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課題
微粒子の捕集効率を高く維持するとともに、圧力損失の低減化を図った目封止ハニカム構造体の提供を課題とする。
解決手段
目封止ハニカム構造体1は、一方の端面2aから他方の端面まで延びる複数のセル3を区画形成する隔壁4を有するハニカム構造部と、セル3に対して所定の配設基準に従って目封止し、他方の端面の残余のセルに対して配設基準に従って目封止した複数の目封止部6とを備え、ハニカム構造部は、一方の端面2aにおける隔壁4が交差する隔壁交点部7の少なくとも一部に形成され、隔壁交点部7に相当する位置に互いに対向する一対のセル3の間を連通し、流体の流通を可能とする流通孔部8を更に備え、流通孔部8の最小孔幅の位置で内接する第一仮想内接円C1の直径D1を、互いに対向する目封止部6の間の最小目封止幅の位置で内接する第二仮想内接円C2の直径D2で除した値が、0.05〜0.74の範囲である。
概要
背景
従来、自動車のエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスの中には、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)などの有害物質が含まれている。自然環境や人体等に対する影響があるため、このような有害物質をそのまま大気中に放出することはできない。そこで、排気ガスの排出流路の途中に、上記有害物質を除去し、浄化するための排気ガス浄化装置(または微粒子捕集フィルタ)が一般に設けられている。
排気ガス浄化装置には、例えば、多孔質セラミックス材料で形成されたハニカム構造体を触媒担体として使用し、当該ハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒等を担持したハニカム触媒体が用いられている。ここで、触媒担体としてのハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路として形成される複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えている。更に、一方の端面のセルに対して所定の配設基準に従って目封止部が形成され、他方の端面の残余のセルに対して同様に目封止部が形成されている。
上記構成の目封止ハニカム構造体を排気ガス浄化装置に使用することで、排気ガスは目封止ハニカム構造体の一方の端面の目封止部の設けられていないセルから内部に流入し、隔壁を通過して、最終的に他方の端面の目封止部の設けられていないセルから外部に排出される。このとき、排気ガスは多孔質性の隔壁内部を通過するため、当該隔壁が濾過材として機能し、排気ガス中に含まれる微粒子が隔壁内部及び隔壁表面に捕集される。
これにより、排気ガスから微粒子を除去することができる。ここで、目封止ハニカム構造体による微粒子の捕集を継続すると、隔壁表面に多くの微粒子が堆積し、排気ガスの流通性を阻害する。その結果、排気ガスの流入側(一方の端面側)と流出側(他方の端面側)との間で圧力の差が生じ、所謂圧力損失が発生する。これにより、排気ガスの良好な流通が損なわれ、燃費(出力)が悪化する。
そこで、一定の時間または量の排気ガスを処理した後は、隔壁表面に主に堆積した微粒子を、例えば、燃料を噴射して大気中に含まれる酸素と反応させ、二酸化炭素にガス化して除去する微粒子の除去処理が行われている。
すなわち、目封止ハニカム構造体を使用した排気ガス浄化装置は、隔壁に堆積した微粒子を加熱して除去する処理が必須となり、隔壁への堆積量が多い場合、微粒子の除去処理の頻度が増えることとなった。その結果、燃費が低下することがあった。加えて、加熱によって微粒子を除去する際に、隔壁に堆積した全ての微粒子をガス化することは困難であり、その一部は、アッシュ(灰分)として隔壁表面に依然として残存する可能性があった。
更に、目封止ハニカム構造体は、一方の端面及び他方の端面の一部のセルがそれぞれ目封止されているため、通常のハニカム構造体と比較して排気ガスの処理前の初期状態における圧力損失が当初から大きくなる傾向が大きかった。
そこで、排気ガス中に含まれる微粒子を除去する目封止構造体として、特別な機構や装置等を必要となることなく、隔壁に堆積した微粒子の除去及び微粒子の除去後のアッシュの残存量を少なくすることが可能なハニカム構造体が提案されている(特許文献1参照)。
これによると、隔壁と隔壁とが格子状に交差する隔壁交点部位の少なくとも一部において、隔壁交点部位に相当する部分の隔壁が存在しない「交点なし部」を備えている。交点なし部を備えることで、排気ガス浄化装置等に使用した場合の圧力損失の上昇を抑え、加熱による微粒子の除去処理の頻度を少なく抑えることができる。
概要
微粒子の捕集効率を高く維持するとともに、圧力損失の低減化をった目封止ハニカム構造体の提供を課題とする。目封止ハニカム構造体1は、一方の端面2aから他方の端面まで延びる複数のセル3を区画形成する隔壁4を有するハニカム構造部と、セル3に対して所定の配設基準に従って目封止し、他方の端面の残余のセルに対して配設基準に従って目封止した複数の目封止部6とを備え、ハニカム構造部は、一方の端面2aにおける隔壁4が交差する隔壁交点部7の少なくとも一部に形成され、隔壁交点部7に相当する位置に互いに対向する一対のセル3の間を連通し、流体の流通を可能とする流通孔部8を更に備え、流通孔部8の最小孔幅の位置で内接する第一仮想内接円C1の直径D1を、互いに対向する目封止部6の間の最小目封止幅の位置で内接する第二仮想内接円C2の直径D2で除した値が、0.05〜0.74の範囲である。
目的
本発明は、上記実情に鑑み、排気ガス浄化装置等として使用する場合において、微粒子の捕集効率、及び有害物質の浄化効率を高く維持するとともに、圧力損失の低減化を図った目封止ハニカム構造体の提供を課題とする
効果
実績
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請求項1
一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム構造部と、前記一方の端面の前記セルに対して所定の配設基準に従って目封止し、前記他方の端面の残余の前記セルに対して前記配設基準に従って目封止した複数の目封止部とを備える目封止ハニカム構造体であって、前記ハニカム構造部は、前記一方の端面または前記他方の端面のいずれか一方における前記隔壁が交差する隔壁交点部の少なくとも一部に形成され、前記隔壁交点部に相当する位置に互いに対向する、前記一方の端面側または前記他方の端面側に開口する一対の前記セルの間を連通し、流体の流通を可能とする流通孔部を更に備え、前記流通孔部の最小孔幅の位置で内接する第一仮想内接円の直径を、互いに対向する前記目封止部の間の最小目封止幅の位置で内接する第二仮想内接円の直径で除した値が、0.05〜0.74の範囲である目封止ハニカム構造体。
請求項2
請求項3
前記流通孔部の形成された前記隔壁交点部は、前記一方の端面または前記他方の端面における前記隔壁交点部の全数に対して、10%以上、50%以下の範囲である請求項1または2に記載の目封止ハニカム構造体。
請求項4
前記セルは、最大で三つの前記流通孔部と接続し、それぞれ互いに対向する前記セルの間を連通する請求項1〜3のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
請求項5
前記セルは、一つの前記流通孔部と接続し、互いに対向する前記セルの間を連通する請求項1〜3のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
請求項6
請求項7
請求項8
前記ハニカム構造部は、気孔率が30%〜80%の範囲、平均細孔径が5μm〜30μmの多孔質セラミックス材料である請求項1〜7のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
技術分野
背景技術
0002
従来、自動車のエンジン等の内燃機関から排出される排気ガスの中には、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NOx)などの有害物質が含まれている。自然環境や人体等に対する影響があるため、このような有害物質をそのまま大気中に放出することはできない。そこで、排気ガスの排出流路の途中に、上記有害物質を除去し、浄化するための排気ガス浄化装置(または微粒子捕集フィルタ)が一般に設けられている。
0003
排気ガス浄化装置には、例えば、多孔質セラミックス材料で形成されたハニカム構造体を触媒担体として使用し、当該ハニカム構造体の隔壁に、SCR触媒等を担持したハニカム触媒体が用いられている。ここで、触媒担体としてのハニカム構造体は、一方の端面から他方の端面まで延びる、流体の流路として形成される複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えている。更に、一方の端面のセルに対して所定の配設基準に従って目封止部が形成され、他方の端面の残余のセルに対して同様に目封止部が形成されている。
0004
上記構成の目封止ハニカム構造体を排気ガス浄化装置に使用することで、排気ガスは目封止ハニカム構造体の一方の端面の目封止部の設けられていないセルから内部に流入し、隔壁を通過して、最終的に他方の端面の目封止部の設けられていないセルから外部に排出される。このとき、排気ガスは多孔質性の隔壁内部を通過するため、当該隔壁が濾過材として機能し、排気ガス中に含まれる微粒子が隔壁内部及び隔壁表面に捕集される。
0005
これにより、排気ガスから微粒子を除去することができる。ここで、目封止ハニカム構造体による微粒子の捕集を継続すると、隔壁表面に多くの微粒子が堆積し、排気ガスの流通性を阻害する。その結果、排気ガスの流入側(一方の端面側)と流出側(他方の端面側)との間で圧力の差が生じ、所謂圧力損失が発生する。これにより、排気ガスの良好な流通が損なわれ、燃費(出力)が悪化する。
0006
そこで、一定の時間または量の排気ガスを処理した後は、隔壁表面に主に堆積した微粒子を、例えば、燃料を噴射して大気中に含まれる酸素と反応させ、二酸化炭素にガス化して除去する微粒子の除去処理が行われている。
0007
すなわち、目封止ハニカム構造体を使用した排気ガス浄化装置は、隔壁に堆積した微粒子を加熱して除去する処理が必須となり、隔壁への堆積量が多い場合、微粒子の除去処理の頻度が増えることとなった。その結果、燃費が低下することがあった。加えて、加熱によって微粒子を除去する際に、隔壁に堆積した全ての微粒子をガス化することは困難であり、その一部は、アッシュ(灰分)として隔壁表面に依然として残存する可能性があった。
0008
更に、目封止ハニカム構造体は、一方の端面及び他方の端面の一部のセルがそれぞれ目封止されているため、通常のハニカム構造体と比較して排気ガスの処理前の初期状態における圧力損失が当初から大きくなる傾向が大きかった。
0009
そこで、排気ガス中に含まれる微粒子を除去する目封止構造体として、特別な機構や装置等を必要となることなく、隔壁に堆積した微粒子の除去及び微粒子の除去後のアッシュの残存量を少なくすることが可能なハニカム構造体が提案されている(特許文献1参照)。
0010
これによると、隔壁と隔壁とが格子状に交差する隔壁交点部位の少なくとも一部において、隔壁交点部位に相当する部分の隔壁が存在しない「交点なし部」を備えている。交点なし部を備えることで、排気ガス浄化装置等に使用した場合の圧力損失の上昇を抑え、加熱による微粒子の除去処理の頻度を少なく抑えることができる。
先行技術
0011
特開2004−132266号公報
発明が解決しようとする課題
0012
しかしながら、近年において、ディーゼルエンジン等から排出される排気ガスに対する種々の規制が厳格に強化されている。そのため、排出される排気ガスに含まれる微粒子の除去、及び排気ガス中の有害物質の浄化を高効率で実現することができ、初期状態及び使用後の圧力損失の低減化が可能なハニカム構造体の開発が進められている。
0013
そこで、本発明は、上記実情に鑑み、排気ガス浄化装置等として使用する場合において、微粒子の捕集効率、及び有害物質の浄化効率を高く維持するとともに、圧力損失の低減化を図った目封止ハニカム構造体の提供を課題とするものである。
課題を解決するための手段
0014
[1] 一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有するハニカム構造部と、前記一方の端面の前記セルに対して所定の配設基準に従って目封止し、前記他方の端面の残余の前記セルに対して前記配設基準に従って目封止した複数の目封止部とを備える目封止ハニカム構造体であって、前記ハニカム構造部は、前記一方の端面または前記他方の端面のいずれか一方における前記隔壁が交差する隔壁交点部の少なくとも一部に形成され、前記隔壁交点部に相当する位置に互いに対向する、前記一方の端面側または前記他方の端面側に開口する一対の前記セルの間を連通し、流体の流通を可能とする流通孔部を更に備え、前記流通孔部の最小孔幅の位置で内接する第一仮想内接円の直径を、互いに対向する前記目封止部の間の最小目封止幅の位置で内接する第二仮想内接円の直径で除した値が、0.05〜0.74の範囲である目封止ハニカム構造体。
0016
[3] 前記流通孔部の形成された前記隔壁交点部は、前記一方の端面または前記他方の端面における前記隔壁交点部の全数に対して、10以上、50%以下の範囲である前記[1]または[2]に記載の目封止ハニカム構造体。
0017
[4] 前記セルは、最大で三つの前記流通孔部と接続し、それぞれ互いに対向する前記セルの間を連通する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
0018
[5] 前記セルは、一つの前記流通孔部と接続し、互いに対向する前記セルの間を連通する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の目封止ハニカム構造体。
発明の効果
0022
本発明の目封止ハニカム構造体によれば、セル同士を連通する流通孔部を設けることで、目封止ハニカム構造体の開口率や幾何学的表面積を増加させることができ、初期状態及び煤等の微粒子が付着した状態の圧力損失の低減化を図ることができる。
図面の簡単な説明
0024
本実施形態の目封止ハニカム構造体の概略構成を示す平面図である。
目封止ハニカム構造体の概略構成を示す図1のA−A’線縮小断面図である。
目封止ハニカム構造体の概略構成を示す図1の一部拡大平面図である。
二つの流通孔部で三つのセルが接続された目封止ハニカム構造体の別例構成を示す平面図である。
流通孔部を交互に配した目封止ハニカム構造体の別例構成を示す平面図である。
正六角形状のセルを備える目封止ハニカム構造体の別例構成を示す平面図である。
「流通孔部の孔幅」を「交点R=0mmのときの交点幅」で除した値に対する入口OFA、及び出口の交点部の曲率半径Rの相関関係を示すグラフである。
「流通孔部の孔幅」を「交点R=0mmのときの交点幅」で除した値に対する圧力損失(初期)の相関関係を示すグラフである。
「流通孔部の孔幅」を「交点R=0mmのときの交点幅」で除した値に対する入口GSA、及び出口の交点部の曲率半径Rの相関関係を示すグラフである。
「流通孔部の孔幅」を「交点R=0mmのときの交点幅」で除した値に対する圧力損失(煤)の相関関係を示すグラフである。
0025
以下、図面を参照しつつ、本発明の目封止ハニカム構造体の実施の形態の一例について説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、変更、修正、及び改良等を加えることができる。
0026
1.目封止ハニカム構造体
本発明の一実施形態の目封止ハニカム構造体1は、図1及び図2に示すように、一方の端面2aから他方の端面2bまで延びる複数のセル3を区画形成する隔壁4を有するハニカム構造部5と、一方の端面2aのセル3に対して所定の配設基準に従って目封止し、他方の端面2bの残余のセル3に対して所定の配設基準に従って目封止した複数の目封止部6とを備えるものである。
0027
ここで、目封止部6を配設する配設基準は、それぞれのセル3に対して一つおきに交互に目封止部6を配した、所謂「市松模様(またはチェッカーボードパターン)」が採用されている。更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体1は、格子状(十字状)の隔壁4を有し、セル3が正四角形状に形成されている。なお、目封止ハニカム構造体1の構造自体は既に周知の構成であるため、その詳細については説明を省略する。
0028
本実施形態の目封止ハニカム構造体1の特徴的な構造として、一方の端面2aまたは他方の端面2bのいずれか一方において、隔壁4と隔壁4とが互いに交差する隔壁交点部7の少なくとも一部に、当該隔壁交点部7の相当する位置の隔壁4の一部が存在せず、互いに対向する、一方の端面2a側または他方の端面2b側に開口する一対のセル3の間を連通し、排気ガス等の流体の流通を可能とする流通孔部8を備えている。なお、一方の端面2a側を流体の入口側とし、他方の端面2b側を流体の出口側とした場合、流通孔部8は、入口側のセル(入口セル)同士を連通した「入口−入口セル」、または出口側のセル(出口セル)同士を連通した「出口−出口セル」にのみ、それぞれ配置されている。
0029
流通孔部8は、一方の端面2aから他方の端面2bに沿って(または、他方の端面2bから一方の端面2a)に沿って、目封止ハニカム構造体1の軸方向(図1における紙面奥行方向に相当)に延び、他方の端面2b(または一方の端面2a)に設けられた目封止部6に到達するまで形成されている。すなわち、本実施形態の目封止ハニカム構造体1は、対角線上に配された一対のセル3の間を接続する流通孔部8を有し、双方のセル3の間を自由に排気ガス等の流体が流れることができる。
0030
更に具体的に説明すると、流通孔部8は、一定の孔幅Wによって離間し、互いに平行な直線状の孔壁9a,9bによって構成され、孔壁9a,9bの間に空間が形成された溝状の構造のものである(図3参照)。
0031
流通孔部8の形状は、図示した直線状の孔壁9a,9bから形成されるものではなく、孔壁の間の空間に対して、例えば、凸状に湾曲した湾曲面から形成されているものなど、一対のセル3の間の流体の流通が可能なものであれば構わない。なお、本実施形態の目封止ハニカム構造体1のように、直線状の孔壁9a,9bに形成された場合、一定の孔幅Wが本発明における最小孔幅に相当する。一方、上記の凸状に湾曲した湾曲面から形成された場合、当該湾曲面の頂部の間の距離が最小孔幅に相当する。
0032
また、流通孔部8における流体の流れ方向F(図3参照)にそれぞれ直交する位置に、一対の目封止部6が配されている。ここで、目封止部6は、一方の端面2a(または他方の端面2b)のセル3から所定量の目封止材を充填し、乾燥させることにより、一方の端面2a(または他方の端面2b)から一定深さまで充填して形成されている。
0033
形成された目封止部6は、略四角形状を呈し、四つのそれぞれの角に所定の曲率半径Rで面取りされた交点部10(以下、「曲率半径Rの交点部」を“交点R”と記載することもある。)を有している。すなわち、目封止部6が上記交点部10を有することにより、流通孔部8の孔壁9a,9bから目封止部6までの距離を、交点部10が存在しない場合と比べて長くすることができる。なお、本発明の目封止ハニカム構造体において、目封止部は、上記の略四角形状に限定されるものではなく、正四角形状を呈するものであっても構わない。
0034
これにより、隔壁交点部7において、流通孔部8以外の隔壁4の部分、換言すると、流通孔部8の孔壁9a,9bから目封止部6の交点部10までの交点部隔壁厚さT2を広くすることができる。
0035
本実施形態の目封止ハニカム構造体1の場合、上記交点部隔壁厚さT2の最短距離が、目封止ハニカム構造体1の隔壁4の隔壁厚さT1の1/2以上となるように設計されている。その結果、流通孔部8を有する本実施形態の目封止ハニカム構造体1の強度の低下を抑制することができる。
0036
更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体1は、流通孔部8の最小孔幅(孔幅Wに相当)の位置で内接する第一仮想内接円C1(図3における円内にハッチングが施された実線円参照)の直径D1を、互いに対向する目封止部6の間(特に、交点部10の間)の最小目封止幅の位置で内接する第二仮想内接円C2(図3における破線円参照)の直径D2で除した値が、0.05〜0.74の範囲に設定される。
0037
すなわち、直径比(=D1/D2)を上記範囲とすることにより、隔壁交点部7における流通孔部8の孔幅Wと、それ以外の隔壁4の部分の厚さとをそれぞれ規定することができる。
0038
本実施形態の目封止ハニカム構造体1は、一方の端面2a(または他方の端面2b)において、それぞれのセル3を連結させているだけであるため、捕集効率を悪化させることはない。一方、一方の端面2a及び他方の端面2bまで延びるセル3は、それぞれ隔壁4によって分離されているため、排気ガス等の流体は従来の通り捕集される。その結果、従来の目封止ハニカム構造体と同様に排気ガス中に含まれる煤等の微粒子の捕集効率に大きな影響を及ぼすことがない。
0039
更に、一対のセル3を流通孔部8で接続した構成とすることにより、目封止ハニカム構造体1の一方の端面2a(または他方の端面2b)における開口率OFA、或いは幾何学的表面積GSAを向上させることができる。
0040
その結果、排気ガス等の流体を処理する際の初期状態の目封止ハニカム構造体1の圧力損失、及び、使用時の煤等が付着した目封止ハニカム構造体1の圧力損失を低減化することができる。
0041
すなわち、開口率OFAを広くすることで、目封止ハニカム構造体1の内部に流入する流体量を大きくすることができるとともに、圧力損失の低減化が可能となる。特に、排気ガスを処理する場合、処理時間に応じて徐々に煤等の微粒子が隔壁4の内部及び表面に堆積する。
0042
この場合、一対のセル3の間に流通孔部8が設けられているため、微粒子を捕集する幾何学的表面積GSAを大きくなり、微粒子が一部に偏って堆積する可能性が低くなる。そのため、圧力損失の低減化が図られる。
0043
更に、幾何学的表面積GSAが増大することにより、排気ガス等の流体との接触面積が増加する。これにより、触媒担体として用いた場合の当該触媒との接触機会が増えることとなり、浄化性能の向上が期待される。
0044
特に、第一仮想内接円C1の直径D1及び第二仮想内接円C2の直径D2の値を上記条件の範囲に規定することにより、目封止ハニカム構造体1の強度を維持するとともに、良好な開口率OFA及び幾何学的表面積GSAで規定した流通孔部8の孔幅Wの最適値に設定することができる。
0045
更に、本実施形態の目封止ハニカム構造体1の場合、一対のセル3が一つの流通孔部8のみによって接続されている。そのため、図1及び図3に示すように、一方の端面2aにおける隔壁交点部7において、上記流通孔部8が形成された隔壁交点部7(以下、「形成隔壁交点部7a」と称す。)と、当該流通孔部8が形成されていない非形成隔壁交点部7bと称す。)とが存在する。
0046
ここで、一方の端面2a(または他方の端面2b)における隔壁交点部7の全数(形成隔壁交点部7a+非形成隔壁交点部7bの合計)に対して、形成隔壁交点部7aの数が、10%以上、50%以下になるように設定される。ここで、形成隔壁交点部7aの比率が10%より下の場合、上述した効果を十分に発揮することができない。
0047
一方、形成隔壁交点部7aの比率が50%を超える場合、一つのセル3に対して四つの流通孔部8が形成されるケースが生じるため、セル3の脱落が発生する可能性がある。そのため、実用に耐え得る目封止ハニカム構造体1の強度を確保するため、上記範囲に形成隔壁交点部7aの比率が規定されている。
0048
なお、図4に示すように、二つの流通孔部8で三つのセル3が接続された目封止ハニカム構造体1aを形成するものであっても構わない。同様に、最大で三つの流通孔部で四つのセルが接続された目封止ハニカム構造体(図示しない)を形成するものであっても構わない。図4において、図1で示した目封止ハニカム構造体1と同一構成については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
0049
係るセル3及び流通孔部8の構造を採用することで、開口率OFA及び幾何学的表面積GSAを更に向上させることができ、圧力損失の低減に更に寄与することができる。一方、一つのセル3に対して四つ以上の流通孔部8を接続したものは、セル3の脱落が発生する可能性があるため、使用することが困難である。
0050
加えて、流通孔部8を形成した隔壁交点部7の配置は、特に限定されるものではなく、例えば、図1で示した本実施形態の目封止ハニカム構造体1に対し、図5に示すように、流通孔部8を形成した隔壁交点部7の位置を交互にした目封止ハニカム構造体1bを形成するものであっても構わない。上記と同様に、図5において、図1で示した目封止ハニカム構造体1と同一構成については、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
0051
目封止ハニカム構造体1のハニカム構造部5の材質については、特に限定されるものではないが、強度及び耐熱性等の観点から、例えば、コージェライト成分または炭化珪素成分を含むもの、或いは、窒化珪素成分、アルミナ成分、ムライト成分、及びリチウムアルミニウムシリケート成分などを含むものを使用することが可能である。
0052
特に、コージェライト成分及び炭化珪素成分を含んで構成したものが、従来から周知であるため、好適である。また、目封止部6を形成するための目封止材の材質については、特に限定されるものがない。しかしながら、ハニカム構造部5の材質と同一にすることで、熱膨張率が一致するため、特に好適である。
0053
また、本実施形態の目封止ハニカム構造体1及びその他の別例構成の目封止ハニカム構造体1a,1bにおいて、それぞれ正四角形状のセル3を区画形成する格子状の隔壁4を備えるものを示したが、これに限定されるものではない。
0054
例えば、図6に示すように、正六角形状のセル12を区画形成する隔壁13を備える目封止ハニカム構造体1cであっても構わない。この場合、一つのセル12に対し、その周囲に六つの目封止部14が配置され、一対の目封止部14の間を、他のセル12に向かって延びる流通孔部15を形成することができる。
0055
なお、正六角形状のセル12を使用した目封止部14及び流通孔部15の配置は、上記に限定されるものではなく、上述の開口率OFA、幾何学的表面積GSA、及び圧力損失(初期、煤)等を考慮し、最適なレイアウトとすることができる。更に流通孔部15の孔幅、及び孔壁からの目封止部14までの最短距離等の相関関係についても任意に設定することができる。
0056
2.目封止ハニカム構造体の製造方法
本実施形態の目封止ハニカム構造体1の製造方法は、周知の目封止ハニカム構造体の製造方法と略同一の製造方法が用いられるため、例えば、成形原料の調整、乾燥、焼成等の各工程については詳細な説明を省略する。なお、本実施形態の目封止ハニカム構造体1の製造方法において、特徴的な事項は、目封止ハニカム構造体1のハニカム構造部5の形状に一致するように形成された成形用口金(図示しない)を用いるものである。これにより、成形原料を押出成形し、流通孔部8に相当する部位を有するハニカム成形体を得ることができ、これを乾燥及び焼成することで、ハニカム構造部5(ハニカム構造体)が得られる。
0057
このとき、予め規定された位置に合わせ、かつ流通孔部8の孔幅Wと一致するように、隔壁交点部7の一部に相当する位置が塞がれた成形用口金が使用される。これにより、押出成形の際に、隔壁交点部7の一部に相当する位置が塞がれた成形用口金によって、当該塞がれた箇所の成形原料の押出が規制され、係る部分に流通孔部8を有するハニカム成形体が得られる。
0058
流通孔部8の孔幅や一方の端面2a(または他方の端面2b)における隔壁交点部7の合計に対する形成隔壁交点部7aの数の比率等は、上述した範囲内に規定される。その後、一方の端面2a(または他方の端面2b)に対して、所定の配設基準で規定されたセル3に対して目封止部6を設ける。これにより、図1〜図4等に示す本実施形態の目封止ハニカム構造体1の製造が完了する。
0059
以下、本発明の目封止ハニカム構造体の実施例について説明するが、本発明の目封止ハニカム構造体はこれらの実施の形態に特に限定されるものではない。
0060
(1)目封止ハニカム構造体
直径144mm、長さ152mm、隔壁厚さ0.3mm、セル密度46個/cm2、気孔率41%、平均細孔径11μmの多孔質セラミックス材料から形成されるハニカム構造体(ハニカム構造部)をベースに、入口側の端面の一部の隔壁交点部に対し、入口−入口セルの一対のセルの間を接続し、流体の流通を可能とする複数の流通孔部を設け、更に所定の配設基準にしたがって目封止部を設けた目封止ハニカム構造体を作成した(図1参照)。なお、隔壁交点部の全数に対する、流通孔部を設けた隔壁交点部(形成隔壁交点部)の比率は、本実施例において36%であった。なお、気孔率及び平均細孔径は、マイクロメリティクス製オートポア9405型、または、これと同等の装置を用いて測定した値である。
0061
(2)圧力損失の測定、及び設計因子
上記(1)の条件を一定とした目封止ハニカム構造体に対し、流通孔部の孔幅Wを設計因子とし、初期状態における圧力損失(以下、「圧力損失(初期)(測定条件:入口ガス温度25℃,入口ガス流量10Nm3/min、入口ガス圧力1atm、煤なし)」と称す。)、及び排気ガス処理後の煤が付着した状態の圧力損失(以下、「圧力損失(煤)(測定条件:入口ガス温度200℃,入口ガス流量2.7Nm3/min,入口ガス圧力1atm、4g/Lの煤付き)」と称す。)への影響を検討した。なお、圧力損失の測定は、周知のため詳細な説明は省略する。
0062
ここで、流通孔部の孔幅Wを変更することにより、開口率OFA、幾何学的表面積GSA、及び交点部隔壁厚さT2が特に影響を受けることになる。また、上記目封止ハニカム構造体は、流通孔部の孔壁と目封止部の交点部までの交点部隔壁厚さT2の最小距離が、目封止ハニカム構造体の隔壁の隔壁厚さT1の1/2となるように初期条件において設定されている。
0063
図7は、流通孔部の孔幅Wに対する入口OFA(一方の端面側の開口率)、及び出口(他方の端面側)の交点部の曲率半径Rの相関関係を示すグラフである。これによると、流通孔部の孔幅が広くなり、孔幅の比率が増加するに連れて、入口OFAの値が大きくなり、更に出口の交点部の曲率半径Rの値が大きくなる。なお、曲率半径Rは、流通孔部の孔幅の比率に対して0.3を超えた当たりからの上昇となる。更に、図8に示されるように、流通孔部の孔幅が交点部の曲率半径Rが0mmのときの交点幅に対して1.2倍のときに、圧力損失(初期)(測定条件:入口ガス温度25℃,入口ガス流量10Nm3/min、入口ガス圧力1atm、煤なし)が最小値の4.83kPaとなることが示された。係る値は、通常のセル構造の目封止ハニカム構造体での圧力損失(初期)(上記と同条件)の値である5.39kPaと比較して10%の圧力損失の減少となる。
0064
ここで、流通孔部の孔壁から目封止部の交点部までの交点部隔壁厚さT2の最短距離が、目封止ハニカム構造体の隔壁の隔壁厚さT1の少なくとも1/2倍以上(T2≧1/2×T1)となる条件を満たす必要がある。
実施例
0065
更に、流通孔部の孔幅Wが小さくなるほど、入口GSA(一方の端面側)の値が上昇することが確認され(図9参照)、これに対し、圧力損失(煤)の値が低減することが確認された(図10)。一方、流通孔部の孔幅Wが大きくなると、出口の交点部の曲率半径Rが大きくなってしまう。すなわち、交点部と流通孔部の孔壁の間の最短距離として、隔壁厚さの1/2T1が必要となるためである。このとき、流通孔の孔幅が交点部の曲率半径Rが0mmに対して1.2倍のときに、圧力損失(煤)(測定条件:入口ガス温度200℃,入口ガス流量2.7Nm3/min,入口ガス圧力1atm、4g/Lの煤付き)の圧力損失の値である7.11kPaは、通常のセル構造の目封止ハニカム構造体の圧力損失(煤)(上記と同条件)の値である7.31kPaに対して3%の減少であった。
0066
本発明の目封止ハニカム構造体は、自動車のエンジン等から排出される排気ガス中の有害物質を除去するための排気ガス浄化装置や微粒子捕集フィルタ等に好適に利用することができる。
0067
1,1a,1b,1c:目封止ハニカム構造体、2a:一方の端面、2b:他方の端面、3:セル、4:隔壁、5:ハニカム構造部、6:目封止部、7:隔壁交点部、7a:形成隔壁交点部(隔壁交点部)、7b:非形成隔壁交点部(隔壁交点部)、8:流通孔部、9a,9b:孔壁、10:交点部、C1:第一仮想内接円、C2:第二仮想内接円、D1:第一仮想内接円の直径、D2:第二仮想内接円の直径、F:流体の流れ方向、GSA:幾何学的表面積、OFA:開口率、T1:隔壁厚さ、T2:交点部隔壁厚さ、W:孔幅(最小孔幅)。
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