図面 (/)
技術分野
背景技術
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従来、石油製品やポンプやタービン、モーター、減・増速器などの回転機械の潤滑油の汚れや劣化を判定するものにASTMカラー(色見本スケールともいうASTMD1500)というものがある。これは潤滑油管理における測定項目にもなっており、潤滑油の劣化の判断として用いられているものである。
しかしながら、ASTMカラーがどの企業においても現場であまり利用されていないのが実状である。
先行技術
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特許2962902号
発明が解決しようとする課題
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ASTMカラーは人間の視覚で判断するため、個人差が生じやすい点があり、特許文献1にもその難しさが述べられている。そこで特許文献1では、この測定方法を色彩色差計を用いて自動化判定する方法を開発している。正確な測定法として優れたものである。
しかしながら、現場では数多くの機器がある中、いちいち装置設備の現場巡回員や保全マンが個々のオイルサンプルを自動化判定していたのでは大変な業務作業となり非効率である。潤滑管理技術(トライボロジー技術)という範疇で見た場合の課題は、現場では新油に対しておよそどの程度、酸化や劣化が進行しているかが簡易診断にて分かればよい。よって、ASTMカラーの数値番号により、生産機械の現場で管理をすることが可能になれば、潤滑油管理は格段に向上し、機械の寿命延長や故障防止にも寄与し経済損失の防止に大きく貢献する。
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しかし、現場では色相判定が実際なされていないのが現状である。機器の検査記録を見ても「潤滑油黒濁とか汚れ有り」でその劣化度を示す色番まで書いた検査記録は殆ど見られない。仮に「やれ」と言われても実際に物理的に出来ないのである。その理由は、ASTMカラーのスケールは一部の専門部署の職場か研究部門で所有されている程度である。オイルサンプリング容器にあっては、ビーカーであったり何かの空き瓶の利用であったりして、きちんとした潤滑油のサンプリングのための容器として現場に準備されている企業は極めて少ないのが実情である。
ポンプをはじめとし軸受部を持つ生産機械やエンジンしかり、潤滑油管理については古くから言われているにも係わらず、この関係のインフラが整っていないのである。
潤滑油管理は、高度な分析法であるSOAP法やフェログラフィー法などの各々の専用検査機器を用いて、分析管理をすることが理想ではあるが、日常の潤滑管理においては、そのような検査機器は高額なコストがかかるため所有している企業は少ない。また分析にも時間がかかるという課題もある。
尚、潤滑管理は簡易な点検管理を確実に実行することにおいて、早期に異常の発見ができる。潤滑油は、人で言う血液と同じであって、異常を早期発見するために機械にとっては最も適した設備(健康)診断技術である。潤滑管理をすることにより、機器は延命化し機器の維持管理費の低減や省エネにも十分に寄与する。
潤滑油は主に、酸化・粘度変化(感触にて)、水分混入の有無および異物による黒濁などを目視点検するだけで、早期に異常を察知することが可能な設備診断技術である。極論を言えば、最も早期に異常の動向が掴める回転往復動機械群の設備診断技術である。即ち、日常の潤滑管理がベースにあってこそ、近年発達した振動法や音響法などの高度な設備診断技術が成り立つのである。残念ながら潤滑管理なくして、これらの技術は成り立たない。
課題を解決するための手段
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本体の透明容器(1)の中央部より下の部分にASTMカラー色見本(7)を設ける。ASTMカラー色見本(7)の中央部には、窓(4)あるいは切欠き窓(5)を設ける。ASTMカラー色見本(7)には、ASTMガラス標準色番号(8)が設けてある。
本発明は、以上の構成よりなるASTMカラー付きオイルサンプリング容器である。
尚、容器は透明であれば特に形や材質に制限を受けるものではないが、サンプルが採取し易いように、広口でキャップ(蓋)付き構造のものが、不意に倒れたりしても漏れなく理想である。
発明の効果
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ASTMカラー色見本とサンプリング容器が一体になっているので、潤滑油をサンプリング容器に採取した瞬間に、潤滑油の汚染度や劣化度(酸化度)が誰にでも容易に判定できる。従来は、ASTMカラー色見本のスケール(ものさし)をガラス瓶やビーカーなどの容器に当てて判定していたが、容器への当て具合で色別の判定が光の加減等で難しかったが、本発明は窓や切欠き窓を具備しているため、この部分に潤滑油が満たされることによって色の識別判定が容易になる。
キャップ付きの広口容器のため、サンプリングしたオイルのハンドリングやキャリーも簡単である。また、採取した潤滑油を容器ごと事務所などに持ち帰り、容器をそのまま静置しておくことで、時間が経過すると水分の混入(ドレン混入とも言う)や金属摩耗粉の有無などが、油と分離するため目視で容易にわかる。潤滑油管理の目視判定に係わる一連の管理項目が本発明の利用で一つの工程で可能となる。透明度の高い容器のため、摩耗金属粉などは小型懐中電灯(LEDなど)を底部や側部から当てるだけでも、目視判断が容易にできる。
図面の簡単な説明
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本発明の斜視図である。本発明のASTMカラー色見本の平面拡大図である。
実施例
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以下、本発明を実施するための形態について説明する。
(イ)本体が透明容器(1)の底部からおよそ1/3くらいのレベル位置に、ASTMカ ラー色見本(7)のスケールを設ける。
(ロ)設けられたASTMカラー色見本(7)の中央部あたりに、窓(4)あるいは周縁部に切欠き窓(5)を設ける。尚、窓の形状は本図では円形であるが、四角あるいは三角形状など任意の形状でよい。また切欠き窓も本図では、半円形状であるがこれも 四角あるいは三角形状など任意の形状でよい。
(ハ)ASTMカラー色見本(7)には、ASTMガラス標準色番号(8)が設けてある 。
尚、標準色番号は0.5刻みで8.0まで16段階である。
ASTMカラー色見本(7)は、シールタイプの貼付取付けあるいは容器本体にシルクスクリーン印刷でもよく、またポリスチレンのフィルム加工したものでもよく、そ の表示の仕方は任意の方法でよい。また、切欠き窓は本図では下部側に設けているが 周縁部の上部側に設けてもよい。
本発明は、以上のような構造である。
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本発明を使用するときは、例えばサンプリング時に片手で握り易い300ml〜500ml程度の容器が理想の大きさであるが、この場合でも潤滑油などのオイルを概ね100〜150ml程度入れてASTMカラー色見本の窓に表示される程度のオイルを満たせば、劣化度(酸化度)は数値で判読可能である。尚、劣化度はASTMカラー色見本の新油時の番号からから2.5程度、濃色側になったときが、およそ酸化劣化限界値の目安と言われている。次に、サンプリングした試料の色が仮に4.5と5.0の間にある場合は、濃い色相側にL5.0と表示するなどその表示方法などもJISで定められている。
本発明を用いれば、ASTMカラー色見本と同カラー見本の窓から表われたオイルとが保護色状に同化したように見えるため、従来に比してより簡単に劣化の判定が可能となる。
例えば、仮にサンプル量が50CC程度と少ない場合でも、キャップがついており、試料を漏らすことなく、サンプル試料を容器ごと傾けてASTMカラー色見本の窓を満たすことで判読可能である。従来のものさし型スケールを用いて判定するよりは、窓と切欠き窓の2つで識別判定できるため判定精度はより向上する。従来両手で行っていたものが片手でできるなどの利便性もある。
容器の材質は、透明度が高いほど良くガラス製でも良いが、軽量さや割れやひびなど現場でのサンプリング作業であることを勘案すると清涼飲料水などの容器材料で、透明度の高いPETボトル材質(PET:ポリエチレンテレフタレート)などが良い。また容器は可能な限り広口が良く、形状や容量的には片手でハンドリングし易い350mlビール缶程度の大きさ形状ものが理想である。例えば容器の一例として、容器のシルエットが缶ビールとほぼ同形状の容器が、酒のおつまみ容器としてホテル等の自動販売機等で販売されているが、形状面や強度および透明度も良く、オイルサンプル容器としては理想的な形状でもある。材質・形状ともに申し分なく、形状も容器として確立されたものであるためこれらを利用するとローコストで提供できると考えられ普及し易い。