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技術 イムノクロマトグラフィー装置

出願人 田中貴金属工業株式会社
発明者 鈴木啓太加藤佑弥岩本久彦
出願日 2016年3月4日 (4年8ヶ月経過) 出願番号 2016-042707
公開日 2017年9月7日 (3年2ヶ月経過) 公開番号 2017-156324
状態 特許登録済
技術分野 生物学的材料の調査,分析
主要キーワード 滴下部材 ストリップ形式 滴下部位 含有部材 テストパック 担持固定 検査具 テストライン
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (5)

課題

イムノクロマトグラフィー装置の保存中における亜硝酸発生の抑制により保存安定性を向上し、また、該装置の使用時の亜硝酸生成効率を高めて高感度検出対象を検出できるイムノクロマトグラフィー装置の提供。

解決手段

イムノクロマトグラフィー装置であって、試料滴下部材標識物質保持部材クロマトグラフ媒体部材及び吸収部材がこの順に試料が展開されるように配設され、前記標識物質含有部位より上流側に、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とを有し、前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しないイムノクロマトグラフィー装置。

概要

背景

近年、イムノクロマトグラフストリップ形式イムノアッセイは、抗体の持つ特異的反応性を利用して、検体中の検出対象を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として汎用性が高まっている。特に、最近では、インフルエンザウィルスや細菌といった病原体に対する感染の有無を検査するためのイムノクロマト法に基づく簡便な検査具についても関心が高まり、研究開発が進められてきた。

溶血性連鎖球菌(以下、「溶連菌」ともいう。)の診断は、群特異的である多糖体抗原として検査することで行う。多糖体の抽出法としては、酵素ファージ塩酸次亜塩素酸などを用いた方法が知られているが、亜硝酸を用いる抽出法が最も一般的である。

亜硝酸による抽出法は、多糖体の高い抽出効率と亜硝酸が低価格で取り扱いが容易である点にメリットがあるが、亜硝酸自体が不安定で分解しやすい化合物であるため、抽出前亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸化合物酢酸等の有機酸とを混合し、その都度亜硝酸を調製しなければならない点にデメリットがある。また、恒常的に診断を行う場合、その都度亜硝酸を調製することは医師検査技師等にとって大きな負担となる。加えて、混合工程を含むため、試薬の混合間違い等により正しい安全な診断を行えない可能性もある。

この問題点を克服するために、溶血性連鎖球菌からの多糖抗原を抽出する工程を簡易化するための簡便な検査具についても研究開発が進められてきた。

例えば、特許文献1では、生物(特に、連鎖球菌A群又はB群)からの多糖抗原を抽出する方法において、a.測定量の亜硝酸塩が滲み込ませて乾燥されている第1吸収性物質、b.測定量の中和塩基及び緩衝液が滲み込ませて乾燥されている第2吸収性物質、c.測定量の酸の水溶液、を組み合わせたキットを用いた簡易化した抽出方法が提案されている(特許文献1参照)。

連鎖球菌科などの微生物細菌性生物体に特徴的な炭水化物抗原を検出するための分析装置や方法に関しては、既に上市販売されているものもあり、例えば、イムノクロマト試薬としては、クイックビューDipStick StrepA(DSファーバイオメディカル)やストレップAテストパック・プラスOBC(三和化学研究所)などがあり、また、スライドラテックス凝集法試薬としてはAストレプトAD「生研」(デンカ生研)などが知られている。

ところで、イムノクロマト試薬の市販品にあっては、一般的に検体の試験において陽性と判定されるためには、直接法では溶連菌濃度が1×106CFU/mL以上であることが必要とされている。その為、1×106CFU/mL未満の場合には、陽性であるにも拘らず陰性と判定されたり、また、不溶性担体で抗体を標識したイムノクロマト法検査薬は、一般的にEIAと比較して感度が低い為、陽性の場合に観察されるラインが明瞭でないという問題点や、さらには、試料液中被検出物質(抗原等)が存在しないにも拘らず、陽性と判定される、所謂、偽陽性が生じるという問題点があった。

また、不溶性担体(金コロイド粒子着色ラテックス粒子等)で抗体を標識したイムノクロマト法(「粒子イムノクロマト法」ともいう。)にあっては、測定試料とか測定環境測定条件によっては、依然として該不溶性担体の凝集が起き、非特異反応が起きることがあり、展開速度が遅い等の問題点は解決できない場合がある。そのため、個々の測定試料とか測定環境、測定条件を採用した粒子イムノクロマト法において、不溶性担体の凝集が起きず、非特異反応が起きることがなく、展開速度が速い検査薬の探求があった。

上記問題を解決するために、本発明者らはこれまでに、イムノクロマトグラフ法検査薬で細菌を検査するに当たっては、使用する試料抽出液検査デバイス中に環状オリゴ糖及び/又は亜硝酸塩を含有させた検査薬を開発している(特許文献2参照)。この検査薬は、試料抽出液である展開液が検査デバイス展開中に保持されている有機酸や生成してくる亜硝酸によってpH条件が変化しても、検体またはイムノクロマトデバイス中のタンパク質成分等が変性析出して、判定ライン引っ掛かり、非特異的な反応を誘発することがなく、かつ、抗体固定粒子コロイドの凝集を起こすことがない、検査精度(以下「S/N比」という。)が高く、展開速度の速い検査薬である。また上記検査デバイスは、亜硝酸をその都度用事調製をすることなく、検査デバイス上で環状オリゴ糖の存在下で亜硝酸を生成させることができるため検査効率、検査精度及び省力化を向上させることができた。

概要

イムノクロマトグラフィー装置の保存中における亜硝酸発生の抑制により保存安定性を向上し、また、該装置の使用時の亜硝酸生成効率を高めて高感度に検出対象を検出できるイムノクロマトグラフィー装置の提供。イムノクロマトグラフィー装置であって、試料滴下部材標識物質保持部材クロマトグラフ媒体部材及び吸収部材がこの順に試料が展開されるように配設され、前記標識物質含有部位より上流側に、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とを有し、前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しないイムノクロマトグラフィー装置。

目的

本発明の目的及び課題は、保存安定性が向上し、検出対象を高感度に検出できるイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びそれを用いたイムノクロマト検出方法を提供する

効果

実績

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請求項1

試料滴下部材と、標識物質含有部位を有する標識物質保持部材と、検出部を有するクロマトグラフ媒体部材と、吸収部材とを含み、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置であって、前記試料滴下部材、前記標識物質保持部材、前記クロマトグラフ媒体部材及び前記吸収部材がこの順に試料が展開されるように配設され、前記標識物質含有部位より上流側に、前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とを有し、前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しないイムノクロマトグラフィー装置。

請求項2

前記有機酸又は有機酸誘導体が、下記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物である請求項1に記載のイムノクロマトグラフィー装置。(式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子カルボニル基、または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、アルキル基は互いに結合して環を形成し、脂環式炭化水素環若しくは芳香族炭化水素環を形成してもよい。Aは単結合または二重結合を、Xは−C(=O)−、または−(CH2)n−を、Yは炭素原子または窒素原子を表し、nは1または2である。Zは水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、−C(=O)R3、または−O−C(=O)R3を表す。R3は置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基を表す。)

請求項3

前記有機酸又は有機酸誘導体が、フタルイミド、N−アセチルフタルイミド、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−アセトキシスクシンイミド、及びヒダントインからなる群より選択される少なくとも1である、請求項1又は2に記載のイムノクロマトグラフィー装置。

請求項4

前記亜硝酸化合物が、亜硝酸塩である請求項1〜3のいずれか1項に記載のイムノクロマトグラフィー装置。

請求項5

前記検出対象がグラム陽性菌である請求項1〜4のいずれか1項に記載のイムノクロマトグラフィー装置。

請求項6

前記グラム陽性菌が溶血性連鎖球菌である請求項5に記載のイムノクロマトグラフィー装置。

請求項7

請求項1〜6のいずれか1項に記載のイムノクロマトグラフィー装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、イムノクロマトキット

請求項8

請求項7に記載のイムノクロマトキットを用いて、検体中の検出対象を検出する方法であって、以下の工程(i)〜(v)を含むイムノクロマト検出方法。(i)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料滴下部材に滴下する工程(ii)亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体との反応により生成した亜硝酸により、検体中の検出対象から被検出物質を抽出する工程(iii)標識物質保持部材において被検出物質を標識化する工程(iv)検体含有液がクロマトグラフ媒体部材上を移動して、検出部において検出対象を検出する工程(v)検体含有液が、吸収部材により吸収される工程

技術分野

背景技術

0002

近年、イムノクロマトグラフストリップ形式イムノアッセイは、抗体の持つ特異的反応性を利用して、検体中の検出対象を検出する簡便な体外診断キットもしくは携帯用診断装置として汎用性が高まっている。特に、最近では、インフルエンザウィルスや細菌といった病原体に対する感染の有無を検査するためのイムノクロマト法に基づく簡便な検査具についても関心が高まり、研究開発が進められてきた。

0003

溶血性連鎖球菌(以下、「溶連菌」ともいう。)の診断は、群特異的である多糖体抗原として検査することで行う。多糖体の抽出法としては、酵素ファージ塩酸次亜塩素酸などを用いた方法が知られているが、亜硝酸を用いる抽出法が最も一般的である。

0004

亜硝酸による抽出法は、多糖体の高い抽出効率と亜硝酸が低価格で取り扱いが容易である点にメリットがあるが、亜硝酸自体が不安定で分解しやすい化合物であるため、抽出前亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸化合物酢酸等の有機酸とを混合し、その都度亜硝酸を調製しなければならない点にデメリットがある。また、恒常的に診断を行う場合、その都度亜硝酸を調製することは医師検査技師等にとって大きな負担となる。加えて、混合工程を含むため、試薬の混合間違い等により正しい安全な診断を行えない可能性もある。

0005

この問題点を克服するために、溶血性連鎖球菌からの多糖抗原を抽出する工程を簡易化するための簡便な検査具についても研究開発が進められてきた。

0006

例えば、特許文献1では、生物(特に、連鎖球菌A群又はB群)からの多糖抗原を抽出する方法において、a.測定量の亜硝酸塩が滲み込ませて乾燥されている第1吸収性物質、b.測定量の中和塩基及び緩衝液が滲み込ませて乾燥されている第2吸収性物質、c.測定量の酸の水溶液、を組み合わせたキットを用いた簡易化した抽出方法が提案されている(特許文献1参照)。

0007

連鎖球菌科などの微生物細菌性生物体に特徴的な炭水化物抗原を検出するための分析装置や方法に関しては、既に上市販売されているものもあり、例えば、イムノクロマト試薬としては、クイックビューDipStick StrepA(DSファーバイオメディカル)やストレップAテストパック・プラスOBC(三和化学研究所)などがあり、また、スライドラテックス凝集法試薬としてはAストレプトAD「生研」(デンカ生研)などが知られている。

0008

ところで、イムノクロマト試薬の市販品にあっては、一般的に検体の試験において陽性と判定されるためには、直接法では溶連菌濃度が1×106CFU/mL以上であることが必要とされている。その為、1×106CFU/mL未満の場合には、陽性であるにも拘らず陰性と判定されたり、また、不溶性担体で抗体を標識したイムノクロマト法検査薬は、一般的にEIAと比較して感度が低い為、陽性の場合に観察されるラインが明瞭でないという問題点や、さらには、試料液中被検出物質(抗原等)が存在しないにも拘らず、陽性と判定される、所謂、偽陽性が生じるという問題点があった。

0009

また、不溶性担体(金コロイド粒子着色ラテックス粒子等)で抗体を標識したイムノクロマト法(「粒子イムノクロマト法」ともいう。)にあっては、測定試料とか測定環境測定条件によっては、依然として該不溶性担体の凝集が起き、非特異反応が起きることがあり、展開速度が遅い等の問題点は解決できない場合がある。そのため、個々の測定試料とか測定環境、測定条件を採用した粒子イムノクロマト法において、不溶性担体の凝集が起きず、非特異反応が起きることがなく、展開速度が速い検査薬の探求があった。

0010

上記問題を解決するために、本発明者らはこれまでに、イムノクロマトグラフ法検査薬で細菌を検査するに当たっては、使用する試料抽出液検査デバイス中に環状オリゴ糖及び/又は亜硝酸塩を含有させた検査薬を開発している(特許文献2参照)。この検査薬は、試料抽出液である展開液が検査デバイス展開中に保持されている有機酸や生成してくる亜硝酸によってpH条件が変化しても、検体またはイムノクロマトデバイス中のタンパク質成分等が変性析出して、判定ライン引っ掛かり、非特異的な反応を誘発することがなく、かつ、抗体固定粒子コロイドの凝集を起こすことがない、検査精度(以下「S/N比」という。)が高く、展開速度の速い検査薬である。また上記検査デバイスは、亜硝酸をその都度用事調製をすることなく、検査デバイス上で環状オリゴ糖の存在下で亜硝酸を生成させることができるため検査効率、検査精度及び省力化を向上させることができた。

先行技術

0011

特表平7−503543号公報
特開2015−34719号公報

発明が解決しようとする課題

0012

しかし、上記検査デバイスには、保存安定性という観点で以下のような改善すべき点があることがわかった。
有機酸及び亜硝酸塩を含有させた従来の検査デバイスにおいては、検査デバイスの保存中に、一部の有機酸と亜硝酸塩が検査デバイス内で拡散することによって、両者が接触し、亜硝酸が発生してしまうおそれがあることがわかった。検査デバイスの保存中に亜硝酸の発生が進行すると、実際に検査デバイスを使用する際には、亜硝酸の発生が不十分となって検出対象の抽出効率が低下してしまい、検出感度落ちてしまう。したがって、この点で検査デバイスの保存安定性を向上させる余地があった。
また、上記検査デバイスが含有する環状オリゴ糖は、亜硝酸塩の安定化には必要であったが、一方で環状オリゴ糖は粘性を持つ物質であるため、測定試料、測定環境によっては偽陽性を起こしやすい物質でもあった。したがって、環状オリゴ糖を使用せずに、デバイス保存中の亜硝酸塩を安定化できる方法も望まれている。

0013

そこで、本発明の目的及び課題は、保存安定性が向上し、検出対象を高感度に検出できるイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びそれを用いたイムノクロマト検出方法を提供することにある。
特に、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置において、該装置保存中の亜硝酸の発生を抑制することにより、保存安定性が向上したイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びそれを用いたイムノクロマト検出方法を提供することにある。
またイムノクロマトグラフィー装置の保存安定性を向上させることで、該装置の使用時の亜硝酸生成効率を高め、検出対象を高感度に検出できるイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びそれを用いたイムノクロマト検出方法を提供することにある。

課題を解決するための手段

0014

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置において、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、特定の位置関係を有することにより、装置保存中に、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とが装置内で拡散し、両者が接触することによっておこる亜硝酸の発生を抑制することができ、保存安定性の高いイムノクロマトグラフィー装置を提供することができた。

0015

すなわち、本発明は以下の通りである。
1.試料滴下部材と、標識物質含有部位を有する標識物質保持部材と、検出部を有するクロマトグラフ媒体部材と、吸収部材とを含み、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置であって、
前記試料滴下部材、前記標識物質保持部材、前記クロマトグラフ媒体部材及び前記吸収部材がこの順に試料が展開されるように配設され、
前記標識物質含有部位より上流側に、前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とを有し、
前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しない
イムノクロマトグラフィー装置。
2.前記有機酸又は有機酸誘導体が、下記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物である前記1に記載のイムノクロマトグラフィー装置。

0016

0017

(式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子カルボニル基、または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、アルキル基は互いに結合して環を形成し、脂環式炭化水素環若しくは芳香族炭化水素環を形成してもよい。
Aは単結合または二重結合を、Xは−C(=O)−、または−(CH2)n−を、Yは炭素原子または窒素原子を表し、nは1または2である。
Zは水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、−C(=O)R3、または−O−C(=O)R3を表す。R3は置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基を表す。)
3.前記有機酸又は有機酸誘導体が、フタルイミド、N−アセチルフタルイミド、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−アセトキシスクシンイミド、及びヒダントインからなる群より選択される少なくとも1である、前記1又は2に記載のイムノクロマトグラフィー装置。
4.前記亜硝酸化合物が、亜硝酸塩である前記1〜3のいずれか1に記載のイムノクロマトグラフィー装置。
5.前記検出対象がグラム陽性菌である前記1〜4のいずれか1に記載のイムノクロマトグラフィー装置。
6.前記グラム陽性菌が溶血性連鎖球菌である前記5に記載のイムノクロマトグラフィー装置。
7.前記1〜6のいずれか1に記載のイムノクロマトグラフィー装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む、イムノクロマトキット。
8.前記7に記載のイムノクロマトキットを用いて、検体中の検出対象を検出する方法であって、以下の工程(i)〜(v)を含むイムノクロマト検出方法。
(i)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料滴下部材に滴下する工程
(ii)亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体との反応により生成した亜硝酸により、検体中の検出対象から被検出物質を抽出する工程
(iii)標識物質保持部材において被検出物質を標識化する工程
(iv)検体含有液がクロマトグラフ媒体部材上を移動して、検出部において検出対象を検出する工程
(v)検体含有液が、吸収部材により吸収される工程

発明の効果

0018

本発明では、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置において、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸又は有機酸誘導体を含有する部位とが、特定の位置関係を有することにより、装置保存中に有機酸又は有機酸誘導体と、亜硝酸化合物が装置内で拡散、接触することによっておこる亜硝酸の発生を抑制することができ、保存安定性の高いイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びそれらを用いたイムノクロマト検出方法を提供できる。
さらに本発明は、上述のように、装置保存中における亜硝酸の発生を抑制できるため、本発明の装置やキット使用時の亜硝酸生成効率を高め、検出対象を高感度に検出することが可能となる。

図面の簡単な説明

0019

本発明の一実施形態のイムノクロマトグラフィー装置の構造を説明するための断面図である。
本発明の別の実施形態のイムノクロマトグラフィー装置の構造を説明するための断面図である。
本発明の一実施形態のイムノクロマトグラフィー装置等の構造の一部分を説明するための断面図である。
本発明の別の実施形態のイムノクロマトグラフィー装置の構造の一部分を説明するための断面図である。

0020

以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の一実施形態は、検体中の検出対象から被検出物質(抗原)を抽出し、その被検出物質(抗原)に特異的に結合する結合物質(抗体)との抗原−抗体反応により形成される複合体をクロマトグラフ媒体に展開させることで、検出対象を各種の検出手段により確認するためのイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット、イムノクロマト検出方法(以下、イムノクロマト検出系ということがある)に基づくものである。その抗原と最も特異的に反応して結合する抗体としては、それと特異的に結合する、例えばモノクローナル抗体及びポリクローナル抗体若しくはその他の公知の抗体を任意に使用することができる。

0021

上記抗体には標識を付けておくことで、検出対象の検出が可能となる。標識としては、酵素、発色物質蛍光物質、または放射性物質などを任意に使用することができるが、操作が簡単で、検定時間も短くするという、イムノクロマト検出方法の特色を出す為や、抗体、抗原の種類を考慮して決めればよい。
また、検出手段は、操作が簡単で、比較的短時間で判定できるという、イムノクロマト検出方法の特色を表すためには、目視判定で、正確に判定できると言う性能を有することを特徴とするが、時間、精度などが要求される場合には、分光光度検出、放射線検出など、各種の検出手段を付帯させて、検出することができる。

0022

本発明における検出対象としては、本発明のイムノクロマト検出系により生成する亜硝酸によって、細菌に特異な抗原多糖体が抽出されるような細菌であれば適用可能である。特に厚いペプチドグリカン層を有するグラム陽性菌を含む検出対象において好ましく用いられる。例えば、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌かん菌、たんそ菌、セレウス菌ジフテリア菌リステリア破傷風菌ボツリヌス菌ウェルシュ菌などが挙げられる。中でも球菌類であるブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌でより好ましく用いられ、最適には連鎖球菌、特に溶血性連鎖球菌で用いられる。

0023

上記検出対象を含有する検体としては、例えば、唾液鼻汁鼻腔拭い液、鼻腔吸引液咽頭拭い液、肺胞洗浄液直腸拭い液、便懸濁液、尿、羊水等の生体試料のみならず、食品抽出液上水、下廃水培養液等々といった試料であることができ、特に限定されるものではない。中でも、本発明はこれらの検体中に含まれ、原因となる菌がグラム陽性菌、特に、溶連菌を含む場合に有用である。本発明は、呼吸器疾患患者等から採取される唾液等に含まれる溶連菌を検出対象とし、溶連菌から抽出された多糖体を被検出物質として、検出対象の溶連菌を検出することができる。

0024

以下、本発明のイムノクロマトグラフィー装置、イムノクロマトキット及びイムノクロマト検出方法を実施するための形態を順次説明をするが、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではない。

0025

<イムノクロマトグラフィー装置>
本発明のイムノクロマトグラフィー装置は、試料滴下部材と、標識物質含有部位を有する標識物質保持部材と、検出部を有するクロマトグラフ媒体部材と、吸収部材とを含み、亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体(以下、有機酸等ともいう)とを含有する、検体中の検出対象を検出するためのイムノクロマトグラフィー装置であって、試料滴下部材、標識物質保持部材、クロマトグラフ媒体部材及び吸収部材がこの順に試料が展開されるように配設され、標識物質含有部位より上流側に、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸等を含有する部位とを有し、亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しないイムノクロマトグラフィー装置である。亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸等を含有する部位とが上記のような位置関係を有することによって、装置保存中に有機酸等と亜硝酸化合物が装置内で拡散・接触することを抑制でき、すなわち亜硝酸の発生を抑制できる。前記亜硝酸化合物を含有する部位と、前記有機酸等を含有する部位とが上記のような位置関係を有することによって、装置保存中における亜硝酸化合物と有機酸等とが装置内で拡散・接触することを抑制できるのは、亜硝酸化合物と有機酸等の反応が限定的となるからであると推測される。

0026

本明細書において、「部材」と、「部位」とは意味が異なるものとして用いる。例えば、「亜硝酸化合物(有機酸等)を含有する部材」とは、亜硝酸化合物(有機酸等)を含有する「部材」全体を意味し、「亜硝酸化合物(有機酸等)を含有する部位」とは、亜硝酸化合物(有機酸等)を含有する部材の中で、実際に亜硝酸化合物(有機酸等)を含有する領域を意味することとする。なお、「部位」が部材の一部の領域ではなく部材全体を示す場合もある。
また本明細書においては、亜硝酸化合物を含有する部位が存在する部材を亜硝酸化合物含有部材、有機酸等を含有する部位が存在する部材を有機酸等含有部材ということがある。

0027

本明細書において、「試料展開方向」とは、試料が、試料滴下部材に滴下されてから吸収部材で吸収されるまでに展開(移動)する方向をいい、例えば、図1に示すイムノクロマトグラフィー装置においては、矢印(右矢印)で示す方向をいう。また、本発明において「上流側」とは、上記「試料展開方向」と真逆の方向をいい、吸収部材を基準として試料滴下部材方向(側)をいう。

0028

下図面を参照しながら本発明のイムノクロマトグラフィー装置について具体的に説明する。
本発明のイムノクロマトグラフィー装置の一実施形態としては、図1に示すように、少なくとも試料滴下部材(1)、標識物質含有部位を有する標識物質保持部材(2)、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体部材(3)、及び吸収部材(5)を含む複数の部材から構成されている。そして、該装置は、試料滴下部材(1)、標識物質保持部材(2)、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体部材(3)、及び吸収部材(5)の各部材がこの順に試料が展開されるように、イムノクロマトグラフィー装置を構成する各部材が連結して配設されている。なお、上記以外の他の部材を該装置の任意の位置に備えていてもよく、例えば図2に示すように、試料滴下部材(1)と標識物質保持部材(2)の間に、他の部材(例えば、有機酸等含有部材7等)が設けられていてもよい。各部材が連結される態様としては、図1に示すように各部材同士が重なって連結されていてもよいし、各部材同士は重ならず、部材の側面同士が試料展開方向の側で接触して連結されていてもよい。

0029

試料滴下部材(1)とは、イムノクロマトグラフィー装置において検体を含有する試料(以下、単に試料ともいう)を滴下する部位(以下、試料滴下部位11という)を有する部材をいい、図1の符号1で示す部材をいう。試料滴下部位11は、試料滴下部材(1)のうち、試料を滴下する一部分の領域を指す。試料滴下部材(1)における試料滴下部位11の位置は特に制限はなく、例えば、試料滴下部材(1)の両端付近であってもよいし、試料滴下部材(1)の中央付近であってもよい。試料滴下部材(1)には、後述する亜硝酸化合物や有機酸等、その他、本発明の効果を損なわない任意の試薬を含有させることができる。
試料滴下部材(1)は、試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに試料が移動していくような性質多孔質シートで構成することができる。多孔質シートとしては、例えば、セルロース濾紙ガラスファイバー濾紙、ポリウレタンポリアセテート酢酸セルロースナイロン綿布等が挙げられる。試料滴下部材(1)の形状としては、シート状のものを使用することができる。

0030

標識物質保持部材(2)とは、標識成分によって試薬成分を標識した標識物質を含有する部位(以下、標識物質含有部位21という)を有する部材であり、図1の符号2で示す部材をいう。標識物質含有部位21は、標識物質保持部材(2)のうち、実際に標識物質を含有する領域を指す。標識物質含有部位21は図1に示すように標識物質保持部材(2)の一部分の領域を占めるものであってもよいし、標識物質保持部材(2)の部材全体の領域を占めるものであってもよい。標識物質含有部位21が標識物質保持部材(2)の一部分の領域を占めるものである場合、標識物質保持部材(2)における標識物質含有部位21の位置は特に制限はなく、例えば標識物質保持部材(2)の両端付近であってもよいし、標識物質保持部材(2)の中央付近であってもよい。標識物質保持部材(2)には、後述する亜硝酸化合物や有機酸等、その他、本発明の効果を損なわない任意の試薬を含有させることができる。
標識成分としては、金属粒子ラテックス粒子、酵素、蛍光化合物等があり、なかでも金属粒子が好ましい。試薬成分としては、分析物を認識する能力を有する粒子又は分子であり、好ましくはモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントである(第一試薬)。

0031

金属粒子としては、金、銀、白金ゲルマニウムロジウムパラジウムのような貴金属単粒子、複合粒子が任意に好ましく使用できる。特に金が色相の変化に敏感であり、特に好ましい。金属粒子の状態を見れば、平均粒径は1nm〜500nm、好ましくは10nm〜250nm、より好ましくは35nm〜100nm程度である。上記平均粒径を有する、金のナノ径の各種金粒子金ナノ粒子という。イムノクロマト検出方法においては、この金の粒径粒度分布、色調などを考慮して、金粒子の表面に白金粒子担持させた、金複合粒子とすることにより、イムノクロマト検出方法の標識とすること、タンパク質染色剤としての有用性を高める為に使用することができる。さらに、金属粒子表面に結合できる官能基と抗体と結合できる反応基を有する金標識増幅剤のような、いわゆる増感剤を使用すれば測定感度を高めることができる。
標識物質保持部材(2)としては、グラスファイバーまたはセルロースの膜が通常使用される。標識物質保持部材(2)の形状としては、シート状のものを使用することができる。

0032

本発明のイムノクロマトグラフィー装置において、標識物質含有部位21より上流側に亜硝酸化合物を含有する部位と、有機酸等を含有する部位とを有する。本発明のイムノクロマトグラフィー装置は、このような構成をとることで、標識物質含有部位21より上流側で亜硝酸化合物と有機酸等が反応して亜硝酸を発生させ、検出対象から被検出物質を抽出することができるので、検出対象は被検出物質が抽出された状態で標識物質含有部位21へと移動し、被検出物質(例えば、多糖体)を標識化することが可能となる。

0033

亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位は、同一部材内に存在してもよいし、それぞれの部位が異なる部材に存在していてもよい。異なる部材に、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位が存在する態様とは、標識物質含有部位21より上流側に亜硝酸化合物及び有機酸等の一方を含有し、亜硝酸化合物及び有機酸等の一方を含有する部材より上流側の部材が亜硝酸化合物及び有機酸等の他方を含有する態様を意味する。
なお、同一の部材内に亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位が存在する場合、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位は同一箇所ではない。装置保存中に亜硝酸化合物と有機酸等との反応が進行してしまうからである。
また、亜硝酸化合物を含有する部位及び/又は有機酸等を含有する部位が存在する部材としては、上記試料滴下部材(1)と、標識物質保持部材(2)の2つの部材のみに限られず、試料滴下部材(1)と標識物質保持部材(2)との部材間に、別の部材を備える場合は、当該部材に亜硝酸化合物または有機酸等を含有させることもできる。この場合、当該部材の数は1つであっても複数であってもよい。例えば、図2に示すように、試料滴下部材(1)と標識物質保持部材(2)との部材間に、有機酸等含有部材7を備えることができる。

0034

本発明のイムノクロマトグラフィー装置において、亜硝酸化合物を含有する部位は、標識物質含有部位より上流側に存在する限り、有機酸等を含有する部位よりも試料展開方向の上流側に位置してもよいし、逆に有機酸等を含有する部位よりも試料展開方向の下流側に位置してもよい。ただし、前述したように亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位は同一箇所ではない。亜硝酸化合物を含有する部位が有機酸等を含有する部位よりも試料展開方向の上流側に位置する場合、亜硝酸化合物が装置内を有機酸等を含有する部位へと移動し、両者が接触・反応して亜硝酸が生成される。また、亜硝酸化合物を含有する部位が有機酸等を含有する部位よりも試料展開方向の下流側に位置する場合、有機酸等が装置内を亜硝酸化合物を含有する部位へと移動し、両者が接触・反応して亜硝酸が生成される。

0035

中でも、亜硝酸化合物を含有する部位は、試料滴下部材(1)の部材内の任意の位置であることが好ましく、有機酸等を含有する部位は、有機酸等含有部材7の部材内の任意の位置であることが好ましい。
また、亜硝酸化合物を含有する部位又は有機酸等を含有する部位のうち、下流側に存在するいずれか一方の部位と標識物質保持部材(2)内の標識物質含有部位21との物理的な距離は、最短距離が20mm〜40mmであることが好ましい。20mm未満であると抽出効率が下がり感度が低下し、40mmを超えると検出時間が長くなるからである。

0036

本発明は、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しない構成を有することを特徴とする。上記構成を有することによって、装置の保存中に亜硝酸化合物と有機酸等が装置内で接触することを抑制でき、すなわち装置保存時の亜硝酸の発生を抑制でき、装置の保存安定性を向上できる。

0037

ここで、「厚み方向」とは、本発明のイムノクロマトグラフィー装置において、上述した、試料滴下部材、標識物質保持部材、クロマトグラフ媒体部材、吸収部材等の各部材の厚みの方向を意味する。上記部材がシート状の部材である場合は、そのシートの厚み方向を示す。例えば、図1に示すイムノクロマトグラフィー装置においては、矢印(上下矢印)で示す方向をいう。
なお、上記「厚み方向」とは、言い換えると「部材の積層方向」、すなわち上記各部材が積層する方向を意味する。また、「厚み方向」とは、試料展開方向に対して垂直方向を意味するともいえる。

0038

また、「接触」とは、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位が、物理的に接触することを示す。
そして、「亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しない」とは、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位との、厚み方向に接触する領域の試料展開方向の長さ(以下、重なりの長さともいう)が、0.5mm以下である場合をいう。本発明において、厚み方向に接触する領域の試料展開方向の長さは、好ましくは、0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以下であり、さらに好ましくは0mmである。厚み方向に接触する領域の試料展開方向の長さが0mmとは、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に全く接触しないことを意味する。厚み方向に接触する領域の試料展開方向の長さが0.5mm以下であれば、装置保存中に有機酸等と亜硝酸化合物が装置内で拡散し、両者が接触することを防ぐことができる。

0039

以下に、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触しない構成について、具体例をあげて説明するが、本発明の実施形態は以下の例に制限されるものではない。

0040

図3(a)、(b)、(c)に示す態様は、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触していない、本発明の実施形態の構成を示す具体例である。

0041

図3(a)、(b)に示す態様は、亜硝酸化合物を含有する部位を含む「部材A」と有機酸等を含有する部位を含む「部材B」同士が、厚み方向に接触して重なっているが、亜硝酸化合物を含有する部位aと有機酸等を含有する部位b同士が、厚み方向に接触していない態様である。
図3(c)に示す態様は、亜硝酸化合物を含有する部位を含む「部材A」と有機酸等を含有する部位を含む「部材B」が、「部材C」を介して重なる態様である。これは、「部材A」と「部材B」同士が、厚み方向に接触して重なっておらず、かつ亜硝酸化合物を含有する部位aと有機酸等を含有する部位b同士が、厚み方向に接触していない態様である。なお、部材Cは試料の展開を阻むものではあってはならず、速やかに試料が移動していくような性質の多孔質シートで構成することが好ましい。

0042

一方、図3(d)に示す態様は、亜硝酸化合物を含有する部位を含む「部材A」と有機酸等を含有する部位を含む「部材B」同士が、厚み方向に接触して重なっており、かつ亜硝酸化合物を含有する部位aと有機酸等を含有する部位b同士が、厚み方向に接触している態様である。
この図3(d)の態様は、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが厚み方向に実質的に接触している態様であるため、本発明の実施形態の構成とは異なる。

0043

また、図4に示す態様も、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが、厚み方向に実質的に接触していない、本発明の実施形態の構成を示す具体例である。

0044

図4(a)、(b)に示す態様は、亜硝酸化合物を含有する部位を含む「部材A」と有機酸等を含有する部位を含む「部材B」同士が、厚み方向には重ならず、試料展開方向で「部材A」と「部材B」が接触している態様である。これらの態様は、亜硝酸化合物を含有する部位aと有機酸等を含有する部位b同士が、厚み方向に接触していない。図4(b)は、亜硝酸化合物を含有する部位aと有機酸等を含有する部位b同士が、試料展開方向で接触するが、厚み方向に接触してはいない。

0045

本発明における亜硝酸化合物とは、好ましくは、亜硝酸塩であり、酸と反応して亜硝酸を生成するものであって、検査に悪影響が及ばないものであれば無機亜硝酸塩、例えば、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム亜硝酸カルシウム、亜硝酸マグネシウム等が挙げられ、有機亜硝酸化合物、例えば、亜硝酸メチル亜硝酸エチル、亜硝酸ブチル亜硝酸アミル等であってもよく、何ら限定されるものではない。さらにはそれらを混合して使用することも可能である。好ましくは、無機亜硝酸塩であって、なかでも、亜硝酸のアルカリ金属塩が好ましく、亜硝酸ナトリウムが最も好ましい。
本発明のイムノクロマトグラフィー装置における亜硝酸化合物の含有量は、50mmol〜200mmol/装置であり、好ましくは75mmol〜175mmol/装置である。

0046

本発明の有機酸又は有機酸誘導体としては、亜硝酸化合物と反応して亜硝酸を生成するものであって、本発明の装置内に存在するタンパク質等を変性・析出させないものであれば特に制限されない。
有機酸としては、有機スルホン酸有機カルボン酸有機リン酸等を挙げることができる。具体的には、酢酸、酒石酸イタコン酸シュウ酸コハク酸クエン酸フタル酸グリコール酸クロロ酢酸フルオロ酢酸安息香酸ベンゼンスルホン酸等が挙げられる。また、固定化した酸、例えば、ポリスルホン酸ポリカルボン酸ポリスチレンポリアクリル酸等であってもよく何ら限定されるものではない。
有機酸誘導体としては、有機酸イミド有機酸アミド有機酸エステル有機酸無水物等を挙げることができる。
これらの有機酸又は有機酸誘導体は、低分子化合物のみならず、オリゴマー状あるいはポリマー状のものを使用することができ、また二種以上を含有してもよい。

0047

中でも、イムノクロマトグラフィー装置の保存安定性や後述するpHの観点から、好ましくはカルボニル基を有する含窒素複素環化合物であり、さらに好ましくは、下記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物である。

0048

0049

式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、水素原子、カルボニル基、または置換基を有していてもよいアルキル基を表し、アルキル基は互いに結合して環を形成し、脂環式炭化水素環若しくは芳香族炭化水素環を形成してもよい。
Aは単結合または二重結合を、Xは−C(=O)−、または−(CH2)n−を、Yは炭素原子または窒素原子を表し、nは1または2である。
Zは水素原子、水酸基、置換基を有していてもよいアルキル基、−C(=O)R3、または−O−C(=O)R3を表す。R3は置換基を有していてもよいアルキル基、アルコキシ基を表す。

0050

本発明の一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フタルイミド、N−アセチルフタルイミド、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−アセトキシスクシンイミド、N−カルボベンゾオキシスクシンイミド、炭酸ジ(N−スクシンイミジル)、及びヒダントイン等が挙げられる。
中でも、フタルイミド、N−アセチルフタルイミド、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−アセトキシスクシンイミド、ヒダントインが好ましく、N−アセトキシスクシンイミド、ヒダントインがより好ましく、N−アセトキシシクシンイミドが特に好ましい。
有機酸及び/又は有機酸誘導体としては、これらを混合して使用することも可能である。

0051

上記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物を使用することによって、亜硝酸の生成におけるpH範囲を広く設定できるため好ましい。すなわち、例えば有機酸としてクエン酸を使用した場合は、有機酸と亜硝酸化合物との反応時におけるpH範囲は6.8〜7.0付近に制限されるが、上記一般式(1)で表される含窒素複素環化合物を使用することにより、pH範囲を6.5〜8.0付近にまで広く設定することができる。これにより、例えば検体の成分により、展開液のpHが変化したとしても、効率よく亜硝酸を発生させることができる。

0052

本発明のイムノクロマトグラフィー装置における有機酸等の含有量は、10mmol〜40mmol/装置であり、好ましくは20mmol〜30mmol/装置である。上記範囲であることによって、効率よく亜硝酸を精製できる。

0053

クロマトグラフ媒体部材(3)は、膜担体上に検出部(4)を作成したものである。膜担体としては、毛細管現象により試料を吸収し移動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ナイロン、ポリエーテルスルホンポリビニルアルコールポリエステルガラス繊維ポリオレフィン、セルロース、これらの混合繊維からなる人工ポリマーからなる群から選択される。クロマトグラフ媒体部材(3)の形状としては、シート状のものを使用することができる。
検出部(4)には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体若しくはそのフラグメント(第二試薬)が、ニトロセルロースのシート上に担持固定されている。

0054

吸収部材(5)には、過剰の試料を迅速に吸収する能力を有する材料であるガラス繊維、セルロース繊維等からなる濾紙が汎用されているが、さらに吸収した液体が逆流しないように保持する能力を有する材料を用いればより好ましい(特開2012−189346号公報)。吸収部材(5)の形状としては、シート状のものを使用することができる。

0055

また上述したように、上記以外の他の部材を本発明の装置の任意の位置に備えていてもよい。これらの部材としては、試料が迅速に吸収されるが、保持力は弱く、速やかに検体(検体試料)が移動していくような性質の多孔質シートで構成することができる。多孔質シートとしては、例えば、セルロース濾紙、ガラスファイバー濾紙、ポリウレタン、ポリアセテート、酢酸セルロース、ナイロン、綿布等が挙げられる。これらの部材の形状としては、シート状のものを使用することができる。

0056

また、本発明のイムノクロマトグラフィー装置は、バッキングシート(6)を含有することができる。バッキングシート(6)は基材である。バッキングシート(6)の片面に粘着剤を塗布したり、粘着テープを貼り付けることにより片面が粘着性を有し、該粘着面上に、試料滴下部材(1)、標識物質保持部材(2)、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体部材(3)、及び吸収部材(5)の一部または全部が密着して設けられている。また、本発明のイムノクロマトグラフィー装置が上記部材以外を含有する場合(例えば、亜硝酸化合物含有部材や有機酸等含有部材等)も同様である。バッキングシート(6)は、粘着剤によって試料液に対して不透過性非透湿性となるようなものであれば、基材としては特に限定されない。

0057

検出部(4)に用いる試薬成分(第二試薬)及び標識試薬に用いる試薬成分(第一試薬)は、その一方又は両方がモノクローナル抗体であってもよいし、ポリクローナル抗体であってもよい。好ましくは、検出部(4)に用いる試薬成分(第二試薬)がポリクローナル抗体であり、標識試薬に用いる試薬成分(第一試薬)がモノクローナル抗体である場合である。

0058

モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体若しくはそのフラグメントは、公知であり、入手可能であり、公知の方法により調製することができる。抗体産生動物種としては、ヒト、マウスラットウサギヤギウマ等々である。免疫グロブリンとしては、IgGIgMIgAIgEIgDのいずれでもよい。なかでも、標識物質保持部材(2)に用いる試薬成分(第一試薬)及び検出部(4)に用いる試薬成分(第二試薬)の両方に、ウサギ由来の抗体を用いることが好ましい。

0059

本発明のイムノクロマトグラフィー装置は、製品化する前に、通常乾燥処理に施される。乾燥温度は例えば20℃〜50℃、乾燥時間は0.5時間〜1時間である。

0060

<イムノクロマトキット>
本発明のイムノクロマトキットは、上記のイムノクロマトグラフィー装置と、検体を希釈して展開するための検体希釈液とを含む。

0061

本発明のイムノクロマトキットにおいて検体希釈液は、展開液としても使用することができる。検体希釈液を展開液として用いる場合には、検体と検体希釈液(展開液)を予め混合した検体含有液を試料として、試料滴下部材に供給・滴下して展開させることもできるし、先に検体を試料滴下部材に供給・滴下した後、検体希釈液(展開液)を試料滴下部材に供給・滴下して展開させてもよい。

0062

通常、展開液のpH条件は酸性である方が、亜硝酸化合物と有機酸等が反応して生成される亜硝酸の生成効率が高く、抗原の抽出効率を高めることができる。一方、pH条件が酸性であると、イムノクロマトグラフィー装置や後述する検体希釈液中に存在する、例えば、カゼイン等のタンパク質、またはその塩や検体中に含まれる高粘性タンパク質などが析出してくる、または標識物質の凝集が起こり展開不良となるといった問題が生じる可能性がある。したがって、本発明における展開液のpH条件としては、亜硝酸が生成するpH条件であって、カゼイン等といったタンパク質や検体中に含まれる高粘性タンパク質などが析出してこない、かつ、標識物質の凝集が起こらないpH条件として、pHが6.5〜8.5、好ましくは6.6〜8.0、最も好ましくは6.8〜7.5である。上記pHであればタンパク質の析出や標識物質の凝集が起こりにくい。なお上述したように、上記pHの範囲で亜硝酸を効率的に生成するには、有機酸又は有機酸誘導体として上記一般式(1)で表される有機酸又は有機酸誘導体を用いることが好ましい。

0063

また、本発明のイムノクロマトキットにおいて、検体希釈液中やイムノクロマトグラフィー装置の各部位には、上述した試薬以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、各種試薬、例えば、非イオン性界面活性剤等の界面活性剤、塩、緩衝剤、その他各種添加剤等を含有させることができる。

0064

本発明のイムノクロマトキットに使用できる非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル商品名「Tween」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル(商品名「Triton」シリーズ)、ポリオキシエチレンp−t−ノニルフェニルエーテル(商品名「TritonN」シリーズ)、アルキルポリグルコシド脂肪酸ジエタノールアミドアルキルモノグリセリルエーテル等を挙げることができる。また、悪影響を及ぼさない範囲内において非イオン性界面活性剤以外のイオン性界面活性剤などを配合して使用することも可能である。

0065

本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置に使用する非イオン性界面活性剤の含有量としては、0.2質量%〜2.0質量%の範囲であり、好ましくは0.5質量%〜1.5質量%の範囲で含有させることができる。0.2質量%未満では展開が不安定となり正確な判定が行えない、または、非特異的反応を抑制できず正確な判定がやや難しくなる傾向を示す。2.0質量%以上となると、必要以上の濃度となり、非特異的反応の抑制には好ましい影響を与えることがないばかりか、技術的に無意味になり、経済的でなく無駄となる。

0066

本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置に使用される塩としては、代表的なものとしては塩化ナトリウム塩化カリウム塩化カルシウム塩化マグネシウム等が挙げられる。好ましくは塩化ナトリウムである。
本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置に使用される塩の濃度としては、1mM〜500mMの範囲であり、5mM〜200mMの範囲が好ましく、10mM〜50mMの範囲がより好ましい。濃度が1mMより低くなると、例えば0.1mMと少なくなるとタンパク質の抽出作用が不十分になる。500mM以上では、例えば、1M、2Mと多くなれば、技術的に無意味な量であり、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。
本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置に使用される塩としては、1種のみならず2種以上配合して使用することもできる。

0067

本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置に使用する緩衝剤としては、試料の添加や試料の蒸発や希釈による濃度の変化、外部からの多少の異物混入によっても致命的な影響を生じない作用(緩衝作用)を持つものであれば特に制限はない。
本発明において、緩衝剤としては、リン酸緩衝液リン酸リン酸ナトリウム)、酢酸緩衝液(酢酸+酢酸ナトリウム)、クエン酸緩衝液(クエン酸+クエン酸ナトリウム)、ホウ酸緩衝液トリス塩酸緩衝液トリス(ヒドロキシルメチルアミノメタン+塩酸)、TE緩衝液(トリス+エチレンジアミン四酢酸)、TAE緩衝液(トリス+酢酸+エチレンジアミン四酢酸)、TBE緩衝液(トリス+ホウ酸+エチレンジアミン四酢酸)又はHEPES緩衝液(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニルエタンスルフォン酸)、Bicine緩衝液(N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン緩衝剤)等が挙げられる。好ましくは、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、などであり、より好ましくは、トリス塩酸緩衝液である。本発明のイムノクロマト検出系においては、悪影響を及ぼさない範囲内であれば2種以上の緩衝剤を用いることも可能であって、何ら制限されない。

0068

本発明で使用する緩衝剤の濃度としては、10mM〜500mMの範囲が好ましく、10mM〜300mMの範囲がより好ましく、30mM〜100mMの範囲がさらに好ましい。濃度が10mMより低くなると緩衝作用が不十分になり、タンパク質成分の析出抑制や標識粒子の凝集抑制も不十分となる。500mM以上では、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。また、緩衝液として、pH範囲7.1〜9.8のものを作るのが最適である。

0069

本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置中には、生物学的親和性に基づく副反応を抑制したり、非特異的反応を抑制することが公知の添加剤、例えば、抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するためのタンパク質(例えば、牛血清アルブミンゼラチン、カゼイン等)、高分子化合物(例えば、ポリエチレングリコールメチルセルロースポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、デキストラン等)、イオン性界面活性剤又はポリアニオン(例えば、デキストラン硫酸ヘパリンポリスチレンスルホン酸コンドロイチン硫酸等)、あるいは抗菌剤等の1種もしくは2種以上を添加して使用することも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。また、これらの抗原抗体反応の促進あるいは非特異的反応を抑制するためのタンパク質、高分子化合物、イオン性界面活性剤又はポリアニオン、あるいは、抗菌剤等の1種もしくは2種以上を、固定相を構成するクロマトグラフ媒体部材上の、移動相移動経路上に保持させておくことも可能かつ有効であって、何ら妨げるものではない。

0070

本発明の検体希釈液やイムノクロマトグラフィー装置中に含有させる上記添加剤の濃度としては、0.01質量%〜20質量%の範囲が好ましく、0.1質量%〜10質量%の範囲がより好ましく、0.5質量%〜5質量%の範囲がさらに好ましい。0.01質量%未満では、非特異的反応を抑制できず正確な判定が行なえない。20質量%を越えると、必要以上の濃度となり経済的でなく無駄となる。

0071

検体希釈液は、通常、溶媒として水を用い、上記の非イオン性界面活性剤、塩、緩衝剤等他に、例えば抗原抗体反応の促進または非特異的反応を抑制するためのタンパク質、高分子化合物(PVP等)、イオン性界面活性剤もしくはポリアニオン、または、抗菌剤、キレート剤等々の1種もしくは2種以上を加えてもよい。加える順序は特に特定されず、同時に加えても差支えない。検出する検体と検体希釈液を予め混合した検体含有液を、試料滴下部材上に供給・滴下して展開させることもできるし、先に検体を試料滴下部材上に供給・滴下した後、検体希釈液を試料滴下部材上に供給・滴下して展開させてもよい。

0072

各種試薬をイムノクロマトグラフィー装置に含有させる場合、その方法としては、例えば、各種試薬を含有させる部位に塗布又は含浸させた後、乾燥させる方法により、当該部位に担持または保持させる態様とすることができる。
また、各部材の全体ではなく一部分にスポット的に各種試薬を含有させる場合は、例えば、部材をマスクした後にスプレーにより噴霧する方法などが挙げられる。

0073

本発明の典型的なキット構成における判定の原理を以下の1〜4に説明する。
1.検体を検体希釈液で希釈処理した検体含有液を試料として、イムノクロマトグラフィー装置の試料滴下部材(1)(試料滴下部位11)に、所定量(通常、0.1ml〜2ml)滴下する。検体含有液が滴下されると、検体含有液は試料滴下部材(1)に迅速に吸収され、速やかに標識物質保持部材(2)へと移動を始める。
2.標識物質含有部位21より試料展開方向の上流側のいずれかの位置に保持された亜硝酸化合物は、移動してきた検体含有液の水分に溶解し、検体と共に移動する。
3.次いで、亜硝酸化合物を溶解して含有した検体含有液は、標識物質含有部位21より試料展開方向の上流側のいずれかの位置に保持された有機酸等と接触し、亜硝酸化合物と有機酸等が反応して亜硝酸を生成する。この亜硝酸は検体中に例えば検出対象の溶連菌等が存在する場合に、該菌体表面の多糖体(被検出物質)を抽出する。
4.次いで、亜硝酸を含有する検体含有液は、標識物質含有部位21へ移動する。標識物質含有部位21を検体含有液が通過する際、標識物質含有部位21に保持されていた標識試薬(第一試薬)が検体含有液の水分に溶解し、被検出物質(例えば多糖体等)を標識化し、検体と共に移動する。

0074

5.次いで、検体含有液の水分に溶解した標識試薬は、クロマトグラフ媒体部材(3)上の検出部(4)を通過する。ここでは、検体含有液中に被検出物質(例えば、多糖体)が存在する場合、当該被検出物質は、抗原・抗体の特異的結合反応により、検出部(4)に担持固定されている抗体(第二試薬)と標識試薬(第一試薬)とによってサンドイッチ状に挟まれるように検出部に固定され、検出部(4)が着色することで、検出対象を検出できる。検体中に被検出物質(例えば、多糖体)が存在しない場合には、検体含有液の水分に溶解した標識試薬(第一試薬)は、クロマトグラフ媒体部材(3)上の検出部(4)を通過しても特異的結合反応が起こらないので、検出部(4)が着色しない。
6.最後に、検体含有液は、吸収部材(5)へと移動し吸収される。
このようにして、検体中の被検出物質(例えば、多糖体)の有無を正確に判定することができる。

0075

<イムノクロマト検出方法>
本発明のイムノクロマト検出方法は以下の工程(i)〜(v)を含み、上記のイムノクロマトキットを用いて検体中の検出対象を検出する。
(i)検体希釈液により検体を希釈した検体含有液を試料滴下部材に滴下する工程
(ii)亜硝酸化合物と、有機酸又は有機酸誘導体との反応により生成した亜硝酸により、検体中の検出対象から被検出物質を抽出する工程
(iii)標識物質保持部材において被検出物質を標識化する工程
(iv)検体含有液がクロマトグラフ媒体部材上を移動して、検出部において検出対象を検出する工程
(v)検体含有液が、吸収部材により吸収される工程
各工程についての詳細は、判定の原理で上述した内容と同様である。

0076

以下、本発明の有効性を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。

0077

(試験例1)
本試験では、本発明のイムノクロマトグラフィー装置において、亜硝酸化合物を含有する部位と有機酸等を含有する部位とが特定の位置関係を有することによって、該装置の保存安定性が向上するか否かを、加速安定性試験によって確認した。

0078

[実施例1]
<イムノクロマトキットの作製>
本実施例では、検体希釈液、及び、亜硝酸ナトリウムを含む試料滴下部材(1)と、フタルイミドを含む有機酸等含有部材(7)と、標識物質保持部材(2)と、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体部材(3)と、吸収部材(5)とからなるイムノクロマトキットを作製した。

0079

(1)クロマトグラフ媒体部材(3)上への検出部(4)の作製
メンブレンとしてニトロセルロースからなるシート(ミリポア社製、商品名:HF120、250mm×25mm)を用いた。5質量%のイソプロパノールを含む10mMのリン酸緩衝液(pH7.4)で1.0mg/mlの濃度になるようにウサギ由来抗溶連菌ポリクローナル抗体(第二試薬)(Meridian社製)を希釈し、その希釈された溶液150μLを抗体塗布機(BioDot社製)によりメンブレン上に1mmの幅で塗布し、50℃で30分間乾燥させ、室温で一晩乾燥させ、クロマトグラフ媒体部材(3)上に検出部(4)を作製した。

0080

(2)標識物質溶液の作製
金コロイド懸濁液(田中貴金属工業社製:平均粒子径40nm)0.5mLに、リン酸緩衝液(pH7.4)で0.1mg/mLの濃度になるように希釈したウサギ由来抗溶連菌モノクローナル抗体(第一試薬)抗体(Virostat社製)0.1mL加え、室温で10分間静置した。次いで、10質量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)を0.1ml加え、十分撹拌した後、8000×gで15分間遠心分離を行い、上清を除去した後、1質量%の牛血清アルブミンを含むリン酸緩衝液(pH7.4)0.1mLを加え、標識物質溶液を作製した。

0081

(3)亜硝酸ナトリウムを含む試料滴下部材(1)の作製
12×100mmのグラスファイバーコンジュゲートパッドメルク社製)に、4molの亜硝酸ナトリウムを含む水溶液0.6mLを、パッド全体に塗布し、凍結乾燥させ、試料滴下部材(1)を作製した。
(4)フタルイミドを含む有機酸等含有部材(7)の作製
12×100mmのグラスファイバーコンジュゲートパッド(メルク社製)に、1molのフタルイミドを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布し、凍結乾燥させ、フタルイミドを含む有機酸等含有部材(7)を作製した。

0082

(5)イムノクロマトグラフィー用試験片の作製
上記作製した標識物質溶液200μlに100μlの25質量%トレハロース水溶液と80μlの5質量%のカゼイン(終濃度:1質量%)を含むリン酸緩衝液(pH9.0)を加えたものを12×100mmのグラスファイバーパッド(ミリポア社製)に均一になるように添加した後、真空乾燥機にて乾燥させ、標識物質保持部材(2)を作製した。
次に、バッキングシートから成る基材に、試料滴下部材(1)、有機酸等含有部材(7)、標識物質保持部材(2)、検出部(4)を有するクロマトグラフ媒体部材(3)、吸収部材(5)を試料展開方向に沿って、この順で連結するように貼り合わせた(図2に示す順)。なお、試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)の、部材の厚み方向に接触している領域の試料展開方向の長さは、0mmとした。すなわち、試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)が試料展開方向で接触するように連結した。そして、裁断機で幅が5mmとなるように裁断し、イムノクロマトグラフィー用試験片とした。
下記表1に、試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)との、厚み方向に接触している領域の試料展開方向の長さ(重なりの長さ)を示す。

0083

(6)検体希釈液の作製
0.5質量%のTween20、0.6質量%ポリビニルピロリドン(平均分子量36万)、1質量%の牛血清アルブミンと150mM塩化ナトリウムを含む20mMのトリス緩衝溶液(pH8.0)からなる、検体を希釈しイムノクロマトグラフィー用試験片へ添加し展開するための検体希釈液とした。

0084

<測定(加速安定試験)>
上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片及び検体希釈液を用いて、以下の加速安定試験で検体中の検出対象である溶連菌の存在の有無を測定し、イムノクロマトグラフィー用試験片の保存安定性の評価を行った。
上記作製したイムノクロマトグラフィー用試験片を、50℃で0時間(インキュベートなし)または2週間インキュベートし、その後不活化したA群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)を2×106org/mLとなるように加えたものを陽性検体試料として測定を行った。
検体試料150μLをイムノクロマトグラフィー用試験片の試料滴下部材(試料滴下部位)に滴下し展開させ、15分後に目視判定をした。テストラインの赤い線を目視確認できるものを「+」、鮮明に目視確認できるものを「++」、赤い線をうっすら目視確認できるものを「±」、赤い線を目視確認できないものを「−」とした。陽性検体試料を用いたときの結果を表2に示す。
また、上記溶連菌を加えない検体希釈液を陰性検体試料として測定も行った。陰性検体試料を用いたときの結果を表3に示す。

0085

[比較例1、2]
イムノクロマトグラフィー用試験片の作製の条件(試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)との重なりの長さ)を表1に記載の条件に変更したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトキットを作製し、測定を行った。その結果を表2に示す。
なお、亜硝酸ナトリウムは試料滴下部材(1)のパッド全体に塗布されており、フタルイミドは有機酸等含有部材(7)のパッド全体に塗布されているため、試料滴下部材(1)のパッド(部材)と試料滴下部材(1)のパッド(部材)の重なりの長さが、実質的に、亜硝酸ナトリウムを含有する部位とフタルイミドを含有する部位との重なりの長さに相当する。

0086

0087

0088

0089

実施例1は、試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)とが、部材の厚み方向に実質的に接触していないため、50℃で2週間インキュベートした場合であっても、陽性検体を検出することができ、保存安定性が高いことが分かった。

0090

一方、比較例1及び2は、試料滴下部材(1)と有機酸等含有部材(7)とが部材の厚み方向に実質的に接触しているため(重なり長さが0.5mm越)、50℃で2週間インキュベートした場合、陽性検体を検出することができず、十分な保存安定性を有していないことが分かった。

0091

(試験例2)
本試験では、本発明のイムノクロマトグラフィー装置において、有機酸又は有機酸誘導体の種類を種々変更して、試験例1と同様に加速安定性試験を行った。加速安定試験は50℃で0時間(インキュベートなし)、2週間、または4週間インキュベートして行った。

0092

[実施例2]
有機酸等含有部材(7)に、フタルイミドを含む水溶液ではなく、N−アセチルフタルイミドを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトグラフィー用試験片の作製し、加速安定性試験を行った。結果を表4に示す。

0093

[実施例3]
有機酸等含有部材(7)に、フタルイミドを含む水溶液ではなく、N−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)フタルイミドを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトグラフィー用試験片の作製し、加速安定性試験を行った。結果を表4に示す。

0094

[実施例4]
有機酸等含有部材(7)に、フタルイミドを含む水溶液ではなく、N−ヒドロキシスクシンイミドを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトグラフィー用試験片の作製し、加速安定性試験を行った。結果を表4に示す。

0095

[実施例5]
有機酸等含有部材(7)に、フタルイミドを含む水溶液ではなく、N−アセトキシスクシンイミドを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトグラフィー用試験片の作製し、加速安定性試験を行った。結果を表4に示す。

0096

[実施例6]
有機酸等含有部材(7)に、フタルイミドを含む水溶液ではなく、ヒダントインを含む水溶液0.6mLをパッド全体に塗布したことを除いては、実施例1と同様にイムノクロマトグラフィー用試験片の作製し、加速安定性試験を行った。結果を表4に示す。

0097

実施例

0098

実施例2〜6における有機酸又は有機酸誘導体はいずれも、上記一般式(1)で表される化合物である。いずれの実施例も50℃で2週間インキュベートした場合であっても、陽性検体を検出することができ、保存安定性が高いことが分かった。特に、実施例5(N−アセトキシスクシンイミド)及び実施例6(ヒダントイン)では、50℃で4週間インキュベートした場合であっても、陽性検体を検出することができ、保存安定性が特に高いことが分かった。

0099

1試料滴下部材
11 試料滴下部位
2標識物質保持部材
21標識物質含有部位
3クロマトグラフ媒体部材
4 検出部
5吸収部材
6バッキングシート
7有機酸等含有部材
A,B,C 部材
a亜硝酸化合物を含有する部位
b 有機酸等を含有する部位

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