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課題
解決手段
概要
背景
概要
血行動態の変化によるリスクを定量的に評価できるようにし、治療計画の検討を支援すること。 実施形態によれば、医用画像処理装置は、記憶部と、抽出部と、解析部と、計算部と、提示部とを具備する。記憶部は、被検体の動脈を含む特定部位に関するボリュームデータを記憶する。抽出部は、動脈に接続し特異な血管走行構造を有する奇形領域と、当該奇形領域への血液の流入血管とをボリュームデータから抽出する。解析部は、流入血管が複数有る場合に、当該複数の流入血管を異なる順番で塞栓した複数通りに亘る塞栓順番ごとの血行動態を解析する。計算部は、解析の結果に基づいて、塞栓順番ごとのリスクを計算する。提示部は、計算されたリスクに基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を提示する。
目的
効果
実績
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請求項1
被検体の動脈を含む特定部位に関するボリュームデータを記憶する記憶部と、前記動脈に接続し特異な血管走行構造を有する奇形領域と、当該奇形領域への血液の流入血管とを前記ボリュームデータから抽出する抽出部と、前記流入血管が複数有る場合に、当該複数の流入血管を異なる順番で塞栓した複数通りに亘る塞栓順番ごとの血行動態を解析する解析部と、前記解析の結果に基づいて、前記塞栓順番ごとのリスクを計算する計算部と、前記計算されたリスクに基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を提示する提示部とを具備する、医用画像処理装置。
請求項2
前記解析部は、前記複数の流入血管を異なる順番および異なる位置で塞栓したケースごとの血行動態を解析し、前記計算部は、前記解析の結果に基づいて、前記ケースごとのリスクを計算し、前記提示部は、前記計算されたリスクに基づいて前記推奨すべきケースを提示する、請求項1に記載の医用画像処理装置。
請求項3
前記抽出部は、さらに、前記奇形領域との接続箇所の下流側における前記動脈からの分岐血管を抽出し、前記解析部は、前記分岐血管に設定される計測対象箇所ごとの流体パラメータを計算し、前記計算部は、前記流体パラメータの安定度を基準として前記リスクを計算する、請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
請求項4
前記抽出部は、さらに、前記奇形領域との接続箇所の下流側における前記動脈からの分岐血管を抽出し、前記解析部は、前記分岐血管に設定される計測対象箇所ごとの流体パラメータを計算し、前記計算部は、前記流体パラメータの既定の閾値との差に基づいて前記リスクを計算する、請求項1または請求項2に記載の医用画像処理装置。
請求項5
さらに、前記ボリュームデータから、前記分岐血管を含む3次元の血管モデル画像を作成する画像処理部と、前記3次元モデル画像の前記分岐血管に、前記計算された流体パラメータをカラーマッピングして表示する表示部とを具備する、請求項3または4に記載の医用画像処理装置。
請求項6
被検体の特定部位を撮像して画像データを得る撮影部と、前記画像データから前記特定部位に関するボリュームデータを作成する作成部と、前記ボリュームデータから、特異な血管走行構造を有する奇形領域と、当該奇形領域への血液の流入血管とを抽出する抽出部と、前記流入血管が複数有る場合に、当該複数の流入血管を異なる順番で塞栓した複数通りに亘る塞栓順番ごとの血行動態を解析する解析部と、前記解析の結果に基づいて、前記塞栓順番ごとのリスクを計算する計算部と、前記計算されたリスクに基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を提示する提示部とを具備する、医用画像診断装置。
請求項7
コンピュータに、被検体の特定部位に関するボリュームデータを記憶部に記憶させるための命令と、前記コンピュータに、前記ボリュームデータから、特異な血管走行構造を有する奇形領域と、当該奇形領域への血液の流入血管とを抽出させるための命令と、前記コンピュータに、前記流入血管が複数有る場合に、当該複数の流入血管を異なる順番で塞栓した複数通りに亘る塞栓順番ごとの血行動態を解析させるための命令と、前記コンピュータに、前記解析の結果に基づいて、前記塞栓順番ごとのリスクを計算させるための命令と、前記コンピュータに、前記計算されたリスクに基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を提示させるための命令とを含む、プログラム。
技術分野
背景技術
0003
流入動脈(フィーダー)と流出静脈(ドレイナー)との間の血管塊はナイダス(nidus)と称される。ナイダス近傍では増加した血流により血管壁の薄い静脈が拡張し脳内出血の可能性が高いことから、基本的に治療を要する。
先行技術
0005
特許第5596866号公報
特開2011−254861号公報
特開2007−135894号公報
発明が解決しようとする課題
0006
血管内治療は、物理的に、あるいは薬物の作用により流入動脈を一本ずつ塞栓する方法である。塞栓すべき流入動脈の数が多い場合などは治療を複数回に分ける必要がある。これは、一回の手技で多くの血管を塞栓すると、塞栓によって血行動態が変わってしまい、塞栓されることで1箇所に集中した大量の血流によって下流側の血管(毛細血管を含む)が破損して出血する可能性が高くなるためである。また、静脈の血流が低下することにより生じる梗塞のリスクも高くなる。医師は治療前にこれらのリスクを総合的に考慮して治療計画を立てなくてはならない。
0007
現状では、1か所を塞栓するたびに患者の状態を注意深く観察して、手術の継続の如何を判断している。いわば場当たり的な手法が採られているので、想定外の事態が起こる可能性もないとは言えない。また、複数の塞栓箇所がある場合にどのような順番で塞栓すればリスクが少ないかを知る方法がなかった。そこで、術前にリスクを的確に評価できる手法が要望されている。
0008
目的は、血行動態の変化によるリスクを定量的に評価できるようにし、これにより治療計画の検討を支援可能な医用画像処理装置、医用画像診断装置およびプログラムを提供することにある。
課題を解決するための手段
0009
実施形態によれば、医用画像処理装置は、記憶部と、抽出部と、解析部と、計算部と、提示部とを具備する。記憶部は、被検体の動脈を含む特定部位に関するボリュームデータを記憶する。抽出部は、動脈に接続し特異な血管走行構造を有する奇形領域と、当該奇形領域への血液の流入血管とをボリュームデータから抽出する。解析部は、流入血管が複数有る場合に、当該複数の流入血管を異なる順番で塞栓した複数通りに亘る塞栓順番ごとの血行動態を解析する。計算部は、解析の結果に基づいて、塞栓順番ごとのリスクを計算する。提示部は、計算されたリスクに基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を提示する。
図面の簡単な説明
0010
図1は、実施形態に係わる医用画像処理装置の一例を示す機能ブロック図である。
図2は、図1に示される医用画像処理装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。
図3は、脳動静脈奇形の病態の一例を模式的に示す図である。
図4は、血行動態の計測対象箇所の一例を示す図である。
図5は、塞栓位置p1〜p3の一例を示す図である。
図6は、塞栓順番のそれぞれについてのCFD解析の結果の一例を示す図である。
図7は、それぞれの塞栓順番についての計測対象箇所t1〜t4におけるCFDパラメータに係わる指標の一例を示す図である。
図8は、リスク評価手法の一例を説明するための図である。
図9は、流入動脈の塞栓と血流量との関係の一例を示す模式図である。
実施例
0011
図1は、実施形態に係わる医用画像処理装置の一例を示す機能ブロック図である。医用画像処理装置1は、メモリ11、通信部12、入力部13、画像処理部14、処理回路15、モニタ16、操作部17、表示制御部18、及び制御部19を備える。
0012
メモリ11は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、SDRAM(Synchronous Dynamic RAM)などの半導体メモリ、あるいはEPROM(Erasable Programmable ROM)、EPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)などの不揮発性メモリがメモリ11の一例として挙げられる。
0013
メモリ11は、ボリュームデータ11aおよびプログラム11bを記憶する。ボリュームデータ11aは、被検体の例えば脳領域に関する3次元画像のデータである。3次元画像のデータは、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置、X線診断装置、超音波診断装置等の診断モダリティにより収集される。
0014
通信部12は、病院内LAN(Local Area Network)2、あるいは外部通信網(インターネットやクラウドコンピューティングシステムなど)と通信して各種のデータを授受する。
0015
入力部13は、医用画像発生装置3、あるいはPACS(医用画像保管通信システム)4から通信部12を介して画像処理対象のボリュームデータを取得する。医用画像発生装置3は、例えばX線コンピュータ断層撮影装置(CT装置)、磁気共鳴イメージング装置(MRI装置)である。また、ボリュームデータは、XR(3D再構成撮影)などの手法により得ることも可能である。
0016
以下の説明では、入力部13は、CT装置により撮影された、対象部位としての被検体の頭部に関する3次元画像のデータを取得する。CT装置は、例えば、造影剤により造影された脳をX線でダイナミックスキャンし、複数の時相にわたる複数の3次元画像のデータを収集する。
0017
画像処理部14は、例えば、MPR(multi planar reconstruction)やボリュームレンダリング(volume rendering)などの3次元画像処理により、ボリュームデータ11aから、3次元の血管モデル画像を作成する。実施形態において、この血管モデル画像は、ナイダスと、ナイダスに接続される流入動脈と、分岐血管とを含むとする。実施形態では、動脈のナイダスとの接続箇所の下流側における、毛細血管に接続する血管を分岐血管と称する。つまり分岐血管はさらに枝分かれして毛細血管となる。あるいは、分岐血管は毛細血管を含む。
0018
処理回路15は、例えばプロセッサおよびメモリを備える。処理回路15は、情報処理装置(計算機)としての機能を備え、医用画像処理装置1を制御する。また、処理回路15は、制御処理に関する各種のプログラム(プログラム11b)をメモリ11から読み出す。プログラム11bを読み出した処理回路15は、図1に示されるように、抽出機能15a、解析機能15b、計算機能15c、提示機能15dおよびカラーマッピング機能15eを備える。すなわち処理回路15は、抽出機能15a、解析機能15b、計算機能15c、提示機能15dおよびカラーマッピング機能15eに関するプログラムをメモリ11から読み出す。
0019
処理回路15は、抽出機能に関するプログラムを自身のメモリにロードし、実行して抽出機能15aを実現する。このとき処理回路15は、抽出部として機能する。抽出機能15aは、ボリュームデータ11aを既存の画像処理技術により解析して、動脈に接続するナイダスと、このナイダスへの血液の流入動脈と、ナイダスとの接続箇所の下流側における動脈からの分岐血管とを抽出する。すなわち抽出機能15aは、ナイダス、流入動脈および分岐血管を抽出する。なお、特異な血管走行構造を有する奇形領域の例としてナイダス及び流入動脈を挙げたが、これに限られず、人体にリスクを及ぼすような任意の血管形状や血管の疾患を抽出対象に含めても構わない。なお、ナイダス、流入動脈、分岐血管の抽出は画像解析による自動抽出に、ユーザによるマニュアル入力を補助入力として組み合わせることで行っても良い。例えばボリュームデータから血管構造を抽出した後に、血管構造をモニタ16に表示させる。ユーザは血管構造の中からナイダスに該当する領域と、動脈・静脈に対応する領域を入力部13を用いて指定する。特定されたナイダス・動脈・静脈と、それらに接続される血管を特定することで、処理回路15(抽出部)は間をつなぐ血管を流入動脈・分岐血管として特定することができる。
0020
処理回路15は、解析機能に関するプログラムを自身のメモリにロードし、実行して解析機能15bを実現する。このとき処理回路15は、解析部として機能する。解析機能15bは、複数の流入血管を異なる順番で塞栓したそれぞれの場合(以下、塞栓順番と称する)ごとに、CFD(Computational Fluid Dynamics)を用いたシミュレーション解析を行なう。つまり解析機能15bは、塞栓順番ごとにCFD解析を実施して流体パラメータとしてのCFDパラメータを算出し、塞栓順番ごとの血行動態をシミュレートする。
0021
例えば3本の流入血管のそれぞれごとに塞栓可能な位置が1か所あれば、塞栓順番は、順列計算で3×2×1の6通りとなる。また、流入血管が1本だけで、この血管について塞栓可能な位置が3か所あれば、塞栓順番は順列組合せで3×2×1=6通りである。つまり最初に塞栓する位置が3通り、次の塞栓位置が2通り、最後の塞栓位置が1通りであるからである。また、3本の流入血管のそれぞれごとに塞栓可能な位置が2か所あれば、塞栓順番は、6!=720通りとなる。すなわち、シミュレーションの対象領域中に塞栓可能な位置が何箇所あるかによって、提示すべき塞栓順の数が異なることとなる。なお、先述したように塞栓可能な位置が多い場合には塞栓順番の数が非常に多くなり、全ての順番について血行動態をシミュレートすることが難しい場合がある。このような場合には、全ての順番についてシミュレートする代わりに、最初に塞栓した場合にリスクを示す指標値が閾値を超えて高くなる塞栓箇所については、当該塞栓箇所を最初に塞栓する順列をシミュレートの対象から除いてもよい。このようにシミュレートすべき塞栓順番の数を低減させることで高速に結果を得ることができる。
0022
CFDパラメータの例としては、血液の流速、血圧、あるいはWSS(wall shear stress:血管壁面剪断応力)などが挙げられる。CFDパラメータは、例えば、抽出された分岐血管に設定される計測対象箇所ごとに算出することができる。
0023
特に、解析機能15bは、複数の流入血管を異なる順番および異なる位置で塞栓したケースごとの血行動態を計算する。つまり塞栓順番だけでなく、塞栓位置という指標を手術リスクの判断材料に加えても良い。
0024
処理回路15は、計算機能に関するプログラムを自身のメモリにロードし、実行して計算機能15cを実現する。このとき処理回路15は、計算部として機能する。計算機能15cは、CFD解析の結果に基づいて、塞栓順番(施術ケースと称する場合がある)ごとのリスクを計算する。計算機能15cは、例えば、CFDパラメータの、施術の前後での安定度を基準としてリスクを計算する。または、リスクは、CFDパラメータと既定の閾値とを比較した結果に基づいて評価されてもよい。
0025
処理回路15は、提示機能に関するプログラムを自身のメモリにロードし、実行して提示機能15dを実現する。このとき処理回路15は、提示部として機能する。提示機能15dは、上記計算されたリスクに基づいて、リスクの少ない順に施術ケースを提示する。なお、少なくとも一つの推奨すべき施術ケースを、つまり最もリスクの少ない施術ケースを提示しても構わない。
0026
処理回路15は、カラーマッピング機能に関するプログラムを自身のメモリにロードし、実行してカラーマッピング機能15eを実現する。このとき処理回路15は、カラーマッピング部として機能する。カラーマッピング機能15eは、画像処理により作成された3次元モデル画像に含まれる分岐血管に、計算されたCFDパラメータをカラーマッピングする。つまりカラーマッピング機能15eは、画像処理部14により作成された3次元モデル画像の画素ごとに、CFDパラメータの値に対応する色を割り付けた画像(以下、マップ画像と称する)を作成する。作成されたマップ画像はモニタ16に表示される。
0027
モニタ16は、各種の医用画像やテキスト情報などを表示する、ヒューマン・マシンインタフェースである。モニタ16として、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイなどを利用可能である。
0028
操作部17は、ユーザからの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部17としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜、利用することが可能である。
0029
表示制御部18は、マップ画像の重畳された血管モデル画像や、ボリュームレンダリング画像などをモニタ16に表示する。
0030
制御部19は、医用画像処理装置1の中枢として機能する。制御部19は、リスクを評価する処理の開始要求を操作部17から受けると、医用画像処理装置1内の各部を制御して、リスクを評価する処理を実行する。
0031
医用画像処理装置1は、汎用のコンピュータ装置を基本ハードウェアとして利用することができる。医用画像処理装置1は、コンピュータ装置に搭載されたプロセッサ(CPU: central processor unit)が画像処理プログラムを実行することにより、手術リスクの定量的評価処理を実現することができる。画像処理プログラムは、コンピュータ装置に予めインストールされている。あるいは画像処理プログラムは、磁気ディスクや光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等のようなリムーバブルな記録媒体に記録されてコンピュータ装置に配布されたり、ネットワークを介してコンピュータ装置に配布されたりしてもよい。配布された画像処理プログラムは、コンピュータ装置に適宜インストールされて実現される。なお、上記の各部は、その一部または全てをロジック回路等のハードウェアにより実現することも可能である。また、上記の各部は、ハードウェアとソフトウェア制御とを組み合わせて実現することも可能である。次に、上記構成を基礎として複数の実施形態を説明する。
0032
図2は、図1に示される医用画像処理装置1における処理手順の一例を示すフローチャートである。図2において、医用画像処理装置1は、CT装置、MR装置またはXR撮像装置から取得したボリュームデータ11a(ステップS1)を画像処理して、血管構造を抽出すると共に、更に血管におけるナイダス、流入動脈および分岐血管を抽出する(ステップS2、S3)。この抽出手順は全ての流入動脈に繋がるナイダスが抽出されるまで繰り返される(ステップS4)。
0033
図3は、脳動静脈奇形の病態の一例を模式的に示す図である。図3において、点線で囲われた領域がナイダス(符号100)を示す。ナイダス100は、流入動脈a1〜a3を介して動脈20に接続される。動脈20は、ナイダス100との接続箇所から下流側で複数の血管(分岐血管v1〜v6)に分岐し、さらに分岐を繰り返して毛細血管30に至る。毛細血管30は脳組織の深部に至ったのち、やがて互いに合流して静脈40となる。ナイダス100はこの静脈40にも接続されているので、いわばナイダス100により毛細血管が短絡されることになる。
0034
さて、図2のステップS2およびS3の手順において、図3に示されるようなナイダス100、流入動脈a1〜a3、および分岐血管v1〜v6が抽出されるとする。入力となるボリュームデータ11aの空間分解能は血管形状を解析できる程度の精度があれば十分である。この精度を確保できれば、CT、MR、またはXR(3D再構成撮影)に限られるものではない。
0035
図2のフローチャートにおいて、次に、各流入動脈の塞栓の順番(塞栓順番)が医用画像処理装置1に登録される(ステップS5)。例えば、全ての塞栓順番を登録することができる。図3に示されるように3本の流入動脈a1〜a3について、a1→a2→a3、a1→a3→a2、a2→a1→a3、a2→a3→a1、a3→a1→a2、a3→a2→a1の6通りの塞栓順番を登録することができる。あるいは、一部の塞栓順番だけを登録するようにしてもよい。全ての塞栓順番の中から一部の塞栓順番に絞り込むためには、例えば血管の位置や太さなどの解剖学的情報を利用することができる。例えば血管の太さが細い流入血管を先に塞栓する塞栓順番だけを登録したり、その逆に太い流入血管を先に塞栓するものに絞り込むことができる。また、一旦全ての塞栓順番を登録した後に、ユーザがその中のいくつかを選択することで後の解析に用いる塞栓順番を絞り込んでもよい。例えば、ユーザの選択によってa1→a2→a3、a1→a3→a2の2通りだけを登録しても良い。
0036
併せてこのステップS5では、血行動態の計測対象とする箇所(計測対象箇所)がユーザのマニュアル操作により設定される。例えば図4に示されるように、分岐血管が毛細血管に至る部分の上流側に、複数の計測対象箇所(t1〜t4)を設定することが可能である。
0037
次に、流入動脈a1〜a3のそれぞれについて塞栓位置が決定される(ステップS6)。図5のp1〜p3で示される塞栓位置の最適な位置は、ナイダスの根元とは限らない。塞栓位置を深い側にずらした方が予後が良好な場合もある。塞栓位置p1〜p3はユーザが手動で決めても良い。または、最適位置はCFD解析により求めることもできる。つまり、医用画像処理装置1(プログラム)が血管の任意の位置に塞栓位置をセットして(つまり、一定の大きさの塞栓領域を配置して)CFD解析を実施し、解析の結果血流の停止する塞栓位置を自動で検出してもよい。
0038
次に、医用画像処理装置1はCFD解析を実行する(ステップS7)。すなわち解析機能15bは、ステップS5で登録された塞栓順番のそれぞれについて、計測対象箇所t1〜t4における流体パラメータをCFDシミュレーションにより算出する。
0040
塞栓順番1→2→3は、a1→a2→a3の順序で流入動脈が塞栓されることを示し、対象1〜4はそれぞれ計測対象箇所t1〜t4に対応する。登録された塞栓順番の全てについてのCFD解析が完了すると、医用画像処理装置1は、それぞれの塞栓順番について、各計測対象箇所t1〜t4におけるCFDパラメータの変化を評価する。
0041
図7は、それぞれの塞栓順番についての計測対象箇所t1〜t4におけるCFDパラメータに係わる指標の一例を示す図である。CFDパラメータに係わる指標としては例えば順に塞栓していった場合の各時点におけるCFDパラメータの平均値、あるいは標準偏差などが挙げられる。計算機能15cは、それぞれの塞栓順番についてCFDパラメータの平均値、および標準偏差を計算し、CFDパラメータの安定度を基準として各塞栓順番のリスクを評価する。
0042
図8は、リスク評価手法の一例を説明するための図である。図8は、流入動脈a1〜a3を或る塞栓順番で塞栓したときのCFDパラメータのシミュレーション値を、計測対象箇所t1〜t4ごとにヒストグラムで示す。図8において計測対象箇所t1、t4については比較的安定しているが、計測対象箇所t2、t3については値の変動が大きく上限および下限から逸脱するケースもある。計算機能15cは、このような不安定な挙動を示す塞栓順番についてはリスクが高いと判断し、推奨の対象から除外する。
0043
そして、全ての塞栓順番についての解析が終わりリスク評価が完了すると(ステップS8でYes)、計算機能15cは最もCFDパラメータの安定している塞栓順番を特定し、提示機能15eに渡す。安定している、とは、各箇所を塞栓したその時々における各CFDパラメータのばらつきの少ないことに対応する。または、各時点におけるいずれかのCFDパラメータが、予め定めた下限値あるいは上限値を超過している状態を、安定していない(不安定である)、と判定しても良い。提示機能は、上記リスク(あるいは安定の度合い)に基づいて、少なくとも一つの推奨すべき塞栓順番を、例えばモニタ16において視覚的に提示する(ステップS9)。
0044
図9は、流入動脈の塞栓と血流量との関係の一例を示す模式図である。図9(a)は流入動脈a1を塞栓した状態を示し、図9(b)は流入動脈a1,a2を塞栓した状態を示し、図9(c)は流入動脈a1〜a3を全て塞栓した状態を示す。塞栓箇所が増えるほどに血流量も変化することになるので、血流量を反映するCFDパラメータも変動する。処理回路15のカラーマッピング機能15eは、CFDパラメータの値に対応する色、あるいはCFDパラメータの変動の度合いに応じた色を血管の3次元モデル画像の画素ごとにアサインしたマップ画像を作成し、モニタ16に表示する。図9においては、それぞれの分岐血管の血流動態の変化が点状のハッチングにより区別して示される。ハッチングの違いが色の違いを示す。このほか、CFDパラメータが閾値を超える血管を他と異なる色で表示しても良い。一連の塞栓が全て完了した時点でCFDパラメータが閾値を超える血管があれば、該当する血管を異なる色で表示しても良いし、一連の塞栓のうちいずれかの時点で閾値を超える血管があれば、異なる色で表示しても構わない。
0045
以上説明したようにこの実施形態では、CTやMRIなどで得られたボリュームデータに基づいて3次元血管モデルを抽出し、ナイダスと、流入動脈および分岐血管を抽出する。そして、複数の流入動脈を異なる順列組合せで塞栓した個々のケースごとにCFDを用いたシミュレーション解析を実施し、指定された計測箇所におけるCFDパラメータの挙動を評価する。そして、CFDパラメータの最も安定している塞栓順番を推奨とする。つまり塞栓するたびにCFDパラメータが大きく変化する塞栓順番の優先順位を下げるようにし、特に、CFDパラメータが閾値を超えたり下回ったりするケースはNG扱いとして、採用しないようにする。
0046
例えば、CFDパラメータの標準偏差の最も小さい塞栓順番を推奨してもよい。あるいは、CFDパラメータの値と既定の閾値との比較結果に基づいて、推奨すべき塞栓順番を決定してもよい。例えばCFDパラメータをグラフ化し、上限下限内に収まっている塞栓順番を、実際の手術に適用すべき塞栓順番の候補としてもよい。上限、下限はユーザが決めてもよいし、あるいは一般的に推奨される値を用いても良い。
0047
以上の構成により、各流入動脈を塞栓した場合に血行動態がどのように変化するかを術前に知ることができるようになるので、血行動態の急激な変動に伴う出血などの手術リスクを低くすることが可能になる。つまり各々の流入動脈を塞栓した場合の血流予測と、推奨される塞栓順番を確認することができるようになるので、医師の血管内治療の治療計画に役立てることができる。これらのことから、血行動態の変化によるリスクを定量的に評価できるようになり、治療計画の検討を支援することが可能になる。
0048
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、推奨すべき塞栓順番を絞り込む処理に、血管の位置や太さなどの指標を判断の材料に加えても良い。治療すべきナイダスの数が閾値以上(例えば6本以上)などの場合に、一定の太さ以上の血管だけを限定して塞栓順番を計算しても良い。
0049
逆に、例えば流入動脈が3本あった場合でも2本しか塞栓しないケースもありうる。リスクおよび推奨順番の評価にこのようなケースを含めても良い。実際の手術においては一部の血管を残しておく場合もありうるからである。このような場合に手術計画を行うためには、抽出された複数の塞栓位置のうち、塞栓を行わない塞栓位置をユーザが指定する。
0050
また、複数の流入動脈と複数の塞栓箇所との順列組合せの全てについてCFD解析を実施する必要は無い。候補として抽出された幾つかのケースに対してCFD解析を実施して、リスクの低い塞栓順番を選択して推奨するようにしても良い。候補は、オペレータにより選択されても良いし、装置による計算に基づいて抽出されても良い。
0051
また、流入動脈の血流を停止させる術式は「塞栓」に限られない。例えば、回頭手術において血管をクリップで順番に挟んで血流を止める術式(クリッピング)もあるし、メスで血管を順番に切り取る術式もある。上記構成はこの種の術式のいずれにも適用することができる。
0052
また、医用画像処理装置1を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、実行処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
0053
「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
0054
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
0055
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
0056
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(central processing unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific IntegratedCircuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、上記各実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、上記各実施形態における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
0057
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示するものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
0058
1…医用画像処理装置、2…LAN、3…医用画像発生装置、4…PACS、11…メモリ、11a…ボリュームデータ、11b…プログラム、12…通信部、13…入力部、14…画像処理部、15…処理回路、15a…抽出機能、15b…解析機能、15c…計算機能、15d…提示機能、15e…カラーマッピング機能、16…モニタ、17…操作部、18…表示制御部、19…制御部、20…動脈、30…毛細血管、40…静脈、100…ナイダス、a1〜a3…流入動脈、p1〜p3…塞栓位置、t1〜t4…計測対象箇所、v1〜v6…分岐血管。