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技術 ニッケルを実質的に含まない表層を有するニッケル/チタン合金及びその製造方法

出願人 国立大学法人北見工業大学
発明者 大津直史平野雄馬
出願日 2017年1月17日 (4年7ヶ月経過) 出願番号 2017-005570
公開日 2017年8月3日 (4年0ヶ月経過) 公開番号 2017-133101
状態 特許登録済
技術分野 表面反応による電解被覆
主要キーワード 生活用具 直流電力供給装置 単相半波 元素数比 アンテナ材 衛生機器 イメージ像 交直重畳
関連する未来課題
重要な関連分野

この項目の情報は公開日時点(2017年8月3日)のものです。
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図面 (13)

課題

Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金及びその製造方法の提供。

解決手段

0.03〜0.3M、好ましくは、0.05〜0.1M、より好ましくは0.1Mの硝酸又は硝酸塩含水溶液中でニッケルチタン合金陽極酸化する工程を含む、ニッケル原子密度が10%以下、好ましくは5%以下である表層を有するニッケル−チタン合金の製造方法。表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及び算術平均粗さが8nm以下である表面を有するニッケル−チタン合金。

効果

前記方法による表面処理により、Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金を製造することができる。前記Ni−Ti合金は、超弾性を保持しつつ、人体等に対してより安全な金属材料となり得る。

概要

背景

ニッケルチタン合金(以下、Ni−Ti合金と表す)は、代表的な形状記憶合金である。形状記憶合金は一般に、一定の温度(変態点)以上の温度では変形を受けても元の形状に回復する性質と、変態点以下の温度で変形しても変態点以上の温度になると元の形状に回復するという性質とを備えている。Ni−Ti合金は、形状記憶合金の中でも耐食性、耐使用回数耐久性、超弾性等において優れた特性を有していることから、携帯電話アンテナ材ボディスーツワイヤー時計バンド眼鏡フレームなどの生活用具、さらには歯列矯正ワイヤーステントインプラントなどの医療用具を含む様々な分野に応用されている。

生活用具や医療用具のように人体との接触が想定されるものへのNi−Ti合金の応用例において、合金に含まれるニッケル(Ni)の溶出による刺激の発生が問題となり得る。Niは、細胞毒性を示したりアレルギーを誘発したりする性質を有しており、Niによる皮膚刺激又はアレルギーの発生などの不具合は以前から報告されている。

Niと比較して、Ti及びその酸化物である二酸化チタン(TiO2)は優れた生体適合性を示すことが知られている。そのため、Ni−Ti合金からのNiの溶出による不具合を抑制する試みとして、Ni−Ti合金の表層、すなわちNi−Ti合金の表面からある程度の深さまでのNiの含有量、例えばNiの原子濃度(atomic concentration)を下げることが試みられている。

TiはNiよりも酸素との反応性が高いことを利用し、Ni−Ti合金を酸素雰囲気中で熱酸化処理することでNi−Ti合金に二酸化チタンの表層を形成させる方法が報告されている(例えば、非特許文献1)。しかし、もともとNi−Ti合金は、TiとNiとを真空中でアーク溶解し、得られた鋳塊熱間加工した後、焼鈍冷間加工を繰り返す等の複数回の熱処理を含む方法によって製造されるものであるため、いったん製造されたNi−Ti合金にさらなる加熱処理を行うこと、これにより酸素を合金内部にまで押し込むことは、合金内部の組織変化又は構造変化を誘発し、超弾性などの望ましい諸特性を損なうおそれがある。

さらに、熱酸化処理では、Ni−Ti合金の表層の浅い位置に、Niの原子密度局所的に高い層が形成される傾向がある。このような層を有するNi−Ti合金は、依然としてNiの溶出による不具合を引き起こし得る。

また、純Tiを陽極酸化処理することで表面にTiO2の表層を形成させることができ、これによってTiの表面にTiO2表層の厚さに応じた様々な色を付与することが可能であることは広く知られている。この様な色は、金属材料としてのTiに装飾性を付与し、様々な用途特に生活用品への応用においてTiの利用価値を高めている。しかし、陽極酸化が難しい金属とTiとの合金、典型的にはNi−Ti合金に対しては、陽極酸化を行ってもTiO2の表層が形成されなかったり、TiO2の表層の深さや形成される場所が不均一となったりするなど、装飾性の高い色を付与することは困難であった。

概要

Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金及びその製造方法の提供。0.03〜0.3M、好ましくは、0.05〜0.1M、より好ましくは0.1Mの硝酸又は硝酸塩含水溶液中でニッケル−チタン合金を陽極酸化する工程を含む、ニッケル原子密度が10%以下、好ましくは5%以下である表層を有するニッケル−チタン合金の製造方法。表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及び算術平均粗さが8nm以下である表面を有するニッケル−チタン合金。前記方法による表面処理により、Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金を製造することができる。前記Ni−Ti合金は、超弾性を保持しつつ、人体等に対してより安全な金属材料となり得る。

目的

本発明は、Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金及びその製造方法を提供することを目的とする。

効果

実績

技術文献被引用数
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請求項1

0.03M〜0.3Mの硝酸又は硝酸塩含水溶液中でニッケルチタン合金陽極酸化する工程を含む、ニッケル原子密度が10%以下である表層を有するニッケル−チタン合金の製造方法。

請求項2

表層の深さがニッケル−チタン合金の表面から少なくとも50nmである、請求項1に記載の製造方法。

請求項3

陽極酸化が0.05M〜0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中で行われる、請求項1に記載の製造方法。

請求項4

表層の深さがニッケル−チタン合金の表面から少なくとも100nmである、請求項3に記載の製造方法。

請求項5

陽極酸化が0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中で行われる請求項1に記載の製造方法。

請求項6

表層のニッケル原子密度が5%以下であり、深さがニッケル−チタン合金の表面から少なくとも100nmである、請求項5に記載の製造方法。

請求項7

陽極酸化する工程の前に、ニッケル−チタン合金を0.3M〜5Mの硝酸に1〜48時間浸漬する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の製造方法。

請求項8

表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及び算術平均粗さが8nm以下である表面を有するニッケル−チタン合金。

請求項9

表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である、請求項7に記載のニッケル−チタン合金。

請求項10

表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が5%以下である、請求項7に記載のニッケル−チタン合金。

技術分野

0001

本発明は、ニッケルを実質的に含まない表層を有するニッケル/チタン合金及びその製造方法に関する。

背景技術

0002

ニッケル/チタン合金(以下、Ni−Ti合金と表す)は、代表的な形状記憶合金である。形状記憶合金は一般に、一定の温度(変態点)以上の温度では変形を受けても元の形状に回復する性質と、変態点以下の温度で変形しても変態点以上の温度になると元の形状に回復するという性質とを備えている。Ni−Ti合金は、形状記憶合金の中でも耐食性、耐使用回数耐久性、超弾性等において優れた特性を有していることから、携帯電話アンテナ材ボディスーツワイヤー時計バンド眼鏡フレームなどの生活用具、さらには歯列矯正ワイヤーステントインプラントなどの医療用具を含む様々な分野に応用されている。

0003

生活用具や医療用具のように人体との接触が想定されるものへのNi−Ti合金の応用例において、合金に含まれるニッケル(Ni)の溶出による刺激の発生が問題となり得る。Niは、細胞毒性を示したりアレルギーを誘発したりする性質を有しており、Niによる皮膚刺激又はアレルギーの発生などの不具合は以前から報告されている。

0004

Niと比較して、Ti及びその酸化物である二酸化チタン(TiO2)は優れた生体適合性を示すことが知られている。そのため、Ni−Ti合金からのNiの溶出による不具合を抑制する試みとして、Ni−Ti合金の表層、すなわちNi−Ti合金の表面からある程度の深さまでのNiの含有量、例えばNiの原子濃度(atomic concentration)を下げることが試みられている。

0005

TiはNiよりも酸素との反応性が高いことを利用し、Ni−Ti合金を酸素雰囲気中で熱酸化処理することでNi−Ti合金に二酸化チタンの表層を形成させる方法が報告されている(例えば、非特許文献1)。しかし、もともとNi−Ti合金は、TiとNiとを真空中でアーク溶解し、得られた鋳塊熱間加工した後、焼鈍冷間加工を繰り返す等の複数回の熱処理を含む方法によって製造されるものであるため、いったん製造されたNi−Ti合金にさらなる加熱処理を行うこと、これにより酸素を合金内部にまで押し込むことは、合金内部の組織変化又は構造変化を誘発し、超弾性などの望ましい諸特性を損なうおそれがある。

0006

さらに、熱酸化処理では、Ni−Ti合金の表層の浅い位置に、Niの原子密度局所的に高い層が形成される傾向がある。このような層を有するNi−Ti合金は、依然としてNiの溶出による不具合を引き起こし得る。

0007

また、純Tiを陽極酸化処理することで表面にTiO2の表層を形成させることができ、これによってTiの表面にTiO2表層の厚さに応じた様々な色を付与することが可能であることは広く知られている。この様な色は、金属材料としてのTiに装飾性を付与し、様々な用途特に生活用品への応用においてTiの利用価値を高めている。しかし、陽極酸化が難しい金属とTiとの合金、典型的にはNi−Ti合金に対しては、陽極酸化を行ってもTiO2の表層が形成されなかったり、TiO2の表層の深さや形成される場所が不均一となったりするなど、装飾性の高い色を付与することは困難であった。

先行技術

0008

S.Shabalovskaya,J.Anderegg,F.Laabs,P.Thiel,G.Rondelli,J.Biomed.Mater.Res.,2003,65B,193.

発明が解決しようとする課題

0009

本発明は、Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金及びその製造方法を提供することを目的とする。

課題を解決するための手段

0010

本発明者らは、特定濃度硝酸中でNi−Ti合金を陽極酸化することで、Niを実質的に含まない表層を有するNi−Ti合金を製造することができることを見いだし、下記の各発明を完成させた。

0011

(1)0.03M〜0.3Mの硝酸又は硝酸塩含水溶液中でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む、ニッケル原子密度が10%以下である表層を有するNi−Ti合金の製造方法。
(2)表層の深さがNi−Ti合金の表面から少なくとも50nmである、(1)に記載の製造方法。
(3)陽極酸化が0.05M〜0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中で行われる、(1)に記載の製造方法。
(4)表層の深さがNi−Ti合金の表面から少なくとも100nmである、(3)に記載の製造方法。
(5)陽極酸化が0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中で行われる(1)に記載の製造方法。
(6)表層のニッケル原子密度が5%以下であり、深さがNi−Ti合金の表面から少なくとも100nmである、(5)に記載の製造方法。
(7)陽極酸化する工程の前に、Ni−Ti合金を0.3M〜5Mの硝酸に1〜48時間浸漬する工程をさらに含む、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の製造方法。
(8)表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及び算術平均粗さが8nm以下である表面を有するNi−Ti合金。
(9)表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である、(8)に記載のNi−Ti合金。
(10)表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が5%以下である、(8)に記載のNi−Ti合金。

発明の効果

0012

本発明によれば、Niを実質的に含まない表層を有する、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ないNi−Ti合金を製造することができる。かかるNi−Ti合金は、超弾性を保持しつつ、人体等に対してより安全な金属材料となり得る。また、本発明の方法で製造されるNi−Ti合金は黄色〜青色を呈するので、着色されたNi−Ti合金としての装飾性も併せ持つ。さらに、本発明の陽極酸化処理は室温に近い低温で行うことが可能であり、加熱処理等よりも低いエネルギーコストで製造することができる。

図面の簡単な説明

0013

0.001M(パネルA)、0.005M(パネルB)及び0.01M(パネルC)の硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。
0.03M(パネルA)、0.05M(パネルB)及び0.1M(パネルC)の硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。
0.3M(パネルA)、0.5M(パネルB)及び1.0M(パネルC)の硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。
硝酸の濃度と製造されるNi−Ti合金の膜厚との関係を示すグラフである。
0.1M(パネルA)又は1.0M(パネルB)の硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表面を電子顕微鏡で観察した写真である。
0.001M〜1.0Mの硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の外観を示す写真である。
0.1Mの硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表面を走査型プローブ顕微鏡で観察した写真である。
0.1Mの硝酸中で、硝酸の温度を5℃(パネルA)、20℃(パネルB)、40℃(パネルC)又は60℃(パネルD)として陽極酸化処理したNi−Ti合金の表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。
0.1Mの硝酸中で、硝酸の温度を5℃(パネルA)、20℃(パネルB)、40℃(パネルC)又は60℃(パネルD)として陽極酸化処理したNi−Ti合金の表面を電子顕微鏡で観察した写真である。
0.1Mの硝酸中で、1時間(パネルA)、3時間(パネルB)、6時間(パネルC)又は10時間(パネルD)陽極酸化処理したNi−Ti合金の表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。
0.1Mの硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の表面(写真A)、1.0Mの硝酸に60℃で24時間、1.0Mの硝酸に60℃で3時間、1.0Mの硝酸に25℃で24時間又は13.14Mの硝酸に60℃で24時間浸漬した後に、0.1M硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金の各表面(順に写真B、C、D、E)を、電子顕微鏡で観察した写真である。
0.1Mの硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金(A)、及び1.0Mの硝酸に60℃で24時間浸漬した後に0.1M硝酸中で陽極酸化処理したNi−Ti合金(B)の、各表層におけるNi、Ti及び酸素(O)の原子密度を、X線光電子分光装置を用いて測定したときのプロファイルチャートである。

0014

本発明の第1の態様は、0.03M〜0.3Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む、Niの原子密度が10%以下である表層を有するNi−Ti合金の製造方法に関する。この態様において製造されるNi−Ti合金は、表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層を有する。

0015

本発明の第2の態様は、0.05M〜0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む、Niの原子濃度が10%以下である表層を有するNi−Ti合金の製造方法である。この態様において製造されるNi−Ti合金は、表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層を有する。

0016

本発明の第3の態様は、0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む、Niの原子濃度が5%以下である表層を有するNi−Ti合金の製造方法である。この態様において製造されるNi−Ti合金は、表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が5%以下である表層を有する。

0017

本発明は、硝酸又は硝酸塩の含水溶液中でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む。硝酸イオンはその強い酸化性によりNiに対する溶解力を示すことから、硝酸又は硝酸塩の含水溶液中で陽極酸化を行うことで、Ni−Ti合金の表層からNiを溶出することができるものと推察される。硝酸塩としてはNa、Kなどのナトリウム金属と硝酸との塩、又は硝酸アンモニウムなどを使用することが好ましく、特に硝酸アンモニウムの使用が好ましい。また、硝酸又は硝酸塩の溶媒としては、硝酸又は硝酸塩を溶解した際に硝酸イオンを生じるものであればよく、好ましくは含水溶媒、特に好ましくは水である。

0018

本発明において、硝酸又は硝酸塩の含水溶液の濃度は陽極酸化処理後のNi−Ti合金の表層におけるNi原子密度に影響を与える。本発明では、0.03M〜0.3M、好ましくは0.05M〜0.1M、より好ましくは0.1Mの硝酸又は硝酸塩の含水溶液中でNi−Ti合金の陽極酸化を行うことが求められる。特に上記各濃度の硝酸の利用が好ましい。なお、本発明における硝酸塩のモル濃度は、硝酸イオンに換算したモル濃度である。

0019

例えば、Ni:Ti=55:45(元素数比)のNi−Ti合金に対し、0.3Mの硝酸中で陽極酸化を行うことで、表面から約60nmまでの深さの表層におけるNi原子濃度を10%以下とすることができる。また0.1Mの硝酸中で陽極酸化を行うことで、表面から約125nmまでの深さの表層におけるNi原子濃度を10%以下とすることができる。後者において、金属表面から約110nmまでの深さの表層のNi原子濃度は5%以下である。

0020

また、0.03Mの硝酸中で陽極酸化を行うことで、表面から約60nmまでの深さの表層におけるNi原子濃度を10%以下とすることができ、0.05Mの硝酸中で陽極酸化を行うことで、表面から約110nmまでの深さの表層におけるNi原子濃度を10%以下とすることができる。後者において、表面から約90nmまでの深さの表層のNi原子濃度は5%以下である。

0021

一方、0.01Mの硝酸中の陽極酸化及び0.5Mの硝酸中の陽極酸化はいずれも、表面から深さ36nmまでの表層のNi原子濃度が10%を上回る結果を与える。Ni原子密度が10%を大きく越える表層を有するNi−Ti合金は、その表層からのNi溶出を抑制することが難しくなり、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれがある。

0022

表層におけるNiの原子密度は、例えば、X線光電子分光装置などを用いることによって測定することができる。具体的には、Ni−Ti合金に対してX線光電子分光分析を行い、得られたNiに相当するピーク面積から原子密度を測定することができる。

0023

本発明は、Ni−Ti合金、特に超弾性を有する形状記憶合金として利用されているNi−Ti合金を対象とすることができる。例としては、ニチノールNASリメンバロイ(第一金属株式会社)、KMS−SMアロイ(新日鉄住金株式会社)などを挙げることができる。

0024

本発明においては、Ni−Ti合金は、使用形態適合した所望の形状に予め加工したものを使用することが好ましい。かかる形状は特に限定されるものではなく、板状、棒状、円柱状、網状、繊維状、多孔質状スポンジ状、粉体や繊維を圧縮加工してなる成形体塊状物等であってよい。

0025

本発明において利用可能なNi−Ti合金は、超弾性等の諸特性を損なわない限り、NiとTi以外の金属元素を含んでいてもよい。そのような金属元素の例としては、V、Nb、Taなどの5族元素、Cr、Mo、Wなどの6族元素、Mn、Reなどの7属元素、Fe又はCoの鉄属元素、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptなどの白金族元素、Cu、Ag、Auなどの11族元素(1B属元素)、Si、Sn、Pbなどの14族元素(4B属元素)、Y、La、Ce、Nd、Sm、Tb、Er、Yb、Acなどの3族元素などを挙げることができる。

0026

本発明における陽極酸化は、硝酸又は硝酸塩の濃度調節に加え、適当な冷却手段を用いて温度を10℃〜20℃の範囲に調節して行うことが好ましい。温度が40℃を上回った状態で陽極酸化を続けると、製造されるNi−Ti合金の表面が粗くなる傾向が見られる。

0027

本発明における陽極酸化は定電流モードで行うことが好ましく、この場合、電圧電流溶液電気伝導度の関係から自動的に決定される。

0028

本発明における陽極酸化の電流密度としては、10mA/cm2以上、好ましくは25mA/cm2以上、より好ましくは50mA/cm2以上とすればよい。

0029

また、上記の条件下での陽極酸化は、30分間〜20時間の範囲で行えばよく、好ましくは1時間〜10時間、より好ましくは1時間〜6時間行うことが望ましい。

0030

陽極酸化は、直流交直重畳、又はパルス波印加して室温で行うことができる。又は、サイリスタ方式による直流電源を用いて、単相半波三相半波六相半波を印加して行うことも可能である。

0031

典型的な態様では、0.1Mの硝酸を満たした適当な浴にNi−Ti合金及び白金をそれぞれアノード及びカソードとして浸し、直流電力供給装置により電力を供給して、電流密度約10〜100mA/cm2程度で、陽極酸化を行う。これにより、約125nmの深さの表層のNi原子濃度が10%以下であり、特に約110nmの深さの表層のNi原子濃度が5%以下であるNi−Ti合金を製造することができる。

0032

陽極酸化処理されたNi−Ti合金は、硝酸又は硝酸塩の含水溶液から取り出された後に洗浄してもよい。洗浄は水、又はメタノールエタノールもしくはアセトンなどの有機溶媒を用いて行うことができる。

0033

上記のいずれの態様に係る方法も、陽極酸化する工程の前に、Ni−Ti合金を0.3M〜5Mの硝酸、好ましくは0.5M〜3Mの硝酸に、1〜48時間好ましくは3〜24時間浸漬させる工程をさらに含むことが好ましい。かかる浸漬の後にNi−Ti合金を上述の条件で陽極酸化することによって、より滑らかな金属表面を有し、耐久性に優れ、Niの溶出がより抑制されたNi−Ti合金を製造することができる。浸漬の温度は室温であってもよく、又は適当に加温してもよい。

0034

本発明におけるTi−Ni合金の陽極酸化は、合金の表層におけるNiの原子濃度を低下させると同時に、二酸化チタンの表層を形成させることができ、その結果、Ni−Ti合金の表面を黄色〜青色に着色することができる。色は二酸化チタン表層の深さに依存する。以上から、本願発明にかかる方法は、前述の条件下でNi−Ti合金を陽極酸化する工程を含む、ニッケル原子密度が10%以下である表層を有する着色されたNi−Ti合金の製造法と表すことも可能である。

0035

本発明は、第4の態様として、表面から少なくとも50nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及び算術平均粗さ(Ra)が8nm以下、好ましくは6nm以下である表面を有する、ニッケル−チタン合金を提供する。本態様の好ましい例は、表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が10%以下である表層及びRaが6nm以下である表面を有するニッケル−チタン合金であり、より好ましい例は表面から少なくとも100nmの深さのニッケル原子密度が5%以下である表層及びRaが6nm以下である表面を有するニッケル−チタン合金である。かかるNi−Ti合金は、典型的には前記第1ないし第3の態様の方法によって製造することができる。

0036

算術平均粗さは(Ra)は、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値で表される表面粗さを表す、一般的に利用されている単位である。二酸化チタン表層を有するNi−Ti合金の表面粗さは二酸化チタン表層の耐久性と関連性を有しており、表面が粗いと耐久性が劣る傾向にある。本発明のNi−Ti合金の表面はRaとして8nm以下という低い値を有しており、かかる合金の二酸化チタン表層の耐久性は高いと推察される。

0037

本発明の方法で得られたNi−Ti合金は、形状記憶に関する特性を維持しつつ、Niの溶出による不具合を引き起こすおそれの少ない金属材料として、また着色された装飾性の高い金属材料として、幅広い分野において利用可能である。例えば、ボディスーツのワイヤー、時計バンド、眼鏡フレームなどの生活用具、歯列矯正ワイヤー、ステント、インプラントなどの医療用具、一般建築用の資材調理用器具食器類衛生機器等に利用可能である。

0038

以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものであり、発明の範囲を限定する、あるいは制限するものではない。また、全ての実施例は、特に詳細に記載するもの以外は、当業者標準的な技術又は方法を用いて実施し、又は実施することのできるものである。

0039

<実施例1>
1)製造例
0.001M、0.005M、0.01M、0.03M、0.05M、0.1M、0.3M、0.5M又は1.0Mの硝酸水溶液200mLをそれぞれ満たした浴を用意し、Ni:Ti=55:45(元素数比)のNi−Ti合金(直径17mm×厚さ3mm)の板をアノードとし、同サイズのPt板をカソードとして各浴に浸漬し、電流密度50mA/cm2、及び浴中の硝酸水溶液の温度20℃の条件下で、180分間、陽極酸化を行い、Ni−Ti合金を製造した。0.03M、0.05M、0.1M及び0.3Mの硝酸水溶液中の陽極酸化処理は実施例に、0.001M、0.005M、0.01M、0.5M及び1.0Mの硝酸水溶液中の陽極酸化処理は比較例に、それぞれ相当する。

0040

2)試験
2)−1.Ni原子密度の測定
上記1)で製造したNi−Ti合金を、X線光電子分光装置(PHI5000 VersaProbe、株式会社アルバックファイ)にてプロファイル分析を行い、Ni、Ti及びO(酸素)の原子密度を測定した。各Ni−Ti合金のプロファイルチャートを図1図3に示す。また、金属表面における酸素の原子密度が半分になる深さ(膜厚)を縦軸に、硝酸水溶液濃度を横軸としたグラフを図4に示す。

0041

図1〜3に示されるように、実施例に相当するNi−Ti合金では、金属表面からの深さが50nmでもNi原子密度は10%を下回っている一方、比較例に相当するNi−Ti合金は金属表面からの深さが10〜30nmでNi原子密度が10%を上回る結果となった。また、図4に示されるように、膜厚は0.1Mの硝酸水溶液中の陽極酸化で最大となった。

0042

2)−2.電子顕微鏡観察
株式会社日本電子製の走査電子顕微鏡(JCM−5000 Neo Scope)を用い、製造者マニュアルに従って、上記1)において0.1M又は1.0Mの硝酸水溶液中で陽極酸化を行ったNi−Ti合金(比較例、実施例)の表面を観察した。その電子顕微鏡写真を図5に示す。

0043

1Mの硝酸水溶液中で陽極酸化を行った合金の表面は、0.1Mの硝酸水溶液中で陽極酸化を行った合金のそれと比較して、粗い凹凸が多数発生していることが確認された。かかる表面の粗さは金属表面ないし二酸化チタン表層の耐久性を低下させる原因となることから、本願発明にかかるNi−Ti合金は、比較例のNi−Ti合金より高い耐久性を有しているものと推察された。

0044

2)−3.外観観察
上記1)で製造したNi−Ti合金の外観を図6に示す。0.03Mの硝酸水溶液中での陽極酸化から薄青、黄色、紫、緑等の多色化が明瞭に観察されるようになり、0.5M以上の硝酸水溶液中の陽極酸化では青みが薄れる傾向にあることが観察された。

0045

2)−4.表面粗さの測定
走査プローブ顕微鏡(SPM−9700、株式会社島津製作所)を用い、製造者のマニュアルに従って、上記1)において0.1Mの硝酸水溶液中で陽極酸化を行ったNi−Ti合金の表面粗さを観察し、そのイメージ像図7)から算術平均粗さを算出したところ、5.6nmという結果を得た。

0046

<実施例2>
硝酸水溶液の濃度を0.1Mに固定し、水溶液の温度を5℃、20℃、40℃又は60℃に設定する他は実施例1と同じ条件で陽極酸化を行った。陽極酸化後のNi−Ti合金について、実施例1と同様にX線光電子分光装置(PHI5000 VersaProbe、株式会社アルバックファイ)でプロファイル分析を行い、Ni、Ti及びO(酸素)の原子密度を測定した。そのプロファイルチャートを図8に示す。また、株式会社日本電子製の走査電子顕微鏡(JCM−5000 Neo Scope)を用い、製造者のマニュアルに従って陽極酸化後のNi−Ti合金の表面を観察した。その電子顕微鏡写真を図9に示す。

0047

水溶液の温度が40℃以上となると、Ni−Ti合金の表面から約36nmまでの深さの表層でNi原子濃度が10%を上回ることが確認された。一方、水溶液の温度が5℃になると、Ni−Ti合金の表面の粗さが増す傾向にあることが確認された。これらの結果から、陽極酸化中の硝酸水溶液の温度は20℃前後が適していると推察された。

0048

<実施例3>
硝酸水溶液の濃度を0.1Mとし、陽極酸化の時間を1時間、3時間、6時間又は10時間とする他は、実施例1と同じ条件で陽極酸化を行った。陽極酸化後のNi−Ti合金について、実施例1と同様にX線光電子分光装置(PHI5000 VersaProbe、株式会社アルバックファイ)でプロファイル分析を行い、Ni、Ti及びO(酸素)の原子密度を測定した。そのプロファイルチャートを図10に示す。

0049

10時間の陽極酸化で僅かに表層のNi電子密度が上昇する傾向が認められるが、いずれの処理時間でも金属表面から約50nmまでの深さの表層のNi原子濃度は10%を下回ることが確認された。

0050

<実施例4>
1)Ni:Ti=55:45(元素数比)のNi−Ti合金(直径17mm×厚さ3mm)の板を、1.0Mの硝酸に60℃で24時間(B)、1.0Mの硝酸に60℃で3時間(C)、1.0Mの硝酸に25℃で24時間(D)、13.14Mの硝酸に60℃で24時間(E)、それぞれ浸漬した。浸漬後の板をアノードとし、同サイズのPt板をカソードとして、0.1M硝酸水溶液を満たした浴に浸漬し、電流密度50mA/cm2、及び浴中の硝酸水溶液の温度20℃の条件下で、180分間、陽極酸化を行った。

0051

2)株式会社日本電子製の走査電子顕微鏡(JSM−6701)を用い、製造者のマニュアルに従って、上記1)で陽極酸化を行ったNi−Ti合金(B)〜(E)の表面を観察した。その電子顕微鏡写真を図11に示す。陽極酸化する前に1.0Mの硝酸に浸漬してから陽極酸化を行うことで、浸漬せずにNi−Ti合金を陽極酸化した場合(図11のA)よりも、表面粗さが改善されたNi−Ti合金を得ることができることが確認された。一方、13.14Mの硝酸にNi−Ti合金を浸漬させたとき(E)は、陽極酸化後の板の表面に孔が形成されることが確認された。

実施例

0052

3)上記1)において製造したNi−Ti合金(B)を、X線光電子分光装置(PHI5000 VersaProbe、株式会社アルバックファイ)にてプロファイル分析を行い、Ni、Ti及びO(酸素)の原子密度を測定した。各Ni−Ti合金のプロファイルチャートを図12に示す。浸漬処理を行った場合でも、ニッケル原子密度が10%以下である表層の深さは浸漬処理を行わない場合(図12のA)と殆ど変わらないことが確認された。

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