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技術 めっき製品及びその製造方法

出願人 旭化成株式会社キザイ株式会社吉野電化工業株式会社
発明者 久保田俊彦橋田岳之渡辺裕一
出願日 2016年3月31日 (4年3ヶ月経過) 出願番号 2016-070780
公開日 2017年10月5日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2017-179530
状態 未査定
技術分野 高分子成形体の処理 積層体(2) 高分子組成物 化学的被覆
主要キーワード 耐腐性 物理的密着性 鋸刃形状 表面調整後 沈殿管 樹脂層部分 工程負荷 STEM観察
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年10月5日)のものです。
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図面 (3)

課題

高いめっき層被めっき体密着強度を有し、めっき層が薄い場合でも、充分な表面外観を有する樹脂めっき製品を提供すること。

解決手段

熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂層を表面に有する被めっき体と、その上に設けられためっき層とを有するめっき製品であって、 前記熱可塑性樹脂組成物が、ゴム質重合体に少なくとも不飽和ニトリル単量体芳香族ビニル単量体とを含む単量体混合物グラフト共重合したグラフト共重合体(I)と、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を構成成分とするスチレン系共重合体(II)とを含み、前記被めっき体の表面の凹凸高低差最大値が200nm以下である、めっき製品。

概要

背景

近年、金属部品樹脂化による軽量化や、樹脂製品への意匠性付与を目的として、樹脂表面へのめっき処理が行われている。この際用いられる樹脂としては種々あるが、めっきのしやすさ、剛性感(より金属感に近い)、及び価格面より、ABS樹脂が一般的に用いられている。
ところで、これまでの一般的な樹脂成形体等へのめっきの方法としては、クロム酸混液等の溶剤によるエッチングにより樹脂成形体表面凹凸を形成した後に、中和触媒付与、無電解めっき、電気めっきを行う方法が採られている。上述したように、このエッチングの溶剤としては、三酸化クロムを主成分とするクロム酸混液が用いられている。しかしながら、このクロム酸混液に含まれる6価クロム有害物質であり、作業環境への悪影響、排水等の環境への悪影響といった問題が指摘されてきている。
このような課題に対し、例えば、特許文献1では過マンガン酸を使用したエッチング液を使用するめっき方法や、特許文献2では紫外線照射によるエッチング工程を含むめっき方法が提案されている。
エッチングの目的は、樹脂とめっき層密着強度の向上である。すなわち、クロム酸混液の強力な酸化作用等により樹脂表面に、概ね500nm程度の高低差を有する大きな凹凸を生じさせ、その上にめっき層を施すことで、凹凸による物理的密着性発現させるものである。
そのため、めっき表面外観平滑性)を向上させるためには、樹脂上にこの凹凸が出ないほどの、かなり厚いめっき層を形成させる必要があった。この厚いめっき層により、樹脂成形品表面形状のトレース性が大きく低下するとともに、工程での時間的負荷を生じさせコストの面でも不利であった。

近年、これまで金属が使用されてきていた部品へも、樹脂製のめっき製品を適用しようとする試みが行われており、微小な部品へめっきを施すことへの要望が高まっている。微小な部品ゆえに、樹脂製品の形状のトレース性が要求されてきており、市場からは、薄いめっき層でも、充分な表面外観を有するめっき製品が強く求められている。

概要

高いめっき層−被めっき体間密着強度を有し、めっき層が薄い場合でも、充分な表面外観を有する樹脂めっき製品を提供すること。熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂層を表面に有する被めっき体と、その上に設けられためっき層とを有するめっき製品であって、 前記熱可塑性樹脂組成物が、ゴム質重合体に少なくとも不飽和ニトリル単量体芳香族ビニル単量体とを含む単量体混合物グラフト共重合したグラフト共重合体(I)と、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を構成成分とするスチレン系共重合体(II)とを含み、前記被めっき体の表面の凹凸の高低差の最大値が200nm以下である、めっき製品。

目的

本発明は、高いめっき層−被めっき体間密着強度を有し、めっき層が薄い場合でも、充分な表面外観を有する樹脂めっき製品を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂層を表面に有する被めっき体と、その上に設けられためっき層とを有するめっき製品であって、前記熱可塑性樹脂組成物が、ゴム質重合体に少なくとも不飽和ニトリル単量体芳香族ビニル単量体とを含む単量体混合物グラフト共重合したグラフト共重合体(I)と、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を構成成分とするスチレン系共重合体(II)とを含み、前記被めっき体の表面の凹凸高低差最大値が200nm以下である、めっき製品。

請求項2

JISH8630に準拠した測定方法による前記めっき層と前記被めっき体との密着強度が5N/cm以上である、請求項1に記載のめっき製品。

請求項3

前記スチレン系共重合体(II)が、不飽和ニトリル単量体単位芳香族ビニル単量体単位の合計を100質量%としたときに、不飽和ニトリル単量体単位を30〜50質量%含む、請求項1又は2に記載のめっき製品。

請求項4

紫外線照射によるエッチング工程を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のめっき製品の製造方法。

技術分野

0001

本発明は、めっき製品及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

近年、金属部品樹脂化による軽量化や、樹脂製品への意匠性付与を目的として、樹脂表面へのめっき処理が行われている。この際用いられる樹脂としては種々あるが、めっきのしやすさ、剛性感(より金属感に近い)、及び価格面より、ABS樹脂が一般的に用いられている。
ところで、これまでの一般的な樹脂成形体等へのめっきの方法としては、クロム酸混液等の溶剤によるエッチングにより樹脂成形体表面凹凸を形成した後に、中和触媒付与、無電解めっき、電気めっきを行う方法が採られている。上述したように、このエッチングの溶剤としては、三酸化クロムを主成分とするクロム酸混液が用いられている。しかしながら、このクロム酸混液に含まれる6価クロム有害物質であり、作業環境への悪影響、排水等の環境への悪影響といった問題が指摘されてきている。
このような課題に対し、例えば、特許文献1では過マンガン酸を使用したエッチング液を使用するめっき方法や、特許文献2では紫外線照射によるエッチング工程を含むめっき方法が提案されている。
エッチングの目的は、樹脂とめっき層密着強度の向上である。すなわち、クロム酸混液の強力な酸化作用等により樹脂表面に、概ね500nm程度の高低差を有する大きな凹凸を生じさせ、その上にめっき層を施すことで、凹凸による物理的密着性発現させるものである。
そのため、めっき表面外観平滑性)を向上させるためには、樹脂上にこの凹凸が出ないほどの、かなり厚いめっき層を形成させる必要があった。この厚いめっき層により、樹脂成形品表面形状のトレース性が大きく低下するとともに、工程での時間的負荷を生じさせコストの面でも不利であった。

0003

近年、これまで金属が使用されてきていた部品へも、樹脂製のめっき製品を適用しようとする試みが行われており、微小な部品へめっきを施すことへの要望が高まっている。微小な部品ゆえに、樹脂製品の形状のトレース性が要求されてきており、市場からは、薄いめっき層でも、充分な表面外観を有するめっき製品が強く求められている。

先行技術

0004

WO2015/060196号
特開2015−57515号公報

発明が解決しようとする課題

0005

従来の技術における公知文献に示されたような依然として重金属エッチング剤液として使用する技術では、エッチング時間が長く工程負荷が依然として高いといった課題は解決されていない。また、紫外線照射によるエッチング技術では、特定の樹脂のみへの適用の提案であって、ABS樹脂等に適用した場合には密着強度が充分でなく、適用できないものであった。
また、いずれにおいても、めっき層の厚みを薄くすると、良好な表面外観を得られないという問題があった。
すなわち、本発明は、高いめっき層−被めっき体間密着強度を有し、めっき層が薄い場合でも、充分な表面外観を有する樹脂めっき製品を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0006

本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、めっき層に接する被めっき体の樹脂表面を高度に平滑にする、具体的には凹凸の高低差を特定の範囲にすることで、めっき層を厚くしなくても平滑な表面外観を有する樹脂めっき製品を形成することができ、しかも実用に耐え得る密着強度も実現できること、さらに、密着強度は、ABS樹脂に不飽和ニトリル単量体単位含有量の高いスチレン系共重合体を含有させた場合に高まることを見出し、本発明を完成するに至った。

0007

すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂層を表面に有する被めっき体と、その上に設けられためっき層とを有するめっき製品であって、
前記熱可塑性樹脂組成物が、ゴム質重合体に少なくとも不飽和ニトリル単量体芳香族ビニル単量体とを含む単量体混合物グラフト共重合したグラフト共重合体(I)と、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を構成成分とするスチレン系共重合体(II)とを含み、
前記被めっき体の表面の凹凸の高低差の最大値が200nm以下である、
めっき製品。
[2]JIS H8630に準拠した測定方法による前記めっき層と前記被めっき体との密着強度が5N/cm以上である、[1]に記載のめっき製品。
[3]前記スチレン系共重合体(II)が、不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計を100質量%としたときに、不飽和ニトリル単量体単位を30〜50質量%含む、[1]又は[2]に記載のめっき製品。
[4]紫外線照射によるエッチング工程を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載のめっき製品の製造方法。

発明の効果

0008

本発明によれば、めっき層を極端に厚くしなくても表面外観が良好で、かつ、高い密着強度(めっき層−樹脂層間密着強度)を有する、樹脂めっき製品を提供することができる。

図面の簡単な説明

0009

めっき製品の断面の走査透過型電子顕微鏡(STEM)写真の具体例である。
実施例6及び比較例3における被めっき体の形状を示す概略図である。

0010

以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。

0011

<被めっき体>
本実施形態のめっき製品を構成する、めっき層に接する被めっき体は、熱可塑性樹脂組成物を含む樹脂層を表面に有する。被めっき体は、その表面が樹脂で構成されていればよく、例えば、それ全体が樹脂(熱可塑性樹脂組成物を含む組成物)で形成されていてもよいし、樹脂以外のもので構成されたコア部とその表面に形成された樹脂層とから形成されていてもよい。
本実施形態においては、被めっき体の表面(前記樹脂層の表面)がきわめて平滑であり、具体的にはその凹凸の高低差の最大値が200nm以下である。この凹凸が小さい事で、めっき層を厚くすることなく良好な表面外観を与えることが可能となる。従来、被めっき体の表面には、密着強度を高めるために、エッチング処理等により比較的大きな凹凸が形成されていた。そのため、めっき層を厚くしないと良好な表面外観を達成することができなかった。しかしながら、本発明者らの研究によれば、予想外なことに、凹凸の高低差の最大値が200nm以下であっても十分な密着強度が得られることが判明した。
好ましい凹凸の高低差の最大値は、150nmであり、より好ましくは100nmであり、更により好ましくは70nmであり、最も好ましくは50nmである。平滑であればあるほど良いので、最小値は特にない。もっとも、一般的には数nmのなだらかな凹凸は有しているものである。

0012

本実施形態における、上記凹凸の高低差は、めっき製品の断面(めっき表面の接平面に垂直な断面)からFIB(Focused Ion Beam)法により作成した超薄切片を用いて、走査透過型電子顕微鏡(STEM)にてめっき層と樹脂層の界面を、1.7×2.5μmの視野で任意に撮影し、めっき層と接触する樹脂表面の最も大きい凹凸の高低差を測定することで得られる。STEMの明視野観察では、原子番号の大きい領域が暗く、原子番号の小さい領域が明るいコントラストが得られる。めっきに用いる触媒やめっき層は金属であり、炭素水素を主成分とする樹脂と比べて原子番号が大きい。これを利用して、各視野におけるコントラストの暗い層と接する明るい層の表面を、めっき層と接触する樹脂表面とみなすことができる(図1参照)。
このようにして、最も大きい凹凸の高低差を、めっき製品の断面の任意の10視野について測定し、それら10個の平均値を、本実施形態における、被めっき体の表面の凹凸の高低差の最大値とする。

0013

<熱可塑性樹脂組成物>
本実施形態において、被めっき体表面の樹脂層を構成する熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(I)と、スチレン系共重合体(II)を含む。

0014

(グラフト共重合体(I))
グラフト共重合体(I)は、ゴム質重合体に、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体とを含む単量体混合物をグラフト共重合させたグラフト共重合体である。
ゴム質重合体としては、例えば、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のものを好ましく用いることができる。
ゴム質重合体の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ポリブタジエンスチレンブタジエン共重合ゴムアクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、ポリイソプレンポリクロロプレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合ゴム、スチレン−イソプレンブロック共重合ゴムエチレンプロピレンジエン三元共重合ゴム等の共役ジエン系ゴムポリアクリル酸ブチル等のアクリル系ゴムエチレン−プロピレンゴムシリコンゴムシリコンアクリル複合ゴム、及びそれらの水素添加物等が挙げられる。
これらの中でも共役ジエン系ゴムが好ましく、特にポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。このうち、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体は、めっき製品の耐衝撃性といった強度を維持するために好ましい。

0015

また、グラフト共重合体(I)に含まれるゴム質重合体は、粒子状であることが好ましく、また熱可塑性樹脂組成物中で微分散した状態で存在することが好ましい。その数平均粒子径は、0.05μm以上0.4μm以下であることが、好ましい。より好ましいゴム質重合体の体積平均粒子径の下限としては、0.07μmであり、更に好ましくは0.10μmであり、最も好ましくは、0.15μmである。また好ましい上限は0.35μmであり、最も好ましくは0.3μmである。
上記数平均粒子径とは、被めっき体の表面の樹脂層の任意の少なくとも20μm×40μmの範囲について、透過型電子顕微鏡(TEM)により、粒子径画像解析で求めることにより算出することができる。この時、少なくとも2000個の粒子計測対象とし、長径短径がある場合は、その平均をもって、粒子径とする。また、透過型電子顕微鏡で観察するに際し、ゴム質重合体をより確認しやすくするため、樹脂層を四酸化オスミウム等の重金属で染色することが推奨される。

0016

本実施形態のゴム質重合体にグラフト共重合させることが可能な不飽和ニトリル単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びエタクリニトリル等が挙げられる。
これらの不飽和ニトリル単量体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

0017

本実施形態のゴム質重合体にグラフト共重合させることが可能な芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−エチルスチレン、p−エチルスチレン及びp−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。

0018

ゴム質重合体にグラフト共重合させることが可能な単量体混合物には、不飽和ニトリル単量体及び芳香族ビニル単量体の他に、ゴム質重合体とグラフト共重合可能なその他の単量体を含んでも良い。
このような単量体としては、以下に限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。

0019

グラフト共重合体(I)を構成するゴム質重合体の製造方法に限定はないが、例えば、塊状重合法溶液重合法懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。このうち、粒子形状のゴム成分が得られ、その粒子径の制御が容易であることから、乳化重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法が好ましく用いられる。
ゴム質重合体として、複数のTgを有する重合体を用いる場合は、異なる単量体組成のものを、多段階に分けて重合して製造することができる。乳化重合法を用い、多段重合により製造するのが好ましい。
また、ゴム質重合体が、組成勾配を有する重合体の場合、単量体組成を連続的に変化させて重合することができる。例えば、乳化重合において、いわゆるパワーフィード法を用いて製造することができる。
ゴム質重合体が、芳香族ビニル系単量体と、ジエン系ビニル単量体のブロック共重合体の場合、例えばスチレン−ブタジエンブロック共重合体の場合は、溶液中でリビングアニオン重合により、製造することができる。

0020

また、グラフト成分を含むグラフト共重合体(I)を製造する方法(ゴム質重合体に単量体混合物をグラフト重合させる方法)にも限定はなく、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状懸濁重合法、乳化重合等の方法が使用できる。なお、粒子状のゴム質重合体を製造した後、同一の反応器で連続的にグラフト重合を行っても良いし、ゴム質重合体粒子を一旦ラテックスとして単離したのち、改めてグラフト重合を行っても良い。また、ラジカル開始剤を使用する場合、ペルオキソ二硫酸塩、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の開始剤を使うことができる。
このうち、乳化重合にて製造する際には、熱によりラジカルを発生する熱分解型の開始剤や、レドックス型の開始剤を用いることができる。乳化重合法では、例えば別途乳化重合で得たゴム質重合体を使用し、さらに不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を含む単量体混合物を乳化重合させる方法等を用いることができる。ここで得られたグラフト部分は、スチレン系共重合体(II)と相溶するものであると耐衝撃性の点で好ましい。
また、溶液重合法を使用する場合は、ジエン単量体をリビングアニオン重合して無架橋のゴム質重合体を得た後、これと芳香族ビニル単量体と不飽和ニトリル単量体を溶かし合わせて重合を行うことにより、ゴム成分と高Tgの樹脂成分の複合体を析出させて得る方法等を用いることができる。

0021

グラフト共重合体(I)において、グラフト共重合している不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体の合計量100質量%に対する、不飽和ニトリル単量体の割合は20〜50質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、25質量%であり、更に好ましくは28質量%であり、更により好ましくは30質量%であり、最も好ましくは32質量%である。また、より好ましい上限は、45質量%であり、更に好ましくは42質量%であり、最も好ましくは40質量%である。めっき層との密着性を高めるためには、20質量%以上であることが好ましく、成形体色目の悪化を抑制するために、50質量%以下であることが好ましい。

0022

グラフト共重合体(I)として最も好ましい態様の一例としては、ポリブタジエンをゴム質重合体として用い、該ポリブタジエンに不飽和ニトリル単量体としてアクリロニトリルが、芳香族ビニル単量体としてスチレンがグラフト共重合した共重合体が挙げられる。

0023

本実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(I)やそれに含まれるゴム質重合体の含有量に特に制限はないが、ゴム質重合体の含有量が1〜30質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがより好ましい。めっき層との密着強度を高く保つためには、ゴム質重合体の含有量は、1質量%以上であることが望ましく、めっき製品の表面外観悪化を抑制するためには30質量%以下であることが好ましい。
なお、本発明でいうゴム質重合体の含有量はフーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いた成分解析によって求めることができる。具体的には、濃度既知のゴム質重合体を含有する複数サンプル(熱可塑性樹脂組成物)のピーク値を用いて作成された検量線を使用して、その含有量を求めることによって算出することができる。

0024

(スチレン系共重合体(II))
スチレン系共重合体(II)は、少なくとも不飽和ニトリル単量体と芳香族ビニル単量体を構成成分とするスチレン系共重合体である。
スチレン系共重合体(II)を構成する不飽和ニトリル単量体及び芳香族ビニル単量体としては、各々、グラフト共重合体(I)に含まれる不飽和ニトリル単量体及び芳香族ビニル単量体の具体例として上述したものと同様のものを用いることができる。

0025

スチレン系共重合体(II)には、これらと共重合可能なその他の単量体を含んでも良い。このような単量体としては、以下に限定されないが、例えば、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても良い。

0026

スチレン系共重合体(II)を構成する不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量100質量%に対する、不飽和ニトリル単量体単位の割合は30〜50質量%であることが好ましい。より好ましい下限は、32質量%であり、更に好ましくは34質量%であり、最も好ましくは35質量%である。また、より好ましい上限は、48質量%であり、更に好ましくは45質量%であり、最も好ましくは40質量%である。
本発明者らの研究によれば、スチレン系共重合体(II)における不飽和ニトリル単量体単位の割合を、一般的な範囲(25〜30質量%程度)より高くすると、熱可塑性樹脂組成物とめっき層との密着性が高まることが判明した。十分なめっき層−被めっき体間密着強度を得るためには、不飽和ニトリル単量体単位の割合は20質量%以上であることが好ましく、もっとも、あまり高くし過ぎるとスチレン系共重合体(II)を含む組成物の耐衝撃性が低下するため、50質量%以下であることが好ましい。

0027

スチレン系共重合体(II)は、アセトンに溶解する。したがって、スチレン系共重合体(II)を構成する不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量に対する、不飽和ニトリル単量体単位の割合は、めっき製品の樹脂層部分をアセトンに浸漬し、その可溶成分取出し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて成分解析することによって求めることができる。具体的な手順を以下に示す。
アセトン可溶分の分離)
乾燥した遠沈管を1サンプルにつき2本準備する。まず、遠沈管をデシケーター中で15分以上放冷した後、電子天秤で0.1mgまで精する。次に、めっき製品からめっきを剥離させることで得られた熱可塑性樹脂組成物から約1gを切削し、遠沈管に計量し、0.1mgまで精秤する。また、メスシリンダーでアセトン約20mLを採取し遠沈管に入れ、シリコン栓をして振とう機で2時間振とうする。振とう後、シリコン栓に付着しているサンプルは、少量のアセトンを用いて遠沈管内へ落とす。次いで、2本の遠沈管を日立工機株式会社製の日立高速冷却遠心機ローター対角線上にセットし、上記の日立高速冷却遠心機を操作して、回転数20000rpmで60分間遠心分離を行う。遠心分離終了後、沈殿管をローターから取り出し、上澄み液デカンテーションする。この上澄み液を、80℃で1時間乾燥させた後、100℃で1時間減圧乾燥させ、アセトン可溶分を得ることができる。
(不飽和ニトリル単量体の割合の測定方法)
上記のようにして得られたアセトン可溶分からFT−IRを用いて組成分析を行うことができる。この場合、不飽和ニトリル単量体単位及び芳香族ビニル単量体単位の含有量が既知の共重合体のピーク値を用いて作成された検量線を使用して、不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の割合を求め、不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量に対する不飽和ニトリル単量体単位の割合を求めることができる。

0028

本実施形態において、熱可塑性樹脂組成物に含まれるスチレン系共重合体(II)の含有量に限定はないが、めっき層との密着強度を高く保つという観点から、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上である。また、その上限についても限定はなく、例えば、80質量%以下としてもよいし、70質量%以下としてもよいし、60質量%以下としてもよい。

0029

添加剤
本実施形態において、熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じて、添加剤を配合して用いてもよい。上記添加剤としては、以下に限定されないが、例えば、ホスファイト系、ヒンダードフェノール系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系及びシアノアクリレート系の紫外線吸収剤及び酸化防止剤高級脂肪酸や酸エステル系及び酸アミド系、さらに高級アルコール等の滑剤及び可塑剤モンタン酸及びその塩、そのエステル、そのハーフエステルステアリルアルコール、ステラアマイド及びエチレンワックス等の離型剤亜リン酸塩次亜リン酸塩等の着色防止剤核剤アミン系、スルホン酸系、ポリエーテル系等の帯電防止剤;1,3−フェニレンビス(2,6−ジメチルフェニルホスファート)、テトラフェニル−m−フェニレンビスホスファート、フェノキシホスホリルフェノキシホスファゼン等のリン系難燃剤ハロゲン系難燃剤等を挙げることができる。

0030

上記滑剤としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族金属塩ポリオレフィン類ポリエステルエラストマーポリアミドエラストマー等が挙げられる。
これらの滑剤を配合して用いる場合、その好ましい量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量部としたとき、0.1質量部以上10質量部以下である。

0031

上記脂肪酸金属塩としては、以下に限定されないが、例えば、ナトリウムマグネシウムカルシウムアルミニウム亜鉛から選ばれる1種以上が含まれた金属と脂肪酸の塩が挙げられる。上記脂肪酸金属塩の具体例としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸ナトリウムステアリン酸マグネシウムステアリン酸カルシウムステアリン酸アルミニウムモノ、ジ、トリ)、ステアリン酸亜鉛モンタン酸ナトリウムモンタン酸カルシウムリシノール酸カルシウムラウリン酸カルシウムを挙げることができる。上記の中でも好ましくは、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等のステアリン酸系金属塩が挙げられる。上記ステアリン酸系の金属塩の中でも、具体的にはステアリン酸カルシウムがより好ましい。
これらを配合して用いる場合、その好ましい量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量部としたとき、0.1質量部以上5質量部以下である。

0032

上記ポリオレフィン類としては、以下に限定されないが、例えば、エチレン、プロピレン、α−オレフィンなどの少なくとも1種以上から生成される組成物が挙げられ、これらは該組成物を原料誘導された組成物も含む。具体的には、以下に限定されないが、ポリプロピレンエチレン−プロピレン共重合体ポリエチレン(高密度低密度直鎖状低密度)、酸化型ポリオレフィン、グラフト重合ポリオレフィンなどが挙げられる。これらのうち、酸化型ポリオレフィンワックス、スチレン系樹脂グラフトしたポリオレフィンが好ましく、更に好ましくは、ポリプロピレンワックスポリエチレンワックス酸化型ポリプロピレンワックス、酸化型ポリエチレンワックスアクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリプロピレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体グラフトポリエチレンスチレン重合体グラフトポリプロピレン、及びスチレン重合体グラフトポリエチレンである。
これらを配合して用いる場合、その好ましい量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量部としたとき、0.1質量部以上10質量部以下である。

0033

上記ポリエステルエラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、ジカルボン酸化合物ジヒドロキシ化合物との重縮合オキシカルボン酸化合物の重縮合ラクトン化合物開環重縮合、或いはこれらの各成分の混合物の重縮合などによって得られるポリエステルが挙げられる。ホモポリエステル又はコポリエステルの何れを用いてもよい。
これらを配合して用いる場合、その好ましい量は、熱可塑性樹脂組成物を100質量部としたとき、0.1質量部以上10質量部以下である。
上記ジカルボン酸化合物としては、以下に限定されないが、例えば、テレフタル酸イソフタル酸フタル酸ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸ジフェニルエーテルジカルボン酸ジフェニルエタンジカルボン酸、コハク酸シュウ酸アジピン酸セバシン酸ドデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのジカルボン酸の混合物などが挙げられ、これらのアルキルアルコキシ又はハロゲン置換体なども含まれる。また、これらのジカルボン酸化合物は、エステル形成可能な誘導体、例えば、ジメチルエステルのような低級アルコールエステルの形で使用することも可能である。本実施形態においては、これらのジカルボン酸化合物を単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。このうち、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、アジピン酸及びドデカンジカルボン酸が好ましい。
上記ジヒドロキシ化合物としては、以下に限定されないが、例えば、エチレングリコールプロピレングリコールブタンジオールネオペンチルグリコールブテンジオールハイドロキノンレゾルシンジヒドロキシジフェニルエーテルシクロヘキサンジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニルプロパンなどが挙げられ、これらのポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体が挙げられる。これらのジヒドロキシ化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
上記オキシカルボン酸化合物としては、以下に限定されないが、例えば、オキシ安息香酸オキシナフトエ酸ジフニレオキシカルボン酸などが挙げられ、これらのアルキル、アルコキシ及びハロゲン置換体も含まれる。これらのオキシカルボン酸化合物は、単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、ポリエステルエラストマーの製造のために、ε−カプロラクトンなどのラクトン化合物を用いることもできる。

0034

上記ポリアミドエラストマーとしては、以下に限定されないが、例えば、炭素数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、又はm+nが12以上のナイロンmn塩などが挙げられ、ハードセグメント(X)としては、以下に限定されないが、例えば、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノナン酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノベルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸;カプロラクタムラウロラクタムなどのラクタム類ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11,6、ナイロン11,10、ナイロン12,6、ナイロン11,12、ナイロン12,10、ナイロン12,12などのナイロン塩が挙げられる。また、ポリオールなどのソフトセグメント(Y)としては、ポリエチレングリコールポリ(1,2−及び1,3−プロピレンオキシドグリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロック又はランダム共重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとのブロック又はランダム共重合体などが挙げられる。これらのソフトセグメント(Y)の数平均分子量は2.0×102〜6.0×103であることが好ましく、より好ましくは2.5×102〜4.0×103である。上記数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレンとの比較からスチレン換算分子量として測定することができる。なお、ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの両末端を、アミノ化又はカルボキシル化して用いてもよい。

0035

本実施形態において熱可塑性樹脂組成物に滑剤を添加する場合には、その相容性を向上させる目的で、さらに酸変性或いはエポキシ変性した変性樹脂を混合してもよい。
また、熱可塑性樹脂組成物の一部を、酸変性或いはエポキシ変性してもよい。このようなものとしては、例えば、熱可塑性樹脂組成物に含まれるグラフト共重合体(I)やスチレン系共重合体(II)にカルボキシル基又はグリシジル基を含有するビニルモノマーを共重合させたものなどが挙げられる。
これらを用いる場合、その好ましい量は、熱可塑性樹脂組成物全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上10質量部以下である。
上記カルボキシル基を含有するビニルモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、アクリル酸クロトン酸ケイ皮酸イタコン酸マレイン酸等の遊離カルボキル基を含有する不飽和化合物、無水マレイン酸、無水イタコン酸クロロ無水マレイン酸、無水シトラコン酸などの酸無水物型カルボキシル基を含有する不飽和化合物等があげられるが、これらの中では、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好適である。
上記グリシジル基を含有するビニルモノマーとしては、以下に限定されないが、例えば、メタクリル酸グリシジルアクリル酸グリシジルアリルグリシジルエーテルメチルグリシジルエーテルメチルグリシジルメタクリレート等が挙げられるが、これらの中ではメタクリル酸グリシジルが好適である。

0036

(熱可塑性樹脂組成物の製造方法)
本実施形態に係るめっき製品の被めっき体の少なくとも表面を構成する熱可塑性樹脂組成物は、単軸又は2軸のベント付き押出機プラストミルニーダーバンバリーミキサーブラベンダー等の熱可塑性樹脂組成物組成物の製造に一般的に用いられる各種混合装置を用いて原料を混合することによって製造することができる。

0037

<めっき製品>
本実施形態のめっき製品は、JIS H8630に準拠した測定方法によるめっき層と被めっき体との密着強度が5N/cm以上であることが望ましい。被めっき体の表面を大きな凹凸のない平滑なものとして、触媒金属を樹脂に浸透させることで、平滑な表面外観を有しながらこのような強固な密着性を有するめっき層を得られることは、これまでの技術常識からは考えると全く意外なことである。
密着強度はより好ましくは、8N/cm以上、更により好ましくは9N/cm以上、最も好ましくは10N/cm以上の強度である。上限は特になく、樹脂成形体の材料破壊が起きる強度によって異なる。密着強度がこの範囲にあることで、実使用時のめっき剥がれを防ぐことができる。

0038

本実施形態において、めっき層の厚みは、目的よって適宜調節可能であるが、0.5μm〜30μmであることが好ましい。より好ましくは1μm〜20μm、さらに好ましくは1.5μm〜25μm、最も好ましくは2μm〜10μmである。0.5μm以上であることで、より外観に優れる。また、30μm以下であることで、より被めっき体の表面形状をトレースしやすくなり、また、めっき処理工程での時間的負荷も小さくなる。一般に、曇りがなく綺麗な金属光沢を有する表面外観を達成するためには、めっき層の厚みは40μm以上は必要であるところ、本実施形態のめっき製品においては、めっき層の厚みが30μm以下であっても、良好な表面外観を実現することができる。
めっき層の厚みは、JIS H 8501に基づいて測定することができる。具体的には、めっき製品の断面(製品のめっき表面の接平面に垂直な断面)からFIB法により作成した超薄切片をSTEM観察し、めっき層表面から、めっき層と接する被めっき物表面までの距離を各視野3か所ずつ測定し、任意の10視野分、合計30個測定し、それらの平均値をめっき層厚みとする。

0039

<被めっき体の製造方法>
本実施形態における被めっき体は、表面に前述の樹脂層を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、公知の成形方法等によって製造された成形体を用いることができる。例えば、プレス成形射出成形ガスアシスト射出成形溶着成形押出成形吹込成形フィルム成形中空成形多相成形、発泡成形等のいずれを用いてもよい。また、射出成形法においては、金属とのインサート成形アウトサート成形ガスアシスト成形等を組み合わせて使用してもよい。使用する金型についても特に限定されるものではなく、ゲート形状についてもピンゲートタブゲートフィルムゲートサブマリンゲートファンゲートリングゲートダイレクトゲートディスクゲート等のいずれの種類であってもよい。

0040

<めっき処理方法
被めっき体にめっき処理を施すことでめっき製品を得ることができる。めっき処理に限定はなく、既知の方法を採用することができるが、本実施形態は、例えば、エッチング、表面調整、触媒付与、活性化、触媒付与、及び、無電解めっきの各工程を順に行うことが好ましい。

0041

(エッチング工程)
エッチング工程におけるエッチング方法に限定はなく、例えば紫外線照射、オゾン水への浸漬、紫外線照射とオゾン水浸漬の併用等既知のエッチング方法を用いることができるが、被めっき体の表面の凹凸の高低差を200nm以下にする観点から、紫外線照射を行うことが好ましい。
紫外線照射を行う場合、使用する光源については、特に限定されないが、低圧水銀ランプ高圧水銀ランプエキシマランプなどが挙げられる。紫外線照度は特に制限されないが、照度は波長254nmにおいて5mW/cm2〜150mW/cm2であることが好ましい。照度が5mW/cm2以上であると、より密着強度が優れる傾向にある。また、150mW/cm2以下であると、めっき層の表面外観がより優れたものとなる傾向にある。紫外線の照射時間は0.1分〜50分が好ましい。より好ましくは0.2分〜40分、最も好ましくは0.3分〜30分である。0.1分以上であることにより十分な密着強度が得られ、また、50分以下であることで、より表面外観に優れる傾向にある。

0042

(表面調整工程1)
エッチング工程の後に、被めっき体表面の洗浄濡れ性の付与のため、被めっき体を処理液に浸漬させる表面調整1を行っても良い。
表面調整1に用いる処理液は既知のものが使用可能であり、例えばCPコンディショナー(キザイ(株)製)などが挙げられる。CPコンディショナーを使用する場合、処理液の温度は30〜60℃が好ましく、浸漬時間は1〜5分が好ましい。これらの条件下で処理することで、めっきがムラなく析出し、より密着強度に優れる。

0043

(表面調整工程2)
触媒付与工程において触媒を析出させやすくするため、エッチング工程の後(表面調整工程1を行う場合はその後)に、被めっき体を処理液に浸漬させる表面調整2を行っても良い。
表面調整2に用いられる処理液に含まれる処理剤としては、紫外線照射によってエッチングされた被めっき体表面の官能基及び触媒、両方に吸着可能な物質であれば良い。このような化合物としては多価アミンが好ましく、具体的には、エチレンアミンポリエチレンイミンポリエチレンアミンポリアリルアミンがより好ましい。これらの中でも特にポリアリルアミン、ポリエチレンイミンが好ましい。これらの物質を用いることで、より密着強度に優れる。
処理剤としてポリアリルアミンを使用する場合、その処理液中の濃度は0.01g/l〜10g/lが好ましく、0.1g/l〜1g/lがより好ましい。
処理液の温度は30〜60℃が好ましく、35℃〜50℃がより好ましい。処理時間は1〜10分が好ましく、1〜5分がより好ましい。これらの条件下で処理することで、ムラがなく、より密着強度に優れるめっき層を実現することができる。

0044

(触媒付与工程)
表面調整後に、触媒付与を行うことができる。触媒付与工程においては、表面調整後の被めっき体を金属錯体を含む溶液で処理し、被めっき体表面に金属錯体を担持させる。
金属錯体としては特に制限はないが、パラジウム錯体銅錯体銀錯体が好ましく、塩化パラジウムがより好ましい。塩化パラジウムを使用する場合、溶液中の塩化パラジウム濃度は50〜500mg/lが好ましい。
溶液としては酸性水溶液が好ましく、塩酸硫酸水溶液などがより好ましい。水溶液中の酸濃度としては10〜100g/lが好ましい。金属錯体を含む溶液の温度は30〜60℃が好ましく、浸漬時間は1〜5分が好ましい。これらの条件下で処理することで、より外観、密着強度に優れるめっき層を実現することができる。

0045

(活性化工程)
触媒付与後には、活性化を行うことが好ましい。活性化工程においては、触媒付与後の被めっき体を、還元剤を含む溶液で処理し、触媒を活性化させる。還元剤としては特に制限はないが、水素、次亜リン酸ナトリウム水素化ホウ素ナトリウムが好ましく、次亜リン酸ナトリウムがより好ましい。次亜リン酸ナトリウムを使用する場合、溶液中の還元剤濃度としては0.1〜100g/lが好ましく、5〜100g/lがより好ましい。
溶液としては水溶液が好ましい。還元剤を含む溶液の温度は30〜60℃が好ましく、浸漬時間は1〜5分が好ましい。これらの条件下で処理することで、より外観、密着強度に優れるめっき層を実現することができる。

0046

(無電解めっき工程)
活性化工程後(活性化処理を行わない場合は触媒付与工程の後)に、無電解めっきを行う。無電解めっきには、既知の無電解めっき方法を採用することができる。例えば、銅めっきニッケルめっき、パラジウムめっき銀めっき、金めっき、及びこれらの合金めっき等を目的に応じて使用可能である。

0047

(電解めっき工程)
無電解めっきの後にさらに電解めっきを行っても良い。電解めっきは、意匠性付与や、耐腐性付与等、目的に応じて特に限定されずに使用可能である。

0048

以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。

0049

本実施例、比較例では、以下のような原料を用いた。
なお、各共重合体組成は、FT−IRを用いた組成分析の結果得られた値である。
[グラフト共重合体(I)]
グラフト共重合体(I)を含む以下のABS樹脂(A−1)、(A−2)を用いた。
(A−1)
ゴム質重合体(ブタジエン)含有量30質量%、含有されるグラフト共重合体(I)のグラフト率45%のABS樹脂。
なお、グラフト共重合体(I)のグラフト率は、溶剤(本実施例においてはアセトン)を用いて、樹脂部分から溶剤可溶分を取り除き、溶剤不溶分としてグラフト共重合体(I)を取り出し、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)により、グラフト共重合体(I)中のゴム質重合体及びその他の成分(すなわち、グラフト重合した単量体)の質量を測定し、これらの値から、ゴム質重合体の質量に対する、グラフト重合した単量体の質量の割合として求めた。
また、(A−1)はアセトン可溶分としてスチレン系共重合体(II)も含有しており、その含有量は56.5質量%であった。
(A−2)
ゴム質重合体(ブタジエン)含有量36質量%、含有されるグラフト共重合体(I)のグラフト率37%のABS樹脂。
また、(A−2)は、アセトン可溶分としてスチレン系共重合体(II)も含有しており、その含有量は50.7質量%であった。

0050

[スチレン系共重合体(II)]
スチレン系共重合体(II)としては、上記(A−1)又は(A−2)のABS樹脂に含まれるスチレン系共重合体(II)だけでなく、以下の(II−1)及び(II−2)を混合して用いた。
(II−1)
アクリロニトリル単位40質量%、スチレン単位60質量%であるAS樹脂
(II−2)
アクリロニトリル単位27質量%、スチレン単位73質量%であるAS樹脂

0051

(樹脂表面の凹凸の最大値の測定)
めっき製品の断面からFIB法により超薄切片を作成し、1.7×2.5μmの視野で10か所STEM観察した。それぞれの視野の中の被めっき体表面(めっき層と接触する樹脂層表面)の凹凸の高低差の最大値を測定し、10か所の値の平均値を凹凸の高低差とした。
(めっき層厚みの測定)
上記において作成した超薄切片をSTEM観察し、任意の10視野の各視野において任意の3か所のめっき層の厚みを測定し、合計30か所の平均値をめっき厚みとした。

0052

(実施例1)
(A−1)55質量部、(II−1)45質量部を混合した後、二軸押出機(TEM−35B、東機械(株)製)を使用してシリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpmで混練した後、水浴で冷却切断し、熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。この熱可塑性組成物のアセトン可溶分中の、スチレン系共重合体(II)を構成する不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量に対する、不飽和ニトリル単量体単位の割合(P)は40質量%であった。その後、射出成形機(EC−60N、東芝機械(株)製)を使用して、バレル設定温度250℃、金型温度60℃、射出速度25mm/sにて90mm×50mm×2.5mmの平板を成形した。
この平板を被めっき体として用い、これに対し、下記の処理を行いめっき製品を得た。
(1)紫外線照射工程
成形後の平板に対し、KOV1−30H(江東電気(株)製)を用い、照射距離50cmにおいて3分間紫外線の照射を行った。
(2)表面調整工程1
紫外線照射工程後の成形体を、CPコンディショナー(キザイ(株)製)を100mL/L、水酸化ナトリウムを30g/Lの濃度となるように添加した水溶液に、50℃で2分間浸漬した。
(3)表面調整工程2
表面調整工程1後の成形体を、CP−COND 1256(キザイ(株)製)を50mL/Lの濃度となるように添加した水溶液に、40℃で2分間浸漬した。
(4)触媒付与工程
表面調整工程2後の成形体を、EPアクチPA C(キザイ(株)製)を30mL/L、35%塩酸を35mL/Lの濃度となるように添加した水溶液に、40℃で2分間浸漬した。
(5)活性化工程
触媒付与工程後の成形体を、EPアクセPAコンク(キザイ(株)製)を20mL/Lの濃度となるように添加した水溶液に、40℃で2分間浸漬した。
(6)無電解めっき工程
活性化工程後の成形体を、ナイコSLE(キザイ(株)製)A液と、B液を各々125mL/Lの濃度となるように添加した水溶液に、35℃で10分間浸漬し、無電解めっき(ニッケル)を行った。

0053

(実施例2)
紫外線照射工程における紫外線照射時間を1分間とした以外は実施例1と同様にしてめっき製品を得た。

0054

(実施例3)
紫外線照射工程における紫外線照射時間を0.1分間とした以外は実施例1と同様にしてめっき製品を得た。

0055

(実施例4)
紫外線照射工程における紫外線照射時間を10分間とした以外は実施例1と同様にしてめっき製品を得た。

0056

(実施例5)
原料として(A−2)45質量部、(II−2)55質量部を使用した以外は実施例2と同様にしてめっき製品を得た。使用した熱可塑性組成物のアセトン可溶分中の、スチレン系共重合体(II)を構成する不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量に対する、不飽和ニトリル単量体単位の割合(P)は27質量%であった。

0057

(比較例1)
実施例1と同様にして得られた平板に対し、下記の処理を行いめっき製品を得た。
(a)エッチング工程
成形後の平板を、三酸化クロム濃度が400g/L、硫酸濃度が400g/Lとなるよう、98質量%硫酸を調整した水溶液に、68℃で10分間浸漬した。
(b)中和工程
エッチング工程後の成形体を、35質量%塩酸を50mL/Lに調整した水溶液に、室温で1分間浸漬した。
(c)触媒付与工程
中和工程後の成形体を、CPキャタ5(キザイ(株)製)の濃度が12mL/L、塩酸濃度が200mL/Lとなるよう、35質量%塩酸を調整した水溶液に、35℃で3分間浸漬した。
(d)活性化工程
触媒付与工程後の成形体を、35質量%塩酸を80mL/Lに調整した水溶液に、35℃で3分間浸漬した。

(e)無電解めっき工程
活性化工程後の成形体を、ナイコSLE(キザイ(株)製)のA液とB液を各々125mL/Lの濃度になるように調整した水溶液に、35℃で10分間浸漬した。

0058

(比較例2)
めっき層厚みを15μmとなるように(e)工程における浸漬時間を調整した以外は、比較例1と同様にしてめっき製品を得た。
(密着強度の測定)
密着強度の測定を可能にするため、無電解めっき工程後の成形体(めっき製品)に対し、下記からなるめっき浴を用いて、浴温20℃、電流密度3A/dm2、60分間、電解めっきを施した。この成形体から平滑な部分を切り出し、JIS H8630に基づいて密着強度を測定した。
電解めっき浴の組成>
硫酸銅200g/L
硫酸60g/L
塩素イオン60mg/L
コータックメイクアップ4mL/L
コータック1 0.5mL/L
(外観の評価)
めっき製品の外観を、目視評価において下記の基準で判断した。
◎:曇りがなく綺麗な金属光沢を有する
○:一部曇りがあるが金属光沢を有する
△:大部分がっており殆ど金属光沢を有さない
×:全体が曇っており金属光沢を有さない

0059

結果を以下の表に示す。

0060

実施例1のめっき製品は密着強度、外観ともに優れていた。
実施例2のめっき製品は、実施例1のものと比べ、被めっき体表面の凹凸の高低差の最大値が小さくなったことで、密着強度が若干小さくなったものの、十分実用性のあるものであった。
実施例3のめっき製品は、実施例2のものと比べ、被めっき体表面の凹凸の高低差の最大値がさらに小さくなったことで、密着強度がさらに小さくなったが、実用には耐え得る密着強度を有していた。
実施例4のめっき製品は、実施例1のものと比べ、被めっき体の表面凹凸の高低差の最大値が大きくなったため、外観には一部曇りが見られたが、実用性のあるものであった。
実施例5のめっき製品は、スチレン系共重合体(II)中の不飽和ニトリル単量体単位と芳香族ビニル単量体単位の合計量に対する、不飽和ニトリル単量体単位の割合が、実施例2の40質量%と比べ、30質量%と低くなっており、密着強度が実施例2のものより小さかった。
比較例1のめっき製品は、被めっき体の凹凸の高低差の最大値が300nmであったため、外観に劣っていた。
比較例2のめっき製品は、比較例1と同様に被めっき体の凹凸の高低差の最大値が300nmであり、比較例1よりめっき層の厚さを厚くしても、外観は実用には適さなかった。

0061

(実施例6)
被めっき体の形状を、平板から、図2のような流動長400mm、幅20mm、厚み2mmの玩具用鋸刃形状に変えた以外は実施例1とすべて同様にしてめっき製品を得た。なお、この被めっき体の片側面の一部は、刃のピッチ1.8mm、切溝幅0.8mmの鋸刃形状を有している。図2中、「ゲート位置」とあるのは、この被めっき体を成形する際、金型に熱可塑性樹脂組成物を射出した入口に対応する箇所である。
この被めっき体の表面の凹凸の高低差の最大値は52nm、めっき製品の密着強度は16N/cm、めっき層の厚みは11μmであった。
このめっき製品の外観は、曇りがなく綺麗な金属光沢を有していた。さらに、このめっき製品の流動末端部の鋸刃部分(図中「試験に使用」と示した箇所)を用いて、2つ折りにした紙を切ったところ、抵抗が少なく綺麗に切断することができた。

実施例

0062

(比較例3)
被めっき体の形状を、実施例6のものと同様にした以外は比較例1と同様にして、玩具用鋸刃形状のめっき製品を得た。この被めっき体の表面の凹凸の最大値は315nmであった。
しかし、このめっき製品の外観は、全体が曇っており金属光沢を有していなかったため、曇りがなく綺麗な金属光沢を示すまでめっき層の厚みを増加させたところ、めっき層の厚みは40μmとなり、密着強度は7N/cmであった。
実施例6と同様にして、このめっき製品の流動末端部の鋸刃の部分を用いて2つ折りにした紙を切ったところ、抵抗が大きく、綺麗に切断することができなかった。

0063

本発明のめっき製品は、密着強度と外観に優れるため、自動車用途家電用途、電子機器用途等の各種用途において好適に利用できる。

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