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技術 ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法

出願人 JFEスチール株式会社
発明者 小笠原太奥山悟郎三木祐司藤堂渉金子陽平
出願日 2016年3月24日 (3年7ヶ月経過) 出願番号 2016-059533
公開日 2017年9月28日 (2年1ヶ月経過) 公開番号 2017-171994
状態 特許登録済
技術分野 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード 真空排気ダクト 難酸化性 物質移動律速 酸素供給流 設備条件 熱補償 投入時期 律速過程
関連する未来課題
重要な関連分野

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課題

ステンレス鋼溶湯真空脱炭処理するにあたり、ステンレス鋼溶湯の昇熱を実施することなくステンレス鋼溶湯の温度を高位に保持して脱炭速度を向上させる。

解決手段

本発明のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法は、減圧下で、ステンレス鋼溶湯に酸素を供給して真空脱炭処理を施した後、前記ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加して前記溶湯を脱酸し、更に成分調整用合金原料を添加して所定の成分のステンレス鋼溶湯を溶製する、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法であって、前記ステンレス鋼溶湯に、銅、ニッケルモリブデンコバルトのうちの少なくともいずれか一種難酸化性元素を添加するための合金原料を、前記真空脱炭処理中の前記ステンレス鋼溶湯に、当該ステンレス鋼溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下となった段階で添加する。

概要

背景

ステンレス鋼精錬では、クロムを始めとしてニッケルモリブデン、銅などの合金成分を添加する場合が多く、成分調整のために添加される大量の合金鉄や金属などの溶解のための熱補償が必要である。本明細書では、合金成分を添加するための合金鉄及び金属を「合金原料」と定義する。また、クロムを10質量%以上含有するステンレス鋼では、クロムを含有しない炭素鋼と比較して、脱炭処理時の到達炭素濃度高位となり、脱炭反応停滞しやすいという特性がある。

一般的に、溶湯鋼浴)中の炭素を、酸素ガスを供給して酸化し、除去する工程において、溶湯中の炭素濃度が高位の場合、脱炭速度は炭素の濃度には依存せず、酸素の供給速度に依存する。この領域は、酸素の物質移動が脱炭反応の律速過程となっており、「脱炭最盛期」とも呼ばれる。一方、脱炭が進行して溶湯中の炭素濃度が希薄になると、炭素濃度の低下に伴って脱炭速度が低下する。この領域では、炭素の物質移動が脱炭反応の律速過程となっている。

大気圧よりも低圧減圧雰囲気下で行われるステンレス鋼溶湯の真空脱炭処理では、溶湯中の炭素の酸化と溶湯中のクロムの酸化とが競合するために、酸素の物質移動が律速する領域においても、単純に酸素供給流量(「送酸速度」ともいう)を上昇するだけでは、脱炭速度を増大することが困難な場合がある。過剰に供給された酸素は溶湯中のクロムと反応してCr2O3を生成するが、溶湯中のクロム濃度及びスラグ中のCr2O3活量平衡する溶湯中の溶存酸素濃度は、高温になるほど増大する。酸素の物質移動が脱炭反応を律速する領域では、脱炭反応速度は主に反応サイトの溶存酸素濃度に比例することから、したがって、高温になるほど高い脱炭速度が得られる傾向となる。

一方、炭素の物質移動が律速する領域では、溶湯の温度を上昇させると、気相COガスと平衡する溶湯中炭素濃度を低下させる効果が期待できる。真空脱炭処理の末期にCOガスの発生速度が低下して高真空度雰囲気となった条件では、平衡炭素濃度は溶湯中の炭素濃度に比べて十分に低いため、溶湯の温度上昇によって平衡炭素濃度を低下させることによる脱炭速度の増大効果は限定的と考えられるが、炭素の物質移動が律速する領域においても、定性的には溶湯が高温になるほど脱炭速度は増大する傾向となる。

すなわち、ステンレス鋼溶湯の真空脱炭処理において、溶湯の温度を上昇させることで、炭素濃度をより短時間で目標とする炭素濃度まで低減することが可能となり、真空排気用の蒸気使用量の低減やクロムの酸化ロスの低減など製造コスト低減効果が期待できる。

しかしながら、溶湯温度を上昇させるために、金属アルミニウムなどの昇熱材を用いて溶湯の昇熱を行ったり、転炉やAOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、電気炉などの前工程での終了時の溶湯温度を上昇させたりすることは、製造コスト低減のメリットを享受できなくなるばかりでなく、耐火物損耗促進など、かえってデメリットが増加する。また、二次精錬後の溶湯は、次の連続鋳造などの工程に供するのに適正な成分及び温度に調整する必要があるので、必要以上に溶湯温度を上昇させると、冷却のために余計な冷材や時間が必要となり、製造コストや生産性の観点から好ましくない。

低炭フェライト系ステンレス鋼を溶製する方法として、非特許文献1には、減圧下での上吹きランスからの酸素ガス吹錬による脱炭処理実施後に、上吹きランスからの酸素ガスの供給を停止して、溶湯収容容器の底部に配置されたポーラスプラグを介して溶湯中に大量のアルゴンガス(最大25NL/(min・溶鋼−t))を吹き込んで溶湯を強力に攪拌して脱炭する方法が提案されている。

尚、真空脱炭処理で所定の炭素濃度まで脱炭されたステンレス鋼溶湯には、金属アルミニウムやフェロシリコンなどの脱酸剤が添加され、溶湯中の酸素を除去するとともに、スラグ中の酸化クロムなどを還元するための脱酸処理が施される。脱酸処理では、ステンレス鋼溶湯上に存在するスラグの還元に伴って溶湯の脱硫が進行し、また、脱酸剤の添加後、鉄よりも酸素との親和性が高く、蒸気圧の比較的低いクロム、マンガンバナジウムニオブチタンなどの各種合金成分の濃度調整が行われる。脱酸処理とは、脱酸剤の添加によって溶湯を脱酸した時点から、スラグの還元、更には溶湯中合金成分の調整終了までの期間を指す。

一方、鉄よりも酸素との親和性が低いニッケル、モリブデン、銅、コバルトなどの合金成分(以下、「難酸化性元素」と称する)は、合金添加装置の容量が比較的小さく、且つ、添加する合金原料の種類の多い二次精錬設備での添加を避けて、転炉やAOD炉などによる一次精錬の段階、或いは、その出鋼時に添加され、成分調整されることが一般的である。また、高炭素フェロクロム高炭素フェロマンガンなどの炭素を高濃度で含有する合金鉄を使用した方が大幅に安価である、クロムやマンガンの一次の成分調整も、転炉、AOD炉などによる一次精錬の段階やその出鋼時に行われることが一般的である。

概要

ステンレス鋼溶湯を真空脱炭処理するにあたり、ステンレス鋼溶湯の昇熱を実施することなくステンレス鋼溶湯の温度を高位に保持して脱炭速度を向上させる。 本発明のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法は、減圧下で、ステンレス鋼溶湯に酸素を供給して真空脱炭処理を施した後、前記ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加して前記溶湯を脱酸し、更に成分調整用の合金原料を添加して所定の成分のステンレス鋼溶湯を溶製する、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法であって、前記ステンレス鋼溶湯に、銅、ニッケル、モリブデン、コバルトのうちの少なくともいずれか一種の難酸化性元素を添加するための合金原料を、前記真空脱炭処理中の前記ステンレス鋼溶湯に、当該ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となった段階で添加する。 なし

目的

本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉や電気炉などで溶製され、粗脱炭されたステンレス鋼溶湯に対して、減圧下で酸素を供給して真空脱炭処理を施し、その後、ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加し、その後、更に成分調整用の合金原料を添加してステンレス鋼溶湯を二次精錬するにあたり、攪拌用ガス流量を増大せずに一般的な範囲に抑え、且つ、ステンレス鋼溶湯の昇熱を実施することなく、真空脱炭処理時、特にステンレス溶湯中の炭素濃度が高位な領域で、ステンレス鋼溶湯の温度を高位に保持することができ、これによって脱炭速度を向上させ、真空処理時間を短縮することのできる、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

減圧下で、ステンレス鋼溶湯酸素を供給して真空脱炭処理を施した後、前記ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加して前記溶湯を脱酸し、更に成分調整用合金原料を添加して所定の成分のステンレス鋼溶湯を溶製する、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法であって、前記ステンレス鋼溶湯に、銅、ニッケルモリブデンコバルトのうちの少なくともいずれか一種難酸化性元素を添加するための合金原料を、前記真空脱炭処理中の前記ステンレス鋼溶湯に、当該ステンレス鋼溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下となった段階で添加することを特徴とする、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。

請求項2

前記真空脱炭処理中の排気ガス成分濃度を、前記真空脱炭処理を実施するための二次精錬設備に備えられた分析装置を用いて分析し、前記排気ガス中の炭素含有ガス濃度分析値に基づいて、前記ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となる時点を判定することを特徴とする、請求項1に記載のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。

請求項3

前記難酸化性元素を添加するための合金原料を添加する直前の時点での前記ステンレス鋼溶湯の温度が1650℃以上1700℃以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。

技術分野

0001

本発明は、転炉または電気炉などで溶製され、粗脱炭されたステンレス鋼溶湯に対し、減圧下にて酸化性ガスを供給して、前記ステンレス鋼溶湯中炭素を更に低下させるステンレス鋼溶湯の二次精錬方法に関する。

背景技術

0002

ステンレス鋼の精錬では、クロムを始めとしてニッケルモリブデン、銅などの合金成分を添加する場合が多く、成分調整のために添加される大量の合金鉄や金属などの溶解のための熱補償が必要である。本明細書では、合金成分を添加するための合金鉄及び金属を「合金原料」と定義する。また、クロムを10質量%以上含有するステンレス鋼では、クロムを含有しない炭素鋼と比較して、脱炭処理時の到達炭素濃度高位となり、脱炭反応停滞しやすいという特性がある。

0003

一般的に、溶湯(鋼浴)中の炭素を、酸素ガスを供給して酸化し、除去する工程において、溶湯中の炭素濃度が高位の場合、脱炭速度は炭素の濃度には依存せず、酸素の供給速度に依存する。この領域は、酸素の物質移動が脱炭反応の律速過程となっており、「脱炭最盛期」とも呼ばれる。一方、脱炭が進行して溶湯中の炭素濃度が希薄になると、炭素濃度の低下に伴って脱炭速度が低下する。この領域では、炭素の物質移動が脱炭反応の律速過程となっている。

0004

大気圧よりも低圧減圧雰囲気下で行われるステンレス鋼溶湯の真空脱炭処理では、溶湯中の炭素の酸化と溶湯中のクロムの酸化とが競合するために、酸素の物質移動が律速する領域においても、単純に酸素供給流量(「送酸速度」ともいう)を上昇するだけでは、脱炭速度を増大することが困難な場合がある。過剰に供給された酸素は溶湯中のクロムと反応してCr2O3を生成するが、溶湯中のクロム濃度及びスラグ中のCr2O3活量平衡する溶湯中の溶存酸素濃度は、高温になるほど増大する。酸素の物質移動が脱炭反応を律速する領域では、脱炭反応速度は主に反応サイトの溶存酸素濃度に比例することから、したがって、高温になるほど高い脱炭速度が得られる傾向となる。

0005

一方、炭素の物質移動が律速する領域では、溶湯の温度を上昇させると、気相COガスと平衡する溶湯中炭素濃度を低下させる効果が期待できる。真空脱炭処理の末期にCOガスの発生速度が低下して高真空度雰囲気となった条件では、平衡炭素濃度は溶湯中の炭素濃度に比べて十分に低いため、溶湯の温度上昇によって平衡炭素濃度を低下させることによる脱炭速度の増大効果は限定的と考えられるが、炭素の物質移動が律速する領域においても、定性的には溶湯が高温になるほど脱炭速度は増大する傾向となる。

0006

すなわち、ステンレス鋼溶湯の真空脱炭処理において、溶湯の温度を上昇させることで、炭素濃度をより短時間で目標とする炭素濃度まで低減することが可能となり、真空排気用の蒸気使用量の低減やクロムの酸化ロスの低減など製造コスト低減効果が期待できる。

0007

しかしながら、溶湯温度を上昇させるために、金属アルミニウムなどの昇熱材を用いて溶湯の昇熱を行ったり、転炉やAOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、電気炉などの前工程での終了時の溶湯温度を上昇させたりすることは、製造コスト低減のメリットを享受できなくなるばかりでなく、耐火物損耗促進など、かえってデメリットが増加する。また、二次精錬後の溶湯は、次の連続鋳造などの工程に供するのに適正な成分及び温度に調整する必要があるので、必要以上に溶湯温度を上昇させると、冷却のために余計な冷材や時間が必要となり、製造コストや生産性の観点から好ましくない。

0008

低炭フェライト系ステンレス鋼を溶製する方法として、非特許文献1には、減圧下での上吹きランスからの酸素ガス吹錬による脱炭処理実施後に、上吹きランスからの酸素ガスの供給を停止して、溶湯収容容器の底部に配置されたポーラスプラグを介して溶湯中に大量のアルゴンガス(最大25NL/(min・溶鋼−t))を吹き込んで溶湯を強力に攪拌して脱炭する方法が提案されている。

0009

尚、真空脱炭処理で所定の炭素濃度まで脱炭されたステンレス鋼溶湯には、金属アルミニウムやフェロシリコンなどの脱酸剤が添加され、溶湯中の酸素を除去するとともに、スラグ中の酸化クロムなどを還元するための脱酸処理が施される。脱酸処理では、ステンレス鋼溶湯上に存在するスラグの還元に伴って溶湯の脱硫が進行し、また、脱酸剤の添加後、鉄よりも酸素との親和性が高く、蒸気圧の比較的低いクロム、マンガンバナジウムニオブチタンなどの各種合金成分の濃度調整が行われる。脱酸処理とは、脱酸剤の添加によって溶湯を脱酸した時点から、スラグの還元、更には溶湯中合金成分の調整終了までの期間を指す。

0010

一方、鉄よりも酸素との親和性が低いニッケル、モリブデン、銅、コバルトなどの合金成分(以下、「難酸化性元素」と称する)は、合金添加装置の容量が比較的小さく、且つ、添加する合金原料の種類の多い二次精錬設備での添加を避けて、転炉やAOD炉などによる一次精錬の段階、或いは、その出鋼時に添加され、成分調整されることが一般的である。また、高炭素フェロクロム高炭素フェロマンガンなどの炭素を高濃度で含有する合金鉄を使用した方が大幅に安価である、クロムやマンガンの一次の成分調整も、転炉、AOD炉などによる一次精錬の段階やその出鋼時に行われることが一般的である。

先行技術

0011

岩岡昭二、大谷尚史、内博之、江島彬夫、矢野修也、鉄と鋼、vol.63(1977)、No.2、p.A1−A4

発明が解決しようとする課題

0012

しかしながら、上記の非特許文献1のように、ガス流量を増加させてより強力に攪拌を行う方法では、真空脱炭処理容器となる溶湯収容容器(取鍋容積に対して溶湯容量が多いと、溶湯のオーバーフローが発生する。溶湯のオーバーフローが生じると生産性を大きく阻害してしまうことから、取鍋内の溶湯量を制限する必要があり、効率的な真空脱炭処理ができない。また、非特許文献1は脱炭速度に及ぼす溶湯温度の影響は何ら考慮していない。

0013

本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転炉や電気炉などで溶製され、粗脱炭されたステンレス鋼溶湯に対して、減圧下で酸素を供給して真空脱炭処理を施し、その後、ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加し、その後、更に成分調整用の合金原料を添加してステンレス鋼溶湯を二次精錬するにあたり、攪拌用ガス流量を増大せずに一般的な範囲に抑え、且つ、ステンレス鋼溶湯の昇熱を実施することなく、真空脱炭処理時、特にステンレス溶湯中の炭素濃度が高位な領域で、ステンレス鋼溶湯の温度を高位に保持することができ、これによって脱炭速度を向上させ、真空処理時間を短縮することのできる、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法を提供することである。

課題を解決するための手段

0014

上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]減圧下で、ステンレス鋼溶湯に酸素を供給して真空脱炭処理を施した後、前記ステンレス鋼溶湯を攪拌しつつ、脱酸剤を添加して前記溶湯を脱酸し、更に成分調整用の合金原料を添加して所定の成分のステンレス鋼溶湯を溶製する、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法であって、
前記ステンレス鋼溶湯に、銅、ニッケル、モリブデン、コバルトのうちの少なくともいずれか一種の難酸化性元素を添加するための合金原料を、前記真空脱炭処理中の前記ステンレス鋼溶湯に、当該ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となった段階で添加することを特徴とする、ステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。
[2]前記真空脱炭処理中の排気ガス成分濃度を、前記真空脱炭処理を実施するための二次精錬設備に備えられた分析装置を用いて分析し、前記排気ガス中の炭素含有ガス濃度分析値に基づいて、前記ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となる時点を判定することを特徴とする、上記[1]に記載のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。
[3]前記難酸化性元素を添加するための合金原料を添加する直前の時点での前記ステンレス鋼溶湯の温度が1650℃以上1700℃以下であることを特徴とする、上記[1]または上記[2]に記載のステンレス鋼溶湯の二次精錬方法。

発明の効果

0015

本発明によれば、特段の昇熱手段を講じることなく、酸素の物質移動が脱炭反応を律速する領域、つまり、脱炭最盛期の溶湯温度を従来よりも高位に維持することが可能となり、これにより、脱炭速度の向上及び真空脱炭処理時間の短縮が実現される。

0016

以下、本発明を具体的に説明する。

0017

低炭素濃度(炭素濃度≦0.010質量%)のステンレス鋼を溶製するにあたっては、転炉やAOD炉、電気炉などで一次精錬工程の粗脱炭処理を行ったステンレス鋼溶湯に、更に二次精錬工程として減圧雰囲気下で酸素ガスを供給し、溶湯中の炭素濃度を更に低下させることが必要である。この減圧雰囲気下での酸素ガス供給によるステンレス鋼溶湯の脱炭処理(「真空脱炭処理」という)には、一般的に、二次精錬設備として、RH真空脱ガス設備やVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)設備が使用されている。尚、一次精錬の施された溶湯に対して更に精錬を施す工程を二次精錬という。

0018

VOD設備を用いて真空脱炭処理を施す場合を例として説明すると、VOD設備の減圧容器内に、一次精錬工程の粗脱炭処理の施されたステンレス鋼溶湯を収容する取鍋を装入し、減圧容器内を大気圧よりも減圧したのちに、上吹きランスから酸素ガスを取鍋内のステンレス鋼溶湯に向けて供給し、真空脱炭処理を実施する。この際、酸素ガスの供給速度は0.07〜0.20Nm3/(min・溶鋼−t)程度の範囲内とし、溶湯の炭素濃度の低下に伴ってクロムの酸化ロスが過大にならないように、酸素ガスの供給速度を次第に減少させるように調整することが好ましい。減圧下で酸素ガスを供給することで、溶湯中の炭素が、大気圧下で行われる一次精錬工程よりも更に除去される。この真空脱炭処理によって溶湯中の炭素濃度が製品規格の炭素濃度以下まで低下したなら、酸素ガスの供給を停止し、その後、取鍋の底部に設置した底吹き羽口またはポーラスプラグから2〜10NL/(min・溶鋼−t)のアルゴンガスを溶湯中に吹き込んで、取鍋内の溶湯を攪拌しながら、金属アルミニウムなどの脱酸元素を添加し、溶湯中の酸素濃度の低下及び酸素ガス供給によって生じたスラグ中酸化クロムの還元を行い、更に、各種の成分濃度の調整を行った後、減圧容器を大気圧に戻して減圧下での精錬を終了する。尚、脱炭速度を促進させるために、真空脱炭処理中も、前記底吹き羽口またはポーラスプラグからアルゴンガスを溶湯中に吹き込んで溶湯を攪拌する。

0019

ステンレス鋼の精錬では、大量の合金成分を添加しており、合金成分を調整するための合金鉄及び金属の大量投入に伴う溶湯の温度降下が大きい。以下、合金成分を含有する合金鉄及び金属をまとめて「合金原料」と定義する。但し、従来、合金原料の多くは、転炉やAOD炉などの一次精錬中、或いは一次精錬後の出鋼時に溶湯に添加され、二次精錬工程において添加されるのは、金属アルミニウムやフェロシリコンなどの脱酸剤、脱酸後に添加する必要のあるチタン、ニオブ、バナジウムなどを含有する合金原料、及び、採取した溶湯サンプルの成分分析値を確認してから成分調整するための各成分の少量の調整分にとどまることが一般的であった。

0020

このような従来の合金原料の添加方法に比較して、真空脱炭処理前の合金原料の添加量を減少させ、その分だけ真空脱炭処理後の合金原料の添加量を増加させる合金原料の添加方法を採用することで、二次精錬後の溶湯温度を同一とする条件の下で、真空脱炭処理中の溶湯温度を無理なく上昇させることができる。すなわち、従来、真空脱炭処理前に添加していた合金原料を減少させることで、減少させた合金原料量による冷却分だけ、真空脱炭処理前の温度を無理なく上昇させることができ、その後、真空脱炭処理後の合金原料の添加量を、上記の減少させた合金原料量に相当する量だけ増大させ、増大させた合金原料量による冷却分だけ溶湯温度を低下させることで、二次精錬後の溶湯温度を無理なく従来と同じレベルとすることができる。

0021

ステンレス鋼溶湯の真空脱炭処理の場合、前述したように、酸素の物質移動が脱炭反応を律速する領域であっても、また、炭素の物質移動が脱炭反応を律速する領域であっても、溶湯温度が高温になるほど高い脱炭速度が得られることから、真空脱炭処理中の溶湯温度を無理なく上昇させることにより、ステンレス鋼溶湯を高い脱炭速度で効率的に溶製可能となる。

0022

しかしながら、真空脱炭処理後の脱酸処理では、金属アルミニウムやフェロシリコンなどの脱酸剤、及び、脱酸後に添加することが必要である、鉄よりも酸素との親和性の高いチタン、ニオブ、バナジウムなどの合金原料、更には、採取した溶湯サンプルの成分分析値を確認してから成分調整するための各成分の調整分の合金原料も含めて多種の合金原料を投入する必要がある。このため、これらに加えて新たに大量の合金原料を添加しようとすると、二次精錬設備の合金原料投入装置による合金原料の量、搬送及び添加のために大幅な時間の延長を招くことになる。尚、本明細書において、脱酸処理とは、脱酸剤の添加によってステンレス鋼溶湯を脱酸した時点から、ステンレス鋼溶湯上に存在するスラグの還元、更には溶湯中合金成分の成分調整終了までの期間を指す。

0023

そこで、従来、真空脱炭処理前に添加されていた合金原料の添加タイミングを、真空脱炭処理後に行われる脱酸処理中に行わず、合金原料投入装置に余力のある、つまり、合金原料の添加の必要性の低い真空脱炭処理の末期に変更することにより、同様の効果を得ることができないかを検討した。

0024

その結果、真空脱炭処理中、ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となった段階、或いは、脱炭反応が炭素の物質移動律速となった段階で添加するのであれば、それ以降は従来の脱炭速度レベルに低下するだけであり、合金原料添加による溶湯温度の低下に起因する脱炭速度への影響は余り大きくなく、高炭素濃度の領域における脱炭速度の向上によって処理時間短縮のメリットを享受できることがわかった。尚、ステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となった時点は、脱炭反応が炭素の物質移動律速となった領域に含まれる。

0025

真空脱炭処理の末期に添加することが可能な合金原料の量に相当する分の添加量だけ、真空脱炭処理前に添加する合金原料の量を減少させることで、脱炭反応が酸素の物質移動律速となる高炭素濃度の領域における溶湯温度を可能な限り上昇させ、一方、脱炭速度が低下した、炭素の物質移動律速となる領域以降に、減少させた量に相当する量の合金原料を投入する。このようにすることで、溶湯温度を上昇させた高炭素濃度の領域における脱炭速度を増大させることができ、全体の処理時間の短縮が可能となる。

0026

その際、真空脱炭処理の末期に添加する合金原料としては、以下の条件を満たすことが必要となる。まず、溶存酸素濃度が高い条件で添加されるので、鉄よりも酸素との親和性の高い元素を添加元素として含有する合金原料は、添加元素が鉄よりも優先して酸化されることから不適である。また、炭素を、例えば1質量%以上といった高濃度で含有している合金原料を添加することは、真空脱炭処理時間の延長を招くので好ましくない。

0027

これらの条件を満足する合金原料としては、銅、ニッケル、モリブデン、コバルトを添加するための合金原料が該当する。つまり、真空脱炭処理の末期に添加する合金原料は、銅、ニッケル、モリブデン、コバルトのうちの少なくともいずれか一種を添加するための合金原料、つまり、難酸化性元素を含有する合金原料とする必要がある。これらの元素は、難酸化性元素であるので、溶存酸素濃度が高い条件でステンレス鋼溶湯中に添加されても酸化されず、また、難酸化性であることは、逆にいえば、易還元性であり、これらの元素は還元剤として炭素を使用しなくても安価に且つ容易に還元することができ、これらの元素を含有する合金原料は、合金鉄であっても、また、鉄合金以外の金属であっても、炭素含有量が低い、または、炭素を実質的に含有しない。

0028

これらの難酸化性元素の合金原料は、何れも従来の一般的な合金原料の添加方法では、転炉などの一次精錬中、或いは一次精錬後の出鋼時において溶湯に添加されていたので、添加タイミングを真空脱炭処理の末期に変更することにより、真空脱炭処理中の溶湯温度が上昇し、脱炭速度を向上させることが可能となる。

0029

真空脱炭処理の末期に添加する難酸化性元素の合金原料の添加量が多いほど、換言すれば、真空脱炭処理前に添加する難酸化性元素の合金原料投入量の減少量が多いほど、温度上昇による脱炭促進効果が大きくなるので好ましいが、ステンレス鋼の成分規格上から添加可能な量には自ずと制約があり、また、合金原料投入装置の設備能力の点からも、短時間の真空脱炭処理の末期に添加できる量には自ずと制約がある。したがって、これらの条件に応じて可能な範囲で真空脱炭処理の末期に添加する難酸化性元素の合金原料の添加量を増大させるように決定すればよい。脱炭反応促進の観点からは、真空脱炭処理の末期に添加する難酸化性元素の合金原料の添加量を5kg/溶鋼−t以上、より望ましくは10kg/溶鋼−t以上とすることが好ましい。

0030

真空脱炭処理の末期に難酸化性元素の合金原料を添加する際の溶湯の炭素濃度が、上記のように0.02質量%以下の領域であるので、真空脱炭処理開始時の例えば0.15質量%といった炭素濃度から、真空脱炭処理の末期に難酸化性元素の合金原料が添加されるまでの広い炭素濃度範囲において、脱炭反応速度を向上させる効果が得られる。この脱炭反応の促進効果は、脱炭反応とクロムの酸化反応との競合が顕著となる、溶湯中炭素濃度が0.1質量%以下の領域で特に顕著である。

0031

溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下の領域、つまり、炭素の物質移動が脱炭反応を律速する領域では、溶湯の温度上昇による脱炭反応への影響は相対的には小さいものの、高温ほど脱炭速度が大きい傾向は維持されるので、真空脱炭処理時間をより短縮するためには、難酸化性元素の合金原料を添加する際の溶湯中炭素濃度は低いほど好ましいといえる。しかし、溶湯中炭素濃度が、真空脱炭処理の目標炭素濃度近くまで低下してから難酸化性元素の合金原料を添加するのでは、炭素濃度が目標値に低下した時点までに脱酸剤の投入準備が整わずに、真空脱炭処理の延長を招くおそれがあるので、脱酸剤の添加タイミングの調整に影響を及ぼさない程度の時間の余裕を持って、難酸化性元素の合金原料を添加することが望ましい。

0032

逆に、溶湯中炭素濃度が0.02質量%を超える領域で難酸化性元素の合金原料を添加すると、それ以降の脱炭速度は、温度が低下した分だけ、例えば従来並みの脱炭速度まで低下する。但し、難酸化性元素の合金原料を投入する時点までの脱炭速度は、上記と同様に向上するので、投入タイミングに応じた脱炭促進効果は得られる。したがって、炭素濃度が0.02質量%以下の時点で難酸化性元素の合金原料を添加するとしても、真空脱炭処理の末期に投入する難酸化性元素の合金原料の全量を、溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下の期間に投入することが困難な場合には、溶湯中炭素濃度が0.02質量%を超える時点で難酸化性元素の合金原料を部分的に添加することは排除しない。しかし、この場合でも難酸化性元素の合金原料を添加する時点の溶湯中の炭素濃度は、できるだけ低いことが望ましく、0.05質量%以下とすることが好ましい。

0033

合金原料の投入時期を溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下の期間に制御するためには、真空脱炭処理中の溶湯の炭素濃度を迅速に把握する必要がある。溶湯中成分の把握方法としては、溶湯から採取した溶湯サンプルの成分分析を実施するのが一般的であるが、分析結果が判明するまでに10分間程度の時間を要することから、かえって真空脱炭処理時間を延長させてしまうおそれがある。そこで、溶湯サンプルを採取せずに、迅速に溶湯中炭素濃度を把握することを目的として、二次精錬設備に排ガス成分の分析装置を設置して排ガス中の炭素含有ガスの濃度を分析し、排気ガス中の炭素含有ガスの濃度に基づいてステンレス鋼溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下となる時点を判定することを試みた。その結果、その有効性を確認することができた。

0034

例えば、減圧容器からの真空排気ダクトの途中に、排ガス成分の分析装置として質量分析計を設置し、脱炭処理中の排ガス流量及び排ガス成分データをリアルタイムで測定し、採取した溶湯サンプルの炭素濃度分析値との相関調査したところ、排ガス中のCO2濃度と溶湯中炭素濃度とに強い相関があることがわかった。脱炭反応が炭素の物質移動に律速される領域においては、溶湯中炭素濃度の低下とともに脱炭反応速度が低下するので、溶湯中炭素濃度の低下とともに、排ガス中のCO2濃度が低下し、排ガス中のCO2濃度によって溶湯中炭素濃度の推定が可能となる。すなわち、質量分析計で分析した排ガス中のCO2濃度を真空脱炭処理中にリアルタイムで表示し、所定の閾値に到達した時点で、溶湯中の炭素濃度が0.02質量%以下になったものとして、上記の真空脱炭処理の末期に添加する難酸化性元素の合金原料の投入を行うことができる。

0035

脱炭速度は、溶湯温度や溶湯中クロム濃度、溶湯量などの影響も受けるので、上記の閾値は、これらの操業条件に応じて、真空脱炭処理の末期に採取した溶湯サンプルの炭素濃度分析値と排ガス分析値との対応を調査した結果に基づいて決定することが望ましい。また、二次精錬設備の減圧容器や真空排気装置における漏れによる空気の吸引量が安定している場合は、上記のようにCO2濃度のみを用いて判定できる場合もある。しかし、漏れによる空気の吸引量は設備条件によって一様でない場合もあり、上記のCO2濃度の測定値に加えて、CO濃度や排ガス流量の測定も用いて溶湯の脱炭速度を判定した結果に基づいて難酸化性元素の合金原料の投入タイミングを決定することが、望ましい場合もある。

0036

前述のとおり、溶湯中炭素濃度が0.02質量%を超える高炭素濃度の領域において、溶湯温度を高位にすることで脱炭処理時間の短縮を図ることが可能である。この場合、溶湯温度は、脱炭反応を促進する観点から、難酸化性元素の合金原料を添加する直前の時点において、1650℃以上とすることが望ましい。但し、過剰に温度を上昇させすぎると、取鍋耐火物の損耗が増大する。取鍋耐火物の損耗を防止するために、難酸化性元素の合金原料を添加する直前の時点での溶湯温度は1700℃を超えないようにすることが望ましい。

0037

以上説明したように、本発明によれば、特段の昇熱手段を講じることなく、酸素の物質移動が脱炭反応を律速する領域、つまり、脱炭最盛期の溶湯温度を従来よりも高位に維持することが可能となり、これにより、脱炭速度の向上及び脱炭処理時間の短縮が実現される。

0038

一次精錬用の転炉で炭素濃度を0.15質量%、クロム濃度を16.5質量%に調整したステンレス鋼溶湯をVOD設備で二次精錬して、ステンレス鋼溶湯を製造する6回の試験試験番号1〜6)を行った。各試験における製造対象のステンレス鋼は、炭素濃度の上限値が0.010質量%、クロム濃度が17.5質量%、銅濃度が1.5質量%である。試験番号1では、転炉からの出鋼時に合金原料の金属銅を取鍋内溶湯に添加し、試験番号2〜5では、VOD設備での真空脱炭処理中に金属銅を取鍋内溶湯に添加し、試験番号6では、VOD設備での真空脱炭処理が終了し、溶湯を金属アルミニウムで脱酸した後に金属銅を取鍋内溶湯に添加した。尚、試験番号1は従来の精錬方法である。

0039

転炉から出鋼直後の取鍋内の溶湯温度は、転炉からの出鋼時に取鍋内に合金原料の金属銅を添加して銅濃度を1.5質量%に調整した従来方法の試験番号1の場合には1705℃であった。これに対して、転炉出鋼時に金属銅を添加せずに、二次精錬中に金属銅を添加した試験番号2〜6では、上記の試験番号1と転炉精錬時終点溶湯温度を等しくしたところ、金属銅による吸熱が無くなった分だけ溶湯温度が上昇し、出鋼直後の取鍋中の溶湯温度は1730℃であった。

0040

各試験において、VOD設備にて、取鍋底部に設置したポーラスプラグからアルゴンガスを底吹きしてステンレス鋼溶湯を攪拌しながら減圧雰囲気とした後、上吹きランスから酸素ガスの供給を開始して真空脱炭処理を行った。この真空脱炭処理中に、各試験において、クロム源として、クロム濃度1.0質量%相当分の高炭素フェロクロムを、上吹きランスからの送酸開始後直ちに取鍋内溶湯に投入した。

0041

また、試験番号2〜5では、溶湯中炭素濃度が0.090質量%となる時点(試験番号2)、溶湯中炭素濃度が0.050質量%となる時点(試験番号3)、溶湯中炭素濃度が0.020質量%となる時点(試験番号4)、溶湯中炭素濃度が0.010質量%となる時点(試験番号5)を目標時点として、銅濃度1.5質量%相当分の金属銅を取鍋内溶湯に投入した。金属銅を投入する直前のタイミングで溶湯温度を測定するとともに溶湯サンプルを採取し、金属銅を投入する直前の時点での溶湯中炭素濃度を分析した。

0042

金属銅を添加する際に、試験番号2、3では、過去の真空脱炭処理中の溶湯中炭素濃度推移の調査実績に基づいて、溶湯中炭素濃度が上記の目標時点(0.090質量%、0.050質量%)となる時点を推定して、金属銅の投入タイミングを決定した。一方、試験番号4、5では、減圧容器からの真空排気ダクトの途中に設置した質量分析計を用いて測定した排ガス中のCO2濃度から、過去の調査実績に基づいて操業条件に応じて設定した閾値を用い、溶湯中炭素濃度が上記の目標時点(0.020質量%、0.010質量%)となる時点を判定して、金属銅の投入タイミングを決定した。

0043

その後、排ガス中のCO2濃度測定値に基づいて推定した溶湯中の炭素濃度が0.0080質量%となった段階で、上吹きランスからの酸素ガスの供給を停止し、脱酸剤として金属アルミニウムとフェロシリコンとを添加して真空脱炭処理を終了するとともに脱酸処理を開始した。

0044

試験番号1〜5では、脱酸剤を添加してから4分間底吹き攪拌してスラグを還元した後、各種の合金成分を添加し、更に4分間底吹き攪拌し、その後、溶湯成分を確認するための溶湯サンプルを採取して成分分析を実施した。試験番号6では、脱酸剤を添加してから4分間底吹き攪拌してスラグを還元した後、銅濃度1.5質量%相当分の金属銅を取鍋内溶湯に添加し、金属銅の添加終了後に各種の合金成分を添加し、更に4分間底吹き攪拌し、その後、溶湯成分を確認するための溶湯サンプルを採取して成分分析を実施した。

0045

溶湯成分を確認するための溶湯サンプルを採取した後、約10分間経過した時点で判明した各合金成分濃度の分析結果を確認し、この分析結果に基づいて各合金成分の濃度を微調整するための合金原料を添加し、この合金原料の添加後、更に4分間底吹き攪拌した。その後、最終的な溶湯サンプルを採取するとともに溶湯温度を確認して約25分間の脱酸処理を終了し、減圧容器内を大気圧まで復圧してVOD設備での二次精錬を終了した。

0046

試験番号6では、銅濃度1.5質量%相当分の金属銅を、真空脱炭処理中ではなく脱酸剤添加後に投入したことから、その影響により、各種の合金成分を添加、分析、再調整などの実施タイミング遅れることになり、6分間の脱酸処理時間の延長を招いた。

0047

表1に、各試験の試験条件及び試験結果を示す。表1では、真空脱炭処理時間と脱酸処理時間との合計をVOD処理時間として示している。また、表1では、本発明の範囲内の試験条件で行った試験を本発明例と表示し、本発明の範囲外の試験条件で行った試験を比較例または従来例と表示している。

0048

0049

表1に示した結果から、転炉出鋼時に金属銅を添加する従来の添加方法である試験番号1に対して、金属銅の添加タイミングを真空脱炭処理中に変更することによって真空脱炭処理時間の短縮が可能であり、特に、金属銅を添加する時点の溶湯中炭素濃度が0.02質量%以下である試験番号4、5では、VOD処理時間の短縮効果が大きいことがわかる。また、金属銅の添加タイミングを脱酸剤の添加後とした試験番号6では、真空脱炭処理時間は更に短縮されたものの、脱酸処理時間の延長を招いたことから、試験番号4、5に比べてVOD処理時間の短縮効果が小さかった。

実施例

0050

上記実施例では、添加する難酸化性元素の合金原料が金属銅の場合について説明したが、ニッケル、モリブデンまたはコバルトを含有する極低炭素濃度のステンレス鋼についても、これらを添加するための金属ニッケルフェロニッケルフェロモリブデン金属コバルトなどの合金原料の添加タイミングを、転炉出鋼時から真空脱炭処理中へと変更することによって、上記説明の金属銅の場合と同様に、真空脱炭処理中の溶湯温度を容易に上昇させることができ、それにより、脱炭反応が促進されて真空脱炭処理時間を短縮する効果が得られた。

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