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技術 スカンジウム精製方法

出願人 住友金属鉱山株式会社
発明者 仙波祐輔松岡いつみ小林宙
出願日 2016年3月14日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-049394
公開日 2017年9月21日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-165995
状態 特許登録済
技術分野 有機低分子化合物及びその製造 金属の製造または精製
主要キーワード 洗浄後液 ニッケル塩化合物 設備効率 スカンジウムイオン ニッケル硫化物 実収率 電気ニッケル 核磁気共鳴分析装置
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重要な関連分野

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課題

スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現する。

解決手段

本発明の方法は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液抽出始液)を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する抽出後有機(第1有機相)と不純物を含有する抽出後液(第1水相)とに分離する抽出工程S1と、抽出後有機(第1有機相)に硫酸を加え、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とスカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)とに分離する洗浄工程S2とを含む。その際、抽出工程S1では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。

概要

背景

スカンジウムは、高強度合金添加剤燃料電池電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく、高価であるため、広く用いられるには至っていない。

ところで、ラテライト鉱リモナイト鉱等のニッケル酸化鉱には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱は、ニッケル含有品位が低いため、長らくニッケル酸化鉱をニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱からスカンジウムを工業的に回収することもほとんど研究されていなかった。

しかしながら、近年、ニッケル酸化鉱を硫酸と共に加圧容器装入し、240℃〜260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液浸出残渣とに固液分離するHPAL(High Pressure Acid Leach)プロセスが実用化されている。このHPALプロセスでは、得られた浸出液に中和剤を添加することで不純物が分離され、次いで、不純物が分離された浸出液に硫化剤を添加することによりニッケルをニッケル硫化物として回収する。そして、このニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することによって、電気ニッケルニッケル塩化合物を得ることができる。

上述のようなHPALプロセスを用いる場合、ニッケル酸化鉱に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれることになる(特許文献1参照)。そして、HPALプロセスで得られた浸出液に対して中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される。一方で、スカンジウムは前記の方法では分離することができず、硫化剤添加後の酸性溶液中に残留する。このように、HPALプロセスを用いることでニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。

しかしながら、一般に、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムの含有量は、微量であるため、上記の方法で硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液あるいはバレンリッカーともいう。)に含有されるスカンジウムは、mg/lレベルのごく微量な濃度にすぎず、効率的に直接回収することは難しい。

このため、硫化後液に含有されるスカンジウムを濃縮し、同時に共存する不純物を分離する処理が必要となる。具体的な濃縮手段として、例えば、キレート樹脂を用いて行う方法がある(特許文献2参照)。

特許文献2に示される方法は、先ず、ニッケル含有酸化鉱石酸化性雰囲気高温高圧のもとで酸性水溶液中にニッケルとスカンジウムとを選択的に浸出させて酸性溶液を得て、次いでその酸性溶液のpHを2〜4の範囲に調整した後、硫化剤の使用によってニッケルを硫化物として選択的に沈殿回収する。次に、得られたニッケル回収後の溶液をキレート樹脂と接触させてスカンジウムを吸着させ、キレート樹脂を希酸洗浄した後、洗浄後のキレート樹脂を強酸と接触させてキレート樹脂からスカンジウムを溶離するというものである。

また、上述した酸性溶液からスカンジウムを回収する方法として、溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(特許文献3及び4参照)。

特許文献3に記載の方法では、先ず、スカンジウムの他に、少なくとも鉄、アルミニウムカルシウムイットリウムマンガンクロムマグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2−エチルヘキシルスルホン酸モノ−2−エチルヘキシルをケロシン希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウムと共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行うことによってそれらを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)3を含むスラリーとし、これを濾過して得られたSc(OH)3を塩酸で溶解して、塩化スカンジウム水溶液を得る。そして、得られた塩化スカンジウム水溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、その沈殿を濾過して、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離した後、仮焼することにより高純度酸化スカンジウムを得るというものである。

また、特許文献4には、スカンジウム含有供給液バッチ処理によって一定の割合で抽出剤に接触させることにより、スカンジウム含有供給液からスカンジウムを選択的に分離回収する方法が記載されている。

しかしながら、上述するような様々な分離方法が知られているにもかかわらず、実際のニッケル酸化鉱を処理する場合の精製を容易に行うことができるとはいえなかった。ニッケル酸化鉱石を酸で浸出して得た浸出液の中には、スカンジウムとともに、スカンジウムよりもよりもはるかに高濃度の鉄、アルミ等の不純物が含まれ、キレート樹脂や溶媒抽出を用いた方法だけでは、不純物を完全に分離することは容易でない。

さらに、ニッケル酸化鉱の中には、トリウム等のアクチノイド元素が微量含有されている場合もある。この場合、特許文献2や特許文献3で開示されるキレート樹脂や有機溶媒を用いた方法では、トリウム等多くのアクチノイド元素は、スカンジウムと類似の挙動を示すため、スカンジウムとアクチノイド元素とを効率的に分離することは難しい。

特に、回収したスカンジウムを、燃料電池の電極材料等の高機能な用途に用いるためには、不純物を分離して高純度化するとともに、アクチノイド元素を、スカンジウムを含んだ固体を得る前の溶液段階で、例えば1mg/l未満の濃度にまで低減することが、製品の特性を確保するために必要とされる。

概要

スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現する。本発明の方法は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液(抽出始液)を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する抽出後有機(第1有機相)と不純物を含有する抽出後液(第1水相)とに分離する抽出工程S1と、抽出後有機(第1有機相)に硫酸を加え、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とスカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)とに分離する洗浄工程S2とを含む。その際、抽出工程S1では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。

目的

本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現することができるスカンジウムの精製方法を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
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牽制数
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請求項1

スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相不純物を含有する第1水相とに分離する抽出工程と、前記第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する洗浄工程とを含み、前記抽出工程では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、前記洗浄工程では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている、スカンジウム精製方法

請求項2

前記洗浄工程における前記第1有機相(O)の前記硫酸(A)に対する体積比(O/A比)が0.5以下である、請求項1に記載のスカンジウム精製方法。

請求項3

前記アミド誘導体が下記一般式(I)で表される、請求項1又は2に記載のスカンジウム精製方法。(式(I)において、R1及びR2は、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良い。R3は水素原子又はアルキル基を示す。R4は水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。)

技術分野

0001

本発明は、スカンジウム精製方法に関する。

背景技術

0002

スカンジウムは、高強度合金添加剤燃料電池電極材料として極めて有用である。しかしながら、生産量が少なく、高価であるため、広く用いられるには至っていない。

0003

ところで、ラテライト鉱リモナイト鉱等のニッケル酸化鉱には、微量のスカンジウムが含まれている。しかしながら、ニッケル酸化鉱は、ニッケル含有品位が低いため、長らくニッケル酸化鉱をニッケル原料として工業的に利用されてこなかった。そのため、ニッケル酸化鉱からスカンジウムを工業的に回収することもほとんど研究されていなかった。

0004

しかしながら、近年、ニッケル酸化鉱を硫酸と共に加圧容器装入し、240℃〜260℃程度の高温に加熱してニッケルを含有する浸出液浸出残渣とに固液分離するHPAL(High Pressure Acid Leach)プロセスが実用化されている。このHPALプロセスでは、得られた浸出液に中和剤を添加することで不純物が分離され、次いで、不純物が分離された浸出液に硫化剤を添加することによりニッケルをニッケル硫化物として回収する。そして、このニッケル硫化物を既存のニッケル製錬工程で処理することによって、電気ニッケルニッケル塩化合物を得ることができる。

0005

上述のようなHPALプロセスを用いる場合、ニッケル酸化鉱に含まれるスカンジウムは、ニッケルと共に浸出液に含まれることになる(特許文献1参照)。そして、HPALプロセスで得られた浸出液に対して中和剤を添加して不純物を分離し、次いで硫化剤を添加すると、ニッケルはニッケル硫化物として回収される。一方で、スカンジウムは前記の方法では分離することができず、硫化剤添加後の酸性溶液中に残留する。このように、HPALプロセスを用いることでニッケルとスカンジウムとを効果的に分離することができる。

0006

しかしながら、一般に、ニッケル酸化鉱石に含まれるスカンジウムの含有量は、微量であるため、上記の方法で硫化剤添加後の酸性溶液(硫化後液あるいはバレンリッカーともいう。)に含有されるスカンジウムは、mg/lレベルのごく微量な濃度にすぎず、効率的に直接回収することは難しい。

0007

このため、硫化後液に含有されるスカンジウムを濃縮し、同時に共存する不純物を分離する処理が必要となる。具体的な濃縮手段として、例えば、キレート樹脂を用いて行う方法がある(特許文献2参照)。

0008

特許文献2に示される方法は、先ず、ニッケル含有酸化鉱石酸化性雰囲気高温高圧のもとで酸性水溶液中にニッケルとスカンジウムとを選択的に浸出させて酸性溶液を得て、次いでその酸性溶液のpHを2〜4の範囲に調整した後、硫化剤の使用によってニッケルを硫化物として選択的に沈殿回収する。次に、得られたニッケル回収後の溶液をキレート樹脂と接触させてスカンジウムを吸着させ、キレート樹脂を希酸洗浄した後、洗浄後のキレート樹脂を強酸と接触させてキレート樹脂からスカンジウムを溶離するというものである。

0009

また、上述した酸性溶液からスカンジウムを回収する方法として、溶媒抽出を用いてスカンジウムを回収する方法も提案されている(特許文献3及び4参照)。

0010

特許文献3に記載の方法では、先ず、スカンジウムの他に、少なくとも鉄、アルミニウムカルシウムイットリウムマンガンクロムマグネシウムの1種以上を含有する水相の含スカンジウム溶液に、2−エチルヘキシルスルホン酸モノ−2−エチルヘキシルをケロシン希釈した有機溶媒を加えて、スカンジウム成分を有機溶媒中に抽出する。次いで、有機溶媒中にスカンジウムと共に抽出されたイットリウム、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを分離するために、塩酸水溶液を加えてスクラビングを行うことによってそれらを除去した後、有機溶媒中にNaOH水溶液を加えて、有機溶媒中に残存するスカンジウムをSc(OH)3を含むスラリーとし、これを濾過して得られたSc(OH)3を塩酸で溶解して、塩化スカンジウム水溶液を得る。そして、得られた塩化スカンジウム水溶液にシュウ酸を加えてシュウ酸スカンジウム沈殿とし、その沈殿を濾過して、鉄、マンガン、クロム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムを濾液中に分離した後、仮焼することにより高純度酸化スカンジウムを得るというものである。

0011

また、特許文献4には、スカンジウム含有供給液バッチ処理によって一定の割合で抽出剤に接触させることにより、スカンジウム含有供給液からスカンジウムを選択的に分離回収する方法が記載されている。

0012

しかしながら、上述するような様々な分離方法が知られているにもかかわらず、実際のニッケル酸化鉱を処理する場合の精製を容易に行うことができるとはいえなかった。ニッケル酸化鉱石を酸で浸出して得た浸出液の中には、スカンジウムとともに、スカンジウムよりもよりもはるかに高濃度の鉄、アルミ等の不純物が含まれ、キレート樹脂や溶媒抽出を用いた方法だけでは、不純物を完全に分離することは容易でない。

0013

さらに、ニッケル酸化鉱の中には、トリウム等のアクチノイド元素が微量含有されている場合もある。この場合、特許文献2や特許文献3で開示されるキレート樹脂や有機溶媒を用いた方法では、トリウム等多くのアクチノイド元素は、スカンジウムと類似の挙動を示すため、スカンジウムとアクチノイド元素とを効率的に分離することは難しい。

0014

特に、回収したスカンジウムを、燃料電池の電極材料等の高機能な用途に用いるためには、不純物を分離して高純度化するとともに、アクチノイド元素を、スカンジウムを含んだ固体を得る前の溶液段階で、例えば1mg/l未満の濃度にまで低減することが、製品の特性を確保するために必要とされる。

先行技術

0015

特開平3−173725号公報
特開平9−194211号公報
特開平9−291320号公報
国際公開第2014/110216号

発明が解決しようとする課題

0016

図3は、アクチノイド元素を完全に、かつ、効率よく分離する方法の一例を示すフローチャートである。アクチノイド元素を完全に、かつ、効率よく分離する方法として、スカンジウム及びアクチノイド元素を含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液を抽出始液として、アミン系不純物抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウムを含有する水相(A1)とアクチノイド元素を含有する有機相(O1)とに分離する不純物抽出工程S11を含み、スカンジウムを含有する水相を固体化する方法がある。

0017

アミン系不純物抽出剤の具体的な商品名として、1級アミンであるPrimeneJM−T、2級アミンであるLA−1、3級アミンであるTNOA(Tri−n−octylamine)、TIOA(Tri−i−octylamine)等の商品名で知られるアミン系不純物抽出剤を用いることができる。

0018

しかしながら、この方法では、水相(A1)に含まれるスカンジウムの含有量が処理量の95%程度に留まり、残りの5%近くのスカンジウムは、トリウム等と共に有機相(O1)に抽出されてしまう。そのため、実収率の点で課題がある。

0019

トリウム等と共に有機相(O1)に抽出されたスカンジウムを回収する手法として、有機相(O1)に酸を加え、スカンジウムを含有する水相(A2)とトリウムを含有する有機相(O2)とに分離する洗浄工程S12をさらに含むことが考えられる。

0020

しかしながら、この方法では、スカンジウム回収の対象が水相(A1)と水相(A2)との2系統に分かれるため、スカンジウムを回収するにあたって、工程が複雑となり、余計な設備を要する等、工業的な課題が多い。

0021

このように、ニッケル酸化鉱から酸浸出した溶液から多種多量な不純物を効率よく分離し、高純度なスカンジウムを工業的に回収するのに適した方法は、見出されていない。

0022

本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液から、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現することができるスカンジウムの精製方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0023

本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、まずは、スカンジウム及びトリウムを含有する抽出始液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する有機相と不純物を含有する水相とに分離し、その後、有機相に硫酸を加えることで、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のものを提供する。

0024

(1)本発明の第1の発明は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相と不純物を含有する第1水相とに分離する抽出工程と、前記第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する洗浄工程とを含み、前記抽出工程では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、前記洗浄工程では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている、スカンジウム精製方法である。

0025

(2)また、本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、前記洗浄工程における前記第1有機相(O)の前記硫酸(A)に対する体積比(O/A比)が0.5以下である、スカンジウム精製方法である。

0026

(3)また、本発明の第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、前記アミド誘導体が下記一般式(I)で表される、スカンジウム精製方法である。



(式(I)において、R1及びR2は、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良い。R3は水素原子又はアルキル基を示す。R4は水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。)

発明の効果

0027

本発明によれば、スカンジウムとトリウムとを分離する際に、スカンジウム回収の対象を1系統にし、工程の簡略化と、高い回収率との両方を実現することができる。

図面の簡単な説明

0028

本発明の実施形態に係るスカンジウム精製方法を説明するためのフロー図である。
スカンジウム及びトリウムを含有する抽出後有機(第1有機相)を硫酸で洗浄処理に付したときのpHと洗浄後液に含まれるスカンジウム及びトリウムの割合との関係を示すグラフ図である。
アミン系不純物抽出剤を用いたときのスカンジウム精製方法を説明するためのフロー図である。

0029

以下、本発明に係るスカンジウムの精製方法の具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。

0030

<スカンジウムの精製方法>
図1は、本実施形態に係るスカンジウムの精製方法の一例を示すフロー図である。このスカンジウムの精製方法は、ニッケル酸化鉱を硫酸等の酸により浸出して得られた、スカンジウム及び不純物を含有する酸性溶液から、スカンジウムと不純物とを分離して、高純度のスカンジウムを簡便に且つ効率よく回収するものである。

0031

例えば、本実施形態に係るスカンジウムの精製方法は、図1のフロー図に示すように、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱の硫酸による浸出液(抽出始液)を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムをスカンジウム抽出剤(抽出後有機、第1有機相)に抽出し、酸性溶液(抽出後液、第1水相)に残る不純物と分離する抽出工程S1と、スカンジウム抽出剤(第1有機相)に硫酸を加え、スカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)と、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とに分離する洗浄工程S2とを含む。そして、抽出工程S1では、pHが1.0以上3.0以下に調整されており、洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。

0032

この方法によると、不純物をより効果的に分離することができ、ニッケル酸化鉱のような多くの不純物を含有する原料からであっても、安定した操業を行うことができ、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。

0033

また、スカンジウム回収の対象が第2水相の1系統であるため、従来のプロセスよりも工程を簡略化することができる。

0034

なお、洗浄後有機(第2有機相)に残留したトリウムは、洗浄工程S2で使用した硫酸よりも高濃度の硫酸を接触させることで洗浄後有機(第2有機相)から分離できるので、分離後のスカンジウム抽出剤を、スカンジウムの抽出用途に再利用することができる。

0035

<スカンジウムの精製方法の各工程について>
〔抽出工程S1〕
抽出工程S1は、スカンジウム及びトリウムを含有するニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を用いた溶媒抽出に付し、スカンジウム及びトリウムを含有する第1有機相と不純物を含有する第1水相とに分離する工程である。

0036

[スカンジウム回収の処理対象
スカンジウム回収の処理対象となるスカンジウムを含有する酸性溶液としては、ニッケル酸化鉱を硫酸により処理して得られる酸性溶液を用いることができる。

0037

溶媒抽出に付される酸性溶液の一例として、ニッケル酸化鉱を高温高圧下で硫酸等の酸により浸出して浸出液を得る浸出工程と、浸出液に中和剤を添加して不純物を含む中和澱物中和後液とを得る中和工程と、中和後液に硫化剤を添加してニッケル硫化物と硫化後液とを得る硫化工程とを有するニッケル酸化鉱の湿式製錬処理工程により得られる硫化後液が挙げられる。

0038

ニッケル酸化鉱としては、主としてリモナイト鉱及びサプロライト鉱等のいわゆるラテライト鉱が挙げられる。ラテライト鉱のニッケル含有量は、通常、0.8〜2.5重量%であり、水酸化物又はケイ苦土ケイ酸マグネシウム鉱物として含有される。また、これらのニッケル酸化鉱には、スカンジウムが含まれている。

0039

中和工程で用いる中和剤としては、従来公知のもの使用することができ、例えば、炭酸カルシウム消石灰水酸化ナトリウム等が挙げられる。

0040

硫化工程で用いる硫化剤として、硫化水素ガス硫化ナトリウム水素化硫化ナトリウム等が挙げられる。

0041

ニッケル酸化鉱を硫酸により浸出して得られた、スカンジウムを含有する酸性溶液である硫化後液を、スカンジウム回収処理対象溶液として適用することができる。ところが、スカンジウムを含有する酸性溶液である硫化後液には、スカンジウムの他に、例えば上述した硫化工程における硫化処理で硫化されずに溶液中に残留したアルミニウムやクロム、その他の不純物が含まれて得る。このことから、この酸性溶液を溶媒抽出に付すにあたり、スカンジウム溶離工程として、予め、酸性溶液中に含まれる不純物を除去してスカンジウム(Sc)を濃縮し、スカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)を生成させ、このスカンジウム溶離液(スカンジウム含有溶液)をスカンジウム回収の処理対象にすることが好ましい。

0042

スカンジウム溶離工程では、例えば、イオン交換処理による方法で、酸性溶液中に含まれるアルミニウム等の不純物を分離して除去し、スカンジウムを濃縮させたスカンジウム含有溶液を得るようにすることができる。

0043

[スカンジウム抽出剤]
スカンジウム抽出剤を構成するアミド誘導体は、スカンジウムとの選択性が高いという特徴を有する。このようなアミド誘導体として、下記一般式(I)で表される物が挙げられる。アミド骨格にアルキル基を導入することによって、親油性を高め、抽出剤として用いることができる。

0044

式中、置換基R1及びR2は、それぞれ同一又は別異のアルキル基を示す。アルキル基は直鎖でも分鎖でも良いが、有機溶媒への溶解性を高められるため、アルキル基は、分鎖であることが好ましい。アミドの骨格にアルキル基を導入することによって、親油性を高め、抽出剤として用いることができる。

0045

また、R1及びR2において、アルキル基の炭素数は特に限定されるものでないが、5以上11以下であることが好ましい。炭素数が4以下であると、アミド誘導体の水溶性が高まり、アミド誘導体が水相に含まれる可能性がある。炭素数が12以上であると、界面活性能が高まり、エマルションを形成し易くなる。また、炭素数が12以上であると、酸性溶液を含む水相、有機溶媒を含む有機相とは別に、第3のアミド誘導体層を形成し得る。

0046

R3は水素原子又はアルキル基を示す。R4は水素原子、又はアミノ酸としてα炭素に結合される、アミノ基以外の任意の基を示す。

0047

アミド誘導体は、スカンジウムを選択的に抽出できるものであれば特に限定されるものでないが、簡便に製造できる点で、グリシンアミド誘導体であることが好ましい。アミド誘導体がグリシンアミド誘導体である場合、上記のグリシンアミド誘導体は、次の方法によって合成できる。

0048

まず、NHR1R2(R1,R2は、上記の置換基R1,R2と同じ)で表される構造のアルキルアミンに2−ハロゲン化アセチルハライドを加え、求核置換反応によりアミンの水素原子を2−ハロゲン化アセチル置換することによって、2−ハロゲン化(N,N−ジ)アルキルアセトアミドを得る。

0049

次に、グリシン又はN−アルキルグリシン誘導体に上記2−ハロゲン化(N,N−ジ)アルキルアセトアミドを加え、求核置換反応によりグリシン又はN−アルキルグリシン誘導体の水素原子の一つを(N,N−ジ)アルキルアセトアミド基に置換する。これら2段階の反応によってグリシンアルキルアミド誘導体を合成できる。

0050

また、グリシンをヒスチジンリジンアスパラギン酸に置き換えれば、ヒスチジンアミド誘導体、リジンアミド誘導体、アスパラギン酸アミド誘導体を合成できる。グリシンアルキルアミド誘導体、ヒスチジンアミド誘導体、リジンアミド誘導体、アスパラギン酸アミド誘導体による抽出挙動は、対象とするマンガンやコバルト等の錯安定定数から、グリシン誘導体を用いた結果の範囲内に収まると考えられる。

0051

上記一般式(I)で表される化合物がヒスチジンアミド誘導体である場合、ヒスチジンアミド誘導体は下記一般式(II)で表される。

0052

上記一般式(I)で表される化合物がリジンアミド誘導体である場合、リジンアミド誘導体は下記一般式(III)で表される。

0053

上記一般式(I)で表される化合物がアスパラギン酸アミド誘導体である場合、アスパラギン酸アミド誘導体は下記一般式(IV)で表される。

0054

式(II)〜(IV)において、置換基R1及びR2は、式(I)で説明したものと同じである。

0055

なお、アミド誘導体は、ノルマルメチルグリシン誘導体であってもよい。

0056

[スカンジウムの抽出]
上記アミド誘導体を用いてスカンジウムイオンを抽出するには、目的のスカンジウムイオンを含む酸性水溶液を調整しながら、この酸性水溶液を、上記アミド誘導体を含む有機溶液に加えて混合する。これによって、第1有機相に目的のスカンジウムイオンを選択的に抽出することができる。

0057

ただし、上記アミド誘導体を用いてスカンジウムイオンを抽出する場合、抽出始液に含まれるトリウムは分離されず、スカンジウムイオンのほか、トリウムイオンも第1有機相に抽出される。スカンジウムイオンと、トリウムイオンとを分離するため、続く洗浄工程S2が行われる。

0058

抽出時においては、アミド誘導体を含むスカンジウム抽出剤を、例えば炭化水素系の有機溶媒等で希釈して使用することが好ましい。有機溶媒は、上記アミド誘導体及び金属抽出種が溶解する溶媒であればどのようなものであってもよく、例えば、クロロホルムジクロロメタン等の塩素系溶媒ベンゼントルエンキシレン等の芳香族炭化水素ヘキサン等の脂肪族炭化水素等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独でも複数混合しても良く、1−オクタノールのようなアルコール類を混合しても良い。

0059

アミド誘導体の濃度は、スカンジウムの濃度によって適宜設定できるが、抽出時及び後述する逆抽出時における相分離性等を考慮すると、有機溶媒100体積%に対し、10体積%以上30体積%以下程度であることが好ましく、特に20体積%程度であることがより好ましい。

0060

スカンジウム及び不純物を含有する酸性水溶液から、スカンジウムを効率的に回収するためには、スカンジウムを含む酸性水溶液のpHを1.0以上3.0以下に調整しながら抽出剤の有機溶液を加えることを要する。pHが小さすぎると、スカンジウムを十分に抽出できず、スカンジウムが抽出後液(第1水相)に残る可能性がある。

0061

pHが大きすぎると、スカンジウムだけでなく、不純物も第1有機相に抽出される可能性がある。また、pHが大きすぎると、抽出操作後に静置して抽残液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)を分離する際の分離性分相性)が低下して操業が困難となる。具体的には、pHが3以下であれば、静置時間は数分から長くても10分以内で分相が完了するが、pHが3を超えると、静置時間が1時間以上を要する場合があり、効率が低下する。

0062

スカンジウムを十分に抽出するという観点から、pHの下限は、1.0以上であれば足りるが、1.5以上であることがより好ましい。

0063

また、スカンジウムだけでなく、不純物も第1有機相に抽出されることを防ぐため、pHの上限は、3.0以下であれば足りるが、2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。

0064

pH調整には、濃度が4mol/L程度の水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。取扱いが容易であり、また、不純物のコンタミ澱物発生を防止でき、分離後の回収が容易なためである。

0065

撹拌時間及び抽出温度は、スカンジウムイオンの酸性水溶液、及び抽出剤の有機溶液の条件によって適宜設定すればよい。

0066

なお、抽出工程S1における有機相(O)の抽出始液(A)に対する体積比(O/A比)は、特に限定するものはなく、適宜選択できる。

0067

〔洗浄工程S2〕
抽出工程S2は、抽出工程S1で得られた第1有機相に硫酸を加え、トリウムを含有する第2有機相とスカンジウムを含有する第2水相とに分離する工程である。

0068

この場合、スカンジウムとともに抽出されたトリウムが、洗浄工程S2で抽出後有機(第1有機相)から分離されないように、添加する硫酸溶液と抽出後有機(第1有機相)との混合割合や、抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHを調整することが好ましい。

0069

取扱いの観点から、硫酸溶液は、0.5mol/L(1規定)以上2.0mol/L(4規定)以下の濃度範囲のものを使用することが好ましく、0.5mol/L(1規定)以上1.0mol/L(2規定)以下の濃度範囲のものを使用することがより好ましい。

0070

[硫酸溶液と抽出後有機(第1有機相)との混合割合]
洗浄工程S2における第1有機相(O)の硫酸(A)に対する体積比(O/A比)は、0.5以下であることが好ましい。O/A比が高すぎると、第1有機相に硫酸を加えた後の洗浄後液(第2水相)に、スカンジウムだけでなく、トリウムも抽出され易くなる。その結果、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウムの濃度を1mg/L未満に維持できない可能性がある。

0071

上記O/A比の下限は特に限定されるものではない。しかしながら、O/A比を極端に小さくすると、それだけ洗浄に用いる硫酸溶液の量が増加し、洗浄後液(第2水相)に含まれるスカンジウム濃度が相対的に低下して、回収効率コストが増加する。そのため、O/A比は、0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。

0072

[pH]
洗浄工程S2では、pHが1.0以上2.5以下に調整されている。pHは、1.5以上2.5以下であることがより好ましく、1.8以上2.3以下であることが特に好ましい。

0073

pH調整には、濃度が4mol/L程度の水酸化ナトリウムを使用するのが好ましい。取扱いが容易であり、また、不純物のコンタミや澱物発生を防止でき、分離後の回収が容易なためである。

0074

pHが小さすぎると、スカンジウムだけでなく、トリウムも洗浄後液(第2水相)に抽出される。洗浄を複数回繰り返して分離率の差を大きくする方法を用いても、洗浄回数を例えば10回以上と多くしなければならず非効率的であり、実質的にトリウム含有率を1mg/L未満に低減できない。このため、さらに別の操作によりトリウムを除去する工程が必要となり、工程が複雑化する。

0075

pHが大きすぎると、スカンジウムを洗浄後液(第2水相)に十分抽出することができず、スカンジウムの多くが洗浄後有機(第2有機相)に残留する。また、スカンジウムが水酸化物として沈殿してしまい、スカンジウムのロスにつながる。

0076

スカンジウムの収率を高くするため、洗浄工程S2を複数回繰り返すことが好ましい。抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHを2.0程度に調整して洗浄工程S2を行うと、スカンジウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの30%程度であり、トリウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるトリウムのほぼ0%程度である。そのため、抽出後有機(第1有機相)の洗浄を繰り返し行うことが好ましい。抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数が多いほど、スカンジウムの収率を高くすることができる。

0077

また、抽出後有機(第1有機相)と硫酸との混合状態でのpHが2.0以上であれば、トリウムが洗浄後液(第2水相)に抽出される割合は、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるトリウムのほぼ0%程度であり、抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数を多くしても、洗浄後液(第2水相)にトリウムが含まれることはない。したがって、本実施形態の方法では、スカンジウムとトリウムを1回(1段)の操作で効率よく分離でき、設備効率の点で効率的となる。

0078

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を2回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約50%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0079

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を3回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約60%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0080

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を4回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約70%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0081

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を5回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約80%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0082

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を7回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約90%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0083

抽出後有機(第1有機相)の洗浄を9回繰り返すと、洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれるスカンジウムの約95%を洗浄後液(第2水相)に回収できる。

0084

洗浄回数は、スカンジウムの収率と、洗浄コストとを案して適宜選択すればよいが、スカンジウムの収率と、洗浄コストとの両方を勘案すると、2回以上9回以下が好ましく、4回以上7回以下がより好ましく、5回以上7回以下が特に好ましい。

0085

本実施形態の方法によると、不純物をより効果的に分離することができ、ニッケル酸化鉱のような多くの不純物を含有する原料からであっても、安定した操業を行うことができ、高純度のスカンジウムを効率よく回収することができる。

0086

また、スカンジウム回収の対象が洗浄後液(第2水相)の1系統であるため、従来のプロセスよりも工程を簡略化することができる。

0087

以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。

0088

<実施例1>
〔抽出始液(水相)の調製〕
以下の工程を経て抽出始液(水相)を調製した。

0089

まず、ニッケル酸化鉱を特許文献1に記載の方法等の公知の方法に基づき、硫酸を用いて加圧酸浸出した。続いて、得られた浸出液のpHを調整して不純物を除去した。その後、不純物除去後の浸出液に硫化剤を添加し、固体であるニッケル硫化物を除去して硫化後液を用意した。

0090

次に、得られた硫化後液をキレート樹脂に接触させてスカンジウムをキレート樹脂に吸着させた。本実施例では、キレート樹脂として、イミノジ酢酸官能基とする樹脂を用いた。次に、スカンジウムが吸着されたキレート樹脂に0.05Nの硫酸を接触させ、キレート樹脂に吸着したアルミニウムを除去した。次に、スカンジウムが吸着されたキレート樹脂に0.5Nの硫酸を接触させ、スカンジウム溶離液を得た。

0091

そして、スカンジウム溶離液に中和剤を添加してpHを4〜4.5に調整し、次いでpH6.0に調整して水酸化スカンジウム澱物を得、次にこの澱物に硫酸を添加して得た溶液を本実施例での抽出始液(水相)とした。

0092

抽出始液(水相)の組成は、スカンジウムが10g/L、トリウム0.02g/Lであった。

0093

なお、スカンジウムの定量分析には、ICP装置セイコーインスツルメンツ社製型番SPS3000)を用いて公知の方法により行った。また、トリウム濃度は、ICP質量分析装置(ICP−MS)(アジレント社製 型番:7500i)を用いて測定した。

0094

〔アミド誘導体D2EHAGの合成〕
アミド誘導体の一例として、上記一般式(I)で表されるグリシンアミド誘導体、すなわち、2つの2−エチルヘキシル基を導入したN−[N,N−ビス(2−エチルヘキシル)アミノカルボニルメチル]グリシン(N−[N,N−Bis(2−ethylhexyl)aminocarbonylmethyl]glycine)(あるいはN,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド−2−グリシン(N,N−di(2−ethylhexyl)acetamide−2−glycine)ともいい、以下「D2EHAG」という。)を合成した。

0095

D2EHAGの合成は、次のようにして行った。まず、下記反応式(V)に示すように、市販のジ(2−エチルヘキシル)アミン23.1g(0.1mol)と、トリエチルアミン10.1g(0.1mol)とを分取し、これにクロロホルムを加えて溶解し、次いで2−クロロアセチルクロリド13.5g(0.12mol)を滴下した後、1mol/lの塩酸で1回洗浄し、その後、イオン交換水で洗浄し、クロロホルム相を分取した。
次に、無水硫酸ナトリウムを適量(約10〜20g)加え、脱水した後、ろ過し、黄色液体29.1gを得た。この黄色液体(反応生成物)の構造を、核磁気共鳴分析装置(NMR)を用いて同定したところ、上記黄色液体は、2−クロロ−N,N−ジ(2−エチルヘキシル)アセトアミド(以下「CDEHAA」という。)の構造であることが確認された。なお、CDEHAAの収率は、原料であるジ(2−エチルヘキシル)アミンに対して90%であった。

0096

次に、下記反応式(VI)に示すように、水酸化ナトリウム8.0g(0.2mol)にメタノールを加えて溶解し、さらにグリシン15.01g(0.2mol)を加えた溶液を撹拌しながら、上記CDEHAA12.72g(0.04mol)をゆっくりと滴下し、撹拌した。撹拌を終えた後、反応液中の溶媒を留去し、残留物にクロロホルムを加えて溶解した。この溶液に1mol/lの硫酸を添加して酸性にした後、イオン交換水で洗浄し、クロロホルム相を分取した。

0097

このクロロホルム相に無水硫酸マグネシウム適量を加え脱水し、ろ過した。再び溶媒を減圧除去し、12.5gの黄色糊状体を得た。上記のCDEHAA量を基準とした収率は87%であった。黄色糊状体の構造をNMR及び元素分析により同定したところ、図1及び図2に示すように、D2EHAGの構造を持つことが確認された。上記の工程を経て、スカンジウム抽出剤としてのアミド誘導体D2EHAGを得た。

0098

〔スカンジウム抽出剤の調製〕
上記D2EHAGに希釈剤(商品名:テクリーンN20,JXエネルギー社製)を加え、濃度が10重量%になるように希釈したものを本実施例でのスカンジウム抽出剤とした。

0099

〔スカンジウムの溶媒抽出〕
容量100mlのビーカーに、抽出始液及びスカンジウム抽出剤を入れ、スターラーで撹拌させ、その後、シェイカーに移して10分間処理して混合接触させ、その後、静置して抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)とに分離した。スカンジウム抽出剤の抽出始液に対する体積比(O/A比)は、5であり、抽出工程S1でのpHは、2.0以上2.3以下に調整された。

0100

溶媒抽出にあたり、抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)との分相時間を計測した。結果を表1に示す。

0101

〔抽出後有機(第1有機相)の洗浄〕
続いて、抽出後有機(第1有機相)に、濃度0.5mol/L(1規定)の硫酸溶液を、
抽出後有機(第1有機相)の硫酸に対する体積比(O/A比)が0.5となるように混合して60分間撹拌して抽出後有機(第1有機相)を洗浄し、スカンジウムを洗浄後液(第2水相)に抽出した。洗浄工程S2でのpHは、2.0以上2.3以下に調整された。また、洗浄工程S2の繰り返しは行わず、1回(1段)の操作とした。

0102

洗浄前の抽出後有機(第1有機相)に含まれる金属(スカンジウム、トリウム)の割合を100%とした場合における金属が洗浄後液(第2水相)に抽出される割合を計測した。結果を図2に示す。また、洗浄後液(水相)に含まれるトリウム含有量を計測した。また、抽出後有機(第1有機相)を洗浄する際、水酸化スカンジウムの沈殿が認められるか否かを目視観察した。結果を表1に示す。

0103

<実施例2〜4>
洗浄工程S2でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1及び洗浄工程S2を行った。結果を表1及び図2に示す。

0104

<比較例1〜3>
洗浄工程S2でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1及び洗浄工程S2を行った。結果を表2及び図2に示す。

0105

<比較例4、5>
抽出工程S1でのpHを表1に記載の値に調整したこと以外は、実施例1と同様の手法にて抽出工程S1を行った。結果を表2に示す。

0106

0107

<考察>
〔抽出工程S1でのpH〕
抽出工程S1に関し、スカンジウムを含む酸性水溶液のpHが3以下であれば、抽出工程S1の後の分相時間は、10分程度であることが確認された(実施例1〜4等)。一方、pHが3を超えると、抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)との分相に45分かけても抽出後液(第1水相)と抽出後有機(第1有機相)とが混在したままで、2相に分相することができなかった(比較例5)。

0108

また、抽出工程S1でのpHが小さすぎると、洗浄後液(水相)に含まれるスカンジウムの含有量が十分とはいえなかった(比較例4)。これは、抽出工程S1においてスカンジウムを抽出後有機(第1有機相)に十分抽出できず、スカンジウムが抽出後液(第1水相)に残ったためと予想される。

0109

〔洗浄工程S2でのpH〕
図2から、洗浄工程S2に関し、pHが1.0以上2.5以下に調整されていれば、スカンジウムを含有する洗浄後液(第2水相)と、トリウムを含有する洗浄後有機(第2有機相)とに好適に分離できることが分かる(実施例1〜4)。実施例1〜4のいずれにおいても、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量は、0.4mg/L以下である。

0110

中でも、pHが1.5以上に調整されていると、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量を0.2mg/L以下に抑えることができ(実施例1〜3)、pHが2.0以上に調整されていれば、洗浄後液(第2水相)に含まれるトリウム含有量を0.1mg/L以下に抑えることができる(実施例1、2)。

0111

図2から、スカンジウムの収率の観点では、pHは、小さい方が好ましいことが分かる。pHを小さくすることで、抽出後有機(第1有機相)の洗浄回数を少なく抑えられる。

0112

スカンジウム及びトリウムの分離効率と、収率改善との双方を考慮すると、pHは、1.8以上2.3程度に調整されていることが最も好ましい(実施例1)。

0113

一方で、洗浄工程S2でのpHが小さすぎると、洗浄後液(水相)に含まれるトリウム含有量が、1.1mg/L以上になり得るため、好ましくない(比較例1、2)。

実施例

0114

また、洗浄工程S2でのpHが大きすぎると、洗浄工程S2でスカンジウムの水酸化物沈殿が生じ、スカンジウムを効率よく回収できなかった(比較例3)。

0115

S1抽出工程
S2洗浄工程

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