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課題
解決手段
概要
背景
高炉では、焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス、造滓剤を原料として、これらの高炉原料を炉頂から炉内へ装入し、炉下部から高温空気あるいは酸素を富化した高温空気を炉内へ吹き込むことによりコークスを燃焼し、この燃焼により発生する熱とCOガスを利用して焼結鉱や鉄鉱石の還元、溶融を行うことで、溶銑を製造している。炉頂から装入される高炉原料は数mmから数十mmの粒径に調整されて、炉内へ装入されるので、炉下部でコークスの燃焼によって発生する燃焼ガスは、炉内に充填された粒状の高炉原料の間隙を炉頂へ向けて上昇することになる。
高炉原料への熱供給は主としてこの燃焼ガスからの伝熱により行われるために、炉内における燃焼ガスの流れが適正な状態でないと、高炉原料の昇温が不安定となり、焼結鉱や鉄鉱石の還元、溶融に支障をきたすことになる。
したがって、炉内のガス流を適正なものとするために、炉頂における高炉原料の炉内装入時に、炉内の適正な位置へ適正な粒度の高炉原料を装入するための、炉頂装入装置や炉頂装入方法の開発が鋭意進められている。
しかしながら、このような高炉原料の装入装置や装入方法の工夫を精緻に行っていても、高炉原料そのものに粉状の高炉原料が混入してしまうと、炉内への粉状高炉原料の装入は回避できず、上記したガス流の適正化は困難となってしまう。
高炉で使用される高炉原料には、焼結機やコークス炉において製造されて粒度調整後、直接、高炉原料槽へ送られてくる高炉原料と、焼結機やコークス炉において製造されて粒度調整後、一旦、ヤードと呼ばれる露天の保管場所にて保管された後に、改めてこれを回収して高炉原料槽へ送られてくる高炉原料とがある。これらのうち、ヤードで保管された後に高炉原料槽へ送られてくるものについては、ヤード保管時に雨水等による湿潤が進むことが避けられず、水分含有量が数質量%となり、中には水分含有量が10質量%を超えるような高炉原料もある。
こうした水分量の多い高炉原料では、粒状の高炉原料に粉状の高炉原料が水分によって付着しているため、篩等により粒度調整をおこなっても、粒状高炉原料から粉状高炉原料を分離除去できない場合が生じる。また、このような水分を含んだ粉状高炉原料は篩の網そのものにも付着しやすいため、篩の目詰まりの原因となり、さらに高炉原料の篩分けが困難になるという問題がある。
篩により分離除去されなかった粉状高炉原料は、粒状高炉原料に付着したまま炉頂へ運ばれて炉内へ装入されると、炉内の熱により乾燥されて粒状高炉原料の表面から離脱するので、炉内の高炉原料の間隙を流れ、場合によっては高炉原料同士の間隙に高炉原料が溜まって炉内のガス流を阻害するといった現象を引き起こすこともある。
したがって、粒状高炉原料に付着する粉状高炉原料を除去する技術は、高炉炉内への高炉原料装入技術と同等に重要な技術であるといえる。
そこで、粒状高炉原料に付着する粉状高炉原料を除去するために、水分量の多い高炉原料を予め乾燥してから、篩等により粉状高炉原料を分離除去することが考えられる。
そのような、高炉原料を予熱・乾燥するという観点では、特許文献1において、高炉原料を貯蔵するホッパーの側壁に設けた複数送気口から加熱ガスを送り込む技術が提案されている。
概要
高炉原料(焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス等)を安価で効率的に乾燥することができる高炉原料の乾燥方法を提供する。焼結鉱を製造する焼結機と、該焼結機で製造された焼結鉱を破砕して粒度調整を行うためのクラッシャーと、該クラッシャーで粒度調整された焼結鉱を冷却するクーラー装置を備えた焼結鉱処理ラインを利用して高炉原料を乾燥する乾燥方法であって、前記高炉原料を前記クーラー装置に装入して、焼結鉱の顕熱によって前記高炉原料を乾燥することを特徴とする高炉原料の乾燥方法。
目的
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高炉原料(焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス等)を安価で効率的に乾燥することができる高炉原料の乾燥方法を提供する
効果
実績
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この技術が所属する分野
(分野番号表示ON)※整理標準化データをもとに当社作成
請求項1
焼結鉱を製造する焼結機と、該焼結機で製造された焼結鉱を破砕して粒度調整を行うためのクラッシャーと、該クラッシャーで粒度調整された焼結鉱を冷却するクーラー装置を備えた焼結鉱処理ラインを利用して高炉原料を乾燥する乾燥方法であって、前記高炉原料を前記クーラー装置に装入して、焼結鉱の顕熱によって前記高炉原料を乾燥することを特徴とする高炉原料の乾燥方法。
請求項2
前記クーラー装置内では、焼結鉱の層の上部に前記高炉原料の層を形成して、焼結鉱の層を通過した空気が前記高炉原料の層を通過するようにすることを特徴とする請求項1に記載の高炉原料の乾燥方法。
請求項3
前記クーラー装置に、焼結鉱から排熱を回収する排熱回収装置が取り付けられている場合は、前記高炉原料を前記排熱回収装置の取り付け位置より下流側に装入することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉原料の乾燥方法。
請求項4
前記高炉原料を前記クーラー装置に装入するのに替えて、前記高炉原料を前記クラッシャーに装入することを特徴とする請求項1に記載の高炉原料の乾燥方法。
請求項5
前記高炉原料が、ヤード焼結鉱であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高炉原料の乾燥方法。
技術分野
背景技術
0002
高炉では、焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス、造滓剤を原料として、これらの高炉原料を炉頂から炉内へ装入し、炉下部から高温空気あるいは酸素を富化した高温空気を炉内へ吹き込むことによりコークスを燃焼し、この燃焼により発生する熱とCOガスを利用して焼結鉱や鉄鉱石の還元、溶融を行うことで、溶銑を製造している。炉頂から装入される高炉原料は数mmから数十mmの粒径に調整されて、炉内へ装入されるので、炉下部でコークスの燃焼によって発生する燃焼ガスは、炉内に充填された粒状の高炉原料の間隙を炉頂へ向けて上昇することになる。
0003
高炉原料への熱供給は主としてこの燃焼ガスからの伝熱により行われるために、炉内における燃焼ガスの流れが適正な状態でないと、高炉原料の昇温が不安定となり、焼結鉱や鉄鉱石の還元、溶融に支障をきたすことになる。
0004
したがって、炉内のガス流を適正なものとするために、炉頂における高炉原料の炉内装入時に、炉内の適正な位置へ適正な粒度の高炉原料を装入するための、炉頂装入装置や炉頂装入方法の開発が鋭意進められている。
0005
しかしながら、このような高炉原料の装入装置や装入方法の工夫を精緻に行っていても、高炉原料そのものに粉状の高炉原料が混入してしまうと、炉内への粉状高炉原料の装入は回避できず、上記したガス流の適正化は困難となってしまう。
0006
高炉で使用される高炉原料には、焼結機やコークス炉において製造されて粒度調整後、直接、高炉原料槽へ送られてくる高炉原料と、焼結機やコークス炉において製造されて粒度調整後、一旦、ヤードと呼ばれる露天の保管場所にて保管された後に、改めてこれを回収して高炉原料槽へ送られてくる高炉原料とがある。これらのうち、ヤードで保管された後に高炉原料槽へ送られてくるものについては、ヤード保管時に雨水等による湿潤が進むことが避けられず、水分含有量が数質量%となり、中には水分含有量が10質量%を超えるような高炉原料もある。
0007
こうした水分量の多い高炉原料では、粒状の高炉原料に粉状の高炉原料が水分によって付着しているため、篩等により粒度調整をおこなっても、粒状高炉原料から粉状高炉原料を分離除去できない場合が生じる。また、このような水分を含んだ粉状高炉原料は篩の網そのものにも付着しやすいため、篩の目詰まりの原因となり、さらに高炉原料の篩分けが困難になるという問題がある。
0008
篩により分離除去されなかった粉状高炉原料は、粒状高炉原料に付着したまま炉頂へ運ばれて炉内へ装入されると、炉内の熱により乾燥されて粒状高炉原料の表面から離脱するので、炉内の高炉原料の間隙を流れ、場合によっては高炉原料同士の間隙に高炉原料が溜まって炉内のガス流を阻害するといった現象を引き起こすこともある。
0009
したがって、粒状高炉原料に付着する粉状高炉原料を除去する技術は、高炉炉内への高炉原料装入技術と同等に重要な技術であるといえる。
0010
そこで、粒状高炉原料に付着する粉状高炉原料を除去するために、水分量の多い高炉原料を予め乾燥してから、篩等により粉状高炉原料を分離除去することが考えられる。
先行技術
0012
特開2007−254836号公報
発明が解決しようとする課題
0013
しかしながら、上記の特許文献1に記載の技術には以下のような問題がある。
0014
すなわち、上記特許文献1の技術では、加熱ガスを得るための新たな熱源が必要であることから、新たな熱源の確保や、その熱源から高炉原料貯蔵ホッパーまでの加熱ガス用ダクト配管の設置や、高炉原料貯蔵ホッパーの改造等によって、コストが膨大になる。また、ダクト配管を介して加熱ガスを送るため、熱エネルギーの利用効率が良いとは言い難い。
0015
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、高炉原料(焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス等)を安価で効率的に乾燥することができる高炉原料の乾燥方法を提供することを目的とするものである。
課題を解決するための手段
0016
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、焼結機とクラッシャーとクーラー装置を備えた既存の一般的な焼結鉱の処理ラインを利用して、焼結機で製造された焼結鉱の顕熱によって高炉原料を乾燥することを着想した。
0017
本発明は、上記の着想に基づいてなされており、以下のような特徴を有している。
0018
[1]焼結鉱を製造する焼結機と、該焼結機で製造された焼結鉱を破砕して粒度調整を行うためのクラッシャーと、該クラッシャーで粒度調整された焼結鉱を冷却するクーラー装置を備えた焼結鉱処理ラインを利用して高炉原料を乾燥する乾燥方法であって、前記高炉原料を前記クーラー装置に装入して、焼結鉱の顕熱によって前記高炉原料を乾燥することを特徴とする高炉原料の乾燥方法。
0019
[2]前記クーラー装置内では、焼結鉱の層の上部に前記高炉原料の層を形成して、焼結鉱の層を通過した空気が前記高炉原料の層を通過するようにすることを特徴とする前記[1]に記載の高炉原料の乾燥方法。
0020
[3]前記クーラー装置に、焼結鉱から排熱を回収する排熱回収装置が取り付けられている場合は、前記高炉原料を前記排熱回収装置の取り付け位置より下流側に装入することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の高炉原料の乾燥方法。
0021
[4]前記高炉原料を前記クーラー装置に装入するのに替えて、前記高炉原料を前記クラッシャーに装入することを特徴とする前記[1]に記載の高炉原料の乾燥方法。
0022
[5]前記高炉原料が、ヤード焼結鉱であることを特徴とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の高炉原料の乾燥方法。
発明の効果
0023
本発明においては、既存の一般的な焼結鉱の処理ラインを利用して、焼結鉱の顕熱によって高炉原料を乾燥するようにしているので、上記の特許文献1のような新たな熱源やダクト配管の設置が不要であり、高炉原料(焼結鉱、鉄鉱石、塊コークス等)を安価で効率的に乾燥することができる。
図面の簡単な説明
0025
本発明の実施形態において利用する焼結鉱の処理ラインを示す図である。
本発明の実施形態1を示す図である。
ヤード焼結鉱の層厚と乾燥特性の関係を示す図である。
ヤード焼結鉱の乾燥モデルを示す図である。
充填層を通過する流体のイメージを示す図である。
本発明の実施形態2を示す図である。
実施例
0026
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、乾燥対象の高炉原料として、ヤード焼結鉱(一時的にヤードに貯留され、雨水等に曝されたために含有水分率が高くなった焼結鉱)を対象としている。
0027
[実施形態1]
本発明の実施形態1について述べる。
0028
まず、図1に、本発明の実施形態1において利用する既存の一般的な焼結鉱の処理ライン10を示す。
0029
図1に示すように、この焼結鉱の処理ライン10は、焼結鉱を製造する焼結機1と、焼結機1で製造された高温(例えば、500〜800℃)の焼結鉱を破砕して粒度調整を行うためのクラッシャー2と、クラッシャー2で粒度調整された焼結鉱を所定の温度(例えば、100℃〜200℃)に冷却するクーラー装置3を備えている。
0030
そして、ここでは、クーラー装置3は、第1ゾーンの#1クーラーファン(#1CF)4、第2ゾーンの#2クーラーファン(#2CF)5、第3ゾーンの#3クーラーファン(#3CF)6、第4ゾーンの#4クーラーファン(#4CF)7の4台のクーラーファンを備えている。
0031
また、クーラー装置3には、必要に応じて、焼結鉱をクーラー装置4で冷却した際に排出される高温の空気を取込んで蒸気を回収する排熱回収装置(ボイラー)8が取り付けられており、ここでは、クーラー装置3の第1ゾーンにボイラー8が取り付けられている。
0032
したがって、ここでは、第1ゾーンが排熱回収ゾーン、第2ゾーン〜第4ゾーンが非排熱回収ゾーンということになる。
0033
なお、ここでは、焼結機1で製造された後、クラッシャー2を経由して、クーラー装置3で冷却される高温の焼結鉱を新生焼結鉱と呼ぶことにする。
0034
次に、図2に、本発明の実施形態1における焼結鉱の処理ライン10Aを示す。
0035
図2に示すように、本発明の実施形態1における焼結鉱の処理ライン10Aでは、上記の焼結鉱の処理ライン10を利用して、ヤード焼結鉱をクーラー装置3に装入し、クーラー装置3内をトラフ(図示せず)に搭載されて通過する新生焼結鉱の顕熱によってヤード焼結鉱を乾燥するようにしている。
0036
その際、排熱回収装置であるボイラー8には影響を及ぼさないように、排熱回収ゾーン(ここでは、第1ゾーン)の下流側(ここでは、第2ゾーンと第3ゾーンの間)にヤード焼結鉱を装入するようにする。
0037
もちろん、クーラー装置3に排熱回収装置(ボイラー)8が取り付けられていない場合は、ヤード焼結鉱の装入位置について上記のように限定する必要は無い。
0038
そして、一般的なクーラー装置では、各ゾーンの上部に吸引式のクーラーファンが設置されていて、各ゾーンでは空気が下方から上方に向かって流れる上昇気流となるので、トラフに搭載された新生焼結鉱の層の上に直接ヤード焼結鉱の層を形成するようにして、新生焼結鉱で加熱された空気(熱風)によって直接ヤード焼結鉱を加熱乾燥させるようにする。
0039
なお、上部に吸引式のクーラーファンが設置されているのに替えて、下部に押込み式のクーラーファンが設置されている場合があるが、その場合も、各ゾーンでは空気が下方から上方に向かって流れる上昇気流となるので、上記と同様に、トラフに搭載された新生焼結鉱の層の上に直接ヤード焼結鉱の層を形成するようにすれば、新生焼結鉱で加熱された空気(熱風)によって直接ヤード焼結鉱を加熱乾燥させることができる。
0040
また、ヤード焼結鉱をクーラー装置3に装入する際には、ヤード焼結鉱の装入位置(排熱回収ゾーンの下流側)の上部にホッパーを設け、ヤード焼結鉱をベルトコンベアによりクーラー装置3の内部へ供給すればよい。クーラー装置3の内部は、押し込みのクーラーファンであれば正圧、吸引式のクーラーファンであれば負圧が生じるため、ヤード焼結鉱の切り出しは、エプロンフィーダー等を用いて行うとよい。
0042
続いて、上述したヤード焼結鉱の乾燥方法について、実験とシミュレーション計算により乾燥特性を検討した結果について述べる。
0044
まず、ヤード焼結鉱の乾燥に必要な熱量は、下記の式(1)を用いて算出することができる。ここで、式(1)における記号が意味するパラメータと単位は、表1に示す通りである。そして、式(1)において、右辺第1項はヤード焼結鉱の昇温に必要な顕熱、右辺第2項はヤード焼結表面に存在する水分の昇温に必要な顕熱、右辺第3項はヤード焼結鉱表面に存在する水分の蒸発潜熱をそれぞれ表している。
0045
0046
0047
例えば、式(1)における各パラメータが表1に示すような値の場合は、式(1)より、含水率2質量%のヤード焼結鉱100t/hr(内訳:ヤード焼結鉱乾量98t/hr、水分量2t/hr)を乾燥させるのに必要な熱量は、2924Mcal/hrと計算される。
0048
次に、ヤード焼結鉱が熱風から受取る熱量を算出する。その際には、ヤード焼結鉱の乾燥特性(単位面積伝熱量)より算出する。上述したような、新生焼結鉱の層の上に形成されたヤード焼結鉱の層について、単位面積当たりどれだけ熱量を受け取れるか、すなわち、単位面積伝熱量の値はどの程度か、実験によって検証する必要がある。
0049
まず、実際のヤード焼結鉱の粒度分布を再現し表面を湿らせた模擬ヤード焼結鉱の層を準備した。次に、実験機を用いて模擬ヤード焼結鉱層の下部より熱風を吹き込ませ、随時模擬ヤード焼結鉱層の質量を測定した。質量の変化は、模擬ヤード焼結鉱層が熱風より熱を受け取って表面の水分を蒸発させたことに相当するため、式(1)を用いて模擬ヤード焼結鉱層が前回質量測定から今回質量測定の間に受取った熱量を算出した。その熱量を時間と通気面積で割った物理量が単位面積伝熱量であり、その値を図3にまとめた。一般的に、粒状物が層状になった充填層の単位面積伝熱量αは層厚Lのべき乗に比例すると言われているため(詳細は、後述する)、べき乗近似を用いて、ヤード焼結鉱層の単位面積伝熱量αとヤード焼結鉱層の層厚Lとの関係を、図3中に記載したような実験式にまとめた。
0051
ヤード焼結鉱の嵩比重は2.3のため、図4に示す乾燥モデルにおけるヤード焼結鉱層の質量は1m×2.4m×0.2m×2.3t/m3=1.1tonとなる。含水量2質量%(実績水分量MAX)とすれば、この乾燥モデルに含まれている水分量は22kgとなり、含水量0.3質量%まで乾燥させるのに必要な熱量Q1は、上記の式(1)を用いて算出すると、Q1=28.7MCalとなる。
0052
一方、実機で想定されるヤード焼結鉱の乾燥条件は、層厚200mm、風速1m/s、熱風温度150℃であるので、図3より、その際の単位面積伝熱量は54.0Mcal/(m2・hr)となる。図4に示す乾燥モデルにおいて、ヤード焼結鉱面積2.4m2に150℃の熱風を1m/sで通気させた際に、熱風からヤード焼結鉱層に与えられる熱量(伝熱総量)Q2は、上記の単位面積伝熱量(54.0MCal/(m2・hr))を用いて次のように算出できる。Q2=54.0MCal/(m2・hr)×2.4m2×1/3hr=43.2MCalとなる。
0053
したがって、乾燥に必要な熱量(Q1=28.7MCal)に対して、1.5倍の熱量(Q2=43.2MCal)をヤード焼結鉱層に与えることができるため、上記の条件の下では、ヤード焼結鉱の乾燥が十分に可能であることが確認された。
0054
逆に言えば、上記の手法を用いて、ヤード焼結鉱層の乾燥に必要な熱量Q1と、ヤード焼結鉱層に与えられる熱量Q2とを比較して、Q2≧Q1となるように、ヤード焼結鉱の装入量等を調整すればよいことになる。
0055
ここで、前述した、充填層の単位面積伝熱量αは層厚Lのべき乗に比例することについて説明する。
0057
0058
式(3)を式(2)に代入し、単位面積伝熱量αについて整理すると、式(4)を得る。
0059
0060
次に、図5のような充填層(最大層厚L0)を通過する流体の流速(層厚L1の位置での流速U)は、流体が初期に有していたエネルギーから流体が充填層を通過する際に生じる圧力損失を引くことで表現することができる(式(5)、(6))。
0061
0062
次に、充填層内の圧力損失を算出するErgunの式(式(7)、式(8))を式(5)に代入して整理すると、式(9)となる。
0063
0064
式(9)を式(4)に代入すると、式(10)を得る。
0065
0066
式(10)より、単位面積伝熱量αは層厚Lのべき乗と定数の和で表される。
0067
このようにして、この実施形態1においては、既存の一般的な焼結鉱の処理ラインを利用して、新生焼結鉱の顕熱によってヤード焼結鉱を乾燥するようにしているので、上記の特許文献1のような新たな熱源やダクト配管の設置が不要であり、ヤード焼結鉱を安価で効率的に乾燥することができる。
0068
これによって、乾燥された後のヤード焼結鉱においては、水分による粒状ヤード焼結鉱への粉状ヤード焼結鉱の付着が大幅に解消されるため、篩等により粒度調整をおこなった際に、粒状ヤード焼結鉱から粉状ヤード焼結鉱を的確に分離除去することができる。また、乾燥された後のヤード焼結鉱は篩の網に付着することもないため、篩の目詰まりの原因となることもない。
0069
その結果、高炉への粉状焼結鉱の持込量を減少することが可能となり、高炉内のガス流を適正化して、高炉の操業安定と高炉内に投入する熱量の低減にも大きく寄与することができる。
0070
[実施形態2]
本発明の実施形態2について述べる。
0071
図6に、本発明の実施形態2における焼結鉱の処理ライン10Bを示す。
0072
図6に示すように、本発明の実施形態2における焼結鉱の処理ライン10Bでは、上記の焼結鉱の処理ライン10を利用して、ヤード焼結鉱をクラッシャー2に装入し、新生焼結鉱の顕熱によってヤード焼結鉱を乾燥するようにしている。
0073
すなわち、クラッシャー2に装入されたヤード焼結鉱は、新生焼結鉱と混合された状態でクーラー装置3に投入されることになり、クラッシャー2およびクーラー装置3において新生焼結鉱からの熱伝導によって乾燥される。加えて、クーラー装置3の排熱回収装置(ボイラー)8で排熱回収された後の排ガスによっても乾燥される。
0074
これによって、実施形態2においても、上記の実施形態1と同様に、既存の一般的な焼結鉱の処理ラインを利用して、新生焼結鉱の顕熱によってヤード焼結鉱を乾燥するようにしているので、上記の特許文献1のような新たな熱源やダクト配管の設置が不要であり、ヤード焼結鉱を安価で効率的に乾燥することができる。
0075
これによって、乾燥された後のヤード焼結鉱においては、水分による粒状ヤード焼結鉱への粉状ヤード焼結鉱の付着が大幅に解消されるため、篩等により粒度調整をおこなった際に、粒状ヤード焼結鉱から粉状ヤード焼結鉱を的確に分離除去することができる。また、乾燥された後のヤード焼結鉱は篩の網に付着することもないため、篩の目詰まりの原因となることもない。
0076
その結果、高炉への粉状焼結鉱の持込量を減少することが可能となり、高炉内のガス流を適正化して、高炉の操業安定と高炉内に投入する熱量の低減にも大きく寄与することができる。
0077
なお、上記の実施形態1、2では、乾燥対象とする高炉原料としてヤード焼結鉱を例にして述べたが、他の高炉原料(鉄鉱石、塊コークス等)を乾燥する場合にも適用することができる。
0078
1焼結機
2クラッシャー
3クーラー装置
4 #1クーラーファン
5 #2クーラーファン
6 #3クーラーファン
7 #4クーラーファン
8ボイラー
10焼結鉱の処理ライン
10A 焼結鉱の処理ライン
10B 焼結鉱の処理ライン
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