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技術 網入り又は線入りの建築用強化ガラス板及びその製造方法

出願人 セントラル硝子株式会社
発明者 都築達也平田直也三田村直樹松田裕中村洋貴村本正
出願日 2016年5月24日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-103232
公開日 2017年11月30日 (3年0ヶ月経過) 公開番号 2017-210386
状態 特許登録済
技術分野 ガラスの表面処理
主要キーワード 金網入り 軟鋼線 風冷強化処理 簡易図 セミキルド鋼 網入りガラス板 防煙垂壁 一般建築物
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図面 (4)

課題

本発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる方法を提供することを課題とした。

解決手段

網入り又は線入りの建築用ガラス板において、前記ガラス板は、厚み方向に、順にガラス板表面圧縮応力層、及び金属線材を有する内部層を有するものであり、前記内部層は引張応力層を有し、前記引張応力層は、(圧縮応力層の圧縮応力×圧縮応力層深さ)/(板厚−2×圧縮応力層深さ)で算出される引張応力の最大値が20MPa以下であることを特徴とする網入り又は線入りの建築用強化ガラス板

概要

背景

金属線金網などの金属線材封入された網入り又は線入りの建築用ガラス板は、火災地震や衝撃などでガラス割れても、内部の金属線又は金網によってガラスの破片飛散しにくい。このようなガラス板は、一般建築物などの内外装用ガラス、破損時に破片落下の可能性があるベランダ間仕切り道路の壁、防煙垂壁防火性能が必要とされる開口部や出入り口などに使用されている。

金属線材はガラス板にとっては異物でもあるため、金網入り又は金属線入りのガラス板の場合、通常のクリアなガラス板に比べて破壊強度が小さく、割れやすいことが知られている(非特許文献1、特許文献1参照)。

そのため、網入り又は線入りの建築用ガラス板の強度向上について検討がなされており、例えば特許文献2では、ガラス内部に封入する金網を予め焼鈍した後に、溶融ガラス内に挿入することによって強度を向上させることが提案されている。当該文献では、金網用に用いられる鋼は400〜500℃で再結晶化するという熱的性質由来して、製造工程内のガラスの冷却過程で金網の体積が減少し、金網の周囲のガラスに引張応力を発生させる為、金網入りガラス板の破壊強度が小さくなるという課題が開示されている。

概要

本発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる方法を提供することを課題とした。網入り又は線入りの建築用ガラス板において、前記ガラス板は、厚み方向に、順にガラス板表面圧縮応力層、及び金属線材を有する内部層を有するものであり、前記内部層は引張応力層を有し、前記引張応力層は、(圧縮応力層の圧縮応力×圧縮応力層深さ)/(板厚−2×圧縮応力層深さ)で算出される引張応力の最大値が20MPa以下であることを特徴とする網入り又は線入りの建築用強化ガラス板

目的

本発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる方法を提供することを課題とした。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

入り又は線入りの建築用ガラス板において、前記ガラス板は、厚み方向に、順にガラス板表面圧縮応力層、及び金属線材を有する内部層を有するものであり、前記内部層は引張応力層を有し、前記引張応力層は、(圧縮応力層の圧縮応力×圧縮応力層深さ)/(板厚−2×圧縮応力層深さ)で算出される引張応力の最大値が20MPa以下であることを特徴とする網入り又は線入りの建築用強化ガラス板

請求項2

前記金属線材は、線径が0.3〜0.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の網入り又は線入りの建築用強化ガラス板。

請求項3

前記金属線材が金網であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の網入り又は線入りの建築用強化ガラス板。

請求項4

前記ガラス板の厚み方向において、前記金属線材の厚み方向の中央と、前記ガラス板の厚み方向の中央とが、重ならないことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の網入り又は線入りの建築用強化ガラス板。

請求項5

前記圧縮応力層は、圧縮応力が300〜900MPa、圧縮応力層深さが5〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の網入り又は線入りの建築用強化ガラス板。

請求項6

網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法において、前記ガラス板がソーダライムガラスであり、該ガラス板を200℃以上、400℃未満の気体雰囲気下で加熱する予備加熱工程、350〜500℃に加熱された硝酸カリウムを含む溶融塩に、予備加熱されたガラス板表面を接触させ、該表面のナトリウムイオンと前記溶融塩中カリウムイオンとをイオン交換する強化工程、及びイオン交換後に、前記ガラス板を1〜30℃/分の冷却条件徐冷する徐冷工程、を有する網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法。

請求項7

前記予備加熱工程が、内部の温度を200℃以上、400℃未満に維持した加熱装置内に前記ガラス板を入れ、該ガラス板の温度を昇温させるものであり、該加熱装置内のガラス板表面は、気体と接することを特徴とする請求項6記載の網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、金属線金網などの金属線材封入されたガラス板に関し、特に破壊強度が向上された網入り又は線入りの建築用強化ガラス板に関する。

背景技術

0002

金属線や金網などの金属線材が封入された網入り又は線入りの建築用ガラス板は、火災地震や衝撃などでガラス割れても、内部の金属線又は金網によってガラスの破片飛散しにくい。このようなガラス板は、一般建築物などの内外装用ガラス、破損時に破片落下の可能性があるベランダ間仕切り道路の壁、防煙垂壁防火性能が必要とされる開口部や出入り口などに使用されている。

0003

金属線材はガラス板にとっては異物でもあるため、金網入り又は金属線入りのガラス板の場合、通常のクリアなガラス板に比べて破壊強度が小さく、割れやすいことが知られている(非特許文献1、特許文献1参照)。

0004

そのため、網入り又は線入りの建築用ガラス板の強度向上について検討がなされており、例えば特許文献2では、ガラス内部に封入する金網を予め焼鈍した後に、溶融ガラス内に挿入することによって強度を向上させることが提案されている。当該文献では、金網用に用いられる鋼は400〜500℃で再結晶化するという熱的性質由来して、製造工程内のガラスの冷却過程で金網の体積が減少し、金網の周囲のガラスに引張応力を発生させる為、金網入りガラス板の破壊強度が小さくなるという課題が開示されている。

0005

国際公開2013/12044号公報
特開2004−345923号公報
特開2015−175830号公報

先行技術

0006

作花済夫編「ガラスの事典」書店、1985年9月20日、p.430

発明が解決しようとする課題

0007

前述したように、金属線材が封入された網入り又は線入りの建築用ガラスは、ガラスと金属線材の熱的性質が異なることに起因して、内部に何も封入されていないような通常のガラス板よりも破壊強度が小さいという問題がある。しかし、網入り又は線入りの建築用ガラスは、製造過程で網に処理を施したり、使用する材料を選択する他に破壊強度を向上させる有効な方法はなかった。

0008

例えば、通常のガラス板の破壊強度を向上させる処理方法としては、一般的に物理強化処理化学強化処理といった強化処理が広く知られている。当該処理はどちらも加熱・冷却工程を有し、特に急冷工程を経ることによってガラス板の表面に圧縮応力層、内部に引張応力層を生じさせる。上記のような強化処理が施されたガラス板は、表面の圧縮応力層によって破壊強度が向上する一方、内部の引張応力層までクラック等が伸展すると、引張応力層全体に割れが生じるという特徴を持つ。

0009

上記の網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる事を目的として、上記の強化処理を行うことが考えられる。しかし、網入り又は線入りの建築用ガラス板は、前述したように製造過程で金属線材の周囲に引張応力が生じてしまうという潜在的な問題があり、さらに強化処理を追加で行うと、内部に発生する引張応力層と金属線材の位置が重なってしまい、引張応力が想定以上に高くなってガラス板に割れが発生することが容易に予想されることから、網入り又は線入りの建築用ガラス板を強化処理することは常識的に不可能だとされている。

0010

本発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる方法を提供することを課題とした。

課題を解決するための手段

0011

本発明者らが前述した課題に対して鋭意検討を行ったところ、網入り又は線入りの建築用ガラス板を化学強化処理しても、意外なことにガラス板は破壊されないことがわかった。すなわち、得られた網入り又は線入りの建築用ガラス板の追加処理として強化処理を施すことが可能であり、さらに強化処理が、該網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度の向上に有用であることが明らかとなった。

0012

また、さらに検討を行ったところ、従来強化処理を施した場合の問題とされてきた急冷工程のみならず、急激な加熱を行うことによっても網入り又は線入りの建築用ガラス板が破壊されてしまうことがわかり、得られた知見より、網入り又は線入りの建築用ガラス板に再現性良く強化処理を施すことが可能となることがわかった。

0013

すなわち本発明の第1の発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板において、前記ガラス板は、厚み方向に、順にガラス板表面、圧縮応力層、及び金属線材を有する内部層を有するものであり、前記内部層は引張応力層を有し、前記引張応力層は、(圧縮応力層の圧縮応力×圧縮応力層深さ)/(板厚−2×圧縮応力層深さ)で算出される引張応力の最大値が20MPa以下であることを特徴とする網入り又は線入りの建築用強化ガラス板である。

0014

また、本発明の第2の発明は、網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法において、前記ガラス板がソーダライムガラスであり、該ガラス板を200℃以上、400℃未満の気体雰囲気下で加熱する予備加熱工程、350〜500℃に加熱された硝酸カリウムを含む溶融塩に、予備加熱されたガラス板表面を接触させ、該表面のナトリウムイオンと前記溶融塩中カリウムイオンとをイオン交換する強化工程、及びイオン交換後に、前記ガラス板を1〜30℃/分の冷却条件徐冷する徐冷工程、を有する網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法である。

発明の効果

0015

本発明により、網入り又は線入りの建築用ガラス板の表面に圧縮応力層を有する、網入り又は線入りの建築用強化ガラス板を得ることが可能となった。また、網入り又は線入りの建築用ガラス板の破壊強度を向上させる方法を得ることが可能となった。

図面の簡単な説明

0016

本発明の実施形態のひとつを説明する簡易図であり、それぞれ(a)断面方向、(b)斜め方向からの図である。
ガラス板の板厚及び圧縮応力層深さを説明する簡易図である。
物理強化処理を行った際の、圧縮応力と引張応力を説明する説明図である。

0017

1:用語の説明
本明細書における用語を以下に説明する。また、図1図2に説明用の図を示した。なお、図1の(b)は説明の為にZ方向マイナス側の表面の圧縮応力層を記載していない。

0018

(厚み方向)
本明細書においては、図1(a)、(b)のZ方向を厚み方向とする。また、図2より、対向する表面と表面との間の長さを板厚dとする。また、X方向、Y方向については、ガラス板Gの辺の方向であれば特に限定するものではないが、ガラス板Gが長辺と短辺を有する場合は、短辺側をX方向、長辺側をY方向とする。

0019

(ガラス板の表面)
ガラス板Gの主となる6面のうち、X−Y面を表面Pとする。また、実際の使用においてZ方向のプラス側の表面Pとマイナス側の表面Pとは特に区別されるものではない。また、表面Pは圧縮応力層1と重なっていてもよく、金属線材11とは重ならない。なお、表面Pと圧縮応力層1が重ならない場合は、表面Pと金属線材11との間に圧縮応力層1を有していてもよい。

0020

(圧縮応力層深さ)
図2に示したように、ガラス板Gの表面Pと、圧縮応力層1の深さの金属線材11側の末端との間の距離を圧縮応力層深さhとする。また、圧縮応力層1が表面Pと重なる場合は、圧縮応力層深さhは圧縮応力層1の厚みと一致する。

0021

(圧縮応力と圧縮応力層深さの測定方法
本明細書における圧縮応力及び圧縮応力層深さは、光導波路効果を観測原理とする表面応力計(折原製作所製、型番FSM−6000LE)を用いて計測した値を用いる。また、引張応力は、本明細書においては以下の式を用いて算出した。
(圧縮応力層の圧縮応力(MPa)×圧縮応力層深さ(μm))/(板厚(mm)−2×圧縮応力層深さ(μm))
なお、ガラス板Gを物理強化処理する場合は圧縮応力層深さを測定せず、一般的に定義される板厚の1/6の値を圧縮応力層深さとし(例えば、特許文献3参照)、上記式に用いることとする。

0022

2:網入り又は線入りの建築用強化ガラス板
本発明の第1の発明は、網入り又は線入りの建築用ガラス板において、前記ガラス板は、厚み方向に、順にガラス板表面、圧縮応力層、及び金属線材を有する内部層を有するものであり、前記内部層は引張応力層を有し、前記引張応力層は、(圧縮応力層の圧縮応力×圧縮応力層深さ)/(板厚−2×圧縮応力層深さ)で算出される引張応力の最大値が20MPa以下であることを特徴とする網入り又は線入りの建築用強化ガラス板である。

0023

(ガラス板G)
ガラス板Gは内部に金属線材11が封入されたものであり、物理強化処理や化学強化処理が可能であればガラスの種類は特に限定されるものではないが、例えば、ソーダライムガラス、アルミノシリケートガラス等が挙げられる。特に、強化処理の行い易さや生産性から、ソーダライムガラスを用いるのが好ましい。

0024

ガラス板Gの厚みは、一般的な建築用板ガラス(例えばJIS R3202に記載の板ガラス)として用いられる、厚み2mm以上、25mm以下の板状のガラスとしてもよい。また、網入り又は線入りの建築用ガラス板Gとして一般的な厚みである、6〜11mm程度としてもよい。

0025

(金属線材11)
金属線材11としては、長期間に亘って錆びず、切断し易いものであれば特に限定するものではない。金属線材11の種類としては、リムド鋼キルド鋼等の軟鋼線や、SUS410やSUS430等のステンレス鋼線が挙げられ、錆を防ぐ為にNi、Cr、Sn、Cu、及びZn等のめっきを金属線材11の表面に施してもよい。

0026

使用する金属線材11の線径は、ガラス板Gの内部層10内に封入可能であれば特に限定するものではないが、製造時にガラス板Gへの影響を小さくする為に、極力細くするのが好ましい。また、その一方で、金属線材11の線径が過度に小さくなると、ガラス破損時に切れてしまい、ガラスの破片の脱落防止飛散防止といった本来の目的を果たせなくなる。従って、線径を0.3〜0.8mmとするのが好ましい。

0027

金属線材11は、前述したガラスの破片の脱落や飛散を防ぎ易くする目的で、金網状とするのが好ましい。また、金網の他にも、複数の金属線材11を所定間隔で平行や直交させて並べるものでもよい。

0028

(圧縮応力層1)
圧縮応力層1は、ガラス板Gの表面P又は表面P近傍に形成されるものであり、強化処理の方法によって、圧縮応力及び圧縮応力層深さが異なる。強化処理の方法としては、例えば風冷強化処理等の物理強化処理や化学強化処理が挙げられる。尚、上記の「近傍」とは、表面Pを含まず、Z方向に表面Pより金属線材11側である事を指すものとする。

0029

強化処理方法として物理強化処理を行った場合、熱歪みによってガラス板Gの表面Pに圧縮応力層1が生じる。この時の圧縮応力は、加熱や冷却の条件によって異なるが、ガラスGが破壊されないように製造過程での急冷や急加熱を抑制して強化処理を行うと、圧縮応力は20〜50MPa程度、圧縮応力層深さhはガラス板の厚みの1/5〜1/6の範囲内になると考えられる。この圧縮応力は一般的な「倍強度ガラス」程度であり、倍強化ガラス程度の圧縮応力及び引張応力であれば、万が一ガラス板Gが割れた場合でも、一般的な強化ガラスのように破片が粉々にならず、内部の網によってガラスの破片の飛散や落下を抑制する事が可能な為、好適である。

0030

ここで、物理強化処理を行った場合に生じる圧縮応力と引張応力について、図3を参照しながら説明する。図3は厚み方向に生じる上記応力について模式的に示したものであり、図3縦軸をZ方向、横軸を応力の強さとし、図の左側程圧縮応力が強くなり、右側程引張応力が強くなるものとする。

0031

図3より、表面P側には圧縮応力が生じ、厚み方向の中央付近には引張応力が生じる。また、A1、A2は、ガラス板Gに生じた圧縮応力層1の面積、Bは引張応力層の面積を模式的に表しており、A1+A2=Bとなる事によって、ガラス板Gの全体としてのバランスが保たれる。また、一般的に、引張応力は厚み方向の中央付近で引張応力は最大値となる。

0032

従って、特に物理強化処理を行う際、金属線材11を封入する位置は、引張応力層の引張応力が最大値となる位置を極力避けるのが好ましい。すなわち、ガラス板Gの厚み方向において、金属線材11の厚み方向の中央と、ガラス板Gの厚み方向の中央とが、重ならないことが好適である。

0033

強化処理として化学強化処理を行った場合、ガラス板Gの表面Pのイオン交換によって、表面Pに圧縮応力層1が生じる。この時の圧縮応力は、加熱や冷却の条件によって異なるが、本発明の好適な実施形態の場合、圧縮応力は300〜900MPa、圧縮応力層深さhは5〜20μmの範囲内としてもよい。

0034

(内部層10)
内部層10は、金属線材11と引張応力層を有する層であり、内部層10とガラス板Gの表面Pとの間に、圧縮応力層1を有する。また、ガラス板Gの厚み方向において、2つの圧縮応力層1に挟まれている領域を「内部層10」としてもよい。

0035

内部層10は、内部に金属線材11が封入されている。また、前述したように、引張応力が大きい位置に金属線材11を封入すると、ガラス板Gが破損し易くなる可能性がある。そのため、前記ガラス板Gの厚み方向において、前記金属線材11の厚み方向の中央と、前記ガラス板Gの厚み方向の中央とが、重ならないことが好ましい。

0036

内部層10は、内部に引張応力層を有する。引張応力層は(圧縮応力層1の圧縮応力×圧縮応力層深さh)/(板厚d−2×圧縮応力層深さh)で得られる引張応力の最大値が20MPa以下となる。また、引張応力の下限値は特に限定するものではないが、例えば0.3MPa以上としてもよい。また、ガラス板G内に生じる引張応力の最大値を上記のとおり20MPa以下の範囲内とする。

0037

生じる引張応力の値は強化処理の方法によって異なる。物理強化処理を行う場合、前述したように、本発明ではガラス破損時にガラスの欠片が網に保持されるように、倍強度ガラス程度の引張応力になるよう強化処理を行うこととし、20MPaを上限値とした。好ましくは16MPa以下としてもよい。なお、倍強度ガラスは強化処理を施していないガラス板の2倍程度の破壊強度を有するガラス板であり、通常の強化ガラス板が内部の強い引張応力に由来して破壊時に破片が粉々になるのに対し、倍強度ガラスは強化処理のないガラス板と同様に破壊時にガラスの破片を生じる。元々、網入り又は線入りガラス板はガラス板が破壊された際に、破片の飛散や落下を防ぐものであるため、倍強度ガラス程度、又はそれ以下の引張応力とするのが有用である。

0038

また、特に化学強化処理を行った場合は数MPa程度の値になり易い。化学強化処理を行った場合の引張応力は、例えば0.3〜5MPa、好ましくは0.3〜2MPaとしてもよい。

0039

(網入り又は線入りの建築用強化ガラス板)
本発明によって得られる網入り又は線入りの建築用強化ガラス板Gは、防火ガラス遮音壁、等として使用することが可能である。

0040

3:網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法
以下に、本発明の第2の発明を記載する。第2の発明は、網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法において、前記ガラス板がソーダライムガラスであり、該ガラス板を200℃以上、400℃未満の気体雰囲気下で加熱する予備加熱工程、350〜500℃に加熱された硝酸カリウムを含む溶融塩に、予備加熱されたガラス板表面を接触させ、該表面のナトリウムイオンと前記溶融塩中のカリウムイオンとをイオン交換する強化工程、及びイオン交換後に、前記ガラス板を1〜30℃/分の冷却条件で徐冷する徐冷工程、を有する網入り又は線入りの建築用強化ガラス板の製造方法である。

0041

第2の発明は、化学強化処理を行う方法である。化学強化処理とは、ソーダライムガラス等のナトリウムイオンを有するガラス板の表面のナトリウムイオンを、カリウムイオンに交換することによって、ガラス板の表面に圧縮応力を生じさせる強化処理方法である。当該化学強化処理は、カリウムイオンを含む塩を加熱して溶融塩とし、該溶融塩にガラス板を接触させることによって、ガラス板の表面でイオン交換を生じさせ、最後にガラス板を冷却して強化処理を完了させる。尚、本明細書では、以下「接触」とは「浸漬」を含む概念とする。

0042

(溶融塩)
イオン交換に用いる溶融塩は、カリウムイオンを含む塩を、塩の融点以上に加熱したものである。使用する塩としては、カリウムイオンを含む硝酸塩硫酸塩、炭酸塩水酸化物塩及びリン酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1つが好ましい。また、作業性の良さからカリウムイオンを含む硝酸塩を用いることが特に好ましい。

0043

また、溶融塩を接触させる手法としては、ペースト状の塩を直接接触させ、加熱するような形態や、融点以上に加熱した溶融塩の塩浴(以下、単に「塩浴」と記載することもある)を用いて、塩浴に浸漬させるような形態等が挙げられる。浸漬すればガラス板の表面全体を強化処理が可能であることから、溶融塩の塩浴に浸漬させるのが好ましい。

0044

(予備加熱工程)
予備加熱工程では、ガラス板の温度を室温程度から200℃以上、400℃未満まで昇温させる。当該工程を後の強化工程の前に行うことによって、網入り又は線入りの建築用ガラス板を急激に加熱することを防ぎ、加熱によってガラス板が破損することを抑制することが可能となる。

0045

予備加熱工程は、ガラス板を気体雰囲気下で加熱する。「気体雰囲気下」とは、ガラス板表面のうち少なくとも1面が気体と接触すればよいものとする。本発明者らが検討を行なったところ、380℃の溶融塩に予備加熱なしで浸漬させると、ガラス板が破壊されることがわかった。これはガラス板が急激に加熱される為であると考えられる。

0046

また、予備加熱工程での加熱温度が200℃よりも低いと、後の強化工程で400℃以上の溶融塩に浸漬させた時に、網入り又は線入りの建築用ガラス板が破壊される場合があることがわかった。一方で、空気中で室温から350℃程度までガラス板を昇温させ、そのまま350℃で予備加熱したものを400℃以上の溶融塩に浸漬させても破壊が生じなかった。具体的なメカニズムは不明だが、溶融塩中で加熱を行うと浸漬開始時のガラス板の温度によっては、該ガラス板に加えられる熱衝撃力が高くなる為に、該ガラス板に破壊が生じたと推測される。

0047

従って、予備加熱工程は、該ガラス板を200℃以上、400℃未満の気体雰囲気下で加熱するものとする。前述したように200℃未満では後の強化工程時にガラス板が破壊される場合がある。また、急激に加熱するとガラス板が破壊される可能性があるため、予備加熱の温度が400℃以上だと生産性良くガラス板を昇温するのが難しい。好ましくは300℃以上、380℃未満としてもよい。

0048

また、上記の「気体」は特に限定するものではないが、例えば空気としてもよい。

0049

また、当該工程は、内部の温度を200℃以上、400℃未満に維持した加熱装置内に前記ガラス板を入れ、該ガラス板の温度を昇温させるものとし、該加熱装置内のガラス板表面は、気体と接することが好ましい。また、加熱装置としては内部に空気層を有する加熱炉等が挙げられる。

0050

予備加熱工程の加熱時間は特に限定するものではなく、ガラス板の温度が十分に上昇すればよい。例えば、本明細書の実施例においては加熱時間を30分以上とした。

0051

(強化工程)
強化工程では、溶融塩を加熱し、加熱した溶融塩をガラス板と接触させることによって、当該接触面でイオン交換を生じさせる。溶融塩を加熱する温度は、350〜500℃とする。また、好ましくは380℃以上、より好ましくは400℃以上としてもよい。350℃未満だと溶融塩の融点を下回ってしまう事があり、また、500℃を超えるとガラス板の歪点以上となり、イオン交換により生じる圧縮応力が緩和されやすく、所望の表面圧縮応力が得られないことがある。

0052

ガラス板を溶融塩に接触させる時間は特に限定されないが、例えば0.5〜8時間程度としてもよい。0.5時間未満だとナトリウムイオンとカリウムイオンのイオン交換が不十分となることがあり、一方で8時間を超えると、イオン交換により生じる圧縮応力が緩和されやすくなることがある。好ましくは0.5〜6時間、より好ましくは1〜5時間としてもよい。

0053

上記の強化工程は、複数回行ってもよい。また、複数回行う場合は、使用する溶融塩の種類が異なっていてもよい。

0054

(徐冷工程)
通常、イオン交換直後のガラス板の温度は、溶融塩程度の温度になっているため、徐冷工程を行って室温まで冷却する。イオン交換工程直後は、ガラス板に前述した塩が付着しているが、徐冷工程中は除去しても除去しなくてもよい。また、徐冷工程の雰囲気も特に限定するものではない。なお、ガラス板に付着した塩は、徐冷工程後に温水冷水などにより除去を行えばよい。

0055

一般的な冷却方法は、例えば、予め所定温度で保持された炉に上記のガラス板を入れ、冷却速度を制御する(以下、「徐冷」と記載することもある)方法や、室温下に直接曝して急冷する方法等が挙げられる。ただし、急冷による冷却はガラス板が割れ易いため、本発明のように潜在的に割れ易い網入り又は線入りの建築用ガラス板の場合は、徐冷によって冷却工程を行う。徐冷速度が速いと金属線材とガラス板の熱膨張の差によってガラス板が破壊されてしまい、一方で徐冷速度が遅いと表面の圧縮応力が緩和してしまう傾向にあることから、徐冷速度を1〜30℃/分とする冷却条件で徐冷する。また、徐冷速度は、好ましくは1〜25℃/分としてもよい。

0056

上記工程により、ガラス板に化学強化処理を施し、網入り又は線入りの建築用ガラス板の表面に圧縮応力層を形成することが可能となる。得られる圧縮応力層は、圧縮応力が300〜1300MPaの範囲で調整することが可能である。ただし、ガラス板内の引張応力と圧縮応力とは、例えば図3に示したようにガラス板内部の均衡を保つ為に釣り合うものであることから、圧縮応力は300〜900MPaとするのが好ましい。また、圧縮応力を上記の範囲内とすると、圧縮応力層深さは5〜20μm程度となる。

0057

本発明の実施例及び比較例を以下に示す。実施例及び比較例では、50mm×50mm(厚み6.8mm)の建築用網入りガラス板(網:ひし型、線径0.55mm、セミキルド鋼、ガラス:ソーダライムガラス)を用いた。

0058

予備加熱工程では電気炉を用いた。この時、網入りガラス板を電気炉内に入れた状態で、該網入りガラス板と電気炉内の空気とが接触するように網入りガラス板を配置した。また、強化工程ではKNO3の溶融塩を用いた塩浴に、該網入りガラス板を浸漬させた。

0059

また、各製造条件、得られたサンプルの圧縮応力、引張応力、及び圧縮応力層深さを、それぞれ表1に記載した。

0060

実施例1
まず、網入りガラス板を250℃に維持した電気炉内に入れ、約60分予備加熱を行った。

0061

次に、溶融塩の温度が約430℃となるように加熱を行った塩浴に、予備加熱した網入りガラス板を浸漬させた。この時、浸漬時間は3時間とした。

0062

次に、網入りガラス板を塩浴中から取り出し、温度調整が可能な電気炉内で15℃/分の速度で徐冷を行った。ガラス板の温度が室温程度になった後、網入りガラス洗浄してサンプルを得た。

0063

得られたサンプルについて、表面応力計(折原製作所製、型番FSM−6000LE)を用いて、圧縮応力と圧縮応力層深さを計測した。その結果、圧縮応力は719MPa、圧縮応力層深さは8.2μmであった。また、得られた値から、以下の式を用いて引張応力を計算したところ、0.9MPaであった。
圧縮応力層の圧縮応力(MPa)×圧縮応力層深さ(μm))/(板厚(mm)−2×圧縮応力層深さ(μm)

0064

0065

実施例2
予備加熱工程を350℃で約30分、強化工程の塩浴への浸漬時間を5時間、徐冷工程の徐冷速度を10℃/分とした他は実施例1と同様の方法でサンプルを得た。得られたサンプルの圧縮応力は706MPa、圧縮応力層深さは9.7μmであった。また、得られた値から引張応力を計算したところ、1.0MPaであった。

0066

実施例3
強化工程の塩浴の温度を約420℃、浸漬時間を7時間とした他は実施例2と同様の方法でサンプルを得た。得られたサンプルの圧縮応力は720MPa、圧縮応力層深さは10.5μmであった。また、得られた値から引張応力を計算したところ、1.1MPaであった。

0067

比較例1
網入りガラス板を439℃に維持した電気炉内に入れ、約30分間予備加熱を行った。加熱後に電気炉内から網入りガラス板を取り出したところ、網入りガラス板が割れていた。その為、以後の工程を行わなかった。

0068

比較例2
約380℃となるように加熱を行った塩浴に、予備加熱をしない網入りガラス板を浸漬させたところ、浸漬して間もなく網入りガラス板に割れが生じた。その為、以後の工程を行わなかった。

0069

比較例3
まず、網入りガラス板を150℃に維持した電気炉内に入れ、約60分予備加熱を行った。次に、約430℃となるように加熱を行った塩浴に、予備加熱した網入りガラス板を浸漬させたところ、浸漬して間もなく網入りガラスに割れが生じた。その為、以後の工程を行わなかった。

0070

比較例4
強化工程の塩浴への浸漬時間を3時間、徐冷工程の徐冷速度を50℃/分とした他は実施例2と同様の方法で実施したが、徐冷中に網入りガラス板に割れが生じた。その為、圧縮応力等の測定は行わなかった。

0071

上より、本発明により網入り又は線入りの建築用強化ガラス板を得ることが可能となった。また、得られた引張応力層の引張応力は0.5〜1.5MPaの範囲内だった。また、比較例1、2より、予備加熱の温度が400℃を超えたり、予備加熱なしに380℃の塩浴に浸漬させたりすると、網入りガラス板が急激に加熱されてしまい、破壊されることがわかった。

0072

また、比較例3より、予備加熱の温度が150℃程度の場合も、塩浴に浸漬させると網入りガラス板が割れてしまうことがわかった。これは、塩浴に浸漬させることで、ガラス板を急激に加熱したのと同様の状態になってしまった為であると推測される。

実施例

0073

また、比較例4より、徐冷の速度が50℃/分程度だと網入りガラスが割れてしまうことがわかった。

0074

G:ガラス板、P:表面、d:板厚、h:圧縮応力層深さ、1:圧縮応力層、10:内部層、11:金属線材

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