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技術 LF処理における粗大介在物の低減方法

出願人 株式会社神戸製鋼所
発明者 太田裕己田中翔太
出願日 2016年3月23日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2016-058666
公開日 2017年9月28日 (3年3ヶ月経過) 公開番号 2017-171983
状態 未査定
技術分野 溶融状態での鋼の処理
主要キーワード 側方断面視 流量小 境界時刻 攪拌量 時間不足 動力密度 誘導設備 溶融酸化物
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

高清浄鋼を溶製するにあたり、攪拌ガスの量、アーク加熱パターンを適正に規定して、Al脱酸生成物を除去し、スラグの巻き込みを防止するLF処理における粗大介在物低減方法を提供する。

解決手段

本発明は、高清浄鋼を溶製するにあたり、LF処理においてガス攪拌を行う際、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻をLF処理の前半期間後半期間境界時刻とし、0.35≦r/R≦0.75、0.75≦h/H≦1、ε(n)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148)、50≦ε(1)≦80、45≦E(1)≦55、10≦ε(2)≦40、30≦E(2)≦40を満たす。ただし、ランス吐出孔5の位置と取鍋基準位置の距離をr、吐出孔5の位置における取鍋1半径をR、吐出孔5の位置における溶鋼深さをh、取鍋1内の溶鋼深さをH、前半期間のガス攪拌動力密度の平均ε(1)、電極加熱量の平均E(1)、後半期間のガス攪拌動力密度の平均ε(2)、電極加熱量の平均E(2)とする。

概要

背景

周知の如く、船舶用部品、例えば船舶エンジン内のクランクシャフト等を製造するにあたっては、その元となる鋼塊鋼材は、高い耐疲労特性が要求されるため、疲労特性に大きな影響を及ぼす介在物の非常に少ない高清浄鋼高清浄度鋼)であることが必要不可欠である。
高清浄鋼を製造する方法としては、転炉から出鋼された溶鋼に対し2次精錬を行うことで、更なる組成調整を実施し、この2次精錬終了後の溶鋼に対して脱ガス処理を行うことで、溶鋼内に存在する水素等のガス成分の除去を行っている。

高清浄鋼を製造する技術としては、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1は、高価な電磁攪拌誘導設備が付与された取鍋精錬設備を有し、取鍋の溶損を抑制するとともに、鋼の清浄度を向上させることを目的としている。
具体的には、転炉又はアーク溶解炉にて製造した溶鋼に対して取鍋精錬LF処理)を行う場合、電磁誘導攪拌設備装備した取鍋精錬設備を用いて精錬を行う。

まず、電磁誘導攪拌装置により強攪拌を加え、合金調整、初期脱酸生成物の除去を行った後、同電磁攪拌誘導設備により、弱攪拌を行い、スラグの巻き込みを防止する条件のもとで精錬を行う。これにより鋼の清浄度が向上するとされている。
特許文献2は、溶鋼のスラグ巻き込みを防止することで、鋼の清浄度を向上させることを目的としている。

具体的には、溶鋼にガスを吹きこんで溶鋼を攪拌する取鍋精錬を行う場合において、スラグ組成分析し、その分析結果からスラグの固相率から算出する。
その後、得られたスラグ固相率を用いて、同文献に規定された算出式より得られた値に対して、その値を超えないようにガス流量を調整し、ガス攪拌精錬を行う。
スラグの固相率がより高い場合は、スラグの巻き込み性が抑制されるとして、より多くのガス攪拌流量を流すことができるとされている。

特許文献3は、軸受鋼精錬方法において、より清浄度を高めることを目的としている。
具体的には、軸受鋼の精錬において、窒素ガスを溶鋼に供給しながら行う転炉で一次精錬工程を行い、転炉から出鋼した溶鋼中に窒素ガスを吹き込み、当該窒素ガスで撹拌するバブリング工程を行い、バブリング工程後に行う真空脱ガス処理工程を行う。

バブリング工程で窒素ガスを用いているので、一次精錬時に窒素濃度がばらついていても、窒素濃度を高めた状態で真空脱ガス処理を行うことができるので、真空脱ガス処理での非金属介在物除去効果が向上し、鋼の清浄度が向上するとされている。

概要

高清浄鋼を溶製するにあたり、攪拌ガスの量、アーク加熱パターンを適正に規定して、Al脱酸生成物を除去し、スラグの巻き込みを防止するLF処理における粗大介在物の低減方法を提供する。本発明は、高清浄鋼を溶製するにあたり、LF処理においてガス攪拌を行う際、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻をLF処理の前半期間後半期間境界時刻とし、0.35≦r/R≦0.75、0.75≦h/H≦1、ε(n)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148)、50≦ε(1)≦80、45≦E(1)≦55、10≦ε(2)≦40、30≦E(2)≦40を満たす。ただし、ランス吐出孔5の位置と取鍋1基準位置の距離をr、吐出孔5の位置における取鍋1半径をR、吐出孔5の位置における溶鋼深さをh、取鍋1内の溶鋼深さをH、前半期間のガス攪拌動力密度の平均ε(1)、電極加熱量の平均E(1)、後半期間のガス攪拌動力密度の平均ε(2)、電極加熱量の平均E(2)とする。

目的

本発明は、上記問題点に鑑み、LF処理にて清浄度を要求される鋼を製造する際に、攪拌ガスの量、アーク加熱のパターンを適正に規定することで、操業性生産性を損なわずに、Al脱酸生成物(Al2O3介在物)を除去するとともに、スラグ巻き込み(スラグ系介在物混入)を防止することができるLF処理における粗大介在物の低減方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

清浄度を要求される鋼材を溶製するにあたり、LF取鍋精錬)工程を用いる場合、前記LF処理において、前記取鍋内の溶鋼ランスを用いてガス攪拌を行うにあたり、前記ランスに設けられている吐出孔の位置に関し、前記取鍋の平面視における当該取鍋の長径短径が交わる位置を基準位置とし、前記取鍋の平面視において、前記吐出孔の位置と前記取鍋の基準位置との距離をr(m)とし、前記取鍋の基準位置と前記吐出孔の位置を通過し、前記取鍋の内壁面に到達する直線を、前記取鍋の半径R(m)とした場合、式(1)を満たし、 0.35≦r/R≦0.75 ・・・(1)前記吐出孔の位置における溶鋼ヘッド深さをh(m)とし、前記取鍋内の溶鋼深さをH(m)とした場合、式(2)を満たし、 0.75≦h/H≦1 ・・・(2)さらに、前記LF処理の期間を、前半と後半の2つの期間に分け、前記LF処理の前半期間と、前記LF処理の後半期間における境界時刻を、前記LF処理の開始時刻から、10分以上20分以下、経った時刻とし、前記LF処理の前半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(1)(W/ton)とした場合、式(3)で算出された値が、式(4)を満たすようにガス撹拌を行い、ε(1)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148) ・・・(3)50≦ε(1)≦80 ・・・(4)前記LF処理の前半期間での、電極加熱量の平均をE(1)(kW/ton) とした場合、式(5)を満たし、45≦E(1)≦55 ・・・(5)前記LF処理の後半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(2)(W/ton)とした場合、式(3)’で算出された値が、式(6)を満たし、ε(2)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148) ・・・(3)’10≦ε(2)≦40 ・・・(6)前記LF処理の後半期間での、電極加熱量の平均E(2)(kW/ton) とした場合、式(7)を満たす30≦E(2)≦40 ・・・(7)ことを特徴とするLF処理における粗大介在物低減方法

技術分野

0001

本発明は、LF処理において、発生する粗大介在物を低減させる方法に関する。

背景技術

0002

周知の如く、船舶用部品、例えば船舶エンジン内のクランクシャフト等を製造するにあたっては、その元となる鋼塊鋼材は、高い耐疲労特性が要求されるため、疲労特性に大きな影響を及ぼす介在物の非常に少ない高清浄鋼高清浄度鋼)であることが必要不可欠である。
高清浄鋼を製造する方法としては、転炉から出鋼された溶鋼に対し2次精錬を行うことで、更なる組成調整を実施し、この2次精錬終了後の溶鋼に対して脱ガス処理を行うことで、溶鋼内に存在する水素等のガス成分の除去を行っている。

0003

高清浄鋼を製造する技術としては、例えば、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1は、高価な電磁攪拌誘導設備が付与された取鍋精錬設備を有し、取鍋の溶損を抑制するとともに、鋼の清浄度を向上させることを目的としている。
具体的には、転炉又はアーク溶解炉にて製造した溶鋼に対して取鍋精錬(LF処理)を行う場合、電磁誘導攪拌設備装備した取鍋精錬設備を用いて精錬を行う。

0004

まず、電磁誘導攪拌装置により強攪拌を加え、合金調整、初期脱酸生成物の除去を行った後、同電磁攪拌誘導設備により、弱攪拌を行い、スラグの巻き込みを防止する条件のもとで精錬を行う。これにより鋼の清浄度が向上するとされている。
特許文献2は、溶鋼のスラグ巻き込みを防止することで、鋼の清浄度を向上させることを目的としている。

0005

具体的には、溶鋼にガスを吹きこんで溶鋼を攪拌する取鍋精錬を行う場合において、スラグ組成分析し、その分析結果からスラグの固相率から算出する。
その後、得られたスラグ固相率を用いて、同文献に規定された算出式より得られた値に対して、その値を超えないようにガス流量を調整し、ガス攪拌精錬を行う。
スラグの固相率がより高い場合は、スラグの巻き込み性が抑制されるとして、より多くのガス攪拌流量を流すことができるとされている。

0006

特許文献3は、軸受鋼精錬方法において、より清浄度を高めることを目的としている。
具体的には、軸受鋼の精錬において、窒素ガスを溶鋼に供給しながら行う転炉で一次精錬工程を行い、転炉から出鋼した溶鋼中に窒素ガスを吹き込み、当該窒素ガスで撹拌するバブリング工程を行い、バブリング工程後に行う真空脱ガス処理工程を行う。

0007

バブリング工程で窒素ガスを用いているので、一次精錬時に窒素濃度がばらついていても、窒素濃度を高めた状態で真空脱ガス処理を行うことができるので、真空脱ガス処理での非金属介在物除去効果が向上し、鋼の清浄度が向上するとされている。

先行技術

0008

特開2006−322060号公報
特開2013−137973号公報
特開2006−283090号公報

発明が解決しようとする課題

0009

ところで、軸受鋼などのAlキルド鋼において、製品欠陥につながる粒径が20μm強の介在物の生成要因は、転炉出鋼時などで生成されるAl2O3系脱酸生成物、及び、LF処理中に溶融したLFスラグを巻き込み、鋼中に残存したスラグ系介在物に大別される。
また、LF(取鍋精錬)処理において、ガスを吹きこんで溶鋼を攪拌する際、溶鋼を強く攪拌しすぎると、大量のスラグが巻き込まれてしまい、溶鋼内の介在物が増加することから、従来では、スラグ系介在物の発生対策の一つとして、LF処理での弱攪拌化(低ガス流量化)がなされている。

0010

一方、LF処理で弱攪拌を行うと、攪拌動力が弱くなることから、転炉出鋼時に生成されたAl2O3系介在物の除去効率が低下してしまう。また、溶鋼内の温度や成分などが不均一となるなど、操業性に関する悪影響を解決することが、課題として残されている。
例えば、特許文献1、2は、鋼の清浄度の低下を防止するため、攪拌量(攪拌の強弱)を規定している。しかしながら、その攪拌量に応じた加熱量が明確に規定されていない、すなわち攪拌量と加熱量のバランスが規定されていないので、非常に稀ではあるが、実操業の条件によっては、取鍋の溶損など操業性に不具合が生じてしまう可能性がある。

0011

また、特許文献3は、バブリング工程において、撹拌ガス流量が3500(Nl/min)とされており、スラグを巻き込む程度のガス流量となっているので、バブリング工程で介在物を増加させてしまう虞がある。
以上述べた課題を解決するため、本願発明者が調査を行った結果、以下に示すことが明らかとなった。

0012

LF処理において、スラグ巻き込みが発生する時期は、取鍋内に投入した造滓剤の滓化が進行した後の段階である。故に、スラグ巻き込みを抑制するために、弱攪拌化が必要な期間は、滓化が進行した後の期間のみである。
これにより、LF処理での攪拌量と電極加熱量には、適正なバランスがあることを知見した。例えば、攪拌量に対して、電極加熱量が多すぎる場合、スラグ内に熱がこもってしまい、溶鋼内の温度不均一や、取鍋耐火物寿命低下など操業面に悪影響を及ぼすこととなる。

0013

そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、LF処理にて清浄度を要求される鋼を製造する際に、攪拌ガスの量、アーク加熱パターンを適正に規定することで、操業性・生産性を損なわずに、Al脱酸生成物(Al2O3介在物)を除去するとともに、スラグ巻き込み(スラグ系介在物の混入)を防止することができるLF処理における粗大介在物の低減方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0014

上述の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかるLF処理における粗大介在物の低減方法は、清浄度を要求される鋼材を溶製するにあたり、LF(取鍋精錬)工程を用いる場合、前記LF処理において、前記取鍋内の溶鋼をランスを用いてガス攪拌を行うにあたり、前記ランスに設けられている吐出孔の位置に関し、前記取鍋の平面視における当該取鍋の長径短径が交わる位置を基準位置とし、前記取鍋の平面視において、前記吐出孔の位置と前記取鍋の基準位置との距離をr(m)とし、前記取鍋の基準位置と前記吐出孔の位置を通過し、前記取鍋の内壁面に到達する直線を、前記取鍋の半径R(m)とした場合、式(1)を満たし、
0.35≦r/R≦0.75 ・・・(1)
前記吐出孔の位置における溶鋼ヘッド深さをh(m)とし、前記取鍋内の溶鋼深さをH(m)とした場合、式(2)を満たし、
0.75≦h/H≦1 ・・・(2)
さらに、前記LF処理の期間を、前半と後半の2つの期間に分け、前記LF処理の前半期間と、前記LF処理の後半期間における境界時刻を、前記LF処理の開始時刻から、10分以上20分以下、経った時刻とし、前記LF処理の前半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(1)(W/ton)とした場合、式(3)で算出された値が、式(4)を満たすようにガス撹拌を行い、
ε(1)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148) ・・・(3)
50≦ε(1)≦80 ・・・(4)
前記LF処理の前半期間での、電極加熱量の平均をE(1)(kW/ton) とした場合、式(5)を満たし、
45≦E(1)≦55 ・・・(5)
前記LF処理の後半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(2)(W/ton)とした場合、式(3)’で算出された値が、式(6)を満たし、
ε(2)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148) ・・・(3)’
10≦ε(2)≦40 ・・・(6)
前記LF処理の後半期間での、電極加熱量の平均E(2)(kW/ton) とした場合、式(7)を満たす
30≦E(2)≦40 ・・・(7)
ことを特徴とする。

発明の効果

0015

本発明によれば、LF処理にて清浄度を要求される鋼を製造する際に、攪拌ガスの量、アーク加熱のパターンを適正に規定することで、操業性・生産性を損なわずに、Al脱酸生成物(Al2O3介在物)を除去するとともに、スラグ巻き込み(スラグ系介在物の混入)を防止することができる。

図面の簡単な説明

0016

LF(取鍋精錬)工程の概略を模式的に示した図である。
スラグ巻き込みの模式的に示した図である(流量大)。
スラグ巻き込みの模式的に示した図である(流量小)。
取鍋を上方視におけるランスの配備位置を模式的に示した図である。
取鍋の側方断面視におけるランスの配備位置の基準を模式的に示した図である。
取鍋の上方視におけるランスの配備位置の基準を模式的に示した図である。
ランスの配備位置による溶鋼流動の違いを模式的に示した図である(取鍋の中央にランスが配備されている)。
ランスの配備位置による溶鋼流動の違いを模式的に示した図である(取鍋の壁面よりにランスが配備されている)。
取鍋の側方断面視におけるランスの配備位置を模式的に示した図である。
ランスに設けられた吐出孔の位置(r/R)に対するスラグ系介在物個数の関係を示す図である。
ランスに設けられた吐出孔の深さ(h/H)に対するスラグ系介在物個数の関係を示す図である。
LF処理の前半期間におけるガス攪拌動力密度ε(1)と、アルミナ系介在物個数の関係を示す図である。
LF処理の前半期間におけるガス攪拌動力密度ε(1)と、アーク加熱電極の電極加熱量E(1)の関係を示す図である。
LF処理の後半期間におけるガス攪拌動力密度ε(2)と、スラグ系介在物個数の関係を示す図である。
LF処理の後半期間におけるガス攪拌動力密度ε(2)と、アーク加熱電極の電極加熱量E(2)の関係を示す図である。
LF処理の前半期間における攪拌時間とスラグ系介在物個数の関係を示す図である。
本発明のLF処理における粗大介在物の低減方法における規定範囲を示す図である。
本発明のLF処理における粗大介在物の低減方法におけるLF処理のイメージ(一例)を示す図である。
ボール不良率へのスラグ系介在物の影響を示す図である。

実施例

0017

以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて、詳細に説明する。
まず、本発明は、軸受け鋼などの清浄度が要求される鋼材を対象とする。理由としては、鋼材中に存在する介在物の度合いである清浄度が低いと、疲労寿命の低下など、品質悪化が生じる虞があるためである。
また、清浄度を要求される鋼材を溶製するにあたっては、当業者常法の一般的な高清浄鋼の溶製方法(転炉−LF−RH工程)を用いることとする。

0018

高炉〜転炉を経た一次精錬工程の後、LF処理を行う前に転炉工程で生成した転炉スラグ7を除滓する。除滓後、スラグ造滓材を投入する。なお、スラグ原単位は、8〜12(kg/溶鋼ton)とした。
なお、軸受け鋼などAlキルドの場合には、転炉出鋼中に、製品規格成分に応じたAl合金を溶鋼6に添加し、脱酸処理を行っている。

0019

図1に示すように、LF(取鍋精錬)工程では、ランス4またはポーラス耐火物からのガス撹拌による成分調整、電極加熱による温度調整を実施している。
ところが、図2A,Bに示すように、ガス撹拌により、溶鋼6中の介在物の浮上が促進されるが、スラグ/メタル界面での溶鋼流動やガス気泡によるスラグ7の巻き込み、取鍋1の内壁面に形成されている耐火物が撹拌しているガスにより削られて介在物となり、清浄度を悪化させる懸念がある。

0020

また、攪拌ガスの種類としては、当業者の通常どおり、不活性なArガスを用いている。なお、ガス攪拌の方法としては、ランス攪拌、取鍋1の底部からのポーラス攪拌のどちらでもかなわない。
ところで、スラグ7とは、溶鋼6の保温酸化防止や、介在物捕捉などのために、溶鋼6の上面(湯面)に散布されている溶融酸化物である。また、スラグ/メタル界面とは、溶鋼6とスラグ7との境目のことである。スラグ7は、スラグ/メタル界面から溶鋼6中へ混入して、CaOを含有するスラグ系介在物となる。

0021

まず、取鍋1の半径方向におけるランス4の吐出孔5の位置(r/R)を規定する。
ランス4とは、内部にガス配管を通した棒状の耐火物である。ランス4の先端には、溶鋼6にガスを吐出する吐出孔5が設けられている。取鍋1内の溶鋼6にランス4を浸漬させて、吐出孔5から不活性ガスを流すことで、溶鋼6の撹拌を行う。
ランス4に設けられている吐出孔5の基準位置は、ランス4の高さ方向における、ランス4の先端の吐出孔5の中心軸の高さで且つ、ランス4を上方から見た場合におけるランス4の中心位置(円の中心点)とする。

0022

なお、取鍋1は上方から見ると通常は円形であるが、楕円形の取鍋1も考慮している。
理由としては、取鍋1の鉄皮が円形であっても、鉄皮の内壁面側に形成されている耐火物の厚みが、実操業によって変わることがあるので、取鍋1を上方から見ると内部が楕円
形となっていることがある。それ故、本発明では、平面視で、円形、楕円形などの取鍋1も考慮することとしている。

0023

それ故、本実施形態では、図4A,Bに示すように、平面視で円形の取鍋1を例に挙げて説明する。それにより、取鍋1の底部における円の中心点を、取鍋1の基準位置としている。
図3に示すように、取鍋1を平面視して、その取鍋1の底部において、その内周径の長径と短径が交わる位置を基準位置とする。

0024

取鍋1の平面視において、ランス4の吐出孔5の位置と、取鍋1の基準位置との距離をr(m)とし、取鍋1の基準位置と吐出孔5の位置を通過し、取鍋1の内壁面に到達する直線を、取鍋1の半径R(m)とした場合、式(1)を満たす。
0.35≦r/R≦0.75 ・・・(1)
「r/R」は、取鍋1内の半径方向におけるランス4の吐出孔5の位置を示すパラメータである。取鍋1の基準位置は、取鍋1底部における内周長径と内周短径の交点である。吐出孔5の位置は、各吐出孔5の高さ方向の位置、かつ、ランス4を上方から見た時(平面視)における、吐出孔5の中心軸の位置である。「r」(m)は、取鍋1の基準位置から吐出孔5の中心軸までの距離である。「R」(m)は、取鍋1の基準位置から、取鍋1の内壁面までの距離であって、吐出孔5の位置上を通過する。

0025

このように、(r/R)を下限以上(0.35≦r/R)とすることで、図5Aに示すように、取鍋1内において溶鋼流動が干渉せずに、溶鋼6全体を一周するような大きな一様の流動ができることとなり、溶鋼6の撹拌効率が各段に向上する。それ故、介在物の浮上分離効果が増加することとなり、清浄度がさらに上昇する。
一方で、(r/R)が下限を下回る(0.35>r/R)と、図5Bに示すように、溶鋼6上部(湯面)の中心付近から壁面に向かって放射状に溶鋼流動が広がり、内壁面に沿って下方にゆき、溶鋼6下部の中心付近まで流れる溶鋼流が生じることとなる。

0026

そのため、溶鋼6下部で溶鋼流動が互いに干渉し、攪拌効率が低下する。このように、撹拌効率が低下するので、取鍋1内における介在物の浮上分離効果が低下し、清浄度が悪化することとなる。
また、(r/R)が上限を超える(r/R>0.75)と、取鍋1内の耐火物へ加わる、ガスによる力が増加するので、耐火物や付着物剥離が起きることとなり、剥離したものが溶鋼6中に介在物として混入してしまい、清浄度が悪化することとなる。

0027

それ故、本実施形態では、式(1)を満たすようにしている。
次に、取鍋1内の溶鋼深さに対するランス4に吐出孔5の位置(h/H)を規定する。
図6に示すように、吐出孔5の位置における溶鋼ヘッド深さをh(m)とし、取鍋1内の溶鋼深さをH(m)と定義する。なお、溶鋼表面位置(湯面)を、吐出孔5の位置における溶鋼ヘッド深さの基準位置とする。

0028

取鍋1内の溶鋼深さにおける吐出孔5の位置(h/H)は、式(2)を満たす。
0.75≦h/H≦1 ・・・(2)
「h/H」は、溶鋼6内での吐出孔5の位置を示すパラメータである。「h」(m)は、溶鋼6の湯面から吐出孔5までの距離である。「H」(m)は、溶鋼6の湯面から取鍋1の底部までの距離である。

0029

(h/H)が下限を下回る(0.75>h/H)と、溶鋼6中において、ガスの気泡滞留時間が短くなり、撹拌力が低下するので、介在物の除去効率が低下する。
なお、取鍋1内の吐出孔5の位置における溶鋼深さhと、取鍋1の溶鋼深さHの比の上限
((h/H)=1)の場合とは、取鍋1底部からの攪拌、すなわちポーラス耐火物などを用いた場合のことを示すものである。

0030

上より、本実施形態では、式(2)を満たすようにしている。
さて、本実施形態においては、LF処理の期間を、前半と後半の2つの期間に分けている。
まず、LF処理の前半期間での主な役割は、操業の観点から、アーク加熱により造滓材を滓化することと、製品規格に応じた成分粗調整を各種合金添加により実施することである。加えて、品質の観点から、転炉出鋼時に生成した、Al脱酸生成物を除去することである。

0031

次いで、LF処理の後半期間での主な役割は、操業の観点から、溶鋼6の成分微調整と、連々パターン(連続して異鋼種鋳造する際の繋ぎ方)での温度調整である。加えて、品質の観点から、滓化したスラグ7の巻き込みを極力抑えることである。
そこで、本実施形態においては、LF処理の前半期間とLF処理の後半期間の境界時刻を、LF処理の開始時刻から、10分以上20分以下経った時刻としている。

0032

ところで、上で述べた規定の下限、すなわちLF処理の後半期間を開始する時刻を、LF処理の開始時刻から10分未満とした場合、スラグ滓化が不足し、溶鋼6の表面に固形物が残ってしまう。そのため、溶鋼6の成分調整に必要な溶鋼サンプリング、すなわち測温が困難となり、操業の継続が困難となってしまう虞がある。
一方で、上で述べた規定の上限、すなわちLF処理の後半期間を開始する時刻を、LF処理の開始時刻から20分超えとした場合、スラグ7が過剰に滓化した段階であり、スラグ7の巻き込みによるスラグ系介在物の増加を留意する必要がある。この状況で強攪拌を継続実施すると、スラグ系介在物の増加が懸念される。

0033

さて、本実施形態においては、LF処理の前半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(1)(W/ton)とした場合、式(3)で算出された値が、式(4)を満たすようにガス撹拌を行うこととしている。
ε(n)=0.0285×Q×T/Wg×log(1+h×100/148) ・・・(3)
50≦ε(1)≦80 ・・・(4)
なお、LF処理の開始時刻においては、以下に示す撹拌方法と電極加熱方法とする。

0034

上記のガス攪拌動力密度を示す、式(3)は、「参考文献:第100、101回西記念技術講座攪拌を利用した最近の製鋼技術の動向、p71」に記載されているものである。
ただし、「ε」はガス攪拌動力密度(W/ton)である。「Q」はLFガス流量(Nl/min)であり、「T」は溶鋼温度(K)である。また、「Wg」は溶鋼重量(ton)であり、「h」は取鍋1内の吐出孔5の位置における溶鋼深さ(m)である。また、「n」はLF処理の期間であり、「n=1」はLF処理の前半期間を示し、「n=2」はLF処理の後半期間を示す。

0035

ε(1)が下限を下回る(50>ε(1))と、転炉出鋼段階で生じた、脱酸Al2O3生成物の除去効率が低下してしまう虞がある。
一方、ε(1)が上限を超える(ε(1)>80)と、溶鋼6の湯面の変動が大きくなり、溶鋼6のステッピングが大となる虞がある。その結果、LF処理において炉蓋2への付着物が大きくなり、その付着物の除去作業が必要となり、且つその作業に多くの時間を要することとなるので、生産性が阻害されてしまう。

0036

それ故、本実施形態では、式(3)で算出されたε(1)が、式(4)を満たすようにしている。
また、本実施形態においては、LF処理の前半期間での、アーク加熱電極3の電極加熱
量の平均をE(1)(kW/ton)とした場合、式(5)を満たすようにしている。
45≦E(1)≦55 ・・・(5)
なお、アーク加熱電極3の電極加熱量Eは、カーボン電極によるサブマージアーク加熱時の電圧電流量、及び、力率で設定され、式(A)で求められる。

0037

E(kW/ton)=電圧(V)×電流(A)×力率(%)/100/Wg/1000 ・・・(A)
ただし、「Wg」は溶鋼重量(ton)である。
E(1)が下限を下回る(45>E(1))と、造滓材の滓化が極端に遅くなり、LF処理の時間全体が長期となり生産性が阻害される。
一方、E(1)が上限を超える(E(1)>55)と、アーク加熱電極3よりスラグ7へ入熱した熱量が溶鋼6に伝えきれず、スラグ7のみ温度が上昇することとなる。その結果、スラグライン耐火物の溶損が大きくなり、取鍋1の寿命が低下する虞がある。

0038

続いて、LF処理の後半期間の攪拌期では、スラグ7の巻き込みを極力低減するため、滓化期と比べて、低攪拌、低加熱量に設定する。
本実施形態では、LF処理の後半期間において、ガス攪拌動力密度の平均をε(2)(W/ton)とした場合、上記の式(3)で算出された値が、式(6)を満たすようにしている。なお、ここで算出されたε(2)は、「特許請求の範囲」に記載の式(3)’で算出された値に該当する。

0039

10≦ε(2)≦40 ・・・(6)
ε(2)が下限を下回る(10>ε(2))と、溶鋼6の成分及び温度の不均一がそれぞれ認められ、操業性の悪化を招く虞がある。
一方、ε(2)が上限を超える(ε(2)>40)と、スラグ7の巻き込みが進行し、品質悪化要因となる。

0040

次いで、本実施形態においては、LF処理の後半期間での、アーク加熱電極3の電極加熱量の平均E(2)(kW/ton) とした場合、式(7)を満たすようにしている。
30≦E(2)≦40 ・・・(7)
E(2)が下限を下回る(30>E(2))と、溶鋼温度が上昇せず、溶鋼6の温度調整が困難になる虞がある。

0041

一方、E(2)が上限を超える(E(2)>40)と、アーク加熱電極3よりスラグ7へ入熱した熱量が溶鋼6に伝えきれず、スラグ7のみ温度が上昇することとなる。その結果、スラグライン耐火物の溶損が大きくなり、取鍋1の寿命が低下する虞がある。
[実施例]
以下に、本実施例における実験条件を示す。

0042

まず、一次精錬工程については、以下に示すように行った。
容量が250(ton)の転炉を用いた(ただし、tonは粗鋼トン)。なお、転炉の操業においては、当業者常法通りに処理を実施した。また、容量が250(ton)の取鍋1を用いた。
また、鋼材の成分範囲を表1に示す。(ただし、数値単位は全てwt%)。

0043

0044

また、転炉出鋼時においては、転炉出鋼流に合わせて、脱酸用に金属Alを投入した。
なお、造滓化材に関して、スラグ原単位を8〜12(kg/ton)とし、造滓剤の総量としては、2000〜3000(kg)とした。また、造滓剤として、石灰MTランダム(主成分はAl2O3)、軽ドロを使用した。
次いで、二次精錬工程については、以下に示すように行った。

0045

LF(取鍋精錬)工程について、撹拌方法をランス撹拌、またはポーラスガス攪拌とした。ガスには、Arを用いた。また電極を、3相カーボン電極とした。なお、LF工程においては、当業者常法通りに処理を実施した。
また、LF工程を終えて搬出される時のスラグ7の組成は、当業者常法通りのCaO−SiO2−Al2O3−MgO系であり、CaOが50〜57(mass%)であり、SiO2が5〜10(mass%)であり、Al2O3が25〜35(mass%)であり、MgOが5〜12(mass%)である。

0046

RH(真空脱ガス)工程について、真空度を1(Torr)以下とした。還流時間を、30分以上とした。還流ガス流量を、1000〜3000(l/min) とした。還流ガスには、Arを用いた。なお、RH工程においては、当業者常法通りに処理を実施した。
また、連続鋳造工程については、当業者常法通りの高炭素鋼ブルーム製造方法で実施した。

0047

アルミナ系介在物個数評価方法については、以下に示すように行った。
酸溶解法を用いて、ビレット中のアルミナ系介在物の個数を評価した。
具体的には、サンプルを溶解させて、10μmのフィルターに捕捉された残渣から介在物を抽出し、EDXによって介在物組成を分析し、Al2O3濃度が70wt.%以上の幅20μm以上の介在物個数カウントした。

0048

スラグ系介在物の個数の評価方法については、以下に示すように行った。
スライム溶解法を用いて、ビレット(鋼材)中のスラグ系介在物の個数を評価した。なお、陽極をサンプル(ビレット)とし、陰極をSUSとした。電解液を、10%FeCl2水溶液とした。
具体的には、スライム溶解法によりサンプル(鋼材)を溶解させて、20μmのメッシュに捕捉された残渣から介在物を抽出し、その介在物をエネルギー分散X線分析(Energy dispersive X-ray spectrometry:EDX) により組成分析し、CaO濃度が5wt.%以上、粒径が30μm以上の介在物の個数をカウントした。

0049

なお、不良率の評価方法については、鋼材を外径2.45mmの球(ボール)に加工後、目視で確認して、表面に介在物が検出されたものを不良品とした。
次に、本発明にかかるLF処理における粗大介在物の低減方法の実施例及び比較例について、説明する。
表2、3に、本発明のLF処理における粗大介在物の低減方法の実施例を示す。表4、5に、LF処理における粗大介在物の低減方法の比較例を示す。

0050

0051

0052

0053

0054

表2、3のNo,1(実施例)を参照すると、(r/R)が0.75であり、式(1)を満たし、且つ(h/H)が0.75であり、式(2)を満たしている。
また、LF処理の前半期間と後半期間の境界時刻(LF処理後半が開始された時刻)は、16.2(min)であり、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻の範囲を満たす。

0055

ε(1)が式(3)より50(W/ton)と算出され、式(4)を満たし、E(1)が式(A)より46(kW/ton)と算出され、式(5)を満たしている。ε(2)が式(3)より30(W/ton)と算出され、式(6)を満たし、E(2)が式(A)より35(kW/ton)と算出され、式(7)を満たしている。
また、溶鋼6の温度不均一などの操業異常が無いことが確認できる。アルミナ系介在物の個数が276(個/50g)であり、300(個/50g)以下を満たしている。スラグ系介在物の個数が0.8(個/kg)であり、2(個/kg)以下を満たしている。ボールの不良率が6.9(ppm)であり、10(ppm)以下を満たしている。

0056

表2、3のNo,7(実施例)を参照すると、(r/R)が0.35であり、式(1)を満たし、且つ(h/H)が1であり、式(2)を満たしている。
また、LF処理の前半期間と後半期間の境界時刻は、10.2(min)であり、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻の範囲を満たす。
ε(1)が式(3)より67(W/ton)と算出され、式(4)を満たし、E(1)が式(A)より49(kW/ton)と算出され、式(5)を満たしている。ε(2)が式(3)より11(W/ton)と算出され、式(6)を満たし、E(2)が式(A)より32(kW/ton)と算出され、式(7)を満たしている。

0057

また、溶鋼6の温度不均一などの操業異常が無いことが確認できる。アルミナ系介在物の個数が182(個/50g)であり、300(個/50g)以下を満たしている。スラグ系介在物の個数が1.3(個/kg)であり、2(個/kg)以下を満たしている。ボールの不良率が9.3(ppm)であり、10(ppm)以下を満たしている。
表2、3のNo,10(実施例)を参照すると、(r/R)が0.66であり、式(1)を満たし、且つ(h/H)が0.92であり、式(2)を満たしている。

0058

また、LF処理の前半期間と後半期間の境界時刻は、11.1(min)であり、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻の範囲を満たす。
ε(1)が式(3)より63(W/ton)と算出され、式(4)を満たし、E(1)が式(A)より54(kW/ton)と算出され、式(5)を満たしている。ε(2)が式(3)より38(W/ton)と算出され、式(6)を満たし、E(2)が式(A)より37(kW/ton)と算出され、式(7)を満たしている。

0059

また、溶鋼6の温度不均一などの操業異常が無いことが確認できる。アルミナ系介在物の個数が157(個/50g)であり、300(個/50g)以下を満たしている。スラグ系介在物の個数が1.7(個/kg)であり、2(個/kg)以下を満たしている。ボールの不良率が5.3(ppm)であり、10(ppm)以下を満たしている。
一方、表4、5のNo,22(比較例)は、(r/R)が0.34であり、式(1)を満たしていない。また、ε(1)が式(3)より49(W/ton)と算出され、式(4)を満たしていない。すなわち、吐出孔5の位置の下限はずれであり、LF処理の前半期間での攪拌動力の下限はずれである。その結果、アルミナ系介在物の個数、スラグ系介在物の個数、ボールの不良率、すべて満たしていない。

0060

表4、5のNo,24(比較例)は、E(1)が式(A)より44(kW/ton)と算出され、式(5)を満たしていない。すなわち、LF処理の前半期間での加熱量の下限はずれである。その結果、滓化不足により、LF処理の継続ができなかった。
表4、5のNo,27(比較例)は、LF処理の前半期間と後半期間の境界時刻が9(min)とされ、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下経った時刻の範囲を満たしていない。すなわち、LF処理の前半期間における処理時間不足である。その結果、滓化不足により、LF処理の継続ができなかった。

0061

表4、5のNo,30(比較例)は、ε(2)が式(3)より8(W/ton)と算出され、式(6)を満たしていない。すなわち、LF処理の後半期間での攪拌動力の下限はずれである。その結果、溶鋼温度が不均一で、次工程のRHでの温度ドロップが大である。
表4、5のNo,33(比較例)は、E(2)が式(A)より28(kW/ton)と算出され、式(7)を満たしていない。すなわち、LF処理の後半期間での加熱量の下限はずれである。その結果、溶鋼温度の低下により、連鋳機の要求温度に調整することができなかった。

0062

以上より、本発明の技術を用いれば、良好な結果が得られることが確認できる。
なお、比較例13、14は、取鍋1の半径方向におけるガス吐出位置の下限はずれである。比較例15、16は、取鍋1の半径方向におけるガス吐出位置の上限はずれである。比較例17、18は、溶鋼深さに対するガス吐出位置の下限はずれである。比較例19、20は、LF処理の前半期間での攪拌動力の下限はずれである。

0063

また、比較例21は、LF処理の前半期間での攪拌動力の上限はずれであり、LF処理において炉蓋2への付着が大である。比較例23は、LF処理の前半期間での加熱量の下限はずれであり、滓化不足により、LF処理の継続ができなかった。
比較例25、26は、LF処理の前半期間での加熱量の上限はずれであり、スラグライン耐火物の溶損が大である。比較例28は、LF処理の前半期間における処理時間の上限はずれである。比較例29は、LF処理の後半期間での攪拌動力の下限はずれであり、溶鋼温度が不均一で、次工程のRHでの温度ドロップが大である。

0064

比較例31、32は、LF処理の後半期間での攪拌動力の上限はずれである。比較例34は、LF処理の後半期間での加熱量の下限はずれであり、溶鋼温度の低下により、連鋳機の要求温度に調整ができなかった。比較例35、36は、LF処理の後半期間での加熱量の上限はずれであり、スラグライン耐火物の溶損が大である。比較例37は、LF処理の前半期間における処理時間不足であり、滓化不足により、LF処理の継続ができなかった。比較例38は、LF処理の前半期間における処理時間の上限はずれである。

0065

ここで、図7、8を参照しながら、吐出孔5の位置を規定する理由を述べる。
なお、図7〜13に示す、プロット(○印、×印)は、表2〜5の実験番号に対応している。
吐出孔5から吐出されるガスによる溶鋼流動(溶鋼流)は、取鍋1の底部から溶鋼6の上部に上昇すると、溶鋼6の上部の中心付近から内壁面に向かって放射状に広がり、その後内壁面を伝って下降し、溶鋼6の下部(取鍋1の底部)の中心付近に向かうこととなる。

0066

そのため、図7に示すように、ランス4の吐出孔5の位置が適正でない、すなわち式(1)を満たさない場合、溶鋼6の下部で溶鋼流動が互いに干渉して、攪拌効率が低下するため、介在物の浮上分離効果が低下し、清浄度が悪化することとなる。
また、図8に示すように、吐出孔5の位置における溶鋼浸漬深さhが足りない、すなわち式(2)を満たさない場合、溶鋼6中でのガスの滞留時間が短くなり、気泡/ガスの付着頻度が減ることから、介在物の除去効率が低下することとなる。

0067

それ故、ランス4の吐出孔5を、式(1)、式(2)を満たすように、配置している。
図9、10を参照しながら、LF処理の前半期間での処理条件を、規定する理由を述べる。
LF処理の前半期間での主な役割は、操業において、アーク加熱により造滓材を滓化することと、製品規格に応じた成分粗調整を各種合金添加により実施することである。加えて、品質の観点からは、転炉出鋼時に生成した、Al脱酸生成物を除去することである。

0068

図9に示すように、ガス撹拌の攪拌量が少ない、すなわち式(3)で算出されたε(1)が式(4)を下回る(50>ε(1))場合(比較例No.19、20、23)、転炉出鋼時に生じた初期のAl2O3脱酸生成物を除去することができず、アルミナ系介在物の個数が多くなることが確認できる。
一方、ε(1)が式(4)より超える攪拌動力(ε(1)>80)とした場合(比較例No.22)、LF処理において炉蓋2への地金/スラグなどの付着物の量が多く、その付着物の除去作業に多大な時間を費やすこととなった。

0069

図10に示すように、式(3)で算出されたε(1)が式(4)を満たす場合において、電極加熱量E(1)が、式(5)を下回る(45>E(1))場合(比較例No.23、24)、造滓剤の滓化の進行が遅く、滓化不良が生じ、精錬処理を継続することができなかった。
一方、アーク加熱電極3における電極加熱量E(1)が、式(5)を超える(E(1)>55)場合(比較例No.25、26)は、スラグ7内に熱がこもりすぎて、取鍋1のスラグライン耐火
物の溶損が激しく、その結果、取鍋1の寿命が大きく低下する事態となった。

0070

以上より、LF処理の前半期間での処理条件に関し、式(3)で算出されたε(1)が、式(4)を満たし、且つ式(A)で算出されたE(1)が、式(5)を満たすようにしている。
図11、12を参照しながら、LF処理の後半期間での処理条件を、規定する理由を述べる。

0071

LF処理の後半期間での主な役割は、操業の観点から、溶鋼6の成分微調整、連々パターンでの温度調整である。加えて、品質の観点から、滓化したスラグ7の巻き込みを極力抑えることである。なお、LF処理の後半期間においては、LF処理の前半期間と比べ、ガス撹拌の攪拌量を少なく設定し、その攪拌量に応じてアークにおける電極加熱量も低く抑えることとしている。

0072

図11に、LF処理の後半期間のガス攪拌動力密度の平均ε(2)と、スラグ系介在物の個数の関係を示す。
図11に示すように、ガス撹拌の攪拌量が小さすぎる、式(3)で算出されたε(2)が式(6)を下回る(10>ε(2))場合(比較例No.29、30)は、溶鋼温度の不均一性が生じ、次工程のRH処理にて、大きな温度ドロップが生じてしまった。その結果、充分なRH処理の時間を確保することができなかった。

0073

逆に、ガス撹拌の攪拌量が大きい、式(3)で算出されたε(2)が式(6)を超える(ε(2)>40)場合は(比較例No.31、32)、懸念していたスラグ7の巻き込みが大量に発生し、スラグ系介在物の増加が認められた。
一方、図12に示すように、式(3)で算出されたε(2)が式(6)を満たす場合において、電極加熱量E(2)が、式(7)を下回る(30>E(2))場合(比較例No.33、34)、溶鋼温度が上昇せず、溶鋼6の温度制御が不可能となった。

0074

また、電極加熱量E(2)が、式(7)を超える(E(2)>40)場合は(比較例No.25、26)、スラグ7内に熱がこもりすぎて、取鍋1のスラグライン耐火物の溶損が激しく、その結果、取鍋1の寿命が大きく低下する事態となった。
図13を参照しながら、LF処理の前半期間から後半期間へと切り換えるための境界条件を、規定する理由を述べる。

0075

図13に示すように、LF処理の前半期間(攪拌時間前半)を10分未満とした場合(比較例No.27、37)、スラグ滓化が不足して、溶鋼6の表面に固形物が残ってしまった。これより、溶鋼6の成分調整に必要な溶鋼サンプリング、すなわち測温が困難となり、操業の継続が困難となった。
一方で、過剰な時間でLF処理を行う、すなわちLF処理の前半期間が20分超えとした場合(比較例No.28、38)、スラグ系介在物の増加が認められる。このスラグ系介在物が増加した理由としては、20分を超える長時間処理において、スラグ7が過剰に滓化した段階のまま、前半期間の条件である強攪拌条件で攪拌したため、スラグ7の巻き込みが大量に発生した、と考えられる。

0076

ここで、図14、15を参照しながら、本発明の規定について述べる。
図14は、本発明の規定に関するグラフであり、図中のLF処理の前半期間及び後半期間を囲む範囲が本発明の規定範囲である。
図14に示すように、LF処理の前半期間において、ガス攪拌動力密度の平均ε(1)の値が小さい(図中の1)と、Al2O3系介在物の除去不足となってしまう。一方、ε(1)の値が大きい(図中の3)と、LF処理において炉蓋2に地金/スラグなどが多く付着
することとなってしまう。

0077

電極加熱量の平均をE(1)の値が大きい(図中の2)と、取鍋1の耐火物を溶損させてしまう。電極加熱量の平均をE(1)の値が小さい(図中の4)と、滓化不良となってしまう。
一方、LF処理の後半期間において、ガス攪拌動力密度の平均ε(2)の値が小さい(図中の5)と、溶鋼6の温度不均一となってしまう。ε(2)の値が小さい(図中の6)と、スラグ7の巻き込みが増加してしまう。

0078

電極加熱量の平均をE(2)の値が大きい(図中の2)と、取鍋1の耐火物を溶損させてしまう。電極加熱量の平均をE(2)の値が小さい(図中の7)と、溶鋼温度が低下してしまう。
以上述べた理由により、本発明では、LF処理の攪拌条件を規定している。その規定をまとめたものを、以下に示す。

0079

図15は、本発明のLF処理における粗大介在物の低減方法の一例を示すグラフである。
1)LF処理において、ランス4を溶鋼6が装入された取鍋1内に配置する際には、吐出孔5の位置に関し、(r/R)が式(1)を満たし、且つ(h/H)が式(2)を満たすようにする。

0080

2)図15に示すように、LF処理の期間を前半と後半の2つの期間に分け、その前半期間と後半期間の境界の時刻を、LF処理の開始時刻から10分以上20分以下、経った時刻とする。
3)LF処理の前半期間において、Al2O3系介在物除去のために、ガス攪拌の攪拌量を高めに設定し、そのガス攪拌の攪拌量に応じたアーク加熱電極3の電極加熱量を設定する。

0081

すなわち、式(3)で算出されたガス攪拌動力密度の平均ε(1)が、式(4)を満たし、電極加熱量の平均をE(1)が、式(5)を満たすようにガス撹拌を行う。
滓化完了後は、LF処理の後半期間に移行する。理由としては、滓化後に前半期間の攪拌条件で攪拌を行うと、スラグ7の巻き込みが発生するためである。
4)LF処理の後半期間において、スラグ7の巻き込みを抑制するために、前半期間に比べてガス攪拌の攪拌量を弱くし、その攪拌量に対応したアーク電極の電極加熱量を設定する。

0082

すなわち、式(3)で算出されたガス攪拌動力密度の平均ε(2)が、式(6)を満たし、電極加熱量の平均をE(2)が、式(7)を満たすようにガス撹拌を行う。
以上、本発明によれば、LF処理にて清浄度を要求される鋼を製造する際に、攪拌ガスの量、アーク加熱のパターンを適正に規定することで、操業性・生産性を損なわずに、Al脱酸生成物(Al2O3介在物)を除去するとともに、スラグ7の巻き込み(スラグ系介在物の混入)を防止することができるので、製品の不良率を低下させることが可能となる。

0083

図16は、スラグ系介在物個数(横軸)と縦軸ボール不良率(縦軸)の関係を示す図である。なお、この図16においては、プロットをアルミナ系介在物個数でソートしている。また、300(個/50g)以下を○(良)、300(個/50g)以上を×(不可)でプロットしている。
図16に示すように、本発明によれば、粒径が20(μm)以上のアルミナ系介在物の個数が300(個/50g)以下となり、粒径が30(μm)以上のスラグ系介在物の個数が2(個/kg)以下となる。

0084

すなわち、本発明の規定範囲内で溶製を実施することで、操業性に悪影響を及ぼさずに、且つ、スラグ系介在物を2(個/kg)以下とし、アルミナ系介在物を300(個/50g)以下とすることができるので、製品不良(ボール不良率)を低下させ、安定的に良好な品位の製品を提供することができる。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件操業条件、各種パラメータ構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。

0085

1取鍋
2炉蓋
3アーク加熱電極
4ランス
5吐出孔
6溶鋼
7 スラグ

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