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技術 加振診断装置及び加振診断方法

出願人 株式会社日立製作所
発明者 荒井輝片山大樹彭世超福地貴樹松下修己
出願日 2016年3月25日 (3年4ヶ月経過) 出願番号 2016-061566
公開日 2017年9月28日 (1年10ヶ月経過) 公開番号 2017-173224
状態 特許登録済
技術分野 弾性の調査及び振動試験 機械部品、その他の構造物または装置の試験 非容積形送風機の制御
主要キーワード 回転振動数 三次モード 接触防止用 運転回転速度 二次モード 一次固有振動数 回転羽根車 電流供給装置
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図面 (12)

課題

シールホワールに起因する回転体自励振動の発生を正確に予測する。

解決手段

本発明の加振診断装置は、回転機械の回転体の軸端非接触支持するとともに所定の加振制御信号によって回転体に加振力を与える磁気軸受と、磁気軸受又は回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置、及び、磁気軸受以外に回転体を支持する2つの軸受の位置の計3箇所における回転体の振動を測定する振動測定部と、磁気軸受に電流を供給する電流供給部と、回転体を加振するように磁気軸受を制御する加振制御信号を電流供給部に出力するとともに、回転体の加振制御信号に対する振動応答を測定する加振・応答処理部と、を備えることを特徴とする。

概要

背景

油田火力発電所等には、横軸多段ポンプが配置されている。横軸多段ポンプは、複数段からなる遠心羽根車回転軸とともに回転させて遠心力を発生させ、その遠心力によって流体の圧力を上昇させる回転機械である。このような回転機械においては、回転体軸受に支持されて回転する。回転体は特有振動特性を有する。そして、回転体又は軸受の経年劣化に伴い、その振動特性が変化していく。このような回転体の振動特性を把握する技術が多く存在する。

特許文献1の加振機能付振動診断装置は、タービンポンプ等の大型の回転機械に対し加振力を加え、回転機械に取り付けたセンサから振動応答を取得する。そして、加振力と振動応答に基づいて回転機械の振動特性を取得する。大型の回転機械の運転回転速度は比較的低い。しかしながら特許文献1の加振機能付振動診断装置は、その運転回転速度よりも高い周波数を有する加振力を発生させることができる。したがって、運転状態(停止中、運転中)に関係なく、例えば運転回転速度よりも高い回転速度の領域に固有振動数が存在する場合でも、その固有振動数を特定することができる。

特許文献2の振動特性測定装置は、非接触軸受を介して回転体に対して加振力を加え、回転体の振幅をセンサから取得する。そして、加振力と振幅に基づいて回転体の振動特性を取得する。このとき回転体に加えられえる加振力は、回転体の不釣合い運動打ち消す振動を含んでいる。すると、加振力による回転体の応答を検出するとき、振幅の許容値に対するマージンが大きくなる。したがって、例えば、回転体の周りに流体が流れている条件において振動特性を調べる場合、流体の逆流防止のためのシールを破損することがなくなる。

概要

シールホワールに起因する回転体の自励振動の発生を正確に予測する。本発明の加振診断装置は、回転機械の回転体の軸端非接触支持するとともに所定の加振制御信号によって回転体に加振力を与える磁気軸受と、磁気軸受又は回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置、及び、磁気軸受以外に回転体を支持する2つの軸受の位置の計3箇所における回転体の振動を測定する振動測定部と、磁気軸受に電流を供給する電流供給部と、回転体を加振するように磁気軸受を制御する加振制御信号を電流供給部に出力するとともに、回転体の加振制御信号に対する振動応答を測定する加振・応答処理部と、を備えることを特徴とする。

目的

本発明は、シールホワールに起因する回転体の自励振動の発生を正確に予測することを目的とする

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

回転機械回転体軸端非接触支持するとともに所定の加振制御信号によって前記回転体に加振力を与える磁気軸受と、前記磁気軸受又は前記回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置、及び、前記磁気軸受以外に前記回転体を支持する2つの軸受の位置の計3箇所における前記回転体の振動を測定する振動測定部と、前記磁気軸受に電流を供給する電流供給部と、前記回転体を加振するように前記磁気軸受を制御する前記加振制御信号を前記電流供給部に出力するとともに、前記回転体の前記加振制御信号に対する振動応答を測定する加振・応答処理部と、を備えることを特徴とする加振診断装置

請求項2

前記電流供給部は、前記加振・応答処理部から前記加振制御信号を受け取り、前記受け取った加振制御信号に基づいて電流を発生させ、前記発生させた電流を前記磁気軸受に供給し、前記磁気軸受は、前記電流供給部から前記電流を受け取り、前記受け取った電流によって前記加振制御信号に基づく所定の加振周波数の加振力を前記回転体に与えること、を特徴とする請求項1に記載の加振診断装置。

請求項3

前記加振・応答処理部は、前記加振周波数に等しい振動数の前記回転体の振動応答を測定すること、を特徴とする請求項2に記載の加振診断装置。

請求項4

前記加振・応答処理部は、前記磁気軸受又は前記回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置における振動応答から、前記2つの軸受の位置における振動応答を減算する信号処理を行うこと、を特徴とする請求項3に記載の加振診断装置。

請求項5

前記加振・応答処理部は、前記加振周波数を変化させ、前記信号処理を行った振動応答を実数部及び虚数部に分け、実数部がゼロになる加振周波数を一次曲げモードの固有振動数として求め、虚数部がゼロになる加振周波数を剛体モードの振動数として求めること、を特徴とする請求項4に記載の加振診断装置。

請求項6

前記加振・応答処理部は、前記求めた一次曲げモードの固有振動数が前記求めた剛体モードの振動数に等しくなる回転速度を、前記回転体の自励振動が発生する回転速度として決定すること、を特徴とする請求項5に記載の加振診断装置。

請求項7

加振・応答処理部が、回転機械の回転体を加振するように磁気軸受を制御する所定の加振制御信号を電流供給部に出力するステップと、前記電流供給部が、前記回転体の軸端を非接触支持する前記磁気軸受に電流を供給するステップと、前記磁気軸受が、前記加振制御信号によって前記回転体に加振力を与えるステップと、振動測定部が、前記磁気軸受又は前記回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置、及び、前記磁気軸受以外に前記回転体を支持する2つの軸受の位置の計3箇所における前記回転体の振動を測定するステップと、前記加振・応答処理部が、前記回転体の前記加振制御信号に対する振動応答を測定するステップと、を備えることを特徴とする、前記加振・応答処理部、前記電流供給部、前記磁気軸受及び前記振動測定部を備える加振診断装置の加振診断方法

技術分野

0001

本発明は、加振診断装置及び加振診断方法に関する。より具体的には、本発明は、横軸多段ポンプ等の回転機械回転体振動特性を測定する技術に関する。

背景技術

0002

油田火力発電所等には、横軸多段ポンプが配置されている。横軸多段ポンプは、複数段からなる遠心羽根車回転軸とともに回転させて遠心力を発生させ、その遠心力によって流体の圧力を上昇させる回転機械である。このような回転機械においては、回転体が軸受に支持されて回転する。回転体は特有の振動特性を有する。そして、回転体又は軸受の経年劣化に伴い、その振動特性が変化していく。このような回転体の振動特性を把握する技術が多く存在する。

0003

特許文献1の加振機能付振動診断装置は、タービンポンプ等の大型の回転機械に対し加振力を加え、回転機械に取り付けたセンサから振動応答を取得する。そして、加振力と振動応答に基づいて回転機械の振動特性を取得する。大型の回転機械の運転回転速度は比較的低い。しかしながら特許文献1の加振機能付振動診断装置は、その運転回転速度よりも高い周波数を有する加振力を発生させることができる。したがって、運転状態(停止中、運転中)に関係なく、例えば運転回転速度よりも高い回転速度の領域に固有振動数が存在する場合でも、その固有振動数を特定することができる。

0004

特許文献2の振動特性測定装置は、非接触軸受を介して回転体に対して加振力を加え、回転体の振幅をセンサから取得する。そして、加振力と振幅に基づいて回転体の振動特性を取得する。このとき回転体に加えられえる加振力は、回転体の不釣合い運動打ち消す振動を含んでいる。すると、加振力による回転体の応答を検出するとき、振幅の許容値に対するマージンが大きくなる。したがって、例えば、回転体の周りに流体が流れている条件において振動特性を調べる場合、流体の逆流防止のためのシールを破損することがなくなる。

先行技術

0005

特開平8−15100号公報
特許第5827492号公報

発明が解決しようとする課題

0006

例えば前記した横軸多段ポンプに備わるシール機構(詳細後記)では、高圧水漏れ、異常な流れ等により不安定化力が発生すると、この不安定化力が回転軸及び遠心羽根車の回転の安定性に影響を及ぼす。もちろん横軸多段ポンプは、この不安定化力を上回る安定化力を発生するように設計されてはいる。しかしながら、不安定化力が安定化力を上回ると、シールホワールと呼ばれる自励振動が発生する。自励振動は、複数存在する固有モードのうち、固有振動数が最も小さい“一次曲げモード”(詳細後記)の固有振動数で発生する。すると、自励振動の発生を予測するには、回転体の一次曲げモードの振動特性を把握する必要がある。

0007

ところで、実際に測定される一次曲げモードの振動には、2つの振動が重なり合って含まれている。その一方は、純曲げモード(詳細後記)の振動であり、他方は剛体モード(詳細後記)の振動である。つまり、シールホワールに起因する自励振動が発生するのを予測するには、純曲げモード及び剛体モードの振動特性を正確に把握する必要がある。

0008

特許文献1の加振機能付振動診断装置及び特許文献2の振動特性測定装置が分析する振動特性には、純曲げモード及び剛体モードの振動特性が重なって反映されている場合もあるはずである。しかしながら、特許文献1にも、特許文献2にも、純曲げモード及び剛体モードを分析的に把握する観点はなく、シールホワールに起因する自励振動を正確に予測するには別途方策が必要であった。
そこで、本発明は、シールホワールに起因する回転体の自励振動の発生を正確に予測することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明の加振診断装置は、回転機械の回転体の軸端非接触支持するとともに所定の加振制御信号によって回転体に加振力を与える磁気軸受と、磁気軸受又は回転機械のカップリングのうちのいずれかの位置、及び、磁気軸受以外に回転体を支持する2つの軸受の位置の計3箇所における回転体の振動を測定する振動測定部と、磁気軸受に電流を供給する電流供給部と、回転体を加振するように磁気軸受を制御する加振制御信号を電流供給部に出力するとともに、回転体の加振制御信号に対する振動応答を測定する加振・応答処理部と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。

発明の効果

0010

本発明によれば、シールホワールに起因する回転体の自励振動の発生を正確に予測することができる。

図面の簡単な説明

0011

横軸多段ポンプの構造を説明する図である。
加振診断装置の構成を説明する図である。
質量集中点による遠心力を説明する図である。
回転体が不釣合い回転をする場合の振動の時系列波形である。
固有振動数を説明する図である。
クリアランス流体力を説明する図である。
一次曲げモードの振幅を示す図である。
純曲げモードの振幅を示す図である。
剛体モードの振幅を示す図である。
本実施形態の振動測定部の位置及び個数を説明する図である。
回転速度と加振周波数との関係を示す図である。

実施例

0012

以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら、横軸多段ポンプに対して加振診断装置を取り付ける例を中心に説明する。なお、加振診断装置は、横軸多段ポンプに限らず、回転軸等の回転体を有する回転機械(タービン、電動機、圧縮機等)に対して取り付け可能である。

0013

(横軸多段ポンプ)
図1に沿って、横軸多段ポンプ50の構造を説明する。横軸多段ポンプ50は、回転軸51、遠心羽根車53、軸受52a、軸受52b、軸受52c、ハウジング54、入口54a、出口54b、シール機構55、及び、カップリング56を有する。回転軸51は、カップリング56を介して接続されるタービン、電動機等の駆動源(図示せず)によって回転駆動される。

0014

回転軸51には、多段回転羽根車53が取り付けられている。水等の流体は、入口54aからハウジング54内に注入されると、(図1の左から)1段目の回転羽根車53の根元(回転軸51に近い部分)に接する。そして、流体は、1段目の回転羽根車53が発生する遠心力を受けて、1段目の回転羽根車53の先端(回転軸51から遠い部分)へ移動し、さらに、2段目の回転羽根車53の根元まで誘導される。

0015

次いで、流体は、2段目の回転羽根車53が発生する遠心力を受けて、2段目の回転羽根車53の先端へ移動し、さらに、3段目の回転羽根車53の根元まで誘導される。流体は、このような移動を繰り返し、最終的には出口54bからハウジング54外に排出される。当然ながら、流体の排出時の圧力は、注入時の圧力よりも大きい。

0016

軸受52a及び軸受52bは、回転軸51を周方向に支持する。軸受52cは、回転軸51から周方向に突出した回転板を図の左右方向から挟み、回転軸51を軸方向に支持する。軸受52a、軸受52b及び軸受52cは、回転軸51又は回転板に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。回転軸51等に接触することなく回転軸51を支持する軸受のタイプとして磁気軸受が存在する。

0017

軸受52a及び軸受52bが磁気軸受である場合、軸受52a及び軸受52bは、自身のコイルに流れる電流が発生させる磁力によって、回転軸51を空中に浮遊させて支持する。軸受52cが磁気軸受である場合、軸受52cは、コイルに流れる電流が発生させる磁力によって、回転板をある位置に浮遊させて支持する。

0018

回転軸51の方向をZ軸とし、Z軸に直交する方向のうち水平な方向をX軸とし、垂直な方向をY軸とする。軸受52cは、回転軸51のZ軸方向の位置を固定し、軸受52a及び軸受52bは、回転軸51のX軸及びY軸方向の位置を固定していることになる。前記した構成のうち、回転軸51と一体になって回転する構成を“回転体”と呼ぶ。回転体は、回転軸51及び遠心羽根車53を含む。前記した構成のうち、回転軸51に対して静止している構成を“静止体”と呼ぶ。静止体は、ハウジング54及びシール機構55を含む。

0019

回転体が静止体と接触したまま回転すると、構成する各部品摩耗する。そこで、回転体と静止体との間には接触防止用の隙間(クリアランス)が設けられる。回転体と静止体との間には、流体の本来の通路となるべき空間が当然設けられている。このような空間は隙間とは呼ばれない。高圧の流体は、本来の通路から接触防止用の隙間に漏出することがある。このような漏出が発生すると、横軸多段ポンプ50の体積効率は低下する。そこで、静止体と回転体との隙間を封止するように、適宜の位置にシール機構55が配置されている。

0020

例えば、遠心羽根車53のそれぞれのZ軸方向の両端の位置に、ハウジング54と遠心羽根車53との間の隙間を封止するように、ハウジング54に対してシール機構55が取り付けられている。これらのシール機構55は、図1では上下計18個の長方形見えるが、実際は、ハウジング54の内周に沿ってZ軸に垂直に配置された9個の輪である。

0021

さらに、ハウジング54の出口54b側にも、ハウジング54と回転軸51との間の隙間を封止するように、ハウジング54に対してシール機構55が取り付けられている。このシール機構55は、図では上下計2個のL字形に見えるが、実際は、ハウジング54の内周に沿ってZ軸に垂直に配置された1個のつば付き紳士形の輪である。このように、シール機構55は、高圧の流体の漏出を防いでいる。

0022

(加振診断装置)
図2に沿って、加振診断装置1の構成を説明する。加振診断装置1は、横軸多段ポンプ50に対して、いわば外付けされる装置である。加振診断装置1は、磁気軸受11、振動測定部12、電流供給部13、加振・応答処理部14、及び、これらの間を接続するケーブルを備える。破線のケーブルには信号が通り、実線のケーブルには電力が通る。

0023

振動測定部12は3つ存在し、これらは、振動測定部12a、振動測定部12b及び振動測定部12cである。振動測定部12aは、Z軸上の軸受52aの位置において、回転軸51の中心がXY平面上に描く軌跡を時系列で取得する。このように取得されたデータは、回転軸51の中心がXY平面上に描く時系列の波形そのものであり、当然のことながら、この波形の形状は、振幅、周期及び位相によって特定される。

0024

振動測定部12aは、Z軸上の軸受52aの位置に取り付けられるのが原則である。しかしながら、設備同士の取り合いでこれが不可能である場合は、振動測定部12aは、Z軸上の軸受52aの位置の近辺に取り付けられれば充分である。その場合であっても、軌跡を時系列で取得するセンサ部分だけは、Z軸上の軸受52aの位置に取り付けられることが好ましい(後記する振動測定部12b及び振動測定部12cについても同様)。

0025

振動測定部12bは、Z軸上の軸受52bの位置において、回転軸51の中心がXY平面上に描く軌跡を時系列で取得する。振動測定部12cは、Z軸上の磁気軸受11の位置において、回転軸51の中心がXY平面上に描く軌跡を時系列で取得する。振動測定部12a、振動測定部12b及び振動測定部12cは、それぞれのZ軸上の位置において回転軸51がXY平面に描く時系列の軌跡を加振・応答処理部14に送る。

0026

磁気軸受11は、回転軸51に対して加振力を与える。磁気軸受11は、前記した磁気軸受の構造を有し、電流供給部13から受け取った電流を自身のコイルに流し磁力を発生させ、その磁力によって回転軸51に対しXY平面上の加振力を非接触で与える。加振力は、どのような力であってもよいが、典型的には回転軸51の中心がXY平面上において円を描くように回転軸51を振り回す力である。

0027

磁気軸受11は、例えば、回転軸51を挟んでX方向に水平対向する2つのコイルを有しており、Y方向に垂直対向する2つのコイルを有している。加振・応答処理部14は、任意の周期及び振幅を有する位相が90度ずつずれた4つの余弦波信号を生成する。そのうえで、加振・応答処理部14は、余弦波信号を加振制御信号として電流供給装置13に送る。加振制御信号が示す余弦波の周波数は、“加振周波数”と呼ばれる。加振周波数は、回転軸51が加振力を受けたとき単位時間あたりに振れ回る回数である。

0028

電流供給部13は、加振・応答処理部14から送られてきた余弦波信号の波形を有する電流を生成し、磁気軸受11に送る。磁気軸受11は、送られてきた電流を4つのコイルに流す。すると、磁気軸受11は、Z軸上の磁気軸受11の位置において、回転軸51の中心がXY平面上の円を描くように回転軸51を振り回す力を回転軸51に与える。

0029

(回転体に及ぶ力)
加振力以外の回転体に加わる力として、質量集中点による遠心力(以降単に“遠心力”ともいう)及びクリアランスの流体力(以降単に“流体力”ともいう)が存在する。回転体は、当然のことながら、周方向の質量集中点がZ軸上に位置するように設計される。しかし施工上、このように回転体を作成することは非常に難しく、実際には質量集中点の位置がZ軸上から微小にずれていることもある。さらに、稼働開始時においては重心の位置がZ軸上にあったとしても、回転体の経年による変形又は一部の欠損等により、ある時点以降ずれが生じる場合もある。

0030

(質量集中点による遠心力)
図3に沿って、質量集中点による遠心力を説明する。前記した変形等に起因し、回転体の質量集中点がZ軸(軸心)からずれると、周方向の遠心力が発生する。すると、回転体は微小に振動することになる。このような振動は、“不釣合い振動”と呼ばれる。不釣合い振動は、図3の質量集中点Gの円運動としてモデル化することができる。

0031

質量重心点Gを有する回転体が回転すると質量集中点Gに遠心力が作用し、回転体は質量集中点Gの方向に変位する。このような変位が回転体の回転に伴い連続的に発生し、不釣合い振動が発生する。単位時間あたりに質量集中点Gが周回する回数が、不釣合い回転振動数である。回転体の回転速度を駆動源により変化させて行くと、不釣合い回転振動数も変化していくが、不釣合い回転振動数は、常に回転体の回転速度に等しい。

0032

図4は、ある回転速度(不釣合い回転振動数)における回転体の振動の時系列の波形である。不釣合い振動の大きさは、図4の振幅Amである。回転体の回転速度を変化させて行くと、振幅も変化して行く。このとき振幅は、特定の回転速度において、その前後の回転速度に比して際立って振幅が大きくなる。このような回転速度は、回転体の固有振動数と呼ばれる。

0033

図5に沿って、固有振動数を説明する。図5の横軸は、回転体の回転速度である。縦軸は、振幅である。縦軸のピークは、図5では2箇所存在する。それぞれのピークに対応する横軸の値が固有振動数である。

0034

図5では、固有振動数は2つしか表示されていないが、一般に、回転体に限らず任意の物体の固有振動数は2つ又はそれ以上存在する。そして、それぞれの固有振動数で振動している物体は、その固有振動数に特有な形状を呈する。通常、複数存在する固有振動数は、振動数が小さい順に、一次固有振動数、二次固有振動数、三次固有振動数、・・・と呼ばれる。一般に、振動している物体が呈する形状は、振動数が小さい順に、一次モード二次モード三次モード、・・・と呼ばれる。一次、二次、三次、・・・等の次数が大きくなるほど、いわゆる“節(固定点)”の数が大きくなる。

0035

本実施形態の回転体は、軸方向の2箇所を軸受52a及び軸受52bによって支持されている。なお、回転機械によっては、回転体を支持する軸受が3箇所以上になることもあり得る。いずれにしても、一次モードの節の数は、回転体が支持される数と等しくなる。

0036

その意味で、図7(詳細後記)のように振動するモードが、本実施形態の回転体にとっての“一次モード”である。なお、回転機械以外の分野では、例えば1箇所で固定されている物体がその1箇所を支点に撓む場合の形状を“一次モード”と呼ぶ場合がある。それとの区別を明確にするために、本実施形態においては、図7の形状を、“一次曲げモード”とも呼ぶ。

0037

(クリアランスの流体力)
図6に沿って、クリアランスの流体力を説明する。図6は、回転体をZ軸方向から見た図である。質量集中点による遠心力によって、回転体の中心は、Z軸の位置から外れている(偏心している)。静止体と回転体の間の隙間(クリアランス、図6網掛け部分)には流体が流れている。回転体が静止体の内側を回転速度Nで自転すると、隙間にある流体が回転速度λNで回転する。

0038

さらに、回転速度λNで回転する流体から力を受けて、回転体もまた回転速度λNで公転する。このとき、流体が渦を巻くように動くことによって回転体に力(流体力)を及ぼす。このような流体の動きをシールホワールと呼ぶ。ある流体のλ(0<λ<1)は、その流体の密度、温度、粘性等によって決まる定数値である。なお、λNはλ×Nを意味する。

0039

流体が回転速度λNで回転(自転)することによって発生する振動の振動数λNが回転体の固有振動数に等しくなると、回転体の振幅は際立って大きくなる。このような状態における回転体の振動数Nを予測することが本実施形態の特徴である。図6の回転体の公転は、回転軸の変形を伴わない“剛体モード”で表される。図9は、剛体モードを示す図である。剛体モードの振動数λNが回転体の一次固有振動数に等しくなると、回転体の振動の振幅が大きくなる。これが、シールホワールに起因する自励振動である。

0040

クリアランスの流体力は、自励振動の要因になるだけでなく、回転体の振動特性にも影響を及ぼす。具体的には、流体力は、シール機構55、軸受52a及び軸受52bの剛性バネ)及び減衰を変化させる。すると、回転体の固有振動数も変化する。シール機構55、軸受52a及び軸受52bの剛性(バネ)及び減衰は、回転体の回転速度に応じて変化する。結局、回転速度が変化すれば、回転体の固有振動数も変化することとなる。

0041

図7は、回転体が自励振動を起こしているときの回転体の振幅の大きさをZ軸の位置ごとに示している。図7の一次曲げモードにおいて、回転体は、Z軸上の軸受の位置からやや外側にずれた2点を節として変形(U字形)を伴って振動している。図7の一次曲げモードの振幅から、シールホワールに起因する剛体モード(図9)の振幅を減算すると、図8のような振幅が残る。図8のモードは、“純曲げモード”と呼ばれる。ここでの“純”は“正味”の意味である。

0042

図9の剛体モードにおいて、回転体は、変形を伴わずに振動している。そして、節に該当する点が存在しない。つまり、剛体モードは、回転体の形状や支持箇所の影響を受けない。つまり、シールホワールに起因する振動のモードが図9の剛体モードであるともいえる。図8の純曲げモードにおいて、回転体は、Z軸上の軸受52a及び軸受52bの位置において固定され、変形(U字形)を伴って振動している。図7の一次曲げモードの振幅から、シールホワールに起因する剛体モードの振幅を減算したモードが純曲げモードである。

0043

(振動測定部の位置及び個数)
図10に沿って、本実施形態の振動測定部12の位置及び個数を説明する。これは、加振振動装置1が行う処理手順(詳細後記)の前提となる。本実施形態においては、振動測定部12が、磁気軸受11の位置だけではなく、Z軸の軸受52a及び軸受52bの位置にも配置される。その理由は以下の通りである。

0044

・仮に振動測定部12をZ軸の磁気軸受11の位置(図10の右端)だけに配置しても、加振力に対する振動応答を測定することはできる。しかしながら、磁気軸受11における振動応答の値はもともと小さく有意な値を測定することが困難である。たとえ測定できたとしても、この位置は剛体モードの影響が大きく、純曲げモードの振動応答を抽出することは困難である。
・磁気軸受11の位置においては、剛体モードのみの振動応答を測定することが困難である。詳細は後記するが、軸受52a及び軸受52bの位置においては、剛体モードのみの振動応答を明確に測定することができる。すると、減算結果として、純曲げモードの振動応答を明確に測定できる。

0045

本実施形態の加振振動装置1の加振・応答処理部14が行う処理手順は以下の通りである。なお、シールホワールに起因する流体力が回転軸51に与えられていることが以下の処理手順の前提になっている。
(ステップ1)
加振・応答処理部14には、回転体の回転速度Nの計測信号が入力される。この状態で加振・応答処理部14は、磁気軸受11において加振周波数νの加振力を、磁気軸受11を介して回転軸51に与える。加振・応答処理部14は、νの値を徐々に大きくして行く。すると、回転軸51は、加振周波数νと同じ振動数で振動する。加振・応答処理部14は、加振周波数νを固定して、ステップ2に進む。

0046

(ステップ2)
加振・応答処理部14は、振動測定部12cから振動のデータ(例えば振幅の値)を受け取り、自身が発した加振制御信号及び受け取った振動のデータに基づいて、振動応答S11(ν)を算出する。同様に加振・応答処理部14は、S52a(ν)及びS52b(ν)を算出する。S11(ν)は、磁気軸受11の位置における振動応答であり、S52a(ν)は、軸受52aの位置における振動応答であり、S52b(ν)は、軸受52bの位置における振動応答である。

0047

(ステップ3)
加振・応答処理部14は、式1を使用して純曲げモードの振動応答Z(ν)を求める。

0048

Z(ν)=S11(ν)−(S52a(ν)+(S52b(ν)−S52a(ν))d2/d1)
(式1)

0049

図10に示すように、d1は、軸受52aと軸受52bとの間の距離であり、d2は、軸受52aと磁気軸受11との間の距離である。式1の右辺の第1項S11(ν)には、純曲げモードの振動応答及び剛体モードの振動応答が重なって反映されている。一方、式1の右辺の第2項“S52a(ν)+(S52b(ν)−S52a(ν))d2/d1”は、剛体モードの振動応答であるといえる。したがって、第1項から第2項を減算した結果である左辺のZ(ν)は、純曲げモードの振動応答である。

0050

(ステップ4)
加振・応答処理部14は、純曲げモードの振動応答Z(ν)を、式2のように複素数実数部及び虚数部で表す。式2は、いわゆるコクアド関数であり、式2の右辺は、式1の右辺を信号処理し、複素数で表現したものである。jは虚数単位であり、ZR(ν)は実数部であり、ZI(ν)は虚数部である。そして、加振・応答処理部14は、加振周波数νを変動させ、実数部ZR(ν)=0となるような加振周波数νを一次曲げモードの固有振動数ω1として求める。さらに、加振・応答処理部14は、虚数部ZI(ν)=0となるような加振周波数νを剛体モードの振動数λNとして求める。

0051

Z(ν)=ZR(ν)+jZI(ν) (式2)

0052

“ZR(ν)=0”は、回転軸51に対する運動方程式が解を持つ条件式である。“ZI(ν)=0”は、クリアランスの流体力が不安定力となる条件式である。ZR(ν)=0となるとき、加振周波数νは、一次曲げモードの固有振動数ω1に等しい。さらに、ZI(ν)は、式3のようにも表せる。式3の右辺のDは、シール機構55、軸受52a及び軸受52bの減衰を含む係数である。

0053

ZI(ν)=D(ν−λN) (式3)

0054

式3の左辺が0となるとき、式3の右辺も0となる。すると、式3の右辺において、D=0、又は、ν−λN=0のいずれかが成り立つはずである。このうちDについては、通常、D≠0となる。したがって、ν−λN=0が成り立つことになり、結局、ZI(ν)=0となるとき、ν=λNとなる。

0055

加振・応答処理部14は、回転速度Nを任意の刻み幅で上げて行き、前記ステップ1〜ステップ4の処理を、所定の数だけ(例えばm回)繰り返す。すると、“回転速度N”と“一次曲げモードの固有振動数ω1”の組合せ(第1の組合せ)がm個だけ取得される。そして、“回転速度N”と“剛体モードの振動数λN”との組合せ(第2の組合せ)もまたm個だけ取得される。

0056

(ステップ5)
加振・応答処理部14は、横軸に回転速度Nを有し、縦軸に加振周波数νを有する座標平面図11)に、第1の組合せを示すm個の点をドットし、第2の組合せを示すm個の点をドットする。通常は、第1の組合せの軌跡(図11の●)は、横軸に平行な直線になり、その直線の縦軸との交点目盛はω1である。第2の組合せの軌跡(図11の○)は、原点を通る直線になり、その傾きはλである。

0057

(ステップ6)
加振・応答処理部14は、2つの直線の交点の横軸座標を求める。この値は、ω1=λNとなるような(一次曲げモードの固有振動数が剛体モードの振動数に等しくなるような)Nの値である。当該Nの値(図11の▲)において、回転軸51は、シールホワールに起因する自励振動を開始する。

0058

原理
前記した処理手順の背後にある原理は、剛体モードの振動数λNが一次曲げモードの固有振動数ω1より大きくなると、シールホワールに起因する自励振動が発生する、ということである。

0059

式1及び図10のS52a(ν)の値は、S52b(ν)の値と等しくなることが多い。そこで、式1を以下の式4のように簡略化することができる。

0060

Z(ν)=S11(ν)−S52a(ν)
又は、Z(ν)=S11(ν)−S52b(ν) (式4)

0061

(振動測定部の位置及び個数につき再確認)
前記したように、振動測定部12の数を増やすのは、純曲げモードの振動応答の測定を容易にするためである。そのためには、Z軸の任意の複数(2、3、・・・)の位置に振動測定部12を配置することが望ましい。通常、横軸多段ポンプの2つの軸受52a及び52bの位置において、振動測定部12を配置することは容易である。問題は、3つ目の振動測定部12をどの位置に配置するかである。

0062

前記では、磁気軸受11の位置に3つ目の振動測定部12を配置する例を説明した。しかしながら、3つ目の位置は、これに限定されない。通常横軸多段ポンプの2つの軸受間には振動測定部12を配置することはできないので、2つの軸受52a及び52bの外側における適当な位置が、3つ目の位置として選択されることになる。例えば、Z軸のカップリング56の位置は3つ目の位置として好ましい。

0063

横軸多段ポンプ等の回転機械は、もともと軸受の位置に振動測定部を有している場合も多い。この場合、加振診断装置1の振動測定部12は、回転機械の振動測定部が測定した振動のデータを受け取ってもよい。

0064

(実施形態の効果)
本実施形態の加振診断装置は、以下の効果を奏する。
(1)加振診断装置は、既存の横軸多段ポンプ等に対して容易に外付けされ得る。
(2)加振診断装置は、回転体の振動応答のうち、純曲げモードに対応する部分を容易に抽出し得る。
(3)加振診断装置は、純曲げモードの振動応答を実数部及び虚数部に分けることによって、シールホワールに起因する回転体の自励振動の発生を正確に予測し得る。

0065

1加振診断装置
11磁気軸受
12a、12b、12c振動測定部
13電流供給部
14 加振・応答処理部
51回転軸
52a、52b、52c軸受
53遠心羽根車
54ハウジング
54a 入口
54b出口
55シール機構
56 カップリング

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