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技術 赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置

出願人 株式会社タムロン
発明者 國定照房橋本涼澁谷穣鎌田亮輔
出願日 2016年10月17日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2016-203526
公開日 2017年8月31日 (3年8ヶ月経過) 公開番号 2017-151409
状態 特許登録済
技術分野 光学要素・レンズ 光学要素の表面処理
主要キーワード 赤外線透過用 酸化ビスマス膜 赤外線用レンズ 赤外線反射防止膜 赤外線透過レンズ エッジフィルター ターゲット表 中赤外光
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年8月31日)のものです。
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図面 (3)

課題

本件発明の課題は、遠赤外線波長域で用いられる光学部品に設ける赤外線透過膜であって、成膜が容易であり、且つ、高い耐水性を有する新規な赤外線透過膜、当該赤外線透過膜を備えた光学膜反射防止膜、光学部品及び光学系を提供することにある。

解決手段

上記課題を解決するため、酸化ビスマスと、8μm以上14μm以下の波長域全域における消衰係数が0.4以下の金属酸化物とを含むことを特徴とする赤外線透過膜とする。

概要

背景

現在、監視用撮像装置車載用撮像装置、或いは熱分布解析等の種々の用途で赤外線を使用する光学系が用いられている。これらの光学系として、中赤外波長域(2.5μm〜4μm)の光線を使用する中赤外光学系と、遠赤外波長域(8μm〜14μm)の光線を使用する遠赤外線光学系とが一般に知られている。例えば、監視用撮像装置、車載用撮像装置などでは主に遠赤外線光学系が用いられている。これらの光学系を構成する赤外線透過レンズ等の光学部品は、可視光光学系を構成する光学部品と比較すると、入射光透過率が低い。そのため、光学部品の入射面に反射防止膜を設け、入射光の透過光量を増加させ、表面反射による光量不足を防止することが特に重要になる。

例えば、遠赤外線光学系に用いられる光学部品の反射防止膜として、例えば、特許文献1には、Si基板上に、基板側から順にGe膜ZnS膜、Ge膜、ZnS膜、YF3膜を積層した5層構造の反射防止膜が開示されている。また、特許文献2には、カルコゲナイドガラス基板上に、BiO2膜、YF3膜を基板側から順に積層した2層構造の反射防止膜が開示されている。これらの特許文献に開示されるように、反射防止膜を複数の赤外線透過膜を積層した多層構造とすることにより、広い波長域の光線に対して、波長域全域で低い反射率を達成することが容易になる。現在、遠赤外波長域で使用する反射防止膜の層構成材料として、特許文献1及び特許文献2に開示の材料を含む以下の材料が知られている。

高屈折率材料:Ge、Si
低屈折率材料:YF3、YbF3、NaF、NdF3、LaF3、CaF2、SrF2
中間屈折率材料:ZnS、ZnSe、PbTe、Y2O3、CeO2、HfO2

ところで、光学部品の表面に反射防止膜を設ける際には、電子線加熱や抵抗加熱により原料加熱蒸着させる真空蒸着法が一般に採用されている。しかしながら、今後の赤外線光学系需要の拡大を考慮すると、大量生産に適した生産効率のよい方法により反射防止膜を成膜することが求められる。

例えば、真空蒸着法よりも生産効率のよい成膜法としてマグネトロンスパッタリング法が挙げられる。しかしながら、上記低屈折率材料、すなわちフッ化物を原料として用いた場合、スパッタリング工程においてターゲット材料中のフッ素元素損失する。そのため、化学量論的な組成の膜を得ることが困難であり、使用波長域の光線に対して透明な赤外線透過膜を得ることができない。上記中間屈折材料であるZnS、ZnSe、PbTeについても同様であり、これらの材料を用いてマグネトロンスパッタリング法により化学量論的な組成の膜を得ることは困難である。

一方、上記高屈折率材料であるGe、Siは、マグネトロンスパッタリング法により成膜することができる。上述したように広い波長域の光線に対して波長域全域で低い反射率を達成するには、多層構造の光学膜とすることが求められる。

ここで、Ge又はSiに対して、フッ化物は屈折率が低すぎるため、Ge膜又はSi膜に対してフッ化物膜を積層しても、良好な反射防止性能を得ることはできない。また、上述したとおり、マグネトロンスパッタリング法により所望の組成のフッ化物膜を成膜することは困難である。

そこで、Ge膜又はSi膜と、中間屈折率材料からなる膜とを交互に積層させる構成とすることが考えられる。しかしながら、上述のとおり、ZnS、ZnSe、PbTeはマグネトロンスパッタリング法により成膜することは困難である。また、これらの材料は毒性を有するため、その取り扱いには注意が必要である。さらに、これらの材料の環境に対する影響も懸念されることから使用量の低減が望まれる。一方、Y2O3、CeO2、HfO2については、マグネトロンスパッタリング法により成膜することができ、且つ、毒性もない。しかしながら、他の材料と比較すると、遠赤外領域(8μm〜14μm)の光線に対する透明度が低く、遠赤外線に対して透明な膜を得ることができない。

さらに、監視用撮像装置、或いは車載用撮像装置等は屋外に設置されて使用されることが多い。光学膜はこれらの光学部品の表面に設けられるため、成膜面に対する密着性と共に、高い耐水性を有する必要がある。

概要

本件発明の課題は、遠赤外線波長域で用いられる光学部品に設ける赤外線透過膜であって、成膜が容易であり、且つ、高い耐水性を有する新規な赤外線透過膜、当該赤外線透過膜を備えた光学膜、反射防止膜、光学部品及び光学系を提供することにある。上記課題を解決するため、酸化ビスマスと、8μm以上14μm以下の波長域全域における消衰係数が0.4以下の金属酸化物とを含むことを特徴とする赤外線透過膜とする。

目的

特開2007−298661号公報
特開2011−221048号公報






以上のことから、本件発明の課題は、成膜が容易であり、且つ、高い耐水性を有する新規な赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置を提供する

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

酸化ビスマスと、8μm以上14μm以下の波長域全域における消衰係数が0.4以下の金属酸化物とを含むことを特徴とする赤外線透過膜

請求項2

当該赤外線透過膜における前記酸化ビスマスの含有量が10質量%以上90質量%以下である請求項1に記載の赤外線透過膜。

請求項3

前記金属酸化物の8μm以上14μm以下の波長域内光線に対する屈折率が0.8以上2.5以下である請求項1に記載の赤外線透過膜。

請求項4

前記金属酸化物は酸化亜鉛である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の赤外線透過膜。

請求項5

当該赤外線反射防止膜膜密度を測定したときの実測値を、当該赤外線反射防止膜の理論膜密度で除した値の百分率相対膜密度としたとき、当該相対膜密度が80%以上である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の赤外線透過膜。

請求項6

前記赤外線透過膜は、赤外線透過用基材上に設けられる請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の赤外線透過膜。

請求項7

請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の赤外線透過膜を備えることを特徴とする光学膜

請求項8

請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の赤外線透過膜を備えることを特徴とする反射防止膜

請求項9

請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の赤外線透過膜を光学面に備えたことを特徴とする光学部品

請求項10

請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の赤外線透過膜を光学面に備えたことを特徴とする光学系。

請求項11

請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の赤外線透過膜が設けられた光学面を含む光学系を備えることを特徴とする撮像装置

技術分野

0001

本件発明は、赤外線透過膜光学膜反射防止膜光学部品光学系及び撮像装置に関し、特に遠赤外線を利用する光学系に好適な赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置に関する。

背景技術

0002

現在、監視用撮像装置車載用撮像装置、或いは熱分布解析等の種々の用途で赤外線を使用する光学系が用いられている。これらの光学系として、中赤外波長域(2.5μm〜4μm)の光線を使用する中赤外光学系と、遠赤外波長域(8μm〜14μm)の光線を使用する遠赤外線光学系とが一般に知られている。例えば、監視用撮像装置、車載用撮像装置などでは主に遠赤外線光学系が用いられている。これらの光学系を構成する赤外線透過レンズ等の光学部品は、可視光光学系を構成する光学部品と比較すると、入射光透過率が低い。そのため、光学部品の入射面に反射防止膜を設け、入射光の透過光量を増加させ、表面反射による光量不足を防止することが特に重要になる。

0003

例えば、遠赤外線光学系に用いられる光学部品の反射防止膜として、例えば、特許文献1には、Si基板上に、基板側から順にGe膜ZnS膜、Ge膜、ZnS膜、YF3膜を積層した5層構造の反射防止膜が開示されている。また、特許文献2には、カルコゲナイドガラス基板上に、BiO2膜、YF3膜を基板側から順に積層した2層構造の反射防止膜が開示されている。これらの特許文献に開示されるように、反射防止膜を複数の赤外線透過膜を積層した多層構造とすることにより、広い波長域の光線に対して、波長域全域で低い反射率を達成することが容易になる。現在、遠赤外波長域で使用する反射防止膜の層構成材料として、特許文献1及び特許文献2に開示の材料を含む以下の材料が知られている。

0004

高屈折率材料:Ge、Si
低屈折率材料:YF3、YbF3、NaF、NdF3、LaF3、CaF2、SrF2
中間屈折率材料:ZnS、ZnSe、PbTe、Y2O3、CeO2、HfO2

0005

ところで、光学部品の表面に反射防止膜を設ける際には、電子線加熱や抵抗加熱により原料加熱蒸着させる真空蒸着法が一般に採用されている。しかしながら、今後の赤外線光学系需要の拡大を考慮すると、大量生産に適した生産効率のよい方法により反射防止膜を成膜することが求められる。

0006

例えば、真空蒸着法よりも生産効率のよい成膜法としてマグネトロンスパッタリング法が挙げられる。しかしながら、上記低屈折率材料、すなわちフッ化物を原料として用いた場合、スパッタリング工程においてターゲット材料中のフッ素元素損失する。そのため、化学量論的な組成の膜を得ることが困難であり、使用波長域の光線に対して透明な赤外線透過膜を得ることができない。上記中間屈折材料であるZnS、ZnSe、PbTeについても同様であり、これらの材料を用いてマグネトロンスパッタリング法により化学量論的な組成の膜を得ることは困難である。

0007

一方、上記高屈折率材料であるGe、Siは、マグネトロンスパッタリング法により成膜することができる。上述したように広い波長域の光線に対して波長域全域で低い反射率を達成するには、多層構造の光学膜とすることが求められる。

0008

ここで、Ge又はSiに対して、フッ化物は屈折率が低すぎるため、Ge膜又はSi膜に対してフッ化物膜を積層しても、良好な反射防止性能を得ることはできない。また、上述したとおり、マグネトロンスパッタリング法により所望の組成のフッ化物膜を成膜することは困難である。

0009

そこで、Ge膜又はSi膜と、中間屈折率材料からなる膜とを交互に積層させる構成とすることが考えられる。しかしながら、上述のとおり、ZnS、ZnSe、PbTeはマグネトロンスパッタリング法により成膜することは困難である。また、これらの材料は毒性を有するため、その取り扱いには注意が必要である。さらに、これらの材料の環境に対する影響も懸念されることから使用量の低減が望まれる。一方、Y2O3、CeO2、HfO2については、マグネトロンスパッタリング法により成膜することができ、且つ、毒性もない。しかしながら、他の材料と比較すると、遠赤外領域(8μm〜14μm)の光線に対する透明度が低く、遠赤外線に対して透明な膜を得ることができない。

0010

さらに、監視用撮像装置、或いは車載用撮像装置等は屋外に設置されて使用されることが多い。光学膜はこれらの光学部品の表面に設けられるため、成膜面に対する密着性と共に、高い耐水性を有する必要がある。

先行技術

0011

特開2007−298661号公報
特開2011−221048号公報

発明が解決しようとする課題

0012

以上のことから、本件発明の課題は、成膜が容易であり、且つ、高い耐水性を有する新規な赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置を提供することにある。

課題を解決するための手段

0013

本件発明の課題を解決するために、本件発明に係る赤外線透過膜は、酸化ビスマスと、8μm以上14μm以下の波長域全域において消衰係数が0.4以下の金属酸化物とを含むことを特徴とする。

0014

また、本件発明に係る光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系はそれぞれ上記本件発明に係る赤外線透過膜を備えたことを特徴とする。

0015

さらに、本件発明に係る撮像装置は、上記本件発明に係る赤外線透過膜が設けられた光学面を含む光学系を備えたことを特徴とする。

発明の効果

0016

本件発明によれば、遠赤外線波長域で用いられる光学部品に設ける赤外線透過膜であって、成膜が容易であり、且つ、高い耐水性を有する新規な赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置を提供することができる。

図面の簡単な説明

0017

本件発明に係る実施例9の試料の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
本件発明に係る実施例13の試料の表面の走査型電子顕微鏡写真である。

0018

以下、本件発明に係る赤外線透過膜、光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置の実施の形態について説明する。

0019

1.赤外線透過膜
まず、本件発明に係る赤外線透過膜の実施の形態を説明する。本件発明に係る赤外線透過膜は、酸化ビスマスと、8μm以上14μm以下の波長域全域において消衰係数が0.4以下の金属酸化物とを含むことを特徴とする。

0020

1−1.酸化ビスマス
酸化ビスマスは、8μm以上14μm以下の波長域全域、すなわち遠赤外波長域全域における消衰係数が0.05未満であり、遠赤外線(8μm以上14μm以下の波長の光線)に対する透明度が高い材料である。

0021

また、酸化ビスマスの遠赤外線に対する屈折率は、1.5以上2.8以下の範囲にあり、酸化ビスマスは遠赤外波長域における中屈折率材料である。従って、当該赤外透過膜は、反射防止膜の構成材料としても好適である。例えば、当該赤外透過膜と、遠赤外波長域において高い屈折率を有するGe膜又はSi膜等を交互に積層すること等により、遠赤外波長域全域において良好な反射防止性能を有する反射防止膜を得ることができる。

0022

ところで、酸化ビスマスは結晶化しやすい材料である。真空蒸着法、スパッタリング法等の物理蒸着法により成膜した酸化ビスマスは多結晶構造を有する。そのため、結晶粒界には水等が含浸しやすく、酸化ビスマス膜は耐水性が低く、実用上必要な耐久性満足することが困難である。そこで、本件発明者らは、酸化ビスマスと、所定の金属酸化物を添加物として含む膜とすることにより、耐水性を改善することができることを見出した。本件発明によれば、高い耐水性を実現することができる。以下、本件発明において酸化ビスマスと共に用いられる所定の金属酸化物について説明する。

0023

1−2.金属酸化物
(1)消衰係数
当該金属酸化物は、遠赤外波長域全域における消衰係数が0.4以下であることが求められる。遠赤外波長域における消衰係数が0.4を超えると、遠赤外線に対する透明度が低下する。すなわち、当該赤外線透過膜における遠赤外線の透過率が低下するため、当該赤外線透過膜を光学膜として用いることが困難になる。

0024

遠赤外波長域全域における消衰係数が0.4以下の金属酸化物として、例えば、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、酸化銅(CuO)、酸化マグネシウム(MgO)等を挙げることができる。酸化ビスマスと、これらの金属酸化物とを含む膜とすることにより、酸化ビスマス膜の遠赤外線に対する透過率を維持しつつ、酸化ビスマス膜の耐水性を改善することができる。

0025

ここで、使用波長域における当該赤外線透過膜の透明度をより高くするという観点から、添加物として用いる金属酸化物の消衰係数は、使用波長域全域において0.4未満であることが好ましく、0.2未満であることがより好ましく、0.1未満であることがさらに好ましい。当該赤外線透過膜の使用波長域に応じて、上記列挙した金属酸化物等の中から、適宜、適切な金属酸化物を選択することができる。なお、上記列挙した各金属酸化物の消衰係数を以下に示す。以下において、k(8μm)は、波長が8μmのときの消衰係数(k)を表し、k(14μm)は、波長が14μmのときの消衰係数を表す。また、以下には酸化ビスマスの消衰係数も示す。

0026

酸化亜鉛: k(8μm)=0.004 k(14μm)=0.03
酸化ジルコニウム:k(8μm)=0.06 k(14μm)=0.35
酸化クロム: k(8μm)=0.007 k(14μm)=0.37
酸化ハフニウム: k(8μm)=0.006 k(14μm)=0.4
酸化ビスマス: k(8μm)=0.002 k(14μm)=0.025
酸化イットリウム:k(8μm)=0.00027 k(14μm)=0.078
酸化銅: k(8μm)=0.0001 k(14μm)=0.04
酸化マグネシウム:k(8μm)=0.00025 k(14μm)=0.014

0027

上記に示すように、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化銅及び酸化マグネシウムの消衰係数は、酸化ジルコニウム、酸化クロム及び酸化ハフニウムと比較すると小さく、遠赤外波長域全域において0.1未満である。従って、遠赤外波長域全域において高い透明度を維持することができるという観点から、酸化ビスマスと共に、酸化亜鉛、酸化イットリウム、酸化銅及び酸化マグネシウムから成る群から選択される一種以上を用いることがより好ましい。このとき、これらの金属酸化物一種を用いてもよいし、一種以上を混合して用いてもよいのは勿論である。

0028

なお、酸化ビスマス膜の耐水性を改善するという観点のみからみれば、酸化タンタル(Ta2O5)等の消衰係数が上記範囲外の金属酸化物を添加物として用いることもできる。酸化タンタルの消衰係数を以下に示す。しかしながら、酸化タンタルの消衰係数は下記のとおり大きく、当該酸化タンタルを酸化ビスマス膜に添加物として含有させると、遠赤外線に対する酸化ビスマス膜の透過率が低下し、光学膜として用いることが困難になる。
酸化タンタル: k(8μm)=0.028 k(14μm)=0.75

0029

(2)屈折率
また、当該金属酸化物の遠赤外線波長域内の光線に対する屈折率は0.8以上2.5以下であることが好ましい。酸化ビスマスの屈折率と同等の屈折率を有する金属酸化物を用いることにより、得られた赤外線透過膜の屈折率を酸化ビスマスと同様の屈折率とすることができる。なお、上記列挙した各金属酸化物の遠赤外線波長域における屈折率はいずれも0.8以上2.8以下の範囲内である。ここで、酸化ビスマスの屈折率を大きく変化させないという観点から、酸化ビスマスの屈折率とより同等屈折率の金属酸化物を用いることが好ましい。当該観点から、酸化ビスマスと、屈折率が1.0以上2.8以下の金属酸化物とを含む膜とすることがより好ましく、酸化ビスマスと、屈折率が1.5以上2.8以下の金属酸化物とを含む膜とすることがさらに好ましい。

0030

1−3.酸化亜鉛
ここで、上記列挙した各金属酸化物の中で、特に酸化亜鉛を用いることが好ましい。酸化亜鉛は、8μm以上14μm以下の波長域全域、すなわち遠赤外波長域全域における消衰係数が0.004と小さく、酸化イットリウム、酸化銅と比較すると、遠赤外線(8μm以上14μm以下の波長の光線)に対する透明度がより高い。

0031

また、酸化亜鉛の遠赤外線に対する屈折率は、1.5以上2.5以下の範囲にあり、酸化亜鉛は遠赤外波長域における中屈折率材料である。従って、酸化亜鉛膜は、それ自体、酸化ビスマス膜と同様に、反射防止膜の構成材料としても好適である。例えば、当該赤外透過膜と、遠赤外波長域において高い屈折率を有するGe膜又はSi膜等を交互に積層すること等により、遠赤外波長域全域において良好な反射防止性能を有する反射防止膜を得ることができる。

0032

ところで、酸化亜鉛も酸化ビスマスと同様に結晶化しやすい材料である。真空蒸着法、スパッタリング法等の物理蒸着法により成膜した酸化亜鉛膜は多結晶構造を有する。そのため、結晶粒界には水等が含浸しやすく、酸化亜鉛膜は耐水性が低く、実用上必要な耐久性を満足することが困難である。しかしながら、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む膜、若しくは、酸化ビスマスと酸化亜鉛とからなる膜とすることにより、遠赤外波長全域において透明度が高く、且つ、高い耐水性を有する赤外線透過膜を実現することができる。

0033

(3)含有量
次に、当該赤外線透過膜における酸化ビスマスの含有量と金属酸化物の含有量について説明する。当該赤外線透過膜は酸化ビスマスと上記金属酸化物とから構成されることが好ましく、不可避不純物を除いて、当該赤外線透過膜は酸化ビスマスと上記金属酸化物から実質なることが好ましい。このとき、酸化ビスマスは10質量%以上90質量%以下であることが好ましく、他の金属酸化物の含有量は90質量%以下10質量%以上であることが好ましい。但し、ここでいう他の金属酸化物の含有量とは、当該赤外線透過膜に含まれる酸化ビスマス以外の金属酸化物の総量をいう。すなわち、酸化ビスマス以外に複数の金属酸化物を用いる場合、その合計量をいうものとする。また、当該赤外線透過膜では、主成分を酸化ビスマス及び/又は酸化亜鉛とすることが好ましく、酸化ビスマス及び酸化亜鉛からなる遠赤外線透過膜とすることがより好ましい。酸化ビスマス及び酸化亜鉛は遠赤外波長域の光線に対して透明度の高い酸化ビスマス及び/又は酸化亜鉛を当該赤外線透過膜の主成分とすることにより、当該赤外線透過膜の遠赤外線に対する透明度を高く維持したまま、耐水性を改善することができる。上述したとおり、酸化ビスマス膜及び酸化亜鉛膜それ自体は耐水性が低いが、酸化ビスマスと酸化亜鉛の混合膜とすることにより、耐水性の高い遠赤外線透過膜を得ることができる。

0034

(4)結晶構造
本件発明に係る赤外線透過膜は、酸化ビスマスの結晶粒界に上記金属酸化物が偏析したもの、又は、酸化ビスマス以外の他の金属酸化物の結晶粒界に酸化ビスマスが偏析したものであることが好ましい。特に、酸化ビスマスの結晶粒界に酸化亜鉛が偏析したもの、又は、酸化亜鉛の結晶粒界に酸化ビスマスが偏析したものであることが好ましい。酸化ビスマス(又は、酸化ビスマス以外の金属酸化物)の結晶粒界に偏析した他の金属酸化物(又は酸化ビスマス)によって、結晶粒界に水が含水されにくくなるため、当該赤外線透過膜の耐水性が良好になる。また、酸化ビスマス(又は他の金属酸化物)の結晶粒界に酸化ビスマス以外の金属酸化物(又は酸化ビスマス)が偏析していると、結晶成長が抑制され、結晶粒肥大化が阻止され、その結果、結晶粒が微細になる。そのため、膜内残留応力が小さくなる。このことも耐水性を高める要因の一つであると考えられる。また、微細な結晶構造を有するため、当該膜の機械的強度も高くなる。さらに、耐水性等も向上する。

0035

すなわち、酸化ビスマス膜の耐水性を改善する上で、酸化ビスマス及び酸化亜鉛以外の金属酸化物は、酸化ビスマス(及び酸化亜鉛)の結晶粒の肥大化を阻止できる程度の量であることが好ましい。一方、酸化ビスマス以外の金属酸化物として酸化亜鉛を用いる場合、酸化ビスマスの含有量と酸化亜鉛の含有量は同量(50質量%ずつ)であってもよい。

0036

(5)膜密度
ここで、上述したとおり酸化ビスマスは他の金属酸化物と比較すると結晶化しやすい材料であるため、膜密度が低くなるという問題がある。一方、酸化ビスマス及び酸化ビスマス以外の上記金属酸化物を含む赤外線透過膜、特に、酸化ビスマスを10質量%以上90質量%以下含む赤外線透過膜は酸化ビスマス膜と比較すると膜密度を高くすることができ、基材と赤外線透過膜との密着性の向上することができ、且つ、高い耐久性を実現することができる。

0037

ここで、下記式、すなわち、当該赤外線反射防止膜の膜密度を測定したときの実測値を、当該赤外線反射防止膜の理論膜密度で除することによって求めた値の百分率相対膜密度と称する。

0038

相対膜密度(%)=(膜密度の実測値/ 理論膜密度 )×100

0039

本件発明に係る赤外線透過膜の相対膜密度は、80%以上であることが好ましい。上記計算式に従って求めた相対膜密度が80%であると、基板と当該赤外線透過膜との密着性がよく、耐久性に優れた膜とすることができる。酸化ビスマスを10質量%以上90質量%以下含む赤外線透過膜であれば、相対膜密度80%以上とすることができる。

0040

(6)成膜方法
本件発明に係る赤外線透過膜を成膜するには、例えば、酸化ビスマスと酸化ビスマス以外の上記金属酸化物とを所定の含有比で含む焼結セラミックス等を出発原料として、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種乾式成膜法により成膜することができる。いずれの方法でも、混合酸化物焼結体を出発原料として用いることができる。

0041

各種乾式成膜法の中でも特に、マグネトロンスパッタリング法は簡便であり、真空蒸着法と比較したときの生産効率がよい。そのため、大量生産される光学部品に対して当該赤外線透過膜を成膜する際には、マグネトロンスパッタリング法を用いることが好ましい。この際、放電様式としては、直流電流、或いは高周波放電、或いは交流放電を採用することができる。

0042

赤外線透過膜をマグネトロンスパッタリング法により成膜する際には、金属ビスマスと、酸化ビスマス以外の金属酸化物を構成する金属とを所定の含有比で含む金属合金ターゲットを出発原料として用いることもできる。この金属合金ターゲットを用いて、酸素ガス雰囲気下で成膜することにより、酸化ビスマスと酸化ビスマス以外の他の金属酸化物とを所定の含有比で含む本件発明に係る赤外線透過膜を得ることができる。

0043

これらの物理蒸着法により、上記金属酸化物を含む酸化ビスマス膜を成膜すれば、上記金属酸化物は、酸化ビスマスと複合酸化物を形成することなく、酸化ビスマスの結晶粒界に偏析する。すなわち、結晶粒界に上記金属酸化物が偏析した酸化ビスマスの多結晶構造を有する赤外線透過膜が得られる。

0044

なお、本件発明に係る赤外線透過膜は、乾式成膜法に限らず、化学的気相成長法ゾルゲル法等の各種湿式成膜法により成膜することもできる。各成膜方法の中から、当該赤外線透過膜の用途や基材の材質等に応じて適宜、適切な成膜法を選択することができる。

0045

1−3.基材
本件発明に係る赤外線透過膜は、例えば、光学部品等の表面に設けられる。このとき、光学部品等の基材の材質は特に限定されるものではない。

0046

本件発明に係る赤外線透過膜は、遠赤外波長域の光線に対して透明なゲルマニウム(Ge)、シリコン(Si)、セレン化亜鉛(ZnSe)、硫化亜鉛(ZnS)と良好な密着性を有する。また、本件発明に係る赤外線透過膜は、ゲルマニウム、砒素(As)、セレン(Se)、硫黄(S)、アンチモン(Sb)、Ga(ガリウム)等を成分とする各種のカルコゲナイドガラスと良好な密着性を有する。カルコゲナイドガラスの具体的な組成として、例えば、As2Se3、CdTe、PbTe、SiSe2、Ga2S3、GeSe2、GeS2、GeAs、CdSe、Ge−As−Se、Ge−Sb−S、Ge−Se−Te、Ge−Se−Sb、Ge−Ga−S、Ga−La−S、As−S−Se、As−S−Te、As−Se−Cu、Ge−Sb−Te、Ga−Ge−As−S、Ge−As−Ga−Sb、As−Se−Sb−Sn、Ga−La−S−Ce、Ge−As−Ga−Se、Ge−As−Ga−Sb−Sを挙げることができる。これらの材料からなる赤外線用光学レンズ等の各種赤外線光学部品を基材としたとき、本件発明に係る赤外線透過膜を赤外線光学部品の表面に直接設けることができ、良好な密着性を得ることができる。

0047

2.光学膜
次に、本件発明に係る光学膜について説明する。本件発明において、光学膜とは反射防止膜や、エッジフィルターバンドパスフィルターなどの光学フィルター等を意味する。本件発明に係る光学膜は一層の光学薄膜からなる単層膜であってもよいし、二層以上の光学薄膜が積層された多層膜であってもよい。いずれの場合であっても、本件発明に係る光学膜は、上述した本件発明に係る赤外線透過膜を備えるものとする。すなわち、当該光学膜は本件発明に係る赤外線透過膜からなる単層膜であってもよいし、少なくとも一層の赤外線透過膜を備える多層膜であってもよい。

0048

本件発明に係る赤外線透過膜は、中間屈折率材料である酸化ビスマスと、酸化ビスマスと同等の屈折率を有する酸化亜鉛等の他の金属酸化物とを含む。また、当該赤外線透過膜は下記の高屈折率材料、或いは低屈折率材料との密着性も良好である。

0049

高屈折率材料:Ge、Si
低屈折率材料:YF3、YbF3、NaF、NdF3、LaF3、CaF2、SrF2

0050

従って、当該赤外線透過膜を中間屈折率層として用い、適宜、上記材料からなる高屈折率層及び/又は低屈折率層と積層した任意の層構成の光学膜を得ることができる。

0051

3.反射防止膜
次に、本件発明に係る反射防止膜の実施の形態を説明する。本件発明に係る反射防止膜は、上記光学膜の一種であり、本件発明に係る赤外線透過膜を備えることを特徴とする。本件発明に係る反射防止膜は、上記赤外線透過膜一層からなる単層膜であってもよいが、上記高屈折率層及び/又は低屈折率層と積層した多層膜とすることがより好ましい。多層構造の反射防止膜とすることにより、各界面で生じる界面反射光により、光の干渉作用を利用して広い波長域において低い反射率を実現することが容易になる。

0052

4.光学部品
本件発明に係る光学部品は、本件発明に係る赤外線透過膜を備えることを特徴とする。光学部品としては、撮像装置又は投影装置撮像光学系又は投影光学系などを構成する各種光学部品を挙げることができる。より具体的には、レンズプリズム色分解プリズム色合成プリズム等)、偏光ビームスプリッタPBS)、カットフィルタ長波長用短波長用等)などを挙げることができる。特に、遠赤外波長域の光線を使用する遠赤外撮像光学系を構成する赤外線用レンズであることが好ましい。

0053

5.光学系/撮像装置
本件発明に係る光学系は、本件発明に係る赤外線透過膜を備えることを特徴とする。当該光学系として、撮像光学系であることが好ましく、特に、遠赤外波長域の光線を使用する遠赤外撮像光学系であることが好ましい。例えば、監視用撮像装置、車載用撮像装置の光学系であることが好ましい。また、本件発明に係る撮像装置は、当該赤外線透過膜が設けられた光学面を含む光学系を備えることを特徴とし、これらの遠赤外線撮像光学系を備えた監視用撮像雄値、車載用撮像装置等であることが好ましい。

0054

次に、実施例および比較例を示して本件発明を具体的に説明する。但し、本件発明は以下の実施例に限定されるものではない。

0055

実施例1では、マグネトロンスパッタリング法により基材の両面にそれぞれ酸化ビスマスと酸化亜鉛の混合膜を成膜した。以下、成膜の手順について具体的に説明する。

0056

まず、マグネトロンスパッタリング装置に、成膜原料であるターゲットと、基材とを対向配置した。成膜原料としては、酸化亜鉛の焼結体ターゲットを用いた。このとき、当該ターゲット上に酸化ビスマスのタブレット小片を均等に並べ、赤外線透過膜中の酸化ビスマスの含有量が4.0質量%になるようにした。基材として、カルコゲナイドガラス(新華光信息材料有限公司製 IRG206)を用いた。

0057

次に、装置内全体を真空排気した。そして、装置内の圧力が3×10−4Paに到達した時点で、Arガスを20SCCM(standard cc/min、1atm(25℃))流し、酸素ガスを5SCCM流した。この時の装置内の圧力が、0.3Paになるように排気速度を調整した。

0058

その後、ターゲット表面に13.56MHzの高周波(約500W)を印加し、ターゲットの前方で基材を回転させながら、基材の表面に酸化ビスマスを4質量%と酸化亜鉛96質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0059

実施例2では、赤外線透過膜中の酸化ビスマスの含有量が0.7質量%になるように酸化亜鉛焼結ターゲット上の酸化ビスマスの小片量を調整したことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを0.7質量%と酸化亜鉛99.3質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0060

実施例3では、酸化ビスマスの含有量が14.7質量%の酸化亜鉛焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを14.7質量%と酸化亜鉛85.3質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0061

実施例4では、酸化ビスマスの含有量が44.7質量%の酸化亜鉛焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを44.7質量%と酸化亜鉛55.3質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0062

実施例5では、酸化亜鉛の含有量が30.0質量%の酸化ビスマス焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを70.0質量%と酸化亜鉛30.0質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0063

実施例6では、基板側から順にGe膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛膜とを含む赤外線透過膜を積層した反射防止膜を成膜した。Ge膜を成膜する際には、ゲルマニウムをターゲットとして用い、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を成膜する際には、酸化ビスマスの含有量が2質量%である酸化亜鉛の焼結体ターゲットを用いて、実施例1と同様にして各膜を成膜した。

0064

実施例7では、基板側から順にGe膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、Ge膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を積層した。この際、赤外線透過膜を成膜する際に、酸化ビスマスの含有量が5質量%の酸化亜鉛焼結ターゲットを用い、酸化ビスマスの含有量が5質量%、酸化亜鉛の含有量が95質量%になるようにしたことを除いて、実施例6と同様にして各膜を成膜した。

0065

実施例8では、実施例5と同様の方法で成膜した酸化ビスマスを30質量%と酸化亜鉛70質量%とを含む赤外線透過膜を用いた以外は、実施例6と同様にして、基板側から順にGe膜、当該赤外線透過膜とが積層された反射防止膜を得た。

0066

実施例9では、成膜原料として、酸化ビスマスと酸化亜鉛とをそれぞれ50質量%ずつ含む焼結体ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを50.0質量%と酸化亜鉛50.0質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0067

実施例10では、酸化ビスマスの含有量が38.0質量%である酸化亜鉛の焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを38.0質量%と酸化亜鉛62.0質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0068

実施例11では、酸化亜鉛の含有量が30.0質量%である酸化ビスマスの焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを70.0質量%と酸化亜鉛30.0質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0069

実施例12では、酸化亜鉛の含有量が10質量%である酸化ビスマスの焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを90質量%と酸化亜鉛10質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0070

実施例13では、酸化ビスマスの含有量が8質量%である酸化亜鉛の焼結ターゲットを用いたことを除いては、実施例1と同様にして、酸化ビスマスを8質量%と酸化亜鉛を92質量%とを含む赤外線透過膜を成膜した。

0071

実施例14では、実施例6と同様に、基板側から順にGe膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を積層した反射防止膜を成膜した。Ge膜を成膜する際には、ゲルマニウムをターゲットとして用い、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を成膜する際には、酸化ビスマスの含有量が38質量%である酸化亜鉛の焼結体ターゲットを用いた以外は実施例1と同様にして、酸化ビスマスを38質量%、酸化亜鉛を62質量%含む赤外線透過膜を成膜した。

0072

実施例15では、基板側から順にSi膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を積層した反射防止膜を成膜した。Si膜を成膜する際には、シリコンをターゲットとして用い、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜を成膜する際には、酸化ビスマスの含有量が38質量%である酸化亜鉛の焼結体ターゲットを用いた以外は実施例1と同様にして、酸化ビスマスを38質量%、酸化亜鉛を62質量%含む赤外線透過膜を成膜した。

0073

実施例16では、真空蒸着法により基材の両面にそれぞれ成膜原料である酸化ビスマスと酸化亜鉛を混合した真空蒸着材料を用いて、基材側から順に酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、フッ化イッテルビウム膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜との3層構造の積層膜を成膜した。以下、成膜の手順について具体的に説明する。

0074

まず、真空蒸着装置に、成膜原料である蒸着材料と、基材とを対向配置した。成膜原料としては、酸化ビスマスと酸化亜鉛を混合したタブレットとフッ化イッテルビウム顆粒を用いた。基材として、カルコゲナイドガラス(湖北新華光信息材料有限公司製 IRG206)を用いた。

0075

次に、装置内全体を真空に排気した。蒸着装置内で蒸着材料を加熱し、蒸発させて蒸着させた。蒸着材料を加熱蒸着する際、酸化ビスマスと酸化亜鉛を混合したタブレットについては、電子ビーム加熱により蒸着し、フッ化イッテルビウムの顆粒については抵抗加熱により蒸着した。

0076

酸化ビスマスと酸化亜鉛を混合したタブレットは、酸化ビスマスの含有量が90質量%、酸化亜鉛の含有量が10質量%になるようにした。

0077

実施例17では、実施例16と同様の方法で、基材側から順に酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、フッ化イッテルビウム膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、フッ化イッテルビウム膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜との5層構造の積層膜を成膜した。酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜は、実施例11と同様にして、酸化ビスマスを90質量%と酸化亜鉛10質量%とを含む赤外線透過膜の各層を成膜した。

実施例

0078

実施例18では、実施例16と同様の方法で、基材側から順にGe膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、Ge膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜、フッ化イッテルビウム膜、酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜との6層構造の積層膜を成膜した。ゲルマニウムは、ゲルマニウムの顆粒を用いて、電子ビーム加熱により蒸着した。酸化ビスマスと酸化亜鉛とを含む赤外線透過膜は、実施例11と同様にして、酸化ビスマスを90質量%と酸化亜鉛10質量%とを含む赤外線透過膜の各層を成膜した。

0079

[比較例1]
比較例1では、出発原料として酸化亜鉛の焼結体ターゲットのみを用いた以外は、実施例1と同様にして酸化亜鉛膜を成膜した。すなわち、比較例1では酸化ビスマスを含まない酸化亜鉛膜を成膜した。

0080

[比較例2]
比較例2では、出発原料として酸化ビスマスの焼結ターゲットを用いた以外は、実施例1と同様にして成膜し、酸化ビスマス膜を得た。すなわち、比較例2では他の金属酸化物を含まない酸化亜鉛膜を成膜した。

0081

[評価]
実施例1〜実施例18、比較例1及び比較例2で成膜した各膜の膜厚、組成、遠赤外線に対する平均透過率をそれぞれ測定すると共に、耐水試験を行った。また、一部の試料についてテープ試験を行うと共に、相対膜密度を求めた。

0082

(膜厚)
各膜の膜厚を触針段差計で測定した。結果を表1〜表3に示す。なお、表1〜表3に示す膜厚は、各膜の実際の膜厚であって、いわゆる光学膜厚ではない。

0083

(組成)
各膜の組成をICP(誘導結合プラズマ発光分光分析法)で分析した。結果を表1〜表3に示す。

0084

(平均透過率)
各実施例及び比較例で得た試料の波長範囲8μm〜12μm及び波長範囲8μm〜14μmにおける平均透過率をパーキンエルマー社製のFT−IR Spectrum 100 Opticaを用いて測定した。なお、各試料とは、基板の両面にそれぞれの膜を備えたものをいう(以下、同じ)。結果を表1〜表3に示す。

0085

(耐水試験)
各実施例及び比較例で得た試料を純水に浸漬した。そして、試料を純水に浸漬してから24時間が経過した時点で観察を終了した。結果を表1〜表3に示す。但し、表1〜表3には、耐水試験の結果を「○」、「×」で示している。ここで、「○」は、試料を純水に浸漬してから24時間が経過しても基材と膜との密着が良好であり、膜剥がれ等が一切生じなかったことを意味する。また、「×」は試料を純水に浸漬してから24時間が経過するまでの間に、基材から膜が浮いたり、膜が剥がれたりなど、基材と膜との密着性低下が観察されたことを意味する。

0086

(テープ試験)MIL−C−48497A para4.5.3.1
実施例9〜実施例18と、比較例1及び比較例2で得た試料について、耐水試験後にテープ試験を行い、基材と被膜の密着性を評価した。結果を表1〜表3に示す。但し、表1〜表3には、テープ試験の結果を「○」、「×」で示している。ここで、「○」は、試料にテープを貼り付けて引き剥がしても基材と被膜との密着が良好であり、膜剥がれ等が一切生じなかったことを意味する。また、「×」は試料にテープを貼り付けて引き剥がした時に、基材から膜が浮いたり、膜が剥がれたりなど、基材と被膜との密着性低下が観察されたことを意味する。

0087

(膜密度)
実施例9〜実施例18と、比較例1及び比較例2で得た試料について、当該赤外線反射防止膜の膜密度をX線反射率法(XRR)により測定した。この際、XRR測定用サンプルとして、膜厚150nmに成膜したものを用いた。膜厚150nm程度のサンプルを用いることにより、Siウェーハ上の測定感度が良好になるためである。得られた実測値を各試料についての理論膜密度で除した値の百分率を求め、相対膜密度とした。その結果を表1〜表3に示す。また、実施例9と実施例13の試料について、その理論膜密度と平均膜密度を表4に示す。

0088

外観観察
実施例9、実施例13の試料について、当該赤外線反射防止膜の表面を走査型電子顕微鏡(JSM−6500F(日本電子株式会社製))を用いて倍率1万倍で観察した。各試料についてのSEM画像図1及び図2に示す。

0089

0090

0091

0092

0093

表1及び表2に示すように、実施例1〜実施例18の試料はいずれも耐水試験の結果が良好であり、各試料を純水に浸漬してから24時間が経過しても、基板からの膜剥がれが一切生じなかった。一方、比較例1の試料は酸化亜鉛からなる赤外線透過膜を備える。表2に示すように純水に当該試料を水に浸漬して24時間経過後には基板から完全に膜が剥離した状態となった。従って、酸化ビスマスを一切含まない酸化亜鉛膜と比較すると、酸化ビスマスと酸化亜鉛の混合膜は耐水性が良好であることが確認された。

0094

また、テープ試験を実施した実施例9〜実施例18の試料のうち、実施例9〜実施例12及び実施例14〜実施例18の試料は、膜の剥がれは観察されず、結果は良好であった。一方、実施例13の試料及び比較例2の試料は、耐水試験後のテープ試験では膜が剥離した状態となった。実施例13の試料は、酸化ビスマスの含有量が8質量%であり、他の試料と比較すると酸化ビスマスの含有量が低い。また、比較例2の試料は酸化亜鉛を含まない。

0095

ここで、表1及、表2及び表4に示すように、実施例9〜実施例12及び実施例14〜実施例18の試料において、各赤外線透過膜の相対膜密度は80.0%以上、より具体的には85.0%以上であるのに対して、実施例13の試料の相対膜密度は80.0%未満である。同様に比較例1及び比較例2の試料の相対膜密度も80.0%未満である。また、図1及び図2から、実施例9の赤外線透過膜は、実施例13の赤外線透過膜よりも微細な結晶粒からなり、膜密度が向上していることがSEM画像からも確認された。酸化ビスマスと酸化亜鉛の混合比を変化させることにより、相対膜密度が変化することが確認され、酸化ビスマスと他の金属酸化物(酸化亜鉛)とからなる赤外線透過膜において、酸化ビスマスの含有量を10質量%以上90質量%以下とすることにより、酸化ビスマス膜(又は酸化亜鉛膜)の耐水性及び密着性を著しく向上することができることが確認された。

0096

さらに、表1及び表2に示すように、実施例1〜実施例18の試料は、波長範囲8μm〜12μmにおける平均透過率が83%以上を示し、これらの波長範囲の光線に対して高い透明度を示す。従って、実施例1〜実施例18で成膜した本件発明に係る赤外線透過膜は光学膜として好適に用いることができる。

0097

一方、表3に示すように、比較例1の試料の波長範囲8μm〜12μmにおける平均透過率が90%以上を示し、光学膜として好適な光学特性を備える。しかしながら、上述したとおり、耐水性及び密着性が低いため、実用上必要とされる耐久性を満足することができない。また、比較例2の試料は波長範囲8μm〜12μmにおける平均透過率が81%となり、遠赤外線に対する透明度が低いため、光学膜として用いることが困難である。

0098

本件発明によれば、成膜が容易であり、且つ、耐水性等の実用上十分な耐久性を有する新規な赤外線透過膜、及び当該赤外線透過膜を備えた光学膜、反射防止膜、光学部品、光学系及び撮像装置を提供することができる。

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