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課題
解決手段
概要
背景
若年性パーキンソン病原因遺伝子であるパーキン(Parkin)とピンク1(PINK1)は、それぞれユビキチンリガーゼとミトコンドリア局在性キナーゼをコードし、損傷したミトコンドリアを選択的に排除するマイトファジー(ミトコンドリアのオートファジー)に関与する。すなわちピンク1−パーキンによるミトコンドリア品質管理が障害されることにより、パーキンソン病の発症へとつながることが示唆されている。またパーキンに機能喪失変異のあるパーキンソン病患者では耐糖能が低下しており、筋肉、膵β細胞などのミトコンドリア機能も低下していると考えられる。パーキンを活性化しミトコンドリア機能を高めることは、パーキンソン病のみならず、糖尿病、サルコペニア、心肥大、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などミトコンドリアが関わるすべての疾患や病態を改善する可能性があり、幅広いターゲットにむけた創薬となりうる。
本発明者らは、2012〜2014年にピンク1がパーキンのユビキチン様領域をリン酸化すること、そのリン酸化がパーキンのユビキチンリガーゼを活性化することを報告した(非特許文献1〜3)。さらに、ピンク1がユビキチンおよびユビキチン鎖をリン酸化することにより、パーキンのユビキチンリガーゼが活性化することが明らかとなった。
定常時、パーキンは細胞質で不活性な状態としてコンパクトに折り畳まれている。ミトコンドリア機能障害により膜電位が低下するとピンク1が活性化する。活性化ピンク1によりリン酸化されたユビキチンがパーキンのRING1−IBR領域に入り込むことによりパーキンの構造が緩み、次にピンク1がパーキンのユビキチン様領域をリン酸化する。これによりユビキチンリガーゼ活性中心が露出し、パーキンが活性型ユビキチンリガーゼとなる。
概要
目的
本発明の課題は、パーキン活性化剤の簡便なスクリーニング法を提供する
効果
実績
- 技術文献被引用数
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- 牽制数
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この技術が所属する分野
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技術分野
背景技術
0002
若年性パーキンソン病原因遺伝子であるパーキン(Parkin)とピンク1(PINK1)は、それぞれユビキチンリガーゼとミトコンドリア局在性キナーゼをコードし、損傷したミトコンドリアを選択的に排除するマイトファジー(ミトコンドリアのオートファジー)に関与する。すなわちピンク1−パーキンによるミトコンドリア品質管理が障害されることにより、パーキンソン病の発症へとつながることが示唆されている。またパーキンに機能喪失変異のあるパーキンソン病患者では耐糖能が低下しており、筋肉、膵β細胞などのミトコンドリア機能も低下していると考えられる。パーキンを活性化しミトコンドリア機能を高めることは、パーキンソン病のみならず、糖尿病、サルコペニア、心肥大、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などミトコンドリアが関わるすべての疾患や病態を改善する可能性があり、幅広いターゲットにむけた創薬となりうる。
0003
本発明者らは、2012〜2014年にピンク1がパーキンのユビキチン様領域をリン酸化すること、そのリン酸化がパーキンのユビキチンリガーゼを活性化することを報告した(非特許文献1〜3)。さらに、ピンク1がユビキチンおよびユビキチン鎖をリン酸化することにより、パーキンのユビキチンリガーゼが活性化することが明らかとなった。
定常時、パーキンは細胞質で不活性な状態としてコンパクトに折り畳まれている。ミトコンドリア機能障害により膜電位が低下するとピンク1が活性化する。活性化ピンク1によりリン酸化されたユビキチンがパーキンのRING1−IBR領域に入り込むことによりパーキンの構造が緩み、次にピンク1がパーキンのユビキチン様領域をリン酸化する。これによりユビキチンリガーゼ活性中心が露出し、パーキンが活性型ユビキチンリガーゼとなる。
先行技術
0004
Shiba-Fukushima et al., Sci Rep 2012; 2:1002. doi: 10.1038/srep01002.
Shiba-Fukushima et al.,PLoS Genet 2014a; 10(6):e1004391. doi: 10.1371/journal.pgen.1004391.
Shiba-Fukushima et al., PLoS Genet 2014b; 10(12):e1004861. doi: 10.1371/journal.pgen.1004861.
発明が解決しようとする課題
0005
前記のように、パーキンの活性化メカニズムは明らかにされたが、パーキン活性化剤の簡便なスクリーニング法は未だ開発されていない。
本発明の課題は、パーキン活性化剤の簡便なスクリーニング法を提供することにある。
課題を解決するための手段
0006
そこで本発明者は、パーキンのユビキチン化基質であるミトコンドリア外膜タンパク質ミトフシン1(Mitofusin 1(Mfn 1))に着目した。ミトフシン1は、パーキン活性化により速やかにユビキチン化され分解される。かかる機能を考慮した上で、レポーター融合ミトフシン1存在下、パーキン活性化作用を有する被検物質をパーキンに作用させれば、パーキンの活性化によりミトフシン1がユビキチン化され分解される結果、レポーターの活性が低下することから、パーキン活性化剤がスクリーニングできることを見出し、本発明を完成した。
0007
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔5〕を提供するものである。
0008
〔1〕パーキンとレポーター融合ミトフシン1に被検物質を作用させ、レポーター活性の変化量を測定することを特徴とするパーキン活性化剤のスクリーニング法。
〔2〕レポーター活性の低下がミトフシン1の減少である〔1〕記載のスクリーニング法。
〔3〕融合したレポーターが、ルシフェラーゼである〔1〕又は〔2〕記載のスクリーニング法。
〔4〕パーキンとレポーター融合ミトフシン1に被検物質を作用させる工程が、パーキンとレポーター融合ミトフシン1の発現細胞株に被検物質を作用させる工程である〔1〕〜〔3〕のいずれか1項記載のスクリーニング法。
〔5〕前記発現細胞株に被検物質を作用させた後、細胞数及びレポーター活性量を測定し、細胞あたりのレポーター活性量の変化を測定する〔4〕記載のスクリーニング法。
発明の効果
0009
本発明方法によれば、簡便な操作でパーキン活性化剤がスクリーニングできる。パーキン活性化剤は、パーキンソン病、糖尿病、サルコペニア、心肥大、筋萎縮性側索硬化症などの予防治療薬として有用であるから、本発明のスクリーニング法によればこれらの疾患の予防治療薬のスクリーニングも可能である。
図面の簡単な説明
0011
本発明のパーキン活性化剤のスクリーニング法は、パーキンとレポーター融合ミトフシン1に被検物質を作用させ、レポーター活性の変化量を測定することを特徴とする。
0012
パーキンは、前述のように若年性パーキンソン病原因遺伝子産物として知られており、ユビキチンリガーゼ活性をもつ。パーキンは損傷したミトコンドリアを選択的に排除するマイトファジーに関与するタンパク質である。
一方、ミトフシン1は、ミトコンドリア外膜タンパク質であり、パーキンのユビキチン化基質である。
0013
本発明で使用されるパーキンとレポーター融合ミトフシン1は、例えば、パーキン遺伝子、及びレポーター遺伝子とミトフシン1遺伝子との融合遺伝子を有する発現ベクターを、パーキン遺伝子を産生しない哺乳類細胞株に導入することにより産生させることができる。より具体的には、レトロウイルスベクターpMXs−neoにパーキン遺伝子を、レトロウイルスベクターpMXs−puroにレポーター融合ミトフシン1を挿入する。このレトロウイルスベクターをパッケージング細胞に導入し、レトロウイルス液を調製する。その後、レトロウイルス液を哺乳類細胞に添加し、次に抗生物質ネオマイシン、ピューロマイシン添加により耐性細胞を選抜する。以上の工程を経て、安定発現株を得る。哺乳類細胞株としては、HeLa細胞、マウス線維芽細胞等、パーキンを発現しない細胞が用いられる。結果のバラツキが最低限に抑えられるよう安定発現株は、単一株化細胞が好ましい。
0014
ミトフシン1に融合するレポーターとしては、定量的に測定することができるものであればよく、例えばルシフェラーゼ、蛍光タンパク質、共有結合する蛍光リガンドとそれに対応するタンパク質タグを用いることができる。ルシフェラーゼとしては、生細胞を使って計測ができる高感度のものが好ましい。市販品としてはNanoLuc(プロメガ社製 次世代ルシフェラーゼ)を用いることができる。
0015
本発明においては、試験管内でパーキンとレポーター融合ミトフシン1に直接被検物質を作用させてもよいが、その場合、ユビキチン活性化酵素(E1)、ユビキチン結合酵素(E2)、ユビキチン、プロテアソーム、ATP、MgCl2などの添加が必要になる。簡便かつ安定な結果を得るためには、パーキンとレポーター融合ミトフシン1の発現細胞株に被検物質を作用させるのが好ましい。
ここで、前記発現細胞株としては、前記の遺伝子導入細胞株が挙げられる。
0016
この発現細胞株を用いる方法では、生細胞数を蛍光シグナルとして測定でき、被検物質作用後のレポーター活性の変化を発光シグナルとして測定できるので、細胞あたりの活性量の変化を測定することができる。
0017
本発明方法において、パーキンの活性化によりミトフシン1がユビキチン化され、その後プロテアソームによって分解されるので、レポーター活性量の低下がパーキン活性化として測定できる。
0018
より具体的な手法としては、パーキンとルシフェラーゼ融合ミトフシン1を安定的に発現する細胞株を培養し、被検物質を添加して一定期間培養後、生細胞数を蛍光シグナルとして測定し、次にルシフェラーゼ活性を発光シグナルとして測定する。蛍光と発光を同一プレート上で順次測定すれば、数多くの被検物質を同時にスクリーニングできる。低濃度のミトコンドリア膜イオノホアにより、パーキン活性化因子ピンク1を軽度に活性化した状態での被検物質のスクリーニングも本発明方法に含まれる。
0019
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
0020
参考例(パーキンとNanoLuc融合ミトフシン1の安定的細胞株の作製)
(1)NanoLucをヒトミトフシン1のN末端側に融合した遺伝子をレトロウイルスベクターpMXs−puroに挿入し、レトロウイルスベクターpMXs−puro−NanoLuc−Mfn1を作製する。
(2)ヒトパーキン遺伝子をレトロウイルスベクターpMXs−neoに挿入し、レトロウイルスベクターpMXs−neo−Parkinを作製する。
(3)上記2種類のレトロウイルスベクターをパッケージング細胞PLAT−Eにリポソーム法にてトランスフェクションする。PLAT−E細胞は、DMEM,high glucose(Sigma, D5796)+10%FBS(GIBCO, 11360-070)、1×Penicillin-Streptomycinで培養する。
(4)翌日、培地交換し、24時間培養する(この間、レトロウイルスが産生される)。
(5)PLAT−E培養液を回収、0.45μmフィルターで濾し、polybrene液を添加して混合する。
(6)予め前日にpcDNA3Hyg−mSlc7a1−VSVGとpcDNA3Hyg−mSlc7a1−FLAGを導入したHeLa細胞に、(5)で調製したウイルス培養液を添加し、24時間培養する。HeLa細胞は、DMEM,high glucose(Sigma, D5796)+10%FBS(GIBCO, 11360-070)、1×Penicillin-Streptomycinで培養する。
(7)培地交換し、翌日から抗生物質ネオマイシン(1000μg/mL)、ピューロマイシン(2μg/mL)を添加した上記培地で選択培養する。
(8)抗生物質耐性細胞が樹立されるまで(約2週間)、培地交換を2〜3日に一回行う。この間に、染色体に遺伝子導入された細胞は増殖する。また、細胞に取り込まれなかったレトロウイルスは消滅する。
(9)得られた抗生物質耐性細胞は、限界希釈法により単一細胞株を樹立する。
(10)抗パーキン抗体、抗ミトフシン1抗体、抗NanoLuc抗体を用いたウエスタンブロット法によりパーキン、NanoLuc融合ミトフシン1の発現レベルを確認するとともに、NanoLucを用いたレポーターアッセイを実施し、最適な細胞株を選択し樹立する。
(11)陰性コントロール細胞株としては、(2)でレトロウイルスベクターpMXs−neo−Parkinの代わりにpMXs−neoを用い、(10)までの工程を経て、パーキンを発現しないNanoLuc融合ミトフシン1安定的細胞株を樹立する。
0021
実施例1
(方法)
使用細胞株:HeLa cells harboring Nano-Luc-Mfn1, Parkin(参考例)、
HeLa cells harboring NanoLuc-Mfn1 and an empty vector(参考例(11))
使用培地:DMEM, high glucose(Sigma, D5796)+10%FBS(GIBCO, 11360-070)、1×GlutaMAX(GIBCO, 35050-061)、1mM Sodium Pyruvate(GIBCO)、1×NEAA(GIBCO, 11140-050)、1×Penicillin-Streptomycin
0022
(1)細胞をNuncマイクロウェルポリマー底96ウェルオプティカルボトムプレートへ細胞濃度1〜2×105cells/mLにて50μLずつ播種し、24時間培養する。
(2)DMSOに溶かしたミトコンドリア膜イオノホアバリノマイシン(Wako)を20μMになるよう培地に溶解。50μLずつ、処理時間が30、60、180分になるよう順次加えていく(バリノマイシンの終濃度は10μMとなる)。バリノマイシン処理0分はDMSOのみを加えた培地を用いる。
(3)CellTiter−Fluor細胞生存アッセイ(Promega,G6080)を用い、細胞濃度を測定する。
GF−AFS基質及びAssay buffer Mixtureを20μLずつ加え、37℃で30分インキュベーションする。
Mithras2 LB943(Berthold)にて蛍光測定(380nmEx/505nmEm、計測時間0.5秒/ウェル)。蛍光シグナルを特異的に拾うため黒い下敷きをプレート底面に置き測定する。
(4)Nano−Gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega,N1110)を用い、NanoLuc−ミトフシン1量を測定する。
Nano−Gloルシフェラーゼアッセイ基質及びBuffer Mixtureを100μLずつ加え、室温で5分インキュベーションする。
Mithras2 LB943にて発光を測定する(計測時間0.5秒/ウェル)。
(5)発光/蛍光の値で、細胞あたりのNono−Luc−ミトフシン1の発現レベルを見積もることにより、パーキンの活性化度合いを評価する。
0023
(結果)
ピンク1を活性化するバリノマイシンを用いてパーキンを活性化し、ルシフェラーゼ(NanoLuc)活性を測定した。測定はマルチプレートリーダー(ベルトールド社Mithras2 LB943)にて、蛍光(インキュベーションに30分)、発光(インキュベーションに3〜5分程度)を1枚のプレートで順次測定し、発光(Mfn1レベル)/蛍光(細胞数)を求めた。その結果、パーキンの活性依存的なルシフェラーゼ(NanoLuc)活性の低下が観察された(図1)。
実施例
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