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技術 微小球共振センサーの高感度検出方法および装置

出願人 長崎県
発明者 田尻健志
出願日 2016年3月14日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-049128
公開日 2017年9月21日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-166825
状態 特許登録済
技術分野 微生物・酵素関連装置 光学的手段による材料の調査、分析 酵素、微生物を含む測定、試験
主要キーワード 凹形状面 再放射光 凹状形状 汚染指標 検出下限濃度 平面状基板 ウィスパリングギャラリーモード 本発明手法
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年9月21日)のものです。
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図面 (7)

課題

ウィスパリングギャラリーモード(以下WGM略称)の基板側への放射を抑えることで、共振ピーク波長減衰スプリット現象を無くし、さらには、微小球の移動を抑えることにより、共振ピーク波長の変化を高感度かつ高精度に検出する方法および装置を提供する。

解決手段

平面状基板7にもうけた凹溝11の上に微小球を配置させ、その凹溝から染み出したエバネセント光2によりWGMを共振し、微小球の散乱光スペクトルから共振ピーク波長の変化を検出する。光源からの照射光を微小球径以下に集光しエバネセント光を発生できる励起用対物レンズと、微小球からの散乱光スペクトルを検出できる検出用対物レンズを備えWGM共振ピーク波長を検出できる分解能を有する分光器を用いることで、対象溶液中の微生物汚染を検出する。

概要

背景

食品業界にとって食中毒などの食の安全・安心脅かす事故は、企業のブランド信用失墜させることにつながるため、衛生管理体制の高度化が望まれている。
食品検査において微生物の検査は、簡便、正確、迅速に行なわれる必要があるが、従来の検査手法である培養法は、増菌培養し判定するまでに24時間以上は必要で、かつ、熟練者による作業が必要となる。そのため、簡便で迅速に高感度検出が可能なセンサー、並びに、それらに最適な検出方法と装置の開発が望まれていた。

近年、迅速検査手法としてイムノクロマト法ELISA法、DNA検査法PCR法免疫磁気ビーズ法などによる研究や開発が進められているが、中でも抗原‐抗体反応を用いた免疫学的検査法は特異性、迅速性、簡便性等の点で優れているため、迅速検出方法(例えば、特許文献1〜2参照)として期待され開発が行われている。

特許文献1には、標的微生物特異的抗体を用いて標的微生物を分離・回収した後、標的微生物のATP増幅し、増幅されたATPを測定する高感度迅速検出法公開されている。

しかし、これらの方法は検出感度判定精度が十分でないため増菌培養が必要となり、一般的な検査結果を得るまでは8時間以上を要している。そのため、食品製造業者にとっては、検査結果を待った出荷、あるいは、自主回収リスクを抱えた出荷となっている。

特許文献2には、微生物の構成成分と結合する抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕捉し、更に、捕捉し洗浄された微生物から抽出されたDNAをPCR法により増幅した検出方法が公開されているが、これらの方法も抽出や増幅などの高度な技術が必要となり、簡易かつ安価に検査結果を得ることは難しい。

このような課題を解決する手法として、単一の共振器内にプローブ光入射循環させる光学モードを利用したバイオセンサーが提供される。この光学共振モードおよび共振は、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)、または、形態依存共振(MDR)と呼ばれ、プローブ光で入射した光が共振器の境界面で全反射閉じ込められた場合に発生する。

WGMは表面の状態に非常に敏感であるために、微小回転楕円体の表面に標的分析物と結合する結合パートナーを固定化し、WGMのプロファイルピークを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。また、検体溶液検出器表面を流れ過ぎる前に、導波路と結合した光学微小共振器を含めることで、検出される信号光の割合を増加させるバイオセンサー(例えば、特許文献5参照)、および、光導波基板上に複数の微小光共振体を配置したセンシング装置(例えば、特許文献6参照)や、対物レンズを利用した全反射減衰配置による検出手法(例えば、特許文献7参照)が提案されている。

しかしながら、これらのWGMの共振ピーク波長シフトを検出するには、高分解能を要する検出器が必要となり、また測定時の迷光を拾い易いために測定誤差波長シフトの判定ができないという問題もある。さらには、基板上に配置された微小球のWGMは様々な方向に周回し、微小球の表面状態に非常に敏感であるため、共振ピーク波長のシフト量から、微小球表面の付着物の厚みと屈折率を算出する手法(例えば、非特許文献1参照)では、検出される共振ピーク波長のS/N比の向上やスプリット現象(例えば、非特許文献2参照)の影響を少なくする必要がある。

したがって、高価な測定装置を用いることなく、迅速で簡便な測定方法と測定装置を開発するため、共振ピーク波長のS/N比とシフト精度を向上した検出方法および装置が望まれている。

概要

ウィスパリングギャラリーモード(以下WGMと略称)の基板側への放射を抑えることで、共振ピーク波長の減衰やスプリット現象を無くし、さらには、微小球の移動を抑えることにより、共振ピーク波長の変化を高感度かつ高精度に検出する方法および装置を提供する。平面状基板7にもうけた凹溝11の上に微小球を配置させ、その凹溝から染み出したエバネセント光2によりWGMを共振し、微小球の散乱光スペクトルから共振ピーク波長の変化を検出する。光源からの照射光を微小球径以下に集光しエバネセント光を発生できる励起用対物レンズと、微小球からの散乱光スペクトルを検出できる検出用対物レンズを備えWGM共振ピーク波長を検出できる分解能を有する分光器を用いることで、対象溶液中の微生物汚染を検出する。

目的

食品業界にとって食中毒などの食の安全・安心を脅かす事故は、企業のブランドと信用を失墜させることにつながるため、衛生管理体制の高度化が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

基板上に微小球を配置し、基板から染み出したエバネセント光により微小球表面に励起されるウィスパリングギャラリーモード共振し、微小球の散乱光を検出する方法および装置であって、前記基板と微小球のウィスパリングギャラリーモードの軌道が接触しないように基板上に微小球を配置することを特徴とする散乱光の検出方法および装置。

請求項2

溝が形成された基板上に微小球を配置することを特徴とする請求項1記載の散乱光の検出方法および装置。

請求項3

溝が微小球径よりも幅狭に形成され、該溝上に配置された微小球のズレを抑制することを特徴とする請求項2記載の散乱光の検出方法および装置。

請求項4

光源からの照射光を微小球径以下に集光しエバネセント光を発生できる励起用対物レンズと、微小球からの散乱光スペクトルを検出できる検出用対物レンズを備えウィスパリングギャラリーモードの共振ピーク波長を検出できる分解能を有する分光器を備えた微小球共振センサーを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の散乱光の検出方法および装置。

請求項5

請求項1〜4のいずれか記載の散乱光の検出方法を用いた対象溶液中の微生物汚染の検出方法および装置であって、抗体が固定化された微小球、および、抗体が固定化された微小球に溶液を接触させた微小球のウィスパリングギャラリーモードの共振ピーク波長を検出し、その共振ピーク波長の変化を検出することを特徴とする対象溶液中の微生物汚染の検出方法および装置。

技術分野

0001

本発明は、食品検査分野での微生物検査係り、特に単一の微小球を使用したウィスパリングギャラリーモード(WGM)に基づく迅速および高感度で高精度な検出方法および装置に関するものである。

背景技術

0002

食品業界にとって食中毒などの食の安全・安心脅かす事故は、企業のブランド信用失墜させることにつながるため、衛生管理体制の高度化が望まれている。
食品検査において微生物の検査は、簡便、正確、迅速に行なわれる必要があるが、従来の検査手法である培養法は、増菌培養し判定するまでに24時間以上は必要で、かつ、熟練者による作業が必要となる。そのため、簡便で迅速に高感度検出が可能なセンサー、並びに、それらに最適な検出方法と装置の開発が望まれていた。

0003

近年、迅速検査手法としてイムノクロマト法ELISA法、DNA検査法PCR法免疫磁気ビーズ法などによる研究や開発が進められているが、中でも抗原‐抗体反応を用いた免疫学的検査法は特異性、迅速性、簡便性等の点で優れているため、迅速検出方法(例えば、特許文献1〜2参照)として期待され開発が行われている。

0004

特許文献1には、標的微生物特異的抗体を用いて標的微生物を分離・回収した後、標的微生物のATP増幅し、増幅されたATPを測定する高感度迅速検出法公開されている。

0005

しかし、これらの方法は検出感度判定精度が十分でないため増菌培養が必要となり、一般的な検査結果を得るまでは8時間以上を要している。そのため、食品製造業者にとっては、検査結果を待った出荷、あるいは、自主回収リスクを抱えた出荷となっている。

0006

特許文献2には、微生物の構成成分と結合する抗体を固定化した捕捉体を用いて微生物を捕捉し、更に、捕捉し洗浄された微生物から抽出されたDNAをPCR法により増幅した検出方法が公開されているが、これらの方法も抽出や増幅などの高度な技術が必要となり、簡易かつ安価に検査結果を得ることは難しい。

0007

このような課題を解決する手法として、単一の共振器内にプローブ光入射循環させる光学モードを利用したバイオセンサーが提供される。この光学共振モードおよび共振は、ウィスパリングギャラリーモード(WGM)、または、形態依存共振(MDR)と呼ばれ、プローブ光で入射した光が共振器の境界面で全反射閉じ込められた場合に発生する。

0008

WGMは表面の状態に非常に敏感であるために、微小回転楕円体の表面に標的分析物と結合する結合パートナーを固定化し、WGMのプロファイルピークを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。また、検体溶液検出器表面を流れ過ぎる前に、導波路と結合した光学微小共振器を含めることで、検出される信号光の割合を増加させるバイオセンサー(例えば、特許文献5参照)、および、光導波基板上に複数の微小光共振体を配置したセンシング装置(例えば、特許文献6参照)や、対物レンズを利用した全反射減衰配置による検出手法(例えば、特許文献7参照)が提案されている。

0009

しかしながら、これらのWGMの共振ピーク波長シフトを検出するには、高分解能を要する検出器が必要となり、また測定時の迷光を拾い易いために測定誤差波長シフトの判定ができないという問題もある。さらには、基板上に配置された微小球のWGMは様々な方向に周回し、微小球の表面状態に非常に敏感であるため、共振ピーク波長のシフト量から、微小球表面の付着物の厚みと屈折率を算出する手法(例えば、非特許文献1参照)では、検出される共振ピーク波長のS/N比の向上やスプリット現象(例えば、非特許文献2参照)の影響を少なくする必要がある。

0010

したがって、高価な測定装置を用いることなく、迅速で簡便な測定方法と測定装置を開発するため、共振ピーク波長のS/N比とシフト精度を向上した検出方法および装置が望まれている。

0011

特開2006−81506号公報
特開2007−97551号公報
特開2012−137490号公報
特表2012−509070号公報
特表2008−513776号公報
特開2013−96707号公報
特開2014−178151号公報

先行技術

0012

Anal. Sci., Vol. 30, pp. 799-804, 2014
IEEE Sensors 2014 Conf. Proc., pp. 641-644, 2014

発明が解決しようとする課題

0013

抗原抗体反応した微小球のWGMは、基板との接触面積が増加するため、基板側へ光が放射され、微小球の散乱光スペクトルから検出される共振ピーク波長は、S/N比が減衰してしまう。また、微小球表面を周回する光の軌道が変化してしまうため、TE偏光TM偏光に対応したスプリットピークが同時に発生する問題が生じていた。この共振ピーク波長のスプリット間隔とシフト量は同程度であるため、共振ピーク波長から検出するシフト量は精度が低くなる。また、検出で使用する照射光温度変化によって、検出中の微小球が移動する問題も生じていた。

0014

よって、本発明は、前述した従来の検出方法の場合に生じる課題を解決するために、共振ピーク波長の減衰やスプリット現象を無くし、さらには、微小球の移動を抑えることにより、共振ピーク波長の変化を高感度かつ高精度に検出する方法および装置を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0015

このような目的を達成するために、本発明は第一に、基板上に微小球を配置し、基板から染み出したエバネセント光により微小球表面に励起されるウィスパリングギャラリーモードを共振し、微小球の散乱光を検出する方法および装置であって、前記基板と微小球のウィスパリングギャラリーモードの軌道が接触しないように基板上に微小球を配置することを特徴とする散乱光の検出方法および装置を提供する。

0016

散乱光の検出方法および装置は、溝が形成された基板上に微小球を配置することを特徴とし、溝が微小球径よりも幅狭に形成することで、該溝上に配置された微小球のズレを抑制することができる。微小球表面のウィスパリングギャラリーモードの軌道が基板と非接触状態であるため、微小球表面の付着物の増加による影響を受けないセンサーチップが作製できる。

0017

上記の散乱光の検出方法および装置は、光源からの照射光を微小球径以下に集光しエバネセント光を発生できる励起用対物レンズと、微小球からの散乱光スペクトルを検出できる検出用対物レンズを備えウィスパリングギャラリーモードの共振ピーク波長を検出できる分解能を有する分光器を備えた微小球共振センサーを用いることが望ましい。

0018

また、本発明は第二に、上記の散乱光の検出方法を用いた対象溶液中の微生物汚染の検出方法および装置であって、抗体が固定化された微小球、および、抗体が固定化された微小球に溶液を接触させた微小球のウィスパリングギャラリーモードの共振ピーク波長を検出し、その共振ピーク波長の変化を検出することを特徴とする対象溶液中の微生物汚染の検出方法および装置を提供する。

0019

共振ピーク波長の変化を高感度かつ高精度に検出する方法および装置を提供し、迅速簡便に目的の微生物汚染を検出する安価な微小球共振センサーを使用する微生物汚染の検出装置を作製することが可能となる。

発明の効果

0020

本発明にかかる微小球共振センサーを使用する微生物汚染の検出方法および装置は、単一の微小球により感度の増幅を行うため、検査工程において培養法を利用する必要がない。また、切削した凹形状の溝から切削方向にエバネセント光を微小球表面に作用させるだけで、共振ピーク波長の減衰やスプリット現象を抑えることができるため、抗原抗体反応による共振ピーク波長のS/N比とシフト精度を向上し、微量な標的物質の評価が可能となる。すなわち、本発明手法を利用することで、標的とする微生物汚染を高感度で高精度に判定することが可能となり、使い捨て用の安価なセンサーチップや安価な小型装置の開発も可能となる。

0021

また、この発明は、食品分野をはじめ、環境や、医療など微生物検査が必要な分野において、バイオセンサー、化学センサーマイクロ流路などの簡便、迅速、安価な検査判定として利用することが可能となる。

図面の簡単な説明

0022

(a)は、平面状基板上の微小球をエバネセント光で励起し表面を周回するWGMの模式図であり、(b)は、抗原抗体反応後のWGMと再放射光を示す模式図である。
Mie散乱理論より算出した微小球の表面状態におけるWGMの共振ピーク波長を示すグラフである。
(a)は、平面状基板の凹状溝上に固定された微小球のWGMを示す模式図であり、(b)は、平面状基板の凹状溝に固定された微小球表面の抗原抗体反応を示す断面図である。
本発明の微小球の励起と観測、および、散乱光の検出を示す概略図である。
平面状基板への凹状溝が有無の場合における抗原抗体反応後のWGMの共振ピーク波長を示すグラフである。
微生物汚染の検出方法および装置の実施例を示す図である。

0023

本発明において、標的の微生物汚染は大腸菌群とし、大腸菌群が産生する酵素βガラクトシダーゼを検出する。平面状基板にもうけた凹形状の上に微小球を配置し、高感度・高精度に散乱光を検出する方法を説明する。以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

0024

図1(a)に示すように、マイクロキャビティー共振器として真球性のあるポリスチレンの微小球1、または、蛍光ポリスチレンの微小球1を用いる。入射光3が平面状基板7の裏面から入射し表面で全反射した時に発生するエバネセント光2により微小球表面が励起され、微小球表面内に光を閉じ込め循環するWGMが発生する。このとき、微小球表面から発する散乱光からは、WGMに起因した周期的な共振ピーク波長を有するスペクトルが検出される。この共振ピーク波長は、微小球の直径や屈折率、微小球周辺の状態などにより非常に敏感であるため、微小球1の表面を利用した高感度なセンサーを作製することができる。表面修飾が無い微小球1は、平面状基板7との接触部4が少ないため、-X方向に運動量を有するエバネセント光2が作用すると、主にXZ平面を時計回りに周回する励起方向WGM5が励起される。同時に斜め方向WGM6も励起されるが、励起方向WGM5の成分が大きいため、散乱光は励起方向WGM5に起因した共振ピーク波長が取得される。

0025

図1(b)は抗原抗体反応後の微小球表面を周回するWGMの状態を示す。微小球1に標的酵素9と反応する抗体8を固定化することで微生物汚染の判定が可能となる。エバネセント光などにより励起され、微小球1の表面内に光を閉じ込め循環するWGMにより、微小球1の表面から散乱光が発せられ、周期的な波長のスペクトルが形成される。抗原抗体反応により共振条件の変化が発生するため、WGMの共振波長シフト変化から、目的とする検出物質の評価が可能となる。この評価手法は、単一の微小球をバイオプローブとして利用するためセンサーチップが安価に作製でき、また使い捨ても可能となる。また、汚染されたセンサーを再利用しないために食品検査において安全安心な検査方法として提供できる。

0026

しかし、図1(b)は抗原抗体反応により、微小球表面と平面状基板7との接触部4が増加するため、XZ平面を周回する励起方向WGM5は、基板との相互作用が大きくなる。そのため、WGMが微小球の上方へ散乱光されるよりも、平面状基板7と接触部4からの再放射光10が大きくなる。一方で、斜め方向WGM6は平面状基板7と接触部4の影響を受けないため、微小球1からの散乱光は、微小球表面を斜め方向WGM6に起因した共振ピーク波長が主に取得され、TE偏光とTM偏光に対応した共振ピーク波長が同時に発生しやすい。

0027

図2は、ポリスチレン微小球(以下PS微小球と略称)の表面状態における散乱断面積スペクトルを示す。無修飾のPS微小球の直径と屈折率を10.04μmと1.59、純水の屈折率を1.33とし、PS微小球表面に抗体(anti-β-Galactosidase)や抗原吸着していくと、微小球表面を周回するWGMの共振ピーク波長は長波長側へシフトすることがわかる。ここでは、PS微小球表面に抗体「Y」が単一層になって固定化されているとし、抗原抗体層の屈折率は1.50、抗体厚みは14nm、抗原厚みは16nmとして計算している。PS微小球表面に抗体や抗原が吸着すると、共振ピーク波長が約1〜4nm長波長側へシフトするため、表面に付着するタンパク質の屈折率や厚みを推定するには、TE偏光とTM偏光に対応した共振ピーク波長を高感度かつ高精度に評価することが望ましい。

0028

そこで本発明では、図3(a)に示すように、平面状基板7に先端直径5μmのプローブ凹状形状溝11を切削し、微小球1を配置できるセンサーチップを考案した。全反射減衰配置により凹形状面から染み出したエバネセント光2が、XZ平面を周回する励起方向WGM5を励起しても、図3(b)に示すように、微小球表面に吸着した抗体8と標的酵素9は凹状形状溝11にあるため、平面状基板7との接触部4の影響を受けることがない。このため、接触部4からの再放射光10が減少し、S/N比が向上すると同時に共振ピーク波長のスプリットも抑えられるため、高感度かつ高精度に評価することが可能となる。さらには、凹状形状溝11に微小球1を固定化できるため、入射光3の温度上昇によって生じる微小球1の移動を抑えることも可能となる。

0029

図4は本発明の微小球1の励起と観測、および、散乱光の検出を示す概略図を示す。励起用光源12には白色光源を用い、偏光子13によってTE偏光とTM偏光の励起方向の切替え、反射ミラー14によって倒立型の励起用対物レンズ15へ入射光3を照射させる。微小球1は、ディッシュ底面に貼りつけた平面状基板7に滴下し配置させる。入射光3は大きな開口数(NA)を持つ励起用対物レンズ15により入射するため、平面状基板7への入射光3の角度は全反射角度以上となり、平面状基板7の表面上に局在波であるエバネセント光2が発生する。励起用対物レンズ15と平面状基板7の間をイマージョンオイル16で満たして、焦点が微小球1に合うようにするために、平面状基板7の厚みは170μm以下であることが望ましい。大きな開口数(NA)を持つ励起用対物レンズ15を用いることで、入射光3のスポット径は微小球1の直径以下となり、微小球1以外からの迷光を検出せず、高いS/N比で検出が可能となった。また、標的酵素9を滴下した検出部を封止ガラス17で被うことで、溶液の蒸発厚みムラを抑えることが可能となり、高精度なスペクトルの検出が可能となった。微小球1からの散乱光は上部に取り付けられた検出用レンズ18により集光し、X軸移動ミラー19によりCCDカメラ20の観測と分光器21のスペクトル検出に切替えながら評価する。

0030

図5に示すように、凹状形状溝11がない平面状基板7の上で抗原抗体反応をした微小球1の散乱光を検出すると、TE偏光励起にも関わらず、TM偏光にも対応した共振ピーク波長が検出され易い。しかし、凹状形状溝11を加工した上で微小球1を励起すると、偏光方向に対応した共振ピーク波長しか検出されず、シフト量を精度良く見積もることができる。また、平面状基板7の接触部4からの再放射光10が少なくなるため、共振ピーク波長の強度が約2倍となり、S/N比を向上することができる。なお、分光器21で検出した散乱光は、共振ピーク波長が約1〜4nm長波長側へシフトするため、分光器の分解能は1nm以下であることが望ましい。

0031

図6は、微生物汚染の検出方法および装置の実施例を示している。WGM光検出部22から取得した散乱光は光ファイバー23で導光され、分光器21で検出される。分光器21により光信号から変換された電気信号は、波長変化検出部24により共振ピーク波長の変化量が算出され、微生物汚染判定部25により微小球1の表面に標的の汚染物質が結合したことを判定できる。

0032

以下実証実験の状況を説明する。

0033

(1)目的とする酵素
大腸菌群は食品の衛生分野において、汚染指標菌として広く用いられている。大腸菌群が糖を分解する時に産生する酵素の一種のβ-D-ガラクトシダーゼ和光純薬工業社製)を使用した。

0034

(2)抗体
目的とするβガラクトシダーゼ(β-galactosidase)と反応するためにRabbitIgGポリクロナール抗体医学生物学研究所社製)を使用した。

0035

(3)使用する照射光
使用した励起用光源12は、Technology社の白色光源(170〜2100nm)を使用した。シグマ光機社製の偏光子13(グラントソンプリズム)を90°回転することにより、ランダム偏光からTEまたはTMの偏光方向を選択した。また、タンパク質がダメージを受ける紫外光や、照射部の温度が上昇する赤外光は、シグマ光機社製のシャープカットフィルターコールドフィルターを使用し、主に500〜600nmの波長域で評価を実施した。

0036

(4)平面状基板の切削方法
平面状基板7への凹状形状溝11の切削は、マイクロサポート社のハードメタル製のプローブ(先端直径5μm)を使用した。ナリシゲ製の三次元液圧マイクロマニピュレータ(最小駆動距離1μm)に組み合わせ操作することで、線幅が5μm以下の凹状形状溝11を作製した。

0037

(5)微小球プローブの作製と評価方法
直径10μmのカルボキシル基が修飾されたPS微小球(micromod社製)を2回洗浄した後、水溶性カルボジイミド(Polysciences社製)によりカルボキシル基を活性化させ、抗体を微小球の表面に固定化した。60分間程度反応した後、遠心分離機上澄み部を取り除くことで抗体が固定化した微小球を含む溶液を作製した。

0038

作製した微小球は、図4ガラスベースディッシュ(Iwaki社製)の底面に貼りつけた平面状基板7の上に配置し、100μl程度同量のβ-D-ガラクトシダーゼを滴下する。封止ガラス17で検出部を被い白色光源で微小球を励起し、570〜600nmの波長領域で散乱光スペクトルを検出した。

0039

β-D-ガラクトシダーゼを滴下し15分間反応させた後、散乱光スペクトルの中に微小球の表面状態を反映した光共振反応を示すWGMの共振ピーク波長を検出できた。共振ピーク波長の位置は、TE偏光の共振ピーク波長がTM偏光の共振ピーク波長より2〜3nm長波長側に取得できる。

0040

検出した共振ピーク波長は、図2のグラフで示したMie理論による散乱断面積とフィッティングすることで付着物の屈折率や厚みが見積れ、抗体や抗原の仕様とも一致した。図5のグラフに示すように、凹状形状溝11の上で抗原抗体反応をした微小球1を励起し散乱光を検出すると、スプリット現象を抑えた共振ピーク波長が検出できる。さらには、平面状基板7の接触部4からの再放射光10を抑えることができるため、散乱光から検出される共振ピーク波長の強度は約2倍となり、S/N比を向上することができた。

0041

図6の波長変化検出部24により、抗原抗体反応の前後で共振ピーク波長は約1〜4nm長波長側へシフトする。分光器21の波長分解能を1nmに設定し、微生物検出判定部18により微生物汚染を判定すると、判定時間は8分、検出下限濃度は5μg/mLとなる。

実施例

0042

上記に述べたように、本発明によって、高精度で高感度な微小球センサーの検出手法を用いることで迅速に微生物を検出できる装置を提供することが可能となった。

0043

本発明は、微生物の検査が必要な食品分野における検査方法に関するものであるが、環境衛生分野、医薬品分野等での利用も可能であり、分野において、バイオセンサー、化学センサー、マイクロ流路などの簡便、迅速、安価な検査判定として利用することが可能となる。さらには、高価な検出装置等を用いることなく、高感度で高精度、しかも低コスト検査チップを実現できる微小球共振センサーを使用する微生物検査を提供することができる。

0044

1微小球
2エバネセント光
3入射光
4 接触部
5励起方向WGM
6 斜め方向WGM
7平面状基板
8 抗体
9標的酵素
10再放射光
11凹状形状溝
12励起用光源
13偏光子
14反射ミラー
15 励起用対物レンズ
16イマージョンオイル
17封止ガラス
18検出用レンズ
19 X軸移動ミラー
20CCDカメラ
21分光器
22 WGM光検出部
23光ファイバー
24波長変化検出部
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