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課題
解決手段
概要
背景
津波は一般に、海底面の突然の物理的移動(たとえば海底地震または地すべり)または大気の異常のいずれかによって生じる(たとえば、後者は気象津波と呼ばれる)。したがって、最初の可能な津波の兆候は、地震の検知であり得る。しかし、すべての海底地震が津波を発生させるわけではなく、したがって、地震のマグニチュードを使用して、結果的な津波の発生または強さを予測することはできない。
津波の強さを見て測る一つのタイプのセンサが、頭上にあるブイに接続された海底圧力センサである。アメリカ海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)によって開発された、これらのセンサのネットワーク(Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunamiを略してDART(商標)と呼ばれる)が、壊滅的な2004年のバンダ・アチェ(Banda Aceh)(インドネシア)地震(その後の津波が25万人の命を奪った)ののち展開された。DART(商標)センサは、津波がセンサの上を通過するときその高さを観測する。そして、これらのブイによって計測された津波の高さが津波数値モデルに入力されて、世界中の沿岸地点での到達および強さのおおよその予測を出す。そのような数値モデルの一例が、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる非特許文献1に記載されている。
しかし、DART(商標)ネットワークはなおも希薄であり、そのためすべての津波を観測し、沿岸への衝突の前にモデルに入力することができるわけではない。さらに、様々な沿岸領域の広い範囲の水深(すなわち沖合の水深)の変化のせいで、沿岸におけるタイミングおよび強さのモデル予測は、多くの場合、非常に大ざっぱでしかない。
概要
津波の高さおよび到達時刻を推定する、津波警告のための沿岸HFレーダシステムを提供する。沿岸レーダーシステムから受信した海洋表層流の信号から、津波検知理論を使用して津波警報を発する。津波検知理論は,津波の時間的,スペクトル的,および空間的特性に対応するパターンを検知する。また,津波警報に応答して,沿岸レーダーシステム近くの沖合水深および,海岸線形状に基づく近距離場津波伝播の数値モデルを使用して,津波の高さおよび到達時刻を推定する。
目的
効果
実績
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この技術が所属する分野
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請求項1
一つまたは複数のメモリと、沿岸レーダーシステムから受信した信号中の津波の時間的、スペクトル的、および空間的特性に対応するパターンを検知するように構成された津波検知論理を使用して、時間およびそれと関連する沖合距離を有する津波警報を発し、かつ該津波警報に応答して、沿岸レーダーシステムの近くの沖合水深および海岸線形状に基づく近距離場津波伝搬の数値モデルを使用して、高さおよび到達時刻を推定するように構成された、一つまたは複数のプロセッサとを含む、システム。
請求項2
請求項3
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報の信頼性に基づいて、(1)該津波警報を津波警告センターに送信する、(2)該津波警報を、該津波警報の該信頼性を表す信頼性情報とともに、該津波警告センターに送信する、または(3)該津波警報を無視するのうちの一つを実行するように構成されている、請求項2記載のシステム。
請求項4
一つまたは複数のプロセッサが、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項2記載のシステム。
請求項5
一つまたは複数のプロセッサが、津波警報を、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報のうちの一つを使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項2記載のシステム。
請求項6
一つまたは複数のプロセッサがさらに、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報に応答して、到達時刻ウインドウを算出するように構成されている、請求項5記載のシステム。
請求項7
一つまたは複数のプロセッサが、沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の複雑さを参照して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項2記載のシステム。
請求項8
一つまたは複数のプロセッサが、津波検知論理を使用して、沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出された、海洋表層流を表すブラッグピーク情報を受信すること;および該ブラッグピーク情報から津波警報を発することによって、該津波警報を発するように構成されている、請求項1記載のシステム。
請求項9
一つまたは複数のプロセッサが、ブラッグピーク情報から導出された半径方向海流情報を、沿岸レーダーシステムの近くの海岸線に対して実質的に平行である複数の実質的に長方形の帯域へと分解することであって、各帯域が垂直流成分および平行流成分によって特徴づけられる、こと;帯域ごとに、該帯域と関連する軌道速度が、連続的な時間間隔にわたり第一の量よりも大きく変化するかどうかを決定し、該帯域と関連する該軌道速度が、隣接帯域の軌道速度の第二の量の範囲内であるかどうかを決定し、かつ該帯域を含む複数の隣接帯域と関連する軌道速度が、少なくとも二つの連続的な時間間隔にわたりすべて同じ方向に変化するかどうかを決定し、該帯域に関する決定に基づいて一つまたは複数の津波警報値を調節すること;および該津波警報値の一つまたは複数が閾値を超える場合に津波警報を発することにより、該ブラッグピーク情報から該津波警報を発するように構成されている、請求項8記載のシステム。
請求項10
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波検知論理によって以前に発された偽警報情報と、沿岸レーダーシステムの海流状態を表す、以前に記憶された信号干渉情報との間の記憶された相関を使用して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項1記載のシステム。
請求項11
請求項12
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報の信頼性に基づいて、(1)該津波警報を津波警告センターに送信する、(2)該津波警報を、該津波警報の該信頼性を表す信頼性情報とともに、該津波警告センターに送信する、または(3)該津波警報を無視するのうちの一つを実行するように構成されている、請求項10記載のシステム。
請求項13
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項10記載のシステム。
請求項14
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報を、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報のうちの一つを使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項10記載のシステム。
請求項15
一つまたは複数のプロセッサがさらに、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報に応答して、到達時刻ウインドウを算出するように構成されている、請求項14記載のシステム。
請求項16
一つまたは複数のプロセッサがさらに、沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の強さおよび複雑さを参照して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、請求項10記載のシステム。
背景技術
0001
津波は一般に、海底面の突然の物理的移動(たとえば海底地震または地すべり)または大気の異常のいずれかによって生じる(たとえば、後者は気象津波と呼ばれる)。したがって、最初の可能な津波の兆候は、地震の検知であり得る。しかし、すべての海底地震が津波を発生させるわけではなく、したがって、地震のマグニチュードを使用して、結果的な津波の発生または強さを予測することはできない。
0002
津波の強さを見て測る一つのタイプのセンサが、頭上にあるブイに接続された海底圧力センサである。アメリカ海洋大気庁(NOAA:National Oceanic and Atmospheric Administration)によって開発された、これらのセンサのネットワーク(Deep-ocean Assessment and Reporting of Tsunamiを略してDART(商標)と呼ばれる)が、壊滅的な2004年のバンダ・アチェ(Banda Aceh)(インドネシア)地震(その後の津波が25万人の命を奪った)ののち展開された。DART(商標)センサは、津波がセンサの上を通過するときその高さを観測する。そして、これらのブイによって計測された津波の高さが津波数値モデルに入力されて、世界中の沿岸地点での到達および強さのおおよその予測を出す。そのような数値モデルの一例が、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる非特許文献1に記載されている。
0003
しかし、DART(商標)ネットワークはなおも希薄であり、そのためすべての津波を観測し、沿岸への衝突の前にモデルに入力することができるわけではない。さらに、様々な沿岸領域の広い範囲の水深(すなわち沖合の水深)の変化のせいで、沿岸におけるタイミングおよび強さのモデル予測は、多くの場合、非常に大ざっぱでしかない。
先行技術
0004
Implementation and testing of the Method of Splitting Tsunami (MOST) model, V. Titov and F. Gonzalez, NOAA Tech. Memo.ERL PMEL-112 (PB98-122773), NOAA/Pacific Marine Environmental Laboratory, Seattle, WA, 11 pp, (1997)
0005
津波検出および警告のためのシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が記載される。
0006
一つの部類の実施形態にしたがって、沿岸レーダーシステムのレシーバ信号から導出されたブラッグ(Bragg)ピーク情報が受信されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。ブラッグピーク情報は海洋表層流を表す。ブラッグピーク情報から、津波検知論理を使用して津波警報が発される。津波検知論理は、津波の時間的、スペクトル的および空間的特徴に対応するパターンを検知するように構成されている。一つまたは複数の外部ソースからの時間相関情報を使用して津波警報の信頼性が判定される。
0007
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性に基づいて以下の一つが実行される:(1)津波警報を津波警告センターに送信する、(2)津波警報を、津波警報の信頼性を表す信頼性情報とともに、津波警告センターに送信する、または(3)津波警報を無視する。
0008
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることを含む。
0009
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、地震事象情報、海底地すべり事象情報または大気異常事象情報の一つを使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることを含む。より具体的な実施形態にしたがって、到達時刻ウインドウは、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報に応答して算出される。
0010
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、ブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の複雑さを参照して実施される。
0012
いくつかの実施形態にしたがって、ブラッグピーク情報から津波警報を発することは、ブラッグピーク情報から導出された半径方向海流情報を、沿岸レーダーシステムに隣接する海岸線に対して実質的に平行な複数の実質的に長方形の帯域へと分解することを含む。各帯域は垂直流成分および平行流成分によって特徴づけられる。帯域ごとに、(1)帯域と対応する軌道速度が連続的な時間間隔にわたり第一の量よりも大きく変化するかどうか、(2)帯域と対応する軌道速度が隣接帯域の軌道速度の第二の量の範囲内であるかどうか、および(3)その帯域を含む複数の隣接帯域と対応する軌道速度が少なくとも二つの連続的な時間間隔にわたりすべて同じ方向に変化するかどうか、が決定される。帯域に関する決定に基づいて一つまたは複数の津波警報値が調節され、津波警報値の一つまたは複数が閾値を超えるならば、津波警報が発される。
0013
別の部類の実施形態にしたがって、沿岸レーダーシステムの一つまたは複数のレシーバからレシーバ信号が受信されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。レシーバ信号からドップラースペクトル情報が生成される。ドップラースペクトル情報から信号干渉情報が除去され、それにより、プリコンディショニングされたスペクトル情報が生成される。プリコンディショニングされたスペクトル情報からブラッグピーク情報が抽出され、そのブラッグピーク情報が海洋表層流を表す。津波検知論理を使用して、ブラッグピーク情報から津波警報が発される。津波検知論理によって以前に発された偽警報情報と、沿岸レーダーシステムの海流状態を表す、以前に記憶された信号干渉情報との間の記憶された相関を使用して、津波警報の信頼性が判定される。
0014
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性に基づいて以下の一つが実行される:(1)津波警報を津波警告センターに送信する、(2)津波警報を、津波警報の信頼性を表す信頼性情報とともに、津波警告センターに送信する、または(3)津波警報を無視する。
0015
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性はさらに、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって判定される。
0016
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性はさらに、津波警報を、地震事象情報を使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって判定される。より具体的な実施形態にしたがって、到達時刻ウインドウは、地震事象情報に応答して算出される。
0017
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性はさらに、ブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の強さおよび複雑さを参照して判定される。
0018
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報に応答して、沿岸レーダーシステムための沖合水深に基づく近距離場津波伝搬のための数値モデルを使用して、高さおよび到達時刻が推定される。
0019
いくつかの実施形態にしたがって、ブラッグピーク情報から津波警報を発することは、ブラッグピーク情報から導出された半径方向海流情報を、沿岸レーダーシステムに隣接する海岸線に対して実質的に平行な複数の実質的に長方形の帯域へと分解することを含む。各帯域は垂直流成分および平行流成分によって特徴づけられる。帯域ごとに、(1)帯域と対応する軌道速度が連続的な時間間隔にわたり第一の量よりも大きく変化するかどうか、(2)帯域と対応する軌道速度が隣接帯域の軌道速度の第二の量の範囲内であるかどうか、および(3)その帯域を含む複数の隣接帯域と対応する軌道速度が少なくとも二つの連続的な時間間隔にわたりすべて同じ方向に変化するかどうか、が決定される。帯域に関する決定に基づいて一つまたは複数の津波警報値が調節され、津波警報値の一つまたは複数が閾値を超えるならば、津波警報が発される。
0020
別の部類の実施形態にしたがって、津波検知論理を使用して津波警報が発されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。津波検知論理は、津波の時間的、スペクトル的および空間的特徴に対応するパターンを検知するように構成されている。一つまたは複数の外部ソースからの時間相関情報を使用して津波警報の信頼性が判定される。
0021
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性に基づいて以下の一つが実行される:(1)津波警報を津波警告センターに送信する、(2)津波警報を、津波警報の信頼性を表す信頼性情報とともに、津波警告センターに送信する、または(3)津波警報を無視する。
0022
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることを含む。
0023
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、地震事象情報を使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることを含む。より具体的な実施形態にしたがって、到達時刻ウインドウは、地震事象情報に応答して算出される。
0024
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、沿岸レーダーシステムによって生成されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の複雑さを参照して実施される。
0025
別の部類の実施形態にしたがって、津波検知論理を使用して津波警報が発されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。津波検知論理は、沿岸レーダーシステムから受信した信号中の津波の時間的、スペクトル的、および空間的特徴に対応するパターンを検知するように構成されている。津波警報は、それと対応する時間および沖合距離を有する。津波警報に応答して、沿岸レーダーシステムの沖合水深および海岸線形状に基づく近距離場津波伝搬のための数値モデルを使用して、高さおよび到達時刻が推定される。
0026
いくつかの実施形態にしたがって、一つまたは複数の外部ソースからの時間相関情報を使用して津波警報の信頼性が判定される。
0027
これらの実施形態の具体的ないくつかにしたがって、津波警報の信頼性に基づいて以下の一つが実行される:(1)津波警報を津波警告センターに送信する、(2)津波警報を、津波警報の信頼性を表す信頼性情報とともに、津波警告センターに送信する、または(3)津波警報を無視する。
0028
これらの実施形態の具体的ないくつかにしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることを含む。
0029
これらの実施形態の具体的ないくつかにしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、津波警報を、地震事象情報を使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることを含む。より具体的な実施形態にしたがって、到達時刻ウインドウは、地震事象情報に応答して算出される。
0030
これらの実施形態の具体的ないくつかにしたがって、津波警報の信頼性を判定することは、沿岸レーダーシステムによって生成されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の複雑さを参照して実施される。
0031
別の部類の実施形態にしたがって、沿岸レーダーシステムのレシーバ信号から導出されたブラッグピーク情報が受信されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。ブラッグピーク情報は海洋表層流を表す。ブラッグピーク情報から、津波検知論理を使用して津波警報が発される。津波検知論理は、津波の時間的、スペクトル的および空間的特徴に対応するパターンを検知するように構成されている。津波検知論理によって以前に発された偽警報情報と、沿岸レーダーシステムの海流状態を表す、以前に記憶された信号干渉情報との間の記憶された相関を使用して津波警報の信頼性が判定される。
0033
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性に基づいて以下の一つが実行される:(1)津波警報を津波警告センターに送信する、(2)津波警報を、津波警報の信頼性を表す信頼性情報とともに、津波警告センターに送信する、または(3)津波警報を無視する。
0034
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性はさらに、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって判定される。
0035
いくつかの実施形態にしたがって、津波警報の信頼性はさらに、津波警報を、地震事象情報を使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって判定される。
0036
別の部類の実施形態にしたがって、沿岸レーダーシステムの一つまたは複数のレシーバからレシーバ信号が受信されるシステム、方法およびコンピュータプログラム製品が提供される。レシーバ信号からドップラースペクトル情報が生成される。ドップラースペクトル情報から信号干渉情報が除去され、それにより、プリコンディショニングされたスペクトル情報が生成させる。プリコンディショニングされたスペクトル情報からブラッグピーク情報が抽出され、そのブラッグピーク情報が海洋表層流を表す。津波検知論理を使用して、ブラッグピーク情報から偽警報情報が生成される。偽警報情報は、沿岸レーダーシステムと対応する実際の状態を表す公知の情報と相関させられる。模擬津波表示が津波検知論理に挿入される。模擬津波表示は複数の津波パラメータによって特徴づけられる。模擬津波表示に関して検知確率が決定される。受信、生成、除去、抽出、生成および相関が繰り返されて、沿岸レーダーシステムおよび津波検知論理の動作パラメータを決定する。異なるセットの津波パラメータによって特徴づけられた複数の模擬津波表示に関して挿入および決定が繰り返されて、沿岸レーダーシステムおよび津波検知論理の動作パラメータをさらに決定する。
0037
いくつかの実施形態にしたがって、偽警報情報を公知の情報と相関させることは、偽警報情報を信号干渉情報の少なくともいくつかと相関させることを含む。より具体的な実施形態にしたがって、信号干渉情報は大気干渉または無線干渉の一つまたは両方を表す。
0039
いくつかの実施形態にしたがって、模擬津波表示は、沿岸レーダーシステムのための沖合水深に基づく近距離場津波伝搬のための数値モデルを使用して生成される。
0040
いくつかの実施形態にしたがって、偽警報情報を公知の情報と相関させることは、偽警報情報を、ブラッグピーク情報から導出されたバックグラウンド表層流情報と相関させることを含む。
0041
明細書の残り部分および図面を参照することにより、様々な実施形態の本質および利点のさらなる理解が実現され得る。
0042
より具体的には、本発明は、以下を提供する:
[1]
一つまたは複数のメモリと、
沿岸レーダーシステムから受信した信号中の津波の時間的、スペクトル的、および空間的特性に対応するパターンを検知するように構成された津波検知論理を使用して、時間およびそれと関連する沖合距離を有する津波警報を発し、かつ
該津波警報に応答して、沿岸レーダーシステムの近くの沖合水深および海岸線形状に基づく近距離場津波伝搬の数値モデルを使用して、高さおよび到達時刻を推定する
ように構成された、一つまたは複数のプロセッサと
を含む、システム;
[2]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、一つまたは複数の外部ソースからの時間相関情報を使用して津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[1]のシステム;
[3]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報の信頼性に基づいて、
(1)該津波警報を津波警告センターに送信する、
(2)該津波警報を、該津波警報の該信頼性を表す信頼性情報とともに、該津波警告センターに送信する、または
(3)該津波警報を無視する
のうちの一つを実行するように構成されている、[2]のシステム;
[4]
一つまたは複数のプロセッサが、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[2]のシステム;
[5]
一つまたは複数のプロセッサが、津波警報を、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報のうちの一つを使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[2]のシステム;
[6]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報に応答して、到達時刻ウインドウを算出するように構成されている、[5]のシステム;
[7]
一つまたは複数のプロセッサが、沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の複雑さを参照して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[2]のシステム;
[8]
一つまたは複数のプロセッサが、津波検知論理を使用して、
沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出された、海洋表層流を表すブラッグピーク情報を受信すること;および
該ブラッグピーク情報から津波警報を発すること
によって、該津波警報を発するように構成されている、[1]のシステム;
[9]
一つまたは複数のプロセッサが、
ブラッグピーク情報から導出された半径方向海流情報を、沿岸レーダーシステムの近くの海岸線に対して実質的に平行である複数の実質的に長方形の帯域へと分解することであって、各帯域が垂直流成分および平行流成分によって特徴づけられる、こと;
帯域ごとに、
該帯域と関連する軌道速度が、連続的な時間間隔にわたり第一の量よりも大きく変化するかどうかを決定し、
該帯域と関連する該軌道速度が、隣接帯域の軌道速度の第二の量の範囲内であるかどうかを決定し、かつ
該帯域を含む複数の隣接帯域と関連する軌道速度が、少なくとも二つの連続的な時間間隔にわたりすべて同じ方向に変化するかどうかを決定し、
該帯域に関する決定に基づいて一つまたは複数の津波警報値を調節すること;および
該津波警報値の一つまたは複数が閾値を超える場合に津波警報を発すること
により、該ブラッグピーク情報から該津波警報を発するように構成されている、[8]のシステム;
[10]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波検知論理によって以前に発された偽警報情報と、沿岸レーダーシステムの海流状態を表す、以前に記憶された信号干渉情報との間の記憶された相関を使用して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[1]のシステム;
[11]
信号干渉情報が、大気干渉、無線干渉、または海洋表層流の複雑さのうちの一つまたは複数を表す、[10]のシステム;
[12]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報の信頼性に基づいて、
(1)該津波警報を津波警告センターに送信する、
(2)該津波警報を、該津波警報の該信頼性を表す信頼性情報とともに、該津波警告センターに送信する、または
(3)該津波警報を無視する
のうちの一つを実行するように構成されている、[10]のシステム;
[13]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報を、一つまたは複数の近くの沿岸レーダーシステムによって発された一つまたは複数の他の津波警報と相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[10]のシステム;
[14]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、津波警報を、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報のうちの一つを使用して推定された到達時刻ウインドウと相関させることによって、該津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[10]のシステム;
[15]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、地震事象情報、海底地すべり事象情報、または大気異常事象情報に応答して、到達時刻ウインドウを算出するように構成されている、[14]のシステム;ならびに
[16]
一つまたは複数のプロセッサがさらに、沿岸レーダーシステムから受信した信号から導出されたブラッグピーク情報から決定される海洋表層流の強さおよび複雑さを参照して、津波警報の信頼性を判定するように構成されている、[10]のシステム。
図面の簡単な説明
0043
特定の部類の実施形態にしたがう津波検知のための構成されたレーダーサイトの略図である。
津波検知のために構成されたレーダーシステムのシミュレータ動作モードの特定の実施形態を示す。
津波検知のために構成されたレーダーシステムのオンライン動作モードの特定の実施形態を示す。
特定の実施形態によって用いられる津波検知アルゴリズムの出力を示す。
実施例
0044
詳細な説明
以下、特定の実施形態を詳細に参照する。これらの実施形態の例が添付図面に示されている。これらの例は、説明のために記載されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではないことが留意されよう。それどころか、記載される実施形態の代替、変形および等価物が、特許請求の範囲によって画定される本開示の範囲に含まれる。加えて、記載される実施形態の完全な理解を促進するために、特定の詳細が提供され得る。本開示の範囲内のいくつかの実施形態は、そのような詳細のいくつかまたはすべてなしで実施されてもよい。さらに、見やすくするために、周知の特徴が詳細に記載されていないこともある。
0045
本開示は、沿岸短波(HF)レーダーを使用する効果的な津波検知および警告のためのシステムを記載する。主に海洋表層流のリアルタイムマッピングのために、数多くの沿岸HFレーダーの全国的ネットワークがすでに存在する。本発明者らは、システムの「近距離場」、すなわち、レーダーが海面を観測する沿岸領域における津波接近を検知し、警告することができるこれらのレーダーの構成を記載する。深海盆における津波の高さを観測し、予測するDART(商標)津波警告システムとは対照的に、HFレーダーは、津波の高さを観測せず、代わりに、より高感度の指標、すなわち、岸近くの浅水へと移動するときのその軌道速度を観測する。
0046
一般に10〜50分周期の波が海岸に接近するとき、津波の軌道速度は表層流の一部になる。しかし、通常のバックグラウンド海流ならびに外部の大気ノイズおよび無線干渉が津波パターンを隠蔽して、許容し得ない偽警報率を潜在的に生じさせる可能性がある。本開示によって可能にされるシステムは、津波の軌道速度を表す信号をそのようなバックグラウンド隠蔽効果から切り離し、沿岸HFレーダーの近距離場における津波を正確に検知する。
0047
短波(HF)レーダーは1960年代にはじめて使用された。海岸に設置され、垂直偏波を送信するHFレーダは、海水の高い伝導率を利用して、実視またはマイクロ波レーダ地平線をゆうに超える表面波モードで信号を伝搬させる。HFレーダは、表層流をマッピングし、海の状態(たとえば波高)をモニタするための幅広い用途を見いだした。周知のブラッグ散乱からレーダー波長の半分の波浪によってレーダーエコーが発生して、レーダーに向かう方向およびレーダーから離れる方向に移動する。たとえば、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、Sea backscatter at HF: Interpretation and utilization of the echo, Barrick, D.E., J.M. Headrick, R.W. Bogle, and D.D. Crombie, Proc.IEEE, vol. 62, no. 6, pp. 673-680 (1974)を参照すること。
0048
Barrickは、1979年、HFレーダーが、津波が海岸に接近するときのその軌道波速度によって、津波を検知することができると仮定した。参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、A Coastal Radar System for Tsunami Warning, Barrick, D.E., Remote Sensing of Environment, Vol. 8, 353-358 (1979)を参照すること。しかし、1990年代までは世界中のHFレーダーの分布は希薄であったため、この概念を実証し、遭遇される多くの難題を解決するためのソフトウェアを開発する機会はなかった。これが、2004年のインドネシア津波ののち変化しはじめ、2011年の日本の東北津波までには、ロバストな検知および警告を提供するためのアルゴリズムの開発のために必要な生データを捕捉するのに十分なレーダーが配備された。
0049
システム有効性、ひいては実用性を判定するために警告センターによって一般に使用される定量基準は、検知確率Pd(Probability of detection)および偽警報確率Pfa(false-alarm probability)(偽陽性確率とも呼ばれる)である。以下さらに詳細に述べるように、特定の部類の実施形態は、理想的には津波が観測されたときのみQ因子警報が送られる「Q因子」津波パターン認識アルゴリズムを用いる。これは、プリセット閾値を超えるQ因子トリガに基づく。トレードオフは次のとおりである。閾値設定が高すぎるならば、津波は検知されない(すなわち、Pdは許容不可能に低い)。他方、閾値が低すぎるならば、津波は検知される(すなわち、Pdは許容可能である)が、Pfaが高すぎる、すなわち偽警報が多く見られすぎる。津波は稀にしか起こらないため、1日一回の偽警報は確かに多すぎると考えられ、システム出力警報は無視されがちであろう。
0050
PdおよびPfaを決定する閾値およびフィルタリングパラメータは、いくつかの要因に依存する。それらの要因は、任意の津波パターンに重なる、ときには強いおよび/または複雑なバックグラウンド海流パターン;変化する外部ノイズおよび人工無線干渉;ならびに他の非津波標的(たとえば船、電離層)からのエコーを含む。津波の軌道速度の大きさは水深に非常に大きく依存する。速度はおおよそ深さの逆3/4乗に比例するため、遠くまで延びる浅い大陸棚はより長い警告時間を可能にする。津波の検知能力はまた、その強さに依存する。最終的な検知ロバスト性(高いPdおよび低いPfa)に対するこれらの要因それぞれの影響は、以下さらに詳細に述べる。明らかになるように、本開示によって可能にされる実施形態は、HFレーダーベースの津波検知システムが展開される地理的領域に適用可能である能力基準(PdおよびPfa)にしたがって作動するHFレーダーベースの津波検知システムを提供する。
0051
同じく本明細書に記載されるものは、初期検知に基づいて海岸における津波の高さおよび到達時刻の正確な予測を可能にするそのようなHFレーダー検知システムとともに用いられる近距離場津波数値モデルである。理解されるように、以前の検知システムによっては信頼できるように生成することができないそのような情報は、津波上陸のもっとも壊滅的な結果を回避するためにきわめて重要である。
0052
HFとは、3〜30MHzの無線周波数電磁波(電波)の範囲を指す。本明細書に記載される例はHFレーダーシステムを参照するが、他の周波数範囲、たとえばMF、すなわち中波(すなわち300kHz〜3MHz)およびVHF、すなわち超短波(すなわち30MHz〜300MHz)で作動するレーダーシステムを用いる実施形態もまた考慮されることが留意されるべきである。したがって、HF範囲の参照は、本発明の範囲を不当に限定するために使用されるべきではない。
0053
図1は、本明細書に記載されるように津波を検知するように構成された沿岸HFレーダーサイトの一例の略図を示す。見やすくするため、一般にはいっしょに作動する複数の例の一つだけが示されている。レシーバ12によって受信される三つの信号100、110および120の二つが、対応するサイトのトランスミッタによって生成された信号を表す。一群のGPS衛星からの信号130がGPSアンテナ1に衝突し、GPSレシーバ2に送られる。GPSレシーバ2は、従来のGPSレシーバのはるかに一般的な位置情報とは対照的に、GPS信号から時間情報を抽出するように特別に設計されている。
0054
GPSレシーバ2は、非常に安定な10MHzクロック信号を生成し、その信号が位相同期発振器(PLO)3の中へ通過し、この位相同期発振器が低域フィルタとして働いて、クロック信号の時間位置精度を桁違いに高める。GPSレシーバはまた、レーダーステートマシン5に送られる非常に安定な毎秒1パルスのデータストリームを生成する。位相同期発振器3に送られた10MHz信号は120MHzタイミング信号に変換され、この信号が、レーダー搬送波および他の内部周波数の生成に使用される。この120MHz基準信号はクロック生成器4に送られる。クロック生成器は、基準信号を分割して、他の装置によって必要とされるいくつかの他の基準周波数、たとえばマイクロプロセッサ7に送られる12MHz信号;レーダーステートマシン5に送られる40MHz信号;およびDSS(ダイレクトシグナルシンセサイザ)およびその発振器6に送られる60または120MHz信号を生成する。
0055
レーダーステートマシン5は、レーダーに対し、対時間で何を実行するのかを命令する。たとえば、レーダーステートマシンは、トランスミッタ出力信号およびレシーバ入力信号が同時にオンにならないよう、トランスミッタ出力信号およびレシーバ入力信号をオンおよびオフに切り換える信号を生成する。また、信号が望まれないとき、システム中の様々な点における信号の送受信を抑制するスイッチまたはゲートをオンおよびオフに切り換える。レーダーステートマシン5はまた、線形周波数掃引変調の開始および終了を決定する。共通のGPSタイミングを介して同期化される異なるレーダーの異なる掃引開始時間が局所的海面エコー情報を互いから切り離して、それらが互いに干渉しないようにする。
0056
マイクロプロセッサ7(メモリチップ8によって支援されている)は、人間オペレータがレーダーを制御することを許し、受信したエコー信号をリアルタイムで処理するコンピューティング装置10へのインタフェースである。マイクロプロセッサ7はまた、GPSレシーバ2および送受信(T/R)スイッチ9と通信する。後者は、パルスサイクル中の適切な時点で信号を抑制する、レーダートランスミッタ11およびレシーバ12中の様々なチャネルをオンおよびオフに切り換える。
0057
トランスミッタ11によって送信される無線周波数(RF)信号はDSSブロック6で生成される。これらの信号は掃引およびパルス変調を含む。周波数における掃引スパン、掃引反復間隔、パルスおよびブランク期間ならびに搬送周波数はすべてデジタル式に表され、生成されて、波形の各周期的反復が以前のサイクルと実質的に同一であることを保証する。これは、ドップラーシフトされた海面エコー情報に干渉しないよう、スパーおよび他の波形不完全部をDC(ゼロドップラースペクトル位置)にシフトする効果を有する。0〜75MHzの搬送波周波数がシステムによってDDSブロック6を介して生成され、その出力信号がトランスミッタ11に提供され、送信アンテナ13によって放射される。これらの信号のレプリカが、その直角位相バージョンとともに、レシーバ12中、そのアンテナシステム14に入るエコー、ノイズおよび他のレーダー信号と混合される。
0058
同じ搬送波周波数で作動する複数のレーダートランスミッタの線形周波数変調掃引開始時間は同じGPS共通タイミング信号を使用して同期化されて、正確に指定された、わずかに異なる時間で開始する。開始時間は、互いに対するレーダーサイト配置に依存する。
0059
図1に示されるHFレーダーシステムは、表層流のマッピングおよび海の状態のモニタリングに関するその能力に加えて、津波検出に関する二つの動作モード:オンライン動作が始まる前に各候補サイトで動かされるシミュレータ動作モードおよび津波をモニタし、措置に備えて警報を警告センターに送るオンライン動作モードで構成され得る。シミュレータ動作モードにおいては、候補HFレーダーサイト(その特徴的な水深、バックグラウンド海流およびノイズを有する)が津波警告システムサイトとして適切であるかどうかの決定が下され得る。加えて、サイトが選択されたのち、シミュレータ動作モードを使用して情報のデータベースを得たのち、それを使用して、オンラインになったとき信頼し得るシステム動作を保証するためのパラメータをセットし得る。
0060
図2は、シミュレータ動作モードで構成されたHFレーダーシステムの特定の実施形態のアルゴリズムの流れを示す。図3は、オンライン動作モードで構成されたHFレーダーシステムの特定の実施形態のアルゴリズムの流れを示す。両図は、レーダーレシーバ出力から後続の処理工程を通過するデジタル信号の流れを示し、ロバストな津波警報情報の最終的なゴールが津波警告センターに送られて処理される。理解されるように、このアルゴリズムの流れを表すコンピュータプログラム命令が、コンピューティング装置10または別の関連するコンピューティング装置に記憶され、その動作を制御するために使用され得る。
0061
また、本明細書における特定のコンピューティングパラダイムおよびソフトウェアツールの任意の参照にもかかわらず、様々な実施形態が基づくコンピュータプログラム命令は、広く多様なプログラミング言語、ソフトウェアツールおよびデータフォーマットのいずれにも対応し得、任意のタイプの非一時的コンピュータ読み取り可能な記憶媒体または記憶装置に記憶され得、かつ、たとえばクライアント/サーバモデル、ピアツーピアモデルを含む多様なコンピューティングモデルにしたがって、独立型コンピューティング装置上で、または様々な機能性が様々な場所で実施または用いられ得る分散コンピューティングモデルにしたがって実行され得る。当業者に公知の適当な代替が用いられてもよい。
0062
図2および3に示される処理工程は、信頼し得るシステム能力を保証するために考慮されるいくつかの現象に関する。たとえば、可変性の外部バックグラウンド干渉および/またはノイズは、津波検知に有意に影響する要因であり、検知閾値が低すぎるならば、偽警報を生じさせ得る。非常に散発的な干渉(たとえば数日に一回)でさえ、いくつかの実施形態によって用いられるQ因子パターン認識アルゴリズムと偽陽性を生じさせることができる。しかし、週に一回の偽警報は通常、望ましくないとみなされる。したがって、様々な実施形態は、そのような干渉の存在を検出し、可能ならばフィルタリングして除去するための方法を併せて含む。除去することができないならば、高干渉期間中の任意のQ因子警報とともに警告文を送ることにより、対応のしかたに関する警告センター管理者の決定を知らせ得る。
0063
別の例において、沿岸HFレーダーによって長らく報告されてきたリアルタイム海流は場所および時間とともに変化する。時間的変化は、予測可能である場合もあるし(たとえば潮)、または予測不可能である場合もある(暴風のような多くの原因により)いずれかである。津波検知が望まれるレーダー有効範囲内のそれらのパターンは非常に複雑である可能性がある。いくつかの場合—最良減災法を用いる場合でさえ—これらのバックグラウンド海流変化が津波と間違えられ、ひいては認識アルゴリズムから警報を出させる可能性がある。所与のサイトに関してこれを取り扱う効果的な方法は、バックグラウンド海流およびバックグラウンド海流に対して検知アルゴリズムがどのように応答するのかを数ヶ月期間で研究することである。これを達成し、かつこれおよび他のバックグラウンド因子の影響を軽減する模擬実験技術が記載される。
0064
別の例においては、上述のノイズ/干渉(他のソースから発生し、送信信号の非存在下でさえ存在する)とは違って、船のような標的または移動する上空の電離層からのエコーが、ブラック海面エコーピークの中または近くに漂流するならば、津波エコーと混同される可能性がある。そのような偽性エコーを検知し、フィルタリングして除去するための技術が記載される。
0065
別の例においては、沖合の水深(bathymetry)が、HFレーダーシステムによる津波検知能力に強い影響を及ぼす。この現象は当然、レーダーサイトに大きく依存する。局所的水深に基づく近距離場津波伝搬のための数値モデルを使用してこの現象を模擬実験するための技術が記載される。そして、これらの模擬実験の結果は、検出可能閾値および他のパラメータの選択を案内するために使用される。
0066
別の例は、処理ストリーム中の任意の点における偽警報がランダムな事象であるとみなされ得る事実に関する。これは、他のソースからの公知の情報が、本物の検知を識別し、偽性の事象をさらなる考慮から除外するのに有用であり得ることを意味する。候補警報の周囲に時間ウインドウが設けられ、独立した確認ソースからの事象がこの時間ウインドウ内で起こるならば、その警報が本物の検知である可能性はずっと高くなり、それは次の段階に通される。このような相関ウインドウ/フィルタの目的は偽警報を除くことであるため、ソフトウェアがインストールされる任意の新たなシステムにおいて、この挙動を数ヶ月間、評価することができる。仮定は、警報を発動させる本物の津波はきわめて稀であり、この学習段階中に起こる可能性は低いということである。したがって、閾値を超えるすべての候補警報は偽警報であるとみなされ得る。そして、偽警報を最小限にするためにシステムパラメータを数ヶ月かけて調節したのち、所与の大きさの模擬津波信号(近距離場津波モデルに基づく)をこのデータストリームに挿入してその検出確率を評価し得る。
0067
別の例においては、海流状態に基づいてレーダーエリアおよびその期間における所与の大きさの津波の検知能力を評価するために、信頼性レベル評価をリアルタイムで実施し得る。これは、変化するバックグラウンド条件に基づく警報警告信号優先度の調節を可能にする。たとえば、警報は、ある時点では信頼し得る津波指標であることができるが、その後は、より高い干渉のせいで、そうではない場合もある。警報の信頼性に影響する要因の少なくともいくつが先に挙げられている。
0068
次に図2を参照して、津波検知に関するHFレーダーサイトの能力および/または適性が評価されるシミュレータモードのシステム動作を説明する。これは、図2に示されたプロセスをレーダーサイトで作動させて(たとえば数ヶ月間)局所的バックグラウンド制限に対するその能力を評価することを含む。上記のように、この段階におけるサイトの重要な特性はサイトの沿岸領域の水深である。理由は、これが検出能力および警告時間に影響するからである。シミュレータ動作モードの結果は、図3に示されるオンライン動作モードのために検出可能閾値および他のパラメータの最適化を可能にする。
0069
当業者によって理解されるように、図2のブロックのいくつかは、津波検知だけに特有ではない、完全さのために含まれる処理工程を表す。そのような処理工程は、たとえば、レンジに対するドップラースペクトルの従来の抽出を表すブロックAを含む。これらのスペクトルから、ブロックBによって表される処理が無線干渉および自然ノイズの両方をサーチする。自然ノイズは通常、ドップラー周波数およびレンジに対して「フラット」であり、たまには場所によっては、より高いこともある。これを、特に、津波が検知される範囲であるブラッグエコーピークの近くでカタログすることが重要である。しかし、無線干渉は、多くの場合、レンジおよびドップラー周波数中の強い帯域またはピークとして特有の出現を示す。ここでもまた、ブラッグピークを横切る、またはそれと平行に位置し、かつそれに近い、そのような干渉帯域の出現は問題である。どれくらい頻繁に起こるのか、および時刻がデータベースに記録される。無線干渉は、多くの場合、昼/夜の特定の時刻に起こる。
0070
ブロックAは、HFレーダーシステムの各アンテナからの信号ドップラースペクトルおよび/またはクロススペクトル(202)の従来の計算を表す。このブロックには、各レシーバからのデジタル時系列信号(201)が入力される。津波観測の場合、一つの好結果の実施形態は、出力のための2分間隔でスペクトル出力サンプルを生成し、時系列の長さのための4分が各スペクトル計算に入る(すなわち2分の重複)。当業者によって理解されるように、これらの出力時間は、従来の海流マッピングに使用される時間よりも短い。信号ドップラースペクトルおよび/またはクロススペクトルの計算は、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、1994年11月1日に発行された米国特許第5,361,072号「GatedFMCWDFradar and signal processing for range/doppler/angle determination」に記載されている。
0071
ブロックBは、ブロックAで算出されたドップラースペクトルからの外部バックグラウンド信号(203)の抽出および分析を表す。まず、スペクトル周波数およびレーダーレンジに対してフラットな(平均)ノイズレベルを算出する。次に、津波検知に使用されるブラッグピーク領域を隠蔽することもできる任意の人工無線干渉の存在を識別する。これは、平均ノイズレベルに対する干渉のレベルを含み得る。これらの干渉帯域が、ブラッグエコー領域を通過するならば、津波認識パターンにおいて偽警報を生じさせることができる。
0072
ブロックCは、偽警報を回避するための、レーダーエコースペクトルからのいくつかのタイプの干渉の識別および除去を示す。そのようなタイプの干渉の例は、(i)多くのレンジで起こるドップラー縞;および(ii)短時間インパルス干渉を含む。一定のドップラースペクトル周波数かつ複数の隣接レンジで見られる縞または帯域はフラグ付けされる。理由は、これらは多くの場合、除去されると、下にあるブラッグ津波エコーを暴露することができるからである。そうでなければ、通常の警告動作において、干渉ピークは、ブラッグ領域中で識別されることができるとき、このエコーレンジおよび期間の候補Q因子データが津波警告センターに送られるべきではない(少なくとも、これらが偽警報である可能性を示すフラグを有しない場合、送られるべきではない)ことを示す。ブロックCはまた、津波流に重なることができる海流信号、たとえば公知の潮流信号の記憶および除去(適切ならば)を含む。そのような潮流信号は、レーダー有効範囲エリア内の場所とともに変化する太陽および月の重力効果による潮流を表す。そのような潮流信号に関するさらなる情報に関しては、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられるClassical tidal harmonic analysis including error estimates in MATLAB using T_TIDE, Pawlowicz R, Beardsley B, Lentz S, Comput. Geosci. 28:929-937 (2002)を参照すること。まとめて、これらの機能は、津波検知前の信号の「プリコンディショニング」と考えられる。プリコンディショニングされたブラッグエコー(204)は海流および津波速度を含む。
0073
ブロックDは、見られるノイズおよび干渉(203)に関する情報のアーカイビングを表す。この情報は、このタイプの干渉に付されたとき、サイトにおける津波警告能力を評価するために、警報および模擬津波検知とのその後の相関とともに使用される。すなわち、シミュレータ動作モード中、津波が存在しないとき、干渉帯域は、偽警報ピーク(ブロックF1)とのその後の相関(ブロックJ)のためにアーカイビングされる。高い相関を有する多くの発生が、動作津波警告のためのサイトのロバスト性および信頼性を特徴づける。これが、無線干渉の優勢に基づいて予想Pfaを決定する。
0074
ブロックEは、前のブロックによるプリコンディショニングののち、ブラッグピークスペクトルエコー(205)の抽出を表す。ブラッグピークは、正常なバックグラウンド流(一般にこれらの沿岸レーダーの主な目的である)および任意の津波信号の両方を含む。これらの流れはブラッグピークから極座標中のベクトルマップとして抽出され、「ラジアル」と呼ばれる。この流れ抽出を達成し得る多くの方法の一例が、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、Least-Square Methodsfor the Extraction of Surface Currents fromCODAR Crossed-Loop Data: Application at ARSLOE, Lipa, B.J., and D.E. Barrick,IEEE Journal of Oceanic Engineering, Vol. 8, 1-12 (1983)に記載されている。
0075
ブロックF1およびF2は津波パターン認識を表す。特定の実施形態にしたがって、津波パターン認識は、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、Tsunami Arrival Detection with High Frequency (HF) Radar, Lipa, B., J. Isaacson, B. Nyden, and D. Barrick, Remote Sensing, Vol. 4, 1448-1461 (2012)に記載されたアルゴリズムにしたがって実施される。しかし、他のパターン認識アルゴリズムを使用し得る実施形態が考慮されることが理解されよう。いくつかの実施形態にしたがって、パターン認識は、ブロックEによって規則的な間隔、たとえば2分ごとに生成される半径方向速度出力に対して作用する。パターン認識への具体的な手法に関するさらなる詳細に関しては、図3のブロックEの以下の説明をも参照すること。
0076
ブロックF1は、リアルタイムバックグラウンド海流を使用するが、挿入される津波信号がない、津波認識アルゴリズムの動作を表す。これは、津波の非存在下、そのサイトで発されるQ因子警報(所与のしきいレベルの)(208)のカタロギングを可能にし、偽警報率のベースラインを提供する。ブロックF2は、同じリアルタイムバックグラウンド海流を使用するが、選択された大きさおよび開始時刻の試験津波信号(207)を挿入する。これは、ブロックF1によって表されるベースライン偽警報率の検出確率の評価を可能にする。
0077
ブロックGは、沖合水深および局所的「近距離場」の外縁における津波強さを考慮に入れる数値モデルに基づく津波信号(207)の挿入を表す。モデルは、模擬津波(軌道速度および高さ)を、海岸に向け、岸に対して平行な帯域を通して伝搬させる。近距離場数値モデルは、岸から任意の距離(レーダー有効範囲内)で見られる津波軌道速度と、下記との関係のデータベースを提供する:(i)海岸到達時刻、(ii)岸からの距離の減少とともに起こる軌道速度の増大、(iii)岸からの距離との津波の高さ。これは、大陸棚を横切る水深(深さ)の変化に基づく。これは、システムオペレータが、そのサイトからの実際のバックグラウンド流と関連して変化する津波の強さに関し、ブロックF2で津波検知確率を研究することを可能にする。すなわち、パターン認識アルゴリズム(ブロックF2)は、検知および公知の偽警報の両方が知られるよう、バックグラウンド海流の上に重ねられた津波およびサイトにおけるノイズの両方の場合に警報(209)を発する。
0078
ブロックHは、評価/模擬実験段階(数ヶ月続き得る)におけるサイトの半径方向海流マップパターン(206)のアーカイビングを表す。この情報は、下にあるバックグラウンド海流の性質に基づくサイトにおける津波警告能力を評価するために、Q因子偽警報および模擬津波検知との相関とともに使用され得る。
0079
ブロックJは、リアルタイムバックグラウンドノイズ/干渉および海流の下でのサイトの偽警報(208)の研究および評価のアーカイビングを表す。そして、偽警報率および発生とこれら他の因子との相関を実施し、評価し得る。
0080
ブロックKは、リアルタイムバックグラウンド/干渉および海流の下でのサイトの挿入された津波の検知能力の研究および評価のアーカイビングを表す。そして、検出確率とこれら他の因子との相関を実施し、評価し得る。これは、Pfa(実のレーダーバックグラウンドデータに基づく)とそれに伴うPd(公知の挿入された現実的な津波信号に基づく)の統計の編集を可能にして、これらの能力基準を使用して、動作リアルタイム津波検知および警告に関するサイトの適性および能力ならびにそのサイトにおけるオンライン動作に適切なパラメータ(たとえばQ因子閾値)を評価することができるようにする。
0081
次に図3を参照して、津波検知のために構成されたレーダーシステムのオンライン動作モードを説明する。特定の部類の実施形態にしたがって、図示される処理工程は、リアルタイム海流マップ、海の状態およびおそらくは船舶検知を提供するレーダーシステム上のソフトウェアと並行に(それらの機能を阻害または妨害することなく)実行されることを意図したものである。上記のように、多様な外来性要因が、沿岸HFレーダーによるロバストな津波検知を妨げることができる。これらは、外部無線干渉およびノイズ;津波速度の下にある複雑な可変性バックグラウンド海流パターン;ならびに他の標的(たとえば船、電離層)からのエコーを含む。さらに、沖合水深および限られたレシーバダイナミックレンジもまた、検知能力に影響する。図3に示されるプロセスは、自然なバックグラウンド内の津波パターンの検知を可能にし;信頼し得る有用な警告を津波警告センターに出すために、これらの難題を取り扱う。
0082
ブロックAは、検知システムが設置されている沿岸HFレーダーシステム中の各アンテナのデジタル時系列信号(301)からの信号ドップラースペクトルおよび/またはクロススペクトル(302)の従来の計算を表す。これは、レシーバ中でのデジタル化の後のドップラースペクトルの通常の抽出であり、津波検知だけに特有ではない。ブロックBは、ブロックAで算出されたドップラースペクトルからの外部バックグラウンド信号(303)の抽出および分析を表す。ブロックBの処理はノイズの抽出および人工無線干渉(存在するならば)の識別を含む。図2のブロックAおよびBの説明をそれぞれ参照すること。
0083
ブロックCは、津波検知を試みる前に、偽警報を回避するための、レーダーエコースペクトルからのいくつかのタイプの干渉の識別および除去を示す。これは、公知の干渉(可能ならば)および潮流(必要ならば)(304)を除去することによる、デジタル化レシーバのプリコンディショニングを含む。前者は、任意の短時間インパルスノイズ(たとえば雷光バースト)が存在する場合それを削除すること、および/または適切ならばネガティブレンジセルを使用してブラッグピークの近くのポジティブレンジデータから干渉帯域縞を除去することによって実施され得る。たとえば、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、2014年3月14日に出願された「Negative Pseudo-Range Processing with Multi-staticFMCW Radars」と題する米国特許出願第14/213,841号を参照すること。そのような干渉が津波偽警報のソースであることは知られている。除去することができないならば、津波警告センターに対し、警報を疑わしいものとしてフラグ付けし得る。図2のブロックCの説明を参照すること。
0084
ブロックDは、前のブロックによるプリコンディショニングののち、ブラッグピークスペクトルエコー(305)(海流および任意の津波信号を含む)の抽出を表す。図2のブロックEの説明を参照すること。
0085
図2のブロックEは、津波パターン認識および対応する警報(306)の生成を表す。図2のブロックF1およびF2を参照して上述したように、特定の実施形態にしたがって、図3のブロックEによって表される津波パターン認識は、参照によりその全開示内容がすべての目的のために本明細書に組み入れられる、Tsunami Arrival Detection with High Frequency (HF) Radar, Lipa, B., J. Isaacson, B. Nyden, and D. Barrick, Remote Sensing, Vol. 4, 1448-1461 (2012)に記載されたアルゴリズムにしたがって実施される。しかし、他のパターン認識アルゴリズムを使用し得る実施形態が考慮されることが理解されよう。
0086
図示される実施形態にしたがって、ブロックDによって生成された半径方向速度海流マップは、岸に対して平行なほぼ長方形の帯域(すなわち等深線)へと分解される。海岸から外へ延びる帯域ごとに、垂直および平行流成分がある。バックグラウンド流内の津波パターンを認識するために、その典型的な公知のスペクトル特性が利用される(たとえば、津波周期は一般に約10〜50分の範囲である)。各帯域内で、二つの連続的な時間間隔にわたり速度がプリセットレベルよりも大きい量だけ増すか、または減るかが決定される。増す、または減るならば、その帯域に関してQレベルパラメータを増す、または減らす。そして、連続的な時間間隔に関して連続的な帯域の最大/最小速度が一致する(プリセット値内で)かどうかが決定される。一致するならば、その帯域および時間のQレベルパラメータを増す(最大速度が一致する場合)または減らす(最小速度が一致する場合)。そして、三つの隣接エリア帯域に関して二つの連続的な時間間隔にわたり速度が増すか、または減るかが決定される。増加があるならば、Qレベルパラメータを増し、減少があるならば、Qレベルパラメータを減らす。
0087
図4は、2011年3月の日本の東北津波を成功裏に検知した、先に概説されたQ因子アルゴリズムの実施形態の実際の出力の表示を示す。右側のパネルは、警報ピークが、海岸から6〜12km(すなわち、速度および地震の時刻から決定される、近距離場領域中の等深線に対してほぼ垂直な線に沿う距離)の強い津波速度(左側)を識別し、検知した様子を示す。ノイズおよびバックグラウンド潮流によって汚染される速度は、それだけでは、このパターン認識アルゴリズムなしで分解することは困難であったであろう。図示するように、経験的に確立されたQ因子津波パターン認識機構は最初の津波ピーク(沿岸検潮儀によって確認された)を正確に識別する。それにもかかわらず、何時間および何日もの間、外来性バックグラウンド効果のせいで、あまりに多くの偽警報が生じる可能性がある。本明細書に記載されるさらなる処理は、両方の動作モード中、正確な検知の確率を高めながらも、そのような偽警報の可能性を減らすように働く。
0088
再び図3を参照すると、ブロックFは、ブロックEの津波パターン認識によって発された警報の中から少なくともいくつかの偽警報を除き得る一つの方法を表す。これは、隣接するHFレーダーからのQ因子出力(307)を試験することによって実施される。本物の津波は、30km離れた二つの沿岸位置で、たとえば画定可能な時間ウインドウ(たとえば10〜30分)内で見られるはずである。津波は、海岸の近くの大陸棚のますます浅い水に入るにつれ、屈折する。これは、津波が岸に対して垂直に到達する傾向があることを意味する。これが、これらの短い距離にわたるほぼまっすぐな海岸線沿いの場所で同様な到達時刻を強いる。したがって、レーダーMにおける高いQ因子ピークが、レーダーNにおける高いQ因子ピークから15分以内の所与の範囲で到達するならば、両方の存在は、本物の津波が検知されている確率を桁違いに高め、警報(308)が送られる。同様に、レーダーMにおける高いQ因子がレーダーNにおいてその対応物を有しないならば、それは、「警報」スパイクが実際には偽警報であった確率を大きく高める。したがって、単独の警報は偽警報として除かれるか、またはずっと低い信頼性を与えるフラグがその警報(308)に付されるいずれかであることができる。これは、一連の行動を決定するために評価し、他の情報と比較するとき、津波警告センターの人員による選択を可能にする。
0089
ブロックGは、偽警報を除き得る別の方法を表す。現在、いくつかのサービスが、世界中のどこかで発生した地震の2分以内に(いくつかの場合、ずっと速やかに)オンライン通知(309)を配布するアプリケーションを提供している。そのようなサービスの一例がhttp://www.sms-tsunami-warning.com/.である。これらのサービスは一般に、地震の緯度、経度、時刻およびマグニチュードを提供する。そのような情報ソースが図3にブロックHとして表されている。
0090
すべての海底地震が津波を発生させるわけではないが、ここでは、マグニチュード5よりも大きい任意の海底地震は津波の発生源になることができると仮定する。震源と関心対象のレーダー近距離場との間の等深線に基づくアルゴリズム(ブロックIによって表す)を使用して、検知された地震によって発生した津波の予想到達時刻(310)を算出する。これは、深さに対する津波位相速度の簡単な等式に基づく。アルゴリズムは、地震の時刻および場所に基づいてレーダーがいつ津波を検知することができるかを予測する。これは、レーダーにおける適切なウインドウ(たとえば±30分)を画定するために、必ずしも、完全な偏微分方程式(PDE)数値モデルである必要はない。たとえば、ΔTが、公知の地震発生と近距離場レーダー有効範囲エリアの縁に到達する時刻との間の時間間隔と定義されるならば、この簡単かつ十分な推定は次式によって求められる:
[数式1]
式中、xは、スタートポイントXSとエンドポイントXEとの間の大円に沿う経路長であり、gは、公知の重力加速度であり、d(x)は、津波がレーダーエリアに到達するために横切らなければならない大円経路に沿う深さの補整バージョンである。これは簡約された計算であるが、到達時刻においては±0.5時間の精度を達成することが十分であることが留意されるべきである。被積分関数内の分母が、水深に基づく津波の容認された伝搬速度である。より正確なモデルが利用可能であり、そのため、上記例は、一つの手法を説明することを意図したものであり、代替の計算を排除することを意図したものではないことが理解されるべきである。
0091
そして、ブロックGに関して威嚇ウインドウ(たとえば到達時刻の±0.5時間)がセットアップされ、このウインドウ内の任意のQ因子警報候補(311)が高い優先度を与えられ、さらなる処理のために送られる。逆に、海底地震(または同等な事象)が先に起こっていない、警報閾値を超えるQ因子警報は除かれ得る(警告センター責任者の自由裁量で)。地震は津波の発生源として記載されているが、他の発生源、たとえば海底地すべりおよび「気象津波」を発生させる動きの速い大気異常が公知であることが留意されるべきである。両タイプの事象の場合の適時警告はオンラインでも利用可能であり、したがって、同様なやり方で使用されて、高められた警報信頼性のためにレーダーにおける時間ウインドウを画定し得る。ここでもまた、目的は、より信頼し得るQ因子警報にフラグを付け、ソース警報を伴わない他のものを格下げすることである。また、海底地震または大気異常の一部しか計測可能な津波を発生させないことが留意されるべきである。そのようなものとして、そのような事象の警報は、津波がレーダーによって検知されることを意味せず、単に、検知確率を高め、偽警報を減らすことによってHFレーダーのロバスト性および信頼性を高めるために「監視態勢」を設けることが賢明であり得ることを意味する。
0092
ブロックKは、岸から任意の距離(レーダー有効範囲内)で見られる津波軌道速度と、下記との関係のデータベースを提供する近接場数値モデル(312)を表す:(i)海岸到達時刻;(ii)岸からの距離の減少とともに起こる軌道速度の増大;(iii)岸からの距離との津波の高さ。これは、大陸棚を横切る水深(深さ)の変化に基づく。この情報は、検知のポイントおよび時刻から高さ、水軌道速度および海岸到達時刻(313)を予測するためにブロックJによって表される処理によって使用され;後者はQ因子警報から導出される。
0093
特定の実施形態にしたがって、浅水津波伝搬(ブロックK)を表す等式は:
[数式2]
および
[数式3]
によって求められる。等式(2)は、有名なナビエ・ストークス(Navier-Stokes)流体力学の支配項でもあるニュートンの第二法則を表す。等式(3)は、確立された関係である水の非圧縮性を表す。ここで、η(x,y,t)は、水平距離および時間の関数としての津波の高さであり、
は、同じく水平距離および時間の関数としての水平水軌道速度ベクトルである。津波軌道速度は、すべての従来のモデリング処理におけるように、ここでは深さ非依存性であると理解される。
0094
二つの未知数(高さおよび速度)の関数である等式(2)および(3)を解いて、これら二つの津波変数それぞれにおける特異2階偏微分方程式(PDE)を得ると(二つ目の等式の[]内の高さは小さいため、無視する)、次式に達することができる:
[数式4]
および
[数式5]
等式(4)および(5)は、レーダー有効範囲エリア内の「近距離場」領域;一般には海岸から約50kmまでで適用される。これらの式は、パーソナルコンピューティング装置上、MATLABのような従来の市販パッケージにより、対応するPDEツールボックスを使用して解き得る。沖合水深は深さ変数d(x,y)として含められ、海岸線がドメインの境界線となる。通常、本発明者らは、第二のPDE、津波高さのためのスカラー式(5)を解くことがより容易であることがわかる。そして、等式(2)の左辺を積分することにより、速度を得る。これが、警告センターによって望まれる軌道速度(レーダーによって計測)と津波高さとの関係および近距離場領域中の任意の地点から海岸への到達時刻を確立する。
0095
理解されるように、これらの等式は一度だけ解けばよく、正規化された結果がデータベースまたはスプレッドシートに記憶され得る。Q因子警報に対応する速度は、データベーステーブルエントリの識別を可能にし、そこから、付随する津波高さを岸からの距離の関数として抽出することができる。海岸到達時刻はまた、最初にレーダーによって検知された距離および時刻に基づくモデル化された結果から抽出されてもよい。そして、これらが、津波警告センターに送られる警報情報に付随し得る。
0096
ブロックLは、津波警報情報(315)を警告センターに送信する前の最後の処理工程を表す。ブロックBからのバックグラウンドノイズおよび干渉レベル(314)を用いて任意のQ因子警報の信頼性を判定する。たとえば、所与の期間中にノイズが高いならば、その期間中のピークの信頼性は下げられる、またはおそらくは除かれる。これは、Q因子警報ピークにおける軌道速度と、ブロックBで決定されたノイズそのものに基づく視感度閾値との比較によって実施され得る。そして、残る津波警報があるならば、それを津波警告センターに送ることができる。そのようなレーダーベースの警報を、津波警告センターに利用可能な任意の他の情報と相関させたのち、センター人員よる措置のために、適当な表示へと統合し得ることが留意されるべきである。
0097
本開示の範囲を逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態の形態および詳細に変更を加え得ることが当業者によって理解されよう。加えて、様々な実施形態を参照して様々な利点、局面および目的が記載されたが、本開示の範囲はそのような利点、局面および目的の参照によって限定されるべきではない。むしろ、本開示の範囲は特許請求の範囲の参照によって決定されるべきである。
0098
1GPSアンテナ
2GPSレシーバ
3位相同期発振器(PLO)
4クロック生成器
5レーダーステートマシン
6発振器
7マイクロプロセッサ
8メモリチップ
9送受信(T/R)スイッチ
10コンピューティング装置
11トランスミッタ
12レシーバ
13送信アンテナ
14アンテナシステム
100 信号
110 信号
120 信号
130 信号
201デジタル時系列信号
202 信号ドップラースペクトルおよび/またはクロススペクトル
203 外部バックグラウンド信号
204プリコンディショニングされたブラッグエコー
205ブラッグピークスペクトルエコー
206半径方向海流マップパターン
207津波信号
208偽警報
209 警報
301 デジタル時系列信号
302 信号ドップラースペクトルおよび/またはクロススペクトル
303 外部バックグラウンド信号
304 公知の干渉(可能な場合)および潮流(必要ならば)
305 ブラッグピークスペクトルエコー
306 対応する警報
307Q因子出力
308 警報
309オンライン通知
310予想到達時刻
311 Q因子警報候補
312近接場数値モデル
313 高さ、水軌道速度および海岸到達時刻
314バックグラウンドノイズおよび干渉レベル
315津波警報情報
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