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技術 磁気浮上式真空ポンプ

出願人 株式会社島津製作所
発明者 小崎純一郎
出願日 2016年3月18日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2016-054980
公開日 2017年9月21日 (3年3ヶ月経過) 公開番号 2017-166458
状態 特許登録済
技術分野 その他の軸受(磁気軸受、静圧軸受等) 非容積形送風機
主要キーワード ADサンプリング デジタル制御器 振幅低減 高分解能領域 定常応答 分解能領域 デジタル演算器 センサキャリア
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年9月21日)のものです。
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図面 (20)

課題

振動磁気軸受真空ポンプの提供。

解決手段

変位変調波信号分解能倍率K(ただし、K>1)で増幅した信号に基づいて、所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を生成する第1変位信号生成部としての処理系Aと、変位変調波信号の差分信号に基づいて、第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を生成する第2変位信号生成部としての処理系Bと、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)または通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から定常応答振れ回り変位の成分を除いた信号ux1(t),uy1(t)に基づいて、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t) および通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)のいずれか一方を選択する切替制御部408と、切替制御部408で選択された変位信号に基づいて磁気軸受を制御するPID制御部412と、を備える。

概要

背景

制御形磁気軸受タイプの真空ポンプにおいては、ロータ部品ステータ部品と非接触にて高速回転運動される。そのような真空ポンプでは、最小隙間となる部位であるタッチダウンベアリング非常用メカニカルベアリング)においても、100μm程度の隙間を有している。そのため、接触式ボールベアリングタイプに比べて、ロータアンバランス修正の追いこみ基準を緩和できるという特徴がある。

ところで、ロータアンバランスがあると、そのロータアンバランスによってラジアル方向に振れ回り変位が発生し、また、ラジアル方向に振れ回りに起因してアキシャル方向においても振動変位が発生することがある。これらは回転速度の周波数成分(あるいは、その高調波成分)の定常応答であり、軸受非接触型接触型かに関係なく、軸受のバネ剛性を介してステータ側ロータ軸変位に応じた反力として伝達され、それに伴い騒音も発生する。

また、アンバランス以外にも、メカニカルラインアウトエレクトリカルラインアウトと呼ばれる部材の傷や磁気特性むらによって、同様の定常応答が生じることが知られている。

一般に、ロータ軸変位は、アンバランス等に伴う定常応答成分と、それ以外の成分とで表される。それ以外の成分としては、主に外乱力による一過性の変位などの自由振動に起因するものであるが、一過性の変位が収束した状態においてもステータ側の振動要因となるセンシングに伴う微小ノイズ成分が含まれている。ノイズ成分としては、軸受電流を供給する励磁アンプのPWMスイッチングに伴うスパイク状電流の一部が、GNDラインからセンシング回路へ回り込んで重畳するものや、FPGA等のデジタル制御器ADコンバータを介して信号を取り込む際の分解能に起因する、ランダムノイズ等を含んでいる。

真空ポンプは、電子顕微鏡等の分析計測装置や、近接して研究者が取り扱う頻度の高い実験装置等に用いられる場合、低振動性および静粛性が強く求められる。また、製造用途では、半導体製造描画露光装置は言うまでもなく、イオン注入装置CVD装置エッチング装置等においても、低振動性および静粛性が求められることが多くなってきている。

概要

低振動な磁気軸受式真空ポンプの提供。変位変調波信号を分解能倍率K(ただし、K>1)で増幅した信号に基づいて、所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を生成する第1変位信号生成部としての処理系Aと、変位変調波信号の差分信号に基づいて、第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を生成する第2変位信号生成部としての処理系Bと、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)または通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から定常応答振れ回り変位の成分を除いた信号ux1(t),uy1(t)に基づいて、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t) および通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)のいずれか一方を選択する切替制御部408と、切替制御部408で選択された変位信号に基づいて磁気軸受を制御するPID制御部412と、を備える。

目的

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

ロータ磁気浮上させる磁気軸受と、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をK>1の分解能倍率Kで増幅し、増幅された前記変位変調波信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記変位変調波信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号から定常応答振れ回り変位の成分を除いた非定常応答信号に基づいて、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部と、を備える磁気軸受式真空ポンプ

請求項2

請求項1に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号に基づいて、定常応答振れ回り半径を算出する定常応答演算部と、前記分解能倍率Kの大きさを、前記定常応答振れ回り半径の大きさに応じた複数の値のいずれか一つに変更する倍率変更部とをさらに備える磁気軸受式真空ポンプ。

請求項3

請求項1または2に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記第1変位信号生成部は、第1のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタ、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号を前記分解能倍率Kで増幅する増幅部、増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部、およびアナログ−デジタル変換された前記信号を「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率縮小する縮小部を備え、縮小された前記信号に基づいて前記高分解能変位信号を生成し、前記第2変位信号生成部は、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタ、および前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換する第2AD変換部を備え、前記第2AD変換部から出力された信号に基づいて前記低分解能変位信号を生成する、磁気軸受式真空ポンプ。

請求項4

ロータを磁気浮上させる磁気軸受と、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をK>1の分解能倍率Kで増幅し、増幅された前記変位変調波信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記変位変調波信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部と、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号に基づいて定常応答振れ回り半径を算出する定常応答演算部と、前記分解能倍率Kの大きさを、前記定常応答振れ回り半径の大きさに応じた複数の値のいずれか一つに変更する倍率変更部と、を備える磁気軸受式真空ポンプ。

請求項5

請求項4に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記第1変位信号生成部は、第1のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタ、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号を前記分解能倍率Kで増幅する増幅部、増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部、およびアナログ−デジタル変換された前記信号を「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率で縮小する縮小部を備え、縮小された前記信号に基づいて前記高分解能変位信号を生成し、前記第2変位信号生成部は、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタ、および前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換する第2AD変換部を備え、アナログ−デジタル変換された前記信号に基づいて前記低分解能変位信号を生成する、磁気軸受式真空ポンプ。

請求項6

ロータを磁気浮上させる磁気軸受と、第1のQ値を有し、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタと、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号をK>1の分解能倍率Kで増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部と、前記第1AD変換部でアナログ−デジタル変換された前記信号を、「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率で縮小する縮小部と、前記縮小部で縮小された前記信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有し、前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタと、前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換力する第2AD変換部と、前記第2AD変換部でアナログ−デジタル変換された前記信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部とを備える磁気軸受式真空ポンプ。

請求項7

請求項2,4および5のいずれか一項に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記分解能倍率Kを第1の値からそれよりも小さな第2の値に変更するときの前記定常応答振れ回り半径は、前記第2の値から前記第1の値に変更するときの前記定常応答振れ回り半径よりも所定ヒステリス幅だけ大きく設定されている、磁気軸受式真空ポンプ。

請求項8

請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記選択部は、前記非定常応答信号の値が第1の信号領域領域外から領域内に変化すると、選択される変位信号を前記低分解能変位信号から前記高分解能変位信号に切り替え、前記非定常応答信号の値が前記第1の信号領域を含むより大きな第2の信号領域の領域内から領域外に変化すると、選択される変位信号を前記高分解能変位信号から前記低分解能変位信号に切り替える、磁気軸受式真空ポンプ。

請求項9

請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の磁気軸受式真空ポンプにおいて、前記定常応答振れ回り半径と前記所定位置からの変位の上限値との比をαとしたとき、前記分解能倍率Kは式「1/(3α)<K<1/α」を満たすように設定されている、磁気軸受式真空ポンプ。

技術分野

0001

本発明は、磁気浮上式真空ポンプに関する。

背景技術

0002

制御形磁気軸受タイプの真空ポンプにおいては、ロータ部品ステータ部品と非接触にて高速回転運動される。そのような真空ポンプでは、最小隙間となる部位であるタッチダウンベアリング非常用メカニカルベアリング)においても、100μm程度の隙間を有している。そのため、接触式ボールベアリングタイプに比べて、ロータアンバランス修正の追いこみ基準を緩和できるという特徴がある。

0003

ところで、ロータアンバランスがあると、そのロータアンバランスによってラジアル方向に振れ回り変位が発生し、また、ラジアル方向に振れ回りに起因してアキシャル方向においても振動変位が発生することがある。これらは回転速度の周波数成分(あるいは、その高調波成分)の定常応答であり、軸受非接触型接触型かに関係なく、軸受のバネ剛性を介してステータ側ロータ軸変位に応じた反力として伝達され、それに伴い騒音も発生する。

0004

また、アンバランス以外にも、メカニカルラインアウトエレクトリカルラインアウトと呼ばれる部材の傷や磁気特性むらによって、同様の定常応答が生じることが知られている。

0005

一般に、ロータ軸変位は、アンバランス等に伴う定常応答成分と、それ以外の成分とで表される。それ以外の成分としては、主に外乱力による一過性の変位などの自由振動に起因するものであるが、一過性の変位が収束した状態においてもステータ側の振動要因となるセンシングに伴う微小ノイズ成分が含まれている。ノイズ成分としては、軸受電流を供給する励磁アンプのPWMスイッチングに伴うスパイク状電流の一部が、GNDラインからセンシング回路へ回り込んで重畳するものや、FPGA等のデジタル制御器ADコンバータを介して信号を取り込む際の分解能に起因する、ランダムノイズ等を含んでいる。

0006

真空ポンプは、電子顕微鏡等の分析計測装置や、近接して研究者が取り扱う頻度の高い実験装置等に用いられる場合、低振動性および静粛性が強く求められる。また、製造用途では、半導体製造描画露光装置は言うまでもなく、イオン注入装置CVD装置エッチング装置等においても、低振動性および静粛性が求められることが多くなってきている。

先行技術

0007

特開2006−71069号公報

発明が解決しようとする課題

0008

ところで、イオン注入装置、CVD装置、エッチング装置では、プロセスに伴う固相反応生成物が、プロセス容器内や下流側に設けられた真空ポンプ内部に付着する。例えば、ターボ分子ポンプロータに反応生成物が付着すると、経時的にロータアンバランスが大きくなり、定格回転中のロータの振れ回り変位もだんだんと大きくなる。

0009

特許文献1に記載の発明では、変位信号を処理する際に、従来の低分解能ラインと並列して高分解能ラインとを設け、高分解能ラインのADコンバータがアウトオブレンジ信号を出しているか否かでオーバーフローの有無を判別し、低分解能ラインと高分解能ラインとを切り替えるようにしている。

0010

しかしながら、上記のような切替動作を行う構成の場合、振れ回り変位が大きいと、切り替えの閾値を挟んで変位が上下してチャタリングを発生する。チャタリング発生期間では、高分解能領域および従来分解能領域の各々の変位信号を繰り返し使用することになるので、いろいろな周波数が発生しやすく、これにより加振されることで新たな振動・騒音が発生することになる。また、チャタリング発生を防止するために閾値にヒステリシスを設けることがあるが、振れ回り変位が大きいとヒステリシスの幅も大きくなり、高分解能領域における分解能向上が制限され、低振動性能が限定的になるという課題がある。

課題を解決するための手段

0011

本発明の好ましい実施形態による磁気軸受式真空ポンプは、ロータを磁気浮上させる磁気軸受と、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をK>1の分解能倍率Kで増幅し、増幅された前記変位変調波信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記変位変調波信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号から定常応答振れ回り変位の成分を除いた非定常応答信号に基づいて、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部と、を備える。
さらに好ましい実施形態では、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号に基づいて、定常応答振れ回り半径を算出する定常応答演算部と、前記分解能倍率Kの大きさを、前記定常応答振れ回り半径の大きさに応じた複数の値のいずれか一つに変更する倍率変更部とをさらに備える。
さらに好ましい実施形態では、前記第1変位信号生成部は、第1のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタ、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号を前記分解能倍率Kで増幅する増幅部、増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部、およびアナログ−デジタル変換された前記信号を「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率縮小する縮小部を備え、縮小された前記信号に基づいて前記高分解能変位信号を生成し、前記第2変位信号生成部は、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタ、および前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換する第2AD変換部を備え、前記第2AD変換部から出力された信号に基づいて前記低分解能変位信号を生成する。
本発明の好ましい他の実施形態による磁気軸受式真空ポンプは、ロータを磁気浮上させる磁気軸受と、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をK>1の分解能倍率Kで増幅し、増幅された前記変位変調波信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記変位変調波信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部と、前記高分解能変位信号または前記低分解能変位信号に基づいて定常応答振れ回り半径を算出する定常応答演算部と、前記分解能倍率Kの大きさを、前記定常応答振れ回り半径の大きさに応じた複数の値のいずれか一つに変更する倍率変更部と、を備える磁気軸受式真空ポンプ。
さらに好ましい実施形態では、前記第1変位信号生成部は、第1のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタ、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号を前記分解能倍率Kで増幅する増幅部、増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部、およびアナログ−デジタル変換された前記信号を「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率で縮小する縮小部を備え、縮小された前記信号に基づいて前記高分解能変位信号を生成し、前記第2変位信号生成部は、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有して前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタ、および前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換する第2AD変換部を備え、アナログ−デジタル変換された前記信号に基づいて前記低分解能変位信号を生成する。
本発明の好ましい他の実施形態による磁気軸受式真空ポンプは、ロータを磁気浮上させる磁気軸受と、第1のQ値を有し、前記ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号をフィルタリングする第1バンドパスフィルタと、前記第1バンドパスフィルタを通過した信号をK>1の分解能倍率Kで増幅する増幅部と、前記増幅部で増幅された前記信号をアナログ−デジタル変換する第1AD変換部と、前記第1AD変換部でアナログ−デジタル変換された前記信号を、「1/(分解能倍率)」よりも小さな縮小率で縮小する縮小部と、前記縮小部で縮小された前記信号に基づいて、前記所定位置を含む第1変位領域における高分解能変位信号を生成する第1変位信号生成部と、前記第1のQ値よりも小さな第2のQ値を有し、前記変位変調波信号をフィルタリングする第2バンドパスフィルタと、前記第2バンドパスフィルタを通過した信号をアナログ−デジタル変換力する第2AD変換部と、前記第2AD変換部でアナログ−デジタル変換された前記信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域における低分解能変位信号を生成する第2変位信号生成部と、前記高分解能変位信号および前記低分解能変位信号のいずれか一方を選択する選択部と、前記選択部で選択された変位信号に基づいて前記磁気軸受を制御する軸受制御部とを備える。
さらに好ましい実施形態では、前記分解能倍率Kを第1の値からそれよりも小さな第2の値に変更するときの前記定常応答振れ回り半径は、前記第2の値から前記第1の値に変更するときの前記定常応答振れ回り半径よりも所定ヒステリス幅だけ大きく設定されている。
さらに好ましい実施形態では、前記選択部は、前記非定常応答信号の値が第1の信号領域領域外から領域内に変化すると、選択される変位信号を前記低分解能変位信号から前記高分解能変位信号に切り替え、前記非定常応答信号の値が前記第1の信号領域を含むより大きな第2の信号領域の領域内から領域外に変化すると、選択される変位信号を前記高分解能変位信号から前記低分解能変位信号に切り替える。
さらに好ましい実施形態では、前記定常応答振れ回り半径と前記所定位置からの変位の上限値との比をαとしたとき、前記分解能倍率Kは式「1/(3α)<K<1/α」を満たすように設定されている。

発明の効果

0012

本発明によれば、低振動な磁気軸受式真空ポンプが可能となる。

図面の簡単な説明

0013

図1は、本実施の形態の真空ポンプにおけるポンプユニットの構成を示す図である。
図2は、真空ポンプの制御系を説明するブロック図である。
図3は、本実施の形態における磁気軸受制御を説明するブロック図である。
図4は、x1軸変位X1(t)およびy1軸変位Y1(t)の一例を示す図である。
図5は、本実施の形態に対する比較例を説明する図である。
図6は、比較例の場合の変位(X1(t),Y1(t))の軌跡D1と閾値との関係を説明する図である。
図7は、閾値To,Tiを円形ラインとした場合を示す。
図8は、チャタリング発生を説明する図である。
図9は、ヒステリシスの幅を大きくしてチャタリング発生を防止する場合を説明する図である。
図10は、内側閾値Tiを変更してヒステリシスの幅大きくした場合の切り替え状況を示す図である。
図11は、図4座標(0,0)を含む近傍領域における軌跡D1,du1を示す図である。
図12は、分解能倍率Kの設定方法を説明する図である。
図13は、上述した第1の実施の形態の変形例を示す図である。
図14は、本発明の第2の実施の形態を説明する図である。
図15は、振れ回り半径rx1に対する分解能倍率Kの設定の一例を説明する図である。
図16は、分解能倍率Kと閾値To,Tiとの関係の一例を示す図である。
図17は、K設定部510の動作例を示す図である。
図18は、本発明の第3の実施の形態を説明する図である。
図19は、通常分解能変位信号における信号の遅延およびゲインの一例を示す図である。
図20は、高分解能変位信号における信号の遅延およびゲインの一例を示す図である。
図21は、処理系Aを用いた場合の開ループ伝達関数Gok(jw)と、処理系Bを用いた場合の開ループ伝達関数Go1(jw)とを示す図である。
図22は、ナイキスト線図による制御安定性を説明する図である。
図23は、ナイキスト線図による制御安定性を説明する図である。
図24は、第3の実施の形態の変形例を示す図である。
図25は、バンドパスフィルタを通過する前後の変位変調波信号の一例を示す図である。
図26は、第1の実施の形態における切替状況を示す図である。

実施例

0014

以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
−第1の実施の形態−
図1は、本実施の形態の真空ポンプの概略構成を示す図である。図1に示す真空ポンプは磁気浮上式のターボ分子ポンプであり、ポンプユニット1と、ポンプユニット1を駆動するコントロールユニット2とを備えている。なお、コントロールユニット2はポンプユニット1と別体でも良いし、一体に設けられていても良い。コントロールユニット2には、モータ42を駆動制御するモータ駆動制御部2aと、磁気軸受67,68,69を駆動制御する軸受駆動制御部2bを備えている。

0015

ポンプユニット1は、回転翼4aと固定翼62とで構成されるターボポンプ段と、円筒部4bとネジステータ64とで構成されるドラッグポンプ段ネジ溝ポンプ)とを有している。ここではネジステータ64側にネジ溝が形成されているが、円筒部4b側にネジ溝を形成しても構わない。

0016

回転翼4aおよび円筒部4bはポンプロータ4に形成されている。ポンプロータ4はロータシャフト5に締結されている。ポンプロータ4とロータシャフト5とによって回転体ユニットRが構成される。複数段の固定翼62は、軸方向に対して回転翼4aと交互に配置されている。各固定翼62は、スペーサリング63を介してベース60上に載置される。ポンプケーシング61の固定フランジ61cをボルトによりベース60に固定すると、積層されたスペーサリング63がベース60とポンプケーシング61の係止部61bとの間に挟持され、固定翼62が位置決めされる。

0017

ロータシャフト5は、ベース60に設けられた磁気軸受67,68,69によって非接触支持される。各磁気軸受67,68,69は電磁石変位センサとを備えている。変位センサによりロータシャフト5の浮上位置が検出される。なお、軸方向の磁気軸受69を構成する電磁石は、ロータシャフト5の下端に設けられたロータディスク55を軸方向に挟むように配置されている。

0018

ロータシャフト5はモータ42により回転駆動される。モータ42は同期モータであり、本実施の形態では、DCブラシレスモータが用いられている。モータ42は、ベース60に配置されるモータステータ42aと、ロータシャフト5に設けられるモータロータ42bとを有している。モータロータ42bには、永久磁石が設けられている。ロータシャフト5の回転は、回転センサ28によって検出される。回転センサ28には、例えば、インダクタンス式のセンサが用いられる。磁気軸受が作動していない時には、ロータシャフト5は非常用のメカニカルベアリング66a,66bによって支持される。

0019

ベース60の排気口60aには排気ポート65が設けられ、この排気ポート65にバックポンプが接続される。回転体ユニットRを磁気浮上させつつモータ42により高速回転駆動することにより、吸気口61a側の気体分子は排気ポート65側へと排気される。

0020

図2は、真空ポンプの制御系、すなわちコントロールユニット2の概略構成を示すブロック図である。外部からのAC入力は、コントロールユニット2に設けられたAC/DCコンバータ40によってDC出力DC電圧)に変換される。AC/DCコンバータ40から出力されたDC電圧はDC/DCコンバータ41に入力され、DC/DCコンバータ41によって、モータ42用のDC電圧と磁気軸受用のDC電圧とが生成される。

0021

モータ42用のDC電圧はインバータ46に入力される。磁気軸受用のDC電圧は磁気軸受用のDC電源47に入力される。磁気軸受67,68,69は5軸磁気軸受を構成しており、磁気軸受67,68は各々2対(2軸分)の磁気軸受電磁石45を有し、磁気軸受69は1対(1軸分)の磁気軸受電磁石45を有している。5対の磁気軸受電磁石45、すなわち10個の磁気軸受電磁石45には、それぞれに対して設けられた10個の励磁アンプ43から個別に電流が供給される。

0022

制御部44はモータおよび磁気軸受の制御を行うデジタル演算器であり、本実施形態ではFPGA(Field Programmable Gate Array)が用いられている。制御部44は、インバータ46に対しては、インバータ46に含まれる複数のスイッチング素子オンオフ制御するためのPWM制御信号301を出力し、各励磁アンプ43に対しては、各励磁アンプ43に含まれるスイッチング素子をオンオフ制御するためのPWM制御信号303をそれぞれ出力する。

0023

さらに、制御部44から各センサ回路48には、センサキャリア信号(搬送波信号)305が入力される。センサキャリア信号は位相調整用フィルタ回路を通して変位センサ49に印加され、ロータ変位に応じて変位センサ49で変調される。ロータ変位により変調されたセンサ信号(変位変調波信号)306は、各センサ回路48から制御部44に入力される。また、制御部44には、モータ42に関する相電圧および相電流に関する信号302や、磁気軸受に関する電磁石電流信号304が入力される。

0024

図1に示したモータ駆動制御部2aは、インバータ46および制御部44のモータ制御系が対応する。また、軸受駆動制御部2bは、励磁アンプ43、センサ回路48および制御部44の軸受制御系が対応する。制御部44には、ポンプ状態を表示したりローカルに操作をしたりするための操作・表示部50や、外部とリモート信号の授受をしたり通信を行ったりするための入出力・通信部51が接続されている。

0025

図3は、本実施の形態における磁気軸受制御を説明する機能ブロック図である。図3のブロック図は、x1軸およびy1軸の2軸分(例えば、ラジアル方向に関する磁気軸受67のx軸およびy軸)の構成について示したものである。図3において、二点鎖線の右側に記載のブロックの処理(デジタル処理)は図2の制御部(FPGA)44によって行われる。図2の変位センサ49で変調されたセンサ信号306(変位変調波信号)は差動アンプ400に入力され、差動アンプ400において差分信号が生成される。すなわち、x1軸の2つのセンサ信号に関する差分信号と、y1軸の2つのセンサ信号に関する差分信号とが生成される。

0026

差分信号は、バンドパスフィルタ401においてセンサキャリア周波数を中心周波数とするバンドパス処理が施された後、2つに分岐される。磁気軸受制御には差分信号に基づく変位信号が利用されるが、本実施の形態では、分岐された2つの差分信号に基づいて分解能の異なる2つの変位信号を生成する機能を備え、2つの変位信号を選択的に用いる構成とした。符号Aで示す一連の処理では高分解能な変位信号が生成され、符号Bで示す一連の処理では従来のターボ分子ポンプにおける変位信号に相当する変位信号が生成される。以下では、処理系Aによる変位信号を高分解能変位信号と呼び、処理系Bによる変位信号を通常分解能変位信号と呼ぶことにする。

0027

なお、本実施の形態では、同期サンプリングにより変位信号の復調処理が行われる。予めPWMキャリア信号とセンサキャリア信号を周波数整数倍同期関係とし、ノイズの原因となるスパイク発生タイミングから予めずらした搬送波ピーク位置タイミングで同期させてADコンバータから取り込み、復調処理を行う。図25は、バンドパスフィルタを通過する前後の変位変調波信号の一例を示す図である。ラインL1はバンドパスフィルタを通過する前の変位変調波信号を示し、ラインL2はバンドパスフィルタを通過した変位変調波信号を示す。また、丸印は同期サンプリング値、すなわち復調された変位信号を示す。このように、本実施の形態はデジタルで復調処理を行う構成としたが、本発明はアナログで復調処理を行う場合にも適用できる。

0028

処理系Aでは、差分信号は、増幅部402AによりK倍に増幅されてからADコンバータ403によりADサンプリングされる。KはK>1に設定されており、処理系Aでは、ロータシャフト5の目標浮上位置を中心とする近傍領域のみをK倍拡大することで、ADコンバータ403のダイナミックレンジを有効に使用した高分解能な変位信号が生成される。ADコンバータ403により取り込まれた差分信号は、増幅部404Aにおいてデジタル演算処理により(1/K)倍に増幅される。すなわち、増幅部402AによりK倍された差分信号の振幅は、増幅部404AによってK倍される前の振幅に戻される。Kの値が大きいほど分解能がより高くなる。以下では、Kのことを分解能倍率と呼ぶことにする。

0029

復調演算部405Aでは、増幅部404Aから出力された差分信号に基づいて復調演算が行われる。ゲイン・オフセット調整部406Aでは、復調された信号に対してゲイン調整およびオフセット調整が行われる。なお、ADコンバータ403においては、x1軸で2チャンネルおよびy1軸で2チャンネル、2軸で合計4チャンネルを使用する。

0030

一方、処理系Bでは、差分信号は、増幅部402Aにより1倍増幅されてからADコンバータ403によりADサンプリングされ、その後、増幅部404Bにより(1/1)倍増幅される。すなわち、処理系Bで生成される通常分解能変位信号は従来のターボ分子ポンプにおける変位信号に相当するものであり、ロータシャフト5がメカニカルベアリング66a,66bに接触するまでの変位領域をカバーする変位信号である。処理系Bの復調演算部405Bおよびゲイン・オフセット調整部406Bでは、それぞれ処理系Aの復調演算部405Aおよびゲイン・オフセット調整部406Aと同様の処理が行われる。

0031

なお、通常の変位信号を生成する従来の処理では、バンドパス処理された差分信号をADコンバータで取り込んで復調演算が行われ、図3に示すような増幅部402B,404Bは設けられていない。本実施の形態では、処理系Bとの対応させるために増幅率1倍の増幅部402B,404Bは設けているが、従来の構成のように増幅部402B,404Bを省略しても構わない。

0032

処理系Aで生成された高分解能変位信号(X1k(t),Y1k(t))と処理系Bで生成された通常分解能変位信号(X1(t),Y1(t))のいずれを使用するかは、切替部407によって選択される。切替部407による切り替えは、切替制御部408により制御される。切替制御部408は、後述する定常応答以外の成分の信号(ux1(t),uy1(t))に基づいて切替部407による切り替えを制御する。

0033

[x1軸変位、y1軸変位について]
処理系Aで生成される高分解能変位信号および処理系Bで生成される通常分解能変位信号は、ロータシャフト5のx1軸の変位X1(t)およびy1軸の変位Y1(t)に関する信号である。一般に、ロータシャフト5の変位は、アンバランス等に伴う定常応答成分(振れ回り変位の成分)と、それ以外の成分とで表される。x1軸の変位X1(t)は次式(1)で表され、y1軸の変位Y1(t)は次式(2)で表される。式(1),(2)において、右辺第1項は定常応答成分であり、右辺第2項は定常応答以外の成分である。jは虚数、Reは実部、Imは虚部、rx1およびry1は振れ回り半径である。また、ωは回転角速度であり、n倍高調波に対してはωの代わりにnωを用いる。
X1(t)=rx1×Re(exp(jωt))+ux1(t) …(1)
Y1(t)=ry1×Im(exp(jωt))+uy1(t) …(2)

0034

なお、次式(3)〜(5)に示すように、残りの3軸(x2軸、y2軸、z軸)の変位も対しても同様に表せる。φ,φzは、x1,y1軸の定常応答位相に対するx2,y2軸およびz軸の位相ずれである。
X2(t)=rx2×Re(exp(j(ωt+φ)))+ux2(t) …(3)
Y2(t)=ry2×Im(exp(j(ωt+φ)))+uy2(t) …(4)
Z(t)=rz×Re(exp(j(ωt+φz)))+uz(t) …(5)

0035

通常、振れ回り変位の半径は、rx1=ry1、rx2=ry2であるが、センシング感度の僅かな違いなど、誤差を有するため別記号で示すが、以下では等号成立しているものとして説明する。また、通常、ラジアル方向の4軸だけが対象とされることが多いが、アキシャル方向の1軸(z軸)もアンバランスの影響を受けて定常応答が発生することがあるので、式(5)を加えている。

0036

前述したように、定常応答以外の成分ux1(t)〜uz(t)は、主に外乱力による一過性の変位などの自由振動に起因するものであるが、一過性の変位が収束した状態においてもステータ側の振動の要因となるセンシングに伴う微小なノイズ成分が含まれている。ノイズ成分としては、軸受電流を供給する励磁アンプのPWMスイッチングに伴うスパイク状電流の一部が、GNDラインからセンシング回路へ回り込んで重畳するものや、FPGA等のデジタル制御器へADコンバータを介して信号を取り込む際の分解能に起因する、ランダムノイズ等を含んでいる。

0037

図3のゲイン・オフセット調整部406Bから出力される通常分解能変位信号も、ゲイン・オフセット調整部406Aから出力される高分解能変位信号も、式(1)、(2)で表されるx1軸変位X1(t)およびy1軸変位Y1(t)に関する変位信号である。ここでは、通常分解能変位信号を変位と同一の記号X1(t),Y1(t)で表し、高分解能変位信号を記号X1k(t),Y1k(t)で表すことにする。

0038

ゲイン・オフセット調整部406Bから出力された通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)は、定常応答抽出部Cに入力される。定常応答抽出部Cは、上述した式(1)、(2)における定常応答成分であるrx1×Re(exp(jωt)),ry1×Im(exp(jωt))に対応する信号を抽出する。以下では、この抽出された信号を定常応答信号と呼ぶことにする。

0039

定常応答抽出部Cは、まず、第1変換処理部409において、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を固定座標系から角度θで回転する回転座標系の信号へと変換する。ここで、角度θはロータシャフト5の回転角度であり、図1の回転センサ28の検出信号に基づく。また、回転センサ28を備えていない真空ポンプの場合には、モータ駆動制御部2a(図1)からモータ回転情報(例えば、モータ電気角)を取得して、そのモータ回転情報に基づいてロータシャフト5の回転角度を算出しても良い。なお、回転周波数成分に対しては上述のように角度θを用いるが、n倍高調波についてはnθを用いる。

0040

次いで、第1変換処理部409から出力された信号に対してローパスフィルタ410においてローパスフィルタ処理を行い、回転成分以外の周波数成分を除去する。磁気浮上制御では、第1変換処理部409に入力される通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)は回転成分以外の信号も含まれるので、変換処理直後に回転成分以外の信号を除去するためのローパスフィルタ処理を必要とする。固定座標系から回転座標系への変換処理は、準定常応答前提にした一種オーバーサンプリング信号処理なので、回転成分以外の高い周波数の交流成分を除去するローパスフィルタ410を入れても、遅延影響は少ない。

0041

第2変換処理部411では、ローパスフィルタ処理された信号に対して回転座標系から固定座標系への変換処理を行い、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)の内の定常応答成分(すなわち、振れ回り成分)だけの信号を生成する。なお、第2変換処理部411における演算において、例えば、回転1周期Tで誤差1deg以内の出力が求められる場合、T/360以下の短いサンプリング周期が必要である。2倍高周波ならば、T/720以下となり、高次高周波になるほど短いサンプリング周期が必要になる。

0042

そして、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から、第2変換処理部411から出力された定常応答成分だけの信号が減算され、定常応答成分をキャンセル補償した差分信号が切替制御部408に入力される。この信号は定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)に相当する信号であり、以下では、定常応答以外の成分と同一の記号ux1(t),uy1(t)で表すことにする。

0043

詳細は後述するが、切替制御部408は、信号ux1(t),uy1(t)の値と所定の閾値とを比較して、切替部407を高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)の側または通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)の側に切り替える。このように、切替部407からは、磁気軸受制御の変位信号として通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)または高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)が出力される。そして、切替部407から出力された変位信号から、定常応答抽出部Cで抽出された定常応答信号rx1×Re(exp(jωt)),ry1×Im(exp(jωt))が減算される。その結果、PID制御部412には、式(1)、(2)の定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)に相当する信号が、磁気軸受制御に用いる変位信号として入力される。

0044

PID制御部412では、入力された変位信号に基づいて比例制御積分制御および微分制御位相補正、その他の制御補償を行い、浮上制御電流設定を生成する。PWM演算部413は、PID制御部412で生成された浮上制御電流設定に基づいてPWM制御信号を生成する。そのPWM制御信号に基づいて励磁アンプ43が駆動され、磁気軸受電磁石45に電磁石電流が供給される。

0045

[閾値および切替動作の説明]
図4は、x1軸変位X1(t)およびy1軸変位Y1(t)の一例を示す図であり、横軸はx1軸変位X1(t)を表し、縦軸はy1軸変位Y1(t)を表す。細線で示した軌跡D1は変位(X1(t),Y1(t))を示しており、太線で示した軌跡du1は定常応答以外の成分(ux1(t),uy1(t))を示している。図4では、定格回転速度で安定して回転しているロータシャフト5に一過性の外乱力が印加された場合を示している。

0046

図4では、定格回転速度は500(rps)、振れ回りは回転基本成分のみで、振れ回り半径が10(μm)である場合を示した。また、回転体剛体とみなし、主要な自由振動の内、特に低い周波数と高い周波数になる歳差運動章動運動を加味して示した。歳差運動は振れ回りと逆方向回転固有振動数1(Hz)、振幅100(μm)とし、章動運動は振れ回りと同方向回転で固有振動数240(Hz)、振幅2(μm)とした。

0047

符号70を付したクロスマークはロータシャフト5の目標浮上位置を示しており、座標(0,0)である。外乱力が印加される前は、軌跡D1は目標浮上位置(0,0)の周囲を円を描くような軌跡となるが、一過性の外乱力が印加されたことにより、矢印で示す方向に軌跡D1,du1が変化している。

0048

ロータシャフト5に一過性の外乱力が印加された場合には、図4の軌跡D1で示すようにロータシャフト5の位置は大きく変化する。通常のターボ分子ポンプでは、非常用のメカニカルベアリング66a,66bとロータシャフト5とのクリアランスは100(μm)程度確保されている。一方、ロータシャフト5のラジアル方向の振れ回り変位は、一般的に数(μm)程度である。なお、図4では、反応生成物の堆積によりアンバランスが増加して、振れ回り半径が10(μm)と比較的大きい場合を示している。

0049

ロータシャフト5が目標浮上位置近傍で安定的に回転している場合には、ロータ変位検出範囲をクリアランスの全領域とする必要はなく、振れ回り範囲よりも若干大きめの範囲においてロータ変位が検出できれば良い。一方、一過性の外乱力が印加された場合には、図4に示すようにロータシャフト5は、メカニカルベアリング66a,66bと接触する程度まで大きく変位する。そのため、磁気軸受制御が適切に行われるためには、クリアランスの全領域にわたってロータ変位が検出可能でなければならない。

0050

そこで、本実施の形態では、図3に示したように高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を取得する処理系Aと、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を取得する処理系Bとを設け、外乱力の印加により定常応答以外の成分(ux1(t),uy1(t))の大きさが所定の閾値を超えたならば、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を使用して磁気軸受制御を行う。一方、成分(ux1(t),uy1(t))の大きさが所定の閾値以内である場合には、例えば、ロータシャフト5が目標浮上位置の近傍で安定的に回転している場合には、より分解能の高い高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を磁気軸受制御に用いることにより、低振動・静粛性の向上を図るようにした。

0051

図5は、本実施の形態に対する比較例を説明する図である。図5は、上述した図3に相当するブロック図であり、同一構成には同一符号を付した。比較例では、切替部407の切替方法が異なり、切替部407は切替制御部508からの切換指令に基づいて切替動作を行う。この切り替え方法は、特許文献1に記載の従来の方法と同様の方法である。

0052

本実施の形態の切替制御部408では信号ux1(t),uy1(t)を閾値と比較して切替制御を行うが、比較例の切替制御部508では、信号ux1(t),uy1(t)よりも変位量の大きな通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を使用して切替制御を行っている。そのため、後述するようなチャタリングが発生しやすい。

0053

図6は、比較例の場合の変位(X1(t),Y1(t))の軌跡D1と閾値との関係を説明する図である。図6の軌跡D1は図4に示した軌跡D1と同じものである。変形例では信号ux1(t),uy1(t)に代えて通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)に基づいて切替部407の切り替えを行っているので、定常応答以外の成分(ux1(t),uy1(t))を示す軌跡du1の記載は省略している。

0054

図6において、目標浮上位置70を中心とする実線矩形ラインToおよび破線の矩形ラインTiは、切替制御部508における変位X1(t),Y1(t)に対する閾値の一例を示している。以下では、矩形ラインToを外側閾値Toと呼び、矩形ラインTiを内側閾値Tiと呼ぶことにする。外側閾値Toは、x軸変位X1(t)に関する閾値を示すX1=±50(μm)の線分と、y軸変位Y1(t)に関する閾値を示すY1=±50(μm)の線分とにより構成される。内側閾値Tiは、x軸変位X1(t)に関する閾値を示すX1=±45(μm)の線分と、y軸変位Y1(t)に関する閾値を示すY1=±45(μm)により構成されている。

0055

なお、図6に示す例では、変位X1(t),Y1(t)の各々に対して個別に閾値を設定したが、図7に示すように目標浮上位置(0,0)からの距離r(t)=√(X1(t)2+Y1(t) 2)に対して、円形ラインで示す閾値To,Tiを設定してもよい。この場合、切替制御部508は、入力された通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から距離r(t)を算出し、その値と閾値To,Ti(円形ラインの半径)とを比較する。

0056

切替制御部508は、図6図7に示すような外側閾値Toおよび内側閾値Tiに対して、次のような切替制御を行う。一過性の外乱力が作用せず振動が小さいときには、軌跡D1は内側閾値Tiを示すラインの内側に位置する。この場合、磁気軸受制御に用いられる変位信号として高分解能変位信号が選択されている。一過性の外乱力が印加されて軌跡D1が外側閾値Toを示すラインの内側から外側に移動すると、変位信号は高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)から通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)に切り替えられる。いったん軌跡D1が外側閾値Toの外側に出た後に内側閾値Tiの内側に移動すると、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)に切り替えられる。

0057

図6に示す矩形ラインの閾値To,Tiの場合には、変位X1(t),Y1(t)の少なくとも一方が外側閾値Toを示す矩形ラインの外側に移動した場合には、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)から通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)に切り替えられる。そして、変位X1(t),Y1(t)の少なくとも一方が矩形ラインToの外側に移動して通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)に切り変わった後に、内側閾値Tiを示す矩形ラインの内側に入った場合には、再び高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)に切り替えられる。

0058

このように外側閾値Toと内側閾値Tiとを設けて閾値にヒステリシスを持たせているのは、変位X1(t),Y1(t)が一つの閾値を繰り返し跨ぐことにより発生するチャタリングを防止するためである。図6に示す閾値To,Tiの設定の場合、振れ回り半径が矩形ラインToと矩形ラインTiとの間の幅の1/2よりも小さければ、すなわち振れ回り半径が5/2(μm)よりも小さければ、軌跡D1が閾値To,Tiのラインを通過する際のチャタリング発生を防止することができる。

0059

しかし、図5の比較例の場合には、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を用いて切換制御を行うので、図6に示す例のように振れ回り半径が5/2(μm)よりも大きい場合には、軌跡D1が閾値To,Tiのラインを内→外、外→内と通過する動作を繰り返し、チャタリングが発生する。

0060

図8は、図6に示すように変位(X1(t),Y1(t))が変化したときの、チャタリングの発生を説明する図である。図8(a)はx軸変位X1(t)およびy軸変位Y1(t)の時間変化を示したものであり、図8(b)は切替部407の切替状態の時間的な変化を示したものである。図8(b)において、状態(+1)は切替部407が通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を選択している状態を示し、状態(−1)は切替部407が高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を選択している状態を示す。

0061

図6に示すように、軌跡D1は、式(1),(2)のrx1×Re(exp(jωt)),ry1×Im(exp(jωt))で表される振れ回りによる半径10(μm)の円運動と、ux1(t),uy1(t) で表される外乱力による変位とを合成した、螺旋状の軌跡を描いている。円運動の中心は目標浮上位置70から、X1=−100(μm),Y1=−100(μm)の位置まで変化している。図8(a)は、そのときの変位X1(t),Y1(t)の時間的変化とを示したものである。x軸変位X1(t)は、振れ回りによる細かな振動を伴いながら、0(μm)から−100(μm)まで変化している。y軸変位Y1(t)は、同様に振れ回りによる細かな振動を伴いながら、0(μm)から100(μm)まで変化している。変位X1,Y1の細かな振動の幅は、ほぼ振れ回り半径の2倍の20(μm)になっている。

0062

符号E1で示す範囲では変位X1(t),Y1(t)の両方が外側閾値To(=±50μm)の内側に入っているので、切替部407は状態(−1)に維持され、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)が選択された状態となる。符号E2で示す範囲では、y軸変位Y1(t)が外側閾値Toの外側と内側閾値Tiの内側とを行き来する状態が発生し、状態(−1)と状態(+1)とを繰り返すチャタリングが生じる。すなわち、切替部407からは、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)と通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)とが交互に繰り返し出力されることになる。符号E3で示す範囲では、いったん外側閾値Toを超えたy軸変位Y1(t)が内側閾値Ti以下にならなくなって、切替部407は状態(+1)に維持され、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)が選択された状態となる。

0063

このように、比較例の場合には、閾値To,Tiのヒステリシス幅に比べて振れ回りが大きく、軌跡D1がヒステリシスを有する2つの閾値To,Tiを跨ぐことにより、チャタリングが発生する。ターボ分子ポンプの場合には、ロータシャフト5の回転速度が高く振れ回り変位の周波数が高いため、短い周期で通常分解能変位信号と高分解能変位信号との切り替えが繰り返される。

0064

振れ回り半径が大きな比較例の場合、上述のようなチャタリングの発生を防止するためには、図9に示すように閾値To,Tiのヒステリシスの幅を大きくする必要がある。図9では、外側閾値Toは変更せず内側閾値TiをY1=±25(μm)に変更し、閾値To,Tiのヒステリシスの幅を25(μm)とした。この場合、ヒステリシスの幅が振れ回り半径の2倍(20μm)以上となっているので、チャタリングの発生を防止することができる。

0065

図10は、図9のように内側閾値Tiを変更した場合の切替状況を示す図である。図10(a)は変位X1(t),Y1(t)の時間的変化を示す図であり、図8(a)と同一である。図10(b)は切替の状態を示す図であり、チャタリングが解消されていることが分かる。このように、振れ回り半径が大きい場合には、外側閾値Toと内側閾値Tiとの間のヒステリシス幅をより大きく設定する必要がある。

0066

一方、本実施の形態の切替制御部408では、変位X1(t),Y1(t)に代えて定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)と閾値とを比較して切換制御を行っているので、ヒステリシス幅を比較例の場合よりも小さくすることができる。

0067

なお、前述した図4に示す軌跡du1の場合、定常応答以外の成分として、主要な自由振動の内、特に低い周波数と高い周波数になる歳差運動と章動運動を加味して示した。歳差運動は振れ回りと逆方向回転で、固有振動数は1(Hz)、振幅は100(μm)である。章動運動は振れ回りと同方向回転で、固有振動数は240(Hz)、振幅は2(μm)である。

0068

なお、チャタリングの発生に関して内側閾値をどのような値に設定するかは関係なく、ここでは、チャタリングが解決された上記比較例(図9)と同等となるように、本実施形態における内側閾値を下記の通り設定する。図9の比較例では内側閾値を25(μm)としているが、これは、定常応答である振れ回り振幅が10(μm)、定常応答以外の章動振幅が2(μm)であって、上述した振幅100(μm)の歳差運動による変位が13(μm)となったときの変位を内側閾値とした場合である。すなわち、内側閾値は、25(μm)={10+2+13}(μm)のように設定されている。これに対して、本実施の形態では定常応答以外の成分のみを考えれば良いので、同等の章動振幅2(μm)及び歳差振幅13(μm)を用いると、内側閾値はそれらの和である15(μm)となる。

0069

外側閾値は、内側閾値にヒステリシス値加算した値である。図9に示す比較例の場合には、ヒステリシス値として25(μm)が採用され、外側閾値は50(μm)となる。25(μm)の内訳は、周波数の高い振れ回り運動(定常応答)および章動(定常応答以外)の各振幅の和を2倍した値に、さらにマージンとして1(μm)を加えたものである。すなわち、25(μm)={(10+2)×2+1}(μm)である。本実施の形態の場合には、定常応答以外の成分のみを考えれば良いので、定常応答以外の章動振幅の2(μm)を2倍した値に、同様のマージン1(μm)を加算した値である5(μm)がヒステリシス値となる。外側閾値は、内側閾値15(μm)にヒステリシス値5(μm)を加えて、20(μm)となる。

0070

このように、図9の内側閾値25(μm)、外側閾値50(μm)と同等条件における本実施の形態の内側閾値および外側閾値、それぞれ15(μm)および20(μm)となる。図11は、図4における内側閾値Tiおよび外側閾値Toを15(μm)および20(μm)と置き換え、座標(0,0)を含む近傍領域における軌跡D1,du1を示したものである。

0071

本実施形態では、外側閾値Toおよび内側閾値Tiは軌跡du1に対して適用されるので、上記の説明の通りヒステリス幅を章動運動の振幅の2倍にマージン1を加算して設定した。閾値To,Tiを示す矩形ラインの上辺の部分に記載した円CR1,CR2は歳差運動をゼロとみなした場合の章動運動の軌跡および振れ回り運動の軌跡を示したものである。変位X1、Y1の軌跡D1は、歳差運動および章動運動と振れ回り運動とを合成した場合の軌跡である。

0072

章動運動の振幅は2(μm)なので、円CR1の直径は4(μm)となる。振れ回り半径は10(μm)なので、円CR2の直径は20(μm)となる。図11に示すように閾値Ti,Toが設定されている場合には、一過性の外乱力が印加されて円CR1が内側閾値Tiを示す矩形ラインの内側から外側閾値Toを示す矩形ラインの外側に移動した際に、チャタリングの発生を防止することができる。図26は、本実施の形態の場合の切替状況を示す図である。図26(a)はux1(t),uy1(t)の経時的な変化を示す図であり、図8図10に示したX1(t),Y1(t)に比べて細かい振動の幅が小さくなっている。その結果、図26(b)に示すようにチャタリングが発生していない。

0073

このように、切替判定にux1(t),uy1(t)を用いることで、例えば、ロータ4に反応生成物が堆積して振れ回り半径が大きくなった場合でも、閾値Ti,Toのヒステリス幅を小さく抑えることができ、外側閾値Toを振れ回り半径よりも若干大きい程度に抑えることができる。また、切替判定にux1(t),uy1(t)を用いているので、ux1(t),uy1(t)が非常に小さなポンプの場合には、閾値にヒステリシスを設けなくてもチャタリングを短時間に抑制することができる。

0074

図9に示す比較例では、変位X1(t),Y1(t)が±50(μm)を超えると通常分解能変位信号に切り替わる。すなわち、変位X1(t),Y1(t)が±50(μm)までは、分解能倍率Kの高分解能変位信号が使用される。一方、図11に示す本実施の形態では、ux1(t),uy1(t)が±20(μm)を超えると通常分解能変位信号に切り替わる。この場合、振れ回り半径が10(μm)なので、変位X1(t),Y1(t)が±30(μm)までは、分解能倍率Kの高分解能変位信号が使用される。すなわち、図11の二点差線で示す矩形範囲内においては高分解能変位信号が使用される。そのため、分解能倍率Kを比較例の約1.7(≒50/30)倍に設定することができ、高分解能変位信号をより高分解能とすることで低振動化を図ることができる。

0075

また、ヒステリシス幅を小さくできるので、その分だけヒステリシス幅の設定に余裕度が大きくなる。そのため、通常分解能変位信号と高分解能変位信号との間に、目標浮上位置のオフセット誤差が多少あった場合でも、図11の円CR1に対してヒステリシス幅をやや大きめに設定することで、オフセット誤差によるチャタリングの発生を容易に避けることができる。

0076

(分解能倍率Kの設定方法について)
次に、分解能倍率Kの設定方法について図12を参照して説明する。図12(a)は比較例の場合を示し、図12(b)は本実施の形態の場合を示す。

0077

図3のADコンバータ403に入力される信号は、通常分解能変位信号の処理系Bでは、ロータシャフト5がメカニカルベアリング66a,66bと接触したときに、増幅部402Bで(+1)倍された信号の大きさがADコンバータ403のフルスケールと同じになるように設定される。また、高分解能変位信号の処理系Aでは、振れ回り変位X1(t),Y1(t)が外側閾値Toと等しくなったときに、増幅部402Aで(+K)倍された信号の大きさがADコンバータ403のフルスケールと同じになるように設定される。なお、非常用のメカニカルベアリングにはガタなど誤差となるクリアランス変動があるのでその誤差分も考慮してフルスケールを設定するのが望ましい。

0078

上述した外側閾値Toの設定にはある程度任意に設定することができるが、分解能倍率Kをできるだけ大きくして低振動化を図るためには、外側閾値Toを小さな値に設定するのが好ましい。比較例の場合、チャタリングが生じないためには、閾値Ti,Toを次式(6),(7)のように設定する必要がある(図12(a)を参照)。
Ti≧(振れ回り半径) …(6)
To≧(振れ回り半径)×3 …(7)

0079

なお、ここの説明では、章動運動の振幅は無視できるほど小さいとみなす。章動運動の振幅は、振れ回り変位には無関係であるため、反応生成物の堆積等により振れ回り変位が大きい場合には、このように考えても問題ない。

0080

仮に、ロータシャフト5とメカニカルベアリング66a,66bとの間の公称クリアランスを100(μm)とした場合、振れ回り半径(=10μm)は公称クリアランスの1/10となる。このとき、分解能倍率Kは、式「(1/10)×3×K≦1」のように、外側閾値Toの範囲のK倍が公称クリアランスと同じ、または公称クリアランスよりも小さくになるように設定される。よって、分解能倍率Kは次式(8)のように設定される。
K≦10/3 …(8)

0081

本実施の形態の場合、章動運動の変位ux1,uy1をゼロとみなすと、チャタリングが発生しない閾値Ti,Toの設定は次式(9)のようになる(図12(b)を参照)。比較例の場合と同様に、分解能倍率Kは、外側閾値Toの範囲のK倍が公称クリアランスと同じ、または公称クリアランスよりも小さくになるように設定される。振れ回り半径を公称クリアランスの(1/10)とすると、分解能倍率Kは次式(10)のように設定される。
To≧Ti≧(振れ回り半径) …(9)
K≦10/1 …(10)

0082

よって、分解能倍率Kを次式(11)のように設定することで、比較例の場合よりも分解能倍率Kを大きく設定することができ、低振動化を図ることができる。一般化して、振れ回り半径を公称クリアランスのα倍とすると、式(11)は式(12)のように変形することができる。
10/3<K≦10/1 …(11)
1/(3α)<K≦1/α …(12)

0083

(変形例)
図13は、上述した第1の実施の形態の変形例を示す図である。図3に示した第1の実施の形態の構成では、処理系Bの通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を用いて定常応答抽出を行い、その定常応答抽出された信号を用いて通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)および高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)に対する定常応答成分のキャンセル補償を行うようにした。

0084

一方、図13に示す変形例では、処理系Aおよび処理系Bの各々のラインに定常応答抽出部Cを設け、定常応答成分がキャンセル補償された通常分解能変位信号および高分解能変位信号を切替部407で切り替えるような構成とした。切替制御部408は、上述した実施形態の場合と同様に、通常分解能変位信号から得られる定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)と閾値とを比較して切換制御を行う。

0085

変形例では、高分解能変位信号に対する定常応答キャンセル補償に、高分解能変位信号から抽出される定常応答成分を用いているので、高分解能変位信号を選択した場合において、定常応答に対する誤差も低減される。すなわち、振動スペクトルにおいて回転成分あるいはその高調波成分の振動ピークが低減される。

0086

上述のように、本実施の形態では、図3に示すように、ロータの所定位置からの変位により変調された変位変調波信号の差分信号を増幅部402Aにおいて分解能倍率K(ただし、K>1)で増幅した信号に基づいて、所定位置を含む第1変位領域に相当する外側閾値Toで規定される領域における高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を生成する第1変位信号生成部としての処理系Aと、変位変調波信号の差分信号に基づいて、前記第1変位領域を含むより大きな第2変位領域に相当するクリアランス領域における通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)を生成する第2変位信号生成部としての処理系Bと、を備える。そして、切替制御部408は、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から定常応答振れ回り変位の成分rx1×Re(exp(jωt))、ry1×Im(exp(jωt))を除いた非定常応答の信号ux1(t)、uy1(t)に基づいて、高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)および低分解能変位信号X1(t),Y1(t)のいずれか一方を選択し、切替部407を制御する。

0087

なお、各軸の変位の原点となる所定位置は、通常、各非常用のメカニカルベアリングの中心に定められる。本発明において、浮上目標位置は必ずしも所定位置と一致させる必要はないが、実施形態では、浮上目標位置が所定位置と一致する場合に関して説明する。

0088

信号ux1(t)、uy1(t)は振れ回り変位とは関係がなく、例えば反応生成物の堆積により振れ回り変位が大きくなった場合でも、信号ux1(t)、uy1(t)はその影響を受けることがない。そのため、大きな振れ回り変位を許容しても、振れ回り変位を用いて切替制御する場合に比べて分解能倍率Kを大きく設定することができ、ポンプの低振動性の向上を図ることができる。

0089

なお、図3に示す構成では、低分解能変位信号X1(t),Y1(t)から定常応答振れ回り変位の成分を除くことで非定常応答の信号ux1(t)、uy1(t)を算出しているが、低分解能変位信号X1(t),Y1(t)に代えて高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)を使用しても良い。

0090

また、本実施の形態では、所定位置からの変位を検出する変位検出部として、変位センサ49を使用する場合を例に説明したが、本発明は、いわゆるセンサレスセルフセンシングタイプとも称される)方式の磁気軸受を採用した真空ポンプに対しても適用することができる。センサレス方式の場合には、電磁石電流にセンサキャリア信号が重畳され、ロータシャフト5の変位によって重畳されたセンサキャリア信号は変位変調される。その変位変調波信号を復調処理することにより変位信号が生成される。

0091

なお、図3に示した構成を、他の3軸(x2軸、y2軸、z軸)へも適用して5軸全てに適用すると最大限効果が発揮できるが、例えば、アンバランス補償が通常実施されるラジアル4軸に適用したり、真空ポンプの用途毎の個別特殊性に従って軸数を減らしたりしても良い。

0092

また、図3に示す構成では、変位信号X1(t),Y1(t)またはX1k(t),Y1k(t)から定常応答成分rx1×Re(exp(jωt)),ry1×Im(exp(jωt))を除いた定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)を用いて磁気軸受制御を行うようにしているが、変位信号X1(t),Y1(t)またはX1k(t),Y1k(t)を用いて磁気軸受制御を行うような構成としても良い。

0093

−第2の実施の形態−
図14は、本発明の第2の実施の形態を説明する図であり、図13に示す構成にK設定部510を追加したものである。上述した第1の実施の形態では、高分解能変位信号を生成する処理系Aのラインにおいて、増幅部402A,404Aにおける分解能倍率Kは、ロータシャフト5の振れ回りに応じて所定の一定値に設定されている。しかしながら、ロータ4への反応生成物堆積によってロータアンバランスが経時的に大きくなり、定格回転中の振れ回り変位が徐々に大きくなる。

0094

例えば、図11に示すように外側閾値Toが20(μm)、内側閾値Tiが15(μm)に設定されている場合を考える。反応生成物の堆積によって振れ回り半径が10(μm)よりも大きくなって、変位X1(t),Y1(t)が外側閾値Toの20(μm)近傍において30(μm)よりも大きくなると、ロータシャフト5の振れ回り中心が目標浮上位置70であった場合でも、高分解能変位信号を生成する処理系Aの増幅部402AからADコンバータ403に入力される信号の範囲が、ADコンバータ403のフルスケールをオーバーしてしまうことになる。その結果、適切な磁気軸受制御ができないおそれがある。

0095

そこで、第2の実施の形態では、ロータシャフト5の振れ回り変位が変化した場合でも適切に磁気軸受制御ができるように、振れ回り半径の大きさに応じて増幅部402A,404Aにおける分解能倍率Kを変化させるようにした。図14に示す例では、K設定部510によってKを複数の値に変更できるように構成した。K設定部510は、ローパスフィルタ410から入力された定常応答振れ回りの半径rx1,ry1(式(1),(2)を参照)に基づいて、分解能倍率Kの値を設定する。また、切替制御部408は、K設定部510で設定されたKの値に応じた外側閾値Toおよび内側閾値Tiにより切換制御を行う。その他の構成については、上述した図13の構成と同様である。

0096

図15は、振れ回り半径rx1に対する分解能倍率Kの設定方法の一例を説明する図である。なお、rx1以外の振れ回り半径についても同様である。図15において、横軸は振れ回り半径rx1であり、縦軸は1/Kである。ここでは、分解能倍率KをK0,K1,K2のように3段階に変更するようにした。K0>K1>K2のように設定される。

0097

反応生成物の堆積が少なく、振れ回り半径rx1がrx1<R0のように小さい状態においては、分解能倍率KはK0に設定される。振れ回り半径rx1がやや大きくなってR0≦rx1<R1となった場合には、K設定部510は増幅部402A,404Aの分解能倍率KをK0からK1に切り替える。振れ回り半径rx1がさらに大きくなってR1≦rx1<R2となった場合には、分解能倍率KはK1からK2に切り替えられる。なお、反応生成物の堆積による振れ回り半径の変化は増加方向だけであるが、分解能倍率Kの切り替わりにおいてチャタリングが発生するおそれがあるので、それを防止するためにヒステリシスΔrを設定した。

0098

なお、R2は振れ回り半径の許容上限値であって、rx1>R2となった場合には、振れ回り異常と判断して通常制御から異常時制御移行する。

0099

図16(a)は、分解能倍率Kと閾値To,Tiとの関係の一例を示す図である。分解能倍率Kは、外側閾値Toに対応付けて設定される。ここでは、分解能倍率K0は、外側閾値Toが10(μm)の場合の分解能倍率とした。同様に、K1は外側閾値Toが25(μm)の場合の分解能倍率であり、K2は外側閾値Toが60(μm)の場合の分解能倍率である。図14に示す構成では、高分解能変位信号と通常分解能変位信号との切り替えは、第1の実施の形態の場合と同様にux1(t1),uy1(t)に基づいて行われるので、切り替え時のチャタリング防止のためのヒステリシスの幅はux1(t1),uy1(t)に依存する。しかし、ux1(t1),uy1(t)は振れ回り変位とは関係ないので、図15(a)の例では一定のヒステリシス幅で内側閾値Tiを設定している。

0100

図17は、K設定部510の動作例を示す図である。図17(a)は振れ回り半径rx1の経時変化を示し、図17(b)は変位ux1、閾値Ti,Toの変化を示す。期間(A)では、静止状態から加速運転を開始して低回転数の状態にあり、振れ回り半径rx1は中程度に大きい。そのため、分解能倍率KはK1に設定され、外側閾値Toは±25(μm)に設定されている。変位ux1は外側閾値To=±25(μm)の範囲内となっているので、切替部407によって高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)が選択されている。

0101

期間(B)では、危険速度通過の回転数となり、一過性の振れ回り増大により振れ回り半径rx1が25(μm)を上回ると、分解能倍率KがK1からK2に切り替えられる。分解能倍率KがK2に切り替えられると、それに応じて外側閾値Toも±60(μm)に変更される。

0102

期間(C)では、危険速度通過後の加速度運転となり、回転数が定格回転数に近づくにつれて振れ回り半径rx1は徐々に低下する。振れ回り半径rx1が「25(μm)−Δr」以下となると、分解能倍率KがK2からK1に切り替えられ、外側閾値Toが±25(μm)に変更される。

0103

期間(D)では、ポンプは定格回転運転となる。この時点では反応生成物の堆積が非常に少なく外乱力も比較的小さいレベルとなっているので、振れ回り半径rx1は数(μm)レベルと小さく、分解能倍率KがK1からK0に切り替えられる。また、外側閾値Toは、±25(μm)から±10(μm)に変更される。

0104

期間(E)は定格回転状態であるが、外乱力による一過性の過大変位が発生している。その結果、変位ux1が外側閾値Toよりも大きくなり、切替部407によって高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)から通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)に切り替えられる。また、振れ回り変位に対する閾値Ti,Toの設定は解除される。

0105

期間(F)では、外乱力が消滅して増大した変位ux1が再び小さくなって、内側閾値Tiの範囲内となる。その結果、通常分解能変位信号X1(t),Y1(t)から高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)に切り替えられる。また、振れ回り半径rx1は小さいので、外側閾値Toは±10(μm)とされている。

0106

期間(G)は期間(F)から長時間経過した時点の期間であり、定格回転数は維持されているが、反応生成物が徐々に増加し、振れ回り半径rx1も徐々に増加している。しかし、この時点では、振れ回り半径rx1は外側閾値To=±10(μm)の範囲内となっているので、分解能倍率KはK0に維持されている。

0107

期間(H)は期間(G)からさらに長時間経過した時点の期間であり、反応生成物の体積が増加したことにより振れ回り半径rx1が外側閾値To=±10(μm)の範囲外となっている。その結果、分解能倍率KはK0からKIに切り替えられ、外側閾値Toも±10(μm)から±25(μm)に変更される。そのため、変位ux1が一時的に10(μm)を超えるが、外側閾値To=±25(μm)の範囲内なので、切替部407による高分解能変位信号X1k(t),Y1k(t)の選択状態は維持される。

0108

このように、第2の実施の形態では、図14に示すように、処理系Aの増幅部402Aにおいて変位変調波信号を分解能倍率K(ただし、K>1)で増幅した信号に基づいて高分解能変位信号を生成し、高分解能変位信号または低分解能変位信号に基づいて、定常応答振れ回り変位の振れ回り半径rx1,ry1を算出する定常応答抽出部Cの第1変換処理部409およびローパスフィルタ410と、分解能倍率Kの大きさを、振れ回り半径rx1,ry1の大きさに応じた複数の値のいずれか一つに変更するK設定部510とを備える。

0109

すなわち、振れ回り半径rx1に応じて分解能倍率Kを設定するようにしているので、振れ回り半径が増加する環境でも、振れ回り半径の大きさに応じた最適な分解能で磁気軸受制御ができ、振動性能の向上をはかることができる。例えば、反応生成物の堆積等によってロータシャフト5の振れ回り半径rx1が大きくなった場合でも、ADコンバータ403に入力される信号の大きさがADコンバータ403のフルスケールをオーバーするのを防止でき、変位信号による磁気軸受制御を適切に行うことができる。また、反応生成物の堆積が非常に少なく振れ回り半径への影響が無視できるほど小さい場合には、分解能倍率Kを大きく設定することで、分解能向上による低振動化を図ることができる。

0110

なお、K設定部510により分解能倍率Kの大きさを変更する構成は、図14のようにux1(t1),uy1(t)に基づいて高分解能変位信号と通常分解能変位信号とを切り替える構成に限らず、図5に示す比較例のように振れ回り変位を含む変位信号X1(t),Y1(t)を用いて切り替えを行う構成にも適用することができる。例えば、分解能倍率Kの切り替えを行うタイミングとして、振れ回り半径rx1が10(μm),25(μm),60(μm)になったときとする。

0111

図16(b)は閾値Ti,Toを示す図である。rx1=10(μm)の場合、前述したようにチャタリング防止のために少なくとも外側閾値Toを30(μm)とし、ヒステリシス幅を20(μm)にする必要がある。分解能倍率Kは、外側閾値To=30(μm)に対応付けてK<10/3のように設定される。同様に、rx1=25(μm)の場合にはTo=75(μm)およびヒステリシス幅=50(μm)、rx1=60(μm)の場合にはTo=180(μm)およびヒステリシス幅=120(μm)となる。ただし、非常のメカニカルベアリングの公称クリアランスが100(μm)ならば、rx1=60(μm)の場合はオーバーするので、その場合は、rx1=25(μm)までの閾値設定となる。

0112

−第3の実施の形態−
図18は、本発明の第3の実施の形態を説明する図である。本実施の形態では、図5に示す構成から定常応答抽出部Cを削除すると共に、処理系Aと処理系Bとで、バンドパスフィルタ401A,401Bの性能を異ならせ、さらに、増幅部404Aのゲインを(1/K1)としたことである。その他の構成は、図5に示すブロック図と同様である。本実施の形態では、変位が小さい状況では処理系Bによる通常分解能変位信号に代えて処理系Aによる高分解能変位信号を用いることで変位信号のSN比の改善を図ると共に、特に騒音の主要因となり得る高い周波数のノイズ成分を低減するようにした。

0113

図18に示すように、変位変調波信号の差分信号をADコンバータ403で取り込む際には、バンドパスフィルタ401A,401Bで不要ノイズ成分をカットしてからADコンバータ403で取り込むようにしている。このとき、バンドパスフィルタ401A,401BのQ値(=Q1,Q0)を高くして中心周波数(この場合、搬送波fc)へ狭帯域化する程、復調後変位信号の高周波成分を除去できる。

0114

ただし、Q値を高くすることのトレードオフとして、信号遅延が大きくなり、磁気軸受制御の安定性が低くなる。また、場合によっては、ロータの高次弾性固有振動数で発振を起こし、騒音、振動を発生するだけでなく、浮上制御が困難になる問題が生じる。

0115

まず、通常分解能変位信号を生成する処理系Bでは、バンドパスフィルタ401BのQ0は信号遅延による磁気軸受制御の安定性の低下が生じない程度のQ値とする。そして、高分解能変位信号を生成する処理系Aでは、バンドパスフィルタ401AのQ値Q1をQ1>Q0のように設定してより狭帯域化を図ると共に、増幅部404Aにおける増幅率(増幅した信号の振幅を再度縮小するための縮小率)を(1/K1)とする。そして、(1/K1)<(1/K)となるように、すなわち、K×(1/K1)<1となるようにK1を設定することで、増幅率(1/K1)を増幅率(1/K)よりも小さな増幅率とした。

0116

このように、高分解能変位信号においては、Q1>Q0と狭帯域化することで復調後変位信号の高周波成分を除去し、(1/K1)<(1/K)とすることでゲインを1以下に低下させるようにした。すなわち、Q1>Q0としたことによって位相余裕が低下した影響を、ゲインを下げることでゲイン余裕を増加させて相殺することで、従来分解能変位信号ラインと同程度の安定性を確保すること(すなわち、安定性指標である感度関数最大値を同等値とすること)ができる。

0117

なお、このような構成とすることに伴うトレードオフとして、外乱応答性能が従来分解能変位信号適用時よりも劣化するが、外乱応答性が必要とされる一過性の大きな変位が生じることが無い状態のみでしか高分解能変位信号を適用しないため、副作用を生じることはない。

0118

図19は、通常分解能変位信号を生成する処理系Bの、バンドパスフィルタ401Bにおける信号の遅延およびゲインの一例を示す図である。ここでは、センサキャリア周波数=10(kHz)、Q0=1とした。変位信号がバンドパスフィルタを通過すると、復調信号は変位信号から必ず遅延する。そのときの位相遅延量は、変位信号の周波数が高いほど大きい。図19(a)では、周波数=100(Hz)、1000(Hz)、2500(Hz)に対して、位相遅延量はほぼ0(deg)、10(deg)、20(deg)となる。

0119

ポンプのロータサイズにも依存するが、通常は1(kHz)帯まで制御が必要であり、騒音の主要因となる4(kHz)付近高調波については、制御は不要である。1(kHz)での位相遅延量は10(deg)なので、ロータシャフト5の弾性振動固有振動数での発振リスクは小さい。なお、処理系Bにおけるバンドパスフィルタ401BのQ値は低いので、図19(b)に示すように4(kHz)付近の振幅低減は少ない。

0120

図20は、高分解能変位信号を生成する処理系Aの、バンドパスフィルタ401Aにおける信号の遅延およびゲインの一例を示す図である。センサキャリア周波数は10(kHz)で、Q値はQ1=5である。図20(a)に示すように、周波数=100(Hz)、1000(Hz)、2500(Hz)における位相遅延量は、10(deg)、40(deg)、60(deg)となっている。また、図20(a)のように、騒音の一因である4(kHz)付近の高周波数成分が大幅に低減されている。そのため、高分解能変位信号が選択されているときには、騒音の低減が図られる。

0121

増幅率(1/K1)におけるK1の設定方法について、図21〜23を参照して説明する。図21は、処理系Aを用いた場合の開ループ伝達関数Gok(jw)と、処理系Bを用いた場合の開ループ伝達関数Go1(jw)とを示す図である。なお、図21では、インダクタンス方式の変位センサ49を用いて変位変調波信号を取得する場合の構成を示した。

0122

一般に、開ループ伝達関数Goを周波数スイープして、図22のように複素平面上に所謂ナイキスト線図をプロットした場合、安定性はGoa<Gob<Gocの順に高い。すなわち、複素平面上の軌跡が(−1)から離れている程安定性が高い。(−1)からの距離(|1+Go|)の逆数で定義される感度関数(1/(1+Go))で表現すると、感度関数の大きさの最大値が小さい程安定性が高い。

0123

ここで、図22に示すようにGok(jw)の軌跡がGo1(jw)の軌跡と同じ円上(−1を中心とする円)で接するか、あるいは、円の外側を通過するようにK1の値を予め決めておき、処理系Aのラインの安定性が処理系Bのラインと同等レベルになるようにする。

0124

ただし、K1の値の最適値への絞り込みは、現実には、製品開発時あるいは、製品出荷時の調整(試行錯誤)の結果として定まるため、少なくとも、処理系Bのラインよりもゲインが低くなるK×(1/K1)<1を満たすK1>Kを条件として定める。言い換えると、処理系Aのラインではバンドパスフィルタ401AのQ値を高くするので、図23においてφK<φ1となっているように、処理系Bのラインよりも必ず位相余裕が低下する。そのため、K×(1/K1)<1のように処理系Aのラインのゲインを処理系Bのラインのゲインよりも下げて、図23のg1<gkのようにゲイン余裕で補い、確実に安定性を高める。

0125

なお、第1の実施の形態の場合と同様に、図18の構成に、図3の定常応答抽出部Cを追加すると共に切替制御部508を切替制御部408で置き換え、定常応答以外の成分ux1(t),uy1(t)に基づいて切替部407による通常分解能変位信号と高分解能変位信号との切り替えを制御するようにしても良い。また、図24のように、定常応答抽出部Cおよび切替制御部408に加えて(K,K1,Q1)の値を設定するデータ設定部511をさらに設けるようにしても良い。データ設定部511は、予め(K,K1,Q1)のデータセット複数セット用意しておき、振れ回り半径rx1,ry1に基づいてデータセットを選択し、バンドパスフィルタ401Aおよび増幅部402A,404AにおけるQ1,KおよびK1の設定を変更する。

0126

このように、第3の実施の形態では、高分解能変位信号を生成する処理系Aにおいては、バンドパスフィルタ401AのQ値Q1は処理系Bのバンドパスフィルタ401BのQ値Q0よりも大きな値とすることで、騒音の主要因となる高い周波数のノイズ成分を除去すると共に、増幅部402Aの増幅率(すなわち分解能倍率)Kと増幅部404Aの増幅率(1/K1)との積が1よりも小さくなるように増幅率(1/K1)を設定することで、処理系Bと同等の安定性を確保するようにした。

0127

このような構成とすることで、変位信号の分解能向上によるSN比改善だけでなく、騒音の主要因となり得る高周波(4kHz含む)成分を積極的に低減することで、従来よりもさらに振動、騒音の低減を可能にし、一方で浮上制御の安定性を確保し信頼性が高い運転ができる。

0128

上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、ターボ分子ポンプを例に説明したが、磁気軸受式であれば他の真空ポンプにも適用することができる。

0129

1…ポンプユニット、2…コントロールユニット、2a…モータ駆動制御部、2b…軸受駆動制御部、5…ロータシャフト、28…回転センサ、43…励磁アンプ、44…制御部、45…磁気軸受電磁石、48…センサ回路、49…変位センサ、66a,66b…非常用のメカニカルベアリング、67,68,69…磁気軸受、401,401A,401B…バンドパスフィルタ、402A,402B,404A,404B…増幅部、405A,405B…復調演算部、406A,406B…ゲイン・オフセット調整部、407…切替部、408,508…切替制御部、412…PID制御部、413…PWM演算部、510…K設定部、511…データ設定部、A,B…処理系、C…定常応答抽出部、Ti…内側閾値、To…外側閾値

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