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技術 湿度応答性透湿シートおよびその製造方法

出願人 凸版印刷株式会社
発明者 磯貝拓也
出願日 2016年4月20日 (5年10ヶ月経過) 出願番号 2016-084464
公開日 2017年10月26日 (4年3ヶ月経過) 公開番号 2017-193627
状態 特許登録済
技術分野 高分子成形体の製造 多糖類及びその誘導体 型の被覆による成形、強化プラスチック成形
主要キーワード 自立シート ミクロフィブリル構造 材料調達 キーマテリアル セルロースII型 中間フィルム層 重量変動 環境配慮型
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図面 (2)

課題

包装材料として用いたとき、内側が低湿度高湿度との場合に、透湿性の変化量が十分に大きく、かつ、製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型湿度応答性透湿シートを提供すること。

解決手段

湿度応答性透湿シートであって、セルロース1型結晶であるセルロースナノファイバーを含む層を備えることを特徴とする。

概要

背景

加工食品医薬品、エレクロトクス部品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の酸化重量変動を防止するため、水蒸気酸素等の気体遮断するガスバリア性を備えることが一般的に求められている。一方で、生鮮食品の包装に用いられる包装材料は、必ずしもガスバリア性が求められるわけではない。例えば、野菜の包装に用いられる場合、採果後の鮮度保持については保存環境湿度に留意し、野菜表面からの水分蒸散を適度に抑制することが求められる。野菜を包装した際に、包装内部の湿度を高く保つこができれば水分の蒸散が抑制されて野菜の瑞々しさを保つことが可能になる。すなわち、このような場合、包装材料には、ある程度の水蒸気バリア性が必要となる。一方で、包装内部の湿度が高くなりすぎると、包装材料の内側や野菜表面上に結露が発生し、水腐れカビ発生の原因となる。すなわち、野菜などの生鮮食品用の包装材料として、包装材料内部の湿度が低い場合には透湿性が低くなり、包装材料内部の湿度が高い場合には透湿性が高くなる特性、すなわち湿度応答型透湿性を有することが求められている。

湿度応答型透湿性を有するシートとして、例えば特許文献1には、再生セルロース膜を用いたシートが開示されている。これは、再生セルロースセルロースII型結晶構造であるため、非晶領域高湿度下において膨潤し、透湿性が高まることを利用している。しかしながら、非晶領域が存在するといっても再生セルロース膜は一様な高分子膜であることには変わりは無く、透湿には膜内水蒸気ガスが溶解、拡散する一連のプロセスが必要であり、非晶領域の膨潤に由来する透湿能力の変化量では、十分な湿度応答性を有しているとは言えない。また、特許文献1で用いているビスコースは、製造過程二硫化炭素を使用するため、環境負荷が高いという問題もあった。

また、近年、化石資源枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料であるバイオマスを用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。その中でも木材の主成分であるセルロースは、地球上で最も大量に蓄積された天然高分子材料であることから、資源循環型社会への移行に向けたキーマテリアルとして期待が寄せられている。

木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性ナノメートルオーダー繊維径を持つ微細繊維ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。

上記のような天然のセルロースは、セルロースI型であり、安定な高結晶性構造を有することから、特殊な溶媒以外には不溶であり、成形性にも乏しいため、機能性材料としては扱いにくい面があった。そこで、木材中のセルロース繊維を、その結晶構造を維持しながら、少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化して利用しようとする試みが活発に行われている。

例えば、特許文献2には、木材セルロースに対しブレンダーグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維すなわちセルロースナノファイバーが得られることが開示されている。この方法で得られるセルロースナノファイバーの短軸径は10〜50nm、長軸径は1μmから10mmに及ぶことが報告されている。セルロースナノファイバーは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な非表面積を有することから、用途としては樹脂強化用ナノ繊維としての検証が進められている。

また、化学的処理を併用したセルロース繊維の微細化として、以前から酸加水分解による微細化技術が知られているが、近年新たな手法として、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(以下、「TEMPO」とも称する)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。また、リン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が報告されている(例えば特許文献4)。反応の制御のしやすさや、セルロースI型結晶構造の維持のしやすさから、TEMPO酸化反応がより好ましい。

TEMPO酸化反応は水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能で、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。

このように結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電的な反発により、水溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、微細化セルロースの一種であるセルロースシングルナノファイバー(以下、「CSNF」とも称する)を得ることが可能となる。

木材からTEMPO酸化によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および積層体は高い透明性を有することが報告されている。また、CSNFの用途としては、例えば、透明基材に積層することによってガスバリア膜を形成し、植物由来新規透明包装材料として用いた応用例が報告されている(例えば、特許文献5参照)。

このように、カーボンニュートラル材料であるセルロースナノファイバーを用いた高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。

概要

包装材料として用いたとき、内側が低湿度と高湿度との場合に、透湿性の変化量が十分に大きく、かつ、製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型の湿度応答性透湿シートを提供すること。湿度応答性透湿シートであって、セルロース1型結晶であるセルロースナノファイバーを含む層を備えることを特徴とする。

目的

本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、包装材料として用いたときの内側が低湿度の場合と高湿度の場合とで透湿性の変化量が十分に大きく、かつ、製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型の湿度応答性透湿シートを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

湿度応答性透湿シートであって、セルロースI型結晶であるセルロースナノファイバーを含む層を備える、湿度応答性透湿シート。

請求項2

前記セルロースナノファイバーの形状が、天然セルロースミクロフィブリル構造由来の繊維状であることを特徴とする、請求項1に記載の湿度応答性透湿シート。

請求項3

前記セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上、かつ、前記数平均長軸径が前記数平均短軸径の10倍以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の湿度応答性透湿シート。

請求項4

前記セルロースナノファイバーの結晶表面にイオン性官能基が導入されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の湿度応答性透湿シート。

請求項5

前記イオン性官能基がカルボキシ基であることを特徴とする、請求項4に記載の湿度応答性透湿シート。

請求項6

前記カルボキシ基の含有量が、セルロースナノファイバー1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることを特徴とする、請求項5に記載の湿度応答性透湿シート。

請求項7

少なくとも層構成の一部に銀を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の湿度応答性透湿シート。

請求項8

湿度応答性透湿シートの製造方法であって、基材の少なくとも一方の面にセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して積層体を形成する工程を具備することを特徴とする、湿度応答性透湿シートの製造方法。

請求項9

前記セルロースナノファイバーの結晶表面に、N−オキシル化合物による酸化反応によってカルボキシ基を導入する工程をさらに具備することを特徴とする、請求項8に記載の湿度応答性透湿シートの製造方法

請求項10

前記積層体を前記基材から剥離する工程をさらに具備することを特徴とする、請求項8または9に記載の湿度応答性透湿シートの製造方法。

技術分野

0001

本発明は、セルロースナノファイバーを含むことを特徴とする湿度応答性透湿シートに関する。また、本発明における湿度応答性透湿シートとは、使用環境の湿度に応じて透湿性が変化する透過膜のことである。

背景技術

0002

加工食品医薬品、エレクロトクス部品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の酸化重量変動を防止するため、水蒸気酸素等の気体遮断するガスバリア性を備えることが一般的に求められている。一方で、生鮮食品の包装に用いられる包装材料は、必ずしもガスバリア性が求められるわけではない。例えば、野菜の包装に用いられる場合、採果後の鮮度保持については保存環境の湿度に留意し、野菜表面からの水分蒸散を適度に抑制することが求められる。野菜を包装した際に、包装内部の湿度を高く保つこができれば水分の蒸散が抑制されて野菜の瑞々しさを保つことが可能になる。すなわち、このような場合、包装材料には、ある程度の水蒸気バリア性が必要となる。一方で、包装内部の湿度が高くなりすぎると、包装材料の内側や野菜表面上に結露が発生し、水腐れカビ発生の原因となる。すなわち、野菜などの生鮮食品用の包装材料として、包装材料内部の湿度が低い場合には透湿性が低くなり、包装材料内部の湿度が高い場合には透湿性が高くなる特性、すなわち湿度応答型透湿性を有することが求められている。

0003

湿度応答型透湿性を有するシートとして、例えば特許文献1には、再生セルロース膜を用いたシートが開示されている。これは、再生セルロースセルロースII型結晶構造であるため、非晶領域高湿度下において膨潤し、透湿性が高まることを利用している。しかしながら、非晶領域が存在するといっても再生セルロース膜は一様な高分子膜であることには変わりは無く、透湿には膜内水蒸気ガスが溶解、拡散する一連のプロセスが必要であり、非晶領域の膨潤に由来する透湿能力の変化量では、十分な湿度応答性を有しているとは言えない。また、特許文献1で用いているビスコースは、製造過程二硫化炭素を使用するため、環境負荷が高いという問題もあった。

0004

また、近年、化石資源枯渇問題の解決を目指して、持続的に利用可能な環境調和型材料であるバイオマスを用いた機能性材料の開発が盛んに行われている。その中でも木材の主成分であるセルロースは、地球上で最も大量に蓄積された天然高分子材料であることから、資源循環型社会への移行に向けたキーマテリアルとして期待が寄せられている。

0005

木材中では、数十本以上のセルロース分子が束になって高結晶性ナノメートルオーダー繊維径を持つ微細繊維ミクロフィブリル)を形成しており、さらに多数の微細繊維が互いに水素結合してセルロース繊維を形成し、植物の支持体となっている。

0006

上記のような天然のセルロースは、セルロースI型であり、安定な高結晶性構造を有することから、特殊な溶媒以外には不溶であり、成形性にも乏しいため、機能性材料としては扱いにくい面があった。そこで、木材中のセルロース繊維を、その結晶構造を維持しながら、少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化して利用しようとする試みが活発に行われている。

0007

例えば、特許文献2には、木材セルロースに対しブレンダーグラインダーによる機械処理を繰り返すことで、微細化セルロース繊維すなわちセルロースナノファイバーが得られることが開示されている。この方法で得られるセルロースナノファイバーの短軸径は10〜50nm、長軸径は1μmから10mmに及ぶことが報告されている。セルロースナノファイバーは、鋼鉄の1/5の軽さで5倍以上の強さを誇り、250m2/g以上の膨大な非表面積を有することから、用途としては樹脂強化用ナノ繊維としての検証が進められている。

0008

また、化学的処理を併用したセルロース繊維の微細化として、以前から酸加水分解による微細化技術が知られているが、近年新たな手法として、比較的安定なN−オキシル化合物である2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル(以下、「TEMPO」とも称する)を触媒として用い、セルロースの微細繊維表面を選択的に酸化する方法が報告されている(例えば、特許文献3参照)。また、リン酸エステル化処理を用いて、セルロースの微細繊維表面を選択的にリン酸エステル化処理する方法が報告されている(例えば特許文献4)。反応の制御のしやすさや、セルロースI型結晶構造の維持のしやすさから、TEMPO酸化反応がより好ましい。

0009

TEMPO酸化反応は水系、常温、常圧で進行する環境調和型の化学改質が可能で、木材中のセルロースに適用した場合、結晶内部には反応が進行せず、結晶表面のセルロース分子鎖が持つアルコール性級炭素のみを選択的にカルボキシ基へと変換することができる。

0010

このように結晶表面に導入されたカルボキシ基同士の静電的な反発により、水溶媒中で一本一本のセルロースミクロフィブリル単位に分散させた、微細化セルロースの一種であるセルロースシングルナノファイバー(以下、「CSNF」とも称する)を得ることが可能となる。

0011

木材からTEMPO酸化によって得られる木材由来のCSNFは、短軸径が3nm前後、長軸径が数十nm〜数μmに及ぶ高アスペクト比を有する構造体であり、その水分散液および積層体は高い透明性を有することが報告されている。また、CSNFの用途としては、例えば、透明基材に積層することによってガスバリア膜を形成し、植物由来新規透明包装材料として用いた応用例が報告されている(例えば、特許文献5参照)。

0012

このように、カーボンニュートラル材料であるセルロースナノファイバーを用いた高機能部材開発に関して様々な検討がなされている。

先行技術

0013

特開2014−800号公報
特開2010−216021号公報
特開2008−1728号公報
特開2013−127141号公報
国際公開第2013/042654号

発明が解決しようとする課題

0014

本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、包装材料として用いたときの内側が低湿度の場合と高湿度の場合とで透湿性の変化量が十分に大きく、かつ、製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型の湿度応答性透湿シートを提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

上記課題の解決のため鋭意検討を重ねたところ、セルロースナノファイバーから形成されたシートあるいはセルロースナノファイバーを含む積層体を有するシートを包装材料として用いたときの内側が低湿度の場合と高湿度の場合とで透湿性が著しく変化することを見出し、本発明に至った。

0016

湿度応答性透湿シートであって、セルロースI型結晶であるセルロースナノファイバーを含む層を備える。

0017

セルロースナノファイバーの形状が、天然セルロースミクロフィブリル構造由来の繊維状であることが好ましい。

0018

セルロースナノファイバーの数平均短軸径が1nm以上100nm以下、数平均長軸径が50nm以上、かつ、数平均長軸径が数平均短軸径の10倍以上であることが好ましい。

0019

セルロースナノファイバーの結晶表面にイオン性官能基が導入されていることが好ましい。

0020

イオン性官能基がカルボキシ基であることが好ましい。

0021

カルボキシ基の含有量が、セルロースナノファイバー1g当たり0.1mmol以上5.0mmol以下であることが好ましい。

0022

少なくとも層構成の一部に銀を含むことが好ましい。

0023

湿度応答性透湿シートの製造方法であって、基材の少なくとも一方の面にセルロースナノファイバーを含む分散液を塗布して積層体を形成する工程を具備することを特徴とする。

0024

セルロースナノファイバーの結晶表面に、N−オキシル化合物による酸化反応によってカルボキシ基を導入する工程をさらに具備することが好ましい。

0025

積層体を基材から剥離する工程をさらに具備することが好ましい。

発明の効果

0026

本発明によれば、包装材料として用いたときの内側が低湿度の場合と高湿度の場合とで透湿性の変化量が十分に大きく、かつ、製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型の湿度応答性透湿シートを提供することが可能となる。

図面の簡単な説明

0027

本発明に係るセルロースナノファイバーを含む湿度応答性透湿シートが湿度応答性を発揮するメカニズムを示す概略図

0028

以下に、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。

0029

<セルロースナノファイバーとその製造方法>
本発明において用いる微細化セルロースは、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーであればよく、その調製方法については特に限定されない。通常、セルロースナノファイバーはミクロフィブリル構造由来の繊維形状をとるため、本発明に用いるセルロースナノファイバーとしては、以下に示す範囲にある繊維形状のものが好ましい。

0030

すなわち、本発明において用いるセルロースナノファイバーの形状は繊維状が好ましく、短軸径において数平均短軸径が1nm以上100nm以下であればよく、好ましくは2nm以上50nm以下であればよい。数平均短軸径が1nm未満では、高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー構造をとることができず、そのように結晶性が損なわれた状態では湿度応答性を発揮することができない。一方、数平均短軸径が100nmを超えると、緻密な膜構造を形成できないため、やはり湿度応答性を発揮することができない。さらには、透明性も低下するため、内容物の視認が可能なシートを作製する場合には好ましくない。

0031

また、数平均長軸径においては特に制限はないが、好ましくは50nm以上、かつ、数平均短軸径の10倍以上であればよい。数平均長軸径が数平均短軸径の10倍未満である場合には、やはり高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー構造をとることができず、十分な湿度応答性を発揮することができない。

0032

セルロースナノファイバーの数平均短軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。一方、セルロースナノファイバーの数平均長軸径は、透過型電子顕微鏡観察および原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。

0033

本発明におけるセルロースナノファイバーの原料としては、セルロースI型結晶からなる原料を用いることができる。例えば、木材系天然セルロースに加えて、コットンリンターバガスケナフバクテリアセルロースホヤセルロース、バロニアセルロースといった非木材系天然セルロースを用いることができる。材料調達の容易さから木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、針葉樹パルプ広葉樹パルプ古紙パルプ、など、一般的に微細化セルロースの製造に用いられるものを用いることができる。精製および微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。

0034

セルロースの微細化方法も特に限定されないが、グラインダーによる機械処理、TEMPO酸化処理およびリン酸エステル化処理等による化学処理の他、希酸加水分解処理酵素処理などを用いても良い。

0035

例えば、特許文献3に記載の方法に従い、各種セルロースをグラインダー等により繰り返し処理して得られるセルロースナノファイバーを用いれば、湿度応答性を十分に有する透湿シートを作製することができる。

0036

また、特許文献5に記載の方法に従い、各種セルロースをTEMPO酸化処理することにより得られるセルロースシングルナノファイバー(CSNF)を用いた場合、低湿度下ではより緻密な膜を形成するため透湿性が大きく低下する上に、高湿度下においては結晶表面に導入されたカルボキシ基によりCSNF間に水蒸気が浸透しやすくなるため透湿性が大きく上昇する。すなわち、より高い湿度応答性を有する透湿シートを作製することができる。また、CSNFは、シート化した際の透明性が高いため、本発明に記載の湿度応答性透湿シートにおいて、内容物の視認性を向上させたい場合などにも好適に用いることができる。

0037

以上の理由から、本発明で用いるセルロースナノファイバーとしては、カルボキシ基が導入されたセルロースナノファイバーが好ましく、価格および供給の面から木材系天然セルロースをTEMPO酸化することで得られるCSNFがより好ましい。

0038

<セルロースシングルナノファイバー(CSNF)の製造方法>
本発明で用いられる木材由来のCSNFは、木材系天然セルロースを酸化する工程と、微細化し分散液化する工程とを経ることにより得られる。また、CSNFに導入されるカルボキシ基量は、0.1mmol/g以上、5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上、3.0mmol/g以下がより好ましい。CSNFに導入されるカルボキシ基量が0.1mmol/g未満であると、セルロースミクロフィブリル間に静電的な反発力および浸透圧効果が働かないため、セルロースを微細化して均一に分散させることは難しい。また、CSNFに導入されるカルボキシ基量が5.0mmol/gを超えると、化学処理に伴う副反応によりセルロースミクロフィブリルが低分子化するため、高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー構造をとることができず、シート化した際に湿度応答性を発揮することができない。

0039

<セルロースを酸化する(セルロースにカルボキシ基を導入する)工程>
木材系天然セルロースの繊維表面にカルボキシ基を導入する方法としては、特に限定されない。例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロースをモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行っても良く、オートクレーブ中ガス化したマレイン酸フタル酸等の無水カルボン酸化合物とセルロースを直接反応させてカルボキシ基を導入しても良い。

0040

さらには、水系の比較的温和な条件で、可能な限りセルロースI型結晶構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、N−オキシル化合物の存在下、共酸化剤を用いた手法を用いてもよい。

0041

N−オキシル化合物としては、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル−1−オキシラジカル)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−エトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、4−アセトアミド−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル、等が挙げられる。中でも、カルボキシ基導入部位の選択性および環境負荷の問題からTEMPOを使用することがより好ましい。N−オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、N−オキシル化合物の使用量は、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して、0.01〜5.0質量%程度である。

0042

N−オキシル化合物を用いた酸化方法としては、木材系天然セルロースを水中に分散させ、N−オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。また、酸化処理を温和な条件で行うことにより、セルロースI型の結晶構造を維持しやすくなる。このとき、N−オキシル化合物と共に、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N−オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、該オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。かかる酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。

0043

共酸化剤としては、ハロゲン次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、共酸化剤としては、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。また、共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、共酸化剤の使用量は、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して1〜200質量%程度である。

0044

N−オキシル化合物および共酸化剤と共に、臭化物およびヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよく、これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を向上することができる。該化合物としては、臭化ナトリウムまたは臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましく、該化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、該化合物の使用量は、酸化処理する木材系天然セルロースの固形分に対して、1〜50質量%程度である。

0045

酸化反応の反応温度は、4〜80℃が好ましく、10〜70℃がより好ましく、酸化反応の反応温度が、4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう。酸化反応の反応温度が、80℃を超えると副反応が促進されて試料が低分子化して高結晶性の剛直なセルロースナノファイバー構造が崩壊し、シート化した際に湿度応答性を発揮することができない。また、酸化処理の反応時間は、反応温度、導入する所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分〜5時間程度である。

0046

酸化反応時の反応系のpHは、9〜11が好ましく、pHが9以上であると反応を効率よく進めることができ、pHが11を超えると副反応が進行し、試料の分解が促進されてしまうおそれがある。

0047

酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成されることにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9〜11に保つことが好ましい。反応系のpHを9〜11に保つ方法としては、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。

0049

N−オキシル化合物による酸化反応は、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHを上記の範囲内に保つことが好ましく、添加するアルコールとしては、反応をすばやく終了させるためメタノールエタノールプロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。

0050

酸化処理後反応液は、そのまま、後述するセルロースを微細化し分散液化する工程に供してもよいが、N−オキシル化合物等の触媒、不純物等を除去するために、反応液に含まれる酸化セルロース回収し、洗浄液洗浄することが好ましい。

0051

酸化セルロースの回収は、ガラスフィルターや20μm孔径ナイロンメッシュを用いたろ過等の公知の方法により実施できる。酸化セルロースの洗浄に用いる洗浄液としては純水が好ましい。

0052

<セルロースを微細化し分散液化する工程>
セルロースを微細化する方法としてはまず、セルロースに水性媒体を加えて懸濁させる。水性媒体としては、前述と同様のものが挙げられ、水が特に好ましい。必要に応じて、セルロースや生成するCSNFの分散性を上げるために、アルカリ水溶液を用いて懸濁液のpH調整を行ってもよい。pH調整に用いられるアルカリ水溶液としては、上記した酸化処理の説明で挙げたアルカリ水溶液と同様のものが挙げられる。

0053

続いて、該懸濁液に物理解繊処理を施して、セルロースを微細化する。物理的解繊処理としては、高圧ホモジナイザー超高圧ホモジナイザーボールミルロールミルカッターミル遊星ミルジェットミルアトライター、グラインダー、ジューサーミキサーホモミキサー超音波ホモジナイザーナノジナイザー、水中対向衝突などの機械的処理が挙げられる。

0054

このような物理的解繊処理を、例えば、前述のTEMPO酸化したセルロースに行うことで、懸濁液中のセルロースが微細化され、繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFの分散液を得ることができる。この時の物理的解繊処理の時間や回数を設定することにより、得られるCSNF分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径および数平均長軸径を調整できる。

0055

上記のようにして、カルボキシ基が導入されたCSNF分散液が得られる。得られた分散液を、そのまま、または希釈濃縮等して、本発明に記載の湿度応答性透湿シート作製のための組成物として扱うことができる。

0056

CSNF分散液には、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、セルロースおよびpH調整に用いた成分以外の他の成分を含有させてもよい。該他の成分としては、特に限定されず、湿度応答性透湿シートの要求特性に応じて、公知の添加剤の中から適宜選択できる。

0057

具体的には、公知の添加剤として、アルコキシシラン等の有機金属化合物またはその加水分解物無機層状化合物無機針状鉱物消泡剤無機系粒子有機系粒子潤滑剤、酸化防止剤帯電防止剤紫外線吸収剤、安定剤、磁性粉配向促進剤可塑剤架橋剤等が挙げられる。

0058

CSNF分散液にさらに添加剤として抗菌剤を含有させても良い。特に、湿度応答性透湿シートの用途が生鮮食品用の保存用途であれば、高湿度下において雑菌の増殖を抑制することが期待されるため抗菌剤の添加は有用である。抗菌剤としては、例えば、銀を用いることができる。

0059

銀を含む抗菌剤をCSNF分散液にそのまま加えても良いし、銀ナノ粒子を直接CSNF表面上に析出させて複合体として用いても良い。CSNF表面上に析出させた銀ナノ粒子は、比表面積が高くエチレンガス分解作用を有していることから、エチレン生理作用による腐敗の防止という観点からも好ましい。

0060

続いて、セルロースナノファイバーを含む湿度応答性透湿シートを作成する工程について説明する。なお、本発明は下記の例に制限されない。

0061

<セルロースナノファイバーを含む湿度応答性透湿シートの形成方法
本発明の湿度応答性透湿シートの形成は、公知の方法と同様にして実施できる。例えば、水性媒体中に繊維表面にカルボキシ基を有するCSNFを分散させたCSNF分散液を調製し、これを基材上に塗布する等によって該CSNF分散液からなる塗膜を形成し、該塗膜を乾燥することによりCSNFを含む湿度応答性透湿シートを形成できる。湿度応答性透湿シートは積層体のまま、あるいはCSNFを含む層を基材より剥離してCSNF自立シートとして用いることができる。該CSNF分散液の基材上への塗布は、公知の塗布方法を用いて実施できる。例えば、ロールコーターリバースロールコーターグラビアコーターマイクログラビアコーター、ナイフコーターバーコーターワイヤーバーコーター、ダイコーターディップコータースピンコーター等のコーターを用いて塗布できる。また、CSNF分散液の乾燥は、熱風乾燥熱ロール乾燥、赤外線照射など、公知の乾燥方法を用いて実施できる。乾燥条件としては、特に限定しないが、乾燥温度としては20℃以上200℃以下が好ましく、30℃以上150℃以下がより好ましい。乾燥温度が20℃以下では、CSNF分散液の水性媒体の除去に時間がかかりすぎてしまう。また、乾燥温度が200度以上では、セルロースナノファイバーが熱分解黄変してしまうおそれがある。セルロースナノファイバーを含む層(以下、「湿度応答性透湿層」とも称する)の厚み(乾燥後の厚み)は、所望の透湿性に応じて適宜設定でき特に限定されないが、0.1〜5μmが好ましく、0.2〜3μmがより好ましい。湿度応答性透湿層の厚みが0.1μm以上であると、低湿度条件下における透湿性低下の効果が充分に得られる。また、湿度応答性透湿層の厚みが5μm以下であると、高湿度条件下における透湿性向上の効果が十分に得られる。湿度応答性透湿層の厚みは、CSNF分散液の塗布量、塗布回数等によって調整できる。また、湿度応答性透湿層は、基材の片面のみに設けてもよく、両面に設けてもよい。

0062

基材としては、特に限定されるものではなく、公知の種々のシート状の基材を用いることができ、例えば、プラスチックフィルムガラス板セルロース系基材等が挙げられる。プラスチックフィルムを構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリオレフィン系(ポリエチレンポリプロピレン等)、ポリエステル系(ポリエチレンテレフタレートポリエチレンナフタレート等)、セルロース系(トリアセチルセルロースジアセチルセルロース、セロファン等)、ポリアミド系(6−ナイロン、6,6−ナイロン等)、アクリル系(ポリメチルメタクリレート等)、ポリスチレンポリ塩化ビニルポリイミドポリビニルアルコールポリカーボネートエチレンビニルアルコール等の有機高分子化合物が挙げられる。また、これらの有機高分子化合物の中から、少なくとも1種以上の成分を持つ、或いは共重合成分に持つ、或いはそれらの化学修飾体を成分に持つ有機高分子材料もプラスチック材料として用いることができる。また、ポリ乳酸バイオポリオレフィンなど植物から化学合成されるバイオプラスチックヒドロキシアルカノエートなど微生物生産するプラスチック等をプラスチック材料として用いることができる。セルロース系基材は、セルロース系材料から構成される基材であり、セルロース系材料としては、紙、セロハンアセチル化セルロースセルロース誘導体、微細化セルロース繊維等が挙げられる。基材として、これらの材料から形成された不織布も用いることができる。特に、本発明におけるセルロースナノファイバーを含む塗工膜を積層する際、セルロースナノファイバーを含む塗工膜は剛直な結晶性ナノファイバー積層膜として形成されるため、不織布表面に直接塗工層を設けることが好ましい。

0063

また、基材は、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤充填剤、帯電防止剤、結晶化促進剤発泡剤光沢剤濡れ性改良剤等の添加剤を含有してもよい。

0064

また、基材は、コロナ放電プラズマ処理、酸化処理等の表面処理が施されていてもよい。

0065

また、基材の厚さは、当該積層体の用途等に応じて適宜設定でき特に限定されないが、通常、1〜100μm程度であることが好ましい。

0066

本発明の湿度応答性透湿シートは、基材および湿度応答性透湿層に加えて、ヒートシール可能な熱可塑性樹脂層(以下、「ヒートシール層」ともいう)をさらに有しても良い。ヒートシール層は、袋状包装体などを形成する際に密封層として設けられるものである。ヒートシール層としては、公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体またはそれらの金属架橋物等の樹脂の1種からなるフィルムが用いられる。ヒートシール層の積層方法としては、ヒートシール層を形成するフィルムを、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤(2液硬化型ウレタン樹脂など)を用いて貼り合わせるドライラミネート法等を用いることが一般的であるが、これに限定されず、公知の方法により積層することができる。また、ヒートシール層の厚さは、目的とする透湿性に応じて決められるが、一般的には15〜200μmの範囲であることが好ましい。

0067

また、本発明の湿度応答性透湿シートは、必要に応じて、基材、湿度応答性透湿層およびヒートシール層以外の他の層をさらに有してもよい。ただし、ヒートシール層を有する場合、該ヒートシール層は、当該湿度応答性透湿シートの少なくとも一方の最外層に配置させる。他の層としては、例えば、湿度応答性透湿層または基材とヒートシール層との間に設けられる中間フィルム層印刷層等が挙げられる。また、各層をドライラミネート法やウェットラミネート法で積層する場合には、該積層のための接着層(ラミネート用接着剤層)を有してもよい。また、ヒートシール層を溶融押し出し法で積層する場合には、該積層のためのプライマー層アンカーコート層などを有してもよい。

0068

中間フィルム層は、破袋強度を高めるために設けられる。中間フィルム層としては、機械強度及び熱安定性の面から、二軸延伸ナイロンフィルム二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム二軸延伸ポリプレンフィルムの内から選ばれる少なくとも1種から構成されるフィルムが好ましい。中間フィルム層の積層方法としては、ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤(2液硬化型ウレタン樹脂など)を用いて貼り合わせるドライラミネート法を用いることができる。また、中間フィルム層の厚さは、材質要求品質等に応じて決められるが、通常10〜30μmの範囲であることが好ましい。

0069

印刷層は、包装袋などとして実用的に用いるために形成される。印刷層は、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤などが添加されてなるインキにより構成される層であり、文字絵柄等が形成された様態となっている。印刷層は、グラビア印刷フレキソ印刷等の公知の印刷法により形成できる。

0070

ラミネート用接着剤層として用いられる接着剤としては、積層される各層の材質に応じてアクリル系、ポリエステル系、エチレン−酢酸ビニル系、ウレタン系、塩化ビニル−酢酸ビニル系、塩素化ポリプロピレン系などの公知の接着剤を用いることができる。ラミネート用接着剤層を形成するための接着剤の塗布方法としては、公知の塗布法を用いることができる。例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター等を採用することができる。また、接着剤の塗布量としては、1〜10g/m2が好ましい。

0071

本発明の湿度応答性透湿シートの層構成は、当該湿度応答性透湿シートの用途等を考慮して適宜設定できる。包装材料として用いる場合の本発明の湿度応答性透湿シートの好ましい層構成例(a)〜(h)を以下に示す。ただし本発明の湿度応答性透湿シートはこれらの層構成例に限定されるものではない。
(a)基材/湿度応答性透湿層
(b)湿度応答性透湿層
(c)基材/湿度応答性透湿層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(d)基材/湿度応答性透湿層/印刷層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(e)基材/湿度応答性透湿層/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(f)湿度応答性透湿層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層。
(g)湿度応答性透湿層/印刷層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層
(h)湿度応答性透湿層/ラミネート用接着剤層/中間フィルム層/ラミネート用接着剤層/ヒートシール層

0072

本発明の湿度応答性透湿シートは、上述のようにして基材の少なくとも一方の面に湿度応答性透湿層を形成し、乾燥させることにより製造できる。また、必要に応じて、基材と剥離してもよいし、あるいは基材と剥離せずに積層体のままであってもよい。さらにヒートシール層および他の層を、所望の層構成となるように積層してもよい。

0073

このようにして形成されたシートは、多数のCSNFが緻密に積層した構造を有するCSNF積層膜を含むシートであり、低湿度条件下では低透湿性を発揮する一方で、高湿度条件下においては劇的に透湿性が向上し、優れた湿度応答性透湿シートとして用いることができる。

0074

ここで、本発明に記載のセルロースナノファイバーを含む湿度応答性透湿シートが、優れた湿度応答性を示す理由を図1に示した。図1に示すように、低湿度下においては、セルロースI型結晶構造を有するセルロースナノファイバーが緻密に積層することによって、水蒸気の透過を防ぎ、低透湿性を発現する。一方で、高湿度下においては、セルロースナノファイバー間に水蒸気が浸透し、透湿性が向上する。とくにセルロースナノファイバーとして、結晶表面にカルボキシ基が導入されたセルロースシングルナノファイバー(CSNF)を用いた場合は、セルロースミクロフィブリル表面にカルボキシ基が導入されているために、急激にCSNF間隙に水蒸気が浸透して、透湿量が劇的に増加する。

0075

特許文献1のように、再生セルロースを用いた場合、再生セルロースがセルロースII型結晶構造であるため、確かに高湿度化における非晶領域の膨潤を利用することで透湿性を変化させることは可能であるが、非晶領域と結晶領域は連続的に存在するため、非晶領域の膨潤は限定的となり透湿性の変化量が小さくなってしまう。一方、本発明に記載のセルロースナノファイバーを含む湿度応答性透湿シートの場合は、高湿度下においてセルロースナノファイバー間隙に直接水蒸気が浸透するため、透湿性の変化量が大きくなり、優れた湿度応答性を発揮することができる。また、本発明の湿度応答性透湿シートに用いるセルロースナノファイバーは、セルロースI型結晶のままであるため、セルロースII型結晶のように溶解・再生処理を必要とせず、環境調和性の観点からも好ましい。

0076

以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術範囲はこれらの実施形態に限定されるものではない。以下の各例において、「%」は、特に断りのない限り、質量%(w/w%)を示す。

0077

(実施例1)
<木材系天然セルロースのTEMPO酸化>
針葉樹クラフトパルプ70gを蒸留水3500gに懸濁し、蒸留水350gにTEMPOを0.7g、臭化ナトリウムを7g溶解させた溶液を加え、20℃まで冷却した。ここに2mol/L、密度1.15g/mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液450gを滴下により添加し、酸化反応を開始した。系内の温度は常に20℃に保ち、反応中のpHの低下は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を添加することでpH10に保ち続けた。

0078

セルロースの重量に対して、水酸化ナトリウム添加量の合計が3.50mmol/gに達した時点で、約100mLのエタノールを添加し反応を停止させた。その後、ガラスフィルターを用いて蒸留水によるろ過洗浄を繰り返し、酸化パルプを得た。

0079

<酸化パルプのカルボキシ基量測定>
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプを固形分重量で0.1g量りとり、1%濃度で水に分散させ、塩酸を加えてpHを2.5とした。その後、0.5M水酸化ナトリウム水溶液を用いた電導度滴定法により、カルボキシ基量(mmol/g)を求めた。結果は、1.6mmol/gであった。

0080

<酸化パルプの解繊処理>
上記TEMPO酸化で得た酸化パルプ1gを99gの蒸留水に分散させ、ジューサーミキサーで30分間微細化処理し、CSNF濃度1%のCSNF分散液を得た。該CSNF分散液に含まれるCSNFの数平均短軸径は3nm、数平均長軸径は1110nmであった。また、レオメーターを用いて定常粘弾性測定を行ったところ、該CSNF分散液はチキソトロピック性を示した。

0081

<透湿量の湿度応答性の評価>
上記解繊処理で得たCSNF分散液を、膜厚50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にバーコーター#100を用いて塗布し、120℃で10分乾燥して、CSNFを含む層(湿度応答性透湿層)を形成した。さらに形成した湿度応答性透湿層の膜厚を、反射分光式膜厚計(FE-3000、大塚電子社製)を用いて測定したところ、約1μmの膜厚であった。次に、形成された湿度応答性透湿層の端部にセロハンテープを貼り、セロハンテープを起点に該湿度応答性透湿層を基材から剥離させて、湿度応答性透湿シートを作製した。この湿度応答性透湿シートに対し、JISZ0208に記載のカップ法を適用し、測定時の湿度がそれぞれ40%RHおよび90%RHの場合の透湿量を測定した。結果を表1に示す。

0082

(実施例2)
実施例1において、CSNF分散液の塗工用基材として不織布(TFW−50)を用い、セロハンテープによる剥離を行わずそのまま積層体として用いた以外は実施例1と同様の方法で測定時の湿度がそれぞれ40%RHおよび90%RHの場合の透湿量を測定した。結果を表1に示す。なお、膜厚は測定していないが、塗工条件は実施例1と同様のため、不織布上に形成されたCSNF含有層の膜厚は実施例1と同程度だと予想される。

0083

(比較例1)
実施例1において、湿度応答性シートとして21μmのセロハンを用いた以外は、実施例1と同様の方法で膜厚と測定時の湿度がそれぞれ40%RHおよび90%RHの場合の透湿量を測定した。結果を表1に示す。

0084

0085

表1に示した結果から、実施例1および2のセルロースナノファイバーを用いた湿度応答性透湿シートは、膜厚が薄いにも関わらず、湿度に対する透湿性の変化量が、比較例1のセロハンを用いた湿度応答性透湿シートよりも大きく、湿度応答性が優れていることが示された。これは、低湿度下においてはセルロースI型結晶構造に由来する緻密な積層膜構造が透湿性を抑えているのに対し、高湿度下においてはCSNF間隙に水蒸気が吸着することによって急激に透湿性が上昇しているためと考えられる。

実施例

0086

さらに、実施例1および2のように、セロハンを用いない湿度応答性透湿シートの構成にすることは、環境調和性の観点から好ましい。

0087

本発明を用いれば、セルロースI型結晶構造を有するセルロースナノファイバーを構成に含むことによって、低湿度と高湿度の場合で透湿性の変化量が十分に大きく、かつ製造が簡単で安全に形成できる、環境配慮型の湿度応答性透湿シートを提供することが可能となる。

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