図面 (/)
課題
解決手段
導体と、導体の外周上に配置され、内層および外層を有する絶縁層と、を備え、内層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有する第1の樹脂組成物から形成され、外層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する第2の樹脂組成物から形成され、内層の厚さが0.215mm以上であり、内層の厚さが1に対し、外層の厚さが1.41以上であって、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有する、絶縁電線である。
概要
背景
概要
難燃性および直流安定性に優れる絶縁電線を提供する。導体と、導体の外周上に配置され、内層および外層を有する絶縁層と、を備え、内層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有する第1の樹脂組成物から形成され、外層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する第2の樹脂組成物から形成され、内層の厚さが0.215mm以上であり、内層の厚さが1に対し、外層の厚さが1.41以上であって、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有する、絶縁電線である。
目的
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、難燃性および直流安定性に優れる絶縁電線を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
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この技術が所属する分野
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請求項1
導体と、前記導体の外周上に配置され、内層および外層を有する絶縁層と、を備え、前記内層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有する第1の樹脂組成物から形成され、前記外層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する第2の樹脂組成物から形成され、前記内層の厚さが0.215mm以上であり、前記内層の厚さが1に対し、前記外層の厚さが1.41以上であって、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有する、絶縁電線。
請求項2
前記内層の厚さが0.215mm以上0.3mm以下である、請求項1に記載の絶縁電線。
請求項3
前記導体の外径が1.23mm以上5.5mm以下である、請求項1又は2に記載の絶縁電線。
請求項4
前記絶縁層の厚さが0.7mm以上0.8mm以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の絶縁電線。
請求項5
前記難燃剤が金属水酸化物である、請求項1〜4のいずれかに記載の絶縁電線。
技術分野
0001
本発明は、絶縁電線に関する。
背景技術
0002
鉄道車両や自動車の配線として用いられる絶縁電線には、電気特性だけでなく、火災時に燃えないように難燃性が求められている。そのため、絶縁電線の絶縁層には難燃剤が配合される。例えば、絶縁層の形成材料としては、ベースポリマであるポリオレフィン系樹脂に難燃剤である金属水酸化物を配合した難燃性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
先行技術
0003
特開2013−18932号公報
発明が解決しようとする課題
0005
しかしながら、従来の絶縁電線では、絶縁性や耐電圧を高くできても、十分な直流安定性を確保することが困難となっている。直流安定性とは、例えば絶縁電線を塩水に浸漬させて所定の電圧を課電したときに所定時間経過しても絶縁破壊しないことを示す。絶縁層では、難燃剤の配合により直流安定性が低くなる傾向があり、この傾向は難燃剤の配合量が増えるほど顕著となる。直流安定性を高めるために難燃剤の配合量を少なくすることも考えられるが、絶縁層に求められる高い難燃性を維持できなくなる。このように、従来の絶縁電線では、難燃性と直流安定性とを高い水準でバランスよく得ることが困難となっている。
0006
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、難燃性および直流安定性に優れる絶縁電線を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
0007
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周上に配置され、内層および外層を有する絶縁層と、を備え、
前記内層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有する第1の樹脂組成物から形成され、
前記外層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する第2の樹脂組成物から形成され、
前記内層の厚さが0.215mm以上であり、
前記内層の厚さが1に対し、前記外層の厚さが1.41以上であって、
EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、
EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有する、絶縁電線が提供される。
発明の効果
0008
本発明によれば、難燃性および直流安定性に優れる絶縁電線が得られる。
図面の簡単な説明
0009
本発明の一実施形態に係る絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。
0010
本発明者らは、上記課題について検討したところ、絶縁層において難燃性と直流安定性との両立は以下の理由から困難であることが分かった。
絶縁層には、難燃性を高めるために難燃剤が配合されるが、一般に、難燃剤は絶縁層を形成するベースポリマとの密着性が低い傾向にある。そのため、絶縁層に難燃剤を配合すると、難燃剤とベースポリマとの間に微小な隙間が形成されてしまう。絶縁層に微小な隙間が存在すると、直流安定性試験で絶縁電線を水中に浸漬させたときに、絶縁層に水が浸透しやすくなる。水の浸透により絶縁層は導電し、最終的に絶縁破壊することになる。すなわち、絶縁層に難燃剤を配合すると、絶縁層が水を取り込みやすくなるため、絶縁破壊するまでの時間が短くなり、直流安定性が低下してしまう。
0011
このように、難燃性の観点からは難燃剤の配合量を多くする必要がある一方で、直流安定性の観点からは難燃剤の配合量を少なくして水の浸透を抑制する必要があり、難燃剤の配合量を調整するだけでは、これらを両立することが困難となっている。
0012
そこで、本発明者らは、絶縁層を、単層構造ではなく、内層および外層からなる積層構造として構成することに着目し検討を行った。その結果、内層を、難燃剤を配合せずに直流安定性が高くなるように構成し、外層を、難燃剤を配合して難燃性が高くなるように構成するとともに、これらの厚さやその比率を所定の範囲とすることにより、直流安定性および難燃性を高い水準で両立できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて成されたものである。
0013
[本発明の一実施形態]
以下、本発明の一実施形態について説明する。
0014
<絶縁電線の構成>
まず、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る絶縁電線の長さ方向に垂直な断面図である。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
0015
図1に示すように、本実施形態に係る絶縁電線1は、導体11と、内層13および外層14を有する絶縁層12とを備えて構成されている。
0016
(導体)
導体11としては、通常用いられる金属線、例えば銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、金線、銀線などを用いることができる。また、金属線の外周に錫やニッケルなどの金属めっきを施したものを用いてもよい。さらに、金属線を撚り合わせた集合撚り導体を用いることもできる。導体11の外径は、1.23mm〜5.5mmが好ましい。
0017
(絶縁層)
導体11の外周には、絶縁層12が設けられている。絶縁層12は、導体11の外周を被覆する内層13および内層13の外周を被覆する外層14を有している。
0018
導体11の外周には内層13が配置されている。内層13は、後述するように、難燃剤を実質的に含まない第1の樹脂組成物から形成され、直流安定性が高くなるように構成されている。内層13は、例えば、第1の樹脂組成物を導体11の外周上に押出成形して架橋させることにより形成される。
0019
内層13の外周には外層14が配置されている。外層14は、後述するように、難燃剤を含む第2の樹脂組成物から形成されており、難燃性が高くなるように構成されている。外層14は、例えば、第2の樹脂組成物を内層13の外周上に押出成形して架橋させることにより形成される。
0020
本実施形態では、絶縁層12は、直流安定性および難燃性を両立する観点から、直流安定性に優れる内層13と難燃性に優れる外層14とがそれぞれ所定の厚さとなるように構成されている。具体的には、内層13の厚さが0.215mm以上であり、内層の厚さが1に対し、外層の厚さが1.41以上である。内層13の厚さを少なくとも0.215mmとすることにより、絶縁電線1に求められる直流安定性を得ることができる。一方、内層13は、難燃剤を含まないため、難燃性が低く、絶縁層12全体の難燃性を低下させるおそれがあるが、難燃性に優れる外層14を内層13の外周に設けるとともに、外層14の厚さを内層13の厚さに対して1.41以上の比率とすることで、絶縁層12全体の直流安定性を高く維持しつつ、難燃性を高くすることができる。
これにより、絶縁層12は、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有することになる。
0021
絶縁層12の厚さ、つまり内層13および外層14の合計の厚さは、特に限定されず、用いる導体11の外径に応じて適宜変更するとよい。例えば、導体11の外径が1.23mm〜5.5mmの場合、絶縁層12の厚さは0.7mm〜0.8mmであることが好ましい。このとき、内層13の厚さは0.215mm〜0.3mmであることが好ましく、外層14の厚さは0.4mm〜0.5mmであることが好ましい。また、内層13の厚さが1に対し、外層14の厚さが1.41以上3以下であることが好ましい。このように絶縁層12を構成することにより、難燃性と直流安定性とをより高い水準で両立することが可能となる。なお、外層14の厚さは、内層13の厚さを1としたときに1.41以上であればよく、その上限値は特に限定されない。難燃性の観点からは外層14が厚くなるほどよいが、所望の高い難燃性を維持しつつ外層14を薄くして絶縁電線1を細径化するには、外層14の厚さを内層13の厚さに対して3以下とすることが好ましい。
0022
(第1の樹脂組成物)
続いて、内層13を形成する第1の樹脂組成物について説明する。
第1の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有し、実質的に難燃剤を含有しない。難燃剤を配合しないことにより、難燃剤の配合による直流安定性の低下を抑制することができる。
0023
内層13のベースポリマとしては、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などを用いることができ、特にポリエチレン系樹脂が好ましい。ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体などを用いることができる。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
0024
(第2の樹脂組成物)
続いて、外層14を形成する第2の樹脂組成物について説明する。
外層14を構成する第2の樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する。
0025
外層14のベースポリマとしては、上述した内層13のポリオレフィン系樹脂と同様の成分を用いることができる。外層14の難燃性を向上させる観点からは、ポリオレフィン系樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAともいう)を用いることが好ましい。EVAは、分子骨格中に酢酸ビニル(以下、VAともいう)を有し、外層14が燃焼したときに、酢酸を脱離させて吸熱反応を起こすことにより燃焼を抑制することができる。
0026
EVAの中でも、示差走査熱量測定法(DSC法)により測定される融点(Tm)が70℃以上のEVAがより好ましい。EVAは、Tmが低くなるほど、VA量が多くなり、難燃性が高くなる傾向があるものの、VA量が多くなると、加熱の際に脱離する酢酸が増えることで劣化しやすくなり、耐熱性が低くなるおそれがある。Tmが70℃以上のEVAであれば、VA量が28質量%以下であって適度な範囲となるため、耐熱性を損なうことなく、所望の難燃性を得ることができる。一方、EVAのTmの上限値は、特に限定されないが、所望の難燃性を得る観点からは100℃以下であることが好ましく、95℃以下であることがより好ましく、90℃以下であることがさらに好ましい。Tmが100℃以下であるEVAによれば、VA量が6質量%以上であって、所望の難燃性を得ることができる。すなわち、Tmが70℃〜100℃のEVAによれば、外層14の難燃性とともに耐熱性を高く維持することができる。
0027
なお、外層14のベースポリマには、Tmが異なるEVAが2種以上含まれていてもよい。例えば、Tmが70℃以上のEVAが2種以上含まれてもよく、Tmが70℃未満のEVAが含まれてもよい。Tmが70℃未満であるEVAは、Tmが70℃以上であるEVAと比較してVA量が多く、28質量%以上となる。Tmが70℃未満のEVAをTmが70℃以上のEVAと併用することにより、後述するように、外層14を構成するベースポリマ中のVA量を25質量%以上50質量%以下の範囲に調整しやすくなる。
0028
Tmが70℃以上のEVAは、メルトマスフローレート(MFR)が6g/10min以上であることが好ましい。このようなEVAを用いることにより、第2の樹脂組成物を溶融させたときの流動性を高め、押出により外層14を形成するときの生産性を向上させることができる。なお、EVAを2種以上用いる場合、これらのうちの少なくとも1種のMFRが6g/10min以上であるとよい。
0029
また、外層14を構成するベースポリマには、上述したTmが70℃以上のEVAとともに、酸変性ポリオレフィン系樹脂を併用することが好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂が不飽和カルボン酸やその誘導体により変性されたものである。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、EVAと難燃剤との密着性を高め、EVAと難燃剤との界面での隙間の形成を抑制する。これにより、外層14での吸水を低減し、難燃剤の配合による直流安定性の低下を抑制することができる。
0030
酸変性ポリオレフィン系樹脂において、ポリオレフィン系樹脂としては、上述したものが挙げられる。変性させる酸成分としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。これらの酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
0031
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−55℃以下であることが好ましい。Tgが−55℃以下の酸変性ポリオレフィン系樹脂によれば、ベースポリマのTgを低くし、外層14が低温環境下に曝されたときに割れてしまうことを抑制できる。すなわち、外層14の耐寒性を向上できる。
0032
外層14を形成する第2の樹脂組成物において、下記式(1)により算出されるベースポリマ中のVA量が25質量%〜50質量%であることが好ましく、25質量%〜46質量%がより好ましく、25質量%〜35質量%であることがさらに好ましい。ベースポリマ中のVA量が25質量%未満となると、外層14の難燃性が不十分となるおそれがある。一方、VA量が50質量%を超えると、ベースポリマが高温に加熱されたときにEVAから脱離する酢酸の量が増加するので、ベースポリマに含まれるEVAが劣化しやすくなり、外層14の耐熱性が低くなるおそれがある。
(式(1)中、Xkは、ある種類kのEVAのVA量(質量%)を、Ykは、ある種類kのEVAがベースポリマ全体に占める割合を、そしてkは自然数を、それぞれ示す。)
0033
ベースポリマ中のVA量は、VAを有するEVAと、酸変性ポリオレフィン系樹脂との比率(質量比)によって適宜変更することができる。その比率は、ベースポリマ中のVA量が25質量%以上50質量%以下となるような比率であればよい。好ましくは、EVAと酸変性ポリオレフィン系樹脂との比率は70:30〜99:1である。つまり、ベースポリマに対して、EVAの含有量が70質量%以上99質量%以下であり、酸変性ポリオレフィン系樹脂の含有量が1質量%以上30質量%以下である。
0034
なお、ベースポリマは、EVAおよび酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有することが好ましいが、第2の樹脂組生物の特性を損ねない範囲で、EVAおよび酸変性ポリオレフィン系樹脂以外の他のポリマを含有してもよい。この場合、EVAおよび酸変性ポリオレフィン系樹脂の合計の含有量が、ベースポリマに対して、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。
0035
外層14を形成する第2の樹脂組成物には、難燃剤が配合される。難燃剤としては、有毒ガスを発生させないことからノンハロゲン難燃剤が好ましく、例えば金属水酸化物を用いることができる。金属水酸化物は、外層14が加熱されて燃焼されるときに、分解して脱水し、放出した水分により外層14の温度を低下させ、その燃焼を抑制するものである。金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、およびこれらにニッケルが固溶した金属水酸化物を用いることができる。これらの難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
0036
難燃剤は、外層14の機械特性(引張強さと伸びとのバランス)をコントロールする観点から、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属等によって表面処理されていることが好ましい。
0037
難燃剤の配合量は、ベースポリマ100質量部に対して、100質量部以上250質量部以下であることが好ましい。配合量が100質量部未満であると、外層14の難燃性が低くなり、絶縁層12において所望の高い難燃性を得られないおそれがある。配合量が250質量部を超えると、外層14の機械特性が低下し、伸び率が低くなるおそれがある。
0038
なお、第1の樹脂組成物や第2の樹脂組成物には、必要に応じて、その他添加剤が含有されてもよい。例えば、内層13や外層14を架橋させる場合、架橋剤や架橋助剤を含有させるとよい。架橋方法としては、電子線や放射線の照射により架橋させる照射架橋法や、加熱により架橋させる化学架橋法などが挙げられる。照射架橋法の場合、第1の樹脂組成物や第2の樹脂組成物に架橋助剤を含有させるとよい。架橋助剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPT)、トリアリルイソシアヌレート(TAIC:登録商標)などを用いることができる。化学架橋法の場合、第1の樹脂組成物や第2の樹脂組成物に架橋剤を含有させるとよい。架橋剤としては、例えば、1,3−ビス(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド(DCP)などの有機過酸化物を用いることができる。
0039
また、その他の添加剤としては、架橋剤以外に、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、無機充填剤、相溶化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤などが含有されてもよい。これらは、第1の樹脂組成物や第2の樹脂組成物の特性を損なわない範囲で含有させることができる。
0040
なお、第1の樹脂組成物や第2の樹脂組成物は、それぞれ所定の成分を混合して加熱しながら混練することにより得られる。混錬条件や各成分の添加順序は、特に限定されない。また、混練は、ミキシングロール、バンバリーミキサー、単軸または2軸押出機などを用いて行うことができる。
0041
<絶縁電線の製造方法>
次に、上述した絶縁電線1の製造方法について説明する。
0042
まず、ベースポリマとして例えば低密度ポリエチレンと架橋剤とを混練することにより内層13を形成する第1の樹脂組成物を調製する。その方法は公知の手段を用いることができ、例えば、予めヘンシェルミキサー等の高速混合装置を用いてブレンドした後、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等の公知の混練機を用いて混練することにより、第1の樹脂組成物を得る。
0043
また、第1の樹脂組成物と同様に、外層14を形成する第2の樹脂組成物を調製する。例えば、EVAおよび酸変性ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマと、金属水酸化物と、架橋剤とを混練することにより外層14を形成する第2の樹脂組成物を調製する。
0044
続いて、押出機を用いて、導体11の外周上に、第1の樹脂組成物を所定の厚さで押し出して、内層13を形成する。さらに、内層13の外周上に、第2の樹脂組成物を所定の厚さで押し出して、外層14を形成する。その後、例えば、内層13および外層14を架橋させることにより、本実施形態の絶縁電線1を得る。なお、内層13および外層14は、第1および第2のノンハロゲン樹脂組成物を同時に押出して形成してもよい。
0045
[本発明の実施形態に係る効果]
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
0046
本実施形態の絶縁電線1は、実質的に難燃剤を含まない第1の樹脂組成物から形成される内層13および難燃剤を含む第2の樹脂組成物から形成される外層14を有する絶縁層12を備え、内層13の厚さが0.215mm以上であり、内層13の厚さを1としたときに、外層14の厚さが1.41以上となるように構成されている。内層13は、難燃剤を含まないので、難燃性は低いものの、難燃剤の含有による直流安定性の低下がなく、直流安定性に優れている。一方、外層14は、難燃剤を含んでいるので、難燃剤を含まない内層13と比べて直流安定性が低くなるものの、難燃性には優れている。本実施形態では、内層13および外層14をそれぞれ所定の厚さとすることにより、絶縁層12において、直流安定性を高く維持しつつ、難燃性を高くすることができる。
具体的には、絶縁層12は、EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、塩水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有することになる。
0047
本実施形態によれば、例えば、外径が1.23mm〜5.5mmの導体11の外周に、厚さが0.215mm〜0.3mmの内層13と厚さが0.4mm〜0.5mmの外層14とを、内層13の厚さを1としたときに、外層14の厚さが1.41〜3となるように、かつ、絶縁層12の厚さが0.7mm〜0.8mmとなるように積層することにより、絶縁電線1において直流安定性と難燃性とをより高い水準で両立することが可能となる。
0048
本実施形態において、外層14を形成する第2の樹脂組成物が、DSC法による融点が70℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)および酸変性ポリオレフィン系樹脂を含み、EVAに由来する酢酸ビニル含量(VA量)が25質量%以上50質量%以下であるベースポリマと、難燃剤と、を含有することが好ましい。
EVAは、酢酸ビニル(VA)を含み、難燃性に優れるポリマであるが、VA量が過度に多くなると、外層14の耐熱性を低下させるおそれがある。この点、本実施形態では、融点が70℃以上であって、適度なVA量となるEVAを用いることにより、難燃性および耐熱性を両立することができる。
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、EVAと難燃剤との密着性を高め、EVAと難燃剤との界面での隙間の形成を抑制して、外層14での吸水を低減し、難燃剤の配合による直流安定性の低下を抑制することができる。
このように、外層14を形成する第2の樹脂組成物において、所定のEVAと酸変性ポリオレフィン系樹脂とをVA量が25質量%〜50質量%となるように用いることで、絶縁層12において直流安定性および難燃性を高い水準で両立できるとともに、耐熱性を高く維持することができる。
0049
次に、本発明について実施例に基づき、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
0050
本実施例では、内層および外層を形成する原料として、以下の成分を用いた。
・直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(株式会社プライムポリマー製「エボリューSP1510」)
・EVA(1)(TM:89℃、MFR:15g/10min、VA量:14質量%):三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV550X」
・EVA(2)(TM:70℃未満、MFR:100g/10min、VA量:46質量%):三井・デュポン ポリケミカル株式会社製「エバフレックスEV45X」
・酸変性ポリオレフィン(TM:70℃、Tgi−55℃以下):三井化学株式会社製「タフマーMA8510」
・水酸化マグネシウム:神島化学工業株式会社製「マグシースS4」
・トリメチロールプロパントアクリレート(架橋助剤):新中村化学工業株式会社製「TMPT」
0051
<絶縁電線の作製>
まず、内層および外層を形成する樹脂組成物を調製した。
本実施例では、内層の形成材料(第1の樹脂組成物)として、LLDPEを用いた。
また、EVA(1)を20質量部と、EVA(2)を50質量部と、酸変性ポリオレフィンを30質量部と、水酸化マグネシウムを100質量部と、架橋助剤を4質量部と、を混合して混練することにより、外層の形成材料である第2の樹脂組成物を調製した。なお、第2の樹脂組成物は、ベースポリマ中のVA量が25.8質量%であった。
0052
続いて、調製した第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物を導体の外周に押出成形して内層および外層を形成し、絶縁電線を作製した。
具体的には、導体として、外径が0.18mmの素線を37本撚り合わせた、外径1.23mmの撚り導体を準備した。続いて、この外周上に、第1の樹脂組成物および第2の樹脂組成物をそれぞれ所定の厚さで同時に押し出し、これらに電子線を照射して架橋させることにより、内層および外層を形成した。実施例1〜16および比較例1〜4では、内層や外層の厚さ、そして厚さの比率を下記表1,表2に示すように適宜変更して、絶縁電線を作製した。なお、表1,2では、内層および外層の厚さは、絶縁電線の長さ方向における最小値とした。
0053
0054
0055
<絶縁電線の評価>
作製した絶縁電線を以下に示す方法により評価した。
0056
(直流安定性)
絶縁電線の直流安定性は、EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験により評価した。具体的には、作製した絶縁電線として、3つのサンプルを準備し、この3つのサンプルを塩水に浸漬させ、直流電圧として+1500Vおよび−1500Vを課電し、10日以上経過しても3本とも絶縁破壊しない場合を直流安定性に優れているとして合格「○」、10日未満で1本でも絶縁破壊したら直流安定性が低いものとして不合格「×」と評価した。
0057
(難燃性)
難燃性は、EN45545−2に準拠した難燃性試験により評価した。具体的には、作製した長さ約60cmの絶縁電線に対し、上側固定部より475mmの位置に角度45°でバーナーの炎を1分間あてた後、上側固定部と炭化上部端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満であれば、難燃性に優れるものとして合格「○」、そうでなければ難燃性に劣るものとして不合格「×」と評価した。
0058
<評価結果>
実施例1〜16は、いずれも、直流安定性に優れる内層の厚さを0.215mm以上とし、難燃性に優れる外層の厚さを、内層の厚さが1に対し、外層の厚さが1.41以上となるように構成しているので、内層および外層からなる絶縁層において直流安定性と難燃性とを高い水準で両立できることが確認された。
一方、比較例1〜4では、外層を所定の厚さとすることにより高い難燃性を得られるものの、内層の厚さを0.215mmよりも小さくしたため、所望の直流安定性を得られず、直流安定性と難燃性とを高い水準で両立できないことが確認された。例えば、比較例1,3では、9日目に、3本のうち1本のサンプルが絶縁破壊することが確認された。比較例2では、6,7,8日目に1本ずつ絶縁破壊し、3本のサンプル全てが絶縁破壊することが確認された。比較例4では、6,9日目に絶縁破壊し、3本全てが絶縁破壊することが確認された。
0059
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様について付記する。
0060
[付記1]
本発明の一態様によれば、
導体と、
前記導体の外周上に配置され、内層および外層を有する絶縁層と、を備え、
前記内層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマを含有する第1の樹脂組成物から形成され、
前記外層は、ポリオレフィン系樹脂を含むベースポリマおよび難燃剤を含有する第2の樹脂組成物から形成され、
前記内層の厚さが0.215mm以上であり、
前記内層の厚さが1に対し、前記外層の厚さが1.41以上であって、
EN45545−2に準拠した垂直燃焼試験において、消炎後、上側固定部と炭化部上端との距離が50mm以上、かつ上側固定部と炭化部下端との距離が540mm未満となるような難燃性と、
EN50305.6.7に準拠した直流安定性試験において、水に浸漬して240時間課電したときに絶縁破壊しないような直流安定性と、を有する、絶縁電線が提供される。
0061
[付記2]
付記1の絶縁電線において、好ましくは、
前記内層の厚さが0.215mm以上0.3mm以下である。
0062
[付記3]
付記1または2の絶縁電線において、好ましくは、
前記導体の外径が1.23mm以上5.5mm以下である。
0063
[付記4]
付記1〜3の絶縁電線において、好ましくは、
前記絶縁層の厚さが0.7mm以上0.8mm以下である。
0064
[付記5]
付記1〜4の絶縁電線において、好ましくは、
前記難燃剤が金属水酸化物である。
0065
[付記6]
付記1〜5の絶縁電線において、好ましくは、
前記外層を形成する前記第2の樹脂組成物は、前記難燃剤を前記ベースポリマ100質量部に対して100質量部以上150質量部以下含有する。
0066
[付記7]
付記1〜6の絶縁電線において、好ましくは、
前記外層を形成する前記第2の樹脂組成物が、DSC法による融点が70℃以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体および酸変性ポリオレフィン系樹脂を含み、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に由来する酢酸ビニル含量が25質量%以上50質量%以下であるベースポリマと、難燃剤と、を含有する。
0067
[付記8]
付記7の絶縁電線において、好ましくは、
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂は、ガラス転移点(Tg)が−55℃以下である。
実施例
0068
[付記9]
付記7又は8の絶縁電線において、好ましくは、
前記外層を形成する前記第2の樹脂組成物が、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体と前記酸変性ポリオレフィン系樹脂とを70:30〜99:1の比率で含む。
0069
1絶縁電線
11導体
12絶縁層
13内層
14 外層