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課題
解決手段
概要
背景
分子鎖の片末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、片末端誘導体という)や、分子鎖の両末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、両末端誘導体という)(以下、まとめて官能性ポリマーという)は、一般に界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として使用される。例えば、ポリマーの重合に有用な界面活性剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアクリル誘導体、アミン誘導体、イソシアネート誘導体が挙げられる。また表面処理剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアルコール誘導体、アルコキシ誘導体、クロル誘導体、シラザン誘導体等が挙げられる。表面処理剤の中でも、防汚性能や滑り性を主目的とする場合は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算での数平均分子量が2,000〜8,000程度を有する物が好ましいとされてきた。
一般的に片末端誘導体と両末端誘導体とは異なる性質を有する。例えば、両末端誘導体は鎖長延長やゲル化を引き起こすが、片末端誘導体ではそのような反応を引き起こさない。また、いずれの分子鎖末端にも官能基を有さない、いわゆる無官能性ポリマーを組成物中に含有すると、硬化した時に硬化不足のような問題を生じる場合がある。従って、官能性ポリマー成分の含有率を高めることは産業上重要である。なお、本明細書において「官能性」とは反応性官能基を有することを意味し、「無官能性」とは反応性官能基を有しないことを意味する。
また、−O(CF2O)p(CF2CF2O)q(CF2CF2CF2O)r(CF2CF2CF2CF2O)s−を主鎖構造として有するパーフルオロポリエーテル化合物の分子鎖片末端に官能性基を有するポリマーは製造が困難である(前記式において、p、q、r、sは互いに独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300である)。特許文献1は、両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の前駆体を部分フッ素化することにより、片末端官能性、両末端官能性、および無官能性パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を得た後、蒸留によって分離精製することにより、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を特定量含む組成物を製造することを記載している。しかし特許文献1に記載の方法は各成分の沸点差を利用して分離するため、それぞれの分子量分布が狭くないと適用できない。分子量の上限は蒸留できるサイズまでであり、実施例での上限は数平均分子量で1,000程度にとどまっている。そのため高分子量成分への適用は難しい。
より高分子量の片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物が製造できれば、表面処理剤、潤滑剤、及びエラストマー材料として有用である。そこで、幅広い分子量範囲のポリマーに適用でき、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を製造できる方法の開発が望まれていた。
特許文献2及び3には、まず、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化して、片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物(片末端官能性ポリマーの含有量が高い)を製造した後、副生した無官能性ポリマーを除去することを記載している。特許文献2及び3は、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化する際に、フッ素ガスの量を調整してフッ素化を制限し両末端官能性ポリマーの残存を少なくすることで、片末端官能性ポリマーを多く含んだ組成物を得ることができると記載している。しかし、該方法では同時に無官能性ポリマーも多く生成する。特許文献2及び3は、無官能性ポリマーの除去方法として、イオン交換樹脂による吸着法や薄膜蒸留法を記載している。
特許文献4は磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関し、両末端にピペロニル基等の官能基を導入したフッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率の高い画分を選択することにより、平均官能基導入率が高い、特には95%以上であるフッ素系潤滑剤を製造することを記載している。特許文献4は上記方法により、両末端官能性ポリマーの末端変性率を90%程度から99%に向上させると記載している。
特許文献5は、末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物をフッ素化溶剤に溶解し、この溶液をシリカゲル等と接触させて官能性基を有するポリマーをシリカゲルに吸着させ、ろ過等によって無官能性ポリマーが溶解した溶液と固定相を分離する。その後、固定相をフッ素化溶剤とアルコールとの混合溶媒に接触させてろ過し、片末端官能性ポリマーを主成分とするポリマーを分離することを記載している。
特許文献6は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有カルボン酸化合物の分離方法が記載されている。末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物とフッ素原子含有非極性溶剤と極性固定相とを混合し、無官能性ポリマーが溶解したフッ素原子含有非極性溶剤と固定相とを分離すること、その後、極性移動相を用いて極性固定相から片末端官能性ポリマー及び両末端官能性ポリマーを分離することを記載している。極性移動相は、フッ素原子含有極性溶媒、又は、フッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子含有極性溶媒の組合せ、フッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子非含有極性溶媒の組合せであると記載しており、フッ素原子含有極性溶媒として、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、及びフッ素原子含有スルホン酸、フッ素原子非含有極性溶媒として、フッ素原子非含有カルボン酸、フッ素原子非含有フェノール、及びフッ素原子非含有スルホン酸といった酸性極性溶媒を記載している。
概要
片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を、酸性極性化合物でないフッ素系溶剤のみを使用して効率よく製造する方法を提供する。一般式(2):R1−Rf−R2COOHで示され、数平均分子量1,000〜8,000を有する片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、一般式(3):HOOCR2−Rf−R2COOHで示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物であって、一般式(2)のパーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上である組成物を製造する方法であって、一般式(3)の両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物のカルボキシル基の一部をフッ素化してパーフルオロポリエーテル化合物の混合物を得る工程をさらに含む製造方法。なし
目的
そこで、幅広い分子量範囲のポリマーに適用でき、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を製造できる方法の開発が望まれていた
効果
実績
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請求項1
下記一般式(2)で示され、数平均分子量1,000〜8,000を有する片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物であって、一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の合計100モル%に対する、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上である組成物を製造する方法であり、R1−Rf−R2COOH(2)HOOCR2−Rf−R2COOH(3)[各式中、R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である−O(CF2O)p−(C2F4O)q−(C3F6O)r−(C4F8O)s−(4)(p、q、r、sは、互いに独立に、0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)]下記[1’]及び[2]の工程 [1’]前記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物を極性固定相に接触させて、各化合物を極性固定相に吸着させる工程[2]前記工程[1’]の後、該極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程を含み、前記溶剤が、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)、前記製造方法。
請求項2
下記一般式(2)で示され、数平均分子量1,000〜8,000を有する片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物及び下記一般式(1)で示される無官能パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物であって、一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の合計100モル%に対する、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上である組成物を製造する方法であり、R1−Rf−R1(1)R1−Rf−R2COOH(2)HOOCR2−Rf−R2COOH(3)[各式中、R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である−O(CF2O)p−(C2F4O)q−(C3F6O)r−(C4F8O)s−(4)(p、q、r、sは、互いに独立に、0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)]下記[1]及び[2]の工程[1]前記一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物と、酸素原子又は窒素原子を含んでいてよい、非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤との溶液を、極性固定相に接触させ、一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を該極性固定相に吸着させる工程[1’]の後、該極性固定相と液相とを分離して、上記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を液相中に回収する工程と、[2]前記工程[1]の後、該極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程を含み、前記工程[2]における溶剤が、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)、前記製造方法。
請求項3
Rfが下記式(5)(p、qは互いに独立に5〜200の整数であり、r、sは互いに独立に0〜100の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい)で表される、請求項1または2記載の製造方法。
請求項4
前記工程[1]におけるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物において、式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物が有する末端基の合計100モル%に対するR1基の割合が40モル%〜80モル%である、請求項2又は3記載の製造方法。
請求項5
前記工程[1]における溶剤が、パーフルオロアルカン、パーフルオロモノエーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルアミン、パーフルオロケトン、及びパーフルオロ芳香族炭化水素からなる群から選択される1種または2種以上である、請求項2〜4のいずれか1項記載の製造方法。
請求項6
前記工程[2]における溶剤が、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、ハイドロフルオロアルカン、フッ素原子含有アルケン、フッ素原子含有芳香族、フッ素原子含有ケトン、及びフッ素原子含有エステルからなる群から選択される1種または2種以上である、請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法。
請求項7
前記工程[1’]及び[1]の前に、前記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物のカルボキシル基の一部をフッ素化して前記パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を得る工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項記載の製造方法。
請求項8
前記極性固定相が酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、化学修飾シリカゲルおよび珪藻土からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。
請求項9
前記極性固定相がシリカゲルである、請求項8記載の製造方法。
技術分野
0001
本発明は、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含有する組成物を収率良く製造する方法に関する。
背景技術
0002
分子鎖の片末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、片末端誘導体という)や、分子鎖の両末端に官能性基を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物(以下、両末端誘導体という)(以下、まとめて官能性ポリマーという)は、一般に界面活性剤や表面処理剤などの各種誘導体の前駆体として使用される。例えば、ポリマーの重合に有用な界面活性剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアクリル誘導体、アミン誘導体、イソシアネート誘導体が挙げられる。また表面処理剤の前駆体として、上記官能性ポリマーのアルコール誘導体、アルコキシ誘導体、クロル誘導体、シラザン誘導体等が挙げられる。表面処理剤の中でも、防汚性能や滑り性を主目的とする場合は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算での数平均分子量が2,000〜8,000程度を有する物が好ましいとされてきた。
0003
一般的に片末端誘導体と両末端誘導体とは異なる性質を有する。例えば、両末端誘導体は鎖長延長やゲル化を引き起こすが、片末端誘導体ではそのような反応を引き起こさない。また、いずれの分子鎖末端にも官能基を有さない、いわゆる無官能性ポリマーを組成物中に含有すると、硬化した時に硬化不足のような問題を生じる場合がある。従って、官能性ポリマー成分の含有率を高めることは産業上重要である。なお、本明細書において「官能性」とは反応性官能基を有することを意味し、「無官能性」とは反応性官能基を有しないことを意味する。
0004
また、−O(CF2O)p(CF2CF2O)q(CF2CF2CF2O)r(CF2CF2CF2CF2O)s−を主鎖構造として有するパーフルオロポリエーテル化合物の分子鎖片末端に官能性基を有するポリマーは製造が困難である(前記式において、p、q、r、sは互いに独立に0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300である)。特許文献1は、両末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物の前駆体を部分フッ素化することにより、片末端官能性、両末端官能性、および無官能性パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を得た後、蒸留によって分離精製することにより、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を特定量含む組成物を製造することを記載している。しかし特許文献1に記載の方法は各成分の沸点差を利用して分離するため、それぞれの分子量分布が狭くないと適用できない。分子量の上限は蒸留できるサイズまでであり、実施例での上限は数平均分子量で1,000程度にとどまっている。そのため高分子量成分への適用は難しい。
0005
より高分子量の片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物が製造できれば、表面処理剤、潤滑剤、及びエラストマー材料として有用である。そこで、幅広い分子量範囲のポリマーに適用でき、片末端官能性パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を製造できる方法の開発が望まれていた。
特許文献2及び3には、まず、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化して、片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物(片末端官能性ポリマーの含有量が高い)を製造した後、副生した無官能性ポリマーを除去することを記載している。特許文献2及び3は、両末端官能性ポリマーを部分フッ素化する際に、フッ素ガスの量を調整してフッ素化を制限し両末端官能性ポリマーの残存を少なくすることで、片末端官能性ポリマーを多く含んだ組成物を得ることができると記載している。しかし、該方法では同時に無官能性ポリマーも多く生成する。特許文献2及び3は、無官能性ポリマーの除去方法として、イオン交換樹脂による吸着法や薄膜蒸留法を記載している。
0006
特許文献4は磁気記録媒体用フッ素系潤滑剤の製造方法に関し、両末端にピペロニル基等の官能基を導入したフッ素系潤滑剤を、超臨界状態の二酸化炭素を移動相としシリカゲルを固定相とするクロマトグラフィーに付し、複数の画分に分別し、得られた画分から官能基導入率の高い画分を選択することにより、平均官能基導入率が高い、特には95%以上であるフッ素系潤滑剤を製造することを記載している。特許文献4は上記方法により、両末端官能性ポリマーの末端変性率を90%程度から99%に向上させると記載している。
0007
特許文献5は、末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物をフッ素化溶剤に溶解し、この溶液をシリカゲル等と接触させて官能性基を有するポリマーをシリカゲルに吸着させ、ろ過等によって無官能性ポリマーが溶解した溶液と固定相を分離する。その後、固定相をフッ素化溶剤とアルコールとの混合溶媒に接触させてろ過し、片末端官能性ポリマーを主成分とするポリマーを分離することを記載している。
0008
特許文献6は、パーフルオロ(ポリ)エーテル基含有カルボン酸化合物の分離方法が記載されている。末端官能基としてカルボキシル基を有する片末端官能性ポリマー、両末端官能性ポリマー、及び無官能性ポリマーの混合物とフッ素原子含有非極性溶剤と極性固定相とを混合し、無官能性ポリマーが溶解したフッ素原子含有非極性溶剤と固定相とを分離すること、その後、極性移動相を用いて極性固定相から片末端官能性ポリマー及び両末端官能性ポリマーを分離することを記載している。極性移動相は、フッ素原子含有極性溶媒、又は、フッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子含有極性溶媒の組合せ、フッ素原子含有非極性溶剤及びフッ素原子非含有極性溶媒の組合せであると記載しており、フッ素原子含有極性溶媒として、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、及びフッ素原子含有スルホン酸、フッ素原子非含有極性溶媒として、フッ素原子非含有カルボン酸、フッ素原子非含有フェノール、及びフッ素原子非含有スルホン酸といった酸性極性溶媒を記載している。
先行技術
0009
特表2009−532432号公報
特開2012−233157号公報
特開2012−72272号公報
特開2001−164279号公報
特表2015−535017号公報
特許第5668888号公報
発明が解決しようとする課題
0010
しかし、特許文献2及び3に記載の、イオン交換樹脂による吸着方法では、ポリマーに対して例えば約2倍量のイオン交換樹脂を必要とし、さらには比較的高濃度の塩酸を必要とする。したがって量産には不向きであり製造効率が悪い。また、作業者や環境に対して悪影響を及ぼす危険性が大きい。さらに、イオン交換樹脂から溶出してくるイオン分や有機物の除去に苦慮することがある。一方、薄膜蒸留での分離は、沸点差を用いて分離するものであるため分離能が悪い。また、分子量が大きいほど官能基の有無による沸点差が小さくなるため分離がより難しくなる。従って、製品の性能が劣るという問題がある。
0011
また、特許文献4に記載の方法は、無官能性パーフルオロポリエーテル化合物を除去して両末端官能性ポリマーを高濃度で含む組成物を得るためには有効な手段であるが、片末端官能性ポリマーを高濃度で含む組成物を選択的に且つ効率的に得ることはできない。特許文献5に記載の方法はアルコールを使用する。フッ素主鎖に隣接するカルボキシル基は、常温でアルコールと反応してアルキルエステルになることが知られており、カルボキシル基末端のままでポリマーを取り出すことができない。特許文献6に記載の方法は酸性極性化合物を使用する。酸性極性化合物は取扱いに注意を要したり、金属部品への腐食の可能性が懸念されるため好ましくない。
0012
本発明は、上記事情に鑑み、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を、酸性極性化合物でないフッ素系溶剤のみを使用して効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0013
本発明者らは鋭意検討した結果、下記式(1)〜(3)
R1−Rf−R1 (1)
R1−Rf−R2COOH (2)
HOOCR2−Rf−R2COOH (3)
の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物それぞれの、極性固定相への吸着力の違い、非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤への溶解性の違い、部分フッ素化化合物からなる溶剤への溶解性の違い、および温度による吸着性の違いに着目し、これらを組み合わせることによって、目的とする片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を簡便に得る方法を見出した。
0014
尚、本発明において「片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物」とは、組成物に含まれる一般式(2)で示される片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物と、任意で含まれる一般式(1)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物との合計100モル%に対する、一般式(2)で示される片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上、特には80モル%以上、さらに特には90モル%以上、更には95モル%以上であることを意味する。
0015
また、本発明において「部分フッ素化化合物からなる溶剤」とは、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である溶剤を意味する。該溶剤の詳細は後述する。
尚、本発明において「部分フッ素化化合物からなる溶剤」は酸性極性化合物ではない。本発明の製造方法では、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、及びフッ素原子含有スルホン酸等の酸性極性化合物は使用しない。
0016
また、本発明において「非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤」とは、酸素原子又は窒素原子を含んでいてよい、非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物(すなわち、炭素原子に結合する水素原子の全てがフッ素原子に置換されている化合物)からなる溶剤を意味する。該溶剤の詳細は後述する。
0017
すなわち本発明は、
下記一般式(2)で示され、数平均分子量1,000〜8,000を有する片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物であって、一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の合計100モル%に対する、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上である組成物を製造する方法であり、
R1−Rf−R2COOH (2)
HOOCR2−Rf−R2COOH (3)
[各式中、R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である
−O(CF2O)p−(C2F4O)q−(C3F6O)r−(C4F8O)s−
(4)
(p、q、r、sは、互いに独立に、0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)]
下記[1’]及び[2]の工程
[1’]前記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物を極性固定相に接触させて、各化合物を極性固定相に吸着させる工程
[2]前記工程[1’]の後、極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程
を含み、前記溶剤が、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)、前記製造方法を提供する。
0018
また本発明は、
下記一般式(2)で示され、数平均分子量1,000〜8,000を有する片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物及び下記一般式(1)で示される無官能パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物であって、一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の合計100モル%に対する、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の割合が70モル%以上である組成物を製造する方法であり、
R1−Rf−R1 (1)
R1−Rf−R2COOH (2)
HOOCR2−Rf−R2COOH (3)
[各式中、R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である
−O(CF2O)p−(C2F4O)q−(C3F6O)r−(C4F8O)s−
(4)
(p、q、r、sは、互いに独立に、0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてもよい)]
下記[1]及び[2]の工程
[1]前記一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物と、酸素原子又は窒素原子を含んでいてよい、非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤との溶液を、極性固定相に接触させ、一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を該極性固定相に吸着させる工程[1’]の後、該極性固定相と液相とを分離して、上記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を液相中に回収する工程と、
[2]前記工程[1]の後、極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程
を含み、前記工程[2]における溶剤が、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子で置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子で置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)、前記製造方法を提供する。
発明の効果
0019
本発明の製造方法によれば、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物と、必要に応じて無官能のパーフルオロポリエーテル化合物との混合物から、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を高収率且つ効率よく提供することができる。
0020
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の組成物は、下記一般式(2)で示され、数平均分子量が1,000〜8,000である片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含み、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物、又は、下記一般式(3)で示される両末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物及び下記一般式(1)で示される無官能パーフルオロポリエーテル化合物を含んでいてもよい組成物である。
本発明で目的とする組成物は、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の割合が、一般式(1)、(2)、(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の合計100モル%に対し、70モル%以上である組成物である。該組成物中に含まれる一般式(1)及び一般式(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の量は少ない方が好ましく、0モル%であってよい。
R1−Rf−R1 (1)
R1−Rf−R2COOH (2)
HOOCR2−Rf−R2COOH (3)
[各式中、R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、Rfは下記式(4)で表されるパーフルオロポリエーテル鎖である
−O(CF2O)p−(C2F4O)q−(C3F6O)r−(C4F8O)s−
(4)
(p、q、r、sは、互いに独立に、0〜200の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい)]
0021
本発明において数平均分子量とは、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法]
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.3質量%のHCFC−225溶液)
また、数平均分子量は19F−NMR測定から計算されることもできる。該方法は、上記式(1)〜(3)で示される化合物において、R1、R2、およびRfの構造が明確であり、19F−NMR測定で各々のピークが検出できる場合に使用することができる。即ち、末端基R1、R2とポリマー主鎖部分Rfの積分値量を測定することで数平均分子量を算出することができる。19F−NMR測定条件は一般的なものでよく、従来公知の方法に従い適宜選択されればよい。
0022
R1は炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3であり、特に好ましくはパーフルオロメチル基である。R2は炭素数1〜6のパーフルオロアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜3であり、中でもパーフルオロメチレン基が好適である。
0023
上記パーフルオロポリエーテル化合物とは、(CF2O)、(C2F4O)、(C3F6O)、及び(C4F8O)から選ばれる1以上の繰返し単位が複数個結合された、ポリフルオロオキシアルキレン構造を有する化合物である。特には、該繰返し単位を10〜300個、好ましくは15〜200個、さらに好ましくは20〜100個、より好ましくは25〜80個有するのがよい。
0024
上記各繰返し単位は直鎖型及び分岐型のいずれであってもよい。例えば下記の単位が挙げられる。
−CF2O−
−CF2CF2O−
−CF2CF2CF2O−
−CF(CF3)CF2O−
−CF2CF2CF2CF2O−
−C(CF3)2O−
0025
Rfは特には、下記式(5)で表される。
(p、qは互いに独立に5〜200の整数であり、r、sは互いに独立に0〜100の整数であり、かつ、p+q+r+s=10〜300であり、括弧内に示される各単位はランダムに結合されていてよい)
0026
以下、本発明の製造方法について、詳細に説明する。
0027
本発明は、第一に、上記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物を出発物質として用い、上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を製造する方法を提供する。該方法は下記工程[1’]工程[2]を含む。
工程[1’]:前記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を含む混合物を極性固定相に接触させて、各化合物を極性固定相に吸着させる工程。
工程[2]: 前記工程[1’]の後、極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程。該工程における上記溶剤とは、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)。
0028
本発明は、第二に、上記一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物を出発物質として用い、上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を製造する方法を提供する。該方法は下記工程[1]及び[2]を含む。
工程[1]:
前記一般式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物と、酸素原子又は窒素原子を含んでいてよい、非極性又は低極性のパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤との溶液を、極性固定相に接触させ、一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を該極性固定相に吸着させる工程[1’]の後、該極性固定相と液相とを分離して、上記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を液相中に回収する工程。
工程[2]:
前記工程[1]の後、極性固定相を50℃以上の溶剤中で加熱した後、50℃以上の温度下で、極性固定相と液相とを分離し、次いで、該液相から溶剤を留去させて上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上で含有する組成物を残留物として得る工程
該工程[2]における溶剤は、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(ただし、酸性極性化合物を除く)。
0029
上記の通り、本発明の第一及び第二の方法は温度及び溶剤を特定したことを特徴とする。これにより、片末端カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を製造することができる。
0030
本発明の製造方法で出発物質とするパーフルオロポリエーテル化合物の混合物は、特には、数平均分子量1,000〜8,000を有する。該混合物は、例えば、分子鎖両末端にカルボキシル基を有する、上記式(3)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の末端にあるカルボキシル基の一部をフッ素ガスを用いて部分フッ素化することにより製造することができる。
0031
上記部分フッ素化においてフッ素化される基に選択性はなく、上記式(1)〜(3)の各々で示される化合物の混合物が生成する。上記式(1)〜(3)の各々で示される化合物の生成比は特に制限されるものでないが、概ね統計確率的な比で生成する。該比率は、該混合物中のパーフルオロ化合物が有する全末端基の合計個数に対するR1末端基の個数割合(以下、平均フッ素化率という、通常、モル%で示す)で示される。本発明において「フッ素化率」とは、上記式(1)〜(3)の各々で示されるパーフルオロポリマー化合物の混合物における該化合物が有する末端基の合計100モル%に対する、R1で示される基のモル%である。該フッ素化率と混合物中における各成分の含有比は、例えば、下記表1に示される。
0032
本発明において必要とされるのは、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物である。特には、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を70モル%以上、特には80モル%以上、さらに特には90モル%以上、更には96モル%以上で含む組成物を得ることを目的とする。このように片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を得るためには、好ましくは、混合物のフッ素化率は40モル%〜80モル%の範囲がよく、より好ましくはフッ素化率50モル%〜80モル%、更に好ましくは60モル%〜80モル%であるのがよい。フッ素化率が上記下限値より低いと、出発物質である混合物中に両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の含有率が多くなる。また上記上限値より大きいと、混合物中にカルボキシル基を有さないパーフルオロポリエーテル化合物の含有率が多くなる。これにより片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の回収率が低くなるため好ましくない。尚、フッ素化率は、上記部分フッ素化反応において供給するフッ素ガスの量を適宜調製することにより制御することができる。
0034
本発明の方法における極性固定相とは、固定相の表面に、−OH基、アミノ基、シアノ基、アルキル基、カルボニル基などの極性基を有する固定相である。本発明において、極性固定相は、好ましくは、酸化アルミニウム、シリカゲル、酸化マグネシウム、アルミニウムシリケート、マグネシウムシリケート、化学修飾シリカゲル、及び珪藻土からなる群から選択される。特に好ましくはシリカゲルである。シリカゲルとしては、例えば、非修飾シリカゲル、アミノ基含有シリカゲル、及びシアノ基含有シリカゲルなどの化学修飾シリカゲルが挙げられる。特には非修飾シリカゲルが好ましい。極性固定相は市販のものを使用することができる。BET法による比表面積20m2/g以上を有する極性固定相が好適に使用でき、特に好ましくは100m2/g以上を有するものがよい。
0035
極性固定相の量は、上記カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物が吸着するのに十分な量であればよく、限定されるものではない。例えば、パーフルオロポリエーテル化合物の混合物100質量部に対して10〜1,000質量部、好ましくは20〜300質量部がよい。
0036
先ず、上記パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を、酸素原子又は窒素原子を含んでいてよい、非極性又は低極性の、パーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤中、極性固定相に接触させる。該工程は、混合物と溶剤と極性固定相とをフラスコ中で混合して行うことができる。これらを一定時間撹拌して、混合物を極性固定相に接触させる。これにより、上記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物は、末端にカルボキシル基を有するため、極性固定相に吸着される(上記工程[1’])。また、パーフルオロポリエーテル化合物の混合物を溶剤に溶解させ、カラムに充填した極性固定相の上部から該溶液を流してもよい。一定時間かけて流すことにより、上記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物は、極性固定相に吸着される(上記工程[1’])。
パーフルオロポリエーテル化合物の混合物が上記一般式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を含む場合、該式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物は、極性部分がないため極性固定相に吸着されず、溶剤に溶解した状態で存在する。そのため、上記工程[1’]の後、該極性固定相と液相とを公知の方法で分離することにより、上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を液相中に回収し、上記一般式(2)及び(3)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を含むパーフルオロポリエーテル化合物の混合物と上記式(1)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物とを分離させることができる(上記工程[1])。分離する手段は特に制限されるものでなく、ろ過、カラムクロマトグラフィーなど、通常の方法で行えばよい。
0037
上記パーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤の量は、上記パーフルオロポリエーテル化合物の混合物100質量部に対して、10〜10,000質量部、好ましく100〜2,000質量部がよい。混合物を含む溶液を極性固定相と接触させる温度は、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃がよい。ただし、該温度は溶剤の沸点未満の温度である。極性固定相と接触させる時間は、カルボキシル基含有パーフルオロポリエーテル化合物が極性固定相に吸着するのに十分な時間以上であれば良い。例えば1分以上、好ましくは3分以上接触させるのが良い。特には、混合物と溶剤と固定相をフラスコ内で混合し、撹拌して吸着させる場合には10〜60分程度撹拌するのが好ましい。また、カラム内に固定相を充填して、混合物を溶解した溶液を流して吸着させる場合には5〜30分間かけて流すのが好ましい。
0038
本発明においてパーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤は非極性又は低極性である。尚、該パーフルオロ炭化水素化合物は酸性極性化合物ではない。パーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤は、好ましくは、常圧(1,013hPa)において沸点300℃以下を有するパーフルオロ化合物がよい。例えば、パーフルオロアルカン、パーフルオロモノエーテル、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルアミン、パーフルオロケトン、及びパーフルオロ芳香族炭化水素からなる群から選択され、1種単独であっても2種以上を併用してもよい。
0039
パーフルオロ炭化水素化合物からなる溶剤として、さらに詳細には、
パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、パーフルオロウンデカン、パーフルオロドデカンなどの、炭素数3〜12のパーフルオロアルカン類;
パーフルオロジプロピルエーテル、パーフルオロジブチルエーテル、パーフルオロ−2−トリフルオロメチル−4−オキサノナン、パーフルオロジペンチルエーテルなどの、炭素数6〜10のパーフルオロモノエーテル類;
GaldenSV−90、HGaldenZV100、GaldenHT55、GaldenHT70、GaldenHT90、GaldenHT110、GaldenHT135(以上、ソルベイ・ソレクシス社商品名)、CF3OCF2CF2OCF3、CF3OCF2OCF2CF2OCF3、CF3OCF2CF2OCF2CF2OCF3、CF3OCF2CF2OCF2OCF2CF2OCF3、CF3OCF2OCF2CF2OCF2CF2OCF3などの、炭素数3〜10のパーフルオロポリエーテル類;
パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロトリプロピルアミン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロトリアミルアミン(パーフルオロトリペンチルアミン)などの、炭素数3〜15のパーフルオロアルキルアミン類;
ヘキサフルオロアセトン、パーフルオロ−2−ブタノン、パーフルオロ−1−メチル−3−ペンタノンなどの炭素数3〜10のパーフルオロケトン類;及び
ヘキサフルオロベンゼンなどの炭素数6〜12のパーフルオロ芳香族炭化水素が例示される。
0040
工程[2]では、上記工程により得られた、一般式(2)および(3)の各々で表されるパーフルオロポリエーテル化合物が吸着している極性固定相に、特定の極性溶剤を加え、50℃以上の温度下で化合物と極性固定相を一定時間接触させる。これにより、一般式(2)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物が優先的に溶剤に溶解する。これは、上記一般式(2)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物の極性固定相に対する吸着力が、分子量が同じである場合、50℃以上の温度下において、上記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物の極性固定相に対する吸着力の半分程度であるためである。本発明の製造方法では、この吸着力の差を利用して一般式(2)で表されるパーフルオロポリエーテル化合物を選択的に分離する。
その後、極性固定相と液相とを分離させる。該工程も50℃以上の温度下で行われる。分離する手段は、上記温度下で分離できれば特に制限されるものでなく、ろ過、カラムクロマトグラフィーなどで行えばよい。例えば、50℃以上に加温したろ過器で行うことができる。得られた液相中には上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物がで溶解しているため、ストリップ操作等により溶剤を留去して、上記一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含有する組成物を残留物として取り出すことができる。
0041
上記工程[2]で使用する溶剤の量は、出発物質である、パーフルオロポリエーテル化合物の混合物100質量部に対して、10〜10,000質量部、好ましく100〜5,000質量部がよい。
0042
上記工程[2]で使用する溶剤と極性固定相とを接触させる温度は、使用する溶剤の沸点にもよるが、50℃以上、好ましくは50℃〜200℃、さらに好ましくは50℃〜150℃がよい。該温度は溶剤の温度であればよく、また、場合によりカラム内を加圧してもよい。加温は、溶剤と極性固定相をフラスコ内で加熱しながら混合して行っても良いし、極性固定相を充填したカラムを加温しながら、該カラム内に溶剤を流すことで行ってもよい。温度が低いと、目的とする片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の収率が低下する可能性がある。一方、温度が高すぎると、抽出の効率は良くなるが、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の含有量が増加する場合がある。
0043
溶剤と極性固定相とを接触させる時間は、一般式(2)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物を溶剤中へ溶離させるのに十分な時間以上であれば良い。例えば1分以上、好ましくは3分以上接触させるのが良い。特には、溶剤と極性固定相とをフラスコ内で混合して接触させる場合には10〜70分程度撹拌するのが好ましい。また、極性固定相を充填したカラム内に溶剤を流して接触させる場合には5〜60分間程度をかけて流すのが好ましい。
0044
上記の通り、工程[2]における溶剤は、炭素原子に結合する水素原子の一部がフッ素原子に置換されている炭化水素化合物であり、エーテル結合を有してよく、炭素原子に結合する水素原子の残部がフッ素原子以外のハロゲン原子に置換されていてよく、不飽和結合を有してよい炭化水素化合物である(本明細書中において、部分フッ素化合物からなる溶剤という)。該溶剤は極性を有するが、酸性極性化合物ではない。従って、部分フッ素化合物からなる溶剤から、フッ素原子含有アルコール、フッ素原子含有カルボン酸、及びフッ素原子含有スルホン酸等の酸性極性化合物は除かれる。
0045
該部分フッ素化合物からなる溶剤は、好ましくは、常圧(1,013hPa)における沸点300℃以下を有する化合物がよい。例えば、クロロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロモノエーテル、ハイドロフルオロアルカン、フッ素原子含有アルケンおよびフッ素原子含有芳香族、フッ素原子含有ケトン、フッ素原子含有エステルからなる群から選択される溶剤である。これらは1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
0046
上記部分フッ素化合物からなる溶剤として、より詳細には、
R−113(C2F3Cl3)、2,2,3,3−テトラクロロヘキサフルオロブタンなどの、炭素数2〜4のクロロフルオロカーボン類;
HCFC225(CF3CF2CHCl2、CClF2CF2CHClF)などの、炭素数3〜6のハイドロクロロフルオロカーボン類;
C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5、C2F5CF(OCH3)C3F7、CF3CH2OCF2CHF2、CHF2CF2CF2CF2CH2OCH3、CF3CHFCF2OCH2CF2CHF2、CHF2CF2CH2OCHFCF3、CHF2OCH2CF2CHFCF3、CF3CHFCF2OCH2CF2CF3、CHF2OCH2CF2CHF2、CF3CHFCF2OCH2CF3、CHF2CF2OCH2CF2CF3、CF3CH2OCH2CF3、CF3CH2OCF2CHF2、CF3CHFCF2OCH3、CHF2OCH2CF2CF3、HCF2CF2OC4H9などの、炭素数3〜7のハイドロフルオロモノエーテル類;
CF3CH2CF2CH3、CF3CHFCHFC2F5、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、CF3CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH3、CF3CF2CF2CF2CF2CHF2などの、炭素数3〜8のハイドロフルオロアルカン類;
C4F9CH=CH2、C6F13CH=CH2、C8F17CH=CH2などの、炭素数3〜10のフッ素原子含有アルケン;
m−キシレンヘキサフルオリド(1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン)、(1,1,1−トリフルオロメチル)ベンゼン、モノフルオロベンゼンなどの、炭素数6〜12のフッ素原子含有芳香族炭化水素;
メチルペンタデカフルオロヘプチルケトン、トリフルオロメチルエチルケトン、フェニルヘプタフルオロプロピルケトン、メチルヘプタフルオロプロピルケトン、フェニルトリフルオロメチルケトンなどの、炭素数2〜10のフッ素原子含有ケトン;及び
トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、CF3CF2COOCH3、CF3CF2COOCH2CH3などの、炭素数3〜10のフッ素原子含有エステル
などが挙げられる。
0047
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。下記実施例及び比較例において「沸点」とは常圧(1013hPa)での沸点を指すものとする。
0048
下記実施例における原料混合物として、下記式(a)、(b)、(c)の各々で示されるパーフルオロポリエーテル化合物の混合物A及びBを使用した。
CF3−O(CF2O)p−(C2F4O)q−CF3 (a)
CF3−O(CF2O)p−(C2F4O)q−CF2COOH (b)
HOOCCF2−O(CF2O)p−(C2F4O)q−CF2COOH (c)
(数平均分子量=約3700、p/q比=1.0であった。なお、ポリマー中に、(CF2CF2CF2O)構造および(CF2CF2CF2CF2O)構造を少量含有しているが、微量であるため無視するものとし、本実施例では表記しない)
該ポリマー混合物A及びBは、下記式(6)で表される、両末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物の末端カルボキシル基の一部をフッ素化して製造されたものである。
HOOCCF2−O(CF2O)p−(C2F4O)q−CF2COOH (6)
(数平均分子量=約3700、p/q比=1.0)
0049
ポリマー混合物A及びBの各々におけるフッ素化率を19F−NMRにて算出した。
ポリマー混合物Aの部分フッ素化率は70モル%であり、ポリマー混合物Aは、上記式(a)で示される化合物のモル%:上記式(b)で示される化合物のモル%:上記式(c)で示される化合物のモル%≒49:42:9(合計100モル%)で構成される混合物であった。
ポリマー混合物Bの部分フッ素化率は50モル%であり、ポリマー混合物Bは、上記式(a)で示される化合物のモル%:上記式(b)で示される化合物のモル%:上記式(c)で示される化合物のモル%≒25:50:25(合計100モル%)で構成される混合物であった。
尚、ポリマー混合物A及びポリマー混合物Bにおいて、上記式(a)、(b)、及び(c)の各々で示される化合物の各分子量全体に対する一分子中の末端カルボキシル基の数の相違による分子量の差は無視できる程度に小さいものであるため、上記各化合物の比率(モル%)は、各化合物の質量比率(質量%)とほぼ等価である。
0050
数平均分子量は、下記条件で測定したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の数平均分子量である。
[ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法]
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.3質量%のHCFC−225溶液)
0051
[実施例1]
工程[1]
温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、上記ポリマー混合物A 3.00g、パーフルオロヘキサン(沸点:56℃)30.0g、及びシリカゲル60(関東化学製)3.00gを仕込み、23℃で30分混合した。その後、反応液をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ1.51gの精製物を回収した。該精製物を19F−NMRで解析したところ、上記式(a)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物約99モル%(約1.49g)と、上記式(b)で示されるパーフルオロポリエーテル化合物 約1モル%(約0.02g)との混合物であった。
最初に仕込んだポリマー混合物Aの質量(3.00g)から上記で回収した精製物の質量(1.51g)を差し引くと、シリカゲルに吸着している混合物の質量は1.49gであった。
0052
工程[2]
上記工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、Novec7200(3M社製ハイドロフルオロモノエーテル;C4F9OC2H5、沸点76℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、60℃で1時間混合した。その後、60℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをNovec7200 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0053
[実施例2]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、Novec7300(3M社製ハイドロフルオロモノエーテル;C2F5CF(OCH3)CF(CF3)2、沸点98℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、85℃で1時間混合した。その後、60℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをNovec7300 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0054
[実施例3]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、AC6000(旭硝子社製ハイドロフルオロアルカン;C6F13C2H5、沸点114℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、95℃で1時間混合した。その後、60℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをAC6000 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0055
[実施例4]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、m−キシレンヘキサフルオリド(沸点116℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、100℃で1時間混合した。その後、60℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをm−キシレンヘキサフルオリド 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0056
[実施例5]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、アサヒクリンAK225(旭硝子社製ハイドロクロロフルオロカーボン;HCFC225、沸点54℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、50℃で1時間混合した。その後、50℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをm−キシレンヘキサフルオリド10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0057
[比較例1]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルとパーフルオロヘキサン(沸点56℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、50℃で1時間混合した。その後、50℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0058
[比較例2]
上記実施例1の工程[1]を繰り返した。該工程[1]で洗浄されたシリカゲルと、Novec7200(3M社製ハイドロフルオロモノエーテル;C4F9OC2H5、沸点76℃)27.0gとを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、23℃で1時間混合した。その後、ろ過器(23℃)に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをNovec7200 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた精製物を19F−NMRで解析した。得られた組成物の回収量と該組成物中の各化合物の含有率(モル%)を表2に示す。
0059
0060
表2に示される通り、本発明の方法では、目的とする片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物(b)を選択的に抽出できた。また、実施例1〜5および比較例1及び2すべてにおいて、工程[2]で得た組成物中には上記式(a)で示される化合物は含まれていなかった。すなわち、上記式(a)で示される化合物の全量が工程[1]で選択的に分離された。また、工程[1]で回収した混合物は、式(a)で示される化合物 約99モル%と式(b)で示される化合物 約1モル%から成るものであったことから、工程[1]では式(a)で示される化合物だけが概ね選択的に、かつ全量分離されることができる。
0061
上記実施例1で記載した通り、工程[2]での出発物質であるシリカゲルに吸着していた混合物の質量は1.49gであった。従って、例えば、実施例3では工程[2]での組成物の回収量が1.06gであり、工程[2]にて最初にシリカゲルに吸着していた化合物の全質量のうち71質量%を回収できた(回収率71質量%)。
比較例1は工程[2]で使用する溶剤をパーフルオロ化合物とした例である。該比較例1で得た組成物の収量は0.15gであり、工程[2]における回収率10.1質量%であり、実施例に比べて極めて低かった。
比較例2は工程[2]で混合物と溶剤とを混合した後、加熱せずに混合した例である。該比較例2で得た組成物の収量は0.57gであり、工程[2]における回収率38.3質量%であり、実施例に比べて低かった。
0062
工程[2]での出発物質であったシリカゲルに吸着している混合物1.49gは、表1の結果から統計確率的に推計すると、式(b)で示される化合物:式(c)で示される化合物=42:9(モル%比)から成ると考えられる。すなわち、式(b)で示される化合物1.23gと式(c)で示される化合物0.26gから成る混合物である。従って、例えば、実施例3について、工程[2]で得られた組成物における化合物(b)の収量は1.06g×0.97=1.03gであるから、工程[2]における化合物(b)の収率は1.03/1.23×100=84質量%となる(≒82モル%)。すなわち、本発明の製造方法では、式(b)で示される化合物を選択的に且つ高収率で回収することができる。
また、例えば実施例3において、工程[1]及び[2]の全体での組成物の回収率(35%)から、工程[1]及び[2]の全体での化合物(b)の収率を求めると、(1.06×0.97)/(3.00×0.42)×100=82質量%(≒82モル%)となる。該収率は、上記した工程[2]における化合物(b)の収率(84質量%)と実質的に同等である。これからも、本発明の製造方法では、式(b)で示される化合物を高い選択的且つ高収率で回収できることがわかる。
0063
[実施例6]
工程[1]
温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに、上記ポリマー混合物B 3.00g、パーフルオロヘキサン30.0g、シリカゲル60(関東化学製)3.00gを仕込み、23℃で30分混合した。その後、反応液をメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをパーフルオロヘキサン10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮したところ0.78gの精製物を回収した。得られた精製物を19F−NMRで解析したところ、上記式(a)で示される化合物約97モル%と、上記式(b)で示される化合物 約3モル%とから成る混合物であった。
0064
工程[2]
上記工程1で洗浄されたシリカゲルと、Novec7300 27.0gを、温度計、攪拌機、ジムロートを付した100mLの4つ口フラスコに入れて、85℃で1時間混合した。その後、60℃に加温したろ過器に反応液を入れてメンブランフィルターで濾過し、フィルター上に残ったシリカゲルをNovec7300 10gで洗浄した。ろ液を減圧下で濃縮して得られた組成物を19F−NMRで解析した。表3にポリマー回収量とポリマー成分含有率を示す。
0065
0066
[実施例7]
下コックを付し、下コックの手前にガラスフィルターを装備した内径20mm、長さ300mmのガラス製カラムに、シリカゲル60(関東化学社製)20gを充填した。
工程[1]
カラムの下コックを閉じた状態で、パーフルオロヘキサン40.0gをカラムの上部から静かに投入した。次いで、下コックを開け、上記ポリマー混合物A 20.0gをパーフルオロヘキサン80.0gで溶解した溶液を、カラムの上部から約10分かけて流した。その後、パーフルオロヘキサン50.0gをカラム上部から流してカラム内のシリカゲルを洗浄した。その後、下コックを閉じた。カラム下部から流出した溶液を減圧下で濃縮したところ10.5gの精製物を回収した。得られた精製物を19F−NMRで解析したところ、上記式(a)で示される化合物約99モル%と、上記式(b)で示される化合物 約1モル%とから成る混合物であった。
実施例
0067
工程[2]
上記カラム内にAC6000(旭硝子社製ハイドロフルオロアルカン;C6F13C2H5、沸点114℃)35gをカラムの上部から静かに投入した。その後、カラムを95℃に加温し、下コックを開けると同時に、カラムの上部から95℃に予備加熱したAC6000400.0gを約40分かけて静かに流した。カラム下部から流出した溶液を減圧下で濃縮したところ7.6g(回収率=38質量%)の精製物を回収した。得られた精製物を19F−NMRで解析したところ、上記式(b)で示される化合物約98モル%と、上記式(c)で示される化合物 約2モル%とから成る混合物であった。
0068
本発明の製造方法によれば、片末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテル化合物を高濃度で含む組成物を、高収率且つ簡便に製造することができる。また本発明の製造方法は、幅広い分子量の化合物を含むポリマーに適用することができる。従って、表面処理剤、潤滑剤、エラストマー材料等に使用する原料の精製に有用である。