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技術 放射性セシウム処理システム及び放射性セシウム処理方法

出願人 三菱重工業株式会社
発明者 牟田研二岩村康弘伊藤岳彦鶴我薫典
出願日 2017年5月31日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2017-108287
公開日 2017年9月21日 (4年3ヶ月経過) 公開番号 2017-167161
状態 特許登録済
技術分野 放射線源とその利用及び核爆発 汚染除去及び汚染物処理
主要キーワード 透過工 アクリル製容器 放出室 Pd板 水素爆発 核種変換 CaO層 放射線計測器
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (16)

課題

固体物から放射性セシウムを抽出するための前処理を用いた放射性セシウムの処理装置及び処理方法を提供する。

解決手段

放射性セシウム処理システム1は、放射性セシウム抽出装置20と、放射性セシウムの硝酸塩水溶液または重水溶液を用いて構造体表面に放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部30と、構造体に添加された放射性セシウムを他の安定元素核種変換される核種変換部10とを備える。放射性セシウム抽出装置20は、ハロゲン除去部21と、硝酸または重硝酸に固体物を浸漬させて放射性セシウムを抽出させる抽出部22と、抽出液から放射性セシウム硝酸塩を作製する濃縮部23と、放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液を作製する調整部24とを備える。

概要

背景

原子力発電所事故に伴い、多量の放射性物質が環境中に放出される。具体的に、福島第一原子発電所事故での例を挙げると、建屋水素爆発により放射性物質が大気中に放出され、土壌樹木瓦礫等に付着する。また、原子炉の破損により冷却水等が放射性物質に汚染される。

特に福島第一原子力発電所事故では、放射性セシウム高濃度に含む汚染水の処理が問題となっている。原子炉内でのウラン燃料核分裂により生成する放射性セシウムとしては、137Cs(半減期:約30.1年)と134Cs(半減期:2.0562年)がある。現状、これらの放射性セシウムを含む汚染水は、内部に吸着材ゼオライトシリカサンドプルシアンブルー等)カートリッジを配置したセシウム吸着装置を通過させることによって処理されている。一定量のセシウムを吸着すると、カートリッジが交換される。

しかしながら、土壌や瓦礫、吸着材カートリッジは、放射性セシウムにこれ以上の処理がされない状態で隔離保管されるのみである。放射線の影響が小さくなるには長年必要であるので、使用済みの吸着材カートリッジは増加する一方である。このため、保管のために膨大な土地施設が必要である上、長期間に亘る管理方法の問題が生じている。

一方、特許文献1乃至特許文献3には、セシウムの安定核種である133Csをプラセオジム(141Pr)に核種変換する技術が開示されている。

概要

固体物から放射性セシウムを抽出するための前処理を用いた放射性セシウムの処理装置及び処理方法を提供する。放射性セシウム処理システム1は、放射性セシウム抽出装置20と、放射性セシウムの硝酸塩水溶液または重水溶液を用いて構造体表面に放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部30と、構造体に添加された放射性セシウムを他の安定元素に核種変換される核種変換部10とを備える。放射性セシウム抽出装置20は、ハロゲン除去部21と、硝酸または重硝酸に固体物を浸漬させて放射性セシウムを抽出させる抽出部22と、抽出液から放射性セシウム硝酸塩を作製する濃縮部23と、放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液を作製する調整部24とを備える。

目的

本発明は、放射性セシウムを核種変換処理するにあたり、吸着材カートリッジ等の固体物から放射性セシウムを抽出するための前処理に用いる装置及び方法を含めた放射性セシウムの処理装置及び処理方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

放射性セシウム吸着している固体物を水で洗浄して、前記固体物からハロゲンを除去するハロゲン除去部と、硝酸または重硝酸に前記ハロゲンが除去された前記固体物を浸漬させて前記固体物から前記放射性セシウムを抽出させ、抽出液を生成させる抽出部と、前記抽出液を加熱して前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩を作製する濃縮部と、前記放射性セシウムの硝酸塩を水または重水に溶解させ、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液を作製する調整部と、を備える放射性セシウム抽出装置と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液を用いて、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体の一表面に前記放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部と、前記構造体に添加された前記放射性セシウムを他の安定元素核種変換される核種変換部と、を備え、前記放射性セシウム添加部が、前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液を収容する容器と、前記構造体の前記一表面と対向して配置される陽極と、前記構造体を陰極として、前記陽極と前記構造体の間に電圧を与える電圧発生部と、を備え、前記核種変換部が、前記放射性セシウムが添加された前記構造体と、前記構造体を両側から挟み込むようにして配置され、前記構造体により密封可能な閉空間をなす重水素高圧部及び重水素低圧部と、前記重水素高圧部を、前記重水素低圧部に対して重水素の圧力が高い状態とする高圧化手段と、前記重水素低圧部を、前記重水素高圧部に対して相対的に重水素の圧力が低い状態とする低圧化手段と、を備え、前記重水素が前記重水素高濃度部から前記重水素低濃度部に向かって前記構造体を透過することにより、前記構造体表面に添加された前記放射性セシウムが核種変換される放射性セシウム処理システム

請求項2

放射性セシウムが吸着している固体物を水で洗浄して、前記固体物からハロゲンを除去するハロゲン除去部と、硝酸または重硝酸に前記ハロゲンが除去された前記固体物を浸漬させて前記固体物から前記放射性セシウムを抽出させ、抽出液を生成させる抽出部と、前記抽出液を加熱して前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩を作製する濃縮部と、前記放射性セシウムの硝酸塩を水または重水に溶解させ、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液を作製する調整部と、を備える放射性セシウム抽出装置と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を用いて、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体の一表面に前記放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を用いて、前記放射性セシウムを他の安定元素に変換する核種変換部とを備え、前記放射性セシウム添加部が、前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を収容する容器と、前記構造体の前記一表面と対向して配置される陽極と、前記構造体を陰極として、前記陽極と前記構造体の間に電圧を与える電圧発生部と、を備え、前記核種変換部が、前記放射性セシウムが添加された前記構造体と、前記構造体を両側から挟み込むようにして配置され、前記構造体により隔離される重水素高濃度部及び重水素低濃度部と、前記構造体の前記重水素高濃度部側の表面近傍で重水素の濃度が高い状態とする高濃度化手段と、前記重水素低濃度部を、前記重水素高濃度部に対して前記重水素の濃度が低い状態とする低濃度化手段と、を備え、前記高濃度化手段が、電圧発生部と、前記構造体の重水素高濃度部側の面と間隔をあけて対向配置される陽極と、前記重水素高濃度部に前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を供給する電解溶液供給部と、を有し、前記構造体を陰極として、前記電圧発生部により前記構造体及び前記陽極との間に電圧差を与えて前記重水溶液を電気分解して、前記重水素を発生させ、前記重水素が前記重水素高濃度部から前記重水素低濃度部に向かって前記構造体を透過することにより、前記構造体において前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換される放射性セシウム処理システム。

請求項3

前記抽出部が、常圧下において、硝酸または重硝酸の濃度が6mol/L以上、かつ、90℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物を浸漬させる請求項1または請求項2に記載の放射性セシウム処理システム。

請求項4

前記抽出部が、16気圧以上の圧力で、硝酸または重硝酸の濃度が0.5mol/L以上5.0mol/L以下、かつ、200℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物を浸漬させる請求項1または請求項2に記載の放射性セシウム処理システム。

請求項5

前記蒸発した前記硝酸または前記重硝酸を回収して冷却し、液体となった前記硝酸または前記重硝酸を前記抽出部に供給する冷却部を更に備える請求項1または請求項2に記載の放射性セシウム処理システム。

請求項6

放射性セシウムが吸着している固体物が水で洗浄され、前記固体物からハロゲンが除去されるハロゲン除去工程と、前記ハロゲンが除去された前記固体物が硝酸または重硝酸に浸漬されて、前記放射性セシウムが前記固体物から前記硝酸または重硝酸に抽出される抽出工程と、前記放射性セシウムが抽出された抽出液を加熱して、前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩が生成する濃縮工程と、前記放射性セシウムの硝酸塩が水又は重水に溶解されて、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液に調液される調整工程と、を備える放射性セシウム抽出方法により抽出された前記放射性セシウムを処理する放射性セシウム処理方法であって、放射性セシウム添加工程と、核種変換工程とを含み、前記放射性セシウム添加工程が、前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液に、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体が浸漬される工程と、前記水溶液中で陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が付与されることにより、前記構造体の前記陽極に対向する面に前記放射性セシウムが電着により添加される電着工程と、を有し、前記核種変換工程が、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面側の重水素高圧部に重水素が供給され、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面と反対側の重水素低圧部が、前記重水素高圧部よりも相対的に前記重水素の圧力が低い状態にされて、前記構造体を挟んで前記重水素高圧部と前記重水素低圧部との間に前記重水素の圧力差が発生し、該圧力差により前記重水素が前記構造体を透過する透過工程と、前記重水素が前記構造体を透過する際に、前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換する変換工程とを含む放射性セシウム処理方法。

請求項7

放射性セシウムが吸着している固体物が水で洗浄され、前記固体物からハロゲンが除去されるハロゲン除去工程と、前記ハロゲンが除去された前記固体物が硝酸または重硝酸に浸漬されて、前記放射性セシウムが前記固体物から前記硝酸または重硝酸に抽出される抽出工程と、前記放射性セシウムが抽出された抽出液を加熱して、前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩が生成する濃縮工程と、前記放射性セシウムの硝酸塩が水又は重水に溶解されて、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液に調液される調整工程と、を備える放射性セシウム抽出方法により抽出された前記放射性セシウムを処理する放射性セシウム処理方法であって、放射性セシウム添加工程と、核種変換工程とを含み、前記放射性セシウム添加工程が、前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液に、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体が浸漬される工程と、前記水溶液中で陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が付与されることにより、前記構造体の前記陽極に対向する面に前記放射性セシウムが電着により添加される電着工程と、を有し、前記核種変換工程が、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面側の重水素高濃度部に、前記調整工程で得られた前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液が供給される重水溶液供給工程と、前記重水素高濃度部の前記重水溶液内に陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が印加されることにより、前記重水が電気分解されて重水素が発生し、前記構造体の他方の面側の重水素低濃度部が、前記重水素高濃度部に対して相対的に前記重水素の濃度が低い状態にされることにより、前記構造体を挟んで前記重水素高濃度部と前記重水素低濃度部との間に前記重水素の濃度差が発生し、該濃度差により前記重水素が前記構造体を透過する透過工程と、前記重水素が前記構造体を透過する際に、前記構造体の前記重水素高濃度部側の表面において前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換する変換工程とを含む核種変換工程を有する放射性セシウム処理方法。

請求項8

常圧下において、濃度が6mol/L以上、かつ、90℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物が浸漬されて、前記放射性物質が前記硝酸または前記重硝酸に抽出される請求項6または請求項7に記載の放射性セシウム処理方法。

請求項9

16気圧以上の圧力下において、濃度が0.5mol/L以上5.0mol/L以下、かつ、200℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物が浸漬されて、前記放射性物質が前記硝酸または前記重硝酸に抽出される請求項6または請求項7に記載の放射性セシウム処理方法。

請求項10

前記蒸発した前記硝酸または前記重硝酸を回収して冷却し、液体となった前記硝酸または前記重硝酸を前記抽出工程に供給する循環工程を更に備える請求項6または請求項7に記載の放射性セシウム処理方法。

技術分野

0001

本発明は、固体物吸着している放射性セシウムを抽出する装置及び方法により固体物から分離された放射性セシウムを核種変換により処理する装置及び方法に関する。

背景技術

0002

原子力発電所事故に伴い、多量の放射性物質が環境中に放出される。具体的に、福島第一原子発電所事故での例を挙げると、建屋水素爆発により放射性物質が大気中に放出され、土壌樹木瓦礫等に付着する。また、原子炉の破損により冷却水等が放射性物質に汚染される。

0003

特に福島第一原子力発電所事故では、放射性セシウムを高濃度に含む汚染水の処理が問題となっている。原子炉内でのウラン燃料核分裂により生成する放射性セシウムとしては、137Cs(半減期:約30.1年)と134Cs(半減期:2.0562年)がある。現状、これらの放射性セシウムを含む汚染水は、内部に吸着材ゼオライトシリカサンドプルシアンブルー等)カートリッジを配置したセシウム吸着装置を通過させることによって処理されている。一定量のセシウムを吸着すると、カートリッジが交換される。

0004

しかしながら、土壌や瓦礫、吸着材カートリッジは、放射性セシウムにこれ以上の処理がされない状態で隔離保管されるのみである。放射線の影響が小さくなるには長年必要であるので、使用済みの吸着材カートリッジは増加する一方である。このため、保管のために膨大な土地施設が必要である上、長期間に亘る管理方法の問題が生じている。

0005

一方、特許文献1乃至特許文献3には、セシウムの安定核種である133Csをプラセオジム(141Pr)に核種変換する技術が開示されている。

先行技術

0006

特許第4346838号公報
特許第4347261号公報
特許第4347262号公報

発明が解決しようとする課題

0007

上述のように放射性セシウムの保管では、放射線の影響が懸念される。そこで、核種変換技術を利用して放射性セシウムを安定核種に変換して、放射線の影響を削減することが期待できる。

0008

本発明は、放射性セシウムを核種変換処理するにあたり、吸着材カートリッジ等の固体物から放射性セシウムを抽出するための前処理に用いる装置及び方法を含めた放射性セシウムの処理装置及び処理方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0009

本発明の一態様に係る放射性セシウム抽出装置は、放射性セシウムが吸着している固体物を水で洗浄して、前記固体物からハロゲンを除去するハロゲン除去部と、硝酸または重硝酸に前記ハロゲンが除去された前記固体物を浸漬させて前記固体物から前記放射性セシウムを抽出させ、抽出液を生成させる抽出部と、前記抽出液を加熱して前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩を作製する濃縮部と、前記放射性セシウムの硝酸塩を水または重水に溶解させ、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液を作製する調整部と、を備える。

0010

本発明の一態様に係る放射性セシウム抽出方法は、放射性セシウムが吸着している固体物が水で洗浄され、前記固体物からハロゲンが除去されるハロゲン除去工程と、前記ハロゲンが除去された前記固体物が硝酸または重硝酸に浸漬されて、前記放射性セシウムが前記固体物から前記硝酸または重硝酸に抽出される抽出工程と、前記放射性セシウムが抽出された抽出液を加熱して、前記抽出液から前記硝酸または前記重硝酸を蒸発させて、前記放射性セシウムの硝酸塩が生成する濃縮工程と、前記放射性セシウムの硝酸塩が水又は重水に溶解されて、所定濃度の前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液または重水溶液に調液される調整工程と、を備える。

0011

本発明では、核種変換反応を行うための前処理として、硝酸(HNO3)または重硝酸(DNO3)を用いて固体物に吸着した放射性セシウムを抽出分離する。
後述する核種変換反応では、重水素構造体を透過する際に構造体においてセシウムから他の安定元素への核種変換が発生する。しかし、本願発明者らの検討の結果、ハロゲン類ヨウ素)が存在する場合には重水素の透過が阻害されることが判明した。そこで本発明では、固体物から放射性セシウムを抽出分離する前に、ハロゲン除去部を設置して固体物に付着するハロゲン類を除去する工程が行われる。
セシウム吸着装置の吸着材カートリッジを対象とする場合、放射性セシウムを多量に吸着したカートリッジは、放射性セシウムの崩壊により発生する熱のために高温となっている。ハロゲン除去部で吸着材カートリッジ(固体物)を水洗することにより、カートリッジを冷却できるという効果も奏する。
放射性セシウムの抽出液を蒸発乾固することより、余剰の硝酸または重硝酸が除去された硝酸塩を作製する。その後、核種変換を行うために適切な濃度の放射性セシウムの硝酸塩(硝酸セシウム)の水溶液または重水溶液に調整することにより、核種変換反応を行うために十分な純度の放射性セシウムの硝酸塩を得ることが可能となる。

0012

上記放射性セシウム抽出装置において、前記抽出部が、常圧下において、硝酸または重硝酸の濃度が6mol/L以上、かつ、90℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物を浸漬させることが好ましい。

0013

上記放射性セシウム抽出方法において、常圧下において、濃度が6mol/L以上、かつ、90℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物が浸漬されて、前記放射性物質が前記硝酸または前記重硝酸に抽出されることが好ましい。

0014

上記条件で抽出を行うことにより、高回収率で固体物に吸着した放射性セシウムを抽出させることができる。
放射性セシウムの抽出の結果、抽出処理後の固体物に残留する放射性セシウム量を大幅に低減され、処理後の固体物から放出される放射線量を大幅に低減できる。従って、処理後の固体物の取扱いが容易となる。

0015

上記放射性セシウム抽出装置において、前記抽出部が、16気圧以上の圧力で、硝酸または重硝酸の濃度が0.5mol/L以上5.0mol/L以下、かつ、200℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物を浸漬させることが好ましい。

0016

上記放射性セシウム抽出方法において、16気圧以上の圧力下において、濃度が0.5mol/L以上5.0mol/L以下、かつ、200℃以上の前記硝酸または前記重硝酸に前記固体物が浸漬されて、前記放射性物質が前記硝酸または前記重硝酸に抽出されることが好ましい。

0017

上記条件で抽出を行うことにより、放射性セシウムの抽出率を向上させることができるとともに、処理後の固体物の放射線量を低減することができる。
例えば吸着材カートリッジを対象とする場合は、上記条件で抽出するとゼオライト等の吸着材の破損を防止することができる。上記条件の抽出を行えば、抽出後の固体物を再利用することが可能となる。

0018

上記放射性セシウム抽出装置において、前記蒸発した前記硝酸または前記重硝酸を回収して冷却し、液体となった前記硝酸または前記重硝酸を前記抽出部に供給する冷却部を更に備えることが好ましい。

0019

上記放射性セシウム抽出方法において、前記蒸発した前記硝酸または前記重硝酸を回収して冷却し、液体となった前記硝酸または前記重硝酸を前記抽出工程に供給する循環工程を更に備えることが好ましい。

0020

上記構成とすることにより、硝酸または重硝酸の使用量を低減することが可能となる。

0021

本発明の一態様に係る放射性セシウム処理システムは、上記態様の放射性セシウム抽出装置と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液を用いて、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体の一表面に前記放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部と、前記構造体に添加された前記放射性セシウムを他の安定元素に核種変換される核種変換部と、を備え、前記放射性セシウム添加部が、前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液を収容する容器と、前記構造体の前記一表面と対向して配置される陽極と、前記構造体を陰極として、前記陽極と前記構造体の間に電圧を与える電圧発生部と、を備え、前記核種変換部が、前記放射性セシウムが添加された前記構造体と、前記構造体を両側から挟み込むようにして配置され、前記構造体により密封可能な閉空間をなす重水素高圧部及び重水素低圧部と、前記重水素高圧部を、前記重水素低圧部に対して重水素の圧力が高い状態とする高圧化手段と、前記重水素低圧部を、前記重水素高圧部に対して相対的に重水素の圧力が低い状態とする低圧化手段と、を備え、前記重水素が前記重水素高濃度部から前記重水素低濃度部に向かって前記構造体を透過することにより、前記構造体表面に添加された前記放射性セシウムが核種変換される。

0022

本発明の一態様に係る放射性セシウム処理方法は、上記態様の放射性セシウム抽出方法により抽出された前記放射性セシウムを処理する放射性セシウム処理方法であって、放射性セシウム添加工程と、核種変換工程とを含み、前記放射性セシウム添加工程が、前記放射性セシウムの硝酸塩の水溶液に、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体が浸漬される工程と、前記水溶液中で陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が付与されることにより、前記構造体の前記陽極に対向する面に前記放射性セシウムが電着により添加される電着工程と、を有し、前記核種変換工程が、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面側の重水素高圧部に重水素が供給され、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面と反対側の重水素低圧部が、前記重水素高圧部よりも相対的に前記重水素の圧力が低い状態にされて、前記構造体を挟んで前記重水素高圧部と前記重水素低圧部との間に前記重水素の圧力差が発生し、該圧力差により前記重水素が前記構造体を透過する透過工程と、前記重水素が前記構造体を透過する際に、前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換する変換工程とを含む。

0023

上記態様では、上述した抽出装置及び抽出方法で調整した放射性セシウムの硝酸塩水溶液を用いた電着により、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体の一表面に放射性セシウムを添加する。構造体表面に高濃度でセシウムが存在するために、高効率で核種変換が発生する。
上記態様では、前処理により添加された放射性セシウム中のハロゲン濃度は大幅に低下されている。従って、核種変換時に重水素が構造体を透過することができ、核種変換率の低下が抑制される。

0024

本発明の別の態様に係る放射性セシウム処理システムは、上記態様の放射性セシウム抽出装置と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を用いて、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体の一表面に前記放射性セシウムを添加する放射性セシウム添加部と、前記調整部で生成した前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を用いて、前記放射性セシウムを他の安定元素に変換する核種変換部とを備え、前記放射性セシウム添加部が、前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を収容する容器と、前記構造体の前記一表面と対向して配置される陽極と、前記構造体を陰極として、前記陽極と前記構造体の間に電圧を与える電圧発生部と、を備え、前記核種変換部が、前記放射性セシウムが添加された前記構造体と、前記構造体を両側から挟み込むようにして配置され、前記構造体により隔離される重水素高濃度部及び重水素低濃度部と、前記構造体の前記重水素高濃度部側の表面近傍で重水素の濃度が高い状態とする高濃度化手段と、前記重水素低濃度部を、前記重水素高濃度部に対して前記重水素の濃度が低い状態とする低濃度化手段と、を備え、前記高濃度化手段が、電圧発生部と、前記構造体の重水素高濃度部側の面と間隔をあけて対向配置される陽極と、前記重水素高濃度部に前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液を供給する電解溶液供給部と、を有し、前記構造体を陰極として、前記電圧発生部により前記構造体及び前記陽極との間に電圧差を与えて前記重水溶液を電気分解して、前記重水素を発生させ、前記重水素が前記重水素高濃度部から前記重水素低濃度部に向かって前記構造体を透過することにより、前記構造体において前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換される。

0025

本発明の別の態様に係る放射性セシウム処理方法は、上記態様の放射性セシウム抽出方法により抽出された前記放射性セシウムを処理する放射性セシウム処理方法であって、放射性セシウム添加工程と、核種変換工程とを含み、前記放射性セシウム添加工程が、前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液に、パラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体が浸漬される工程と、前記水溶液中で陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が付与されることにより、前記構造体の前記陽極に対向する面に前記放射性セシウムが電着により添加される電着工程と、を有し、前記核種変換工程が、前記構造体の前記放射性セシウムが添加された面側の重水素高濃度部に、前記調整工程で得られた前記放射性セシウムの硝酸塩の重水溶液が供給される重水溶液供給工程と、前記重水素高濃度部の前記重水溶液内に陽極が前記構造体に対向して配置され、前記構造体を陰極として前記構造体と前記陽極との間に電圧が印加されることにより、前記重水が電気分解されて重水素が発生し、前記構造体の他方の面側の重水素低濃度部が、前記重水素高濃度部に対して相対的に前記重水素の濃度が低い状態にされることにより、前記構造体を挟んで前記重水素高濃度部と前記重水素低濃度部との間に前記重水素の濃度差が発生し、該濃度差により前記重水素が前記構造体を透過する透過工程と、前記重水素が前記構造体を透過する際に、前記構造体の前記重水素高濃度部側の表面において前記放射性セシウムが他の安定元素に核種変換する変換工程とを含む核種変換工程を有する。

0026

上記態様では、上述した抽出装置及び抽出方法で調整した放射性セシウムの硝酸塩重水溶液にパラジウムまたはパラジウム合金、あるいは、パラジウム以外の水素吸蔵金属またはパラジウム合金以外の水素吸蔵合金を含む構造体が浸漬され、電気分解により発生した重水素が構造体を透過することにより、構造体の表面で放射性セシウムの核種変換を起こさせている。構造体表面に高濃度でセシウムが存在するために、高効率で核種変換が発生する。
上記態様においても、前処理により添加された放射性セシウム中のハロゲン濃度は大幅に低下されているため、ハロゲンが重水素の透過を阻害することによる核種変換率の低下が抑制される。

0027

本発明では、放射性セシウムは放射能を有さない他の安定元素に核種変換される。本発明における「安定元素」とは、α線β線γ線中性子などの放射線を人体に有害なレベルで放出しない元素を意味する。従って、本発明により、放射能レベルを低減させることができる。

発明の効果

0028

本発明により、固体物から放射性セシウムを高収率で抽出することができ、放射性セシウムの処理率を高めることができる。また、抽出後の固体物の放射線量を大幅に低減できるため、その後の固体物の取扱いが容易となる。また、抽出された放射性セシウムは安定な他の安定元素に変換されるので、放射能レベルを低減させることができる。
従って本発明は、放射性セシウムの自然崩壊に比べて短時間で、放射性セシウムを安全な状態まで処理することができる。この結果、放射性セシウムが付着した固体物の処理が促進されて保管場所を小さくすることができ、廃棄物の管理が容易となる。

図面の簡単な説明

0029

第1実施形態に係る放射性セシウム処理システムの概略図である。
放射性セシウム添加部の概略図である。
構造体の一例の縦断面図である。
第1実施形態の核種変換部の概略図である。
第2実施形態に係る放射性セシウム処理システムの概略図である。
第2実施形態の核種変換部の概略図である。
ガス透過法による核種変換実験で用いた試験装置の概略図である。
ガス透過法による核種変換実験前後での構造体表面のSIMスペクトルである。
電気分解法による核種変換実験で用いた試験装置の概略図である。
電気分解法による核種変換実験を行った後の構造体表面のSIMSスペクトルである。
構造体の中央部及び端部でのXPSスペクトルである。
ガラス管の断面概略図である。
137Csの添加に用いた装置の概略図である。
137Csを添加した構造体を保管する容器の断面概略図である。
核種変換実験前後での137Csの放射能測定結果である。

実施例

0030

<第1実施形態>
第1実施形態では、固体物に吸着した放射性セシウム(134Cs、137Cs)が処理対象である。特に137Csは半減期が長く、瓦礫や汚染水などに含まれる放射性セシウムの大半を占める。

0031

この固体物としては、土壌、伐採木建造物等の瓦礫、セシウム吸着材などがある。セシウム吸着材は、ゼオライト、シリカサンド、プルシアンブルー(ヘキサシアノ鉄(II)酸化カリウム鉄(II)、KFe[Fe(CN)6]3)などがある。このセシウム吸着材は、放射性セシウムが溶解した汚染水を浄化するセシウム吸着装置で用いられる。セシウム吸着装置は、具体的にはKurion社製の処理装置、東製の処理装置(SARRY)などである。

0032

図1は、第1実施形態に係る放射性セシウム処理システムの概略図である。
放射性セシウム処理システム1は、核種変換により放射性セシウムを処理する核種変換部10と、核種変換を行うために前処理を実施する放射性セシウム抽出装置20とで構成される。放射性セシウム抽出装置20は、ハロゲン除去部21、抽出部22、濃縮部23、及び、調整部24を含む。放射性セシウム抽出装置20は更に、冷却部25を備える。冷却部25は、抽出部22及び濃縮部23に連結する。

0033

第1実施形態の放射性セシウム処理システム1は、調整部24と核種変換部10との間に、放射性セシウム添加部30が設置されている。

0034

以下では、第1実施形態の放射性セシウム処理システム1及び放射性セシウム処理方法を具体的に説明する。
[放射性セシウムの抽出]
まず、放射性セシウム抽出装置20により、固体物に吸着した放射性セシウムの抽出が行われる。

0035

<ハロゲン除去部、ハロゲン除去工程>
ハロゲン除去工程において、ハロゲン除去部21は、放射性セシウムが吸着した固体物を収容し、固体物を水で洗浄する。これにより、固体物に付着しているハロゲン(ヨウ素、塩素など)が除去される。
ハロゲン除去部21は、固体物を水で洗浄するための洗浄部を備える。洗浄部は具体的に、容器内の固体物に向けて水を噴射するスプレーでも良く、容器内に水を供給して固体物を浸漬させるものであっても良い。

0036

固体物が汚染水から放射性セシウムを除去するセシウム吸着装置の吸着材カートリッジである場合、放射性セシウムの崩壊により発生する熱のために高温になっている。例えば、Kurion社製のセシウム吸着装置のカートリッジでは中心温度が360℃程度であり、東芝製のセシウム吸着装置のカートリッジでは中心温度が450℃程度である。本工程の水洗浄により、カートリッジは水冷される。

0037

<抽出部、抽出工程>
抽出工程において、抽出部22は、ハロゲン除去部21から排出された固体物を収容する。抽出部22内に硝酸または重硝酸が供給され、固体物が硝酸または重硝酸に浸漬される。固体物に吸着した放射性セシウムは、硝酸塩または重硝酸塩として溶解することにより、硝酸または重硝酸により抽出される。
この抽出工程では、放射性セシウムを十分に抽出させるために、浸漬時に以下の2条件のいずれかが採用される。

0038

(条件1)
圧力:常圧(1気圧程度)、
硝酸または重硝酸濃度:6mol/L以上、
硝酸または重硝酸温度:90℃以上、
液比(固体物に対する液体の重量比):1以上。

0039

(条件2)
圧力:16気圧以上、
硝酸または重硝酸濃度:0.5mol/L以上5.0mol/L以下、
硝酸または重硝酸温度:200℃以上、
固液比:200以上。

0040

上記条件で抽出工程を実施することにより、固体物からの放射性セシウムの抽出量を増大させることができる。
抽出工程での温度の上限値は、各条件の圧力で硝酸または重硝酸が液体として存在できる温度とする。また、条件2の場合は、圧力容器に硝酸または重硝酸を収容することになる。この場合、容器内で硝酸または重硝酸が沸騰しない温度及び圧力が選択される。
条件2(高圧下での抽出)では、硝酸又は重硝酸濃度が高いとゼオライトが破壊される。従って、条件2における硝酸又は重硝酸濃度の上限値は5.0mol/Lとすることが好ましい。

0041

条件1は、条件2に比べて圧力、温度が低く、同量の固体物を処理するために必要な硝酸または重硝酸の量が少なくて済むという利点がある。条件1では、放射性セシウムを十分に抽出させるためには、6mol/L以上の濃硝酸または濃重硝酸が必要である。ゼオライト(吸収材カートリッジ)をこの濃度で抽出した場合、ゼオライトの構造が破壊される。
一方、条件2は低濃度の硝酸または重硝酸で抽出が行われる。この濃度では、ゼオライトの破壊は起こらない。

0042

プルシアンブルーの分解温度は230℃である。固体物がプルシアンブルーである場合には、条件2で抽出を行うに当たり、プルシアンブルーの分解温度以下で抽出を行えば、プルシアンブルーの構造が破壊されない。

0043

抽出工程後、抽出液と固体物とが別々に抽出部22から取り出される。

0044

抽出部22から排出された固体物は処理部40に搬送される。処理部40は固体物を収容し、固体物に付着している硝酸または重硝酸を中和処理する。中和処理には、例えばNaOHが使用できる。中和処理後、固体物が水洗処理される。

0045

水洗処理され処理部40から排出された固体物は、規制値以下の放射性レベルとなっていれば、一般廃棄物として処理することが可能である。
上記抽出工程において条件2で処理した場合ゼオライトが破壊されないことから、ゼオライト製の吸着材カートリッジは中和処理及び水洗処理の後、再利用可能となる。
また、上記抽出工程において、プルシアンブルーが分解されずに処理された場合、プルシアンブルーは中和処理及び水洗処理の後、再利用可能となる。

0046

ハロゲン除去部21での水洗処理後の洗浄液、及び、処理部40での中和処理及び水洗処理後の処理水には、放射性物質(放射性セシウム)が含まれている可能性がある。そこで、これらの処理水は汚染水を処理するセシウム吸着装置50に送給され、放射性物質の吸着処理を実施してから清浄な処理水として排出される。排出された性状な処理水は、逆浸透膜等の処理装置を通したのち、冷却水やハロゲン除去部21での洗浄水に再利用されても良い。
なお、図1におけるセシウム吸着装置50の吸着材カートリッジは、固体物として本実施形態の放射性物質抽出方法により処理される。

0047

<濃縮部、濃縮工程>
濃縮部23は、抽出部22から排出された抽出液を受け入れる。濃縮部23内において、抽出液を蒸発乾固させる。この時の加熱温度は、120.5℃以上である。
あるいは、濃縮部23は抽出液を真空乾燥しても良い。真空乾燥は、2000Pa以下の条件で実施され、抽出液の量に応じて真空乾燥時間が適宜設定される。
この濃縮工程の結果、放射性セシウムの硝酸塩(CsNO3)の結晶が回収される。

0048

<冷却部、循環工程>
濃縮部23で蒸発した気体(硝酸または重硝酸)は、冷却部25に搬送される。冷却部25において、硝酸または重硝酸が沸点以下の温度に冷却されて凝縮する。具体的に、硝酸または重硝酸は120.5℃以下に冷却される。
凝縮した硝酸または重硝酸は抽出部22に循環供給される。

0049

硝酸または重硝酸が凝縮した後の空気は、環境中に放出される。放出前エアフィルタ60を通すことにより空気に残留する放射性物質の除去が行われても良い。
放射性物質が吸着したエアフィルタ60のフィルタ部は、固体物として本実施形態の放射性セシウム抽出方法による処理が実施された後、再利用されても良い。

0050

<調整部、調整工程>
濃縮部23で回収された放射性セシウムの硝酸塩は、調整部24に搬送される。調整工程では、調整部24において、放射性セシウムの硝酸塩が後工程である核種変換に適した溶液に調整される。

0051

具体的に、調整部24に搬送された放射性セシウムの硝酸塩は、水(軽水)に添加されて、所定の濃度の水溶液に調整される。当該水溶液にpH調整剤が添加されて、所定のpHに調整されても良い。本実施形態で使用されるpH調整剤は、CsOH(Csは放射性同位体でなくても良い)などのアルカリや、HNO3などの酸が使用できる。但し、HClなどのハロゲンを含む酸は本実施形態では使用しない。
本実施形態において、後段の放射性セシウム添加工程での処理を考慮すると、放射性セシウムの硝酸塩水溶液は、濃度が0.001〜1mol/L、pHが7〜13程度に調整されることが好ましい。

0052

[放射性セシウムの処理]
<放射性セシウム添加部、放射性セシウム添加工程>
調整部24で調整された硝酸塩水溶液は、放射性セシウム添加部30に搬送される。
図2は放射性セシウム添加部30の概略図である。放射性セシウム添加部30は、容器31、電源32、及び、電源32に接続する陽極33を備える。陽極33は白金などとされる。陰極側には構造体70が取り付けられ、電源32に接続される。容器31には、調整部24で調整された放射性セシウムの硝酸塩水溶液が収容され、陽極33及び構造体70が浸漬される。

0053

図3に、構造体70の一例を示す。図3に示す構造体70は、バルクのPd(パラジウム)基板71上に、CaO層72(厚さ:2nm)とPd層73(厚さ:20nm)とが交互に10層積層された構成とされる。CaO層72及びPd層73は、アルゴンイオンビームスパッタ法によって、エッチング処理後のPd基板71上に交互に製膜される。最表面はPd層73である。

0054

Pdは水素吸蔵性を有する金属であり、CaOはPdに対して相対的に仕事関数が低い物質である。構造体70には、Pdに代えて、Pd合金、Pd以外の水素吸蔵金属またはPd合金以外の水素吸蔵合金が用いられても良い。また、CaOに代えて、Pd合金、Pd以外の水素吸蔵金属またはPd合金以外の水素吸蔵合金に対して相対的に仕事関数が低い物質が用いられても良い。相対的に仕事関数が低い物質とは、仕事関数が3eV未満の物質であり、Y2O3、TiCなどである。

0055

図2において、構造体70はPd層73を陽極33に対向して配置される。陽極33及び構造体70間に所定の電圧を印加して、硝酸塩水溶液を構造体70のPd層73表面に放射性セシウムを電着する。放射性セシウム層が形成されることにより、構造体70に放射性セシウムが添加される。

0056

印加する電圧及び印加時間は、構造体への放射性セシウム添加量水溶液濃度に応じて適宜設定する。例えば、1mM放射性セシウム硝酸塩水溶液を用いる場合、1Vの電圧で10秒間電着を実施する。

0057

<核種変換部、核種変換工程>
図4は、第1実施形態の核種変換部の概略図である。本実施形態では、ガス透過法により核種変換反応を実施する。
図4の核種変換部10は、構造体70を挟んで、構造体70のPd層73側には重水素高圧部11、Pd基板71側には重水素低圧部12が内部を気密保持可能に形成されている。構造体70は、上記の放射性セシウム添加工程によりPd層73表面に放射性セシウム層が形成されている。重水素高圧部11は、高圧化手段として重水素ボンベ13を備える。低圧化手段として真空ポンプ14を備える。

0058

図4の核種変換部10を用いて、以下の工程により核種変換を実施する。
重水素ボンベ13は、例えば1.01325×105Paの圧力で、重水素高圧部11に重水素(D2)ガスを導入する。重水素低圧部12は、真空ポンプ14は重水素低圧部12内を排気する。これにより、重水素低圧部12内の重水素の圧力が、重水素高圧部11内よりも低い状態となり、重水素低圧部12と重水素高圧部11との間で重水素の圧力差が発生する。この圧力差によって、重水素が重水素高圧部11から重水素低圧部12に向かって構造体70を透過する。

0059

本実施形態では、放射性セシウム抽出装置20にハロゲン除去部21を設けることによって、抽出される放射性セシウムにハロゲンが混入することを防止している。また、放射性セシウム抽出工程においてハロゲンを含む薬品を使用していない。このため、構造体70に添加される放射性セシウム層中のハロゲン濃度が極めて小さい。この結果、本工程でハロゲンによる重水素の透過阻害が発生しない。

0060

重水素が構造体70を透過する際に、構造体70において以下の反応が発生し、放射性セシウムが他の安定元素に変換する。ここでの「安定元素」とは、α線、β線、γ線、中性子などの放射線を人体に有害なレベルで放出しない元素を意味する。例えば、137Csは153Euなどに、134Csは138Laなどに変換することが予想される。
重水素ガスの透過は所定時間、例えば数十〜数百時間とする。核種変換量は重水素の透過時間が長くなるのに伴って増加する傾向がある。

0061

<第2実施形態>
図5は、第2実施形態に係る放射性セシウム処理システムの概略図である。図5では、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付す。
第2実施形態の放射性セシウム処理システム101は、放射性セシウム抽出装置120の構成が第1実施形態と同じである。放射性セシウム処理システム101は、第1実施形態と異なる核種変換部110が設置される。

0062

以下では、第2実施形態の放射性セシウム処理システム101及び放射性セシウム処理方法を具体的に説明する。
[放射性セシウムの抽出]
ハロゲン除去工程〜濃縮工程は、第1実施形態と同様にして実施される。
<調整部、調整工程>
第2実施形態の調整工程では、調整部124に搬送された放射性セシウムの硝酸塩は、重水に添加されて、所定濃度の重水溶液に調整される。当該重水溶液にpH調整剤が添加されて、所定のpHに調整されても良い。本実施形態で使用されるpH調整剤は、CsOH(Csは放射性同位体でなくても良い)などのアルカリや、HNO3などの酸が使用できる。但し、HClなどのハロゲンを含む酸は本実施形態では使用しない。
本実施形態において、核種変換工程を考慮すると、放射性セシウムの硝酸塩重水溶液は、濃度が0.001〜1mol/l、pHが7〜13に調整されることが好ましい。

0063

[放射性セシウムの処理]
<放射性セシウム添加部、放射性セシウム添加工程>
調整部124で調整された硝酸塩重水溶液は、放射性セシウム添加部30に搬送される。放射性セシウム添加部30において、第1実施形態と同様の工程により、構造体表面に放射性セシウム層が形成される。

0064

<核種変換部、核種変換工程>
図6は、第2実施形態の核種変換部の概略図である。本実施形態では、電解法により核種変換反応を実施する。
図6の核種変換部110は、構造体70、重水素高濃度部111、重水素低濃度部112、高濃度化手段113、及び低濃度化手段を備えている。

0065

構造体70は、第1実施形態の構造体と同じ構成である。構造体70を挟んで、Pd層側には重水素高濃度部111、Pd基板側には重水素低濃度部112が、各々内部を気密保持可能に形成されている。
重水素高濃度部111は高濃度化手段113を備え、重水素低濃度部112よりも重水素の濃度が高い状態に維持される。

0066

高濃度化手段113は、電圧発生装置115、陽極116、及び、電解溶液供給部117から構成されている。陽極116は白金などとされる。陽極116は、重水素高濃度部111内に、構造体70のPd層側の面と間隔をあけて対向配置されている。電圧発生装置115は、重水素高濃度部111の外に位置し、陽極116と陰極(構造体70)との間に電圧差を与え得る。

0067

電解溶液供給部117は、放射性セシウム抽出装置20の調整部124に接続し、調整部124で調整された放射性セシウムの硝酸塩重水溶液を電解溶液として重水素高濃度部111に供給する。この時、電解溶液供給部117は、窒素(N2)やアルゴン(Ar)などの不活性ガスとともに電解溶液を重水素高濃度部111に供給する。
セシウムの硝酸塩(硝酸セシウム)は電解質であり、重水溶液中では硝酸イオンとして存在する。

0068

ガス排出経路114は、重水素高濃度部111内のガスを外部に排出できるよう逆止弁(<1気圧)を介して重水素高濃度部111に接続されている。

0069

重水素低濃度部112は低濃度化手段を備えている。低濃度化手段は図6では示されていないが、ターボ分子ポンプ及びドライポンプなどの排気装置とされ、真空引きすることで重水素低濃度部112内を重水素高濃度部111よりも重水素圧力が低い状態に維持する。

0070

図6の核種変換部110を用いて、以下の工程により核種変換を実施する。
調整部124で所定濃度に調整された放射性セシウムの硝酸塩重水溶液が、電解溶液供給部117を介して重水素高濃度部111に供給される。硝酸塩重水溶液により、構造体70及び陽極116が硝酸塩重水溶液に浸漬される。

0071

次に、低濃度化手段により重水素低濃度部112内を重水素圧力の低い状態とする。詳細には、真空ポンプを用いて、重水素低濃度部112内を真空状態とし、これを維持する。重水素低濃度部112内の圧力は<0.1Paとされると良い。

0072

次に、電圧発生装置115にて陽極116に電圧を印加し、陽極116と陰極(構造体70)との間に電圧差を発生させる。この時、水の電気分解の閾値(1.23V)以上の電圧差を印加する。これにより、構造体70の表面(Pd層)上で重水(D2O)が電気分解されて、重水素(D2)が発生する。電気分解反応速度等を考慮すると、電圧差は少なくとも1.5V以上とされ、数V〜数十Vの範囲で電気分解が実施される。
重水の電気分解により、重水素高濃度部111内の硝酸塩重水溶液量が減少する。そこで、陽極116及び構造体70の浸漬が確保できるように、電解溶液供給部117から継続的に硝酸塩重水溶液が供給される。

0073

低濃度化工程及び高濃度化工程によって、構造体70の重水素高濃度部111側と重水素低濃度部112側との間に重水素の濃度勾配が生じる。これにより、重水素高濃度部111側の重水素が構造体70を透過し、重水素低濃度部112側へと移動する。この時、構造体70表面の放射性セシウム層中の放射性セシウムが他の安定元素に変換される。
重水素ガスの透過は所定時間、例えば数十〜数百時間とする。核種変換量は重水素の透過時間が長くなるのに伴って増加する傾向がある。

0074

また、硝酸セシウムは電解質であり、水または重水中で放射性セシウムはイオンとして存在する。陽極116と構造体70との電圧差により、セシウムイオンは構造体70に向かって移動する。セシウムイオンが構造体70の陽極116との対向面に接触すると、重水素透過時にセシウムイオンが他の案定元素に核種変換される。

0075

放射性セシウムの硝酸塩重水溶液を電解すれば、当然、重水素高濃度部111における放射性セシウム濃度および重水濃度が高くなる。よって、本実施形態では、核種変換部110が放射性セシウム添加部と一体化していても良い。すなわち、核種変換部110の重水素高濃度部111、電圧発生装置115、陽極116が、図3で説明した放射性セシウム添加部と同じ機能を果たす。こうすることにより、放射性セシウム処理システム101の装置構成を簡略化することが可能である。

0076

この場合、核種変換部110で核種変換を実施する前に(低濃度化手段の作動により重水素が構造体70を透過可能とされる前に)、電圧発生装置115が陽極116と構造体70との間に電圧を印加して、構造体70の表面に放射性セシウムを電着して放射性セシウム層が形成されることにより、放射性セシウムが添加される。その後、上述した工程により核種変換工程が行われる。

0077

以下では、実験例により第1実施形態及び第2実施形態の放射性セシウム処理方法を説明する。
まず、上記実施形態で採用した核種変換工程の実現性について説明する。

0078

〔ガス透過法による核種変換実験〕
ガス透過法によりCsの核種変換を確認する実験を行った。なお、本実験では実験を行う上での安全性を考慮して、133Csを用いた。
(1)構造体の作製
構造体は、Pd基板(25mm×25mm×厚さ0.1mm、純度99.5%以上)をアセトン中で所定時間に亘って超音波洗浄することにより脱脂した。その後、真空中(例えば、1.33×10-5Pa以下)において、例えば900℃の温度で所定時間(例えば、10時間)に亘ってアニール処理を行った。
次に、例えば室温でアニール後のPd基板を重王水により所定時間(例えば、100秒間)に亘ってエッチング処理を施して表面の不純物を除去した。

0079

次に、アルゴンイオンビームによるスパッタリング法を用いて、エッチング処理後のPd基板上に、スパッタリング法によりCaO層とPd層とを交互に形成した。例えば厚さ10nmのCaO層と、厚さ10nmのPd層とを交互に積層し、最上部にPd層を40nmで成膜することにより、構造体を形成した。

0080

(2)Cs添加
本実験ではイオン注入法を用いて、構造体のPd層表面に133Csを添加した。イオン注入は、加速エネルギ:20keV、ドーズ量:1016ions/cm2で行った。

0081

(3)核種変換実験
図7に示す試験装置200内の試料ステージに上記工程により作製した構造体210を配置した。構造体210は、133Cs添加面を吸蔵室(重水素高圧部)201側に向けて配置した。
構造体配置後、バルブV1を開放した状態で、ターボ分子ポンプ204及びロータリーポンプ205を用いて吸蔵室201及び放出室(重水素低圧部)202を1×10−5Pa以下に排気した。構造体210を70℃程度に加熱した。

0082

真空度が十分安定し、構造体210温度が安定した後、バルブV1を閉鎖した。次いで、バルブV2,V3を開放し、重水素タンク203から吸蔵室201に重水素を連続的に供給した。吸蔵室201の圧力は1.013×105Pa(1atm)とした。
重水素ガス導入から150時間経過後に、バルブV2,V3を閉鎖し、バルブV1を開放して、吸蔵室201内の重水素を排気した。その後、ターボ分子ポンプ204及びロータリーポンプ205を停止して、吸蔵室201及び放出室202を大気開放した。大気開放後、構造体210を取出した。

0083

(4)構造体表面の元素分析
核種変換実験前及び実験後の構造体について、SIMS(二次イオン質量分析装置)を用いてPd層側の表面の元素分析を行った。図8は、SIMSスペクトルである。同図において、横軸質量数縦軸はSIMSカウント数である。
実験前の構造体では、質量数133(133Cs)のみが計測された。実験後の構造体では、実験前に比べて質量数133の計測数が減少し、質量数141が計測された。これは、核種変換により133Csが141Prに変換されたことを意味する。
この核種変換では、以下に示す反応が起こっていると考えられる。






なお、図8によると、質量数137(137La、半減期:6万年)も計測されたが、計測数は少なかった。

0084

以上の結果から、構造体を重水素が透過する際に、セシウムが核種変換されて他の安定元素(本実験の場合は141Pr)に変換されることが確認できた。

0085

〔電気分解法による核種変換実験〕
電気分解法によりCsの核種変換を確認する実験を行った。なお、本実験では実験を行う上での安全性を考慮して、133Csを用いた。

0086

(1)構造体の作成
上述したガス透過法と同様の工程で構造体を作製した。

0087

(2)Cs添加
上述したガス透過法と同様の工程及び条件で、構造体のPd層表面に133Csを添加した。

0088

(3)核種変換実験
図9は本実験で用いた試験装置の概略図である。試験装置300は円筒状の容器301を有し、容器301の底部に図3と同様の構造体310を設置した。この時、構造体310のPd基板を容器301底部側に向けて設置した。構造体310を陰極として電源(不図示)に接続した。
容器301内のPd層側の空間に0.1MCsNO3−D2O溶液を入れ、溶液に陽極(白金電極)302を構造体310に対向させて浸漬した。
構造体310を挟んで容器301内部と反対側の空間は、不図示のポンプにより減圧(1×10−5Pa以下)した。構造体310と陽極302との間に4.5Vの電圧を250時間印加し、重水を電気分解した。電気分解後、構造体310を取出した。

0089

(4)構造体表面の元素分析
SIMSを用いてPd層側の表面の元素分析を行った。ここで、構造体の中央部及び端部の2箇所を計測した。図9の試験装置300では、容器底部において壁面が容器の径方向内側に突出している。このため、構造体310の中央では重水素が透過可能であるが、構造体310の端部側では重水素は透過できないようになっている。
図10は、構造体の中央部及び端部でのSIMSスペクトルである。同図において、横軸は質量数、縦軸はカウント数である。構造体中央部では、構造体端部に比べて質量数133(133Cs)のカウント数が減少している。構造体端部では質量数133以外は検出されなかったが、構造体中央部では主として質量数139及び140が検出された。

0090

質量数139及び140となり得る複合物(2つの元素の組み合わせ)はいくつか考えられる。しかしながら、天然存在比を考慮すると、天然に存在する元素の組み合わせで質量数139及び140となるものはない。従って、質量数139及び質量数140は、それぞれ安定元素である139La及び140Ceと推測される。

0091

以上の結果から、構造体を重水素が透過する際に、セシウムが核種変換されて他の安定元素(本実験の場合は139La及び140Ce)に変換されることが確認できた。

0092

以下の実験で、仕事関数が低い物質としてY2O3層を形成した構造体を用いて、核種変換反応の有無を検証した。
CaO層をY2O3層に置換した以外は、上述したガス透過法と同様の工程で構造体を作製した。また、上述したガス透過法と同様の工程及び条件で、構造体のPd層表面に133Csを添加した。

0093

図9の試験装置を用い、核種変換反応を実施した。なお、本実験では0.5MCsNO3−D2O溶液を用いた。
図11は、構造体の中央部及び端部でのXPSスペクトルである。同図において、横軸はエネルギ、縦軸はカウント数である。上述のように、構造体中央部で重水素が透過し、端部側では重水素が透過していない。図11に示すように、構造体中央部でPrのピークが検出されたが、端部では検出されなかった。
以上の結果から、仕事関数が低い物質としてY2O3を適用した場合でも、核種変換が起こることが確認できた。

0094

〔ハロゲン除去の効果の検証〕
本実施形態の放射性セシウム抽出方法におけるハロゲン除去の必要性を、以下の実験により説明する。
図3の構造体(大きさ:25mm×25mm×0.1mm)の表面に、ヨウ素を(a)電着法、(b)イオン注入法により添加した。
(a)電着法の条件
電解溶液:1mM NaI−D2O溶液
電圧:1V
電気分解時間:10秒
ヨウ素添加量:80ng/cm2
(b)イオン注入法
加速エネルギ:18keV
注入量:1.0×1014ions/cm2

0095

電着法及びイオン注入法の各々でヨウ素を添加した構造体のPd層表面に、電着により核種変換物質として133Csを添加した。

0096

ヨウ素を添加した構造体を重水素高圧部と重水素低圧部との間に設置した。重水素高圧部に、重水素ガスを圧力1.01325×105Paとなるように供給した。重水素低圧部は、圧力が1×10−4Paとなるように真空ポンプで排気した。
表1に、各構造体を透過した重水素量を示す。重水素透過量をマスフローコントローラーで流量構成した真空ゲージで計測した。



本実験の条件で核種変換を発生させるには、重水素透過量は1sccm必要である。上記結果から、ヨウ素により重水素の透過が阻害されることが確認できた。

0097

〔放射性セシウムの抽出及び核種変換実験〕
第1実施形態で説明した放射性セシウム処理方法の実証実験を以下で説明する。

0098

[1]137Csの抽出
本実験では、固体物に吸着した137Csの硝酸による抽出可否を検討した。
(1)イオン交換樹脂への吸着
イオン交換樹脂(三菱樹脂株式会社製)1ccを図12に示すガラス管に充填した。ガラス管の先端にグラスウールが詰められているが、これはイオン交換樹脂がガラス管から吐出するのを防止するためである。
イオン交換樹脂を充填したガラス管に、1N塩酸を1cc注入し、イオン交換樹脂を洗浄した。この操作を2回繰り返した。
次いで、ガラス管に1N硝酸を1cc注入し、イオン交換樹脂を洗浄した。この操作を8回繰り返した。
次いで、ガラス管に純水を1cc注入し、イオン交換樹脂を洗浄した。この操作を10回繰り返した。
ガラス管に、137Cs試薬溶液(0.1N塩酸溶液、1.85MBq)を0.5cc注入した。その後、ガラス管に純水を0.1ccずつ計3回注入する操作を行った。
137Cs試薬溶液の注入及びその後の純粋の注入で、ガラス管下部にビーカーを設置してイオン交換樹脂を通過した液体を回収した。Ge計測器により回収された液体の137Cs放射能を計測したが、検出されなかった。

0099

(2)137Csの抽出
FA製容器をガラス管の下に設置した。137Cs吸着イオン交換樹脂が充填されたガラス管に、1N硝酸を1cc注入した。この操作を5回繰り返した。ガラス管を通過した液体は、PFA製容器で回収した。
ポータブル放射線計測器により回収された液体の137Cs放射能を計測したところ、検出限界以下であった。

0100

[2]放射性セシウムの濃縮
ホットプレート最高温度50℃)上にアルミ板を設置し、その上にPFA製容器を固定した。
アルミ板の上にガラスベルジャーを設置し、ロータリーポンプを用いてベルジャー内を排気した。排気後2kPa(15Torr)まではバルブを半開として、PFA製容器内の液体の飛散防止を図った。2kPa未満になった後で、バルブを全開にし、2時間真空乾燥を実施した。

0101

[3]硝酸塩重水溶液の調整
PFA製容器内に重水0.5ccを入れた。容器に蓋をし、容器内壁面に付着したCsNO3(137Csの硝酸塩)を溶解させた。このときのCsNO3濃度は1mMであった。

0102

[4]構造体への137Cs添加
(1)構造体の作製
〔ガス透過法による核種変換実験〕で説明した工程と同様にして、図3と同じ構成の構造体を作製した。

0103

(2)137Cs添加
図13に137Csの添加に用いた装置の概略図を示す。セシウム添加装置400では、構造体410がSUS製ホルダ401上に設置される。この時、Pd基板をSUS製ホルダ401に接触させて配置する。SUS製ホルダ401が陰極として電源(不図示)に接続される。
構造体410上にテフロン製ホルダ402が載置され、SUS製ホルダ401及びテフロン製ホルダ402により構造体410が固定される。このテフロン製ホルダ402は、中央部に構造体410よりも小さい開口部403を有している。テフロン製ホルダ402と構造体410との接触により、開口部403は液密とされている。

0104

開口部403に上記で調整されたセシウム硝酸塩重水溶液を入れた。その後、陽極(白金電極)404を硝酸塩重水溶液の液面に接触させて固定した。陽極404は電源(不図示)に接続される。
電源により陽極404と構造体410との間に1.0Vの電位差を20秒間与えて電着を行い、Pd層上に放射性セシウム(137Cs)層を形成した。この際、電流計にて電流値モニタリングした。
電着後、溶液をピペット吸出し回収した。

0105

構造体410をホルダから取り外し、大気中で5〜10分程度乾燥させた。その後、構造体410を超純水50ccに10秒浸漬した。これにより、表面に残留するCsNO3を除去した。その後、構造体410を大気中で5〜10分程度乾燥させた。
上記工程により作製した構造体410を、図14に示すようにアクリル製容器420内にCs層を上側にして収容した。この状態で、Ge計測器により137Csの放射能を計測した。

0106

[5]ガス透過法による核種変換実験
上記工程により作製した構造体を用いて、図7の試験装置を用いてガス透過法により137Csの核種変換実験を行った。実験は〔ガス透過法による核種変換実験〕の(3)で説明した条件で行った。
放射性セシウム添加装置400から取り出した構造体は、図14の容器420内に収容した。この状態で、Ge計測器により137Csの放射能を計測した。

0107

図15に、核種変換実験前後での137Csの放射能測定結果を示す。同図において、横軸は試料番号、縦軸は放射能量である。上記実験は、計12サンプルについて実施した。図15における初期値実線は実験前の放射能量の平均値を示しており、初期値の点線は平均値からのばらつきを示している。実験前の放射能量の平均値は567Bqであった。実験後の放射能量の平均値は521Bqであり、実験前から8.1%減少した。

0108

実験後の吸蔵室201内、放出室202内、及び試料ステージ周辺スミア法により検査した結果、137Csは未検出だった。すなわち、装置内への137Csの飛散はなかったことが確認された。
試験装置200ではターボ分子ポンプ204とロータリーポンプ205との間にモレキュラーシーブス220を設置した。実験後のモレキュラーシーブス220及びロータリーポンプ205のオイルを、Ge検出器を用いて137Csのγ線計測を実施した。その結果、いずれも検出限界以下であった。すなわち、排気系への137Cs飛散はなかったことが確認された。

0109

以上の結果から、実験後の放射能量の減少は、137Csが核種変換されたことが確認できた。放射線量が減少していることから、137Csは安定核種に変換された。

0110

なお、本願発明者らは第2実施形態で記載されている核種変換装置及び核種変換方法によっても、137Csが安定核種に変換されたことを確認している。

0111

なお、上記実施形態では、バルクのPd基板上に、CaO層とPd層とが交互に積層された構成の構造体に放射性セシウムを添加して核種変換させているが、このような反応は、例えば、他の文献(Hioki, T.et al.,Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry Study on the Increase in the Amount of Pr Atoms for Cs−Ion−Implanted Pd/CaO Multilayer Complex with Deuterium Permeation,Jpn.J.Appl.Phys.,52(2013) 107301)などでもその存在が確認されている。

0112

Jpn.J.Appl.Physは、査読つきの雑誌であるから、それに掲載された内容は信頼できるものである。上記文献の図7では、細かく実験条件を設定した様々な対照実験を実施した結果、CaO/Pdを交互に積層した構造体を有し、重水素を透過した場合においてのみ、有意なPrの生成が確認できることが示されている。上記文献の図7によれば、Csを添加しなかった構造体に重水素を透過させたサンプル(#4,5,6)、Csを添加した構造体に水素を透過したサンプル(#7,8)、Csの添加の有無に関わらず構造体に重水素も水素も透過させなかったサンプル(#9〜21)では、Prが1×1011cm−2以下しか検出されなかったのに対し、Csを添加した構造体に重水素を透過したサンプル(#1,2,3)では、Prが平均で1.6×1012cm−2検出されている。この結果は、Pd板上にCaOとPdを交互に積層した構造体にCsを添加し、該構造体に重水素を透過することで、Prが生成されること、および、核種変換された物質(Pr)の検出がバックグラウンド、汚染、環境からの侵入検出器電圧変動温度変動等による影響を原因とするノイズではないことを証明している。

0113

また、第1実施形態のガス透過法では、重水素ガス(D2)を直接供給するのに対し、第2実施形態の電気化学的手法では構造体を陰極として重水を電気分解した際に発生する重水素ガスを透過させる。重水素の供給手段が異なるが、構造体に重水素を透過させ、変換反応を起こすという基本的な原理は同じあるから、ガス透過法を電気化学的手法に替えたとしても、核種変換反応が同様に生じることは当業者にとって当然理解できることである。

0114

1,101放射性セシウム処理システム
10,110核種変換部
11重水素高圧部
12 重水素低圧部
13 重水素ボンベ
14真空ポンプ
20,120 放射性セシウム抽出装置
21ハロゲン除去部
22 抽出部
23濃縮部
24 調整部
25 冷却部
30 放射性セシウム添加部
31容器
32電源
33,116陽極
40 処理部
50セシウム吸着装置
60エアフィルタ
70構造体
71 Pd基板
72CaO層
73Pd層
111 重水素高濃度部
112 重水素低濃度部
113高濃度化手段
114ガス排出経路
115電圧発生装置
117電解溶液供給部

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