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技術 永久磁石、回転電機、及び車両

出願人 株式会社東芝
発明者 堀内陽介桜田新哉木内宏彰
出願日 2017年2月21日 (3年10ヶ月経過) 出願番号 2017-029982
公開日 2017年9月21日 (3年3ヶ月経過) 公開番号 2017-168826
状態 特許登録済
技術分野 硬質磁性材料 同期機の永久磁石界磁 粉末冶金
主要キーワード 外磁場 磁化回路 磁化巻線 セル組織 理論最大値 各元素濃度 Cuリッチ相 ピニング力
関連する未来課題
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図面 (12)

課題

低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制する。

解決手段

永久磁石は、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−tで表される組成と、Th2Zn17型結晶相を有する主相と、主相を構成する結晶粒の間に設けられた粒界相と、を含む金属組織と、を具備する。主相は、Th2Zn17型結晶相を有するセル相と、セル相よりも高濃度のCuを含むCuリッチ相と、Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面においてc軸に交差する方向に沿って延在し且つセル相よりも高濃度のM元素を含む複数のMリッチプレートレット相と、を含む。断面において、セル相の直径は200nm以上であり且つ複数のMリッチプレートレット相の間隔は80nm以下である。

概要

背景

自動車鉄道車両等の車両において、効率を高めるためにNd−Fe−B系磁石具備するモータ発電機などの回転電機を用いることが知られている。Nd−Fe−B系磁石は、高い磁束密度を有する。よって、Nd−Fe−B系焼結磁石を回転電機に用いることにより高いトルクを得ることができる。

上記自動車や鉄道車両等の車両に用いられるモータでは、低速回転から高速回転までの可変速駆動が行われる。このとき、従来のNd−Fe−B系焼結磁石を具備するモータでは、低速回転側において高いトルクが得られるが、高速回転側において誘導電圧逆起電力)が発生することにより出力が低下する。

Nd−Fe−B系焼結磁石等の永久磁石は、鎖交磁束が常に一定の強さで発生している。このとき、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。このため、高速回転において回転電機の電圧電源電圧上限に達して出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、出力が大幅に低下し、さらには高速回転の範囲で駆動できなくなる。

高速回転における誘導電圧の影響を抑制する方法としては、例えば弱め界磁制御法が挙げられる。弱め界磁制御法とは逆磁界を発生させて磁束密度を低下させ、鎖交磁束数を低下させる方法である。しかしながら、Nd−Fe−B系焼結磁石のような高い磁束密度を有する永久磁石では、高速回転時において十分に磁束密度を下げることができない。

概要

低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制する。永久磁石は、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−tで表される組成と、Th2Zn17型結晶相を有する主相と、主相を構成する結晶粒の間に設けられた粒界相と、を含む金属組織と、を具備する。主相は、Th2Zn17型結晶相を有するセル相と、セル相よりも高濃度のCuを含むCuリッチ相と、Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面においてc軸に交差する方向に沿って延在し且つセル相よりも高濃度のM元素を含む複数のMリッチプレートレット相と、を含む。断面において、セル相の直径は200nm以上であり且つ複数のMリッチプレートレット相の間隔は80nm以下である。

目的

本発明で解決しようとするべき課題は、低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制することである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素、MはZr、Ti、及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素、pは10.5≦p≦12.4原子%を満足する数、qは26≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.3原子%を満足する数、tは3.5≦t≦13.5原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相を有する主相と、前記主相を構成する結晶粒の間に設けられた粒界相と、を含む金属組織と、を具備する永久磁石であって、前記主相は、前記Th2Zn17型結晶相を有するセル相と、前記セル相よりも高濃度のCuを含むCuリッチ相と、前記Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面において前記c軸に交差する方向に沿って延在し且つ前記セル相よりも高濃度のM元素を含む複数のMリッチプレートレット相と、を含み、前記断面において、前記セル相の直径が200nm以上であり且つ前記複数のMリッチプレートレット相の間隔が80nm以下である、永久磁石。

請求項2

前記Cuリッチ相のCu濃度は、前記Th2Zn17型結晶相のCu濃度の1.5倍以上15倍以下であり、前記Mリッチプレートレット相のM元素濃度は、前記Th2Zn17型結晶相のM元素濃度の1.2倍以上5倍以下である、請求項1に記載の永久磁石。

請求項3

前記Cuリッチ相のCu濃度は、35原子%以上である、請求項2に記載の永久磁石。

請求項4

前記セル相のFe濃度が26原子%以上である、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の永久磁石。

請求項5

前記組成式におけるR元素の50原子%以上がSmであり、前記組成式におけるM元素の50原子%以上がZrである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の永久磁石。

請求項6

前記組成式におけるCoの20原子%以下が、Ni、V、Cr、Mn、Al、Ga、Nb、Ta、及びWから選ばれる少なくとも一つの元素で置換されている、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の永久磁石。

請求項7

請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の永久磁石を具備する、回転電機

請求項8

モータ又は発電機である、請求項7に記載の回転電機。

請求項9

ステータと、ロータと、を具備し、前記ステータ又は前記ロータは、前記永久磁石を有する、請求項7に記載の回転電機。

請求項10

請求項7ないし請求項9のいずれか一項に記載の回転電機を具備する、車両。

請求項11

前記回転電機の一端に設けられたシャフトに回転が伝達される、請求項10に記載の車両。

技術分野

0001

実施形態の発明は、永久磁石回転電機、及び車両に関する。

背景技術

0002

自動車鉄道車両等の車両において、効率を高めるためにNd−Fe−B系磁石具備するモータ発電機などの回転電機を用いることが知られている。Nd−Fe−B系磁石は、高い磁束密度を有する。よって、Nd−Fe−B系焼結磁石を回転電機に用いることにより高いトルクを得ることができる。

0003

上記自動車や鉄道車両等の車両に用いられるモータでは、低速回転から高速回転までの可変速駆動が行われる。このとき、従来のNd−Fe−B系焼結磁石を具備するモータでは、低速回転側において高いトルクが得られるが、高速回転側において誘導電圧逆起電力)が発生することにより出力が低下する。

0004

Nd−Fe−B系焼結磁石等の永久磁石は、鎖交磁束が常に一定の強さで発生している。このとき、永久磁石による誘導電圧は回転速度に比例して高くなる。このため、高速回転において回転電機の電圧電源電圧上限に達して出力に必要な電流が流れなくなる。その結果、出力が大幅に低下し、さらには高速回転の範囲で駆動できなくなる。

0005

高速回転における誘導電圧の影響を抑制する方法としては、例えば弱め界磁制御法が挙げられる。弱め界磁制御法とは逆磁界を発生させて磁束密度を低下させ、鎖交磁束数を低下させる方法である。しかしながら、Nd−Fe−B系焼結磁石のような高い磁束密度を有する永久磁石では、高速回転時において十分に磁束密度を下げることができない。

0006

特開2012−175738号公報

先行技術

0007

IEEJ Transactions Industry Applications,2013,Vol.133,NO.9,pp.943−951

発明が解決しようとする課題

0008

本発明で解決しようとするべき課題は、低速回転から高速回転までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制することである。

課題を解決するための手段

0009

実施形態の永久磁石は、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素、MはZr、Ti、及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素、pは10.5≦p≦12.4原子%を満足する数、qは26≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦4.3原子%を満足する数、tは3.5≦t≦13.5原子%を満足する数である)で表される組成と、Th2Zn17型結晶相を有する主相と、主相を構成する結晶粒の間に設けられた粒界相と、を含む金属組織と、を具備する。主相は、Th2Zn17型結晶相を有するセル相と、セル相よりも高濃度のCuを含むCuリッチ相と、Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面においてc軸に交差する方向に沿って延在し且つセル相よりも高濃度のM元素を含む複数のMリッチプレートレット相と、を含む。断面において、セル相の直径は200nm以上であり且つ複数のMリッチプレートレット相の間隔は80nm以下である。

図面の簡単な説明

0010

本実施形態の永久磁石の磁気特性例を示す図である。
比較例の永久磁石の磁気特性例を示す図である。
永久磁石の構造例を示す断面模式図である。
STEM観察による明視野像の一例を示す図である。
TEM像から銅リッチ相平均間隔を測定するための銅濃度線分析の様子を示す図である。
図5に示す銅濃度の線分析結果の一例を示す図である。
図6に示す銅濃度の線分析結果の濃度差を強調した図である。
モータを示す図である。
発電機を示す図である。
車両の構成例を示す模式図である。
車両の構成例を示す模式図である。

0011

以下、実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面は模式的なものであり、例えば厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、実施形態において、実質的に同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略する。

0012

(第1の実施形態)
本実施形態では、低速から高速までの可変速駆動を行う回転電機に適用可能な永久磁石の例について説明する。

0013

図1は本実施形態の永久磁石の磁気特性例を示す図であり、図2は比較例の永久磁石の磁気特性例を示す図である。なお、図1及び図2において、横軸は磁場Hを表し、縦軸は磁束密度B又は磁化Mを表す。

0014

図1に示す曲線1aは本実施形態の永久磁石のM−H曲線を示し、曲線1bは本実施形態の永久磁石のB−H曲線を示す。本実施形態の永久磁石は、B−H曲線において高磁化を有する。また、弱め界磁制御法により逆磁界を加えたとき、B−H曲線上の動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が大きい。すなわち、本実施形態の永久磁石ではB−H曲線上のリコイル透磁率が高い。

0015

リコイル透磁率は以下のように定義される。着磁機やパルス磁界により焼結体磁石を着磁させる。この磁石に対し磁化測定を行い、B−H曲線を得る。このB−H曲線に対して線形フィットを行うことにより傾きを求める。この傾きを真空透磁率1.26×10−6で割った値をリコイル透磁率とする。

0016

また、本実施形態の永久磁石は、B−H曲線上においてクニック点が生じない特性を有する。クニック点とは、外部磁場により磁束密度を低下させたときに傾きが変化して急激に磁束密度が減少する変化点のことである。

0017

図2に示す曲線2aはネオジム焼結磁石のM−H曲線を示し、曲線2bはネオジム焼結磁石のB−H曲線を示す。ネオジム焼結磁石の場合、図2に示すように動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が本実施形態の永久磁石よりも小さい。すなわち、ネオジム焼結磁石では、弱め界磁制御法を用いても磁束密度を下げることが困難である。弱め界磁では、弱め界磁電流による磁束で磁石磁束打ち消す。しかし、弱め界磁電流による磁束及び磁石磁束のそれぞれの空間波形が互いに異なる。このため、空間基本波成分の磁束を打ち消すことができても、空間高調波成分は打ち消されず、場合によっては拡大する。

0018

空間高調波成分は、高速回転時における鉄損及び磁石渦電流損の原因となっている。さらに、磁石渦電流損によって磁石温度が上昇し、熱減磁が生じやすくなる。特に、埋め込み磁石型では、磁石磁束が矩形波に近く、多くの空間高調波を含む。また、ギャップ長が短いためにスロットリップル成分の空間高調波が大きいため、問題が大きい。打ち消せずに残った低次の空間高調波がスロットリップルで変調されて高次の空間高調波となっていることが理由の一つと考えられる。

0019

磁束密度を低くする方法としては、例えばボンド磁石を用いることが考えられる。図2の曲線3aはネオジムボンド磁石のM−H曲線を示す図であり、曲線3bはネオジムボンド磁石のB−H曲線を示す図である。ネオジムボンド磁石は、図2に示すようにネオジム焼結磁石よりも動作点aから動作点bに変化する際の磁化減少幅が大きい、すなわちリコイル透磁率が高い。しかしながら、残留磁化が低く、保磁力Hcjが小さくなるため、当該磁石を具備する回転電機で低速から高速までの可変速駆動を行う場合、低速回転において高いトルクを得ることが困難となる。

0020

ネオジムボンド磁石の他にも、リコイル透磁率の高い磁石としては、例えば不完全着磁状態のAl−Ni−Co系磁石が挙げられる。しかしながら、不完全着磁状態のAl−Ni−Co系磁石もネオジムボンド磁石と同様に残留磁化が小さいため、低速回転で高いトルクを得ることが困難である。また、ネオジム磁石サマリウム磁石は磁化が高く、高トルクが得られるが、これらの磁石のリコイル透磁率は一般的に1程度であり、リコイル透磁率が大きな特性を得ることが難しい。

0021

これに対し、本実施形態の永久磁石において、残留磁化は1.16T以上であり、M−H曲線上の保磁力Hcjは1000kA/m以上であり、リコイル透磁率は1.15以上である。残留磁化は1.2T以上であることがより好ましい。保磁力Hcjは1200kA/m以上であることがより好ましい。リコイル透磁率は1.2以上であることがより好ましい。このように、本実施形態の永久磁石は、高磁化及び高保磁力に加え、高いリコイル透磁率を有する。よって、低速から高速までの可変速駆動を行う回転電機において、出力の低下を抑制することができる。

0022

上記回転電機では、磁極回転子鉄心内に複数個配置して回転子を設ける。また、回転子の外周にエアギャップを介して固定子を配置する。さらに、固定子に電機子巻き線を設ける。上記電機子巻き線が作る磁界により回転子の磁極を構成する永久磁石の磁束量を可逆的に変化させることができる。しかしながら、2種以上の磁石を必要とするため構造が複雑になり、また、製造工程数も増えるという問題がある。

0023

これに対し、本実施形態の永久磁石は、一つの磁石で高磁化と、高いリコイル透磁率との両方の特性を有しているため、回転電機の構造を簡略にすることができ、製造工程数の増加を抑制することができる。

0024

上記永久磁石は低保磁力成分を含むためリコイル透磁率が大きい。また、B−H曲線上の保磁力Hcbが800kA/m以下である。しかし、高保磁力成分も含むため、図1に示すようにB−H曲線上のクニック点は1000kA/mを超える高磁場側においても生じず、減磁が起きにくい。B−H曲線においてクニック点が生じさせないためにはM−H曲線上の保磁力Hcjが1000kA/m以上であることが好ましい。さらに、本実施形態の永久磁石において、保磁力Hcjに対する、磁化が残留磁化の90%のときの磁場Hk90の比が70以下である。このように、本実施形態の永久磁石は、良好な角型比を有する。

0025

次に、上記特性を有する本実施形態の永久磁石の構造例について説明する。本実施形態の永久磁石は、組成式:RpFeqMrCutCo100−p−q−r−t(式中、Rは希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素、MはZr、Ti、及びHfからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素、pは10.5≦p≦12.4原子%を満足する数、qは26≦q≦40原子%を満足する数、rは0.88≦r≦3.5原子%を満足する数、tは3.5≦t≦13.5原子%を満足する数である)で表される組成を備える焼結体を具備する。

0026

上記組成式におけるRは、磁石材料に大きな磁気異方性をもたらすことができる元素である。R元素としては、例えばイットリウム(Y)を含む希土類元素から選ばれる1つ又は複数の元素などを用いることができ、例えばサマリウム(Sm)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)等を用いることができ、特に、Smを用いることが好ましい。例えば、R元素としてSmを含む複数の元素を用いる場合、Sm濃度をR元素として適用可能な元素全体の50原子%以上とすることにより、磁石材料の性能、例えば保磁力を高めることができる。なお、R元素として適用可能な元素の70原子%以上、さらには90%以上をSmとするとさらに好ましい。

0027

R元素として適用可能な元素の濃度を、例えば10.5原子%以上12.4原子%以下とすることにより保磁力を大きくすることができる。R元素として適用可能な元素の濃度が10.5原子%未満の場合、多量のα−Feが析出して保磁力が小さくなり、R元素として適用可能な元素の濃度が12.4原子%を超える場合、飽和磁化が低下する。R元素として適用可能な元素の濃度は、10.9原子%以上12.1原子%以下、さらには11.0原子%以上12.0原子%以下であることがより好ましい。

0028

上記組成式におけるMは、高いFe濃度の組成で大きな保磁力を発現させることができる元素である。M元素としては、例えばチタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、及びハフニウム(Hf)からなる群より選ばれる1つ又は複数の元素が用いられる。M元素の含有量rが4.3原子%を超えると、M元素を過剰に含有する異相が生成しやすくなり、保磁力、磁化ともに低下しやすくなる。また、M元素の含有量rが0.88原子%未満であるとFe濃度を高める効果が小さくなりやすい。つまり、M元素の含有量rは、0.88原子%以上3.5原子%以下であることが好ましい。元素Mの含有量rは、1.14原子%以上3.4原子%以下であることがより好ましく、さらに1.49原子%よりも大きく2.24原子%以下、さらには1.55原子%以上2.23原子%以下であることが好ましい。

0029

M元素は、少なくともZrを含むことが好ましい。特に、M元素の50原子%以上をZrとすることによって、永久磁石の保磁力を高めることができる。一方、M元素の中でHfはとりわけ高価であるため、Hfを使用する場合においても、その使用量は少ないことが好ましい。例えば、Hfの含有量は、M元素の20原子%未満であることが好ましい。

0030

Cuは、磁石材料において高い保磁力を発現させることができる元素である。Cuの含有量は、例えば3.5原子%以上13.5原子%以下であることが好ましい。これよりも多量に配合すると磁化の低下が著しく、またこれよりも少量であると高い保磁力と良好な角型比を得ることが困難となる。Cuの含有量tは、3.9原子%以上10.0原子%以下であることがより好ましく、さらに4.1原子%以上5.8原子%以下であることが好ましい。

0031

Feは、主として磁石材料の磁化を担う元素である。Feを多量に配合することにより磁石材料の飽和磁化を高めることができるが、過剰に配合するとα−Feの析出や相分離により所望の結晶相が得られにくくなり、保磁力を低下させるおそれがある。よって、Feの含有量qは、26原子%以上40原子%以下であることが好ましい。Feの含有量qは、27原子%以上36原子%以下であることがより好ましく、さらに30原子%以上33原子%以下であることが好ましい。

0032

Coは、磁石材料の磁化を担うとともに高い保磁力を発現させることができる元素である。また、Coを多く配合すると高いキュリー温度が得られ、磁石特性熱安定性を高めることができる。Coの配合量が少ないとこれらの効果が小さくなる。しかしながら、Coを過剰に添加すると、相対的にFeの割合が減り、磁化の低下を招くおそれがある。また、Coの20原子%以下をNi、V、Cr、Mn、Al、Si、Ga、Nb、Ta、Wからなる群より選ばれる1つ又は複数の元素で置換することにより磁石特性、例えば保磁力を高めることができる。

0033

図3は、本実施形態の永久磁石の構造例を示す断面模式図である。図3では、永久磁石の断面の一部を示している。本実施形態の永久磁石は、六方晶系のTh2Zn17型結晶相(2−17型結晶相)を有する結晶粒11と、結晶粒11の間に設けられた粒界相12と、を含む2次元の金属組織を具備する。結晶粒11は永久磁石の主相(永久磁石中の各結晶相及び非晶質相のうち、最も体積占有率が高い相)を構成する。

0034

金属組織は、2−17型結晶相を有するセル相と、六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)を有するCuリッチ相と、Mリッチプレートレット相と、を含む。セル相のFe濃度は、例えば26原子%以上であることが好ましい。

0035

Cuリッチ相は、セル相を囲むように形成されることが好ましい。上記構造をセル構造ともいう。また、Cuリッチ相にはセル相を分断するセル壁相も含まれる。Th2Zn17型結晶相のc軸は磁化容易軸と平行に存在していることが好ましい。なお、平行とは、平行方向から±10度以内の状態(略平行)を含んでいてもよい。

0036

Cuリッチ相は、Th2Zn17型結晶相よりも高濃度のCuを含む相である。Cuリッチ相のCu濃度は、例えばTh2Zn17型結晶相のCu濃度の1.5倍以上15倍以下であることが好ましい。Cuリッチ相は、例えばTh2Zn17型結晶相におけるc軸を含む断面において、線状又は板状に存在する。Cuリッチ相の構造としては、特に限定されないが、例えば六方晶系のCaCu5型結晶相(1−5型結晶相)等が挙げられる。また、永久磁石は、相の異なる複数のCuリッチ相を有していてもよい。

0037

Cuリッチ相の磁壁エネルギーは、Th2Zn17型結晶相の磁壁エネルギーよりも高く、この磁壁エネルギーの差が磁壁移動障壁となる。つまり、Cuリッチ相がピニングサイトとして機能することにより、複数のセル相間での磁壁移動を抑制することができる。特に、セル構造を形成することにより、磁壁移動の抑制効果が高まる。これを磁壁ピニング効果ともいう。よって、セル相を囲むようにCuリッチ相が形成されることがより好ましい。このような構造の永久磁石をピニング型の永久磁石ともいう。

0038

26原子%以上のFeを含むSm−Co系磁石において、Cuリッチ相のCu濃度は、35原子%以上60原子%以下であることが好ましい。Cuリッチ相のCu濃度を高めることにより保磁力や角型比を高くすることができる。Fe濃度が高い領域においてはCuリッチ相のCu濃度にばらつきが発生しやすくなり、例えば磁壁ピニング効果が大きいCuリッチ相と磁壁ピニング効果が小さいCuリッチ相とが生じ、保磁力及び角型比が低下する。

0039

ピニングサイトを外れた磁壁が移動すると、移動した分だけ磁化が反転してしまうため、磁化が低下する。外磁場印加した際に、ある一定の磁場で一斉に磁壁がピニングサイトを外れれば、磁場の印加により磁化が低下しにくくなり、良好な角型比が得られる。換言すると、磁場を印加した際に保磁力よりも低い磁場でピニングサイトを外れ、磁壁が移動してしまうと、移動した分だけ磁化が減少し、角型比の悪化につながると考えられる。

0040

Mリッチプレートレット相は、Th2Zn17型結晶相よりも高濃度のZr等のM元素を含む相であり、例えばTh2Zn17型結晶相のc軸に垂直に交差する方向に沿って延在する。例えば、プレートレット相のZr濃度がTh2Zn17型結晶相よりも高い場合、該プレートレット相をZrリッチプレートレット相ともいう。

0041

Mリッチプレートレット相のM元素濃度は、Th2Zn17型結晶相のM元素濃度の1.2倍以上5倍以下であることが好ましい。Mリッチプレートレット相のM元素濃度は、例えば6原子%以上20原子%以下であることが好ましい。

0042

上記に示すように、本実施形態の永久磁石は、希土類元素を少なくとも含む組成を有する。上記磁石は、キュリー点が高いため、高温で良好な回転電機特性を実現することが可能である。また、ネオジム磁石がニュークリエーション型の永久磁石であるのに対し、上記磁石はピニング型の永久磁石である。ネオジム磁石では逆軸が発生すると一斉に磁壁が反転する。一方、本実施形態の永久磁石ではCuリッチ相により磁壁移動が抑制され、ピニングサイトを外れることにより磁壁の移動(磁化反転)が進む。換言すると、Th2Zn17型結晶相、Cuリッチ相、及びMリッチプレートレット相によって構成されるセル構造のサイズや各相の組成により磁壁移動を抑制することができる。

0043

セル構造は、R元素の濃度が高いと緻密になり、低いと粗くなる。また、同一組成の焼結体で比較するとセル構造が緻密である試料ではセル壁相の体積分率が高くなり、粗い試料では低くなる。また、セル壁相におけるCu濃度を比較すると、セル構造が緻密なほどCu濃度が低くなる。

0044

Cuリッチ相は磁壁のピニング力に影響し、Cu濃度が低いとピニング力が弱く、保磁力が小さくなる。一方、セル組織が粗くCuリッチ相におけるCu濃度が高い場合、Cuリッチ相一つ一つのピニング力が高いため保磁力は大きくなる。2種以上の異なる特性を一つの焼結体で実現することができれば、一つの磁石で磁壁が移動しやすい(磁化反転しやすい)場所と磁化反転が起こりにくい場所が存在し、保磁力の分布を生じさせることができる。その結果、磁化曲線の傾きが急峻となり、リコイル透磁率が大きくなる。さらに、保磁力が大きいためクニック点は高磁場側に存在し、大きな磁界を印加しても不可逆減磁が生じない。

0045

永久磁石の組成は、例えばICP(高周波誘導結合プラズマ:Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、SEM−EDX(走査電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法:SEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)、TEM−EDX(透過電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分光法:Transmission Electron Microscope−EDX)等により測定される。各相の体積比率は、電子顕微鏡光学顕微鏡による観察とX線回折等とを併用して総合的に判断されるが、永久磁石の断面を撮影した電子顕微鏡写真面積分析法により求めることができる。永久磁石の断面は、試料の最大面積を有する表面の実質的に中央部の断面を用いるものとする。

0046

Th2Zn17型結晶相、Cuリッチ相、Mリッチプレートレット相等の金属組織は、例えば以下のように認定される。まず、STEMによるサンプルの観察を行う。このとき、SEMによりサンプルを観察することにより、粒界相の場所を特定し、収束イオンビーム(Focused Ion Beam:FIB)を用いて粒界相が視野に入るようにサンプルを加工することにより観察効率を高めることができる。上記サンプルは、時効処理後のサンプルである。この際、サンプルは未着磁品であることが好ましい。観察条件は、例えば加速電圧200kV、測定面積30μm×30μmとする。

0047

次に、サンプルにおける各元素の濃度を例えばSTEMを利用したエネルギー分散型X線分光法(STEM−Energy Dispersive X−ray Spectroscopy:STEM−EDX)を用いて測定する。

0048

STEM−EDXにより各元素の濃度を測定する際、サンプルの表面の1mm以上内部から測定用の試料を切り出す。また、磁化容易軸(c軸)に平行な面に対し、100k倍の観察倍率で観察する。次に、同視野での各元素のマッピングを行い、それぞれの相を特定し、相内の各元素の濃度を測定する。

0049

図4は、本実施形態の永久磁石のSTEM観察により得られる明視野像を示す図である。図4に示す明視野像は、セル相4と、Cuリッチ相5と、Mリッチプレートレット相6と、を有する。図4において、Mリッチプレートレット相6は、Cuリッチ相5に交差しているがこれに限定されない。また、図4において、複数のMリッチプレートレット相6は、互いに平行又は略平行に存在する。

0050

Sm−Co系永久磁石において、上記残留磁化、保磁力、リコイル透磁率等の値を得るためにはセル構造を制御することが重要である。例えば、セル相の直径が大きくなると、Cuリッチ相の間隔が大きくなり、磁化反転が起こりやすくなる。また、高Fe濃度のSm−Co系磁石では、よって、リコイル透磁率が高くなるが保磁力等が低下しやすい。

0051

Mリッチプレートレット相が存在するとセル相の直径が小さくなりやすい。一方で、Mリッチプレートレット相は、磁壁ピニングサイトとしても機能するため、金属組織中に存在することが好ましい。

0052

本実施形態の永久磁石では、Th2Zn17型結晶相のc軸を含む断面において、セル相の直径は200nm以上であり且つ複数のMリッチプレートレット相の間隔は80nm以下である。

0053

セル相の直径が200nm未満であると磁化反転が起こりにくくなるが、リコイル透磁率が低下する。Mリッチプレートレット相の間隔が80nm超であるとセル構造が得られにくい。セル相の直径とMリッチプレートレット相の間隔とを上記範囲に制御することにより上記残留磁化、保磁力、リコイル透磁率等の特性を高めることができる。

0054

セル相の直径は、例えば以下のように求められる。本実施形態では、Cuリッチ相の平均間隔dをセル相の直径とみなす。そこで、Cuリッチ相の平均間隔dの求め方の具体例を以下に示す。

0055

(1)断面観察テップ
まず、永久磁石(時効処理後の磁場配向した焼結体)の2−17型結晶相のc軸を含む断面をTEMにより観察する。得られた断面において、コントラストが均一な部分が2−17型結晶相(セル相)であり、その間に存在する板状の部分がCuリッチ相である。

0056

(2)組成線分析ステップ
次に、永久磁石の断面観察結果であるTEM像の組成線分析を行う。図5にTEM像の組成線分析の様子を示す。なお、図5は本実施形態に係る組織とは異なるTEM像を示しているが、これは以下の組成線分析ステップを説明するために便宜的に示しているものであり、本発明を何等限定するものではない。まず、TEM像の第1の方向に等間隔で線分析(La1〜Lan)を行う。線分析は等間隔で平行に実施する。線分析の間隔は30〜50nmとする。次いで、同一のTEM像において、第1の方向に対して直交する第2の方向に等間隔で線分析(Lb1〜Lbn)を行う。この際の線分析も30〜50nmの等間隔で平行に実施する。図5において、線分析(平行線)の間隔は50nmとしている。

0057

(3)Cuリッチ相の位置特定ステップ
次に、TEM像の各線分析結果(La1〜Lan及びLb1〜Lbn)からCu濃度を求める。図6に線分析La4によるCu濃度の測定結果を示す。さらに、Cu濃度の差を明確化するために、線分析で得られたCu濃度を2乗〜16乗し、その値をグラフ化して平均値を求める。図7図6のCu濃度を4乗したデータをプロットしたグラフを示す。図中、実線は各点のCu濃度のデータ値(4乗値)であり、点線はその平均値を2倍した値である。図7において、Cu濃度のデータ値(Cu濃度の4乗値)が平均値の2倍値より連続して多い部分の幅が2nm以上である領域をCuリッチ相と見なし、その領域におけるCu濃度のデータ値が最大の位置をCuリッチ相の中心位置と見なす。

0058

(4)Cuリッチ相の平均間隔の測定ステップ
ステップ3で特定したCuリッチ相の中心位置間の距離(Cu濃度が最大値を示すピーク間の距離/図7のd1、d2…dn)を、それぞれCuリッチ相間の距離と見なして測定する。1回の組成線分析におけるCuリッチ相間の距離da1は、各ピーク間距離d1、d2…dnの平均値として求められる。このような相間距離の測定を全線分析結果に対して実施し、各線分析結果の相間距離(da1〜dan及びdb1〜dbn)の平均値を求める。この相間距離の平均値[(da1+da2…+dan+db1+db2…+dbn)/2n]を、Cuリッチ相間の平均距離(Cuリッチ相の平均間隔)dと定義する。
そして、このCuリッチ相間の平均距離(Cuリッチ相の平均間隔)dを、セル相の直径とみなす。

0059

上記Cuリッチ相の平均間隔dの求め方と同様に、Mリッチプレートレット相の平均間隔は、(1)断面観察ステップ、(2)組成線分析ステップ、(3)Mリッチプレートレット相の位置特定ステップ、(4)Mリッチプレートレット相の平均間隔の測定ステップにより求められる。(1)断面観察ステップ及び(2)組成線分析ステップについては、上記Cuリッチ相の平均間隔dの求め方と同じである。

0060

(3)Mリッチプレートレット相の位置特定ステップでは、TEM像の各線分析結果(La1〜Lan及びLb1〜Lbn)からM元素濃度を求める。さらに、M元素濃度の差を明確化するために、線分析で得られたM元素濃度を2乗〜16乗し、その値をグラフ化して平均値を求める。M元素のデータ値(例えばM濃度の4乗値)が平均値の2倍値より連続して多い部分の幅が2nm以上である領域をMリッチプレートレット相と見なし、その領域におけるM元素濃度のデータ値が最大の位置をMリッチプレートレット相の中心位置とみなす。

0061

(4)Mリッチプレートレット相の平均間隔の測定ステップでは、位置特定ステップで特定したMリッチプレートレット相の中心位置間の距離(M元素濃度が最大値を示すピーク間の距離)を、それぞれMリッチプレートレット相間の距離と見なして測定する。1回の組成線分析におけるMリッチプレートレット相間の距離は、各ピーク間距離の平均値として求められる。このような相間距離の測定を全線分析結果に対して実施し、各線分析結果の相間距離の平均値を求める。この相間距離の平均値を、Mリッチプレートレット相間の平均距離(Mリッチプレートレット相の平均間隔)と定義する。

0062

なお、各相の元素の濃度測定には、三次元アトムプローブ(3−Dimension Atom Probe:3DAP)を用いてもよい。3DAPを用いた分析法とは、電圧を印加することにより観察試料電界蒸発させ、電界蒸発されたイオン二次元検出器により検出することにより原子配列を特定する分析法である。二次元検出器に到達するまでの飛行時間からイオン種が同定され、個々に検出されたイオンを深さ方向に連続的に検出し、検出された順番にイオンを並べる(再構築する)ことにより、三次元の原子分布が得られる。TEM−EDXの濃度測定と比べて、各結晶相内の各元素濃度をより正確に測定することができる。

0063

3DAPによる各相内の元素濃度の測定は、以下に示す手順にしたがって実施する。まず、試料をダイシングにより薄片化し、そこからFIBにてピックアップアトムプローブ(AP)用針状試料を作製する。

0064

3DAPによる測定は、焼結体の内部に対して行う。焼結体内部の測定とは、以下の通りである。まず、最大の面積を有する面における最長の辺の中央部において、辺に垂直(曲線の場合は中央部の接線と垂直)に切断した断面の表面部と内部とで組成を測定する。測定箇所は、上記断面において各辺の1/2の位置を始点として、辺に対し垂直に内側に向けて端部まで引いた第1の基準線と、各角部の中央を始点として角部の内角の角度の1/2の位置で内側に向けて端部まで引いた第2の基準線とを設け、これら第1の基準線及び第2の基準線の始点から基準線の長さの1%の位置を表面部、40%の位置を内部と定義する。なお、角部が面取り等で曲率を有する場合、隣り合う辺を延長した交点を辺の端部(角部の中央)とする。この場合、測定箇所は交点からではなく、基準線と接した部分からの位置とする。

0065

測定箇所を以上のようにすることによって、例えば断面が四角形の場合、基準線は第1の基準線及び第2の基準線でそれぞれ4本の合計8本となり、測定箇所は表面部及び内部でそれぞれ8箇所となる。本実施形態において、表面部及び内部でそれぞれ8箇所全てが上記した組成範囲内であることが好ましいが、少なくとも表面部及び内部でそれぞれ4箇所以上が上記した組成範囲内となればよい。この場合、1本の基準線での表面部及び内部の関係を規定するものではない。このように規定される焼結体内部の観察面研磨して平滑にした後に観察を行う。例えば、濃度測定におけるTEM−EDXの観察箇所は、各相内の任意の20点とし、これら各点での測定値から最大値と最小値を除いた測定値の平均値を求め、この平均値を各元素の濃度とする。3DAPの測定もこれに準ずる。

0066

上述した3DAPを用いたCuリッチ相内の濃度の測定結果において、Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルは、よりシャープであることが好ましい。具体的には、Cuの濃度プロファイルの半値幅FWHM:Full Width at Half Maximum)が5nm以下であることが好ましく、このような場合により高い保磁力を得ることができる。これはCuリッチ相内のCuの分布がシャープな場合、セル相とCuリッチ相との間の磁壁エネルギー差が急激に生じ、磁壁がよりピニングされやすくなるためである。

0067

Cuリッチ相におけるCuの濃度プロファイルの半値幅(FWHM)は、以下のようにして求められる。上述した方法に基づいて3DAPのCuプロファイルからCu濃度が最も高い値(PCu)を求め、この値の半分の値(PCu/2)となるところのピークの幅、すなわち半値幅(FWHM)を求める。このような測定を10個のピークに対して行い、それらの値の平均値をCuプロファイルの半値幅(FWHM)と定義する。Cuプロファイルの半値幅(FWHM)が3nm以下である場合に、さらに保磁力を高める効果が向上し、2nm以下の場合により一層優れた保磁力の向上効果を得ることができる。

0068

角型比は、以下のように定義される。まず、直流B−Hトレーサーにより室温における直流磁化特性を測定する。次に、測定結果から得られたB−H曲線より磁石の基本特性である残留磁化Mrと保磁力Hcj及び最大エネルギー積(BH)maxを求める。このとき、Mrを用いて理論最大値(BH)maxが下記式(1)により求められる。
(BH)max(理論値)=Mr2/4μ0・・・(1)
角型比は、測定で得られる(BH)maxと(BH)max(理論値)の比により評価され、下記式(2)により求められる。
(BH)max(実測値)/(BH)max(理論値)×100・・・(2)

0069

次に、永久磁石の製造方法例について説明する。まず、永久磁石の合成に必要な所定の元素を含む合金粉末を調製する。次に、電磁石の中に設置した金型内に合金粉末を充填し、磁場を印加しながら加圧成形することにより結晶軸配向させた圧粉体を製造する。

0070

例えば、アーク溶解法高周波溶解法による溶湯鋳造して得られた合金インゴット粉砕することにより合金粉末を調製することができる。合金粉末は、組成が異なる複数の粉末を混ぜ合わせて所望の組成としてもよい。また、メカニカルアロイング法メカニカルグラインディング法、ガスアトマイズ法還元拡散法などを用いて合金粉末を調製してもよい。ストリップキャスト法を用いた合金薄帯の作製では、フレーク状の合金薄帯を作製し、その後合金薄帯を粉砕することにより合金粉末を調製する。例えば、周速0.1m/秒以上20m/秒以下で回転する冷却ロール合金溶湯傾注することにより、厚さ1mm以下に連続的に凝固させた薄帯を作製することができる。周速が0.1m/秒未満の場合、薄帯において組成のばらつきが生じやすい。また、周速が20m/秒を超える場合、結晶粒が微細化しすぎてしまう等、磁気特性が低下する場合がある。冷却ロールの周速は0.3m/秒以上15m/秒以下、さらに好ましくは0.5m/秒以上12m/秒以下である。

0071

さらに、上記合金粉末又は粉砕前の合金の材料に対して熱処理を施すことにより該材料を均質化することが可能である。例えば、ジェットミルボールミルなどを用いて材料を粉砕することができる。なお、不活性ガス雰囲気もしくは有機溶媒中で材料を粉砕することにより粉末の酸化を防止することができる。

0072

粉砕後の粉末において、平均粒径が2μm以上5μm以下であり、かつ粒径が2μm以上10μm以下の粉末の割合が粉末全体の80%以上であると配向度が高くなり、また、保磁力が大きくなる。これを実現するためにはジェットミルによる粉砕が好ましい。

0073

例えば、ボールミルで粉砕する場合、粉末の平均粒径が2μm以上5μm以下であったとしても、粒径がサブミクロンレベル微粉末が多量に含まれる。この微粉末が凝集するとプレス時の磁場配向中に磁化容易軸方向にTbCu7相における結晶のc軸が揃いにくくなり、配向度が悪くなりやすい。また、このような微粉末は、焼結体中の酸化物の量を増大させ、保磁力を低下させるおそれがある。特に、Fe濃度が26原子%以上の場合、粉砕後の粉末において、10μm以上の粒径の粉末の割合が粉末全体の10%以下であることが望ましい。Fe濃度が26原子%以上の場合、原材料となるインゴット中における異相の量が増大する。この異相では、粉末の量が増大するだけでなく、粒径も大きくなる傾向にあり、粒径が20μm以上になることがある。

0074

このようなインゴットを粉砕した際に例えば15μm以上の粒径の粉末がそのまま異相の粉末となることがある。このような異相粗粉末を含んだ粉砕粉を磁場中でプレスし、焼結体とすると、異相が残存し、保磁力の低下、磁化の低下、角型性の低下等を引き起こす。角型性が低下すると着磁が難しくなる。特に、ロータなどへのアセンブリ後の着磁が困難となる。このように、10μm以上の粒径の粉末を全体の10%以下とすることにより26原子%以上のFeを含む高いFe濃度組成において角型比の低下を抑制しつつ保磁力を大きくすることができる。

0075

次に、焼結を行う。焼結では、上記圧粉体に対し、1180℃以上1220℃以下の温度で、1時間以上15時間以下保持することにより熱処理を行う。例えば、保持温度が1180℃未満の場合、生成される焼結体の密度が低くなりやすい。また、1220℃よりも高い場合、粉末中のSm等のR元素が過剰に蒸発する等で磁気特性が低下する場合がある。より好ましい保持温度は1190℃以上1210℃以下である。一方、保持時間が1時間未満の場合、密度が不均一になりやすいため磁化が低下しやすく、さらに、焼結体の結晶粒径が小さくなり、かつ粒界相比率が高くなることにより、磁化が低下しやすい。また、保持時間が15時間を越えると粉末中のR元素の蒸発が過剰となり、磁気特性が低下するおそれがある。より好ましい保持時間は2時間以上13時間以下であり、さらに好ましくは3時間以上10時間以下である。なお、真空中又はアルゴンガス中で熱処理を行うことにより酸化を抑制することができる。また、保持温度近くになるまで、例えば1100℃以上1200℃以下になるまで真空を維持し、その後Ar雰囲気に切り替え等温保持することにより焼結体密度を向上させることができる。

0076

次に、溶体化処理を行う。溶体化処理は、相分離組織の前駆体となるTbCu7型結晶相(1−7型結晶相)を形成する処理である。溶体化処理では、1090℃以上1130℃未満の温度で、3時間以上28時間以下保持することにより熱処理を行う。

0077

溶体化処理時における保持温度が1090℃未満の場合及び1130℃以上の場合、溶体化処理後の試料中に存在するTbCu7型結晶相の割合が小さく、磁気特性が低下するおそれがある。保持温度は、好ましくは1100℃以上1120℃以下である。また、溶体化処理時における保持時間が3時間未満の場合、構成相が不均一になりやすく、保磁力が低下しやすくなり、金属組織の結晶粒径が小さくなりやすく、粒界相比率が高くなり磁化が低下しやすい。また、溶体化処理時における保持温度が28時間を超える場合、焼結体中のR元素が蒸発する等で磁気特性が低下するおそれがある。保持時間は、好ましくは4時間以上24時間以下であり、さらに好ましくは11時間以上18時間以下である。なお、真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で溶体化処理を行うことにより粉末の酸化を抑制することができる。

0078

さらに、等温保持後に急冷を行う。例えば、冷却速度を170℃/分以上として室温まで急冷を行うことにより、TbCu7型結晶相を安定化させることができ保磁力が発現しやすくなる。冷却速度が170℃/分未満の場合、冷却中にCe2Ni7型結晶相(2−7型結晶相)が生成されやすくなる。2−7型結晶相の存在により磁化が低下する場合があり、また、保磁力も低下する場合がある。2−7型結晶相はCuが濃化されていることが多く、これにより主相中のCu濃度が低下し、時効処理による相分離が起きにくくなるためである。特に、Fe濃度を26原子%以上含む組成では冷却速度が重要となりやすい。

0079

焼結と溶体化処理との間に高質化処理を行ってもよい。高質化処理は、金属組織、特にマクロ組織を制御する処理である。高質化処理では、例えば焼結時の熱処理温度よりも10℃以上低い温度で、かつ溶体化処理時の熱処理温度よりも10℃以上高い温度で、2時間以上12時間以下保持することにより熱処理を行う。焼結時の熱処理温度よりも10℃以上低い温度で熱処理を行わない場合、焼結中に生成した液相由来の異相を十分に除去できない。この異相の配向性は低いことが多く、当該異相が存在すると結晶粒の結晶方位が磁化容易軸に対してずれやすくなり、角型比が低下するだけでなく磁化も低下しやすい。また、溶体化処理では、温度が低く、元素拡散速度の観点から焼結中に生じた異相を十分に除去することは困難である。また、粒成長速度も遅く、十分な結晶粒径を得ることができない可能性があり、角型比の改善が望めない。これに対し、溶体化処理時の保持温度よりも10℃以上高くして高質化処理を行うことにより、上記異相を十分に除去し、主相を構成する結晶粒を大きくすることができる。

0080

高質化処理時の保持温度は、例えば1180℃以上1210℃以下であることが好ましい。1180℃未満の場合及び1210℃を超える場合、角型比が低下する場合がある。また、熱処理時間が2時間未満の場合、拡散が不十分であり、異相が十分に除去されず、角型比改善の効果が小さい。また、12時間を超える場合、Sm等のR元素が蒸発して良好な磁気特性が得られないおそれがある。なお、高質化処理における熱処理時間は4時間以上10時間以下であることがより好ましく、さらに6時間以上8時間以下であることが好ましい。また、酸化防止のために真空中やアルゴンガス等の不活性雰囲気中で高質化処理を行うことが好ましい。

0081

次に、急冷後の焼結体に時効処理を行う。時効処理とは、金属組織を制御して磁石の保磁力を高める処理であり、磁石の金属組織を複数の相に相分離させることを目的としている。

0082

一般的なSm−Co系磁石では、Mリッチプレートレット相が析出し、その後TbCu7型結晶相がTh2Zn17型結晶相やCuリッチ相等の複数の相に相分離するといわれている。このとき、Mリッチプレートレット相は、TbCu7型結晶相との粒界面における元素拡散パスとして働くとされており、保磁力を得るために有効な相であるといわれている。しかしながら、Mリッチプレートレット相の析出は、Th2Zn17型結晶相と格子整合しないおそれがある。格子不整合部があると磁化反転核が形成されやすくなり、保磁力の低下や角型比の悪化の原因となる。これに対し、Mリッチプレートレット相とTh2Zn17型結晶相とのひずみを緩和させるような相(緩和相)を生成させることができれば、保磁力や角型比が改善される可能性が高い。しかしながら、上記緩和相を生成するためには、Mリッチプレートレット相に先だってCuリッチ相を生成させる必要がある。

0083

本実施形態では、溶体化処理の後、時効処理を予備時効処理本時効処理に分け、予備時効処理において保持温度や時間、又は保持後の徐冷速度を厳密に制御する。

0084

予備時効処理では、従来よりも高温での保持を行いCuリッチ相等の核生成を促す。予備時効処理では、800℃以上850℃以下の温度で1時間以上4時間以下保持する。保持温度が850℃よりも高い場合、セル構造が得られず、角型比が低下しやすい。Mリッチプレートレット相の間隔も保持温度が高くなるほど広くなる。また、保持温度が800℃未満の場合、セル構造が緻密になり十分な大きさのセル相が得られずリコイル透磁率を高くすることが困難である。予備時効処理における保持温度は、例えば820℃以上840℃以下であることがより好ましい。保持時間が1時間未満の場合、セル構造が不十分となり、保磁力の発現が困難となる。また、保持時間が4時間よりも長い場合、セル壁相が過剰に厚くなり、角型比が劣化する可能性がある。

0085

その後本時効処理を従来よりも高い温度で行うことにより、相分離を促すことができる。本時効処理では、10℃/分以上15℃/分以下の昇温速度で860℃以上900℃以下の温度まで昇温し、到達温度で15時間以上60時間以下保持(第1の保持)する。次に、0.2℃/分以上0.8℃/分以下の冷却速度で350℃以上650℃以下の温度まで徐冷を行った後、その到達温度で0.5時間以上8時間以下保持(第2の保持)することにより、熱処理を行う。その後、室温まで冷却する。以上により焼結体磁石を得ることができる。

0086

昇温速度が10℃/分未満の場合、明瞭なセル構造が得られず、保磁力が十分に得られなくなる。昇温速度が15℃/分よりも高い場合、セル壁相の核生成が増加し、セル構造が緻密になる。よって、セル相の大きさが不十分でありリコイル透磁率を高くすることが困難になる。

0087

第1の保持温度が860℃未満であると、セル構造が緻密になり、十分な大きさのセル相が得られにくくなる。第1の保持温度が900℃よりも高いと、明瞭なセル構造が得られず、保磁力が十分に得られなくなる。第1の保持温度は、例えば870℃以上890℃以下であることがより好ましい。

0088

徐冷時の冷却速度が0.2℃/分未満の場合、セル壁相が過剰に厚くなり、磁化が減少しやすい。また、2.0℃/分を超える場合、セル相とセル壁相とのCu濃度の差が十分に得られず、保磁力が低下し易い。徐冷時の冷却速度は、例えば0.4℃/分以上1.5℃/分以下、さらには0.5℃/分以上1.3℃/分以下であることがより好ましい。また、350℃未満まで徐冷する場合、上述したような低温異相が生成され易い。また、650℃を超える温度まで徐冷する場合、Cuリッチ相でのCu濃度が十分に高くならず、十分な保磁力が得られないことがある。また、第2の保持における保持時間が8時間を超える場合、低温異相が生成し、十分な磁気特性が得られない可能性がある。

0089

(第2の実施形態)
第1の実施形態の永久磁石は、車両等に具備される各種モータや発電機などの回転電機に使用することができる。また、可変磁束モータ固定磁石可変磁石として使用することも可能である。第1の実施形態の永久磁石を用いることによって、各種の回転電機が構成される。第1の実施形態の永久磁石を可変磁束モータに適用する場合、可変磁束モータの構成やドライブシステムには、例えば特開2008−29148号公報や特開2008−43172号公報に開示されている技術を適用することができる。

0090

次に、上記永久磁石を具備するモータについて、図面を参照して説明する。図8は本実施形態における永久磁石モータを示す図である。図8に示す永久磁石モータ100では、ステータ(固定子)102内にロータ(回転子)103が配置されている。ロータ103の鉄心104中には、永久磁石105が配置されている。永久磁石105の磁束密度(磁束量)は可変することが可能とされている。永久磁石105はその磁化方向がQ軸方向と直交するため、Q軸電流の影響を受けず、D軸電流により磁化することができる。ロータ103には磁化巻線(図示せず)が設けられている。この磁化巻線に磁化回路から電流を流すことによって、その磁界が直接に永久磁石105に作用する構造となっている。

0091

永久磁石105としては、第1の実施形態の永久磁石を用いることができる。これにより、低速から高速までの可変速駆動を行う場合であっても高速回転時の出力の低下を抑制することができる。第1の実施形態の永久磁石を具備するモータは、例えばモータの高出力・小型化が求められるハイブリッド車電気自動車等の車両用のモータに好適である。

0092

図9は発電機を示している。図9に示す発電機201は、上記永久磁石を用いたステータ(固定子)202を備えている。ステータ(固定子)202の内側に配置されたロータ(回転子)203は、発電機201の一端に設けられたタービン204とシャフト205を介して接続されている。タービン204は、例えば外部から供給される流体により回転する。なお、流体により回転するタービン204に代えて、自動車等の車両の回生エネルギー等の動的な回転を伝達することによって、シャフト205を回転させることも可能である。ステータ202とロータ203には、各種公知の構成を採用することができる。

0093

シャフト205はロータ203に対してタービン204とは反対側に配置された整流子(図示せず)と接触しており、ロータ203の回転により発生した起電力が発電機201の出力として相分離母線及び主変圧器(図示せず)を介して、系統電圧に昇圧されて送電される。発電機201は、通常の発電機及び可変磁束発電機のいずれであってもよい。なお、ロータ203にはタービン204からの静電気や発電に伴う軸電流による帯電が発生する。このため、発電機201はロータ203の帯電を放電させるためのブラシ206を備えている。第1の実施形態の永久磁石を具備する発電機は、例えば高出力・小型化が求められるハイブリッド車や電気自動車等の車両用の発電機に好適である。

0094

上記回転電機は、例えば、鉄道交通に利用される鉄道車両(車両の一例)に搭載されてよい。図10は、回転電機301を具備する鉄道車両300の一例を示す図である。回転電機301としては、上記図8のモータ、図9の発電機等を用いることができる。回転電機301として上記回転電機が搭載された場合、回転電機301は、例えば、架線から供給される電力や、鉄道車両300に搭載された二次電池から供給される電力を利用することによって駆動力を出力する電動機(モータ)として利用されてもよいし、運動エネルギーを電力に変換して、鉄道車両300内の各種負荷に電力を供給する発電機(ジェネレータ)として利用されてもよい。実施形態の回転電機のような高効率な回転電機を利用することにより、省エネルギーで鉄道車両を走行させることができる。

0095

上記回転電機は、ハイブリッド自動車や電気自動車などの自動車(車両の他の例)に搭載されてもよい。図11は、回転電機401を具備する自動車400の一例を示す図である。回転電機401としては、上記図8のモータ、図9の発電機等を用いることができる。回転電機401として上記回転電機が搭載された場合、回転電機401は、自動車400の駆動力を出力する電動機、又は自動車400の走行時の運動エネルギーを電力に変換する発電機としても利用されてよい。

0096

(実施例1、実施例2)
永久磁石に用いられる各原料を所定の比率で量して混合した後、Arガス雰囲気アーク溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットを1170℃で12時間保持して熱処理を行った後、合金インゴットに対して粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。得られた合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0097

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉チャンバ内に配置し、チャンバ内を9.0×10−3Paの真空状態にした後、1170℃まで昇温させ到達温度で25分間保持する。その後、Arガスを導入し、Ar雰囲気中で1200℃まで昇温させ、到達温度で6時間保持することにより焼結を行った。次に、1160℃まで徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を160℃/分とした。

0098

次に、表2に示すように、予備時効処理として、820℃まで昇温し、到達温度で2時間保持した。その後本時効処理として、880℃まで10℃/分の速度で昇温し、到達温度で45時間保持した。その後、0.6℃/分の冷却速度で450℃まで徐冷を行い、到達温度で5時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0099

ICP法により磁石の組成分析を実施した。なお、ICP法による組成分析を以下の手順により行った。まず、記述の測定箇所から採取した試料を乳鉢で粉砕し、粉砕した試料を一定量はかり取り、石英ビーカに入れた。さらに、ビーカに混酸硝酸塩酸を含む酸)を入れ、ホットプレート上で140℃程度に加熱し、ビーカ中の試料を完全に溶解させた。さらに放冷した後、PFAポリテトラフルオロエチレン)製メスフラスコに移して定量し、試料溶液とした。

0100

ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により上記試料溶液の含有成分の定量を行った。ICP発光分光分析装置としては、エスアイアイナノテクノロジー製、SPS4000を用いた。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。なお、各実施例及び比較例において測定装置として、日立ハイテク製HD2300を使用した。

0101

(実施例3、実施例4、実施例5)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1180℃、10時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0102

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を9.0×10−3Paの真空状態にした後に1170℃まで昇温させ、到達温度で30分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中で1195℃まで昇温させ、上記到達温度で6時間保持することにより焼結を行った。次に、1140℃まで徐冷を行い、到達温度で16時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を150℃/分とした。

0103

次に、表2に示すように、予備時効処理として、840℃まで昇温し、到達温度で3時間保持した。その後本時効処理として、890℃まで12℃/分の速度で昇温し、到達温度で40時間保持した。その後、0.5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷を行い、到達温度で2時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0104

さらに、上記ICP発光分光分析装置を用いて検量線法により上記試料溶液の含有成分の定量を行った。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0105

(実施例6、実施例7)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1175℃、12時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを実施し、磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0106

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を8.0×10−3Paの真空状態にした後に1160℃まで昇温させ、到達温度で15分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中で1185℃まで昇温させ、到達温度で4時間保持することにより焼結を行った。次に、1130℃まで徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を200℃/分とした。

0107

次に、表2に示すように、予備時効処理として、850℃まで昇温し、到達温度で2時間保持した。その後本時効処理として、895℃まで14℃/分の速度で昇温し、到達温度で50時間保持した。その後、0.4℃/分の冷却速度で420℃まで徐冷を行い、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0108

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0109

(実施例8)
各原料を所定の比率で秤量して混合した後、Arガス雰囲気中で高周波溶解して合金インゴットを作製した。上記合金インゴットに対し粗粉砕を実施した後に1165℃、8時間の熱処理を施し、急冷することにより室温まで冷却した。さらに、粗粉砕とジェットミルによる粉砕とを磁石の原料粉末としての合金粉末を調製した。さらに上記合金粉末を磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。

0110

次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を9.0×10−3Paの真空状態にした後に1160℃まで昇温させ、到達温度で30分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。Ar雰囲気中で1195℃まで昇温させ、到達温度で4時間保持することにより焼結を行った。次に、1130℃まで徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を170℃/分とした。

0111

次に、表2に示すように、予備時効処理として、830℃まで昇温し、到達温度で2時間保持した。その後本時効処理として、880℃まで10℃/分の速度で昇温し、到達温度で40時間保持した。その後、0.5℃/分の冷却速度で400℃まで徐冷を行い、到達温度で1時間保持した。その後、室温まで炉冷することにより、磁石を得た。

0112

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0113

(実施例9ないし実施例12)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を9.0×10−3Paの真空状態にした後に1160℃まで昇温させ、到達温度で30分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。次に、Ar雰囲気中で1195℃まで昇温させ、到達温度で4時間保持することにより焼結を行った。

0114

次に、1130℃まで徐冷を行い、到達温度で12時間保持して溶体化処理を行い、その後室温まで冷却を行った。なお、溶体化処理後の冷却速度を170℃/分とした。

0115

その後、表2に示す予備時効保持温度及び本時効保持温度にてその他は実施例8と同様の方法により、各実施例において溶体化処理後の焼結体に対して予備時効処理及び本時効処理等を行うことにより、磁石を得た。

0116

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0117

(比較例1、比較例2)
表1に示す組成を有する磁石を、実施例1及び実施例2のそれぞれと同一の方法で作製した。また、実施例と同様に、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0118

(比較例3ないし比較例6)
実施例8と同組成の合金粉末を原料に用い、磁界中でプレス成形して圧縮成形体を作製した。次に、合金粉末の圧縮成形体を焼結炉のチャンバ内に配置し、チャンバ内を9.0×10−3Paの真空状態にした後に1160℃まで昇温させ、到達温度で30分間保持した後、チャンバ内にArガスを導入した。次に、Ar雰囲気中で1195℃まで昇温させ、到達温度で4時間保持することにより焼結を行った。

0119

その後、実施例8と同様の条件で溶体化処理を行い、その後表2に示す温度であってそれ以外は実施例8と同様の条件で溶体化処理後の焼結体に対して予備時効処理及び本時効処理等を行うことにより、磁石を得た。

0120

他の実施例と同様に上記各磁石の組成をICP法により確認した。得られた磁石の組成は表1に示す通りである。また、他の実施例と同様に、セル相の直径、Mリッチプレートレット相の間隔、さらに保磁力HcJ、残留磁化Br、及びリコイル透磁率を測定した。その結果を表3に示す。

0121

以上のように、実施例1ないし実施例12の永久磁石では、主相において、セル相の直径及びMリッチプレートレット相の間隔を制御することにより、高いリコイル透磁率、高保磁力、及び高磁化を発現している。このことから、実施例1ないし実施例12の永久磁石は、磁石特性に優れていることがわかる。また、車両等に具備されるモータや発電機などの回転電機に高速回転での弱め界磁制御法を用いた場合、弱め界磁制御法による電流が不要となり、損失の低減、効率の向上が可能となる。

0122

0123

0124

実施例

0125

なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。

0126

1a…曲線、1b…曲線、2a…曲線、2b…曲線、3a…曲線、3b…曲線、4…セル相、5…Cuリッチ相、6…Mリッチプレートレット相、11…結晶粒、12…粒界相、100…永久磁石モータ、103…ロータ、104…鉄心、105…永久磁石、201…発電機、202…ステータ、203…ロータ、204…タービン、205…シャフト、206…ブラシ、300…鉄道車両、301…回転電機、400…自動車、401…回転電機。

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