図面 (/)

技術 岩盤掘削工法及び当該方法に使用可能な膨潤ユニット

出願人 株式会社竹中工務店
発明者 甲村雄一内田明彦
出願日 2016年3月28日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2016-063687
公開日 2017年10月5日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-179727
状態 特許登録済
技術分野 さく岩、採鉱及び採鉱機械とその方法
主要キーワード メッシュ筒 弾性円筒 体積膨張量 体積圧縮率 中継領域 給水施設 環状周辺 中央柱
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年10月5日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (18)

課題

吸水材を利用して低騒音かつ低振動岩盤掘削方法を提供する。

解決手段

岩盤に複数の縦孔掘削する工程と、 上記縦孔内に吸水により膨潤可能な環状の吸水材によって柱状の通水材の周囲を囲んでなる2重構造を有する膨潤部を構築する工程と、 上記縦孔の上部側を、排気孔及び給水孔付きの閉塞部で塞ぐ工程と、 上記給水孔を介して上記通水材へ注水する工程と、 上記通水材との境界面から吸水した吸水材が膨潤し、この膨潤圧で縦孔回りの岩盤部分割裂するように構成した。

概要

背景

岩盤掘削工事では、例えば岩盤掘削用ブレーカーを用いることが通常であり、この方法は低コストであるが、騒音振動の発生が顕著であり、掘削作業場の周辺環境に及ぼす影響が大きい。
低騒音・低振動で掘削を行う方法として、静的破砕技術が存在する。この方法は、岩盤の孔内で薬剤と水との化学反応による発熱を生じさせ、水が水蒸気に変化する際に体積膨張することを利用して、孔の周囲の岩盤部分に引っ張り破壊による亀裂を生じさせ、岩盤を掘削させるものである。
具体的には、
(1)被破砕物穿設された孔内へ、水和膨張を基本とする静的破砕剤を水と混練してなるスラリー投入し、必要により上記水和膨張を促進する生石灰を添加して、静置させ、破砕を生じさせる方法(特許文献1)、或いは、
(2)予め給水パイプを内表面に設置した孔を被破砕物に設け、治具を用いて前記孔内へ膨張性破砕剤押込み、給水パイプを用いて破砕剤に水を供給して膨潤させ、破砕を生じさせる方法(特許文献2)
が知られている。

概要

吸水材を利用して低騒音かつ低振動な岩盤掘削方法を提供する。 岩盤に複数の縦孔を掘削する工程と、 上記縦孔内に吸水により膨潤可能な環状の吸水材によって柱状の通水材の周囲を囲んでなる2重構造を有する膨潤部を構築する工程と、 上記縦孔の上部側を、排気孔及び給水孔付きの閉塞部で塞ぐ工程と、 上記給水孔を介して上記通水材へ注水する工程と、 上記通水材との境界面から吸水した吸水材が膨潤し、この膨潤圧で縦孔回りの岩盤部分を割裂するように構成した。

目的

本発明の第1の目的は、吸水材を利用して低騒音かつ低振動な岩盤掘削方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

岩盤に複数の縦孔掘削する工程と、上記縦孔内に吸水により膨潤可能な環状の吸水材によって柱状の通水材の周囲を囲んでなる2重構造を有する膨潤部を構築する工程と、上記縦孔の上部側を、排気孔及び給水孔付きの閉塞部で塞ぐ工程と、上記給水孔を介して上記通水材へ注水する工程と、上記通水材との境界面から吸水した吸水材が膨潤し、この膨潤圧で縦孔回りの岩盤部分割裂するように構成した岩盤掘削工法

請求項2

上記縦孔の下部内に、当該縦孔の底面に載置された2重構造が構築され、この2重構造の吸水材の内側から閉塞部の裏面までの空間を、流動性を有する通水材で充填したことを特徴とする、岩盤掘削工法。

請求項3

岩盤中の縦孔内へ搬入して使用するための運搬可能な膨潤ユニットであって、少なくとも高さ方向の一部に形成され、吸水により膨潤可能な環状の吸水部で柱状の通水部の周囲を囲んでなる2重構造と、上記吸水部内から起立された給水管とを具備し、上記通水部は、上記吸水部よりも体積圧縮率が小さく、かつ吸水部との境界面全体を通じて吸水部側への通水が可能な構成を有しており、通水部側からの吸水により吸水部が膨潤して、縦孔内面圧接可能に構成した膨潤ユニット。

請求項4

連結片を介して相互に連結された2重筒の下面を、当該2重筒に対して破断可能な底蓋で覆ってなる容器体を具備し、上記通水部は、2重筒の内筒内に通水材を投入することにより、吸水部は、2重筒の内筒と外筒との間に吸水材を投入することにより、それぞれ構成されたことを特徴とする、請求項3記載の膨潤ユニット。

技術分野

0001

本発明は、岩盤掘削工法及び当該方法に使用可能な膨潤ユニットに関する。

背景技術

0002

岩盤掘削工事では、例えば岩盤掘削用ブレーカーを用いることが通常であり、この方法は低コストであるが、騒音振動の発生が顕著であり、掘削作業場の周辺環境に及ぼす影響が大きい。
低騒音・低振動で掘削を行う方法として、静的破砕技術が存在する。この方法は、岩盤の孔内で薬剤と水との化学反応による発熱を生じさせ、水が水蒸気に変化する際に体積膨張することを利用して、孔の周囲の岩盤部分に引っ張り破壊による亀裂を生じさせ、岩盤を掘削させるものである。
具体的には、
(1)被破砕物穿設された孔内へ、水和膨張を基本とする静的破砕剤を水と混練してなるスラリー投入し、必要により上記水和膨張を促進する生石灰を添加して、静置させ、破砕を生じさせる方法(特許文献1)、或いは、
(2)予め給水パイプを内表面に設置した孔を被破砕物に設け、治具を用いて前記孔内へ膨張性破砕剤押込み、給水パイプを用いて破砕剤に水を供給して膨潤させ、破砕を生じさせる方法(特許文献2)
が知られている。

0003

特公平2−059258
実開昭64−047895

先行技術

0004

膨潤性止水剤膨潤圧特性」、稲積真哉、若月正、加研二、小林賢勝、書籍名:「材料」Vol.61、No.1、pp.37‐40、2012年.
生分解性不織布ロングポットを使用した緑化樹」、池本省吾、次郎、木勝典、書籍名:「日本緑化工学会誌」Vol.38、No.1、pp.184‐187、2012.
微生物産生高分子を利用した生分解性吸水性ポリマー納豆菌のγ-グルタミン酸架橋体自重の5,000倍の吸水率を持つ」、原敏夫、書籍名:「化学生物」、Vol.39、No.1、pp.8‐9、2001.

発明が解決しようとする課題

0005

上述の静的破砕技術は、静的破砕剤が高価であるために、ブレーカーによる掘削に比べて単位容積当たりの掘削単価が非常に高くなるので、規模の大きい掘削現場では採用しにくいという問題がある。実際にこの方法の実施例は少ない。
また静的破砕では孔内に発生する内圧が300kg/cm2以上と大きい。このために、例えば孔の上部から地上へ薬剤が噴出する現象が起こるという不都合があり、安全対策上の問題を生ずる。

0006

特許出願人は、この問題を鋭意検討し、吸水材膨潤作用を利用して岩盤を割裂させるという着想を得た。
すなわち、孔内に充填された吸水材が外部からの給水により膨潤し、その膨潤圧により孔回りの岩盤部分を割裂させるのである。
しかしながら、この場合に孔内に充填された吸水材に対してどのように給水するかという課題が存在する。特許出願人の実験では、図12に示すように単純に吸水材内へ突入させた給水パイプを介して給水すると、給水量が僅か数ccで水の流れがストップし、吸水材全体に水が行き渡らないことが判った。これは、給水パイプの出口付近の吸水材がジェル化して塊Luを生じ、これが給水パイプの蓋として作用するためである。これでは岩盤の割裂に必要な膨潤圧が得られない。

0007

本発明の第1の目的は、吸水材を利用して低騒音かつ低振動な岩盤掘削方法を提供することである。
本発明の第2の目的は、上記岩盤掘削方法を簡単に実行可能とする膨潤ユニットを提供することである。

課題を解決するための手段

0008

第1の手段は、岩盤掘削工法であり、
岩盤に複数の縦孔を掘削する工程と、
上記縦孔内に吸水により膨潤可能な環状の吸水材によって柱状の通水材の周囲を囲んでなる2重構造を有する膨潤部を構築する工程と、
上記縦孔の上部側を、排気孔及び給水孔付きの閉塞部で塞ぐ工程と、
上記給水孔を介して上記通水材へ注水する工程と、
上記通水材との境界面から吸水した吸水材が膨潤し、この膨潤圧で縦孔回りの岩盤部分を割裂するように構成している。

0009

本手段は、岩盤掘削工法を提案している。この工法は、簡単に言えば、岩盤Gに縦孔2を穿設し、その縦孔内に、膨潤部6を含む、破砕のための仕組みを作り、膨潤部6に給水することであり、その膨潤圧により縦孔2回りの岩盤部分を割裂させる。
本手段の発明は、岩盤を掘削する方法であるが、その実施のために、破砕のための仕組み(以下「破砕機構」という)を利用する。この破砕機構4は、少なくとも膨潤部6及び閉塞部10を含み、膨潤部6が環状の吸水材Aによって柱状の通水材Cの周囲が囲まれてなる2重構造を有し、通水材Cへ注水するように構成されている。
すなわち、2重構造の通水材Cを経由して環状の吸水材Aへ水が到達するようにすることで、吸水材Aに満遍なく水が行き渡るのである。

0010

「吸水材」は、吸水により膨潤する性能を有する材料であり、例えば吸水ポリマーを用いることができる。
「通水材」は、通水可能であり、少なくとも吸水材よりも圧縮させにくい(体積圧縮率が小さい)ものを用いる。そうでないと、吸水材の膨潤圧が岩盤に十分に伝わらないからである。通水材は例えば砂とすることができる。
吸水材の形状を“環状”といい、通水材の形状を“柱状”というのは、2重構造に占めるそれらの形状という意味であり、吸水材・通水材の一般的な形状という意味ではない。吸水材及び通水材は、流動性を有する不定形の材料であってもよい。
「2重構造」とは、縦孔の径方向から見て吸水材と通水材とが重なっているという意味である。この2重構造は縦孔の縦方向の一部に形成されていれば足りる。

0011

第2の手段は、第1の手段を有し、
上記縦孔の下部内に、当該縦孔の底面に載置された2重構造が構築され、この2重構造の吸水材の内側から閉塞部の裏面までの空間を、流動性を有する通水材で充填している。

0012

本手段では、図1に示す如く2重構造の環状の吸水材Aを縦孔2の底面に載置しており、吸水材Aの内部及び吸水材Aの上面と閉塞部の下面との間隙に、流動性を有する通水材Cを充填している。
この構成では、環状の吸水材Aの上端は、流動性の通水材に接しているので自由端であり、他方、通水材Cの下端は縦孔2の底面に接しているので、固定端となる。
この吸水材Aが吸水し、膨潤すると、吸水材Aの自由端側は縦孔2の内面に対して可動だから、応力が周囲へ逃げる余地があり(図5参照)、相対的に吸水材Aの固定端側に応力が集中する。

0013

第3の手段は、岩盤中の縦孔内へ搬入して使用するための運搬可能な膨潤ユニットであって、
少なくとも高さ方向の一部に形成され、吸水により膨潤可能な環状の吸水部で柱状の通水部の周囲を囲んでなる2重構造と、
上記吸水部内から起立された給水管とを具備し、
上記通水部は、上記吸水部よりも体積圧縮率が小さく、かつ吸水部との境界面全体を通じて吸水部側への通水が可能な構成を有しており、
通水部側からの吸水により吸水部が膨潤して、縦孔内面を圧接可能に構成している。

0014

本手段は、図7図9に示すように、岩盤G中の縦孔内へ設置するための膨潤ユニット20を提案している。この膨潤ユニット20は、運搬可能であり、本明細書に記載された岩盤掘削工法の実施のために使用する。
この岩盤掘削工法において、上記膨潤部の構築は、少なくとも吸水材と通水材とを予め一定的に結合してなる膨潤ユニットを、上記縦孔の下部内に設置することにより行われる。搬送可能な膨潤ユニット20を縦孔2内に設置するから、作業が簡単である。

0015

第4の手段は、第3の手段を有し、
連結片を介して相互に連結された2重筒の下面を、当該2重筒に対して破断可能な底蓋で覆ってなる容器体を具備し、
上記通水部は、2重筒の内筒内に通水材を投入することにより、吸水部は、2重筒の内筒と外筒との間に吸水材を投入することにより、それぞれ構成されている。

0016

本手段は、膨潤ユニット20の好適な態様を示している。この態様では、膨潤ユニット20は、連結片28を介して相互に連結された2重筒の下面を、当該2重筒に対して破断可能な底蓋で覆ってなる容器体を具備し、
上記通水部は、2重筒の内筒内に通水材Cを投入することにより、吸水部は、2重筒の内筒と外筒との間に吸水材を投入することにより、それぞれ構成されている。

発明の効果

0017

第1の手段に係る発明によれば、吸水材の吸水による膨潤作用により岩盤を割裂するから、低騒音・低振動で岩盤を割裂できる。
第2の手段に係る発明によれば、2重構造の吸水材の下端は、縦孔の底面に固定された固定端であり、他方、吸水材の上端は、流動性を有する通水材に接しており、土圧に抗して変位可能な自由端であるので、縦孔の下端に応力が集中して、亀裂を発生させ易い。
第3の手段に係る発明によれば、膨潤ユニットは運搬可能であり、外部から縦孔内へ持込み可能なので、便利である。
第4の手段に係る発明によれば、容器体のうち2重筒は底蓋から引き抜いて回収するので、再使用が可能であり、経済的である。

図面の簡単な説明

0018

本発明の岩盤掘削工法の態様において縦孔内に構築される破砕機構の縦断面図である。
図1の破砕機構のII−II方向の断面図である。
本発明の岩盤掘削工法の工程を示す図であり、同図(A)は岩盤に縦孔を掘削する工程を、同図(B)は縦孔内に膨潤部及び中間部を構築する工程を、同図(C)は縦孔の上部を閉塞部で閉塞する工程を、同図(D)は膨潤部に注水して岩盤を割裂させる工程を、同図(E)は割裂させた岩盤部分を取り除く工程をそれぞれ示している。
図3(D)の注水工程を示す平面図である。
図3(D)の注水工程を示す垂直断面図である。
図3(D)の注水工程での図下方が掘削面E側となる縦孔周りの岩盤の割裂状態を示す横断面図である。
本発明の膨潤ユニットの態様の構成を示しており、同図(A)は膨潤ユニットの縦断面図を、同図(B)は横断面図をそれぞれ示している。
図7の膨潤ユニットを縦孔内に設置した状態を示している。
図8に示す膨潤ユニットの底蓋から筒状本体を引き抜いた様子を示している。
図7の膨潤ユニットの好適な実施例を示しており、同図(A)は、膨潤ユニットの平面図、同図(B)は縦断面図である。
吸水材に対する水の滴下時間膨潤圧力との関係を示す図である。
本発明の比較例として、吸水材のみで構成した膨潤部の作用説明図である。
本発明の実施例(実験例)の構成を示す図であり、同図(A)は膨潤ユニットの平面図を、同図(B)は膨潤ユニットの縦断面図である。
同実施例への厚肉理論を適用するための説明図である。
本発明の2重構造の膨潤部を設計する前提として、単一構造の膨潤部に対して行った実験の説明図であり、同図(A)は膨潤部入り容器に給水パイプを入れる前の状態を、同図(B)は容器に給水パイプを入れた状態を、同図(C)は給水パイプを介して注水を行った状態をそれぞれ示している。
図13の実験に先立って吸水ポリマーと砂との混合比毎の膨潤量を確認するために行った実験の構成例を示す図である。
図16に示した試験を行った結果である。

発明を実施するための最良の形態

0019

図1から図6は、本発明の第1実施形態に係る岩盤掘削工法を示している。この工法は、岩盤に縦孔を穿設して、この縦孔内に岩盤の破砕機構4を構築することを伴う。説明の都合上、この破砕機構4の構造をまず解説する。

0020

破砕機構4は、膨潤部6と中間部8と閉塞部10とで構成されている。

0021

膨潤部6は、通水材Cで構成された中央柱状のコア部6aと、吸水材Aで構成された環状周辺部6bとからなる2重構造を有し、当該コア部6a内に後述の給水パイプ16を挿入している。
上記2重構造という言葉は、膨潤部6の径方向から見て、二材の部分が重なっており、給水パイプからコア部(通水材)を経由して環状周辺部(吸水材)へ水が供給されるように構成されているという意味である。
2重構造とする理由は、コア部6a及び環状周辺部6bの境界面Sを介して広い面積より水を供給することにより、全ての吸水材が膨潤するようにして岩盤の割裂を確実とするためである。
コア部6a及び環状周辺部6bは、同心状であることが望ましい。全ての吸水材に均等に水を供給するためである。

0022

上記コア部6aは、環状周辺部6bの吸水材Aへ水を供給するための中継領域である。通水材Cとして必要である性質は、通水性がよいこと、及び、非圧縮性であること(少なくとも吸水材に比べて体積圧縮率が小さいこと)である。さらに安価な材料、流動性の材料であれば好適である。経済的であり、かつ施工し易いからである。通水材Cの好適な一例は砂材であり、粘土以外の土も該当し得る。

0023

上記環状周辺部6bは、吸水材Aが吸水して膨潤することで、その膨潤圧により周囲の岩盤部分を割裂させる役割を有する。
一般に岩盤は一定量を変形させるために大きな力が必要だから、割裂を生じさせるために必要な膨潤圧は大きいが、膨潤幅は小さい。本願の図面では、膨潤の程度を強調して描いており、図示したレベルで膨潤するとは限らない。
例えば花崗岩の引っ張り強度は100kg/cm2程度であるので、その程度の引っ張り強度が得られるように環状周辺部6bの幅や素材の膨潤圧を定める。これに関しては〔実施例〕の欄で説明する。
吸水材Aは、流動性のある材料、例えば粒状材料であることが好ましい。好適な素材は、吸水ポリマーである。
吸水ポリマーは、現在紙おむつ等の吸水材に用いられている安価な材料であり、その形態は、砂状粒状態である。
図11に吸水ポリマーが膨潤する際の時間−膨潤圧特性の一例を示す(出典:非特許文献1)。膨潤圧は膨潤層の厚さの影響を受けるが、24時間経過後には10MPa=100kg/cm2程度の膨潤圧が発生することが報告されている。本件特許出願人は、別途に実験を行い、吸水ポリマーの膨潤圧により岩盤を破砕することが可能であることを確認した。
吸水材の成分の100%をポリマーとする必要はなく、流動性や通水性を有する安価な補助材料(例えば砂など)を混合させるとよい。強度が大きい岩石や岩盤の場合はポリマー量を多くする必要があるが、多すぎるとコストが上昇するので、予備試験を行い岩種や風化の状態等、掘削作業現場ごとに適切なポリマー量を決定する必要がある。

0024

中間部8は、膨潤部6と閉塞部10との間に少なくとも通気性を有しかつ流動性のある充填材料を充填させて形成される。
中間部8の主たる役割は、膨潤部6よりも高い位置に水位を設定することで、膨潤部6のすべての深度で膨潤させることにある。また、閉塞部10を早強セメント打設する場合、早強セメントの成分が重力により下方に浸透する可能性がある。この浸透が膨潤部6に達しないようバリアとしての機能も有している。充填材料が通気性を有するものとし、膨潤部6への吸水量に応じて空気を後述の排気パイプ18を介して排気するという機能を担保させることが望ましい。
充填材料は、膨潤部6の通水材と同質のもの(本実施形態では砂)とすることが好ましい。

0025

閉塞部10は、縦孔2の上端部に形成される蓋であり、膨潤部6の膨潤による内圧の上昇に対抗して膨潤部6及び中間部8を封じ込めることにより、膨潤圧を効果的に周囲の岩盤部分に伝達させる機能を有する。閉塞部10は、給水孔12及び排気孔14を有している。閉塞部10は早強セメントで形成するとよい。

0026

上記給水孔12を介して外部からコア部6aの下部へ到達する給水パイプ16が設けられている。給水パイプ16は図示しない給水施設に接続されている。

0027

上記排気孔14を介して外部中間部8へ到達する排気パイプ18が設けられている。
給水パイプ16のうちコア部6a内へ挿入されるパイプ部分には長さ方向に亘って複数の出口(給水口)を設けることができる。これにより短時間にかつ確実に通水材Cを湿潤させることができる。
排気パイプ18の設置により、供給した水の分だけ排気パイプから空気を排出して膨潤部6のコア部6aを飽和させることができ、確実にコア部6aの飽和状態を継続することにより環状周辺部6bの吸水材Aに水を供給し続けることが可能になる。

0028

排気パイプ18を2重構造の膨潤部6より上の単一の砂層である中間部8に設置することで、ボーリング孔2内の水面は吸水ポリマー及び砂層の2重構造よりも上に存在することになる。このようにすることにより、排気パイプの下端面まで確実に湿潤させることができ、吸水部の深さ方向のすべての範囲に吸水できる。
また、ボーリング孔2の最上部を早強セメントで閉塞して吸水ポリマー層をボーリング孔2内に確実に固定することで、膨潤圧がボーリング孔2内に発生して岩石が破壊する。

0029

次に図3に従って本願の岩盤掘削工法の概略を説明する。詳しい設計に関しては実施例の欄で述べる。
ここでは、本発明工法ベンチ掘削(岩盤の斜面が階段状になる様に小量の掘削を行い、階段最上部の段の上に砕岩機を置き段の高さに等しい孔長で、段の鉛直面に複数孔の1列が平行になる様に穿設し、1列ずつ破砕(後述するように水の注入開始時刻は必ずしも同時でなくてもよい)していく工法の場合を説明する。
なお、本発明は建物基礎フーチングのような体積が大きいコンクリートの破砕等にも利用できる。

0030

(1)ボーリング孔を掘削する工程
図3(A)に示す如く、原位置岩盤Gに複数のボーリング孔2を一列に掘削する。
従来技術である静的破砕では、ボーリング孔の間隔(※2)の目安は50cm程度であり、本発明でもこれに準ずることができる。もっともボーリング孔の間隔を適宜変更しても構わない。ボーリングの深さDは大きいほど岩盤掘削効率がよくなるが、ボーリング間隔である50cmを上回る必要性は低い。従って、好適な一実施例として、ボーリング孔の間隔とボーリング孔の深さとを同じとすることができる。
なお、掘削部分はベンチの形状をしており、岩盤の地下水位はベンチの表面位置では少なくともベンチ下端深度まで下がっている。このため、図3および図4に示すベンチの表面EからLだけ離れたボーリング孔の掘削地点の地下水位は十分に下がっており、以下に示す工程は地下水位が十分低い状態での作業となる。
因みに、ボーリング孔内の底面にごく少量の水分が存在する場合であっても、後述するように2.5mmの範囲であれば周辺部6bの吸水ポリマーは瞬時に吸水するし、透水性の高いコア部6aは空隙中に瞬時に水を十分取り込む。よって、少量の水分が存在しても本発明の実施に支障はない。
(2)縦孔内に膨潤部を構築する工程
図3(B)に示すように、ボーリング孔2に下部に、通水材Cで形成されるコア部6a及び吸水材Aで形成される環状周辺部6bからなる膨潤部6を構築する。
前述の通り、通水材Cは砂とし、吸水材Aは粒状の吸水ポリマーとすることが好適であり、この場合には、例えば予めボーリング孔2の下部内に円筒状の仕切りを配置して、まず仕切りとボーリング孔の内面との間に吸水材Aを充填し、次に仕切り内に砂を充填し、最後に仕切りを上方へ引き抜くという手順でも膨潤部6を構築することができる。
より簡便な手順に関しては第2実施形態で述べる。
膨潤部6の環状周辺部6bの高さdは、ボーリング孔の深さDに対してd>D/√3とすることが好適である。
(3)縦孔内に中間部8を構築する工程
図3(B)に示すように、縦孔2内の膨潤部6より上側の部分に中間部8を構築する。この中間部8が膨潤部6のコア部6aと同種材料(例えば砂)で形成されるときには、コア部6aへの充填作業と続けて膨潤部6の上にも同じ材料を充填し続ければよい。
(4)上記縦孔の上端部側を閉塞部で塞ぐ工程
図3(C)に示すようにボーリング孔2の上端部を塞ぐ閉塞部10が設けられる。この閉塞部10は給水孔12及び排気孔14を有する。
閉塞部10は早強セメントで形成することができる。
閉塞部10の給水孔12には、膨潤部6のコア部6aまで到達する給水パイプ16が、また閉塞部10の排気孔14には中間部8まで到達する排気パイプ18が、それぞれ挿通される。
具体的な施工手順としては、まず供給パイプ16及び排気パイプ18を砂層中に所定深さまで挿入した後に、ボーリング孔2の上端部内に早強セメントを打設し、硬化させればよい。
(5)給水孔を介して上記通水材へ注水する工程
図3(D)に示す如く、外部の給水設備(図示せず)から給水パイプ16を介して膨潤部6のコア部6aへ水が給水される。
図4及び図5に、給水工程を平面図及び縦断面図で示す。
給水は、少なくともコア部6aの砂が飽和するまで行うことが望ましく、さらに水の一部が中間部8の下部に達するまで充填させることが好適である。
コア部6aの砂を飽和させた水は、環状周辺部6bとの境界面Sを介して環状周辺部6bの給水材に到達する。境界面は、給水パイプの開口部より面積が広いから、前述の通り給水パイプを直接吸水ポリマーへ挿入した場合のようにパイプ開口部付近に局部的に膨潤したポリマーの塊が形成されるような不都合を生じにくく、吸水材のほぼ全体に水が行き渡る。
これにより吸水材Aが十分に膨潤し、十分な膨潤圧が得られる。図5に吸水材Aが膨張する様子が想像線で描かれているが、これは膨張の程度を誇張して描いている。吸水材Aは縦方向にも膨張しようとするが、ボーリング孔2の上端を閉塞部で密閉しているため、上方向への膨張圧がそのまま外部へ逃げることはない。
この膨潤圧がボーリング孔2の回りの岩盤部分に伝わり、ボーリング孔列の隣り合う孔同士の間に亀裂Fが入ると同時にボーリング孔下端付近からベンチ表面までの間に亀裂Hが発生する。
これら亀裂FおよびHにより掘削面Eまでの岩盤部分G1は亀裂により周囲の岩盤からブロック状に分割されているため、小型のブレーカー50やバックホー等で容易に移動し岩盤から除去できる。小型のブレーカー等を用いることができるので、振動や騒音が抑えられる。
吸水材Aの上端は自由端であるが、下端はボーリング孔2の底面に当接した固定端であり、よってボーリング孔2の隅部3に応力が集中する。これにより、効率的に岩盤を割裂されることができる。

0031

以下、本発明の他の実施形態を説明する。これらの説明において、第1実施形態と同じ構成に関しては、解説を省略する。

0032

図7から図10は、本発明の第2実施形態である膨潤ユニット20を示している。

0033

この膨潤ユニット20は、第1実施形態の岩盤掘削工法において、現場で一から膨潤部6を構築する代わりに、ボーリング孔2内に設置され、膨潤部6の形成に使用されるものである。

0034

膨潤ユニット20は、少なくとも筒状本体22と底蓋30とを具備する運搬可能な容器体として形成される。
筒状本体22は、縦向きの内筒24と外筒26とを垂直板状連結板28で連結してなる。内筒24及び外筒26の各下端面は面一に形成することが望ましい。上記外筒26の外径は、ボーリング孔2の孔径よりやや小さくなるように設計する。
底蓋30は、上記内筒24及び外筒26の下端面に剥離可能に取り付けられている。この底蓋30は、例えばアルミホイールなどで形成することができる。
上記内筒24内には砂などの通水材Cが、内筒24と外筒26との間隙内には吸水ポリマーなどの吸水材Aがそれぞれ充填されており、第1実施形態でいう2重構造を構成されている。

0035

使用するときには、膨潤ユニット20をボーリング孔2の下部内に設置し、通水材部に円筒形の治具Jを設置し(図9参照)、治具を介して通水材部に鉛直下向きの力を作用させた状態で筒状本体22を上方へ引っ張ると、筒状本体22が底蓋30から分離して引き上げられ、吸水材A及び通水材Cは底蓋30とともに縦孔2の底部に残り、第1実施形態の膨潤部6が形成される。なお、底蓋自体の強度が底蓋と筒状本体との接着強度を上回るようにすることで、底蓋の分離は好適に実施できる。

0036

好適な一実施例として、図示例では、内筒24内の通水材Cを、内筒24と外筒26との間の吸水材Aより所定の高さ分だけ高く充填しておき、上記筒状本体22を引き抜いたときに、所定の高さ分の通水材Cが通水材Cの上に崩落するようにしている。これにより、膨潤部6だけでなく中間部8まで同時に形成することができるので、特に好適である。しかしながら、通水材Cと吸水材Aとが同じ高さに充填された構成も、本発明の膨潤ユニット20の技術的範囲に含まれる。
さらに図示例では、筒状本体22内の通水材中に、コア部相当深さまで給水パイプ16の下部を、また中間部8相当深さまで排気パイプ18の下部をそれぞれ挿入している。この構成の場合には、この膨潤ユニット20をボーリング孔2の下部にセットして、好ましくは給水パイプ18の上部及び排気パイプ18の上部を、各パイプが倒れないように、図示しない支持手段で支持しておき、そして筒状本体22を上方へ引き抜くと、閉塞部10のセメント部分を除く破砕機構4の構成全部が一度に完成する。この後は、ボーリング孔2の上端部に早強セメントを打設し、硬化させれば、破砕機構4の構築が完了するので、便利である。

0037

前記以外の構成で運搬可能な膨潤ユニットとしては、例えば内筒の略全体を通水可能なメッシュ筒とし、また外筒全体を膨張可能な弾性筒壁としておき、内筒内の通水材へ給水した水がメッシュ筒を通って吸水材に吸収され、その膨潤圧が外筒を介して周囲の岩盤部分を圧接するようにすることも考えられる。
弾性円筒は、例えば非特許文献2に示すような生分解性不織布とすることができる。これにより、岩盤破壊後に膨潤ユニットを回収する必要がなくなる。
図10は、不織布を用いた膨潤ユニットの一例を示している。この膨潤ユニットは内筒24と外筒26と底蓋30とを不織布で形成している。すなわち2重筒状の不織布で区画されたコア部6aと周辺部6bとの二重構造とし、不織布である底蓋30を用いて底面を塞いでいる。膨潤ユニットの頂部はシール部24aで封印されている。具体的には、不織布(内筒24)と不織布(外筒26)との間に吸水ポリマーを挿入した後に、内筒24の上端から延出された筒状のシール部24aを外筒26の内面に重ねて封着させる構成となっている。同図中、符号“K”は不織布同士の接合箇所を表している。
因みに、これら不織布の接合方法は隣り合う各辺が公知の手段により接合されることにより立体形状に形成される。公知の接合手段としては、例えば、生分解性構成要素を含む水溶性接着剤により積層又は熱接着等で行う方法、或いは、熱融着高周波融着超音波融着等の融着する方法がある。また、中間部8はユニット設置後に砂を充填して設置すればよい。さらに、吸水材も同様に非特許文献3に示すような生分解性吸水ポリマーを使用することで、岩盤破壊後に吸水ポリマーを回収する必要がなくなる。
それに対して図示例の構成では、筒状本体を引き抜いて新たに底蓋を取り付けることで再利用できるので、経済的である。

0038

〔吸水ポリマーの膨潤による破砕性能の確認〕
吸水ポリマーの膨潤により岩石を破壊させることができることを確認する目的で、図13に示す大きさの岩石供試体を用いた室内岩石破壊実験を行った。
岩石名称:花崗岩
供試体寸法:9cm(=w)×9cm(=w)×18cm(=h)
ボーリング孔半径:2cm(=r)
ボーリング深さ:15cm
ポリマー層厚さ:0.5cm(=t)
ポリマー層高さ:9cm(=m)
ポリマーの種類:CP−1(商標ケミカルテクノス社製

0039

0040

以上に述べた構造で岩石の破壊実験を行った。実験パラメータは表1に示すように、吸水ポリマー層のポリマー量であり、ポリマー層にはポリマーと砂を混合したものを充填した。ポリマーを質量比で100%、50%、25%および2%混合したものの4種類で実験を行った。これら重量比の設定根拠について次の段落で説明する。
このうち、CASE‐1およびCASE‐2では1〜2日で引張亀裂が発生し供試体が破壊した。なお、実験ではポリマー層の厚さは0.5cm、高さは9cmとしたので、ポリマー層の体積はπ×(22−1.52)×9=49cm3である。
注水から破壊までの時間は1〜2日を要する。これに対してボーリング孔への注水は作業上の時間差を生じる可能性がある。しかし、その時間差は1〜2日に対して十分小さい。よって、図3に示した複数のボーリング孔を利用してベンチ掘削を行う場合、各ボーリング孔への注水時刻は必ずしも同時刻でなくてもよい。
膨潤圧が発生するためには、この49cm3のポリマー層を飽和させる以上の水をポリマー層に供給すれば良い。実験ではボーリング孔上部を早強セメントで閉塞したため、ポリマー層の体積膨張量はほぼ0に抑えられ、その結果として膨潤圧が発生する。膨潤圧を得るために必要な水量は上述したように49cm3を飽和させる以上の量である。ポリマー層と2重構造で接する砂層の体積はπ×1.52×9=64cm3、2重構造より上の単一の砂層の高さを4cmとすると、その体積はπ×22×2=50cm3であり、ポリマー層の周囲には64+50=114cm3の砂層を飽和させる水が存在する。因みに、この114cm3は49cm3を十分に上回っている。
さらに、前述の破砕機構4を一度飽和させれば、2重構造より上の砂層に存在する50cm3の砂層の水位が低下して、水がポリマー層に移動することで十分な膨潤圧が発生する。すなわち、本発明の構造を一度飽和させれば、追加して水を供給することなく、破壊を生じさせることができる。
また、破壊時の内圧は以下のように求められる。すなわち、亀裂の発生は平面図を図13に示す正方形供試体のうち、ボーリング孔から供試体端部までの距離が最も小さい断面で発生した。
この場合、厚肉円筒理論が適用できるものと考えられる(図14参照)。厚肉円筒理論では、ボーリング孔壁に発生する接線方向の引張応力σθは次式で求められる。ここで、P:内圧である。
〔数式1〕 σθ=(P・r02)/(r12−r02)×(1+(r12/r02))
ここで、r0=2cm、r1=4.5cmであるので、
σθ=(P×22)/(4.52−22)×(1+(4.52/22))=1.49P
花崗岩の引張強度は100kg/cm2程度であるので、σθ=100kg/cm2とすると、P=100/1.49=67kg/cm2となる。図11で吸水ポリマーの膨潤圧は100kg/cm2程度は見込めることを述べたが、発明者が実施した室内岩石破壊実験でも、これに近い膨潤圧が発生していることが確かめられた。
また、本発明の構造とすることで吸水ポリマーが持つ膨潤性を利用して岩石の破壊、すなわち掘削を行えることが確かめられた。

0041

〔吸水材の厚みの設計〕
図15は、吸水材が吸水可能な厚みの範囲を確認する目的で行った事件を示している。
図15(A)に示すようにモールドにポリマー層を単一層として充填し、ポリマー表面自由面とした条件で、給水管を介して水を吸水させた。
結果を図15(C)に示す。水を供給した瞬間に給水管の水位がわずかに低下し、その後5分間にわたって給水管の水位の低下は見られなかった。給水管を取出し、給水管周辺のゲル化した範囲の直径(図15(C)に示すd)を計測したところ、14mmであった。なお、給水管の外径は9mmであるので、ポリマー層が瞬時に水を吸水する範囲は、吸水面から2.5mm(=(14‐9)/2mm)と評価できる。
図1に示す設置後の吸水材の層厚Tは、大きな値とすると吸水しないポリマー層が多く残ることになり、無駄なポリマーを配置することになり不経済となるとともに、吸水しないポリマー層のヤング率が小さいことに起因して、膨潤圧を吸収して破壊を生じない可能性がある。後述する図17の実験結果では、吸水ポリマーは2.5倍の膨潤をすることがわかっている。一方、表1に示した実験は吸水ポリマーの厚さを5mmで実験して岩石が破壊することを確かめている。これらのことから、設置後の吸水ポリマーの層厚Tは5mm×2.5倍以下の範囲、すなわち12.5mm以下であれば岩盤が破壊すると考えられる。
また、図11に示したように、吸水ポリマー層の厚さが2mm〜3mmとなれば、十分な膨潤圧が得られることがわかっている。また、上述したようにポリマー層が瞬時に水を吸収する範囲は2.5mmであった。よって、設置後のポリマー層の厚さは2mm以上が適切と考えられる。
以上のことから、設置後のポリマー層の厚さTは2mm〜12.5mmの範囲であれば好適である。

0042

〔重量比の設定根拠〕
表1に示した室内岩石模型試験の実施に先立ち、吸水ポリマーと砂とを混合したものの膨潤量を測定した(図16図17参照)。試験は、アクリル円筒に初期高さ20mmの試料を設置し、下面から吸水させて試料高さの変化を計測した。
この結果、吸水ポリマーの砂に対する質量比を増やし、50%以上とすることで、非拘束条件では試料は十分に膨潤し、体積が2.5倍((20mm+30mm)/20mm)に膨潤することがわかった。よって、表2に示した吸水ポリマーが50%および100%の条件を採用して、室内試験を行うことにした。また、試験結果の比較検討用として、25%および2%の合計4条件で室内模型試験を実施した。

0043

〔縦孔の深さと膨潤部の高さ・閉塞部の厚さとの比の設計〕
また、本発明は、図5に示すポリマー層の高さdがボーリング孔の高さDに対して、
〔数式2〕 d>D/√3
とし、かつ早強セメントによる閉塞高さp’に中間部の高さを合わせた非膨潤部の高さpが
〔数式3〕 p<D/√3
とすることを特徴としている。
以下にこの理由を説明する。
図7(a)に示すように原位置岩盤にボーリング孔を掘削し、本発明を利用してベンチ掘削を行う場合を考える。平面図を図4に、断面図を図5に示す。従来技術である静的破砕の場合、ボーリング孔の配置間隔は50cmが目安である。ボーリングの深さDは大きいほど岩盤掘削効率がよくなると考えられるが、ボーリング間隔である50cmを上回る必要性は低いと考えられる。よって、ボーリング間隔とボーリング孔の深さが等しい条件で以下に説明する。なお、本発明の実施にあたっては、必ずしもボーリング間隔とボーリング深さが等しくなくてもよい。
図4に示すようにボーリング孔周囲の岩盤について、単位厚さ1の断面に着目する。ボーリング孔内にポリマーを設置して膨潤圧wを発生させる場合、図5に示すボーリング孔下端の角部において引張の応力集中を生じる。ポリマー層の高さをdとすると、ボーリング下端角部に生じるモーメントは、
M=荷重×距離=(w×d)×(d/2)=(Wd2)/2
となる。
また、図4及び図5に示した長方形断面(岩盤部分G1に相当する部分)の断面係数Zは、単位厚さが1のためb=1、hはボーリング深さと同じDを考えているので、
Z=(bh2)/6=D2/6
となる。
角部に生じる応力σは、モーメントMを断面係数Zで除したもので近似できるから、
σ=(wd2/2)/(D2/6)=3w×(d2/D2) 〔数式3〕
となり、この荷重がボーリング下端角部に応力集中する。図14で厚肉円筒理論の説明をしたが、図14はボーリング下端角部の応力集中を考えない場合のボーリング孔周辺岩盤応力分布を説明したものである。
実際の破壊は図5に示すボーリング孔2の隅部3に応力集中を生じる。よって、〔数式3〕式から明らかなように(d2/D2)>1/3とすることで、内圧Wが岩盤の引張強度σtに等しくなった時点で、ボーリング下端角部付近で内圧wよりも大きな引張応力による局所的な破壊が発生する。一度局所的な破壊が発生すると、破壊面先端部に応力集中が生じ、結果として図6のEに示すようにベンチの自由面に平行な方向に亀裂が進展する。これと同時にベンチの自由面側の岩盤は図5二点鎖線で示すように回転の変形を生じるため、ボーリング孔下端部からベンチの自由面に向かって曲げの破壊面Hも同時に進展し、前述したように効率的な破壊が実施できる。すなわち、d>D/√3を満足すればボーリング孔上端付近にポリマー層を設けなくても掘削が実施できる。
dがD/√3よりもかなり大きな値とする場合は、応力集中が発生することには変わりはなく、かえって、ポリマーを過剰に使用することになる。
前述の特許文献では、ボーリング孔の深さ方向の大部分に薬剤を装填し、ボーリング孔表面部分を早強セメントで閉塞する構造を開示している。このように薬剤をボーリング孔のほぼ全体に充填する構造は理論的に過剰設計であり、かつ不経済である。
よって、本発明ではボーリング孔の下側にポリマーをd>D/√3となるように充填し、かつ、その上部には図4に示すようにあえてポリマーを充填せず、早強セメントによる閉塞部および単一の砂層部からなる非膨潤領域の長さpをp<D/√3の範囲でできるだけ大きくする構造としている。
これにより、既存技術に比較して効率的、かつ、経済的な岩盤掘削が可能となる。また、早強セメントによる閉塞は、本来はボーリング孔上端部を閉塞(固定)して、ポリマーによる膨潤圧を発生させることが目的である。
ボーリング孔半径を3cm、ポリマー層の厚さを0.5cm、ポリマーによって発生する内圧を100kg/cm2とすると、早強セメントによる閉塞高さp’は以下の式を満足する必要がある。ここでμは早強セメントと岩盤の付着強度であり、一般的にμ=10kg/cm2である。
μ= 早強セメントによる閉塞下端に作用する力(膨潤圧×ポリマー層断面積
÷ 早強セメントと岩盤の付着面積
=(100kg/cm2×(3cm×3cm−2.5cm×2.5cm)×3.14)÷(3cm×2×3.14×p’)
=10kg/cm2
→ p’> 4.6cm
本発明は、ボーリング孔上部に非膨潤層をp<D/√3の範囲でできるだけ大きくする構造とし、ポリマーよりも安価な早強セメントや砂により非膨潤領域を積極的に大きく設けるという目的も有しており、これにより合理的、かつ、経済的な掘削を可能としている。

0044

以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。

0045

2…縦孔(ボーリング孔) 3…隅部
4…破砕機構
6…膨張部 6a…コア部 6b…周辺部
8…中間部
10…閉塞部 12…給水孔14…排気孔
16…給水パイプ18…排気パイプ
20…膨潤ユニット22…筒状本体 24…内筒24a…シール部
26…外筒28…連結板30…底蓋
50…ブレーカー
A…吸水材C…通水材E…掘削面(ベンチの表面)
F…割れ目G…岩盤H…割れ目(亀裂・破壊面)
J…治具K…不織布の接合面 L…掘削面から孔列までの距離 Lu…塊
S…境界面 T…吸水材の層厚

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

該当するデータがありません

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

該当するデータがありません

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ