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技術 空転・滑走安定化装置

出願人 東洋電機製造株式会社
発明者 牧島信吾
出願日 2016年5月12日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2016-096398
公開日 2017年11月16日 (3年0ヶ月経過) 公開番号 2017-204956
状態 特許登録済
技術分野 車両の電気的な推進・制動
主要キーワード 滑り領域 誤差精度 たんす 収束方向 車輪周速度 粘着係数 加減速力 発散方向
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図面 (7)

課題

乗り心地の悪化等招くこと無く空転滑走状態を安定的に維持する。

解決手段

空転・滑走安定化装置31は、車輪又はタイヤ摩擦力を用いてトルク制御によって駆動される車両1において、車輪又はタイヤが空転又は滑走したと判断した際に、車輪又はタイヤの周速度と車体速度との差であるすべり速度微分値であるすべり加速度がゼロになるような安定化トルクを車輪又はタイヤに発生させる。

概要

背景

鉄道車両車輪レールとの間の接線力粘着力ともいう)によって加減速を行っているが、この接線力は、一般にすべり速度に対して図4に示すようにすべり速度がある速度(例えば0.1km/h程度)でピークをもち、その後すべり速度が増大するに伴い低下する特性を有している。この接線力を軸重(車輪1軸当たりのレールに加わる垂直荷重)で割ったものを接線力係数といい、接線力係数の最大値粘着係数という。

通常鉄道車両は、すべり速度がピーク値をとる値より小さい範囲である微小すべり領域(粘着領域)にある粘着状態運転される。一方で、接線力係数の最大値に対応するトルクより大きなトルクを発生するとすべり速度は増大し、接線力が低下するのでさらにすべり速度が増大する空転滑走状態になる。接線力係数の最大値である粘着係数は、レール・車輪間の状態により大きく変化して、例えばレール面が雨などによって湿潤状態にある場合は、図4の実線に示すように粘着係数が低下して接線力の最大値が車両の設定性能に対応したトルクより小さくなり、すべり速度が増大し空転・滑走状態となる。一般的に空転・滑走状態は車両の加速減速に必要な加減速力が低下することから、迅速に空転・滑走を検知して主電動機が発生するトルクを低減して再粘着させることが必要とされている。

図5を用いて空転・滑走制御の一例を説明する。図5は、4台の主電動機4を1台の主制御装置3(例えばVVVFインバータ)で駆動する場合であるが、それぞれの主電動機4に対して個別の主制御装置3を用いる場合もある。しかしながら、基本的な制御の考え方はどちらも同一であるため省略する。

主幹制御器2は運転士の操作に基づき加減速するための元トルク指令Tref0を出力する。主制御装置3内の再粘着制御部35は通常は元トルク指令Tref0をそのままトルク指令Trefとして出力するが、空転・滑走を検知した際は再粘着させるために元トルク指令Tref0より小さい値をトルク指令Trefとして出力する。ベクトル制御部32は主電動機4の発生トルクがトルク指令Trefと同一になるような電圧指令を生成し、インバータ34によって電圧指令と等価な電圧が主電動機4に印加される。回転速度推定部33は、インバータ34の出力電圧電流等から主電動機4の回転速度を推定する。なお、回転速度推定部33の代わりに主電動機4に回転速度センサを設ける場合もある。

トルク指令Trefがそのときの粘着係数に対応したトルクよりも大きくなると、図6(b)に示すように、空転が発生して車両速度Vtよりも車輪周速度Vwが急激に増加する。再粘着制御部35は、回転速度推定部33で演算された主電動機4の回転速度の微分値車輪加速度αwに比例)が閾値を超えた際に空転・滑走と判断する。空転・滑走と判断すると、図6(a)に示すように、トルク指令Trefを絞り込み、再粘着したと思われる時点において、トルク指令Trefをある値まで短時間のうちに増大させた後、再度徐々にトルク指令Trefを増大させ、以降同様の作用が繰り返される。

ここで、トルク指令Trefの絞り込み量及び絞り込み時間は、空転している動輪を確実に再粘着させることができる値のトルクとする必要がある。特許文献1では、車輪周速度Vwと車体速度Vtの差であるすべり速度Vsの微分値であるすべり加速度αsについて、力行時には負の値(図6(c)参照)、制動時には正の値となるような指令を生成することにより、決められた時間に確実に再粘着を行う手法が記載されている。

なお、空転・滑走の検知方法は主電動機の回転速度の微分値から検知する方法の他に、複数の主電動機の回転速度差から検知する手法等、様々な方法がある。

概要

乗り心地の悪化等招くこと無く空転・滑走状態を安定的に維持する。空転・滑走安定化装置31は、車輪又はタイヤ摩擦力を用いてトルク制御によって駆動される車両1において、車輪又はタイヤが空転又は滑走したと判断した際に、車輪又はタイヤの周速度と車体速度との差であるすべり速度の微分値であるすべり加速度がゼロになるような安定化トルクを車輪又はタイヤに発生させる。

目的

本発明の目的は、空転・滑走状態を安定的に維持することで、乗り心地の悪化等を防止することが可能な空転・滑走安定化装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

車輪又はタイヤ摩擦力を用いてトルク制御によって駆動される車両において空転又は滑走状態を安定的に維持する空転・滑走安定化装置であって、前記車輪又はタイヤが空転又は滑走したと判断した際に、前記車輪又はタイヤの周速度と車体速度との差であるすべり速度微分値であるすべり加速度がゼロになるような安定化トルクを前記車輪又はタイヤに発生させることを特徴とする空転・滑走安定化装置。

請求項2

前記安定化トルクは前記車輪又はタイヤの摩擦力の推定値と前記車体の加速度の推定値とを用いてフィードフォワード制御によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の空転・滑走安定化装置。

請求項3

前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を随時更新することにより、前記安定化トルクを連続的に変化させることを特徴とする請求項2に記載の空転・滑走安定化装置。

請求項4

前記安定化トルクは一定値に保持され、一定時間経過後に新たな前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を用いて前記安定化トルクが再設定されることを特徴とする請求項2に記載の空転・滑走安定化装置。

請求項5

前記安定化トルクは一定値に保持され、一定時間経過後に徐々に引き上げられ、前記車輪又はタイヤの周加速度が閾値超過した際に新たな前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を用いて前記安定化トルクが再設定されることを特徴とする請求項2に記載の空転・滑走安定化装置。

請求項6

前記安定化トルクは、前記すべり加速度が、空転又は滑走が検知されたときの絶対値よりも小さい値であって、空転又は滑走が収束する方向の値となるように、設定されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の空転・滑走安定化装置。

技術分野

0001

本発明は、電気車の良好な乗り心地を維持しつつ、空転滑走状態でも安定した制御を実現する空転滑走安定化装置に関するものである。

背景技術

0002

鉄道車両車輪レールとの間の接線力粘着力ともいう)によって加減速を行っているが、この接線力は、一般にすべり速度に対して図4に示すようにすべり速度がある速度(例えば0.1km/h程度)でピークをもち、その後すべり速度が増大するに伴い低下する特性を有している。この接線力を軸重(車輪1軸当たりのレールに加わる垂直荷重)で割ったものを接線力係数といい、接線力係数の最大値粘着係数という。

0003

通常鉄道車両は、すべり速度がピーク値をとる値より小さい範囲である微小すべり領域(粘着領域)にある粘着状態運転される。一方で、接線力係数の最大値に対応するトルクより大きなトルクを発生するとすべり速度は増大し、接線力が低下するのでさらにすべり速度が増大する空転・滑走状態になる。接線力係数の最大値である粘着係数は、レール・車輪間の状態により大きく変化して、例えばレール面が雨などによって湿潤状態にある場合は、図4実線に示すように粘着係数が低下して接線力の最大値が車両の設定性能に対応したトルクより小さくなり、すべり速度が増大し空転・滑走状態となる。一般的に空転・滑走状態は車両の加速減速に必要な加減速力が低下することから、迅速に空転・滑走を検知して主電動機が発生するトルクを低減して再粘着させることが必要とされている。

0004

図5を用いて空転・滑走制御の一例を説明する。図5は、4台の主電動機4を1台の主制御装置3(例えばVVVFインバータ)で駆動する場合であるが、それぞれの主電動機4に対して個別の主制御装置3を用いる場合もある。しかしながら、基本的な制御の考え方はどちらも同一であるため省略する。

0005

主幹制御器2は運転士の操作に基づき加減速するための元トルク指令Tref0を出力する。主制御装置3内の再粘着制御部35は通常は元トルク指令Tref0をそのままトルク指令Trefとして出力するが、空転・滑走を検知した際は再粘着させるために元トルク指令Tref0より小さい値をトルク指令Trefとして出力する。ベクトル制御部32は主電動機4の発生トルクがトルク指令Trefと同一になるような電圧指令を生成し、インバータ34によって電圧指令と等価な電圧が主電動機4に印加される。回転速度推定部33は、インバータ34の出力電圧電流等から主電動機4の回転速度を推定する。なお、回転速度推定部33の代わりに主電動機4に回転速度センサを設ける場合もある。

0006

トルク指令Trefがそのときの粘着係数に対応したトルクよりも大きくなると、図6(b)に示すように、空転が発生して車両速度Vtよりも車輪周速度Vwが急激に増加する。再粘着制御部35は、回転速度推定部33で演算された主電動機4の回転速度の微分値車輪加速度αwに比例)が閾値を超えた際に空転・滑走と判断する。空転・滑走と判断すると、図6(a)に示すように、トルク指令Trefを絞り込み、再粘着したと思われる時点において、トルク指令Trefをある値まで短時間のうちに増大させた後、再度徐々にトルク指令Trefを増大させ、以降同様の作用が繰り返される。

0007

ここで、トルク指令Trefの絞り込み量及び絞り込み時間は、空転している動輪を確実に再粘着させることができる値のトルクとする必要がある。特許文献1では、車輪周速度Vwと車体速度Vtの差であるすべり速度Vsの微分値であるすべり加速度αsについて、力行時には負の値(図6(c)参照)、制動時には正の値となるような指令を生成することにより、決められた時間に確実に再粘着を行う手法が記載されている。

0008

なお、空転・滑走の検知方法は主電動機の回転速度の微分値から検知する方法の他に、複数の主電動機の回転速度差から検知する手法等、様々な方法がある。

0009

特開2013−102613公報

先行技術

0010

車輪/レール接触における巨視滑り領域までの粘着力の挙動:静・動荷重条件における水潤滑状態での実験結果、日本機械学會論文集C編、60(574)、pp2096−2102、1994

発明が解決しようとする課題

0011

一般的に空転・再粘着制御では空転・滑走を検出してできるだけ素早く再粘着するようにトルクを急激に引き下げる。しかしながら、トルクを急変させることによる乗り心地悪化や、台車振動の誘発による乗り心地悪化という問題が発生するため、急激なトルク引下げは必ずしも望ましくない。また、トルクを引き下げることにより一時的に加減速ための接線力が低下することから、加減速性能に影響を及ぼす。

0012

この点、空転・滑走が継続した際に車輪とレールとの間が摩擦により活性化されて接線力が増大される例が報告されている(例えば非特許文献1参照)。そのため、積極的にトルクを引下げて再粘着させるよりも、空転滑走を意図的に継続させることにより加減速性能を確保できることが期待される。

0013

しかしながら、接線力が増大したとしても、空転・滑走状態では不安定な状態であるため、急激に空転・滑走が発散したり、逆に一方で急激に収束したりといったことが発生する。例えば、空転が継続してすべり速度Vsが大きくなると、接線力が低下するためさらにすべり速度Vsが増大する悪循環に陥る発散状態となり、すべり速度Vsが大きい状態が継続するためレールや車輪の損傷や、騒音といった問題が発生する。一方で、すべり速度Vsが大きい状態でいったんすべり速度Vsが低下すると、接線力が増加してさらにすべり速度Vsを低下させるようになるため、急激に粘着領域に戻り接線力が急変してショックが発生して乗り心地悪化や加減速不良を招く。

0014

かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、空転・滑走状態を安定的に維持することで、乗り心地の悪化等を防止することが可能な空転・滑走安定化装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0015

上記課題を解決するため、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、車輪又はタイヤ摩擦力を用いてトルク制御によって駆動される車両において空転又は滑走状態を安定的に維持する空転・滑走安定化装置であって、前記車輪又はタイヤが空転又は滑走したと判断した際に、前記車輪又はタイヤの周速度と車体速度との差であるすべり速度の微分値であるすべり加速度がゼロになるような安定化トルクを前記車輪又はタイヤに発生させることにより空転又は滑走状態を安定的に維持することを特徴とする。

0016

また、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、前記安定化トルクは前記車輪又はタイヤの摩擦力の推定値と前記車体の加速度の推定値とを用いてフィードフォワード制御によって決定されることを特徴とする。

0017

また、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を随時更新することにより前記安定化トルクを連続的に変化させることを特徴とする。

0018

また、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、前記安定化トルクは一定値に保持され、一定時間経過後に新たな前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を用いて前記安定化トルクが再設定されることを特徴とする。

0019

また、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、前記安定化トルクは一定値に保持され、一定時間経過後に徐々に引き上げられ、前記車輪又はタイヤの周加速度が閾値を超過した際に新たな前記摩擦力の推定値及び前記車体の加速度の推定値を用いて前記安定化トルクが再設定されることを特徴とする。

0020

また、本発明に係る空転・滑走安定化装置は、前記安定化トルクは、前記すべり加速度が、空転又は滑走が検知されたときの絶対値よりも小さい値であって、空転又は滑走が収束する方向の値となるように設定されることを特徴とする。

発明の効果

0021

本発明により、接線力の増大が期待され、空転・滑走状態を安定的に維持することで、乗り心地の悪化等を防止することが可能となる。

図面の簡単な説明

0022

本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置を用いた車両の一例を示す図である。
本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置の力行時の空転の挙動の第1の例を示す図である。
本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置の力行時の空転の挙動の第2の例を示す図である。
すべり速度・接線力係数特性の一例を示す図である。
従来の再粘着制御器を用いた車両の一例を示す図である。
従来の再粘着制御器の力行時の挙動を示す一例を示す図である。

実施例

0023

以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。

0024

図1は、本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置31を用いた車両1の一例を示す図である。図5に示した従来の車両と同一の構成要素には同一の参照符号を付し、詳細な説明は省略する。図1に示す例では、車両1は、主幹制御器2と、主制御装置3と、主電動機4と、歯車装置5と、レール7上を走行する車輪6と、を備える。なお、車両1から、主電動機4と、歯車装置5と、車輪6とを除いた部分を、以下、特に車体とする。主制御装置3は、図1に示すように、従来技術の主制御装置3内の再粘着制御部35(図5参照)に変えて、空転・滑走安定化装置31を設ける。

0025

車両1は、車輪又はタイヤの摩擦力を用いてトルク制御によって駆動される。本実施形態の車両1は、車輪6を用いてレール7上を走行するが、タイヤを用いて軌道上を走行するものであってもよい。

0026

空転・滑走安定化装置31は、車輪6とレール7との間の接線力を主電動機軸換算したもの、すなわち車輪6とレール7との間の摩擦力の推定値である負荷トルクτest〔N・m〕とすべり加速度指令αs_ref〔m/s2〕と車体加速度推定値αt_est〔m/s2〕を入力し、式(1)により安定化トルクTref_sta〔N・m〕を算出する。ここで、Rgは歯車比であり、rw〔m〕は車輪径であり、J〔kg・m〕は主電動機4からみた主電動機4、歯車装置5、車軸、及び車輪6の等価慣性モーメントである。

0027

0028

また、空転・滑走安定化装置31は、主電動機の角速度を入力して、その変化が閾値を超えると空転・滑走検知と判断する。なお、空転・滑走検知方法として、他の手法を用いて検知してもよい。空転・滑走安定化装置31は、通常は元トルク指令Tref0をそのままトルク指令Trefとしてベクトル制御部32に出力するが、空転・滑走検知と判断すると、安定化トルクTref_staをトルク指令Trefとしてベクトル制御部32に出力する。

0029

安定化トルクTref_staの生成方法は特許文献1に記載の再粘着制御器における再粘着トルクの生成方法と同一であることから、構成の詳細及び原理は省略する。ただし、空転・滑走安定化装置31は特許文献1の再粘着制御器と同一構成であるものの、指令の値及び目的が大きく異なる。特許文献1の再粘着制御器では、力行時はすべり加速度指令αs_refを負の値とし、制動時は正の値とすることで、空転・滑走検知時のすべり速度Vsを定められた時間内でゼロにし、再粘着させていた(図6(c)参照)。一方で、本発明においては、すべり加速度指令αs_refをゼロにすることにより、再粘着させるのではなく空転・滑走状態を安定的に維持することを目的としている。

0030

図2は、本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置31の力行時の空転の挙動を示す第1の例であり、図2(a)はトルクを、図2(b)は車輪周速度Vw、車体速度Vt及びすべり速度Vsを、図2(c)は車体加速度αt、車輪周加速度αw及びすべり加速度αsを、それぞれ示す。いずれも横軸時刻を示す。なお、すべり速度Vsは車輪周速度Vwと車体速度Vtとの差である。以下、特に断りのない限り、図2(a)〜図2(c)を用いて、空転の場合を例に挙げて説明するが、滑走の場合も同じように扱うことができる。

0031

図2(c)に示すように、空転が発生する(時刻ts)と車輪周加速度αwが急激に増加する。主電動機4の回転速度の微分値が閾値を超えたとき、すなわち、車輪周加速度αwが所定の値を超えたとき(以下、時刻t0とする。)に、空転が発生したと判断する。空転が発生したと判断されたのち、式(1)において、すべり加速度指令αs_refをゼロにする。このようにすることで、図2(c)に示すように、t0の直後から、すべり加速度αsはゼロ付近推移する。そして、図2(a)に示すように、すべり加速度αsをゼロに保つための安定化トルクTref_staが生成され、トルク指令Trefとして出力される。

0032

上述のトルク指令Trefでトルク制御を行うことにより、すなわち、すべり加速度αsがゼロになるように制御することで、図2(b)に示すように、車輪周速度Vwを車体速度Vtとの差をほぼ一定に保つ、すなわち、すべり速度Vsをほぼ一定に保つようにすることができる。

0033

すべり加速度指令αs_refをゼロにすることにより、不安定である空転状態でもすべり加速度αsが制御され、すべり速度Vsが急変することを防ぐことを実現する。これにより、すべり速度Vsが急激に大きくなることで生じ得る車輪6やレール7の損傷や、騒音の発生がなく、また急激に再粘着することもなくなるため、乗り心地の悪化を招くこともない。

0034

本実施形態では、安定化トルクTref_staは、車輪6の摩擦力の推定値である負荷トルクτestと車体加速度αtの推定値αt_estとを用いて、式(1)に示すようにフィードフォワード制御によって決定される。なお、本制御はすべり加速度αsのフィードフォワード制御であることから、状況に応じてすべり加速度αsを必ずしもすべり加速度指令αs_refと完全に一致することは保証されない。例えば、負荷トルクτestや車体加速度推定値αt_estに誤差があると、すべり加速度αsが必ずしもゼロにならない。また、等価慣性モーメントJに関しても正確な値の把握は困難であり、制御性能誤差の要因になりうる。しかしながら、すべり加速度αsが完全にゼロにならなくても、大まかな制御は実現され、すべり加速度αsはゼロに近い値を維持する。その結果、すべり速度Vsを完全に一定に維持することはできないものの、すべり速度Vsの変化を極力抑制されるため、すべり速度Vsの急変がなくなり安定な状態を維持する事が可能である。

0035

なお、すべり加速度指令αs_refをゼロにするのに代えて、力行時は僅かに負の値、すなわち空転が収束する方向の値とし、制動時は僅かに正の値、すなわち滑走が収束する方向の値とする手法も有効である。ここで、「僅か」とは、空転・滑走が検知されたときのすべり加速度αsの絶対値よりも小さいことを意味する。その場合、各種誤差によりすべり加速度αsが発散方向に変動しても、すべり加速度αsをゼロ程度に維持できる。一方で、すべり加速度αsが各種誤差により収束方向シフトした場合、結果的に再粘着することになり、従来の再粘着制御に近い動作となる。しかしながら、その場合も、すべり加速度αsが従来の再粘着制御に比べて小さい値に維持されることからゆっくり再粘着するため、再粘着時のショックを抑制できて乗り心地を悪化することはない。また、接線力係数の高い領域に長く留まることから、高い接線力を維持できるといえる。そのため、再粘着する場合でも特許文献1に記載の方法に比べて、ショックが少なく高い接線力を期待できる。

0036

安定化トルクTref_staの時間経過後の変化の仕方については、第1の方法として随時リアルタイムで負荷トルクτest及び車体加速度推定値αt_estを更新して、すなわち随時更新して、連続的に安定化トルクTref_staを変化させるという手法がある。この手法を用いた場合、図2(b)に示す通り、車体加速度αtや粘着係数が変化してもすべり加速度αsがほぼ指令に追従するように安定化トルクTref_staが連続的に変化をし続けてほぼ同一のすべり速度Vsを維持することから、空転状態で安定化を維持し続けることができる。

0037

例えば、レール面状態の変化等により、粘着係数が低下していくと負荷トルクτestが小さくなっていくため、安定化トルクTref_staも自動的に低下していき、すべり速度Vsが大きく増大すること無くほぼ一定の値を保つことができる。一方で、粘着係数が増加していくと負荷トルクτestが大きくなるため、安定化トルクTref_staも次第に大きくなり、やがて安定化トルクTref_staが元トルク指令Tref0より大きくなった時点(図2(a)の時刻t1参照)でトルク指令Trefを元トルク指令Tref0とする。そうすると、すべり加速度αsがすべり加速度指令αs_refに追従されなくなり、力行時はすべり加速度αsが負の値に(図2(c)の時刻t1以降参照)、制動時はすべり加速度αsが正の値になり、すべり速度Vsが収束することにより(図2(b)の時刻t1以降参照)、粘着状態に移行して通常の運転状態復帰する。

0038

第2の方法として、空転・滑走検知時の負荷トルクτest及び車体加速度推定値αt_estを用いて、それにより算出した安定化トルクTref_staを維持するという手法がある。その場合、一定時間ごとに更新する手法の他に、次のような手法も有効である。

0039

図3は、本発明の一実施形態に係る空転・滑走安定化装置31の力行時の空転の挙動を示す第2の例であり、図3(a)はトルクを、図3(b)は車輪周速度Vw、車体速度Vt及びすべり速度Vsを、図3(c)は車体加速度αt、車輪周加速度αw及びすべり加速度αsを、それぞれ示す。いずれも横軸は時刻を示す。以下、特に断りのない限り、図3(a)〜図3(c)を用いて、空転の場合を例に挙げて説明するが、滑走の場合も同じように扱うことができる。

0040

図3に示すように、安定化トルクTref_staを一定値に保持し、一定時間経過した後(図3(a)の時刻t0〜t2参照)、トルク指令Trefを安定化トルクTref_staから徐々に引き上げていく(図3(a)の時刻t2〜t3参照)。車輪周加速度αwが閾値を超過した時点で再び新たな負荷トルクτest及び車体加速度推定値αt_estを用いて安定化トルクTref_staを再設定し、トルク指令Trefを新たな安定化トルクTref_staとするという手法を繰り返す。この場合、車輪周加速度αwが閾値を超過したことの検知方法は従来の再粘着制御器の車輪周加速度による空転検知手法をそのまま用いてもよい。

0041

なお、この手法の場合、徐々にすべり速度Vsが増大してしまうため、すべり加速度指令αs_refを力行時は僅かに負の値(図3(c)参照)、制動時は僅かに正の値とすることにより、すべり速度Vsが一定の範囲を維持することを実現できる。

0042

なお、いずれの手法においても、すべり加速度αsの誤差精度は車両の各種条件によって変動することから、最終的に実際の車両ですべり加速度指令αs_refを微調整することも有効である。

0043

上述したように、空転・滑走安定化装置31は、車輪又はタイヤが空転又は滑走したと判断した際に、すべり加速度αsがゼロになるような安定化トルクTref_staを車輪又はタイヤに発生させることにより、空転・滑走状態を安定的に維持でき、乗り心地の悪化、騒音の発生、及びレールや車輪の損傷を防止することができる。

0044

なお、式(1)を用いることによりすべり加速度αsのフィードフォワード制御を実現するが、これに代えてすべり加速度αsのフィードバック制御を用いることも有効である。例えば、すべり加速度αsを検出又は推定して、すべり加速度指令αs_refとの偏差PI制御により安定化トルクTref_staを算出することにより、すべり加速度αsのフィードバック制御が実現でき、同様の効果が得られる。

0045

本発明に係る空転・滑走安定化装置は、上述した実施形態で説明した具体的な構成に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことが可能である。例えば、複数の主電動機4を複数台の主制御装置3で駆動してもよい。また、元トルク指令Tref0が運転台の主幹制御器2ではなく、自動運転装置等によって生成してもよい。

0046

さらに、本発明は鉄道車両に限定されるものではなく、電気自動車等にも適用可能である。電気自動車の場合には、車輪周速度、車輪周加速度に代えて、タイヤの周速度、タイヤの周加速度を用いる。

0047

本発明は例えば、高速運転を要求される特急電車の他に、高い加減速を要求される通勤電車路面電車に有効であり、また鉄道車両以外の電気自動車等にも適用可能である。

0048

1 車両
2主幹制御器
3主制御装置
31空転・滑走安定化装置
32ベクトル制御部
33 回転速度推定部
34インバータ
35再粘着制御部
4主電動機
5歯車装置
6車輪
7 レール

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