分野で周知である。たとえば、適宜な抗体またはアプタマーの同定および製造は業者によっても提供される。当業者は、そのような結合剤のより高い親和性または特異性を備えた誘導体を開発する方法を熟知している。たとえば、核酸、ペプチドまたはポリペプチドにランダム変異を導入することができる。これらの誘導体を次いで当技術分野で既知のスクリーニング法、たとえばファージディスプレイ法に従って結合について試験することができる。本明細書中で述べる抗体には、ポリクローナル抗体モノクローナル抗体の両方、およびそのフラグメントであって抗原またはハプテンを結合できるもの、たとえばFv、FabおよびF(ab)2フラグメントが含まれる。本発明には、一本鎖抗体、および目的とする抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体アミノ酸配列がヒトアクセプター抗体の配列と結合したヒト化ハイブリッド抗体も含まれる。ドナー配列は通常は少なくともドナー抗原結合性アミノ酸残基を含むであろうが、ドナー抗体の他の構造関連および/または機能関連アミノ酸残基も含むことができる。そのようなハイブリッドは当技術分野で周知である幾つかの方法により製造できる。好ましくは、結合剤または作用剤は前記のペプチドまたはポリペプチドに特異的に結合する。本発明による特異的結合は、リガンドまたは作用剤が、分析すべき試料中に存在する他のペプチド、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合(と“交差反応”)すべきではないことを意味する。好ましくは、特異的に結合されるペプチドまたはポリペプチドは、他のいずれかのペプチドまたはポリペプチドより少なくとも3倍高い、より好ましくは少なくとも10倍高い、よりさらに好ましくは少なくとも50倍高い親和性で結合されるべきである。非特異的結合は、たとえばウェスタンブロット上でのそれのサイズにより、または試料中におけるそれの相対的に高い存在量により、それをなお明白に識別および測定できれば許容できる。結合剤の結合は、当技術分野で既知であるいずれかの方法により測定できる。好ましくは、その方法は半定量的または定量的である。ポリペプチドまたはペプチドを決定するのに適したさらなる手法を以下に記載する。

0079

結合剤の結合は直接的に、たとえばNMRまたは表面プラズモン共鳴により測定できる。結合剤の結合の測定は、好ましい態様によれば、本明細書に開示するシステムの分析ユニットにより実施できる。その後、測定した結合のレベルを本明細書に開示するシステムのコンピューティングデバイスにより計算することができる。結合剤が目的ペプチドまたはポリペプチドの酵素活性基質としても作用するのであれば、酵素反応生成物を測定できる(たとえば、プロテアーゼのレベルは開裂した基質のレベルを、たとえばウェスタンブロットで測定することにより測定できる)。あるいは、結合剤が酵素特性そのものを示す可能性があり、“結合剤/ペプチドまたはポリペプチド”複合体、すなわちそれぞれペプチドまたはポリペプチドが結合した結合剤を、強度信号の発生により検出できる適宜な基質と接触させることができる。酵素反応生成物を測定するためには、好ましくは基質のレベルは飽和状態である。反応前に基質を検出可能な標識で標識することもできる。好ましくは、試料を適宜な期間、基質と接触させる。適宜な期間とは、検出可能なレベル、好ましくは測定可能なレベルの生成物が生成するのに必要な時間を表わす。生成物のレベルを測定する代わりに、特定の(たとえば、検出可能な)レベルの生成物が出現するのに必要な時間を測定することができる。第3に、結合剤の検出および測定を可能にする標識に結合剤を共有結合または非共有結合させることができる。標識化直接法または間接法により行なうことができる。直接標識化は標識を結合剤に直接に(共有または非共有)結合させることを伴なう。間接標識化は、二次結合剤を第1結合剤に(共有または非共有)結合させることを伴なう。二次結合剤は第1結合剤に特異的に結合すべきである。その二次結合剤は、適切な標識と結合させることができ、および/または二次結合剤に結合する三次結合剤のターゲット(受容体)であってもよい。信号を増強するために二次、三次、またはさらに高次の結合剤の使用がしばしば採用される。適切な二次およびより高次の結合剤には、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジンビオチン系(Vector Laboratories,Inc.)が含まれる。結合剤または基質に当技術分野で既知である1以上のタグを“タグ付け”することもできる。その際、そのようなタグはより高次の結合剤のターゲットであってもよい。適切なタグには、ビオチン、ジゴキシゲニン、His−タグ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼFLAG、GFP、myc−タグ、インフルエンザウィルスヘマグルチニン(HA)、マルトース結合タンパク質などが含まれる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは好ましくはN−末端および/またはC−末端にある。適切な標識は適宜な検出法により検出できるいずれかの標識である。一般的標識には、金粒子ラテックスビーズアクリダン(acridan)エステルルミノールルテニウム、酵素活性標識、放射性標識磁性標識(たとえば、常磁性および超常磁性標識を含む“磁性ビーズ”)、および蛍光標識が含まれる。酵素活性標識には、たとえば西洋わさびペルオキシダーゼアルカリホスファターゼベータガラクトシダーゼルシフェラーゼ、およびその誘導体が含まれる。検出に適した基質には、ジ−アミノベンジジン(DAB)、3,3’−5,5’−テトラメチルベンジン、NBT−BCIP(4−ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート,Roche Diagnosticsから既成原液として入手できる)、CDP−Star(商標)(Amersham Bio−sciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が含まれる。適切な酵素−基質の組合わせは有色反応生成物、蛍光または化学発光を生じることができ、それらを当技術分野で既知の方法に従って測定できる(たとえば、感光性フィルムまたは適切なカメラシステムを使用)。酵素反応の測定について、前記に挙げた基準を同様に適用できる。一般的な蛍光標識には、蛍光性タンパク質(たとえば、GFPおよびそれの誘導体)、Cy3、Cy5、テキサスレッドフルオレセイン、およびアレクサ(Alexa)色素(たとえば、Alexa 568)が含まれる。さらなる蛍光標識を、たとえばMolecular Probes(オレゴン州)から入手できる。蛍光標識としての量子ドットの使用も考慮される。放射性標識は既知の適宜な方法、たとえば感光性フィルムまたはホスホイメージャー(phosphor imager)により検出できる。

0080

ペプチドまたはポリペプチドのレベルは、同様に好ましくは、下記に従って決定できる:(a)前記に特定したペプチドまたはポリペプチドに対する結合剤を含む固体支持体を、そのペプチドまたはポリペプチドを含む試料と接触させる、そして(b)支持体に結合したペプチドまたはポリペプチドのレベルを測定する。好ましくは核酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体およびアプタマーからなる群から選択される結合剤は、好ましくは固体支持体上に固定化された形態で存在する。そのような固体支持体を作成するための材料は当技術分野で周知であり、特に市販のカラム材料ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁性ビーズ、コロイド金属粒子ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロースストリップ、膜、シートデュラサイト、反応トレーウェルおよび壁、プラスチックチューブなどを含む。結合剤または作用剤を多種多様キャリヤーに結合させることができる。周知のキャリヤーの例には、ガラス、ポリスチレンポリ塩化ビニルポリプロピレンポリエチレンポリカーボネートデキストランナイロンアミロース天然および改質セルロースポリアクリルアミドアガロース、および磁鉄鉱が含まれる。キャリヤーの性質は、本発明の目的のために可溶性または不溶性のいずれかの可能性がある。その結合剤を固定/固定化するのに適した方法は周知であり、イオン性疎水性共有結合性相互作用などを含むが、これらに限定されない。本発明によるアレイとして“懸濁アレイ”を用いることも考慮される(No-lan 2002, TrendsBiotechnol. 20(1):9-12)。そのような懸濁アレイ中には、マイクロビーズまたはマイクロスフェアが懸濁状態で存在する。このアレイは、種々の結合剤を保有する種々のマイクロビーズまたはマイクロスフェア(おそらく標識されたもの)からなる。そのようなアレイの作成方法、たとえば固相化学および光不安定保護基に基づくものが一般に知られている(US 5,744,305)。

0081

本発明のある態様において、本明細書中で述べるバイオマーカーのレベルは実施例のセクションに記載するアッセイ法を用いて測定される。
本発明方法の他の態様において、工程a)およびb)における測定は分析ユニットにより、特に本明細書のいずれかの箇所に定める分析ユニットにより実施できる。

0082

用語“結合剤”または“検出剤”は、対応する各バイオマーカーを特異的に結合する結合部分を表わす。“結合剤”または“検出剤”の例は、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)または化学物質である。

0083

用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、結合対分子が他の分子に有意には結合しない条件下で相互結合を示す結合反応を表わす。
用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、結合剤としてのタンパク質またはペプチドについて述べる場合、結合剤が対応するターゲット分子に少なくとも10−7Mの親和性で結合する結合反応を表わす。用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、好ましくはそれのターゲット分子に対する少なくとも10−8M、またはよりさらに好ましくは少なくとも10−9Mの親和性を表わす。用語“特異的”または“特異的に”は、ターゲット分子に対して特異的な結合剤に、試料中に存在する他の分子が有意には結合しないことを示すために用いられる。好ましくは、ターゲット分子以外の分子への結合のレベルは、ターゲット分子に対する親和性のわずか10%以下、より好ましくはわずか5%以下の結合親和性を生じるにすぎない。

0084

用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、結合剤としての核酸について述べる場合、結合剤またはプローブが目的ターゲット配列に対して厳密または実質的に相補的ハイブリダイズ領域を含むハイブリダイゼーション反応を表わす。十分にストリンジェントハイブリダイゼーション条件下で結合剤またはプローブを用いて実施されるハイブリダイゼーションアッセイにより、特異的ターゲット配列の選択的検出が可能になる。ハイブリダイズ領域は、好ましくは約10から約35ヌクレオチドまでの長さ、より好ましくは約15から約35ヌクレオチドまでの長さである。ハイブリダイゼーション安定性に影響を及ぼす、当技術分野で周知である修飾塩基または塩基アナログの使用によって、匹敵する安定性を備えたより短いかまたはより長いプローブの使用が可能になる。結合剤またはプローブは全体としてハイブリダイズ領域からなるか、あるいはプローブの検出または固定化を可能にするけれどもハイブリダイズ領域のハイブリダイゼーション特性に有意に影響を及ぼさない追加特徴を含むことができる。

0085

用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、結合剤としての核酸アプタマーについて述べる場合、核酸アプタマーが対応するターゲット分子に低nMないしpMの範囲の親和性で結合する結合反応を表わす。

0086

“結合剤(binding agent)”、“検出剤(detection agent)”または“作用剤(agent)”の例は、核酸プローブ核酸プライマーDNA分子RNA分子、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、ペプチド、ペプチド核酸(PNA)または化学物質である。好ましい作用剤は、測定すべきバイオマーカーに特異的に結合する抗体である。本明細書において用語“抗体”は最も広い意味で用いられ、多様な抗体分子構造体を包含し、それにはモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば、二重特異性抗体)、および目的とする抗原結合活性を示す限り抗体フラグメントが含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗体はポリクローナル抗体である。より好ましくは、抗体はモノクローナル抗体である。

0087

適用できる他の結合剤は、ある観点において、試料中の少なくとも1つのマーカーに特異的に結合するアプタマーであってもよい。用語“特異的結合”または“特異的に結合する”は、結合剤としての核酸アプタマーについて述べる場合、核酸アプタマーが対応するターゲット分子に低nMないしpMの範囲の親和性で結合する結合反応を表わす。

0088

さらにある観点において、結合剤と少なくとも1つのマーカーとの間に形成された複合体のレベルを測定する前に、形成された複合体から試料を分離する。したがって、ある観点において、結合剤を固体支持体に固定化することができる。さらにある観点において、洗浄溶液の適用により、固体支持体上に形成された複合体から試料を分離することができる。形成された複合体は、試料中に存在する少なくとも1つのマーカーのレベルに正比例するはずである。適用する結合剤の特異度および/または感度が試料中に含まれる特異的に結合できる少なくとも1つのマーカーの比例度を決めることは理解されるであろう。この決定を実施できる方法の詳細は本明細書のいずれかの箇所にもある。形成された複合体のレベルを、試料中に実際に存在するレベルを反映する少なくとも1つのマーカーのレベルに換算すべきである。そのようなレベルは、ある観点において本質的に試料中に存在するレベルであってもよく、あるいは他の観点において、形成された複合体と元の試料中に存在していたレベルとの関係によって、それのある割合のレベルであってもよい。

0089

本明細書中で用いる用語“レベル”は、本明細書中で述べるバイオマーカーの絶対量、本明細書中で述べるバイオマーカーの相対量または濃度、およびそれに関係するかまたはそれから誘導できるいずれかの数値またはパラメーターを包含する。そのような数値またはパラメーターは、それらのペプチドから測定により得られるすべての特異的な物理的または化学的特性に由来する強度信号値、たとえば質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書のいずれかの箇所に明記した間接測定により得られるすべての数値またはパラメーター、たとえば生物学的読出し系からペプチドに応答して測定された応答レベル、または特異的に結合したリガンドから得られる強度信号が包含される。上記のレベルまたはパラメーターと相関する数値をあらゆる標準的数学操作により得ることができることも理解すべきである。

0090

本明細書中で用いる用語“比較する”は、個体または患者からの試料におけるバイオマーカー(単数または複数)のレベルを、本明細書のいずれかの箇所に明記したバイオマーカーの基準レベル(単数または複数)と比較することを表わす。本明細書中で用いる比較が通常は対応するパラメーターまたは数値との比較を表わすことを理解すべきである;たとえば、絶対量を絶対基準量と比較し、一方、濃度を基準濃度と比較し、あるいは試料中のバイオマーカーから得られた強度信号を基準試料から得られた同じタイプの強度信号と比較する。比較は手動で、またはコンピューター支援により実施できる。よって、比較をコンピューティングデバイス(たとえば、本明細書に開示するシステムの)により実施できる。個体または患者からの試料におけるバイオマーカーの測定レベルまたは検出レベルと基準レベルの数値を、たとえば相互に比較することができ、またその比較は比較のためのアルゴリズムを実行するコンピュータープログラムにより自動的に実施できる。その評価を実施するコンピュータープログラムは目的とする査定を適切な出力フォーマットで提供するであろう。コンピューター支援による比較のために、測定量の数値を、データベースに記憶された適切な基準に対応する数値とコンピュータープログラムにより比較することができる。コンピュータープログラムは比較の結果をさらに評価することができ、すなわち目的とする査定を適切な出力フォーマットで自動的に提供することができる。コンピューター支援による比較のために、測定量の数値を、データベースに記憶された適切な基準に対応する数値とコンピュータープログラムにより比較することができる。コンピュータープログラムは比較の結果をさらに評価することができ、すなわち目的とする査定を適切な出力フォーマットで自動的に提供することができる。

0091

本明細書中で述べるバイオマーカーのレベル(単数または複数)を基準レベルと(または複数の基準レベルと)比較する。本明細書中で用いる基準レベルは、好ましくは、本明細書中で述べる機能障害または異常(すなわち、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する構造異常もしくは機能異常)を診断またはグレーディングし、よって患者がその機能障害または異常に(またはその軽症型もしくは重症型に)罹患しているか否かを鑑別することができる。

0092

基準量を用いて閾値レベルを規定および確立することができる。閾値レベルは、好ましくは前記の患者をグレーディング/診断することができる。その診断またはグレーディングは、本明細書に開示するシステムのコンピューティングデバイスにより、計算した“レベル”を基準または閾値と比較することに基づいて提供できる。たとえば、システムのコンピューティングデバイスは、診断またはグレーディングの指標となる言語、記号または数値の形の指標を提供できる。個々の患者に適用できる基準レベルは、多様な生理的パラメーター、たとえば年齢性別または亜集団に応じて、また本明細書中で述べるポリペプチドまたはペプチドの決定に用いる手段に応じて、変動する可能性がある。適切な基準レベルは、被験試料一緒に、すなわち同時またはその後に分析する基準試料から決定できる。

0093

基準レベルは、原則として、前記に明記した機能障害もしくは少なくとも1つの異常(本明細書中で述べるもの)に罹患している患者またはその機能障害もしくは少なくとも1つの異常に罹患していない患者のコホートについて、特定のバイオマーカーについての平均値(averageまたはmean value)に基づき、標準的な統計的方法を適用することにより計算できる。特に、ある検査、たとえばある事象の有無を診断することを目標とした方法の正確度は、それの受信者動作特性(receiver-operating characteristics)(ROC)によって最も良く記述される(参照:特に、Zweig 1993, Clin. Chem. 39:561-577)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって決定閾値を連続的に変動させることにより生じるすべての感度/特異度対のプロットである。診断方法の臨床性能は、それの正確度、すなわちそれが患者を特定の査定、予後または診断に正確に配属する能力に依存する。ROCプロットは、識別を行なうのに適した閾値の全範囲についての感度を1−特異度に対してプロットすることにより、2つの分布間のオーバーラップを指示する。y−軸には感度または真の陽性画分があり、それは真の陽性検査結果の数と偽陰性検査結果の数の積に対する真の陽性検査の数の比として定義される。これは疾患または状態の存在下での陽性度とも呼ばれている。それは罹患サブグループのみから計算される。x−軸には偽陽性画分、または1−特異度があり、それは真の陰性結果の数と偽陽性結果の数の積に対する偽陽性結果の数の比として定義される。それは特異度の指数であり、すべて非罹患サブグループから計算される。真の陽性画分と偽陽性画分は2つの異なるサブグループの検査結果を用いてまったく別個に計算されるので、ROCプロットはそのコホートにおけるその事象の罹患率とは無関係である。ROCプロット上の各点は、特定の決定閾値に対応する感度/特異度の対を表わす。完全識別(2つの結果の分布にオーバーラップが無い)を伴なう検査は上左隅を通るROCプロットをもち、その際、真の陽性画分は1.0、すなわち100%(完全感度)であり、偽陽性画分は0(完全特異度)である。識別されない(2グループについて結果の分布が同一)検査についての理論的プロットは、下左隅から上右隅への45°の対角線である。大部分のプロットはこれら両極端の間にある。ROCプロットが完全に45°対角線より下にあれば、これは“陽性”についての基準を“より大きい”から“未満”に逆転することによって容易に救済でき、あるいは逆も成り立つ。定性的に、プロットが上左隅に近いほどその検査の全般的正確度は高い。目的とする信頼区間に応じて、特定の事象についてそれぞれ感度と特異度の適正なバランスで診断または予測できる閾値をROC曲線から導くことができる。したがって、前記の本発明方法に使用するための基準は、好ましくは閾値またはカットオフ量であってもよく、好ましくはそのコホートについて前記に従ってROCを確立し、それから閾値量を導くことにより作成できる。診断方法について希望する感度および特異度に応じて、ROCプロットは適切な閾値を導くことができる。

0094

基準レベルは当技術分野で周知であり、当業者がさらなる労苦なしに決定できる。ある態様において、本明細書における用語“基準レベル”は前決定された値を表わす。当業者が認識しているように、基準レベルは前決定され、たとえば特異度および/または感度に関するルーティンな要求を満たすように設定される。これらの要求は、たとえば規制機関毎に異なる可能性がある。それは、たとえばアッセイの感度または特異度それぞれを、一定の限度、たとえばそれぞれ80%、90%、95%または98%に設定しなければならないことであろう。これらの要求は正または負の予測値により規定することもできる。それでもなお、本発明において得られる教示に基づいて当業者がそれらの要求を満たす基準レベルに常に到達することは可能であろう。好ましくは、基準レベルは、本明細書中で述べる疾患もしくは異常 (すなわち、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する構造異常もしくは機能異常)またはそれの重症型もしくは軽症型(グレーディングを行なう場合)に罹患している患者から導かれる。同様に好ましくは、基準レベルは、本明細書中で述べる疾患もしくは異常(すなわち、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する構造異常もしくは機能異常)またはそれの重症型もしくは軽症型(グレーディングを行なう場合)に罹患していない患者から導かれる。

0095

基準レベルは、1態様において、その患者が属する疾患実体からの基準試料において前決定されている。特定の態様において、基準レベルは、調べた疾患実体における数値の全分布の25%〜75%のいずれかのパーセントに設定できる。他の態様において、基準レベルは、たとえば調べた疾患実体からの基準試料における数値の全分布から決定した中央値、三分位数または四分位数に設定できる。1態様において、基準レベルは、たとえば調べた疾患実体における数値の全分布から決定した中央値数に設定される。基準レベルは、多様な生理的パラメーター、たとえば年齢、性別または亜集団に応じて、および本明細書中で述べるIGFBP7の決定に用いる手段に応じて変動する可能性がある。1態様において、基準試料は、本発明の方法を施される個体または患者からの試料と本質的に同じタイプの細胞、組織、臓器または体液源からのものである;たとえば、本発明に従って個体におけるIGFBP7のレベルを測定するための試料として血液を使用するならば、基準レベルも血液またはその一部において測定される。

0096

本明細書中で述べる診断に関して適用する基準レベルがグレーディングのために適用する基準レベルと異なる可能性があることを理解すべきである。たとえば、診断のための基準レベルはグレーディングのためのものより低い可能性がある。しかし、これは当業者が考慮に入れるであろう。よって、本明細書中で述べる拡張機能障害または少なくとも1つの異常を診断するためにはその拡張機能障害またはその少なくとも1つの異常を診断できる基準レベルを適用し、これに対し、拡張機能障害または少なくとも1つの異常をグレーディングするためにはその拡張機能障害またはその少なくとも1つの異常をグレーディングできる基準レベルを適用する。

0097

IGFBP7について本発明に従って適用するのに好ましい基準レベルは、約100〜140ng/ml、特に約110〜約130ng/ml、または約115〜約120ng/mlの範囲内である。IGFBP7の決定のために適用するアッセイに応じて、基準レベルは異なる可能性がある。これは当業者が考慮に入れるであろう。

0098

好ましくは、本明細書中で用いる用語“約”は、特定量に対して±20%の範囲、より好ましくは±10%の範囲、よりさらに好ましくは±5%の範囲、最も好ましくは±2%の範囲であり、たとえば“約100”の量の指示は80から120までの範囲の量を包含するものとする。用語“約”はその量そのものも表わす。好ましくは、レベルは実施例の記載に従って測定される。

0099

診断を行なう場合は下記を診断アルゴリズムとして適用する。好ましくは、
a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベルは、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/または
b)基準レベル未満のIGFBP7のレベルは、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していないことを指示する。

0100

グレーディングを行なう場合は下記を診断アルゴリズムとして適用する。好ましくは、
a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベルは、その患者が重症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する重症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/または
b)基準レベル未満のIGFBP7のレベルは、その患者が軽症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する軽症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示する。

0101

特定の態様において、用語“基準レベルを超える”は、本明細書に記載する方法により測定して、個体または患者からの試料において基準レベルを超えるバイオマーカーのレベル、あるいは基準レベルと比較して全般的に5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、100%またはそれ以上の増大を表わす。特定の態様において、増大という用語は個体または患者からの試料におけるバイオマーカーレベルの増大を表わし、その際、増大は、たとえば基準試料から前決定した基準レベルと比較して少なくとも約1.5−、1.75−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−、9−、10−、15−、20−、25−、30−、40−、50−、60−、70−、75−、80−、90−、または100−倍高い。

0102

特定の態様において、本明細書において用語“低減する”または“未満”は、本明細書に記載する方法により測定して、個体または患者からの試料において基準レベル未満のバイオマーカーのレベル、あるいは基準レベルと比較して全般的に5%、10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上の低減を表わす。特定の態様において、低減という用語は個体または患者からの試料におけるバイオマーカーレベルの低減を表わし、その際、低減レベルは、たとえば基準試料から前決定した基準レベルの、最大で約0.9−、0.8−、0.7−、0.6−、0.5−、0.4−、0.3−、0.2−、0.1−、0.05−、または0.01−倍であり、あるいはより低い。

0103

本発明のある態様において、患者からの試料における少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定し、そして(適切な)基準レベル(その少なくとも1つのさらなるバイオマーカーについての)と比較する。ある態様において、そのその少なくとも1つのさらなるマーカーはオステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される。少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの測定によって、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常の、より信頼性のある査定が可能になる。

0104

したがって、本発明は、心不全に罹患している患者において拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を診断および/またはグレーディングするための方法に関するものであり、その方法は下記の工程を含む:
a)心不全に罹患している患者からの試料におけるバイオマーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベル、ならびに場合により、オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定し、そして
b)a)において測定したIGFBP7のレベルおよび少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを基準レベルと比較する。

0105

尿酸は、対象生物におけるプリン代謝最終生成物である。IUPAC名は7,9−ビヒドロ−3H−プリン−2,6,8−トリオンである。この化合物はしばしばウレート、リシン酸(Lithic acid)、2,6,8−トリオキシプリン、2,6,8−トリヒドロキシプリン、2,6,8−トリオキソプリン、1H−プリン−2,6,8−トリオールとも呼ばれる(化合物の式C5H4N4O3,PubChemCID 1175,CAS番号69−93−2)。

0106

尿酸測定は、腎不全、痛風白血病乾癬飢餓その他の消耗性状態を含めた多数の腎障害および代謝障害、ならびに細胞毒を投与されている患者の診断および治療に用いられる。尿酸の酸化はこのプリン代謝産物の定量測定のための2つの方法の基礎を提供する。1法は、アルカリ性溶液中でのホスホタングステン酸からタングステンブルーへの還元であり、それを測光法により測定する。PraetoriusおよびPoulsonが記載した第2法は尿酸を酸化するために酵素ウリカーゼを利用する;この方法により化学的酸化に固有干渉が排除される(Praetorius E, Poulsen H. Enzymatic Determination of Uric Acid with Detailed Directions. Scandinav J Clin Lab Investigation 1953;3:273-280)。ウリカーゼは尿酸消費のUV測定を伴なう方法に、あるいは他の酵素との組合わせで比色アッセイを提供するために使用できる。他の方法は、Townらが開発した比色法である(TownMH, Gehm S, Hammer B, Ziegenhorn J. J Clin Chem Clin Biochem 1985;23:591)。試料をまず、アスコルビン酸オキシダーゼおよび清澄系(clearing system)を含有する試薬混合物と共にインキュベートする。この試験系においては、試料中に存在するアスコルビン酸をいずれも予備反応で除去することが重要である;これにより後続のPOD指示薬反応のアスコルビン酸干渉がいずれも排除される。開始試薬を添加すると、ウリカーゼによる尿酸の酸化が開始する。マーカー尿酸を測定するのであれば、このマーカーを測定できる検出剤は前記に述べた酵素であってもよい。この場合、試料をその酵素と接触させる。

0107

本発明の状況において、尿酸は適切と思われるいずれかの方法により決定できる。好ましくは、このバイオマーカーは前記の方法により決定される。より好ましくは、尿酸は前記の比色法をわずかに改変したものを適用することにより決定される。この反応において、ペルオキシドペルオキシダーゼ(POD)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、および4−アミノフェナゾンの存在下で反応して、キノンジイミン色素を形成する。形成された赤色の強度は尿酸濃度に比例し、測光法により決定される。

0108

用語“心筋トロポニン”は、前記の特定のトロポニンの、すなわち好ましくはトロポニンIの、より好ましくはトロポニンTのバリアントをも包含する。そのようなバリアントは、少なくともその特定の心筋トロポニンと同じ本質的な生物学的および免疫学的特性をもつ。特に、それらを本明細書中に述べるものと同じ特異的アッセイにより、たとえばその心筋トロポニンを特異的に認識するポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用いるELISAアッセイにより決定できれば、それらは同じ本質的な生物学的および免疫学的特性を共有する。さらに、本発明に従って述べるバリアントは少なくとも1つのアミノ酸置換欠失および/または付加のため異なるアミノ酸配列をもつはずであることを理解すべきである;その際、バリアントのアミノ酸配列はなお、特定のトロポニンのアミノ酸配列と、好ましくは少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約92%、少なくとも約95%、少なくとも約97%、少なくとも約98%,、または少なくとも約99%、同一である。バリアントは対立遺伝子バリアントまたは他のいずれかの種特異的ホモログ(homolog)、パラログ(paralog)またはオルソログ(ortholog)であってもよい。さらに、本明細書中に述べるバリアントには、特定の心筋トロポニンまたは前記タイプのバリアントのフラグメントが含まれる;ただし、これらのバリアントが前記に述べた本質的な免疫学的および生物学的特性をもつ限りにおいてである。好ましくは、心筋トロポニンバリアントはヒトのトロポニンTまたはトロポニンIに匹敵する免疫学的特性(すなわち、エピトープ組成)をもつ。よって、バリアントは心筋トロポニンの濃度を決定するために用いられる前記の手段またはリガンドにより認識されるはずである。よって、バリアントは心筋トロポニンの濃度を決定するために用いられる前記の手段またはリガンドにより認識されるはずである。そのようなフラグメントは、たとえばトロポニンの分解生成物であってもよい。さらに、翻訳後修飾、たとえばリン酸化またはミリスチル化のため異なるバリアントが含まれる。好ましくは、トロポニンIおよびそれのバリアントの生物学的特性は、アクトミオシンATPaseを阻害すること、または in vivo および in vitro で血管形成を阻害することであり、それはたとえばMoses et al. 1999 PNAS USA 96 (6): 2645-2650)により記載されたアッセイに基づいて検出できる。好ましくは、トロポニンTおよびそれのバリアントの生物学的特性は、トロポニンCおよびIと複合体を形成する能力、カルシウムイオンを結合する能力またはトロポミオシンに結合する能力(好ましくは、トロポニンC、IおよびTの複合体、またはトロポニンC、トロポニンI、およびトロポニンTバリアントにより形成される複合体として存在する場合)である。低濃度循環型心筋トロポニンが多様な状態の患者において検出される可能性があることは知られているが、それらそれぞれの役割および割合を理解するためにはさらなる研究が必要である(Masson et al., Curr Heart Fail Rep (2010) 7:15-21)。

0109

マーカーであるエンドスタチンは当技術分野で周知である。エンドスタチンは最初にネズミ血管内皮腫からXVIII型コラーゲンの20kDAタンパク質分解フラグメントとして単離された(O'Reilly, M.S. et al., Cell 88 (1997) 277-285)。コラーゲンは、組織構造統合性の維持において主要な役割を果たす超分子(supra-molecular)凝集物を形成する特徴的な三重らせんコンホメーションをもつ細胞外マトリックスタンパク質のファミリーとして存在する。過度のコラーゲン沈着は、周囲組織の正常な機能を妨げる線維形成をもたらす。コラーゲンXVIIIは、中心の三重らせんドメインに多重の介在配列をもちかつ主に基底膜内のC−末端に固有の非三重らせんドメインをもつマルチプレキシン(Multiplexin)ファミリーのコラーゲンのメンバーである。コラーゲンXVIIIの短いイソ型ヒト型アルファ1鎖の配列(SwissProt:P39060)が、たとえばWO2010/124821に開示されており、それをそれの開示内容全体に関して本明細書に援用する。

0110

エンドスタチンはコラーゲンXVIIIのアルファ1鎖から種々のタンパク質分解酵素の作用により放出される(詳細については、Ortega, N. and Werb, Z., Journal of Cell Science 115 (2002) 4201-4214を参照−この報文の開示内容全体を本明細書に援用する)。本明細書中で用いるエンドスタチンは、WO2010/124821に開示されるように、コラーゲンXVIIIのアミノ酸位置1337からアミノ酸位置1519までの範囲のコラーゲンXVIIIフラグメントにより表わされる。コラーゲンXVIIIのアルファ鎖のC−末端にあるヒンジ領域は幾つかのプロテアーゼ感受性部位を含み、好中球エラスターゼカテプシン類およびマトリックスメタロプロテイナーゼを含めた多数の酵素がこの領域でコラーゲンを開裂することによりエンドスタチンを生成することが知られている。これらのプロテアーゼはエンドスタチンのみを放出するのではなく、エンドスタチン配列を含む他のより大きいフラグメントを放出する可能性もある。当業者に明らかなように、そのようなより大きいフラグメントもエンドスタチンについてのイムノアッセイにより測定されるであろう。

0111

エンドスタチンは血管形成および血管増殖の有効な阻害物質である。エンドスタチンとサイトカインネットワークの関係は未決定であるが、エンドスタチンは広範な遺伝子の発現を変化させる可能性があることが知られている(Abdollahi, A. et al., MoI. Cell 13 (2004) 649-663)。

0112

本明細書中で用いるエンドスタチンは、好ましくは特定のエンドスタチンポリペプチドのバリアントをも包含する。用語“バリアント”については前記を参照されたい。
ミーメカン(mimecan)は、ロイシンリッチリピート、および298アミノ酸を含む前駆体をもつスモールプロテオグリカン(small proteoglycan)である。ミーメカンの別名はOGN、オステオグリシン、OG、OIF、SLRR3Aである。

0113

ミーメカンは、構造関連コアタンパク質をもつ分泌型のスモールロイシンリッチプロテオグリカン(small leucine rich proteoglycan)(SLRP)ファミリーのメンバーである。すべてのSLRPに共通の一般的特色は、コアタンパク質のC末端側半分にあるタンデムロイシンリッチリピート(tandem leucine-rich repeat)(LRR)単位である。しかし、N末端領域において、各クラスのSLRPは保存されたスペーシングを備えたLRR N−ドメインと呼ばれるシステインクラスターを含む固有のドメインをもつ。クラスIII SLRPは6つのカルボキシルLRRを含み、それにはミーメカン、エピフィカン(epiphycan)およびオプチシン(opticin)が含まれる。

0114

ノックアウトマウスからのクラスIおよびIIメンバー、たとえばデコリン(decorin)、ビグリカン(biglycan)、ルーメカン(lumecan)およびフィブロモジュリン(fibromodulin)についての機能研究は、SLRP欠損マウスが異常なコラーゲン線維形成に起因する広範な欠陥を提示することを示し、それはこれらのSLRPがコラーゲンマトリックス樹立および維持において重要な役割を果たすことを示唆する(Ameye, L. and Young, M.F., Glycobiology 12 (2002) 107R-116R)。クラスIIIミーメカンの欠損コラーゲンフィブリル異常も引き起こした(Tasheva, E.S. et al., MoI. Vis. 8 (2002) 407-415)。

0115

ミーメカンは細胞外マトリックスの多機能成分である。それは多様な他のタンパク質(IGF2、IKBKG、IFNBl、INSR、CHUK、IKBKB、NFKBIA、ILl 5、Cd3、レチノイン酸APP、TNF、リポ多糖類、c−abl癌遺伝子1、受容体型チロシンキナーゼ、v−src肉腫ウイルス癌遺伝子)に結合する。これらの多様な結合活性はミーメカンが多くの組織において多様な機能を発揮する能力を説明できる。

0116

ミーメカンは角膜、骨、皮膚およびさらなる組織中に見出されている。それの発現パターンは種々の病的状態において変化する。ミーメカンの生物学的役割についてのデータの量が増加しているにもかかわらず、それの機能は依然として明らかでない。ミーメカンは、発達組織修復および転移に際して必須のプロセスであるコラーゲンフィブリル形成の調節に関与することが示された(Tasheva et al., MoI. Vis. 8 (2002) 407-415)。それはTGF−ベータ−1またはTGF−ベータ−2との組合わせで骨形成において役割を果たす。

0117

ヒトのミーメカンポリペプチドの配列は当技術分野で周知であり、たとえばGenBank寄託番号NP_054776.1GI:7661704によりアクセスできる。さらに、その配列はWO2011/012268に開示されている。本明細書中で用いるミーメカンは、好ましくは特定のミーメカンポリペプチドのバリアントをも包含する。用語“バリアント”の説明については前記を参照されたい。本発明に関して、ミーメカンは好ましくはWO2011/012268の記載に従って決定される。

0118

オステオポンチン(Osteopontin)(本明細書中で“OPN”とも表わす)は骨シアロプロテインI(bone sialoprotein I)(BSP−1またはBNSP)、初期Tリンパ球活性化−1(early T-lymphocyte activation)(ETA−1)、分泌型ホスホプロテイン1(secreted phosphoprotein 1)(SPP1)、2arおよびリケッチア抵抗性(Rickettsia resistance)(Ric)としても知られ、広域二次構造欠如した高度に負に荷電した細胞外マトリックスタンパク質であるポリペプチドである。それは約300個のアミノ酸(マウスにおいては297個;ヒトにおいては314個)からなり、33−kDaの発生期(nascent)タンパク質として発現する;機能的に重要な開裂部位もある。OPNは翻訳後修飾を受ける可能性があり、それによりそれの見掛け分子量が約44kDaに増大する。オステオポンチンの配列は当技術分野で周知である(ヒトオステオポンチン:UniProt P10451,GenBankNP_000573.1)。オステオポンチンは正常な血漿、尿、乳汁および胆汁中にみられる(US 6,414,219; US 5,695,761; Denhardt, D.T. and Guo, X.,FASEB J. 7 (1993) 1475-1482; Oldberg, A., et al., PNAS 83 (1986) 8819-8823; Oldberg, A., et al., J. Biol. Chem. 263 (1988) 19433-19436; Giachelli, CM., et al., TrendsCardiovasc. Med. 5 (1995) 88-95)。ヒトOPNのタンパク質およびcDNAが単離および配列決定された(Kiefer M. C, et al., Nucl. Acids Res. 17 (1989) 3306)。OPNは細胞接着走化性マクロファージ指向インターロイキン−10において機能する。OPNは多数のインテグリン受容体と相互作用することが知られている。OPN発現増大が多数のヒト癌において報告され、それの同族受容体(cognate receptor)(av−b3、av−b5、およびav−blインテグリン、ならびにCD44)が同定された。Irby, R.B., et al., Clin. Exp. Metastasis 21 (2004) 515-523による in vitro 研究は、内因性OPN発現(安定トランスフェクションによるもの)と外因性OPN(培地に添加したもの)の両方が in vitro でヒト大腸癌細胞運動性および浸潤能を高めたと指摘している。

0119

用語“増殖分化因子−15(Growth-Differentiation Factor-15)”または“GDF−15”は、トランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor)(TGF)サイトカインスーパーファミリーのメンバーであるポリペプチドに関する。用語ポリペプチド、ペプチドおよびタンパク質は、本明細書全体において互換性をもって用いられる。GDF−15は最初はマクロファージ阻害性サイトカイン1としてクローニングされ、のちに胎盤性トランスフォーミング増殖因子−15、胎盤性骨形態形成タンパク質非ステロイド系抗炎症薬活性化遺伝子1、および前立腺由来因子としても同定された(Bootcov前掲; Hromas, 1997 Biochim Biophys Acta 1354:40-44; Lawton 1997, Gene 203:17-26; Yokoyama-Kobayashi 1997, J Biochem (Tokyo), 122:622-626; Paralkar 1998, J Biol Chem 273:13760-13767)。他のTGF関連サイトカインと同様に、GDF−15は不活性な前駆タンパク質として合成され、それがジスルフィド結合ホモ二量体化を行なう。N末端プロ−ペプチドがタンパク質分解開裂すると、GDF−15は約28kDの二量体タンパク質として分泌される(Bauskin 2000, Embo J 19:2212-2220)。GDF−15のアミノ酸配列は、WO99/06445、WO00/70051、WO2005/113585、Bottner 1999, Gene 237: 105-111, Bootcov 前掲, Tan 前掲, Baek 2001, Mol Pharmacol 59: 901-908, Hromas 前掲, Paralkar 前掲, Morrish 1996, Placenta 17:431-441 または Yokoyama-Kobayashi 前掲に開示されている。本明細書中で用いるGDF−15は先に述べた特定のGDF−15ポリペプチドのバリアントをも包含する。

0120

本明細書中で用いる用語“BNPタイプのポリペプチド”は、pre−proBNP、proBNP、NT−proBNP、およびBNPを含む。pre−proペプチド(pre−proBNPの場合は134アミノ酸)は短いシグナルペプチドを含み、それが酵素により開裂除去されてproペプチド(proBNPの場合は108アミノ酸)を放出する。proペプチドはさらに開裂してN末端proペプチド(NT−proペプチド,NT−proBNPの場合は76アミノ酸)および活性ホルモン(BNPの場合は32アミノ酸)になる。好ましくは、本発明によるBNPタイプのポリペプチドは、NT−proBNP、BNP、およびそのバリアントである。BNPは活性ホルモンであり、それぞれの不活性カウンターパートNT−proBNPより短い半減期をもつ。BNPは血液中で代謝され、これに対しNT−proBNPは無傷分子として血液中を循環し、そのまま排出される。NT−proBNPの in-vivo 半減期は、20分であるBNPのものより120分長い(Smith 2000, J Endocrinol. 167: 239-46.)。予備分析ではNT−proBNPはより強靭であり、試料を中央検査室へ容易に輸送できる(Mueller 2004, Clin Chem Lab Med 42: 942-4.)。回収率損失なしに血液試料を室温で数日間貯蔵でき、あるいは郵送または輸送できる。これと対照的に、BNPを室温または4℃で48時間貯蔵すると少なくとも20%の濃度損失が生じる(Mueller loc.cit.; Wu 2004, Clin Chem 50: 867-73.)。したがって、目的とするタイムコースまたはペプチドに応じて、活性形または不活性形ナトリウム利尿ペプチドのいずれかの測定が有利な可能性がある。本発明による最も好ましいナトリウム利尿ペプチドはNT−proBNPまたはそのバリアントである。前記において簡単に考察したように、本発明に従って述べるヒトNT−proBNPは、好ましくはヒトNT−proBNP分子のN末端部分に対応する長さ76アミノ酸を含むポリペプチドである。ヒトのBNPおよびNT−proBNPの構造は既に先行技術に詳細に記載されている;たとえば、WO 02/089657、WO 02/083913、またはBonow前掲。好ましくは、本明細書中で用いるヒトNT−proBNPはEP 0 648 228 B1に開示されるヒトNT−proBNPである。これらの先行技術文献を、それらに開示される特定のNT−proBNPおよびそのバリアントの配列に関して本明細書に援用する。本発明に従って述べるNT−proBNPは、さらに前記に述べたヒトNT−proBNPについての特定の配列の対立遺伝子および他のバリアントを包含する。具体的には、ヒトNT−proBNPに対して、好ましくはヒトNT−proBNPの全長にわたって、アミノ酸レベルで好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、97%、98%、または99%同一であるバリアントポリペプチドが考慮される。2つのアミノ酸配列間の同一度は前記に従って決定できる。

0121

2種類のバイオマーカーの(すなわち、IGFBP7とさらなるバイオマーカーの)好ましい組合わせを実施例2に開示する。
さらに、下記の組合わせが有用である:
IGFBP7+心筋トロポニン
IGFBP7+BNPタイプのペプチド
IGFBP−7+ミーメカンまたはオステオポンチン
IGFBP7+エンドスタチン
実施例2に示すように、前記マーカーはE/E’との特に強い相関性を示したが、他のパラメーターに対しても相関性を示した。

0122

IGFBP−7と心筋トロポニン(たとえば、トロポニンT)および/またはGDF15および/または尿酸との組合わせを、本明細書中で述べる拡張機能障害および幾つかの異常をグレーディング/診断するために使用できる。

0123

さらに、LAサイズ増大、LAVi増大および/または経僧帽弁E/A比増大という異常については、IGFBP7と尿酸を組み合わせるのが有利である。
さらに、LAサイズ増大および/またはEピーク速度増大という異常については、IGFBP7とGDF15を組み合わせるのが有利である。

0124

IGFBP7とマーカーのさらなる好ましい組合わせを、特にある異常について(LVEFが低減した患者または保存されている患者について)実施例2(参照:2.1および2.2)に開示する。

0125

診断を行なう場合、下記をアルゴリズムとして適用する。好ましくは、
a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベル、および少なくとも1つのバイオマーカーについての基準レベル(単数または複数)を超える少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル(単数または複数)は、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/または
b)基準レベル未満のIGFBP7のレベル、および少なくとも1つのバイオマーカーについての基準レベル(単数または複数)未満の少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル(単数または複数)は、その患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していないことを指示する。

0126

グレーディングを行なう場合、下記をアルゴリズムとして適用する。好ましくは、
a)基準レベルを超えるIGFBP7のレベル、および少なくとも1つのバイオマーカーについての基準レベル(単数または複数)を超える少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル(単数または複数)は、その患者が重症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する重症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示し、および/または
b)基準レベル未満のIGFBP7のレベル、および少なくとも1つのバイオマーカーについての基準レベル(単数または複数)未満の少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル(単数または複数)は、その患者が軽症型の拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連する軽症型のその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していることを指示する。

0127

さらなるバイオマーカーについての適切な基準レベルは前記に述べたもの(IGFBP7について)と同様に決定できる。
下記の表Aは、種々のマーカーに関する基準レベルについての好ましい範囲(第3欄)および好ましい特定の基準レベル(第4欄)を示す。当業者はさらなる労苦なしにさらなる基準レベルを決定できる。

0128

0129

本発明方法の好ましい態様において、本発明の方法に従って患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常(またはその重症型)に罹患していれば、それらの方法はさらに、適切な療法を推奨、選択、継続および/または開始する工程を含む。

0130

本明細書中で用いる句“療法を推奨する”は、患者の試料において本発明に従って述べるバイオマーカーのレベルに関して得られた情報またはデータを、適切な療法の推奨のために使用することを表わす。適切な療法は、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常(またはその重症型)を処置できるいずれの療法であってもよい。そのような療法は、たとえば Zouein et al. J Cardiovasc Pharmacol. Volume 62, Number 1, July 2013, page 13 to 16により記載されている。ある態様において、療法は少なくとも1種類のスピロノラクトンの投与である。他の態様において、療法はシルデナフィルまたはアナキンラの投与である。

0131

患者が拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患していると診断された(またはその重症型に罹患しているとグレーディングされた)場合、その患者は前記療法に適格である。この場合、療法を選択、開始、推奨および/または継続する。

0132

よって、本発明は、拡張機能障害に罹患している患者を処置する方法であって、
a)心不全(前記に定義したもの)に罹患している患者からの試料におけるIGFBP7、ならびに場合により、オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるマーカーのレベル(単数または複数)を測定し、
b)工程a)において測定したレベル(単数または複数)を適切な基準レベル(単数または複数)と比較し、そして
c)特に比較工程b)の結果に基づいて、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常(またはその重症型)を処置できる療法に適格であるものとして患者を同定または選択する、そして
d)その療法を選択、開始、推奨および/または継続する
ことを含む方法に関する。

0133

本明細書中で用いる句“患者を選択する”または“患者を同定する”は、患者の試料におけるIGFBP7の(および場合により、さらなるマーカーの)レベルに関して得られた情報またはデータを用いて、拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を処置できる療法が有益となる可能性がより大きいかまたは有益となる可能性がより小さいものとして患者を同定または選択することを表わす。使用または作成した情報またはデータは、書面、口頭または電子によるものなど、いかなる形態であってもよい。ある態様において、得られた情報またはデータの使用にはそれの通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配、またはその組合わせが含まれる。ある態様において、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配、またはその組合わせはコンピューティングデバイス、分析ユニット、またはその組合わせにより行なわれる。あるさらなる態様において、通信、提示、報告、記憶、送信、転送、供給、伝達、分配、またはその組合わせは検査室または医療専門家により行なわれる。ある態様において、情報またはデータは基準レベルに対するIGFBP7の(および場合により、さらなるマーカーの)レベルの比較を含む。

0134

本明細書中で用いる句“療法を選択する”は、患者の試料におけるIGFBP7の(および場合により、さらなるマーカーの)レベルに関して得られた情報またはデータを用いて、患者のために前記に述べた療法を同定または選択することを表わす。ある態様において、句“療法を同定/選択する”は、投与する薬物の有効量を適合させる必要がある患者を同定することを含む。

0135

前記および特許請求の範囲に挙げたすべての定義および説明は、必要な変更を加えて下記の方法、使用、キットおよびデバイスに適用される。
さらに、本発明は、i)拡張機能、および/またはii)拡張機能の少なくとも1つのパラメーター、またはiii)心不全に罹患している患者における心不全療法を、モニターするための方法、特に in vitro 方法に関するものであり、その方法は
a)心不全に罹患している患者、特に左室駆出分画(LVEF)が低減している患者からの第1および第2試料におけるバイオマーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、ならびに場合により、オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定し、その際、第2試料は第1試料の後に得られたものである、そして
b)第2試料において測定したバイオマーカーIGFBP7のレベルおよび場合によりその少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを第1試料におけるレベルと比較する
工程を含む。

0136

ある態様において、本方法はさらに、特に比較工程b)の結果に基づいて、i)拡張機能、および/またはii)拡張機能の少なくとも1つのパラメーター、またはiii)心不全療法を、モニターするかまたはモニタリングを提供する工程c)を含む。

0137

用語“心不全”は前記に定義されている。その定義を適宜適用する。
前記方法のある態様において、心不全患者は拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常に罹患しているであろう。ある態様において、その異常の基礎となるパラメーターをモニターする。さらに、前記に概説したように、患者は好ましくはLVEFが低減している。

0138

用語“拡張機能をモニターする”または“拡張機能の少なくとも1つのパラメーターをモニターする”は、拡張機能または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターを追跡し続けることを表わす。特にこの用語は、拡張機能またはそのパラメーターが改善しているか、あるいは劣化しているかを査定することを表わす。本明細書中で用いる用語“心不全療法をモニターする”は、心不全療法を受けている患者がその療法に応答しているか否かを査定することを表わす。その療法に応答する患者はその療法の結果としてその状態が改善する患者であり、これに対しその療法に応答しない患者はその療法の結果としてその状態が改善しない患者である。患者がその療法に応答すればその療法を継続でき、これに対し患者がその療法に応答しなければその療法を停止するかあるいは適合させるべきである。

0139

当業者に理解されるように、そのような査定は通常はモニターすべき患者の100%について正確であることを意図しない。ただし、この用語は統計的に有意部分の患者(たとえば、コホート研究におけるコホート)について査定が正確であることを要求する。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p−値の決定、スチューデントのt検定、マン−ホイットニー検定などを用いて、当業者がさらなる労苦なしに決定できる。詳細はDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983にみられる。好ましい信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p−値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。

0140

用語“拡張機能”は当技術分野で周知である。ある態様において、この用語は心臓が拡張期に充満する能力を表わす。拡張機能の好ましいパラメーターは、実施例のセクションで決定するパラメーターである(参照:たとえば実施例のセクションの実施例1および/または表2、特にセクションC、ただしセクションB、DおよびEも)。表2に示すパラメーターのうち、低いp−値をもつパラメーターが特に好ましい。

0141

好ましくは、拡張機能のパラメーターは下記のものからなる群から選択される:左房サイズ(好ましくは、左房上下径)、左房容積指数、Eピーク速度(すなわち、経僧帽弁ドップラーE波速度)、Aピーク速度(すなわち、より低い経僧帽弁ドップラーA波速度)、経僧帽弁E/A比、僧帽弁流入E速度−対−組織ドップラーE’速度比(すなわち、E/E’比の増大)、E’/A’比、肺静脈収縮期ピーク速度、肺静脈拡張期ピーク速度、肺静脈収縮/拡張比、右室面積の増大、右室収縮期圧(RVSP)、右室拡張、および右房サイズ(好ましくは右房上下径)。同様に好ましくは、パラメーターは僧帽弁逆流または三尖弁逆流である。

0142

モニターすべき心不全療法は、心不全を処置することができるいかなる療法であってもよい。特に、その療法は、本明細書のいずれかの箇所で処置方法に関して概説した拡張機能障害、および/または拡張機能障害に関連するその少なくとも1つの構造異常もしくは機能異常を処置することができるいかなる療法であってもよい。モニターすべき心不全患者は、好ましくは拡張機能障害に罹患している。

0143

あるいは、心不全療法は心不全のための療法(特に、拡張機能障害のための療法)として試験される療法であってもよい。したがって、心不全および/または拡張機能障害を処置できる化合物を同定するために、バイオマーカーIGFBP7(および場合により、本明細書に記載する少なくとも1つのさらなるバイオマーカー)を心不全患者(特に、拡張機能障害を伴なう患者)において使用できる。その化合物で処置した患者からの試料におけるIGFBP7レベル(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベル)の低減は、その化合物が心不全および/または拡張機能障害を処置できることの指標となる。

0144

“第1試料”は、心不全に罹患している患者からいずれかの時点で得ることができる。
心不全処置をモニターするのであれば、第1試料は心不全処置の開始前(たとえば、心不全処置を開始する1週間前)、または心不全処置の途中で得ることができる。

0145

“第2試料”は、好ましくは第1試料における各マーカーのレベルと比較した各マーカーのレベルの変化を反映させるために得る試料であると解釈される。第2試料は第1試料の後に得られるはずである。好ましくは、第2試料を第1試料の後、約1カ月〜約12カ月以内、より好ましくは約2カ月〜約8カ月以内、最も好ましくは約3カ月〜約6カ月以内に得る。同様に好ましくは、第2試料を第1試料の少なくとも3カ月後、または少なくとも6カ月後に得る。

0146

好ましくは、本明細書中で述べるバイオマーカーのレベルの変化をさらにモニターするために、少なくとも1つのさらなる試料(すなわち、第3試料、第4試料など)を得る。そのようなさらなる試料をその前の試料(たとえば、第2試料)の後、約1カ月〜約12カ月以内、より好ましくは約2カ月〜約8カ月以内、最も好ましくは約3カ月〜約6カ月以内に得ることができる。

0147

第1試料と比較した患者からの第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの増大は、拡張機能の劣化および/または拡張機能のその少なくとも1つのパラメーターの劣化の指標となる。

0148

同様に好ましくは、第1試料と比較した患者からの第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの増大は、心不全療法に応答しない患者の指標となる。

0149

第1試料と比較した患者からの第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの低減は、拡張機能、および/または拡張機能のその少なくとも1つのパラメーターの改善の指標となる。

0150

同様に好ましくは、第1試料と比較した患者からの第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの低減は、心不全療法に実際に応答する患者の指標となる。

0151

特に、有意の増大(または低減)は、モニタリングのために有意である、特に統計的に有意であるとみなされる規模の増大(または低減)である。用語“有意”および“統計的に有意”は当業者に知られている。ある増大(または低減)が統計的に有意であるかどうかは、本明細書中で述べる多様な周知の統計評価ツールを用いて当業者がさらなる労苦なしに決定できる。

0152

i)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの劣化、あるいはii)心不全療法に応答しない患者の指標となることが本発明の過程で認められたIGFBP7の(および少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの好ましい増大を以下に挙げる。

0153

好ましくは、第1試料におけるレベルと比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、よりいっそう好ましくは少なくとも7%、最も好ましくは少なくとも10%、またはさらには20%の、第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの増大は、有意であるとみなされ、よってi)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの劣化、あるいはii)心不全療法に応答しない患者の指標となる。

0154

絶対レベルに関しては、下記を適用できる:好ましくは、第1試料におけるレベルと比較して、好ましくは少なくとも4ng/ml、より好ましくは少なくとも7ng/ml、よりいっそう好ましくは少なくとも10ng/ml、または最も好ましくは少なくとも15ng/mlの、第2試料におけるIGFBP7のレベルの増大は、有意であるとみなされ、よってi)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの劣化、あるいはii)心不全療法に応答しない患者の指標となる。

0155

本発明の経過に際して、i)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの改善、あるいはii)心不全療法に応答する患者の指標となることが認められたIGFBP7の(および少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの好ましい低減を以下に挙げる。

0156

好ましくは、第1試料におけるレベルと比較して、好ましくは少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、または最も好ましくは少なくとも20%の、第2試料(またはさらなる試料)におけるIGFBP7の(および、測定するのであれば少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルの低減は、有意であるとみなされ、よってi)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの改善、あるいはii)心不全療法に応答する患者の指標となる。

0157

絶対レベルに関しては、下記を適用できる:好ましくは、第1試料におけるレベルと比較して、好ましくは少なくとも4ng/ml、より好ましくは少なくとも5ng/ml、よりいっそう好ましくは少なくとも10ng/ml、または最も好ましくは少なくとも15ng/mlの、第2試料におけるIGFBP7のレベルの低減は、有意であるとみなされ、よってi)拡張機能、および/または拡張機能の少なくとも1つのパラメーターの改善、あるいはii)心不全療法に応答する患者の指標となる。

0158

前記方法のある態様において、バイオマーカーIGFBP7の(および場合により、少なくとも1つのさらなるバイオマーカーの)レベルを、患者から得られた一連の試料において測定する。この場合、測定したバイオマーカーのレベル(単数または複数)を工程b)で基準レベル(単数または複数)と比較する。さらに、バイオマーカー(単数または複数)について基準レベルを超えた状態で過ごした時間のパーセントを計算する。

0159

したがって、本発明は、i)拡張機能、および/またはii)拡張機能の少なくとも1つのパラメーター、またはiii)心不全に罹患している患者における心不全療法を、モニターするための方法、特に in vitro 方法に関するものであり、その方法は
a)心不全に罹患している患者、特に左室駆出分画(LVEF)が低減している患者から間隔をおいて得られた一連の試料におけるバイオマーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)、ならびに場合により、オステオポンチン、心筋トロポニン、BNP型ペプチド、特にNT−proBNP、エンドスタチン、ミーメカン、尿酸およびGDF15(増殖分化因子15)からなる群から選択される少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを測定し、
b)それらの試料において測定したバイオマーカーIGFBP7のレベルおよび場合によりその少なくとも1つのさらなるバイオマーカーのレベルを基準レベルと比較し、そして
c)工程b)の結果に基づいて、バイオマーカーIGFBP7および場合により少なくとも1つのさらなるバイオマーカーについて基準レベルを超えた状態で過ごした時間のパーセントを計算する
工程を含む。

0160

用語“患者”は本明細書のいずれかの箇所に定義されている。前記に述べたように、患者は心不全に罹患しているはずである。好ましくは、患者はLVEFが低減している。しかし、患者のLVEFが保存されていることをさらに考慮する(参照:本明細書のいずれかの箇所)。

0161

前記方法によれば、バイオマーカーIGFBP7のレベルを一連の試料において、好ましくは同じタイプの一連の試料において、たとえば一連の血液、一連の血清、または一連の血漿試料において測定すべきである。一連の試料は、好ましくは少なくとも4つの試料〜少なくとも20の試料、またはさらにそれ以上を含む。より好ましくは、一連の試料は少なくとも4つ、よりいっそう好ましくは少なくとも6つ、または最も好ましくは少なくとも8つの試料を含む。

0162

一連のものからなる試料は患者から間隔をおいて得るべきである。好ましくは、それらの試料は相互に早すぎずに得られる。したがって、間隔は好ましくはほぼ少なくとも1カ月、より好ましくはほぼ少なくとも2カ月、または最も好ましくはほぼ少なくとも3カ月の間隔である。同様に好ましくは、その間隔は約1カ月から約6カ月までの範囲であり、より好ましくはその間隔は約1カ月からほぼ数カ月までの範囲であり、最も好ましくはその間隔は約2カ月から4カ月までの範囲である。ある態様において、その間隔は約3カ月(たとえば、±3週間)の間隔である。

0163

好ましくは、下記の診断アルゴリズムを適用する。好ましくは、
・基準レベル(測定したバイオマーカー(単数または複数)について)を超えた状態で過ごした時間のパーセントの増大は、i)拡張機能の劣化、および/またはii)拡張機能のその少なくとも1つのパラメーターの劣化、またはiii)療法に応答しない患者の指標となる、および/または
・基準レベル(測定したバイオマーカー(単数または複数)について)を超えた状態で過ごした時間のパーセントの低減は、i)拡張機能の改善、および/またはii)拡張機能のその少なくとも1つのパラメーターの改善、またはiii)療法に実際に応答する患者の指標となる。

0164

基準レベルを超えた状態で過ごした時間のパーセントは、バイオマーカー(単数または複数)の最初の測定から最終測定までの(全)時間に対する、基準レベルを超えた状態で過ごした時間のパーセントである。

0165

それが好ましくは60%より大きい、より好ましくは70%より大きい、または最も好ましくは80%より大きいパーセント(特に、全検査期間に対して)であれば、そのパーセントは上昇/増大しているとみなされる。それが好ましくは55%未満、より好ましくは50%未満、または最も好ましくは40%未満のパーセントであれば、そのパーセントは低減しているとみなされる。

0166

前記に挙げた説明は、必要な変更を加えて本発明の以下の主題に適用される。
さらに、本発明は、心不全に罹患している患者における死亡および/または心血管事象のリスクを予測する方法、特に in vivo 方法に関するものであり、その方法は
a)心不全に罹患している患者、特に左室駆出分画(LVEF)が低減している患者から間隔をおいて得られた一連の試料におけるバイオマーカーIGFBP7(インスリン様増殖因子結合タンパク質7)のレベルを測定し、
b)それらの試料において測定したバイオマーカーIGFBP7のレベルを基準レベルと比較し、そして
c)工程b)の結果に基づいて、バイオマーカーIGFBP7ついて基準レベルを超えた状態で過ごした時間のパーセントを計算する
工程を含む。

0167

上記方法は、患者が死亡および/または心血管事象のリスクを伴なうかどうかを予測し、または予測を提示する、工程d)を含むことができる。
本明細書中で用いる用語“予測する” は、規定した時間ウインドウ予測ウインドウ)内に将来患者が死亡する(たとえば、心不全により起きる死亡)確率、および/または心血管事象、好ましくは急性心血管事象、たとえば急性冠動脈症候群(acute coronary syndrome)(ACS)を発症する確率を査定することを表わす。予測ウインドウは、予測した確率に従って患者が心血管事象を発症するかあるいは死亡するまでの間隔である。予測ウインドウは、本発明の方法により分析した際の患者の全余命であってもよい。しかし、好ましくは、予測ウインドウは本発明の方法を実施した後(より好ましくは、かつ厳密には、本発明の方法により分析すべき試料を得た後)、1、2、3、4、5、10、15または20年の間隔である。最も好ましくは、その予測ウインドウは1または5年の間隔である。予測ウインドウは、LVEFが低減した患者については1年、LVEFが保存されている患者については5年であってもよい。当業者に理解されるように、そのような査定は通常は分析すべき患者の100%について正確であることを意図しない。ただし、この用語は分析すべき患者の統計的に有意である部分について査定が有効であることを要求する。ある部分が統計的に有意であるかどうかは、多様な周知の統計評価ツール、たとえば信頼区間の決定、p−値の決定、スチューデントのt検定、マン−ホイットニー検定などを用いて、当業者がさらなる労苦なしに決定できる。詳細はDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983にみられる。好ましい信頼区間は少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p−値は、好ましくは、0.1、0.05、0.01、0.005または0.0001である。好ましくは、本発明により想定される確率は、特定のコホートの患者のうち少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%について予測が正確であることを可能にする。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

該当するデータがありません

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

該当するデータがありません

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

この 技術と関連性が強い技術

該当するデータがありません

この 技術と関連性が強い法人

該当するデータがありません

この 技術と関連性が強い人物

該当するデータがありません

この 技術と関連する社会課題

該当するデータがありません

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ