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技術 シミュレーション方法、シミュレーションプログラム、及びこのプログラムを内蔵した記憶媒体を含むシミュレーション装置

出願人 株式会社日阪製作所
発明者 根来大和向井勇鵜飼宏太
出願日 2016年5月31日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-108863
公開日 2017年12月7日 (3年0ヶ月経過) 公開番号 2017-215191
状態 特許登録済
技術分野 食品の保存(凍結・冷却・乾燥を除く) 食品の調整及び処理一般 消毒殺菌装置 熱的手段による材料の調査、分析
主要キーワード ずれ率 温度検出センサー 立方体形 殺菌値 殺菌評価 実測温度 表層厚み 時間刻み
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年12月7日)のものです。
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図面 (4)

課題

対象物の殺菌の観点のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価し得るシミュレーション方法を提供する。

解決手段

シミュレーション方法は、対象物の加熱条件が設定されるステップS02と、加熱条件に基づき、対象物における中心部の温度としての第1推定温度T1nを演算するステップS03と、第1推定温度T1nに基づき、対象物における中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度T2nを演算するステップS04とを含む。

概要

背景

従来、缶詰レトルト食品といった包装食品を製造する際に、製造された包装食品の加熱殺菌が行われている。特定の加熱条件食品の殺菌に適しているか否かは、一般に、温度と時間との関係で表される殺菌値であるF値により評価されている。特定の加熱条件下における食品の温度履歴が定められたF値を満たす場合には、加熱条件が食品の殺菌に適していると評価できる。例えば、レトルト食品のF値は、食品衛生法により、120.0℃4分相当以上とされている。

食品の温度履歴は、加熱中の食品の温度をセンサー等により実測することでも確認できるが、形状や大きさの異なる食品に対する温度履歴を実測により確認するためには、コスト及び時間が必要である。このようなコスト及び時間を低減するために、コンピュータを用いて加熱中の食品の推定温度演算するシミュレーション方法が普及している(例えば、特許文献1参照)。

雰囲気からの伝熱により食品の温度が上昇することを前提とすると、食品全体のうちの中心部が、最も熱が伝わりにくく殺菌されにくい。従って、従来のシミュレーション方法を用いて加熱条件を評価する場合、食品の中心部の推定温度を指標として、加熱条件が評価されていた。なお、ここでいう中心部とは、物体物理的中心ではなく、温度の上昇又は下降の最も遅れる部分を指す。

さらに、食品の加熱は、殺菌だけでなく食品に含まれるたんぱく質ビタミンの分解等にも影響する。また、食品以外の加熱についても同様であり、例えば、医薬品や医療機器の加熱は、医薬品に含まれる成分や医療機器を構成する材料等に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、処理対象物の加熱条件を、殺菌以外の観点でも評価することが求められている。

概要

対象物の殺菌の観点のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価し得るシミュレーション方法を提供する。シミュレーション方法は、対象物の加熱条件が設定されるステップS02と、加熱条件に基づき、対象物における中心部の温度としての第1推定温度T1nを演算するステップS03と、第1推定温度T1nに基づき、対象物における中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度T2nを演算するステップS04とを含む。

目的

本発明は、斯かる実情に鑑み、対象物の殺菌の観点のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価し得るシミュレーション方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

対象物加熱条件が設定されるステップと、前記加熱条件に基づき、前記対象物における中心部の温度としての第1推定温度演算するステップと、前記第1推定温度に基づき、前記対象物における前記中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度を演算するステップとを含むことを特徴とするシミュレーション方法

請求項2

前記第1推定温度、前記第2推定温度、前記対象物の体積に対する前記第1領域の体積の割合、及び前記対象物の体積に対する前記第2領域の体積の割合に基づき、前記対象物の温度履歴を評価するステップをさらに含む請求項1に記載のシミュレーション方法。

請求項3

前記対象物の温度履歴を評価するステップでは、前記第1推定温度、前記第2推定温度、前記対象物の体積に対する前記第1領域の体積の割合、及び前記対象物の体積に対する前記第2領域の体積の割合に基づき第3推定温度を演算し、該第3推定温度により前記対象物の温度履歴を評価する請求項2に記載のシミュレーション方法。

請求項4

前記加熱条件は、雰囲気温度と前記対象物の加熱時間とを含み、前記第2推定温度は、前記対象物における前記第1推定温度と前記雰囲気温度との平均値である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシミュレーション方法。

請求項5

演算装置に、加熱対象物の推定温度の演算を実行させるためのシミュレーションプログラムであって、演算装置に、対象物の加熱条件の設定を受け付けるステップと、前記加熱条件に基づき、前記対象物における中心部の温度としての第1推定温度を演算するステップと、前記第1推定温度に基づき、前記対象物における前記中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度を演算するステップとを実行させるシミュレーションプログラム。

請求項6

請求項5に記載のシミュレーションプログラムを内蔵した記憶媒体を含み、前記プログラムを演算装置が実行させるシミュレーション装置

技術分野

0001

本発明は、加熱中の処理対象物温度変化を計算するシミュレーション方法シミュレーションプログラム、及びこのプログラムを内蔵した記憶媒体を含むシミュレーション装置に関する。

背景技術

0002

従来、缶詰レトルト食品といった包装食品を製造する際に、製造された包装食品の加熱殺菌が行われている。特定の加熱条件食品の殺菌に適しているか否かは、一般に、温度と時間との関係で表される殺菌値であるF値により評価されている。特定の加熱条件下における食品の温度履歴が定められたF値を満たす場合には、加熱条件が食品の殺菌に適していると評価できる。例えば、レトルト食品のF値は、食品衛生法により、120.0℃4分相当以上とされている。

0003

食品の温度履歴は、加熱中の食品の温度をセンサー等により実測することでも確認できるが、形状や大きさの異なる食品に対する温度履歴を実測により確認するためには、コスト及び時間が必要である。このようなコスト及び時間を低減するために、コンピュータを用いて加熱中の食品の推定温度演算するシミュレーション方法が普及している(例えば、特許文献1参照)。

0004

雰囲気からの伝熱により食品の温度が上昇することを前提とすると、食品全体のうちの中心部が、最も熱が伝わりにくく殺菌されにくい。従って、従来のシミュレーション方法を用いて加熱条件を評価する場合、食品の中心部の推定温度を指標として、加熱条件が評価されていた。なお、ここでいう中心部とは、物体物理的中心ではなく、温度の上昇又は下降の最も遅れる部分を指す。

0005

さらに、食品の加熱は、殺菌だけでなく食品に含まれるたんぱく質ビタミンの分解等にも影響する。また、食品以外の加熱についても同様であり、例えば、医薬品や医療機器の加熱は、医薬品に含まれる成分や医療機器を構成する材料等に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、処理対象物の加熱条件を、殺菌以外の観点でも評価することが求められている。

先行技術

0006

特許第3071412号公報

発明が解決しようとする課題

0007

本発明は、斯かる実情に鑑み、対象物の殺菌の観点のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価し得るシミュレーション方法を提供するものである。

課題を解決するための手段

0008

本発明にかかるシミュレーション方法は、対象物の加熱条件が設定されるステップと、前記加熱条件に基づき、前記対象物における中心部の温度としての第1推定温度を演算するステップと、前記第1推定温度に基づき、前記対象物における前記中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度を演算するステップとを含むことを特徴とする。

0009

上記シミュレーション方法により演算される第1、第2推定温度は、殺菌の観点や殺菌以外の観点で加熱条件を評価する際に用いられる。第1推定温度は、対象物の中心部の推定温度であるため、殺菌の観点で加熱条件を評価する際の指標に適している。一方、第2推定温度は、対象物における中心部の領域を囲む領域内の温度であるため、殺菌以外の観点で加熱条件を評価する際の指標として好ましい。このように、上記シミュレーション方法により、対象物の殺菌のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件をより正確に評価することができる。

0010

本発明にかかるシミュレーション方法の一態様として、前記第1推定温度、前記第2推定温度、前記対象物の体積に対する前記第1領域の体積の割合、及び前記対象物の体積に対する前記第2領域の体積の割合に基づき、前記対象物の温度履歴を評価するステップをさらに含んでもよい。

0011

上記シミュレーション方法において、対象物の体積に対する第1、第2領域の体積の割合を考慮することで、より正確に(対象物の実物の温度に近似した値で)温度を求めることができ、加熱条件をより正確に評価することができる。

0012

本発明にかかるシミュレーション方法の一態様として、前記対象物の温度履歴を評価するステップでは、前記第1推定温度、前記第2推定温度、前記対象物の体積に対する前記第1領域の体積の割合、及び前記対象物の体積に対する前記第2領域の体積の割合に基づき第3推定温度を演算し、該第3推定温度により前記対象物の温度履歴を評価してもよい。

0013

上記シミュレーション方法において、第3推定温度という一つの温度を用いることで、第1、第2推定温度という複数の温度を用いる場合よりも、加熱条件をより簡単に評価することができる。

0014

本発明にかかるシミュレーション方法の一態様として、前記加熱条件は、雰囲気温度と前記対象物の加熱時間とを含み、前記第2推定温度は、前記対象物における前記第1推定温度と前記雰囲気温度との平均値であってもよい。

0015

上記シミュレーション方法において、第2推定温度は、第1推定温度と雰囲気温度との平均値であるため、熱収支等の複雑な関係式を用いて演算される場合よりも、より簡単に演算される。

0016

本発明にかかるシミュレーションプログラムは、演算装置に、加熱対象物の推定温度の演算を実行させるためのシミュレーションプログラムであって、演算装置に、対象物の加熱条件の設定を受け付けるステップと、前記加熱条件に基づき、前記対象物における中心部の温度としての第1推定温度を演算するステップと、前記第1推定温度に基づき、前記対象物における前記中心部の第1領域を囲む第2領域内の温度としての第2推定温度を演算するステップとを実行させることを特徴とする。

0017

第1推定温度は、対象物の中心部の推定温度であるため、殺菌の観点で加熱条件を評価する際の指標に適しており、第2推定温度は、対象物における中心部の領域を囲む領域の温度であるため、殺菌以外の観点で加熱条件を評価する際の指標として好ましい。このように、上記シミュレーションプログラムにより、殺菌のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価することができる。

0018

本発明にかかるシミュレーション装置は、上記シミュレーションプログラムを内蔵した記憶媒体を含み、前記シミュレーションプログラムを演算装置が実行させることを特徴とする。

0019

第1推定温度は、対象物の中心部の推定温度であるため、殺菌の観点で加熱条件を評価する際の指標に適しており、第2推定温度は、対象物における中心部の領域を囲む領域の温度であるため、殺菌以外の観点で加熱条件を評価する際の指標として好ましい。このように、上記シミュレーション装置により、殺菌のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価することができる

発明の効果

0020

本発明によれば、対象物の殺菌の観点のみならず殺菌以外の観点でも加熱条件を評価し得るシミュレーション方法を提供することができる。

図面の簡単な説明

0021

図1は、本発明の一実施形態にかかるシミュレーション方法のフローチャート図である。
図2は、本発明の一実施形態にかかるシミュレーション方法により推定温度を演算する対象物のモデル図である。
図3は、本発明の別の実施形態にかかるシミュレーション方法により推定温度を演算する対象物のモデル図である。

実施例

0022

以下、本発明のシミュレーション方法について、添付図面を参酌して説明する。本実施形態のシミュレーション方法は、図1のフローチャート図に示すように、対象物の各種条件又は物性がシミュレーション装置に設定されるステップ(S01)と、加熱条件がシミュレーション装置に設定されるステップ(S02)と、シミュレーション装置が第1推定温度T1nを演算するステップ(S03)と、シミュレーション装置が第2推定温度T2nを演算するステップ(S04)と、シミュレーション装置が第3推定温度T3nを演算するステップ(S05)とを含む。本実施形態のシミュレーション方法は、シミュレーション方法を実施できるプログラムを内蔵した記憶媒体と、プログラムを実行させる演算装置(CPU)とを含むシミュレーション装置で実施される。シミュレーションの結果は、例えば、シミュレーション装置に設けられたディスプレイに表示されるとともに、メモリーカードに保存される。以下、本実施形態のシミュレーション方法に含まれる各ステップについて、順に説明する。なお、本実施形態では、対象物の中心部の温度を演算する方法として、ATS法(Ambient Temperature Slide method)を採用した場合について説明する。

0023

そこで、まず、ATS法の概略について説明する。ATS法では、雰囲気からの伝熱により対象物の温度が上昇することを前提とする。また、「雰囲気が対象物に与える熱量」と「対象物が雰囲気から受け取る熱量」とが一致することを前提として計算が行われる。ここで、単位時間をΔtとし、対象物の中心点を中心点Pとし、雰囲気温度及び対象物の中心点温度をそれぞれTwn、Tpnとし(下添え字nは時間刻みのn番目を示す)、対象物の表面温度が雰囲気温度Twnと一致することとし、対象物の内部の温度勾配を直線とし、対象物の表面から中心点までの距離をLとし、対象物の熱伝導率をkとし、対象物の表面積をAとすると、単位時間当たりに「雰囲気が対象物に与える熱量」即ち下記式の左辺が得られる。

0024

また、対象物の体積をVとし、対象物の密度をρとし、対象物の比熱をcpとし、中心点温度Tpnは体積平均温度Tp*nと一致するものとすると、単位時間当たりに「対象物が雰囲気から受け取る熱量」即ち下記式の右辺が得られる。
kA(Twn−1−Tpn−1)Δt/L=Vρcp(Tp*n−Tp*n−1)

0025

上記式においてk/(ρcp)を熱拡散係数αとして整理すると、下記式が得られる。
Tp*n=Tp*n−1+αΔt(Twn−1−Tpn−1)/L2

0026

実際には、中心点温度Tpnは体積平均温度Tp*nと異なるため、中心点温度Tpnと体平均温度Tp*nとのずれ率βを用いて、Tpn=Tp*nβとすると、下記式が得られる。
Tpn=Tpn−1+αβΔt(Twn−1−Tpn−1)/L2

0027

さらに、αβΔt/L2を伝熱係数τとすると、下記式が得られる。下記式では、単位時間あたりに、対象物の表面温度Twn−1と中心点温度Tpn−1との差分に伝熱係数τを乗じた分だけ、中心点温度が上昇することが表されている。
Tpn=Tpn−1+τ(Twn−1−Tpn−1)

0028

ところが、実際の対象物では表面と中心点とが離れているため、中心点の温度変化が表面の温度変化よりも遅れるが、この遅れは上記式に反映されていない。これに対して、上記式において、表面温度として、雰囲気温度Twn−1の代わりに、雰囲気温度Twn−1の時間変化をδ1だけ遅らせた仮想的な雰囲気温度Tw†n−1を用いると、下記式が得られる。
Tpn=Tpn−1+τ(Tw†n−1−Tpn−1)

0029

従って、ATS法を採用する場合には、ステップS01において、例えば、ユーザーの入力により、伝熱係数τ及び遅れ時間δ1がシミュレーション装置に設定される。伝熱係数τ及び遅れ時間δ1は、対象物を構成する材料や対象物の形状により異なる。ユーザーは、対象物の伝熱係数τ及び遅れ時間δ1のデータを所持している場合、このデータをシミュレーション装置に入力する。ユーザーは、対象物の伝熱係数τ及び遅れ時間δ1のデータを所持していない場合、伝熱係数τ及び遅れ時間δ1を求め、これをシミュレーション装置に入力する。伝熱係数τ及び遅れ時間δ1を求めるには、ユーザーが、適当な伝熱係数τ及び遅れ時間δ1を予測し、この予測値に基づきATS法により第1推定温度T1nを演算し、この第1推定温度T1nと実測温度とを比較して、伝熱係数τ及び遅れ時間δ1の予測値を調整し、調整した伝熱係数τ及び遅れ時間δ1に基づき第1推定温度T1nを再度演算し、実測温度に近づくまでこれを繰り返すことにより適切な伝熱係数τ及び遅れ時間δ1を求めることができる。即ち、トライアルアンドエラーの手法を採用し得る。なお、対象物の実測温度は、例えば、サーミスタのような温度検出センサーを用いて測定される。

0030

例えば、伝熱係数τが不明である場合、予測した伝熱係数τ’1に基づき第1推定温度T’1nを演算し、第1推定温度T’1nと実測温度との差を計算する。第1推定温度T’1nと実測温度との差が、所望の値以下である場合、伝熱係数τ’1をシミュレーション装置に入力する。

0031

第1推定温度T’1nと実測温度との差が所望の値よりも大きい場合、伝熱係数τ’1に近い四つの伝熱係数τ’’1…を予測し、四つの伝熱係数τ’’1…各々に基づき第1推定温度T’’1n…を演算し、四つの第1推定温度T’’1n…と実測温度との差を計算する。

0032

第1推定温度T’’1n…と実測温度との差の最小値が、第1推定温度T’1nと実測温度との差よりも小さく、且つ、所望の値よりも小さい場合、第1推定温度T’’1n…と実測温度との差の最小値の演算に用いた伝熱係数τ’’1をシミュレーション装置に入力する。

0033

第1推定温度T’’1n…と実測温度との差の最小値が、第1推定温度T’1nと実測温度との差よりも小さく、且つ、所望の値よりも大きい場合、第1推定温度T’’1n…と実測温度との差の最小値の演算に用いた伝熱係数τ’’1に近い四つの伝熱係数τ’’’1…を予測し、四つの伝熱係数τ’’’1…各々に基づき第1推定温度T’’’1n…を演算する等の一連の計算を繰り返す。

0034

第1推定温度T’’1n…と実測温度との差の最小値が、第1推定温度T’1nと実測温度との差よりも大きい場合、伝熱係数τ’1にさらに近似した四つの伝熱係数τ’’’1…を予測し、四つの伝熱係数τ’’’1…各々に基づき第1推定温度T’’’1n…を演算する等の一連の計算を繰り返す、又は、伝熱係数τ’1をシミュレーション装置に入力する。

0035

ステップS02では、例えば、ユーザーの入力により、シミュレーション装置に対象物の加熱条件が設定される。加熱条件は、例えば、雰囲気温度Twn及び加熱時間である。

0036

ステップS03では、シミュレーション装置が、ステップS01及びステップS02において設定された各種条件に基づき、対象物における中心部の温度である第1推定温度T1nを演算する。ここでいう「対象物における中心部」として、対象物の中心点P又はその近傍を採用し得るが、本実施形態では、対象物の中心点Pを採用する。この場合、第1推定温度T1として、対象物の中心点温度Tpnが用いられる。なお、対象物の中心点Pとして、対象物の質量中心、即ち、対象物の重心を採用し得る。対象物の重心の位置は、公知の方法により求めることができる。

0037

中心点温度Tpnは、上述したように、ATS法で導出される下記式により演算される。
Tpn=Tpn−1+τ(Tw†n−1−Tpn−1)

0038

ステップS04では、シミュレーション装置が、第1推定温度T1n及び雰囲気温度Twnに基づき、前記第2領域内の温度としての第2推定温度T2nを演算する。本実施形態では、第2推定温度T2nは、中心点温度Tpn(第1推定温度T1nに相当)及び雰囲気温度Twnの単純平均値として表され、具体的には、下記式により演算される。
T2n=(Tpn+TWn)/2

0039

ステップS05では、シミュレーション装置が、第1推定温度T1n、第2推定温度T2n、対象物100の体積に対する第1領域AR1の体積VAR1の割合、及び対象物100の体積に対する第2領域AR2の体積VAR2の割合に基づいて、第3推定温度T3nを演算する。具体的には、第3推定温度T3nは、第1領域AR1と第2領域AR2との体積平均温度Tp*nとして演算される。第1推定温度T1nとしては、上述したように、中心点温度Tpnが用いられる。第2推定温度T2nとしては、上述したように、中心点温度Tpn及び雰囲気温度Twnの単純平均値が用いられる。これにより、体積平均温度Tp*nは、下記式により、中心点温度Tpn及び雰囲気温度Twnに基づき演算される。
Tp*n=0.296Tpn+0.704(Twn+Tpn)/2

0040

対象物の形状としては、立方体形状、直方体形状、その他の形状が考えられるが、本実施形態では、対象物の形状が、図2に示すような立方体形状であると仮定する。対象物100は、対象物100の中心部の領域である第1領域AR1と、第1領域AR1を囲む第2領域AR2とを含む。第1領域AR1が中心部の領域であれば、対象物をどのように二分割してもよいが、本実施形態では、対象物100を中心部分と表層部分とに二分割し、中心部分を第1領域AR1とし、表層部分を第2領域AR2としている。

0041

上記式の導出は、以下のように行う。対象物100における一辺の長さは、図2に示すように、何れもL1とする。これにより、対象物100の体積VはL13と表され、対象物100の表面積Aは6L12と表される。ここで、第1領域AR1の表面から第2領域AR2の表面までの距離をL2とすると、距離L2は対象物100における表層厚み(V/A)と一致するため、距離L2は下記のように演算される。
L2=V/A=L1/6

0042

この場合、第1領域AR1の体積VAR1は、下記のように演算される。
VAR1=(L1−2・L2)3=(2/3)3L13

0043

一方、体積平均温度Tp*nは、中心点温度Tpnに、対象物100の体積Vに対する第1領域AR1の体積VAR1の比率を乗じたものと、中心点温度Tpn及び雰囲気温度Twnの単純平均値に、対象物100の体積Vに対する第2領域AR2の体積VAR2の比率を乗じたものとを足し合わせることで得られる。具体的には、体積平均温度Tp*nは、下記式により演算される。
Tp*n=Tpn・VAR1/V+((Twn+Tpn)/2)・(V−VAR1)/V
上記式に、VAR1=(2/3)3L13、及び、V=L13を代入することで、体積平均温度Tp*nを演算する下記式が得られる。
Tp*n=(2/3)3Tpn+(1−(2/3)3)・(Twn+Tpn)/2
上記式における数値を、小数点第4位で四捨五入すると下記式が得られる。
Tp*n=0.296Tpn+0.704(Twn+Tpn)/2

0044

このように、本実施形態に係るシミュレーション方法を実施することで、第1、第2、第3推定温度を演算することができる。演算された第1、第2、第3推定温度は、例えば、対象物がレトルト食品である場合、この食品の加熱条件を、殺菌の観点等の複数の観点で評価する場合の指標として用いられる。以下、殺菌の観点及びたんぱく質の分解の観点という2つの観点で、第1、第2、第3推定温度を指標として、食品の加熱条件を評価する場合について説明する。

0045

特定の加熱条件が食品の殺菌の観点で適切か否かは、一般に、加熱時の食品の温度履歴が、殺菌評価積算値であるF値を満たすか否かで評価される。また、殺菌の観点では、最も殺菌されにくい食品の中心部の温度を評価することが好ましい。そのため、殺菌の観点で加熱条件を評価するには、第1推定温度T1nから第1推定温度履歴T1を求めて、この第1推定温度履歴T1が定められたF値に相当するか否かを評価する。

0046

特定の加熱条件がたんぱく質の分解の観点で適切か否かは、例えば、加熱時の食品の温度履歴が、温度と時間との関係で表されるたんぱく質分解評価積算値であるC値を満たすか否かで評価される。また、たんぱく質の分解の観点では、加熱中の食品全体の温度を評価することが好ましい。そのため、たんぱく質の分解の観点で加熱条件を評価するには、第3推定温度T3nから第3推定温度履歴T3を求めて、この第3推定温度履歴T3が定められたC値を満たすか否かを評価する。

0047

このように、殺菌の観点で加熱条件を評価する際には、第1推定温度T1nが指標として用いられ、たんぱく質の分解の観点で加熱条件を評価する際には、第3推定温度T3nが指標として用いられる。以下、本実施形態の効果をまとめて説明する。

0048

本実施形態のシミュレーション方法により演算される第1推定温度T1nは、上述のように、殺菌の観点で加熱条件を評価する際の指標に適している。一方、第2推定温度T2nは、対象物における中心部の領域を囲む領域内の温度であるため、殺菌以外の観点で加熱条件を評価する際の指標として好ましい。このように、本実施形態のシミュレーション方法により、対象物の殺菌のみならず殺菌以外の観点でもより正確に加熱条件を評価することができる。

0049

本実施形態のシミュレーション方法において、対象物100の体積Vに対する第1、第2領域AR1、AR2の体積VAR1、VAR2の割合を考慮することで、より正確に(対象物100の温度に近似した値で)温度を求めることができ、加熱条件をより正確に評価することができる。

0050

第3推定温度T3nという一つの温度を用いることで、第1、第2推定温度T1n、T2nという複数の温度を用いる場合よりも、加熱条件をより簡単に評価することができる。

0051

第2推定温度T2nは、第1推定温度T1nと雰囲気温度Twnとの平均値として算出されることにより、熱収支等の複雑な関係式等を用いて演算される場合よりも、より簡単に演算される。

0052

なお、本発明のシミュレーション方法は、上記実施形態の方法に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。

0053

上記実施形態では、対象物の形状が立方体形状であると仮定したが、これに限定されない。例えば、対象物の形状が直方体形状、円柱形状や球形状等その他の形状である仮定してもよい。図3に示すように、対象物200の形状が直方体形状であると仮定すると、以下のように、中心点温度Tpn及び雰囲気温度Twnに基づく体積平均温度Tp*n、即ち、第3推定温度T3nを演算することができる。

0054

対象物200が、中心部の領域である第1領域AR1と、第1領域AR1を囲む第2領域AR2とを含むものとする。第2領域AR2は、対象物200における表層部分とする。対象物200において、底面の短辺の長さをwaとし、底面の長辺の長さをwbとし、高さをHとする。この場合、対象物200の体積VはV=wa・wb・Hで表される。また、対象物200の表面積Aは、2(wa・wb+wa・H+wb・H)で表される。一方、第1領域AR1の表面から第2領域AR2の表面までの距離L2とすると、第1領域AR1の体積VAR1は、下記式で表される。
VAR1=(wa−2L2)・(wb−2L2)・(H−2L2)

0055

距離L2としては表層厚み(V/A)を採用できるため、距離L2は下記式により演算される。
L2=V/A=wa・wb・H/(wa・wb+wa・H+wb・H)

0056

さらに、体積平均温度Tp*nは下記式で表される。
Tp*n=Tpn・VAR1/V+((Twn+Tpn)/2)・(V−VAR1)/V

0057

上記式に、体積V及び体積VAR1の数値を代入することで、中心点温度Tpn及び雰囲気温度Twnに基づき、体積平均温度Tp*nが演算される。

0058

このように、体積平均温度Tp*n、即ち、第3推定温度T3nを求めることで、対象物200の形状により適した推定温度が演算される。

0059

また、上記実施形態では、第2推定温度T2nとして、中心点温度Tpnと雰囲気温度Twnとの単純平均値を用いていたが、これに限定されない。例えば、第2推定温度T2nとして、別の平均値を用いてもよい。具体的には、第2推定温度T2nとして、第2領域内の温度勾配を考慮した平均値、第2領域内の形状や比熱を考慮した平均値、第2領域を任意に二分割しこれらの体積を考慮した平均値等を用いてもよい。第2推定温度T2nとして、このような平均値を用いることで、対象物の実物の温度により近似した温度を得ることができる。

0060

上記実施形態では、第3推定温度T3nを演算し、この第3推定温度T3nから求めた第3推定温度履歴T3を指標として、殺菌以外の観点で加熱条件を評価していたが、これに限定されない。例えば、第3推定温度T3nを演算せず、第1推定温度T1n及び第2推定温度T2nを指標として、殺菌以外の観点で加熱条件を評価してもよい。第1推定温度T1n及び第2推定温度T2nを指標とすれば、第3推定温度を指標する場合よりも、第1、第2領域の温度履歴をそれぞれ個別に評価できるため、対象物の実物の温度履歴に近似したより正確な加熱条件の評価が可能となる。

0061

上記実施形態では、対象物を二分割して第3推定温度を演算していたが、これに限定されない。例えば、対象物を三以上の複数の領域に分割し、それぞれの領域における推定温度を演算してもよい。また、各推定温度から求めた推定温度履歴を指標として加熱条件を評価してもよい。三以上の複数の領域の各々における推定温度履歴を指標とすることで、対象物の温度履歴により適した加熱条件の評価が可能となる。

0062

上記実施形態では、第1推定温度をATS法により演算したが、これに限定されない。例えば、Ballの数式法等の別の方法によって、第1推定温度を演算してもよい。

0063

上記実施形態のシミュレーション装置は、対象物を加熱する装置と別の装置であってもよいし、対象物を加熱する装置に組み込まれていてもよい。

0064

上記実施形態では、対象物はレトルト食品であったが、これに限定されない。例えば、缶詰等の他の包装食品や食品以外のもの、例えば、医薬品、注射器などの医療機器等であってもよい。

0065

上記実施形態では、対象物は食品であり、対象物を加熱する際の加熱条件を、殺菌とたんぱく質の分解との2つの観点で評価したが、これに限定されない。例えば、対象物が食品である場合、殺菌以外の評価の観点として、ビタミンの分解、酵素の分解、テクスチャーや色の劣化などが挙げられる。また、対象物が医薬品や医療機器等である場合、殺菌以外の評価の観点として、医薬品に含まれる成分や医療機器を構成する材料の変質が挙げられる。

0066

本発明のシミュレーション方法は、レトルト食品、缶詰、医薬品、医療機器等の加熱による温度変化を計算する際に利用することができる。

0067

100…対象物、AR1…第1領域、AR2…第2領域、P…中心点

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