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技術 高温超電導磁石装置

出願人 株式会社東芝東芝エネルギーシステムズ株式会社
発明者 岩井貞憲戸坂泰造宮崎寛史田崎賢司
出願日 2016年6月13日 (5年6ヶ月経過) 出願番号 2016-117236
公開日 2017年12月21日 (4年0ヶ月経過) 公開番号 2017-224654
状態 特許登録済
技術分野 超電導用冷却・容器・薄膜 超電導電磁石
主要キーワード 保護措置 導通導体 迂回電流 励磁速度 高温超電導磁石 コイル周 低温運転 コイル積層体
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月21日)のものです。
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図面 (18)

課題

パンケーキコイル内部の温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗の上昇に伴って、このパンケーキコイルの電流密度自律的に低下する高温超電導磁石装置を提供する。

解決手段

パンケーキコイル30を巻回軸Cに沿って複数積層させたコイル積層体40と、積層されて隣接するパンケーキコイル30同士の最内周および最外周のいずれかを交互に電気的に接続してコイル積層体40を導通させる複数の導通導体13と、コイル積層体40の両端部のパンケーキコイル30が導通されて形成されるコイル積層体40を含む閉回路100と、コイル積層体40の最内周および最外周の少なくとも一方において閉回路100に並列接続されてフラックスフロー抵抗Rfの発生率が他と比較して高いと予想される1以上のパンケーキコイル30を迂回して接続される短絡迂回路31と、を備える。

概要

背景

超電導線材には、超電導状態を維持することができる上限である臨界電流密度臨界温度および臨界磁場がある。
従って、電気抵抗がゼロになるといわれる超電導状態においても無限電流を流すことはできず、上記いずれかの臨界値を超えると、連鎖的な常電導転移現象、すなわちクエンチが発生する。
クエンチ時の常電導転移領域におけるジュール発熱によって、超電導コイルは瞬時に熱暴走し、最悪の場合、焼損に至る。

よって、従来から、電源並列保護抵抗を接続して、温度上昇などをトリガー閉回路から励磁電源切り離すなど、クエンチに対する保護措置がとられている。
励磁電源を切り離して超電導コイルおよび保護抵抗のみの閉回路にすることで、保護抵抗のジュール発熱で超電導コイルの蓄積エネルギー消費され、電流が減衰する。

ところで、超電導コイルに、20K〜50K程度の高い温度でも高い臨界電流密度を有する高温超電導線材を用いると、高い温度帯での高電流密度運転が可能になる。
しかし、このような温度帯における高温超電導線材は、低温運転における低温超電導線材と比較して比熱が大きいため、一部に常電導転移が発生しても常電導領域の拡大が遅い。
よって、高電流密度運転時に常電導転移が発生しても、上述した従来技術の保護措置では、検知する前に局所的に熱暴走が発生し焼損してしまう。

そこで、例えば、超電導コイルのターン間に配置されるターン間絶縁材を取り除き、意図的にターン間を短絡する技術が提案されている。
ターン間が短絡されることで、有限抵抗値を有する常電導転移領域を迂回するように隣接するターンへ転流する電流が発生する。
よって、常電導転移領域におけるコイル周方向の電流密度自律的に低下され、熱暴走を未然に防止することができる。

概要

パンケーキコイル内部の温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗の上昇に伴って、このパンケーキコイルの電流密度が自律的に低下する高温超電導磁石装置を提供する。パンケーキコイル30を巻回軸Cに沿って複数積層させたコイル積層体40と、積層されて隣接するパンケーキコイル30同士の最内周および最外周のいずれかを交互に電気的に接続してコイル積層体40を導通させる複数の導通導体13と、コイル積層体40の両端部のパンケーキコイル30が導通されて形成されるコイル積層体40を含む閉回路100と、コイル積層体40の最内周および最外周の少なくとも一方において閉回路100に並列接続されてフラックスフロー抵抗Rfの発生率が他と比較して高いと予想される1以上のパンケーキコイル30を迂回して接続される短絡迂回路31と、を備える。

目的

本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、パンケーキコイル内部の温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗の上昇に伴って、このパンケーキコイルの電流密度が自律的に低下する高温超電導磁石装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

高温超電導線材巻回されて構成されるパンケーキコイル巻回軸に沿って複数積層させたコイル積層体と、積層されて隣接する前記パンケーキコイル同士の最内周および最外周のいずれかを交互に電気的に接続して前記コイル積層体を導通させる複数の導通導体と、前記コイル積層体の両端部のパンケーキコイルが導通されて形成される前記コイル積層体を含む閉回路と、前記コイル積層体の最内周および最外周の少なくとも一方において前記閉回路に並列接続されてフラックスフロー抵抗発生率が他と比較して高いと予想される1以上のパンケーキコイルを迂回して接続される短絡迂回路と、を備える高温超電導磁石装置。

請求項2

前記短絡迂回路は、一端が前記導通導体に、他端が他の導通導体または前記両端部のパンケーキコイルに接続される電極に接続される請求項1に記載の高温超電導磁石装置。

請求項3

前記短絡迂回路は、少なくとも一端が前記パンケーキコイルの最内周に設けられた巻枠のうち前記導通導体を接続するための導体区間に接続される請求項1または請求項2に記載の高温超電導磁石装置。

請求項4

前記短絡迂回路は、1のコイル積層体と他のコイル積層体とを接続する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

請求項5

前記短絡迂回路は、超電導体で構成される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

請求項6

前記短絡迂回路は、熱式または機械式迂回スイッチを備える請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

請求項7

前記短絡迂回路と並列に前記両端部のパンケーキコイルに接続される電極同士を接続する短絡経路を備える請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

請求項8

前記短絡迂回路には、冷却手段が接続される請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

請求項9

前記短絡迂回路に設けられてこの短絡迂回路へ流入する電流量を検出する検出部を備える請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の高温超電導磁石装置。

技術分野

0001

本発明の実施形態は、複数の高温超電導コイル電気的に接続されて成る超電導磁石装置クエンチ保護に関する。

背景技術

0002

超電導線材には、超電導状態を維持することができる上限である臨界電流密度臨界温度および臨界磁場がある。
従って、電気抵抗がゼロになるといわれる超電導状態においても無限電流を流すことはできず、上記いずれかの臨界値を超えると、連鎖的な常電導転移現象、すなわちクエンチが発生する。
クエンチ時の常電導転移領域におけるジュール発熱によって、超電導コイルは瞬時に熱暴走し、最悪の場合、焼損に至る。

0003

よって、従来から、電源並列保護抵抗を接続して、温度上昇などをトリガー閉回路から励磁電源切り離すなど、クエンチに対する保護措置がとられている。
励磁電源を切り離して超電導コイルおよび保護抵抗のみの閉回路にすることで、保護抵抗のジュール発熱で超電導コイルの蓄積エネルギー消費され、電流が減衰する。

0004

ところで、超電導コイルに、20K〜50K程度の高い温度でも高い臨界電流密度を有する高温超電導線材を用いると、高い温度帯での高電流密度運転が可能になる。
しかし、このような温度帯における高温超電導線材は、低温運転における低温超電導線材と比較して比熱が大きいため、一部に常電導転移が発生しても常電導領域の拡大が遅い。
よって、高電流密度運転時に常電導転移が発生しても、上述した従来技術の保護措置では、検知する前に局所的に熱暴走が発生し焼損してしまう。

0005

そこで、例えば、超電導コイルのターン間に配置されるターン間絶縁材を取り除き、意図的にターン間を短絡する技術が提案されている。
ターン間が短絡されることで、有限抵抗値を有する常電導転移領域を迂回するように隣接するターンへ転流する電流が発生する。
よって、常電導転移領域におけるコイル周方向の電流密度自律的に低下され、熱暴走を未然に防止することができる。

先行技術

0006

特開2015−179764号公報

発明が解決しようとする課題

0007

しかしながら、上述した従来の技術では、他のターンの超電導層迂回電流が到達するまでに、保護層または安定化層などの常電導層を通過することで、ジュール熱が発生するという課題があった。
つまり、蓄積エネルギーの高い超電導コイルにおいては、他のターンへ超電導電流を迂回させることでコイル内部の局所的な温度上昇を加速させてしまい、より焼損の危険性を助長するという課題があった。

0008

本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、パンケーキコイル内部の温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗の上昇に伴って、このパンケーキコイルの電流密度が自律的に低下する高温超電導磁石装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本実施形態にかかる高温超電導磁石装置は、高温超電導線材を巻回されて構成されるパンケーキコイルを巻回軸に沿って複数積層させたコイル積層体と、積層されて隣接する前記パンケーキコイル同士の最内周および最外周のいずれかを交互に電気的に接続して前記コイル積層体を導通させる複数の導通導体と、前記コイル積層体の両端部のパンケーキコイルが導通されて形成される前記コイル積層体を含む閉回路と、前記コイル積層体の最内周および最外周の少なくとも一方において前記閉回路に並列接続されてフラックスフロー抵抗の発生率が他と比較して高いと予想される1以上のパンケーキコイルを迂回して接続される短絡迂回路と、を備える。

発明の効果

0010

本発明により、パンケーキコイル内部の温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗の上昇に伴って、このパンケーキコイルの電流密度が自律的に低下する高温超電導磁石装置が提供される。

図面の簡単な説明

0011

一般的な高温超電導線材の構成斜視図。
高温超電導線材で構成されるパンケーキコイルの概略斜視図。
第1実施形態にかかる高温超電導磁石装置の概略構成図。
第1実施形態におけるコイル積層体の概略断面斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第1の変形例を示す概略断面斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第2の変形例を示す概略断面斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第3の変形例を示す一部切欠き斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第4の変形例を示す一部切欠き斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第5の変形例を示す概略断面斜視図。
第1実施形態における短絡迂回路の第6の変形例を示す概略断面斜視図。
第1実施形態にかかる高温超電導磁石装置の回路図。
第1実施形態にかかる高温超電導磁石装置の変形例の回路図。
第2実施形態にかかる高温超電導磁石装置の回路図。
第3実施形態にかかる高温超電導磁石装置の回路図。
第3実施形態にかかる高温超電導磁石装置の変形例の回路図。
第4実施形態にかかる高温超電導磁石装置の回路図。
第5実施形態にかかる高温超電導磁石装置の回路図。

実施例

0012

以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。

0013

(第1実施形態)
まず、図1の一般的な高温超電導線材20の構成斜視図を用いて、高温超電導線材20(以下、単に「超電導線材20」という)の構成を概説する。
超電導線材20は、図1に示されるように、一般に薄膜状の層が積層されたテープ形状線材を構成している。
この超電導線材20は、例えばレアメタル酸化物(RE酸化物)からなる高温超電導層25(以下、「超電導層25」という)を含むREBCO線材などの線材である。

0014

超電導線材20は、例えば、ニッケル基合金ステンレスまたは銅などの高強度の金属材質である基板22と、基板22の上に形成される中間層24と、中間層24を基板22の表面に配向させるマグネシウムなどからなる配向層23と、中間層24の上に形成される酸化物の超電導層25と、銀、金または白金などで組成される保護層26と、銅またはアルミニウムなどの良伝導性金属である安定化層21と、から構成される。
なお、超電導線材20を構成する各層の種類および数は、必要に応じて多い場合も少ない場合もある。

0015

また、図2は、超電導線材20で構成されるパンケーキコイル30の概略斜視図である。
超電導線材20は、巻回軸Cを中心に同心円状に巻回されて、いわゆるパンケーキコイル30になる。

0016

図3は、第1実施形態にかかる高温超電導磁石装置10(以下、単に「磁石装置10」という)の概略構成図である。
第1実施形態にかかる磁石装置10は、図3に示されるように、パンケーキコイル30(30a〜30h)を巻回軸Cに沿って複数積層されて、コイル積層体40を構成する。
コイル積層体40は、真空容器11に収容されて冷凍機12で冷却される。

0017

図4は、第1実施形態におけるコイル積層体40の概略断面斜視図である。
図4に示されるように、コイル積層体40のうち、隣接するパンケーキコイル30同士は、絶縁体27で絶縁される。
そして、これら隣接するパンケーキコイル30同士は、その最内周および最外周のいずれかにおいて、導通導体13で交互に電気的に接続される。

0018

パンケーキコイル30の最内周に巻枠14がある場合には、導通導体13は、巻枠14の一部を構成する導体区間15に接続される。
この導通導体13によってコイル積層体40を構成する全てのパンケーキコイル30が導通されて、1本の超電導電流の流通経路になる。

0019

コイル積層体40の両端部のパンケーキコイル30a,30hには、口出し電極16が接続される。
口出し電極16は、直接にまたは導通導体13を介してパンケーキコイル30に電気的に接続される。
口出し電極16が接続されたこれら両端部のパンケーキコイル30a,30hは、通常、フランジ17などで巻回軸方向にその両端から挟まれて固定される。
口出し電極16が励磁電源18に環状に接続されることで、コイル積層体40を含む閉回路100が形成される。

0020

また、図4に示されるように、励磁電源18に並列して励磁電源切離スイッチ19などが接続されることもある。
励磁電源切離スイッチ19は、励磁電源電流Iが励磁工程を経て定常状態になった後に、閉回路100から励磁電源18を切り離すためのスイッチである。
閉回路100を無抵抗にすることで、励磁電源18が切り離されても、超電導電流が流れ続ける永久電流モードになる。

0021

そして、コイル積層体40の最内周または最外周において、短絡迂回路31が1以上のパンケーキコイル30を迂回するように接続される。
つまり、短絡迂回路31は、コイル積層体40の最内周または最外周において、1以上のパンケーキコイル30を跨いで閉回路100に並列接続される。
以下、短絡迂回路31の接続方法について、具体的に説明する。

0022

短絡迂回路31は、例えば、コイル積層体40の最内周に設けられた隣接する2つの導通導体13を接続する。
このような接続によって、2つの導通導体13が接続された3つのパンケーキコイル30a〜30cのうち、上段の2つのパンケーキコイル30a,30bを電流が迂回することになる。

0023

より厳密には、次式(1)のキルヒホッフの法則に従った電流比で迂回電流Iuおよびパンケーキコイル30a,30bに電流が流入する。

0024

0025

ここで、Iは励磁電源18から供給する通電電流値、Ipはパンケーキコイル30a,30bに流れる電流値、Lはパンケーキコイル30a,30bのインダクタンス、Rfはパンケーキコイル30a,30bに発生するフラックスフロー抵抗、Rsは短絡迂回路31の抵抗である。
以下、フラックスフロー抵抗Rfが発生して迂回されるパンケーキコイル30を必要に応じてパンケーキコイル30a,30bと明示する。

0026

フラックスフロー抵抗Rfは、超電導層25が超電導状態から常電導状態転移する過程で生じる抵抗である。
フラックスフロー抵抗Rfは、上述した温度等の臨界値に近づくとともに急激に増加するため、フラックスフロー抵抗Rfによる発熱は熱暴走の主要因になる。

0027

そこで、短絡迂回路31は、他のパンケーキコイル30と比較して常電導転移が発生しやすいパンケーキコイル30を電流が迂回するように接続される。
つまり、短絡迂回路31は、例えば電気的負荷率が高く、フラックスフロー抵抗Rfの発生率の高いパンケーキコイル30を迂回区間に含むように接続される。
臨界電流特性の磁場に対する角度依存性が強い場合、巻回軸方向の両端部のパンケーキコイル30a,30hにおいて臨界電流値が相対的に低くなる。

0028

よって、この両端部のパンケーキコイル30a,30hの電気的負荷率が高くなり、最初にフラックスフロー抵抗Rfが上昇する。
なお、フラックスフロー抵抗Rfの発生の容易さは、使用される超電導線材20などにも依存する。

0029

短絡迂回路31の接続方法は、導通導体13同士の接続の他、図5図10の短絡迂回路31の接続位置の変形例に示されるように、種々のものがある。
また、例えば、図5に示されるように、一端は導通導体13で他端は口出し電極16であってもよい。

0030

また、通常、パンケーキコイル30が巻回される巻枠14には、導通導体13をパンケーキコイル30に電気的に接続するための導体区間15が設けられる。
そこで、短絡迂回路31は、図6に示されるように、導通導体13を介さずに、この導体区間15に直接接続されてもよい。

0031

また、図7に示されるように、短絡迂回路31は、最外周の導通導体13に設けられてもよい。
特に、パンケーキコイル30の最外周は、超電導線材20が露出していることも多い。
よって、図8に示されるように、導通導体13を介さずに、短絡迂回路31を直接パンケーキコイルに接続することが容易である。
さらに、図9に示されるように、最内周に巻枠14が設けられていないコイル積層体40の場合には、超電導線材20に直接短絡迂回路31を接続してもよい。

0032

また、短絡迂回路31は、図10に示されるように、第1コイル積層体40aと第2コイル積層体40bとを接続してもよい。
2つのコイル積層体40(40a,40b)を短絡迂回路31で接続する場合、短絡迂回路31の一端を第1コイル積層体40aの最内周、他端を第2コイル積層体40bの最外周に接続することもできる。

0033

なお、短絡迂回路31によって迂回される1以上のパンケーキコイル30は、厳密には1以上でなくてもよい。
つまり、例えば短絡迂回路31が巻回軸方向から傾いて接続されることで、迂回するべきパンケーキコイル30の微小区間だけ超電導電流が流れる場合も、このパンケーキコイル30は迂回されているものとする。

0034

以上示したように接続されることで、磁石装置10は、図11の第1実施形態にかかる磁石装置10の回路図のように表されることになる。
図11において、パンケーキコイル30は、無抵抗のコイル28(28a〜28f)と、抵抗値が変動するフラックスフロー抵抗Rfの抵抗値を有する抵抗29(28a〜28f)と、で表される。

0035

このように接続された閉回路100でフラックスフロー抵抗Rfが発生すると、短絡迂回路31に迂回した迂回電流Iuのエネルギーが短絡迂回路31で消費される。
よって、永久電流モードの状態で一部常電導転移が発生すると、熱暴走を発生させることなく超電導電流は消失する。

0036

なお、コイル積層体40に励磁電源18が接続されているときの常電導転移については、第2実施形態で説明する。
なお、短絡迂回路31は、図12の第1実施形態にかかる磁石装置10の変形例の回路図に示されるように、当然複数設けられてもよい。

0037

次に、短絡迂回路31の最適な抵抗値について説明する。
式(1)から次式(2)が導かれる。さらに、Ipが定常状態になってdIp/dtが無視できる場合、次式(3)が成り立つ。

0038

0039

式(3)において、IpはRsの単調増加関数であるので、Rsが小さいほどIpは減少する。

0040

短絡迂回路31の抵抗Rsがフラックスフロー抵抗Rfと同程度のオーダー、もしくはさらに低い抵抗値であれば、短絡迂回路31にパンケーキコイル30に流れる超電導電流Ipと同程度の適度な迂回電流Iuが流れることになる。

0041

短絡迂回路31は、コイル積層体40の最内周または最外周に配置されるので、コイル積層体40と同程度まで冷却されて、低い抵抗値を容易に実現することができる。
ただし、定格電流値まで励磁電源電流Iを上昇させるいわゆる励磁工程、または降下させる消磁工程においては、dIp/dtが無視できず、式(1)は次式(4)になる。

0042

0043

よって、短絡迂回路31が抵抗Rsが過度に低いと、短絡迂回路31へ迂回する電流値(I−Ip)が増加し、励磁後または消磁後にdIp/dtがゼロとなっても、電流が再分配されるまでに時間を要する。
よって、短絡迂回路31の抵抗値は、励磁速度に応じて設定することが望ましい。

0044

以上のように、第1実施形態にかかる磁石装置10によれば、パンケーキコイル30a,30bのフラックスフロー抵抗Rfの上昇に伴って、このパンケーキコイル30a,30bの電流密度を自律的に低下させることができる。

0045

また、迂回電流Iuはパンケーキコイル30の外部を流れることになるため、迂回電流Iuによってはパンケーキコイル30の内部は局所的に温度上昇しない。
よって、迂回電流Iuの発生による磁石装置10の熱暴走を防止することができる。

0046

さらに、万一迂回区間のパンケーキコイル30a,30bが焼損した場合も、短絡迂回路31によって閉回路100は維持される。
よって、他のパンケーキコイル30に高電圧がかかることで発生するアークによる副次的な焼損被害も抑制される。

0047

(第2実施形態)
図13は、第2実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第2実施形態にかかる磁石装置10は、図13に示されるように、短絡迂回路31に設けられて、この短絡迂回路31へ流入する電流量を検出する検出部32と、検出部32の検出値に基づいて励磁電源切離スイッチ19を切り換え監視部34と、を備える。

0048

磁石装置10には、励磁電源電流Iが定常状態になった後も、上述の永久電流モードにせずに、励磁電源18を接続したまま超電導電流を循環させるものもある。
また、励磁工程または消磁工程では、コイル積層体40に励磁電源18が接続される。
このように励磁電源18が接続されているときに常電導転移が発生した場合、通常は励磁電源18を閉回路100aから切り離して消磁する。

0049

そこで、第2実施形態では、監視部34が検出部32を用いてフラックスフロー抵抗Rfの発生を監視して、励磁電源切離スイッチ19を切り換える。
検出部32は、例えば短絡迂回路31の両端の電圧を検出する電圧計または迂回電流Iuを検出する電流計などである。
検出部32の検出値が既定閾値を超えた場合に監視部34が励磁電源切離スイッチ19をONにして励磁電源18を含まない閉回路100aを形成することで、第1実施形態と同様の消磁をする。

0050

なお、フラックスフロー抵抗Rfの発生を監視して閉回路100(100a,100b)を切り換えること以外は、第2実施形態は第1実施形態と同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。

0051

このように、第2実施形態にかかる磁石装置10によれば、第1実施形態の効果に加え、フラックスフロー抵抗Rfの発生時に励磁電源18が接続されていた場合でも励磁電源18を切り離して消磁することができる。

0052

(第3実施形態)
図14は、第3実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第3実施形態にかかる磁石装置10は、図14に示されるように、短絡迂回路31に迂回スイッチ35が設けられる。

0053

式(2)に表されるように、励磁工程または消磁工程などの過渡期間では、パンケーキコイル30を流れる電流Ipが変化するので、誘導電圧L×dIp/dtが発生する。
よって、短絡迂回路31の抵抗値が小さいと、大半の電流がパンケーキコイル30を周回せずに短絡迂回路31を流れてしまう。

0054

一方、熱暴走またはクエンチを防止するためには、フラックスフロー抵抗Rfが発生したときに短絡迂回路31に十分な迂回電流Iuが流入するように、抵抗値は小さいことが望ましい。
そこで、第3実施形態では、短絡迂回路31の抵抗値を小さくするとともに、励磁工程などの過渡期間には迂回スイッチ35をOFFにして短絡迂回路31を切断する。

0055

また、図15は、第3実施形態にかかる磁石装置10の変形例の回路図である。
上記のように短絡迂回路31の抵抗値を十分に小さくすることができるので、例えば、迂回スイッチ35として永久電流スイッチ35a(35)を用いることができる。
永久電流スイッチ35aは、抵抗値が超電導状態の超電導線材20と同程度に小さいスイッチである。つまり、永久電流スイッチ35aは、通常、超伝導体で構成される。

0056

通常は、短絡迂回路31とパンケーキコイル30との接続部の接続抵抗が発生する分だけ、短絡迂回路31の抵抗値はパンケーキコイル30の抵抗値より僅かに高くなる。
永久電流スイッチ35aには、スイッチを入熱によって切り替え熱式のもの、または外部からの外力によってスイッチを切り換える機械式のものなどがある。
永久電流スイッチ35aを用いることで、迂回区間のパンケーキコイル30a,30bにフラックスフロー抵抗Rfが発生した後も永久電流モードが維持されることにもなる。

0057

なお、短絡迂回路31の導通を制御すること以外は、第3実施形態は第1実施形態と同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。

0058

このように、第3実施形態にかかる磁石装置10によれば、第1実施形態の効果に加え、必要時にのみ短絡迂回路31を導通させることで、迂回スイッチ35の抵抗値を十分に小さくすることができる。
よって、フラックスフロー抵抗Rfが発生したパンケーキコイル30a,30bの迂回を容易にして、より熱暴走を確実に抑制することができる。

0059

(第4実施形態)
図16は、第4実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第4実施形態にかかる磁石装置10は、図16に示されるように、短絡迂回路31と並列に両端部のパンケーキコイル30a,30hに接続される口出し電極16同士を接続する短絡経路37を備える。

0060

第1実施形態で述べたように、フラックスフロー抵抗Rfの発生は、使用される超電導線材20の種類または品質など厳密な予測が困難な要因にも依存する。
また、フラックスフロー抵抗Rfの発生を誘引する電気的負荷率も、想定外の値になることもある。
よって、磁石装置10の作成時には想定されておらず、短絡迂回路31による保護措置が施されていなかったパンケーキコイル30c,30dに常電導転移が発生することもある。

0061

そこで、第3実施形態では、第1実施形態等で示した短絡迂回路31に加えて、迂回区間に全てのパンケーキコイル30(30a〜30f)を含むように短絡経路37を並列接続する。
短絡経路37によって、短絡迂回路31によって迂回されていないパンケーキコイル30c,30dに高いフラックスフロー抵抗Rfが発生した場合、励磁電源電流Iは、全てのパンケーキコイル30(30a〜30f)を迂回することになる。
なお、短絡経路37にも第3実施形態と同様に不要な迂回を防止するための迂回スイッチ35を設けることが望ましい。

0062

なお、短絡迂回路31による保護措置が施されていないパンケーキコイル30c,30dに発生した常電導転移による熱暴走を防止すること以外は、第4実施形態は第1実施形態と同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。

0063

このように、第4実施形態にかかる磁石装置10によれば、第1実施形態の効果に加え、より確実に熱暴走を防止ことができる。

0064

(第5実施形態)
図17は、第5実施形態にかかる磁石装置10の回路図である。
第5実施形態にかかる磁石装置10は、図17に示されるように、短絡迂回路31に、冷却手段38が接続される。

0065

第2実施形態では、常電導転移の発生時に励磁電源18を閉回路100から切り離す例を説明した。
しかし、局所的に常電導転移が発生してフラックスフロー抵抗Rfが高くなっても、磁石装置10として使用を継続させることが必要なことがある。
例えば、一時的にフラックスフロー抵抗Rfが発生して迂回電流Iuが発生しても、このフラックスフロー抵抗Rfが喪失すれば、超電導電流Ipおよび磁場は回復することもある。

0066

そこで、第5実施形態では、短絡迂回路31に伝熱経路39を介して冷却手段38を接続し、迂回電流Iuの発生によって発生したジュール熱を除去する。
冷却手段38は、コイル積層体40を冷却するために設けられた冷凍機12(図3)を利用してもよいし、短絡迂回路31の冷却専用に設けられた冷凍機を利用してもよい。

0067

冷却手段38による冷却によって、短絡迂回路31が接続されるパンケーキコイル30に短絡迂回路31の熱が伝導してこのパンケーキコイル30が局所的に高温になることも防止される。
つまり、短絡迂回路31の冷却は、磁石装置10の使用を継続せずに消磁する場合も有効である。

0068

なお、短絡迂回路31が冷却手段38で冷却されること以外は、第5実施形態は第1実施形態と同じ構造および動作手順となるので、重複する説明を省略する。
図面においても、共通の構成または機能を有する部分は同一符号で示し、重複する説明を省略する。

0069

このように、第5実施形態にかかる磁石装置10によれば、第1実施形態の効果に加え、磁石装置10の使用を継続することができる。
また、短絡迂回路31のジュール熱が短絡迂回路31の周囲のパンケーキコイル30に伝導して周囲のパンケーキコイル30に熱暴走による焼損が発生することも防止することができる。

0070

以上述べた少なくとも一つの実施形態の磁石装置10によれば、短絡迂回路31によって励磁電源電流Iの一部を迂回させることにより、パンケーキコイル30の内部温度を上昇させずに、フラックスフロー抵抗Rfの上昇に伴ってこのパンケーキコイル30の電流密度が自律的に低下させることが可能となる。

0071

本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。

0072

10…高温超電導磁石装置(磁石装置)、11…真空容器、12…冷凍機、13…導通導体、14…巻枠、15…導体区間、16…口出し電極、17…フランジ、18…励磁電源、19…励磁電源切離スイッチ、20…高温超電導線材(超電導線材)、21…安定化層、22…基板、23…配向層、24…中間層、25…高温超電導層(超電導層)、26…保護層、27…絶縁体、28…コイル、29…抵抗、30(30a〜30h)…パンケーキコイル、31…短絡迂回路、32…検出部、34…監視部、35…迂回スイッチ、35a…永久電流スイッチ、37…短絡経路、38…冷却手段、39…伝熱経路、40(41a,41b)…コイル積層体(第1コイル積層体,第2コイル積層体)、100(100a,100b)…閉回路(永久電流モードの閉回路,励磁電源を含む閉回路)、C…巻回軸、I…励磁電源電流、Ip…パンケーキコイルを流れる超電導電流、Iu…迂回電流、Rf…フラックスフロー抵抗、Rs…短絡迂回路の抵抗。

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