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概要
背景
鉄鉱石から銑鉄を取り出すための高炉では、粒径が小さい鉄鉱石を使用すると目詰まりを起こすおそれがあるため、粒径の大きな鉄鉱石を選別して製鉄原料として使用する。しかしながら、粒径が小さい鉄鉱石の割合は小さくないため、これらの粒径が小さい鉄鉱石の有効利用が求められる。そこで、粒径が小さい鉄鉱石は、焼き固めることによって焼結鉱としてから、高炉で製鉄原料としてされる。つまり、粒径が小さい鉄鉱石は、焼結鉱を製造するための焼結原料として利用される。
このような焼結鉱を製造する焼結工程では、排ガス中に鉄を含有する微粒子(本願では焼結ダストと呼ぶ)が含まれる。このような焼結ダストは、集塵機によって分離回収(捕集)されるが、この焼結ダストを焼結原料として再利用することにより鉄鉱石の利用率をさらに向上し、銑鉄ひいては各種鋼材の原料コストをさらに低減することが望まれる。
焼結ダストは、焼結原料として再利用するためには好ましくない物質、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ分(アルカリ化合物)を含んでいる。そこで、焼結ダストを水洗して、アルカリ化合物を除去することにより焼結原料として再利用することが提案されている(例えば特開昭54−116302号公報参照)。
しかしながら、焼結ダストは、アルカリ化合物に加え、塩素化合物、アンモニア等を含む。特に、アンモニアは、微量でも異臭がするが、水洗のみではこの異臭を十分に抑制できるレベルまで除去することは困難である。従って焼結ダストの処理には、より高度にアンモニアを除去するための処理が必要とされる。
また、製鉄ダストの水分量を調整し、一定の比率で石灰と混合することによって、石灰が水と反応することで生じる熱を利用してダスト中の化合物を熱分解する方法も提案されている(例えば特開2009−91643号公報参照)。この公報に記載の方法を焼結ダストに適用することも可能であるが、焼結ダストと石灰との混合は煩雑であり、より簡単に焼結ダストを処理できる方法が望まれる。
概要
本発明は、焼結ダストを比較的簡単に処理できる方法を提供することを課題とする。本発明は、焼結工程で回収される焼結ダストの処理方法であって、焼結ダストを水洗する工程と、上記水洗工程後の焼結ダストの乾燥質量に対する水分質量比を0.4以上0.7以下に調整する工程と、平均粒径10mm以上16mm以下の生石灰の堆積層の上に、上記水分質量比調整工程後の焼結ダストを層状に堆積させる工程とを備え、上記堆積工程で堆積させる焼結ダストの乾燥質量に対する直下の生石灰の堆積層の乾燥質量の比が1.5以上2.5以下であり、上記堆積工程で生石灰と焼結ダストとの堆積状態を15分以上保持することを特徴とする焼結ダストの処理方法である。
目的
本発明は、焼結ダストを比較的簡単に処理できる方法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
- 0件
- 牽制数
- 0件
この技術が所属する分野
技術分野
背景技術
0002
鉄鉱石から銑鉄を取り出すための高炉では、粒径が小さい鉄鉱石を使用すると目詰まりを起こすおそれがあるため、粒径の大きな鉄鉱石を選別して製鉄原料として使用する。しかしながら、粒径が小さい鉄鉱石の割合は小さくないため、これらの粒径が小さい鉄鉱石の有効利用が求められる。そこで、粒径が小さい鉄鉱石は、焼き固めることによって焼結鉱としてから、高炉で製鉄原料としてされる。つまり、粒径が小さい鉄鉱石は、焼結鉱を製造するための焼結原料として利用される。
0003
このような焼結鉱を製造する焼結工程では、排ガス中に鉄を含有する微粒子(本願では焼結ダストと呼ぶ)が含まれる。このような焼結ダストは、集塵機によって分離回収(捕集)されるが、この焼結ダストを焼結原料として再利用することにより鉄鉱石の利用率をさらに向上し、銑鉄ひいては各種鋼材の原料コストをさらに低減することが望まれる。
0004
焼結ダストは、焼結原料として再利用するためには好ましくない物質、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ分(アルカリ化合物)を含んでいる。そこで、焼結ダストを水洗して、アルカリ化合物を除去することにより焼結原料として再利用することが提案されている(例えば特開昭54−116302号公報参照)。
0005
しかしながら、焼結ダストは、アルカリ化合物に加え、塩素化合物、アンモニア等を含む。特に、アンモニアは、微量でも異臭がするが、水洗のみではこの異臭を十分に抑制できるレベルまで除去することは困難である。従って焼結ダストの処理には、より高度にアンモニアを除去するための処理が必要とされる。
0006
また、製鉄ダストの水分量を調整し、一定の比率で石灰と混合することによって、石灰が水と反応することで生じる熱を利用してダスト中の化合物を熱分解する方法も提案されている(例えば特開2009−91643号公報参照)。この公報に記載の方法を焼結ダストに適用することも可能であるが、焼結ダストと石灰との混合は煩雑であり、より簡単に焼結ダストを処理できる方法が望まれる。
先行技術
0007
特開昭54−116302号公報
特開2009−91643号公報
発明が解決しようとする課題
0008
上記不都合に鑑みて、本発明は、焼結ダストを比較的簡単に処理できる方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
0009
上記課題を解決するためになされた発明は、焼結工程で回収される焼結ダストの処理方法であって、焼結ダストを水洗する工程と、上記水洗工程後の焼結ダストの乾燥質量に対する水分質量比を0.4以上0.7以下に調整する工程と、平均粒径10mm以上16mm以下の生石灰の堆積層の上に、上記水分質量比調整工程後の焼結ダストを層状に堆積させる工程とを備え、上記堆積工程で堆積させる焼結ダストの乾燥質量に対する直下の生石灰の堆積層の乾燥質量の比が1.5以上2.5以下であり、上記堆積工程で生石灰と焼結ダストとの堆積状態を15分以上保持することを特徴とする。
0010
当該焼結ダストの処理方法は、上記水洗工程を有することにより、焼結ダストからアンモニア等の不純物の大半を除去することができる。また、当該焼結ダストの処理方法は、さらに水分質量比を上記範囲内に調整する水分質量比調整工程と、平均粒径が上記範囲内の生石灰の堆積層の上に、上記範囲内の乾燥質量比で焼結ダストを堆積させる堆積工程とを備えるので、生石灰の堆積層の粒子の隙間に焼結ダストが落ち込み、焼結ダストの水分が生石灰と反応することで反応熱により、少ないエネルギーコストで焼結ダスト中の化合物を分解除去することができる。特に、生石灰の平均粒径を上記範囲内としたにより、焼結ダストと生石灰とを撹拌しなくても、生石灰の隙間に焼結ダストが入り込むことができ、かつ焼結ダストが生石灰の堆積層の中に入りすぎて温度が高くなりすぎること防止できるので、焼結ダスト全体の化合物を生石灰の反応熱により容易かつ確実に除去することができる。
0011
なお、「平均粒径」とは、全粒子をJIS−Z8801−1(2006)に規定される金属製網篩で目の大きな篩から順に篩分けした場合に、篩の上に残る粒子の累積体積が全粒子の体積の50%になる篩の目の大きさ(目開き)を意味する。
発明の効果
0012
上述のように、本発明の焼結ダストの処理方法は、焼結ダストを比較的簡単に処理できる。
図面の簡単な説明
0013
焼結ダストの加熱温度と加熱後のアンモニア含有量との関係を示すグラフである。
焼結ダストのアンモニア含有量と雰囲気中のアンモニア濃度との関係を示すグラフである。
焼結ダストの温度保持時間とアンモニア含有量との関係を示すグラフである。
焼結ダストの水分質量比と層内温度との関係を示すグラフである。
生石灰の平均粒径と層内温度との関係を示すグラフである。
生石灰の焼結ダストに対する乾燥質量比と層内温度との関係を示すグラフである。
新品の生石灰を用いた場合と再利用品の生石灰を用いた場合との層内温度の差異を示すグラフである。
0014
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
0016
上記焼結工程は、粒径が小さい鉄鉱石を焼き固めて焼結鉱を製造する公知の工程である。焼結ダストは、焼結工程の排ガス中に含まれるダストを集塵機で分離回収したものであるため、例えば燃料等に由来する化合物等を含有する。
0017
中でも、当該処理方法によって除去されるべき不純物としては、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム等のアルカリ化合物、塩素化合物、アンモニアなどが挙げられる。焼結ダストを焼結原料の一部として使用して焼結鉱を製造する場合、アルカリ化合物は、低温還元粉化により高炉シャフト部における通気抵抗を増大させ、塩素は炉の耐火物を劣化させ、アンモニアは臭気を発生する。
0018
一般的な焼結ダストは、鉄を40質量%以上50質量%以下、アルカリ化合物を2質量%以上3質量%以下、塩素化合物を2質量%以上3質量%以下、アンモニアを0.5質量%以上1質量%以下含む。
0019
これらの不純物を除去する当該焼結ダストの処理方法は、焼結ダストを水洗する工程と、上記水洗工程後の焼結ダストの乾燥質量に対する水分質量比を調整する工程と、所定の平均粒径を有する生石灰の堆積層の上に、上記水分質量比調整工程後の焼結ダストを層状に堆積させる工程とを備える。
0020
<水洗工程>
水洗工程では、例えば焼結ダストを洗浄水中で撹拌することによって、焼結ダスト中の不純物を洗い落とす。この水洗工程では、一定時間以上撹拌した後、一定時間以上放置することで不純物を溶出させることが好ましい。
0021
焼結ダストの単位質量あたりの洗浄水の水量の下限としては、1.5L/kgが好ましく、2.5L/kgがより好ましい。一方、焼結ダストの単位質量あたりの洗浄水の水量の上限としては、100L/kgが好ましく、50L/kgがより好ましい。洗浄水の水量が上記下限に満たない場合、洗浄中に洗浄水の不純物濃度が大きくなることで十分な洗浄効果が得られないおそれがある。逆に、洗浄水の水量が上記上限を超える場合、洗浄時の撹拌、洗浄後の焼結ダストの分離、及び使用後の洗浄水の処理のためのコストが不必要に増大するおそれがある。
0022
洗浄工程における撹拌時間の下限としては、撹拌効率や洗浄水量にもよるが、10分が好ましく、15分がより好ましい。一方、洗浄工程における撹拌時間の上限としては、120分が好ましく、60分がより好ましい。洗浄工程における撹拌時間が上記下限に満たない場合、不純物の除去が不十分となるおそれがある。逆に、洗浄工程における撹拌時間が上記上限を超える場合、不必要に処理コストが増大するおそれがある。
0023
洗浄工程における撹拌時間とその後の放置時間との合計時間として定義される洗浄時間の下限としては、30分が好ましく、60分がより好ましい。一方、上記洗浄時間の上限としては、5時間が好ましく、3時間がより好ましい。上記洗浄時間が上記下限に満たない場合、不純物の除去が不十分となるおそれがある。逆に、上記洗浄時間が上記上限を超える場合、不必要に処理コストが増大するおそれがある。
0024
水洗工程におけるアルカリ化合物及び塩素化合物の除去率の下限としては、70質量%が好ましく、80質量%がより好ましい。水洗工程におけるアルカリ化合物及び塩素化合物の除去率を上記下限以上とすることによって、焼結ダストを焼結原料として用いた場合に、低温還元粉化や耐火物の劣化を十分に防止することができる。
0025
また、水洗工程におけるアンモニアの除去率の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、水洗工程におけるアンモニアの除去率の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。水洗工程におけるアンモニアの除去率が上記下限に満たない場合、後述する堆積工程で残留するアンモニアを十分に除去することが困難となるおそれがある。逆に、水洗工程におけるアンモニアの除去率が上記上限を超える場合、水洗工程が不必要に非効率となるおそれがある。
0027
調整後の水分質量比の下限としては、0.4であり、0.45が好ましい。一方、調整後の水分質量比の上限としては、0.7であり、0.65がより好ましい。調整後の水分質量比が上記下限に満たない場合、後述する堆積工程での反応熱が不足して十分に焼結ダストを昇温できないことによりアンモニア等の除去が不十分となるおそれがある。逆に、調整後の水分質量比が上記上限を超える場合、反応熱が過多となって突沸(水分の爆発的な蒸発)を生じるおそれや、生石灰の堆積層の上に留まる焼結ダストの水分の熱負荷が大きくなって十分に焼結ダストを昇温できないことによりアンモニア等の除去が不十分となるおそれがある。
0028
<堆積工程>
堆積工程では、生石灰の堆積層の上に焼結ダストを層状に堆積させる。この堆積工程では、生石灰の堆積層と焼結ダストの堆積層とを交互に積層してもよい。従って、堆積工程は、例えばホッパー、サイロ等の中に生石灰と焼結ダストとを交互に投入し、ホッパー等の下部から生石灰及び焼結ダストを抜き出すことで、連続的に行うことができる。
0029
この堆積工程において、生石灰の堆積層の上に焼結ダスト堆積させると、焼結ダストの一部が生石灰の粒子の隙間に落下して、焼結ダストの水分(H2O)が生石灰(酸化カルシウム:CaO)と反応して消石灰(水酸化カルシウム:Ca(OH)2)を生成する。この反応は発熱反応であり、この熱によって焼結ダストに含まれる化合物を分解して除去することで、焼結ダストを例えば焼結原料等として使用しやすくすることができる。
0030
また、この堆積工程では、生石灰と焼結ダストとの堆積状態を一定時間以上保持する。これにより、焼結ダストが昇温した状態を維持して不必要な不純物の除去を確実にする。なお、この堆積状態を維持する時間とは、上述のようにホッパー等に連続的に堆積層を形成する場合には、1つの焼結ダストの堆積層を形成してからその直下の生石灰の堆積層が排出され始めるまでの時間と解釈される。
0031
堆積工程における焼結ダストの平均到達温度の下限としては、250℃が好ましく、300℃がより好ましい。一方、堆積工程における焼結ダストの平均到達温度の上限としては、500℃が好ましく、400℃がより好ましい。焼結ダストの平均到達温度が上記下限に満たない場合、不必要な不純物の除去が不十分となるおそれがある。逆に、焼結ダストの平均到達温度が上記上限を超える場合、生石灰の消費量が大きくなることで不必要にランニングコストが増大するおそれや、設備のメンテナンスコストが不必要に増大するおそれがある。
0032
図1に、焼結ダスト20gを加熱し、それぞれ異なる加熱温度(最終到達温度)で30分間保持した後のアンモニアの含有量を示す。図示するように、最終到達温度を250℃以上とすることで、アンモニア含有量を半分以下に低減できる。
0033
この堆積工程後の焼結ダストにおけるアンモニアの含有量の上限としては、300質量ppmが好ましく、200質量ppmがより好ましい。堆積工程後の焼結ダストにおけるアンモニアの含有量が上記上限を超える場合、悪臭防止法による規制値を上回る臭気が発生するおそれがある。なお、上記規制値は、空気中のアンモニア濃度として、約質量1ppmに相当する。
0034
図2に、容量1Lの容器にアンモニア含有量が異なる焼結ダスト20gを投入し、24時間経過時の容器内のアンモニア濃度を測定した結果を示す。図示するように、焼結ダストのアンモニア含有率を300質量ppm以下とすることで、雰囲気中の臭気を悪臭防止法による規制値以下に留めることができる。
0035
上記堆積状態の保持時間の下限としては、15分であり、20分が好ましく、30分がより好ましい。一方、上記堆積状態の保持時間の上限としては、特に限定されない。上記堆積状態の保持時間が上記下限に満たない場合、焼結ダストの加熱が不十分となることで不必要な不純物の除去が不十分となるおそれがある。逆に、上記堆積状態の保持時間を大きくしても、焼結ダスト中の水分を消費することによって反応が停止するため、焼結ダストが過剰に加熱されることはなく、不都合は生じない。このため、例えば夜間や休日等の間、上記堆積状態のまま放置してもよい。
0036
図3に、焼結ダスト20gを250℃に加熱して保持した場合のこの温度保持時間とアンモニア含有量との関係を測定した結果を示す。このように、焼結ダストを250℃以上で15分以上保持することにより、焼結ダストからの臭気発生が問題とならない程度にアンモニア含有量を低減できる。
0037
(生石灰)
生石灰は、篩い分けにより、一定範囲内の粒径を有するものを選別して使用することが好ましい。
0038
また、生石灰が焼結ダストの水分と反応して消石灰となると、生成した消石灰は生石灰の粒子から剥がれ落ちて粉状になる。このため、堆積工程後の消石灰を含む生石灰及び焼結ダストの混合物を篩い分けし、粒径が大きい生石灰を回収することで、生石灰の再利用が可能となる。一方、粒径が大きい生石灰を分離した後の焼結ダスト、小径の生石灰及び消石灰は、そのまま鉄鉱石と混合して焼結原料とすることができるだけでなく、生石灰が焼結性及び歩留まりの向上に寄与する。
0039
生石灰の平均粒径の下限としては、10mmであり、11mmが好ましい。一方、生石灰の平均粒径の上限としては、16mmであり、13mmが好ましい。生石灰の平均粒径が上記下限に満たない場合、生石灰の粒子間に焼結ダストが十分に入り込むことができなくなることで発熱が不十分となるおそれや温度がばらつくおそれがある。逆に、生石灰の平均粒径が上記上限を超える場合、焼結ダストが生石灰の堆積層の下層まで落下して生石灰の堆積層の中層以上の部分に十分な水分を供給できないことで焼結ダストを十分に昇温できないおそれや、焼結ダストが生石灰の層の中に入り込みすぎて温度が高くなりすぎるおそれがある。
0040
また、生石灰の最小粒径の下限としては、7mmが好ましく、8mmがさらに好ましい。生石灰の最小粒径が上記下限に満たない場合、生石灰の粒子間の隙間が小さくなることで、発熱が不十分となるおそれや温度がばらつくおそれがある。なお、「最小粒径」とは、全粒子をJIS−Z8801−1(2006)に規定される金属製網篩で目の大きな篩から順に篩分けした場合に、篩の上に残る粒子の累積体積が全粒子の体積の90%になる篩の目の大きさ(目開き)を意味する。
0041
また、生石灰の最大粒径の上限としては、19mmが好ましく、16mmがさらに好ましい。生石灰の最大粒径が上記上限を超える場合、生石灰の粒子間の隙間が大きくなることで、生石灰の堆積層の中で焼結ダストが偏在して局所的に温度が高くなりすぎるおそれがある。なお、「最大粒径」とは、全粒子をJIS−Z8801−1(2006)に規定される金属製網篩で目の大きな篩から順に篩分けした場合に、篩の上に残る粒子の累積体積が全粒子の体積の10%になる篩の目の大きさ(目開き)を意味する。
0042
生石灰の堆積層の平均厚さの下限としては、20mmが好ましく、30mmがより好ましい。一方、生石灰の堆積層の平均厚さの上限としては、500mmが好ましく、300mmがより好ましい。生石灰の堆積層の平均厚さが上記下限に満たない場合、層の厚さのばらつきが大きくなることで温度がばらつくおそれがある。逆に、生石灰の堆積層の平均厚さが上記上限を超える場合、焼結ダストの温度上昇に寄与しない余分な生石灰が多くなり、処理コストが不必要に増加するおそれがある。
0043
この堆積工程において、層状に堆積させる焼結ダストの乾燥質量に対する直下の生石灰の堆積層の乾燥質量の比の下限としては、1.5であり、1.8が好ましく、1.9がより好ましい。一方、上記乾燥質量の比の上限としては、2.5であり、2.2が好ましく、2.1がより好ましい。上記乾燥質量の比が上記下限に満たない場合、相対的に焼結ダストの熱容量が大きくなることで十分な温度上昇が得られないおそれがある。逆に、上記乾燥質量の比が上記上限を超える場合、相対的に生石灰のへの焼結ダストによる水分供給量が少なくなることでやはり十分な温度上昇が得られないおそれがある。
0044
<利点>
当該焼結ダストの処理方法は、上述のように、焼結ダストと生石灰とを混合する工程を設けることなく、生石灰と水との反応熱により焼結ダストから望ましくない不純物を比較的容易に除去することができる。
0045
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
0046
当該焼結ダストに処理方法は、焼結ダストのアンモニア濃度を十分に低減でき、臭気の発生を防止できるため、処理後の焼結ダストを焼結原料として使用する場合だけでなく、他の用途に利用する場合にも適用できる。
0047
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
0051
(生石灰)
上記生石灰としては、篩い分けにより粒度を調節したものをそれぞれ1000g使用した。生石灰の粒度としては、平均粒径7.5mm(最小粒径5.0mm超、最大粒径10.0mm以下)、平均粒径8mm(最小粒径6.0mm超、最大粒径10.0mm以下)、平均粒径10mm(最小粒径7.0mm超、最大粒径13.0mm以下)、平均粒径13mm(最小粒径10.0mm、最大粒径超16.0mm以下)、及び平均粒径16mm(最小粒径13.0mm超、最大粒径19.0mm以下)とした。なお、この生石灰の堆積層の平均厚さは、いずれの場合も約50mmであった。
0052
(焼結ダスト)
上記焼結ダストとして、焼結鉱の製造設備の電気集塵機で分離回収されたものを乾燥質量でそれぞれ500g秤量し、ビーカー内で水を加えて十分に撹拌してから使用した。この焼結ダストは、鉄が45質量%であり、塩素化合物を3質量%、アルカリ化合物(Na2O及びK2O)を3.2質量%、アンモニアを0.5質量%含んでいた。また、この焼結ダストの平均粒径は100μm、粒度は1mmであった。なお、焼結ダストの「平均粒径」及び「粒度」は、マイクロトラックベル社の「マイクロトラック粒度分析計」により得られる粒度分布において、体積積算値が50%となる値及び体積積算値が99%となる値である。
0054
表1に示すように、生石灰の平均粒径、焼結ダストの水分量、及び生石灰の焼結ダストに対する乾燥質量比(焼結ダストの堆積量で調節)を異ならせた試験No.1〜14を行った。なお、表中の「−」は、測定値がないことを意味する。
0055
0056
上記試験No.3〜6、12は、焼結ダストの乾燥質量に対する水分質量比だけが異なる。図4には、これらの試験において測定された温度を、水分質量比との関係として示す。図示するように、水分質量比を0.4以上0.7以下とすることで、生石灰の発熱量と焼結ダストの熱負荷とのバランスがとれ、焼結ダストを十分に昇温してアンモニアを除去することができると考えられる。なお、全体として、下層側の温度が高い傾向を示すが、これは、焼結ダストが生石灰の粒子間に落ち込むことにより生石灰に水分を供給するものの、下層まで落ち込む焼結ダストの量が少なく、上層では焼結ダストが多くなることに起因すると考えられる。
0057
上記試験No.1,2、6、13、14は、生石灰の平均粒径だけが異なる。図5には、これらの試験において測定された温度を、生石灰の平均粒径との関係として示す。図示するように、生石灰の平均粒径を10m以上16mm以下とすることで、生石灰の隙間への焼結ダストの落下量を適切化することができ、焼結ダストを十分に昇温してアンモニアを除去することができると考えられる。
0058
上記試験No.7〜11は、焼結ダストに対する生石灰の質量比だけが異なる。図6には、これらの試験において測定された温度を、焼結ダストに対する生石灰の質量比との関係として示す。図示するように、焼結ダストに対する生石灰の質量比を1.5以上2.5以下とすることで、焼結ダストの温度を適切化することができ、効果的にアンモニアを除去できると考えられる。
0059
<再利用試験>
続いて、上記評価試験と同様の条件で、新品の生石灰を平均粒径10mmになるよう篩い分けしたものを堆積した上に水分量を調整した焼結ダストを積層して60分後に温度を測定した後、生石灰、生石灰が水分と反応して形成された消石灰及び焼結ダストの混合物を篩い分けすることにより、平均粒径10mm(最小粒径7.0mm超、最大粒径13.0mm以下)の生石灰を回収したもの(再利用品)で同様に堆積層を形成した上に焼結ダストを積層して60分後に温度を測定した。なお、焼結ダストの水分質量比は0.7、焼結ダストに対する生石灰の質量比は2.0とした。
0060
図7に、新品の生石灰を用いた場合と、再利用品の生石灰を用いた場合とで測定された温度を並べて示す。このように、当該焼結ダストの処理方法は、生石灰を繰り返し使用できることが確認された。
0061
<連続堆積試験>
続いて、上記評価試験と同様の装置構成で、断熱材の層の上に生石灰の堆積層と焼結ダストの堆積層とを交互に各2層積層し、下の生石灰の堆積層の下層、中層、下の焼結ダストの堆積層の内部、及び上の生石灰の堆積層の中層の温度を連続して測定し、各位置の温度が250℃以上となっていた時間(温度継続時間)を確認した。なお、焼結ダストの水分質量比は0.7、生石灰の平均粒径は10μm、焼結ダストに対する生石灰の質量比は2.0とした。
実施例
0062
この結果、下の生石灰の堆積層の下層の温度継続時間は75分、下の生石灰の堆積層の中層の生石灰の堆積層の温度継続時間は56分、焼結ダストの堆積層の内部の温度継続時間は63分、上の生石灰の堆積層の中層の温度継続時間は30分であった。このように、生石灰の堆積層と焼結ダストの堆積層とを交互に積層することによって、より確実に焼結ダストの温度を上昇させて、アンモニアを除去できると考えられる。
0063
本発明は、焼結鉱を製造するための焼結原料の利用率向上のために特に好適に利用することができる。