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技術 重ね接合継手及びその製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 徳永仁寿富士本博紀阪本晃樹
出願日 2017年3月1日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2017-038228
公開日 2017年12月21日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-221973
状態 特許登録済
技術分野 板の接続
主要キーワード 照射直径 本ビード 合わせ面近傍 多点接合 外周輪郭 溶融境界 レーザ接合 平均ビッカース
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重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月21日)のものです。
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図面 (7)

課題

重ね合わされた複数の鋼板で構成され、高いパワー密度を有する光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、継手強度に優れ、信頼性の向上した接合継手を提供する。

解決手段

重ね接合継手の高いパワー密度を有する光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、その溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有するものとし、再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、凝固再加熱部は、再溶融凝固部の周囲に位置し、溶融境界を含んでおり、再溶融凝固部より軟化しているようにする。

概要

背景

近年、自動車分野では、低燃費化CO2排出量の削減のため、車体を軽量化することや、衝突安全性の向上のため、車体部材高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材や各種部品などに高強度鋼板を使用することが有効である。

このような高強度鋼板よりなる車体の組立部品取付けなどの工程では、主として、抵抗発熱を利用したスポット溶接が広く普及しているが、近年、スポット溶接に替えて、一部で高パワー密度を有する光線(以下、光線とする。)による接合法を用い、点状に接合を行う技術が自動車の製造に適用されつつある。

光線による点状の接合は、スポット溶接より高速施工が可能で、スポット溶接のように分流の影響を受けないため、接合点ピッチを短くできるというメリットがあり、多点接合による車体剛性の向上も可能である。

一方、光線による点状の接合継手の強度は、従来の抵抗スポット溶接と同程度、もしくは低下する傾向があり、炭素量の高い980MPa以上の高強度鋼板の場合は、継手強度のうち、十字引張強度が低下する問題があった。
接合継手の品質指標の一つである継手強度には、せん断方向に引張荷重負荷して測定する引張せん断強さTSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。光線による接合継手において、特に、CTSは、従来の抵抗スポット溶接と同程度、又は、低下する傾向があり、炭素量の多い高強度鋼板の場合には、CTSが低くなることがあった。
このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。

このような状況のもと、光線による接合において、継手強度を向上させる技術として、接合部の近傍に、他の接合部を形成する技術(特許文献1参照)、閉ループ状本ビードの内側に、本ビードを焼き戻すことを目的とした他のビードを形成する技術(特許文献2、3参照)が知られている。

このようなループ状に光線による接合部を形成する技術では、接合部の接合面積が小さくなり、引張せん断強さ(TSS)が低くなることが懸念される。これに対して、ループ状の接合部より接合面積が広い、鋼板表面側から平面視したとき、外側輪郭略円形状で、その中心まで溶融凝固している光線による接合部を鋼板に形成して、継手強度を向上させる技術が報告されている(特許文献4参照)。

概要

重ね合わされた複数の鋼板で構成され、高いパワー密度を有する光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、継手強度に優れ、信頼性の向上した接合継手を提供する。重ね接合継手の高いパワー密度を有する光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、その溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有するものとし、再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、凝固再加熱部は、再溶融凝固部の周囲に位置し、溶融境界を含んでおり、再溶融凝固部より軟化しているようにする。

目的

このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

重ね合わされた複数の鋼板で構成され、光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、前記光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、前記再溶融凝固部より軟化していることを特徴とする重ね接合継手。

請求項2

前記凝固再加熱部のうち、前記鋼板の合わせ面の前記溶融境界から、前記再溶融凝固部に向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値は、Hv390以下であり、かつ、前記再溶融凝固部のビッカース硬さの平均値よりHv70以上低いことを特徴とする請求項1に記載の重ね接合継手。

請求項3

前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合継手。

請求項4

前記複数の鋼板が、表面処理皮膜を有する鋼板を1枚以上含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重ね接合継手。

請求項5

複数の鋼板を重ね合わせ、高パワー密度を有する光線を照射して前記複数の鋼板を接合する重ね接合継手の製造方法において、重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成し、次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させることを特徴とする重ね接合継手の製造方法。

請求項6

前記光線の再照射は、前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmとなるように行われることを特徴とする請求項5に記載の重ね接合継手の製造方法。

請求項7

前記複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いることを特徴とする請求項5又は6に記載の重ね接合継手の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、重ね接合継手とその製造方法に関し、特に、自動車車体に用いられる高強度鋼板の重ね接合継手とその製造方法に関するものである。

背景技術

0002

近年、自動車分野では、低燃費化CO2排出量の削減のため、車体を軽量化することや、衝突安全性の向上のため、車体部材高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材や各種部品などに高強度鋼板を使用することが有効である。

0003

このような高強度鋼板よりなる車体の組立部品取付けなどの工程では、主として、抵抗発熱を利用したスポット溶接が広く普及しているが、近年、スポット溶接に替えて、一部で高パワー密度を有する光線(以下、光線とする。)による接合法を用い、点状に接合を行う技術が自動車の製造に適用されつつある。

0004

光線による点状の接合は、スポット溶接より高速施工が可能で、スポット溶接のように分流の影響を受けないため、接合点ピッチを短くできるというメリットがあり、多点接合による車体剛性の向上も可能である。

0005

一方、光線による点状の接合継手の強度は、従来の抵抗スポット溶接と同程度、もしくは低下する傾向があり、炭素量の高い980MPa以上の高強度鋼板の場合は、継手強度のうち、十字引張強度が低下する問題があった。
接合継手の品質指標の一つである継手強度には、せん断方向に引張荷重負荷して測定する引張せん断強さTSS)と、剥離方向に引張荷重を負荷して測定する十字引張強さ(CTS)がある。光線による接合継手において、特に、CTSは、従来の抵抗スポット溶接と同程度、又は、低下する傾向があり、炭素量の多い高強度鋼板の場合には、CTSが低くなることがあった。
このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。

0006

このような状況のもと、光線による接合において、継手強度を向上させる技術として、接合部の近傍に、他の接合部を形成する技術(特許文献1参照)、閉ループ状本ビードの内側に、本ビードを焼き戻すことを目的とした他のビードを形成する技術(特許文献2、3参照)が知られている。

0007

このようなループ状に光線による接合部を形成する技術では、接合部の接合面積が小さくなり、引張せん断強さ(TSS)が低くなることが懸念される。これに対して、ループ状の接合部より接合面積が広い、鋼板表面側から平面視したとき、外側輪郭略円形状で、その中心まで溶融凝固している光線による接合部を鋼板に形成して、継手強度を向上させる技術が報告されている(特許文献4参照)。

先行技術

0008

特開2010−012504号公報
特開2012−240086号公報
国際公開第2012/050097号
特開昭60−68185号公報

発明が解決しようとする課題

0009

特許文献4に開示の技術は、光線による接合部を点状としているので、引張せん断強さ(TSS)の向上に有効であるが、十字引張強さ(CTS)を更に向上させることが望まれていた。
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、継手強度に優れ信頼性の向上した重ね接合継手を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、鋼板に光線による接合を実施し、光線による点状の接合部を形成した接合継手のCTSを更に向上させるための手段について鋭意検討した。
重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、鋼板と溶融凝固部との溶融境界の近傍に応力が集中し破断に至り易いため、十分なCTS値を確保できないと考えられる。そこで、溶融境界近傍を熱処理することにより、その部分の靭性を向上させることを着想し、そのための熱処理箇所及び熱処理方法について種々調査した。

0011

その結果、点状の接合部の溶融凝固部の内側に光線を環状に照射して、照射部を再溶融凝固させるとともに、その際の熱によって鋼板と溶融凝固部との溶融境界付近を焼き戻すように再加熱することで、CTSが向上することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。

0012

(1)重ね合わされた複数の鋼板で構成され、光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記光線による点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、
該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように、かつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように位置しており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、前記再溶融凝固部より軟化している
ことを特徴とする重ね接合継手。

0013

(2)前記凝固再加熱部のうち、前記鋼板の合わせ面の前記溶融境界から、前記再溶融凝固部に向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値は、Hv390以下であり、かつ、前記再溶融凝固部のビッカース硬さの平均値よりHv70以上低いことを特徴とする上記(1)に記載の重ね接合継手。

0014

(3)前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmであることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の重ね接合継手。

0015

(4)前記複数の鋼板が、表面処理皮膜を有する鋼板を1枚以上含むことを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の重ね接合継手。

0016

(5)複数の鋼板を重ね合わせ、高パワー密度を有する光線を照射して前記複数の鋼板を接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて、点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成し、
次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させる
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。

0017

(6)前記光線の再照射は、前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が1.0〜3.0mmとなるように行われることを特徴とする上記(5)に記載の重ね接合継手の製造方法。

0018

(7)前記複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いることを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の重ね接合継手の製造方法。

0019

ここで、光線による点状の接合部とは、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して点状に形成された溶融凝固部によって鋼板が相互に接合された部分をいう。

発明の効果

0020

本発明によれば、溶融凝固部の溶融境界近傍に、靱性に優れる凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができ、接合継手の信頼性を向上させることができる。そして、本発明の接合継手を自動車部品に適用することで、自動車部品の信頼性を向上させることができる。

図面の簡単な説明

0021

光線による点状の接合部を有する接合継手を模式的に示す図であり、(a)は接合継手の断面の構造を示し、(b)は接合継手のビッカース硬さ分布を示す。
光線による点状の接合部の内側に、環状に光線を照射した接合継手について、図1と同様に模式的に示す図である。
光線による点状の接合部の内側に、環状に光線を照射した接合継手であって、図2と異なる例について、図2と同様に模式的に示す図である。
本発明の接合継手の断面を説明する図である。
光線による点状の接合部の形成の概要を示す斜視図であり、(a)は異なる照射直径で光線を照射する概要図を示し、(b)は集光面積を広くして光線を照射する概要図を示し、(c)は形成された光線による点状の接合部の斜視図を示す。
光線による点状の接合部の熱処理の概要を示す斜視図であり、(a)は光線を照射する概要図を示し、(b)は再溶融凝固部と凝固再加熱部とを有する光線による点状の接合部の斜視図を示す。

0022

まず、本発明に至った検討の経緯及び本発明の基本的構成について説明する。
光線による点状の接合部を有する重ね接合継手において、更に、継手強度を向上させることが望まれていた。重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、鋼板と溶融凝固部との境界(溶融境界)の近傍、特に、鋼板合わせ面と溶融境界との交点近傍に応力が集中し、破断に至り易い。
そこで、光線による点状の接合部における溶融境界近傍の応力が集中する部分に熱処理することを検討した。

0023

まず、重ね合わされた2枚の鋼板(引張強さ1500MPa級、板厚1.6mm)の一方の外表面に光線を照射して、照射部分を溶融凝固させて、直径が約6.0mmで、2枚の鋼板を重ね方向に柱状に貫通する溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成した(図1(a)参照)。
次に、この溶融凝固部の鋼板との溶融境界の内側に、ビーム径0.4mmの光線を、直径3.0mmの円周に沿って一周再照射して、照射部分を再溶融凝固させて、溶融凝固部の内側にシリンダー状の再溶融凝固部を有するとともに、その周囲に、再溶融凝固部3aの熱により再加熱された凝固再加熱部3bを有する光線による点状の接合部を形成した(図2(a)参照)。
なお、再照射の際には、再溶融凝固部の内側端部が、鋼板合わせ面2cの延長線より鋼板2a側であって、鋼板合わせ面と溶融境界との交点がビッカース硬さの測定点焼戻し温度範囲に加熱される位置になるように光線の照射条件を調整した。
そして、それぞれの光線による接合部を含む接合継手の板厚方向断面において、鋼板合わせ面近傍位置のビッカース硬さの変化を測定した。
図1、2の(b)にビッカース硬さの変化を概略図で示す。

0024

ビッカース硬さは、図1、2の(a)図に示すように、点線Xの位置(板厚方向のビッカース硬さの測定位置)において、鋼板表面と平行方向に沿って測定範囲L1にわたってビッカース硬さを測定した。点線Xは、板厚方向において、鋼板2a、2bの合わせ面2cから鋼板2a側に0.1mmの位置である。また、L2は溶融凝固部内のビッカース硬さの測定範囲である。

0025

図1(b)に示すように、溶融凝固部3に光線を再照射する熱処理を施す前の接合継手1のビッカース硬さは、溶融凝固部3の内側(L2)において、HV460程度と硬く、ほぼ一定となっている。L2のすぐ外側の鋼板熱影響部は、A3点以上の高温域まで加熱され、焼入れられるので、硬さが大きい。さらにその外側の鋼板熱影響部は、焼戻されて軟化部となっている。

0026

これに対し、溶融凝固部3の内側に環状に光線を再照射し、シリンダー形状に形成した再溶融凝固部3aの周囲に凝固再加熱部3bを有する接合継手1では、ビッカース硬さの測定点が、光線の再照射により焼戻し温度範囲に加熱されるため、ビッカース硬さは、図2(b)に示すように、溶融境界の前後の範囲が焼戻されて、溶融境界の内側0.5mmの範囲の平均硬さがHV300程度にまで低下した。

0027

そして、両者の接合継手の十字引張強さ(CTS)を調査したところ、溶融凝固部の内側に光線を再照射して形成された凝固再加熱部を有する接合継手の方の十字引張強さが高くなることが判明した。これより、図2(a)に示す光線による点状の接合部が再溶融凝固部より軟化している凝固再加熱部を有するものは、溶融境界周囲が焼き戻されて硬さが低減し、靱性が向上することを知見した。また、鋼板の組合せを変えても、光線による点状の接合部が再溶融凝固部より軟化している凝固再加熱部を有するものでは、CTSの向上が確認された。

0028

本発明は、以上のような検討過程を経て上記(1)に記載の発明に至ったものであり、そのような本発明について、さらに、必要な要件や好ましい要件について順次説明する。

0029

[接合継手]
本発明の接合継手10は、図4の断面図に示すように、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、鋼板20a側から鋼板20aの限られた領域内に光線を照射し、光線による点状の接合部を形成して、複数の鋼板20a、20bを光線による重ね接合をしたものである。

0030

<光線による点状の接合部>
光線による点状の接合部は、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、光線の照射により溶融凝固した点状の溶融凝固部30を有しており、さらに、溶融凝固部30は、内部に該溶融凝固部が再溶融した再溶融凝固部30aと、再溶融凝固部によって溶融凝固部が凝固後に再加熱された凝固再加熱部30bとを有している。なお、図4では、鋼板側の熱影響部は示していない。
ここで、光線による点状の接合部とは、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して点状に形成された溶融凝固部によって鋼板が相互に接合された部分をいう。

0031

(点状の溶融凝固部)
光線による点状の接合部に形成される溶融凝固部30は、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して形成された溶融凝固部である。
溶融凝固部30の幅W(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの溶融凝固部の円相当径)は、継手強度等に応じて調整すればよく、特に限定されるものでないが、5〜12mmが例示される。好ましくは、6〜10mmである。
溶融凝固部30は、接合部を形成する複数の鋼板20a、20bに跨って形成されていれば、光線照射側と反対側の鋼板の外表面まで貫通していても、貫通していなくてもよい。

0032

ここで、点状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の外周輪郭円形状又多角形状などの限られた領域に限定されており、かつ、その領域の中心まで溶融凝固していることを意味する。円形状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。また、鋼板に光線を渦巻状に、外周側から中心側又は中心側から外周側に向かって照射して形成した溶融凝固部の形状も点状に含まれる。

0033

(再溶融凝固部)
再溶融凝固部30aは、溶融凝固部30と鋼板との溶融境界40の内側の溶融凝固部30に光線を環状の軌跡に沿って再照射し、照射部分を再溶融凝固させて得られるシリンダー状の形状を有する部分であり、溶融凝固したままの組織となっている。なお、環状とは、輪郭が円形状又多角形状を意味する。円形状とは、再溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。

0034

再溶融凝固部30aは、溶融境界40とは重ならないように形成されており、その際、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の円相当の中心と、再溶融凝固部30aの円相当の中心とは、一致する必要はない。
また、再溶融凝固部30aは、接合継手10の板厚方向において、その重ね合わせ方向の先端部50が重ね合わされた鋼板を貫通しないように形成されている。下板の裏面まで貫通すると、接合部のひずみが大きくなり、凝固割れが発生しやすくなるので、貫通しないように形成する。

0035

再溶融凝固部30aの重ね合わせ方向の先端部50の位置や再溶融凝固部30aの溶融境界40側の外側輪郭の位置は、鋼板合わせ面20c近傍の溶融凝固部を再加熱するために重要であり、後述するように、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点60近傍の溶融凝固部が、400℃以上Ac1点温度以下の再加熱温度になるように設定される。
図2では、再溶融凝固部3a(30a)の先端部の位置が鋼板合わせ面2c(20c)の延長線より光線照射側(上方)にある場合を示したが、図3に、先端部の位置が鋼板合わせ面2cの延長線より下方にある場合を示す。

0036

再溶融凝固部30aは、鋼板の重ね合わせ面20cの近傍にある溶融凝固部を再加熱すればよいため、その先端部50の位置は、鋼板合わせ面20cの延長線より光線照射側(上方)でも、下方でもどちらでも良いが、安定して効果を得るためには、先端部の位置が鋼板合わせ面20cの延長線より下方にある場合の方が望ましい。また、鋼板の3枚重ねの場合は、鋼板の合わせ面20cが2ヶ所形成される。このとき再溶融凝固部30aは、重ね合わせ面の延長線を横切らない深さでもよいが、望ましくは、1ヶ所の重ね合わせ面の延長線を横切ることが望ましく、2ヶ所の重ね合わせ面の延長線を横切ることがさらに望ましい。

0037

シリンダー状に形成される再溶融凝固部30aの径方向の幅Wb(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの環状の再溶融凝固部の径方向の厚み)は、前記交点60近傍の溶融凝固部が、400℃以上Ac1点温度以下の再加熱温度になるために必要な熱量を与えるために、前記先端部の位置との関係で決められるが、0.3mm以上とすることが好ましい。幅Wbの上限は特に限定されないが、2.0mm以下であることが望ましい。

0038

(凝固再加熱部)
凝固再加熱部30bは、光線による点状の接合部の溶融凝固部30に光線を環状に再照射し、再溶融凝固部30aの周囲に溶融境界を含むように形成される部分であり、再溶融凝固部30aより軟化している部分を含むものである。
凝固再加熱部30bは、再溶融凝固部30aからの距離によって熱影響が異なる。再溶融凝固部30aに隣接した部位では、母材融点以下Ac1点温度以上に再加熱されるため、焼入組織となる。それより離れると、Ac1点温度以下の再加熱温度となり、焼き戻された組織となる。

0039

重ね接合継手では、鋼板の剥離方向に荷重が負荷されると、鋼板の合わせ面近傍の溶融境界に応力が集中し、破断に至るため、少なくとも鋼板合わせ面20aと溶融境界40との交点60の周囲に位置する溶融凝固部が、400℃以上Ac1点温度以下の再加熱温度となるように凝固再加熱部30bを形成して、その部分の靱性を向上させる。

0040

具体的には、鋼板合わせ面20c近傍の溶融凝固部は、応力が集中し易いため、ビッカース硬さの平均値を、Hv390以下とし、また、再溶融凝固部30aのビッカース硬さの平均値よりHv70以上低くすることが好ましい。特に、CTSの向上のためには、鋼板合わせ面20cと前記溶融境界の交点60から内側に少なくとも0.5mmの範囲が400℃以上Ac1点温度以下の温度に加熱されることが望ましく、そのためには、鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点60から前記再溶融凝固部までの最短距離Wcを、1.0〜3.0mmとすることが好ましい。
なお、再溶融凝固部はミクロ組織の観察により判別することができるので、Wcは光線による接合後の接合部の断面から測定することができる。

0041

再溶融凝固部30a、及び、凝固再加熱部30bのビッカース硬さの平均値の測定では、中心軸Cを含む板厚方向の断面において、鋼板合わせ面20cと溶融境界40の交点60同士を結んだ線上を測定する。そして、溶融凝固部30の中央位置、及び、交点60近傍を含む3点以上等間隔でビッカース硬さを測定し、平均値を求める。具体的な測定条件の一例として、試験力0.3kgで、両端から0.15mmピッチで硬さを測定し、0.15mm、0.30mm、0.45mmでの硬さの平均値を求める。また、鋼板の重ね合わせ面が複数あるときは、それぞれの鋼板の合わせ面での交点同士を結んだ線上で測定する。

0042

<複数の鋼板>
本発明の接合継手に用いる鋼板は、特に限定されるものでなく、用途に応じた機械特性等が得られる化学成分や組織の鋼板とすればよい。また、本発明の接合継手に炭素含有量を0.10質量%以上の高強度鋼板を適用すると、十字引張強さの向上が顕著であり、このような鋼板を対象とすることが好ましい。

0043

鋼板の板厚は、特に限定されるものでなく、0.5〜3.2mmの範囲とすることができる。板厚が0.5mm未満であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、継手強度は板厚に影響されるので、接合継手全体の強度向上の効果が小さくなり、接合継手の適用範囲が限定される。また、板厚が3.2mm超であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、部材の軽量化の観点から、接合継手の適用範囲が限定される。

0044

鋼板には、少なくとも接合箇所の両面又は片面に表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上含んでいてもよい。表面処理皮膜は、めっき皮膜を含むものであり、更に、塗装皮膜等を含むものとすることができる。めっき皮膜としては、例えば、亜鉛めっき、アルミニウムめっき、亜鉛・ニッケルめっき、亜鉛・鉄めっき、亜鉛・アルミニウムマグネシウム系めっき等であり、めっきの製造方法としては、溶融めっき電気めっき等である。

0045

鋼板は、少なくとも接合継手を形成する部分が板状であればよく、全体が板でなくてもよい。例えば、断面ハット形の特定の形状にプレス成型された部材のフランジ部などを含むものである。重ね合わせる鋼板の枚数は、2枚に限らず、3枚以上としてもよい。また、各鋼板の、種類、成分組成及び板厚は、全て同じとしても、相互に異なっていてもよい。また、別々の鋼板から構成されるものに限定されず、1枚の鋼板を管状などの所定の形状に成形して、端部を重ね合わせたものの重ね接合継手であってもよい。

0046

以下、これに限定されるものではないが、自動車での重ね接合継手の例を示す。
ピラーの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0047

Bピラーの場合、引張強さが270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、440〜980MPa級非めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0048

サイドシルの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0049

フロアメンバーの場合、270〜590MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアパネルと、440〜1800MPa級非めっき鋼板もしくは合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアメンバーとの2枚重ねでの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0050

[重ね接合継手の製造方法]
次に、本発明の重ね接合継手の製造方法について説明する。
まず、(a)複数の鋼板を重ね合わせ、重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って前記領域の中心まで溶融凝固させて、点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成することについて、図5を用いて説明する。

0051

図5は、限られた領域内(照射予定箇所)に光線を照射することによる点状の接合部の形成の概要を示す斜視図である。図5(a)は、異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、図5(b)は、集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、図5(c)は、形成された光線による点状の接合部を示す。

0052

図5(a)には、光線70を照射する方法の一例を示しており、異なる照射直径で光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80aを点線で示しており、照射直径の異なる3つの照射予定箇所80aが示されている。

0053

光線による点状の接合部の形成では、まず、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、一方の鋼板20a側から光線70を照射して光線による接合を行う。光線70の照射では、光線70の照射側から照射予定箇所80aを平面視したとき、白抜き矢印で示すように、略円状に光線を走査する。その際に、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行っても、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行ってもよい。光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り反時計回りのいずれでもよい。

0054

また、光線70の照射側からの照射予定箇所80aを平面視した場合、光線70の照射予定箇所80aの外周形状を円としているが、楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状、渦巻状の形状としてもよい。光線70の照射予定箇所80aを渦巻状の形状とした場合、光線70の照射は、渦巻状の照射予定箇所の外側の端部から、内側の端部に向かって、又は、渦巻状の照射予定箇所の内側の端部から、外側の端部に向かって、渦巻状に光線を走査して行う。渦巻の方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。

0055

図5(a)では、直径の異なる3つの照射予定箇所を例示したが、光線の焦点面積や、光線による点状の接合部の接合面積に応じて、直径の異なる照射予定箇所の数を増減させることができる。

0056

図5(b)には、光線70を照射する方法の他の例を示しており、集光面積を広くして光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80bを点線で示している。そして、光線70の照射は、光線の集光面積を広くして、1回で行われる。

0057

図5(a)、図5(b)に示すように光線70を照射することで、図5(c)に示すように、光線による点状の接合部の溶融凝固部30を形成できる。

0058

また、複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いる場合、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行うことが好ましい。これにより、接合部内に欠陥を生じさせる気体となった皮膜を、溶融部中心付近に集め、攪拌除去することが容易となる。なお、光線70の照射を、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行っても、光線70の集光面積を広くして行っても、気体となった皮膜を溶融部から除去することができるため、これらの光線の照射方法を採用することを排除するものでない。

0059

次に、(b)溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱(熱処理)して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して前記凝固再加熱部を前記再溶融凝固部より軟化させることについて説明する。

0060

光線による点状の接合部の熱処理では、図5で示す方法等により得られた点状の接合部の溶融凝固部30の温度が所定温度以下、例えば、鋼板ではMs点−50℃(Ms点:マルテンサイト変態開始温度)以下となるまで待機し、その後に、鋼板20a側から溶融凝固部30の内側に光線70を照射して行う。内側とは、溶融凝固部30の溶融境界を除く溶融凝固部30内をいう。

0061

溶融凝固部30の温度をMs点−50℃以下とすると、鋼板中に一定量以上のマルテンサイトが生成されるため、点状の接合部の溶融凝固部30を熱処理することで、このマルテンサイトが焼戻されて軟化し、継手強度が向上する。また、点状の接合部の溶融凝固部30の熱処理を開始するときの溶融凝固部30の温度は、Ms点−250℃以下とするのがさらに好ましい。Ms点−250℃で、一般の鋼板はマルテンサイト変態を終了するからである。

0062

次に、光線による点状の接合部の熱処理における光線70の照射について、図6を用いて説明する。
図6(a)には、再溶融予定箇所に光線70を照射する方法の一例を示しており、光線70の照射予定箇所90を点線で示している。
光線70の照射では、白抜き矢印で示すように略円状に光線を走査する。その際に、光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。

0063

略円状の光線70の照射予定箇所90は、光線70の照射により形成されたシリンダー形状の再溶融凝固部30aにより、溶融境界40と鋼板合わせ面20cの交点60の周囲が焼き戻される位置に設定される。

0064

また、光線70の照射側から光線による接合部を平面視した場合、光線70の照射予定箇所90の外周形状を円としているが、溶融凝固部の外側輪郭に合わせて楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状としてもよい。また、光線70の照射回数は、再溶融凝固部の幅Wbに応じて、1回または複数回としてもよい。

0065

図6(a)に示すように光線70を照射することで、図6(b)に示すように、光線70の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、環状に再溶融凝固部30aが形成され、その周囲に凝固再加熱部30bが形成される。そして、その際に溶融境界を含む前記交点近傍が焼き戻され、靱性が向上する。

0066

また、光線による点状の接合部の形成、及び、光線による点状の接合部の溶融境界の熱処理において、光線の照射方法は、同じ照射方法でも、異なる照射方法でもよい。例えば、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部を形成し、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部の溶融境界を熱処理しても、集光面積を広くして光線を照射して、点状の接合部の形成し、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部の溶融境界を熱処理してもよい。

0067

次に、光線70の照射のうち、凝固再加熱部30bの加熱温度について説明する。
光線による点状の接合部の溶融凝固部30のうち鋼板合わせ面20aと溶融境界40との交点60から、少なくとも0.5mmの範囲の領域が焼き戻されるように再加熱するとよい。

0068

交点60から0.5mm以上の範囲を焼き戻すには、この範囲の最高到達温度がAc1点以下の所定の温度(例えば、400℃以上700℃以下)となる条件で、光線70を溶融凝固部30の内側に照射する。交点60近傍の温度は、鋼板表面で測定した温度を代表値として用いることができる。温度は、放射温度計熱電対を用いて測定することができる。

0069

このような温度とするには、予め、再溶融凝固部の外側の円相当直径Wa又は形成される再溶融凝固部の幅Wbと、光線の再照射中の前記範囲の温度との関係や、光線の再照射時間と前記範囲の温度との関係等を調査しておき、再溶融凝固部の外側の円相当直径Wa、再溶融凝固部の幅Wb、光線の再照射時間等を調整することで行うことができる。また、交点60から0.5mmの範囲の領域を400℃以上700℃以下とするには、交点60から前記再溶融凝固部までの最短距離Wcが1.0〜3.0mmとなるように光線の照射を調整することが例示される。好ましくは、1.0〜2.0mmである。

0070

次に、光線による点状の接合部の形成、及び、光線による点状の接合部の熱処理で使用する光線について説明する。
光線による接合は、特に限定されるものでないが、リモートレーザ接合とすることが好ましい。リモートレーザ接合は、ロボットアームの先端に取り付けたガルバノミラーにより、光線を接合打点の間を高速で移動させて接合するものであり、接合の作業時間の大幅な短縮が可能になる。また、接合に用いる光線としては、例えば、CO2光線、YAG光線、ファイバー光線、DISK光線、半導体光線などの光線を用いることができる。

0071

また、光線による接合の条件は、従来の条件を採用することができる。例えば、光線出力2〜30kW、集光面のビーム径0.1〜8.0mm、接合速度0.1〜60m/minの接合条件で行うことができる。

0072

また、自動車の組み立ては、複数の接合工程からなるが、1つの工程内で本発明の製法を実施する場合、1つ1つの接合点に対して、光線照射による接合と再溶融を実施してもよいが、接合後から再溶融開始までの冷却の待ち時間を低減するため、より好適には、光線照射により複数の溶融接合を実施し、その後、光線照射により複数の再溶融を実施するとことが好ましい。また複数の接合工程で本発明の製法を実施する場合、光線照射による溶融接合工程と、光線照射による再溶融工程を別々の工程とすることで、冷却の待ち時間を無くすことができる。

0073

次に、本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。

0074

表1に示す鋼板を2枚重ね合わせて、ガルバノミラーを有するリモート接合装置を用い、光線にファイバーレーザを用いて接合を行い、光線による点状の接合部を有する試験片を作成した。表2に、光線による点状の接合部の形成条件を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。

0075

0076

0077

次に、各試験片に対して、鋼板合わせ面20a近傍の溶融凝固部の熱処理を行った。この熱処理では、溶融凝固部とシリンダー形状の再溶融凝固部の中心が一致するようにし、鋼板合わせ面の下側位置(0.4mm)に下端が位置するように再溶融凝固部を形成して行った。
表3に、再溶融凝固部の形成条件(熱処理条件)を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。なお、熱処理では、点状の溶融凝固部の形成と同じリモート接合装置を用いた。

0078

0079

表4に、熱処理後の試験片について、鋼板合わせ面と溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離Wc、再溶融凝固部の平均ビッカース硬さA、交点から0.5mmの範囲の溶融凝固部における平均ビッカース硬さB、平均ビッカース硬さAとBの差、十字引張強さ(CTS)について示す。
CTSは、JIS Z3137にスポット接合強度試験方法として記載されている方法を援用した。

0080

0081

No.2〜4、6〜8、10〜13は、光線による点状の接合部に熱処理を行い、本発明の接合継手で規定する構成をすべて満足するため、溶融凝固部の交点から0.5mmの範囲の靱性が向上し、十字引張強さ(CTS)が高くなっている。

実施例

0082

これに対して、No.1、No.5、及び、No.14は、光線による点状の接合部に熱処理を行っていないため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低くなっていた。また、No.9は、溶融凝固部の全部に熱処理を行ったため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低くなっていた。

0083

本発明によれば、光線による点状の接合部の溶融境界近傍に、靱性に優れる凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができる。そして、本発明の接合継手を自動車部品に適用することで、自動車部品の信頼性を向上させることができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

0084

1、10接合継手
2a、20a鋼板
2b、20b 鋼板
2c、20c 鋼板合わせ面
3、30光線による点状の接合部の溶融凝固部
3a、30a 溶融凝固部内に形成された再溶融凝固部
3b、30b 溶融凝固部内に形成された凝固再加熱部
40 鋼板と溶融凝固部の間の溶融境界
50 再溶融凝固部の重ね合わせ方向の先端部
60 鋼板合わせ面と溶融境界の交点
70 光線
80a、80b照射予定箇所
90a、90b 照射予定箇所
X板厚方向のビッカース硬さの測定位置
L1 鋼板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲
L2 L1中の溶融凝固部の範囲
C中心軸
W 溶融凝固部の円相当直径
Wa 再溶融凝固部の外側の円相当直径
Wb 再溶融凝固部の径方向の幅
Wc 鋼板合わせ面と溶融境界の交点から再溶融凝固部までの最短距離

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