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技術 受光素子

出願人 日本電信電話株式会社
発明者 満原学
出願日 2016年4月25日 (5年0ヶ月経過) 出願番号 2016-086856
公開日 2017年11月2日 (3年6ヶ月経過) 公開番号 2017-199711
状態 特許登録済
技術分野 受光素子3(フォトダイオード・Tr)
主要キーワード ガス排出源 歪応力 低バイアス電圧 円形メサ ゴミ焼却施設 圧縮歪層 ステップ端 ホトルミネセンス
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (14)

課題

InP系の化合物半導体を用いた受光素子で、結晶欠陥などの発生を抑制した状態で波長1.8μm以上の光が高い受光感度で検出できるようにする。

解決手段

光吸収層103は、InGaAsSbから構成されてInPに対して圧縮歪を有する状態とされた圧縮歪層、およびInGaAsSbから構成されてInPに対して引っ張り歪を有する状態とされた引っ張り歪層が交互に多重積層され、カットオフ波長が1.8μm以上とされている。例えば、圧縮歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上0.3以下とされ、InPに対する格子不整合が1.0%以上とされていればよい。また、引っ張り歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上とされていればよい。

概要

背景

現代は、過大な環境負荷のもとに成り立っており、環境保護のための早急な対策が求められている。この環境負荷を低減するためには、工場発電所ゴミ焼却施設自動車などから排出されるガスの排出量削減が、重要となる。ガス排出量削減のためには、ガス排出源大気中におけるガス濃度の高精度な計測が必要となる。ガス吸収線による光吸収を用いたガス計測は、リアルタイムでの計測、遠隔での計測ができ、さらにガスの同位体までも特定できるという特徴があり、様々なガス計測システムへ応用されている。

図8は、1.8μmから2.4μmまでの波長域吸収線を持つガス種とその強度を示したものである。この波長領域には、地球の温室効果への影響が大きいCO2、N2Oなどのガス種だけでなく、大気汚染を抑制するために工場や焼却施設等からの排出基準が設けられているHCl、NH3、COなどのガス種の吸収線が存在する。このため、上記波長領域は、ガス計測において重要な波長領域のうちの1つである。図8では、各ガス種で吸収線強度の大きな波長領域を帯状の線で示してあるが、この帯状の線の中には複数の孤立した吸収線が含まれる。

ところで、光学的な検出素子として受光素子が用いられる。例えば、InP基板上の受光素子としては、InP格子整合するIn組成が0.53のInGaAs光吸収層とする受光素子が広く用いられている。

図9は、InPに格子整合するInGaAsの光吸収スペクトルを示す特性図である。InGaAsは、InPに格子整合する条件では1.8μmを超える波長の光をほとんど吸収しない。このため、InPに格子整合するInGaAsを光吸収層とする受光素子のカットオフ波長は、1.8μm以下である。1.8μmより長い波長光受光には、In組成が0.53より大きく、InPには格子整合しないInGaAs吸収層を備えた拡張型の受光素子が用いられる。

概要

InP系の化合物半導体を用いた受光素子で、結晶欠陥などの発生を抑制した状態で波長1.8μm以上の光が高い受光感度で検出できるようにする。光吸収層103は、InGaAsSbから構成されてInPに対して圧縮歪を有する状態とされた圧縮歪層、およびInGaAsSbから構成されてInPに対して引っ張り歪を有する状態とされた引っ張り歪層が交互に多重積層され、カットオフ波長が1.8μm以上とされている。例えば、圧縮歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上0.3以下とされ、InPに対する格子不整合が1.0%以上とされていればよい。また、引っ張り歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上とされていればよい。

目的

この問題を解決する有効な手段の1つは、井戸層障壁層との間に界面を平坦にするための層を挿入することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

InPからなる基板と、前記基板の上に形成された第1導電型の第1半導体層と、前記第1半導体層の上に形成された光吸収層と、前記光吸収層の上に形成された第2導電型の第2半導体層とを備え、前記光吸収層は、InGaAsSbから構成されてInPに対して圧縮歪を有する状態とされた圧縮歪層、およびInGaAsSbから構成されてInPに対して引っ張り歪を有する状態とされた引っ張り歪層が交互に多重積層され、カットオフ波長が1.8μm以上とされていることを特徴とする受光素子

請求項2

請求項1記載の受光素子において、前記圧縮歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上0.3以下とされ、InPに対する格子不整合が1.0%以上とされていることを特徴とする受光素子。

請求項3

請求項1記載の受光素子において、前記引っ張り歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上とされていることを特徴とする受光素子。

請求項4

請求項1〜3のいずれか1項に記載の受光素子において、前記圧縮歪層の層厚をh1および歪み量をε1とし、前記引っ張り歪層の層厚をh2および歪み量をε2としてε=(ε1×h1+ε2×h2)/(h1+h2)により表される、前記光吸収層の全体の実効歪εが0.2以下とされていることを特徴とする受光素子。

技術分野

0001

本発明は、化合物半導体から構成された受光素子に関する。

背景技術

0002

現代は、過大な環境負荷のもとに成り立っており、環境保護のための早急な対策が求められている。この環境負荷を低減するためには、工場発電所ゴミ焼却施設自動車などから排出されるガスの排出量削減が、重要となる。ガス排出量削減のためには、ガス排出源大気中におけるガス濃度の高精度な計測が必要となる。ガス吸収線による光吸収を用いたガス計測は、リアルタイムでの計測、遠隔での計測ができ、さらにガスの同位体までも特定できるという特徴があり、様々なガス計測システムへ応用されている。

0003

図8は、1.8μmから2.4μmまでの波長域吸収線を持つガス種とその強度を示したものである。この波長領域には、地球の温室効果への影響が大きいCO2、N2Oなどのガス種だけでなく、大気汚染を抑制するために工場や焼却施設等からの排出基準が設けられているHCl、NH3、COなどのガス種の吸収線が存在する。このため、上記波長領域は、ガス計測において重要な波長領域のうちの1つである。図8では、各ガス種で吸収線強度の大きな波長領域を帯状の線で示してあるが、この帯状の線の中には複数の孤立した吸収線が含まれる。

0004

ところで、光学的な検出素子として受光素子が用いられる。例えば、InP基板上の受光素子としては、InP格子整合するIn組成が0.53のInGaAs光吸収層とする受光素子が広く用いられている。

0005

図9は、InPに格子整合するInGaAsの光吸収スペクトルを示す特性図である。InGaAsは、InPに格子整合する条件では1.8μmを超える波長の光をほとんど吸収しない。このため、InPに格子整合するInGaAsを光吸収層とする受光素子のカットオフ波長は、1.8μm以下である。1.8μmより長い波長光受光には、In組成が0.53より大きく、InPには格子整合しないInGaAs吸収層を備えた拡張型の受光素子が用いられる。

先行技術

0006

K. Makita et al., "Ga1-yInyAs/InAsxP1-x (y>0.53,x>0) pin photodiodes for long wavelength regions (l>2μm) grown by hydride vapour phase epitaxy", Electronics Letters, Vol.24, No.7, pp.379-380, 1988.
M. Ogasawara et al., "Influence of net strain, strain type, and temperature on the critical thickness of In(Ga)AsP-strained multi quantum wells", Journal of Applied Physics, Vol.84, No.9, pp.4775-4780, 1998.
T. Tsuchiya et al., "Investigation of effect of strain-compensated structure and compensation limit in strained-layer multiple quantum wells", Journal of Crystal Growth, Vol.145, pp.371-375, 1994.
M. Mitsuhara et al., "Effect of strain in the barrier layer on structural and optical properties of highly strained In0.77Ga0.23As/InGaAsmultiple quantum wells", Journal of Crystal Growth, Vol.210, pp.463-470, 2000.
J. Dries et al., "Strain compensated In1-xGaxAs(x<0.47) quantum well photodiodes for extended wavelength operation", Applied Physics Letters, Vol.73, No.16, pp.2263-2265, 1998.
J. Harmand et al., "GaInAs/GaAs quantum-well growth assisted by Sb surfactant: Toward 1.3 μm emission", Applied Physics Letters, Vol.84, No.20, pp.3981-3983, 2004.
I. Markov, "Kinetics of surfactant-mediated epitaxial growth", Physical Review B, Vol.50, No.15, pp.11271-11274, 1994.

発明が解決しようとする課題

0007

上述した拡張型受光素子は、光吸収層を構成するInGaAsを成長する前に、InAsPからなるメタモルフィックバッファ層を成長させ、このメタモルフィックバッファ層中で格子定数を大きくすることを前提とした層構成となっている。しかしながら、メタモルフィックバッファ層で発生した転位の一部は、光吸収層へ伝播する。このため、拡張型受光素子では、暗電流の低減が難しいという課題があった(例えば、非特許文献1を参照)。

0008

InGaAsから構成した光吸収層を用いた受光素子で光吸収可能な波長を長波長化させるには、拡張型受光素子のようにIn組成が大きなInGaAsの層を厚く成長させて光吸収層として用いる方法の他に、In組成が大きく圧縮歪が加わった薄いInGaAs層で引っ張り歪が加わった層を挟みながら、多段に積層した構造を光吸収層として用いる構成が考えられる。この構造は、歪補償構造と呼ばれる。

0009

歪補償構造は、レーザ活性層に用いられる多重量子井戸MQW)構造に適用される場合が多い。図10は、歪補償構造を模式的に示した断面図である。図10に示す圧縮歪が加わった層401の層厚をLA、InPに対する歪量εAとし、引っ張り歪が加わった層402の層厚をLB、InPに対する歪量εBとすると、この歪補償構造全体に加わる実効歪ε*は次式(1)で表される。

0010

0011

一方、受光素子の光吸収層では、入射光を十分に吸収させるために大きな光吸収係数と層厚が必要となる。具体的には、受光素子の光吸収層では、入射光に対する吸収係数が5000cm-1以上の材料が用いられることがほとんどである。入射光に対する光吸収層の吸収係数が5000cm-1の場合、この20%以上の光を吸収させるためには、約500nmの層厚が必要となる。

0012

図10に示した歪補償構造において、周期数をNとすると歪補償構造全体の総層厚は、N×(LA+LB)となる。式(1)で実効歪ε*の絶対値が0.2以下の場合、この総層厚が500nmになっても結晶欠陥の発生は起こらないことが知られている(例えば、非特許文献2を参照)。このため、図10を用いて説明した歪補償構造を用いて、実効歪が0.2以下にすれば、結晶欠陥の少ない光吸収層を成長でき、受光素子へ応用することが可能になる。

0013

しかしながら、InP基板上でInPに対して圧縮歪が加わったInGaAs層を用いて歪補償構造を作製しようとすると、実効歪が小さいにも関わらず、結晶欠陥が発生することが知られている(例えば、非特許文献3を参照)。

0014

図11は、非特許文献3で報告された圧縮歪が加わったInGaAsから構成した井戸層を含むInGaAs/InGaAsによる歪補償のMQW構造における、井戸層の圧縮歪とPL発光強度との関係を示した特性図である。歪補償MQW構造は、実効歪が0になるように井戸層および障壁層の層厚および歪量が調整されている。図11では、井戸数が5周期の場合と15周期の場合について示している。

0015

図11に示すように、PL発光は、井戸層の圧縮歪を1%から1.5%まで増加させると、井戸数が5の場合は大きくは低下しないが、井戸数が15の場合はほとんど発光しなくなることが分かる。この要因の1つは、大きな圧縮歪が加わったInGaAsからなる井戸層に対し、歪補償構造を用いて井戸数を増加させていった場合、井戸数の増加に伴って井戸層と障壁層との界面が大きく揺らぎ、この結果として非発光再結合中心となる結晶欠陥が発生するためである(例えば、非特許文献4を参照)。このように、圧縮歪が加わったInGaAsを含む場合、歪補償構造を用いたとしても、界面の揺らぎが起こるために結晶欠陥の発生を抑制することは難しい。

0016

図12は、非特許文献4で報告されている歪補償InGaAs/InGaAsMQW構造における界面の揺らぎの様子を模式的に示した断面図である。InPに対して圧縮歪が加わったInGaAsからなる井戸層501と、InPに対して引っ張り歪が加わったInGaAsからなる障壁層502とが、交互に複数積層されている。この報告では、井戸層501だけではなく、障壁層502の層厚も局所的に増減し、この増減の振幅は井戸数の増加に伴って大きくなる。この結果、局所的に結晶格子に加わる歪応力が大きなり、結晶欠陥521が発生する。

0017

上述したように圧縮歪の加わったInGaAsの層を含む歪補償構造を結晶成長する場合、歪補償構造の各層で局所的な層厚の増減が発生するため、良好な結晶性を得ることが難しい。この問題を解決する有効な手段の1つは、井戸層と障壁層との間に界面を平坦にするための層を挿入することである。この界面を平坦にするための層の材料としては、分布帰還型DFB)レーザにおける回折格子の平坦な埋め込みにも用いられているInPが有用である。

0018

圧縮歪の加わったInGaAsによる井戸層と引っ張り歪の加わった障壁層との間にInPの層を挿入した歪補償MQWを光吸収層とする受光素子が、非特許文献5において報告されている。図13は、非特許文献5で検討された受光素子の光吸収層を模式的に示した断面図である。半導体層601の上に、障壁層602,半導体層603,半導体層604,井戸層605,半導体層606,半導体層607の積層構造が、50周期積層されて光吸収層を構成している。

0019

半導体層601は、InPに格子整合するInGaAsPから構成されている。障壁層602は、InPに対して1.2%の引っ張り歪が加わったInGaPから構成され、層厚7nmとされている。半導体層603は、InPから構成されている。半導体層604は、InPに格子整合するInGaAsPから構成されている。井戸層605は、InPに対して2%の圧縮歪の加わったInGaAsから構成され、層厚7nmとされている。半導体層606は、InPに格子整合するInGaAsPから構成されている。半導体層607は、InPから構成されている。このように積層された光吸収層は、歪補償MQW構造である。

0020

この歪補償MQW構造を光吸収層に用いた受光素子では、結晶欠陥の発生は認められない。一方、作製した受光素子は受光感度が低く、印加するバイアス電圧も高くする必要があることが報告されている。この要因として、井戸層および障壁層の価電子帯におけるバンド不連続が大きく、光励起により発生した正孔を井戸層から引き抜くことが困難であることが上げられる。受光感度が低く、低バイアス電圧での駆動も難しいため、図13を用いて説明した歪補償構造の光吸収層を備える受光素子は、現在のところほとんど検討されていない。

0021

本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、InP系の化合物半導体を用いた受光素子で、結晶欠陥などの発生を抑制した状態で波長1.8μm以上の光が高い受光感度で検出できるようにすることを目的とする。

課題を解決するための手段

0022

本発明に係る受光素子は、InPからなる基板と、基板の上に形成された第1導電型の第1半導体層と、第1半導体層の上に形成された光吸収層と、光吸収層の上に形成された第2導電型の第2半導体層とを備え、光吸収層は、InGaAsSbから構成されてInPに対して圧縮歪を有する状態とされた圧縮歪層、およびInGaAsSbから構成されてInPに対して引っ張り歪を有する状態とされた引っ張り歪層が交互に多重積層され、カットオフ波長が1.8μm以上とされている。

0023

上記受光素子において、圧縮歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上0.3以下とされ、InPに対する格子不整合が1.0%以上とされていればよい。

0024

上記受光素子において、引っ張り歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上とされていればよい。

0025

上記受光素子において、圧縮歪層の層厚をh1および歪量をε1とし、引っ張り歪層の層厚をh2および歪量をε2としてε=(ε1×h1+ε2×h2)/(h1+h2)により表される、光吸収層の全体の実効歪εが0.2以下とされていればよい。

発明の効果

0026

以上説明したように、本発明によれば、InGaAsSbから構成した圧縮歪層と引っ張り歪層とを交互に積層して光吸収層としたので、InP系の化合物半導体を用いた受光素子で、結晶欠陥などの発生を抑制した状態で波長1.8μm以上の光が高い受光感度で検出できるという優れた効果が得られる。

図面の簡単な説明

0027

図1は、本発明の実施の形態における受光素子の構成を示す断面図である。
図2は、圧縮歪が加わった層と引っ張り歪が加わった層との界面の状態を説明するための説明図である。
図3は、実施の形態における作製した試料層構造を示す断面図である。
図4は、実施の形態における作製した試料のX線回折パターン実験結果(a)とシミュレーション結果(b)を比較した特性図である。
図5は、実施の形態における周期数を30にした試料の室温でのホトルミネセンス発光スペクトルを示した特性図である。
図6は、InP上の圧縮歪が加わった圧縮歪層について、Sb組成比を変化させた場合のバンドギャップ波長の変化を計算から求めた特性図である。
図7は、実施の形態における周期数を30とした試料の室温での光吸収スペクトルを示した特性図である。
図8は、1.8μmから2.4μmまでの波長域に吸収線を持つガス種とその強度を示す特性図である。
図9は、InPに格子整合するInGaAsの光吸収スペクトルを示す特性図である。
図10は、歪補償構造を模式的に示した断面図である。
図11は、非特許文献3で報告された圧縮歪が加わったInGaAsから構成した井戸層を含むInGaAs/InGaAsによる歪補償のMQW構造における、井戸層の圧縮歪とPL発光強度との関係を示した特性図である。
図12は、非特許文献4で報告されている歪補償InGaAs/InGaAsMQW構造における界面の揺らぎの様子を模式的に示した断面図である。
図13は、非特許文献5で検討された受光素子の光吸収層を模式的に示した断面図である。

実施例

0028

以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態における受光素子の構成を示す断面図である。この受光素子は、半絶縁性のInPからなる基板101と、基板101の上に形成された第1導電型の第1半導体層102と、第1半導体層102の上に形成された光吸収層103と、光吸収層103の上に形成された第2導電型の第2半導体層104とを備える。

0029

ここで、光吸収層103は、InGaAsSbから構成されてInPに対して圧縮歪を有する状態とされた圧縮歪層、およびInGaAsSbから構成されてInPに対して引っ張り歪を有する状態とされた引っ張り歪層が交互に多重積層され、カットオフ波長が1.8μm以上とされている。例えば、圧縮歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上0.3以下とされ、InPに対する格子不整合が1.0%以上とされていればよい。また、引っ張り歪層は、V族におけるSb組成比が0.03以上とされていればよい。

0030

ここで、圧縮歪層の層厚をh1および歪量をε1とし、引っ張り歪層の層厚をh2および歪量をε2としてε=(ε1×h1+ε2×h2)/(h1+h2)により表される、光吸収層103の全体の実効歪εが0.2以下とされていればよい。

0031

なお、実施の形態では、基板101の上にバッファ層105を介して第1導電型の第1半導体層102が形成されている。また、第2半導体層104の上には、第2導電型のキャップ層106が形成されている。第1半導体層102、光吸収層103、第2半導体層104、キャップ層106は、基板101およびバッファ層105より小さい面積メサとされている。キャップ層106の上には、第1電極111が形成されている。また、上記メサ周囲のバッファ層105の上には、第2電極112が形成されている。また、光入射側となる基板101の裏面側には、反射防止層107が形成されている。また、上記メサの側面などは、SiNなどの絶縁材料によるパッシベーション層108で覆われている。

0032

上述した実施の形態における受光素子によれば、光吸収層103に、これまで圧縮歪が1%を超えるInGaAsでは適用が困難だった歪補償構造が容易に適用可能となる。光吸収層103は、圧縮歪の加わったInGaAsSbによる圧縮歪層と、引っ張り歪の加わったInGaAsSbによる引っ張り歪層とを交互に積層させた構造としているので、光吸収波長を長波長化するとともに、結晶欠陥の発生が抑制できる。この結果、InPからなる基板101上で、メタモルフィックバッファ層を用いることなく、カットオフ波長が1.8μm以上であり、暗電流も小さい受光素子が実現できる。

0033

以下、詳細に説明する。大きな圧縮歪が加わったInGaAsによる層(圧縮歪層)と引っ張り歪が加わったInGaAsによる層(引っ張り歪層)とを交互に積層させて歪補償構造とした場合、前述したように井戸層と障壁層の膜厚が局所的に増減するため、結晶欠陥が発生する。この局所的な膜厚の増減を抑制するためには、結晶成長表面におけるIII族原子の移動(マイグレーション)を小さくすれば良い。

0034

結晶成長表面にSbが存在するとIII族原子の移動を小さくできることが知られている(例えば、非特許文献6を参照)。Sbは一種表面活性剤として作用し、サーファクタントと呼ばれる。SbがIII族原子の移動を抑制するメカニズムは、結晶成長のステップ端でSbの一部がV族原子の上に付着しており、このステップ端をIII族原子が通過する際にSbと入れ替わるためであることが知られている(例えば、非特許文献7を参照)。

0035

これまでにサーファクタントとしてのSbは、圧縮歪の加わったInGaAsによる井戸層における3次元成長の発生を抑制するために用いられてきた。この場合、結晶内にSbを積極的に取り混むことは行われず、V族元素に占めるSb組成比は0.02以下の場合がほとんどである。また、引っ張り歪が加わった層に対して、Sbを用いて3次元成長の発生を抑制する検討も行われていない。

0036

SbがIII族原子の移動を抑制するメカニズムが、Sb組成比が0.03以上の層や引っ張り歪が加わった層に対しても有効であれば、3次元成長の発生を抑制できると考えられる。この場合、3次元成長を抑制できれば膜厚の増減を抑制でき、平坦な界面が得られる。図2は、この様子を模式的に示したものである。

0037

図2の(a)に示すように、InPに対して圧縮歪が加わったInGaAsからなる井戸層501と、InPに対して引っ張り歪が加わったInGaAsからなる障壁層502とが、交互に複数積層された歪補償構造では、界面に大きな揺らぎが発生する。これに対し、図2の(b)に示すように、InPに対して圧縮歪が加わったInGaAsSbからなる圧縮歪層131と、InPに対して引っ張り歪が加わったInGaAsSbからなる引っ張り歪層132とが、交互に複数積層された歪補償構造の光吸収層103では、界面の揺らぎが抑制されて平坦な界面が得られる。

0038

以下、図10に示したように圧縮歪が1%を超えるInGaAsを含む歪補償構造では結晶欠陥の発生が問題となるような場合でも、InGaAsSbを用いることで図2の(b)に示すような結晶成長が可能になり、この問題を回避できることについて説明する。

0039

以下では、実際に試料を作製して検討した結果について説明する。図3は、作製した試料の層構造を示す断面図である。試料の作製においては、InGaAsSbからなる各層を、よく知られた有機金属分子線エピタキシー法により、InPからなる基板301の上にエピタキシャル成長させた。成長においては、III族原料ガストリメチルインジウム(TMIn)、トリエチルガリウムTEGa)、V族原料ガスホスフィン(PH3)、アルシン(AsH3)、トリスジメチルアミノアンチモンTDMASb)を用いた。

0040

具体的には、基板301の上に、アンドープInPからなる層厚0.2μmのバッファ層302を成長させ、引き続き引っ張り歪が加わったInGaAsSbからなる引っ張り歪層303と、圧縮歪が加わったInGaAsSbからなる圧縮歪層304とを交互に16周期積層させた。最後にアンドープInPからなる層厚0.05μmのキャップ層305を成長する。引っ張り歪が加わった引っ張り歪層303は、最下層と最上層のみ層厚が他の引っ張り歪層303の1/2になるように成長時間を調整する。圧縮歪が加わった圧縮歪層304および引っ張り歪が加わった引っ張り歪層303ともにV族に占めるSb組成比は、0.1である。

0041

図4は、作製した試料のX線回折パターンの実験結果(a)とシミュレーション結果(b)を比較した特性図である。実験結果とシミュレーション結果との比較から、圧縮歪が加わった圧縮歪層304の歪量は、+1.2%、層厚は18.5nmであり、引っ張り歪が加わった引っ張り歪層303の歪量は−0.7%、層厚は37nmであり、歪補償構造の実効歪は0.07%以下であることが分かった。図4に示すように、実験結果とシミュレーション結果とは、よく一致している。

0042

界面の平坦性劣化した周期構造では、一般的にX線回折パターンのピークに顕著なブロードニングが見られるが、作製した試料では顕著なブロードニングが見られないことから、平坦な界面を有していることが分かった。InGaAsを用いた場合は、図11を用いて説明したように、加える圧縮歪が1.0%以上で15周期の歪補償構造を成長した場合、PL発光強度を顕著に低下させるような結晶欠陥が発生する。一方、InGaAsSbを用いた試料の歪補償構造では、上記のように圧縮歪が1.2%の層を含んで16周期以上積層させた場合でも、顕著な結晶欠陥は発生していないことが、X線回折パターンおよび後述するPL発光から確認された。

0043

図3の構造において、波長が1.8μmを超える光が吸収される層は、圧縮歪が加わった圧縮歪層304となる。周期数が16の場合、圧縮歪層304の総層厚は約0.3μmである。一方、受光素子の光吸収層では、受光感度を増加させるために一般的に0.5μm以上の層厚が用いられる。光吸収量を増加させるために、周期数を16から30に増加させた試料を作製した。周期数を16から30に増加させても、実効歪が小さいために格子緩和がないことをX線回折パターンから確認した。図5は、周期数を30にした試料の室温でのホトルミネセンス発光スペクトルを示した特性図である。発光ピーク波長は2.1μmであり、大きな発光強度が得られた。

0044

図6は、InP(基板)上の圧縮歪が加わった圧縮歪層について、Sb組成比を変化させた場合のバンドギャップ波長の変化を計算から求めた特性図である。図6に示す計算結果において、圧縮歪1.2%、Sb組成比0.1のInGaAsSbのバンドギャップ波長が2.1μmであることから、図5に示した発光ピークは、圧縮歪が加わった圧縮歪層からの発光によるものであることが分かった。

0045

図7は、周期数を30とした試料の室温での光吸収スペクトルを示した特性図である。波長2.1μm付近から吸収係数の増加が見られ、波長2.0μmで約3000cm-1、波長1.8μmで約9000cm-1の吸収係数が得られた。この光吸収スペクトルから、本発明における圧縮歪が加わった圧縮歪層と引っ張り歪が加わった引っ張り歪層とを周期的に積層させた光吸収層による受光素子を用いれば、InPに格子整合するInGaAsでは光吸収させることが難しい1.8μm以上の光でも容易に光吸収させることができることが分かる。この結果として、受光素子におけるカットオフ波長を1.8μm以上にすることができる。

0046

実施の形態では、圧縮歪が加わったInGaAsSbによる圧縮歪層と、引っ張り歪が加わったInGaAsSbによる引っ張り歪層におけるV族元素に占めるSb組成比が、ともに0.1の場合について示したが、このSb組成比は必ずしも等しい必要はない。具体的には、InGaAsSbのV族元素に占めるSb組成比が、0.03以上となるような条件であれば、成長表面には多くのSb原子が存在するため、前述したようなIII族原子の表面移動の抑制が可能である。

0047

なお、圧縮歪が加わったInGaAsSbのSb組成比には、望ましい上限が存在する。図6に示すように、InGaAsにSbを加えていった場合、バンドギャップ波長が単調に長波長化するのはSb組成比で0.3付近までである。また、Sb組成比が0.3を越えると、組成が局所的に分離し、また組成が変調するなど、組成が不安定となる。これらのことより、圧縮歪が加わったInGaAsSb層のV族元素に占めるSb組成比は、0.03以上0.3以下であることが望ましい。

0048

また、上述では、結晶成長方法として有機金属分子線エピタキシー法を用いた場合について説明したが、これに限るものではなく、組成の異なるInGaAsSbの層を周期的に積層できる成長方法であれば良く、有機金属気相エピタキシー法や分子線エピタキシー法などの他の成長方法を用いた場合も有効なことは言うまでもない。

0049

ところで、光吸収層103を構成する圧縮歪層および引っ張り歪層は、各層の層厚が大きく量子サイズ効果はほとんどないが、量子サイズ効果があるような小さな層厚を用いた場合でも、周期数を増加するだけで光吸収量は増加させることが可能である。このため、光吸収層103は、量子サイズ効果が見られるような小さな層厚の圧縮歪層および引っ張り歪層を多重積層させた構造においても有効なことは言うまでもない。

0050

Sbの組成比を増加させると、圧縮歪層における荷電子帯端のエネルギー準位が上昇し、In組成比を増加させると、伝導帯端のエネルギー準位が降下する。この構成では、格子歪が加わると、荷電子帯端が重い正孔軽い正孔とに分離し、各々のエネルギー準位が変化する。量子サイズ効果が見られる薄い圧縮歪層において、引っ張り歪層とのバンド不連続が大きい状態では、量子サイズ効果が顕著となる。量子サイズ効果が得られる状態とした場合、実施の形態の歪補償構造は、量子井戸となる圧縮歪層が、障壁となる引っ張り歪層に対し、伝導帯端のエネルギー準位が低く、荷電子帯端のエネルギー準位が高いType−Iの超格子構造とすると良い。

0051

次に、図1を用いて説明した受光素子の構成について、より詳細に説明する。基板101は、例えば、Feをドープすることで高抵抗とされた半絶縁性のInPから構成されている。また、バッファ層105は、n型不純物ドーピングされてn型とされたInP(n−InP)から構成され、第1半導体層102は、n型不純物がドーピングされてn型とされたInGaAsP(n−InGaAsP)から構成されている。また、第2半導体層104は、p型不純物がドーピングされてp型とされたInGaAsP(p−InGaAsP)から構成され、キャップ層106は、p型不純物がドーピングされてp型とされたInGaAs(p−InGaAs)から構成されている。

0052

また、光吸収層103の圧縮歪層は、InPに対して1.0%の圧縮歪が加わった状態とされ、層厚20nmとされている。また、光吸収層103の引っ張り歪層は、InPに対して0.5%の引っ張り歪が加わった状態とされ、層厚40nmとされている。また、光吸収層103は、圧縮歪層と引っ張り歪層とが、交互に30周期積層されて構成されている。また、圧縮歪層および引っ張り歪層のいずれも、InGaAsSbにおけるSb組成は、0.15である。また、圧縮歪層のバンドギャップ波長は、約2.08μmである。

0053

次に、実施の形態における受光素子の製造方法について説明する。まず、各半導体層の成長には前述した有機金属分子線エピタキシー法を用いる。これにより各半導体材料の層を成長したエピタキシャルウェハを用い、図1に示す受光素子を作製する。具体的には、直径10μmの円形メサを形成した後、窒化シリコンプラズマCVDによりウェハ全面堆積させた後、必要な領域以外を除去してパッシベーション層108とする。

0054

メサにパターニングしたキャップ層106の上に、平面視で直径8μmの円形の第1電極111、メサ周囲のパッシベーション層108の外側のバッファ層105の上に、第2電極112を形成する。例えば、電極となる金属材料蒸着させることで形成すればよい。蒸着させた後、熱処理によりオーミック接続した状態とする。この後、基板101の裏面に、電子ビーム蒸着法による蒸着で、反射防止層107を形成する。反射防止層107の側から信号光入射させる。入射して光吸収層103を通過した信号光は、第1電極111で反射し、再度、光吸収層103を通過する。

0055

上述した実施の形態における受光素子は、動作温度20℃、バイアス電圧−2Vにおいて光電流が最大となる入射光の波長は1.9μmであり、受光感度は0.6A/Wである。また、入射光の波長が2.0μmにおける受光感度は0.2A/Wである。暗電流は、動作温度20℃、バイアス電圧−2Vにおいて70±8nAであり、一般的な拡張型InGaAs受光素子よりも低い。これは、実施の形態における受光素子では、拡張型InGaAs受光素子のようにメタモルフィックバッファ層を必要とせず、光吸収層103における結晶欠陥密度が少ないことによる。

0056

なお、上述では、基板101として半絶縁性InP基板を用いた場合について示したが、n型InP基板やp型InP基板などの導電性基板を用い、第1電極および第2電極を表面と裏面から取る構造を用いた場合でも、同様の効果が得られるのは明らかである。

0057

以上に説明したように、本発明によれば、InGaAsSbから構成した圧縮歪層と引っ張り歪層とを交互に積層して光吸収層としたので、InP系の化合物半導体を用いた受光素子で、結晶欠陥などの発生を抑制した状態で波長1.8μm以上の光が高い受光感度で検出できるようになる。

0058

本発明の受光素子によれば、InPに格子整合するInGaAs層を光吸収層とする受光素子では困難な長波長の光の受光が可能になる。また、本発明の受光素子では、拡張型受光素子のようなメタモルフィックバッファ層を必要としないため、暗電流の小さい受光素子が実現できる。上述した本発明の受光素子を用いることで、ガスの吸収線を用いた高感度なガス計測システムに応用できるようになる。

0059

なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。

0060

101…基板、102…第1半導体層、103…光吸収層、104…第2半導体層、105…バッファ層、106…キャップ層、107…反射防止層、108…パッシベーション層、111…第1電極、112…第2電極。

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