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技術 耐環境コーティング部材

出願人 一般財団法人ファインセラミックスセンター株式会社IHI
発明者 山口哲央横井太史中平兼司野村浩北岡論中村武志竹本剛
出願日 2016年3月11日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-048810
公開日 2017年9月14日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-160102
状態 特許登録済
技術分野 セラミックスの後処理
主要キーワード 柱状層 ムライト層 水蒸気遮蔽性 原料塊 酸素遮蔽層 航空機エンジン部品 高温高圧燃焼ガス 反応抑制層
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年9月14日)のものです。
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図面 (6)

課題

SiC長繊維強化セラミックス基材と、その一面に設けられた耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材を提供する。

解決手段

本発明の耐環境コーティング部材100は、SiC長繊維強化セラミックス基材1と、その一面に設けられた耐環境コーティング層2とを備える。耐環境コーティング層2は、SiC長繊維強化セラミックス基材1に積層されたSiAlON結合層21と、SiAlON結合層21に積層されたムライト層22と、ムライト層22に積層された反応抑制層23と、反応抑制層23に積層された希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成遷移する傾斜層24とを有する。また、反応抑制層23は、アルミナ層ガーネット層及び希土類(モノ)シリケート層のうちの少なくとも1層であり、複数層の場合は、ムライト層22側から傾斜層24側へと、この順に積層されてなる。

概要

背景

近年、航空機エンジンタービン及びシュラウド等の高温部品として、ニッケル基超合金などの耐熱合金よりも軽量で耐熱性に優れ、且つ高温域での比強度の大きいセラミックス基複合材料CMC;Ceramics Matrix Composite)が注目されている。特に、炭化珪素(SiC)繊維を強化繊維としたSiC繊維強化セラミックス複合材料(SiC/CMC)は、1200℃以上の耐熱性を有し、高い損傷許容性を有するため、航空機エンジンの高温部品用材料として有望視されている。

しかし、SiC/CMC基材は、水蒸気を含む高温ガス環境下で使用した場合、酸化による損耗と水蒸気による腐食が進行して、耐久性が著しく低下する。そのため、SiC/CMC基材を航空機エンジン部品などに適用するためには、高温高圧水蒸気耐性のある耐環境コーティングの適用が必須となる。

概要

SiC長繊維強化セラミックス基材と、その一面に設けられた耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材を提供する。本発明の耐環境コーティング部材100は、SiC長繊維強化セラミックス基材1と、その一面に設けられた耐環境コーティング層2とを備える。耐環境コーティング層2は、SiC長繊維強化セラミックス基材1に積層されたSiAlON結合層21と、SiAlON結合層21に積層されたムライト層22と、ムライト層22に積層された反応抑制層23と、反応抑制層23に積層された希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成遷移する傾斜層24とを有する。また、反応抑制層23は、アルミナ層ガーネット層及び希土類(モノ)シリケート層のうちの少なくとも1層であり、複数層の場合は、ムライト層22側から傾斜層24側へと、この順に積層されてなる。

目的

本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、SiC長繊維強化セラミックス基材の一面に設けられる耐環境コーティング層において、RE2Si2O7層とムライト層との間の液相生成が抑制され、RE2Si2O7層とムライト層との密着性が大きく向上し、耐久性に優れた航空機エンジンのタービン及びシュラウド等の高温部品などを提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
0件

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請求項1

SiC長繊維強化セラミックス基材と、前記SiC長繊維強化セラミックス基材の一面に設けられた耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材であって、前記耐環境コーティング層は、前記SiC長繊維強化セラミックス基材に積層されたSiAlON結合層と、前記SiAlON結合層に積層されたムライト層と、前記ムライト層に積層された反応抑制層と、前記反応抑制層に積層された希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成遷移する傾斜層とを有し、前記反応抑制層は、Al2O3層、RE3Al5O12層(REは希土類元素である)及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層(REは希土類元素であり、0≦x≦1である)のうちの少なくとも1層であることを特徴とする耐環境コーティング部材。

請求項2

前記SiC長繊維強化セラミックス基材のマトリックスが、SiC、Si3N4及びSiAlONのうちの少なくとも1種である請求項1に記載の耐環境コーティング部材。

請求項3

前記SiAlON結合層は、SiAlONをSi6−ZAlZOZN8−Zと表したときに、1200〜1600℃の温度範囲において、0<z≦3.5である請求項1又は2に記載の耐環境コーティング部材。

請求項4

前記反応抑制層は、前記Al2O3層、前記RE3Al5O12層及び前記[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層のうちの少なくとも2層からなり、前記ムライト層側から前記傾斜層側へと、前記Al2O3層、前記RE3Al5O12層及び前記[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の順に積層されてなる請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。

請求項5

前記傾斜層は、前記反応抑制層側が希土類ダイシリケート緻密層、表面側が希土類モノシリケート柱状層である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。

請求項6

前記希土類元素はイッテルビウム又はルテチウムである請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。

技術分野

0001

本発明は、酸素及び水蒸気等の腐食ガスに対する耐性に優れた耐環境コーティング部材に関する。更に詳しくは、本発明は、SiC長繊維強化セラミックス基材と、その一面に設けられた耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材に関する。

背景技術

0002

近年、航空機エンジンタービン及びシュラウド等の高温部品として、ニッケル基超合金などの耐熱合金よりも軽量で耐熱性に優れ、且つ高温域での比強度の大きいセラミックス基複合材料CMC;Ceramics Matrix Composite)が注目されている。特に、炭化珪素(SiC)繊維を強化繊維としたSiC繊維強化セラミックス複合材料(SiC/CMC)は、1200℃以上の耐熱性を有し、高い損傷許容性を有するため、航空機エンジンの高温部品用材料として有望視されている。

0003

しかし、SiC/CMC基材は、水蒸気を含む高温ガス環境下で使用した場合、酸化による損耗と水蒸気による腐食が進行して、耐久性が著しく低下する。そのため、SiC/CMC基材を航空機エンジン部品などに適用するためには、高温高圧水蒸気に耐性のある耐環境コーティングの適用が必須となる。

先行技術

0004

特開2013−248852公報

発明が解決しようとする課題

0005

耐環境コーティング層は、水蒸気による減肉に対する耐性が高く、SiC/CMC基材と強固に密着し、耐熱衝撃性が優れている必要がある。また、SiC/CMC基材の浸食を防止するための耐環境コーティング層として、ムライトジルコニア希土類ケイ酸塩などの酸化物系セラミックスが有力な素材として挙げられている。

0006

更に、RE2Si2O7又はRE2SiO5(式中、REは希土類元素である)で表される希土類ケイ酸塩は、1400℃以上の高温域で化学的及び構造的に安定であり、耐酸化性耐食性とを併せて備えている。従って、航空機エンジンなどの高温高圧燃焼ガス雰囲気中においても十分な耐久性を有するとともに、SiC/CMCに近似熱膨張係数を有している。

0007

しかし、RE2Si2O7をSi結合層の表面に直接形成すると、Si結合層の酸化に伴い形成されるSiO2−TGO(Thermally Grown Oxide)層の一部がSi(OH)4となって揮散し、その結果、RE2Si2O7層が多孔質層となり、基材から剥離し易くなる。そのため、Si結合層と希土類ケイ酸塩層間にムライト層酸素遮蔽層として配置することが必要となる。

0008

また、酸素を遮蔽するためのムライト層に、水蒸気の揮散を抑制し、水蒸気を遮蔽するための希土類ケイ酸塩層を積層する際、各層の界面に過剰なシリカが存在すると、耐環境コーティング部材が高温に晒されたときに、界面に液相が生成する。そして、この液相が再凝固する際に、粒界にシリカが析出し、析出したシリカがSi(OH)4として揮散し、その結果として多孔質層となるため、耐環境コーティング層が基材である希土類ケイ酸塩層から剥離し易くなる。

0009

更に、希土類ケイ酸塩層を成膜する際に、下層のムライト層との界面近傍にSi−O相が過剰に存在する場合、希土類ケイ酸塩とムライトとが反応して液相が生成する。そして、生成した液相が再凝固するときに粒界にSi−O相が析出し、水蒸気と反応してSi(OH)4ガスとして揮散し、希土類ケイ酸塩層の浸食が進行する。

0010

また、3Al2O3・2SiO2で表されるムライトは、酸素遮蔽性に優れているものの、水蒸気を含む高温高圧燃焼ガス雰囲気中においてSi成分優先的に揮散するため、剥離し易い多孔質のAl2O3が形成される。このAl2O3の形成を抑えるため、希土類ケイ酸塩層とムライト層との間に何等かの中間層を設けることが考えられる。例えば、ムライトとイッテルビウムシリケートとの混層からなる中間層を設けた事例があるが(例えば、特許文献1参照。)、これは熱膨張係数の調整を目的としたものである。

0011

更に、Si結合層の融点は1410℃前後であるため、次世代の耐環境コーティングの使用想定温度である1400℃では、Si結合層を使用することは難しい。また、Siが酸化してSiO2になるときに体積膨張するため、コーティング層の剥離が促進されるという問題も考えられる。

0012

本発明は、上述の従来技術の状況に鑑みてなされたものであり、SiC長繊維強化セラミックス基材の一面に設けられる耐環境コーティング層において、RE2Si2O7層とムライト層との間の液相生成が抑制され、RE2Si2O7層とムライト層との密着性が大きく向上し、耐久性に優れた航空機エンジンのタービン及びシュラウド等の高温部品などを提供することができる耐環境コーティング部材を提供することを課題とする。

課題を解決するための手段

0013

上述の課題は、SiC長繊維強化セラミックス基材と、その一面に設けられた、SiAlONからなる結合層、ムライトからなる酸素遮蔽層、希土類ケイ酸塩等からなる反応抑制層、及び希土類ケイ酸塩からなる水蒸気遮蔽/熱衝撃緩和層が、この順に積層されてなる耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材とすることによって解決される。

0014

本発明は以下のとおりである。
1.SiC長繊維強化セラミックス基材と、前記SiC長繊維強化セラミックス基材の一面に設けられた耐環境コーティング層とを備える耐環境コーティング部材であって、
前記耐環境コーティング層は、前記SiC長繊維強化セラミックス基材に積層されたSiAlON結合層と、前記SiAlON結合層に積層されたムライト層と、前記ムライト層に積層された反応抑制層と、前記反応抑制層に積層された希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成遷移する傾斜層とを有し、
前記反応抑制層は、Al2O3層、RE3Al5O12層(REは希土類元素である)及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層(REは希土類元素であり、0≦x≦1である)のうちの少なくとも1層であることを特徴とする耐環境コーティング部材。
2.前記SiC長繊維強化セラミックス基材のマトリックスが、SiC、Si3N4及びSiAlONのうちの少なくとも1種である前記1.に記載の耐環境コーティング部材。
3.前記SiAlON結合層は、SiAlONをSi6−ZAlZOZN8−Zと表したときに、1200〜1600℃の温度範囲において、0<z≦3.5である前記1.又は2.に記載の耐環境コーティング部材。
4.前記反応抑制層は、前記Al2O3層、前記RE3Al5O12層及び前記[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層のうちの少なくとも2層からなり、前記ムライト層側から前記傾斜層側へと、前記Al2O3層、前記RE3Al5O12層及び前記[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の順に積層されてなる前記1.乃至3.のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。
5.前記傾斜層は、前記反応抑制層側が希土類ダイシリケート緻密層、表面側が希土類モノシリケート柱状層である前記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。
6.前記希土類元素はイッテルビウム又はルテチウムである前記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の耐環境コーティング部材。

発明の効果

0015

本発明は、SiC長繊維強化セラミックス基材と、その一面に設けられた、特定の積層構造の耐環境コーティング層とを備える。これにより、腐食ガスの一種である酸素が遮蔽されるとともに、水蒸気も遮蔽される。また、ムライト層と傾斜層との間に形成された反応抑制層によって、希土類ダイシリケート層とムライト層との間の液相生成が抑制され、希土類ダイシリケート層とムライト層との密着性が大きく向上し、耐久性に優れた耐環境コーティング部材とすることができる。
また、SiC長繊維強化セラミックス基材のマトリックスが、SiC、Si3N4及びSiAlONのうちの少なくとも1種である場合は、軽量で耐熱性に優れ、且つ高温域での比強度が大きい基材とすることができ、航空機エンジンのタービン等の高温部品として有用な耐環境コーティング部材とすることができる。
更に.SiAlON結合層が、SiAlONをSi6−ZAlZOZN8−Zと表したときに、1200〜1600℃の温度範囲において、0<z≦3.5である場合は、1400℃を超える高温であっても、SiC長繊維強化セラミックス基材とムライト層とを強固に密着させることができる。
また、反応抑制層が、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層のうちの少なくとも2層からなり、ムライト層側から傾斜層側へと、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の順に積層されてなる場合は、希土類ダイシリケート層とムライト層との間の液相生成がより抑制され、希土類ダイシリケート層とムライト層とを十分に密着させることができる。
更に、傾斜層が、反応抑制層側が希土類ダイシリケート緻密層、表面側が希土類モノシリケート柱状層である場合は、柱状層が熱衝撃緩和層となり、耐熱サイクル性を向上させることができる。
また、希土類元素がイッテルビウム又はルテチウムである場合は、より優れた水蒸気遮蔽及び熱衝撃緩和の作用が奏される耐環境コーティング部材とすることができる。

図面の簡単な説明

0016

本発明の耐環境コーティング部材の積層構造を説明するための模式図である。
実施例の耐環境コーティング部材の断面のうちの所要部位電子顕微鏡により観察し、撮影したデータに基づく説明図である。
実施例の耐環境コーティング部材を所定の条件で熱処理した後の断面のうちの所要部位を電子顕微鏡により観察し、撮影したデータに基づく説明図である。
比較例の耐環境コーティング部材の断面のうちの所要部位を電子顕微鏡により観察し、撮影したデータに基づく説明図である。
比較例の耐環境コーティング部材を所定の条件で熱処理した後の断面のうちの所要部位を電子顕微鏡により観察し、撮影したデータに基づく説明図である。

0017

以下、本発明を図面も用いて詳しく説明する。
本発明の耐環境コーティング部材100は、SiC長繊維強化セラミックス基材1と、SiC長繊維強化セラミックス基材1の一面に設けられた耐環境コーティング層2とを備える。また、耐環境コーティング層2は、SiC長繊維強化セラミックス基材1に積層されたSiAlON結合層21と、SiAlON結合層21に積層されたムライト層22と、ムライト層22に積層された反応抑制層23と、反応抑制層23に積層された希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成が遷移する傾斜層24とを有する(図1参照)。

0018

SiC長繊維強化セラミックス基材1は、基材を強化するためのSiC長繊維と、セラミックスマトリックスとにより構成される。強化用繊維としては、SiC長繊維の他に、例えば、Si3N4繊維、炭素繊維及びグラファイト繊維等の長繊維が混合されていてもよい。また、SiC長繊維強化セラミックス基材1のマトリックスを構成するセラミックスとしては、SiCの他、例えば、Si3N4、SiAlON等を用いることができる。

0019

更に、SiC長繊維強化セラミックス基材1は、長繊維及びマトリックスともにSiCにより形成されていてもよく、マトリックスとしては、SiCの他に、Si3N4、SiAlONが用いられていてもよい。マトリックスがSiC、Si3N4及びSiAlONのうちの少なくとも1種により形成されておれば、軽量で耐熱性に優れ、且つ高温域での比強度が大きいSiC長繊維強化セラミックス基材1とすることができる。また、マトリックスとしては、耐酸化性に優れるため、SiCが好ましい。

0020

耐環境コーティング層2は、SiC長繊維強化セラミックス基材1の一面に設けられるが、耐環境コーティング層2の構成層のうちのSiAlON結合層21が、SiC長繊維強化セラミックス基材1の一面に直接積層される。SiAlON結合層21に用いられるSiAlONは特に限定されず、α’−SiAlON、β’−SiAlON、(α’+β’)複合SiAlONを用いることができるが、1400℃付近の高温で安定な、β’−SiAlONが好ましい。

0021

更に、SiAlON結合層21は、SiAlONをSi6−ZAlZOZN8−Zと表したときに、1200〜1600℃、特に1300〜1500℃の温度範囲において、0<z≦3.5、特に2.0<z≦3.0であることが好ましい。このようなSiAlONを用いてSiAlON結合層21を形成した場合、高温であっても、SiAlON結合層21を介してSiC長繊維強化セラミックス基材1とムライト層22とを強固に密着させることができる。

0022

SiAlON結合層21には、上述のようにムライト層22が積層される。ムライトは単鎖構造を有するアルミノケイ酸塩、即ち、酸化アルミニウム二酸化ケイ素との化合物であり、3Al2O3・2SiO2又はAl6Si2O13で表されるセラミックスである。このムライト層22を、例えば、電子ビーム蒸着法により形成する場合、アルミナとシリカとを蒸着原料として使用し、それぞれを独立した電子ビームにより蒸発させることで、アルミナとシリカとの比率を精密に制御することが可能であるため、所望の組成のムライト層22とすることができる。

0023

また、ムライト層22には反応抑制層23を介して希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成が遷移する傾斜層24が積層される。希土類元素は特に限定されず、Yb、Lu、Sm、Eu及びTm等が挙げられ、Yb、Luが好ましく、Ybが特に好ましい。希土類元素がYb又はLuであれば、腐食ガスの拡散、透過、及び層内における分相偏析等を十分に抑えることができる。更に、高温域で体積変化を伴う相変態を起こさないため、安定性に優れる。具体的な希土類ダイシリケートとしては、Yb2Si2O7、Lu2Si2O7等を用いることができ、希土類モノシリケートとしては、Yb2SiO5、Lu2SiO5等を用いることができる。

0024

更に、傾斜層24は、希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成が遷移している層であればよく、その形態は特に限定されない。この傾斜層24は、ムライト層22側が希土類ダイシリケート緻密層24a、表面側が希土類モノシリケート柱状層24bである形態とすることができる(図1参照)。このような傾斜層24であれば、希土類ダイシリケート緻密層24aにより水蒸気の侵入が十分に遮蔽され、希土類モノシリケート柱状層24bにより熱衝撃が十分に緩和される。

0025

上述の希土類ダイシリケート緻密層24aの緻密度相対密度指標として表した場合、相対密度は好ましくは96%以上、より好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以上である。また、耐環境コーティング層2の最表層となる希土類モノシリケート柱状層24bの柱状体平均径は2〜20μmとすることができる。また、この最表層側は、希土類モノシリケート多孔層であってもよく、この場合も柱状層であるときと同様に熱衝撃が十分に緩和される。
尚、相対密度は、純水を溶媒としてアルキメデス法により測定した嵩密度を、理論密度により除して算出することができる。

0026

耐環境コーティング層2を構成する各層の形成方法は特に限定されず、電子ビーム蒸着、熱蒸着イオンビーム蒸着スパッタリング反応性スパッタリング等の物理蒸着法熱化学蒸着、プラズマ化学蒸着電子サイクロトロン共鳴源プラズマ化学蒸着等の化学蒸着法、及びプラズマ溶射等の溶射法が挙げられる。これらの形成方法のうちでは電子ビーム蒸着法が好ましい。

0027

電子ビーム蒸着法では、希土類ケイ酸塩は、希土類酸化物とシリカとを蒸着原料として使用し、それぞれを独立した電子ビームにより蒸発させることで、希土類酸化物とシリカとの比率を精密に制御することが可能であり、所望の組成の傾斜層24とすることができる。更に、傾斜層24の内面側を所定の緻密度を有する緻密層24aとすること、及び表面側を所定の平均径を有する柱状層24b又は所定の多孔度を有する多孔質とすることも容易である。また、耐環境コーティング2を構成する他の各層も電子ビーム蒸着法により形成することが好ましい。このようにすれば、耐環境コーティング部材100の製造効率及び設備コストの観点で有利である。

0028

一方、例えば、大気プラズマ溶射法により希土類ケイ酸塩及びムライトなどのSiO2を含有する複合酸化物からなる耐環境コーティング層を形成する場合、原料粉末プラズマ中で溶融する際に蒸気圧の高いSiO2が優先的に蒸発することにより形成される膜はSiが不足した組成となる。また、緻密層を形成することが容易ではなく、十分な水蒸気遮蔽、酸素遮蔽等の特性を発現させることが困難である等の問題が生ずることがある。更に、電子ビーム蒸着法であっても、水蒸気遮蔽、酸素遮蔽等の特性をより向上させることが好ましい。

0029

上述のような問題を解決するため、本発明では、ムライト層22と傾斜層24との間に反応抑制層23を介在させる。この反応抑制層23は、Al2O3層、RE3Al5O12層(ガーネット層、REは希土類元素である)及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層(REは希土類元素であり、0≦x≦1である)のうちの少なくとも1層からなる。このように、ムライト層22と傾斜層24との間に反応抑制層23を介在させることにより、傾斜層24のうちの反応抑制層23側の希土類ダイシリケート緻密層24aの形成時に、未反応シリカが存在したとしても、液相形成等の更なる反応を抑止、又は少なくとも抑制することができる。

0030

反応抑制層23は上述の3層のうちの1層のみからなっていてもよい。この場合、反応抑制層23は、Al2O3層のみによって形成される。このように、反応抑制層23がAl2O3層のみからなるとき、Al2O3層の厚さは1〜50μm、特に1〜20μmであることが好ましい。Al2O3層の厚さが50μmを超えると、ムライト層22及び傾斜層24が有する希土類ダイシリケート緻密層24aとの熱膨張係数差により、成膜後の冷却過程でAl2O3層に引張応力が加わり、Al2O3層に亀裂が生ずることがある。

0031

また、反応抑制層23は、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層のうちの少なくとも2層からなる複層の形態とすることができる。この場合、ムライト層22側から傾斜層24側へと、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の順に積層される。これにより、液相形成等の更なる反応が十分に抑止、又は少なくとも抑制される。

0032

例えば、反応抑制層23を、[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層とすることができる。この場合、[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層中のYb2O3の一部が反応し、RE2Si2O7が生成し、これらが含有された層が形成される。そのため、液相形成等の更なる反応が抑止、又は少なくとも抑制される。

0033

例えば、反応抑制層23を、Al2O3層と[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層とを積層させた形態とすることができる。この場合、Al2O3層の一部が反応し、界面にRE3Al5O12及びRE2Si2O7が生成し、これらが含有された層が形成される。そのため、液相形成等の更なる反応が抑止、又は少なくとも抑制される。

0034

更に、上述のような組成の反応抑制層23とするときも、ムライト層21との界面近傍を実質的にAl2O3のみからなる層とするため、Al2O3層の厚さは、少なくとも1μm以上とする必要がある。また、隣接する層間が平衡状態共存する組み合わせの積層が最も安定である。そのため、反応抑制層23は、ムライト層22側から希土類ダイシケート緻密層24a側へと、Al2O3層、RE3Al5O12とRE2Si2O7とが含有される層、及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層が積層された形態であることが好ましい。

0035

また、反応抑制層23は、ムライト層22側から希土類ダイシケート緻密層24a側へと、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層が、この順に積層されてなる3層の形態であることが最も好ましい。この場合、反応抑制層23は可能な限り薄くすることが重要である。これらの反応抑制層23を構成する各層は、ムライト層22及び希土類ダイシリケート緻密層24aより熱膨張係数が大きい。従って、上述の各層が厚い場合、熱膨張係数の差により成膜後の冷却過程で反応抑制層23の厚さ方向に亀裂が生じ得るためである。

0036

更に、3層の形態であるとき、Al2O3層の厚さは1〜30μm、特に1〜10μm、RE3Al5O12層の厚さは0.5〜10μm、特に0.5〜2μm、[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の厚さは1〜10μm、特に1〜2μmであることが好ましい。また、Al2O3層、RE3Al5O12層及び[(1−x)RE2SiO5−xRE2Si2O7]層の合計厚さ、即ち、反応抑制層23の厚さは、2.5〜50μm、特に2.5〜30μmであることが好ましい。各層及び合計厚さが上述の範囲でれば、ムライト層22及び希土類ダイシリケート緻密層24aとの熱膨張係数の差による反応抑制層23の厚さ方向における亀裂の発生が防止される。

0037

尚、反応抑制層23における希土類元素(RE)も特に限定されないが、傾斜層24と同様の希土類元素、即ち、Yb、Lu、Sm、Eu及びTm等が挙げられ、Yb、Luが好ましく、Ybが特に好ましい。希土類元素がYb又はLuであれば、反応抑制層23における腐食ガスの拡散、透過、及び層内における分相、偏析等が十分に抑えられる。

0038

耐環境コーティング部材100を用いてなる製品も特に限定されず、(1)輸送機器関係、(2)各種プラント関係、(3)その他の施設設備機器等が挙げられる。(1)輸送機器関係としては、航空機船舶自動車及び鉄道車両等の各種車両、宇宙機器等で使用されている内燃機関ボイラー過熱器官、管寄せ主蒸気管高温高圧バルブ等)、蒸気タービンガスタービン(高温ロータ内車室蒸気弁低圧ロータ等)、熱交換器改質器配管遮熱材断熱材、固定部品等の高温にて使用される部位、部品などが挙げられる。

0039

また、(2)各種プラント関係としては、各種製品の製造、エネルギー供給プラント等で使用されている内燃機関、ボイラー(過熱器官、管寄せ・主蒸気管、高温高圧バルブ等)、蒸気タービン、ガスタービン(高温ロータ、内車室、蒸気弁、低圧ロータ等)、熱交換器、改質器、配管、遮熱材、断熱材、固定部品等の高温にて使用される部位、部品などが挙げられる。(3)その他の施設、設備、機器としては、上記(1)、(2)以外の分野の各種施設、設備、機器等で使用されている内燃機関、ボイラー(過熱器官、管寄せ・主蒸気管、高温高圧バルブ等)、蒸気タービン、ガスタービン(高温ロータ、内車室、蒸気弁、低圧ロータ等)、熱交換器、改質器、配管、遮熱材、断熱材、固定部品等の高温にて使用される部位、部品などが挙げられる。

0040

以下、本発明の実施例及び比較例を図面も用いて具体的に説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。

0041

実施例1
ムライト層を模擬したムライト基材を1020℃に加熱し、その一面に電子ビーム蒸着法により耐環境コーティング層を形成した。耐環境コーティング層は、加熱されたムライト基材の一面に、反応抑制層である[(1−x)Yb2SiO5−xYb2Si2O7]層及びYb2Si2O7層をこの順に積層させ形成した。

0042

反応抑制層である[(1−x)Yb2SiO5−xYb2Si2O7]層は、Yb2O3及びSiO2の原料塊を使用し、Yb2O3原料塊では電子ビーム出力18.0kW、SiO2原料塊では電子ビーム出力4.0kW、成膜時間120秒の条件でそれぞれの原料塊を蒸発させて形成した。厚さは2μmであった。

0043

耐環境コーティング部材の表層側は、Yb2O3及びSiO2の原料塊を使用し、Yb2O3原料塊では電子ビーム出力19.0kW、SiO2原料塊では電子ビーム出力5.1kW、成膜時間900秒の条件でそれぞれの原料塊を蒸発させて、反応抑制層であるYb2SiO5層側のYb2Si2O7緻密層を形成した。Yb2Si2O7緻密層の厚さは20μmであった。

0044

更に、このようにして製造した耐環境コーティング部材を、大気雰囲気において1400℃で5時間加熱して熱処理した。

0045

比較例1
実施例1と同様にして作製し、ムライト基材を1020℃に加熱し、その一面に電子ビーム蒸着法により耐環境コーティング層を形成した。耐環境コーティング層は、加熱されたムライト基材の一面に、Yb2Si2O7を形成した。更に、この比較例1では、反応抑制層である[(1−x)Yb2SiO5−xYb2Si2O7]層は形成しなかった。

0046

また、Yb2O3原料塊では電子ビーム出力16.6kW、SiO2原料塊では電子ビーム出力4.5kW、成膜時間1500秒の条件でそれぞれの原料塊を蒸発させ、Yb2O3原料塊とSiO2原料塊との蒸発量を実施例1と同様にして調整し、ムライト層側のYb2Si2O7緻密層を形成した。Yb2Si2O7緻密層の厚さは20μmであった。また、このようにして製造した耐環境コーティング部材を、実施例1と同様にして熱処理した。

0047

耐環境コーティング部材の評価
実施例1比較例1で製造した耐環境コーティング部材のムライト基材、反応抑制層及びYb2Si2O7緻密層の一部の断面、及び比較例1で製造した耐環境コーティング部材のムライト基材及びYb2Si2O7緻密層の一部の断面を、走査型電子顕微鏡により観察し、浸食の程度を評価した。より具体的には、実施例1及び比較例1で製造した耐環境コーティング部材から試験片切り出し、その切断面を#800研削仕上げした後、イオンミリングにより平滑化し、走査型電子顕微鏡(日立製作所製、型式「SU−8000」)にて観察した。倍率は実施例1が3000倍、比較例1が4000倍である。

0048

評価結果(観察結果)は図2〜5のとおりである。図2は反応抑制層が形成された実施例1の熱処理前の部材の評価結果、図3は反応抑制層が形成された実施例1の熱処理後の部材の評価結果、図4は反応抑制層が形成されていない比較例1の熱処理前の部材の評価結果、図5は反応抑制層が形成されていない比較例1の熱処理前の部材の評価結果である。尚、上述のような熱処理は、部材が航空機エンジンのタービン等の何らかの高温部品として実際に用いられる場合、通常、施される処理である。

実施例

0049

図2〜5によれば、反応抑制層を有さず、熱処理されていない図4では、界面近傍にSi—O層が観察される。また、熱処理をした図5では、界面近傍のSi−O層との反応により液相が生成し、特に界面において大きな空孔起源となるSi−Oが生じていることが分かる。一方、反応抑制層を有し、熱処理されていない図2では、界面近傍にSi−O層が存在せず、熱処理後の図3では、液相が全く生じていないことが分かる。このように、反応抑制層を設けることによる特有の有利な作用効果裏付けられている。

0050

本発明は、1400℃の高温において用いることができ、優れた酸素遮蔽性及び水蒸気遮蔽性等を備える耐環境コーティング部材の技術分野で利用することができ、例えば、航空機エンジンのタービン及びシュラウド等の高温部品などの製品分野において有用である。

0051

100;耐環境コーティング部材、1;SiC長繊維強化セラミックス基材、2;耐環境コーティング層、21;サイアロン結合層、22;ムライト層、23;反応抑制層、24;希土類ダイシリケートから希土類モノシリケートへと組成が遷移する傾斜層、24a;希土類ダイシリケート緻密層、24b;希土類モノシリケート柱状層。

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