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課題・解決手段

高齢者における認知症の最も一般的な原因であるアルツハイマー病は、現時点では不治である衰弱性の神経変性疾患である。かつては、ADは、脳の生検によって又は患者死亡した後の剖検の際にのみ明確に診断することができた。脳内の特徴的なプラーク及び濃縮体病変の存在を実証するこれらの方法は、依然として、ADの病理学的診断ゴールドスタンダードと考えられている。しかし、臨床的状況では、脳の生検は、めったに行われず、診断は、一連神経学検査心理測定的検査、並びに脳脊髄液及び血液中のApoE及びタウタンパク質又はβ−アミロイドペプチドなどの生化学的マーカーの測定を含む生化学的検査に依存している。本発明は、正常状態におけるそれらの発現と比べ疾患状態において差次的に発現されているマーカーパネルを明らかにし且つ説明し、並びに神経認知障害に関連したマーカーのパネルを特に同定及び説明している。かかるバイオマーカーパネルは、臨床試験における、及び恐らくは臨床実践における、CSF分子マーカーとPET撮像などの、更により特異的であるがしかしより侵襲的で高価なアプローチに対し、初期記憶障害の患者を選別する上でかなりの価値がある。

概要

背景

(発明の背景
認知症は、高齢者の重大な公衆衛生問題の一つであり、我々の老齢人口における認知症患者の数の増加は、世界中の健康制度に、重大な財政負担を課している。認知症患者の半数を上回る人数が、アルツハイマー病(AD)を有する。ADの罹患率及び発生数は、急激な増加を示してきた。ヨーロッパにおけるADの罹患率は、60〜69について0.3%、70〜79歳について3.2%、及び80〜89歳について10.8%である。AD発症後の生存期間は、およそ5〜12年である。

ADは、高齢集団における最も一般的な神経変性障害であり;通常、65歳を超えたヒトが罹患し、且つ認知力及び機能の絶え間なく進行する低下を生じる。現在のところ不治である。それは、脳の一部分、主として、記憶の符号化に関与している領域である海馬の神経を破壊する。アルツハイマー病は、認知機能及び機能自律性不可逆的な進行性喪失を引き起こす。ADの最初期徴候は、単純な物忘れと間違えられることがあるが、最終的に該疾患を有すると診断される人においては、これらの初期徴候は、精神機能低下の、より重篤な症状に容赦なく進行する。ADが発症するのにかかる時間は、人によって変わるが、進行した徴候として、重篤な記憶障害錯乱言語障害人格変化及び行動変化、並びに判断力衰えが挙げられる。AD患者は、話し好きでなくなり(non-communicative)、非友好的になることがある。この疾患は、その進行が深刻な認知症に帰するので、患者は、自身のケアができず、施設収容又は家庭環境における専門家のケアを必要とすることが多い。一部の患者は、ADと診断を受けた後、長年生存し得るが、診断後の平均余命は、8年である。

かつては、ADは、脳の生検によって又は患者が死亡した後の剖検の際にのみ明確に診断することができた。脳内の特徴的なプラーク及び濃縮体病変の存在を実証するこれらの方法は、依然として、ADの病理学的診断ゴールドスタンダードと考えられている。しかし、臨床的状況では、脳の生検は、めったに行われず、診断は、一連神経学検査心理測定的検査、並びに脳脊髄液及び血液中のApoE及びタウタンパク質又はβ−アミロイドペプチドなどの生化学的マーカーの測定を含む生化学的検査に依存している。

バイオマーカーは、AD及び他の認知症を診断するための次の段階において鍵を握る可能性がある。ADの診断検査のための必要条件を満たすマーカーは、いくつかの利点を有するであろう。理想的なマーカーは、脳撮像及び神経病理学的検査において変性が観察される前の、疾患の非常に初期の段階で、AD症例を同定するものであろう。バイオマーカーは、可能な限り早期に治療を開始するための第一の指標であり得、かつ、新規治療法の、特に神経病理学的変化の発生を防止することに焦点が当てられている治療法の有効性スクリーニングする際にも極めて役立ち得る。マーカーはまた、この疾患の発生のフォローアップにおいても有用であろう。

プラーク及び濃縮体(各々、Aβ及びタウ)などのADの病理学的特徴に関連したマーカーが、最も広範に研究されている。最も有望であるのは、ADにおけるポリペプチド断片Aβ(1-40)、Aβ(1-42)及びタウ、又は両方のタンパク質組合せの脳脊髄液(CSF)濃度の研究に由来する。多くの研究は、CSF中のAβ(1-42)の減少を報告しているが、総Aβタンパク質又はAβ(1-40)濃度は依然変化しないことを報告している。

CSF試料余り望ましくないという認識から、血液並びに血清及び血漿などの血液産物中のタンパク質マーカーを同定するいくつかの努力がなされている。AD状態において、それらの正常状態における発現と比べ、差次的に発現されるかかる血液タンパク質群は、WO2006/035237に説明されている。これらのタンパク質は、新規の診断検査及び予後検査の開発において有用であることが判明しているが、アルツハイマー病及び関連した認知症の患者の診断及び予後モニタリングにおいて優れた感度及び/又は特異度で実行され得る更なるマーカーのパネル発見及び検証が、依然必要である。

概要

高齢者における認知症の最も一般的な原因であるアルツハイマー病は、現時点では不治である衰弱性の神経変性疾患である。かつては、ADは、脳の生検によって又は患者が死亡した後の剖検の際にのみ明確に診断することができた。脳内の特徴的なプラーク及び濃縮体病変の存在を実証するこれらの方法は、依然として、ADの病理学的診断のゴールドスタンダードと考えられている。しかし、臨床的状況では、脳の生検は、めったに行われず、診断は、一連の神経学的検査、心理測定的検査、並びに脳脊髄液及び血液中のApoE及びタウタンパク質又はβ−アミロイドペプチドなどの生化学的マーカーの測定を含む生化学的検査に依存している。本発明は、正常状態におけるそれらの発現と比べ疾患状態において差次的に発現されているマーカーのパネルを明らかにし且つ説明し、並びに神経認知障害に関連したマーカーのパネルを特に同定及び説明している。かかるバイオマーカーパネルは、臨床試験における、及び恐らくは臨床実践における、CSFの分子マーカーとPET撮像などの、更により特異的であるがしかしより侵襲的で高価なアプローチに対し、初期の記憶障害の患者を選別する上でかなりの価値がある。なし

目的

本発明は、マーカーのパネルを使用する、神経認知障害の進行、予後及び診断の方法を提供する

効果

実績

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請求項1

請求項2

前記パネルが、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞調節物質)及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーを更に含む、請求項1記載のバイオマーカーパネル。

請求項3

前記パネルが、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)のマーカーを更に含む、請求項2記載のバイオマーカーパネル。

請求項4

前記パネルが、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1からなる群から選択されるマーカーの1種以上を更に含む、請求項3記載のバイオマーカーパネル。

請求項5

前記パネルが、ApoEε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)を更に含む、請求項1〜4のいずれか一項記載のバイオマーカーパネル。

請求項6

対象における神経認知障害の進行及び/又は予後を決定する方法であって、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の、請求項1〜5のいずれか一項記載のバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む、前記方法。

請求項7

前記方法が:a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;b)請求項1〜5のいずれか一項記載のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を決定すること;c)試験時点での試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、ここでこの試験時点は、進行及び/又は予後の方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該タンパク質の量又は濃度は、該対象における神経認知障害の進行及び/又は予後の指標である、請求項6記載の方法。

請求項8

前記試料中の該マーカーの量又は濃度が、神経認知疾患の進行及び/又は予後の指標である、請求項6又は7のいずれか一項記載の方法。

請求項9

前記神経認知障害の性質又は程度が決定される、請求項6〜8のいずれか一項記載の方法。

請求項10

前記神経認知障害が、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭認知症又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項6〜9のいずれか一項記載の方法。

請求項11

前記神経認知障害が、MCI又はADである、請求項10記載の方法。

請求項12

前記神経認知疾患の進行及び/予後が、MCIの進行及び/又は予後である、請求項10又は11記載の方法。

請求項13

前記神経認知疾患の進行及び/予後が、ADの進行及び/予後である、請求項10又は11記載の方法。

請求項14

前記神経認知障害の進行が、MCIからADへの進展である、請求項10又は11記載の方法。

請求項15

前記進展が、12ヶ月以下にわたり決定される、請求項14記載の方法。

請求項16

対象における神経認知障害を診断又は評価する方法であって、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の請求項1〜5のいずれか一項記載のバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む、前記方法。

請求項17

前記方法が:a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;b)請求項1〜5のいずれか一項記載のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を決定すること;c)試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、ここでこの試験時点は、診断方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該マーカーの量又は濃度は、該対象における神経認知障害の存在又は非存在の指標である、請求項16記載の方法。

請求項18

前記試料中の該マーカーの量又は濃度が、神経認知障害の指標である、請求項17記載の方法。

請求項19

前記神経認知障害の性質又は程度が決定される、請求項18記載の方法。

請求項20

前記神経認知障害が、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭認知症又はそれらの組合せからなる群から選択される、請求項17〜19のいずれか一項記載の方法。

請求項21

前記神経認知障害が、MCI又はADである、請求項20記載の方法。

請求項22

前記神経認知疾患が、ADである、請求項21記載の方法。

請求項23

前記神経認知疾患が、MCIである、請求項21記載の方法。

請求項24

前記試料中の該タンパク質の量又は濃度の変化が、MCIを有する対象におけるADへの進行の指標であり、ここでMCIからADへの進行は、12ヶ月以下の期間にわたって生じる、請求項21記載の方法。

請求項25

前記試料中の該マーカーの量又は濃度の変化が、該対象における脳萎縮の存在又は範囲の指標である、請求項17記載の方法。

請求項26

神経認知障害を伴う対象から採取された試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度が、神経認知障害を軽減するのに最も適切かつ有効な療法を予測し並びにその療法の成果モニタリングするために使用される、請求項6〜25のいずれか一項記載の方法。

請求項27

前記バイオマーカーパネルのマーカーが、a)該マーカーの各々への1種以上の結合要素の使用によるか、又は、b)試料中の該マーカーの各々に特異的な自己抗体の検出によるか、又はc)質量分析によるか、あるいはa)、b)及びc)の任意の組合せにより検出される、請求項6〜26のいずれか一項記載の方法。

請求項28

前記試料が、固体支持体上に固定されている、請求項27記載の方法。

請求項29

前記バイオマーカーパネルのマーカーが、2Dゲル電気泳動を使用し検出される、請求項6〜26のいずれか一項記載の方法。

請求項30

神経認知障害を治療するための薬剤スクリーニングする方法であって:(a)神経認知障害又はそれらの症状を有する対象から得られた又はこれを代表する組織試料又は体液試料を提供することであって、ここで対象及び/又は試料は、スクリーニングされる薬剤により治療されていること;(b)治療された対象及び/又は試料由来の若しくはこれを代表する試料中の、請求項1〜5のいずれか一項記載のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を決定すること;並びに(c)前記薬剤が、治療された対象及び/又は試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度へ影響を及ぼすかどうかを決定すること:を含む、前記方法。

請求項31

前記薬剤により治療されない対象と比べた、この薬剤により治療される対象中のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度が、この薬剤が神経認知障害の治療において有用であり得ることの指標である、請求項30記載の方法。

請求項32

前記工程(a)の前に、健常な個体、重症度又は進行が異なる神経認知障害を有する患者、及びこの薬剤により治療されていない神経認知障害を有する患者に由来する1種以上の対照試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの濃度又は量を決定する工程を更に含む、請求項30又は31のいずれか一項記載の方法。

請求項33

前記薬剤が、対照に比べバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度の経時的変化を防止又は遅延する場合に、選択される、請求項30〜32のいずれか一項記載の方法。

請求項34

前記バイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度が:(a)正常対象及び神経認知障害の症状を有する対象;並びに/又は(b)この薬剤で治療されていない神経認知障害の症状を有する対象及びこの薬剤で治療されている神経認知障害の症状を伴う対象:から得られた、又はこれらを代表する試料中で決定される、請求項30〜33のいずれか一項記載の方法。

請求項35

前記神経認知障害又はそれらの症状を有する対象が、神経認知障害を伴うヒト対象である、請求項30〜34のいずれか一項記載の方法。

請求項36

前記対象が、神経認知障害の非-ヒト動物モデルである、請求項30〜34のいずれか一項記載の方法。

請求項37

前記神経認知障害が、ADである、請求項30〜36のいずれか一項記載の方法。

請求項38

前記対象が、変異体アミロイド前駆体タンパク質(APP)トランスジェニックマウスプレセニリン-1(PS-1)トランスジェニックマウス、二重遺伝子導入APP/PS-1トランスジェニックマウス、及び/又はグリコーゲン合成酵素キナーゼトランスジェニックマウスであり、並びに正常対象が、野生型マウスである、請求項30〜34及び請求項36〜37のいずれか一項記載の方法。

請求項39

前記組織又は体液の試料が、尿、血液、血漿血清唾液又は脳脊髄液の試料である、請求項6〜38のいずれか一項記載の方法。

請求項40

組織試料又は体液試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの検出のための試薬を含むキットであり、ここで該バイオマーカーパネルが、請求項1〜5のいずれか一項に記載されている、前記キット。

請求項41

前記キットが、バイオマーカーパネルのマーカーに特異的に結合する1種以上の結合要素を更に含む、請求項40記載のキット。

請求項42

前記1種以上の結合要素が、一次抗体であり、ここで各一次抗体は、バイオマーカーパネルの異なるマーカーに特異的に結合する、請求項41記載のキット。

請求項43

前記キットが、一次抗体に特異的に結合する1種以上の二次抗体を更に含む、請求項42記載のキット。

請求項44

前記二次抗体が、標識されている、請求項43記載のキット。

請求項45

前記キットが、バイオマーカーパネルのマーカーの対照試料を更に含む、請求項40〜44のいずれか一項記載のキット。

技術分野

0001

(発明の分野)
本発明は、アルツハイマー病などの神経認知障害において、正常状態と比べ、差次的発現されるマーカーパネルに関する。更に本発明は、マーカーのパネルを使用する、神経認知障害の進行、予後及び診断の方法を提供する。なお更に本発明は、マーカーのパネルを使用し、神経認知障害の予防及び治療のための薬剤を同定する方法を提供する。

背景技術

0002

(発明の背景
認知症は、高齢者の重大な公衆衛生問題の一つであり、我々の老齢人口における認知症患者の数の増加は、世界中の健康制度に、重大な財政負担を課している。認知症患者の半数を上回る人数が、アルツハイマー病(AD)を有する。ADの罹患率及び発生数は、急激な増加を示してきた。ヨーロッパにおけるADの罹患率は、60〜69について0.3%、70〜79歳について3.2%、及び80〜89歳について10.8%である。AD発症後の生存期間は、およそ5〜12年である。

0003

ADは、高齢集団における最も一般的な神経変性障害であり;通常、65歳を超えたヒトが罹患し、且つ認知力及び機能の絶え間なく進行する低下を生じる。現在のところ不治である。それは、脳の一部分、主として、記憶の符号化に関与している領域である海馬の神経を破壊する。アルツハイマー病は、認知機能及び機能自律性不可逆的な進行性喪失を引き起こす。ADの最初期徴候は、単純な物忘れと間違えられることがあるが、最終的に該疾患を有すると診断される人においては、これらの初期徴候は、精神機能低下の、より重篤な症状に容赦なく進行する。ADが発症するのにかかる時間は、人によって変わるが、進行した徴候として、重篤な記憶障害錯乱言語障害人格変化及び行動変化、並びに判断力衰えが挙げられる。AD患者は、話し好きでなくなり(non-communicative)、非友好的になることがある。この疾患は、その進行が深刻な認知症に帰するので、患者は、自身のケアができず、施設収容又は家庭環境における専門家のケアを必要とすることが多い。一部の患者は、ADと診断を受けた後、長年生存し得るが、診断後の平均余命は、8年である。

0004

かつては、ADは、脳の生検によって又は患者が死亡した後の剖検の際にのみ明確に診断することができた。脳内の特徴的なプラーク及び濃縮体病変の存在を実証するこれらの方法は、依然として、ADの病理学的診断ゴールドスタンダードと考えられている。しかし、臨床的状況では、脳の生検は、めったに行われず、診断は、一連神経学検査心理測定的検査、並びに脳脊髄液及び血液中のApoE及びタウタンパク質又はβ−アミロイドペプチドなどの生化学的マーカーの測定を含む生化学的検査に依存している。

0005

バイオマーカーは、AD及び他の認知症を診断するための次の段階において鍵を握る可能性がある。ADの診断検査のための必要条件を満たすマーカーは、いくつかの利点を有するであろう。理想的なマーカーは、脳撮像及び神経病理学的検査において変性が観察される前の、疾患の非常に初期の段階で、AD症例を同定するものであろう。バイオマーカーは、可能な限り早期に治療を開始するための第一の指標であり得、かつ、新規治療法の、特に神経病理学的変化の発生を防止することに焦点が当てられている治療法の有効性スクリーニングする際にも極めて役立ち得る。マーカーはまた、この疾患の発生のフォローアップにおいても有用であろう。

0006

プラーク及び濃縮体(各々、Aβ及びタウ)などのADの病理学的特徴に関連したマーカーが、最も広範に研究されている。最も有望であるのは、ADにおけるポリペプチド断片Aβ(1-40)、Aβ(1-42)及びタウ、又は両方のタンパク質組合せの脳脊髄液(CSF)濃度の研究に由来する。多くの研究は、CSF中のAβ(1-42)の減少を報告しているが、総Aβタンパク質又はAβ(1-40)濃度は依然変化しないことを報告している。

0007

CSF試料余り望ましくないという認識から、血液並びに血清及び血漿などの血液産物中のタンパク質マーカーを同定するいくつかの努力がなされている。AD状態において、それらの正常状態における発現と比べ、差次的に発現されるかかる血液タンパク質群は、WO2006/035237に説明されている。これらのタンパク質は、新規の診断検査及び予後検査の開発において有用であることが判明しているが、アルツハイマー病及び関連した認知症の患者の診断及び予後モニタリングにおいて優れた感度及び/又は特異度で実行され得る更なるマーカーのパネルの発見及び検証が、依然必要である。

0008

(発明の概要
従って第一の態様において、本発明は、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリンシスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる、バイオマーカーパネルを提供する。

0009

一実施態様において、本パネルは、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞調節物質(regulated on activation, normal T cell expressed and secreted))、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーを更に含む。

0010

本パネルは、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)のマーカーを更に含み得、並びに任意に、本パネルは、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1からなる群から選択されるマーカーの1種以上を更に含むことができる。

0011

更なる実施態様において、本バイオマーカーパネルは、ApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)を更に含むことができる。

0012

第二の態様において、本発明は、対象における神経認知障害の進行及び/又は予後を決定する方法であって、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の、本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む方法を提供する。

0013

この第二の態様の一実施態様において、本方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)本明細書に規定したバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試験時点での試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、進行及び/又は予後の方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該タンパク質の量又は濃度は、該対象における神経認知障害の進行及び/又は予後の指標である。

0014

好ましくは、該試料中の該マーカーの量又は濃度は、神経認知疾患の進行及び/又は予後の指標であり、並びに/又は神経認知障害の性質又は程度が決定される。

0015

神経認知障害は、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症レビー小体型認知症前頭側頭認知症又はそれらの組合せであることができる。

0016

好ましくは、神経認知障害は、MCI又はADであり、並びに神経認知疾患の進行及び/予後は、MCI又はADの進行及び/又は予後であるか、あるいは神経認知障害の進行は、MCIからADへの進展である。

0017

より好ましくは、この進展は、12ヶ月以下にわたり決定される。

0018

本発明の第三の態様において、対象における神経認知障害を診断又は評価する方法であって、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む方法が提供される。

0019

この第三の態様の一実施態様において、本方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)本明細書に規定したバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、診断方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該マーカーの量又は濃度は、該対象における神経認知障害の存在又は非存在の指標である。

0020

好ましくは、該試料中の該マーカーの量又は濃度は、神経認知障害の指標であり、並びに/又は神経認知障害の性質又は程度が決定される。

0021

神経認知障害は、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭認知症又はそれらの組合せであることができる。

0022

好ましくは、神経認知障害は、MCI又はADである。

0023

この方法の一実施態様において、該試料中の該タンパク質の量又は濃度の変化は、MCIを有する対象におけるADへの進行の指標であり、ここでMCIからADへの進行は、12ヶ月以下の期間にわたって生じる。

0024

別の実施態様において、該試料中の該マーカーの量又は濃度の変化は、該対象における脳萎縮の存在又は範囲の指標である。

0025

更に別の実施態様において、神経認知障害を伴う対象から採取された試料中のバイオマーカーパネルの該マーカーの量又は濃度は、神経認知障害を軽減するのに最も適切かつ有効な療法を予測し且つその療法の成果をモニタリングするために使用される。

0026

別の実施態様において、該バイオマーカーパネルのマーカーは、a)該マーカーの各々への1種以上の結合要素の使用によるか、又は、b)試料中の該マーカーの各々に特異的な自己抗体の検出によるか、又は、c)質量分析によるか、あるいはa)、b)及びc)の任意の組合せにより検出される。好ましくは、この試料は、固体支持体上に固定されている。

0027

更に別の実施態様において、バイオマーカーパネルのマーカーは、2Dゲル電気泳動を使用し検出される。

0028

第四の態様において、本発明は、神経認知障害を治療するための薬剤をスクリーニングする方法であって:
(a)神経認知障害又はそれらの症状を有する対象から得られた又はこれを代表する組織試料又は体液試料を提供することであって、ここで対象及び/又は試料は、スクリーニングされる薬剤により治療されていること;
(b)治療された対象及び/又は試料由来の若しくはこれを代表する試料中の、本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーの、量又は濃度を決定すること;並びに
(c)前記薬剤が、治療された対象及び/又は試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度へ影響を及ぼすかどうかを決定すること:を含む方法が提供される。

0029

この第四の態様の一実施態様において、この薬剤により治療されない対象と比べ、この薬剤により治療される対象中のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、この薬剤が神経認知障害の治療において有用であり得ることの指標である。

0030

別の実施態様において、この方法は、前記工程(a)の前に、健常な個体、重症度又は進行が異なる神経認知障害有する患者、及びこの薬剤により治療されていない神経認知障害を有する患者由来の1以上の対照試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの濃度又は量を決定する工程を更に含む。

0031

更に別の実施態様において、この薬剤は、対照に比べバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度の経時的変化を防止又は遅延する場合に、選択される。

0032

更なる実施態様において、該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は:
(a)正常対象及び神経認知障害の症状を有する対象;並びに/又は
(b)この薬剤で治療されていない神経認知障害の症状を有する対象及びこの薬剤で治療されている神経認知障害の症状を伴う対象:から得られた、又はこれを代表する試料中で決定される。

0033

好ましくは、神経認知障害又はそれらの症状を有する対象は、神経認知障害を伴うヒト対象又は神経認知障害の非-ヒト動物モデルである。より好ましくは、神経認知障害は、ADである。

0034

一部の実施態様において、対象は、変異体アミロイド前駆体タンパク質(APP)トランスジェニックマウスプレセニリン-1(PS-1)トランスジェニックマウス、二重遺伝子導入APP/PS-1トランスジェニックマウス、及び/又はグリコーゲン合成酵素キナーゼトランスジェニックマウスであり、並びに正常対象は、野生型マウスである。

0035

本発明の方法の実施態様において、組織又は体液の試料は、好ましくは尿、血液、血漿、血清、唾液又は脳脊髄液の試料である。

0036

第五の態様において、本発明は、組織試料又は体液試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの検出のための試薬を含むキットを提供し、ここで該バイオマーカーパネルは、本明細書に規定されている。

0037

一実施態様において、キットは、バイオマーカーパネルのマーカーに特異的に結合する1種以上の結合要素を更に含む。

0038

好ましくは、この1種以上の結合要素は、一次抗体であり、ここで各一次抗体は、バイオマーカーパネルの異なるマーカーに特異的に結合し、且つより好ましくは、キットは、この一次抗体に特異的に結合する1種以上の二次抗体を更に含む。

0039

任意に、この二次抗体は、標識されている。

0040

別の実施態様において、キットは、バイオマーカーパネルのマーカーの対照試料を更に含む。

0041

(詳細な説明)
(定義)
用語「神経認知障害」は、「神経認知疾患」と同義語として本明細書において使用し、且つ全ての関連する認知症及び神経認知障害の主な代表例であるアルツハイマー病(AD)を含むが、これらに限定されるものではない。従って、MCIとADの間の進行を明確に特定しない限りは、ADの言及は、単独で及びアルツハイマー病との混合型認知症として、軽度認知障害(MCI)(認識されたADへの前駆症状)、並びに血管性認知症、レビー小体型認知症、及び前頭側頭認知症を含む他の遅れて発症する認知症への言及と同等と受け取ることができる。これはまた、対象へ与えられた具体的な診断もいい、あるいは具体的診断が、現在の臨床評価尺度に従い医療実践者により未だ正式なものとされていない、その神経認知障害の症状も含むことがある。現在、この疾患状態は、発端から現在までの疾患の期間(より長い期間はより重度な疾患と等しい)及び臨床評価尺度により評価される。これらの評価尺度は、記憶及び他の認知に関する臨床試験、機能(日常生活能力)に関する臨床試験、及び全般的重症度の臨床評価を含む。AD及び他の認知症及び神経認知障害の可能性のある療法の試験は、現在これらの尺度に対し評価されている。FDA及び他の規制機関は、これらの評価尺度の一部として、認知及び全般的機能の両方を要求している。全般的認知機能低下評価尺度(GDS)は、そのような全般的機能の測定の一つである。これは、標準化された重症度判定基準のセットに対する、認知及び機能を含む重症度の評価により評価される。

0042

用語「バイオマーカーパネル」は、用語「マーカーパネル」と互換的に本明細書において使用し、且つ翻訳後修飾を含む、同定されたタンパク質の生物学的に関連のある形全てを含む。例えば、バイオマーカーパネル内のタンパク質は、グリコシル化された形、リン酸化された形、多量体化された形、断片化された形又は前駆体形で存在することができる。これは、cDNAmRNA及びそれらの断片などの、このようなタンパク質をコード化している遺伝子から生じる、デオキシリボ核酸(DNA)産物及びリボ核酸(RNA)産物を更に含む。

0043

用語「関連組織」は、脳機能に関連した任意の組織、特にADにおいて影響を受けた組織を意味する。

0044

用語「組織又は体液試料」又は「組織又は体液試料の代表」は、マーカーの検出が実行され得る任意の組織又は体液を意味し、並びに例えば、血液、血清、血漿、CSF、初代細胞培養物又は関連組織からの生検を含む。

0045

用語「対象」は、ヒト及び非-ヒト動物対象を含む。

0046

本明細書において使用する用語「差次的発現」とは、マーカーの転写及び/又は発現における定性差異及び定量的差異の両方をいい、並びにマーカーは、正常対照及び罹患対象からの試料中に異なるレベルで存在することができることを指摘している。この用語は更に、組織又は体液試料中のマーカー発現の少なくとも1種の認識可能な差異をいう。これは、組織又は体液試料中のマーカー発現の定量的に測定可能半定量的推定可能又は定性的に検出可能な差異であることができる。

0047

用語「差次的に発現されたマーカー」(又はDEM)とは、正常な状態の組織又は体液中では強力に発現され、且つADの組織においては余り強力ではなく発現されるか若しくは全く発現されないマーカーをいう。反対に、これは、ADの組織においては強力に発現され、並びに正常組織においては余り強力ではなく発現されるか若しくは全く発現されないことがある。更に、発現は、マーカーが比較している試料間で何らかの認識できる変化を受ける場合に、差次的と見なされることができる。

0048

用語差次的に発現されたマーカー(DEM)は、「フィンガープリントタンパク質」、「標的タンパク質」又は「パスウェイ(pathway)タンパク質」を含む。

0049

本明細書において使用する「フィンガープリントタンパク質」とは、ADに罹患したことが疑われる患者の状態をモニタリング又は評価するために、その発現を、単独で又は他のDEMと一緒に使用することができる、DEMを意味する。これらのタンパク質は、通常組合せて、特に4種以上を組合せて使用されるので、これらは「フィンガープリントタンパク質」と便宜上称されるが、これらが時には、この目的のために単独で、あるいはわずかに1種の若しくは2種の他のタンパク質と一緒に使用される可能性を棄損することはない。このような1種又は複数のフィンガープリントタンパク質は、例えば、ADの特定の型を診断し、結果的にそれに関する具体的治療を指摘するために、使用することができる。

0050

本明細書において使用する「標的タンパク質」とは、そのレベル又は活性が、AD又は他の認知症及び神経認知障害を軽減するための治療により調整され得るDEPを意味する。患者における標的タンパク質のレベル又は活性の調整は、例えば、標的タンパク質、それと相互作用する別のタンパク質若しくは遺伝子、又はこれと反作用するか若しくは減少する物質、例えば該タンパク質に対する抗体、該タンパク質の競合的阻害剤、又は対応する遺伝子の転写若しくは翻訳のプロセスでこれと作用する物質を、投与することにより達成され得る。

0051

本明細書において使用する「パスウェイタンパク質」とは、脳機能の調節に関与した少なくとも1種の他のタンパク質と又は遺伝子と相互作用することができるタンパク質を意味する。この用語は、DEPそれ自身ではなく、DEPが相互作用するタンパク質に関するものであるが、しかしパスウェイタンパク質は、別のDEPであることができる。

0052

更に「フィンガープリントタンパク質」は、また「標的タンパク質」又は「パスウェイタンパク質」であることができ、及びその逆も当てはまることを、本明細書において意図している。

0053

本明細書において使用する用語「検出可能な」とは、本明細書記載の技術を使用し検出することができる、マーカーの転写及び/又は発現のパターンをいう。

0054

用語「対照」とは、神経認知障害又は疾患とは診断されず、これらのいかなる症状も呈さない、ヒト又は非-ヒト対象から得られた、組織試料又は体液試料をいう。

0055

用語「単離された」は、本明細書を通じて、場合に応じて、マーカー、抗体又はポリヌクレオチドが、それが自然に生じ得る環境とは異なる物理的環境において存在することを意味する。

0056

用語「治療する」、「治療している」、「治療」、「予防する」、「予防している」、「予防」又は「軽減」は、治療的治療、予防的治療、及び対象が障害を発症させるリスク又は他のリスク因子を減少する適用を含む。治療は、障害の完全な治癒を必要とせず、且つ1以上の症状又は基礎となるリスク因子の減少を包含している。治療はまた、疾患の進行の遅延を含み、且つ1つ以上の薬物又は食物の投与、及び/又は食事若しくは運動などの他の因子を含むことができる。

0057

本明細書において使用する用語「診断」は、患者における障害の存在(existence)若しくは存在(presence)、非存在若しくは不在、又は確率に関する何らかの情報の提供を含む。これは、それと結びつけて経験されるか又は経験し得る障害又は症状の種類又は分類に関する情報の提供を更に含む。これは、例えば、障害の重症度の診断を含むことができる。これは、障害の医学的経過の予後、例えば、その持続期間、重症度及びMCIからADへの又は他の認知症への進行の過程を包含している。

0058

用語「効能」は、所定の介入(例えば、薬物、医療機器手術手技など)の有益な変化に関する能力を示している。効能が確立されたならば、その介入は恐らく、それが比較された他の利用可能な介入と少なくとも同じ程度良好である。用語「効能」及び「有効性」は、本明細書において互換的に使用する。

0059

用語「含む」は、対象が、列挙された全ての要素を含むが、任意に、追加の、名前を挙げていない要素も含むこと(すなわち開放(open))を指す。

0060

本明細書において使用する用語「及び/又は」は、2つの特定された特徴又は成分の各々の、他方を伴う又は伴わない具体的開示としてとりあげられるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、各々が個別に本明細書において記述されるように、(i)A、(ii)B、並びに(iii)A及びBの各々の具体的開示としてとりあげられるべきである。

0061

別に文脈が指示しない限りは、先に記述した特徴/用語の定義は、本発明の特定の態様又は実施態様のいずれかに限定されず、本明細書記載の全ての態様及び実施態様に同等に適用される。

0062

(バイオマーカーパネル及びそれらの使用方法
本発明は、正常状態における互いの及び/又はそれらの発現に比べ、MCI及びADなどの神経認知障害において差次的に発現されるマーカーのバイオマーカーパネルに関する。これらのパネルは、神経認知障害の検出及び評価を改善することを可能にする。

0063

本発明のバイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる。

0064

本バイオマーカーパネルは、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーを更に含むことができる。

0065

本バイオマーカーパネルは、プラスミノーゲン活性化抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)のマーカーも更に含むことができる。

0066

加えて、本バイオマーカーパネルは、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン、神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1からなる群から選択されるマーカーの1種以上を更に含むことができる。

0067

一実施態様において、本バイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる。ApoE ε4対立遺伝子の存在は、遺伝子マーカーとして検出可能なε4対立遺伝子の遺伝子の存在、並びに特異的ApoE E4のタンパク質の存在(S112R及びH158R)の両方を含む。

0068

別の実施態様において、本バイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になり、ここで本バイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)を更に含む。

0069

更に別の実施態様において、本バイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーから本質的になり、ここで本バイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、プラスミノーゲン活性化抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)の群から選択されるマーカーの1種以上を更に含む。

0070

更なる実施態様において、本バイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、アポリポタンパクC-III(ApoC3)、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)のマーカーから本質的になり、ここで本バイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン、神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1の群から選択されるマーカーの1種以上を更に含む。

0071

本発明のバイオマーカーパネルのタンパク質は、下記表1Aに示している。
表1A:本試験において調べたタンパク質の概要




略語:PiB PET関連、フィラデルフィア化合物Bポジトロン放出断層撮影;2-DGE、二次元ゲル電気泳動;LC-MS/MS、液体クロマトグラフィータンデム質量分析ELISA酵素結合免疫吸着アッセイ;Q-RT-PCR、定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応;IHC、免疫組織化学;SCD、緩やかな認知能低下;FCD、急激な認知能低下

0072

これらのタンパク質に関する参照配列は、表1Bに従い配列番号:1〜27において提供される。
表1B:配列相関表

0073

任意の個々の対象において、本バイオマーカーパネル内のタンパク質の配列は、参照配列又は参照配列の対立遺伝子若しくは天然変種であることができる。

0074

対立遺伝子又は天然の変種は、参照配列とその完全長にわたり、80%以上、90%以上、95%以上又は98%以上の配列同一性を有することができる。配列同一性は、アルゴリズムGAP(Genetics Computer Group, Madison, WI)を参照し普通に規定することができる。GAPは、マッチの数を最大化し、且つギャップの数を最小化するように2つの完全配列を整列するために、Needleman and Wunschアルゴリズムを使用する。一般にデフォルトパラメータを使用し、ギャップクリエーションペナルティ=12及びギャップイクステンションペナルティ=4である。GAPの使用が好ましいが、一般にデフォルトパラメータを利用し、他のアルゴリズム、例えばBLAST63、FASTA64、又はSmith-Watermanアルゴリズム、又はTBLASTNプログラム63を使用することができる。

0075

対立遺伝子又は天然の変種は、1個以上のアミノ酸の付加、欠失置換及び/又は挿入により、参照配列と異なることができる。例えば、対立遺伝子又は天然の変種は、1個以上のアミノ酸、例えば、最大2個、最大5個のアミノ酸、最大10個のアミノ酸、又は最大20個のアミノ酸の付加、欠失又は置換により、本明細書記載の参照配列(例えば、配列番号:1〜27)と異なることができる。本明細書に規定した天然の変種はまた、リン酸化及びグリコシル化などの、翻訳後修飾を含む。

0076

本明細書記載のパネル内の一部のマーカーの発現は、対照対象と比べ神経認知障害の対象において増加されることがあるか、又は対照対象と比べ神経認知障害の対象において特有に存在することがある。本明細書記載のパネル内の他のマーカーの発現は、対照対象と比べ神経認知障害の対象において減少することがあるか、又は対照対象と比べ神経認知障害の対象において特有に存在しないことがある。表1は、本明細書に開示されたタンパク質の発現は、疾患対象、対、対照対象において、増加又は減少するかどうかを示している。

0077

本明細書記載のバイオマーカーパネルは、軽度認知障害及びADなどの神経認知障害の進行のモニタリング、ADなどの神経認知障害の素因、ADなどの神経認知障害の診断、並びに例えば臨床試験時の薬剤の効能のモニタリング、及びADなどの神経認知障害の治療に関する臨床評価を受けている患者のモニタリングに利用することができる。本明細書記載のバイオマーカーパネルは、神経認知障害の治療に関する確定及び/又は選択を補助するために、その障害の性質又は程度を正確に規定するために使用することができる。

0078

例えば、ADは、進行性、潜行性の発症、認知機能のうち2つ以上の欠損、及び認知症を説明し得る何らかの他の疾患の不在により特徴づけられる。

0079

記憶障害に加え、見当識障害注意持続期間不良、及び失語が存在することがある。日常生活活動減退が、並びに恐らく同じく知覚障害及び人格の変化も存在する可能性がある。行動上の症状は、妄想攻撃性激越、怒り、徘徊幻覚及び睡眠障害を含む。

0080

見当識描記(registration)、計算力及び注意力想起、言語、及び視空間認知機能を評価する簡単な試験を、初期診断に使用することができる。

0081

標準のCT又はMRIによる構造の撮像も、使用することができる。通常は造影剤を使わない頭部CT走査で十分であるが、脳血管疾患のリスクがある高血圧又は糖尿病を有する患者には、MRIが好ましい。

0082

ADは、神経原線維変化(tangle)及び老人斑を示すことにより、剖検又は脳生検により組織学的確認することができる。

0083

AD又は他の神経認知障害のリスクのある個体の確定は、軽度認知障害(MCI)の診断に関連することができる。(MCI)は、正常加齢と認知症の間の一過性の状態であることができる。様々な型のMCIが、存在する。記憶に加え、認知機能の複数の領域に認識機能障害が存在することがある。一部の症例においては、記憶は正常であるが、認知機能のいくつかの他の領域が異常である。

0084

健忘型MCIは、AD発症のリスクのある状態であるように見える。健忘型機能障害は、自覚的記憶の愁訴により規定される。これらの患者は、年齢合致する対等者と比べた場合に、公式の試験において患者の年齢及び教育について記憶成績が貧弱である。全般的認知機能及び日常生活活動を行う能力は、全体的に正常でなければならない。健忘型MCIは、海馬萎縮内側側頭葉における神経原線維変化、及び脳脊髄液(CSF)中のタウの上昇したレベルに関連している。

0085

特に、本発明は、対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の、本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む、該対象における神経認知障害の進行及び/又は予後を決定する方法を提供する。

0086

好ましいことに、この方法は、インビトロ法である。

0087

詳細には、この方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試験時点での試料中の該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、進行及び/又は予後の方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該タンパク質の量又は濃度は、該対象における神経認知障害の進行及び/又は予後の指標であり、並びにここでバイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる。

0088

この参照値は、対照患者におけるかかる決定と臨床情報の間の既知の又は予め決定された相関関係を参照し、本試験が実行される患者と同様の患者の大規模スクリーニングから得ることができる。例えば、参照値は、対象と年齢及び性別が類似した対照対象、例えば健常者(すなわち認知症でない)などにおける該マーカーの発現の濃度、量又はレベルの比較により、決定することができる。あるいは、参照値は、112位及び158位の突然変異の存在又は非存在が、比較されるべき参照を表す、ApoE ε4対立遺伝子の存在のような、文献において認めることができる値である。加えて、参照値は、試験時点に先行する1以上の時点で、同じ対象から得ることができる。そのようなより早期の試料は、試験時点の日付よりも、1週間以上、1ヶ月以上、3ヶ月以上前に、最も好ましくは6ヶ月以上前に採取することができる。一部の実施態様において、複数の早期の試料を、長期にわたる様式(longitudinal manner)で比較することができ、且つマーカー発現の変化の勾配は、認知能低下の相関として計算することができる。

0089

神経認知障害は、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭認知症又はそれらの組合せからなる群から選択され得る。

0090

好ましくは、神経認知障害は、MCI又はADであり、並びに神経認知疾患の進行及び/予後は、MCI又はADの進行及び/又は予後である。

0091

好ましい実施態様において、本方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試験時点での試料中の該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、進行及び/又は予後の方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該タンパク質の量又は濃度は、該対象におけるMCIのADへの進展の指標であり、並びにバイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる。

0092

好ましくは、この進展は、12ヶ月以下にわたり決定される。

0093

より好ましくは、バイオマーカーパネルはまた、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)も含む。

0094

MCIのADへの進展に関する本試験において誘導される参照値は、以下の通りである:トランスサイレチン222μg/ml;クラスタリン402μg/ml;シスタチンC 3.21μg/ml;α-1-酸性糖タンパク質768.3μg/ml;細胞間接着分子1 99.72ng/ml;補体C4 78.5μg/ml;色素上皮由来因子10.7μg/ml;α1抗トリプシン9.5μg/ml;RANTES33.8ng/ml;及び、アポリポタンパクC-III 105.5μg/ml。

0095

特に、これらのマーカーの少なくとも一部の濃度が、下記である場合に、MCIのADへの進展を予想することができる:トランスサイレチン(<)222μg/ml未満;クラスタリン(>)402μg/ml超;シスタチンC(<)3.21μg/ml未満;α-1-酸性糖タンパク質(>)768.3μg/ml超;細胞間接着分子1(<)99.72ng/ml未満;補体C4(>)78.5μg/ml超;色素上皮由来因子(>)10.7μg/ml超;α1抗トリプシン(<)9.5μg/ml未満;RANTES(<)33.8ng/ml未満;及び、アポリポタンパクC-III(<)105.5μg/ml未満。

0096

加えて、このバイオマーカーパネル内の全てではないマーカーが、個々の対象内で差次的に発現されることがある。任意の個々の試験において認められる差次的に発現されたマーカーの数及びアイデンティティは、異なる対象間で及び経時的に個々の対象から採取された試料間で変動するであろう。各サブセットパネル内で、最低数の差次的に発現されたタンパク質が、確実な決定を提供するために、必要とされ得る。例えば、パネル内の3種以上のタンパク質、好ましくは4種以上、及びより好ましくはパネル内の5種以上、6種以上、7種以上、又は8種以上のタンパク質が、個々の対象において差次的に発現され得る。

0097

一つの好ましい実施態様において、対象における神経認知障害の進行及び/又は予後を決定する方法は、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中のバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含み、この方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試験時点での試料中の該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、進行及び/又は予後の方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該タンパク質の量又は濃度は、該対象における神経認知障害の進行及び/又は予後の指標であり、並びにここでバイオマーカーパネルは、ApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)、α1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーから本質的になり;ここで、神経認知障害の進行及び/又は予後は、MCIからADへの進展であり;並びに、ここで本方法は、インビトロ方法である。

0098

より好ましくは、この対象はヒトであり;更により好ましくは、この試料は、血液、血漿又は血清である。

0099

最も好ましい実施態様は、ヒト対象におけるMCIからADの進行及び/又は予後を決定するインビトロ方法であり、これは、試験時点で、該ヒト対象から得られた血液試料中の、ApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)、α1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーの濃度を決定することを含み;ここで、少なくとも3種以上のマーカーが、以下のそれらの濃度を有する場合、そのヒト対象は、試験時点から12ヶ月以内にMCIからADへと進展される:トランスサイレチン(<)222μg/ml未満;クラスタリン(>)402μg/ml超;シスタチンC(<)3.21μg/ml未満;α-1-酸性糖タンパク質(>)768.3μg/ml超;細胞間接着分子1(<)99.72ng/ml未満;補体C4(>)78.5μg/ml超;色素上皮由来因子(>)10.7μg/ml超;α1抗トリプシン(<)9.5μg/ml未満;RANTES(<)33.8ng/ml未満;及び、アポリポタンパクC-III (<)105.5μg/ml未満。

0100

本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーはまた、断片として存在することもできる。好ましい断片は、長さが、アミノ酸50未満、100未満、150未満、200未満、250未満、300未満、350未満、400未満、500未満、600未満、700未満、800未満、900未満、1000未満、1100未満、1200未満、1300未満、1400未満、1500未満、1600未満、1700未満、1800未満、1900未満又は2000未満である。

0101

試料中のマーカーの量又は濃度は、神経認知疾患の進行及び/又は予後の指標である。

0102

あるいは、神経認知障害の性質又は程度を、決定することができる。

0103

本発明は、該対象から得られた組織試料及び/又は体液試料中の、本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーを検出することを含む、対象における神経認知障害を診断又は評価する方法を更に含む。

0104

特にこの方法は:
a)試験時点で、神経認知障害又はそれらの症状を有する該対象から得られた組織試料又は体液試料を提供すること;
b)該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を決定すること;
c)試料中の該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度を、参照値と比較すること:を含み、
ここでこの試験時点は、診断方法が実行される時点に対応し;並びに、ここで該試料中の該マーカーの量又は濃度は、該対象における神経認知障害の存在又は非存在の指標であり;ここでバイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になる。

0105

好ましくは、このバイオマーカーパネルは、任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)を更に含む。

0106

あるいは、このバイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、及びアポリポタンパクC-III(ApoC3)のマーカーから本質的になり、並びに任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)の群から選択される1以上のマーカーを更に含む。

0107

更なる実施態様において、バイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)、RANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、アポリポタンパクC-III(ApoC3)、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)及びアポリポタンパクE(ApoE)のマーカーから本質的になり、並びに任意にApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)と組合せた、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン、神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1の群から選択されるマーカーの1種以上を更に含む。

0108

この方法の一実施態様において、該試料中の該マーカーの量又は濃度は、神経認知障害の指標であり、及び/若しくは神経認知障害の性質又は程度が決定され得る。

0109

神経認知障害は、軽度認知障害(MCI)、アルツハイマー病(AD)、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭認知症又はそれらの組合せからなる群から選択され得る。

0110

好ましくは、神経認知障害は、MCI又はADである。より好ましくは、該試料中の該タンパク質の量又は濃度の変化は、MCIを有する対象におけるADへの進行の指標であり、ここでMCIからADへの進行は、12ヶ月未満の期間にわたって起こる。

0111

本明細書記載の方法は、対象における神経認知障害の型又は亜型を、当該技術分野において利用可能な予防的又は治療的処置の異なる型と互いに関連付けることを可能にし、これによりこの療法に対する対象の可能性のある反応を増強する。

0112

特に、神経認知障害の対象から採取された試料中の該バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、神経認知障害を軽減するために最も適切且つ有効な療法を予測し、且つその療法の成果をモニタリングするために使用される。

0113

本発明の方法において使用される試料は、尿、血液、血漿、血清、唾液又は脳脊髄液試料などの、組織試料又は体液試料であることができる。好ましくは、試料は、血液、血清又は血漿試料である。列挙されたもののような体液は、対象から比較的容易に得ることができるので、これの使用が好ましい。これは、経費、簡便さ、速度及び対象の快適さ(wellbeing)の観点において、明らかな利点を有する。血液、血清及び血漿などの血液産物、並びに尿が、特に好ましい。

0114

本明細書記載の方法による評価又は診断後、対象は、例えば、認知試験及び/又はポジトロン放出断層撮影(PET)走査などの脳撮像の、更なる試験を受けることができる。

0115

この障害の経時的な進行は、障害の重症度(例えば、全般的認知症重症度)を決定するために、本発明の方法を用いて、追跡することができる。

0116

本発明に従うバイオマーカーパネルは、臨床試験の一部として又は標準の臨床管理において治療を受けている患者において認知能低下の他の臨床評価と組合せて又はそれの代わりに、使用することができる。

0117

一実施態様において、バイオマーカーパネルは、ミニメンタルステート検査(MMSE)及びAD評価尺度認知機能尺度(ADAS-Cog)などの、臨床評価の代替として有用であることができる。

0118

一部の実施態様において、バイオマーカーパネルは、クラスタリン、RANTES、NSE、TTR、VCAM-1及びSAP;又はNCAM、sRAGE及びICAMの予後的バイオマーカーの1種以上を含むことができ;並びに、試料中の該予後的バイオマーカーの量は、対象のMMSE成績及び/又は対象におけるADの重症度、進行若しくは予後の指標であることができる。これらのバイオマーカーパネルは、例えば、臨床試験の一部として又は標準の臨床管理において治療を受けている患者においてMMSEと組合せて又はそれの代わりに、使用することができる。

0119

一部の他の実施態様において、バイオマーカーパネルは、予後的バイオマーカーAPOA1、A1AT、ApoC3、BDNF、AB40、PAI-1及びNSEの1種以上を含み得、並びに試料中の該予後的バイオマーカーの量は、対象のADAS-Cog成績及び/又は対象におけるADの重症度、進行若しくは予後の指標である。バイオマーカーパネルは、例えば、臨床試験の一部として又は標準の臨床管理において治療を受けている患者においてADAS-Cogと組合せて又はそれの代わりに、使用することができる。

0120

あるいは、該試料中の該マーカーの量又は濃度の変化は、該対象における脳萎縮の存在又は範囲の指標である。萎縮バイオマーカーの試料中の量又は濃度は、対象における脳萎縮の存在又は範囲の指標であることができる。このようなバイオマーカーパネルは、例えば、臨床試験の一部として又は標準の臨床管理において治療を受けている患者において脳撮像と組合せて又はそれの代わりに、使用することができる。

0121

バイオマーカーパネルの個別のマーカーは、対象における特定の脳領域内の萎縮の存在又は範囲を決定する上で有用であることができる。

0122

例えば、MCIを有する対象において(下記表4参照):
・個別のマーカークラスタリン及び/又はRANTESは、脳室容積を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の脳室容積の指標である;
・個別のマーカークラスタリン及び/又はNSEは、平均海馬容積(LHV)を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の左海馬容積(LHV)の指標である;
・個別のマーカークラスタリンは、右嗅内皮質容積(REC)を評価する上で有用であることができる。このマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の右嗅内皮質容積(REC)の指標である;
・個別のマーカートランスサイレチンは、左嗅内皮質容積(LEC)を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の左嗅内皮質容積(LEC)の指標である;
・個別のマーカークラスタリン及び/又はトランスサイレチンは、嗅内皮質厚さ(ECT)を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の左右両方の脳半球の嗅内皮質厚さ(ECT)の指標である。個別のマーカークラスタリン及び/又はNSE及び/又はRANTESは、全脳容積を評価する上で有用であることができる。該萎縮バイオマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の左右両方の脳半球の全脳容積の指標である。

0123

例えば、ADを有する対象において(下記表4参照):
・個別のマーカーA1AT及び/又はNSEは、脳室容積を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の脳室容積の指標である;
・個別のマーカーBDNF及び/又はApoC3及び/又はApoA1及び/又はApoEは、平均海馬容積を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の平均海馬容積の指標である;
・個別のマーカーApoC3及び/又はApoEは、平均嗅内容積を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の平均嗅内容積の指標である;
・個別のマーカーApoC3及び/又はApoA1及び/又はApoE及び/又はトランスサイレチンは、平均嗅内皮質厚さ(ECT)を評価する上で有用であることができる。これらのマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の嗅内皮質厚さ(ECT)の指標である;
・個別のマーカーApoE及び/又はApoA1及び/又はAβ40は、全脳容積を評価する上で有用であることができる。該萎縮バイオマーカーの試料中の量又は濃度は、対象の左右両方の脳半球中の全脳容積の指標である。

0124

本明細書記載のバイオマーカーパネルは、正常状態、対、疾患状態においてその発現が調整される、すなわち量的に増加又は減少されるマーカーを含む。正常状態、対、疾患状態において発現が異なる程度は、標準の特徴決定技法を介して視覚化するのに十分な大きさであることのみを必要とする。バイオマーカーパネルの差次的に発現されたマーカーの検出及び定量の方法は、当該技術分野において周知であり、且つ任意の好適な方法を、利用することができる。

0125

一実施態様において、バイオマーカーパネルのマーカーは、例えば、ELISAアッセイ又はウェスタンブロットにおいて、そのマーカーに特異的な抗体などの結合要素を用いて検出することができる。

0126

本明細書記載のバイオマーカーパネル内の個別のマーカーの1以上のエピトープを特異的に認識することが可能である抗体の産生に関連した方法は、当該技術分野において公知である。このような抗体は、ポリクローナル抗体モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化又はキメラ抗体単鎖抗体Fab断片、F(ab')2断片、Fab発現ライブラリーにより産生された断片、抗イディオタイプ(anti-Id)抗体、及び先のいずれかのエピトープ-結合断片を含み得るが、これらに限定されるものではない。このような抗体は、AD治療法の一部として利用することができ、及び/又はそれにより患者が、バイオマーカーパネル内の個別のマーカーの量、濃度若しくは発現について試験される診断技術の一部として使用することができる。

0127

抗体産生に関して、様々な宿主動物は、差次的に発現された又はパスウェイタンパク質、又はそれらの一部の注射により、免疫化することができる。このような宿主動物は、いくつか名前を挙げるとウサギマウス及びラットを含むことができるが、これらに限定されるものではない。様々なアジュバントを使用し、宿主種に応じ、免疫応答を増強することができ、これは、リゾレシチンプルロニックポリオールポリアニオンペプチド、油性エマルションキーホールリンペット・ヘモシアミン、ジニトロフェノール、並びにBCGカルメット・フエリン桿菌)及びコリネバクテリウムパルブムのような潜在的に有用なヒトアジュバントなどの活性物質を含む。

0128

ポリクローナル抗体は、標的タンパク質、又はそれらの抗原性機能性誘導体などの抗原により免疫化された動物の血清に由来した抗体分子の不均一集団である。ポリクローナル抗体の産生のために、前述のものなどの宿主動物を、同じく前述のアジュバントを補充された、差次的に発現された又はパスウェイタンパク質の注射により、免疫化することができる。

0129

モノクローナル抗体は、特定の抗原に対する抗体の均質な集団であるが、これは、培養物中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技法により得ることができる。これらは、Kohler及びMilsteinのハイブリドーマ技法(1975, Nature 256; 495-497;及び米国特許第4,376,110号)、ヒトβ細胞ハイブリドーマ技法(Kosborらの文献、1983, Immunology Today 4: 72;Coleらの文献、1983, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80; 2026-2030)、並びにEBV-ハイブリドーマ技法(Coleらの文献、1985, 「モノクローナル抗体及び癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」、Alan R. Liss社, 77-96頁)を含むが、これらに限定されるものではない。このような抗体は、IgGIgMIgEIgAIgD及びそれらの任意のサブクラスを含む、任意の免疫グロブリンクラスのものであることができる。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロ又はインビボにおいて培養することができる。インビボにおける高力価のmAbの産生は、現時点で好ましい産生方法となっている。

0130

加えて、適切な生物活性ヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にした適切な抗原特異性マウス抗体分子由来の遺伝子のスプライシングによる、「キメラ抗体」の作製のために開発された技法(Morrisonらの文献、1984, Proc. Natl. Acad. Sci. 81: 6851-6855;Neubergerらの文献、1984, Nature 312: 604-608;Takedaらの文献、1985, Nature 314: 452-454)を、使用することができる。キメラ抗体は、マウスmAbに由来する可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するもののように、その中の異なる部分が、異なる動物種に由来する分子である。

0131

あるいは、単鎖抗体の作製を説明する技法(米国特許第4,946,778号;Birdの文献、1988, Science 242: 423-426;Hustonらの文献、1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883;及び、Wardらの文献、1989, Nature 334: 544-546)は、差次的に発現された又はパスウェイタンパク質-単鎖抗体を作製するように、改変され得る。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖及び軽鎖断片をアミノ酸橋を介して連結し、単鎖ポリペプチドを生じることにより、形成される。

0132

特異的エピトープを認識する抗体断片は、公知の技術により作出することができる。例えば、このような断片は、抗体分子のペプシン消化により作製され得るF(ab')2断片、及びF(ab')2断片のジスルフィド橋の還元により作出され得るFab断片を含むが、これらに限定されるものではない。代わりに、所望の特異性を持つモノクローナルFab断片の迅速且つ容易な同定を可能にするために、Fab発現ライブラリーを構築することができる(Huseらの文献、1989, Science 246: 1275-1281)。

0133

本明細書記載の方法の一部の実施態様において、試料は、分析のための固体支持体上に固定されることができる。バイオマーカーパネル内の個別のマーカーに特異的な抗体などの結合要素などが、平面又は微粒子ビーズなどの固体支持体上に固定され、並びに、パネル内のマーカーが、固定された抗体などの、固定された結合要素により捕獲される、抗体サンドイッチ技法を利用することができる。その後捕獲されたマーカーは、シグナル発生物質(酵素蛍光タグ放射標識など)により直接標識され得る二次抗体などの第二の結合要素を使用し、検出されるか、又は更なる増幅(酵素、発蛍光団、放射標識などにより標識された二次抗体、ストレプトアビジンビオチン系)を使用し、検出することができる。他の方法は、試料の一次元又は二次元(2D)ゲル電気泳動を含むが、これらに限定されるものではない。このような方法には、ウェスタンブロットなどの技術を使用する固体表面への移行、並びにそれに続くADバイオマーカーに特異的な抗体を使用する検出が続く。

0134

他の実施態様において、バイオマーカーへの自己抗体を、健常対象、ADの患者又は代表からの試料を使用する、先に説明したウェスタンブロット法を用い、次に健常対象中ではなく試料中に存在するマーカーに特異的な自己-抗体の存在を検出することにより、検出することができる。

0135

非-抗体結合要素の例は、アプタマーである。アプタマーの例は、核酸アプタマー及びペプチドアプタマーを含む。

0136

あるいは、これらのマーカーは、とりわけ、2Dゲル電気泳動の銀染色、又はLS/MS/MS、MALDI-TOF、SELDI-TOF及びTMT-SRMを含む質量分析技術により検出することができる。それにより発現の差を可視化することができるその他のこのような標準特徴決定技法は、当業者に周知である。これらは、分画の連続するクロマトグラフィー分離及びピーク比較、キャピラリー電気泳動マイクロチップを含むマイクロチャネルネットワークを使用する分離、SELDI分析及びqPST分析を含む。

0137

クロマトグラフィーによる分離は、文献に記載されるように高速液体クロマトグラフィーによって実施でき、クロマトグラムは、分離の時間に対する280nmの光の吸光度プロットの形態で得られる。次いで、不完全に分解されたピークを生じる物質を、再度クロマトグラフィーに付すなどする。

0138

キャピラリー電気泳動は、例えば、BeckmanによりそのP/ACE 5000システムと共に提供される文献「Total CE Solutions」などの、多くの文献に説明された技術である。この技術は、小さいキャピラリーチューブ内に含有される試料中に電気的ポテンシャル印加することに依存する。このチューブは、帯電した表面、例えば、負に帯電したケイ酸塩ガラスを有する。反対に帯電したイオン(この場合には、正のイオン)は、表面に引きつけられ、次いで、表面と同じ極性の適当な電極(この場合には、陽極)へと移動する。この試料の電気浸透流(EOF)において、正イオンは、最も早く移動し、それに非帯電物質及び負帯電したイオンが続く。従って、タンパク質は、それらの荷電に従って本質的に分離される。

0139

マイクロチャネルネットワークはキャピラリーと同様に機能し、ポリマー物質フォトアブレーションにより形成することができる。この技術において、UVレーザーが、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリカーボネートなどの適当なUV吸収特性を有するポリマー上に急激に照射される高エネルギー光パルスを生成するのに使用される。入射光子は、閉じ込められた空間で化学結合を切断し、内圧の上昇、小さな爆発及びアブレートされた物質の排出をもたらし、後にマイクロチャネルを形成する空隙を残す。マイクロチャネル物質は、キャピラリー電気泳動同様に、EOFに基づく分離を達成する。マイクロチャネル物質は、マイクロチップの形態に適応でき、各チップはそれ自体に試料インジェクター、分離カラム、及び電気化学検出器を有する:J.S. Rossierらの文献、1999、Electrophoresis 20: p. 727-731を参照されたい。

0140

また、ProteinChip技術と組み合わせた表面エンハンスレーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)は、マーカーをプロファイリングする迅速で高感度の手段を提供し、2次元ゲル電気泳動相補的な方式の代替法として、使用することができる。ProteinChipシステムは、タンパク質試料がチップの表面化学(例えば、アニオン性カチオン性疎水性親水性など)に選択的に結合することができるアルミニウムのチップからなる。結合したマーカーは、続いてモル過剰なエネルギー吸収性小分子とともに共結晶化される。続いてチップは、N2 320 nmUVレーザーの短強度パルスにより分析され、飛行時間型質量分析によりタンパク質が分離され、検出される。ある実験内の各群のスペクトルプロファイルを比較し、関心の対象となる任意のピークは、マーカーの同一性を確立するために、以下に記載される技術を用いて更に分析することができる。

0141

また、同位体性又は同重体タンデム質量タグ(登録商標)(TMT(登録商標)、Thermo Scientific社、Rockford、USA)技術を、本明細書記載のバイオマーカーパネルのタンパク質などの、マーカーを検出するために使用することができる。簡潔に説明すると、比較する試料中のタンパク質は、任意に消化され、安定同位体タグで標識され、質量分析で定量される。この方法において、異なる試料中の等価なタンパク質の発現は、タンデム質量分析実験における断片化の間のそれぞれの同位体ピークの強度、又はTMT(登録商標)試薬から放出されるレポーターイオンの強度を比較することにより、直接的に比較することができる。

0142

本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの検出には、試料からの最も豊富なタンパク質を除去する枯渇工程が先行することができる。血清/血漿のタンパク質組成物の大半は、ただ数種のタンパク質からなる。例えば、濃度35〜50mg/mlで存在するアルブミンは、総タンパク質含量のおよそ54%を表し、IgGは他に16%を上乗せする。対照的に、疾患に反応して変化する、例えば組織漏出の結果として変化するタンパク質は、10ng/mlで循環することができる。この非常に動的な範囲のタンパク質濃度は、重大な分析における課題を表し、且つこの問題点を克服するために、複数のアフィニティ枯渇カラムを使用し、最も高度に豊富なタンパク質(例えば、5、6、7、8、9又は10種の最も高度に豊富なタンパク質)を除去する。より多くの出発物質を使用することができ、且つ高度に豊富な分子からの干渉がより少ないので、これは、より少ない存在量範囲の変化の検出を可能にする。このような枯渇戦略は、任意の検出法の前に、適用することができる。

0143

本方法は、神経認知障害の治療に関して有効な療法を決定することを更に含むことができる。例えば、バイオマーカーパネル内のマーカーの量又は濃度は、特定の療法又は治療に反応する又は反応しない対象の指標であることができる。

0144

本発明の一実施態様において、本バイオマーカーパネルは、神経認知障害の対象の組織試料又は体液試料中のバイオマーカーパネル内の個別のマーカーの量又は濃度を使用し、神経認知障害を軽減するために最も適切且つ有効な療法を予測する方法において、有用であることができる。別の実施態様において、このような方法は、神経認知障害を治療するための薬剤の使用を更に含むことができ、ここでこの薬剤は、神経認知障害の発症又は進行を防止するために、神経認知障害におけるバイオマーカーパネルのマーカーレベルの疾患-関連した変化を、正常状態において認められる方向に、減少、遅延又は停止する。好ましくは、このマーカーの発現は、正常状態の発現に回復される。本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの発現のモニタリングは、治療の進行及び/又は効能の指標であることができる。

0145

バイオマーカーパネルはまた、ADなどの神経認知障害の治療におけるその有用性を決定するための、薬剤のスクリーニング方法において使用することもでき、この方法は:
(a)神経認知障害又はそれらの症状を有する対象から得られた又はこれを代表する組織試料又は体液試料を提供することであって、ここで対象及び/又は試料は、スクリーニングされる薬剤により治療されていること;
(b)治療された対象及び/又は試料由来の若しくはこれを代表する試料中の、本明細書に規定したバイオマーカーパネルのマーカーの、量又は濃度を決定すること;並びに
(c)前記薬剤が、治療された対象及び/又は試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度へ影響を及ぼすかどうかを決定すること:を含む。

0146

好ましくは、このバイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカーから本質的になり、任意にRANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、アポリポタンパクC-III(ApoC3)、活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)、アポリポタンパクE(ApoE)、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン、神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1の群から選択される1種以上のマーカーを更に含む。

0147

より好ましくは、このパネルは、ApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)を更に含む。

0148

本明細書記載のバイオマーカーパネルを使用し、薬剤の、ADなどの神経認知障害又はそれらの1以上の症状を予防又は改善する能力を試験することができる。

0149

このような薬剤は、臨床試験においてヒト対象で試験することができる。本明細書記載のバイオマーカーパネル内のタンパク質の発現を健常個体において認められるレベルにまで回復する任意の薬剤は、ADなどの神経認知障害の治療、すなわちAD症状の軽減又はADの進行の遅延における使用の可能性がある。

0150

臨床試験時に、例えば、本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、試験される薬剤の存在又は非存在で決定することができる。この薬剤の効能は引き続き、得られた発現データを、正常状態での対応する公知の発現パターンに対し比較することができる。効能を示す薬剤は、バイオマーカーパネル内のマーカーの量又は濃度を、正常状態のそれにより密に類似するように変更するもの、又はバイオマーカーパネルの発現を安定化する、すなわち、疾患の進行を防止するものである。

0151

神経認知障害におけるバイオマーカーパネル内のマーカーの正常状態におけるそれらの発現と比べた検出もまた、臨床試験時に、ADなどの神経認知障害の治療に関する可能性のある薬剤の効能をモニタリングするために使用することができる。臨床試験時に、例えば、バイオマーカーパネル内のマーカーのレベル及び/又は活性は、試験される薬剤の存在又は非存在下で、関連する細胞及び/又は組織及び/又は体液において決定することができる。この薬剤の効能は、引き続き、得られたマーカーのレベル及び/又は活性のデータを、正常状態における細胞及び/又は組織及び/又は体液に関する対応する既知のレベル/活性と比較することができる。効能を示す薬剤は、対象からの細胞及び/又は組織試料及び/又は体液のバイオマーカーパネルの量又は濃度を、正常状態のそれにより密に類似するように変更するもの、又はパターンを安定化する、すなわち、疾患の進行を防止するものである。

0152

介入に関して、本明細書記載のバイオマーカーパネル内のマーカーの発現を、健常レベルに回復する又は部分的に回復する任意の治療は、ADなどの神経認知障害の治療的介入の候補とみなされるべきである。試験薬剤の用量は、用量-反応曲線を誘導することにより決定することができる。

0153

同様に、ADなどの神経認知障害の発症を防止するか又はより進行したADのレベルへの進行を防止することができる任意の治療は、ADの治療的介入の候補とみなされるべきである。

0154

加えて、ADなどの神経認知障害の、及び本明細書に記載されたものの動物モデルは、AD症状を治療することが可能である薬剤の同定に使用することができる。このような動物モデルは、このような障害の治療において有効であり得る薬物、医薬品、療法及び介入の同定において使用することができる。曝露に対する動物の反応は、マーカーの発現を評価し、且つこれを野生型マウスのそれと比較することにより、モニタリングすることができる。

0155

本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、神経認知障害の症状を改善するか、又は神経認知障害の進行を防止する薬剤の能力を評価するために、動物モデルシステムと一緒に利用することができる。例えば、本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、フィンガープリントプロファイルの一部を形成することができ、これはその後そのような評価において使用することができる。フィンガープリントプロファイルは、動物モデルシステム内の疾患状態について特徴づけることができる。引き続き、これらの既知のフィンガープリントプロファイルは、試験薬剤が、このようなフィンガープリントプロファイルを修飾し、且つこのプロファイルをより望ましいフィンガープリントにより密に類似させる作用を有することを確認するために、比較することができる。例えば、薬剤の投与は、ADモデルシステムのフィンガープリントプロファイルを、対照システムにより密に類似させることができるか、あるいはフィンガープリントプロファイルの更なる変化を防止することができる。あるいは、薬剤の投与は、対照システムのフィンガープリントプロファイルが、AD状態を模倣し始めることを引き起こし、これは例えば、関心対象の薬剤の更なる特徴決定において使用することができるか、又は追加の動物モデルの作製において使用することができる。

0156

本薬剤で治療されない対象と比較した、本薬剤で治療される対象における、本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度は、本薬剤が、神経認知障害の治療において有用であり得ることの指標である。

0157

神経認知障害の症状を有する対象及び正常対象における経時的なバイオマーカーパネル内のマーカーの濃度又は量の相違(divergence)を、決定することができる。

0158

本明細書記載のスクリーニング方法は、前記工程(a)の前に、健常な個体、重症度又は進行が異なる神経認知障害又はそれらの症状を有する患者、及びこの薬剤により治療されていない神経認知障害又はそれらの症状を有する患者に由来する1種以上の対照試料中のバイオマーカーパネルのマーカーの濃度又は量を決定する工程を更に含むことができる。

0159

薬剤の選択又は拒絶の工程は、対照に比べ神経認知障害の症状を有する治療された対象におけるバイオマーカーパネルのマーカーの濃度又は量が変化する程度に従う。好適な対照は、神経認知障害を伴わない年齢が類似した人々を含む。

0160

薬剤が、対照に比べバイオマーカーパネルのマーカーの濃度又は量の経時的変化を防止又は遅延する場合に、この薬剤が選択されることができる。

0161

好ましくは、薬剤が、バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度をある正常対象のそれの方向へと変更する場合に、この薬剤が選択される。より好ましくは、薬剤が、バイオマーカーパネルのマーカーの量又は濃度をその正常対象のそれへと変更する場合に、この薬剤が選択される。

0162

経時的に採取された試料は、数週間、数ヶ月又は数年の間隔で採取されることができる。例えば、試料は、毎月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月又は12ヶ月の間隔で採取されることができる。

0163

経時的な濃度又は量の変化は、その対象由来の試料中の濃度又は量の最初のレベルと比較した、及び/又は正常対象由来の試料中の濃度又は量のレベルと比較した、濃度又は量の増加又は減少であることができる。薬剤が、経時的な濃度又は量の変化を遅延又は停止する場合に、これは、選択されることができる。

0164

前述のスクリーニング法において、対象は:
(a)正常対象及びADなどの神経認知障害の症状を有する対象;並びに/又は
(b)この薬剤で治療されていない神経認知障害の症状を有する対象及びこの薬剤で治療されている神経認知障害の症状を伴う対象:を含む。

0165

別の実施態様において、対象は:
(a)本薬剤で治療した及び治療していない正常対象;並びに、
(b)本薬剤で治療した及び治療していない軽度認知障害(MCI)を有する対象;及び
(c)本薬剤で治療した及び治療していないADなどの神経認知障害の症状を有する対象:の一方又は両方:を含むことができる。

0166

ADなどの神経認知障害の症状を有する対象は、神経認知障害を伴うヒト対象であることができる。

0167

前述のように、神経認知障害は、軽度認知障害(MCI)、認識されたADの前兆、及びADなどの認知症、並びに単独の及びアルツハイマー病を伴う混合型認知症としての、血管性認知症、レビー小体型認知症、及び前頭側頭認知症を含む他の晩期発症型認知症を含むことができる。

0168

アルツハイマー病は、軽度認知障害(MCI)などの前臨床期アルツハイマー病、並びに進行型ADを含む、任意の病期又は重症度のADであることができる。

0169

一実施態様において、ADなどの神経認知障害の症状を有する対象は、神経認知障害の非-ヒト動物モデルであることができる。好適なADの非-ヒト動物モデルは、当該技術分野において周知であり、且つ変異体アミロイド前駆体タンパク質(APP)トランスジェニックマウス、プレセニリン-1(PS-1)トランスジェニックマウス、二重遺伝子導入APP/PS-1トランスジェニックマウス、及びグリコーゲン合成酵素キナーゼ(GSK)を過剰発現しているマウスである(Lucasらの文献、(2001)EMBO J. 20, p27-39参照)。この実施態様において、正常対象は、野生型マウスである。

0170

本明細書記載のスクリーニング法において使用することができる組織又は体液の試料は、例えば、脳組織、血液、血漿、血清、唾液又は脳脊髄液の試料である。

0171

発明内には、本明細書記載のスクリーニング法を使用する薬物の同定、本薬剤の製造、単離又は入手、並びに薬剤の医薬組成物を提供するための許容し得る担体との製剤化の更なる工程を含む、医薬組成物の製造方法も包含している。

0172

AD症状は、少なくとも一部は、標的タンパク質の異常なレベルによるか、又は異常な活性を示す標的タンパク質の存在により、もたらされ得ることは、可能である。従って、このような標的タンパク質のレベル及び/又は活性の減少は、AD症状の改善をもたらすであろう。標的タンパク質遺伝子発現レベル又は標的タンパク質活性レベルの減少に関する技術は、本明細書において考察されている。

0173

あるいは、ADなどの神経認知障害の症状は、少なくとも一部は、標的タンパク質発現のレベルの不在若しくは減少、又は標的タンパク質の活性レベルの減少によりもたらされ得ることは、可能である。従って、標的タンパク質遺伝子発現及び/又はこのようなタンパク質の活性レベルの増加は、AD症状の改善をもたらすであろう。

0174

標的タンパク質遺伝子発現レベル又は標的タンパク質活性レベルの増加又は減少の作用は、本明細書に記載するバイオマーカーのパネルを使用し、決定又はモニタリングすることができる。

0175

様々な技法を利用し、このような標的遺伝子及び/又はタンパク質の発現、合成、又は活性を阻害することができる。

0176

例えば、阻害活性を示す薬剤は、軽度認知障害又はADの症状を予防するために、本発明に従い使用することができる。このような分子は、ペプチド(例えば、標的タンパク質膜貫通受容体の可溶性細胞外部分を表すペプチドなど)、ホスホペプチド、小型の有機分子若しくは無機分子、又は抗体(例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体抗イディオタイプ抗体、キメラ抗体又は単鎖抗体、並びにFab、F(ab')2及びFab発現ライブラリー断片、並びにそれらのエピトープ-結合断片を含む)を含み得るが、これらに限定されるものではない。

0177

標的タンパク質に特異的であり且つその活性と干渉するの両方である抗体を使用し、標的タンパク質機能を阻害することができる。望ましい場合、このような変異体標的産物の活性と干渉する、変異体標的タンパク質に特異的な抗体も使用することができる。

0178

標的遺伝子タンパク質が細胞内にあり、且つ全抗体が使用される場合、インターライジング抗体が好ましいことがある。しかし、リポフェクチン又はリポソームを使用し、標的タンパク質エピトープに結合する抗体又はFab領域の断片を細胞へ送達することができる。抗体の断片が使用される場合、標的タンパク質の結合ドメインに結合する最小の阻害断片が、好ましい。例えば、標的タンパク質に結合する抗体の可変領域のドメインに対応するアミノ酸配列を有するペプチドを、使用することができる。このようなペプチドは、化学合成されるか、又は当該技術分野において周知の方法を使用する組換えDNA技術により作製されることができる(例えば、Creightonの文献、1983,前掲;及び、Sambrookらの文献、1989, 前掲を参照されたい)。

0179

あるいは、細胞内標的タンパク質エピトープに結合する単鎖中和抗体も、投与されることができる。このような単鎖抗体は、例えば、Marascoらの文献に記載された技術などの技術を利用し、例えば、標的細胞集団(populating)内の単鎖抗体をコードしているヌクレオチド配列を発現することにより、投与することができる(Marasco, W.らの文献、1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893)。

0180

標的タンパク質が、細胞外であるか、又は膜貫通タンパク質である場合において、ペプチド投与に適している本明細書記載の任意の投与技術を、阻害標的タンパク質抗体を、それらの作用部位に効果的に投与するために利用することができる。

0181

更に、標的タンパク質遺伝子の発現を阻害するアンチセンス、siRNA及びリボザイム分子もまた、異常な標的タンパク質遺伝子活性を阻害するために、本発明に従い使用することができ;三重らせん分子は、異常な標的タンパク質遺伝子活性の阻害において利用することができる。アンチセンス、リボザイム及び三重らせん分子は、野生型の、又は適切ならば変異体のいずれかの標的タンパク質遺伝子活性を減少又は阻害するように、設計することができる。このような分子の作製及び使用に関する技術は、当業者に周知である。

0182

アンチセンスRNA及びDNA分子は、標的化されたmRNAへのハイブリダイズ及びタンパク質翻訳の防止により、mRNAの翻訳を直接ブロックするように作用する。アンチセンスDNAに関して、翻訳開始部位由来のオリゴデオキシ-リボヌクレオチド、例えば関心対象の標的遺伝子ヌクレオチド配列の-10〜+10領域が、好ましい。

0183

リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することが可能である、酵素的RNA分子である。(総説については、Rossi, J.の文献、1994, Current Biology 4: 469-471を参照されたい)。リボザイムの作用機序は、リボザイム分子の相補的標的RNAへの配列特異的ハイブリダイゼーション、それに続くエンドヌクレアーゼ的切断に関与している。リボザイム分子の組成物は、標的タンパク質mRNAに相補的な配列を1以上含まなければならず、且つmRNA切断に寄与する周知の触媒的配列を含まなければならない。この配列に関しては、米国特許第5,093,246号を参照されたい。従って本発明の範囲内で、標的タンパク質をコードしているRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的且つ効果的に触媒する、ハンマーヘッドモチーフリボザイム分子が、操作される。

0184

いずれか可能性のあるRNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、配列GUA、GUU及びGUCを含む、リボザイム切断部位に関して関心対象の分子を走査することにより、最初に同定される。一旦同定されると、標的タンパク質遺伝子の領域に対応し、切断部位を含む、15〜20リボヌクレオチドの短いTNA配列が、そのオリゴヌクレオチド配列不適切なものとすることがある二次構造などの予想される構造特徴について、評価され得る。候補配列の好適性はまた、リボヌクレアーゼ保護アッセイを使用し、それらの相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイズのし易さを試験することにより、評価され得る。

0185

RNA干渉(RNAi)は、サイレンシングされる遺伝子に対し配列が相同である二本鎖RNA(dsRNA)により開始される、動物及び植物における配列-特異的、転写後遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNAiは、短い二本鎖RNA分子により媒介される(低分子干渉RNA又はsiRNA)。siRNAは、10-15bpの短いRNAオリゴヌクレオチドとして、又は引き続き切断されsiRNAを生じる比較的長いdsRNAとして、細胞へ導入され得る。RNAは、RNAとして細胞へ導入されるか、又はDNA若しくはRNAベクターから転写され得る。

0186

siRNA分子は、当該技術分野において公知の標準の固相又は液相合成技術を用いて、合成することができる。あるいは、siRNA分子又は比較的長いdsRNA分子は、好ましくは以下に説明されるようなベクター内に含まれる核酸配列の転写により、組換えにより作製することができる。

0187

別の代替は、細胞における短いヘアピンRNA分子(shRNA)の発現である。shRNAは、合成siRNAよりもより安定している。shRNAは、小さいループ配列により分離される短い逆方向反復配列からなる。1つの逆方向反復配列は、遺伝子標的に対して相補性である。次にshRNAは、siRNAへとプロセッシングされ、これは標的遺伝子mRNAを分解し、且つ発現を抑制する。shRNAは、ヒトH1又は7SKプロモーターなどの、RNAポリメラーゼIIIプロモーターの制御下で、shRNA配列をコードしているDNA構築体で、細胞をトランスフェクションすることにより、細胞内に作製される。あるいは、shRNAは、外因性に合成され、且つ細胞へ直接導入され得る。好ましくは、shRNA配列は、長さ40〜100塩基であり、より好ましくは長さ40〜70塩基である。ヘアピンのステムは、好ましくは長さ19〜30塩基対である。このステムは、ヘアピン構造を安定化するために、G-U対形成を含むことができる。

0188

転写の阻害のための三重らせん形成に使用される核酸分子は、単一本鎖であり、デオキシヌクレオチドで構成されなければならない。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、フーグスティーン塩基対形成則を介し三重らせん形成を促進するようにデザインされなければならず、これは一般にプリン又はピリミジンのいずれかのかなり大きい配列部分二重鎖の1本の鎖上に存在することを必要とする。ヌクレオチド配列は、ピリミジン-ベースであってよく、これは生じる三重らせんの3本の会合された鎖にわたってTAT及びCGC+トリプレットを生じるであろう。このピリミジン-リッチ分子は、その鎖に対し平行方向で二重鎖の1本鎖のプリン-リッチ領域に対し相補的な塩基を提供する。加えて核酸分子は、例えば、G残基の部分配列を含むプリン-リッチであるものを選択することができる。これらの分子は、プリン残基の大半は標的化された二重鎖の1本鎖上に配置されている、GC対が豊富なDNA二重鎖と、三重らせんを形成し、この三重鎖中の3本鎖にわたるGGCトリプレットを生じるであろう。

0189

あるいは、三重らせん形成のために標的化され得る可能性のある配列は、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作製することにより増加されることがある。スイッチバック分子は、交互の5'-3'、3'-5'様式により合成され、結果的にこれらは、二重鎖の第一の1本鎖と、次に他鎖と、塩基対形成し、二重鎖の1本鎖上に存在するプリン又はピリミジンのいずれかのかなり大きい配列部分の必要性を排除する。

0190

本発明のアンチセンスRNA及びDNA、siRNA、リボザイム及び三重らせんの分子は、DNA及びRNA分子の合成に関する当該技術分野において公知の任意の方法により調製することができる。これらは、例えば固相ホスホロアミダイト化学合成などの、当該技術分野において周知の、オリゴデオキシリボヌクレオチド及びオリゴリボヌクレオチドを化学合成する技術を含む。あるいは、RNA分子は、アンチセンスRNA分子をコードしているDNA配列のインビトロ及びインビボ転写により作製され得る。このようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの好適なRNAポリメラーゼプロモーターを組み込んでいる多種多様なベクターへ組み込まれることができる。あるいは、使用されるプロモーターに応じて構成性に誘導性のアンチセンスRNAを合成するアンチセンスcDNA構築体が、細胞株へ安定して導入されることができる。

0191

ADなどの神経認知障害を引き起こす標的タンパク質は、障害状況において過小発現されることがある。あるいは、標的タンパク質の活性は、減弱されることがあり、このことは症状の発生につながる。それにより標的タンパク質のレベルが、AD症状が予防又は改善されるレベルにまで増加され得る方法が、本明細書に説明されている。標的タンパク質活性のレベルは、例えば、存在する標的タンパク質のレベルの増加、又は存在する活性のある標的タンパク質のレベルの増加のいずれかにより、増加され得る。

0192

例えば、標的タンパク質は、AD症状を改善するのに十分なレベルで、そのような症状を示す患者に投与することができる。当業者は、本明細書記載のものなどの技術を利用し、正常な標的タンパク質の有効な、無毒の投与量の濃度をどのように決定するかを、容易に知っているであろう。

0193

更に、患者は、遺伝子置換療法により治療されることができる。標的タンパク質遺伝子機能を持つ正常な標的タンパク質の生成を指示する正常な標的タンパク質遺伝子又は遺伝子の一部の1以上のコピーは、非限定的にアデノウイルスベクターアデノ随伴ウイルスベクター、及びレトロウイルスベクターを含むベクター、加えてリポソームなどのDNAを細胞へ導入する他の粒子を使用し、細胞へ挿入することができる。加えて、先に説明されたものなどの技術は、ヒト細胞への正常な標的タンパク質遺伝子配列の導入のために利用することができる。

0194

正常な標的タンパク質遺伝子配列を含む細胞、好ましくは自家細胞は、次に、AD症状の予防又は改善を可能にする位置で、患者へ導入又は再導入され得る。このような細胞置換技術は、例えば、標的タンパク質が分泌された細胞外タンパク質である場合に、好ましいことがある。

0195

抗体又は核酸抑制因子を投与する作用は、本明細書記載のバイオマーカーのパネルを使用し、決定又はモニタリングすることができる。

0196

(医薬品調製及び投与方法
標的タンパク質の発現、合成及び/又は活性に影響を及ぼす薬剤は、ADなどの神経認知障害を予防又は治療又は改善するために、治療有効量で、患者へ投与することができる。治療有効量とは、症状の改善を生じるのに十分な化合物の量、あるいはそのような症状の改善を生じるタンパク質の濃度を発現するのに十分な核酸分子の量をいう。

0197

それが核酸分子、抗体、小型分子化合物又は細胞であるかどうかにかかわらず、薬剤の作用は、本明細書記載のバイオマーカーのパネルを用いて決定又はモニタリングすることができる。

0198

そのような薬剤の毒性及び治療的効能は、例えば、ED50(集団の50%において治療的に有効な投与量)の決定、及び何らかの副作用のED50(毒性−TD50)の決定など、細胞培養物又は実験動物における標準の薬学手法により決定することができる。毒性作用と治療的作用の間の投与量の比は、治療係数であり、これは比TD50/ED50として表現することができる。大きい治療指数を示す薬剤が好ましいが、毒性副作用を示すものに関しては、罹患した組織部位へそのような薬剤を標的化する送達システムを設計するために、感染していない細胞の損傷の可能性を最小化し、これにより副作用を軽減するよう、注意が払われるべきである。

0199

動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための用量範囲の公式化において使用することができる。そのような薬剤の用量は、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内に収まることが好ましい。この用量は、使用される剤形及び利用される投与経路に応じて、この範囲内を変動することができる。

0200

本発明に従い使用するための医薬組成物は、1種以上の生理的に許容し得る担体又は賦形剤を使用する、従来の方法において製剤化されることができる。

0201

従って、これらの薬剤は、吸入若しくは吹送(口又はのいずれかを通じて)による投与、又は経口、口腔内非経口及び直腸投与のために製剤化することができる。

0202

経口投与に関して、本医薬組成物は、結合要素(例えば、α化メイズデンプンポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチル-セルロース);充填剤(例えば、乳糖微晶質セルロース又はリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムタルク又はシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム);又は、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの、医薬として許容し得る賦形剤と共に、従来の手段により調製される形状、例えば、錠剤又はカプセル剤の形状をとることができる。錠剤は、当該技術分野において周知の方法により被覆されてよい。経口投与のための液体調製品は、例えば、液剤シロップ剤又は懸濁剤の形状をとることができるか、あるいは使用前に水又は他の好適なビヒクルで構成される乾燥製品として提供されることができる。このような液体調製品は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップセルロース誘導体又は食用硬化油脂);乳化剤(例えば、レシチン又はアカシアゴム);並びに、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸メチル若しくはプロピル又はソルビン酸)などの医薬として許容し得る添加剤と共に、従来の手段により調製することができる。これらの調製品はまた、適宜、緩衝塩香味料着色料及び甘味料を含むこともできる。

0203

経口投与のための調製品は、活性物質の制御放出を生じるために、好適に製剤化されることができる。口腔内投与のために、本組成物は、従来の方法で製剤化された、錠剤又は舐剤の形状をとることができる。

0204

吸入による投与に関して、本発明に従い使用される薬剤は、好都合なことに、例えばジクロロジフルオロメタントリクロロフルオロメタンジクロロ-テトラフルオロエタン二酸化炭素又は他の好適な気体など好適な噴射剤の使用により、加圧パック又はネブライザーから提供されるエアロゾルスプレーの形状で送達される。加圧されたエアロゾルの場合、用量単位は、測定された量を送達するためのバルブを提供することにより、決定することができる。吸入器又は吹送器において使用するための例えばゼラチンの、カプセル及びカートリッジは、本化合物及び乳糖若しくはデンプンなどの好適な散剤基剤粉末混合物を含むように製剤化することができる。

0205

本薬剤は、例えばボーラス注射又は連続注入によるなどの注射による非経口的投与のために製剤化されることができる。注射用製剤は、添加した保存剤と共に、例えばアンプル又は多投与量容器などの、単位剤形で提供することができる。本組成物は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤又は乳剤などそのような形状をとることができ、且つ懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの製剤化物質を含むことができる。あるいは、活性成分は、使用前に、好適なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水により構成される粉末形状であることができる。

0206

本薬剤はまた、例えばカカオバター又は他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を含む、坐剤又は停留浣腸などの直腸組成物で製剤化することもできる。

0207

先に説明した製剤に加え、本薬剤は、デポー調製品としても製剤化することができる。このような長期間作用する製剤は、例えば、皮下若しくは筋肉内への植え込み、又は筋肉内注射により投与することができる。従って、例えば、本化合物は、好適な高分子材料又は疎水性材料(例えば、許容し得る油分中のエマルジョンとして)又はイオン交換樹脂と共に、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として、製剤化することができる。

0208

本組成物は、望ましいならば、活性成分を含有する1以上の単位剤形を含むことができる、パック又はディスペンサー装置中で、提示することができる。パックは、例えば、ブリスターパックなどの、金属箔又はプラスチックフォイルを含むことができる。パック又はディスペンサー装置には、投与に関する説明書が添付されることができる。

0209

(バイオマーカーパネル検出のためのキット)
本発明はまた、組織試料又は体液試料中の本明細書記載のバイオマーカーパネルのマーカーの検出のための試薬を含むキットを提供している。本バイオマーカーパネルは、トランスサイレチン(TTR)、クラスタリン、シスタチンC(CST3)、α-1-酸性糖タンパク質(A1AcidG)、細胞間接着分子1(ICAM1)、補体C4(CC4)、色素上皮由来因子(PEDF)及びα1抗トリプシン(A1AT)のマーカー、並びに任意にRANTES(発現分泌された活性化正常T細胞の調節物質)、アポリポタンパクC-III(ApoC3)、プラスミノーゲン活性抑制因子タイプ1(PAI-1)、C-反応性タンパク質(CRP)、カテプシンD(CTSD)、アポリポタンパクE(ApoE)、α-2-マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドP成分(SAP)、終末糖化産物特異的受容体(sRAGE)、神経特異的エノラーゼ(NSE)、補体因子H(CFH)、アミロイドβ(A4)前駆体タンパク質(AB40又はAβ40)、セルロプラスミン、神経細胞接着分子(NCAM)、ApoA1、Aβ42、BDNF、β-2-ミクログロブリン(B2M)、及びVCAM-1の群から選択される1以上のマーカーから本質的になる。

0210

好ましくは、本パネルは、ApoE ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)を更に含む。

0211

一実施態様において、本キットは、バイオマーカーパネルのマーカーに特異的に結合する1種以上の結合要素を更に含む。

0212

一つの特定の実施態様において、1種以上の結合要素は、一次抗体であり、各抗体は、バイオマーカーパネルの異なる個別のマーカーに特異的に結合する。好ましくは、キットは、この一次抗体に特異的に結合する1種以上の二次抗体を更に含むことができる。二次抗体は、任意に標識され、例えば、蛍光標識されるか又はタグ付けされ得る。

0213

この結合要素は、アプタマー、オリゴヌクレオチド又は化学化合物であることができる。

0214

あるいは、キットは、選択されたマーカー及び質量分析法において使用するための好適な等級タンパク質分解酵素を表す1種以上のペプチドを含むことができる。これらのペプチドは、合成ペプチドであることができ、且つ炭素窒素酸素及び/又は水素重同位体を1つ以上含むことができる。例えば抗体などの結合要素は、アッセイプレート、ビーズ、ミクロスフェア又は粒子上に固定されることができる。任意にビーズ、ミクロスフェア又は粒子は、染色、タグ付け又は標識されてよい。

0215

本キットは、バイオマーカーパネルのマーカーの対照試料を更に含むことができる。

0216

本キットは、タグ付けした二次抗体の存在を検出するための1種以上の検出試薬を更に含むことができる。

0217

本キットの試薬は、外部環境からその内容物を保護する好適な容器中に密封されることができる。このようなキットは、使用説明書を含むことができる。

0218

本明細書記載の方法は、例えば、本明細書記載のバイオマーカーパネル、並びに/又は例えば抗体などの結合要素のような、バイオマーカーパネルの個別のマーカーに特異的に結合する試薬を含む、予め包装された診断キットを利用することにより、実行することができ、これは好都合なことに、例えば臨床的状況において、AD症状を示す患者を診断するために使用することができる。

0219

本明細書において言及された全ての文書刊行物及び配列データベースエントリーは、全ての目的のためにそれらの全体が引用により本明細書中に組み込まれている。

0220

本発明の特定の態様及び実施態様は、実施例により、先に記載した図面及び表を参照し、ここで例示される。

0221

(実施例)
アルツハイマー病(AD)は、全ての関連する認知症及び神経認知障害の代表例として本明細書において例示されている。

0222

可能な限り早期にADを検出することは、疾患を変更する薬剤の試用を可能にする上で不可欠であり、且つこの目的のためにバイオマーカーの同定及び複製にかなりの努力が払われている。

0223

このようなバイオマーカーは現在、脳脊髄液(CSF)中のタウタンパク及びアミロイドβ(Aβ)の測定、磁気共鳴画像法(MRI)を使用する萎縮の測定、並びにポジトロン放出断層撮影(PET)を使用するAβの病理学的量(pathological load)の測定を含む。これらのアプローチは全て、有望であるが、分子造影は、今のところ比較的少数の施設で利用可能な高価な手法であり、腰椎穿刺はやや侵襲的である。更に両方の場合、反復測定は問題が多い。

0224

他方で血液(血漿)は、反復採取に適しているよりアクセスしやすい生体液である。ゲルベースのアプローチ(2-DGE及びLC-MS/MS)による症例対照試験デザインを使用し、2種のタンパク質(補体因子H(CFH)及びα-2-マクログロブリン)が、ADの潜在的マーカーとして認められ1、その後これら両方が、独立したグループにより再現された2-3。本試験において、3種の他のタンパク質の変化、すなわち血清アミロイドP(SAP)、補体C4(CC4)、及びセルロプラスミンの変化が認められ、これらは全て、ADの病因関係づけられている4-6。しかし、症例対照試験は、ADに存在するとされる長い前駆症状の病期が存在する場合には、問題が多い。このような場合において、外見上正常な対照の大きい割合で、本疾患過程が既に宿っており、従って末梢のバイオマーカーの疾患的特徴を既に有することがある。この症例対照デザインの限界を克服するために、疾患重症度の代替(海馬萎縮及び臨床進行)に関連したタンパク質が探され、クラスタリンが、これら両方の代理測定に関連したマーカーとして同定された7。この「中間形質(endophenotype)」発見アプローチに基づき、トランスサイレチン(TTR)及びアポリポタンパクA1(ApoA1)は、より速く衰弱するAD対象に関連し、並びに増加した血漿アポリポタンパクE(ApoE)レベルは、脳内の増加したAβ蓄積量に関連していることがわかった8-9。

0225

これらの観察は、ADに関連したバイオマーカーとして作用し得るセットにつながった。しかし、このような知見は、理想的には2つ以上のコホートソースから得られた試料を使用し、並びに多重化を可能とするプラットフォームを使用する、大規模試験における再現を必要としている。

0226

従って最初に、本疾患に関与したバイオマーカーの多重パネルが同定されることを必要とし;二番目に、MRIにおける萎縮の疾患中間形質測定の及び臨床的重症度の特定された先験的転帰変数を伴う大規模多施設コホートにおける血液-ベースのバイオマーカーのセットの検証が、確立されることを必要とし;並びに、第三に、規定された時間内での軽度認知障害の認知症への進展を予測する上で、疾患関連バイオマーカーの多重パネルの正確度の決定が認められることを必要としている。

0227

更に、正常対照デザインと比較された疾患症例は、対照における潜在性疾患のために、限定されたものであるので、このような反復試験は、転帰、疾患の中間形質又は疾患進行の予測などの臨床的に意味のある転帰として、成されるべきである。

0228

(方法)
(対象及び臨床分類)
AD、MCI及び高齢非認知症の対照からの血漿試料を、下記の3つの独立した試験から選定した。AddNeuroMed(ANM)、欧州の多施設試験10;Kings Health Partners-Dementia Case Register(KHP-DCR)、英国のクリニック及び集団ベースの試験、並びにGenetics AD Association(GenADA)、カナダ拠点にした多施設症例対照長期試験。ADほぼ確実(probable AD)の診断は、精神障害の診断と統計マニュアル(DSM-IV)、及び国立精神、コミュニケーション障害及び脳卒中研究所−アルツハイマー病関連障害協会(NINCDS-ADRDA)の判定基準に従って行った。軽度認知障害(MCI)は、Petersen判定基準に従い規定した11。標準化された臨床評価は、認知に関して、ミニメンタルステート検査(MMSE)及びアルツハイマー病評価尺度認知機能尺度(ADAS-Cog))(ANM及びKHP-DCR試験のみ)、並びに重症度の全般的レベルに関して、臨床認知症評価法(CDR)(ANM及びKHP-DCR試験のみ)を含んだ。研究所の審査委員会は、書面によるインフォームドコンセント又は代理人同意が得られるという条件で、試験手順及び対象を承認した。

0229

対象1153名からの血漿試料を、試験した−ADが476名、MCIが225名及び認知症でない高齢対照が452名(表2)。APOE遺伝子型は、標準法12を用い、静脈血から決定した。

0230

表2:対象の人口統計学的属性



略語:AD、アルツハイマー病;APOE、アポリポタンパクE;CDR、臨床認知症評価法;GDS、グローバル劣化尺度;MCInc、軽度認知障害非進展者;MCIc、軽度認知障害進展者;MMSE、ミニメンタルステート検査。平均(±S.D、範囲)、ANOVAを行い、有意である場合は、Tukeyの事後検定比較を行った。*は、3群全てにわたり有意であり、#は、ADに比較した対照において有意である。

0231

(認知能低下)
認知的変化の勾配により決定される認知能低下は、3回の個別のMMSE評価で最低を有したAD対象(n=342)のサブセットについて計算した。線形混合効果モデルを、Rの‘nlme’パッケージを用いて作製した。共変数は、ベースライン時の年齢、性別、アポリポタンパクE(APOE)、ε4対立遺伝子の存在(ApoE遺伝子型)を含み、並びに教育年数を、低下率に対するそれらの作用について調べた。ベースライン時の年齢及び教育年数は、低下率に対する有意な作用を有し(p-値<0.05)、結果的に最終モデルにおける固定効果として含んだ。次に各試料に関して最終モデルから得られた勾配係数を、認知能変化率として使用し、1年毎のMMSEスコアの変化として規定した。

0232

(磁気共鳴画像法(MRI))
高解像度矢状断面3D T1-強調MPRAGE容積(ボクセルサイズ1.1×1.1×1.2mm3)及びアキシャルプロトン密度/T2-強調ファストスピンエコー画像を、1.5TのMRIスキャナーにおいて、先に報告した13対象476名(CTLの179名、MCIの123名及びADの174名)について獲得した。MPRAGE容積を、スキャナー間の互換性を確実にするため14に、ADNI試験のために特別にデザインされたカスタムパルスシークエンスを用いて獲得した。脳及び頭蓋全体の被写域は、先に公開された品質管理基準13,15に従い全てのMR画像に必要とされた。画像解析は、Freesurfer画像解析パイプライン(バージョン5.1.0)を使用し実行し、先に説明された様な16-17、局部の皮質厚と皮質下容積測定を行った。このセグメンテーションアプローチは、イメージング-プロテオミクス試験における分析や18、ADバイオマーカー発見19のために先に使用された。各対象からの全ての容積測定値は、対象の頭蓋内容積により正規化し、他方で皮質厚測定値をそれらの生の形で使用した19。海馬容積、嗅内皮質容積及び脳室容積の測定値を、アルツハイマー病の重要なMRI中間形質として選択した。MCI群に関して海馬萎縮の評価のために、MRIデータを、それらの容積測定中央値を基に、高萎縮及び低萎縮へと階層化した。

0233

免疫学的検定−Luminex測定)
マルチ-分析物プロファイル(xMAP)技術を使用し、候補タンパク質(表6)を、且つ7つのMilliplexパネルを使用するLuminex 200 (Austin, TX)装置で、定量した。より詳細には:

0234

(Milliplexアッセイ)
7つのMILLIPLEX(登録商標)MAPマルチプレックスパネル(96ウェルプレートフォーマット;MilliporeEMD)を使用した:ヒト神経変性パネル1(7-プレックス)カタログ番号HNDG1-36K、パネル2(6-プレックス)カタログ番号HNDG2-36K、パネル3-(10-プレックス)HNDG3-36K、パネル4(5-プレックス)HNDG4-36K、ヒト腎毒性パネル2(3-プレックス)カタログ番号HKTX2-38K、ヒト神経障害Magパネル1(12-プレックス)及びパネル2(4-プレックス)。

0235

免疫検定プロトコール
Luminex xMAP技術(Austin, TX)は、固相アプローチを使用し、複数のタンパク質を分析する。簡単に述べると、xMAP技術は、蛍光色素が2つの異なる比で挿入されたミクロスフェアを使用する、フローサイトメトリー-ベースのプラットフォームである。理論上は、96-ウェルプレートの1ウェル当たり最大100アッセイの理論的多重化能を持つ、最大100種の異なる色のビーズを、作成することができる。捕獲抗体は、ビーズへ共有結合され、且つ免疫学的検定は、標準サンドイッチ免疫検定フォーマットにおいて試行した。

0236

血漿試料は、最初に、各Milliplexアッセイに関するプロトコールにおいて推奨されたように希釈した。各アッセイウェルは、最初に100μL洗浄緩衝液(1×L-WB)ですすぎ、その後試料を装加した。アッセイ緩衝液25μLを、25μL対照又は試料のいずれかに添加し、引き続き25μLビーズを添加し、各ウェル中の総容積を75μLとした。アッセイプレートを、室温で2時間、又は軌道振盪機上で攪拌しながら一晩インキュベーションした。プレート中のビーズを、100μL洗浄緩衝液により3回洗浄し、25μLビオチン標識された検出抗体と共に1時間インキュベーションした。25μL蛍光標識したレポーター(ストレプトアビジン-PE)分子を、検出抗体に、更に30分間添加した。最後にアッセイプレートを、100μL洗浄緩衝液により、3回洗浄し、ビーズを100μLシース液中に懸濁した。全ての血漿試料を、2つ組でアッセイし、且つプールした血漿(Mastermix)試料を、プレート毎の高及び低QCに加え、陽性対照として含んだ。

0237

データ品質チェック及び前処理)
各ウェル中の蛍光を、Luminex 200 (Austin,Tx)装置を用いて測定し、且つ結果を、Xponent 3.1 (Luminex)ソフトウェアで分析した。蛍光強度中央値(MFI)をエクスポートし、個別の試料の特徴を、MFI読み値から平均、標準偏差(SD)及び変動係数(CV%)を計算することにより、確認した。全ての処理されたデータ点を次に、Sigma Plot (Systat、バージョン12)へインポートした。5-パラメータロジスティック曲線フィッティング法を使用し、未知の血漿試料及びマスター混合物の濃度を計算した。いずれかの2つ組についてCV>15%を記録した任意の個別の試料は、除外し;両方の2つ組が範囲外である場合は、両方のデータ点を除外した。

0238

次に個々の分析は、本アッセイ(31プレート;1148血漿試料)におけるそれらの成績に従いランク付けを適用することにより、品質について評価し、且つ以下の4つの判定基準を基にしたスコア化システムを使用し規定した:
判定基準1標準曲線ランク:1=良好な品質−標準曲線上の線形部分内及び品質チェック(QC)範囲内。2=中等度の品質、標準曲線上の線形部分を超えて広がる、QCよりも高い又は低いのいずれかにクラスター化、並びに3=品質不良、全く線形部分上ではない、低いQCを下回るか又は最高QCよりも高い。
判定基準2 QC1及びQC2に関するアッセイ内CV(%)、CV<30%が受け容れられた(各QC値に関するポイント)。
判定基準3 本発明者らの研究室でプールした試料(マスター混合物)に対するアッセイ間CV(%)、CV<30%が受け容れられた。
判定基準4 標準曲線から信頼できるように内挿することができない試料として規定された欠測データ。1)定量可能な範囲外のMFI値、2)作製されるMFI値を生じない、技術的失敗。

0239

(データ前処理)
統計解析前に、本発明者らは、数多くの品質チェック(QC)を使用し、各アッセイの成績を試験した。蛍光強度中央値(MFI)は、Xponent 3.1 (Luminex社)を用いて測定し、且つ5-パラメータロジスティックフィットを用い、タンパク質濃度を概算するために、Sigma plot(Systat Software;バージョン12)へエクスポートした。簡単に述べると、前記4つの判定基準(標準曲線線形性、アッセイ内変動係数、参照試料に対するアッセイ間CV、及び欠測データの割合)を基にQCチェックを通過した全ての分析物を、更なる分析に進めた。

0240

(統計解析)
単変量統計解析を、SPSS20(IBM)において行った。全ての生MFI測定値を、対数変換し、正規分布を得た。年齢、性別、血漿貯蔵期間(日)及びセンターを含む共変数を調べた。本発明者らは、大部分のタンパク質は、共変数により有意に影響され、従って値は、一般化線形回帰モデル(GLM)を使用し調節されたことを認めた。偏相関(APOE遺伝子型について調節)分析を行い、構造的MRI脳撮像又は認知評価のいずれかとの何らかの関係を認めた。全ての群にわたる臨床スコア離散的性質のために、相関関係は群内で個別に行った。タンパク質はまた、ANCOVA(APOE遺伝子型について調節した)により、疾患表現型及び疾患状態(AD対CTL)とのそれらの関係について、個別に分析した。多重線形回帰を使用し、海馬容積の予測に必要とされるタンパク質の組合せを試験した。

0241

分類解析
クラス予測属性選択のために、WEKA(ワイカト大学)を利用した。別に言及しない限りは、単純ベイズシンプルアルゴリズムを、デフォルト設定で使用した。データセットを、75%トレーニング(train)及び25%テストへと無作為に分けた。属性選択は、トレーニングデータに関する最良優先探索法により、Classifier Subset Evaluatorを用いて行った。属性選択は5回反復して行い、属性を、各反復において観察された回数によりランク付けした。3回以上認められたタンパク質は、予測変数として取り上げた(表3)。何らかのクラスの不均衡は、WEKAのSynthetic Minority Oversampling Technique(SMOTE)を適用することにより、克服した。

0242

表3:特徴選択において観察されたタンパク質

0243

タンパク質は、タンパク質がその特長選択において認められる回数に従い、ランク付けし;太線で強調したタンパク質は、MCI進展に関する予測因子として取り上げた。

0244

カットオフポイント分析)
完全なデータセット(n=169、MCI-進展者(MCIc)及びMCI-非進展者(MCInc))に関する変換されないタンパク質濃度を、上位及び下位四分位範囲及びパーセンタイル順位を使用し、異なるカットオフポイントで、2値化した。3種のカットオフ濃度の最小値は、タンパク質毎に試験した。ロジスティック回帰分析を、個別のカットオフ濃度について行い、且つ進展予測の正確度に基づいて選択した。

0245

(結果)
試験参加者
3つのコホートからの参加者の人口統計学的属性及び臨床的特徴を、表2に示している。AD群は、わずかではあるが有意に対照よりも高齢であった(AD:平均77歳、対照:75歳、p=0.012)。APOEε4対立遺伝子の出現頻度は、対照よりも、MCI群及びAD群においてより高かった。

0246

血漿タンパク質及び疾患病理
予備分析は、2つのタンパク質のみが、ADと対照の間で有意差が認められたことを示した (ApoE:F=6.5、p<0.001;CFH:F=6.1、p<0.001)。しかし、偏相関分析を使用し、且つAPOEについて調節した後、本発明者らは、疾患群における脳領域の海馬、嗅内皮質、脳室及び全脳の容積の1以上のMRI測定値を使用し、萎縮と有意に関連している多数の血漿タンパク質を同定した(表4;セクションa及びb)。複数の試験を照合し、クラスタリン(MCI群:p<0.001)及びApoE(AD群;p=0.0014)のみが、有意であり続けた。

0247

表4:(a)MCI群及び(b)AD群における構造的脳MRI測定に関連して有意として同定されたタンパク質




MRI:磁気共鳴画像法;*ピアソン相関係数

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