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技術 鋼板の製造方法および製造設備

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 田村雄太秋吉進典木村幸雄
出願日 2016年3月31日 (4年2ヶ月経過) 出願番号 2016-071617
公開日 2017年10月5日 (2年8ヶ月経過) 公開番号 2017-177201
状態 特許登録済
技術分野 圧延機に特に連結された素材の表面処理装置
主要キーワード 衝突面積 加熱均一性 高周波誘導加熱後 剥離むら 噴射水量 形状矯正装置 噴射距離 スケール除去能力
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (8)

課題

鋼板均一冷却を実現して、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板を確保できる鋼板の製造方法および製造設備を提供することを目的とする。

解決手段

鋼板搬送方向上流側から、鋼板の表面温度を50℃以上昇温させる高周波誘導加熱工程と、鋼板の表面に向けてエネルギー密度Eが0.05J/mm2以上の高圧水噴射するデスケーリング工程と、加速冷却工程とを有することを特徴とする鋼板の製造方法。

概要

背景

熱間圧延によって鋼板を製造するプロセスでは、制御冷却の適用が拡大している。例えば、図1に示すように、加熱炉1で鋼板(図示しない。)を再加熱した後、一次スケール除去のためにデスケーリング装置2で鋼板がデスケーリングされる。その後、鋼板は圧延機3によって圧延される。次いで、加速冷却装置4において水冷または空冷による制御冷却を行っている。なお、図中の矢印は鋼板の搬送方向である。

鋼板を加速冷却装置で水冷する場合、図2のように鋼板表面のスケールが厚くなるほど冷却速度が大きくなるため、冷却されやすく、冷却時間が短くなることが知られている。しかしながら、鋼板表面のスケール厚みにばらつきがあると冷却速度が不均一になり、鋼板の強度及び硬度などの材質ばらつくという問題が生じる。

このような場合、鋼板幅方向における加速冷却停止時の鋼板表面温度(以下、「冷却停止温度」と称する。)の分布は、例えば図3のようにばらつくことが知られている。このように鋼板の冷却停止温度がばらつくため、均一な材質を得られないという問題がある。具体例を示すと、鋼板幅方向にスケール厚が40μmと20μmの箇所が混在する場合、板厚25mmの鋼板を800℃から目標温度500℃まで冷却する時の冷却停止温度は、40μmの箇所で460℃、20μmの箇所で500℃となる。40μmの箇所では、冷却停止温度が目標温度から40℃下回ってしまい、その結果、均一な材質を得ることができない。

従来の技術では、冷却水量や搬送速度を調整することで冷却停止温度の均一化を図ってきた。しかし、この方法では、スケール厚のばらつきによって冷却速度がばらつくため、冷却速度の均一化のみならず、冷却停止温度の均一化も難しい。

そこで、特許文献1には、スケール厚みを制御して冷却速度の均一化を行い、冷却停止温度の均一化を達成する方法が開示されている。特許文献1では、圧延中に圧延機の前後に備えられたデスケーリング装置を用いて、鋼板の尾端が先端に比べて冷却停止温度が低くなる場合に、尾端側のデスケーリングの噴射水量を先端側の噴射水量より多くなるように制御する。こうして鋼板の長手方向でスケール除去率、残存厚を制御することにより、制御冷却時の鋼板表面の熱伝達係数を変化させて、鋼板の長手方向の冷却停止温度の均一化を行っている。

また、特許文献2では、仕上げ圧延最終パス直前および直後の少なくとも一方でデスケーリングを行い、続いて熱間矯正を行い、その後にデスケーリングを行い、制御冷却を開始する方法が開示されている。また、特許文献3では、仕上げ圧延、熱間矯正を行い、制御冷却の直前にデスケーリングを行い、制御冷却を行う方法が開示されている。

特許文献4では、鋼板表面をバーナー等で加熱した後、その表面に高圧水を吹きつけてデスケーリングを行い、その後仕上げ圧延を行う方法が開示されている。

概要

鋼板の均一冷却を実現して、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板を確保できる鋼板の製造方法および製造設備を提供することを目的とする。鋼板搬送方向上流側から、鋼板の表面温度を50℃以上昇温させる高周波誘導加熱工程と、鋼板の表面に向けてエネルギー密度Eが0.05J/mm2以上の高圧水を噴射するデスケーリング工程と、加速冷却工程とを有することを特徴とする鋼板の製造方法。

目的

本発明は、上記の問題を解決し、鋼板の均一冷却を実現して、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板を確保できる鋼板の製造方法および製造設備を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
1件
牽制数
0件

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請求項1

鋼板搬送方向上流側から、鋼板表面温度を50℃以上昇温させる高周波誘導加熱工程と、鋼板の表面に向けてエネルギー密度Eが0.05J/mm2以上の高圧水噴射するデスケーリング工程と、加速冷却工程とを有することを特徴とする鋼板の製造方法。

請求項2

前記高周波誘導加熱工程において、加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることを特徴とする請求項1に記載の鋼板の製造方法。

請求項3

前記高周波誘導加熱工程の前に、形状矯正工程を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板の製造方法。

請求項4

高周波誘導加熱装置デスケーリング装置及び加速冷却装置をこの順で備え、前記高周波誘導加熱装置における鋼板の昇温温度を鋼板の表面温度で50℃以上とし、前記デスケーリング装置における鋼板の表面に向けて噴射する高圧水のエネルギー密度Eを0.05J/mm2以上とすることを特徴とする鋼板の製造設備

請求項5

前記高周波誘導加熱装置において、加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることを特徴とする請求項4に記載の鋼板の製造設備。

請求項6

前記高周波誘導加熱装置の上流側に、形状矯正装置を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の鋼板の製造設備。

技術分野

0001

本発明は、鋼板の製造方法および製造設備に関する。

背景技術

0002

熱間圧延によって鋼板を製造するプロセスでは、制御冷却の適用が拡大している。例えば、図1に示すように、加熱炉1で鋼板(図示しない。)を再加熱した後、一次スケール除去のためにデスケーリング装置2で鋼板がデスケーリングされる。その後、鋼板は圧延機3によって圧延される。次いで、加速冷却装置4において水冷または空冷による制御冷却を行っている。なお、図中の矢印は鋼板の搬送方向である。

0003

鋼板を加速冷却装置で水冷する場合、図2のように鋼板表面のスケールが厚くなるほど冷却速度が大きくなるため、冷却されやすく、冷却時間が短くなることが知られている。しかしながら、鋼板表面のスケール厚みにばらつきがあると冷却速度が不均一になり、鋼板の強度及び硬度などの材質ばらつくという問題が生じる。

0004

このような場合、鋼板幅方向における加速冷却停止時の鋼板表面温度(以下、「冷却停止温度」と称する。)の分布は、例えば図3のようにばらつくことが知られている。このように鋼板の冷却停止温度がばらつくため、均一な材質を得られないという問題がある。具体例を示すと、鋼板幅方向にスケール厚が40μmと20μmの箇所が混在する場合、板厚25mmの鋼板を800℃から目標温度500℃まで冷却する時の冷却停止温度は、40μmの箇所で460℃、20μmの箇所で500℃となる。40μmの箇所では、冷却停止温度が目標温度から40℃下回ってしまい、その結果、均一な材質を得ることができない。

0005

従来の技術では、冷却水量や搬送速度を調整することで冷却停止温度の均一化を図ってきた。しかし、この方法では、スケール厚のばらつきによって冷却速度がばらつくため、冷却速度の均一化のみならず、冷却停止温度の均一化も難しい。

0006

そこで、特許文献1には、スケール厚みを制御して冷却速度の均一化を行い、冷却停止温度の均一化を達成する方法が開示されている。特許文献1では、圧延中に圧延機の前後に備えられたデスケーリング装置を用いて、鋼板の尾端が先端に比べて冷却停止温度が低くなる場合に、尾端側のデスケーリングの噴射水量を先端側の噴射水量より多くなるように制御する。こうして鋼板の長手方向でスケール除去率、残存厚を制御することにより、制御冷却時の鋼板表面の熱伝達係数を変化させて、鋼板の長手方向の冷却停止温度の均一化を行っている。

0007

また、特許文献2では、仕上げ圧延最終パス直前および直後の少なくとも一方でデスケーリングを行い、続いて熱間矯正を行い、その後にデスケーリングを行い、制御冷却を開始する方法が開示されている。また、特許文献3では、仕上げ圧延、熱間矯正を行い、制御冷却の直前にデスケーリングを行い、制御冷却を行う方法が開示されている。

0008

特許文献4では、鋼板表面をバーナー等で加熱した後、その表面に高圧水を吹きつけてデスケーリングを行い、その後仕上げ圧延を行う方法が開示されている。

先行技術

0009

特開平6−330155号公報
特開平9−57327号公報
特許第3796133号
特開平6−269840号公報

発明が解決しようとする課題

0010

特許文献1の方法は、圧延中のデスケーリングによって長手方向のスケール除去率、残存厚を制御することで熱伝達係数を変化させて、均一冷却を実現するというものである。しかしながら、オンラインでスケール除去率や厚みを測定して制御できなければ、熱伝達係数を所望の値になるように変化させることができないため、高精度の冷却制御は実現できない。また、スケール除去率を変化させる場合、スケール残存箇所と剥離箇所冷却能力が異なるため、温度むらが生じてしまう。

0011

また、特許文献2、3の方法はいずれも制御冷却の前でデスケーリングを実施している。この方法で鋼板を製造すると、デスケーリングにおいてスケールが完全には剥離せず、むしろデスケーリングによりスケールむらを発生させてしまう場合がある。

0012

また、特許文献4の方法は、仕上げ圧延の前でデスケーリングを実施するものであり、仕上げ圧延中に発生したスケールむらによって、制御冷却時に均一な冷却を行うことができないという問題点がある。特に、圧延前の表面温度が900〜1000℃程度の場合、ブリスターが発生してスケールむらが生じる問題がある。また、加熱をバーナーで行うと、加熱時に温度むらが生じるため、その後のデスケーリングで剥離むらが生じるという問題がある。

0013

本発明は、上記の問題を解決し、鋼板の均一冷却を実現して、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板を確保できる鋼板の製造方法および製造設備を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]鋼板搬送方向上流側から、鋼板の表面温度を50℃以上昇温させる高周波誘導加熱工程と、鋼板の表面に向けてエネルギー密度Eが0.05J/mm2以上の高圧水を噴射するデスケーリング工程と、加速冷却工程とを有することを特徴とする鋼板の製造方法。
[2]前記高周波誘導加熱工程において、加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることを特徴とする[1]に記載の鋼板の製造方法。
[3]前記高周波誘導加熱工程の前に、形状矯正工程を備えていることを特徴とする[1]または[2]に記載の鋼板の製造方法。
[4]高周波誘導加熱装置、デスケーリング装置及び加速冷却装置をこの順で備え、前記高周波誘導加熱装置における鋼板の昇温温度を鋼板の表面温度で50℃以上とし、前記デスケーリング装置における鋼板の表面に向けて噴射する高圧水のエネルギー密度Eを0.05J/mm2以上とすることを特徴とする鋼板の製造設備。
[5]前記高周波誘導加熱装置において、加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることを特徴とする[4]に記載の鋼板の製造設備。
[6]前記高周波誘導加熱装置の上流側に、形状矯正装置を備えることを特徴とする[4]または[5]に記載の鋼板の製造設備。

発明の効果

0015

本発明によれば、スケールを完全に除去することで鋼板の均一冷却を実現することができる。本発明では、スケール除去率やスケール厚みをオンラインで計測して制御しなくても、高精度の冷却制御が可能となり、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板の製造が可能となる。

図面の簡単な説明

0016

図1は、従来の鋼板の製造設備を示す概略図である。
図2は、加速冷却時における、スケール厚みと、冷却時間と、鋼板表面温度との関係を示す図である。
図3は、従来の加速冷却後の、鋼板幅方向温度分布を説明する図である。
図4は、本発明の一実施形態に係る鋼板の製造設備を示す概略図である。
図5は、噴射するデスケーリング水のエネルギー密度とスケール剥離率との関係を示すグラフである。
図6は、鋼板表面および鋼板中心部における、投入熱量と温度との関係を示すグラフである。
図7は、鋼板表面および鋼板中心部における、周波数と温度との関係を示すグラフである。

0017

以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照して説明する。

0018

図4は、本発明の一実施形態である、鋼板の製造設備を示す概略図である。図4において、矢印は鋼板の搬送方向である。鋼板の搬送方向上流側から、加熱炉1、デスケーリング装置2、圧延機3、形状矯正装置6、高周波誘導加熱装置5、デスケーリング装置7、加速冷却装置4の順に配置されている。図4において、加熱炉1で鋼板(図示しない。)を再加熱した後、デスケーリング装置2において一次スケール除去のために鋼板がデスケーリングされる。そして、鋼板は圧延機3によって熱間圧延され、必要に応じて形状矯正装置6によって矯正される。次いで、高周波誘導加熱装置5によって鋼板表面を加熱された後、デスケーリング装置7においてスケールを完全除去するデスケーリングが行われる。そして、加速冷却装置4において水冷または空冷による制御冷却が行われる。

0019

図4に示すように、加速冷却装置4の上流側に、高周波誘導加熱装置5が配置される。本発明では、高周波誘導加熱装置5により、高周波誘導加熱中の鋼板の表面温度を50℃以上昇温させた後、デスケーリング装置7において鋼板の表面に向けてエネルギー密度Eが0.05J/mm2以上の高圧水を噴射することを特徴とする。

0020

本発明者らは、高圧水(以下、デスケーリング水と称することもある。)のエネルギー密度とスケール剥離率(スケールが剥離した面積鋼板面積の割合)の関係について、デスケーリング前の高周波誘導加熱の影響について調査した。なお、高周波誘導加熱装置による昇温温度は50℃とした。その結果、図5のようになり、デスケーリング前に高周波誘導加熱を実施すると、小さいエネルギー密度であってもスケール剥離率が高く、スケール除去能力が大きくなることがわかった。一方、デスケーリング前に高周波誘導加熱を実施しない場合では、高圧水のエネルギー密度が0.1J/mm2以上でなければスケールが残存する。これは、高周波誘導加熱による加熱を実施していないために、均一にデスケーリングできる能力を発揮するのに必要な除去能力がないことを意味するものと考えられる。例えば、特許文献2、3には、デスケーリングにおける高圧水の鋼板表面へのエネルギー密度についての記載はないものの、特許文献2、3に記載のノズルからの噴射圧力噴射距離、さらには一般的なノズルの種類から導き出されるエネルギー密度は、いずれも0.07J/mm2程度と予測される。図5からもわかるように、高圧水の持つエネルギー密度が0.07J/mm2程度の場合では、スケール剥離の有無部分で表面性状が異なるため、制御冷却時に均一な冷却を行えず、冷却停止温度がばらついて材質が不均一となる。

0021

したがって、本発明では、高周波誘導加熱後にデスケーリングを実施することによりスケールを完全に除去し、鋼板全面でスケール厚のばらつきをなくすことで均一冷却を実現することができる。その結果、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板の製造が可能となる。

0022

ここで、鋼板に噴射されるデスケーリング水のエネルギー密度E(J/mm2)とは、デスケーリングによってスケールを除去する能力の指標であり、次の(1)式から算出される。
E=Qρv2t÷(2dW)…(1)
ただし、Q:デスケーリング水の噴射流量[m3/s]、d:フラットノズルスプレー噴射厚み[mm]、W:フラットノズルのスプレー噴射幅[mm]、流体密度ρ[kg/m3]、鋼板衝突時の流体速度v[m/s]、衝突時間t[s](t=d/1000V、搬送速度V[m/s])である。

0023

しかしながら、鋼板衝突時の流体速度vの測定は必ずしも容易ではないため、(1)式で定義されるエネルギー密度Eを厳密に求めようとすると、多大な労力を要する。

0024

そこで、本発明者らは、さらに検討を加えた結果、鋼板に噴射されるデスケーリング水のエネルギー密度E(J/mm2)の簡便な計算方法として、水量密度×噴射圧力×衝突時間を採用すればよいことを見出した。ここで、水量密度(m3/(mm2・min))は、「デスケーリング水の噴射流量÷デスケーリング水衝突面積」で計算される値である。噴射圧力(N/m2=Pa)は、デスケーリング水の吐出圧力で定義される。衝突時間(s)は、「デスケーリング水の衝突厚み÷鋼板の搬送速度」で計算される値である。なお、この簡便な計算式で算出される本発明の高圧水のエネルギー密度とスケール剥離率との関係も、図5と同様である。

0025

デスケーリング時にはスケールに熱応力衝突力が生じて、スケールが剥離または破壊されることで除去される。本発明者らが鋭意検討したところ、高周波誘導加熱により鋼板表面を加熱すると、スケールと地鉄熱膨張差によってスケールに圧縮応力が発生して、スケールが剥離することがわかった。そして、本発明では、高周波誘導加熱により鋼板表面を50℃以上昇温させることでスケールに発生する圧縮応力が大きくなり、スケールが剥離しやすくなり、図5に示すようにエネルギー密度が0.05J/mm2と小さいエネルギーでもスケールを全面除去可能となることがわかった。なお、高周波誘導加熱で鋼板の表面温度を50℃昇温させる際の鋼板表面温度は1200℃以下を対象とする。

0026

上より、本発明では、高周波誘導加熱工程において鋼板の表面温度を50℃以上昇温させた後、デスケーリング工程において鋼板の表面に向けて噴射する高圧水の持つエネルギー密度Eを0.05J/mm2以上とすることを特徴とする。バーナーによる加熱と比較して、本発明では高周波誘導加熱により鋼板表面を加熱することにより、鋼板幅方向均一に加熱できる。その結果、スケールを均一に剥離させることができる。

0027

また、本発明では、より大きな熱応力を発生させて剥離性を向上させるために、高周波誘導加熱により鋼板表面を100℃以上昇温させることが好ましい。なお、高周波誘導加熱による鋼板表面の昇温量が50℃未満では、加熱の際に発生する応力が小さく、十分なスケール剥離効果が得られない。また、過度に昇温させると鋼板が座屈変形してしまうため、鋼板表面の昇温量は500℃以下が好ましい。

0028

本発明では、高周波誘導加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることが好ましく、より効率的にスケールを剥離させることができる。高周波誘導加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ周波数を500Hz以上とすることで、鋼板表層鋼板内部(中心部)との温度差を大きくすることができ、スケールにより大きな熱応力を発生させて、より効率的にスケールを剥離させることができる。その理由を以下に示す。

0029

まず、本発明者らは、高周波誘導加熱時の鋼板への投入熱量の影響について検討した。高圧水のエネルギー密度を0.07J/mm2、高周波誘導加熱時の鋼板の昇温量を50℃として、投入熱量が50W/cm2と100W/cm2の場合における鋼板表面と鋼板中心部の温度履歴を測定した。その結果、図6に示すように、高周波誘導加熱時の鋼板への投入熱量が100W/cm2の方が、鋼板表面と鋼板内部との温度差を大きくすることができることがわかった。したがって、投入熱量が大きいほうが、短時間の加熱で鋼板表面温度のみを昇温させることができる。そのため、鋼板表面と鋼板内部との温度差を大きくすることができ、スケールと地鉄の熱膨張差が大きくなって、スケールに大きな熱応力が発生し、より効率的にスケールを剥離させることができる。高周波誘導加熱工程では鋼板の幅方向端部に電流が集中するため、幅方向端部の過加熱が生じやく、その後の冷却で不均一となり、材質不均一となる可能性がある。本発明では鋼板への投入熱量を大きくすることで、目標の昇温量を確保するための時間が短くなり、幅方向で均一に加熱することができる。

0030

次に、本発明者らは、高周波誘導加熱時の周波数の影響について検討した。まず、高周波誘導加熱時の発熱領域スキンデプスδ(m)で特徴付けられ、以下の(2)式で表される。
δ=(πfμσ)−0.5・・・(2)
なお、(2)式において、fは周波数(Hz)、μは透磁率(H/m)、σは導電率(S/m)である。

0031

したがって、周波数fが大きいほどスキンデプスδは小さく、発熱領域が鋼板表面近傍に限定される。

0032

そこで、高圧水のエネルギー密度を0.07J/mm2、高周波誘導加熱時の鋼板の昇温量を50℃として、周波数fが300Hzと1000Hzの場合における鋼板表面と鋼板中心部の温度履歴を測定した。その結果、図7に示すように、周波数fを1000Hzの方が、鋼板表面と鋼板内部との温度差をより大きくすることができることがわかった。したがって、周波数が大きいほうが、鋼板表面と鋼板内部との温度差を大きくすることができ、その結果、スケールと地鉄の熱膨張差が大きくなって、スケールに大きな熱応力が発生し、より効率的にスケールを剥離させることができる。さらに、周波数を大きくすることで目標の昇温量を確保するための時間が短くなり、幅方向で均一に加熱することができる。

0033

さらに検討した結果、本発明では、高周波誘導加熱時の鋼板への投入熱量を100W/cm2以上、かつ高周波誘導加熱時の周波数を500Hz以上とすることで、鋼板表面を鋼板内部に比べて急速に昇温させてより大きな熱応力をスケールに発生させ、より効率的にスケールを剥離できることがわかった。

0034

なお、より一層効率的にスケールを剥離させるためには、投入熱量200W/cm2以上、および/または、周波数1000Hz以上とするのが良い。

0035

本発明の高周波誘導加熱装置5について、比較的効率の良いソレノイド型誘導加熱コイルを有した高周波誘導加熱装置であることが好ましく、誘導加熱コイルは直列複数台備えていてもよい。また、高周波誘導加熱装置5は鋼板への投入熱量は適宜変更できるようになっていればよい。

0036

また、必要に応じて、形状矯正装置6を通して鋼板の形状を整えてから加速冷却を行うことが好ましい。鋼板の形状を平坦にした後、高周波誘導加熱装置により加熱を行うことで、より均一な加熱を行うことができ、加速冷却後の鋼板形状には好適である。形状矯正装置6は、熱間圧延中に鋼板に発生した歪の矯正をするものである。図4では、上下に千鳥状に配設された矯正ロールによって鋼板を挟圧するローラーレベラー方式の形状矯正装置を示している。形状矯正装置としては、これに限定されず、スキンパス方式あるいはプレス方式の形状矯正装置を用いてもよい。また、圧延機3が粗圧延機及び仕上圧延機で構成されている場合には、仕上圧延機でスキンパス矯正を行ってもよい。

0037

加速冷却装置4では、上面冷却設備と下面冷却設備とから噴射される冷却水によって鋼板は所定温度まで冷却される。その後、必要に応じて、さらに下流でオンラインまたはオフラインに設けられた形状矯正装置(図示しない。)で鋼板の形状が矯正される。この形状矯正装置は、加速冷却装置4による冷却中に鋼板に発生した歪の矯正をするものである。本発明では、この形状矯正装置は使用しなくても良い。また、この形状矯正装置は、ローラーレベラー方式のほか、スキンパス方式あるいはプレス方式の形状矯正装置を用いてもよい。

0038

以上のように、本発明では、高周波誘導加熱後にデスケーリングを実施することによりスケールを完全に除去し、鋼板全面でスケール厚のばらつきをなくすことで均一冷却を実現し、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板の製造が可能となる。

0039

以下、本発明の実施例を説明する。

0040

図4に示すような設備において、本発明例および比較例の鋼板を製造した。加熱炉1でスラブを再加熱した後、一次スケールをデスケーリング装置2によって除去し、圧延機3にて熱間圧延を行った。圧延機3によって圧延した板厚25mm、板幅3.5m、板長25m、鋼板温度850℃の鋼板を、ローラーレベラー方式の形状矯正装置6、ソレノイド型のコイルを有した高周波誘導加熱装置5、およびデスケーリング装置7を通過してから、加速冷却装置4で500℃までの制御冷却を行い、引張強度600MPaを目標とする高張力鋼板を製造した。ここで、デスケーリング装置7における搬送速度は1.5m/s、鋼板表面からデスケーリングノズル先端までの距離は130mm、噴射幅100mm、噴射圧力は15MPaとした。

0041

得られた鋼板について、目標とする材質を確保し、そのばらつきが小さい鋼板を製造するために、鋼板幅方向の温度むらが30℃以内の鋼板を合格とした。ここで、放射温度計で鋼板の全幅走査することにより鋼板表面の全幅の温度分布を測定し、その最大値最小値との差を「温度むら」とした。

0042

製造条件および結果を表1に示す。

0043

0044

本発明例1では、圧延後に高周波誘導加熱装置によって鋼板表面温度を100℃昇温させた後、エネルギー密度0.07J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が100℃であり、エネルギー密度0.07J/mm2でデスケーリングを噴射したため、スケールを完全に除去でき、鋼板幅方向の温度むらが20℃となった。したがって、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。

0045

本発明例2では、圧延後に高周波誘導加熱装置によって鋼板表面温度を50℃昇温させた後、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が50℃であり、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングを噴射したため、スケールを完全に除去でき、鋼板幅方向の温度むらが20℃となった。したがって、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。

0046

本発明例3では、圧延後にローラーレベラーで矯正した後、高周波誘導加熱装置によって鋼板表面温度を50℃昇温させた後、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が50℃であり、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングを噴射したため、スケールを完全に除去できた。さらに、ローラーレベラーによって鋼板形状を矯正したことにより、高周波誘導加熱による加熱均一性が向上し、鋼板幅方向の温度むらが15℃となった。したがって、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。

0047

本発明例4では、圧延後に鋼板への投入熱量を100W/cm2、周波数を500Hzとして、高周波誘導加熱装置によって鋼板表面温度を50℃昇温させた後、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が50℃であり、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングを噴射したため、スケールを完全に除去できた。さらに、鋼板への投入熱量を100W/cm2、周波数を500Hzとしたことで、スケールが容易に剥離できただけでなく、鋼板幅方向で均一に加熱できたために、板幅方向の温度むらが15℃となった。したがって、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。

0048

本発明例5では、圧延後に鋼板への投入熱量を200W/cm2、周波数を1000Hzとして、高周波誘導加熱装置によって鋼板表面温度を50℃昇温させた後、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が50℃であり、エネルギー密度0.05J/mm2でデスケーリングを噴射したため、スケールを完全に除去できた。さらに、鋼板への投入熱量を200W/cm2、周波数を1000Hzとしたことで、鋼板幅方向でさらに均一に加熱できたために、板幅方向の温度むらが12℃となった。したがって、材質ばらつきの少ない高品質の鋼板が得られた。

0049

一方、比較例1では、圧延後に高周波誘導加熱およびデスケーリングをせずに、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に高周波誘導加熱およびデスケーリングをしなかったので、圧延中に生じた鋼板表面のスケールむらによって、鋼板幅方向の温度むらは45℃となり、材質ばらつきの問題があった。

0050

比較例2では、圧延後に高周波誘導加熱を行わずにエネルギー密度0.07J/mm2でデスケーリングをした後、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に高周波誘導加熱をしなかったので、エネルギー密度が0.07J/mm2であっても鋼板の一部にスケールが残存し、鋼板幅方向の温度むらが40℃となり、材質ばらつきの問題があった。

0051

比較例3では、圧延後に高周波誘導加熱によって鋼板表面温度を100℃昇温させた後、エネルギー密度0.04J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に高周波誘導加熱を行ったものの、エネルギー密度が0.04J/mm2と小さかったので、鋼板の一部にスケールが残存し、鋼板幅方向の温度むらが35℃となり、材質ばらつきの問題があった。

実施例

0052

比較例4では、圧延後に高周波誘導加熱によって鋼板表面温度を40℃昇温させた後、エネルギー密度0.07J/mm2でデスケーリングをし、加速冷却装置で冷却して鋼板を製造した。圧延後に行った高周波誘導加熱の昇温量が40℃と小さかったため、エネルギー密度が0.07J/mm2であっても鋼板の一部にスケールが残存し、鋼板幅方向の温度むらが35℃となり、材質ばらつきの問題があった。

0053

1加熱炉
2デスケーリング装置
3圧延機
4加速冷却装置
5高周波誘導加熱装置
6形状矯正装置
7 デスケーリング装置

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