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課題
解決手段
概要
背景
鉱山廃水は酸性であり且つ重金属類を含むことが多い。そのため、従来、鉱山廃水処理場では、中和剤として消石灰や炭酸カルシウム等のCa系材料を鉱山廃水に添加してそのpHを中和し、また重金属を除去する操作が行われていた。また、鉄酸化バクテリア法とCa系材料による中和法とを組み合わせた鉱山廃水の処理方法も提案されている。しかし、中和剤として消石灰や炭酸カルシウムを用いる方法は、大量の石膏が沈殿物として生じることに起因して沈殿物の処理コストが増加し、また石膏による鉄酸化バクテリアの菌体数の低下が問題となっている。このことから、石膏を生じない材料である酸化マグネシウムを中和剤として用いる方法が提案されてきた。例えば特許文献1には、炭酸カルシウムと酸化マグネシウムを中和剤として用いる方法が開示されている。特許文献2には、重金属イオンを含む酸性廃水にドロマイト仮焼物を加えて、該酸性廃水を中和させながら重金属イオンを含む粒子を析出させる工程を有する酸性廃水の処理方法において、ドロマイト仮焼物の添加時に酸化マグネシウムを加えることが記載されている。特許文献3には、鉄酸化バクテリア法の中和剤として酸化マグネシウムを使用することで、バクテリア菌体数を増加させる方法が開示されている。
概要
鉱山廃水を既設の鉱山廃水処理場の中和時間内の短時間で中和処理することができ、且つ鉱山廃水中のマンガンを従来よりも低濃度に除去することができる方法を提供すること。重金属を含む酸性の鉱山廃水と、酸化マグネシウムとを混合して、該鉱山廃水を中和するとともに、該重金属の除去を行う鉱山廃水の処理方法である。前記鉱山廃水に含まれる前記重金属の少なくとも一種がマンガンである。酸化マグネシウムとして、そのBET比表面積が15m2/g以上50m2/g以下であるものを用いる。
目的
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る鉱山廃水の処理方法を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
重金属を含む酸性の鉱山廃水と、酸化マグネシウムとを混合して、該鉱山廃水を中和するとともに、該重金属の除去を行う鉱山廃水の処理方法であって、前記鉱山廃水に含まれる前記重金属の少なくとも一種がマンガンであり、酸化マグネシウムとして、そのBET比表面積が15m2/g以上50m2/g以下であるものを用いる、鉱山廃水の処理方法。
請求項2
前記鉱山廃水に含まれるマンガンを1mg/L以下にまで除去する請求項1に記載の鉱山廃水の処理方法。
請求項3
前記酸化マグネシウムは、波長1.5405Åにおける粉末X線回折スペクトルの2θ=43°±1°での酸化マグネシウムの(200)面の回折ピークの半値幅が0.30°以上0.40°以下である請求項1又は2に記載の鉱山廃水の処理方法。
技術分野
背景技術
0002
鉱山廃水は酸性であり且つ重金属類を含むことが多い。そのため、従来、鉱山廃水処理場では、中和剤として消石灰や炭酸カルシウム等のCa系材料を鉱山廃水に添加してそのpHを中和し、また重金属を除去する操作が行われていた。また、鉄酸化バクテリア法とCa系材料による中和法とを組み合わせた鉱山廃水の処理方法も提案されている。しかし、中和剤として消石灰や炭酸カルシウムを用いる方法は、大量の石膏が沈殿物として生じることに起因して沈殿物の処理コストが増加し、また石膏による鉄酸化バクテリアの菌体数の低下が問題となっている。このことから、石膏を生じない材料である酸化マグネシウムを中和剤として用いる方法が提案されてきた。例えば特許文献1には、炭酸カルシウムと酸化マグネシウムを中和剤として用いる方法が開示されている。特許文献2には、重金属イオンを含む酸性廃水にドロマイト仮焼物を加えて、該酸性廃水を中和させながら重金属イオンを含む粒子を析出させる工程を有する酸性廃水の処理方法において、ドロマイト仮焼物の添加時に酸化マグネシウムを加えることが記載されている。特許文献3には、鉄酸化バクテリア法の中和剤として酸化マグネシウムを使用することで、バクテリア菌体数を増加させる方法が開示されている。
先行技術
0003
特開2003−190968号公報
特開2004−49952号公報
特開2005−313017号公報
発明が解決しようとする課題
0004
酸化マグネシウムによる中和処理は、酸化マグネシウムの溶解度が消石灰に比べて小さいことから、鉱山廃水の中和速度が遅いことが問題となり実用化には至っていない。鉱山廃水処理場における中和時間は処理場ごとに異なるものの、通年で安定的に処理するには約20分程度で中和処理することが必要となる。これに対して、特許文献1及び2では中和時間を24時間あるいは30分と長くとっており、特許文献3では中和時間に関して言及されていない。
0005
また鉱山廃水処理において、鉱山廃水中の重金属は、pHの中和とともに水酸化物として沈殿除去されることが知られている。しかし、マンガン、鉛及び亜鉛といった弱アルカリ性のpHで水酸化物として沈殿する重金属を除去するにはpHを排水基準以上に中和する必要がある。このことに起因して、中和剤の使用量が増加する傾向にある。また中和水を河川等の周辺環境に放出する場合には、酸を加えて排水基準を満足するpHに逆中和を行う必要が生じることから、薬剤コストが高くなってしまう。特に、マンガンを低濃度、具体的には1mg/L以下の低濃度に除去するには、理論上、鉱山廃水のpHを約10まで中和する必要がある。そのため、中和速度の遅い中和剤である酸化マグネシウムを用いて既設の鉱山廃水処理場の中和時間内にマンガンを低濃度に除去するためには、酸化マグネシウムを大過剰に添加する必要があり、その除去が難しいという問題があった。
0006
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る鉱山廃水の処理方法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0007
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意検討した結果、BET比表面積が特定の範囲にある酸化マグネシウムを中和剤として用いることで、短い反応時間で鉱山廃水のpHを中性域まで中和処理できるとともに、鉱山廃水中のマンガンを従来よりも低濃度に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
0008
すなわち本発明は、重金属を含む酸性の鉱山廃水と、酸化マグネシウムとを混合して、該鉱山廃水を中和するとともに、該重金属の除去を行う鉱山廃水の処理方法であって、
前記鉱山廃水に含まれる前記重金属の少なくとも一種がマンガンであり、
酸化マグネシウムとして、そのBET比表面積が15m2/g以上50m2/g以下であるものを用いる、鉱山廃水の処理方法を提供するものである。
発明の効果
0009
本発明の処理方法によれば、鉱山廃水を既設の鉱山廃水処理場の中和時間内の短時間で中和処理することができ、且つ鉱山廃水中のマンガンを従来よりも低濃度に除去することができる。
図面の簡単な説明
0010
図1は、本発明の鉱山廃水の処理方法における処理手順を示すフロー図である。
図2は、本発明の実施例及び比較例で使用した酸化マグネシウムの2θ=40°から45°までのXRD回折ピークを示す図である。
0011
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の処理の対象は鉱山廃水である。鉱山廃水とは、鉱石を採掘後の鉱山において、坑内に残存した鉱石が雨水や地下水と大気中の酸素によって酸化・溶解されて発生する坑水、及び、採掘時に発生した廃滓やズリ等の集積場において、廃滓やズリが雨水や地表水と大気中の酸素によって酸化・溶解されて発生する廃水のことであって、鉱石由来の重金属を含み、且つ酸性を示す水であるため、水質汚濁防止法(環境省)の排水基準値を満足するように適正に処理した後に廃棄すべき液のことである。鉱山で採掘される鉱石の種類に特に制限はなく、例えば銅鉱石(黄銅鉱)、鉄鉱石(黄鉄鉱)、亜鉛鉱石(閃亜鉛鉱)、鉛鉱石(方鉛鉱)、スズ鉱石(黄錫鉱)などが挙げられる。鉱山廃水は各種の重金属を含んでいる。重金属とは、一般的に、鉄以上の比重をもつ金属の総称であるが、鉱山廃水で問題となる重金属は、水質汚濁防止法で排水基準値が制定されている元素のことである。重金属の例としては、鉄、砒素、マンガン、亜鉛、銅、鉛及びカドミウム等が挙げられる。鉱山廃水中には2種以上の重金属が含まれていてもよい。特に、本発明の処理方法の対象となる鉱山廃水は、重金属の一種としてのマンガンを含ものであり、本発明の処理方法は少なくともマンガンを除去の対象としている。
0012
鉱山廃水に含まれるマンガンは、その存在形態に特に制限はない。マンガンは例えば、Mn2+、MnO4−、MnO42−、MnO43−及びMn2O66−などの形態で鉱山廃水に含まれることが多い。本発明の処理の対象となる鉱山廃水において、それに含まれるマンガンの濃度は、元素換算で2mg/L以上であることが好ましく、5mg/L以上であることがより好ましく、10mg/L以上であることが更に好ましい。また、200mg/L以下であることが好ましく、100mg/L以下であることがより好ましく、50mg/L以下であることが更に好ましい。鉱山廃水中のマンガンの濃度がこの値以下であると、中性域のpHでもマンガンを効率よく除去することができる。
0013
鉱山廃水に、マンガンに加えて鉄が含まれている場合、鉄の濃度は元素換算で10mg/L以上であることが好ましく、50mg/L以上であることがより好ましく、100mg/L以上であることが更に好ましい。また、1500mg/L以下であることが好ましく、1000mg/L以下であることがより好ましく、500mg/L以下であることが更に好ましい。
0014
鉱山廃水において、マンガンを含む重金属の総濃度は、元素換算で10mg/L以上であることが好ましく、50mg/L以上であることがより好ましく、100mg/L以上であることが更に好ましい。また、2500mg/L以下であることが好ましく、2000mg/L以下であることがより好ましく、1500mg/L以下であることが更に好ましい。
0015
鉱山廃水に含まれる各重金属の濃度の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
0016
鉱山廃水には、前記の各種の重金属に加えて各種のアニオンも含まれている。そのようなアニオンとしては、例えば硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、炭酸イオンなどが挙げられる。これらのアニオンは1種又は2種以上が含まれ得る。これらのアニオンのうち、硫酸イオンが鉱山廃水に含まれる場合、その濃度は、1500mg/L以上であることが好ましく、2000mg/L以上であることがより好ましく、2500mg/L以上であることが更に好ましい。また、10000mg/L以下であることが好ましく、7500mg/L以下であることがより好ましく、5000mg/L以下であることが更に好ましい。
0017
鉱山廃水に含まれる各アニオンの濃度は、例えばイオンクロマトグラフィによって測定することができる。また、後述する実施例において詳述するとおり、JIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定することもできる。
0018
本発明の処理の対象となる鉱山廃水は、そのpHに特に制限なく、低pHの酸性域から高pHのアルカリ域までであり得る。中和処理を短時間で完了させることができ、またマンガンを一層低濃度にまで除去し得る観点からは、鉱山廃液のpHは1.0以上7.0以下であることが好ましい。このpHは、本発明の処理方法を行う温度でのpHである。
0019
本発明の処理方法においては、鉱山廃水に中和剤として酸化マグネシウムを添加して攪拌混合し、鉱山廃水を中和しながら鉱山廃水中のマンガンを除去する。本発明において中和とは、水性液のpHを5.8〜8.6にするという操作だけでなく、水性液中に含まれる金属イオン種を、pHの調整によって水不溶性化合物に変化させて沈殿させるという操作も含む、広義の意味に解釈されるべきものである。5.8〜8.6というpHは、水質汚濁防止法の排水基準値内のpH範囲である。
0020
本発明の処理方法で用いられる酸化マグネシウムは、ブレーン比表面積やBET比表面積が大きいことが、短時間で中和処理を完了させることができ、且つマンガンを従来よりも低濃度に除去することができる点から有利である。また、結晶性が低いことも、同様の理由から有利である。更に、平均粒径が小さいことも、同様の理由から有利である。
0021
詳細には、本発明の処理方法で用いられる酸化マグネシウムは、そのBET比表面積が、15m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、25m2/g以上45m2/g以下であることがより好ましく、30m2/g以上40m2/g以下であることが更に好ましい。BET比表面積を15m2/g以上に設定することで、酸化マグネシウムの水への溶解性を充分に高くすることができ、そのことによって鉱山廃水の中和速度を高めることができ、ひいては短時間で中和処理を完了させることができる。更に、酸化マグネシウムの表面にマンガン水酸化物を多量に析出させることができ、それによってマンガン除去率を向上させることができる。一方、BET比表面積を50m2/g以下に設定することで、酸化マグネシウムの粉体やそのスラリーの流動性を高めることができ、ハンドリング性を良好にすることができる。BET比表面積の具体的な測定方法は、後述する実施例において詳述する。
0022
BET比表面積との関連で、本発明の処理方法で用いられる酸化マグネシウムは、そのブレーン比表面積が、11000cm2/g以上25000cm2/g以下であることが好ましく、13000cm2/g以上25000cm2/g以下であることがより好ましく、15000cm2/g以上25000cm2/g以下であることが更に好ましい。ブレーン比表面積をこの範囲内に設定することで、鉱山廃水を既設の鉱山廃水処理場の中和時間内の短時間で中和処理することが一層容易になる。また、鉱山廃水中のマンガンを従来よりも一層低濃度に除去することができる。ブレーン比表面積の具体的な測定方法は、後述する実施例において詳述する。
0023
酸化マグネシウムの結晶性に関しては、粉末X線回折(XRD)スペクトルの回折ピークの半値幅を尺度として結晶性を定量的に評価することができる。この半値幅の値が大きいほど結晶性が低いと評価することができる。本発明においては、波長1.5405Åにおける粉末X線回折スペクトルの2θ=43°±1°の酸化マグネシウムの(200)面の回折ピークの半値幅に基づき、酸化マグネシウムの結晶性を評価している。この半値幅が0.30°以上0.40°以下であることが好ましく、0.30°以上0.37°以下であることがより好ましく、0.30°以上0.35°以下であることが更に好ましい。半値幅がこれらの範囲内であると、酸化マグネシウムは十分に低結晶性であるため、鉱山廃水との反応性が高くなり、既設の鉱山廃水処理場の中和時間内で鉱山廃水のpHを排水基準値まで中和処理できる。これとともに、鉱山廃水中のマンガンを従来よりも低濃度に除去することができる。半値幅の測定の具体的な条件は、後述する実施例において詳述する。
0024
酸化マグネシウムの平均粒径に関しては、0.1μm以上15μm以下であることが好ましく、0.5μm以上10μm以下であることがより好ましく、1μm以上5μm以下であることが更に好ましい。この平均粒径はレーザー回折法により測定した値である。酸化マグネシウムの平均粒径がこれらの範囲内であると、既設の鉱山廃水処理場の中和時間内で鉱山廃水のpHを排水基準値まで中和処理することができる。これとともに、鉱山廃水中のマンガンを従来よりも低濃度に除去することができる。
0025
酸化マグネシウムの粒子の平均粒径との関連で、酸化マグネシウムの粒子の形状について言及すると、該形状に特に制限はなく、酸化マグネシウムの粒子は、種々の形状であり得る。
0026
酸化マグネシウムはその純度、すなわちMgO含有率が75質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましい。MgO含有率の具体的な測定方法は、後述する実施例において詳述する。
0027
以上のとおりの酸化マグネシウムは、例えば、水酸化マグネシウムを550℃以上700℃以下の温度で焼成することで好適に得ることができる。酸化マグネシウムはマグネサイトを焼成することでも得ることができる。これらの方法のうち、水酸化マグネシウムを焼成する方法を採用することが、低温で焼成できるためより好ましい。水酸化マグネシウムは、天然にはブルース石として産出されるが、ほとんどが海水を原料として合成される海水マグネシアである。海水中に含まれるマグネシウムイオンに石灰乳を添加し、水酸化マグネシウムを沈降生成させ、沈降した水酸化マグネシウムを低温焼成すれば酸化マグネシウムを得ることができる。水酸化マグネシウムを焼成する方法を採用する場合、水酸化マグネシウムを550℃以上700℃以下の温度で焼成することで、酸化マグネシウムの半値幅及び/又はBET比表面積の値を上述の範囲に容易に設定することができる。また、焼成後の酸化マグネシウムのBET比表面積が小さい場合は、更に粉砕したり、分級処理したりして粗大粒子を除去することで、BET比表面積の値を上述の範囲に容易に設定することができる。
0028
図1には、本発明の鉱山廃水の処理方法における処理手順を示すフロー図が示されている。本処理方法においては、同図の符号1に示すとおり、鉱山廃水と参加マグネシウムとを混合する。両者の混合方法としては、(イ)粉体状の酸化マグネシウムを鉱山廃水に添加して攪拌混合する方法や、(ロ)粉体状の酸化マグネシウムをあらかじめ水と混合して調製したスラリーを鉱山廃水に添加して攪拌混合する方法等を採用することができる。より短い時間で中和処理を行うためには、(ロ)の方法を採用することが好ましい。また、(イ)及び(ロ)のうち、いずれの方法を採用する場合であっても、酸化マグネシウムは逐次添加してもよく、あるいは一括添加してもよい。
0029
(ロ)の方法を採用する場合、スラリー濃度は特に限定されるものではないが、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。スラリー濃度を1質量%以上にすることで、水の使用量が過度に高くなることを抑制でき、ひいては廃水量の増加を抑制することができる。また、スラリー濃度を40質量%以下にすることで、スラリーの粘度が過度に上昇することを抑制することができ、配管の閉塞等の問題を生じにくくすることができる。
0030
酸化マグネシウムの鉱山廃水への添加量は、鉱山廃水のpH及び水酸化物として析出する溶存イオンの量からあらかじめ決定することができる。あるいは、鉱山廃水に酸化マグネシウムを添加しつつ鉱山廃水のpHを測定しながら、酸化マグネシウムの添加量を適宜制御することができる。
0031
酸化マグネシウムによる鉱山廃水のpHの中和は、鉱山廃水のpHが好ましくは5.8以上8.6以下になった時点で完了したとみなすことができる。この時点での鉱山廃水中のマンガンは、元素換算で濃度1mg/L以下まで除去されていることが好ましく、0.5mg/L以下まで除去されていることがより好ましい。
0032
中和によって鉱山廃水中には汚泥(中和殿物)が生成する。この汚泥はマンガンを含み、場合によっては他の重金属も含んでいる。本発明の処理方法においては、図1中、符号2で示すとおり、生成した汚泥を分離する工程を含んでいる。この分離工程においては、鉱山廃水中に凝集剤を添加し、固液分離槽で濃縮汚泥と上澄み水とに分離する。凝集剤は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリアクリルアミド系の高分子凝集剤を使用することができる。固液分離槽はシックナー等の公知の設備を適用することができる。
0033
このようにして分離された上澄み水3(図1参照)では重金属が除去されており、その全濃度は元素換算で好ましくは2mg/L以下である。特にマンガンについては元素換算で好ましくは1mg/L以下である。また、この上澄み水はそのpHが好ましくは5.8以上8.6以下の中性域であることから、河川等に放流することができる。
0034
一方、濃縮汚泥4(図1参照)はそのまま管理型埋立処分場に処分することができる。あるいは、濃縮汚泥をフィルタープレス等の脱水機で脱水してケーキ5(図1参照)となした後に、管理型埋立処分場に運搬して適切に処分することができる。この脱水によって生じた排水6(図1参照)においては、上述の固液分離工程で生じた上澄み水3と同様に、重金属が除去されており、且つpHが中性域であることから河川等に放流することができる。
0035
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り「%」は「質量%」を意味する。
0036
まず、実施例及び比較例に用いた鉱山廃水の性状を以下の表1に示す。同表に示すpH、全鉄、砒素、銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、硫酸イオンの各濃度はJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。
0037
0038
鉱山廃水の中和に用いる酸化マグネシウムとして、酸化マグネシウムA(宇部マテリアルズ社製)、酸化マグネシウムB(中国産MgO)、及び酸化マグネシウムC(宇部マテリアルズ社製、UC95)の3種類を使用した。使用した酸化マグネシウムの性状を表2に示す。表2に示す分析値は以下の方法で測定した値である。
(i)MgO含有率
JIS M 8853「セラミックス用アルミノけい酸塩質原料の化学分析方法」を参考にして測定した。
(ii)ブレーン比表面積
JIS R 5201:1997「セメントの物理試験方法」に従い、ブレーン空気透過装置を用いて測定した。
(iii)BET比表面積
高精度ガス吸着装置(日本ベル社製,BELSORP−mini)を用い、定容量型ガス吸着法にて測定した。
(iv)平均粒径
レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製、SALD−2200)にて測定した。
(v)半値幅
粉末X線回折装置(リガク社製、RINT−2500)を用いて測定した。条件は、管電圧35kV、管電流110mA、測定範囲2θ=5°から70°まで、ステップ幅0.02°、発散スリット:1°、散乱スリット:1.26mm及び受光スリット:0.3mm、波長1.5405Åとした。測定によって得られたXRDチャートにおいて、2θ=43°±1°の酸化マグネシウムの(200)面の回折ピークから半値幅を求めた。図2に、各酸化マグネシウムのXRDチャートを示す。
0039
0040
表2に示すとおり、酸化マグネシウムAは酸化マグネシウムBに比べてBET比表面積が大きく、平均粒径が小さく、かつ半値幅が大きいことから結晶性が低い材料であることが判る。酸化マグネシウムCは、酸化マグネシウムBに比べて半値幅が大きく、結晶性が低い材料であるが、BET比表面積の小さい材料である。すなわち、酸化マグネシウムAは酸化マグネシウムB及び酸化マグネシウムCに比べて鉱山廃水への溶解性が高く、また、BET比表面積が大きいため、粒子表面でのマンガン水酸化物の析出量が多い材料であると考えられる。このような性状の異なる3種類の酸化マグネシウムを用い、鉱山廃水の中和を行った。
0041
〔実施例1〕
500mLのビーカーに鉱山廃水を500mL入れ、酸化マグネシウムAのスラリー(固形分濃度14%)を、鉱山廃水に対して固形分換算で1.7g/L一括添加し、ガラス式pH電極を用いてpHを測定しながらスリーワンモータで1時間攪拌して中和処理を行い、中和速度を測定した。その結果を以下の表3に示す。中和完了時(60分経過後)の鉱山廃液のpHは同表に示すとおりであった。
0042
次に、高分子凝集剤(栗田工業(株)、クリフロックPA−331)を、中和完了後の廃水に対して1.5mg/L添加して1分間攪拌した。その後、500mLのメスシリンダーに鉱山廃水を全量移し変え、24時間静置して固液分離を行った。然る後、上澄み水を回収し、そのpH、全鉄、砒素、銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、硫酸イオンの各濃度をJIS K 0102「工場排水試験方法」に準拠して測定した。また、沈降した沈殿物(中和殿物)を5Cろ紙で吸引濾過した後、40℃で24時間乾燥し、中和殿物の乾燥質量を測定した。その結果を以下の表4に示す。
0043
〔比較例1〕
酸化マグネシウムBのスラリー(固形分濃度14%)を鉱山廃水に対して固形分換算で1.7g/L添加した以外は実施例1と同様の方法で中和を行い、中和速度を測定した。その結果を表3に示す。上澄み水のpH、全鉄、砒素、銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、硫酸イオンの各濃度、並びに沈降した沈殿物(中和殿物)の乾燥質量を実施例1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
0044
〔比較例2〕
酸化マグネシウムCのスラリー(固形分濃度14%)を鉱山廃水に対して固形分換算で1.1g/L添加した以外は実施例1と同様の方法で中和を行い、中和速度を測定した。その結果を表3に示す。上澄み水のpH、全鉄、砒素、銅、マンガン、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、硫酸イオンの各濃度、並びに沈降した沈殿物(中和殿物)の乾燥質量を実施例1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
0045
〔参考例1〕
実施例1で用いた酸化マグネシウムAに代えて、消石灰(宇部マテリアルズ社、JIS特号品)を用い、消石灰のスラリー(固形分濃度14%)を鉱山廃水に対して固形分換算で2.2g/L添加した以外は実施例1と同様の方法で中和を行い、中和速度を測定した。その結果を表3に示す。また、沈降した沈殿物(中和殿物)の乾燥質量を実施例1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
0046
0047
表3の参考例1の結果から、従来法で用いられていた消石灰は、酸化マグネシウムよりも溶解度が高いことに起因して中和速度が速いことが判る。
また、表3の実施例1と比較例1及び2との対比から、酸化マグネシウムAは酸化マグネシウムBに比べて中和速度が速く、10分後には排水基準であるpH5.8〜8.6の範囲に中和できていることが判る。また、酸化マグネシウムCは、酸化マグネシウムBに比べて中和速度は速いが、酸化マグネシウムAに比べると中和速度がやや遅いことが判る。この理由は、酸化マグネシウムAは酸化マグネシウムB及び酸化マグネシウムCに比べて結晶性が低く、BET比表面積も大きいことから、鉱山廃水への溶解性が高いためであると考えられる。
0048
実施例
0049
表4の実施例1、比較例1及び2並びに参考例1の結果から、鉱山廃水を酸化マグネシウムで中和処理することで、従来法の消石灰での中和処理に比べて、中和殿物による沈殿物の生成量を削減できることが判る。更に、酸化マグネシウムとして、溶解性が高く且つBET比表面積が大きい酸化マグネシウムAを使用することで、酸化マグネシウムB及び酸化マグネシウムCを使用した場合に比べ、中和処理時間を短縮できるだけでなく、鉱山廃水中のマンガンの濃度を1mg/L以下までに除去でき、環境負荷をより低減することができることが判る。この理由は以下のように考えられる。酸化マグネシウムは鉱山廃水と反応して水酸化マグネシウムを形成した後、溶解して鉱山廃水中に水酸化物イオンを供給し、pHを上昇させ中和させる。この反応は(水)酸化マグネシウムの表面で起こるため、水酸化マグネシウムの溶解時にはその表面近傍のpHが鉱山廃水全体のpHに比べて局所的に高い値となる。そのことに起因して、マンガンが水酸化物として析出すると考えられる。したがって、酸化マグネシウムB及び酸化マグネシウムCに比べて比表面積が大きく且つ結晶性の低い酸化マグネシウムAは、その表面でのマンガン水酸化物の析出量が多くなり、鉱山廃水全体としては中性域のpHにおいてもマンガンを効率よく除去できたと考えられる。
以上の各結果から、本発明の鉱山廃水の処理方法によれば、既設の鉱山廃水処理場の中和時間内で鉱山廃水を中和処理できるとともに、中和殿物による沈殿物を削減できる。更に、鉱山廃水中のマンガンを中性域で低濃度に除去することができるため、弱アルカリ性までの中和処理が不要となり、処理コストの削減や環境負荷低減に貢献することができる。