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課題
解決手段
概要
背景
電子部品などのワークを基板に実装する際に、ワークを基板に押し付ける工作装置が用いられている。このような工作装置では、ワークを押し付ける手段としてリニアモータなどが用いられている(特許文献1)。このような工作装置では、ワークを基板に確実に取り付けるために、ワークが基板に接触してから一定以上の荷重で押し付ける必要がある。このような制御をリニアモータに対して行う際、ワークが基板に接触したか否かの判定を行った後に、判定結果に応じて所定の押付力をリニアモータに発生させることで、ワークを基板に押し付ける。リニアモータの制御にPI制御又はPID制御を用いた場合、ワークが基板に接触してから判定結果が得られるまでの期間において、ワークが基板に接触していることによりワークが止まったり、移動速度が減速したりすることで、位置偏差又は速度偏差が大きくなり、判定後のモータの制御に影響を及ぼすことがあった。
概要
モータが移動させている物体が他の物体に接触したか否かを判定している期間に生じる偏差が判定後のモータの制御に与える影響を低減させる。モータの制御装置は、モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御部と、電流指令に基づいてモータに電圧を印加する電流制御部と、対象物の移動速度とモータに流れる電流とに基づいて対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定部とを備える。速度制御部は、対象物が他の物体に接触したと接触判定部が判定すると、モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って電流指令を算出する。
目的
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、モータが移動させている物体が他の物体に接触したか否かを判定している期間に生じる偏差が判定後のモータの制御に与える影響を低減させることができるモータの制御装置、制御方法及びプログラムを提供する
効果
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請求項1
モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御部と、前記電流指令に基づいて前記モータに電圧を印加する電流制御部と、前記対象物の移動速度と前記モータに流れる電流とに基づいて前記対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定部と、を備え、前記速度制御部は、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って前記電流指令を算出する、モータの制御装置。
請求項2
前記速度制御部は、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達すると、前記差分に対する積分を停止し、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、前記差分に対する積分を再開する、請求項1に記載のモータの制御装置。
請求項3
前記速度制御部は、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を記憶し、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、現在の積分値を記憶した積分値に変更する、請求項1に記載のモータの制御装置。
請求項4
前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、前記電流指令に対する上限を、前記対象物が他の物体に接触する前における第1の上限電流値より大きい第2の上限電流値に変更する電流指令制限部と、前記電流指令に対する上限が前記第2の上限電流値に変更された後に、前記モータに流れる電流の電流値の極値と該極値が得られたときの前記対象物の位置との組み合わせを検出する押付け状態検出部と、を更に備える、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のモータの制御装置。
請求項5
前記モータの推力により前記対象物が同じ位置に留まるときの電流値を補正値として記憶する電流補正部を更に備え、前記電流制御部は、前記電流指令を前記補正値で補正した指令に基づいて前記モータに電圧を印加する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のモータの制御装置。
請求項6
モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御ステップと、前記電流指令に基づいて前記モータに電圧を印加する電流制御ステップと、前記対象物の移動速度と前記モータに流れる電流とに基づいて前記対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定ステップと、を有し、速度制御ステップでは、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定ステップにおいて判定されると、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って前記電流指令を算出する、制御方法。
請求項7
技術分野
背景技術
0002
電子部品などのワークを基板に実装する際に、ワークを基板に押し付ける工作装置が用いられている。このような工作装置では、ワークを押し付ける手段としてリニアモータなどが用いられている(特許文献1)。このような工作装置では、ワークを基板に確実に取り付けるために、ワークが基板に接触してから一定以上の荷重で押し付ける必要がある。このような制御をリニアモータに対して行う際、ワークが基板に接触したか否かの判定を行った後に、判定結果に応じて所定の押付力をリニアモータに発生させることで、ワークを基板に押し付ける。リニアモータの制御にPI制御又はPID制御を用いた場合、ワークが基板に接触してから判定結果が得られるまでの期間において、ワークが基板に接触していることによりワークが止まったり、移動速度が減速したりすることで、位置偏差又は速度偏差が大きくなり、判定後のモータの制御に影響を及ぼすことがあった。
先行技術
0003
特開2009−194015号公報
発明が解決しようとする課題
0004
本発明は、上記問題を解決すべくなされたもので、その目的は、モータが移動させている物体が他の物体に接触したか否かを判定している期間に生じる偏差が判定後のモータの制御に与える影響を低減させることができるモータの制御装置、制御方法及びプログラムを提供することにある。
課題を解決するための手段
0005
本発明の一態様は、モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御部と、前記電流指令に基づいて前記モータに電圧を印加する電流制御部と、前記対象物の移動速度と前記モータに流れる電流とに基づいて前記対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定部と、を備え、前記速度制御部は、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って前記電流指令を算出する、モータの制御装置である。
0006
また、本発明の一態様は、モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御ステップと、前記電流指令に基づいて前記モータに電圧を印加する電流制御ステップと、前記対象物の移動速度と前記モータに流れる電流とに基づいて前記対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定ステップと、を有し、速度制御ステップでは、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定ステップにおいて判定されると、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って前記電流指令を算出する、制御方法である。
0007
また、本発明の一態様は、モータで移動させる対象物の移動速度と速度指令との差分に対する積分値を用いた積分動作により電流指令を算出する速度制御部と、前記電流指令に基づいて前記モータに電圧を印加する電流制御部と、前記対象物の移動速度と前記モータに流れる電流とに基づいて前記対象物が他の物体に接触したか否かを判定する接触判定部と、を備え、前記速度制御部は、前記対象物が他の物体に接触したと前記接触判定部が判定すると、前記モータに流れる電流の電流値が接触の判定に用いるしきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って前記電流指令を算出する、モータの制御装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
発明の効果
0008
この発明によれば、モータが移動させている物体が他の物体に接触したか否かを判定している期間に生じる偏差が判定後のモータの制御に与える影響を低減させることができる。
図面の簡単な説明
0009
本実施形態におけるリニアモータ装置の概要を示す図。
本実施形態における制御装置の構成例を示すブロック図。
本実施形態におけるリニアモータの原点復帰動作を示すフローチャート。
本実施形態におけるリニアモータ装置によるスイッチのクリック感の計測動作を示すフローチャート。
本実施形態の計測動作における電流指令の上限、電流指令、リニアモータ1に流れる電流の電流値の変化を示す波形図。
実施例
0010
以下、図面を参照して、本発明の実施形態におけるモータの制御装置、制御方法及びプログラムを説明する。図1は、本実施形態におけるリニアモータ装置の概要を示す図である。リニアモータ装置は、リニアモータ1と、制御装置2とを備える。リニアモータ装置は、例えば搬送装置やピックアンドプレース装置、半導体の加工装置などに用いられる。本実施形態では、リニアモータ装置が、押しボタン型のスイッチ5のクリック感を測定する用途に用いられる場合について説明する。制御装置2は、リニアモータ1の可動子であるロッド11をスイッチ5に向けて移動させる。制御装置2は、ロッド11とスイッチ5との接触を検出した後に更にスイッチ5に向けてロッド11を移動させ、移動に要する推力とロッド11の位置の変化とを記録する。制御装置2は、推力と位置との変化を取得することにより、スイッチ5のクリック感が客観的に計測される。なお、クリック感は、押しボタン型のスイッチを押下した際に生じるボタンの反発力の変化により生じる手応えなどのことである。
0011
制御装置2は、リニアモータ1を制御する。制御装置2は、リニアモータ1に備えられているU、V、W相のコイルに三相電機子電流を流すことによって各コイルに電磁石界磁を発生させる。各コイルに発生する磁界と、ロッド11内に備えられた磁石との作用により、ロッド11が直線的に移動する。制御装置2は、入力される位置指令と、エンコーダ12から出力されるパルス信号とに基づいて三相電機子電流をリニアモータ1へ供給する。エンコーダ12は、リニアモータ1に取り付けられており、ロッド11の移動量に応じたパルス信号を出力する。
0012
図2は、本実施形態における制御装置2の構成例を示すブロック図である。制御装置2は、位置制御部21と、速度リミッタ22と、速度制御部23と、電流リミッタ24と、ドライバ25と、位置算出部26と、速度算出部27と、接触判定部28と、電流補正部29と、記録部30とを備える。
0013
位置制御部21は、位置偏差を入力する。位置偏差は、上位又は外部の装置から入力される位置指令と、ロッド11の現在位置との差分である。位置指令は、本実施形態において、原点位置を示す値と、押付位置を示す値とのいずれかが入力される。原点位置は、ロッド11の可動範囲の最も上側又はその近傍の位置である。押付位置は、ロッド11がスイッチ5を押し込んだ位置又はその少し先の位置である。ロッド11をスイッチ5に向けて下向きに移動させる際には、位置指令として押付位置を示す値が入力される。ロッド11を上向きに移動させる際には、位置指令として原点位置を示す値が入力される。位置制御部21は、入力する位置偏差を用いたPI制御又はPID制御によりロッド11の目標速度を算出する。
0014
電流指令制限部としての速度リミッタ22は、位置制御部21により算出される目標速度を入力する。速度リミッタ22は、ロッド11が切替位置を超えて下向きに移動する際に、目標速度が上限速度を超えていたときに目標速度に代えて上限速度を速度指令として出力し、それ以外のときに目標速度を速度指令として出力する。ここで、切替位置は、位置制御と推力制御とを切り替える位置であり、原点位置とスイッチ5との間に予め定められる位置である。切替位置は、ロッド11の速度をロッド11の最高速度から上限速度までに減速させる際に要する距離に応じて定められる。位置制御では、位置指令で示される位置とロッド11との位置との偏差に基づいた制御が行われる。推力制御では、ロッド11の位置に基づいた制御に加えて、リニアモータにおいて発生させる推力を一定以下の推力に制限した制御が行われる。位置制御から推力制御へ切り替えることにより、クリック感の計測におけるタクトタイムの短縮と、スイッチ5などの測定対象への衝突回避とが達成される。また、上限速度は、ロッド11を下向きにスイッチ5へ向けて移動させる際におけるロッド11の速度であり、ロッド11がスイッチ5に接触した際にスイッチ5を押し込まない程度の速度である。上限速度は、事前にリニアモータ装置を動作させた結果に基づいて定められてもよいし、スイッチ5のボタンを押し込む際の反力に基づいて定められてもよい。
0015
速度制御部23は、速度偏差を入力する。速度偏差は、速度リミッタ22が出力する速度指令と、リニアモータ1で移動させるロッド11の移動速度との差分である。速度制御部23は、入力する速度偏差を用いたPI制御により、リニアモータ1に流す電流の目標電流値を算出する。速度制御部23は、速度偏差の積分値に積分ゲインKiを乗じて得られる値と、速度偏差に比例ゲインKpを乗じて得られる値とを加算して目標電流値を算出する。すなわち、速度制御部23は、速度偏差に比例して電流値を変化させる比例動作と、速度偏差の積分値に比例して電流値を変化させる積分動作とを組み合わせたフィードバック制御を行う。なお、速度制御部23は、目標電流値の算出に、速度偏差の微分値に比例して電流値を変化させる微分動作を更に組み合わせたPID制御を行ってもよい。積分動作における積分値は、リニアモータ装置に電力を供給した後に行われる原点復帰動作を開始する際にゼロにリセットされる。
0016
電流リミッタ24は、速度制御部23により算出される目標電流値を入力する。電流リミッタ24は、ロッド11が切替位置を超えて下向きに移動する際に、目標電流値が予め定められた第1の上限電流値を超えていたときに目標電流値を第1の上限電流値に抑えた電流指令を出力する。ここで、第1の上限電流値は、目標速度に対する上限速度と同様に、ロッド11がスイッチ5に接触した際にスイッチ5を押し込まない程度の推力以下となる電流値として定められ、かつロッド11を上限速度より遅い速度で移動させるために必要な推力を発生させる電流値として定められる。第1の上限電流値は、ロッド11に作用する重力も考慮して定められるため、ロッド11の重量によっては上向きの推力を発生させる電流値となる場合がある。すなわち、目標電流値が第1の上限電流値よりも下向きに大きな力をロッド11に作用させる電流値であるとき、目標電流値を第1の上限電流値に変更した値が電流指令として出力される。
0017
また、電流リミッタ24は、ロッド11がスイッチ5に接触したと接触判定部28が判定すると、目標電流値に対する上限を第2の上限電流値に切り替える。ここで、第2の上限電流値は、第1の上限電流値よりも大きな下向きの推力をリニアモータ1に発生させる電流値であり、ロッド11がスイッチ5に接触する際の推力よりも大きい推力をリニアモータ1に発生させる電流値である。また、第2の上限電流値は、スイッチ5を最後まで押し付けることができる推力に基づいて定められ、スイッチ5のボタンを最後まで押し付けたことの検知にも用いられる。また、電流リミッタ24は、原点位置から切替位置までの間をロッド11が下向きに移動するときと、ロッド11が上向きに移動するときとにおいて、目標電流値を電流指令として出力する。
0018
電流制御部としてのドライバ25は、電流偏差を入力する。電流偏差は、電流リミッタ24が出力する電流指令と、リニアモータ1に流れる電流値との差分に、電流補正部29から出力される補正値を加えた値である。リニアモータ1に流れる電流の電流値は、例えばドライバ25からリニアモータ1に電力を供給する電線に取り付けられた変流器などにより測定される。電流補正部29から出力される補正値は、ロッド11の自重を支えるため推力に対応する電流値である。本実施形態におけるリニアモータ装置のように、ロッド11の移動方向が鉛直方向である場合には、ロッド11に作用する重力に対向する推力を発生させる電流の電流値が補正値となる。ドライバ25は、入力する電流偏差を用いたPI制御又はPID制御により、リニアモータ1に印加する目標電圧値を算出する。ドライバ25は、不図示の電源から供給される電圧を、算出した目標電圧値の電圧へ変換してリニアモータ1に印加する。電流偏差に基づいてドライバ25がリニアモータ1へ電力を供給することによって、リニアモータ1のロッド11を上下に移動させる。
0019
位置算出部26は、リニアモータ1に備えられたエンコーダ12から出力されるパルス信号に基づいて、ロッド11の位置を算出する。位置算出部26により算出されるロッド11の位置は、位置偏差の算出に用いられるとともに、速度リミッタ22、電流リミッタ24、電流補正部29及び記録部30へ入力される。速度算出部27は、エンコーダ12から出力されるパルス信号に基づいて、ロッド11が移動する速度を算出する。速度算出部27により算出されるロッド11の速度は、速度偏差の算出に用いられる。エンコーダ12には、インクリメンタルタイプのエンコーダと、アブソリュートタイプのエンコーダとのいずれが用いられてもよい。エンコーダ12がインクリメンタルタイプである場合には、リニアモータ1の駆動を開始した後に、原点位置にロッド11を移動させる原点復帰動作を行った際に位置をリセットする。
0020
接触判定部28は、リニアモータに流れる電流の電流値と、速度算出部27により算出される速度とを入力する。接触判定部28は、ロッド11がスイッチ5に向かって下向きに移動している際に、速度と電流とに基づいてロッド11がスイッチ5に接触したか否かを判定する。接触判定部28による判定結果は、速度制御部23と記録部30とへ入力される。接触判定部28は、リニアモータの電流値が接触しきい値を超えたか否かを判定し、更に電流値が接触しきい値を超えている期間において速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続するか否かを判定する。電流値が接触しきい値を超えている期間において速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続した場合、接触判定部28は、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定する。ここで、接触しきい値は、ロッド11がスイッチ5に接触したか否かの判定に用いる値であり、ロッド11を上限速度より遅い速度で移動させる第1の上限電流値以上かつ第2の上限電流値未満の電流値である(第1の上限電流値≦接触しきい値<第2の上限電流値)。また、接触しきい値は、ロッド11がスイッチ5に接触した際にスイッチ5を押し込まない程度の推力を発生させる電流値である。
0021
電流補正部29は、リニアモータ1の推力のみによってロッド11の位置を変化させずにロッド11を同じ位置に留めるときの電流値を補正値として記憶する。電流補正部29は、推力制御が行われているときに補正値を出力し、推力制御が行われていないときにゼロを出力する。すなわち、推力制御が行われているときは、ロッド11に作用する重力分をキャンセルするように電流偏差に対する補正が行われ、推力制御が行われていないときは、電流偏差に対する補正が行われない。なお、補正値による電流偏差の補正は、ロッド11の移動方向が鉛直方向である場合に限らず、ロッド11に対して重力又は他の外力が作用する場合にも行われる。
0022
記録部30は、ロッド11がスイッチ5に接触したことを示す判定結果を接触判定部28が出力すると、判定時のロッド11の位置を基準として、ロッド11がスイッチ5に接触してから移動した距離と、リニアモータ1に流れる電流の電流値との組み合わせを時系列に記録する。
0023
図3は、本実施形態におけるリニアモータ1の原点復帰動作を示すフローチャートである。リニアモータ装置へ電源供給が開始されたり、上位の装置からの要求を制御装置2が受けたりすると、原点復帰動作が開始される。原点復帰動作が開始されると、制御装置2は、原点位置を示す位置指令に基づいてロッド11を原点位置へ移動させる(ステップS11)。電流補正部29は、リニアモータ1に流れる電流の電流値のサンプリングを開始する(ステップS12)。電流補正部29は、前回のサンプリング値と今回のサンプリングとの差分(変化量)を算出する(ステップS13)。電流補正部29は、変化量がしきい値以下であるか否かを判定する(ステップS14)。
0024
変化量がしきい値以下でない場合(ステップS14:NO)、電流補正部29は、ロッド11が原点位置に向かって移動中であると判定し、処理をステップS13に戻す。すなわち、ロッド11が原点位置に位置して留まるまで、ステップS13、ステップS14が繰り返し行われる。変化量がしきい値以下である場合(ステップS14:YES)、電流補正部29は、一定期間に亘り、電流値のサンプリングを繰り返し行い、当該期間において得られたサンプリング値から平均値を算出し、算出した平均値を補正値として記憶し(ステップS15)、原点復帰動作を終了させる。補正値は、ロッド11の自重を支えて同じ位置に留まるために必要な推力をリニアモータ1に発生させる電流値である。
0025
図4は、本実施形態におけるリニアモータ装置によるスイッチ5のクリック感の計測動作を示すフローチャートである。リニアモータ装置において計測動作が開始されると、押付位置を示す位置指令が制御装置2に入力され、リニアモータ1のロッド11をスイッチ5へ向けて移動させる(ステップS21)。速度リミッタ22及び電流リミッタ24は、位置算出部26により算出されるロッド11の位置が切替位置に達したか否かを判定し(ステップS22)、ロッド11の位置が切替位置に達するまでステップS22の判定を繰り返し行う(ステップS22:NO)。ロッド11の位置が切替位置に達すると(ステップS22:YES)、速度リミッタ22は目標速度が上限速度を超えると上限速度を速度指令として出力し、電流リミッタ24は第1の上限電流値を超えると第1の上限電流値を電流指令として出力する処理を開始する(ステップS23)。すなわち、ロッド11の位置が切替位置を超えると、ロッド11の速度及びロッド11に加える推力を制限した推力制御が開始される。
0026
推力制御が開始されると、接触判定部28は、リニアモータ1に流れる電流の電流値が接触しきい値に達したか否かを判定し(ステップS24)、電流値が接触しきい値に達するまで、ステップS24の判定を繰り返し行う(ステップS24:NO)。電流値が接触しきい値に達すると(ステップS24:YES)、接触判定部28は、電流値が接触しきい値を超えたことを示す判定結果を速度制御部23へ出力する(ステップS25)。速度制御部23は、電流値が接触しきい値を超えたことを示す判定結果が接触判定部28から入力されると、積分動作における速度偏差の積分(累算)を停止する(ステップS26)。
0027
接触判定部28は、リニアモータ1に流れる電流の電流値が接触しきい値に達した後に、電流値が接触しきい値を超え、かつロッド11の速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続したか否かを判定する(ステップS27)。ロッド11の速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続しない場合(ステップS27:NO)、接触判定部28は、処理をステップS24に戻す。電流値が接触しきい値を超え、かつロッド11の速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続した場合(ステップS27:YES)、接触判定部28は、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定し、判定結果を速度制御部23、電流リミッタ24及び記録部30へ出力する(ステップS28)。
0028
記録部30は、ロッド11がスイッチ5に接触したことを示す判定結果を入力すると、ロッド11がスイッチ5に接触してからのロッド11が移動した距離と、リニアモータ1に流れる電流の電流値との組み合わせの記録を開始する(ステップS29)。電流リミッタ24は、ロッド11がスイッチ5に接触したことを示す判定結果を入力すると、目標電流値に対する上限を第2の上限電流値へ切り替える(ステップS30)。目標電流値の算出に積分値の変化が影響するようになり、かつ目標電流値及び電流指令に対する上限が第2の上限電流値に切り替えられることで、ロッド11に加えられる推力が大きくなり、ロッド11によるスイッチ5のボタンを押し付ける押付制御が開始される。速度制御部23は、ロッド11がスイッチ5に接触したことを示す判定結果を入力すると、積分動作における速度偏差の積分(累算)を再開する(ステップS31)。
0029
記録部30は、ロッド11がスイッチ5のボタンを押し付ける動作を行う間、ロッド11が移動した距離と電流値との組み合わせを記録し続け、スイッチ検査が実行される(ステップS32)。接触判定部28は、リニアモータ1に流れる電流の電流値が第2の上限電流値に達したか否かを判定し(ステップS33)、電流値が第2の上限電流値に達していない場合(ステップS33:NO)、処理をステップS32へ戻し、電流値が第2の上限電流値に達するまでステップS32及びステップS33が繰り返される。電流が第2の上限電流値に達すると(ステップS33:YES)、接触判定部28は、ロッド11がスイッチ5のボタンを最後まで押し付けたと判定し、判定結果を記録部30へ出力する(ステップS34)。
0030
記録部30は、ロッド11がスイッチ5のボタンを最後まで押し付けたことを示す判定結果が接触判定部28から入力されると、記録していたロッド11の移動距離と電流値との組み合わせの時系列を、計測結果として外部又は上位の装置へ出力し、(ステップS35)、計測動作を終了させる。この後、原点位置を示す位置指令が制御装置2に入力されると、制御装置2は、ロッド11を原点位置へ移動させる。
0031
本実施形態の制御装置2では、リニアモータ1に流れる電流の電流値が接触しきい値に達すると、速度制御部23が積分動作における速度偏差の累積を停止する。その後、ロッド11がスイッチ5に接触したと接触判定部28が判定すると、速度制御部23は、積分動作における速度偏差の累積を再開することで、電流値が接触しきい値に達したときの積分値を用いて積分動作を行って目標電流値を算出する。このように、速度偏差の積分(累積)を一旦停止させることで、電流値が接触しきい値に達してからロッド11がスイッチ5に接触したか否かを判定している期間に生じる速度偏差が判定後のリニアモータ1の制御に与える影響を低減させることができる。
0032
また、本実施形態の制御装置2では、電流補正部29がロッド11の自重を支える推力を発生させる補正値で、電流指令を補正することにより、ロッド11がスイッチ5に接触する際にスイッチ5に加える荷重を小さくすることができる。電流補正部29が電流指令の補正を行わない場合、ロッド11がスイッチ5に接触する際の荷重は、((ロッド11の自重)+(リニアモータ1の最小推力))となる。これに対して、電流補正部29が電流指令の補正を行う場合、スイッチ5に加える荷重がロッド11の自重以下になるので、接触判定の精度を向上させることができる。
0033
また、電流補正部29が用いる補正値は、原点復帰動作において取得されるため、ロッド11に作用する重力の鉛直成分に対向するための電流値となる。これにより、ロッド11の移動方向が鉛直方向以外の方向となる配置でリニアモータ1が用いられたとしても、適切にロッド11の自重を支える推力に対応する電流値が補正値として用いられるので、リニアモータ1の配置によらず、接触判定の精度を向上させることができる。このように、本実施形態の制御装置2は、ロッド11の自重を支えるためにカウンターウエイトを用いる場合に比べ、リニアモータ装置の汎用性を高めることができる。
0034
なお、本実施形態における速度制御部23は、ステップS26で速度偏差の積分を停止し、ステップS31で速度偏差の積分を再開する動作を行う構成について説明した。しかし、速度制御部23は、速度偏差の積分値を記憶する動作をステップS26で行い、記憶している積分値で積分値を更新する動作をステップS31で行うようにしてもよい。すなわち、判定結果が得られるまでの期間において速度偏差の積分を継続し、ロッド11がスイッチ5に接触した場合に、電流値が接触しきい値に達したときの積分値に戻すようにしてもよい。図5は、本実施形態の計測動作における電流指令の上限、電流指令、リニアモータ1に流れる電流の電流値の変化を示す波形図である。同図において、縦軸は電流値を示し、横軸は時間を示す。なお、図5に示す波形図では、2段階のクリック感を有するスイッチ5が計測対象になっている。
0035
図5(A)は、図4において説明した計測動作が行われた場合の波形図である。ロッド11がスイッチ5に接触して電流値が増加し、時刻t1において電流値が接触しきい値に達すると、速度偏差の積分が停止される。時刻t2において、電流値が接触しきい値に達し、かつロッド11がほぼ一定時間継続して停止していると、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定され、押付制御が開始される。時刻t3において、電流値が第2の上限電流値に達すると、ロッド11がスイッチ5を最後まで押し付けたと判定される。第2の上限電流値は、前述のように、ロッド11をスイッチ5に接触させる際の推力よりも大きい推力であってスイッチ5を最後まで押し付けることができる推力をリニアモータ1に発生させる電流値である。すなわち、第2の上限電流値は、ロッド11をスイッチ5に接触させた位置からスイッチ5のボタンの押し付けが完了する位置までに必要とされる推力に基づいて定められる。
0036
図5(B)は、前述のように、速度偏差の積分を停止させる代わりに、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定されたときに、電流値が接触しきい値に達したときの積分値に戻す動作を行った場合の波形図である。図5(B)では、図5(A)と異なり、電流指令に代えて、速度制御部23が出力する目標電流値が示されている。同図に示すように、時刻t1において電流値が接触しきい値に達した後も、速度偏差の積分を継続しているため目標電流値は増加し続けている。時刻t2においてロッド11がスイッチ5に接触したと判定されると、速度制御部23が積分動作における積分値を時刻t1における積分値に戻すことにより、時刻t2以降の目標電流値は図5(A)に示した電流指令と同様の変化を示していることが分かる。このように、時刻t2における速度偏差の積分値が、時刻t1における速度偏差の積分値と同じ値となれば、速度制御部23における動作は一つに限定されない。
0037
前述のように、本実施形態の制御装置2において、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定すると、電流リミッタ24が電流指令に対する上限値を第1の上限電流値から第2の上限電流値へ切り替える。これにより、スイッチ5のボタンを押し込む際に発生するボタンの反発力に応じて電流指令が上昇することにより、制御装置2はクリック感を示す電流波形を得ることができる。図5に示した波形における電流値の極大値及び極小値が得られる位置と、当該位置における電流値(リニアモータ1の推力)との組み合わせにより、スイッチ5のクリック感を客観的に表すことができる。電流値の極大値が得られる位置は、記録部30に記憶されているロッド11がスイッチ5に接触してから移動した距離(位置)と電流値との組み合わせの時系列において、電流値の増加が減少に転じたときのロッド11の位置として得られる。同様に、電流値の極小値が得られる位置は、記録部30に記憶されている時系列において、電流値の減少が増加に転じたときのロッド11の位置として得られる。
0038
なお、本実施形態の制御装置2は、スイッチ5のクリック感の特徴を示す、電流値の極大値及び極小値それぞれが得られる位置を検出してクリック感を取得する押付け状態検出部を備えてもよい。押付け状態検出部は、記録部30に記憶されている電流値の時系列において、電流値の増加が減少に転じたときのロッド11の位置と電流の極大値との組み合わせと、電流値の減少が増加に転じたときのロッド11の位置と電流の極小値との組み合わせとを検出する。押付け状態検出部は、電流の極大値とロッド11の位置との組み合わせ、及び、電流の極小値とロッド11の位置との組み合わせをクリック感情報として外部に出力する。また、押付け状態検出部は、記録部30に記憶されている時系列に代えて、リニアモータ1に流れる電流値と、位置算出部26により算出されるロッド11の位置とを用いて、クリック感情報を取得してもよい。押付け状態検出部は、リニアモータ1からの電流値と位置算出部26からの位置とを用いる場合、電流リミッタ24が目標電流値に対する上限を第2の上限電流値に切り替えた後にクリック感情報を取得してもよい。押付け状態検出部は前述の動作によりクリック感を検出する以外に他の動作によりクリック感を検出してもよく、その動作は前述の動作に限定されない。
0039
また、本実施形態の制御装置2では、速度制御部23が判定期間において速度偏差の積分を停止する構成を説明したが、位置制御部21とドライバ25との一方又は両方が同様に積分を停止させてもよい。また、本実施形態では、電流値が接触しきい値を超え、かつロッド11の移動速度が0又はほぼ0の状態が一定時間以上継続した場合に、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定する構成を説明した。しかし、電流値が接触しきい値を超え、且つロッド11の移動速度が速度しきい値以下の状態が継続した場合に、ロッド11がスイッチ5に接触したと判定してもよい。この場合、速度しきい値は、エンコーダ12の測定周期や、制御装置2の応答性に応じて定められる。
0040
また、本実施形態では、リニアモータ1を用いた構成を説明したが、可動子が回転運動するモータを用いてもよい。また、本実施形態では、リニアモータ1の可動子であるロッド11にてスイッチ5を押し付ける構成を説明したが、ロッド11の移動に連動して移動する接触部を、リニアモータ1にて移動させる対象物としてもよい。また、本実施形態では、リニアモータ装置がスイッチ5のクリック感を測定する動作例を説明したが、移動させるロッド11(可動子)が他の物体に接触したか否かの判定の後に異なる制御を行う場合にも適用できる。例えば、部品を取り付ける組み立てロボットにおいて、部品を取り付け対象に接触させ、接触が確認できた後に部品を対象にはめ込む動作に適用可能である。この場合、制御装置2は、前述の押付け状態検出部を備え、押付け状態検出部により検出される電流値の極大値及び極小値それぞれが得られる位置に基づいて、部品を対象にはめ込む動作を制御してもよい。
0041
また、上述の制御装置2は内部に、コンピュータシステムを有していてもよい。その場合、制御装置2に備えられる一部又は全部の構成要素が行う処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、各機能部の処理が行われることになる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
0042
なお、上記の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
0043
モータが移動させている物体が他の物体に接触したか否かを判定している期間に生じる偏差が判定後のモータの制御に与える影響を低減させることが不可欠な用途にも適用できる。
0044
1…リニアモータ(モータ)、2…制御装置、11…ロッド(対象物)、23…速度制御部、24…電流リミッタ(電流指令制限部)、25…ドライバ(電流制御部)、28…接触判定部、29…電流補正部
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