図面 (/)

技術 組換え酵母、及びそれを用いたエタノールの製造方法

出願人 トヨタ自動車株式会社
発明者 大西徹多田宣紀
出願日 2016年6月24日 (3年9ヶ月経過) 出願番号 2016-126016
公開日 2017年12月28日 (2年3ヶ月経過) 公開番号 2017-225432
状態 特許登録済
技術分野 突然変異または遺伝子工学 微生物による化合物の製造 微生物、その培養処理
主要キーワード 発酵用微生物 フラッシュタンク内 EC番号 アセトアルデヒド脱水素酵素 発酵阻害物質 生産経路 発酵阻害 微粉砕処理
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月28日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (0)

図面はありません

課題

酵母エタノール発酵等の培養に際して培地中の酢酸を代謝して酢酸濃度を低減する。

解決手段

アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(EC 1.2.1.10)を導入し、且つトレハロース蓄積関与する酵素を制御した組換え酵母

概要

背景

セルロース系バイオマスは、エタノール等の有用なアルコール有機酸原料として有効に利用されている。セルロース系バイオマスを利用したエタノール製造において、エタノール生産量を向上させるため、基質として5単糖キシロースを利用できる酵母が開発されている。例えば、特許文献1は、Pichia stipitis由来のキシロースリダクターゼ遺伝子及びキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子とS. cerevisiae由来のキシルロキナーゼ遺伝子染色体に組み込んだ酵母を開示している。

また、酢酸は、セルロース系バイオマスの加水分解物に多く含まれ、酵母のエタノール発酵阻害することが知られている。特に、キシロースの資化遺伝子を導入した酵母においては、キシロースを糖源としたエタノール発酵を著しく阻害することが知られている(非特許文献1及び2)。

一方、セルロース系バイオマスをセルラーゼ糖化したものを発酵したもろみには、主として、未発酵残渣、難発酵残渣、酵素及び発酵用微生物が含まれている。もろみを含む反応液を次に行う発酵に利用することで発酵用微生物の再利用ができ、発酵用微生物の新規投入量を削減でき、低コスト化を図ることができる。しかし、この場合、もろみに含まれる酢酸も同時に持ち込まれることになり、その結果、発酵培地に含まれる酢酸の濃度が上昇し、エタノール発酵を阻害する虞がある。また、発酵槽内のもろみを、減圧に保持したフラッシュタンク送りフラッシュタンク内でエタノールを除去した後、もろみを発酵槽返送するような連続発酵法においても、酢酸をもろみから取り除くことは難しいため、酢酸による発酵阻害が重要な問題となる。

酢酸による発酵阻害を回避するため、エタノール発酵で一般的に用いられる菌株であるサッカロマイセスセレビジエLPP1遺伝子やENA1遺伝子の過剰発現(非特許文献3)、FPS1遺伝子の破壊(非特許文献4)により、酢酸存在下でエタノールの発酵能力が改善されている報告がある。しかしながら、これらの報告は、グルコースを基質とした場合のエタノール発酵の結果であり、酢酸により発酵が著しく阻害されるキシロースを基質とした場合のエタノール発酵に対する効果は不明である。また、これらに報告された変異酵母を用いたとしても、上述したような発酵菌体再利用や連続発酵の際に問題になる酢酸の持ち込み量を減らすことには繋がらない。

酢酸による発酵阻害を回避する別の方法としては、培地中の酢酸をエタノール発酵と同時に代謝させることが考えられる。しかし、酢酸の代謝は好気的な反応であり、エタノールの代謝経路重複する。そのため、好気的な条件で発酵を行うと酢酸を代謝させることができる可能性はあるものの、同時に目的物質であるエタノールも代謝される。

エタノールが代謝されない嫌気的な条件で酢酸を代謝させるために、サッカロマイセス・セレビジエのグルセリン生産経路のGPD1・GPD2遺伝子を破壊した株に、アセトアルデヒド脱水素酵素(EC 1.2.1.10)をコードする遺伝子を導入することで、酢酸を資化させた報告がある(非特許文献5及び6並びに特許文献2〜4)。なお、アセトアルデヒド脱水素酵素は以下の可逆反応触媒する。
アセトアルデヒドNAD++コエンザイムAアセチルコエンザイムA+NADH+H+

なお、GPD1・GPD2遺伝子によるグルセリン生産経路は、下記式に示すように、代謝で発生する余剰補酵素NADHをNAD+に酸化する経路である。
0.5グルコース+NADH+H++ATPグリセリン+NAD++ADP+Pi

よってGPD1・GPD2遺伝子を破壊することでこの反応経路を破壊し、アセトアルデヒド脱水素酵素を導入することで余剰の補酵素NADHを供給し、下記の反応が進む。
アセチルコエンザイムA+NADH+H+→アセトアルデヒド+NAD++コエンザイムA

また、アセチルコエンザイムAは酢酸からアセチル-CoA合成酵素により合成され、アセトアルデヒドはエタノールに変換されることから、最終的には下記反応式になり、余剰の補酵素NADHが酸化されると同時に、酢酸も代謝される。
酢酸+2NADH+2H++ATP→エタノール+NAD++AMP+Pi

上述したように、酵母に対する酢酸代謝能の付与メカニズムは、グリセリン経路を破壊する必要がある。しかしながら、GPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の重複破壊株は、発酵能力が大幅に低下することが知られており、産業ベルでの実用性は低い。

GPD1・GPD2遺伝子を破壊する代わりに、キシロース代謝経路のキシロースレダクターゼ(XR)及びキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)キシロースキシロースを導入することで、XRとXDH間の補酵素依存性の違いによる細胞内の酸化還元状態不均衡を生じさせることで、余剰の補酵素NADHを供給する報告がある(非特許文献7)。すなわち、XRはキシロースをキシリトールに変換する際に補酵素として、主にNADPHを使用してNADP+に変換する一方、XDHはキシリトールをキシルロースへと変換する際に補酵素として、NAD+を使用してNADHに変換する。この様に両酵素の補酵素に対する要求性アンバランスを生じることで、その結果NADHが蓄積する。しかし、このXR・XDH導入酵母によるキシロースからのエタノール発酵は、中間代謝物キシリトールが蓄積する。その結果、酢酸は代謝されるものの、エタノール収率が悪いため、実用的ではない。

GPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の非破壊株にアセトアルデヒド脱水素酵素を導入した報告もある(非特許文献8)。しかしながら、非特許文献8には、アセトアルデヒド脱水素酵素の導入により酢酸の生産量が減少するものの、培地中の酢酸が減少するといった報告はない。さらに、この非特許文献8もまたキシロース資化酵母に関する報告ではない。

ところで、キシロースイソメラーゼ(XI)遺伝子(シロアリの腸内原生生物由来)を導入したキシロース資化酵母に関する報告(特許文献5)、さらにXI遺伝子(Piromyces sp. E2由来)を導入したキシロース資化酵母に対して、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(Bifidobacterium adolescentis由来)を導入した報告がある(特許文献6)。しかしながら、これら文献には、キシロース資化時に酢酸資化についてはなんら報告されていない。

以上のように、従来技術ではGPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の非破壊の条件で、酢酸を効率よく代謝・分解させる技術は報告されていない。

一方、NTH1はトレハロース分解酵素遺伝子であり、破壊することで細胞内のトレハロース蓄積量が増加し、冷凍耐性能が構造することが報告されている(特許文献7)。また、エタノール耐性耐熱性が増強されることが報告されている(特許文献8)。しかし、トレハロースの蓄積によりエタノール発酵時に酢酸資化が改善する報告はされていない。

概要

酵母のエタノール発酵等の培養に際して培地中の酢酸を代謝して酢酸濃度を低減する。アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(EC 1.2.1.10)を導入し、且つトレハロース蓄積に関与する酵素を制御した組換え酵母。なし

目的

本発明は、これらの実情に鑑み、エタノールの発酵が低下するグルセリン生産経路の破壊を伴わずに酢酸資化能力が向上した組換え酵母及び当該組換え酵母を用いたエタノールの製造方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(EC 1.2.1.10)を導入し、且つトレハロース蓄積関与する酵素を制御した組換え酵母

請求項2

アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、大腸菌由来のアセトアルデヒド脱水素酵素をコードするものである、請求項1記載の組換え酵母。

請求項3

大腸菌由来のアセトアルデヒド脱水素酵素は、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、請求項2記載の組換え酵母。(a)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列から成るタンパク質(b)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つアセトアルデヒド脱水素酵素活性を有するタンパク質

請求項4

トレハロース蓄積に関与する酵素の制御が、トレハラーゼ遺伝子の発現量の低下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項5

更にキシロースイソメラーゼ遺伝子が導入されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項6

キシロースイソメラーゼは、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、請求項5記載の組換え酵母。(a)配列番号12に示すアミノ酸配列から成るタンパク質(b)配列番号12に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列から成り、キシロースキシルロースにする酵素活性を有するタンパク質

請求項7

更にキシルロキナーゼ遺伝子が導入されたものである、請求項1〜6のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項8

ペントースリン酸経路における非酸化過程経路を構成する酵素群より選択される酵素をコードする遺伝子が更に導入されたものである、請求項1〜7のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項9

ペントースリン酸経路における非酸化過程の経路を構成する酵素群は、リボース-5-リン酸イソメラーゼリブロース-5-リン酸-3-エピメラーゼトランスケトラーゼ及びトランスアルドラーゼである、請求項8記載の組換え酵母。

請求項10

アセトアルデヒドエタノールに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子を高発現する、請求項1〜9のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項11

エタノールをアセトアルデヒドに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子の発現量が低下したものである、請求項1〜10のいずれか1項記載の組換え酵母。

請求項12

請求項1〜11のいずれか1項記載の組換え酵母を、グルコース及び/又はキシロースを含有する培地において培養してエタノール発酵を行う工程を含む、エタノールの製造方法。

請求項13

培地はセルロースを含有しており、エタノール発酵では、少なくともセルロースの糖化が同時に進行する、請求項12記載の方法。

技術分野

0001

本発明は、組換え酵母及び当該組換え酵母を用いたエタノールの製造方法に関する。

背景技術

0002

セルロース系バイオマスは、エタノール等の有用なアルコール有機酸原料として有効に利用されている。セルロース系バイオマスを利用したエタノール製造において、エタノール生産量を向上させるため、基質として5単糖キシロースを利用できる酵母が開発されている。例えば、特許文献1は、Pichia stipitis由来のキシロースリダクターゼ遺伝子及びキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子とS. cerevisiae由来のキシルロキナーゼ遺伝子染色体に組み込んだ酵母を開示している。

0003

また、酢酸は、セルロース系バイオマスの加水分解物に多く含まれ、酵母のエタノール発酵阻害することが知られている。特に、キシロースの資化遺伝子を導入した酵母においては、キシロースを糖源としたエタノール発酵を著しく阻害することが知られている(非特許文献1及び2)。

0004

一方、セルロース系バイオマスをセルラーゼ糖化したものを発酵したもろみには、主として、未発酵残渣、難発酵残渣、酵素及び発酵用微生物が含まれている。もろみを含む反応液を次に行う発酵に利用することで発酵用微生物の再利用ができ、発酵用微生物の新規投入量を削減でき、低コスト化を図ることができる。しかし、この場合、もろみに含まれる酢酸も同時に持ち込まれることになり、その結果、発酵培地に含まれる酢酸の濃度が上昇し、エタノール発酵を阻害する虞がある。また、発酵槽内のもろみを、減圧に保持したフラッシュタンク送りフラッシュタンク内でエタノールを除去した後、もろみを発酵槽返送するような連続発酵法においても、酢酸をもろみから取り除くことは難しいため、酢酸による発酵阻害が重要な問題となる。

0005

酢酸による発酵阻害を回避するため、エタノール発酵で一般的に用いられる菌株であるサッカロマイセスセレビジエLPP1遺伝子やENA1遺伝子の過剰発現(非特許文献3)、FPS1遺伝子の破壊(非特許文献4)により、酢酸存在下でエタノールの発酵能力が改善されている報告がある。しかしながら、これらの報告は、グルコースを基質とした場合のエタノール発酵の結果であり、酢酸により発酵が著しく阻害されるキシロースを基質とした場合のエタノール発酵に対する効果は不明である。また、これらに報告された変異酵母を用いたとしても、上述したような発酵菌体再利用や連続発酵の際に問題になる酢酸の持ち込み量を減らすことには繋がらない。

0006

酢酸による発酵阻害を回避する別の方法としては、培地中の酢酸をエタノール発酵と同時に代謝させることが考えられる。しかし、酢酸の代謝は好気的な反応であり、エタノールの代謝経路重複する。そのため、好気的な条件で発酵を行うと酢酸を代謝させることができる可能性はあるものの、同時に目的物質であるエタノールも代謝される。

0007

エタノールが代謝されない嫌気的な条件で酢酸を代謝させるために、サッカロマイセス・セレビジエのグルセリン生産経路のGPD1・GPD2遺伝子を破壊した株に、アセトアルデヒド脱水素酵素(EC 1.2.1.10)をコードする遺伝子を導入することで、酢酸を資化させた報告がある(非特許文献5及び6並びに特許文献2〜4)。なお、アセトアルデヒド脱水素酵素は以下の可逆反応触媒する。
アセトアルデヒドNAD++コエンザイムAアセチルコエンザイムA+NADH+H+

0008

なお、GPD1・GPD2遺伝子によるグルセリン生産経路は、下記式に示すように、代謝で発生する余剰補酵素NADHをNAD+に酸化する経路である。
0.5グルコース+NADH+H++ATPグリセリン+NAD++ADP+Pi

0009

よってGPD1・GPD2遺伝子を破壊することでこの反応経路を破壊し、アセトアルデヒド脱水素酵素を導入することで余剰の補酵素NADHを供給し、下記の反応が進む。
アセチルコエンザイムA+NADH+H+→アセトアルデヒド+NAD++コエンザイムA

0010

また、アセチルコエンザイムAは酢酸からアセチル-CoA合成酵素により合成され、アセトアルデヒドはエタノールに変換されることから、最終的には下記反応式になり、余剰の補酵素NADHが酸化されると同時に、酢酸も代謝される。
酢酸+2NADH+2H++ATP→エタノール+NAD++AMP+Pi

0011

上述したように、酵母に対する酢酸代謝能の付与メカニズムは、グリセリン経路を破壊する必要がある。しかしながら、GPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の重複破壊株は、発酵能力が大幅に低下することが知られており、産業ベルでの実用性は低い。

0012

GPD1・GPD2遺伝子を破壊する代わりに、キシロース代謝経路のキシロースレダクターゼ(XR)及びキシリトールデヒドロゲナーゼ(XDH)キシロースキシロースを導入することで、XRとXDH間の補酵素依存性の違いによる細胞内の酸化還元状態不均衡を生じさせることで、余剰の補酵素NADHを供給する報告がある(非特許文献7)。すなわち、XRはキシロースをキシリトールに変換する際に補酵素として、主にNADPHを使用してNADP+に変換する一方、XDHはキシリトールをキシルロースへと変換する際に補酵素として、NAD+を使用してNADHに変換する。この様に両酵素の補酵素に対する要求性アンバランスを生じることで、その結果NADHが蓄積する。しかし、このXR・XDH導入酵母によるキシロースからのエタノール発酵は、中間代謝物キシリトールが蓄積する。その結果、酢酸は代謝されるものの、エタノール収率が悪いため、実用的ではない。

0013

GPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の非破壊株にアセトアルデヒド脱水素酵素を導入した報告もある(非特許文献8)。しかしながら、非特許文献8には、アセトアルデヒド脱水素酵素の導入により酢酸の生産量が減少するものの、培地中の酢酸が減少するといった報告はない。さらに、この非特許文献8もまたキシロース資化酵母に関する報告ではない。

0014

ところで、キシロースイソメラーゼ(XI)遺伝子(シロアリの腸内原生生物由来)を導入したキシロース資化酵母に関する報告(特許文献5)、さらにXI遺伝子(Piromyces sp. E2由来)を導入したキシロース資化酵母に対して、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(Bifidobacterium adolescentis由来)を導入した報告がある(特許文献6)。しかしながら、これら文献には、キシロース資化時に酢酸資化についてはなんら報告されていない。

0015

以上のように、従来技術ではGPD1遺伝子及びGPD2遺伝子の非破壊の条件で、酢酸を効率よく代謝・分解させる技術は報告されていない。

0016

一方、NTH1はトレハロース分解酵素遺伝子であり、破壊することで細胞内のトレハロース蓄積量が増加し、冷凍耐性能が構造することが報告されている(特許文献7)。また、エタノール耐性耐熱性が増強されることが報告されている(特許文献8)。しかし、トレハロースの蓄積によりエタノール発酵時に酢酸資化が改善する報告はされていない。

0017

特開2009-195220号公報
国際公開第2011/010923号
国際公開第2011/140386号
国際公開第2014/074895号
特開2011-147445号公報
特開2010-239925号公報
特開1998-11777号公報
特開1998-243783号公報

先行技術

0018

FEMS Yeast Research, vol. 9, 2009, 358-364
Enzyme and Microbial Technology 33, 2003, 786-792
Biotechnol. Bioeng. 2009 103(3):500-512
Biotechnol. Lett. 2011 33: 277-284
Appl. Environ. Microbiol. 2010 76:190-195
Appl Environ Microbiol. 2015 81 81:08-17
Nat Commun. 2013;4:2580
Biotechnol. Lett. 2011 33:1375-1380

発明が解決しようとする課題

0019

上述したように、酵母によるエタノール発酵において、グルセリン生産経路の破壊とアセトアルデヒド脱水素酵素の導入を組み合わせることで、ある程度の酢酸資化は可能だが、酵母のエタノール発酵能力自体は低下する。一方、アセトアルデヒド脱水素酵素のみを導入した酵母の酢酸資化能力は不十分である。

0020

そこで、本発明は、これらの実情に鑑み、エタノールの発酵が低下するグルセリン生産経路の破壊を伴わずに酢酸資化能力が向上した組換え酵母及び当該組換え酵母を用いたエタノールの製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0021

上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子の導入に加え、トレハロースの生産経路を制御し、細胞内のトレハロース蓄積量を増加させた組換え酵母が、エタノール発酵等の培養の際に酢酸資化を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。

0022

すなわち、本発明は、以下を包含する。
(1)アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(EC 1.2.1.10)を導入し、且つトレハロース蓄積に関与する酵素を制御した組換え酵母。
(2)アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、大腸菌由来のアセトアルデヒド脱水素酵素をコードするものである、(1)記載の組換え酵母。
(3)大腸菌由来のアセトアルデヒド脱水素酵素は、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、(2)記載の組換え酵母。
(a)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列から成るタンパク質
(b)配列番号2、4又は6に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つアセトアルデヒド脱水素酵素活性を有するタンパク質
(4)トレハロース蓄積に関与する酵素の制御が、トレハラーゼ遺伝子の発現量の低下である、(1)〜(3)のいずれか1記載の組換え酵母。
(5)更にキシロースイソメラーゼ遺伝子が導入されたものである、(1)〜(4)のいずれか1記載の組換え酵母。
(6)キシロースイソメラーゼは、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、(5)記載の組換え酵母。
(a)配列番号12に示すアミノ酸配列から成るタンパク質
(b)配列番号12に示すアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列から成り、キシロースをキシルロースにする酵素活性を有するタンパク質
(7)更にキシルロキナーゼ遺伝子が導入されたものである、(1)〜(6)のいずれか1記載の組換え酵母。
(8)ペントースリン酸経路における非酸化過程の経路を構成する酵素群より選択される酵素をコードする遺伝子が更に導入されたものである、(1)〜(7)のいずれか1記載の組換え酵母。
(9)ペントースリン酸経路における非酸化過程の経路を構成する酵素群は、リボース-5-リン酸イソメラーゼリブロース-5-リン酸-3-エピメラーゼトランスケトラーゼ及びトランスアルドラーゼである、(8)記載の組換え酵母。
(10)アセトアルデヒドをエタノールに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子を高発現する、(1)〜(9)のいずれか1記載の組換え酵母。
(11)エタノールをアセトアルデヒドに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子の発現量が低下したものである、(1)〜(10)のいずれか1記載の組換え酵母。
(12)(1)〜(11)のいずれか1記載の組換え酵母を、グルコース及び/又はキシロースを含有する培地において培養してエタノール発酵を行う工程を含む、エタノールの製造方法。
(13)培地はセルロースを含有しており、エタノール発酵では、少なくともセルロースの糖化が同時に進行する、(12)記載の方法。

発明の効果

0023

本発明に係る組換え酵母によれば、エタノール発酵等の培養に際して培地中の酢酸濃度を低減することができ、酢酸に起因する発酵阻害を効果的に回避することができる。その結果、本発明に係るエタノールの製造方法は、本発明に係る組換え酵母を用いることでエタノール発酵の効率を高く維持することができ、優れたエタノール収率を達成することができる。

0024

従って、本発明に係るエタノールの製造方法は、例えば、組換え酵母を再利用する場合や連続培養に使用する場合において酢酸の持ち込み量を低減することができ、優れたエタノール収率を維持することができる。

0025

<組換え酵母>
本発明に係る組換え酵母は、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(EC 1.2.1.10)を導入し、且つ細胞内のトレハロース蓄積量を増加させるようにトレハロース蓄積に関与する酵素を制御した組換え酵母である。本発明に係る組換え酵母は、培地に含まれる酢酸を代謝することができ、エタノール発酵等の培養に伴って培地中の酢酸濃度が低減するといった特徴がある。

0026

酵母に導入するアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子としては、特に限定されず、如何なる生物由来の遺伝子を使用しても良い。また、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、酵母等の真菌以外の生物、例えば、細菌や動物、植物、昆虫藻類由来の遺伝子を使用する場合、導入する酵母におけるコドン使用頻度に併せて塩基配列改変した遺伝子を使用することが好ましい。

0027

より具体的に、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子としては、大腸菌におけるmhpF遺伝子や、Applied and Environmental Microbiology, May 2004, p. 2892-2897, Vol. 70, No. 5に開示されるようにEntamoeba histolyticaにおけるALDH1遺伝子を使用することができる。ここで、大腸菌におけるmhpF遺伝子の塩基配列及びmhpF遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号1及び2に示す。

0028

ただし、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子としては、配列番号1及び2にて特定されるものに限定されず、EC番号1.2.1.10に定義される酵素であれば、塩基配列やアミノ酸配列は異なるがパラログの関係又は狭義のホモログの関係にある遺伝子であっても良い。アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子としては、例えば、大腸菌におけるadhE遺伝子及びeutE遺伝子、Clostridium beijerinckii由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子及びChlamydomonas reinhardtii由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子を挙げることができる。ここで、大腸菌におけるadhE遺伝子の塩基配列及びadhE遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3及び4に示す。また、大腸菌におけるeutE遺伝子の塩基配列及びeutE遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5及び6に示す。さらに、Clostridium beijerinckii由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子の塩基配列及びこの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7及び8に示す。また、Chlamydomonas reinhardtii由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子の塩基配列及びこの遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号9及び10に示す。

0029

また、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号1及び2、3及び4、5及び6、7及び8並びに9及び10にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号2、4、6、8又は10のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性又は同一性を有するアミノ酸配列から成り、且つアセトアルデヒド脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。配列類似性及び同一性の値は、BLASTアルゴリズム実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、配列類似性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズアライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基と、物理化学的に機能が類似するアミノ酸残基との合計を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記合計数の割合として算出される。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記アミノ酸残基数の割合として算出される。

0030

さらに、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号1及び2、3及び4、5及び6、7及び8並びに9及び10にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号2、4、6、8又は10のアミノ酸配列に対して、1又は数個アミノ酸置換欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有し、アセトアルデヒド脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。ここで、数個とは、例えば、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個である。

0031

さらにまた、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号1及び2、3及び4、5及び6、7及び8並びに9及び10にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号1、3、5、7又は9の塩基配列から成るDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアセトアルデヒド脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25〜500mM、好ましくは25〜300mMであり、温度が42〜68℃、好ましくは42〜65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。

0032

上述したように、配列番号1、3、5、7若しくは9と異なる塩基配列から成る遺伝子、又は配列番号2、4、6、8若しくは10とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子として機能するか否かは、当該遺伝子を適当なプロモーターターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いて例えば大腸菌等の宿主形質転換し、発現するタンパク質のアセトアルデヒド脱水素酵素活性を測定すればよい。アセトアルデヒド脱水素酵素活性は、基質としてアセトアルデヒド、CoA及びNAD+を含む溶液を準備し、検査対象のタンパク質を適当な温度で作用させ、生成したアセチルリン酸をリン酸アセチル転移酵素の作用によりアセチルリン酸に変換して測定でき、或いは生成するNADHを分光学的に計測して測定することができる。

0033

一方、本発明に係る組換え酵母は、細胞内のトレハロース蓄積量を増加させるようにトレハロース蓄積に関与する酵素が制御されている。ここで、トレハロース蓄積に関与する酵素とは、直接的に又は間接的にトレハロースの生産又は分解を担う酵素を意味する。トレハロース蓄積に関与する酵素としては、例えばトレハロース分解酵素(トレハラーゼ)(例えば、中性トレハラーゼ(NTH1)、酸性トレハラーゼ(ATH1))等が挙げられる。また、トレハロース蓄積に関与する酵素の制御とは、細胞内のトレハロース蓄積量を増加させるように当該酵素をコードする遺伝子を高発現させるか又は当該酵素をコードする遺伝子の発現量を低下させることを意味する。遺伝子の高発現は、例えば外来の当該遺伝子を酵母に導入するか又は内在の当該遺伝子のプロモーターを高発現用プロモーターに置換する方法によって行われる。一方、トレハラーゼ遺伝子等の遺伝子の発現量を低下させるには、内在する当該遺伝子のプロモーター又はターミネーターを改変する、当該遺伝子を欠損させるといった方法が挙げられる。当該遺伝子を欠損させる際には、二倍体の組換え酵母に存在する一対の遺伝子のうち一方を欠損させても良いし、両方を欠損させても良い。遺伝子の発現を抑制する手法としては、所謂、トランスポゾン法、トランスジーン法、転写遺伝子サイレンシング法、RNAi法、ナンセンス仲介減衰(Nonsense mediated decay, NMD)法、リボザイム法、アンチセンス法、miRNA(micro-RNA)法、siRNA(small interfering RNA)法等を挙げることができる。

0034

また、本発明に係る組換え酵母は、キシロースイソメラーゼ遺伝子を導入したキシロース代謝能を有する酵母であって良い。ここで、キシロース代謝能を有する酵母とは、本来的にはキシロース代謝能を有しない酵母に対してキシロースイソメラーゼ遺伝子が導入されることによりキシロース代謝能が付与された酵母、本来的にはキシロース代謝能を有しない酵母に対してキシロースイソメラーゼ遺伝子及びその他のキシロース代謝関連遺伝子が導入されることによりキシロース代謝能が付与された酵母、本来的にキシロース代謝能を有する酵母のいずれも含む意味である。

0035

キシロース代謝能を有する酵母は、培地中に含まれるキシロースを資化してエタノールを生産することができる。なお、培地中に含まれるキシロースとは、キシロースを構成糖とするキシランヘミセルロース等を糖化するプロセスによって得られたものでも良いし、培地に含まれるキシランやヘミセルロース等が糖化酵素により糖化されることで培地に供給されるものであってもよい。後者の場合は、所謂、同時糖化発酵の系を意味する。

0036

キシロースイソメラーゼ遺伝子(XI遺伝子)としては、特に限定されず、如何なる生物種由来の遺伝子を使用しても良い。例えば、特開2011-147445号公報に開示されたシロアリの腸内原生生物由来の複数のキシロースイソメラーゼ遺伝子を、特に制限されることなく使用することができる。また、キシロースイソメラーゼ遺伝子としては、嫌気性カビであるピロマイセス(Piromyces) sp. E2種由来(特表2005-514951号公報)、嫌気性のカビであるシラマイセス・アベレンシス(Cyllamyces aberensis)由来、バクテリアであるバクテロイデス・セタイオタミクロン(Bacteroides thetaiotaomicron)由来、バクテリアであるクロストリディウムファイトファーメンタス由来、ストレプトマイセス・ムリナスクラスター由来の遺伝子を利用することもできる。

0037

具体的に、キシロースイソメラーゼ遺伝子としては、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)腸内原生生物由来のキシロースイソメラーゼ遺伝子を使用することが好ましい。このヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)腸内原生生物由来のキシロースイソメラーゼ遺伝子のコーディング領域の塩基配列及び当該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号11及び12に示す。

0038

ただし、キシロースイソメラーゼ遺伝子としては、配列番号11及び12にて特定されるものに限定されず、塩基配列やアミノ酸配列は異なるがパラログの関係又は狭義のホモログの関係にある遺伝子であっても良い。

0039

また、キシロースイソメラーゼ遺伝子は、これら配列番号11及び12にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号12のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性又は同一性を有するアミノ酸配列から成り、キシロースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。配列類似性及び同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、配列類似性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基と、物理化学的に機能が類似するアミノ酸残基との合計を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記合計数の割合として算出される。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記アミノ酸残基数の割合として算出される。

0040

さらに、キシロースイソメラーゼ遺伝子は、これら配列番号11及び12にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号12のアミノ酸配列に対して、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列を有し、キシロースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。ここで、数個とは、例えば、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個である。

0041

さらにまた、キシロースイソメラーゼ遺伝子は、これら配列番号11及び12にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号11の塩基配列から成るDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つキシロースイソメラーゼ活性を有するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25〜500mM、好ましくは25〜300mMであり、温度が42〜68℃、好ましくは42〜65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。

0042

上述したように、配列番号11と異なる塩基配列から成る遺伝子、又は配列番号12とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、キシロースイソメラーゼ遺伝子として機能するか否かは、当該遺伝子を適当なプロモーターとターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いて例えば大腸菌等の宿主を形質転換し、発現するタンパク質のキシロースイソメラーゼ活性を測定すればよい。キシロースイソメラーゼ活性とは、キシロースをキシルロースに異性化する活性を意味する。よって、キシロースイソメラーゼ活性は、基質としてキシロースを含む溶液を準備し、検査対象のタンパク質を適当な温度で作用させ、キシロースの減少量及び/又はキシルロースの生成量を測定することで評価できる。

0043

特に、キシロースイソメラーゼ遺伝子としては、配列番号12に示すアミノ酸配列における特定のアミノ酸残基に対して特定の変異を導入したアミノ酸配列から成り、キシロースイソメラーゼ活性が向上した変異型キシロースイソメラーゼをコードする遺伝子を使用することが好ましい。具体的に、変異型キシロースイソメラーゼをコードする遺伝子としては、配列番号12に示すアミノ酸配列における337番目アスパラギンシステインに置換されたアミノ酸配列をコードする遺伝子を挙げることができる。配列番号12に示すアミノ酸配列における337番目のアスパラギンがシステインに置換されたアミノ酸配列から成るキシロースイソメラーゼは、野生型のキシロースイソメラーゼと比較して優れたキシロースイソメラーゼ活性を有する。なお、変異型キシロースイソメラーゼは、上記337番目のアスパラギンをシステインに置換したものに限定されず、上記337番目のアスパラギンをシステイン以外のアミノ酸に置換したものでも良いし、上記337番目のアスパラギンに加えて更に異なるアミノ酸残基を他のアミノ酸に置換したものでも良いし、上記337番目のアスパラギン以外の他のアミノ酸残基を置換したものでも良い。

0044

一方、キシロースイソメラーゼ遺伝子以外のキシロース代謝関連遺伝子とは、キシロースをキシリトールに変換するキシロースリダクターゼをコードするキシロースリダクターゼ遺伝子、キシリトールをキシルロースに変換するキシリトールデヒドロゲナーゼをコードするキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子及びキシルロースをリン酸化してキシルロース5-リン酸を生成するキシルキナーゼをコードするキシルロキナーゼ遺伝子を含む意味である。なお、キシルロキナーゼにより生成されたキシルロース5-リン酸は、ペントースリン酸経路に入り代謝されることとなる。

0045

キシロース代謝関連遺伝子としては、特に限定されないが、Pichia stipitis由来のキシロースリダクターゼ遺伝子及びキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子、Saccharomyces cerevisiae由来のキシルロキナーゼ遺伝子を挙げることができる(Eliasson A. et al., Appl. Environ. Microbiol, 66:3381-3386及びToivari MN et al., Metab. Eng. 3:236-249参照)。その他にも、キシロースリダクターゼ遺伝子としては、Candida tropicalisやCandida prapsilosis由来のキシロースリダクターゼ遺伝子を利用することができる。キシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子としては、Candida tropicalisやCandida prapsilosis由来のキシリトールデヒドロゲナーゼ遺伝子を利用することができる。キシルロキナーゼ遺伝子としては、Pichia stipitis由来のキシルロキナーゼ遺伝子を利用することもできる。

0046

また、キシロース代謝能を本来的に有する酵母としては、特に限定されないが、Pichia stipitis、Candida tropicalis及びCandida prapsilosis等を挙げることができる。

0047

ところで、本発明に係る組換え酵母は、更に他の遺伝子が導入された酵母であってもよい。他の遺伝子としては特に限定されないが、例えば、グルコース等の糖代謝に関与する遺伝子を導入したものであっても良い。一例として組換え酵母は、β-グルコシダーゼ遺伝子を導入することでβ-グルコシダーゼ活性を有する酵母とすることができる。

0048

ここでβ-グルコシダーゼ活性とは、糖のβ-グリコシド結合加水分解する反応を触媒する活性を意味する。すなわち、β-グルコシダーゼは、セロビオース等のセロオリゴ糖をグルコースに分解することができる。β-グルコシダーゼ遺伝子は、細胞表層提示型遺伝子として導入することもできる。ここで、細胞表層提示型遺伝子とは、当該遺伝子がコードするタンパク質が細胞の表層ディスプレイされるように発現するように改変された遺伝子である。例えば、細胞表層提示型β-グルコシダーゼ遺伝子とは、β-グルコシダーゼ遺伝子と細胞表層局在タンパク質遺伝子とを融合した遺伝子である。細胞表層局在タンパク質とは、酵母の細胞表層に固定され、細胞表層に存在するタンパク質をいう。例えば、凝集性タンパク質であるα-又はa-アグルチニンFLOタンパク質等が挙げられる。一般に細胞表層局在タンパク質は、N末端側に分泌シグナル配列及びC末端側にGPIアンカー付着認識シグナルを有している。分泌シグナルを有する点では分泌性タンパク質と共通しているが、細胞表層局在タンパク質はGPIアンカーを介して細胞膜に固定されて輸送される点が分泌性タンパク質と異なる。細胞表層局在タンパク質は、細胞膜通過の際、GPIアンカー付着認識シグナル配列が選択的に切断され、新たに突出したC末端部分でGPIアンカーと結合して細胞膜に固定される。その後ホスファチジルイノシトール依存性ホスホリパーゼC(PI-PLC)によりGPIアンカーの根元部分が切断される。ついで、細胞膜から切り離されたタンパク質は細胞壁に組み込まれて細胞表層に固定され、細胞表層に局在する(例えば、特開2006-174767号公報参照)。

0049

β-グルコシダーゼ遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、Aspergillus aculeatus由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子(Murai et al., Appl. Environ. Microbiol. 64:4857-4861)を挙げることができる。その他にも、β-グルコシダーゼ遺伝子としては、Aspergillus oryzae由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子、Clostridium cellulovorans由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子及びSaccharomycopsis fibligera由来のβ-グルコシダーゼ遺伝子等を利用することができる。

0050

また、本発明に係る組換え酵母は、β-グルコシダーゼ遺伝子に加えて、或いはβ-グルコシダーゼ遺伝子以外に、セルラーゼを構成する他の酵素をコードする遺伝子を導入したものでもよい。β-グルコシダーゼ以外にセルラーゼを構成する酵素としては、結晶セルロース末端からセロビオースを遊離するエキソ型セロビオハイドロラーゼ(CBH1及びCBH2)、結晶セルロースを分解できないが非結晶セルロース(アモルファスセルロース)鎖をランダムに切断するエンド型エンドグルカナーゼ(EG)を挙げることができる。

0051

また、組換え酵母に導入する他の遺伝子としては、アセトアルデヒドをエタノールに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子(ADH1遺伝子)、酢酸をアセチル-CoAに変換する活性を有するアセチル-CoA合成酵素遺伝子(ACS1遺伝子)、アセトアルデヒドを酢酸に変換する活性を有する遺伝子(ALD4遺伝子、ALD5遺伝子及びALD6遺伝子)を挙げることができる。なお、エタノールをアセトアルデヒドに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子(ADH2遺伝子)を破壊しても良い。

0052

さらに、本発明に係る組換え酵母は、アセトアルデヒドをエタノールに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子(ADH1遺伝子)を高発現する特徴を有するものが好ましい。当該遺伝子を高発現させるには、内在する当該遺伝子のプロモーターを高発現用プロモーターに置換する、当該遺伝子を発現可能に有する発現ベクターを酵母に導入するといった方法が挙げられる。

0053

Saccharomyces cerevisiaeのADH1遺伝子の塩基配列及び当該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号13及び14に示す。ただし、高発現対象のアルコール脱水素酵素遺伝子としては、配列番号13及び14にて特定されるものに限定されず、塩基配列やアミノ酸配列は異なるがパラログの関係又は狭義のホモログの関係にある遺伝子であっても良い。

0054

また、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号13及び14にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号14のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性又は同一性を有するアミノ酸配列から成り、アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。配列類似性及び同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、配列類似性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基と、物理化学的に機能が類似するアミノ酸残基との合計を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記合計数の割合として算出される。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記アミノ酸残基数の割合として算出される。

0055

さらに、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号13及び14にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号14のアミノ酸配列に対して、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列から成り、アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。ここで、数個とは、例えば、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個である。

0056

さらにまた、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号13及び14にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号13の塩基配列から成るDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25〜500mM、好ましくは25〜300mMであり、温度が42〜68℃、好ましくは42〜65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。

0057

上述したように、配列番号13と異なる塩基配列から成る遺伝子、又は配列番号14とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、アセトアルデヒドをエタノールに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子として機能するか否かは、当該遺伝子を適当なプロモーターとターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いて例えば酵母等の宿主を形質転換し、発現するタンパク質のアルコール脱水素酵素活性を測定すればよい。アセトアルデヒドをエタノールに変換するアルコール脱水素酵素活性は、基質としてアルデヒド及びNADH又はNADPHを含む溶液を準備し、検査対象のタンパク質を適当な温度で作用させ、生成するアルコールを計測するか、又はNAD+若しくはNADP+を分光学的に計測して測定することができる。

0058

さらに、本発明に係る組換え酵母は、エタノールをアセトアルデヒドに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子(ADH2遺伝子)の発現量が低下した特徴を有するものが好ましい。当該遺伝子の発現量を低下させるには、内在する当該遺伝子のプロモーターを改変する、当該遺伝子を欠損させるといった方法が挙げられる。当該遺伝子を欠損させる際には、二倍体の組換え酵母に存在する一対のADH2遺伝子のうち一方を欠損させても良いし、両方を欠損させても良い。遺伝子の発現を抑制する手法としては、所謂、トランスポゾン法、トランスジーン法、転写後遺伝子サイレンシング法、RNAi法、ナンセンス仲介減衰(Nonsense mediated decay, NMD)法、リボザイム法、アンチセンス法、miRNA(micro-RNA)法、siRNA(small interfering RNA)法等を挙げることができる。

0059

Saccharomyces cerevisiaeのADH2遺伝子の塩基配列及び当該遺伝子がコードするタンパク質のアミノ酸配列をそれぞれ配列番号15及び16に示す。ただし、対象のアルコール脱水素酵素遺伝子としては、配列番号15及び16にて特定されるものに限定されず、塩基配列やアミノ酸配列は異なるがパラログの関係又は狭義のホモログの関係にある遺伝子であっても良い。

0060

また、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号15及び16にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号16のアミノ酸配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の配列類似性又は同一性を有するアミノ酸配列を有し、アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。配列類似性及び同一性の値は、BLASTアルゴリズムを実装したBLASTNやBLASTXプログラムにより算出することができる(デフォルトの設定)。なお、配列類似性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基と、物理化学的に機能が類似するアミノ酸残基との合計を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記合計数の割合として算出される。なお、同一性の値は、一対のアミノ酸配列をペアワイズ・アライメント分析した際に完全に一致するアミノ酸残基を算出し、比較した全アミノ酸残基中の上記アミノ酸残基数の割合として算出される。

0061

さらに、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号15及び16にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号16のアミノ酸配列に対して、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入又は付加されたアミノ酸配列から成り、アルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでも良い。ここで、数個とは、例えば、2〜30個、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、最も好ましくは2〜5個である。

0062

さらにまた、アルコール脱水素酵素遺伝子は、これら配列番号15及び16にて特定されるものに限定されず、例えば、配列番号15の塩基配列から成るDNAの相補鎖の全部又は一部に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つアルコール脱水素酵素活性を有するタンパク質をコードするものでもよい。ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意味し、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual(Third Edition)を参照して適宜決定することができる。具体的には、サザンハイブリダイゼーションの際の温度や溶液に含まれる塩濃度、及びサザンハイブリダイゼーションの洗浄工程の際の温度や溶液に含まれる塩濃度によりストリンジェンシーを設定することができる。より詳細には、ストリンジェントな条件としては、例えば、ナトリウム濃度が25〜500mM、好ましくは25〜300mMであり、温度が42〜68℃、好ましくは42〜65℃である。より具体的には、5×SSC(83mM NaCl、83mMクエン酸ナトリウム)、温度42℃である。

0063

上述したように、配列番号15と異なる塩基配列から成る遺伝子、又は配列番号16とは異なるアミノ酸配列をコードする遺伝子が、エタノールをアセトアルデヒドに変換する活性を有するアルコール脱水素酵素遺伝子として機能するか否かは、当該遺伝子を適当なプロモーターとターミネーター等の間に組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを用いて例えば酵母等の宿主を形質転換し、発現するタンパク質のアルコール脱水素酵素活性を測定すればよい。エタノールをアセトアルデヒドに変換するアルコール脱水素酵素活性は、基質としてアルコールとNAD+又はNADP+を含む溶液を準備し、検査対象のタンパク質を適当な温度で作用させ、生成するアルデヒドを計測するか、NADH又はNADPHを分光学的に計測して測定することができる。

0064

さらに、組換え酵母に導入する他の遺伝子としては、バイオマスを構成するヘミセルロースに含まれる5炭糖であるL-アラビノースの代謝経路に関与する遺伝子を挙げることができる。このような遺伝子としては、例えば、原核生物由来のL-アラビノースイソメラーゼ遺伝子、L-リブロキナーゼ遺伝子、L-リブロース-5-ホスフェート4-エピメラーゼ遺伝子や、真核生物由来のL-アラビトール-4-デヒドロゲナーゼ遺伝子、L-キシロースレダクターゼ遺伝子を挙げることができる。

0065

特に、組換え酵母に導入する他の遺伝子としては、培地中のキシロースの利用を促進できるような遺伝子を挙げることができる。具体的には、キシルロースを基質としてキシルロース-5-リン酸を生成する活性を有するキシルロキナーゼをコードする遺伝子を挙げることができる。キシルロキナーゼ遺伝子を導入することによって、ペントースリン酸経路の代謝流束を向上させることができる。

0066

さらに組換え酵母は、ペントースリン酸経路における非酸化過程の経路を構成する酵素群より選択される酵素をコードする遺伝子を導入することができる。ペントースリン酸経路における非酸化過程の経路を構成する酵素としては、リボース-5-リン酸イソメラーゼ、リブロース-5-リン酸-3-エピメラーゼ、トランスケトラーゼ及びトランスアルドラーゼを挙げることができる。これら酵素をコードする遺伝子を1種以上導入することが好ましい。また、これら遺伝子のうち2種以上組み合わせて導入することがより好ましく、3種以上組み合わせて導入することが更に好ましく、全種類の遺伝子を導入することが最も好ましい。

0067

より具体的にキシルロキナーゼ(XK)遺伝子としては、特に由来生物を限定せずに用いることができる。なおXK遺伝子は、キシルロースを資化する細菌や酵母など多くの微生物が保持している。XK遺伝子に関する情報は、NCBIのHP等の検索により適宜入手できる。好ましくは、酵母、乳酸菌、大腸菌、植物などに由来するXK遺伝子が挙げられる。XK遺伝子としては、例えば、S. cerevisiae S288C 株由来のXK遺伝子であるXKS1(GenBank:Z72979)(CDSのコード領域の塩基配列及びアミノ酸配列)が挙げられる。

0068

また、より具体的にトランスアルドラーゼ(TAL)遺伝子、トランスケトラーゼ(TKL)遺伝子、リブロース-5-リン酸エピメラーゼ(RPE)遺伝子、リボース-5-リン酸ケトイソメラーゼ(RKI)遺伝子は、特に由来生物を限定せずに用いることができる。これら遺伝子はペントースリン酸経路を備える多くの生物であれば保持している。例えば、S.cerevisiaeなど汎用酵母もこれらの遺伝子を保持している。これらの遺伝子に関する情報は、NCBI等のHPにアクセスすることにより適宜入手できる。好ましくは、真核細胞又は酵母等、宿主真核細胞と同一の属、さらに好ましくは宿主真核細胞と同一種に由来の各遺伝子が挙げられる。TAL遺伝子としてはTAL1遺伝子、TKL遺伝子としてはTKL1遺伝子及びTKL2遺伝子、RPE遺伝子としてはRPE1遺伝子、RKI遺伝子としてはRKI1遺伝子を好ましく用いることができる。例えば、これら遺伝子としては、S. cerevisiae S288 株由来のTAL1遺伝子であるTAL1遺伝子(GenBank:U19102)、S. cerevisiae S288 株由来のTKL1遺伝子(GenBank:X73224)、S. cerevisiae S288 株由来のRPE1遺伝子(Genbank:X83571)、S. cerevisiae S288 株由来のRKI1遺伝子(GenBank:Z75003)が挙げられる。

0069

<組換え酵母の作製>
上述したアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子を宿主となる酵母のゲノムに導入し、且つトレハロース蓄積に関与する酵素を当該酵母で制御することにより、本発明に係る組換え酵母を作製することができる。ここで、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子は、キシロース代謝能を有しない酵母に導入しても良いし、キシロース代謝能を本来的に有する酵母に導入しても良いし、キシロース代謝能を有しない酵母にキシロース代謝関連遺伝子と共に導入されても良い。また、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子及び上述した遺伝子を酵母に導入する際、全ての遺伝子を同時に導入しても良いし、異なる発現ベクターを利用して逐次導入しても良い。

0070

宿主として用いることができる酵母としては、特に限定するものではないがCandida Shehatae、Pichia stipitis、Pachysolen tannophilus、Saccharomyces cerevisiae及びSchizosaccaromyces pombeなどの酵母が挙げられ、特にSaccharomyces cerevisiaeが好ましい。また、酵母としては、実験面での利便性のために使われる実験株でも良いし、実用面での有用性のために使われている工業株(実用株)でも良い。工業株としては、例えば、ワイン清酒焼酎作りに用いられる酵母株を挙げることができる。

0071

また、宿主となる酵母としては、ホモタリック性を有する酵母を使用することが好ましい。特開2009-34036号公報に開示される手法によれば、ホモタリック性を有する酵母を利用することで、簡便にゲノムへの多コピー遺伝子導入が可能となる。ホモタリック性を有する酵母とは、ホモタリックな酵母と同義である。ホモタリック性を有する酵母としては、特に限定されず、如何なる酵母をも使用することができる。ホモタリック性を有する酵母としては、Saccharomyces cerevisiae OC-2株(NBRC2260)を挙げることができるが、これに限定されるものではない。その他にもホモタリック性を有する酵母としては、アルコール酵母(台研396号、NBRC0216)(出典:「アルコール酵母の諸特性」酒研会報、No37、p18-22(1998.8))、ブラジルと縄で分離したエタノール生産酵母(出典:「ブラジルと沖縄で分離したSaccharomyces cerevisiae野生株遺伝学的性質」日本農芸化学会誌、Vol.65、No.4、p759-762(1991.4))及び180(出典「アルコール発酵力の強い酵母のスクリーニング」日本醸造協会誌、Vol.82、No.6、p439-443(1987.6))を挙げることができる。また、ヘテロタリック表現型を示す酵母においても、HO遺伝子を発現可能に導入することによってホモタリック性を有する酵母として使用することができる。すなわち、本発明において、ホモタリック性を有する酵母とは、HO遺伝子を発現可能に導入された酵母も含む意味である。

0072

なかでも、Saccharomyces cerevisiae OC-2株は、従来ワイン醸造の場面で利用されてきた安全性を確認されている菌株であるため好ましい。また、Saccharomyces cerevisiae OC-2株は、後述する実施例で示したように、高糖濃度の条件下におけるプロモーター活性が優れた菌株であるため好ましい。特にSaccharomyces cerevisiae OC-2株は、高糖濃度条件においてピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(PDC1)のプロモーター活性が優れているため好ましい。

0073

また、導入する遺伝子のプロモーターとしては、特に限定されないが、例えばグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーター、3-ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子(PGK1)のプロモーター、高浸透圧応答7遺伝子(HOR7)のプロモーターなどが利用可能である。なかでもピルビン酸脱炭酸酵素遺伝子(PDC1)のプロモーターが下流の目的遺伝子を高発現させる能力が高いために好ましい。

0074

すなわち、上述した遺伝子は、発現を制御するプロモーターやその他の発現制御領域とともに酵母のゲノムに導入してもよい。または、上述した遺伝子は、宿主となる酵母のゲノムに本来的に存在する遺伝子のプロモーターやその他の発現制御領域により発現制御されるように導入してもよい。

0075

また、上述した遺伝子を導入する方法としては、酵母の形質転換方法として知られている従来公知のいかなる手法をも適用することができる。具体的には、例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym., 194, p182 (1990)”、スフェロプラスト法“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J.Bacteriology, 153, p163(1983)”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methodsin yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これに限定されない。

0076

<エタノール製造>
本発明に係るエタノールの製造方法は、上記組換え酵母を使用し、培地に含まれる糖源からエタノールを合成する方法である。本発明に係るエタノールの製造方法では、上記組換え酵母により培地に含まれる酢酸を代謝することができ、エタノール発酵に伴って培地中の酢酸濃度が低減するといった特徴がある。

0077

上記組換え酵母を使用してエタノールを製造する際には、少なくともグルコース及び/又はキシロースを含有する培地にてエタノール発酵培養を行う。すなわち、エタノール発酵を行う培地とは、炭素源として少なくともグルコース及び/又はキシロースを含有することとなる。なお、培地には、他の炭素源が含まれていても良い。

0078

また、エタノール発酵に利用する培地に含まれるグルコース及び/又はキシロースは、セルロース系バイオマス由来とすることができる。ここで、セルロース系バイオマスとしては、従来公知の前処理を施したものであっても良い。前処理としては、特に限定されないが、例えば、リグニンを微生物によって分解する処理や、セルロース系バイオマスの粉砕処理等を挙げることができる。また、前処理としては、例えば、粉砕したセルロース系バイオマスを希硫酸溶液やアルカリ溶液イオン液体に浸漬する処理、水熱処理微粉砕処理といった処理を適用しても良い。これら前処理により、バイオマスの糖化率を向上させることができる。

0079

換言すれば、上記培地は、セルロース系バイオマス等のセルロース及びセルラーゼを含む組成であってもよい。この場合、上記培地には、セルラーゼがセルロースに作用することで生成するグルコースを含有することとなる。

0080

さらに、上記培地は、セルロース系バイオマスと、セルロース系バイオマスに含まれるヘミセルロースを糖化してキシロースを生成するヘミセルラーゼとを含む組成であってもよい。この場合、上記培地には、ヘミセルラーゼがヘミセルロースに作用することで生成するキシロースを含有することとなる。

0081

また、エタノール発酵に利用する培地は、セルロース系バイオマスを糖化処理した後の糖化液を添加してもよい。この場合、糖化液には、残存するセルロースやセルラーゼと生成されたグルコース、残存するヘミセルロースやヘミセルラーゼと生成されたキシロースが含まれる。

0082

以上のように、本発明に係るエタノールの製造方法は、少なくともグルコース及び/又はキシロースを糖源とするエタノール発酵の工程を含むこととなる。本発明に係るエタノールの製造方法は、グルコース及び/又はキシロースを糖源としたエタノール発酵によりエタノールを製造することができる。本発明に係る組換え酵母を利用したエタノールの製造方法では、エタノール発酵の後、培地からエタノールを回収する。エタノールの回収方法は、特に限定されず、従来公知のいかなる方法も適用することができる。例えば、上述したエタノール発酵が終了した後、固液分離操作によってエタノールを含む液層と、組換え酵母や固形成分を含有する固層とを分離する。その後、液層に含まれるエタノールを蒸留法によって分離・精製することで、純度の高いエタノールを回収することができる。なお、エタノールの精製度は、エタノールの使用目的にあわせて適宜調整することができる。

0083

一般に、バイオマスに由来する糖を利用してエタノールを製造する場合、上述した前処理や糖化処理において酢酸やフルフラールといった発酵阻害物質が生産される場合がある。特に酢酸については、酵母の生育・増殖を阻害し、キシロースを糖源とするエタノール発酵の効率を低下させることが知られている。

0084

しかしながら、本発明においては、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子を導入し、且つ細胞内のトレハロース蓄積量を増加させるようにトレハロース蓄積に関与する酵素を制御した組換え酵母を使用しているため、培地に含まれる酢酸を代謝することができ、培地に含まれる酢酸濃度を低く抑えることができる。よって、本発明に係るエタノールの製造方法は、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子の導入と細胞内のトレハロース蓄積量を増加させるためのトレハロース蓄積に関与する酵素の制御とが行われていない酵母を使用した場合と比較して優れたエタノール収率を達成できる。

0085

また、本発明に係るエタノールの製造方法によれば、組換え酵母を所定期間培養した後においても培地中の酢酸濃度が低いため、所定期間培養後の培地の一部を利用して新たに培養を開始する連続培養系に使用しても、酢酸の持ち込み量を低減できる。また、本発明に係るエタノールの製造方法によれば、エタノール発酵工程の終了後、菌体を回収して再利用する場合でも同様な理由から酢酸の持ち込み量を低減できる。

0086

さらに、本発明に係るエタノールの製造方法は、培地に含まれるセルロースをセルラーゼにより糖化する工程と、キシロースと糖化により生成されたグルコースとを糖源とするエタノール発酵の工程とが同時に進行する、いわゆる同時糖化発酵処理としても良い。ここで、同時糖化発酵処理とは、セルロース系バイオマスを糖化する工程とエタノール発酵工程とを区別せずに同時に実施する処理を意味する。

0087

なお、糖化方法としては、特に限定されないが、セルラーゼやヘミセルラーゼ等のセルラーゼ製剤を利用する酵素法等を挙げることができる。セルラーゼ製剤は、セルロース鎖及びヘミセルロース鎖の分解に関与する複数の酵素を含んでおり、エンドグルカナーゼ活性エンドキシラナーゼ活性、セロビオヒドロラーゼ活性グルコシダーゼ活性及びキシロシダーゼ活性等の複数の活性を示す。セルラーゼ製剤としては、特に限定されないが、例えば、Trichoderma reeseiや、Acremonium cellulolyticusなどが生産するセルラーゼを挙げることができる。セルラーゼ製剤としては、市販されているものを使用しても良い。

0088

同時糖化発酵処理では、セルロース系バイオマス(前処理後であってもよい)を含む培地にセルラーゼ製剤と上述した組換え酵母とを加え、所定の温度範囲で当該組換え酵母を培養する。培養温度としては特に限定されないが、エタノール発酵の効率を考慮して25〜45℃とすることができ、30〜40℃とすることが好ましい。また、培養液のpHを4〜6とすることが好ましい。また、培養に際して、攪拌振とうしてもよい。さらに、先に酵素の至適温度(40〜70℃)で糖化を行い、その後、温度を所定の温度(30〜40℃)に下げて組換え酵母を添加するといった変則的な同時糖化発酵でもよい。

0089

以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。

0090

〔実施例1〕
本実施例では、アセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子を導入し、且つトレハロース蓄積に関与するNTH1遺伝子を破壊した組換え酵母を作製し、この組換え酵母の酢酸代謝能を評価した。

0091

導入ベクターの作製>
(1)XI・XKS1・TKL1・TAL1・RKI1・RPE1遺伝子導入及びGRE3遺伝子破壊プラスミド
GRE3遺伝子座にGRE3遺伝子を破壊しながら、ヤマトシロアリ(Reticulitermes speratus)腸内原生生物由来のキシロースイソメラーゼ遺伝子(塩基配列:配列番号11及びアミノ酸配列:配列番号12)の337番目のアミノ酸をアスパラギンからシステインに置換され、キシロースの資化速度が向上した変異遺伝子(XI_N337C;国際公開第2014/156194号のSEQID NO:48)、酵母由来のキシルロキナーゼ(XKS1)遺伝子(塩基配列:配列番号17及びアミノ酸配列:配列番号18)、ペントースリン酸回路のトランスケトラーゼ1(TKL1)遺伝子(塩基配列:配列番号19及びアミノ酸配列:配列番号20)、トランスアルドラーゼ1(TAL1)遺伝子(塩基配列:配列番号21及びアミノ酸配列:配列番号22)、リブロースリン酸エピメラーゼ1(RPE1)遺伝子(塩基配列:配列番号23及びアミノ酸配列:配列番号24)、リボースリン酸ケトイソメラーゼ(RKI1)遺伝子(塩基配列:配列番号25及びアミノ酸配列:配列番号26)を酵母に導入するために必要な配列を含むプラスミド、pUC-5U_GRE3- P_HOR7- TKL1- TAL1-FBA1_P-P_ADH1-RPE1- RKI1-TEF1_P-P_TDH1-XI_N337C-T_DIT1- P_TDH3-XKS1-T_HIS3-LoxP-G418-LoxP-3U_GRE3を作製した。

0092

このプラスミドには、5'側にSaccharomyces cerevisiae BY4742株由来の、HOR7プロモーターが付加されたTKL1遺伝子、FBA1プロモーターが付加されたTAL1遺伝子、ADH1プロモーターが付加されたRKI1遺伝子、TEF1プロモーターが付加されたRPE1遺伝子、TDH1プロモーターと、DIT1ターミネーターが付加されたXI_N337C(全長を酵母のコドン使用頻度に合わせてコドンを変換した配列を全合成したもの)、TDH3プロモーターとHIS3ターミネーターが付加されたXKS1遺伝子、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、GRE3遺伝子の5'側末端より上流約700bpの領域の遺伝子配列(5U_GRE3)、及びGRE3遺伝子の3'側末端より下流の約800bpの領域のDNA配列(3U_GRE3)、並びにマーカーとして、G418遺伝子を含む遺伝子配列(G418 marker)が含まれるように構築した。なお、マーカー遺伝子は両側にLoxP配列を導入することで、マーカー除去が可能な配列にしている。

0093

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、Saccharomyces cerevisiae BY4742ゲノム、XI_N337C合成遺伝子DNA、LoxP配列の合成DNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit(タカラバイオ)等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0094

(2)mhpF・ADH1遺伝子導入及びADH2遺伝子破壊用プラスミド
ADH2遺伝子座にADH2遺伝子(塩基配列:配列番号15及びアミノ酸配列:配列番号16)を破壊しながら、E. coli由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(mhpF)(塩基配列:配列番号1及びアミノ酸配列:配列番号2)及び、酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼ1(ADH1)遺伝子(塩基配列:配列番号13及びアミノ酸配列:配列番号14)を酵母に導入するために必要な配列を含むプラスミド、pUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-mhpF-HOR7_P-URA3-3U_ADH2を作製した。

0095

このプラスミドには、5'側にSaccharomyces cerevisiae BY4742株由来の、TDH3プロモーターが付加されたADH1遺伝子、HOR7プロモーターとDIT1ターミネーターが付加されたmhpF遺伝子(NCBIアクセスNo.945008、全長を酵母のコドン使用頻度に合わせてコドンを変換した配列を全合成したもの)、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ADH2遺伝子の5'側末端より上流約700bpの領域の遺伝子配列(5U_ADH2)、及びADH2遺伝子の3'側末端より下流の約800bpの領域のDNA配列(3U_ADH2)、並びにマーカーとして、URA3遺伝子を含む遺伝子配列(URA3 marker)が含まれるように構築した。

0096

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、Saccharomyces cerevisiae BY4742ゲノムもしくはmhpF合成遺伝子DNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅させ、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0097

(3)adhE・ADH1遺伝子導入及びADH2遺伝子破壊用プラスミド
ADH2遺伝子座にADH2遺伝子(塩基配列:配列番号15及びアミノ酸配列:配列番号16)を破壊しながら、E. coli由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(adhE)(塩基配列:配列番号3及びアミノ酸配列:配列番号4)及び、酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼ1(ADH1)遺伝子(塩基配列:配列番号13及びアミノ酸配列:配列番号14)を酵母に導入するために必要な配列を含むプラスミド、pUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-adhE-HOR7_P-URA3-3U_ADH2を作製した。

0098

このプラスミドには、5'側にSaccharomyces cerevisiae BY4742株由来の、TDH3プロモーターが付加されたADH1遺伝子、HOR7プロモーターとDIT1ターミネーターが付加されたadhE遺伝子(NCBIアクセスNo.945837,全長を酵母のコドン使用頻度に合わせてコドンを変換した配列を全合成したもの)、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ADH2遺伝子の5'側末端より上流約700bpの領域の遺伝子配列(5U_ADH2)、及びADH2遺伝子の3'側末端より下流の約800bpの領域のDNA配列(3U_ADH2)、並びにマーカーとして、URA3遺伝子を含む遺伝子配列(URA3 marker)が含まれるように構築した。

0099

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、プラスミドpUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T- mhpF-HOR7_P-URA3-3U_ADH2もしくはadhE合成遺伝子DNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0100

(4)eutE・ADH1遺伝子導入及びADH2遺伝子破壊用プラスミド
ADH2遺伝子座にADH2遺伝子(塩基配列:配列番号15及びアミノ酸配列:配列番号16)を破壊しながら、E. coli由来のアセトアルデヒド脱水素酵素遺伝子(eutE)(塩基配列:配列番号5及びアミノ酸配列:配列番号6)及び、酵母由来のアルコールデヒドロゲナーゼ1(ADH1)遺伝子(塩基配列:配列番号13及びアミノ酸配列:配列番号14)を酵母に導入するために必要な配列を含むプラスミド、pUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-eutE-HOR7_P-URA3-3U_ADH2を作製した。

0101

このプラスミドには、5'側にSaccharomyces cerevisiae BY4742株由来の、TDH3プロモーターが付加されたADH1遺伝子、HOR7プロモーターとDIT1ターミネーターが付加されたeutE遺伝子(NCBIアクセスNo. 946943,全長を酵母のコドン使用頻度に合わせてコドンを変換した配列を全合成したもの)、酵母ゲノム上への相同組換え領域として、ADH2遺伝子の5'側末端より上流約700bpの領域の遺伝子配列(5U_ADH2)、及びADH2遺伝子の3'側末端より下流の約800bpの領域のDNA配列(3U_ADH2)、並びにマーカーとして、URA3遺伝子を含む遺伝子配列(URA3 marker)が含まれるように構築した。

0102

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、プラスミドpUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T- mhpF-HOR7_P-URA3-3U_ADH2もしくはeutE合成遺伝子DNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0103

(5)NTH1遺伝子破壊用プラスミド
NTH1遺伝子を破壊するために必要な配列を含むプラスミド、pCR-5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1を作製した。

0104

このプラスミドには、酵母ゲノム上への相同組換え及び中性トレハラーゼ遺伝子(NTH1)遺伝子を破壊するための領域として、NTH1遺伝子の上流約1050bpのDNA配列(5U_NTH1)、NTH1遺伝子の下流約1050bpのDNA配列(3U_NTH1)、並びにマーカーとして、G418遺伝子を含む遺伝子配列(G418 marker)が含まれるように構築した。

0105

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、プラスミドpUC-5U_GRE3-P_HOR7-TKL1-TAL1-FBA1_P-P_ADH1-RPE1-RKI1-TEF1_P-P_TDH1-XI_N337C-T_DIT1-P_TDH3-XKS1-T_HIS3-LoxP-G418-LoxP-3U_GRE3もしくは酵母OC2株のゲノムDNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0106

(6)NTH1遺伝子ターミネーター変換用プラスミド
NTH1遺伝子のターミネーターについて、発現量が弱いターミネーターであるGIC1(US20130244243)と置き換えるために必要な配列を含むプラスミド、pUC-5U_NTH1-NTH1-T_GIC1-LoxP-P_CYC1-G418-T_URA3-LoxP-3U_NTH1を作製した。

0107

このプラスミドには、酵母ゲノム上への相同組換え及び中性トレハラーゼ遺伝子(NTH1)のターミネーターを置換するための領域として、NTH1遺伝子の上流約1050bpのDNA配列(5U_NTH1)及びNTH1のORF、NTH1遺伝子の下流約1050bpのDNA配列(3U_NTH1)、並びにマーカーとして、G418遺伝子を含む遺伝子配列(G418 marker)が含まれるように構築した。

0108

なお、各DNA配列は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、プライマーは隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、それらを用いて、プラスミドpUC-5U_GRE3-P_HOR7-TKL1-TAL1-FBA1_P-P_ADH1-RPE1-RKI1-TEF1_P-P_TDH1-XI_N337C-T_DIT1-P_TDH3-XKS1-T_HIS3-LoxP-G418-LoxP-3U_GRE3もしくは酵母OC2株のゲノムDNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いて順次DNA断片を結合し、プラスミドpUC19にクローニングして最終目的のプラスミドを作製した。

0109

(7)URA3遺伝子導入用断片
機能していないURA3遺伝子座のURA3遺伝子を相同組換えにより野生型に戻すための野生型URA3遺伝子断片をOC2株より増幅した。本DNA断片は表1のプライマーを用いたPCRにより増幅することが可能である。

0110

(8)Cre遺伝子発現用プラスミド
Cre遺伝子をマルチコピーで発現するためのプラスミドpYES-Creを作製した。

0111

このプラスミドはpYES6/CT(ライフテクノロジー)に、ガラクトース誘導されるプロモーターであるGAL1プロモーターと融合したCre遺伝子(NCBIアクセスNo.NP_415757.1,全長を酵母のコドン使用頻度に合わせてコドンを変換した配列を全合成したもの)を導入して構築した。

0112

なお、構築に必要な各DNA配列は表1のプライマーを用いて増幅することが可能である。各DNA断片を結合するため、表1のプライマーに隣接DNA配列と約15bp重複するようにDNA配列を付加されており、プラスミドYES6/CTもしくはCre合成遺伝子DNAを鋳型に目的のDNA断片を増幅し、In-Fusion(登録商標) HD Cloning Kit等を用いてDNA断片を結合し最終目的のプラスミドを作製した。

0113

0114

ベクター導入酵母株の作製>
2倍体酵母のSaccharomyces cerevisiae OC2株(NBRC2260)を5-フルオロオロチン酸添加培地選抜し(Boeke, J.D., et al. 1987 MethodsEnzymol.;154:164-75.)、ウラシル要求性となった株(OC2U)を宿主とした。

0115

酵母の形質転換はFrozen-EZ Yeast Transformation II(ZYMO RESEARCH)を用い、添付のプロトコルに従って行った。

0116

pUC-5U_GRE3-P_HOR7-TKL1-TAL1-FBA1_P-P_ADH1-RPE1-RKI1-TEF1_P-P_TDH1-XI_N337C-T_DIT1-P_TDH3-XKS1-T_HIS3-LoxP-G418-LoxP-3U_GRE3の相同組換え部位をPCRで増幅した断片を用いて、OC2U株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニー純化した。純化された選択株をUz1252株と命名した。本株を胞子形成培地(1%リン酸カリウム、0.1%イーストエキストラクト、0.05%ブドウ糖、2%寒天)で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行った。2倍体である染色体のGRE3遺伝子座領域に変異型XI、TKL1、TAL1,RPE1,RKI1,及びXKS1遺伝子が組み込まれGRE3遺伝子が破壊されている株を取得した。これをUz1252株とした。

0117

Uz1252株にCre遺伝子発現用プラスミドを導入し、LoxP配列に挟まれているG418マーカー遺伝子をCre/LoxP部位特異的組換え反応により除去後、最終的にCreプラスミドが脱落した株を選抜しUz1252m株とした。

0118

プラスミドpUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-mhpF-HOR7_P-URA3-3U_ADH2、pUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-adhE-HOR7_P-URA3-3U_ADH2、pUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-eutE-HOR7_P-URA3-3U_ADH2、pUC-5U_NTH1-NTH1-T_GIC1-LoxP-P_CYC1-G418-T_URA3-LoxP-3U_NTH1の各プラスミドの相同組換え部位間をPCRで増幅した断片と、OC2株ゲノムから直接増やしたURA3遺伝子導入用断片を用いて、上記Uz1252m株の形質転換を行い、ウラシルを含まないSD寒天培地もしくはG418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をそれぞれ、Uz1317・Uz1298・Uz1761・Uz1302・Uz1313株と命名した。
なお、それぞれの株はヘテロに(1コピー)組換えが起こっていることを確認した。

0119

Uz1317・Uz1298・Uz1302・Uz1313株を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行い、Uz1319・Uz1318・Uz1346・Uz1323株と命名した。

0120

プラスミドpCR-5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1のプラスミドの相同組換え部位間をPCRで増幅した断片を用いて、上記Uz1318株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をUz1811株と命名した。Uz1811を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行い、Uz1811dS株と命名した。

0121

プラスミドpCR-5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1のプラスミドの相同組換え部位間をPCRで増幅した断片を用いて、上記Uz1317株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をUz1607株と命名した。Uz1607株を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行うと、ADH2とNTH1の両遺伝子座に導入されている5U_ADH2-P_TDH3- ADH1-T_ADH1- DIT1_T-mhpF- HOR7_P- URA3-3U_ADH2と5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1が2倍化された株を取得することが可能であり、Uz1607dS株と命名した。

0122

プラスミドpCR-5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1のプラスミドの相同組換え部位間をPCRで増幅した断片を用いて、上記Uz1761株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をUz1822株と命名した。Uz1822株を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行うと、ADH2とNTH1の両遺伝子座に導入されている5U_ADH2-P_TDH3- ADH1-T_ADH1- DIT1_T-eutE- HOR7_P- URA3-3U_ADH2と5U_NTH1U- LoxP-G418-LoxP -3U_NTH1が2倍化された株、5U_ADH2-P_TDH3- ADH1-T_ADH1- DIT1_T-eutE- HOR7_P- URA3-3U_ADH2のみ2倍化され、NTH1遺伝子座は野生型に戻る株が取得でき、それぞれUz1822dS、Uz1761dS株と命名した。

0123

プラスミドpCR-5U_NTH1U-LoxP-G418-LoxP-3U_NTH1もしくは、pUC-5U_NTH1-NTH1-T_GIC1-LoxP-P_CYC1-G418-T_URA3-LoxP- 3U_NTH1の相同組換え部位間をPCRで増幅した断片を用いて、上記Uz1323株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をそれぞれUz1662とUz1661株と命名した。Uz1662とUz1661株を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行い、それぞれUz1662dSとUz1661dS株と命名した。

0124

プラスミドpUC-5U_ADH2-P_TDH3-ADH1-T_ADH1-DIT1_T-mhpF-HOR7_P-URA3-3U_ADH2のプラスミドの相同組換え部位間をPCRで増幅した断片を用いて、上記Uz1346株の形質転換を行い、G418を含むYPD寒天培地に塗布し、生育したコロニーを純化した。純化された選択株をUz1382株と命名した。Uz1382株を胞子形成培地で胞子を形成させ、ホモタリック性を利用して2倍化を行い、Uz1382dS株と命名した。
最終的に作製した株の遺伝子型まとめると以下の表2になる。

0125

0126

発酵試験
作製した株からそれぞれ発酵能力が高い2株を選び、フラスコ発酵試験を以下のように実施した。

0127

まず、グルコース濃度20g/LのYPD液体培地(イーストエキストラクト10g/L、ペプトン20g/L、グルコース20g/L)を20ml分注した100ml容バッフル付きフラスコに供試株を植菌し、30℃ 120rpmで24時間培養を行った。集菌後、成分が異なる各種エタノール生産用の培地を8ml分注した10ml容フラスコに植菌し(菌濃度0.3g乾燥菌体/L)、振盪培養(80rpm、振幅35mm、30℃)、温度を31℃もしくは34℃にて発酵試験を行った。なお、フラスコにつける栓は、内径1.5mmニードルを通したゴム製で、ニードルの先に逆止弁を取り付けることでフラスコが嫌気的に保たれるようにした。

0128

発酵液中のグルコース、キシロース、エタノールについてHPLC(LC-10A;島津製作所)を使用して、下記条件にて測定した。
カラム:AminexHPX-87H
移動相:0.01N H2SO4
流量:0.6ml/min
温度:30℃
検出器示差屈折率検出器RID-10A

0129

<発酵試験結果>
表3及び4に示すように、コントロール株及びNTH1の破壊した株は酢酸を資化しなかったが、ADH2を破壊、ADH1とアセトアルデヒド脱水素酵素を過剰発現した株と、それらの株に追加してNTH1を破壊した株(Uz1607dS、Uz1811dS、Uz1822dS)は酢酸の資化が改善した。

0130

実施例

0131

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ