図面 (/)
課題・解決手段
本発明は、黒鉛(G)および非強凝集ナノスケールシリコン粒子(Si)を含み、シリコン粒子がカーボンマトリックス(C)中に埋め込まれているシリコン/黒鉛/カーボン複合体(Si/G/C複合体)に関する。本発明は、前記種類の複合体の製造方法、前記種類の複合体を含むリチウムイオン電池用の電極材料およびリチウムイオン電池にも関する。
概要
背景
再充電可能なリチウムイオン電池は、現在、250Wh/kgまでの最も高いエネルギー密度を有する市販の電気化学的エネルギー貯蔵装置である。それらは、用具のための、およびまた、例えば、自転車または自動車等の輸送手段のための、特に携帯用電子機器の分野で特に利用されている。しかし、特に自動車の用途については、自動車用のより長い範囲を得るために、電池のエネルギー密度のさらなる有意な増加を達成することが必要である。
負極材料(「アノード」)として特に使用されるのは黒鉛状カーボンである。黒鉛状カーボンの特長は、リチウム一次電池に使用されるリチウム金属と比較して、その安定したサイクル特性およびその明らかに高い取扱いの安全性である。負極材料中における黒鉛状カーボンの使用を支持する重要な主張は、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションに関連付けられるホスト材料の小さな体積変化であり、即ち、電極はほぼ安定のままであることである。例えば、黒鉛状カーボン中のリチウムのインターカレーションについて、わずか約10%の体積増加がLiC6の限定化学量論に対し測定される。しかし、欠点は理論的には372mAh/gというその比較的低い電気化学容量であり、これはリチウム金属を用いて理論的に達成可能な電気化学容量のわずか10分の1程度である。
電極活物質が(リチウムイオンに対する既知の最も高い貯蔵容量、即ち、4199mAh/gを有する材料としての)シリコンに基づくリチウムイオン電池用アノードでは、シリコンは、リチウムによる充電および/または放電の際に約300%までの体積の極端な変化を経験するおそれがある。体積のこの変化の結果、活物質および全体としての電極構造に深刻な機械的ストレスがあり、これは、電気化学的粉砕によって、容量の損失を伴って、電気的接触の損失、ひいては電極の破壊をもたらす。また、使用されるシリコンアノード物質の表面は電解質の構成成分と反応し、可動性リチウムの不可逆的損失をもたらす不動態化保護層(固体電解質界面:SEI)の連続的形成を伴う。
Si含有アノードにおける活物質の深刻な体積膨張およびSEIの形成という問題を解決するために、過去十年間にSi含有活物質の電気化学的安定化に向けて様々な取り組みが見られた(概説は、A. J. Applebyら、J. Power Sources 2007、163、1003−1039により与えられる)。
1つの考えられる解決策は、代わりにカーボンと組み合わされた純粋な形態ではないシリコン含有活物質を使用することである。この場合には、一方で電極コーティングに黒鉛を有する物理的混合物の形態のSi含有活物質を挿入すること(EP1730800B1と比較)、または構造的に複合体材料の形態で2つの元素、即ち、シリコンおよびカーボンを組み合わせることができる(概説は、M. Rossiら、J. Power Sources 2014、246、167−177により与えられる)。
黒鉛および構造的に関連するカーボンは、比較的柔らかく、非常に良好な導電性を有し、低質量を有し、および充電/放電時の体積の少ない変化を特徴とする。これらの理由から、カーボン系アノードは、知られているように、数百サイクルという非常に良好な電気化学的安定性を有する。2つの元素(高容量を有するシリコン(Si)、高い安定性を有する黒鉛(G)および/またはアモルファスカーボン(C))の利点の組み合わせによって、Si/CまたはSi/G/C複合体に基づく電極活物質は、純粋なシリコンよりも安定したサイクル挙動を有し、純粋な黒鉛の容量と比較しても増加した容量を有する。
この種の複合体は、シリコン上へのカーボンの化学蒸着により、EP1363341A2号に従って製造することができる。
また、カーボンまたはカーボン前駆体とシリコンとがよく反応する粉砕により、そしてそれに続く炭化によるSi/C複合体の製造も知られており、これについては、例えば、US20040137327A1号を参照されたい。
続く炭化による有機C前駆体マトリックスへのシリコン粒子の埋め込みもSi/CまたはSi/G/C複合体をもたらし、例えば、US20050136330A1号を参照されたい。ここで考察されるC前駆体は、主に炭化水素、炭水化物、および多様なポリマーであり、その組成および構造に応じて、黒鉛化(柔らかい)または難黒鉛化(硬い)カーボンをもたらす。
アモルファスカーボンマトリックス中に埋め込まれたナノスケールのシリコンのみを含む複合体(Si/C複合体)と、Si/Cシェル内に1つ以上の結晶性黒鉛コアをさらに含む材料(Si/G/C複合体)との間は以下のように区別される。様々な開示において、特に黒鉛の含有率は、導電性および構造的安定性に対し有益な影響を有し、これについては、例えば、EP2573845A1号と比較されたい。
本発明でされる別の区別は、ナノスケールのシリコンが「強凝集体(aggregaten)」(即ち、ナノスケールの一次粒子が、例えば、焼結ネックを介して互いに強固に相互成長しており、もはや互いに分離することはできない)の形態で、または場合により緩い粒子集合体(「弱凝集体(Agglomerate)」)を形成することができる非強凝集の、孤立した個々の粒子の形態で周囲のCマトリックス中に存在しているのか否かである。
強凝集Siナノ粒子を含有するSi/C複合体は、例えば、WO2013031993A1号に記載され、そこでは強凝集シリコン出発材料のCコーティングを介して製造が行われる。
非強凝集シリコンを有するSi/C複合体も知られている。ナノ構造のSi/C複合体を製造するための、触媒の存在下でのアルデヒドとのモノおよび/またはポリヒドロキシ芳香族化合物の重縮合およびそれに続く炭化において非強凝集ナノスケールシリコン粉末を使用すること、は、WO2010006763A1号に記載されている。
CA2752844A1号は、SiおよびSiOx粒子のCコーティングのための方法を開示し、そこでは得られた複合体粒子は、非強凝集または非焼結の形態の埋め込まれたナノスケールのSi粒子の少なくとも50%という高い画分を含む。ここで特定したSi/C複合体の欠点は、それらが導電性および構造的な安定性を向上させるための黒鉛を含まないことである。また、記載されたC含有率は非常に低く(<30%)、このためCコーティングは確かにシリコン表面の導電性を向上させるが、それはシリコン粒子の体積膨張に関連した安定化効果を有していない。
US20130302675A1号で請求されたSi/G/C複合体は、(多孔性)黒鉛コアおよびその表面で強凝集したSi粒子を含み、これらの粒子はアモルファスカーボンのコーティングを有する。この複合体の1つの考えられる欠点は、それがSi粒子間にわずかのアモルファスカーボン(1から10%)しか有さないことであり、このためシリコンの体積変化を緩衝することによって十分な安定性を確保する可能性を排除することである。また、US20130302675A1に記載された複合体は、約5%という非常に低いシリコンレベルしか含まず、このため黒鉛の電気化学容量(〜400mAh/g)よりわずかに高いものの、目的の用途の大半において適切でない電気化学容量を含む。
CN101210112A号は、Si粒子の強凝集が、黒鉛コア上の有機ポリマーコーティングの中への埋め込みによりいかに減少されるかについて(ただし、そこでのコーティングは無機カーボンに炭化されず、導電性および機械的強度の点で考えられる欠点を保有する)説明する。これらの構造は、導電性および機械的強度の点で不利であることがわかった。
概要
本発明は、黒鉛(G)および非強凝集ナノスケールシリコン粒子(Si)を含み、シリコン粒子がカーボンマトリックス(C)中に埋め込まれているシリコン/黒鉛/カーボン複合体(Si/G/C複合体)に関する。本発明は、前記種類の複合体の製造方法、前記種類の複合体を含むリチウムイオン電池用の電極材料およびリチウムイオン電池にも関する。
目的
1つの考えられる解決策は、代わりにカーボンと組み合わされた純粋な形態ではないシリコン含有活物質を使用することである
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 1件
- 牽制数
- 2件
この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
黒鉛(G)および非強凝集ナノスケールシリコン粒子(Si)を含み、シリコン粒子がアモルファスカーボンマトリックス(C)中に埋め込まれているシリコン/黒鉛/カーボン複合体(Si/G/C複合体)。
請求項2
アモルファスカーボン層が設けられた1つ以上の黒鉛コアを含み、アモルファスカーボン層がカーボンマトリックス(C)を形成し、シリコン粒子がアモルファスカーボン層に埋め込まれている請求項1に記載のシリコン/黒鉛/カーボン複合体。
請求項3
(導電性)カーボンブラック、アモルファスカーボン、熱分解カーボン、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンからなる群から選択される1つ以上の成分をさらに含む請求項1または2に記載のシリコン/黒鉛/カーボン複合体。
請求項4
Siおよび黒鉛と同様に、Li、Sn、Mg、Ag、Co、Ni、Zn、Cu、Ti、B、Sb、Al、Pb、Ge、Biおよび希土類元素からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる活物質を含む請求項1から3のいずれか一項に記載のシリコン/黒鉛/カーボン複合体。
請求項5
請求項6
請求項7
平均複合体粒子径が、1mm未満、好ましくは100μm未満、より好ましくは50μm未満である請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコン/黒鉛/カーボン複合体。
請求項8
請求項9
有機カーボン前駆体(P)を含むマトリックスに黒鉛(G)と共にSi含有活物質(Si)を埋め込むか、Si含有活物質(Si)および黒鉛(G)を有機カーボン前駆体(P)でコーティングしてSi/G/P複合体前要素を与え、前駆体(P)がアモルファスカーボン(C)に変換されるようにこのSi/G/P複合体前要素を熱的に処理するシリコン/黒鉛/カーボン複合体の製造方法。
請求項10
請求項11
カーボン前駆体(P)は、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、リグニンまたはポリアクリロニトリルである請求項10に記載の方法。
請求項12
Si含有活物質および黒鉛は、前駆体モノマーの溶液中に一緒に分散され、溶液中のモノマーは重合されて、Si含有活物質および黒鉛が前駆体マトリックス中に完全に埋め込まれるように前駆体(P)を与える請求項9から11のいずれか一項に記載の方法。
請求項13
請求項14
Si含有活物質(Si)は、非強凝集ナノスケールシリコン粒子を含む請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
請求項15
請求項1から8のいずれか一項に記載のシリコン/黒鉛/カーボン複合体を含むリチウムイオン電池用の電極材料。
請求項16
技術分野
背景技術
0002
再充電可能なリチウムイオン電池は、現在、250Wh/kgまでの最も高いエネルギー密度を有する市販の電気化学的エネルギー貯蔵装置である。それらは、用具のための、およびまた、例えば、自転車または自動車等の輸送手段のための、特に携帯用電子機器の分野で特に利用されている。しかし、特に自動車の用途については、自動車用のより長い範囲を得るために、電池のエネルギー密度のさらなる有意な増加を達成することが必要である。
0003
負極材料(「アノード」)として特に使用されるのは黒鉛状カーボンである。黒鉛状カーボンの特長は、リチウム一次電池に使用されるリチウム金属と比較して、その安定したサイクル特性およびその明らかに高い取扱いの安全性である。負極材料中における黒鉛状カーボンの使用を支持する重要な主張は、リチウムのインターカレーションおよびデインターカレーションに関連付けられるホスト材料の小さな体積変化であり、即ち、電極はほぼ安定のままであることである。例えば、黒鉛状カーボン中のリチウムのインターカレーションについて、わずか約10%の体積増加がLiC6の限定化学量論に対し測定される。しかし、欠点は理論的には372mAh/gというその比較的低い電気化学容量であり、これはリチウム金属を用いて理論的に達成可能な電気化学容量のわずか10分の1程度である。
0004
電極活物質が(リチウムイオンに対する既知の最も高い貯蔵容量、即ち、4199mAh/gを有する材料としての)シリコンに基づくリチウムイオン電池用アノードでは、シリコンは、リチウムによる充電および/または放電の際に約300%までの体積の極端な変化を経験するおそれがある。体積のこの変化の結果、活物質および全体としての電極構造に深刻な機械的ストレスがあり、これは、電気化学的粉砕によって、容量の損失を伴って、電気的接触の損失、ひいては電極の破壊をもたらす。また、使用されるシリコンアノード物質の表面は電解質の構成成分と反応し、可動性リチウムの不可逆的損失をもたらす不動態化保護層(固体電解質界面:SEI)の連続的形成を伴う。
0005
Si含有アノードにおける活物質の深刻な体積膨張およびSEIの形成という問題を解決するために、過去十年間にSi含有活物質の電気化学的安定化に向けて様々な取り組みが見られた(概説は、A. J. Applebyら、J. Power Sources 2007、163、1003−1039により与えられる)。
0006
1つの考えられる解決策は、代わりにカーボンと組み合わされた純粋な形態ではないシリコン含有活物質を使用することである。この場合には、一方で電極コーティングに黒鉛を有する物理的混合物の形態のSi含有活物質を挿入すること(EP1730800B1と比較)、または構造的に複合体材料の形態で2つの元素、即ち、シリコンおよびカーボンを組み合わせることができる(概説は、M. Rossiら、J. Power Sources 2014、246、167−177により与えられる)。
0007
黒鉛および構造的に関連するカーボンは、比較的柔らかく、非常に良好な導電性を有し、低質量を有し、および充電/放電時の体積の少ない変化を特徴とする。これらの理由から、カーボン系アノードは、知られているように、数百サイクルという非常に良好な電気化学的安定性を有する。2つの元素(高容量を有するシリコン(Si)、高い安定性を有する黒鉛(G)および/またはアモルファスカーボン(C))の利点の組み合わせによって、Si/CまたはSi/G/C複合体に基づく電極活物質は、純粋なシリコンよりも安定したサイクル挙動を有し、純粋な黒鉛の容量と比較しても増加した容量を有する。
0008
この種の複合体は、シリコン上へのカーボンの化学蒸着により、EP1363341A2号に従って製造することができる。
0009
また、カーボンまたはカーボン前駆体とシリコンとがよく反応する粉砕により、そしてそれに続く炭化によるSi/C複合体の製造も知られており、これについては、例えば、US20040137327A1号を参照されたい。
0010
続く炭化による有機C前駆体マトリックスへのシリコン粒子の埋め込みもSi/CまたはSi/G/C複合体をもたらし、例えば、US20050136330A1号を参照されたい。ここで考察されるC前駆体は、主に炭化水素、炭水化物、および多様なポリマーであり、その組成および構造に応じて、黒鉛化(柔らかい)または難黒鉛化(硬い)カーボンをもたらす。
0011
アモルファスカーボンマトリックス中に埋め込まれたナノスケールのシリコンのみを含む複合体(Si/C複合体)と、Si/Cシェル内に1つ以上の結晶性黒鉛コアをさらに含む材料(Si/G/C複合体)との間は以下のように区別される。様々な開示において、特に黒鉛の含有率は、導電性および構造的安定性に対し有益な影響を有し、これについては、例えば、EP2573845A1号と比較されたい。
0012
本発明でされる別の区別は、ナノスケールのシリコンが「強凝集体(aggregaten)」(即ち、ナノスケールの一次粒子が、例えば、焼結ネックを介して互いに強固に相互成長しており、もはや互いに分離することはできない)の形態で、または場合により緩い粒子集合体(「弱凝集体(Agglomerate)」)を形成することができる非強凝集の、孤立した個々の粒子の形態で周囲のCマトリックス中に存在しているのか否かである。
0014
非強凝集シリコンを有するSi/C複合体も知られている。ナノ構造のSi/C複合体を製造するための、触媒の存在下でのアルデヒドとのモノおよび/またはポリヒドロキシ芳香族化合物の重縮合およびそれに続く炭化において非強凝集ナノスケールシリコン粉末を使用すること、は、WO2010006763A1号に記載されている。
0015
CA2752844A1号は、SiおよびSiOx粒子のCコーティングのための方法を開示し、そこでは得られた複合体粒子は、非強凝集または非焼結の形態の埋め込まれたナノスケールのSi粒子の少なくとも50%という高い画分を含む。ここで特定したSi/C複合体の欠点は、それらが導電性および構造的な安定性を向上させるための黒鉛を含まないことである。また、記載されたC含有率は非常に低く(<30%)、このためCコーティングは確かにシリコン表面の導電性を向上させるが、それはシリコン粒子の体積膨張に関連した安定化効果を有していない。
0016
US20130302675A1号で請求されたSi/G/C複合体は、(多孔性)黒鉛コアおよびその表面で強凝集したSi粒子を含み、これらの粒子はアモルファスカーボンのコーティングを有する。この複合体の1つの考えられる欠点は、それがSi粒子間にわずかのアモルファスカーボン(1から10%)しか有さないことであり、このためシリコンの体積変化を緩衝することによって十分な安定性を確保する可能性を排除することである。また、US20130302675A1に記載された複合体は、約5%という非常に低いシリコンレベルしか含まず、このため黒鉛の電気化学容量(〜400mAh/g)よりわずかに高いものの、目的の用途の大半において適切でない電気化学容量を含む。
0017
CN101210112A号は、Si粒子の強凝集が、黒鉛コア上の有機ポリマーコーティングの中への埋め込みによりいかに減少されるかについて(ただし、そこでのコーティングは無機カーボンに炭化されず、導電性および機械的強度の点で考えられる欠点を保有する)説明する。これらの構造は、導電性および機械的強度の点で不利であることがわかった。
0018
欧州特許第1730800号明細書
欧州特許出願公開第1363341号明細書
米国特許出願公開第2004/0137327号明細書
米国特許出願公開第2005/0136330号明細書
欧州特許出願公開第2573845号明細書
国際公開第2013/031993号
国際公開第2010/006763号
カナダ特許出願公開第2752844号明細書
米国特許出願公開第2013/0302675号明細書
中国特許出願公開第101210112号明細書
先行技術
0019
A. J. Applebyら、J. Power Sources 2007、163、1003−1039
M. Rossiら、J. Power Sources 2014、246、167−177
発明が解決しようとする課題
0020
本発明の目的は、少なくとも1000mAh/gという高い可逆容量を示し、匹敵する既知の複合体よりも安定したサイクル挙動によって特徴付けられ、シリコン粒子によって提供される高い電気化学容量をより効果的に利用する、シリコン/カーボン複合体に基づく電極活物質を提供することであった。
課題を解決するための手段
0021
この目的は、黒鉛(G)および非強凝集ナノスケールシリコン粒子(Si)を含み、シリコン粒子がアモルファスカーボンマトリックス(C)中に埋め込まれているSi/G/C複合体によって達成される。
図面の簡単な説明
0022
実施例1(7500倍拡大)のSi/G/C複合体のSEM画像を示す。
C/10の電流でのサイクル数の関数としての実施例2からの電極コーティングの充電容量(破線)および放電容量(実線)を示す。
比較例4(5000倍拡大)のSi/G/C複合体のSEM画像を示す。
C/10の電流でのサイクル数の関数としての比較例5からの電極コーティングの充電容量(破線)および放電容量(実線)を示す。
0023
本発明の目的に対し、非強凝集であるシリコン粒子は、それらが孤立した個々の粒子の形態であるが、場合により緩い粒子集合体(「弱凝集体」)が生じることを意味する。他方で、強凝集体は、例えば、もはや互いに分離されない焼結ネックを介して互いに相互成長した一次粒子である。
0024
ナノ強凝集されたナノスケールのSi粒子の使用により、容量の損失と共に多数の充電および放電サイクルにわたる活物質および電極構造の機械的破壊を防止するために、充電の際の(または活物質の上に均一に分布された)シリコンの絶対的な体積膨張が低減される。
0026
障害が発生した場合、これらの破断点は電気的接触の損失につながるおそれがある。
0027
Cマトリックスに均一に埋め込まれた孤立したまたは個々の非強凝集粒子は、最初から優先的な破断点を有しておらず、そのため表面に完全に電気的に接触したままであり、これによりシリコンの電気化学容量の利用率が向上する。
0028
シリコン粒子を囲むカーボンは、電極および/または電池の他の成分との反応から表面を保護するので、このような反応によって生じるリチウム損失を減少させる。
0029
結果は、強凝集シリコン粒子を含む複合体または同様の組成を有する物理的混合物と比較して大幅に改善された電気化学的性能によって区別されたSi/G/C複合体である。
0030
これらの複合体材料のさらなる利点は、リチウムイオン電池の電極の製造において、それらが純粋なナノスケールのシリコン粒子よりも大幅に容易に処理することができることである。
0031
本発明は、好ましくは、非強凝集形態の埋め込まれた、ナノスケールのシリコン粒子を含むアモルファスカーボン層が設けられた1つ以上の黒鉛コアが存在する複合体構造を想定している。
0034
また、ナノSi粒子の使用により、充電および放電時の活物質の機械的安定性が向上する。
0035
非強凝集の状態の結果として、Si粒子がより均一にCマトリックス中に分散されて存在し、一貫して電気化学的に接触される。また、優先破断点として機能するおそれがあり、そのため電気的接触の損失につながるおそれがある強凝集粒子間の弱い結合がない。
0036
高い再現性および成分の均一な分布で、活物質を製造し、処理することができる。
0037
従って、全体的な結果は、電気化学的サイクル安定性および稼働率が向上した新しいSi/G/C複合体である。
0038
Si/G/C複合体材料は、第1の工程において、有機カーボン前駆体(P)に黒鉛(G)と共にSi含有活物質(Si)を埋め込むこみ、次いで第2の工程で、前駆体(P)がアモルファスカーボン(C)に変換されるように、このSi/G/C複合体前要素を熱的に処理することにより製造される。
0039
本発明に従うSi/G/C複合体の製造に用いられるシリコン含有活物質(Si)は、元素シリコン、酸化ケイ素、またはシリコン/金属合金であってもよい。リチウムイオンに対し最大貯蔵容量を有しているので、元素シリコンが好ましい。
0040
シリコン含有活物質は、サブミクロンスケールまたはナノスケールであってもよい微粒子形態で用いることが好ましい。
0041
Si含有活物質は、好ましくは、非強凝集ナノスケールのシリコン粒子を含む。円形または破片状粒子が特に好ましい。Si粒子は、孤立したまたは弱凝集した形態で存在し得るが、複合体構造中で強凝集体として存在することはない。より好ましくは、Si粒子は、孤立した形態である。
0042
リチウムイオン電池に使用するための特に好ましいのは、粒子のエッジの性質に応じて6つの異なる粒子形態にバルク商品を細分するDIN ISO 3435に従った粒子形態IからIVで存在するSi含有活物質である。
0043
特に好ましいのは、<400nm、より好ましくは<200nmの平均粒径を有するナノスケールのSi粒子であり、これは結晶質またはアモルファスであってもよく、結晶粒子が本発明の文脈において特に好ましい。
0046
シリコン含有活物質は、空気接触(自然酸化物;≦10nm)による表面酸化により自然に形成された薄い酸化物層を有していてもよく、または(例えば、H2O2との反応による)化学的酸化によって特異的に不動態化されてもよく、これらの酸化物層は薄いのが好ましい。
0048
さらに、それは、例えば、Li、Sn、Ca、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Al、Fe等の金属とのシリサイドの形態で、他の金属および元素と合金化形態で存在することができる。これらの合金は、二元、三元、または多元系であってもよい。電気化学的貯蔵容量を増大させるために、特に低レベルの外来の元素が好ましい。
0049
使用されるシリコン含有活物質は、方法の一部として偶然による、あるいは意図的な操作による表面化学修飾を有することができる。考えられる典型的な表面官能基としては、以下のもの、即ち、Si−H,Si−Cl、Si−OH、Si−Oアルキル、Si−Oアリール、Si−アルキル、Si−アリール、Si−Oシリルが挙げられる。特に好適なのは使用される特定のカーボン前駆体(P)に物理的または化学的に結合することができる表面基(特に、例えば、Si−OH、Si−(CH2)nNR2、Si−(CH2)nOCH2CH(O)CH2、Si−(CH2)nOH、Si−C6H4OH、Si−(CH2)nCN、Si−(CH2)nNCO等であり、n=1から10)である。結合表面基は、このような官能基を含有してもよいし、あるいはモノマーまたはポリマーであってもよい。それらはSi表面上の1つのみまたは2つ以上の分子鎖に結合してもよい。
0050
Si含有活物質に加えて、黒鉛(G)も、さらなる活物質として本発明のSi/G/C複合体材料中に存在する。
0051
この黒鉛は、天然または合成的に製造された黒鉛であってもよく、合成的に製造された黒鉛が好ましい。黒鉛は完全に結晶性または最大90%のアモルファス成分との半結晶性であってもよく、好ましくは結晶画分>50%である。黒鉛は、薄片または円形粒子の形をとることができる。グラフェンも、同様に複合体中のナノスケールの黒鉛成分として存在することができる。
0052
Si含有活物質および黒鉛の他に、本発明のSi/G/C複合体材料中に、コーティングを有する粒子の形態で、さらなる活物質が存在してもよい。これらのさらなる活物質は、例えば、(導電性)カーボンブラック、アモルファスカーボン、熱分解カーボン、ソフトカーボン、ハードカーボン、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレンのようなカーボン修飾、または、例えば、Li、Sn、Mg、Ag、Co、Ni、Zn、Cu、Ti、B、Sb、Al、Pb、Ge、Bi、希土類元素もしくはそれらの組み合わせのような他の活物質からなってもよい。好適なさらなる活物質は、導電性カーボンブラックおよびカーボンナノチューブならびにSiとの合金として存在することもできるLiおよびSnである。さらに、複合体構造の構造機能を果たすことが知られており、そのため電気化学的安定性に肯定的な影響を及ぼすことができる金属(例えば、銅)、酸化物、炭化物、または窒化物に基づく不活性材料に基づく、複合体中にさらなる成分が存在していてもよい。
0053
カーボン前駆体(P)として、混合物としてまたは別々に連続してのいずれかで複合体に組み込むことができる様々な化合物および物質のグループが存在する。特に有利な前駆体は、高いC含有率を有し、カーボンに熱的に変換されたときに高収率で導電性構造体を生成するものである。
0054
好適な前駆体は次のとおりである:元素状カーボン(特にカーボンブラック、黒鉛、木炭、コークス、カーボン繊維、フラーレン、グラフェン等)、単純な炭化水素(例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ペンタン、イソブタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、スチレン、エチルベンゼン、ジフェニルメタン、ナフタレン、フェノール、クレゾール、ニトロベンゼン、クロロベンゼン、ピリジン、アントラセン、フェナントレン等)、多環芳香族炭化水素および炭化水素混合物(特に、ピッチおよびタール:メソゲンピッチ、メソフェーズピッチ、石油ピッチ、ハードコールタールピッチ等)、有機酸(特に、クエン酸)、アルコール(特に、エタノール、プロパノール、フルフリルアルコール等)、炭水化物(特に、モノ−、オリゴ−、および多糖類をはじめとする、グルコース、スクロース、ラクトース、セルロース、デンプン等)、有機ポリマー(特に、エポキシ樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、リグニン、タンニン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリベンズイミダゾール、ポリドーパミン、ポリピロール、ポリ−パラ−フェニレン)、シリコーン。
0055
特に好ましい前駆体は有機ポリマーおよびピッチである。特に好ましい前駆体は有機ポリマー、より具体的にはレゾルシノール−ホルムアルデヒド樹脂、リグニン、およびポリアクリロニトリルである。
0057
Si/G/Pの複合体前要素の製造
Si/G/P材料はシリコン含有活物質(Si)および黒鉛(G)のカーボン前駆体(P)によるコーティングにより、またはシリコン含有活物質および黒鉛を前駆体含有マトリックスに埋め込むことにより製造される。
0058
ここで、シリコン含有活物質および黒鉛は、各操作に一緒にまたは連続的に導入することができる。カーボン前駆体と一緒に、シリコン含有活物質および黒鉛は、高エネルギー粉砕(乾燥または水および/または有機溶媒と共に)に供してもよく、またはそうでなければ任意の形態で物理的に混合することができる。
0059
また、シリコン含有活物質および黒鉛は、カーボン前駆体の分散体、溶液または溶融物中に分散され、前駆体で被覆され、またはその後の溶媒の除去により前駆体に埋め込まれてもよい。溶媒の除去は、例えば、減圧下、噴霧(乾燥)方法により、またはSi/G/前駆体複合体前要素の析出により、ならびにその後のろ過および遠心分離によって達成することができる。
0060
C前駆体中のシリコンおよび黒鉛の最良の分布を達成することができるので、液相中での処理が好ましい。
0061
特に好ましい一実施形態では、Si含有活物質および黒鉛は、1つ以上の前駆体モノマーの溶液中に一緒に分散され、モノマーは溶液中で重合されて、Si含有活物質および黒鉛が前駆体マトリックス中に完全に埋め込まれるように前駆体(P)を形成する。さらなる反応は湿ったまたは乾燥形態で得られたSi/G/P複合体前要素を用いて起こることができる。また、さらなる処理の前に、中間体は続いて粉砕または、さらなるC前駆体によるコーティング/埋め込みに供してもよい。
0063
Si/G/C複合体へのSi/G/Pの複合体前要素の変換
本発明のSi/G/C複合体を製造するための無機アモルファスカーボン(C)へのカーボン前駆体(P)の変換は、好ましくは嫌気性炭化により熱的に達成される。
0066
炭化は、400から1400℃の間、好ましくは500から1000℃、より好ましくは700から1000℃の温度で行われる。
0069
この目的のために使用される流量は反応器の容積に依存する。約10Lの反応器容積に対しては、流量は好ましくは毎分0から1Lの間、より好ましくは100から600ml/分、非常に好ましくは150から300ml/分である。
0070
反応混合物の加熱は、毎分1から20℃の異なる加熱速度を用いて行ってもよく、好ましくは1から10℃/分の間、より好ましくは3から5℃/分の加熱速度が使用される。
0072
目標温度に達したとき、反応混合物は一定時間その温度で調整され、または直ちに冷却される。カーボンの形成を完了するためには、30分から24時間、より好ましくは2から10時間、非常に好ましくは2から3時間の保持時間が好ましい。
0073
冷却も積極的または受動的におよび均一にまたは段階的に行うことができる。
0074
通常、指定された粒子径は、電極製造のための得られたSi/G/C複合体粉末のさらなる使用のために必要であるので、機械的な分級のためおよび場合により粉砕のための、炭化後のさらなる工程があり得る。
0075
得られたSi/G/C複合体粉末の表面は、その後、例えば、さらなるCコーティングの適用によって、さらなる操作工程で修飾することができる。
0076
得られたSi/G/C複合体粉末は、孤立した粒子、比較的緩い弱凝集体、または固い強凝集体の形態で得ることができ、個々の粒子は、Liイオン電池の用途のために特に好ましい。
0078
複合体の平均一次粒子径は、好ましくは、<1mm、より好ましくは<100μm、非常に好ましくは<50μmである。
0079
シリコン含有活物質はSi/G/C複合体中に、好ましくは、孤立した粒子または弱凝集体の形態で存在するが、決して強凝集形態ではない。
0081
C前駆体から生成されたアモルファスカーボンは、シリコン含有活物質および黒鉛を薄層の形で覆うことができるか、または好ましくはシリコン含有活物質が内部に埋め込まれた黒鉛コアの周りにCマトリックスを形成してもよく、または表面上に外側に存在し、およびこれらの構成の可能性な組合せでもよい。ここで、Cマトリックスは非常に緻密であってもよく、好ましくは多孔質である。特に好ましいのは、シリコンが完全に黒鉛コア上の多孔質Cマトリックスに埋め込まれて存在する構造である。
0082
Si/G/C複合体中のシリコン含有活物質およびカーボンの両方は、結晶質またはアモルファスであってもよく、また結晶質成分およびアモルファス成分の混合物を含んでもよい。
0083
Si/G/C複合体は低いまたは非常に高い比表面積(BET)を有していてもよく、10から400m2/g(100から250m2/gが好ましい)の範囲であってもよい。
0084
本発明のSi/G/C複合体は種々の化学組成物中に存在し得る。
0085
一般に、Si/G/C複合体は10から90重量%のシリコン含有率、10から90重量%の総カーボン含有率(G+C)、および0から20重量%の酸素含有率を有していてもよい。好ましい組成は、20から50重量%のシリコン、50から80重量%の総カーボン含有率(G+C)、および0から10重量%の酸素含有率のものである。特に好ましい組成は、10から30重量%のシリコン、70から90重量%の総カーボン含有率(G+C)、および0から5重量%の酸素含有率のものである。
0086
カーボン画分は、複合体の組成に応じて、炭化によって得られた純粋なアモルファスカーボン、黒鉛、場合により導電性カーボンブラック、場合によりカーボンナノチューブ(CNT)、または他のカーボンの修飾上に分布されてもよい。高い黒鉛画分が特に好ましい。
0087
述べた主要な構成成分の他にも、意図的な添加または偶発的不純物の形態で存在するさらなる化学元素、即ち、Li、Fe、Al、Cu、Ca、K、Na、S、Cl、Zr、Ti、Pt、Ni、Cr、Sn、Mg、Ag、Co、Zn、B、Sb、Pb、Ge、Bi、希土類が存在し得、その量は好ましくは<1重量%、より好ましくは<100ppmである。
0088
本発明のさらなる主題は、リチウムイオン電池用の電極活物質としての本発明のSi/G/C複合体の使用、および本発明のSi/G/C複合体を含むリチウムイオン電池用電極材料である。
0089
この種の電極材料は、リチウムイオン電池の負極(アノード)を製造するために用いることが好ましい。
0090
従って、本発明のさらなる主題は、カソードとして第1の電極を有し、アノードとして第2の電極を有し、2つの電極の間に配置されたセパレータを有し、電極に対する2つの接続を有し、述べられた部品を収容するケーシングを有し、電極およびセパレータの両方が含浸されるリチウムイオン含有電解質を有し、アノードが本発明のSi/G/C複合体を含む電極材料を含むリチウムイオン電池である。
0091
アノードは、電極活物質をさらなる成分、場合により水、ヘキサン、トルエン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、もしくはエタノールのような溶媒、また溶媒の混合物で処理することにより製造され、電極インクまたは電極ペーストが形成される。
0093
用語「さらなる成分」は、黒鉛、リチウム、スズ、アルミニウム、酸化ケイ素もしくは金属合金のようにリチウムイオンを貯蔵する能力を有するさらなる材料、ポリマーバインダーもしくはバインダー混合物、導電性カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)もしくは金属粉末のような導電性材料、および例えば、分散剤もしくは細孔形成剤のようなさらなる助剤を意味する。
0094
考えられるバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、または熱可塑性エラストマー、特にエチレン/プロピレン−ジエン三元共重合体である。
0095
特に好ましい一実施形態は、電極インクまたは電極ペーストを形成するために溶媒としての水で処理される、バインダーとしての変性セルロースを含む。
0099
銅箔が本発明の電極材料で被覆される前に、銅箔は、例えば、ポリマー樹脂に基づく市販のプライマーを用いて処理することができる。それは銅との密着性を向上させるが、それ自体は実質的に電気化学的活性を保有しない。
0100
電極コーティングは一定重量になるまで乾燥される。乾燥温度は使用される材料によって、および使用される溶媒によって導かれる。それは20℃から300℃の間、より好ましくは50℃から150℃の間にある。
0101
電極コーティングの乾燥重量に基づく本発明の複合体材料の割合は、5重量%から98重量%の間、より好ましくは60重量%から95重量%の間である。
0103
好適なカソード材料は、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物(ドープおよび非ドープ)、リチウムマンガン酸化物(スピネル)、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リン酸リチウム鉄、リン酸リチウムコバルト、リン酸リチウムマンガン、リン酸リチウムバナジウム、リチウムバナジウム酸化物を含む。
0104
セパレータは、電池の製造で知られている種類の、イオンのみを透過させる膜である。セパレータは、第2の電極から第1の電極を分離する。
0105
電解質は、非プロトン性溶媒中の1つ以上のリチウム塩(=電解質塩)の溶液である。使用することができる電解質塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化ヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)、またはホウ酸リチウム(特に、リチウムビス(オキサラト)ボレート(LiBOB)、リチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB))である。
0107
使用される溶媒としては、個別にまたは混合物として、環状カーボネート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、アセトニトリル、有機炭酸エステルまたはニトリルが挙げられる。
0108
より好ましくは、電解質は、ビニレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のフィルム形成剤を含み、それによりSi複合体電極のサイクル安定性において有意な改善を達成することができる。これは主に、活性粒子の表面の固体電解質相間の形成に起因する。電解質中のフィルム形成剤の割合は、好ましくは0.1重量%から20.0重量%の間、より好ましくは0.2重量%から15.0重量%の間、非常に好ましくは0.5重量%から10重量%の間である。
0109
また、上記液体電解質系の他に、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはポリエチレンオキシドという固相を含む固体電解質またはゲル電解質、ならびにこれらの固体電解質の混合物および/またはこれらの固相と上記の液体電解質相との混合物も使用することができる。
0112
以下の実施例は本発明を適用する際の方法および取り組みを説明するが、その範囲を限定するものではない。
0114
合成に使用された溶媒を標準的な方法で乾燥し、乾燥アルゴン雰囲気下で貯蔵した。実施例で使用された方法および材料は以下の通りであった。
0115
炭化
実施例で行った全ての炭化は、Carbolite株式会社からの1200℃の3ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301)を用い、タイプNのプローブ熱電対を含むカスケード制御を用いて行った。記載の温度は熱電対の位置での管状炉の内部温度に関係する。炭化されるべき各出発物質を秤量して、1つ以上の溶融石英燃焼ボート(QCS株式会社)に入れ、溶融石英製の作業管(直径6cm;長さ83cm)に導入した。 炭化のために使用された設定および操作パラメータはそれぞれの実施例に示される。
0116
機械的な後処理/粉砕
炭化後に得られたSi/G/C粉末を、その後、レッチェPM100遊星ボールミルで粉砕することにより、いくつかの場合においてさらに粉砕した。この目的のため、Si/G/C粉末を粉砕ボール(特殊鋼;10mm直径)と一緒に50ml粉砕カップ(特殊鋼)に導入し、以下の実施例中に定義された持続時間、予め設定された回転速度(300rpm)で粉砕した。
0118
走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)
Zeiss Ultra(ツァイス・ウルトラ)55走査型電子顕微鏡およびINCA X視界エネルギー分散型X線分析装置を用いて顕微鏡研究を行った。サンプルはBaltec SCD500スパッタ/カーボンコーティング装置を用いて、帯電現象を防止するために、分析する前にカーボンで蒸気コーティングした。
0119
透過型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析法(TEM/EDX)
ツァイス・リブラ120透過型顕微鏡およびOxford Instruments社からのEDX検出器を用いて顕微鏡研究を行った。分析の前に、サンプルをSpezifix 20に埋め込み、超ミクロトーム部により分析した。
0121
Si/G/C複合体における報告したシリコン含有率は、ICP(誘導結合プラズマ)発光分析法(パーキンエルマーからのOptima 7300 DV)によって決定した。この目的のために、サンプルは電子レンジ(アントンパールからの電子レンジ3000)で酸分解法(HF/HNO3)に供した。 ICP−OESの決定は、酸性水溶液(例えば、飲料水、廃水およびその他の水、土壌および堆積物の王水抽出物の酸性化サンプル)の分析のために使用されるISO 11885「Water quality − Determination of selected elements by inductively coupled plasma atomic emission spectrometry (ICP−OES) (ISO 11885:2007):ドイツ語版EN ISO11885:2009」に適応させる。
0122
粒子径決定
粒度分布を、Horiba LA950を用いる静的レーザー散乱によってISO 13320に従って本発明の目的のために決定した。この決定の場合にサンプルを調製する際、個々の粒子の代わりに弱凝集体の大きさを測定しないように、測定溶液中の粒子の分散に特に注意を払わなければならない。ここで調査したSi/G/C複合体については、粒子は水に分散させた。その目的のために、必要なときに、測定前の分散液を、LS24d5ソノトロードを有するHielscher(ヒールシャー)UIS250v実験室用超音波装置内で250Wの超音波で4分間処理した。
0124
熱重量分析(TGA)
複合体(アモルファスカーボン(C)と一緒の黒鉛(G))内の異なるカーボン修飾の割合を、メトラーTGA851熱天秤を用いて、熱重量分析によって決定した。測定は、25から1000℃の温度範囲で10℃/分の加熱速度で測定ガスとしての酸素下で行った。GおよびCの存在下では、全カーボンの燃焼により生じた質量損失は、400から800℃の温度範囲で2段階で起きて、各実施例で報告したC:G比をこれらの段階の間の比から決定した。
0125
以下の材料は商業的供給源から入手または社内製造し、さらに精製することなく直接使用した:エタノール中のシリコンナノ粉末(攪拌ボールミル中で湿式粉砕することにより社内製造した、NP180−破片状、非強凝集Si粒子D50=180nm)の懸濁液(固形分22重量%)、シリコンナノ粉末(Nanostructured & Amorphous Materialsによって製造された、20から30nmの直径を有する強凝集円形一次粒子;D50=256nm)、黒鉛KS6L−C(ティムカル)、メタノール(99.0%SeccoSolv;メルク)、レゾルシノール(>99.0%; Sigma−Aldrich)、ホルムアルデヒド溶液(水中37%、10%から15%のメタノールで安定化される;Sigma−Aldrich)、アンモニア溶液(32%;メルク)。
0126
[実施例1]
非強凝集ナノスケールシリコン粒子を有するSi/G/C複合体
シリコンナノ粉末懸濁液(9.00g、エタノール中の22重量%のNP180;2.07gのSiに相当する)および黒鉛(3.00g;KS6L−C;ティムカル)を80mlのメタノールと混合した。得られた懸濁液を、内部超音波(ブランソンデジタルソニファイアー250)で2×10分間処理した。レゾルシノール(3.20g)およびホルムアルデヒド溶液(5.90g、水中の37%、10%のメタノールで安定化される)を添加した。懸濁液のpHを、32%アンモニア溶液(〜0.5mlのアンモニア溶液)を使用してpH=6.5に調整した。
0127
反応混合物を撹拌しながら加熱し(90℃、4時間)、次いで室温まで冷却した。
0128
溶媒混合物を減圧(3・10−2ミリバール、80℃)下で除去した。得られた残渣を減圧下で2時間これらの条件下で乾燥させた。
0129
黒−茶色の固体を溶融石英ボート(QCS株式会社)に入れ、不活性ガスとしてアルゴンを用い、タイプNのサンプル要素を含むカスケード制御を使用して、3ゾーン管状炉(TFZ 12/65/550/E301;Carbolite株式会社)内で炭化した:初期加熱速度3℃/分、温度300℃、持続時間1時間、Ar流量200ml/分;その後さらに直接、加熱速度10℃/分、温度700℃、持続時間2時間、Ar流量200ml/分。
0131
元素組成:Si26.4重量%、カーボン69.0重量%(G40重量%;C29重量%)、O4.6重量%。
0132
粒度分布(静的レーザー光散乱;Horiba LA−950):D10:2.76μm、D50:4.79μm、D90:8.35μm。ここで、および他の場所で、D10、D50およびD90の値は、粉砕した材料の体積加重直径サイズ分布の10%、50%および90%パーセンタイル値を表す。
0133
オーバーサイズ>20μmを除去するために、Si/G/C粉末を、その後、遊星ボールミル(レッチェPM1000)でさらに粉砕した:特殊鋼製粉砕カップおよび粉砕ボール;12×10mmボール;回転速度300rpm;2時間。
0134
粒度分布(静的レーザー光散乱;Horiba LA−950):D10:0.334μm、D50:1.15μm、D90:5.33μm。
0135
比表面積(BET):236m2/g。
0136
材料の容量(元素組成および存在する元素の容量から計算)1119mAh/g。
0138
[実施例2]
電極コーティングの製造
実施例1に従った非強凝集シリコン粒子を有する複合体材料2.00gおよび導電性カーボンブラック0.30g(ティムカル、Super P Li)を、水中のナトリウムカルボキシメチルセルロース(ダイセル;等級1380)の1.0重量%強溶液20.0gの中に、12m/秒の周速度でディソルバーを使用して分散させた。
0139
脱気が行われた後、分散液を、0.030mmの厚さの銅箔(Schlenk Metallfolien、SE−Cu58)に、0.10mmのスロットの高さを有するフィルム描画フレーム(エリクセン、モデル360)を用いて塗布した。
0140
このようにして製造した電極コーティングを、その後60分間80℃で乾燥させた。
0143
実施例2からの電極コーティングを作用電極として使用し、リチウム箔(ロックウッドリチウム、厚さ0.5mm)を参照電極および対電極として使用した。100μlの電解質を含浸させた不織布の6プライスタック(Freudenberg Vliesstoffe、FS2226E)はセパレータとして機能した。
0144
使用した電解質は、2重量%のビニレンカーボネートを添加した、エチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの3:7(v/v)の混合物中の六フッ化リン酸リチウムの1モル溶液からなっていた。
0146
電気化学的試験は、20℃で行った。
0149
電極の放電または脱リチオ化は、電圧限界を達成するまで定電流でのcc(定電流)方法において行った。選択した特定の電流は電極コーティングの重量に基づいていた。
0150
図2は、C/10の電流でのサイクル数の関数としての実施例2からの電極コーティングの充電容量(破線)および放電容量(実線)を示す。
0151
実施例3からの電極コーティングは約806mAh/gの可逆容量を示し、1007mAh/gの実施例1からの複合体材料の容量および第1のサイクルにおける材料の計算された容量の90%の利用に相当する。100サイクル後、容量保持は第1のサイクルからの容量の約90%である。
0152
[比較例4]
強凝集ナノスケールシリコン粒子を有するSi/G/C複合体(本発明ではない)
強凝集ナノスケールシリコン粒子を有するSi/G/C複合体を実施例1と同様の方法で製造するが、強凝集粒子の乾燥Siナノ粉末(2.00g;Nanostructure & Amorphous Materials)によってD50=180nmのシリコンナノ粉末懸濁液(NP180、非強凝集粒子)を置き換えた。
0153
炭化後、5.86gの黒色粉末固体を得た(炭化収率82%)。
0154
黒鉛表面に結合して、アモルファスカーボンで被覆された強凝集球状一次粒子の構造がある。
0155
元素組成:Si30.8重量%、カーボン66.0重量%(G40重量%;C26重量%)、O3.2重量%。
0156
粒度分布(静的レーザー光散乱;Horiba LA−950):D10:2.55μm;D50:4.31μm;D90:6.83μm。
0157
比表面積(BET):152m2/g。
0158
材料の容量(元素組成および存在する元素の容量から計算)1553mAh/g
0160
[比較例5]
電極コーティングの製造(本発明ではない)
比較例5は、強凝集シリコン粒子を含む複合体材料を有する電極コーティングの製造および電気化学的特徴付けに関する。
0161
比較例4に従った強凝集シリコン粒子および0.30gの導電性カーボンブラック(ティムカル、Super P Li)を有する複合体材料2.00gを、水中のナトリウムカルボキシメチルセルロース(ダイセル、等級1380)1.0重量%強溶液20.0g中に、12m/秒の周速度でディソルバーを使用して分散させた。
0162
脱気が行われた後、分散液を、0.030mmの厚さの銅箔(Schlenk Metallfolien、SE−Cu58)に、0.10mmのスロットの高さを有するフィルム描画フレーム(エリクセン、モデル360)を用いて塗布した。
0163
このようにして製造した電極コーティングをその後60分間80℃で乾燥させた。
0164
電極コーティングの平均容量は1242mAh/gであり、平均コート重量は1.16mg/cm2である。
0165
[比較例6]
電気化学的研究の実施(本発明ではない)
比較例4からの強凝集シリコン粒子を含む複合体を有する電極コーティングを実施例3に記載したように試験した。
0166
図4は、C/10の電流でのサイクル数の関数としての比較例5からの電極コーティングの充電容量(破線)および放電容量(実線)を示す。
0167
比較例5からの電極コーティングは約870mAh/gの可逆容量を示し、1088mAh/gの比較例4からの複合体材料の容量および第1のサイクルにおける材料の計算された容量の70%の利用に相当する。100サイクル後、容量保持は第1のサイクルからの容量の約83%である。
0168
[比較例7]
実施例1で用いた温度条件下でのシリコンナノ粒子の強凝集安定性の確認
種々の粒子径(D50=100nm、150nm、200nm)のエタノール中のシリコンナノ粉末懸濁液を減圧下で溶媒を除去し、乾燥させ、得られた乾燥シリコンナノ粉末を1500℃までの温度範囲で示差熱分析(DTA)により分析した。
実施例
0170
その結果、実施例1での処理および炭化の選択された条件(700から1400℃)下で、Si粒子の溶融および結果として生じる強凝集は存在しない。
技術視点だけで見ていませんか?
この技術の活用可能性がある分野
分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成