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技術 水硬性材料補強用ナイロン繊維、水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法、及びこれを用いた水硬性材料

出願人 菊田貴恒ダイワボウホールディングス株式会社
発明者 菊田貴恒岡屋洋志佐藤駿介
出願日 2016年6月17日 (4年10ヶ月経過) 出願番号 2016-121003
公開日 2017年12月21日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-222958
状態 特許登録済
技術分野 合成繊維 セメント、コンクリート、人造石、その養生
主要キーワード 牽引強度 偏心構造 次転位 一軸引張試験 押出し式 乾熱温度 半芳香族ポリアミド繊維 銅スラグ
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (6)

課題

コストが安く、水硬性材料破壊エネルギーが高い水硬性材料補強用ナイロン繊維と、水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法、及びこれを用いた水硬性材料を提供する。

解決手段

短繊維からなる水硬性材料補強用ナイロン繊維であって、前記ナイロン繊維は、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とする繊維であり、単繊維強度:5.4〜9.0cN/dtex、破断伸度:15〜80%である。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法は、270℃におけるMFRが10〜70g/10分のナイロン66を溶融紡糸し、10〜80℃の温度の水存在下で湿式延伸し、その後、前記延伸温度より高い乾熱温度熱セットする。本発明の水硬性材料は、前記のナイロン繊維を含む水硬性材料であって、水硬性材料を100Vol%としたとき、前記ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含む。

概要

背景

セメントモルタルコンクリートセメントボードといった各種水硬性材料衝撃強度曲げ強度強化するために、ナイロンポリプロピレンビニロン等の合成繊維を、所定の繊維長に切断した短繊維補強用繊維として用いられている。これらの補強用繊維には一般的に繊維強度の高い繊維が用いられており、このためにポリマー選定などが行われてきた。

例えば、特許文献1には、半芳香族ポリアミド繊維セメント補強繊維として使用することが提案され、特許文献2にはナイロン繊維左官材料の補強繊維として使用することが提案されている。特許文献3にはアクリル繊維又はナイロン繊維をモルタル組成物の補強繊維として使用することが提案されている。特許文献4には繊維が破断したときの応力である牽引強度が2.1g/デニール越〜3.7g/デニール未満のナイロン繊維をセメントの補強繊維として使用することが提案されている。

概要

コストが安く、水硬性材料破壊エネルギーが高い水硬性材料補強用ナイロン繊維と、水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法、及びこれを用いた水硬性材料を提供する。短繊維からなる水硬性材料補強用ナイロン繊維であって、前記ナイロン繊維は、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とする繊維であり、単繊維強度:5.4〜9.0cN/dtex、破断伸度:15〜80%である。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法は、270℃におけるMFRが10〜70g/10分のナイロン66を溶融紡糸し、10〜80℃の温度の水存在下で湿式延伸し、その後、前記延伸温度より高い乾熱温度熱セットする。本発明の水硬性材料は、前記のナイロン繊維を含む水硬性材料であって、水硬性材料を100Vol%としたとき、前記ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含む。

目的

本発明は前記従来の問題を解決するため、製造コストが安く、各種水硬性材料に対して添加した際、得られる水硬性材料の破壊エネルギーが高い水硬性材料補強用ナイロン繊維とその製造方法及びこれを用いた水硬性材料を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

短繊維からなる水硬性材料補強用ナイロン繊維であって、前記ナイロン繊維は、270℃におけるメルトフローレートMFR)が10〜70g/10分のナイロン66を主成分とするナイロン繊維であり、単繊維強度が5.25〜9.0cN/dtexであり、破断伸度が15〜80%であることを特徴とする水硬性材料補強用ナイロン繊維。

請求項2

前記ナイロン繊維は、繊度が0.3〜30dtexであり、繊維長が1〜50mmである請求項1に記載の水硬性材料補強用ナイロン繊維。

請求項3

前記ナイロン繊維は、中実でかつ丸断面である請求項1又は2に記載の水硬性材料補強用ナイロン繊維。

請求項4

水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法であって、270℃におけるメルトフローレート(MFR)が10〜70g/10分のナイロン66を溶融紡糸し、10〜80℃の温度の水存在下で湿式延伸し、その後、前記延伸温度より高い乾熱温度熱セットすることにより、270℃におけるメルトフローレート(MFR)が10〜70g/10分のナイロン66を主成分とするナイロン繊維を得ることを特徴とする水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法。

請求項5

前記湿式延伸における延伸倍率が2〜6倍である請求項4に記載の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法。

請求項6

前記熱セットは定長セットである求項4又は5に記載の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法。

請求項7

前記熱セットの乾熱温度は100〜200℃である請求項4〜6のいずれかに記載の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法。

請求項8

請求項1〜3のいずれかに記載のナイロン繊維を含む水硬性材料であって、水硬性材料を100Vol%としたとき、前記ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含むことを特徴とする水硬性材料。

請求項9

前記水硬性材料の引張応力試験において、ひずみが0〜4%の範囲内の引張応力の最大値(A)と、ひずみ4%のときの引張応力値(B)を比較すると、BはAの30%以上である請求項8に記載の水硬性材料。

技術分野

0001

本発明は、水硬性材料補強用ナイロン繊維、水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法、及びこれを用いた水硬性材料に関する。

背景技術

0002

セメントモルタルコンクリートセメントボードといった各種水硬性材料衝撃強度曲げ強度強化するために、ナイロンポリプロピレンビニロン等の合成繊維を、所定の繊維長に切断した短繊維補強用繊維として用いられている。これらの補強用繊維には一般的に繊維強度の高い繊維が用いられており、このためにポリマー選定などが行われてきた。

0003

例えば、特許文献1には、半芳香族ポリアミド繊維セメント補強繊維として使用することが提案され、特許文献2にはナイロン繊維を左官材料の補強繊維として使用することが提案されている。特許文献3にはアクリル繊維又はナイロン繊維をモルタル組成物の補強繊維として使用することが提案されている。特許文献4には繊維が破断したときの応力である牽引強度が2.1g/デニール越〜3.7g/デニール未満のナイロン繊維をセメントの補強繊維として使用することが提案されている。

先行技術

0004

特開平09−256219号公報
特開2002−274903号公報
特開2001−220205号公報
特許第4636693号公報

発明が解決しようとする課題

0005

しかし、従来から提案されている半芳香族ポリアミド繊維や、アラミド繊維などの全芳香族ポリアミド繊維は、製造コストが高い問題があり(例えば、特許文献1)、あるいはナイロン繊維を添加した水硬性材料の強度や破壊エネルギーに問題があり(例えば、特許文献2〜4)、さらなる改善が求められていた。

0006

本発明は前記従来の問題を解決するため、製造コストが安く、各種水硬性材料に対して添加した際、得られる水硬性材料の破壊エネルギーが高い水硬性材料補強用ナイロン繊維とその製造方法及びこれを用いた水硬性材料を提供する。

課題を解決するための手段

0007

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維は、短繊維からなる水硬性材料補強用ナイロン繊維であって、前記ナイロン繊維は、270℃におけるメルトフローレートMFR)が10〜70g/10分のナイロン66を主成分とするナイロン繊維であり、単繊維強度が5.25〜9.0cN/dtex、破断伸度が15〜80%であることを特徴とする。

0008

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法は、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を溶融紡糸し、10〜80℃の温度の水存在下で湿式延伸し、その後、前記延伸温度より高い乾熱温度熱セットすることで、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とする水硬性材料補強用ナイロン繊維を得ることを特徴とする。

0009

本発明の水硬性材料は、前記のナイロン繊維を含む水硬性材料であって、水硬性材料を100Vol%としたとき、前記ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含むことを特徴とする。

発明の効果

0010

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維は、短繊維であり、前記ナイロン繊維は、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とするナイロン繊維であり、単繊維強度が5.25〜9.0cN/dtex、破断伸度が15〜80%であることにより、製造コストが安く、水硬性材料の破壊エネルギーが高い水硬性材料補強用ナイロン繊維及びこれを用いた水硬性材料を提供できる。すなわち、前記ナイロン繊維は水硬性材料との親和性が高いことにより、水硬性材料の破壊エネルギーを高くすることができる。また、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法によると、製造コストが安く、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とする水硬性材料補強用ナイロン繊維を得ることができる。

図面の簡単な説明

0011

図1は本発明の一実施例で使用するダンベルの形状と引張試験装置を示す模式的正面図である。
図2は本発明の一実施例で示す破壊エネルギーを示す説明図である。
図3は本発明の一実施例の引張応力−ひずみを示すグラフである。
図4は本発明の別の実施例の引張応力−ひずみを示すグラフである。
図5は比較例の引張応力−ひずみを示すグラフである。

0012

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維は270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を主成分とする繊維である。以下において、特に指摘がない場合、ナイロン66とは、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を意味する。本発明でいうナイロン66を主成分とする繊維とは、水硬性材料補強用繊維の全体質量を100質量%としたときに、ナイロン66が50質量%以上を占めていることを指す。ナイロン66は主にポリヘキサメチレンアジパミドからなる。ポリヘキサメチレンアジパミドとはヘキサメチレンジアミンアジピン酸とから構成される融点が250℃以上の脂肪族ポリアミドを指すが、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維では、融点が250℃未満とならない範囲で、ナイロン6、ナイロン6I、ナイロン610、ナイロン6Tなどを共重合、あるいはブレンドしてもよい。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維は、繊維の質量を100質量%としたときにナイロン66を50質量%以上含むが、好ましくは70質量%以上含み、より好ましくは80質量%以上含み、特に好ましくは水硬性材料補強用繊維を構成する熱可塑性樹脂がナイロン66からなる繊維である。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維において、ナイロン66は繊維のどの部分に含まれていても良いが、好ましくはナイロン66が繊維表面の少なくとも一部を占めている。単一繊維であれば、ナイロン66を主成分とする原料を溶融紡糸することで、繊維表面の少なくとも一部をナイロン66が占める繊維を製造することができる。繊維が2種類以上の樹脂成分からなる複合繊維、例えば、同心断面の芯鞘型複合繊維偏心構造の芯鞘型複合繊維、並列型サイドバイサイド)複合繊維、分割型複合繊維海島型複合繊維である場合、ナイロン66を含む樹脂成分が繊維表面に露出していることが好ましい。より具体的には、同心円断面の芯鞘型複合繊維や偏心構造の芯鞘型複合繊維の場合、ナイロン66を含む樹脂成分を鞘成分とすることが好ましく、海島型複合繊維であればナイロン66を含む樹脂成分を海成分とすることが好ましい。

0013

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維(以下において、単にナイロン繊維とも記す。)において、繊維の主成分として含まれるナイロン66は、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分である。好ましいメルトフローレートは20〜70g/10分であり、より好ましいメルトフローレートは40〜70g/10分であり、特に好ましいメルトフローレートは50〜70g/10分であり、最も好ましいメルトフローレートは55〜67g/10分である。MFRが前記の範囲を満たすナイロン66であると、溶融紡糸において糸切れや繊維間の融着が発生しにくく、延伸工程において高倍率での延伸処理が、糸切れの発生頻度を抑えて行え、また熱セットの工程も効率よく行えることから製造コストを抑えて製造できるだけでなく、水硬性材料の補強用繊維として使用した場合、水硬性材料との親和性が高く、高い補強効果が得られるナイロン繊維となる。

0014

本発明において、ナイロン66のメルトフローレートは、JIS K 7210に準じて、270℃又は280℃、荷重21.2Nで測定する。より具体的には、以下の方法で測定したMFRを本発明ではナイロン66のMFRとしている。まず、MFRを測定するナイロン66の試料樹脂ペレットもしくは製造した繊維)を100℃に設定した恒温乾燥機の中で5時間保持し、十分に乾燥させる。次に、JIS K 7210に準じた押出し式プラストメーター所定温度まで昇温し、所定温度になってから20分保持して温度を安定させた後、乾燥させた試料を3〜8g充填する。そして、試料の充填から360秒後にメルトフローレートの測定を開始する。同じ測定を2回繰り返し、その平均値をナイロン66のメルトフローレートとした。

0015

前記ナイロン繊維の単繊維強度は5.25〜9.0cN/dtexであり、好ましくは5.3〜8.5cN/dtexであり、より好ましくは5.4〜8.0cN/dtexであり、特に好ましくは5.4〜7.5cN/dtexである。また、破断伸度は15〜80%であり、好ましくは20〜70%である。単繊維強度及び破断伸度が前記の範囲であれば、強度と伸度バランスが良く、水硬性材料との親和性が高く、かつ溶融紡糸、延伸、熱固定が効率よく行え、コスト安く製造できる。前記ナイロン繊維において、単繊維強度が5.25cN/dtex未満であるか、破断伸度が80%を越えると、繊維自体の強度が低いため、水硬性材料に対し補強効果が付与されない、言い換えるならば、それらの繊維を添加して硬化させた水硬性材料において、各種補強用繊維を加えずに硬化させた水硬性材料と比較して圧縮強度、引っ張り強度、曲げ強度といった、各種破壊強度の向上が見込めない可能性がある。前記ナイロン繊維の単繊維強度が9.0cN/dtexを越える、あるいは破断伸度が15%未満となると、水硬性材料の補強効果、特に、本発明のナイロン繊維を含む水硬性材料において、その破壊エネルギーの更なる向上が見込めないだけでなく、ナイロン繊維を製造するときに、更なる高温、高延伸倍率での製造が必要になるため、製造コストの増大を招く可能性がある。

0016

前記ナイロン繊維は、その繊度が特に限定されないが、繊度0.3〜30dtexが好ましく、さらに好ましくは0.5〜25dtexであり、特に好ましくは0.7〜20dtexである。また、前記ナイロン繊維の繊維長も特に限定されないが、繊維長は1〜50mmが好ましく、さらに好ましくは2〜30mmであり、特に好ましくは3〜20mmである。繊度と繊維長が前記の範囲であれば、水硬性組成物との混和性が良い。

0017

前記ナイロン繊維は、その断面形状は特に限定されず、丸断面の他、非円形の断面、例えば三角形四角形を始めとする多角形の断面、3葉断面、4葉断面を始めとする多葉断面、Y形W形井形といったいずれの断面形状であってもよい。また、これらの断面形状であって、中空部分を含まない中実繊維としてもよいし、繊維中に繊維長さ方向対し、連続した中空部分または非連続の中空部分を1箇所以上有する中空繊維としてもよい。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維において、その繊維断面は、中実でかつ丸断面であるのが好ましい。中実でかつ丸断面であればコスト安く製造できる。なお丸断面は、円、楕円長円など様々な丸を含む。また、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の断面構造は特に限定されず、単一の樹脂成分、すなわちナイロン66を主成分とする樹脂成分からなる単一繊維であってもよいし、複数の樹脂成分からなる複合繊維、例えば、同心断面の芯鞘型複合繊維、偏心構造の芯鞘型複合繊維、並列型(サイドバイサイド)複合繊維、分割型複合繊維、海島型複合繊維であってもよい。

0018

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法について説明する。本発明のナイロン繊維の製造方法では、270℃におけるメルトフローレートが10〜70g/10分のナイロン66を溶融紡糸し、10〜80℃の温度の水存在下で湿式延伸し、その後、前記延伸温度より高い乾熱温度で熱セットする。まず、本発明のナイロン繊維の製造方法における溶融紡糸の工程を説明する。溶融紡糸の工程では、前記メルトフローレートを満たすナイロン66を押出機投入し、紡糸温度260〜300℃の範囲で溶融し、紡糸ノズルから押し出して、引き取り速度200〜2000m/分で引き取り、ナイロン66を主成分とする繊度が1.5〜100dtexの未延伸繊維の束(未延伸トウともいう。)を得る。

0019

溶融紡糸の工程における、紡糸温度について説明する。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法において、紡糸温度は260〜300℃である。紡糸温度が260℃未満であるとナイロン66を溶融させた際、その溶融粘度が高く、糸切れが多発する等可紡性極端に悪くなる可能性がある。紡糸温度が300℃を越えると、ナイロン66の溶融粘度が低下しすぎるため、未延伸繊維に融着が発生するだけでなく、溶融紡糸時にナイロン66の熱分解が始まるおそれがある。本発明のナイロン繊維の製造方法において、好ましい紡糸温度は270℃〜295℃であり、特に好ましい紡糸温度は270〜290℃である。

0020

前記紡糸温度の条件にて紡糸ノズルから押し出した溶融樹脂を、引き取り速度200〜2000m/分の速さで引き取る。引き取り速度が200m/分未満となると、未延伸繊維の束を構成するナイロン66繊維の太さが太すぎるだけでなく、製造時に引き取りローラーに絡まりやすく、生産性が低下するおそれがある。前記引き取り速度が2000m/分よりも速くなると、ナイロン66の未延伸繊維が引き取り時に切れやすくなることで、こちらも生産性が低下するおそれがある。本発明のナイロン繊維の製造方法において、未延伸繊維の引き取り速度は300〜1800m/分が好ましく、350〜1500m/分がより好ましく、400〜1200m/分が特に好ましい。

0021

前記紡糸温度及び前記引き取り速度にてナイロン66を溶融紡糸し、未延伸繊維の束である未延伸トウを得る。未延伸トウを構成するナイロン繊維の繊度、即ち延伸工程を行う前のナイロン繊維の繊度は1.5〜100dtexである。ナイロン66を主成分とする未延伸繊維の繊度が100dtexを越えると、延伸工程を経ても水硬性材料補強用繊維に適した繊維が得られにくい。ナイロン66を主成分とする未延伸繊維の繊度が1.5dtex未満となると、溶融紡糸の際に糸切れが発生しやすく、生産性に劣るだけでなく、延伸工程において、延伸倍率が低くなり、得られるナイロン繊維の繊維強度が低くなりやすい。本発明のナイロン繊維の製造方法において、溶融紡糸後のナイロン繊維の繊度は2〜60dtexが好ましく、3〜50dtexがより好ましく、3.5〜45dtexが特に好ましい。

0022

前記の方法で得られたナイロン66を主成分とする未延伸トウに対し、延伸工程を行い、熱セット工程を行った後、所望の繊維長に切断し、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維が得られる。本発明のナイロン繊維の製造方法では、延伸工程として、10〜80℃の温水を用いて延伸した後、100〜200℃の乾燥状態で熱セット(以下において、乾式熱セットとも記す。)する。まず、10〜80℃の温水を用いた延伸工程について説明する。この延伸工程では、10〜80℃の温水で、ナイロン66を主成分とする未延伸トウを湿式延伸する。前記温度範囲に調整した温水にて湿式延伸を行うことで、ナイロン繊維を効率よく延伸できた理由は定かではないが、ナイロンの二次転位点(ガラス転位点)は乾燥状態では40〜50℃であるが、吸湿状態においては−20〜0℃であることが知られており(「繊維の百科事典」、793頁左欄2〜14行、平成14年3月25日、丸善)、前記の範囲に調整した温水槽にて湿式延伸することで、未延伸状態のナイロン繊維を効率よく延伸できるようになっていると推測される。前記湿式延伸の好ましい水温は15〜70℃であり、特に好ましい水温は20〜70℃である。

0023

前記湿式延伸において、延伸倍率は2〜6倍であることが好ましく、2.5〜5.5倍であることがより好ましく、2.8〜5.2倍であることが特に好ましい。前記延伸倍率にて湿式延伸を行うことで、前記湿式延伸の温度範囲であれば、未延伸のナイロン繊維を十分に延伸することができ、得られるナイロン繊維が水硬性材料補強用繊維として十分な単繊維強度を有するようになるだけでなく、その延伸工程において、糸切れの発生頻度も抑えられる。前記湿式延伸の延伸倍率が2倍未満であると延伸が十分に行われないため、得られるナイロン繊維の単繊維強度が低く、水硬性材料の補強用繊維として使用した際、硬化した水硬性材料の強度がそれほど向上しない可能性がある。前記湿式延伸工程において、延伸倍率が6倍を超えると、糸切れが多発するようになり、生産性が低下するおそれがある。

0024

次に、前記湿式延伸工程の後に行う、乾式熱セット工程について説明する。本発明のナイロン繊維の製造方法において、乾式熱セット工程は結晶化の促進を目的として行っている。湿式延伸されたナイロン繊維の非晶部に熱を加えることで、結晶化がさらに促進され、より強固な寸法安定性を付与できる。乾式熱セット工程は公知の乾式延伸装置を用いて行うことができる。その一例として100〜200℃になるよう雰囲気の温度を調整した乾燥空気中にて延伸処理を行う乾式延伸や、100〜200℃になるよう温度を調整した金属ロールを用いて延伸処理を行う乾式延伸が挙げられる。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法において、乾式熱セットを行う際の熱処理温度は、100〜200℃が好ましく、より好ましくは120℃〜160℃以上であり、さらに好ましくは130〜150℃である。これにより、強固な熱固定ができ、寸法安定性を出せる。

0025

本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の製造方法において、前記熱セットはナイロン繊維のフィラメント(ナイロン66を主成分とする繊維トウ)が、処理を行う際にたるまない程度の延伸倍率で行う定長熱セットが好ましく、より好ましくは0.85〜1.5倍の延伸倍率、特に好ましくは0.9〜1.4倍の延伸倍率、最も好ましくは0.95〜1.2倍の延伸倍率にて前記温度範囲満たしながら定長セットを行うことが好ましい。これにより湿熱延伸処理によって繊維内部の結晶化が進んだナイロン繊維に対し、その結晶構造を強固な熱固定ができ、寸法安定性や高い単繊維強度を出せる。

0026

(水硬性材料)
本発明の水硬性材料は、上記の方法で得られた水硬性材料補強用ナイロン繊維を一定の割合で含むように水硬性組成物に添加し、適量の水を加えて十分に混練した後硬化させたり、既に水硬性組成物と水とを混ぜ合わせた水硬性材料スラリー中に添加し、十分に混練した後硬化させたりすることで得ることができる。本発明の水硬性材料に含まれる水硬性組成物には、各種セメント細骨材、必要に応じて粗骨材混和材混和剤などが含まれる。前記水硬性組成物を構成するセメントとしては、普通ポルトランドセメント早強ポルトランドセメント超早強ポルトランドセメント中庸熱ポルトランドセメント低熱ポルトランドセメント耐硫酸塩ポルトランドセメントなど、各種セメントを使用することができる。前記水硬性組成物を構成する細骨材や粗骨材としては珪砂川砂海砂浜砂砕石が挙げられるほか、高炉スラグフェロニッケルスラグ銅スラグ電気炉酸化スラグといった各種スラグなどを使用することができ、この中から水硬性材料の用途に応じて骨材粒子径を選択して細骨材、粗骨材として使用することができる。前記水硬性組成物に含まれる混和材としては、フライアッシュ珪石粉シリカフューム高炉スラグ微粉末エトリンガイトや公知の各種膨張材を使用することができる。前記水硬性組成物に含まれる混和剤としてはAE剤AE減水剤、高機能AE減水剤、流動化剤硬化促進剤防錆剤凝結遅延剤急結剤収縮低減剤を始めとする各種混和剤を目的や用途よって適宜選択して使用することができる。

0027

本発明の水硬性材料は、前記水硬性材料補強用ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含む。すなわち、水硬性材料において、水硬性材料に対して外割り、言い換えるならば水硬性材料のうち、水硬性材料補強用ナイロン繊維を除いた各種セメント、細骨材、粗骨材、水などの成分の総和を100Vol%とし、これに対し前記水硬性材料補強用ナイロン繊維を0.01〜5Vol%含む。本発明の水硬性材料は、前記水硬性材料補強用ナイロン繊維を好ましくは0.03〜3Vol%含み、さらに好ましくは0.05〜2.5Vol%含む。本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維を前記の割合となるように水硬性材料に添加することで、水硬性組成物を硬化させて得られる水硬性材料の破壊エネルギーを高くすることができる。水硬性材料に含まれる本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の割合が0.01Vol%未満であると、水硬性材料の内部に含まれる繊維の量が少ないことから、水硬性材料の破壊エネルギーが、水硬性材料補強用ナイロン繊維を添加していない、すなわち水硬性材料補強用ナイロン繊維を添加していない水硬性材料と比較して破壊エネルギーの大きさが大差のないものとなるおそれがある。水硬性材料に含まれる本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維の割合が5Vol%を越えるとコストが高くなるだけでなく水硬性材料の圧縮強度や引っ張り強度といった各種機械強度が低下するおそれがある。

0028

本発明の水硬性材料、すなわち、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維を0.01〜5Vol%の割合で含む水硬性材料は、その引張応力試験において、ひずみが0〜4%の範囲内の引張応力の最大値(A)と、ひずみ4%のときの引張応力値(B)を比較すると、BはAの30%以上であるのが好ましく、さらに好ましくは40%以上である。前記の範囲であれば、ひずみが大きくなっても水硬性材料の引張応力(強度)を高く維持できる。

0029

前記水硬性材料の引張応力と変位面積から求められる破壊エネルギーは、本発明の水硬性材料補強用ナイロン繊維を含まない水硬性材料に比較して1.4倍以上高いことが好ましい。前記の範囲であれば、同様にひずみが大きくなっても水硬性材料の引張応力(強度)を高く維持でき、破壊されにくい水硬性材料となる。

0030

以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。

0031

測定方法
(1)メルトフローレート(MFR)
ナイロン66のメルトフローレートは、JIS K 7210に準じて、270℃、荷重21.2Nで測定した。具体的には、メルトフローレートを測定するナイロン66の試料(樹脂ペレットもしくは製造した繊維)を100℃に設定した恒温乾燥機の中で5時間保持し、十分に乾燥させる。次に、JIS K 7210に準じた押出し式プラストメーターを270℃まで昇温し、270℃になってから20分保持して温度を安定させた後、乾燥させた試料を3〜8g充填する。そして、試料の充填から360秒後にメルトフローレートの測定を開始する。同じ測定を2回繰り返し、その平均値を270℃におけるナイロン66のメルトフローレートとした。
(2)単繊維強度および破断伸度
JIS L 1015に準じて、引張試験機を用いて、試料のつかみ間隔を20mmとしたときの繊維切断時の荷重値及び伸度を測定し、それぞれ単繊維強度及び破断伸度とした。
(3)水硬性組成物の成形物の引張試験
図1に示す全長330mm、つかみ幅60mm、厚さ30mm、くびれ部分の幅30mm、同長さ80mmのダンベル型試験体1を用いて一軸引張試験により引張応力とひずみを測定した。この引張試験はJIS K 6301に準拠したものである。この試験装置10は試験体1をチャック2a,2bで固定した後、上下方向に引っ張り、引張応力を測定するとともに、変位計3a,3bによりひずみを測定する。図1の右図において数値ダンベル試験体の寸法(単位:mm)である。

0032

(実施例1〜4、比較例1〜5)
原料ポリマーとしてナイロン66(Ny66)を使用し、溶融紡糸し、延伸し、熱セットして繊維とした。条件及び結果を表1にまとめて示す。

0033

0034

0035

表1、2から明らかなとおり、実施例1〜4は単繊維強度が高く製造効率も良好であった。これに対して比較例1〜5は備考欄に記載したとおりの問題があった。

0036

(実施例5〜7、比較例6〜7)
実施例4で作成したナイロン66からなる繊維を使用してセメントモルタル打設試験を行った。実施例5〜7は前記実施例4のナイロン66からなる繊維(以下において、「ナイロン66繊維」とも記す。)を使用し、比較例6は市販品のポリプロピレン(PP)補強繊維(繊維長:6mm)、比較例7は市販されている低単繊維強度のナイロン66補強繊維(単繊維強度:3.25cN/dtex、破断伸度:86%、繊維長:12mm、以下において、「低強度ナイロン66繊維」とも記す。)を使用した。表3に使用材料を示す。

0037

0038

表3に示す使用材料を用い、セメント70質量部、フライアッシュ30質量部、細骨材40質量部、増粘剤0.2質量部、減水剤0.9質量部、水39.1質量部及び表4に示す量の補強繊維を均一に混合して水硬性材料スラリーを作製した。表4に示す補強繊維の繊維含有率(Vol%)は、補強繊維を除く、セメント、フライアッシュ、細骨材、増粘剤、減水剤及び水の合計体積100%に対する繊維の体積割合である。混合方法は、セメントとフライアッシュと細骨材の粉体をまず1分間空練し、次に水と減水剤と増粘剤を加えて3分間混合し、次に補強繊維を加えて1.5分×2回混合した。このようにして得られた水硬性材料スラリーを型に入れ水中養生し、図1に示すダンベルを作成した。このダンベルを使用して引張試験をし、初期ひび割れ強度と破壊エネルギー求めた。破壊エネルギーは図2に示すように、応力度×変位=破壊エネルギー量として表せる。評価結果は表4にまとめて示す。

0039

0040

表4から明らかなとおり、実施例5〜7は破壊エネルギーが高かった。これに対して比較例6〜7は破壊エネルギーが低かった。これはナイロン実施例5〜7で用いたナイロン66からなる水硬性材料補強用繊維は単繊維強度が高く、かつ水硬性組成物との親和性が高いからと推察される。

0041

(実施例8〜9、比較例8)
実施例5及び6と同様にセメントモルタル打設試験を行った。実施例8は実施例5で用いたナイロン66からなる繊維(繊維長10mm)の添加量を1.25〜2.25Vol%まで振った試験、実施例9は実施例5で用いたナイロン66からなる繊維(繊維長20mm)の添加量を1.25〜2.25Vol%まで振った試験、比較例8は比較例6で用いたポリプロピレン繊維(繊維長6mm)の添加量を1.25〜2.25Vol%まで振った試験とした。実施例8の結果は図3に示し、実施例9の結果は図4に示し、比較例8の結果は図5に示す。また、ひずみが0〜4%の範囲内の引張応力の最大値(A)とひずみ4%のときの引張応力値(B)の関係は、実施例8は表5、実施例9は表6、比較例8は表7に示すとおりであり、実施例8、9のB/Aの値が高いことが分かる。

0042

0043

0044

実施例

0045

図3〜5及び表5〜7から明らかなとおり、実施例8〜9はひずみ4%のときの引張応力は高く、B/A値も高く、破壊エネルギー(タフネス)が高いことが分かる。

0046

本発明のナイロン66を主成分とする水硬性材料補強用繊維は、セメントモルタル、コンクリート、セメントボード等の水硬性材料の補強繊維として有用である。また、本発明のナイロン繊維の製造方法は、水硬性材料の補強繊維に適した単繊維強度及び伸度を有するナイロン66繊維を低コストで効率よく製造することができる。

0047

1試験体
2a,2bチャック
3a,3b変位計
10 試験装置

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