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課題
解決手段
ヴィオラセインを有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤を提供する。また、かかるチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする化粧品、医薬品、医薬部外品を提供する。
概要
背景
化粧品などのように直接的に人体に触れる製品の着色には天然色素が用いられることが多い。人体や環境に対する有害性が疑われることのある合成色素に対して比較的安全性に優れるからである。このような天然色素には、色素としての作用だけでなく薬理的作用が期待できるものも存在する。
例えば、細菌由来の天然青色色素であるヴィオラセインに、抗菌作用や抗ガン作用があることが近年分かってきた。特許文献1には、海洋細菌Pseudoalteromonas sp.株から精製したヴィオラセインを有効成分とするプロテインキナーゼ阻害剤が開示されている。プロテインキナーゼは生体の多くの機能に関与し、プロテインキナーゼの活性を阻害することにより疾患の予防や治療が期待される。そこで、上記ヴィオラセインがプロテインキナーゼの活性を阻害することを明らかにしている。
概要
ヴィオラセインを化粧品などに応用するうえで、有用な薬理的効果を明らかにし、係る薬理的効果を奏するヴィオラセイン含有の化粧品などを提供すること課題とする。とくにヴィオラセインが、しみやそばかすなどの皮膚の色素沈着の原因となるメラニンの生成反応過程において触媒作用を有する酸化酵素チロシナーゼの活性を阻害することを明らかにする。ヴィオラセインを有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤を提供する。また、かかるチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする化粧品、医薬品、医薬部外品を提供する。
目的
そこで、ヴィオラセインを化粧品などに応用するうえで、有用な薬理的効果を明らかにし、かかる薬理的効果を奏するヴィオラセイン含有の化粧品などを提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
ヴィオラセインを有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤。
請求項2
請求項1に記載のチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする化粧品。
請求項3
請求項1に記載のチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする医薬品。
請求項4
請求項1に記載のチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする医薬部外品。
技術分野
0001
本発明は、天然青色色素であるヴィオラセインを有効成分として含有するチロシナーゼ活性阻害剤などに関する。
背景技術
0002
化粧品などのように直接的に人体に触れる製品の着色には天然色素が用いられることが多い。人体や環境に対する有害性が疑われることのある合成色素に対して比較的安全性に優れるからである。このような天然色素には、色素としての作用だけでなく薬理的作用が期待できるものも存在する。
0003
例えば、細菌由来の天然青色色素であるヴィオラセインに、抗菌作用や抗ガン作用があることが近年分かってきた。特許文献1には、海洋細菌Pseudoalteromonas sp.株から精製したヴィオラセインを有効成分とするプロテインキナーゼ阻害剤が開示されている。プロテインキナーゼは生体の多くの機能に関与し、プロテインキナーゼの活性を阻害することにより疾患の予防や治療が期待される。そこで、上記ヴィオラセインがプロテインキナーゼの活性を阻害することを明らかにしている。
先行技術
0004
特開2010−126469号公報
発明が解決しようとする課題
0005
ヴィオラセインの薬理的作用についてはいまだ不明な点が少なくない。そこで、ヴィオラセインを化粧品などに応用するうえで、有用な薬理的効果を明らかにし、かかる薬理的効果を奏するヴィオラセイン含有の化粧品などを提供すること課題とする。
課題を解決するための手段
0006
上記課題を解決するための手段として、以下の発明などを提供する。すなわち、ヴィオラセインを有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤を提供する。また、係るチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする化粧品、医薬品、医薬部外品を提供する。
発明の効果
0007
本発明により、メラニン生成反応に寄与する酵素であるチロシナーゼの活性を阻害し得るチロシナーゼ活性阻害剤、かかるチロシナーゼ活性阻害剤を配合した化粧品、医薬品、医薬部外品を提供することができる。
図面の簡単な説明
0008
メラニン生成反応をチロシナーゼの触媒作用とともに示す図
ヴィオラセインの化学構造を示す図
本実施形態のヴィオラセイン製造方法の一例を示すフロー図
ヴィオラセインを含有するクリームを調製する場合の配合例
ヴィオラセインを含有する軟膏を調製する場合の配合例
ヴィオラセインのチロシナーゼ活性阻害作用を確認するための試料を添加する場合の吸光度測定方法
ヴィオラセインのチロシナーゼ活性阻害作用を確認するための試料を添加しない場合の吸光度測定方法
ヴィオラセインのチロシナーゼ活性阻害作用を確認するための吸光度測定の結果
実施例
0009
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
<実施形態>
<概要>
0010
しみやそばかすなどの皮膚の色素沈着は、表皮に生成したメラニンが表皮や真皮に沈着することにより生じる。メラニン(Melanin)は、メラノサイト(Melanocyte)に含まれるアミノ酸であるチロシン(Tyrosine)が酸化酵素であるチロシナーゼ(Tyrosinase)の働きにより反応することで生成されることが知られている。すなわち、紫外線を浴びるなどの刺激を肌が受けると、脳下垂体から情報伝達物質の一つであるメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)が分泌され、表皮のメラノサイトに働く。これによりチロシナーゼが活性化する。
0011
図1は、メラニン生成反応をチロシナーゼの触媒作用とともに示す図である。まず、チロシナーゼのモノフェノラーゼ作用により基質であるチロシンが酸化されドーパ(DOPA:Dihydroxyphenylalanine)になる。続いて、ジフェノラーゼ作用によりドーパが酸化されドーパキノン(DOPAquinone)になる。ドーパキノンはさらに酸化されドーパクロム(DOPAchrome)となり、さらなる反応経路を経てメラニンとなる。
0012
このようにメラニン生成反応においては、酸化酵素であるチロシナーゼの触媒作用が重要な役割を担っている。かかる事情を鑑み、本実施形態において、ヴィオラセインがチロシナーゼの活性を阻害する作用を有することを示すとともに、ヴィオラセインを有効成分として含有するチロシナーゼ活性阻害剤等について示す。
<構成>
0013
本実施形態は、ヴィオラセインを有効成分として含有することを特徴とするチロシナーゼ活性阻害剤であり、かかるチロシナーゼ活性阻害剤を含有する化粧品、医薬品、医薬部外品である。チロシナーゼの活性を阻害することによりメラニンの生成を抑制し、しみやそばかすなどの色素沈着を緩和し得る。
0014
「ヴィオラセイン(Violacein)」は、ヴィオラセイン産生細菌が産生する青紫の色素である。ヴィオラセイン産生細菌としては、「Chromobacterium violaceum」、「Chromobacterium fluviatile」、「Pseudoalteromonas luteoviolacea」、「Janthinobacterium lividum」などがある。図2は、ヴィオラセインの化学構造を示す図である。
0015
ヴィオラセインを得るための方法としては、ペプトンなどを含む液体培地などでヴィオラセイン産生細菌を培養し、培養した菌およびヴィオラセインを遠心分離機などで分離し、分離後、上澄みを除去し沈殿物にエタノールを加えて抽出する方法などがある。
0016
図3は、ヴィオラセインを製造する方法の一例を示すフロー図である。まず、「前培養ステップ」(S0301)において、ヴィオラセイン産生細菌を前培養する。単離した細菌をいきなり大容量の培地へ接種するとヴィオラセインを生産しない場合が多いため、最初は少量の培地へ入れて細菌数を増やし、後の本培養の前段階として行うステップである。前培養は、例えば、普通ブイヨン:1.8g、寒天:1.5g、純水:1000mlを培地とし、ヴィオラセイン産生細菌であるChromobacterium violaceum VP−2株を1白金耳分接種し、培養温度を25℃として2日間程度静置培養する。
0017
次に、「本培養ステップ」(S0302)において、前培養したヴィオラセイン産生細菌を本培養する。例えば、ポリペプトン:2.0g、K2HPO4:0.15g、MgSO4・7H2O:0.15g、グリセリン1.25g、純水:100mlを加えたキングB培地(pH7.2±0.2)に、前培養したヴィオラセイン産生細菌を接種し、培養温度を25℃とし、4日間程振とう培養する。
0018
次に、「抽出ステップ」(S0303)において、本培養後、遠心分離により菌体及び色素を沈殿させ、上清を取り除き沈殿物にエタノールを加えヴィオラセインを抽出した。なお、遠心分離は、RCF:8000×g、温度:4℃、時間:5分、で行った。
0019
次に、「濾過ステップ」(S0304)において、抽出ステップにて得られたヴィオラセイン抽出液を濾過する。そして、「乾固ステップ」(S0305)において、濾過された濾過物の溶媒であるエタノールをロータリーエバポレーターにより乾固状にする。
0020
次に、「再沈殿ステップ」(S0306)において、乾固状になった濾過物を再結晶化させる。そして、「凍結乾燥ステップ」(S0307)において、再沈殿ステップで得られた再沈殿物に純水を加え遠心分離した後、上清を除去した沈殿物を凍結乾燥する。このとき、加える純水の温度を80℃程にし、3回程に分けて加えることが好ましい。先の再結晶ステップ終了後の段階でヴィオラセインを収集した場合には、培地100mlあたり30mg程の収集量に過ぎないが、本凍結乾燥ステップを経ることにより、収集量は培地100mlあたり80mg程にまで向上した。なお、上述したヴィオラセインの製造過程においてデオキシヴィオラセインも生産され得るが、これを併せて含有しチロシナーゼ活性阻害剤としてもそのチロシナーゼ活性阻害作用を何ら妨げるものではない。
0021
本実施形態のチロシナーゼ活性阻害剤は、ヴィオラセインを単独で用いるほか、化粧品、医薬品、医薬部外品などの所望の目的に応じて通常用いられている成分や通常使用が許容されている成分を適宜配合することができる。
0022
ヴィオラセインを有効成分とするチロシナーゼ活性阻害剤を含有する化粧品としては、例えば、スキンケア化粧品として美容液、クリーム、ローション、洗顔料、乳液、化粧水、軟膏、クレンジング、日焼け止めなどや、メーキャップ化粧品としてファンデーションやアイシャドーなどとすることができる。
0023
例えば、美容液とする場合には、ヴィオラセインの他、水、コメヌカ油、ペンチレングリコール、グリセリン、スクワラン、パルミチン酸セチル、ダイマージリノール酸などを主成分とし、ヒアルロン酸ナトリウム、水添ナタネ油アルコール、カルボマー、キサンタンガム、水酸化カリウム、ジメチコン、ポリソルベート−60、ステアリン酸グリセリル、水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、尿素、アルギニン、アルブチン、クエン酸などを添加剤とする。そして、各成分を水溶性原料・油溶性原料に分けて溶解してから、それらを加熱して混合・乳化する。これを冷却しながらエキスなどの添加物を配合し、さらに低温になったところで精油や香料などの揮発性の高いものを添加する。その後、所定の安全性の検査(菌、pH、温度安定性、粘度等)を行い、瓶などに充填して製品として提供することができる。
0024
また、本実施形態のチロシナーゼ活性阻害剤のほかに、チロシナーゼの活性を阻害する作用を有する成分やメラニンの生成を抑制する成分をさらに配合して化粧品、医薬品、医薬部外品としてもよい。前者の成分としては、例えば、アルブチン、ヒドロキノン、エラグ酸、コウジ酸、甘草エキス、ビタミンC誘導体、ロドデノール、4MSK、レスベラトロールがある。また、後者の成分としては、トラネキサム酸、カモミラET、ルシノール、リノール酸、ニコチン酸アミド、マグノリグナンなどがある。
0025
図4は、化粧品としてクリームを調製する場合の具体的な配合例の一つを示すものである。図示するように、チロシナーゼ活性阻害作用を有するヴィオラセイン、抗酸化作用及びチロシナーゼ活性阻害作用を有するレスベラトロール、乳化成分であるモノステアリン酸グリセリドとモノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、安定化成分であるセタノールと流動パラフィン、エモリエント成分であるホホバ油、保湿成分であるプロピレングリコール、そして、香料及び水を配合する。なお、ヴィオラセインは防腐作用を有するため、別途防腐剤を添加せずに済む場合があるとともに、青色色素としての機能を果たし得る。
0026
また、外用薬としての軟膏を調整する配合例を図5に示す。図示するように、ヴィオラセイン、肌荒れ改善成分であるグリチルレチン酸、角層柔軟成分であるイオウ、安定化成分であるサラシミツロウと流動パラフィン、乳化成分であるラノリンポリソルベート80、エモリエント成分であるオリーブ油、そして、防腐剤及び水を配合する。なお、ヴィオラセインは防腐作用を有するため、別途防腐剤を添加せずに済む場合があるとともに、青色色素としての機能を果たし得る。
0027
本実施形態のチロシナーゼ活性阻害剤を配合する医薬品又は医薬部外品は、皮膚で生じるメラニンの生成反応に働くものであることから外用薬とすることが好適であるが、内服薬とすることを妨げるものではない。内服薬とする場合には、常法によりヴィオラセインを粉体や粒体としカプセルに充填したり、あるいは、賦形剤、結合剤、崩壊剤などを添加して打錠機等を用いて錠剤として製造することができる。また、サプリメント、健康食品としてもよく、その場合には、内服薬のようにカプセルや錠剤のような形態で提供したり、飲料、調味料、菓子等の各種の食品に添加した態様で提供してもよい。
<試験チロシナーゼ活性阻害作用>
0028
ヴィオラセインのチロシナーゼ活性阻害菌作用を確認するための試験を行った。L−チロシンを基質として、マッシュルームチロシナーゼ(マッシュルーム由来のチロシナーゼ)を加えた溶液に、濃度の異なるヴィオラセイン溶液を添加し、反応後の溶液の484nmにおける吸光度を測定した。なお、484nmはメラニンの吸収波長である。また、比較対象として、既知のチロシナーゼ活性阻害作用を有するβ−アルブチンをヴィオラセインに代えて添加した試料も調製した。なお、β−アルブチンは植物由来のフェノール性配糖体であり、化粧品などに使用されている。
0029
図6は、上述の吸光度測定を行った試験方法を示す図である。図示するようには、L−チロシン1.5ml(2.5mM)と、1/15Mリン酸バッファー、とマッシュルームチロシナーゼ0.05mlに、濃度の異なるヴィオラセイン溶液(A.1μg/ml、B.10μg/ml、C.20μg/ml、D.50μg/ml)、または、ヴィオラセインと同様に濃度の異なるβ−アルブチン溶液を加え、さらに反応溶媒として5%のDMSO(ジメチルスルホキシド)溶液を用い、それら各試料を37度で保温し、マイクロプレートリーダーで吸光度(484nm)を25分間測定した。また、ヴィオラセイン又はβ−アルブチンのいずれも加えない試料をコントロールとし、DMSOのみを加えた試料についても同様の吸光度測定を行った。
0030
図7は、上記試験の結果を示すグラフである。図示するように、ヴィオラセイン溶液は、コントロール及びDMSOのみを加えた試料と比較して吸光度が低く、チロシナーゼ活性阻害能を確認することができた。また、ヴィオラセイン溶液は、いずれの濃度においても同濃度のβ−アルブチンに対して優れたチロシナーゼ活性阻害能を示した。
0031
図8は、DMSO5%溶液のチロシナーゼ活性阻害率を0%として算出したヴィオラセイン溶液(50μg/ml)とβ−アルブチン溶液(50μg/ml)のチロシナーゼ活性阻害率を示すグラフである。β−アルブチン溶液の29.6%に対してヴィオラセイン溶液は58.5%と優れた結果となった。
0032
上述した試験結果に基づき、ヴィオラセインとβ−アルブチンのチロシナーゼ活性に対するIC50値(50%阻害濃度)を求めた。ヴィオラセインのIC50値は37.5μg/mlであり、β−アルブチンのIC50値は68.8μg/mlであった。この結果より、ヴィオラセインは、β−アルブチンの1.8倍のチロシナーゼ活性阻害能を有することがわかった。
<効果>
0033
本実施形態により、ヴィオラセインを有効成分として含有するチロシナーゼ活性阻害剤を提供することができる。また、かかるチロシナーゼ活性阻害剤を配合したことを特徴とする化粧品、医薬品、医薬部外品を提供することができる。
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