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技術 光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法および光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置

出願人 学校法人東京薬科大学有限会社メビウスアドバンストテクノロジー株式会社ヒキフネ
発明者 東海林敦辺見彰秀鈴木昌史
出願日 2016年2月1日 (4年11ヶ月経過) 出願番号 2016-017416
公開日 2017年8月10日 (3年4ヶ月経過) 公開番号 2017-137522
状態 特許登録済
技術分野 光学的手段による材料の調査、分析 化学的被覆
主要キーワード 微小センサ 光強度測定器 グラフ線 ニッケル無電解めっき 生化学センサー 生体高分子間 ベットサイド 露出長
関連する未来課題
重要な関連分野

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図面 (20)

課題

円柱形光ファイバーコアの表面に、表面プラズモン共鳴誘起させるための適切な厚さの金属薄膜を形成することができる光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を提供する。

解決手段

光ファイバー200の一端部250のコア201を露出させる段階と、露出させたコア201を含む一端部250を無電解めっき液101に浸漬する段階と、一端部250の方向へ光源103から光を入射させて、一端部250から反射してくる反射光の強度を分光計104で測定する段階と、測定された反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で一端部250を無電解めっき液101から引き上げる段階と、を有することを特徴とする光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

概要

背景

光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)センサーは、光ファイバーのコア金属ナノ薄膜(光の波長以下の厚さ)を形成させた構造である。そして光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、光ファイバーに白色光または特定の波長の光を入射することで表面プラズモン共鳴を誘起させる。この現象を利用した光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは溶液屈折率測定だけでなく、イムノアッセイ生体高分子間相互作用解析に応用されている。

このような光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、プリズムを使用した表面プラズモン共鳴センサーと比較してセンサーの微小化が可能である。生体微小空間の科学が注目されている現在において、生化学センサーの微小化は重要課題の一つである。

しかしながら、光ファイバーは円柱状形状であるため、コアに金属薄膜を均一に形成させることは容易でない。従来は、薄膜の形成に多く利用されている真空蒸着装置スパッタ装置を使用してコアに薄膜を形成している。また、めっき法を利用することも考えられている(特許文献1)。

概要

円柱形の光ファイバーのコアの表面に、表面プラズモン共鳴を誘起させるための適切な厚さの金属薄膜を形成することができる光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を提供する。光ファイバー200の一端部250のコア201を露出させる段階と、露出させたコア201を含む一端部250を無電解めっき液101に浸漬する段階と、一端部250の方向へ光源103から光を入射させて、一端部250から反射してくる反射光の強度を分光計104で測定する段階と、測定された反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で一端部250を無電解めっき液101から引き上げる段階と、を有することを特徴とする光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

目的

生体微小空間の科学が注目されている現在において、生化学センサーの微小化は重要課題の一つである

効果

実績

技術文献被引用数
0件
牽制数
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請求項1

光ファイバーの一端部のコア露出させる段階と、前記一端部を無電解めっき液に浸漬する段階と、前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部から反射してくる反射光の強度を測定する段階と、前記測定された前記反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で前記一端部を前記無電解めっき液から引き上げる段階と、を有することを特徴とする光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

請求項2

前記反射光の強度を前記測定する段階において、前記光ファイバーの前記一端部の方向へ入射させる光は、めっきする金属が反射する波長を含み、前記反射光の強度は、前記めっきする金属が反射する波長の強度を前記測定することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

請求項3

前記めっきする金属は金であり、前記測定する波長は300〜1050nmであることを特徴とする請求項2に記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

請求項4

前記金をめっきする際は、前記光ファイバーの前記一端部のコアを露出させる段階の後、第1段階として、前記一端部をニッケルめっき用の無電解めっき液に浸漬する段階と、前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部からの反射光の強度を測定する段階と、前記反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で前記一端部を前記ニッケルめっき用の無電解めっき液から取り出す段階と、を実行し、第2段階として、前記ニッケルめっきされた前記光ファイバーの前記一端部を金めっき用の無電解めっき液に浸漬する段階と、前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部からの反射光の強度を測定する段階と、前記反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で前記一端部を前記金めっき用の無電解めっき液から引き上げる段階と、を実行することを特徴とする請求項3に記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

請求項5

前記無電解めっき液から引き上げる段階は、前記反射光の強度に代えて、前記光ファイバーの前記一端部を前記無電解めっき液に浸漬する前の空気中において前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部から反射した前記反射光の強度を測定することで前記空気中における反射光の強度を得ておき、前記無電解めっき液中の反射光の強度と前記空気中の反射光の強度とから、下記(1)式により反射率を算出し、反射率=(無電解めっき液中における反射光の強度)/(空気中における反射光の強度)…(1)前記反射率があらかじめ決められた反射率の所定値に達した時点で前記一端部を前記無電解めっき液から引き上げることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法。

請求項6

無電解めっき液を入れるめっき槽と、前記無電解めっき液に浸漬する光ファイバーの一端部の方向へ光を入射させる光源と、前記一端部からの反射光を受光して、前記反射光の強度を測定する光強度測定器と、を有することを特徴とする光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置

請求項7

前記光源は、めっきする金属が反射する波長を含む光を発光するものであり、前記光強度測定器は、前記めっきする金属が反射する波長の強度を前記測定する分光計であることを特徴とする請求項6に記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置。

請求項8

前記めっきする金属は金であり、前記分光計は550〜650nmの波長の強度を前記測定するものであることを特徴とする請求項7に記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置。

請求項9

前記光ファイバーの前記一端部を前記無電解めっき液に浸漬する前の空気中において前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部から反射した反射光の強度を前記光強度測定器により測定して得られた前記空気中における反射光の強度を記憶し、前記光ファイバーの前記一端部を前記無電解めっき液に浸漬後、前記光強度測定器によって測定された前記無電解めっき液中の反射光の強度と、前記空気中の反射光の強度とから下記(1)式により反射率を算出する演算器を、反射率=(無電解めっき液中における反射光の強度)/(空気中における反射光の強度)…(1)さらに有することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置。

技術分野

0001

本発明は、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法および光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置に関する。

背景技術

0002

光ファイバー表面プラズモン共鳴(SPR:Surface Plasmon Resonance)センサーは、光ファイバーのコア金属ナノ薄膜(光の波長以下の厚さ)を形成させた構造である。そして光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、光ファイバーに白色光または特定の波長の光を入射することで表面プラズモン共鳴を誘起させる。この現象を利用した光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは溶液屈折率測定だけでなく、イムノアッセイ生体高分子間相互作用解析に応用されている。

0003

このような光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、プリズムを使用した表面プラズモン共鳴センサーと比較してセンサーの微小化が可能である。生体微小空間の科学が注目されている現在において、生化学センサーの微小化は重要課題の一つである。

0004

しかしながら、光ファイバーは円柱状形状であるため、コアに金属薄膜を均一に形成させることは容易でない。従来は、薄膜の形成に多く利用されている真空蒸着装置スパッタ装置を使用してコアに薄膜を形成している。また、めっき法を利用することも考えられている(特許文献1)。

先行技術

0005

特願平10−153605号公報

発明が解決しようとする課題

0006

しかしながら、真空蒸着装置やスパッタ装置を用いる場合、光ファイバーは円柱状形状であるため、均一な薄膜を得るためには真空チャンバー内回転装置を設置して、光ファイバーを回転させながら成膜する必要がある。このため、装置が大型化し、かつ多大な労力と費用を要する。このため光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、市場に出回ることなく、研究室ベルの間に留まっていた。また、めっき法を用いるとしても、単にめっき液に浸漬するというだけでは膜厚の制御もできず、ましてや表面プラズモン共鳴を得るために適した厚さの薄膜を得るための条件や操作方法などは確立されていない。

0007

そこで、本発明の目的は、無電解めっき法を用いて、円柱形の光ファイバーのコアの表面に、表面プラズモン共鳴を誘起させるための適切な厚さの金属薄膜を形成することができる光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を提供することである。

0008

また、本発明の他の目的は、円柱形の光ファイバーのコアの表面に、表面プラズモン共鳴を誘起させるための適切な厚さの金属薄膜を形成することができる光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置を提供することである。

課題を解決するための手段

0009

本発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究の結果、無電解めっきによって光ファイバーのコアに金属薄膜が形成されると、光ファイバーに入射させた光が形成中の金属薄膜によって反射し、しかもその反射光の強度が金属薄膜の厚さに応じて変化することを見出し本発明に至った。

0010

すなわち、上記目的を達成するための本発明の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法は、光ファイバーの一端部のコアを露出させる段階と、前記一端部を無電解めっき液に浸漬する段階と、前記光ファイバーの前記一端部の方向へ光を入射させて、前記一端部から反射してくる反射光の強度を測定する段階と、前記測定された前記反射光の強度があらかじめ決められた所定値に達した時点で前記一端部を前記無電解めっき液から引き上げる段階と、を有することを特徴とする。

0011

また、上記目的を達成するための本発明の光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置は、無電解めっき液を入れるめっき槽と、前記無電解めっき液に浸漬する光ファイバーの一端部の方向へ光を入射させる光源と、前記一端部からの反射光を受光して、前記反射光の強度を測定する光強度測定器と、を有することを特徴とする。

発明の効果

0012

本発明によれば、光ファイバーの露出させたコア部分を無電解めっき液に浸漬するとともに、その一端部の方向へ光を入射させて、一端部からの反射光の強度を測定して、反射光の強度が所定値になった時点で無電解めっき液から光ファイバーを引き上げることとした。これにより表面プラズモン共鳴に適した厚さの金属薄膜をコアの表面に形成することができる。

図面の簡単な説明

0013

光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置の構成を示す概略図である。
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を説明するための概略側面図である。
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を説明するための概略側面図である。
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を説明するための概略側面図である。
金属薄膜形成前の光ファイバーの一端部からの反射光を説明するための模式図である。
金属薄膜形成中の光ファイバーの一端部からの反射光を説明するための模式図である。
金めっきされた一端部の部分断面斜視図である。
めっき工程の反応説明図である。
空気中における反射光の強度(Iblank)を示すグラフである。
ニッケルめっき中の反射光の強度(It)を示すグラフである。
ニッケルめっき中の反射率を示すグラフである。
ニッケルめっき中の波長460nmと600nmにおける反射率の時間変化を示すグラフである。
金めっき中の反射光の強度(It)のうちめっき開始から0〜8秒の間を示すグラフである。
金めっき中の反射光の強度(It)のうちめっき開始から9〜39秒の間を示すグラフである。
金めっき中のめっき開始から0〜8秒の間の反射率を示すグラフである。
金めっき中のめっき開始から9〜39秒の間の反射率を示すグラフである。
金めっきされる過程を示した模式図である。
金めっき中の波長460nmと600nmにおける反射率の時間変化を示すグラフである。
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる空気中および水中における反射光の強度を測定した結果を示すグラフである。
光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる水中における反射光の強度を空気中における反射光の強度で規格化した結果を示すグラフである。
めっき工程の際に得られた反射光の反射率と表面プラズモン共鳴との関係を示すグラフである。
異なる濃度のスクロースの光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる測定結果規格値を示すグラフである。
規格値によって得られた最も減衰した波長とスクロース濃度の関係を示すグラフである。

0014

以下、適宜図面を参照しながら、本発明の一実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態のみには制限されない。なお、各図面は説明の便宜上誇張されて表現されており、各図面における各構成要素の寸法比率が実際とは異なる場合がある。また、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明した場合では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。

0015

<光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置>
本発明の実施形態に係る光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置について説明する。光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置は無電解めっきを利用して、光ファイバーの先端から露出させたコアに、表面プラズモン共鳴を誘起させる適切な厚さの金属薄膜を形成するための装置である。

0016

図1は、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置の構成を示す概略図である。

0017

光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置100は、無電解めっき液101を入れるめっき槽102と、光ファイバー200へ光を入射させる光源103と、光ファイバー200の一端部250からの反射光を受光して、反射光の強度を測定する分光計104と、分光計104によって測定された波長ごとの反射光の強度を分析し、また画面に表示するためのパソコン105と、を有する。

0018

光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法に用いる光ファイバー200は、その一端部250においてコア201が露出されている。そして露出されているコア201の表面へ金属薄膜を形成するために、このコア201を含む部分が無電解めっき液101に浸漬される。

0019

めっき槽102は、無電解めっき液101を入れる容器であり、無電解めっき液101に対しての耐性があればどのような容器でもよい。無電解めっき液101の詳細については後述する。

0020

光源103は、めっきする金属が反射する波長を含む光を発光する。たとえば、白色光のような可視光波長帯域を含む光であってもよいし、めっきする金属が反射する特有の波長のみを発光するものでもよい。たとえば、白色LEDなどを使用可能である。また、測定波長だけでよければレーザー光源を使用してもよい。たとえば光ファイバー200の長さが長い場合、レーザー光を用いた方が減衰を少なくできる。もちろん白色光を用いて反射光の強度を測定が可能であればレーザーを用いる必要はない。光源103からの光は、無電解めっき液101に浸漬される光ファイバー200の一端部250方向へ入射される。

0021

分光計104(スペクロトメーター)は、光強度測定器となるものである。分光計104は、波長ごとの光の強度を測定し、その結果を出力する。

0022

パソコン105(演算器)は、分光計104からの波長ごとの強度測定結果を取得して、たとえば波長(または周波数)ごとの強度をグラフ化したり、時間経過と共に変化する光の強度をグラフ化したりする。また、パソコン105は、後述する反射率の算出や、あらかじめ決められた波長の強度(または反射率)が、同様にあらかじめ決められた所定値に達した時点で、ユーザーにそれを知らせるなどの処理を行う演算器となる。

0023

<光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法>
上記光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置100を用いた光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法について説明する。

0024

この光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法に用いる光ファイバー200は、2分岐形状(図1参照)のものである。このような形態の光ファイバー200を用いることで、光源103からめっきを行う一端部250の方向へ光を入射させつつ、同時に一端部250からの光の反射を分光計104で測定することができる。なお、光ファイバー200の形態はこのような2分岐形態に限定されるものではない。光源103から一端部250の方向へ光を入射させつつ、同時に一端部250からの光の反射を分光計104で測定することができればどのような形態であってもよい。たとえば、分岐のない光ファイバー200に光分岐結合器を取り付けて用いることもできる。具体的には、分岐のない光ファイバー200の無電解めっき液101に浸漬する一端部250とは反対側の端部に、光分岐結合器を取り付ける。そして、光分岐結合器の一つの口から光ファイバー200内に光を入射させるとともに、光分岐結合器の他の口から一端部250からの反射光を取り出して分光器により測定する。

0025

図2〜4は光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造方法を説明するための概略側面図である。

0026

ここでは、表面プラズモン共鳴を誘起させる金属として金薄膜をコア201の表面に形成する場合を例に説明する。金薄膜を形成する場合は、2段階の無電解めっきにより行う。第1段階でニッケルめっきを行い、第2段階でニッケルを金で置換することにより金めっきを行う。このような無電解めっきを置換めっきともいう。

0027

ここで図2を参照して、光ファイバー200の構造を説明する。光ファイバー200の構造は、周知のとおり、中心からコア201、コア201を覆うクラッド202、全体を覆っているジャケット203からなる。コア201およびクラッド202は多くの場合、石英製であり、コア201とクラッド202は屈折率が異なる。ジャケット203は樹脂製である。なお、光ファイバー200の素材はどのようなものでもよく、たとえば、コア201を含めてすべて樹脂製の、いわゆるプラスチック光ファイバーでもよいし、コア201のみ石英でクラッド202は樹脂製の光ファイバー200などでもよい。

0028

このような構造の光ファイバー200は、元々は、コア201が露出していない。このため、図2に示すように、ジャケット203の一部と、クラッド202の一部を除去して、光ファイバー200の一端部250のコア201を露出させる。

0029

コア201の露出量は、使用する光ファイバー200の太さ(コア201の直径)にもよるが、たとえばコア201の直径Dが125〜400μmの場合、露出長さLは2〜10mmである。このような露出量とする理由は均一にニッケルおよび金の薄膜を形成させるためである。

0030

次に、第1段階のめっき工程としてニッケルの無電解めっきを行う。ニッケルの無電解めっきを行うには、まず、露出させたコア201の表面を前処理する。これはニッケルをコア201の表面で析出しやすくし、かつ、めっきされた金属(最終的にめっきされる金薄膜を含めて)の密着性や強度を高くするためである。前処理の方法は後述する。前処理を行うことで、密着性や耐久性が向上することになるが、前処理がなくてもめっき自体は可能であるので、必ずしも必要な処理ではない。

0031

その後、図3に示すように、露出させたコア部分を含む光ファイバー200の一端部250をニッケル無電解めっき液に浸漬する。このとき使用するニッケルめっき用の無電解めっき液101としては、たとえば以下のとおりである。

0032

ニッケル源は、たとえば硫酸ニッケル塩酸ニッケルなどを使用する。還元剤は、たとえば次亜リン酸塩ヒドラジン水素化ホウ素などを使用する。そのほかの添加剤として、安定剤(重金属(たとえば鉛(Pb)、ビスマス(Bi))、有機化合物硫黄等)、pH調整剤水酸化ナトリウムアンモニア硫酸等)、錯化剤クエン酸リンゴ酸グリシンエチレンジアミン四酢酸酢酸プロピオン酸グリコール酸乳酸)、界面活性剤などを単独でまたはこれらを組み合わせて用いてもよい。また、無電解めっき液101の温度は常温(たとえば20〜30℃程度)でよい。

0033

光ファイバー200の一端部250を無電解めっき液101に浸漬するときには、その少し前から、光源103から光ファイバー200内へ光を入射させる。そして、光の入射と共に分光計104による測定も実行する。つまり、空気中に出ている状態で反射光の強度を測定しておくのである。これを空気中における反射光の強度(Iblank)として記録する。ここではパソコン105に記録(パソコン105内の記憶装置に記憶)しておく。

0034

その後、光ファイバー200を無電解めっき液101に浸漬する。このとき露出しているコア部分の表面全体に確実にめっきを施すために、ジャケット203の一部が無電解めっき液101に浸かってしまってもかっても差し支えない。

0035

そして浸漬開始から、一端部250からの反射光の強度を測定する。これを無電解めっき液中における反射光の強度(It)という。この反射光の強度から反射率を求める。反射率は、下記(1)式のとおりである。

0036

反射率=(無電解めっき液中における反射光の強度(It))/(空気中における反射光の強度(Iblank)) …(1)
反射率の計算はパソコン105によって行われる。したがって、パソコン105は、無電解めっき液101に光ファイバー200を浸漬後、時々刻々と変化してくる反射光の強度の測定値からリアルタイムで反射率を算出するのである。反射率の計算結果は、後から見られるように記憶しておいてもよい。

0037

光ファイバー200を無電解めっき液101に浸漬中に反射率があらかじめ決めた反射率の所定値となった時点で、光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げる。この引き上げのタイミングについても、あらかじめ引き上げる反射率の所定値をパソコン105に記憶させておいて、反射率の算出結果がこの反射率の所定値に到達した時点で、音声色変化文字表示(さらにこれらを組み合わせて)などによりユーザーに知られるようにしておいてもよい。また、光ファイバー200をロボットアームなどによって支持し、浸漬開始から引き上げまでの動作をパソコン105などで制御して自動化してもよい。もちろん、ユーザーが反射率の算出結果を目視して、引き上げタイミングを見計らって手動で行ってもよい。

0038

これにより、第1段階のニッケルめっきが終了する。引き上げ後水洗を行って乾燥させると、図4に示すように、光ファイバー200の一端部250にニッケルの金属薄膜210が所定の厚さとなって形成される。

0039

このとき形成されるニッケル薄膜の厚さ(図4のTm部分)は、最終的に形成予定の金薄膜の厚さと同じかわずかに厚くするが好ましい。金薄膜のめっきはニッケルを置換することにより行われる。このため、最終的に形成される金薄膜の厚さはニッケル薄膜の厚さに依存する。ニッケル薄膜が薄いと金薄膜も薄くなってしまうので、ニッケル薄膜の厚さは金薄膜と同じか、わずかに厚く形成しておくのである。ただし、あまりにもニッケル薄膜の厚さが厚いと、金めっきしたときに金は所望の厚さとなっているが、さらにニッケル層が残ることになる。そうすると表面プラズモン共鳴がうまく誘起されないこともある。このため、ニッケル薄膜の厚さは、所望する金薄膜の厚さが形成されるとともに、表面プラズモン共鳴を阻害しない厚さにする必要がある。このような観点からニッケル薄膜の厚さは、たとえば、金薄膜を30〜80nm形成する場合は、ニッケルを30〜80nm形成することが好ましいものとなる。このような金薄膜の厚さは、厚さの実数に意味があるのではなく、あくまでも光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーとして表面プラズモン共鳴が誘起されるか否かということである。したがって、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの用途に合わせて、表面プラズモン共鳴が起きやすい金属薄膜210の厚さとなっていればよい。

0040

形成される金属薄膜210の厚さは、反射光の強度から得られた反射率と相関がある。

0041

図5は金属薄膜形成前の光ファイバー200の一端部250からの反射光を説明するための模式図であり、図6は金属薄膜形成中の光ファイバー200の一端部250からの反射光を説明するための模式図である。

0042

コア201の表面に金属薄膜210が形成される前(すなわち空気中)は、図5に示すように、一端部250方向へ入射された光のうち、ほとんどの光Ltは露出されているコア201から放出されてしまう。しかし、一部は、コア201の端面で反射して戻る光Lrが存在する。金属薄膜形成前の状態で、どれほどの光が戻るかは、光ファイバー200のコア端面(先端部、円柱ぶを含めて)の極めて微細表面形状の違いによって個体差がある。また、反射光の強度については、光ファイバー200全体の光透過損失、光源103および分光計104と光ファイバー200との接続損失などによって違ってくることもある。

0043

一方、コア201の表面に金属薄膜210が形成されると、図6に示すように、コア201の表面に付着した金属薄膜210によって光Lrrが反射して光ファイバー200内を戻るようになる。このとき金属薄膜210の厚さが薄いときには、一部の光Lttは依然として金属薄膜210を透過してしまう。そして金属薄膜210の厚さが厚くなるにつれて、光Lrrの反射量が多くなる(金属薄膜210を透過してしまう光が少なくなる)。このためコア201の表面に形成される金属薄膜210の厚さが厚くなるに連れて反射光の強度も強く出てくるようになるのである。したがって、事前に表面プラズモン共鳴が起きやすい膜厚(所望の膜厚)と反射光の強度(または反射率)との関係を求めておくことで、そのような反射光の強度(または反射率)となった時点で光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げれば、所望の膜厚が得られることになるのである。

0044

ここで光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げるタイミングとして、反射率を用いる理由を説明する。原理的には、金属薄膜210が厚くなるに連れて反射光の強度は強くなるので反射光の強度と膜厚との相関関係を取って、反射光の強度が所定値に達した時点で光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げるようにしてもよい。しかし、既に説明したように、光ファイバー200には個体差があり、また、測定系全体として光ファイバー200と光源103および分光計104の接続損失などの影響もある。このような個体差や測定系の微妙な違いは、めっき前の状態、すなわち空気中で光ファーバーの一端部250の方向へ光を入射してその反射光の強度を測定することで、反射光の強度の違いとなって現れる。

0045

そこで、既に説明した(1)式のとおり、無電解めっき液中における反射光の強度を空気中での反射光の強度で規格化した反射率を使うことで、光ファイバー200の個体差を少しでも吸収して、センサー製造の材料となる多くの光ファイバー200で同じように所望する金属薄膜210の厚さが得られる引き上げタイミングを見ることができるようにしたのである。また、反射率を使用することで、光源103の経時変化やそのほかの外乱における光量の変化なども吸収することができる。

0046

次に、2段階のめっき工程として金の無電解めっき行う。このとき使用する無電解めっき液101としては、たとえば以下のとおりである。

0047

金源はたとえばシアン化金カリウム亜硫酸金ナトリウムである。錯化剤はたとえば亜硫酸チオ硫酸チオリンゴ酸エタンチオールチオシアン酸である。そのほかの添加剤としてはたとえば、リン酸塩や水酸化ナトリウムがある。なお、無電解めっき液温度は60〜90℃程度でよい。

0048

この金めっき用の無電解めっき液101にニッケルめっきされている一端部250を浸漬する(このときの状態は図3と同じであるので図示省略する)。そして、浸漬と同時に(浸漬前からでもよい)光源103から一端部250の方向へ光を入射させるとともに、分光計104による測定を開始する。このときパソコン105によって、測定された反射光の強度から反射率が算出される。反射率の算出は、(1)式と同じである。この第2段階目において反射率の算出に使用する「空気中における反射光の強度(Iblank)」は、第1段階のニッケルめっき前に測定して記録した値を用いる。

0049

反射率の値が、金薄膜の厚さとして所望する値に対応する所定値となったら、光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げる(引き上げ後の状態は図4と同様である)。この引き上げのタイミングは、第1段階同様、パソコン105によって算出している反射率があらかじめ決められた所定値となった時点で、音声や表示などによりユーザーに知らせるようにしてもよいし、ロボットを用いて自動化してもよい。

0050

これにより、第2段階目の金めっきが終了する。引き上げ後、水洗を行って乾燥させると、光ファイバー200の一端部250に金の金属薄膜210が所定厚さとなるように形成されることになる。

0051

図7は、金めっきされた一端部250の部分断面斜視図(露出されたコア部分を断面にして示した)である。

0052

図示するように、露出されたコア201からジャケット203の一部にまで(すなわち無電解めっき液101に浸かっていた部分)、金属薄膜210として金メッキが施されることになる。コア201の表面に形成される金薄膜の厚さ(図4のTm部分)は既に説明したとおり、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの用途に合わせて、様々な厚さにすればよい。

0053

ここで第1段階のニッケルめっきから第2段階の金めっきまでの反応について説明する。図8は、めっき工程の反応説明図である。

0054

まず、露出させたコア201(石英:SiO2)表面をシランカップリング材APS:(3−aminopropyl)trimethoxysilane)によって処理し、石英に末端官能基(NH2)を付着させる。なお、シランカップリング材は、(3−Mercaptopropyl)trimethoxysilaneも使用可能である。

0055

続いて、PdCl2溶液によりさらに表面処理を行うことで、Pdを付着させる。付着したPdは触媒となって、ニッケル(Ni)がコア201(SiO2)表面に析出しやすくなる。また、この表面処理を行うことで、コア201の表面の平滑性が損なわれることなく、ニッケル薄膜を形成することができる。

0056

この第1段階の反応式は以下のとおりである(ただし還元剤に次亜リン酸塩を用いた場合である)。

0057

[H2PO2]− →[PO2]−+2H(cat)
[PO2]−+H2O → [H2PO3]−
2H(cat) → H2↑
Ni2++2H(cat) → Ni+2H+ (ここでニッケルがコア201の表面に析出してめっきされる)
[H2PO2]−+H(cat)→ P+OH−+H2O
次に第2段階として金無電解めっき液に浸漬されることで、ニッケルが金に置き換わる。

0058

この段階の反応式は以下のとおりである。

0059

Ni+2e− →Ni2+
Au++e− → Au (ここでニッケルが金に置換されてコア201の表面に金がめっきされる)
このような2段階のめっき工程によって金薄膜がコア201(石英)の表面形成されるのである。

0060

本発明をさらに以下の実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。

0061

実施例として使用した2分岐の光ファイバー200である。この光ファイバー200の1本となっている部分の先端(一端部250)のコア201を露出させた。

0062

コア201は次のようにして露出させた。コア201の先端から3mmの長さでジャケットをリムーバーで除去した後、その部分のクラッド202をアセトンで除去した。

0063

露出させたコア部分は、直径Dが、400μm長さLが3mmである(DおよびLは図2参照)。

0064

次に、露出させたコア201の表面を前処理した。まず0.4%APS溶液に、先端から3mmの長さでコアを露出した光ファイバーを、1時間浸漬した。

0065

続いて、PdCl2溶液に露出させたコア部分を含む光ファイバー200の一端部250を1分間浸漬した。その後、純水洗浄を行った後、乾燥させた。

0066

これら前処理後、2分岐の光ファイバー200の分岐された一方に白色光の光源103を取り付け、分岐の他方には分光計104を取り付けた。分光計104からの測定値はパソコン105に取り込めるようにした(図1参照)。以降のめっき工程においても、光源103、分光計104、およびパソコン105の接続はそのまま用いた。

0067

空気中において、光ファイバー200内に光を入射させ、コア201を露出させた一端部250からの反射光の強度(Iblank)を測定した。測定波長は、400〜800nmである。測定値はパソコン105に取り込んだ。

0068

図9は、空気中における反射光の強度(Iblank)を示すグラフである。

0069

続いて、第1段階のめっき工程として、ニッケルめっき用の無電解めっき液101に、前処理した光ファイバー200の一端部250を浸漬した。使用したニッケルめっき用の無電解めっき液101の組成は、2.9%硫酸ニッケル、1%次亜リン酸ナトリウム、2%グリシン、2.7%クエン酸ナトリウムとした。

0070

ニッケルめっき用の無電解めっき液101への浸漬開始時から光ファイバー200へ光を入射させつつ、一端部250からの反射光の強度を測定した。

0071

図10は、ニッケルめっき中の反射光の強度(It)を示すグラフである。このグラフにおいて、複数のグラフ線は上の線ほど時間が経過した測定値である。

0072

図示するように、時間の経過と共に、反射光の強度が増加していることがわかる。そして、この時間ごと無電解めっき液中における反射光の強度(It)と、空気中における反射光の強度(Iblank)から反射率(反射率=It/Iblank)を算出した。

0073

図11は、ニッケルめっき中の反射率を示すグラフである。図11は波長400〜800nmにおける反射率を示したものであるが、なかでも約450〜650nmにおいて反射率の時間変化が大きく見られることがわかる。このことからニッケルめっきにおいては波長450〜600nmの光をよく反射していることがわかる。

0074

図12は、ニッケルめっき中の波長460nmと600nmにおける反射率の時間変化を示すグラフである。図示するように、両波長とも、同じように時間の経過と共に反射率が上昇しているのがわかる。このことから、ニッケルめっきの際には450〜650nmの間のどの波長を用いて測定しても、ニッケルが形成されてゆく過程での厚さがわかる。

0075

次に、第2段階のめっき工程として、金めっき用の無電解めっき液101に、ニッケルめっきを施した光ファイバー200の一端部250を浸漬した。使用した金めっき用の無電解めっき液101の組成は、次のとおりである。0.01mol/l亜硫酸金ナトリウム、0.32mol/l亜硫酸ナトリウム、0.08チオ硫酸ナトリウム、0.32mol/lリン酸水素ナトリウムを使用し、これらをNaOHでpHを9に調製した。

0076

金めっき用の無電解めっき液101への浸漬開始時から光ファイバー200へ光を入射させつつ、一端部250からの反射光の強度を測定した。

0077

図13は金めっき中の反射光の強度(It)のうちめっき開始から0〜8秒の間を示すグラフである。図14は金めっき中の反射光の強度(It)のうちめっき開始から9〜39秒の間を示すグラフである。図13のグラフにおいては複数のグラフ線は下の線ほど時間が経過した測定値である。一方、図14のグラフにおいては複数のグラフ線は上の線ほど時間が経過した測定値である。

0078

図示するように、時間の経過が8秒までは、時間の経過と共に反射光の強度が減少している。一方、9秒以降は時間の経過と共に、反射光の強度が増加している。

0079

そして、この時間ごと無電解めっき液中における反射光の強度(It)と、空気中における反射光の強度(Iblank)から反射率(反射率=It/Iblank)を算出した。

0080

図15は金めっき中のめっき開始から0〜8秒の間の反射率を示すグラフである。図16は金めっき中のめっき開始から9〜39秒の間の反射率を示すグラフである。図15のグラフにおいては複数のグラフ線は下の線ほど時間が経過した測定値である。一方、図16のグラフにおいては複数のグラフ線は上の線ほど時間が経過した測定値である。

0081

反射率においても、8秒までは時間の経過と共に反射率が減少している。一方、9秒以降は時間の経過と共に反射率が増加している。

0082

図17は、金めっきされる過程を示した模式図である。図17Aに示すように、コア201の表面に形成される金属薄膜210は、金めっき開始時はニッケル(Ni)だけである。この状態での金属薄膜の厚さをTm0とする。その後、図17Bに示すように、ニッケル(Ni)が金(Au)に置換されてゆく。このとき、全体の膜厚Tm1は一時的に薄くなる。これが0〜8秒の間に起きている。さらにその後、図17Cに示すように、金(Au)のめっき量が多くなってくるに従い、膜厚Tm2が厚くなって光を多く反射するようになる。これが9〜39秒の間に起きている。

0083

また、図13〜16から、約450〜650nmにおいて反射率の時間変化が大きく見られることがわかる。

0084

図18は、金めっき中の波長460nmと600nmにおける反射率の時間変化を示すグラフである。図示するように、波長460nmよりも、波長600nmの方が反射率の変化量が大きい。通常金は可視光領域である300〜1050nmにおいて反射光が認められるので、可視光領域の波長を用いればよいが、図18から、波長600nmの反射が多いことがわかる。したがって、金めっきの際には、可視光領域である300〜1050nmでもよいし、好ましくは550〜650nm、より好ましくは600nmの波長を測定することで金が形成されてゆく過程での厚さの変化がわかり易いものとなる。

0085

以上により、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーが出来上がったので、実際に表面プラズモン共鳴が誘起されてセンサーとして使用可能か否かを検証した。

0086

金メッキを施した光ファイバー200は無電解めっき液101から取り出した後、純水により洗浄し、乾燥させた。以下この金メッキを施した光ファイバー200を光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーという(以下では単にセンサーということもある)。

0087

乾燥後、空気中および水中において光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの反射光の強度を測定した。装置構成はめっきを行った際と同じでよいので、そのまま用いた。

0088

図19は、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる空気中および水中における反射光の強度を測定した結果を示すグラフである。

0089

ここで、空気中における反射光の強度を測定する理由を説明する。既にめっき工程の説明でもしたように、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、コア201における光の透過損失や光源103および分光計104との接続損失などの影響によって、光の透過量には個体差がある。そこで、このような個体差を吸収するために、下記(2)式のとおり、空気中における反射光の強度(Iair)を測定しておいて、サンプル中における反射光の強度(ここでは水(Iwater)を空気中における反射光の強度(Iair)で割ることで規格化するのである。

0090

規格化した反射光の強度=サンプル中における反射光の強度(Iwater)/空気中における反射光の強度(Iair) …(2)
これによりセンサーの測定結果に対して、センサーの個体差による影響をなくすことができる(または少なくする)。

0091

図20は、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる水中における反射光の強度を空気中における反射光の強度で規格化した結果を示すグラフである。図示するように、630nm付近に大きな谷がある。この谷部分極小値)が水を測定したときのプラズモン共鳴波長ということになる。

0092

次に、めっき工程の際に得られた反射光の反射率と表面プラズモン共鳴との関係を検証した。

0093

これには、第1段階のニッケルめっき工程において、波長460nmにおいて、反射率が1〜3となった時点でニッケルめっき用の無電解めっき液101から引き上げて、各サンプルセンサーを作製した。

0094

そして、各サンプルセンサーに対して、それぞれ第2段階における金めっき工程として、波長600nmにおいて、反射率が1.0、1.5、2.0となった時点で金めっき用の無電解めっき液101から引き上げて、引き上げ時の反射率の違うサンプルセンサーを作製した。

0095

そして、各サンプルセンサーについて、空気中および水中で表面プラズモン共鳴の測定を実施し、規格値を算出した。

0096

図21は、めっき工程の際に得られた反射光の反射率と表面プラズモン共鳴との関係を示すグラフである。1.0、1.5、2.0の数値を付したグラフ線は、それぞれ金めっき時に引き上げた反射率を示している。

0097

図21からわかるように、金めっき時の反射率1.5および2.0の表面プラズモン共鳴の測定結果の規格値は、1.0よりも明確に波長の谷が認められる。したがって、金めっきの際に、反射率の所定値として1.5〜2.0を設定しておき、無電解めっき中において、これらの値でめっき液101から引き上げてめっきを終了する。これにより、表面プラズモン共鳴を誘起させることのできる適正な厚さの金薄膜を形成できることになる。また、反射率1.5と2.0を比較すると、2.0の方がより明確に波長の谷が見られる。したがって、より好ましくは金めっきの際の反射率の所定値を2.0として、無電解めっき液101から引き上げるとよいことがわかる。

0098

さらにセンサーの検証を行うため、既知濃度の異なるスクロースの測定を行った。使用したサンプルセンサーは、反射率2.0で金めっき用の無電解めっき液101から取り出したものである。

0099

この実験結果から、反射光の強度の所定値または反射光の反射率の所定値は、実際に様々な強度や反射率で無電解めっき液101から引き上げたサンプルセンサーを作製して、表面プラズモン共鳴が確実に起きたサンプルセンサー作製時の強度や反射率を、あらかじめ決めた強度や反射率の所定値とすればよいことがわかる。そして、量産時には、この所定値を使用して、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーを製造すればよい。もちろん、所定値は、材料、仕様などに合わせて、また製造環境の変化などに応じて、適宜変更するものである。

0100

図22は、異なる濃度のスクロースの光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーによる測定結果の規格値を示すグラフである。図22において複数のグラフ線はそれぞれ異なる濃度のスクロースを測定した結果の規格値を示すものである。また、図23は、規格値によって得られた最も減衰した波長とスクロース濃度の関係を示すグラフである。

0101

図22からわかるように、各測定結果を示すグラフ線は、最も減衰した波長の位置が異なることがわかる。各グラフ線の最も減衰した波長の位置と、既知のスクロース濃度との関係をプロットしたものが図23である。縦軸のΔ波長は、スクロース濃度0(質量%)(すなわち純水)における規格値の最も減衰した波長を0として、そこからの波長の差である。

0102

図23から、スクロースの既知濃度と規格値の最も減衰した波長の位置のずれ量が、非常にきれいに正比例していることがわかる。したがって、今回製作したサンプルセンサーは、光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーとして正しく機能するものということができる。

0103

これら実施例の結果から、実験によって、表面プラズモン共鳴が誘起され易い金属薄膜210の厚さが得られるめっき工程での反射光の強度をあらかじめ求めておけば、これを所定値として、その後はこの所定値に、測定中の反射率が達した時点で光ファイバー200を無電解めっき液101から引き上げることで、表面プラズモン共鳴に適した金属薄膜210をコア201の表面に形成できるようになる。

0104

以上説明した実施形態および実施例によれば、以下のような効果を奏する。

0105

(1)実施形態および実施例では、光ファイバー200の露出させたコア201を含む一端部250を無電解めっき液101に浸漬するとともに、その一端部250の方向へ光を入射させて、一端部250からの反射光の強度を測定する。測定された反射光の強度は金属薄膜210の厚さと相関があるので、この反射光の強度に基づいて無電解めっき液101から光ファイバー200を引き上げるタイミングを決定すれば、表面プラズモン共鳴に適した厚さの金属薄膜210をコア201の表面に形成することができる。

0106

引き上げるタイミングとしては、たとえば、測定中の反射光の強度があらかじめ求めておいた所定値に達した時点で引き上げるようにしてもよい。これによりに容易に表面プラズモン共鳴に適した金属薄膜210をコア201の表面に形成することができる。これは、たとえば、所定値を求めた光ファイバー200と、その所定値によってめっきする光ファイバー200が同一製品である場合、それらの個体差は少ないので、直接、反射光の強度を比較しても大きな誤差は発生しない。また、反射率を算出する手間がいらなくなるので、分光計104の測定値をユーザーが読み取って、所定値に達した時点で引き上げることもできる。

0107

また、引き上げるタイミングは、反射光の強度を直接用いるのではなく、これに代えて、反射率を用いてもよい(反射率=(無電解めっき液中における反射光の強度)/(空気中における反射光の強度))。このような反射率を用いることで、たとえば、反射率の所定値を求めた光ファイバー200と、これからめっきする光ファイバー200とで個体差や損失の違いなどがあっても、確実に表面プラズモン共鳴を起こす金属薄膜210の厚さとなるように、無電解めっき液101から光ファイバー200を引き上げることができる。

0108

また、実施形態および実施例によれば、均一な金属ナノ薄膜を形成させることができる。しかも、金属ナノ薄膜形成過程をリアルタイムで分光学的にモニタリングできる。このことは従来法では不可能であった。しかも、金属薄膜は無電解めっきにより形成されるため、従来法の真空蒸着スパッタよりも均一な金属薄膜を容易に形成可能である。また、無電解めっき技術を利用した光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの感度は、非常に良いものである。これはプリズムを利用した表面プラズモン共鳴センサーと比較して同等である。このように実施形態および実施例は従来法の真空蒸着やスパッタと比較して、簡便、迅速に光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーを製造することができる。しかも、従来法の真空蒸着装置やスパッタ装置などと比較して装置構成が簡単であり、操作も容易であるので非常に安価に製造可能である。

0109

そして、実施形態および実施例により製造された光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーは、センサー部の微小化が可能であるため、細胞生体組織の微小空間を対象とした生体分子計測に応用できる。具体的にはたとえば、溶液の屈折率測定、イムノアッセイ、生体高分子間の相互作用解析など、様々な用途に表面プラズモン共鳴センサーとして使用可能である。

0110

また、製造が容易になるため、商業的な利用範囲広がりにも期待することができる。たとえば、様々な細胞の品質管理組織検査等の臨床検査に応用できるようになる。また、表面プラズモン共鳴を利用した計測装置の小型化が容易になる。そのため、いつでも、誰でも、どこでも、様々な種類の分子を計測できるようになる(計測装置のユビキタス化)、さらに、医学および薬学の分野では、治療効果のモニタリングを目的として、ベットサイド在宅で、医師患者自身が疾患のバイオマーカーを簡便に計測できるようになる(POCT:Point of Care Testing)。このため、個別医療志向する上で有用な計測装置といえる。また、微小センサーであることを利用して、カテーテル胃カメラとの複合計測装置へと応用可能である。つまり、In vivoで患部周辺のバイオマーカーを計測できる。また環境分野においても、フィールドでの計測が可能になる。

0111

(2)実施形態および実施例では、めっきする金属が反射する波長を含む光を光ファイバー200へ入射させて、めっきする金属が反射する波長の強度を測定することとした。これにより、金属薄膜210のめっきされる厚さに対応した反射光の強度が得られる。

0112

(3)実施形態および実施例では、めっきする金属が金の場合には、可視光領域300〜1050nm、好ましくは550〜650nmの波長の光を反射光の強度として測定することとした。これにより表面プラズモン共鳴を誘起させるために適した厚さの金薄膜を形成することができる。

0113

(4)実施形態および実施例では、めっきする金属が金の場合には、第1段階としてニッケルの無電解めっきを行い、その後、第2段階として金の無電解めっきを行うこととした。これにより表面プラズモン共鳴を誘起させるために適した厚さの金薄膜を形成することができる。

0114

以上本発明を適用した実施形態および実施例について説明したが、本発明は上述した実施形態および実施例に限定されるものではない。上述した実施形態および実施例では、最終的に金薄膜を無電解めっきにより形成することしたが、金以外の金属でも、反射光の強度によってその膜厚を制御することができる。たとえば、第1段階でニッケルをめっきした後は、第2段階としてたとえば銀(Ag)、銅(Cu)などニッケルよりイオン化傾向の小さい金属であれば形成可能である。しかも、これら金属はいずれも光を反射する傾向がある。このため本実施形態および実施例同様に反射光の強度を測定して、適切な膜厚となるように無電解めっき液から引き上げることで、膜厚の制御が可能である。

0115

また、上述した実施例では、無電解めっき液から引き上げるタイミングを決める反射光の強度の所定値または反射率の所定値は、表面プラズモン共鳴が起きたか否かを確認することで決定した。これは、既に説明したように、確実に表面プラズモン共鳴が誘起される金属薄膜を形成できるタイミングを見極めるためである。しかしこれに代えて、たとえば、表面プラズモン共鳴が起きたときの膜厚を測定し、そのような膜厚となる反射光の強度や反射率となるように所定値を決めてもよい。

実施例

0116

そのほか、本発明は、特許請求の範囲に記載された技術思想に基づいて様々な形態として実施可能であり、それらもまた本発明の範疇である。

0117

100光ファイバー表面プラズモン共鳴センサーの製造装置、
101無電解めっき液、
102めっき槽、
103光源、
104分光計、
105パソコン、
200 光ファイバー、
201コア、
202クラッド、
203ジャケット、
210金属薄膜、
250 一端部。

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