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技術 オオフトモモ抽出物を含むPARP阻害剤

出願人 国立大学法人琉球大学沖縄県
発明者 田中康春鎌田靖弘市場俊雄前泊智恵
出願日 2016年6月2日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2016-111383
公開日 2017年12月14日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-218382
状態 特許登録済
技術分野 非環式または炭素環式化合物含有医薬 植物物質含有医薬 化合物または医薬の治療活性
主要キーワード 原料試料 部抜粋 化学合成薬剤 酸性水酸基 蛍光強度差 水溶性抽出液 高速溶 mm篩
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月14日)のものです。
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図面 (20)

課題

本発明は,自生植物から得られる新規のPARP阻害物質をもとにポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤及びBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤を提供することを課題とする。

解決手段

本発明は,オオフモモ葉由来抽出物を含むポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤,Castalagin及びVescalaginの少なくとも1以上を有効成分とするポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤及びこれを有効成分とするBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤である。

概要

背景

ポリADPリボース合成酵素(poly(ADP-ribose)polymerase;PARP)ファミリーのうち,PARP1およびPARP2は,DNA切断部位に結合することで活性化され,ポリADPリボシル化反応(PARylation)を司る酵素である。
これらのPARPは,その反応を介してDNA修復遂行に密接に関係していると考えられており,2014年12月には,PARP阻害薬ラパリブ(Olaparib)が生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣がん治療薬として,米国FDAにより承認された。
また,2016年1月,FDAは,あるタイプの遺伝子変異型前立腺癌患者に対して,オラパリブが画期的治療薬になると提唱している。
特に,PARP1は,塩基除去修復による単鎖切断(SSB)領域の修復および相同組換え(HR)による二本鎖切断領域の修復のいずれの過程においても,他の修復関連因子とともに必要とされる因子である。
二本鎖切断の修復過程には,BRCA1/2も関与し,これらの遺伝子に変異がみられる癌に対しては,DNA損傷誘導する抗癌剤とPARP阻害薬の併用が,高い治療効果をもたらすとされており,近年,PARP1はBRCA1/2遺伝子変異陽性卵巣癌治療標的として注目されている(非特許文献1)。
しかしながら,オラパリブは,貧血症疲労感心臓に影響が出る悪心嘔吐等,グレード3以上の重い有害事象が54%起きているとの報告もある。
また,細胞内部で損傷したDNAを修復するために,重要な2種類のタンパク質をコードするBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子に変異が生じると,BRCA遺伝子卵巣に癌を発達させる可能性(乳癌にかかるリスクが87%,卵巣癌にかかるリスクが50%であるといわれている。)が高くなり,最初の診断から10年以内に癌が再発するリスクも高くなる。
そのため,副作用が少なく効果が高いPARP阻害薬の開発が求められていた。

一方,オオフモモは,亜熱帯もしくは熱帯気候栽培される東アジア原産の常緑樹である。
オオフトモモは,主にその果実生食として利用されており,独特見た目酸味があり,リンゴのような味わいがある。
また,オオフトモモの葉は,長さ20cm程度の楕円形であるが,特段,利用の用途がないのが現状である。

概要

本発明は,自生植物から得られる新規のPARP阻害物質をもとにポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤及びBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤を提供することを課題とする。本発明は,オオフトモモの葉由来抽出物を含むポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤,Castalagin及びVescalaginの少なくとも1以上を有効成分とするポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤及びこれを有効成分とするBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤である。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
0件

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請求項1

オフモモ葉抽出物を含むことを特徴とするPARP阻害剤

請求項2

前記抽出物が,5つの没食子酸ならびに開環した六炭糖構造単位を有することを特徴とする請求項1に記載のPARP阻害剤。

請求項3

前記抽出物が,C-配糖体型エラジタンニンを有することを特徴とする請求項1に記載のPARP阻害剤。

請求項4

前記抽出物が,Castalagin,Vescalaginのいずれか又は複数からなることを特徴とする請求項1に記載のPARP阻害剤。

請求項5

請求項1から4に記載のPARP阻害剤を有効成分とすることを特徴とするBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤

技術分野

0001

本発明は,レンブ(オオフモモ;Syzygium samarangense)抽出物を含むポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)阻害剤に関する。

背景技術

0002

ポリADPリボース合成酵素(poly(ADP-ribose)polymerase;PARP)ファミリーのうち,PARP1およびPARP2は,DNA切断部位に結合することで活性化され,ポリADPリボシル化反応(PARylation)を司る酵素である。
これらのPARPは,その反応を介してDNA修復遂行に密接に関係していると考えられており,2014年12月には,PARP阻害薬ラパリブ(Olaparib)が生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣がん治療薬として,米国FDAにより承認された。
また,2016年1月,FDAは,あるタイプの遺伝子変異型前立腺癌患者に対して,オラパリブが画期的治療薬になると提唱している。
特に,PARP1は,塩基除去修復による単鎖切断(SSB)領域の修復および相同組換え(HR)による二本鎖切断領域の修復のいずれの過程においても,他の修復関連因子とともに必要とされる因子である。
二本鎖切断の修復過程には,BRCA1/2も関与し,これらの遺伝子に変異がみられる癌に対しては,DNA損傷誘導する抗癌剤とPARP阻害薬の併用が,高い治療効果をもたらすとされており,近年,PARP1はBRCA1/2遺伝子変異陽性卵巣癌治療標的として注目されている(非特許文献1)。
しかしながら,オラパリブは,貧血症疲労感心臓に影響が出る悪心嘔吐等,グレード3以上の重い有害事象が54%起きているとの報告もある。
また,細胞内部で損傷したDNAを修復するために,重要な2種類のタンパク質をコードするBRCA1遺伝子とBRCA2遺伝子に変異が生じると,BRCA遺伝子卵巣に癌を発達させる可能性(乳癌にかかるリスクが87%,卵巣癌にかかるリスクが50%であるといわれている。)が高くなり,最初の診断から10年以内に癌が再発するリスクも高くなる。
そのため,副作用が少なく効果が高いPARP阻害薬の開発が求められていた。

0003

一方,オオフトモモは,亜熱帯もしくは熱帯気候栽培される東アジア原産の常緑樹である。
オオフトモモは,主にその果実生食として利用されており,独特見た目酸味があり,リンゴのような味わいがある。
また,オオフトモモの葉は,長さ20cm程度の楕円形であるが,特段,利用の用途がないのが現状である。

先行技術

0004

Andreina Peralta-Lear et al.:PARP inhibitors:New partners in the therapy of cancer and inflammatory diseases,Free Radical Biology & Medicine 47,13-26,2009

発明が解決しようとする課題

0005

発明者らは,縄の自生植物の有効活用に関する研究を長年取り組んでおり,沖縄の自生植物を用いたPARP阻害を可能とする有用成分の提供を課題としてきた。

課題を解決するための手段

0006

そして,発明者らは,およそ160種類もの沖縄の自生植物の中から,PARP阻害活性を有する有用成分を含む植物を見出すとともに,その有用成分に含まれるPARP阻害化合物の特徴を明らかにすることにより,発明を完成させたものである。

0007

本発明は,次の構成からなる。
本発明の第一の構成は,オオフトモモの葉抽出物を含むことを特徴とするPARP阻害剤である。
本発明の第二の構成は,前記抽出物が,5つの没食子酸ならびに開環した六炭糖構造単位を有することを特徴とする第一の構成に記載のPARP阻害剤である。
本発明の第三の構成は,前記抽出物が,C-配糖体型エラジタンニンを有することを特徴とする第一の構成に記載のPARP阻害剤である。
本発明の第四の構成は,前記抽出物が,Castalagin,Vescalaginのいずれか又は複数からなることを特徴とする第一の構成に記載のPARP阻害剤である。
本発明の第五の構成は,第一から第四の構成に記載のPARP阻害剤を有効成分とすることを特徴とするBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤である。

発明の効果

0008

本発明のポリADPリボースポリメラーゼ阻害剤の特徴は,化学合成薬剤に比べて効き目が穏やかであり,沖縄では長年,食資源として親しまれてきた自生植物であるレンブから同定した成分であるため,副作用を含む安全性が比較的高い。
本発明により,BRCA1/2変異乳癌や卵巣癌で苦しんでいる患者を,一刻も早く完治させるべく有益で安全なPARP阻害剤を提供できる。
すなわち,本発明のオオフトモモの葉から抽出した成分は,PARP阻害を可能とするものであり,また,そのメカニズムから,BRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤としても期待できる。

図面の簡単な説明

0009

沖縄自生植物からの有用成分の抽出・保存方法を示した図
PARP阻害活性を調べるためのスクリーニングアッセイ実験方法ならびに解析方法を示した図
162種類の葉または実からの抽出成分のPARP阻害活性を比較検討した結果を一部抜粋して示した図
オオフトモモ葉からの有用成分の抽出方法及びPARP阻害活性を示す画分(Castalagin:AQ2)の精製方法を示した図
オオフトモモ葉からの有用成分の抽出方法及びPARP阻害活性を示す画分(Vescalagin:AQ1)の精製方法を示した図
AQ2のESI-MS分析結果を示した図
AQ1及びAQ2のESI-MS分析結果を示した図(上段:AQ2,下段:AQ1)
AQ2のNMR分析結果を示した図
メチル化の前処理を行ったAQ2のNMR分析結果を示した図
AQ1及びAQ2の推定構造を示した図
酸もしくはアルカリ処理による,AQ2のPARP阻害活性への影響を検討した結果を示した図
ポリADPリボシル化反応の生成物(ポリADPリボシル化タンパク;PAR化タンパク)の解析手順を示したフローチャート
左図:PARP活性に対するAQ1ならびにAQ2のIC50の解析,右図:[図11]の手順に従ったAQ1ならびにAQ2によるPAR化タンパク形成阻害の確認
既存のPARP阻害剤であるオラパリブのIC50値を調べた図
AQ2と,既存のPARP阻害剤のPARP阻害活性を比較検討した実験結果を示した図
生理的条件下における培養細胞(SH-SY5Y)のポリADPリボシル化反応に対するAQ1ならびにAQ2の阻害効果を検討した実験結果を示した図
UV照射によりDNA損傷を惹起した細胞(U937)のポリADPリボシル化反応に対するAQ1ならびにAQ2の阻害効果を検討した実験結果を示した図
AQ2の前処理がPARPの阻害作用を惹起するか検討した実験結果を示した図
AQ2のZn2+キレート効果についてアルカリホスファターゼ(ALP)を用いて検討を行った実験結果を示した図
AQ1ならびにAQ2のMg2+キレート効果について制限酵素を用いて検討を行った実験結果を示した図

0010

本発明のPARP阻害剤等について説明を行う。

0011

本発明のPARP阻害剤は,162種類もの沖縄自生植物の葉ないしは実から,その成分の抽出を行い,オオフトモモの葉に,PARP阻害を示す成分が含まれることを発明者が見出したことによるものである。

0012

オオフトモモからの有用成分の抽出については,有用成分の抽出が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の抽出方法を用いることができる。
一例をあげると,オオフトモモの葉,もしくは乾燥などの前処理を行った原料試料について,有機溶媒による抽出を行うなどである。
この場合の有機溶媒として特に限定する必要はなく,種々の有機溶媒を用いることができ,典型的には,エタノールを用いることができる。
抽出した後の有効成分を含む有機溶媒については,必要に応じ遠心による夾雑物の除去や濃縮,分液などの粗精製作業を行い,液体のまま,もしくは凍結乾燥などにより固体として保存すればよい(以下,「有効成分試料」という。)。

0013

有効成分試料を用いる際には,5つの没食子酸ならびに開環した六炭糖の構造単位を有する画分を含むことが望ましい。
すなわち,有効成分中に含まれるPARP阻害を示す有効成分(以下,「PARP阻害化合物」)は,MSないしはNMRによる分析上,下記の構造的特徴を有するものである。
(1)炭素原子数41,酸素原子数26以上,分子量934の化合物であり,15個の酸性水酸基を有する。
(2)NMR分析を行った際に,δ60-80に6本のシグナル観測されるとともに,δ90-100にはシグナルが観測されない。
(3) NMR分析を行った際に,δ105-175に35本のシグナルが観測され,そのうち5本がδ165-175のカルボニル領域である。

0014

これらのことから,PARP阻害化合物は,5つの没食子酸ならびに開環した六炭糖の構造単位を有することが強く推定されるものである。
しかるに,PARP阻害化合物は,必ずしも,これに限定する趣旨ではない。
すなわち,前述の(1)から(3)の特徴は,本願における実験例において確認された有効成分試料に含まれるPARP阻害化合物の一つに過ぎず,また,構造として別の異なる構造体を含む余地を残すものだからである。

0015

有効成分試料について,有効成分試料からPARP阻害化合物を精製して用いることができ,また,有効成分試料をそのままの形でPARP阻害剤として用いてもかまわない。
有効成分試料からのPARP阻害化合物の精製については,PARP阻害化合物の精製が可能である限り特に限定する必要はなく,種々の精製方法を用いることができる。
典型的には,HPLCにより,PARP阻害化合物を含む画分を分取し,これを必要に応じ有機溶媒の蒸散脱塩などを行い,さらに精製を行えばよい。

0016

PARP阻害化合物について,具体的な化合物として,Castalagin,Vescalaginを用いることができ,これらのいずれかもしくは複数を含んだPARP阻害化合物,もしくはBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤として構成することができる。

0017

本発明においてBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤とは,CastalaginやVescalaginをはじめとするPARP阻害化合物により生体内においてPARP阻害効果を発揮することで,BRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガンの治療効果を示す薬剤として定義される。
かかる薬剤については,PARP阻害化合物そのものが有効成分として機能する場合に加え,本発明の趣旨に鑑み,投与後,生体内において分子形を変化させてPARP阻害化合物が有効成分として機能する,いわゆるDDS化された場合も含まれるものである。また,これらPARP阻害化合物は,オオフトモモ葉を原料として抽出・精製したものを用いることができるが,本発明の趣旨を鑑み,化学構造を明らかにしたうえで,オオフトモモ葉からの抽出物ではなく,化学的に合成したものを用いても構わない。

0018

本発明のBRCA1/2遺伝子変異陽性進行卵巣ガン治療薬剤の剤形について,特に限定する必要はなく,経口剤錠剤カプセル剤散剤経皮吸収型製剤など種々の形態を採用することができる。好ましくは,経口剤が挙げられ,実験例3(図11)に示すように,本発明の有効成分の例であるAQ1やAQ2は,酸に対して安定であることから,取扱性や服薬コンプライアンスの観点から,経口剤として構成することが好ましい。

0019

以下,本発明におけるPARP阻害剤について,実験例を用いて説明を行う。

0020

<<実験例1,沖縄自生植物からのスクリーニング>>
1.162種類の沖縄自生植物の葉,実を用いて,これらからPARP阻害活性を有する成分を見出すことを目的に実験を行った。
2.図1に葉や実からの有用成分の抽出方法,図2にPARP阻害活性のアッセイ方法を示す。

0021

3.PAR合成のアッセイ法
PAR合成反応液(10μMNAD+,15μg/ml nicked DNA,50mM Tris-HCl buffer pH8.0,10mM MgCl2,0.25μg PARP1)を25℃,30分間反応させ,2MKOH,20%アセトフェノン(50μl)添加し,4℃,10分暗室で冷却後88%formic acid(225μl)を添加し,110℃で5分間熱処理して残存NAD+を蛍光誘導体化し,その蛍光強度を測定した。
4.PARP阻害活性の定義
上記PAR合成反応系を用いてPARP阻害活性を求めた。
PAR合成が進むとNAD+が消費されて蛍光強度が弱まる。
仮にPARP阻害物質を加えた場合,PARP活性が抑制され,NAD+の消費が抑えられ,結果として蛍光強度が強くなる。
そこで,PARP未添加と添加の両反応系の反応後の蛍光強度差を求め,その差をPARP活性100%(仮にA)とする。
一方,PARPとPARP阻害物質の共存下における反応後の蛍光強度と,PARP存在下の反応後の蛍光強度との差をBとする。
PARP阻害活性を便宜上B/A×100とした(図2)。

0022

5.図3にPARP阻害アッセイの結果の一部を示す。
これら一連の実験により,比較的高いPARP阻害活性を示す3種類の抽出成分(63番,67番,103番)が見出され,そのうちの一つ(図3中,63番)が,オオフトモモの葉であり,以降,オオフトモモの葉に関して実験を行った。

0023

<<実験例2,オオフトモモ葉抽出物の構造解析>>
1.図4及び5に,オオフトモモ葉からの成分抽出方法,ならびに有効成分の精製方法を示す。
この精製方法により,PARP阻害活性を有する画分として,2つの成分(AQ1,AQ2)を得た。
そして,2つの成分(AQ1,AQ2)についてMass,NMRによる分析を行い,その構造を明らかにすることを目的に実験を行った。
その結果,AQ1,AQ2は,それぞれVescalagin,Castalaginであることが推定されたが,AQ1,AQ2の単離は,次のとおり行った(以下,「Castalagin」はAQ2を,「Vescalagin」はAQ1を意味する。)。
(1)Castalaginの単離
レンブ(別名:オオフトモモ)の葉は,2014年に沖縄市の民家採集し,60℃で乾燥後,粉砕(IKA社MF10,3000rpmカッターミルφ1mm篩)したものを使用した。
抽出は高速溶抽出装置(DIONEX社ASE-350)により,抽出試料90g(試料/セライト45:45)を100mLセル2本に45gずつ充填し,水を溶媒に,85℃,1500psi,静置時間10分,フラッシュ容量60%,パージ時間300秒で行った。
得られた水抽出液(250mL)は,室温に戻したのちODS(YMC社YMC-Pack ODS-AQ 120-S50)を充てんしたカラム(φ50mm×L100mm)で粗分離(溶媒系:0.1%ギ酸→0.1%ギ酸/アセトニトリル80:20,流速27mL/分)を行った。
得られたcastalaginを含む画分(426mg)をゲルろ過(東ソー社TOYOPEARLHW40F,φ30mm×L300mm)により分離(水/アセトニトリル 75:25,流速6mL/分)し,粗castalagin (153mg)を得た。
この粗castalaginは最終的に向流クロマトグラフ(三鬼社CPC-LLB-M)により精製(1100rpm,水/n-ブタノールn-プロパノール100:45:55,上層移動相,流速2.5mL/分)し,106mgのcastalaginを薄褐色のアモルファスとして得た。
(2)Vescalaginの単離
レンブ(別名:オオフトモモ)の葉は2014年に沖縄市の民家で採集し,60℃で乾燥後,粉砕(IKA社MF10,3000rpm カッターミル φ1mm篩)したものを使用した。
試料70gを700mLのアセトン/水7:3で抽出(1日静置)したのち,遠心分離(3000rpm,30分)により固液分離した。
固体はさらに2回,700mLのアセトン/水7:3で抽出(1日静置)したのち,遠心分離(3000rpm,30分)による固液分離を行った。
3回の抽出操作より合わせて約2000mLの抽出液を得た。
この抽出液をろ過(東洋濾紙社 GA-100)後,減圧下アセトンを除去し,さらに濃縮を行い約500mLの水溶性抽出液を得た。
これを酢酸エチル500mLで分液を行い,その下相水相)を減圧下で酢酸エチルを除去し,さらに濃縮を行い約250mLの抽出液を得た。
この抽出液をODS(YMC社YMC-Pack ODS-AQ 120-S50)を充てんしたカラム(φ50mm×L100mm)で粗分離(0.1%ギ酸→0.1%ギ酸/アセトニトリル 80:20,流速27mL/分)を行った。
得られたvescalaginを含む画分(463mg)をゲルろ過(東ソー社TOYOPEARL HW40F,φ30mm×L300mm)により分離(水/アセトニトリル 75:25,流速6mL/分)し,粗vescalagin (236mg)を得た。
この粗vescalaginは最終的にゲルろ過(東ソー社TOYOPEARL HW40F,φ30mm×L300mm)により精製(水/アセトニトリル 75:25,流速2.5mL/分)し,205mgのvescalaginを薄褐色のアモルファスとして得た。

0024

2.図6にAQ2のESI-MS分析結果,図7にAQ1とAQ2のESI-MS分析結果(上段:AQ2,下段:AQ1)を示す。
これらの分析結果から,AQ1,AQ2,いずれもその分子量は,934であると考えられる。

0025

3.図8にAQ2のNMR分析結果を示す。
δ60-80に6本のシグナル,δ90-100にシグナルが観測されないことから,AQ2は,開環した六炭糖の構造を有すると考えられる(図8,下)。
δ105-175に35本のシグナルが観測され,そのうち5本がδ165-175のカルボニル領域であることから,AQ2は,没食子酸の構造単位を5つ有すると考えられる(図8,下)。
炭素原子数41,酸素原子数26以上,分子量934であることから,AQ2の分子式はC41H26O26であると推定される。

0026

4.図9にAQ2のメチル化化合物のNMR分析結果を示す。
水酸基をメチル化するジアゾメタン処理によるNMRの分析結果から,AQ2は,酸性の水酸基(フェノール性またはカルボン酸)が15あると推定される(図9,上)。

0027

これらの結果から,AQ2は,castalaginもしくはvescalaginであることが推定された。
また,AQ1は,MSスペクトルがAQ2のそれとほぼ一致していることから,AQ2と異性体の関係にあるvescalaginもしくはcastalaginである可能性が高いと考えられた。

0028

そこで,このことを確認するために,AQ2のNMRスペクトルデータ(表1),比旋光度([α]24D=−94.5°)及びUVスペクトルデータ(UV λ 224nm 285nm(Sh))を基にcastalaginのそれと比較したところ一致した。

0029

0030

したがって,AQ2は,castalaginであると同定した(図10)。
また,AQ1についてもAQ2と同様に,NMRスペクトルデータ,比旋光度及びUVスペクトルデータを基にcastalaginの異性体であるvescalaginのそれと比較したところ一致した。
したがって,AQ1は,vescalaginであると同定した(図10)。
なお,vescalagin及びcastalaginは,いずれもC-配糖体型エラジタンニンである。

0031

<<実験例3,AQ2のPARP阻害アッセイ>>
1.AQ2について,その構造の安定性を知ることで,経口薬としての可能性を検討することを目的に実験を行った。
表に,各前処理の方法を簡潔に示す。

0032

0033

2.図11に,AQ2について前処理を行った後,PARP阻害アッセイを行った結果を示す。
(1) AQ2は,酸の前処理を行ってもPARP阻害活性は中性処理の時とほとんど変わらず,AQ2は,酸に対して安定であることが分かった。
(2) 一方,アルカリ処理の場合は,その活性が著しく低下しており,AQ2自体がアルカリ処理によりその構造が変化していることが考えられ,アルカリに対しては,不安定であることが分かった。
3.これらの結果より,AQ2は,少なくとも酸に対しては安定であることから,経口薬剤としての設計が可能であることが示唆された。

0034

<<実験例4,AQ2と既存化合物とのPARP阻害能の比較>>
1.AQ2が,既存のPARP阻害剤と比較して,どの程度のPARP阻害能を有しているかを確認することを目的に実験を行った。

0035

2.図2に示したPARP活性阻害検定方法以外のPARP阻害を調べる方法の概要図12に示す。本方法は,ポリADPリボシル(PAR)化反応の生成物であるPAR化タンパクを免疫化学的に測定する方法である。
3.図2のPARP阻害活性の測定方法に基づいて,AQ1,AQ2の阻害活性を調べるとともに,AQ2,既存のPARP阻害剤であるオラパリブのIC50値の算出を行った。
(1) AQ1,AQ2ともに同様の阻害活性を示し,IC50値は,0.8μg/mL(856nM)であった(図13,左)。
(2) 一方,同じ実験系にてオラパリブのIC50値を算出したところ,およそ15nMであった(図14)。
(3) なお,AQ1,AQ2の構造単位として没食子酸を有する可能性が高いことを述べたが,この没食子酸についても検討を行ったところ,10μMでもPARP阻害活性を示さなかった(図14)。

0036

4.AQ2,オラパリブ,3-アミノベンズアミド,没食子酸,これらの化合物を用いたPARP阻害アッセイの結果を図15に示す。
(1) AQ2は,オラパリブよりは低く,3-アミノベンズアミドを超える阻害能を有していた。
(2) なお,没食子酸は,前述の結果(図14)と同様,PARP阻害活性を示さなかった。

0037

<<実験例5,神経細胞芽腫細胞SH-SY5Yを用いた,AQ1,AQ2によるPARP阻害活性の確認>>
1.神経細胞芽腫細胞SH-SY5Yを対象細胞として用い,AQ1,AQ2によるPARP阻害を行った際,PAR合成がどのように変化するか調べることを目的に実験を行った。

0038

2.AQ1およびAQ2を添加したDMEM+10%FCS培地でSH-SY5Y細胞を一晩培養し,回収した細胞から可溶性タンパクを調製し,SDS-PAGE(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動)の試料とした。
電気泳動後,タンパクをPVDF膜転写し,一次抗体に抗ポリADPリボース抗体を用いてタンパクに共有結合しているPAR鎖を検出した。
なお,PARP阻害剤のポジティブコントロールとしてオラパリブを用いた。

0039

3.図16に結果を示す。
(1)コントロールである一番左の濃いラダー上に示されたバンドと比較して,3μg/mL濃度のAQ1ならびにAQ2の前処理によるバンドは薄くなっており,このことからPAR合成が阻害されていることが分かった。
(2) また,3μg/mL濃度と比較して,15μg/mL濃度のAQ1ならびにAQ2のバンドは濃くなっており,PARP阻害効果は,逆に抑制されている結果となっていた。この原因については,不明である。
(3) なお,10μMのオラパリブでは,PAR合成は強く阻害されていた。

0040

<<実験例6,損傷DNA依存的なPAR合成に対するAQの阻害効果>>
1.紫外線照射によりDNA損傷を惹起し,このDNA損傷により誘発されるPAR合成が,AQ1等によりどのような影響を受けるかを明らかにすることを目的に実験を行った。

0041

2.AQ等を添加したRPMI1640+10%FCS培地でU937細胞を2時間培養し,紫外線(10mJ総量/cm2)を照射した。
回復時間2時間経過後,回収した細胞から可溶性タンパクを調製し,実験例5の方法に従ってタンパク結合PAR鎖を検出した。

0042

3.図17に結果を示す。
(1)DNA損傷のコントロールである左から2番のバンドと比較して,AQ1,AQ2による処理については,PAR合成は抑制されていなかった。
(2) 一方,オラパリブは,PAR合成を強く抑制していた。

0043

<<実験例7,AQ2のPARP阻害メカニズムに関する検討>>
1.AQ2が,どのような機序でPARP阻害を行っているかを明らかにすることを目的に実験を行った。

0044

2.図18は,PARPをAQ2で前処理を行った後,AQ2による阻害活性を調べた結果を示す。
(1) AQ2を予めPARPと反応させる前処理の有無でAQ2の阻害活性を比較しても,その阻害活性効果はほとんど変わらなかった。
(2) また,いずれについてもAQ2の濃度依存的な阻害活性効果は変わっていなかった。
(3) これらの結果より,AQ2がPARP分子そのものに不可逆的に結合するなどの構造変化をもたらし阻害活性効果を発揮している可能性はないものと考えられた。

0045

3.図19は,AQ2のZnキレート能について検討を行った結果である。
すなわち,PARPは,Znを必要とする酵素(Zn酵素)であることから,AQ2がZnをキレートにより捕捉し,PARP活性を低下させている可能性について,Znを必要とする酵素であるアルカリホスファターゼ(ALP)を対象として検討を行ったものである。
(1)陰性対象であるDMSOと比較して,AQ2添加によるALP活性はほとんど変化しておらず,また,濃度を変更してもその影響は全く見られなかった。
(2) なお,オラパリブの添加を行っても,ALP活性は,変化していないことが分かった。
(3) これらの結果から,AQ2が,ZnをキレートすることでPARP阻害効果を発揮している可能性はないものと考えられた。

実施例

0046

4.図20は,pcDNA3/HA-DNp73αを基質として,2種類の制限酵素NheIとXhoIによるインサート切り出しに対して,AQ1等が阻害効果を示すのかを調べた結果である。
すなわち,PARPは,その活性の発揮に,10mM程度のMg2+を必要とする。
関与する反応は異なるものの,NheI,XhoIは,PARP同様,その活性の発揮に,10mM程度のMg2+を必要とすることから,これらを対象として検討を行ったものである。
(1) AQ1については,3μg/mL,15μg/mL,いずれの濃度でも,阻害作用は見られなかった。
(2) 一方,AQ2について,3μg/mLでは阻害作用は見られなかったものの,15μg/mLでは,部分的な阻害作用が見られた。
(3) なお,オラパリブについて,5μMの濃度で検討を行ったが,阻害作用は見られなかった(不図示)。

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