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技術 真空アーク蒸着成膜装置

出願人 株式会社北熱
発明者 嶋村公二山口絵美政誠一
出願日 2016年4月19日 (4年6ヶ月経過) 出願番号 2016-083542
公開日 2017年10月26日 (3年0ヶ月経過) 公開番号 2017-193735
状態 特許登録済
技術分野 物理蒸着
主要キーワード 穴入口 コイル鉄心 対象物用 X線分析器 真空アーク蒸着 筒方向 冷間鍛造成形 アーク放電用電源
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年10月26日)のものです。
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図面 (11)

課題

深穴成形に用いる金型等の比較的穴長の長い貫通穴を有する対象物の穴内周部のほぼ全体に隈なく硬質保護膜を生成できる真空アーク蒸着成膜装置の提供。

解決手段

アーク放電によって電極2に設置した遷移金属からなる成膜材料9a,を真空中で蒸発させることにより、蒸発した金属イオンを深穴あるいは長い貫通穴10を有する対象物3の穴内周部へ硬質保護膜を生成する真空アーク蒸着成膜装置であって、対象物3を配置する真空チャンバー1と電極2との間をつなぐダクトSを備えており、電極2付近で蒸発した金属イオンを電磁気的にビーム状に収束するための電磁コイル6がダクトSの外周部に設けてあるとともに、ダクトSにバイアス電圧印加して金属イオンビームを対象物3の穴開口10aに向けて誘導する誘導部4を有する真空アーク蒸着成膜装置。

概要

背景

金型表面処理の手法として物理蒸着法があり、この物理蒸着法は、遷移金属酸化物等を物理的に蒸発させて、対象物の表面に成膜を付着させる処理方法である。そして、様々な物理蒸着の手法のうちの一つに真空アーク蒸着法がある。この真空アーク蒸着法は、陰極陽極の間にアーク放電を生じさせ、成膜材料を蒸発させて対象物に蒸着するという成膜方法であり、プラズマ密度が高いだけでなく、イオン化率スパッタリング法などに比べて遥かに高い。この真空アーク蒸着法は、真空にしたチャンバーの中で、アーク放電部の真空アーク放電により成膜材料を加熱して、気化もしくは昇華し、チャンバー内の離れた位置に置かれた対象物の表面にAl、Cr、Ti、Zr、Mo、Wなどの金属膜を形成するものである。また、切削工具金属成形用金型においては、対象物の表面にTiN膜TiCN膜TiAlN膜CrN膜、AlCrN膜といった硬質保護膜を蒸着し、工具や金型自体の耐摩耗性を向上させることができる。

概要

深穴成形に用いる金型等の比較的穴長の長い貫通穴を有する対象物の穴内周部のほぼ全体に隈なく硬質保護膜を生成できる真空アーク蒸着成膜装置の提供。アーク放電によって電極2に設置した遷移金属からなる成膜材料9a,を真空中で蒸発させることにより、蒸発した金属イオンを深穴あるいは長い貫通穴10を有する対象物3の穴内周部へ硬質保護膜を生成する真空アーク蒸着成膜装置であって、対象物3を配置する真空チャンバー1と電極2との間をつなぐダクトSを備えており、電極2付近で蒸発した金属イオンを電磁気的にビーム状に収束するための電磁コイル6がダクトSの外周部に設けてあるとともに、ダクトSにバイアス電圧印加して金属イオンビームを対象物3の穴開口10aに向けて誘導する誘導部4を有する真空アーク蒸着成膜装置。

目的

本発明は、真空アーク放電を行って発生させたプラズマを利用し、対象物の表面に硬質保護膜を形成する真空アーク蒸着成膜装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

アーク放電によって電極に設置した遷移金属からなる成膜材料真空中で蒸発させることにより、蒸発した金属イオンを深穴あるいは長い貫通穴を有する対象物の穴内周部へ硬質保護膜を生成する真空アーク蒸着成膜装置であって、対象物を配置する真空チャンバーと電極との間をつなぐダクトを備えており、電極付近で蒸発した金属イオンを電磁気的にビーム状に収束するための電磁コイルがダクトの外周部に設けてあるとともに、ダクトにバイアス電圧印加して金属イオンビームを対象物の穴開口に向けて誘導することを特徴とする真空アーク蒸着成膜装置。

請求項2

電極とダクトが対象物を挟んだ両側にそれぞれ設けてあるとともに、電極が対象物の穴開口に向いていることを特徴とする請求項1記載の真空アーク蒸着成膜装置。

請求項3

成膜材料の異なる電極を複数配置し、対象物の穴内周部へ異なる複数種の硬質保護膜を生成することを特徴とする請求項1又は2記載の真空アーク蒸着成膜装置。

請求項4

(長さ/内径)が1.5〜8の深穴あるいは貫通穴を有する対象物の穴内周部へ硬質保護膜を生成することを特徴とする請求項1、2又は3記載の真空アーク蒸着成膜装置。

技術分野

0001

本発明は、真空アーク放電を行って発生させたプラズマを利用し、対象物の表面に硬質保護膜を形成する真空アーク蒸着成膜装置を提供することにある。

背景技術

0002

金型表面処理の手法として物理蒸着法があり、この物理蒸着法は、遷移金属酸化物等を物理的に蒸発させて、対象物の表面に成膜を付着させる処理方法である。そして、様々な物理蒸着の手法のうちの一つに真空アーク蒸着法がある。この真空アーク蒸着法は、陰極陽極の間にアーク放電を生じさせ、成膜材料を蒸発させて対象物に蒸着するという成膜方法であり、プラズマ密度が高いだけでなく、イオン化率スパッタリング法などに比べて遥かに高い。この真空アーク蒸着法は、真空にしたチャンバーの中で、アーク放電部の真空アーク放電により成膜材料を加熱して、気化もしくは昇華し、チャンバー内の離れた位置に置かれた対象物の表面にAl、Cr、Ti、Zr、Mo、Wなどの金属膜を形成するものである。また、切削工具金属成形用金型においては、対象物の表面にTiN膜TiCN膜TiAlN膜CrN膜、AlCrN膜といった硬質保護膜を蒸着し、工具や金型自体の耐摩耗性を向上させることができる。

先行技術

0003

R&D神戸製鋼技報第55巻・第2号 株式会社神戸製鋼所、2005年9月9日発行、p100−104

発明が解決しようとする課題

0004

自動車部品では、ブレーキシリンダー等の深穴冷間鍛造成形コイル鉄心等の深穴粉末焼結成形と呼ばれる工法において、その部品形状に対応する深穴または穴長の長い貫通穴を有する金型が使用されている。しかしながら、上記のような、穴開口から穴奥の距離が遠い金型においては、従来の物理蒸着法で穴内周部の中間部や穴奥までしっかりと成膜させることが難しく、本来の硬質保護膜の効果が得られないことから、歩留まり率が低下して製造コストの増大を招く問題点があった。

0005

本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、深穴成形に用いる金型等の比較的穴長の長い貫通穴を有する対象物の穴内周部のほぼ全体に隈なく硬質保護膜を生成できる真空アーク蒸着成膜装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0006

本発明のうち請求項1記載の発明は、アーク放電によって電極に設置した遷移金属からなる成膜材料を真空中で蒸発させることにより、蒸発した金属イオンを深穴あるいは長い貫通穴を有する対象物の穴内周部へ硬質保護膜を生成する真空アーク蒸着成膜装置であって、対象物を配置する真空チャンバーと電極との間をつなぐダクトを備えており、電極付近で蒸発した金属イオンを電磁気的にビーム状に収束するための電磁コイルがダクトの外周部に設けてあるとともに、ダクトにバイアス電圧印加して金属イオンビームを対象物の穴開口に向けて誘導することを特徴とする。

0007

本発明のうち請求項2記載の発明は、電極とダクトが、対象物を挟んだ両側にそれぞれ設けてあるとともに、電極が対象物の穴開口に向いていることを特徴とする。

0008

本発明のうち請求項3記載の発明は、成膜材料の異なる電極を複数配置し、対象物の穴内周部に異なる複数種の成膜材料からなる硬質保護膜を生成することを特徴とする。

0009

本発明のうち請求項4記載の発明は、(長さ/内径)が1.5〜8の深穴あるいは貫通穴を有する対象物の穴内周部に硬質保護膜を生成することを特徴とする。

発明の効果

0010

本発明のうち請求項1記載の発明によれば、誘導部でダクトにバイアス電圧を印加しながら、ダクトの外周に配置した電磁コイルによって電磁気的にプラズマの方向を制御し、対象物の穴開口に向けて収束した状態で蒸発させた成膜材料のイオンビームを誘導することで、対象物の深穴あるいは貫通穴の穴内周部の穴奥まで硬質保護膜を生成することができる。

0011

本発明のうち請求項2記載の発明によれば、深穴や穴長の長い貫通穴を有する深穴成形金型などの対象物に対し、対象物を配置した真空チャンバーの両側にそれぞれ電極とダクトを配置することで、電極で蒸発させた成膜材料を対象物の穴内周部の全域に隈なく硬質保護膜を生成することができる。

0012

本発明のうち請求項3記載の発明によれば、成膜材料が異なる複数の電極をダクトと隣接して配置することにより、対象物の深穴や穴長の長い貫通穴の穴内周部の全体に亘って複数の成分からなる硬質保護膜を効率的に形成できる。

0013

本発明のうち請求項4記載の発明によれば、穴長と穴開口の内径の比率が1.5〜8の深穴あるいは貫通穴が対象物に設けてあるものであっても、最薄部が最厚部に対して30%以上の膜厚を有する硬質保護膜を形成することができる。これにより、深穴成形用の金型等の使用寿命が延びて製造コストの飛躍的な軽減を図ることができる。

図面の簡単な説明

0014

本実施による真空アーク蒸着成膜装置の作動状態を示す簡略化した平面図である。
本実施による硬質保護膜の生成の対象物となる金型の貫通穴(φ20mm×108mm)を縦断面に切断し、貫通穴における硬質保護膜の特性評価を行なった各測定位置を示す。(a)は、膜厚測定密着性評価成分分析の各々の測定位置を示す縦断面図であり、(b)は、硬さ測定の測定位置を示す縦断面図である。
生成した硬質保護膜(TiN膜)の膜厚測定の結果を示す。(a)は、本実施のものと他の方法との膜厚を比較したグラフであり、(b)は、膜比率を比較したグラフである。ここでいう膜比率とは、左右の穴入口1mm部の膜厚を各々100%とした場合の、各測定部における膜厚の割合を表したものである。
生成した硬質保護膜(TiN膜)の硬さ測定の結果を示す。(a)は、本実施のものと他の方法との硬さを比較したグラフであり、(b)は、塑性変形硬さを比較したグラフである。
生成した硬質保護膜(TiN膜)の金型との密着性を測定した結果を示す。(a)は、密着性評価として採用したロックウェル圧痕評価における点数と圧痕の外観例を示すものであり、(b)は、他の方法と評価点数で比較したグラフである。
生成した硬質保護膜(TiN膜)の成分分析をした結果を示す。(a)は、膜中のTiの割合を他の方法と比較したグラフであり、(b)は、Nの割合を他の方法と比較したグラフである。
生成した硬質保護膜(TiN膜)の成分分析をした結果を示す。(a)は、Tiの検出量を他の方法と比較したグラフであり、(b)は、Nの検出量を他の方法と比較した図である。
本実施による真空アーク蒸着成膜装置により穴内周部へ硬質保護膜(TiN膜)を生成した深穴成形用金型性能試験結果を示すグラフである。
(a)(b)は、本発明の他の実施形態を示す簡略化した平面図である。
図9(a)(b)は、真空アーク蒸着成膜装置で生成した硬質保護膜であり、(a)は、TiN膜とTiAlN/AlCrN膜のそれぞれの膜厚を示すグラフであり、(b)は、TiN膜とTiAlN/AlCrN膜のそれぞれの膜比率を示すグラフである。

0015

以下に、図面に基づいて本発明の真空アーク蒸着成膜装置の実施形態について説明する。
本実施の真空アーク蒸着成膜装置は、真空チャンバー1と、電極2と、ダクトSと、電磁コイル6と、金型(対象物)3とを備えている。また、電源(誘導部)4は、直流電源またはパルス電源を用いている。さらに、電極2付近で蒸発した金属イオンを電磁気的にビーム状に収束するため、ダクトSの中心近傍に磁場を発生する電磁コイル6を配置してある。また、真空チャンバー1には、その内部へ窒素ガスを導入するガス導入部7と外部にガス排気するガス排気部8がそれぞれ設けてある。さらに、ダクトSは、各絶縁部15で絶縁された領域であり、この領域には上記の電源4からバイアス電圧を印加するものである。

0016

真空チャンバー1は、本実施のものでは、対象物を置くためのホルダー5のある蒸着スペースを中心としてダクトSを介して放射状に二箇所に電極2を置くための放電スペースを両側にそれぞれ有している。また、真空チャンバー1の蒸着スペースと通じるガス導入部7からは窒素ガスが送り込まれる。さらに、ガス排気部8では蒸着スペースを真空状態にすること、及び蒸着スペースに充満するガスを真空チャンバー1の外部に排出する制御を行う。

0017

電極2は、本実施のものでは計二つを配置してあり、それぞれが陰極2a、陽極2b、成膜材料配置部9とから構成している。
電極2によるアーク放電は、陰極2aと陽極2bを数mm程度離して配置しており、電子が空間中のガス分子次々衝突させ、空間中に電子とイオンを増殖させる。これにより、真空チャンバー1内のガスの導線性が上昇して絶縁破壊の状態となり、陰極2aと陽極2bの間で連続的にアーク放電用電源13からの電流が流れることになる。
成膜材料配置部9は、電極2の近くに配置してある。また、上記の成膜材料配置部9に配置する成膜材料9aの種類や金型3への成膜のときに導入するガスの種類によって、多様な硬質保護膜を生成することができる。例えば、成膜材料9aとしてTi、導入ガスとして窒素ガスを用いた場合、金型3の貫通穴10の穴内周部にTiN膜を生成できる。

0018

そして、上記の電極2は、真空チャンバー1内にある金型3に対しダクトSで通じているとともに、ダクトSの外周には電磁コイル6を配置している。
電磁コイル6は、真空チャンバー1の外部に隣接して複数のものが対向する位置にそれぞれ配置してあり、真空チャンバー1のダクトS内に回転磁場を発生させるものである。また、電磁コイル6は、電極2で発生したプラズマ流を収束するとともに、そのプラズマ流を真空チャンバー1内で金型3の貫通穴10の穴開口10a,10aに向けて誘導するものである。
ダクトSは、真空チャンバー1および陽極2bと電気的に絶縁され、電源4により正電圧を印加することで、ダクトSの内面へのイオンビームの付着を防止するとともに、ポンピング効果でイオンビームを真空チャンバー1へ効率よく誘導させるものである。

0019

本実施で用いる金型3は、深穴成形用の金型3であり、具体的に、円柱形状の本体で且つその本体を筒方向に貫く(貫通穴10の長さ/穴開口10aの内径)=5以上の貫通穴10が設けてあり、貫通穴10にパンチング金型を通して成形品を得るものである。また、金型3の貫通穴10の両側の穴開口10a,10aの外周部には、それぞれにカバー材11,11が取り付けてある。このカバー材11は、金型3の貫通穴10の穴開口10aの周囲を塞ぐことで、金型3の穴開口10a付近の成膜の過剰な膜厚の偏り補正する役割を果たす。尚、本実施では(貫通穴10の長さ/穴開口10aの内径)=5以上の貫通穴10に対して硬質保護膜を生成するものについて記載しているが、本装置では(貫通穴10の長さ/穴開口10aの内径)=1.5〜8の範囲内で成膜させることが可能である。
尚、符号14は、金型3にバイアス電圧を印加する対象物用バイアス電源である。

0020

上記した真空チャンバー1と電極2とから構成する本実施の真空アーク蒸着成膜装置は、以下のように手順で工程を行う。
第一の工程として、ガス排気部8で真空チャンバー1内を所定の真空度まで真空排気する。
第二の工程として、真空チャンバー1内のヒーター12を加熱し、金型3を一定温度まで上昇させる。
第三の工程として、ガス導入部7から窒素ガスを真空チャンバー1内部へ導入する。
第四の工程として、第一の電極2および第二の電極2を放電し、ダクトSおよび電磁コイル6を通過させることでイオンビームを真空チャンバー1内に形成させる。このとき、成膜材料9a,9bに印加するアーク電流は50A〜200A、ダクトSに印加する電圧は5V〜20V,電磁コイル6に印加する電流は2A〜6Aが望ましい。
第五の工程として、金型3に−10V〜−200Vのバイアス電圧を印加させる。そして、金型3を挟んだ両側から貫通穴10の穴開口10a,10aに向けて成膜材料9a,9bの窒化物を成膜する。
以上の第一〜第五工程を経て金型3の貫通穴10の穴内周部のほぼ全体に硬質保護膜を生成して完了する。硬質保護膜の膜厚は0.1μm〜10μmである。

0021

上記のように本実施の真空アーク蒸着成膜装置によりを形成することにより、以下に示す作用、効果を奏することになる。
第一の電極2と第二の電極2の間をつなぐダクトSの延伸方向に平行し、ホルダー5に配置された金型3の貫通穴10の穴開口10a,10aがそれぞれ向くように設置してある。これにより、第一〜第二の電極2のそれぞれのダクトSで蒸発した成膜材料9a,9bが金型3の貫通穴10の両側の穴開口10a,10aから入り込み、金型3の貫通穴10の穴内周部へ隈なく硬質保護膜が生成されることになる。

0022

以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
尚、本実施例に使用する真空アーク蒸着成膜装置は、図1と同じものを使用した。

0023

1.成膜
図1に示した真空アーク蒸着成膜装置において、第一、第二の各電極2,2側に成膜材料9aとしてTiを用いた。そして、真空チャンバー1内に窒素ガスを導入し、対象物となる金型(貫通穴φ20mm、穴長108mm)3の貫通穴10の穴内周部へ硬質保護膜(TiN膜)を形成した。

0024

2.評価方法および評価結果
本実施による真空アーク蒸着成膜装置(FIB−AD:対向イオンビーム・アーク蒸着、FIB−AD:イオンビーム・アーク蒸着)と、既存のAD(アーク蒸着)、SP(スパッタ)装置、HCD(ホロカソード蒸着)装置でそれぞれ硬質保護膜(TiN膜)を生成した後、その膜厚測定と、硬さ測定と、密着性評価と、成分分析を行った。
(膜厚測定)
図2(a)のように、貫通穴10の一方の穴開口10a,10a付近で穴奥に向けて1mm、3mm、5mmの位置でそれぞれ測定し、それ以降は5mm毎に測定した。他方の穴開口10aからも同様に1mm、3mm、5mmの位置(一方の穴開口10aから103mm、105mm、107mmの位置)で測定した。測定結果は表1のとおりである。
(硬さ測定)
図2(b)のように、金型3における貫通穴10の穴内周部の任意の複数箇所ナノインデンター薄膜硬度計)を用い、測定荷重3mN/20secで測定した。測定結果は表2のとおりである。
(密着性評価)
生成した硬質保護膜(TiN膜)が金型3の貫通穴10の穴内周部に剥がれにくく形成されているかについて、図2(a)のように、一方の穴開口10aから穴奥に向けて1mm、3mm、5mmの位置、それ以降は5mm毎に55mmまで測定し、各位置の結果をロックウェル圧痕観察により評価した。また、レーザー顕微鏡剥離の状態とクラックの状態を観察し、1.剥離大(圧痕まわりの大部分が剥離した状態)、2.剥離小(一部が剥離した状態)、3.クラック大(剥離はないが、圧痕の周りの大部分にクラックが発生した状態)、4.クラック小(剥離はないが、細かなクラックがある状態)、5.無(剥離やクラックがほとんどない状態)と、1〜5の段階に分けた点数で採点して密着性を評価した。その評価結果は表3のとおりである。
(成分分析)
生成した硬質保護膜(TiN膜)のTi、Nの比率を比較するために、図2(a)のように、貫通穴10の一方の穴開口10a付近で穴奥に向けて1mm、3mm、5mmの位置でそれぞれEDS(エネルギー分散X線分析器)によりTiとNの原子数濃度(at%)を測定し、それ以降は5mm毎に測定した。他方の穴開口10aからも同様に1mm、3mm、5mmの位置(一方の穴開口10aから103mm、105mm、107mmの位置)で同様に測定した。TiとNの比率(Ti+N=100%)、TiとNの比較(Ti+N+other=100%)の測定結果は、表4と表5のとおりである。
以下、各試験について図面と表に基づいて考察する。

0025

「膜厚測定について」
表1と図3(a)(b)を参照すれば、AD、SP、HCDに比べて本実施のものでは、膜厚および膜比率が向上していることが確認できた。具体的には、AD、SP、HCDでは、硬質保護膜(TiN膜)が生成されていない位置が存在したが、本実施のものでは金型3の貫通穴10の穴内周部のすべての測定位置で硬質保護膜(TiN膜)が生成されており、膜厚を計測できた。そして、FIB−ADでは、最厚部である穴入口付近に対して最薄部である穴内部の膜厚は30%以上であり、このことから、従来の製法では生成不可能であった穴内周部へ硬質保護膜(TiN膜)が生成されていることが確認できた。

0026

0027

「硬さ測定」
表2と図4(a)(b)を参照すれば、AD、SP、HCDに比べて本実施のものは、金型3の貫通穴10の穴内周部において、他のものの様に硬さが低下することなく、硬質保護膜の硬さを維持していることが確認できた。

0028

0029

「密着性評価」
表3と図5(a)(b)を参照すれば、AD、SP、HCDでは、金型3の貫通穴10の一方の穴開口10aから30〜50mmで成膜が確認されなかった。また、硬質保護膜(TiN膜)が確認される箇所ではほとんどが「3」の圧痕周りのクラックが確認された。これに対して本実施によるものは、穴開口10a付近は思わしくなかったものの、穴内周部のほとんどの箇所で「4」の評価がされ、細かなクラックが生じる程度の安定した結果が得られた。

0030

0031

「成分分析」
表4と図6(a)(b)を参照すれば、AD、SP、HCDに比べて本実施のものは、金型3の貫通穴10の穴内周部のほぼ全体で成分比率が安定していることが確認できた。また、IB−ADに対しても同様であった。さらに、TiとNの検出量の比率についても、AD、SP、HCDに比べて本実施のものは、金型3の貫通穴10の穴内周部の中間位置でも検出量が変わらず、他の方法に比べて硬質保護膜(TiN膜)が生成されやすいことが確認できた。

0032

0033

0034

以上の各試験の結果から、本実施による真空アーク蒸着成膜装置で対象物となる金型3の貫通穴10の穴内周部に硬質保護膜を生成した場合、他の成膜法であるAD、SP、HCDは勿論、電極2を金型3の一側のみに配置したIB−ADと比べても、硬質保護膜の膜厚、硬さ、穴内周部への密着性、成分の分布のそれぞれの試験で優れた成膜特性を示した。

0035

次に、上記の試験で使用した真空アーク蒸着成膜装置(FIB−AD)で二種類の金型の穴内周部を成膜し、他の成膜法(SP)と金型寿命までのショット数を比較したものが図8(a)(b)である。いずれのものも、SPによる金型に比べて本願のものは10〜16倍以上使用できる結果が得られた。このことから、従来の方法では硬質保護膜を生成できなかった深穴成形用の金型の貫通穴の穴内周部においても、本願のものが生成法として適していることが確認できた。

0036

本発明の他の実施形態として、対象物を中心として電極2を四箇所に備えた真空アーク蒸着成膜装置を図9(a)(b)に示す。
本実施による真空アーク蒸着成膜装置は、上記実施形態のものと相違する構成として、図9(a)のように、ダクトSからほぼY字に分岐してそれぞれに電極2を設けた点である。図示上側の二つの電極2には、成膜材料9aとしてTiAlを用いており、さらに、図示した側の二つの電極2,2には、成膜材料9bとして、AlCrを用いている。そして、図示上側の二つの各電極2,2で硬質保護膜(TiAlN膜)を生成した後に、図示下側の二つの各電極2,2で硬質保護膜(AlCrN膜)を生成することにより、対象物3の穴内周部に複数種の金属窒化物からなる硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)を生成することができる。

0037

以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。
尚、本実施例に使用する真空アーク蒸着成膜装置は、図9(a)(b)と同一のものを使用した。

0038

1.成膜
図9(a)(b)に示した真空アーク蒸着成膜装置において、第一、第二の各電極2,2側に成膜材料9aとしてTiAlを用いた。さらに、第三、第四の各電極2,2側に成膜材料9bとしてAlCrを用いた。そして、真空チャンバー1内に窒素ガスを導入し、対象物となる金型(貫通穴φ20mm、穴長108mm)3の貫通穴10の穴内周部に複数種の金属窒化物からなる硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)を形成した。

0039

2.評価方法および評価結果
本実施による真空アーク蒸着成膜装置(FIB−AD:対向イオンビーム・アーク蒸着)で硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)の生成が終了後、その膜厚測定を行った。
尚、各試験に使用する対象物3のサンプルについては、上記実施例1で使用した図2(a)と同じものを使用する。
以下、膜厚測定について図面と表に基づいて考察する。

0040

「膜厚測定について」
表6と図10(a)(b)を参照すれば、本実施のものでも金型3の貫通穴10の穴内周部のすべての測定位置で硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)が生成されており、膜厚を計測できた。そして、最厚部である穴入口付近に対して最薄部である穴内部の膜厚は27%以上であり、このことから、電極2を増やしても穴内周部へ硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)が生成されていることが確認できた。

0041

0042

以上の膜厚測定試験の結果から、本実施による真空アーク蒸着成膜装置で対象物となる金型3の貫通穴10の穴内周部に複数種の金属窒化物からなる硬質保護膜(TiAlN/AlCrN膜)を生成した場合、単一の金属窒化物による硬質保護膜(TiN膜)と同様に対象物の穴内周部の全域にわたり硬質保護膜を生成できることを示した。

実施例

0043

本発明の真空アーク蒸着成膜装置は、特許請求の範囲に記載する範囲内であれば、上記した各実施形態に示す真空チャンバー1、電極2、ダクトS、電磁コイル6の形状や配置数は限定されるものではない。また、上記各実施形態では対象物3を中心とし、その対象物3を各々が挟むように二つの電極2と四つの電極2を配置したものについてそれぞれ説明した。これ以外にも電極2の数をさらに増やすことも可能であり、二種類以上の多種からなる硬質保護膜を生成することも可能である。さらに、硬質保護膜の成膜材料9a,9bは、上記のTiN膜、TiAlN/AlCrN膜に限らず、成膜材料9a,9bを変更すればCrN膜、TiCN膜、DLC膜等も適用できる。さらに対象物3は、深穴成形に用いる金型以外にも穴長の長い貫通穴10を有するものであれば、すべて対象となりえる。

0044

1真空チャンバー
2電極
2a陰極
2b陽極
3金型(対象物)
4電源(誘導部)
5ホルダー
6電磁コイル
7ガス導入部
ガス排出
9成膜材料配置部
9a Ti、TiAl(成膜材料)
9b AlCr(成膜材料)
10貫通穴
10a 穴開口
11カバー材
12ヒーター
13アーク放電用電源
14対象物用バイアス電源
15絶縁部
S ダクト

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