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技術 重ね接合継手及びその製造方法

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 徳永仁寿富士本博紀阪本晃樹
出願日 2017年3月1日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2017-038211
公開日 2017年12月21日 (3年11ヶ月経過) 公開番号 2017-221972
状態 特許登録済
技術分野 車両用車体構造
主要キーワード 照射直径 本ビード 合わせ面近傍 全平均値 多点接合 外周輪郭 溶融境界 ビーム滞在
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月21日)のものです。
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図面 (9)

課題

継手強度に優れ、信頼性の向上した接合継手を提供する。

解決手段

点状の接合部は、複数の金属板20a,20bに跨る溶融凝固部30を有し、前記溶融凝固部は、再溶融凝固部30aと、凝固再加熱部30bとを有し、前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように位置しており、前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、更に、前記凝固再加熱部において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から合わせ面の延長線上に100μm隔てた点を中心点とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、Pの偏析緩和されていることを特徴とする重ね接合継手

概要

背景

近年、自動車分野では、低燃費化CO2排出量の削減のため、車体を軽量化することや、衝突安全性の向上のため、車体部材高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材や各種部品などに高強度鋼板を使用することが有効である。

このような高強度鋼板よりなる車体の組立部品取付けなどの工程では、主として、抵抗発熱を利用したスポット溶接が広く普及しているが、近年、スポット溶接に替えて、一部で高パワー密度を有する光線(以下、光線とする。)による接合を用い、スポット状(点状)に接合を行う技術が自動車の製造に適用されつつある。

光線による点状の接合は、スポット溶接より高速施工が可能で、スポット溶接のように分流の影響を受けないため、接合点ピッチを短くできるというメリットがあり、多点接合による車体剛性の向上も可能である。

一方、光線による点状の接合継手の強度は、従来の抵抗スポット溶接と同程度、もしくは低下する傾向があり、炭素量の高い980MPa以上の高強度鋼板の場合は、継手強度のうち、十字引張強度が低下する問題があった。
このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。

このような状況のもと、光線による接合において、継手強度を向上させる技術として、接合部の近傍に、他の接合部を形成する技術(特許文献1参照)、閉ループ状本ビードの内側に、本ビードを焼き戻すことを目的とした他のビードを形成する技術(特許文献2、3参照)が知られている。

このようなループ状に光線による接合部を形成する技術では、接合部の接合面積が小さくなり、引張せん断強さTSS)が低くなることが懸念される。これに対して、ループ状の接合部より接合面積が広い、鋼板表面側から平面視したとき、外側輪郭略円形状で、その中心まで溶融凝固している光線による接合部を鋼板に形成して、継手強度を向上させる技術が報告されている(特許文献4参照)。

概要

継手強度に優れ、信頼性の向上した接合継手を提供する。点状の接合部は、複数の金属板20a,20bに跨る溶融凝固部30を有し、前記溶融凝固部は、再溶融凝固部30aと、凝固再加熱部30bとを有し、前記再溶融凝固部は、前記溶融凝固部を平面視したとき、当該溶融凝固部の円相当中心軸を含む点状で、前記複数の金属板に跨っており、前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように位置しており、前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、更に、前記凝固再加熱部において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から合わせ面の延長線上に100μm隔てた点を中心点とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、Pの偏析緩和されていることを特徴とする重ね接合継手

目的

このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

重ね合わされた複数の鋼板で構成され、光線により形成される点状の接合部を有する重ね接合継手において、前記光線により形成される点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように位置しており、前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、更に、前記凝固再加熱部において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から合わせ面の延長線上に100μm隔てた点を中心点とし、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記鋼板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該鋼板面に平行な方向及び当該鋼板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、前記100点×100点の測定点のうち、前記鋼板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該鋼板面に平行な方向及び当該鋼板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。

請求項2

前記複数の鋼板の板厚方向断面において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が0.5〜1.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の重ね接合継手。

請求項3

前記複数の鋼板が、表面処理皮膜を有する鋼板を1枚以上含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の重ね接合継手。

請求項4

複数の鋼板を重ね合わせ、高パワー密度を有する光線を照射して前記複数の鋼板を接合する重ね接合継手の製造方法において、重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて点状の溶融凝固部を有する高パワー密度を有する光線による点状の接合部を形成し、次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して、前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにすることを特徴とする重ね接合継手の製造方法。

請求項5

前記光線の再照射は、前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が0.5〜1.0mmとなるように行われることを特徴とする請求項4に記載の重ね接合継手の製造方法。

請求項6

前記複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の重ね接合継手の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、重ね接合継手とその製造方法に関し、特に、自動車車体に用いられる高強度鋼板の重ね接合継手とその製造方法に関するものである。

背景技術

0002

近年、自動車分野では、低燃費化CO2排出量の削減のため、車体を軽量化することや、衝突安全性の向上のため、車体部材高強度化することが求められている。これらの要求を満たすためには、車体部材や各種部品などに高強度鋼板を使用することが有効である。

0003

このような高強度鋼板よりなる車体の組立部品取付けなどの工程では、主として、抵抗発熱を利用したスポット溶接が広く普及しているが、近年、スポット溶接に替えて、一部で高パワー密度を有する光線(以下、光線とする。)による接合を用い、スポット状(点状)に接合を行う技術が自動車の製造に適用されつつある。

0004

光線による点状の接合は、スポット溶接より高速施工が可能で、スポット溶接のように分流の影響を受けないため、接合点ピッチを短くできるというメリットがあり、多点接合による車体剛性の向上も可能である。

0005

一方、光線による点状の接合継手の強度は、従来の抵抗スポット溶接と同程度、もしくは低下する傾向があり、炭素量の高い980MPa以上の高強度鋼板の場合は、継手強度のうち、十字引張強度が低下する問題があった。
このため、高強度鋼板に光線による接合を行った場合に、CTS等の継手強度を向上させる技術が望まれていた。

0006

このような状況のもと、光線による接合において、継手強度を向上させる技術として、接合部の近傍に、他の接合部を形成する技術(特許文献1参照)、閉ループ状本ビードの内側に、本ビードを焼き戻すことを目的とした他のビードを形成する技術(特許文献2、3参照)が知られている。

0007

このようなループ状に光線による接合部を形成する技術では、接合部の接合面積が小さくなり、引張せん断強さTSS)が低くなることが懸念される。これに対して、ループ状の接合部より接合面積が広い、鋼板表面側から平面視したとき、外側輪郭略円形状で、その中心まで溶融凝固している光線による接合部を鋼板に形成して、継手強度を向上させる技術が報告されている(特許文献4参照)。

先行技術

0008

特開2010−012504号公報
特開2012−240086号公報
国際公開第2012/050097号
特開昭60−68185号公報

発明が解決しようとする課題

0009

特許文献4に開示の技術は、光線による接合部を点状としているので、引張せん断強さ(TSS)の向上に有効であるが、十字引張強さ(CTS)を更に向上させることが望まれていた。
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、継手強度に優れ信頼性の向上した重ね接合継手を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、鋼板に光線による接合を実施し、光線により形成される点状の接合部を形成した接合継手のCTSを更に向上させるための手段について鋭意検討した。
重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重負荷されると、鋼板と溶融凝固部との溶融境界の近傍に応力が集中し破断に至り易いため、十分なCTS値を確保できないと考えられる。
そこで、溶融境界近傍を熱処理することにより、その部分の靭性を向上させることを着想し、そのための熱処理箇所及び熱処理方法について種々調査した。

0011

その結果、点状の接合部の溶融凝固部の内側に光線を環状に照射して、照射部を再溶融凝固させるとともに、その際の熱によって鋼板と溶融凝固部との溶融境界付近におけるPのような脆化元素偏析緩和するように再加熱することで、CTSが向上することを見出した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨とするところは以下の通りである。

0012

(1) 重ね合わされた複数の鋼板で構成され、光線により形成される点状の接合部を有する重ね接合継手において、
前記光線により形成される点状の接合部は、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨る点状の溶融凝固部を有し、
該溶融凝固部は、再溶融凝固部と、凝固再加熱部とを有し、
前記再溶融凝固部は、シリンダー状の形状を有し、前記溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に該溶融境界とは重ならないように位置しており、
前記凝固再加熱部は、前記再溶融凝固部の周囲に位置し、前記溶融境界を含んでおり、
更に、前記凝固再加熱部において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から合わせ面の延長線上に100μm隔てた点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記鋼板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該鋼板面に平行な方向及び当該鋼板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記鋼板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の部分平均値を、当該鋼板面に平行な方向及び当該鋼板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下であることを特徴とする重ね接合継手。

0013

(2) 前記複数の鋼板の板厚方向断面において、前記鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が0.5〜1.0mmであることを特徴とする上
記(1)に記載の重ね接合継手。
(3) 前記複数の鋼板が、表面処理皮膜を有する鋼板を1枚以上含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の重ね接合継手。

0014

(4) 複数の鋼板を重ね合わせ、高パワー密度を有する光線を照射して前記複数の鋼板を接合する重ね接合継手の製造方法において、
重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に高パワー密度を有する光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って溶融凝固させて点状の溶融凝固部を有する高パワー密度を有する光線による点状の接合部を形成し、
次いで、該溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないようにかつ、重ね合わされた鋼板を貫通しないように、高パワー密度を有する光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、
さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整して、
前記金属板の重ね合わせ面の前記溶融境界から前記中心軸側に100μmの点を中心点とし、
前記中心点から前記中心軸へ向かう方向に平行で、前記金属板面に垂直な、前記中心点を中心とした、100μm×100μmの矩形平面領域にて、P濃度を質量%で、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1μmピッチで測定し、これにより100点×100点の測定点それぞれにおける当該P濃度の測定値を求め、
前記100点×100点の測定点のうち、前記金属板面に平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各前記測定点における前記P濃度の測定値の平均値を、当該金属板面に平行な方向及び当該金属板面に垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出することを繰り返し、これにより81個×100個の部分平均値を求めた場合に、
前記部分平均値のうち、前記100点×100点の測定点それぞれにおける前記P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える前記部分平均値の個数が0個以上100個以下となるようにする
ことを特徴とする重ね接合継手の製造方法。

0015

(5) 前記光線の再照射は、前記複数の鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離が0.5〜1.0mm
となるように行われることを特徴とする上記(4)に記載の重ね接合継手の製造方法。
(6) 前記複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いることを特徴とする上記(4)又は(5)に記載の重ね接合継手の製造方法。

0016

ここで、光線により形成される点状の接合部とは、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して点状に形成された溶融凝固部によって鋼板が相互に接合された部分をいう。

発明の効果

0017

本発明によれば、溶融凝固部の溶融境界近傍に、靱性に優れる凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができ、接合継手の信頼性を向上させることができる。そして、本発明の接合継手を自動車部品に適用することで、自動車部品の信頼性を向上させることができる。

図面の簡単な説明

0018

光線により形成される点状の接合部を有する接合継手の断面図を示す。(a)は光線の再照射前の接合継手の断面図を示し、(b)は光線の再照射後の接合継手の断面図を示す。
溶融凝固部の断面拡大図である。
本発明の接合継手の断面を示す図である。
光線により形成される点状の接合部を有する接合継手を模式的に示す図であり、(a)は接合継手の断面の構造を示し、(b)は接合継手のビッカース硬さ分布を示す。
光線により形成された点状の接合部の内側に、環状に光線を照射した接合継手について、図4と同様に模式的に示す図である。
接合継手のビッカース硬さ分布の概略図を示す図であり、(a)は光線により形成された点状の接合部を有する接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示し、(b)は光線により形成された点状の接合部の内側に環状に光線を照射した接合継手のビッカース硬さ分布の概略を示す。
光線により形成される点状の接合部の形成の概要を示す斜視図であり、(a)は異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、(b)は集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、(c)は光線により形成された点状の接合部を示す。
光線により形成された点状の接合部の熱処理の概要を示す斜視図であり、(a)は光線を照射する概要図を示し、(b)は再溶融凝固部と凝固再加熱部とを有する光線により形成された点状の接合部の斜視図を示す。

0019

まず、本発明に至った検討の経緯及び本発明の基本的構成について説明する。
光線により形成される点状の接合部を有する重ね接合継手において、更に、継手強度を向上させることが望まれていた。重ね接合継手は、剥離方向に接合部に荷重が負荷されると、鋼板と溶融凝固部との境界(溶融境界)の近傍、特に、鋼板合わせ面と溶融境界との交点近傍に応力が集中し、破断に至り易い。また、高強度鋼板ではPのような脆化元素が含有されている場合が多く、Pの偏析があるとそこが破壊の起点になりやすいと考えられる。
そこで、前記交点近傍の応力が集中する部分に熱処理することにより、Pの偏析を緩和することを検討した。

0020

まず、重ね合わされた2枚の鋼板2a、2bの一方の外表面に光線を照射して、照射部分を溶融凝固させて、直径が約6mmで、2枚の鋼板を重ね方向に柱状に貫通する溶融凝固部3を有する光線による点状の接合部を含む接合継手1aを形成した(図1(a)参照)。
次に、この溶融凝固部3の鋼板との溶融境界4の内側に、ビーム径0.4mmの光線を、直径4.0mmの円周に沿って一周再照射して、照射部分を再溶融凝固させて、溶融凝固部の内側にシリンダー状の再溶融凝固部3aを有するとともに、その周囲に、再溶融凝固部3aの熱により再加熱された凝固再加熱部3bを有する光線による点状の接合部を含む接合継手1bを形成した(図1(b)参照)。
なお、再照射の際には、再溶融凝固部3aの重ね合わせ方向の先端部5が、鋼板合わせ面2cの延長線より鋼板2a側であって、鋼板合わせ面と溶融境界との交点6がAc3点以上の温度範囲に加熱される位置になるように光線の照射条件を調整した。

0021

この光線による接合部を有する接合継手1a、1bに対して、十字引張強さ(CTS)を調査したところ、溶融凝固部3の内側に光線を再照射して得られた接合継手1bの十字引張強さの方が、接合継手1aの十字引張強さより高くなることが判明した。

0022

次に、本発明者らは、接合継手1a、1bに対して、溶融境界近傍における脆化元素であるPの偏析の解析を実施した。Pの偏析の解析では、国際公開第2013/161937号に開示の方法を採用した。Pの偏析の解析方法は、この文献で詳細に説明されているので、ここでは簡潔に説明する。

0023

図2に、溶融凝固部の断面拡大図を示す。図2は、図1(b)の溶融凝固部3の中心軸Cから片側を拡大した図である。
まず、Pの偏析の解析では、鋼板2a、2bの合わせ面2cと溶融境界4との交点6から、合わせ面の延長線上に沿って中心軸C側に100μm隔てた点を中心点とする。この中心点から中心軸Cへ向かう方向に平行で、鋼板2a、2bの表面に垂直な、中心点を中心とした100μm×100μmの矩形平面領域Aを設定する。

0024

この矩形平面領域Aにおいて、合わせ面2cに平行な方向及び垂直な方向にそれぞれ1μmピッチでP濃度(質量%)を測定し、100点×100点の測定点それぞれにおけるP濃度(質量%)の測定値を求める。P濃度(質量%)は、電界放出型電子マイクロアナライザ(FE−EPMA)で測定する。

0025

次に、100点×100点の測定点のうち、合わせ面2cに平行な方向に一列に並んだ隣り合う20点の各測定点におけるP濃度の測定値の部分平均値を、合わせ面2cに平行な方向及び垂直な方向それぞれに沿って1点ずつずらしながら算出する。これを繰り返し、81個×100個の部分平均値を求める。

0026

この部分平均値のうち、100点×100点の測定点それぞれにおけるP濃度の測定値の全平均値の2倍を超える部分平均値の個数を比較する。この個数が0個以上100個以下である場合をPの偏析が緩和されており、101個以上をPが偏析していると判断する。

0027

このPの偏析の解析法を用いて、図1(a)に示す接合継手1aと、図1(b)に示す接合継手1bにおいて、領域AにおけるPの偏析の解析を実施したところ、接合継手1aでは、Pが偏析していたが、接合継手1bでは、Pの偏析が緩和されていた。

0028

これより、光線により形成された点状の接合部を有する重ね接合継手において、点状の接合部の合わせ面と溶融境界の交点6近傍のPの偏析を緩和することで、十字引張強さが向上することを知見した。また、鋼板の組合せを変えても、Pの偏析が緩和されているものでは、十字引張強さが向上することが確認された。

0029

本発明は、以上のような検討過程を経て上記(1)に記載の発明に至ったものであり、そのような本発明について、さらに、必要な要件や好ましい要件について順次説明する。

0030

[接合継手]
本発明の接合継手10は、図3の断面図に示すように、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、鋼板20a側から鋼板20aの限られた領域内に光線を照射し、光線により形成される点状の接合部を形成して複数の鋼板20a、20bを光線による重ね接合をしたものである。

0031

<光線により形成される点状の接合部>
光線により形成される点状の接合部は、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、光線の照射により溶融凝固した点状の溶融凝固部30を有しており、さらに、溶融凝固部30は、内部に該溶融凝固部が再溶融した再溶融凝固部30aと、再溶融凝固部によって溶融凝固部が凝固後に再加熱された凝固再加熱部30bとを有している。なお、図3では、鋼板側の熱影響部は示していない。
ここで、光線により形成される点状の接合部とは、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して点状に形成された溶融凝固部によって鋼板が相互に接合された部分をいう。

0032

(点状の溶融凝固部)
光線による点状の接合部に形成される溶融凝固部30は、重ね合わされた鋼板表面の一部の限られた領域内に光線を照射して形成された溶融凝固部である。
溶融凝固部30の幅W(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの溶融凝固部の円相当径)は、継手強度等に応じて調整すればよく、特に限定されるものでないが、5〜12mmが例示される。好ましくは、6〜10mmである。
溶融凝固部30は、接合部を形成する複数の鋼板20a、20bに跨って形成されていれば、光線照射側と反対側の鋼板の外表面まで貫通していても、貫通していなくてもよい。

0033

ここで、点状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の外周輪郭円形状又多角形状などの限られた領域に限定されており、かつ、その領域の中心まで溶融凝固していることを意味する。円形状とは、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。また、鋼板に光線を渦巻状に、外周側から中心側又は中心側から外周側に向かって照射して形成した溶融凝固部の形状も点状に含まれる。

0034

(再溶融凝固部)
再溶融凝固部30aは、溶融凝固部30と鋼板の溶融境界40の内側の溶融凝固部30に光線を環状の軌跡に沿って再照射し、照射部分を再溶融凝固させて得られるシリンダー状の形状を有する部分であり、溶融凝固したままの組織となっている。なお、環状とは、輪郭が円形状又多角形状を意味する。円形状とは、再溶融凝固部が円形や楕円形の場合以外に、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせたものも含むものである。

0035

再溶融凝固部30aは、溶融境界40とは重ならないように形成されており、その際、光線の照射側から溶融凝固部を平面視したとき、溶融凝固部の円相当の中心と、再溶融凝固部30aの円相当の中心とは、一致する必要はない。
再溶融凝固部30aは、接合継手10の板厚方向において、その重ね合わせ方向の先端部50は、図3などのように、重ね合わされた鋼板の合わせ面20cと溶融境界40との交点60近傍位置まで形成されていれば十分であるが、合わせ面20cの延長線を超えた位置や重ね合わされた鋼板を貫通した位置とすることもできる。

0036

再溶融凝固部30aの重ね合わせ方向の先端部50の位置や再溶融凝固部30aの溶融境界40側の外側輪郭の位置は、鋼板合わせ面20a近傍の溶融凝固部を再加熱して、Pの偏析を緩和するために重要であり、後述するように、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点60近傍の溶融凝固部が、母材融点以下Ac3点温度以上の再加熱温度になるように設定される。

0037

シリンダー状に形成される再溶融凝固部30aの径方向の幅Wb(光線の照射側から溶融凝固部を平面視したときの環状の再溶融凝固部の径方向の厚み)は、前記交点60近傍の溶融凝固部が、Ac3点温度以上の再加熱温度になるために必要な熱量を与えるために、前記先端部の位置との関係で決められるが、0.3mm以上とすることが好ましい。幅Wbの上限は特に限定されないが、好ましくは、0.3W程度である。

0038

(凝固再加熱部)
凝固再加熱部30bは、光線により形成された点状の接合部の溶融凝固部30に光線を環状に再照射し、再溶融凝固部30aの周囲に溶融境界を含むように形成される部分であり、Pの偏析が低減されている部分を含むものである。なお、図1〜3においては、Ac3点温度以上に加熱される領域を凝固再加熱部3bとして示している。

0039

重ね継手では、鋼板の剥離方向に荷重が負荷されると、鋼板の合わせ面近傍の溶融境界に応力が集中し、破断に至るため、少なくとも鋼板合わせ面20cと溶融境界40との交点60の周囲に位置する溶融凝固部が、Ac3点温度以上の再加熱温度となるように凝固再加熱部30bを形成して、その部分のP偏析を緩和させる。

0040

具体的には、鋼板合わせ面20c近傍の溶融凝固部は、応力が集中し易いため、前述のように、P濃度の測定値の全平均値の2倍を超える部分平均値の個数が0個以上100個以下とする。特に、CTSの向上のためには、鋼板合わせ面20cと前記溶融境界の交点60から内側に少なくとも0.5mmの範囲がAc3点温度以上の温度に加熱されることが望ましく、そのためには、鋼板の板厚方向断面において、鋼板合わせ面と前記溶融境界の交点60から前記再溶融凝固部までの最短距離Wcを、0.5〜1.0mmとすることが好ましい。
なお、再溶融凝固部はミクロ組織の観察により判別することができるので、Wcは光線による接合後の接合部の断面から測定することができる。

0041

凝固再加熱部のPの偏析の解析は、上述したように行う。ただし、P濃度(質量%)は、電界放出型電子線マイクロアナライザ(FE−EPMA)で測定することができ、測定条件として、以下が例示される。

0042

加速電圧:15kV
ビーム電流:0.5μA
ピクセル当たりのビーム滞在時間:60ms
ピクセル数:250×250
視野:100μm×100μm

0043

また、凝固再加熱部30bのうち、母材の融点以下Ac3点温度以上に再加熱された部分は、加熱過程及び冷却過程でそれぞれ変態を受けて結晶微細化する。そのような部分においては、特に、結晶粒アスペクト比が1.5以下のポリゴナルフェライトとなっていることが好ましい。

0044

(再溶融凝固部及び凝固再加熱部のビッカース硬さ)
次に、光線により形成された点状の接合部の溶融凝固部に光線を再照射する前と再照射した後の接合継手の板厚方向断面において、鋼板合わせ面及びその延長線近傍位置のビッカース硬さの変化を調査した。
図4、5に、引張強さ980MPaの鋼板を用いた接合継手において、溶融凝固部に環状のレーサビームを再照射する前後のビッカース硬さ分布の概略図を示す。それぞれの図において、(a)は、接合継手の断面図であり、(b)は、接合継手のビッカース硬さ分布の概略図である。

0045

ビッカース硬さは、図4(a)及び図5(a)に示す、点線Xの位置(板厚方向断面のビッカース硬さの測定位置)を鋼板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲L1にわたって求めた。
点線Xは、板厚方向において、鋼板20a、20bの合わせ面20cから鋼板20a側に0.5mmの位置である。また、L2は、溶融凝固部のビッカース硬さの測定範囲である。

0046

図4(b)に示すように、溶融凝固部30に光線を再照射する前の接合継手10aのビッカース硬さは、溶融凝固部30の内側(L2)において、HV410程度と硬く、ほぼ一定となっている。L2のすぐ外側は、溶融凝固部ではないが、高温域まで加熱され焼入れられるので硬さが大きい。なお、さらに外側に硬さの低い部位があるが、これは母材である鋼板のHA軟化部である。

0047

これに対し、環状に光線を再照射した後は、図5(b)に示すように、再溶融凝固部の熱を受けて、溶融境界の外側及び再溶融凝固部の内側の溶融凝固部に焼き戻されたビッカース硬さが低い部位が形成された。また、再溶融凝固部近傍に位置する溶融凝固部は、再溶融凝固部により再度高温域まで加熱され、焼入れられて硬化しており、溶融境界から溶融凝固部内に向かって1mm以上の幅でHV410程度と硬くなっている。なお、溶融凝固部30の外側の母材のHAZ軟化部はそのままの硬さとして残っている。

0048

次に、被接合部材の鋼板を1500MPaホットスタンプ鋼板に変えて、上記と同様の調査を行った。
図6に、ホットスタンプ鋼板を用いた接合継手におけるレーサビームを再照射する前後のビッカース硬さ分布の概略図を示す。

0049

ホットスタンプ鋼板では、溶融凝固部30に光線を再照射する前の接合継手10aのビッカース硬さは、図6(a)に示すように、溶融凝固部30の内側(L2)において、HV450程度と硬く、ほぼ一定となっている。L2のすぐ外側は、溶融凝固部ではないが、高温域まで加熱され、焼入れられるので、硬さが大きい。なお、さらに外側に硬さの低い部位があるが、これは母材である鋼板のHAZ軟化部である。

0050

また、光線を再照射した後の接合継手10bのビッカース硬さは、図6(b)に示すように、溶融境界から溶融凝固部内に向かって1mm以上の幅でHV420程度と硬くなっている。さらに溶融境界の外側にビッカース硬さが低い部位が形成された。なお、溶融凝固部30の外側の母材のHAZ軟化部はそのままの硬さとして残っている。

0051

このように、本発明の接合継手では、鋼板の鋼種が異なる場合であっても、溶融境界から溶融凝固部内に向かって1mm以上の幅に渡ってビッカース硬さの高い範囲が維持され、鋼板合わせ面近傍の溶融凝固部における接合金属の部分的な軟化がないため、引張せん断強度の低下が抑制される。
引張せん断強度の低下を抑制するためには、凝固再加熱部30bのうち、鋼板20a、20bの合わせ面の延長線上から重ね合わせ方向に0.5mm離れた位置(上記Xの位置)における溶融境界から内部に向かって0.5mmの範囲のビッカース硬さの平均値と、0.5〜1mmの範囲のビッカース硬さの平均値を、±Hv70未満とすることが好ましい。
なお、上記の範囲のビッカース硬さの平均値の測定では、それぞれの範囲の中央と両端近傍を含む3点以上等間隔でビッカース硬さを測定し、平均値を求める。

0052

また、鋼板の重ね合わせ面が複数あるときは、それぞれの鋼板の重ね合わせ面と接する溶融凝固部30の溶融境界同士を結んだ線上で測定する。なお、再溶融凝固部と凝固再加熱部とは、ミクロ組織の観察により、判別することができる。

0053

<複数の鋼板>
本発明の接合継手に用いる鋼板は特に限定されるものでなく、種々の鋼板とすることができる。鋼板の成分組成は、特に限定されるものでなく、用途に応じた機械特性等が得られる成分組成の鋼板とすればよい。また、本発明の接合継手に炭素含有量を0.10〜0.25質量%の高強度鋼板を適用すると、十字引張強さの向上が顕著であり、このような鋼板を対象とすることが好ましい。また、P含有量は、特に限定されるものでないが、Pの偏析改善の効果が見込まれる0.001%以上0.03質量%以下が例示される。

0054

鋼板の板厚は、特に限定されるものでなく、0.5〜3.2mmの範囲とすることができる。板厚が0.5mm未満であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、継手強度は板厚に影響されるので、接合継手全体の強度向上の効果が小さくなり、接合継手の適用範囲が限定される。また、板厚が3.2mm超であっても、接合部の継手強度の向上の効果は得られるが、部材の軽量化の観点から、接合継手の適用範囲が限定される。

0055

(鋼板の表面処理皮膜)
鋼板には、少なくとも接合箇所の両面又は片面に表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上含んでいてもよい。表面処理皮膜は、めっき皮膜を含むものであり、更に、塗装皮膜等を含むものとすることができる。めっき皮膜としては、例えば、亜鉛めっき、アルミニウムめっき、亜鉛・ニッケルめっき、亜鉛・鉄めっき、亜鉛・アルミニウムマグネシウム系めっき等であり、めっきの製造方法としては、溶融めっき電気めっき等である。

0056

鋼板は、少なくとも接合継手を形成する部分が板状であればよく、全体が板でなくてもよい。例えば、断面ハット形の特定の形状にプレス成型された部材のフランジ部などを含むものである。重ね合わせる鋼板の枚数は、2枚に限らず、3枚以上としてもよい。また、各鋼板の、種類、成分組成及び板厚は、全て同じとしても、相互に異なっていてもよい。また、別々の鋼板から構成されるものに限定されず、1枚の鋼板を管状などの所定の形状に成形して、端部を重ね合わせたものの重ね接合継手であってもよい。

0057

以下、これに限定されるものではないが、自動車での重ね接合継手の例を示す。
ピラーの場合、270〜340MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0058

Bピラーの場合、引張強さが270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級非めっき鋼板もしくはホットスタンプ鋼板と、440〜980MPa級非めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0059

サイドシルの場合、270〜340MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板と、590〜1800MPa級合金化溶融亜鉛めっき鋼板の3枚重ねの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0060

フロアメンバーの場合、270〜590MPa級の合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアパネルと、440〜1800MPa級非めっき鋼板もしくは合金化溶融亜鉛めっき鋼板のフロアメンバーとの2枚重ねでの組み合わせでの重ね接合継手が例示される。

0061

[重ね接合継手の製造方法]
次に、本発明の重ね接合継手の製造方法について説明する。
まず、(a)複数の鋼板を重ね合わせ、重ね合わされた鋼板の一方の外表面の限られた領域内に光線を照射し、前記重ね合わされた全ての鋼板に跨って前記領域の中心まで溶融凝固させて、点状の溶融凝固部を有する光線による点状の接合部を形成することについて、図7を用いて説明する。

0062

図7は、限られた領域内(照射予定箇所)に光線を照射して光線による点状の接合部の形成の概要を示す斜視図である。図7(a)は、異なる照射直径で光線を照射する概要を示し、図7(b)は、集光面積を広くして光線を照射する概要を示し、図7(c)は、光線により形成された点状の接合部を示す。

0063

図7(a)には、光線70を照射する方法の一例を示しており、異なる照射直径で光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80aを点線で示しており、照射直径の異なる3つの照射予定箇所80aが示されている。

0064

光線による点状の接合部の形成では、まず、複数の鋼板20a、20bを重ね合わせ、一方の鋼板20a側から光線70を照射して光線による接合を行う。光線70の照射では、光線70の照射側から照射予定箇所80aを平面視したとき、白抜き矢印で示すように、略円状に光線を走査する。その際に、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行っても、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行ってもよい。光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り反時計回りのいずれでもよい。

0065

また、光線70の照射側からの照射予定箇所80aを平面視した場合、光線70の照射予定箇所80aの外周形状を円としているが、楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状、渦巻状の形状としてもよい。光線70の照射予定箇所80aを渦巻状の形状とした場合、光線70の照射は、渦巻状の照射予定箇所の外側の端部から、内側の端部に向かって、又は、渦巻状の照射予定箇所の内側の端部から、外側の端部に向かって、渦巻状に光線を走査して行う。渦巻の方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。

0066

図7(a)では、直径の異なる3つの照射予定箇所を例示したが、光線の焦点面積や、光線により形成される点状の接合部の接合面積に応じて、直径の異なる照射予定箇所の数を増減させることができる。

0067

図7(b)には、光線70を照射する方法の他の例を示しており、集光面積を広くして光線70を照射するものである。この図には、光線70の照射予定箇所80bを点線で示している。そして、光線70の照射は、光線の集光面積を広くして、1回で行われる。

0068

図7(a)、図7(b)に示すように光線70を照射することで、図7(c)に示すように、光線による点状の接合部の溶融凝固部30を形成できる。

0069

また、複数の鋼板に、表面処理皮膜を形成した鋼板を1枚以上用いる場合、光線70の照射を、外側の照射予定箇所80aに行い、その後、内側の照射予定箇所80aに行うことが好ましい。これにより、接合部内に欠陥を生じさせる気体となった皮膜を、溶融部中心付近に集め、攪拌除去することが容易となる。なお、光線70の照射を、内側の照射予定箇所80aに行い、その後、外側の照射予定箇所80aに行っても、光線70の集光面積を広くして行っても、気体となった皮膜を溶融部から除去することができるため、これらの光線の照射方法を採用することを排除するものでない。

0070

次に、(b)点状の溶融凝固部と鋼板との溶融境界の内側に、該溶融境界とは重ならないように光線を環状に再照射し、該照射部分を再溶融凝固させてシリンダー状の再溶融凝固部を形成するとともに、該再溶融凝固部の周囲を再加熱(熱処理)して前記溶融境界を含む凝固再加熱部を形成し、さらに、前記再溶融凝固部を形成する際の接合条件を調整してPの偏析を緩和することについて説明する。

0071

光線により形成された点状の接合部の熱処理では、図7で示す方法等により得られた点状の接合部の溶融凝固部が凝固するまで待機し、その後に、鋼板20a側から溶融凝固部30の内側に光線70を照射して行う。本発明は、高温での固体中拡散活用したものであるため、融凝固部30が凝固した後に光線を照射しないと効果が得られないためである。
なお、溶融凝固部30の内側とは、溶融凝固部30の溶融境界を除く溶融凝固部30内をいう。

0072

次に、光線により形成された点状の接合部の熱処理における光線70の照射について、図8を用いて説明する。
図8(a)には、再溶融予定箇所に光線70を照射する方法の一例を示しており、光線70の照射予定箇所90を点線で示している。
光線70の照射では、白抜き矢印で示すように略円状に光線を走査する。その際に、光線の走査方向は、特に限定されるものでなく、時計回り、反時計回りのいずれでもよい。

0073

略円状の光線70の照射予定箇所90は、光線70の照射により形成されたシリンダー形状の再溶融凝固部30aにより、溶融境界40と鋼板合わせ面20cの交点60周囲のPの偏析が緩和される位置に設定される。

0074

また、光線70の照射側から光線による接合部を平面視した場合、光線70の照射予定箇所90の外周形状を円としているが、溶融凝固部の外側輪郭に合わせて楕円状、多角形状、直径の異なる半円や半楕円を組み合わせた形状としてもよい。また、光線70の照射回数は、再溶融凝固部の幅Wbに応じて、1回または複数回としてもよい。

0075

図8(a)に示すように光線70を照射することで、図8(b)に示すように、光線70の照射側から溶融凝固部30を平面視したとき、環状に再溶融凝固部30aが形成され、その周囲に凝固再加熱部30bが形成される。そして、その際に溶融境界を含む前記交点近傍のPの偏析が緩和され、靱性が向上する。

0076

また、光線による点状の接合部の形成、及び、光線により形成された点状の接合部の溶融境界の熱処理において、光線の照射方法は、同じ照射方法でも、異なる照射方法でもよい。例えば、異なる照射直径で光線を照射して、点状の接合部を形成し、異なる照射直径で光線を照射して、光線により形成された点状の接合部の溶融境界を熱処理してもよいし、集光面積を広くして光線を照射して、光線による点状の接合部の形成し、異なる照射直径で光線を照射して、光線により形成された点状の接合部の溶融境界を熱処理してもよい。

0077

次に、光線70の照射のうち、凝固再加熱部30bの加熱温度について説明する。
光線により形成された点状の接合部の溶融凝固部30のうち鋼板合わせ面20cと溶融境界40との交点60から、少なくとも0.5mmの範囲の領域のPの偏析が緩和されるように再加熱するとよい。

0078

交点60から少なくとも0.5mmの範囲の領域のPの偏析を緩和するには、この範囲の最高到達温度が母材の融点以下Ac3点温度以上(例えば、900℃以上)となる条件で、光線70を溶融凝固部30の内側に照射する。交点60近傍の温度は、鋼板表面で測定した温度を代表値として用いることができる。温度は、放射温度計熱電対を用いて測定することができる。

0079

このような温度とするには、予め、再溶融凝固部の外側の円相当直径Wa又は形成される再溶融凝固部の幅Wbと、光線の再照射中の前記範囲の温度との関係や、光線の再照射時間と前記範囲の温度との関係等を調査しておき、再溶融凝固部の外側の円相当直径Wa、再溶融凝固部の幅Wb、光線の再照射時間等を調整することで行うことができる。また、交点60から0.5mmの範囲の領域を母材の融点以下Ac3点温度以上とするには、交点60から前記再溶融凝固部までの最短距離Wcが0.5〜1.0mmとなるように光線の照射を調整することが例示される。好ましくは、0.6〜0.9mmである。

0080

次に、光線による点状の接合部の形成、及び、光線により形成された点状の接合部の熱処理で使用する光線について説明する。
光線による接合は、特に限定されるものでないが、リモートレーザ接合とすることが好ましい。リモートレーザ接合は、ロボットアームの先端に取り付けたガルバノミラーにより、光線を接合打点の間を高速で移動させて接合するものであり、接合の作業時間の大幅な短縮が可能になる。また、接合に用いる光線としては、例えば、CO2光線、YAG光線、ファイバー光線、DISK光線、半導体光線などの光線を用いることができる。

0081

また、光線による接合の条件は、従来の条件を採用することができる。例えば、光線出力2〜30kW、集光面のビーム径0.1〜8.0mm、接合速度0.1〜60m/minの接合条件で行うことができる。

0082

また、自動車の組み立ては、複数の接合工程からなるが、1つの工程内で本発明の製法を実施する場合、1つ1つの接合点に対して、光線照射による接合と再溶融を実施してもよいが、温度変化のばらつきを低減するために、より好適には、光線照射により複数の溶融接合を実施し、その後、光線照射により複数の再溶融を実施するとことが好ましい。また複数の接合工程で本発明の製法を実施する場合、光線照射による溶融接合工程と、光線照射による再溶融工程を別々の工程とすることで、冷却の待ち時間を無くすことができる。

0083

次に、本発明の実施例について説明する。実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。

0084

表1に示す鋼板を2枚重ね合わせて、ガルバノミラーを有するリモート光線による接合装置を用い、ファイバーレーザ光線により接合を行い、光線により形成された点状の接合部を有する試験片を作成した。表2に、光線による点状の接合部を形成する際の接合条件を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。

0085

0086

0087

次に、各試験片に対して、鋼板合わせ面20c近傍の溶融凝固部の熱処理を行った。この熱処理では、溶融凝固部とシリンダー形状の再溶融凝固部の中心が一致するようにし、鋼板合わせ面の下側位置(0.1mm)に下端が位置するように再溶融凝固部を形成して行った。
表3に、再溶融凝固部の形成条件熱処理条件)を示す。ビーム径は、集光面での光線の直径である。なお、熱処理では、点状の溶融凝固部の形成と同じリモート光線による接合装置を用いた。

0088

0089

表4に、熱処理後の試験片について、鋼板合わせ面と溶融境界の交点から前記再溶融凝固部までの最短距離Wc、再溶融凝固部の平均ビッカース硬さA、鋼板合わせ面の延長上、溶融境界から内部に0.5mm入った位置までの凝固再加熱部における平均ビッカース硬さB、平均ビッカース硬さAとBの差、P偏析、十字引張強さ(CTS)について示す。 CTSは、JIS Z3137にスポット接合強度試験方法として記載されている方法を援用した。

0090

P偏析は、上述のPの偏析の解析法に従い、P濃度(質量%)の部分平均が全平均値の2倍を超える個数が0個以上100個以下である場合を「○」と表記し、個数が101個以上である場合を「×」と表記した。また、CTSは、JIS Z3137にスポット接合の強度試験方法として記載されている方法を援用した。

0091

0092

No.2〜4、6〜8、10〜13は、光線により形成される点状の接合部に熱処理を行い、本発明の接合継手で規定する構成をすべて満足するため、溶融凝固部の交点から0.5mmの範囲の靱性が向上し、十字引張強さ(CTS)が高くなっている。

実施例

0093

これに対して、No.1、No.5、及び、No.14は、光線により形成される点状の接合部に熱処理を行っていないため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低くなっていた。また、No.9は、溶融凝固部の全部に熱処理を行ったため、溶融凝固部の溶融境界の靱性が向上せず、十字引張強さ(CTS)が低くなっていた。

0094

本発明によれば、光線により形成される点状の接合部の溶融境界近傍に、靱性に優れる凝固再加熱部を設けたので、重ね接合継手の継手強度、特に、十字引張強さ(CTS)を向上させることができ、接合継手の信頼性を向上させることができる。そして、本発明の接合継手を自動車部品に適用することで、自動車部品の信頼性を向上させることができる。よって、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

0095

1、10接合継手
2a、20a鋼板
2b、20b 鋼板
2c、20c 鋼板合わせ面
3、30光線により形成される点状の接合部の溶融凝固部
3a、30a 溶融凝固部内に形成された再溶融凝固部
3b、30b 溶融凝固部内に形成された凝固再加熱部
4、40 鋼板と溶融凝固部の間の溶融境界
5、50 再溶融凝固部の重ね合わせ方向の先端部
6、60 鋼板合わせ面と溶融境界の交点
70 光線
80a、80b照射予定箇所
90 照射予定箇所
A矩形平面領域
X板厚方向のビッカース硬さの測定位置
L1 鋼板表面と平行方向のビッカース硬さの測定範囲
L2 L1中の溶融凝固部の範囲
C中心軸
W 溶融凝固部の円相当直径
Wa 再溶融凝固部の外側の円相当直径
Wb 再溶融凝固部の径方向の幅
Wc 鋼板合わせ面と溶融境界の交点から再溶融凝固部までの最短距離

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