図面 (/)

技術 動的バランス評価装置

出願人 アニマ株式会社
発明者 村瀬仁名古屋恭子
出願日 2016年3月28日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-064123
公開日 2017年10月5日 (3年1ヶ月経過) 公開番号 2017-176244
状態 特許登録済
技術分野 生体の呼吸・聴力・形態・血液特性等の測定
主要キーワード 平均重心 ラバーマット 限界面 外周面積 転倒リスク 作用中心点 重心情報 所定秒間
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年10月5日)のものです。
また、この項目は機械的に抽出しているため、正しく解析できていない場合があります

図面 (8)

課題

クロステスト時における被験者姿勢に着目することで、より精度の高い動的バランス評価を行う。

解決手段

重心動揺計を用いたクロステストによって被験者の姿勢安定性を評価する指標を取得する手段と、クロステスト時の被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、を備えた動的バランス評価装置。1つの態様では、前記姿勢情報取得手段は9軸センサーである。

概要

背景

バランス能力には静的バランス能力と動的バランス能力があり、動的バランス能力の評価手法として重心動揺計を用いたクロステストが知られている(非特許文献1〜4)。クロステストは、重心動揺計のフォースプレート上で被験者前後左右に身体を傾けた時の重心座標の時系列データを取得し、取得した時系列データを用いて所定の評価値を算出する。重心動揺計を用いたクロステストによって、例えば、前後左右に体を傾けて随意的最大重心移動範囲を取得することができる。クロステストにおける被験者の随意動作(前後左右の傾動)は共通するが、テストの具体的な手順や条件、評価値は標準化されてはおらず、異なる手順や条件(前後左右への傾動の順序傾動姿勢での静止時間開眼閉眼立位座位、フォースプレート上のラバーマットの有無、テスト時の視覚に対する指標の有無)、評価値が採用され得る。

非特許文献1、2では、log[(安定性限界面積+平均重心動揺面積)/平均重心動揺面積]で定義してなる姿勢安定度評価指標(IPS:Index of Postural Stability)が提案されている。安定性限界面積は前後、左右の重心移動位置における平均重心位置の距離を乗じた矩形面積として算出される。平均重心動揺面積は中央・前方・後方右方・左方に重心移動した位置における所定秒間(例えば、10秒間や15秒間)の矩形重心動揺面積平均値である。すなわち、一定の支持基底内で随意的に重心移動できる範囲を安定性限界と定義し、安定性限界が大きく重心動揺が小さいほど姿勢保持の安定性は高くなるという考えに基づき、安定性限界面積と重心動揺面積の比の対数値からIPSを算出している。IPSは非特許文献3においても採用されている。

非特許文献4では、評価値として、総軌跡長、前後の移動距離と左右の移動距離を乗じた矩形面積、軌跡図分析を目的とした「矩形面積/外周面積」を用いている。

クロステストは、具体的な手順や評価値の算出方法にかかわらず、重心座標の計測時に被験者が正しい姿勢であることが前提となるが、従来は計測時の被験者の姿勢が適正であったかという視点欠けており、せいぜい、被験者が正しい姿勢で計測できているかは目視で判断するしかなかった。IPS(姿勢安定度評価指標)はバランス能力をよく表す評価指標とされており、転倒評価に使用されているが、IPSの数値が良い場合でも病院から退院した後、転倒する事例がしばしば見受けられ、このことは、IPSだけでは転倒評価として不十分な場合があることを示唆している。

また、IPSは動的バランス能力についての総合評価を可能とするものではあるが、動的バランス能力についての評価値が異常値であった時に、IPSの値からその理由を把握することはできない。異常の原因がわかれば、転倒予防等の治療において有益である。特に、高齢者にとって転倒予防は重要な課題である。いかに転倒しないようにするかは、本人の転倒リスクを把握し、その弱点強化する必要がある。そのために転倒予測が行えることができる装置が必要である。

また、クロステストに限らず、重心動揺計上で被験者に重心を移動させるように所定の動作をさせた時の重心移動データを用いて動的バランス能力を評価する場合には、全ての被験者が予め決められた姿勢にしたがって所定の動作を行える保証はなく、重心移動時の姿勢は被験者毎に異なり得るものであり、各被験者固有の姿勢(この姿勢が何等かの疾患に起因する可能性もある)が重心移動に影響を与える可能性もある。すなわち、重心移動時の被験者の姿勢情報も動的バランス能力を評価する要件として捉えることができる。
望月久,峯島孝雄,重心動揺計を用いた姿勢安定度評価指標の信頼性および妥当性理学療法学,2000;27:199-103.
望月久,立位姿勢の安定感と重心動揺計によるバランス能力評価指標との関連性,文京学院大学保健医療技術学紀要第2 巻 2009:55-60
鈴木康裕, 中田由夫, 加秀典, 田邉裕基, 岩渕慎也, 石川公久,重心動揺計を用いた動的バランス能力と年齢の関連,体力科学Vol. 64 (2015) No. 4 p. 419-425
福山勝彦,丸山司,Cross testと他のバランス検査との関係,理学療法科学 Vol. 25 (2010) No.1 P 79-83

概要

クロステスト時における被験者の姿勢に着目することで、より精度の高い動的バランス評価を行う。重心動揺計を用いたクロステストによって被験者の姿勢安定性を評価する指標を取得する手段と、クロステスト時の被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、を備えた動的バランス評価装置。1つの態様では、前記姿勢情報取得手段は9軸センサーである。

目的

本発明は、重心動揺計上での被験者の重心移動時における被験者の姿勢に着目することで、より精度の高い動的バランス評価を行うことを目的とするものである。

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

この技術が所属する分野

ライセンス契約や譲渡などの可能性がある特許掲載中! 開放特許随時追加・更新中 詳しくはこちら

請求項1

重心動揺計上の被験者が、所定の方向に重心を移動させるように、基本姿勢から身体を所定の方向に傾動させた時の重心移動情報を取得する手段と、前記重心移動情報の取得に同期して、重心動揺計上の被験者の姿勢情報を取得する手段と、を備えた動的バランス評価装置。

請求項2

前記所定の方向の傾動は、前傾後傾、左傾、右傾の1つあるいは複数を含む、請求項1に記載の動的バランス評価装置。

請求項3

前記動的バランス評価装置は、前記重心移動情報、あるいは/および、前記姿勢情報を用いた解析手段を備えている、請求項1、2いずれか1項に記載の動的バランス評価装置。

請求項4

前記解析手段は、前記重心移動情報を用いて被験者の動的バランス能力を評価する指標を取得する手段を含む、請求項3に記載の動的バランス評価装置。

請求項5

前記動的バランス能力を評価する指標は、重心動揺計を用いたクロステストにおける姿勢定性評価指標である、請求項4に記載の動的バランス評価装置。

請求項6

前記解析手段は、前記姿勢情報を用いて傾動時の被験者の姿勢が適正であるか否かを判定する姿勢適正判定手段を含む、請求項3〜5いずれか1項に記載の動的バランス評価装置。

請求項7

前記姿勢情報は、被験者の身体の所定部位に装着された1つあるいは複数の慣性センサーによって取得される、請求項1〜6いずれか1項に記載の動的バランス評価装置。

技術分野

0001

本発明は、動的バランス評価装置に関するものである。

背景技術

0002

バランス能力には静的バランス能力と動的バランス能力があり、動的バランス能力の評価手法として重心動揺計を用いたクロステストが知られている(非特許文献1〜4)。クロステストは、重心動揺計のフォースプレート上で被験者前後左右に身体を傾けた時の重心座標の時系列データを取得し、取得した時系列データを用いて所定の評価値を算出する。重心動揺計を用いたクロステストによって、例えば、前後左右に体を傾けて随意的最大重心移動範囲を取得することができる。クロステストにおける被験者の随意動作(前後左右の傾動)は共通するが、テストの具体的な手順や条件、評価値は標準化されてはおらず、異なる手順や条件(前後左右への傾動の順序傾動姿勢での静止時間開眼閉眼立位座位、フォースプレート上のラバーマットの有無、テスト時の視覚に対する指標の有無)、評価値が採用され得る。

0003

非特許文献1、2では、log[(安定性限界面積+平均重心動揺面積)/平均重心動揺面積]で定義してなる姿勢安定度評価指標(IPS:Index of Postural Stability)が提案されている。安定性限界面積は前後、左右の重心移動位置における平均重心位置の距離を乗じた矩形面積として算出される。平均重心動揺面積は中央・前方・後方右方・左方に重心移動した位置における所定秒間(例えば、10秒間や15秒間)の矩形重心動揺面積平均値である。すなわち、一定の支持基底内で随意的に重心移動できる範囲を安定性限界と定義し、安定性限界が大きく重心動揺が小さいほど姿勢保持の安定性は高くなるという考えに基づき、安定性限界面積と重心動揺面積の比の対数値からIPSを算出している。IPSは非特許文献3においても採用されている。

0004

非特許文献4では、評価値として、総軌跡長、前後の移動距離と左右の移動距離を乗じた矩形面積、軌跡図分析を目的とした「矩形面積/外周面積」を用いている。

0005

クロステストは、具体的な手順や評価値の算出方法にかかわらず、重心座標の計測時に被験者が正しい姿勢であることが前提となるが、従来は計測時の被験者の姿勢が適正であったかという視点欠けており、せいぜい、被験者が正しい姿勢で計測できているかは目視で判断するしかなかった。IPS(姿勢安定度評価指標)はバランス能力をよく表す評価指標とされており、転倒評価に使用されているが、IPSの数値が良い場合でも病院から退院した後、転倒する事例がしばしば見受けられ、このことは、IPSだけでは転倒評価として不十分な場合があることを示唆している。

0006

また、IPSは動的バランス能力についての総合評価を可能とするものではあるが、動的バランス能力についての評価値が異常値であった時に、IPSの値からその理由を把握することはできない。異常の原因がわかれば、転倒予防等の治療において有益である。特に、高齢者にとって転倒予防は重要な課題である。いかに転倒しないようにするかは、本人の転倒リスクを把握し、その弱点強化する必要がある。そのために転倒予測が行えることができる装置が必要である。

0007

また、クロステストに限らず、重心動揺計上で被験者に重心を移動させるように所定の動作をさせた時の重心移動データを用いて動的バランス能力を評価する場合には、全ての被験者が予め決められた姿勢にしたがって所定の動作を行える保証はなく、重心移動時の姿勢は被験者毎に異なり得るものであり、各被験者固有の姿勢(この姿勢が何等かの疾患に起因する可能性もある)が重心移動に影響を与える可能性もある。すなわち、重心移動時の被験者の姿勢情報も動的バランス能力を評価する要件として捉えることができる。
望月久,峯島孝雄,重心動揺計を用いた姿勢安定度評価指標の信頼性および妥当性理学療法学,2000;27:199-103.
望月久,立位姿勢の安定感と重心動揺計によるバランス能力評価指標との関連性,文京学院大学保健医療技術学紀要第2 巻 2009:55-60
鈴木康裕, 中田由夫, 加秀典, 田邉裕基, 岩渕慎也, 石川公久,重心動揺計を用いた動的バランス能力と年齢の関連,体力科学Vol. 64 (2015) No. 4 p. 419-425
福山勝彦,丸山司,Cross testと他のバランス検査との関係,理学療法科学 Vol. 25 (2010) No.1 P 79-83

発明が解決しようとする課題

0008

本発明は、重心動揺計上での被験者の重心移動時における被験者の姿勢に着目することで、より精度の高い動的バランス評価を行うことを目的とするものである。

課題を解決するための手段

0009

本発明が採用した技術手段は、重心動揺計上の被験者が、所定の方向に重心を移動させるように、基本姿勢から身体を所定の方向に傾動させた時の重心移動情報を取得する手段と、前記重心移動情報の取得に同期して、重心動揺計上の被験者の姿勢情報を取得する手段と、を備えた動的バランス評価装置、である。重心移動情報及び姿勢情報は時系列データである。
1つの態様では、前記所定の方向の傾動は、前傾後傾、左傾、右傾の1つあるいは複数を含む。

0010

1つの態様では、前記動的バランス評価装置は、前記重心移動情報、あるいは/および、前記姿勢情報を用いた解析手段を備えている。
1つの態様では、前記解析手段は、前記重心移動情報を用いて被験者の動的バランス能力を評価する指標を取得する手段を含む。
1つの態様では、被験者の動的バランス能力を評価する指標は、前記重心移動情報を用いて取得した被験者の重心の可動域を用いて取得される。

0011

1つの態様では、前記動的バランス能力を評価する指標は、重心動揺計を用いたクロステストにおける姿勢安定性評価指標である。
すなわち、重心動揺計を用いたクロステストによって被験者の姿勢安定性を評価する指標を取得する手段と、
クロステスト時の被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、
を備えた動的バランス評価装置である。
クロステストと同期して被験者の姿勢情報を取得することで、クロステクとによって取得された姿勢安定性の評価指標に加えて、当該評価指標を取得した時の姿勢情報を用いて動的バランス評価を行うことができる。
典型的には、姿勢情報はクロステスト時の時系列データとして取得されるので、動作情報でもある。

0012

本発明において、姿勢安定性を評価する指標は典型的にはIPSであるが、これには限定されず、総軌跡長、矩形面積等の他の指標も含む。
クロステストにおける被験者の姿勢は、前傾姿勢後傾姿勢、左傾姿勢、右傾姿勢を含むが、傾動の順序は問わない。クロステストの条件は限定されず、開眼、閉眼、立位、座位、フォースプレート上のラバーマットの有無等、を含む。また、クロステストは、十字状の軌跡図の解釈を行わないものも含む。

0013

1つの態様では、前記解析手段は、前記姿勢情報を用いて傾動時(例えば、クロステスト時)の被験者の姿勢が適正であるか否かを判定する姿勢適正判定手段を含む。
1つの態様では、前記姿勢情報取得手段は、前傾姿勢、後傾姿勢、左傾姿勢、右傾姿勢の各姿勢における姿勢情報を取得し、
前記姿勢適正判定手段は、前傾姿勢、後傾姿勢、左傾姿勢、右傾姿勢の各姿勢について姿勢が適正であるか否かを判定する。
1つの態様では、前記姿勢適正判定手段は、取得した姿勢情報と、適正な姿勢を表す適正値(例えば、重心移動時の目標傾動姿勢)と、を比較して、姿勢の適正を判定する。
なお、前記「取得した姿勢情報」には、姿勢情報を直接表す計測値のみならず、計測値を用いて算出した値も含まれる。

0014

1つの態様では、前記動的バランス評価装置は、前記姿勢適正判定手段により被験者の姿勢が適正でないと判定された時に、傾動中(例えば、クロステスト中)の被験者に対して警告を発する警告手段を備えている。
警告は、典型的には、警告音を鳴らすことであるが、被験者に対して視覚的、触覚的に警告を与えるものでもよい。
本態様に係る動的バランス評価装置は、訓練装置としても機能することができ、動的バランス評価と訓練の両方を提供する。

0015

本発明において、姿勢情報は傾動時(例えば、クロステスト時)の時系列データとして取得されることから、姿勢情報取得手段としては、いわゆる動作計測手段を広く採用することができる。
1つの態様では、前記姿勢情報取得手段は、被験者の身体の所定部位に装着された1つあるいは複数の慣性センサーである。
加速度センサージャイロスコープ等の慣性センサーを用いて動作計測を行うことが知られており、近年、6軸センサー(3軸加速度センサー、3軸ジャイロスコープを備えたセンサーモジュール)や9軸センサー(3軸加速度センサー、3軸ジャイロスコープ、3軸地磁気センサーを備えたセンサーモジュール)を用いた動作分析が行われ始めている。本発明において、慣性センサーとして9軸センサーや6軸センサーが例示される。
姿勢情報取得手段として被験者の身体に取り付けた慣性センサーを用いることで、三次元動作分析のような大掛かりな装置は必要なく、比較的簡素な計測システムを構成することができるという利点がある。
なお、本発明に採用される姿勢情報取得手段は、慣性センサーに限定されるものではなく、また、三次元動作分析を排除するものではなく、例えば、光学式モーションキャプチャであってもよい。

0016

9軸センサーが取り付けられる部位は、「被験者のどの部位の動き・姿勢について把握したいか」に応じて、当業者において適宜選択される。後述する実施例では、クロステスト時の傾動の方法(アンクルストラテジーヒップストラテジー)を判別するために、身体の選択した部位(仙骨付近足首付近)に取り付けた9軸センサーによって姿勢情報を取得しているが、慣性センサーの個数取付部位は限定されない。

0017

後述する実施形態では、前記解析手段として、姿勢安定性評価値取得手段、姿勢適正判定手段を例示するが、解析手段は、これらに限定されるものではなく、身体の安定性の評価、姿勢の適正の評価、体幹の評価、体勢保持能力の評価を含み得る。解析手段としては、姿勢安定性評価値と姿勢情報を用いて体幹評価値を取得するもの、重心移動情報と姿勢情報の相関解析を行うもの、各時系列情報から変動やばらつきの大きさやパターンを解析するもの、姿勢安定性評価値と姿勢情報を用いて体幹評価値を取得するもの、疾患者データを用いるもの、を含み得る。

発明の効果

0018

本発明では、動的バランスを評価するための傾動時(重心移動時)の重心移動情報に加えて、傾動時(重心移動時)の被験者の姿勢情報を同期して取得するので、重心移動情報と被験者の身体の動きや姿勢がどのように関係しているかを姿勢情報から取得することができる。例えば、COPが前後方向に動いている場合、頭が揺れているのか、が揺れているのか、が揺れているのかなど、COPの動きの原因となる体の動きを、COPの情報だけではわからないことを、姿勢情報と組み合わせることで、被験者の身体の状態を表す情報を増やすことができる。これにより重心移動(COPの動き)の原因、姿勢の解析、そして評価が可能となる。
このように、本発明では、動的バランスを評価するための傾動時(重心移動時)の重心移動情報に加えて、傾動時(重心移動時)の被験者の姿勢情報を用いて、被験者の動的バランスを評価することができる。動的バランスの評価には、安定性の評価、体幹の評価、体勢保持能力の評価、姿勢の適正の評価、が含まれる。
本発明では、クロステストによって取得された姿勢安定性評価値に加えて、クロステスト時の被験者の姿勢情報を用いて、被験者の動的バランスを評価することができる。
クロステスト時の姿勢の状態を定量化し、姿勢の状態を目視でなく、数値で判断可能とすることで、姿勢安定性評価値のみによる転倒評価だけでは見えなかった転倒リスクを、クロステスト時の姿勢情報と組み合わせて検討することにより、より正確な転倒評価を行い、さらに転倒予測を可能とする。

図面の簡単な説明

0019

本発明に係る動的バランス評価装置の概要図である。
非特許文献1から引用した図であって、姿勢安定度評価指標(IPS)の算出方法の説明図である。
本実施形態に係る動的バランス評価装置の構成要素を示す図である。
第1実施例(2つの9軸センサーを用いる)を説明する図である。
第2実施例(1つの9軸センサーを用いる)を説明する図である。
転倒予防訓練装置を説明する図である。
他の転倒予防訓練装置を説明する図である。

実施例

0020

[A]本発明に係る動的バランス装置の概要
本発明に係る動的バランス評価装置は、重心動揺計上の被験者が、所定の方向に重心を移動させるように、基本姿勢から身体を所定の方向に傾動させた時の重心移動の時系列データを取得する手段と、前記重心移動の時系列データの取得に同期して、重心動揺計上の被験者の姿勢情報の時系列データを取得する手段と、を備えている。1つの態様では、前記所定の方向の傾動は、前傾、後傾、左傾、右傾の1つあるいは複数を含む。1つの態様では、前記動的バランス評価装置は、前記重心移動の時系列データを用いて被験者の動的バランス能力を評価する指標を取得する手段を備えており、典型的には、前記重心移動の時系列データから取得した被験者の重心の可動域を用いて被験者の動的バランス能力を評価する指標を取得する。本実施形態に係る動的バランス評価装置は、重心動揺計を用いたクロステスト(重心可動域検査)によって被験者の姿勢安定性を評価する指標を取得する手段と、クロステスト時の被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、を備えている。クロステストによって取得された姿勢安定度評価値に加えて、クロステスト時の被験者の姿勢情報を用いて、被験者の動的バランスを評価する。本発明に係る動的バランス評価装置の概要図を図1に示す。

0021

姿勢安定性評価値取得手段は、重心座標取得手段(重心動揺計)によって取得された直立時の重心動揺、前傾時の重心動揺、後傾時の重心動揺、右傾時の重心動揺、左傾時の重心動揺の計測データから姿勢安定性評価値を計算する。姿勢安定性評価値の算出の詳細は後述するが、適宜非特許文献1〜3を参照することができる。

0022

クロステストにおける重心座標の取得に同期して、姿勢情報取得手段によって、被験者の身体の姿勢情報を取得する。具体的には、前傾時の重心動揺が取得されている時には、その時の被験者の姿勢情報が取得され、後傾時の重心動揺が取得されている時には、その時の被験者の姿勢情報が取得され、右傾時の重心動揺が取得されている時には、その時の被験者の姿勢情報が取得され、左傾時の重心動揺が取得されている時には、その時の被験者の姿勢情報が取得される。

0023

クロステストの各傾動姿勢と姿勢情報取得手段によって取得された姿勢情報の同期は、コンピュータに内蔵されたタイマーによって行うことができる。クロステストでは、身体の傾動の順序及び各傾動姿勢の維持時間が予め決められているので、クロステストと姿勢情報取得手段よる計測の開始時間を合わせることによって、経過時間によって取得された姿勢情報とクロステストにおける各傾動姿勢(前傾姿勢、後傾姿勢、右傾姿勢、左傾姿勢)を対応させることができる。

0024

クロステスト時の姿勢の状態を姿勢情報取得手段によって姿勢情報として定量化し、姿勢の状態を目視でなく、数値で判断する。各傾動姿勢に対応する姿勢情報あるいは当該姿勢情報から計算した値は、姿勢評価値として用いることができる。姿勢評価値によって被験者のある姿勢の状態を把握できる場合には、姿勢評価値自体を用いて姿勢を評価することができる。例えば、後述するように、クロステスト時の傾動姿勢においてヒップストラテジーがとられている場合(姿勢情報から評価することができる)には、姿勢安定性評価値が適正範囲にあったとしても、転倒リスクの懸念があると評価できる。また、被験者が抱えている何等かの症例が、クロステスト時における特有の姿勢として現れる場合もあり得る。クロステスト時の被験者の姿勢の状態を定量化することにより、効果的な治療や訓練を行うことができる。

0025

動的バランス装置は姿勢適正判定手段を備えており、各傾動姿勢(前傾時、後傾時、右傾時、左傾時)についての適正値が予め設定されており、姿勢情報と適正値を対比することで、クロステストの傾動時に、身体のある部位が適正姿勢であるか、あるいは、適正姿勢から逸脱しているかを評価することができる。クロステスト時の姿勢が適正姿勢から逸脱している場合には、姿勢安定性評価値のみに依存して動的バランスや転倒可能性を評価することは望ましくない。一方、クロステストにおける前傾時、後傾時、右傾時、左傾時のいずれの場合にも適正姿勢である場合には、姿勢安定性評価値の信頼性は高いものと考えられる。

0026

姿勢適正判定手段をクロステスト時あるいはクロステストを模した動作時にリアルタイムで実行することで、姿勢適正判定手段により被験者の姿勢が適正姿勢から逸脱していると判定された時に、警告手段によって、被験者に対してリアルタイムで警告を発してもよい。警告は例えば音を出すことであり、警告手段は、スピーカーを備えたコンピュータから構成することができる。

0027

[B]姿勢安定性評価指標取得手段
姿勢安定性評価指標取得手段は、クロステスト時の重心動揺計の計測値を用いて姿勢安定性評価値を算出する。重心動揺計は、被験者が載る足載せ台と、足載せ台の所定の複数箇所に作用する荷重を検出する荷重検出手段と、を備えるフォースプレートと、前記荷重データを用いてXY平面上の重心座標の時系列データを取得する重心座標取得手段と、を備えている。重心座標取得手段、重心移動速度取得手段は、コンピュータの処理部によって構成することができ、取得された重心座標の時系列データはコンピュータの記憶部に記憶される。

0028

荷重検出手段は、例えば、複数個ロードセルから構成されており、複数個のロードセルで取得された値から荷重の作用中心点(COP: Center of Pressure)が取得され、COPをXY座標上での重心位置とみなす。COPの座標は、足載せ台(床面)の面方向のXY平面として、XY座標で取得される。各ロードセルで取得される荷重情報は、逐次コンピュータに送信され、コンピュータの演算手段でCOPを所定の単位時間毎に逐次求めることで、COP(XY座標値)の時系列データを取得することができる。重心位置の計算に用いた荷重情報及び得られた重心位置のデータ(XY座標値)は、取得時間と共に記憶部に記憶され、測定開始時から測定終了時までの重心位置の経時的な移動軌跡が得られる。処理部は、重心座標の時系列データを用いて、各種パラメータ軌跡長、外周面積等)を算出することができる。

0029

本実施形態に係るクロステストは、評価値としてIPS(非特許文献1〜3参照)を採用する。IPSの説明について、以下に非特許文献2の記載を引用する。
『IPSは望月らが考案した重心動揺計を用いたバランス能力の評価指標であり、Berg Balance Scale と強い相関をもち、被験者の歩行能力とも関連性を有している。IPSの基本的な考え方は、「一定の支持基底面内で重心移動できる範囲である安定性限界(stability limits)内に身体重心線が収まっていることが姿勢保持の要件であり、安定性限界が大きく重心動揺が小さいほど安定域から重心線の外れる確率が低くなり、姿勢保持の安定性は高くなる」というものである。この考え方を数値化するために、安定性限界面積と重心動揺面積の比の対数値を用いている。
IPSを求めるために、中央および前方・後方・右方・左方の順で重心移動した位置において、初期の大きな動揺がおさまった時点から重心動揺を測定した。重心動揺の測定
時間は使用した重心動揺計の初期設定最小値である15秒とした。被験者には、前方を向いたまま安定して立位を保てる範囲で、前方(つま先に体重がかかりが浮くよう
感じ)、後方(踵に体重がかかりつま先が浮くような感じ)、右方(左足が浮かない範囲で体重を右足にかける)、左方(右足が浮かない範囲で左足に体重をかける)に重心を移動し、その位置でなるべく静止するように指示した。
安定性限界面積は前後、左右の重心移動位置における平均重心位置の距離を乗じた矩形面積として算出した。重心動揺面積は中央・前方・後方・右方・左方に重心移動した
位置における15秒間の矩形重心動揺面積の平均値を用いた。IPS はlog〔(安定性限界面積+重心動揺面積)/ 重心動揺面積〕として算出した。』

0030

非特許文献1では、手順及び条件について「開眼および足底内側を平行に10cmは離した軽度開脚立位とし、両上肢下垂位とする。初期の大きな動揺がおさまった時点から10秒間の重心動揺を測定し、被験者に直立姿勢を変えないように体を傾けるように指示し、前方、後方、右方、左方の順で重心移動した位置における10秒間の重心動揺を測定する。」と記載されている。図2及び以下の算出式は、非特許文献1から引用したものであり、IPS測定の概要を示す。

重心動揺面積は、重心動揺軌跡の前後の最大径と左右の最大径を乗じた矩形面積である。安定域面積は、前方への重心移動位置と後方への重心移動位置における10秒間の重心動揺中心の距離に、右方への重心動揺位置と左方への重心動揺位置における10秒間の重心動揺中心の距離を乗じた矩形面積である。重心動揺面積の代表値として、中央および前方、後方、右方、左方重心移動位置の5測定の平均値を用いた。これらの値(重心動揺面積、安定域面積、IPS)は、フォースプレート上での被験者の前後左右の傾動時の重心座標の時系列データを用いてコンピュータの処理部によって算出することができる。なお、上記IPSの算出式は、IPSの基本的な考え方から逸脱することなく、改良ないし修正し得るものであり、そのような改良版ないし修正版も本明細書におけるIPSに含まれる。例えば、非特許文献1では、クロステストの計測方法は、中央、前、後、右、左の5回であるが、最後に再度中央を行って6回で計測してもよく、また、前後左右の順番に関しても、前後よりも先に右左を行ってもよい。

0031

上記IPSを評価値とするクロステストは、本発明に用いられる典型的なクロステストを例示するものであって、本発明に用いられるクロステストを限定するものではない。例えば、非特許文献3では、「重心動揺計上に開眼、5cm開脚位で起立させ、1m前方の目標点注視したまま、身体の重心を踵を浮かせたり体屈曲側屈させたりすることなく、前・後・左・右の順で移動させた。各方向への重心移動は3秒間の安静立位の後、検者の数える1から6の号令にあわせ、3で最大、6で元に戻るようにした。右方移動後、3秒間の安静立位で終了し、全体で30秒間の試行とした。」と記載されており、評価値については、総軌跡長(LNG)、前後の移動距離と左右の移動距離を乗じた矩形面積(REC AREA)、軌跡図を分析するための「矩形面積(REC AREA)/外周面積(ENV AREA)」を用いている。

0032

[C]姿勢情報取得手段
本実施形態では、姿勢情報取得手段として9軸センサーが採用され、9軸センサーを用いてクロステスト時の被験者の姿勢情報(姿勢情報の時系列データ、すなわち動作情報)を取得する。9軸センサーを用いた動作計測システムは、被験者の所定部位に装着した9軸センサーと、9軸センサーからの計測データを受信する受信機と、受信機で得られた各種データに基づく計算を実行するコンピュータと、から構成される。9軸センサーは、3軸加速度センサー、3軸ジャイロスコープ(ジャイロセンサ)、3軸地磁気センサー、制御部(MCU等)、バッテリ無線通信機能ブルートゥース等)を備えたセンサーモジュールである。

0033

コンピュータは、受信機より得たセンサーデータを保存し、被験者の姿勢を再構成して、動作分析(例えば、クロステスト時の姿勢の適正の有無)を行う。コンピュータは、入力部、出力部、演算部、記憶部、表示部等を備える汎用コンピュータから構成することができる。入力部から入力されたセンサーデータ(加速度データ角速度データ地磁気データ)は記憶部に記憶され、演算部によって所定の計算が実行されて(例えば、加速度データの積分による位置情報、角速度データの積分による角度情報)、計算結果は記憶部に記憶されると共に、必要に応じて、出力部から出力、あるいは/および表示部で表示される。後述する実施例では、9軸センサーの姿勢情報としてオイラー角を採用するが、9軸センサーから出力されるオイラー角は、加速度センサーの出力値に加えて、ジャイロスコープ、地磁気センサーの出力値を用いて補正された高精度の値となっている(このような機能を備えた9軸センサーモジュール既知である)。重心動揺計を用いたクロステストによって被験者の姿勢安定性を評価する指標を取得する手段に用いられるコンピュータと、クロステスト時の被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段に用いられるコンピュータは、同一のコンピュータでも別個のコンピュータでもよい。

0034

9軸センサーが取り付けられる部位は、「被験者のどの部位の動き・姿勢について把握したいか」に応じて、当業者において適宜選択される。後述する実施例では、クロステスト時の傾動の方法(アンクルストラテジーとヒップストラテジー)を判別するために、仙骨付近、および/あるいは、足首付近に取り付けた9軸センサーによって姿勢情報を取得している。9軸センサーが取り付けられる部位は実施例に限定されるものではなく、体幹(頭部、頸部胸部腹部骨盤部尾部)、上肢(上腕前腕、手、肩、)、下肢大腿部下腿部、足部、膝)から当業者において適宜選択され得るものであり、例えば、頭頂部後頭部、頸部、腰椎部、胸部、腰部仙骨部、下肢部、足部、すね部から選択された1つあるいは複数個所に慣性センサーが取り付けられ得る。例えば、クロステスト時の頭の曲げ具合の影響を見たり、腰から上の上半身(頭、肩を含む)を曲げてしまう場合を把握するためには、頭部に9軸センサーを取り付けることが有利である。また、クロステスト時に肩が回ってしまって重心移動が正しくできない場合に、1個の9軸センサーを肩部に取り付けて重心移動の訓練を行うこともできる。

0035

9軸センサーは、姿勢情報取得手段の一例であり、6軸センサー(3軸加速度センサー、3軸ジャイロスコープ)、3軸加速度センサー、その他角度が計れて同期できる装置であれば良い。姿勢情報取得手段として慣性センサーを用いることは、計測を簡素化できる点において有利であるが、本発明は、いわゆる三次元動作分析手段を排除するものではない。三次元動作分析の計測方式としては、例えば、光学式モーションキャプチャ(典型的には、赤外線反射方式が採用される)による動作分析システムが良く知られている。光学式モーションキャプチャでは、複数の光学マーカー(赤外線反射マーカー)を被験者の所定部位に取り付け、複数のカメラで被験者の動作を撮影することで、光学マーカーの移動軌跡から被験者の動作を計測する。

0036

[D]重心動揺計によるクロステストと9軸センサーによる姿勢情報の同期計測
上述のように、重心動揺計を用いたクロステストでは、前後左右に体を傾けて随意的最大重心移動範囲を計測することができ、これによりIPS(姿勢安定度評価指標)を算出することができる。重心動揺計を使用したクロステストの検査時に9軸センサーを被験者の身体に貼付け同時計測し、重心動揺計から取得された情報(IPS)と9軸センサーから取得された情報(姿勢情報)を相互に解析し、重心動揺計ではわからなかったクロステスト時の姿勢情報を取得し、転倒予測性を高め、また、転倒防止のための訓練装置を提供する。

0037

図3に示すように、本実施形態に係る動的バランス評価装置は、重心動揺計、9軸センサー、コンピュータ、モニター、を備えている。重心動揺計、9軸センサー、コンピュータについては、既述の記載を援用することができる。モニターは、主として訓練時に用いられ、被験者に対して視覚的なフィードバックを行って訓練を行う。モニター内に前後左右の重心の目標位置と自分の重心位置(重心動揺計によって取得される)を表示させ、被験者に提示する。被験者は、自分の重心位置を意識しながら目標位置に重心を移動させるように傾動する。なお、クロステスト時にモニターを用いてもよい。

0038

9軸センサーを被験者の身体の所定部位に取り付ける。身体の所定部位に取り付けた9軸センサーの姿勢情報(オイラー角)から被験者の身体の姿勢情報を取得する。クロステスト開始前の直立した立姿にある身体に取り付けられた9軸センサーの姿勢を初期位置(オイラー角は0度)とすると、クロステスト時における身体の傾動によって身体に取り付けられた9軸センサーの姿勢も変化するため、傾動時の9軸センサーの姿勢情報(オイラー角)から被験者の姿勢情報を取得することができる。

0039

クロステストと姿勢情報の同期は、コンピュータに内蔵されたタイマーによって行うことができる。クロステストでは、身体の傾動の順序及び各傾動姿勢の維持時間が予め決められているので、クロステストと9軸センサーによる計測の開始時間を合わせることによって、経過時間によって9軸センサーにより取得された情報(例えば、オイラー角)とクロステストにおける各傾動姿勢(前傾姿勢、後傾姿勢、右傾姿勢、左傾姿勢)を対応させることができる。こうすることで、重心動揺計から出力される重心情報の時系列データ(COP)と被験者の身体の動きや姿勢がどのように関係しているかを9軸センサーで捉えることができる。例えば、COPが前後方向に動いている場合、頭が揺れているのか、腰が揺れているのか、膝が揺れているのかなど、COPの動きの原因となる体の動きを、COPの情報だけではわからないことを、9軸センサーからのデータと組み合わせることで、被験者の身体の状態を表す情報を増やすことができる。これによりCOPの動きの原因、姿勢の解析、そして評価が可能となる。

0040

1つの態様では、9軸センサーにより取得された情報を用いて被験者の姿勢の適正を判定する。具体的には、前傾姿勢、後傾姿勢、左傾姿勢、右傾姿勢のそれぞれの姿勢において、オイラー角の適正範囲が予め設定されており、計測時のオイラー角と適正値とを比較し、計測値が適正値の範囲にある時に被験者の姿勢が適正であると判定し、計測値が適正値の範囲から逸脱した時に被験者の姿勢が適正でないと判定する。

0041

後述する実施例では、計測時の傾動の方法(アンクルストラテジーとヒップストラテジー)を判定可能なように9軸センサーが身体の所定部位に取り付けられる。クロステスト時はアンクルストラテジー(足関節戦略)でバランスをとり計測を行うことになっているが、9軸センサーから出力された姿勢情報(オイラー角)から、被験者の姿勢がヒップストラテジー(股関節戦略)であることを把握することができる。

0042

人は転倒しそうになったとき、バランスをとるために通常は足関節で対応し回避するが、足関節の筋力の低下などがあると股関節により代償しようとするが対応しきれず転倒することが多くなる。高齢者の転倒はこのように足関節の筋力の低下が大きな要因である。すなわち、高齢者の場合ヒップストラテジーでバランスをとる傾向があり、これにより転倒しやすくなると言われ、また、随意的な重心移動能力は転倒との関連が強いと言われている。クロステスト時に9軸センサーを組み合わせて検査することで、随意的な重心移動能力とヒップストラテジーの有無を同時に検査評価することができる。クロステスト時に被験者の姿勢情報(ヒップストラテジー)を取得することで、検査時に姿勢を正す必要があることをリアルタイムで警告(例えば、警告音を発する)することができる。高齢者の転倒の原因である足関節の筋力の低下をIPSと姿勢情報(ヒップストラテジー)バランス能力(IPSとヒップストラテジー)から予測して、筋力強化用に訓練装置を提供することができる。被験者に対して、姿勢の適否について音によりフィードバック等を行うことで、効率的な訓練を行うことができる。

0043

[実施例1]
図4を参照しつつ、実施例1について説明する。実施例1では、被験者が2つの9軸センサーを装着してクロステストを行う。計測手順は以下の通りである。
(1)9軸センサーを被験者の身体の上肢(仙骨付近)、及び、下肢(片方の足首付近)に取り付ける。
(2)初期位置(直立姿勢)で9軸センサーのオフセット処理を行う。各センサーのオイラー角は0度となる。
(3)重心動揺計を用いたクロステストを実行する同時に9軸センサーの計測も同時に行う。この時、タイマー同期を行って計測開始時間を合わせる。
(4)クロステストにおける前後左右への傾動時の2つのセンサーのオイラー角をそれぞれ求める。また、2つのセンサーの相対角を求める。
相対角は、第1の9軸センサーの、センサー座標系から世界座標系への変換行列をM1、
第2の9軸センサーの、センサー座標系から世界座標系への変換行列をM2、とした際に、
inv(M1)M2の計算でえられる変換行列から計算したオイラー角であり、inv(M1)はM1の逆行列である。
(5)前後左右の各方向とオイラー角から計測時の傾動の方法(アンクルストラテジーとヒップストラテジー)が分かる。例えば、前後左右の各傾動姿勢毎に予め適正なオイラー角を設定しておき、計測時のオイラー角がそこから逸脱した時にヒップストラテジーと判定される。
(6)クロステストで取得されるIPSとセンサーの各角度を使用して評価を行う。

0044

図4に示すように、左右方向をx軸、上下方向をy軸、前後方向をz軸とすると、前傾、後傾は主としてx軸周りの回転となり、左傾、右傾は主としてz軸周りの回転となる。これらの被験者の身体の回転は、被験者の身体に取り付けた9軸センサーの姿勢情報(オイラー角)から把握することができる。傾動時の適正姿勢では、いわゆるアンクルストラテジーがとられている。図5から読み取れるように、適正姿勢では、2つの9軸センサーの傾きがほぼ同じである。一方、いわゆるヒップストラテジーがとられる場合には、2つの9軸センサーはそれぞれ異なる傾きとなる。各9軸センサーのオイラー角からクロステスト時の被験者の姿勢が適正であるか(アンクルストラテジー)、適正でないか(ヒップストラテジー)、を判定することができる。

0045

[実施例2]
図5を参照しつつ、実施例2について説明する。実施例2では、被験者が1つの9軸センサーを装着してクロステストを行う。9軸センサーは比較的高価であるため、1つの9軸センサーのみでも簡易に計測できるようにする。計測手順は以下の通りである。
(1)9軸センサーを体に1か所(例えば、腰仙骨付近や片方の足首付近)に取り付ける。
(2)初期位置(直立姿勢)でセンサーのオフセット処理を行う。これによりセンサーのオイラー角は0度となる。
(3)クロステストにおける前後左右への傾動時において、前後左右の各方向とオイラー角から計測時の傾動の方法(アンクルストラテジーとヒップストラテジー)が分かる。例えば、前後左右の各傾動姿勢毎に予め適正なオイラー角を設定しておき、計測時のオイラー角がそこから逸脱した時にヒップストラテジーと判定される。
(4)クロステストで取得されるIPSとセンサーの各角度を使用して評価を行う。

0046

図6から読み取れるように、適正姿勢とそうでない場合には、9軸センサーの傾きが異なる。9軸センサーの姿勢情報(オイラー角)の適正範囲を予め設定しておくことで、9軸センサーのオイラー角からクロステスト時の被験者の姿勢が適正であるか(アンクルストラテジー)、適正でないか(ヒップストラテジー)、を判定することができる。

0047

実施例1、2について説明したが、重心動揺計で取得される情報はCOPだけで情報としては少ないので、9軸センサーと同期計測することで、角度情報も取得でき、身体の安定性や姿勢情報を見ることができる。このとき、9軸センサー1つでなく2つ付けることで情報量が増す。各9軸センサーの情報をそれぞれ解析することと、2つのセンサーの関係をみることでさらに情報量が増し解析範囲を広げることができる。
解析としては、2つの9軸センサーから得られた情報の相関や重心動揺計から得られたCOPと9軸データから得られた情報の相関、それぞれの時系列情報を用いて変動やばらつきの大きさやパターンを解析することが例示される。またその際にIPSの情報を加えて体幹の評価値・バランス指標として解析を行うことができる。例えば、クロステストで得られるIPSと9軸センサーから得られるオイラー角を使用して体幹のねじれとの関係を求め、バランス指標を算出する。
体幹の評価値またはバランス指標を算出する際には、9軸センサーの取付位置は、足部ではなく脊柱上の腰と頸椎などが有利である。さらに、計測時には重心動揺計プレートの上にマットを載せ不安定面条件での評価も一緒に行えば、より体幹評価が可能となる。
上記のような相関やばらつきの解析など一般的な解析に加えて、疾患者データを用いて解析を行ってもよい。
また前後左右方向のCOPの中心を結んで、いわゆるひし形解析(左右前後の移動のバランスやゆがみ度を把握することができる)を行うことに加えて、9軸センサーで取得したデータについてひし形解析を行ってもよい。また、MT法(マハラノビスタグチ法)を用いて解析を行ってもよい。
このような重心移動情報、あるいは/および、姿勢情報を用いた解析手段はコンピュータによって構成することができる。

0048

図6に転倒予防訓練機能を備えた動的バランス装置を示す。
(1)上記のクロステストと同じように、重心動揺計の上に立ち9軸センサーを装着してクロステストと同様に前後左右に体を傾けて姿勢の保持の訓練を行う。これをクロス訓練という。
(2)クロス訓練ではできるだけ足関節を鍛えるように、9軸センサーからの情報を使用して音によるフィードバックを行い、ヒップストラテジーで姿勢を制御している際には音を鳴らし、被験者に注意を促す。

0049

検査だけでなくクロス訓練として、重心動揺計により重心移動能力を見ながら、9軸センサーとの同期を行い姿勢の状態を把握し、ヒップストラテジーにならないよう、音によるフィードバック訓練を行う。前後左右に重心移動させる動的なバランス能力を、被験者に重心位置と同時に角度を意識させることにより、姿勢に注視した訓練を行うことができる。訓練機能を使用することで、足関節の筋力強化、最大重心移動範囲を拡大させることができ、それにより転倒のリスクを軽減させる効果が期待できる。また、音によるフィードバックを使用することで、被験者に分かりやすい足関節の訓練を行うことができ、転倒予防につながる。
[付記]
転倒予防訓練機能を備えた動的バランス装置は、重心動揺計のフォースプレート上でクロステストを模して傾動する被験者の姿勢情報を取得する姿勢情報取得手段と、
前記姿勢情報を用いてクロステストを模して傾動する被験者の姿勢が適正であるか否かを判定する姿勢適正判定手段と、
前記姿勢適正判定手段により被験者の傾動姿勢が適正でないと判定された時に、クロステストを模して傾動中の被験者に対して警告を発する警告手段と、
を備えた動的バランス評価装置、である。
クロステストを模した傾動は、前傾、後傾、左傾、右傾から選択された1つあるいは複数であり、1つの態様には、前傾、後傾、左傾、右傾の全てを含む。
本動的バランス評価値は、転倒予防のための訓練装置を提供するものであり、重心動揺計によって重心動揺を取得して姿勢安定性評価値を取得することは必須ではないが、姿勢安定性評価値を取得する場合には、被験者に対してクロステストと訓練を同時に提供することができる。
1つの態様では、前記動的バランス評価装置は、前記重心動揺計によって取得した重心と目標位置を表示する表示部(モニター)を備え、被験者は、自己の重心を目標位置に近づけるように身体を傾動する。
転倒予防には足関節の筋力が必要である。そのための訓練機能を重心動揺計と姿勢情報取得手段の組み合わせにより行い、筋力強化を行うことができる。

0050

図7に他の転倒予防訓練の参考例を示す。転倒予防には足関節の筋力を強化する必要がある。そのための訓練方法として、つま先立ち訓練を行う。この時、9軸センサーを足首付近に付けて訓練を行う。つま先立ち時の重心の移動と9軸センサーの加速度情報を使用して音によるフィードバックを行う。

ページトップへ

この技術を出願した法人

この技術を発明した人物

ページトップへ

関連する挑戦したい社会課題

関連する公募課題

ページトップへ

技術視点だけで見ていませんか?

この技術の活用可能性がある分野

分野別動向を把握したい方- 事業化視点で見る -

ページトップへ

おススメ サービス

おススメ astavisionコンテンツ

新着 最近 公開された関連が強い技術

  • 積水ハウス株式会社の「 安否確認システム」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】居住者の異常を的確に判定し、異常が生じた場合に、より安全に、より確実に、かつ速やかに対応する。【解決手段】住居(10)に設置され、居住者(15)少なくとも心拍数および呼吸数を非接触で検知する第... 詳細

  • 三門器恒機械設備有限公司の「 居眠り防止ステアリングホイールカバー」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】本発明は居眠り防止ステアリングホイールカバーを開示した。【解決手段】ステアリングホイールの左側と右側にそれぞれカバーされた左側カバー殻と右側カバー殻を含み、振動ブロックは通電して振動し始めると... 詳細

  • 株式会社SOKENの「 生体情報検知装置」が 公開されました。( 2020/09/24)

    【課題】生体信号を検出できない位置に配置されたセンサを利用するのとは別の方法で、生体信号を検出するセンサの出力に重畳されるノイズの影響を抑制する。【解決手段】生体情報検知装置は、人の生体活動を検出する... 詳細

この 技術と関連性が強い技術

関連性が強い 技術一覧

この 技術と関連性が強い人物

関連性が強い人物一覧

この 技術と関連する社会課題

関連する挑戦したい社会課題一覧

この 技術と関連する公募課題

関連する公募課題一覧

astavision 新着記事

サイト情報について

本サービスは、国が公開している情報(公開特許公報、特許整理標準化データ等)を元に構成されています。出典元のデータには一部間違いやノイズがあり、情報の正確さについては保証致しかねます。また一時的に、各データの収録範囲や更新周期によって、一部の情報が正しく表示されないことがございます。当サイトの情報を元にした諸問題、不利益等について当方は何ら責任を負いかねることを予めご承知おきのほど宜しくお願い申し上げます。

主たる情報の出典

特許情報…特許整理標準化データ(XML編)、公開特許公報、特許公報、審決公報、Patent Map Guidance System データ