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技術 電磁鋼板

出願人 日本製鉄株式会社
発明者 屋鋪裕義名取義顕高橋克東根和隆松本卓也
出願日 2016年3月16日 (4年9ヶ月経過) 出願番号 2016-052147
公開日 2017年9月21日 (3年3ヶ月経過) 公開番号 2017-166023
状態 特許登録済
技術分野 電磁鋼板の製造 軟質磁性材料
主要キーワード フローティング式 コンプレッサーモータ 打抜き加工後 打抜き金型 塑性歪み フローター モータ鉄心 上降伏点
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年9月21日)のものです。
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図面 (3)

課題

磁気特性機械特性及び打抜き加工時の寸法精度に優れた電磁鋼板を提供する。

解決手段

質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

概要

背景

近年、地球温暖化問題、環境汚染問題、およびエネルギー問題が益々大きな関心を集めている。これらの諸問題の解決に向けて、電気機器に多数使用されるモータおよび発電機の効率向上が重要な課題となっている。具体的には、モータおよび発電機の鉄心材料である電磁鋼板磁気特性の改善が求められている。

また、パワーエレクトロニクス進展により、モータおよび発電機の駆動周波数を従来の商用周波域を超える高周波域まで活用するものが増加している。このため、鉄心材料に用いられる電磁鋼板において、低周波域のみならず高周波域での鉄損が低い製品に対する要望が高まっている。特に、エアコンおよび冷蔵庫コンプレッサーモータ、またはハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)および電気自動車(Electric:Vehicle:EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている。更に、高周波駆動時高速回転に耐えうる電磁鋼板の材料強度に対する要求も、厳しさを増している。

鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、例えば、電磁鋼板を高合金化し、固有抵抗の増加によって渦電流損を低下させることが有効である。また、高合金化による固溶強化は、電磁鋼板の強度上昇にも寄与する。しかし、電磁鋼板の合金量の増加は、磁束密度を低下させるため、低鉄損および高強度と、高磁束密度との両立させることは困難であった。

以上のような問題を解決するために、例えば、以下の特許文献1では、質量%で、Si:2.5%〜4.5%と、Mn:0.005%〜1.0%とを含み、かつAlの含有量が200ppm以下であり、S、NおよびOの含有量がそれぞれ30ppm以下であり、残部が実質的にFeである電磁鋼板であって、平均結晶粒径が0.05mm〜0.50mmであり、かつ{110}<001>方位からの方位差が20°以内である結晶粒面積率が25%〜75%であり、さらに引張強度が400MPa以上であることを特徴とする、高周波磁気特性および機械強度特性に優れたモータ鉄心用の電磁鋼板が提案されている。

また、特許文献1では、上記の特徴に加えて、質量%で、P:0.005%〜0.20%、Ni:0.01%〜3.50%、Sn:0.01%〜0.20%、Sb:0.005%〜0.50%、Cu:0.01%〜0.50%、およびCr:0.01%〜1.50%のうちから選択された少なくとも一種以上の元素をさらに含有する電磁鋼板も提案されている。

また、以下の特許文献2では、質量%で、Si:0.8%〜2.5%、Mn:0.1%〜2.5%、sol.Al:1.5%以下を含有し、P:0.005%〜0.30%、またはNi:0.05%〜1.5%の少なくともいずれか1つ以上をさらに含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、Feの質量分率と鋼の密度との積が7.35以上、磁束密度がB50で1.70T以上、降伏強度が300MPa以上、かつ、厚さが0.15mm以上0.40mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板が提案されている。

概要

磁気特性、機械特性及び打抜き加工時の寸法精度に優れた電磁鋼板を提供する。質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

目的

特に、エアコンおよび冷蔵庫のコンプレッサーモータ、またはハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)および電気自動車(Electric:Vehicle:EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+sol.Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板

請求項2

質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下、Sn:0.001%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

技術分野

0001

本発明は、モータおよび発電機等の回転機の性能向上に有効な電磁鋼板に関する。

背景技術

0002

近年、地球温暖化問題、環境汚染問題、およびエネルギー問題が益々大きな関心を集めている。これらの諸問題の解決に向けて、電気機器に多数使用されるモータおよび発電機の効率向上が重要な課題となっている。具体的には、モータおよび発電機の鉄心材料である電磁鋼板の磁気特性の改善が求められている。

0003

また、パワーエレクトロニクス進展により、モータおよび発電機の駆動周波数を従来の商用周波域を超える高周波域まで活用するものが増加している。このため、鉄心材料に用いられる電磁鋼板において、低周波域のみならず高周波域での鉄損が低い製品に対する要望が高まっている。特に、エアコンおよび冷蔵庫コンプレッサーモータ、またはハイブリッド車(Hybrid Electric Vehicle:HEV)および電気自動車(Electric:Vehicle:EV)の駆動モータまたは発電機では、高周波域での鉄損が低く、かつ高磁束密度である電磁鋼板が望まれている。更に、高周波駆動時高速回転に耐えうる電磁鋼板の材料強度に対する要求も、厳しさを増している。

0004

鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、例えば、電磁鋼板を高合金化し、固有抵抗の増加によって渦電流損を低下させることが有効である。また、高合金化による固溶強化は、電磁鋼板の強度上昇にも寄与する。しかし、電磁鋼板の合金量の増加は、磁束密度を低下させるため、低鉄損および高強度と、高磁束密度との両立させることは困難であった。

0005

以上のような問題を解決するために、例えば、以下の特許文献1では、質量%で、Si:2.5%〜4.5%と、Mn:0.005%〜1.0%とを含み、かつAlの含有量が200ppm以下であり、S、NおよびOの含有量がそれぞれ30ppm以下であり、残部が実質的にFeである電磁鋼板であって、平均結晶粒径が0.05mm〜0.50mmであり、かつ{110}<001>方位からの方位差が20°以内である結晶粒面積率が25%〜75%であり、さらに引張強度が400MPa以上であることを特徴とする、高周波磁気特性および機械強度特性に優れたモータ鉄心用の電磁鋼板が提案されている。

0006

また、特許文献1では、上記の特徴に加えて、質量%で、P:0.005%〜0.20%、Ni:0.01%〜3.50%、Sn:0.01%〜0.20%、Sb:0.005%〜0.50%、Cu:0.01%〜0.50%、およびCr:0.01%〜1.50%のうちから選択された少なくとも一種以上の元素をさらに含有する電磁鋼板も提案されている。

0007

また、以下の特許文献2では、質量%で、Si:0.8%〜2.5%、Mn:0.1%〜2.5%、sol.Al:1.5%以下を含有し、P:0.005%〜0.30%、またはNi:0.05%〜1.5%の少なくともいずれか1つ以上をさらに含有し、残部がFeおよび不可避的不純物よりなり、Feの質量分率と鋼の密度との積が7.35以上、磁束密度がB50で1.70T以上、降伏強度が300MPa以上、かつ、厚さが0.15mm以上0.40mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板が提案されている。

先行技術

0008

特開2002−146491号公報
特開2002−371340号公報

発明が解決しようとする課題

0009

しかし、上記特許文献1に開示された電磁鋼板は、Al含有量が少ないため、磁気特性のばらつきが大きかった。また、電磁鋼板の強度が高くなった場合、打抜き加工時の寸法精度が満足できる水準にならなかった。

0010

また、上記特許文献2に開示された電磁鋼板では、Si含有量が少ないため、高周波鉄損と機械特性との両立が満足できる水準にならなかった。また、電磁鋼板の強度が高くなった場合、打抜き加工時の寸法精度も満足できる水準にならなかった。

0011

そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、鉄損が低く、高磁束密度かつ高強度であり、打抜き加工時の寸法精度に優れた電磁鋼板を提供することにある。

課題を解決するための手段

0012

本発明者らは、電気抵抗の増加による鉄損低減効果、および固溶強化能が高いSiを3.0質量%以上4.0質量%以下で添加し、固溶強化能および磁束密度改善効果が高いPを0.03質量%以上0.15質量%以下で添加したうえで、更にAlおよびMnを適量添加して、3.5質量%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0質量%の高合金材とすることにより、磁束密度の低減を抑えつつ、高周波鉄損の改善と高強度化とを達成可能であることを把握した。

0013

しかし、降伏強度が400MPa以上の電磁鋼板では、打抜き加工時の寸法精度が劣ることが判明したため、打抜き加工時の寸法精度への対応も含めてさらに検討を行った。その結果、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおいて、(211)面のピーク半価幅を0.16°以下に制御することにより、打抜き加工時の寸法精度の改善に目処が得られることを見出した。これらの知見を参照することにより、本発明者らは、磁気特性、機械特性及び寸法精度に優れた電磁鋼板が得られることを見出した。

0014

上記知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。

0015

(1)質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

0016

(2)質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下、Sn:0.001〜0.15%を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルの(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

発明の効果

0017

以上説明したように本発明によれば、磁束密度が高く、高周波鉄損が低く、かつ高強度であり、打抜き加工時の寸法精度が良好な、電磁鋼板を提供することが可能である。

図面の簡単な説明

0018

X線回折プロファイルにおけるピーク半価幅を説明する模式図である。
打抜き加工時の寸法精度に対する降伏強度、および(211)面のピーク半価幅の影響を示すグラフ図である。

0019

以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。

0020

本発明者らは、化学組成と、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルの形状とを抜本的に見直すことにより、磁気特性、機械特性および加工性がともに優れた電磁鋼板を得ることに成功した。

0021

本発明の一実施形態に係る電磁鋼板は、以下のとおりである。本実施形態に係る電磁鋼板は、具体的には、以下の特徴を有する無方向性電磁鋼板である。

0022

(1)質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

0023

(2)質量%で、C:0.005%以下、Si:3.0%以上4.0%以下、Mn:3.0%以下、S:0.004%以下、sol.Al:0.1%以上1.5%以下、P:0.03%以上0.15%以下、Sn:0.001%以上0.15%以下を含有し、残部がFe及び不純物からなり、3.5%≦Si+Al+0.5×Mn≦5.0%であり、降伏強度が400MPa以上であり、鋼板表面で測定したX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅が0.16°以下である、電磁鋼板。

0024

<1.鋼の化学組成について>
以下では、まず、本実施形態に係る電磁鋼板の鋼の化学組成について、詳細に説明する。なお、以下では特に断りのない限り、「%」との表記は「質量%」を表わすものとする。また、本実施形態に係る電磁鋼板の鋼の化学組成において、以下で説明する元素以外の残部は、Feおよび不純物からなる。

0025

[C:0.005%以下]
C(炭素)は、鉄損劣化を引き起こす元素である。そこで、本実施形態に係る電磁鋼板では、Cの含有量の上限を0.005%とする。Cの含有量が0.005%超過となる場合、電磁鋼板において鉄損劣化が生じ、良好な磁気特性を得ることができないため、好ましくない。Cの含有量は、望ましくは0.004%以下であり、更に望ましくは0.003%以下である。なお、Cの含有量は、少ないほどよく、Cの含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.0001%である。

0026

[Si:3.0%以上4.0%以下]
Si(ケイ素)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減させ、高周波鉄損を改善する元素である。また、Siは、固溶強化能が大きいため、電磁鋼板の高強度化にも有効な元素である。これらの効果を十分に発揮させるためには、3.0%以上のSiを含有させることが必要である。ただし、Siの含有量が4.0%超過となる場合、電磁鋼板の加工性が著しく劣化するため、例えば、電磁鋼板の冷間圧延が困難になる。そのため、Siの含有量の上限は、4.0%とする。Siの含有量は、望ましくは3.1%以上3.9%以下であり、更に望ましくは3.2%以上3.8%以下である。

0027

[Mn:3.0%以下]
Mn(マンガン)は、鋼の電気抵抗を上昇させて渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。ただし、Mnの含有量が3.0%超過となる場合、磁束密度の低下が顕著となるため、Mnの含有量の上限は、3.0%とする。Mnの含有量は、望ましくは2.6%以下であり、更に望ましくは2.2%以下である。なお、Mnの含有量が少ない場合でも、SiおよびAlの含有量を高めて電気抵抗を高めれば、電磁鋼板の高周波鉄損を低減することができるので、Mnの含有量の下限値は特に限定されないが、例えば、0.01%である。

0028

[sol.Al(酸可溶性Al):0.1%以上1.5%以下]
Al(アルミニウム)は、電磁鋼板の電気抵抗を上昇させることで渦電流損を低減し、高周波鉄損を改善するために有効な元素である。sol.Al(単に、Alとも称する)の含有量が0.1%未満である場合、電気抵抗上昇の効果が小さく、また、AlNが電磁鋼板中に微細析出するため、結晶粒が微細となることで鉄損低減に悪影響を及ぼす。従って、Alの含有量の下限値は、0.1%とする。一方、Alの含有量が1.5%を超える場合、電磁鋼板の磁束密度の低下が著しい。従って、Alの含有量は、0.1%以上1.5%以下とした。Alの含有量は、望ましくは0.2%以上1.4%以下であり、更に望ましくは0.3%以上1.3%以下である。

0029

[P:0.03%以上0.15%以下]
P(リン)は、固溶強化能が大きく、加えて磁気特性の向上に有利な{100}集合組織を増加させる効果も有するため、高強度と高磁束密度とを両立するうえで極めて有効な元素である。更に、{100}集合組織の増加は、鋼板板面内の面内における機械特性の異方性を低減することに寄与するため、Pは、電磁鋼板の打抜き加工時の寸法精度を改善する効果も有する。このような強度、磁気特性、および寸法精度を改善する効果を得るためには、電磁鋼板にPを0.03%以上含有させることが必要である。ただし、Pの含有量が0.15%を超える場合、電磁鋼板の延性が著しく低下するため、Pの含有量の上限は、0.15%である。Pの含有量は、望ましくは0.04%以上0.14%以下であり、更に望ましくは0.05%以上0.13%以下である。

0030

[S:0.004%以下]
S(硫黄)は、MnSを形成することで、電磁鋼板の磁気特性を劣化させる元素である。そのため、Sの含有量は0.004%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.003%以下であり、更に望ましくは0.002%以下である。Sの含有量は、少なければ少ないほどよく、Sの含有量の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.0001%である。

0031

[Sn:0.001%以上0.15%以下]
Sn(スズ)は、仕上焼鈍時に、電磁鋼板の表層部の窒化および酸化の抑制することで、磁気特性を改善する元素である。そのため、本実施形態に係る電磁鋼板を構成する鋼は、さらにSnを含有してもよい。なお、上記の効果を得るためには、Snの含有量は、0.001%以上が必要である。一方、Snの含有量が0.15%超過となる場合、上記効果が飽和する。従って、本実施形態に係る電磁鋼板にSnが含有される場合、Snの含有量は、0.001%以上0.15%以下とする。Snの含有量は、望ましくは0.005%以上0.14%以下であり、更に望ましくは0.01%以上0.13%以下である。

0032

[Si+Al+0.5×Mn:3.5%以上5.0%以下]
鉄損(特に、高周波鉄損)を低減するためには、合金元素(Si、AlおよびMn)を添加して電気抵抗を高めることが有効である。そのため、本実施形態に係る電磁鋼板では、合金元素(Si、AlおよびMn)の含有量の和を上記範囲とすることが重要である。なお、Mnの含有量(単位%)当たりの電気抵抗の上昇量は、SiおよびAlに比べて約半分であるので、Si+Al+0.5×Mnを合金添加量の指標とした。Si+Al+0.5×Mnが3.5%未満となる場合、十分な電気抵抗が得られないため、電磁鋼板は、満足できるような高周波鉄損を実現することが困難になる。一方、Si+Al+0.5×Mnが5.0%を超える場合、合金元素が多すぎるため、電磁鋼板の磁束密度の低下が著しくなる。従って、Si+Al+0.5×Mnは、3.5%以上5.0%以下とする。Si+Al+0.5×Mnは、望ましくは3.6%以上4.9%以下であり、更に望ましくは3.7%以上4.8%以下である。

0033

なお、本実施形態に係る電磁鋼板において、上述した元素以外のNi(ニッケル)、Cr(クロム)、Cu(銅)、およびMo(モリブデン)等の元素の含有量に関しては、特に規定されない。本実施形態に係る電磁鋼板は、これらの元素を0.3%以下で含有しても特に問題はない。また、電磁鋼板の仕上焼鈍時の結晶粒成長を促進するために、本実施形態に係る電磁鋼板は、Ca(カルシウム)を30ppm以下の範囲で含有してもよく、希土類元素(Rare Earth Metal:REM)を100ppm以下の範囲で含有してもよい。さらに、本実施形態に係る電磁鋼板は、本発明の効果を妨げない範囲であれば、任意の元素を不純物として含有してもよい。

0034

<2.降伏強度について>
[降伏強度:400MPa以上]
次に、本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度について説明する。

0035

近年、モータの小型化および高出力化のために、モータの回転数はますます増加する傾向にある。高速回転するロータ鉄心には、大きな遠心力、および繰り返し応力が付加されるため、ロータ鉄心の変形および疲労破壊の可能性が増大していた。

0036

このようなロータ鉄心の変形および疲労破壊を抑制するために、本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度は、400MPa以上とする。本実施形態に係る電磁鋼板の降伏強度は、望ましくは410MPa以上であり、更に望ましくは420MPa以上である。なお、ロータ鉄心の変形および疲労破壊をさらに抑制する観点から、電磁鋼板の降伏強度の上限は特に定めない。ただし、電磁鋼板の降伏強度が800MPaを超える場合、製造コストが高くなるため、望ましくない。

0037

電磁鋼板の降伏強度を高め、本発明の範囲とするためには、例えば、SiまたはPなどの固溶強化能が高い元素の含有量を増加させること、および電磁鋼板の結晶粒径を微細化することなどを用いればよい。ただし、結晶粒径を過度に微細化した場合、鉄損が劣化するため、結晶粒径は、強度と鉄損とが両立される適正な粒径に制御される必要がある。

0038

なお、降伏強度は、例えばJIS Z 2241に記載された方法を用いることで測定することができる。例えば、電磁鋼板の上降伏点、または0.2%の永久伸びを起こすときの耐力である0.2%耐力を求めて、その値を用いればよい。

0039

<3.X線回折プロファイルにおけるピーク半価幅について>
[(211)面のピーク半価幅:0.16°以下]
続いて、図1を参照して、本実施形態に係る電磁鋼板のX線回折プロファイルの形状について説明する。図1は、X線回折プロファイルにおけるピーク半価幅を説明する模式図である。

0040

半価幅とは、例えば、図1に示すようなX線回折プロファイルのピークにおいて、ピーク強度Ipの半分の強度(Ip/2)におけるピーク幅である。X線回折プロファイルにおけるピーク半価幅は、塑性歪みの発生と相関して増大することが知られている。上記相関は、様々な回折面で認められるが、本発明者らは、(211)面のピークにて鋭意検討したところ、ピーク半価幅の上限値を上記のようにすることが重要であることを見出した。

0041

具体的には、質量%で、C:0.002%、Si:3.12%、Mn:0.26%、P:0.082%、S:0.001%、sol.Al:0.65%、Sn:0.03%を含有し、残部がFe及び不純物からなる0.30mm厚の電磁鋼板と、質量%で、C:0.002%、Si:3.10%、Mn:0.24%、P:0.010%、S:0.001%、sol.Al:0.62%、Sn:0.03%を含有し、残部がFe及び不純物からなる0.30mm厚の電磁鋼板とを打抜き加工して、打抜き加工後のロータ鉄心の寸法精度を調査した。

0042

なお、仕上焼鈍の温度、張力、および冷却速度を調整することで、前者の電磁鋼板の降伏強度を425MPa〜435MPaの範囲に制御し、後者の電磁鋼板の降伏強度を385MPa〜395MPaの範囲に制御した。また、それぞれ(211)面のピーク半価幅を変化させて電磁鋼板を製造し、それぞれ打抜き加工を行った。

0043

その結果を図2に示す。図2は、打抜き加工時の寸法精度に対する降伏強度、および(211)面のピーク半価幅の影響を示すグラフ図である。

0044

図2に示すように、降伏強度が430MPa前後の電磁鋼板では、半価幅が0.16°を超える場合、鉄心の寸法精度のばらつきが大きくなることがわかった。一方、降伏強度が390MPa前後の電磁鋼板では、半価幅によって寸法精度に大きな差が認められなかった。すなわち、X線回折における(211)面のピーク半価幅は、仕上焼鈍時後の電磁鋼板に付与された不均一な歪みの大きさを示す指標と考えられる。

0045

降伏強度が高い電磁鋼板では、打抜き加工時の荷重が増大するが、半価幅が大きい電磁鋼板では、さらに付与された不均一な歪みが大きいため、金型が当たる場所での荷重の変化が大きくなる。これにより、降伏強度が高く、かつ半価幅が大きい電磁鋼板では、打抜き加工時の寸法精度に差が生じる可能性があると考えられる。

0046

そこで、本発明では、電磁鋼板のX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅の上限を0.16°とする。(211)面のピーク半価幅は、望ましくは0.15°以下であり、更に望ましくは0.14°以下である。(211)面のピーク半価幅の下限は特に定めないが、電磁鋼板に対して、仕上焼鈍後に750℃で2時間の歪取焼鈍を行った場合でも、(211)面のピーク半価幅は、0.05°未満とはならなかった。そのため、(211)面のピーク半価幅の下限は、例えば、0.05°としてもよい。

0047

また、電磁鋼板のX線回折プロファイルにおける(211)面のピーク半価幅は、例えば、仕上焼鈍の炉内張力または熱履歴等により、制御することが可能である。例えば、仕上焼鈍の炉内張力および冷却速度を低くすることによって、電磁鋼板の(211)面のピーク半価幅を小さくすることが可能である。

0048

なお、ロータ鉄心の打抜き加工の条件は、以下の通りである。打抜かれるロータ鉄心の形状は、8極の永久磁石埋め込み型モータのロータ鉄心の形状とし、外径160mmの円盤状とした。また、打抜き金型クリアランスは、打抜く電磁鋼板の板厚の8%とした。打抜き加工後、打抜いたロータ鉄心の外径寸法を測定し、狙いの外径寸法160mmと、測定された外形寸法との差の最大値をロータ鉄心の外径バラツキと見なし、寸法精度の指標とした。

0049

以上、本実施形態に係る電磁鋼板について、詳細に説明した。

0050

なお、本実施形態に係る電磁鋼板の製造方法については、特に限定されるものではなく、一般的な電磁鋼板の製造プロセスを適用することが可能である。すなわち、上記にて説明した成分を含有する鋼スラブ熱間圧延し、熱間圧延後そのままの熱延板、または熱間圧延した後、熱延板焼鈍した熱延板を冷間圧延し、仕上焼鈍を行った後、絶縁被膜の塗布を行うことにより、本実施形態に係る電磁鋼板を製造することができる。なお、冷間圧延は、一回の冷間圧延で行ってもよく、中間焼鈍を挟んだ二回の冷間圧延で行ってもよい。

0051

以下に、実験例を示しながら、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板について、より具体的に説明する。なお、以下に示す実験例は、本実施形態に係る電磁鋼板のあくまでも一例に過ぎず、本実施形態に係る電磁鋼板が以下に示す実験例に限定されるものではない。

0052

ここで、以下で示す磁束密度B50、および鉄損W10/800といった磁気特性の測定方法については、特に限定されるものではなく、例えば、JIS C 2550に規定されているエプスタイン試験に基づく方法、またはJIS C 2556に規定されている単板磁気特性試験法(Single Sheet Tester:SST)など、公知の方法を用いることが可能である。なお、磁束密度B50は、5000A/mの磁化力での磁束密度であり、鉄損W10/800は、1.0T、800Hzの高周波での鉄損である。

0053

以下の実施例では、55mm角に打抜いた試験片を用いた単板磁気測定(SST)によって、電磁鋼板の磁気特性(例えば、磁束密度および鉄損)を評価した。モータ鉄心では、電磁鋼板の板面の色々な方向に磁束が流れるため、モータ鉄心での磁気特性を評価するために、圧延方向に対して、0°、22.5°、45°、67.5°、90°の5方向の磁気特性を測定し、以下の式で全周平均の磁気特性を算出した。すなわち、以下の式で表される磁気特性が良好なほど、優れた無方向性電磁鋼板であり、モータ鉄心として好適であることを示す。

0054

磁気特性=(0°特性+2×22.5°特性+2×45°特性+2×67.5°特性+90°特性)/8

0055

(実験例1)
以下の表1に示す組成を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼スラブを、1150℃に加熱した後、熱間圧延にて2.0mm厚に圧延した。続いて、熱延板に1000℃で40秒の熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延で0.25mm厚に圧延した。冷延板を1000℃で1秒間均熱した後に、900℃までの冷却速度を1℃/秒または30℃/秒とする仕上焼鈍を行った。更に、仕上焼鈍後の鋼板の両面に、リン酸金属塩主体とし、アクリル樹脂エマルジョンを含む溶液を鋼板の両面に塗布および焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで電磁鋼板を製造した。

0056

なお、仕上焼鈍には、炉内フローターにより鋼板を浮上状態走行させることが可能なフローティング式連続焼鈍炉を用いた。本実験例では、仕上焼鈍の冷却速度を変化させることで、電磁鋼板のX線回折におけるピーク半価幅を制御した。900℃以上の鋼板は、強度が低いため、鋼板面内で温度差がつきにくい低冷却速度の方が鋼板に歪みが付加されにくく、X線回折において低いピーク半価幅を確保することができる。本実施形態に係る電磁鋼板のピーク半価幅を達成するためには、仕上焼鈍の冷却速度は、20℃/秒以下が望ましく、15℃/秒以下がさらに望ましい。

0057

0058

なお、表1において、「Tr.」とは、該当する元素を意図して添加していないことを表す。

0059

その後、製造した電磁鋼板を55mm角に打ち抜き、単板磁気測定(SST)により磁束密度B50および鉄損W10/800を評価した。また、寸法精度の評価に関しては、前述したように、製造した電磁鋼板を外径160mmのロータ鉄心の形状に打抜き、打抜いたロータ鉄心の外径寸法と、狙いの外径寸法である160mmとの差の最大値をロータ鉄心の外径バラツキとした。なお、打抜き金型のクリアランスは、打抜く電磁鋼板の板厚の8%に設定した。外径バラツキが32μm以下である場合を寸法精度が良好(○)であると評価し、外径バラツキが32μmを超える場合を寸法精度が不良(×)であると評価した。得られた結果を、以下の表2に示す。

0060

0061

表2に示すように、鋼板の組成、ピーク半価幅、および降伏強度が本発明の範囲である試験番号1、3、6、7、および9〜11は、鉄損および磁束密度がともに優れ、打抜き加工時の寸法精度が良好であることがわかった。一方、鋼板の化学組成が本発明の範囲であっても、(211)面のピーク半価幅が本発明の範囲から高めに外れた試験番号2および4では、磁束密度に優れるものの、打抜き加工時の寸法精度が劣っていることがわかった。また、鋼板のSiの含有量と、Si+Al+0.5×Mnの含有量とが本発明の範囲より低く、降伏強度が本発明の範囲を下回る試験番号5は、鉄損も劣っていることがわかった。

0062

(実験例2)
以下の表3に示す組成を含有し、残部がFeおよび不純物からなる鋼スラブを、1100℃に加熱した後、熱間圧延にて1.8mm厚に圧延した。次に、熱延板に975℃で40秒の熱延板焼鈍を行った後、冷間圧延で0.20mm厚に圧延した。続いて、冷延板を950℃で80秒間均熱した後に、900℃までの冷却速度を2℃/秒とする仕上焼鈍を行った。更に、仕上焼鈍後の鋼板の両面に、リン酸金属塩を主体とし、アクリル樹脂のエマルジョンを含む溶液を鋼板の両面に塗布および焼き付けし、複合絶縁被膜を形成することで電磁鋼板を製造した。なお、仕上焼鈍には、実験例1と同様のフローティング式連続焼鈍炉を用いた。

0063

なお、実験例2は、実験例1よりも電磁鋼板の板厚が薄いため、渦電流損が小さく、鉄損がより小さい場合の実験例である。実験例2を参照すると、本発明の一実施形態に係る電磁鋼板は、板厚に関係なく、磁気特性、機械強度および打抜き加工時の寸法精度を改善可能であることがわかる。

0064

0065

なお、表3において、「Tr.」とは、該当する元素を意図して添加していないことを表す。

0066

その後、製造した電磁鋼板を55mm角に打ち抜き、実験例1と同様の方法で単板磁気測定(SST)により磁束密度B50および鉄損W10/800を評価した。また、実験例1と同様の方法で電磁化鋼板を打ち抜き加工し、実験例1と同様に寸法精度の評価を行った。得られた結果を以下の表4に示す。

0067

0068

表4に示すように、鋼板の組成、ピーク半価幅、および降伏強度が本発明の範囲である試験番号13、14および15は、鉄損および磁束密度がともに優れ、打抜き加工時の寸法精度が良好であることがわかった。一方、Si+Al+0.5×Mnの含有量が本発明の範囲よりも低めに外れた試験番号12は、鉄損が劣っていることがわかった。

実施例

0069

以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

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